JP5753387B2 - 蚊取線香及びこれを用いた害虫防除方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蚊取線香及びこれを用いた害虫防除方法に関するものである。
従来、蚊等の飛翔害虫や吸血性害虫を駆除する方法として、燻煙させて用いる蚊取線香、加熱蒸散させる蚊取りマットや液体式電気蚊取り、あるいは、風力ならびに遠心力を用いる回転式(ファン式)蚊取り、殺虫成分を含む液体を空中に噴霧するスプレー、噴射ガスを利用したエアゾールなどが広く用いられている。屋外での防除にあたっては、人体に直接塗布する人体用忌避剤も用いられており、電池を用いた回転式蚊取りも携帯できるために屋外でも使用できる。とりわけ蚊取線香は燃焼熱により殺虫成分が煙を伴って広がる点で非常に効果的である。近年では園芸ブームやアウトドアブームといった屋外シーンの多様化に伴い、蚊等に悩まされる場面が増えてきている。そのため、屋外で使い勝手が良く、従来の線香より広い空間に対して防除効率の高い製剤が望まれている。
かかる状況から、蚊取線香についても燃焼性を向上させ、殺虫成分の揮散効率を高めるなどの試みがなされてきた。例えば、特許文献1(特許第4226093号)には、大型筒状形態にして空気取入口を備えることで、着火性、燃焼性及び拡散性を向上できること、さらに流動パラフィンや植物油を配合することによって煙量を増やすことが可能であることが記載されている。このような線香は、従来の渦巻型ではないため、広く市販されている線香立てや線香皿で用いることはできず、使い勝手が悪い。さらに、煙が多すぎると使用場所も制約される。線香直近では多量の煙によって、むしろ作業がしにくく、また携帯できないため、移動しながらの使用には適さない。そこで本発明者らは、これまで燃焼性や拡散性の向上に注力されてきた蚊取線香のコンセプトを見直し、屋外の活動シーンでより使用しやすい蚊取線香の開発に取り組んだ。従来の蚊取線香の煙を単に増やすだけでは、実用時の使い勝手が悪いばかりでなく、有効成分の揮散とその後の拡散は必ずしも十分でなく、従って防除効果の飛躍的な向上が期待できない可能性がある。そこで、防除効率の向上には有効成分を効果的に揮散、拡散させることが必須と考えて、線香の断面積と有効成分の蒸気圧に着目することで、有効成分の揮散、拡散性が向上するという知見を得た。さらに、線香の断面形状と煙量及び拡散性との関係を鋭意検討した結果、本発明が従来品の渦巻線香と同様の燃焼具を使用でき、煙量を視認しやすくなる程度の増加に留め、加えて有効成分を効率よく揮散させ、その後に拡散させるために有用であることを見出した。
また、特許文献2(特許第3554900)では、揮散率の向上を図る工夫として、ピナミンフォルテを有効成分とする蚊取線香の断面積と燃焼速度の最適範囲を示している。従来、線香の太さを一定以上に大きくすると有効成分の揮散率が顕著に低下することが知られていた。特許文献2記載の蚊取線香では、従来の線香よりも断面積が小さく細い形状にすることにより揮散率が向上している。しかしながら、このような断面積の小さい線香はそれに応じて燃焼熱が小さい為に揮散した薬剤のその後の拡散性に劣り、さらに屋外シーンで使用した場合の衝撃にも弱い。本発明では、従来の有効成分より蒸気圧が高く適切な範囲にある有効成分を選択することにより、従来品よりもさらに太い形状にしても、広範囲空間の防除に必要な薬剤量を揮散させることができることを見出したものである。一定以上の太さを有する線香の燃焼条件に適した蒸気圧を有する殺虫成分は、燃焼部分の手前の比較的低温領域で揮散が開始される。また、本発明品は断面積が大きく燃焼部分の進行速度が遅いため、熱分解を受ける温度領域に達するまでには時間がかかる。その結果、揮散に最適な温度領域が充分時間確保されることとなり、有効成分が熱分解により受けるロスを低減することができ、効率よく揮散させることができる。そして、太くなることで燃焼熱も高まり、揮散した薬剤を周囲に拡散させる力にも優れている。さらに、太く強度が増すことで衝撃にも強くなっているため、屋外での持ち運びにも好適である。また、従来品同様線香立ても使用でき、屋外で懸念される湿気の影響も受けにくく渦巻が垂れにくい。以上のように、本発明品は屋外使用に適したものであるとの知見を得て、有用な害虫防除方法を完成するに至った。
特許第4226093号 特許第3554900号
本発明は、より屋外使用に適した防除効率の高い蚊取線香及びこれを用いた害虫防除方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成が前記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)燃焼基材と、30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるエムペントリン、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリンから選ばれる少なくとも1つであるピレスロイド系殺虫剤を有効成分として含有し、更に2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)ジ−t−ブチル−フェノール系安定剤として含有した渦巻状の線香であって、その断面積が40〜80mmであって、その断面の幅が厚さより1.2〜1.7倍大きく、前記ジ−t−ブチル−フェノール系安定剤を、前記ピレスロイド系殺虫剤に対して、0.07〜0.2倍量配合した蚊取線香。
(2)(1)に記載の蚊取線香を燃焼させ、有効成分を防除必要な空間に揮散させることによって忌避、防虫、殺虫効果を発現させることを特徴とする野外の害虫防除方法。
本発明の蚊取線香は、従来の蚊取線香による防除方法の利点を踏襲しつつ、さらに防除効率を向上させることができたため屋外使用に極めて有効である。また、有効成分の拡散力が高められており、揮散効率も従来線香と同等程度を確保し、しかも強度が向上しつつも簡便に手で折ることができ、煙の量も多すぎることがなく使い勝手がよい。
本発明の蚊取線香の断面の様子を示す模式図である。
本発明では殺虫成分として、30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるピレスロイド系化合物から選ばれた1種又は2種以上が用いられる。このような化合物は常温揮散性を有するものであり、例えば、メトフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン、トランスフルトリン、テラレスリン、フラメトリンなどがあげられ、従来蚊取線香に広く用いられてきたアレスリン系ピレスロイドはこの蒸気圧の範囲から外れる(例えば、特開2009‐35569、Medical entomology and zoology.55、289-294(2004)等に記載)。こうした蒸気圧の高い殺虫成分は、もともと蚊取線香用途としてではなく、風力などわずかなエネルギーによって揮散することから、回転式(ファン式)蚊取という新しい製剤に利用、開発されてきた背景をもつ。
これらの化合物の中でも、蒸気圧や安定性、基礎殺虫効力などを考慮すると、本発明の目的には、エムペントリン、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリンがより好ましい。
なお、ピレスロイド系化合物の酸部分やアルコール部分において、不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物も本発明に包含されることはもちろんである。
また、本発明の目的に支障を来たさない限りにおいて、前記殺虫成分よりも蒸気圧の低い従来の汎用ピレスロイド系化合物、例えばアレスリン、プラレトリン、ピレトリン等、あるいはピレスロイド系とは異なる他の殺虫剤や忌避剤成分等、あるいは天然植物精油や天然もしくは合成香料、例えばジヒドロミルセノール、オクタン酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、イソアミルオキシ酢酸アリル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル、テルピネオール、シトロネラール、シトラール、ノナナール、ゲラニオール、ネロール、ボルネオール、デカノール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、ロジノール、メントール、p‐メンタン‐3,8‐ジオール、チモール、メンタン、カンフェン、ピネン、リモネン、β‐ヨノン、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸アリル、蟻酸ゲラニル、蟻酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸ネリル、メチルサリシレート、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、ラベンダー油、オレンジ油、グレープフルーツ油、シダーウッド油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、ハッカ油などの揮散性成分を配合しても構わない。
なお、本発明では、便宜的に蚊取り用の製剤として称するが、蚊以外の害虫にも適用されるものであることは言うまでもない。本発明を適用し得る代表的な対象害虫としては、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ、ヒトスジシマカ、チカイエカ等のイエカ類、ユスリカ類、チョウバエ類、ノミバエ類、イエバエ類、アブ類、ブユ類、ヌカカ類、イガ類、ハチ類等の飛翔昆虫を例示することができる。
従来の蚊取線香における拡散性の向上、燃焼時の立ち消え、揮散率、強度等の問題点について種々検討した結果、本実施形態の線香の断面積は、40〜80mmとなるものとした。
断面の形状については、四角や丸などいかなる形状でも構わない。また、凸型や凹型など必要に応じて溝を形成してもよく、あるいは中空の形状としてもよい。
断面については、好ましくは、幅が厚さより1.2〜1.7倍大きいほうが適している。
なお、本発明でいう断面の幅とは、図1で示したように線香の渦巻きで形成される平面に対して水平な方向をいい、平面に対して垂直な方向を厚さと呼ぶこととする。
また、燃焼速度は前記断面に応じて60分/10cm〜100分/10cmと設計することが望ましい。これにより渦巻外寸と燻煙時間を従来線香と同等程度確保した渦巻線香が得られ、実用性が高い。
こうして本発明品は屋内外問わず広範囲に防除効力を発揮することが可能となった。市販されている従来線香は屋内においては8畳程度、屋外においては線香の近辺が防除可能範囲であるのに対し、本発明品の防除範囲は、屋内外ともに従来比で20倍以上の広空間を実現した。
以下、本発明で用いる蚊取線香について述べる。
蚊取線香は、上記殺虫成分や揮散性薬剤に、必要ならばピペロニルブトキサイドやN−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドのような効力共力剤を加え、更に粘結剤及び線香用基材を混合して製造される。
粘結剤としては、タブ粉、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等があげられ、一方、線香用基材としては、木粉、除虫菊抽出粕粉、柑橘類の表皮粉、ココナッツシェル粉末等の植物性粉末や、木炭粉、素灰などの炭素粉末を例示できる。
なお、線香には、必要により、色素、防腐剤、安定剤、界面活性剤、分散剤、溶剤等が含有されてもよい。色素としては、例えばマラカイトグリーンなどの有機染料があげられ、防腐剤としては、例えばソルビン酸、デヒドロ酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸等の酸、あるいはそれらの塩等が代表的である。
また、安定剤としては、一般に酸化防止剤として知られるジ−t−ブチル−フェノール系安定剤や、前記炭素粉末に対する安定剤としてのポリエチレングリコール等があげられ、特に、沸点が250℃以上のジ−t−ブチル−フェノール系安定剤を添加することは好ましい。かかる安定剤には、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2−ターシャリーブチル−6−(3−ターシャリーブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル 3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
このような安定剤を添加することにより、ピレスロイド系化合物の保存時における経時的な安定性のみならず、従来品よりも太い形状の本発明線香の燻煙時の安定性も著しく増強させ得るものである。安定剤の添加量としては、ピレスロイド化合物に対し、0.01〜0.5倍量を配合するのが好ましい。
界面活性剤や分散剤は、殺虫成分等を含む分散液の調製に適宜用いられ、このようなものとして、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミド等を例示できる。
また、上記分散液の調製に用いる溶剤としては通常、沸点が150〜350℃の飽和炭化水素系溶剤が好適である。
本発明に係わる蚊取線香を調製するにあたっては、公知の製造方法を採用できる。例えば、プレミックス粉(殺虫成分や効力増強剤などを線香用基材の一部に含有させたもの)と残部の線香用基材及び粘結剤を混合したものに水を加えて混練し、続いて、押出機、打抜機によって成型後、乾燥して蚊取線香を製造すればよい。また、粘結剤及び線香用基材のみを用いて成型後、これに殺虫成分等を含む液剤をスプレーあるいは塗布または含浸して製造しても構わない。
次に具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明の蚊取線香を更に詳細に説明するが、本発明はもちろんこれらに限定されない。
試験例1(各種断面積による有効成分の揮散率)
トランスフルトリン0.2部とBHT0.04部を、粘結剤(タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出粕粉)99.76部に均一に混合後、色素、防腐剤を含む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型に成型し、一定の長さに切り風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。この蚊取線香について、殺虫成分の揮散率を測定したところ下記表1の結果を得た。なお、殺虫成分の揮散率は蚊取線香を燻煙させ、揮散した有効成分をトラップして、分析することによって測定した。
表1の考察
市販されている従来の蚊取線香の断面積は20〜25mm2であり、それより大きくなると揮散率に微弱な低下が見られるが、緩やかであった。ただし、80mmを超えると顕著な低下が見られた。結果として従来線香と同等程度の揮散率を確保できる断面積の最適範囲は20〜80mmであった。このことから、蒸気圧の適切な有効成分を選択することで、断面積を増大させても有効成分の揮散率を適正水準に維持できることが示された。なお、本発明の断面積が80mmの蚊取線香につき、BHTを配合しないものについても揮散率を測定したところ62%で、BHTの配合が燻煙時のトランスフルトリンの安定性を向上させ得ることが認められた。
一方、蚊取線香に従来汎用されてきたピナミンフォルテ等を有効成分とする場合には、断面積の増大に伴い揮散率が顕著に低下すると言われており、特許文献2では断面を2倍太くすることで、揮散率が通常時の3分の2まで低下する旨が報告されている。
試験例2(各種断面積による強度)
メトフルトリン0.1部とBHT0.02部を、粘結剤(タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出粕粉)99.88部に均一に混合後、色素、防腐剤を含む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型に成型し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。この蚊取線香について、強度を測定したところ下記表2の結果を得た。なお、強度はフォースゲージ(IMADA電動式計測スタンド、MV−500NII)を用いて、厚み方向に力を加えることにより破断強度を測定して求めた。
表2の考察
市販の従来線香の強度2.3kgfに対して、本発明品は断面積が大きくなるので3倍以上の十分な強度を備えるが、従来品の厚さと幅の比をそのまま適用しても、使い勝手がよく、渦巻外寸と燻煙時間を従来線香と同等程度確保できるものにはならない。そこで本発明に係わる線香の太さに適応した厚さと幅の比の最適領域を探索したところ、その比が1.2〜1.7が良好であることが判った。これにより、屋外に持ち出す上で衝撃にも強いという利点がある。それだけでなく、渦巻線香を使用する分だけ手で折って燻煙することも実用上望まれるので、手で折れる程度の強度を確保する必要がある。そのためには断面積が40mm以上で、かつ幅を厚さより1.2〜1.7倍大きくすることで、強度は向上しつつも簡便に手で折ることができるような、取り扱い上便利な適度な強度を確保することが可能となった。さらに、市販の線香皿にスムーズにセットでき、従来線香と同様に携帯使用も可能で線香皿表面温度も従来品並みである実用上優れた形状であった。
試験例3(各種断面積による煙量)
エムペントリン0.3部とBHT0.02部を、粘結剤(タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出粕粉)99.68部に均一に混合後、防腐剤を含む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型に成型し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。この蚊取線香の煙量を求めたところ下記表3の結果を得た。なお、煙量は透明円筒内(直径19cm、高さ43cm)で線香を所定時間燻煙させ、その後線香を取り出し2分間煙を拡散後、センサー(OMRONスマートセンサー、ZX−LT010透過型センサーヘッド)により、円筒内を通過するレーザー光の受光レベルを検知した。円筒内に何も入れないブランクの表示値と、線香を用いた測定終了時の表示値との差を煙量指数として求めた。表3では、比較例の煙量指数を基準とする相対値で示した。
表3の考察
従来線香の煙量指数に対して、本発明品の煙量は微増程度であり、必要以上に多くなく使いやすい適度な量であった。また、断面積の幅を厚さより1.2〜1.7倍大きくすることで、つまり同じ断面積でも幅を大きくすることで、煙の立ち昇る帯状の幅が大きくなる様子が確認でき、屋外でも煙を認識することが容易であった。
比較例で示した特許文献1に該当する線香は10倍近い煙量となり、燃焼性は高いものの屋内閉鎖空間では瞬時のうちに煙が充満するため使用には適さず、野外においても多量の煙により使用場所が制約される上、作業スペース近辺での使用にはふさわしくなかった。
試験例4(各種断面積による拡散威力)
プロフルトリン0.3部とBHT0.03部を、粘結剤(タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出粕粉)99.67部に均一に混合後、色素、防腐剤を含む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型に成型し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。この蚊取線香について、燃焼時の上昇気流の速度と煙の拡散速度を測定したところ下記表4の結果を得た。なお、上昇気流の速度の測定には、線香の燃焼部分の1cm上方にガラスシリンダ(内径3cm、長さ20cm)を縦向きに設置し、その中を上向きに通過した煙がシリンダのさらに1cm上方に設置した風速計(KANOMAX6004)のセンサー部を通過する速度を測定して求めた。また、煙の拡散速度の測定には、円筒(内径20cm、長さ86cm)を横向きに設置し、その一端に線香を設置してすぐにその一端を締め切り、他端から煙が出てくるまでの時間を測定した。

表4の考察
本発明品の煙の上昇速度は1.4〜1.7倍、また拡散速度は1.8倍向上した。この結果で示されたように、本発明品は煙がすばやく立ち昇り周囲に拡散する様子が目視で観察された。このことから有効成分も同様に広い範囲にすばやく運ばれることが推察された。本発明品は屋外でも使いやすい煙の量で、拡散性に優れたものである。
試験例5(広い空間での防除効力)
トランスフルトリン0.1部とBHT0.02部を、粘結剤(タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出粕粉)99.88部に均一に混合後、防腐剤を含む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型に成型し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。この蚊取線香について、屋外で従来の渦線香と比較して燃焼させ、各線香から風下1mから3mまでの1m刻みの位置に被験者が立ち、10分までに集まってくる蚊の数を数え、コントロール(線香に火をつけていない状態)と比較して飛来抑制率を求め、下記表5の結果を得た。
表5の考察
従来の断面積の蚊取線香では、燻煙した線香の近辺では一定の効果が示されたが、離れていくにつれて防虫効果は低下し、3m以上離れた空間では実用効力は得られなくなった。一方、本発明品では、線香から3m離れた広い空間においても十分な防除効力が示された。本発明品の煙は必要以上に多すぎることはなく、より広い範囲まで効果を示したことから、殺虫成分を効率よく揮散させることで、快適に野外で使用できることが可能となった。
本発明の蚊取線香は、広範な害虫防除分野において須らく利用可能である。

Claims (2)

  1. 燃焼基材と、30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるエムペントリン、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリンから選ばれる少なくとも1つであるピレスロイド系殺虫剤を有効成分として含有し、更に2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)ジ−t−ブチル−フェノール系安定剤として含有した渦巻状の線香であって、その断面積が40〜80mmであって、その断面の幅が厚さより1.2〜1.7倍大きく、前記ジ−t−ブチル−フェノール系安定剤を、前記ピレスロイド系殺虫剤に対して、0.07〜0.2倍量配合した蚊取線香。
  2. 請求項1に記載の蚊取線香を燃焼させ、有効成分を防除必要な空間に揮散させることによって忌避、防虫、殺虫効果を発現させることを特徴とする野外の害虫防除方法。
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