JP5752588B2 - ルテニウム錯体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ルテニウム錯体の製造方法に関する。
従来、色素増感太陽電池にはルテニウム錯体からなる増感色素が用いられている。代表的なルテニウム錯体の一つである、トリチオシアナト(2,2’,6’,2”−ターピリジン−4,4’,4”−トリカルボン酸)ルテニウム(II)のテトラブチルアンモニウム塩(以下、N749と呼ぶ。)の合成方法として、まず原料錯体Ru{(MeO)3tctpy}Cl3をH4NNCSと混合し、130℃で4時間還流してNCS置換反応(ClをNCSへと置換)を行った後、塩基及び水を投入できる温度まで下げて、両者を投入した後24時間還流してメトキシ基(MeO-)の加水分解反応を行い、再び温度を下げて塩基及び水を投入し、更に100℃で72時間攪拌することによって、Ru(H3tctpy)(NCS) 3を合成し、その後テトラブチルアンモニウム塩にする方法が知られている(非特許文献1)。
なお、前記Ru{(MeO)3tctpy}Cl3は、三塩化(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4,4’,4”−トリメトキシカルボニル)ルテニウム(II)を表し、前記Ru(H3tctpy)(NCS) 3は、トリチオシアナト(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4,4’,4”トリカルボン酸)ルテニウム(II)を表す。
N749の従来の合成方法では、上記の通り、NCS置換反応を行った後で、試薬を添加してメトキシ基の加水分解反応を行う、という二段階に分けた反応を行っているため、温度制御、雰囲気制御、試薬の投入などの操作が複雑でコストが嵩むという問題がある。また、加水分解反応が律速となっているため合成に要する時間が長いという問題がある。さらに、反応後に得られるN749の収率が充分ではないという問題がある。収率が充分でない原因について、本発明者が鋭意研究した結果、反応系に酸素が混入することにより、原料であるルテニウム錯体が酸化されることが問題であることを見出した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、反応に係る操作を簡略化して製造コストを抑制し、更に反応時間を短縮しつつも収率を向上できるルテニウム錯体の製造方法の提供を課題とする。
本発明の請求項1に記載のルテニウム錯体の製造方法は、下記化学式(A)で表されるルテニウム錯体の製造方法であって、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3、極性有機溶媒、チオシアン酸塩、塩基及び水を含む全原料を混合し、不活性雰囲気の反応容器内に前記全原料を封入した後、100〜150℃で加熱反応させる工程を有し、前記加熱反応前に反応溶液を脱酸素することを特徴とする。
Figure 0005752588
(式中、Mはカウンターカチオンを表す。)
本発明の製造方法によれば、全原料を反応開始前に一括して反応容器中に封入し、酸素の無い不活性雰囲気下において、NCS置換反応とメトキシ基の加水分解反応とを同時に進行させている。加水分解の反応途中で反応原料を添加することが無いため、反応系に酸素が混入することが殆んど無く、NCS置換されて且つ加水分解が完了していない中間生成物であるRu{(MeO)3tctpy}NCS3が、酸素によって酸化されることを極力防止できるので、ルテニウム錯体の収率を向上させることが可能となる。
また、NCS置換反応とメトキシ基の加水分解反応とを同時に進行させているので、各反応を個別に行う場合よりも、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3からRu(H3tctpy)(NCS) 3及びその塩を得るために要する時間を短縮できる。更に、二つの反応に必要な全原料を予め一括して容器に封入しているので、原料を後から添加する操作が不要であり、製造に係る手間を簡略化でき、製造コストを抑制できる。
一方、従来方法では、反応容器中に不活性ガスを満たし、反応溶液を加熱してNCS置換反応を行った後、反応溶液を一時的に室温まで冷却して、塩基及び水を反応溶液に添加し、その後再び加熱して加水分解反応を行っている。
本発明者は、前記塩基及び水の添加時に、外部から大気が反応容器中へ流入することが従来方法の問題であることを突き止めた。つまり、反応系に酸素が混入すると、NCS置換されて且つ加水分解されてない中間生成物であるRu{(MeO)3tctpy}NCSが酸化されてしまい、ルテニウム錯体の収率が低下してしまうことを見出した。これらの知見に基づき、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明の請求項2に記載のルテニウム錯体の製造方法は、請求項1において、前記加熱反応は、前記トリメトキシカルボニル基が加水分解される温度まで加熱し、その温度で一定に維持して反応させた後、冷却することを特徴とする。
上記製造方法によれば、目的化合物の収率をより向上させることができる。この理由として、(1)一定温度に維持すると、NCS置換反応及び加水分解反応を安定に進行させることが可能、(2)反応系の温度を途中で低下させると、反応容器の圧力が低下して外部から酸素を含む大気が流入する恐れがあるが、一定温度に維持すると、この流入を防止することが可能、の二つが考えられる。
本発明ルテニウム錯体の製造方法は、前記加熱反応における温度が、100〜150℃であ
上記温度範囲の下限値以上とすることによって、反応を効率よく進行させることができる。上記温度範囲の上限値以下とすることによって、不要な分解物の生成を抑制できる。
本発明の請求項に記載のルテニウム錯体の製造方法は、請求項1又は2において、前記加熱反応における反応時間が、20〜80時間であることを特徴とする。
上記反応時間の下限値以上とすることによって、NCS置換反応と加水分解反応の両方を充分に完了できる。上記反応の上限値以下とすることによって、不要な分解物の生成を抑制できる。
本発明の請求項に記載のルテニウム錯体の製造方法は、請求項1〜のいずれか一項において、前記混合の際、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3に代えて又はRu{(MeO)3tctpy}Cl3と共に、2,2’:6’,2”−ターピリジン−4,4’,4”−トリメトキシカルボニル(以下、{(MeO)3tctpy}と略記する。)及び三塩化ルテニウムを混合することを特徴とする。
反応原料として、{(MeO)3tctpy}及び三塩化ルテニウムを混合することによって、反応中にRu{(MeO)3tctpy}カチオンが生成される。このカチオンは、前記混合の際、請求項1のようにRu{(MeO)3tctpy}Cl3を用いた場合にも生成するものであり、請求項1に記載の製法と同様の効果が奏される。
本発明の請求項に記載のルテニウム錯体の製造方法は、請求項1〜のいずれか一項において、前記極性有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であることを特徴とする。
DMFを溶媒として用いることによって、{(MeO)3tctpy}、三塩化ルテニウム、及び前記カチオンが充分に溶解するので、反応をより効率的に進行させて、収率を向上させられる。
本発明の請求項に記載のルテニウム錯体の製造方法は、請求項1〜のいずれか一項において、前記チオシアン酸塩がチオシアン酸テトラブチルアンモニウム(以下、TBANCSと略記することがある。)であることを特徴とする。
TBANCSを用いることによって、前記化学式(A)のMがテトラブチルアンモニウムであるルテニウム錯体(N749)の収率を向上させることができる。
本発明の請求項に記載のルテニウム錯体の製造方法は、請求項1〜のいずれか一項において、前記塩基がトリアルキルアミンであることを特徴とする。
トリアルキルアミンを用いることによって、加水分解反応をより高い効率で進行させられる。
本発明ルテニウム錯体の製造方法は、前記加熱反応前に、反応溶液を脱酸素する。
反応溶液を脱酸素することによって、生成物の収率をより一層向上させることができる。
本発明の製造方法によれば、反応系への酸素の混入を抑制し、反応に係る操作を簡略化して製造コストを抑制でき、更に反応時間を短縮すると共に、ルテニウム錯体の収率を向上させることができる。
本発明の製造方法の概略を示すフローチャートである。 本発明の製造方法の概略を示すフローチャートである。 比較例の概略を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されない。
本明細書及び特許請求の範囲において、特に明記しない限り、前記化学式(A)で表される塩を、単に「ルテニウム錯体」という。
前記化学式式(A)中、M+は各々独立して一価のカウンターカチオンを表す。M+は特に制限されず、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、一般式(a1);N+R1R2R3R4で表される4級アンモニウム、水素イオン(プロトン)等が挙げられる。前記化学式(A)中、3個のM+は一種のカウンターカチオンであっても良いし、二種以上のカウンターカチオンを組み合わせても良い。
前記一般式(a1)中、前記R1, R2, R3, R4はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、炭素原子数2〜6の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素原子数3〜5の直鎖状アルキル基がより好ましい。前記R1, R2, R3, R4は互いに同じであっても異なっていても良い。
本発明にかかるルテニウム錯体の製造方法は、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3、極性有機溶媒、チオシアン酸塩、塩基及び水を含む全原料を混合し、不活性雰囲気の反応容器内に前記全原料を封入した後、加熱反応させる工程を有するものである。
Ru{(MeO)3tctpy}Cl3、極性有機溶媒、チオシアン酸塩、塩基及び水を混合する順序や方法は特に制限されない。例えば一口ナスフラスコに各原料を投入して穏やかに攪拌することによって全体を均一に混合して各試薬を溶解させれば良い。この混合の際、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3の酸化を防ぐために、混合時の温度は室温付近で行うことが好ましい。また、混合及び溶解を窒素ガスやアルゴンガス等で酸素を置換した不活性雰囲気下で行うことが好ましい。更に、反応原料及び混合後に得られた反応溶液は、加熱反応前に予め、アルゴンガスでバブリングを行う等により脱酸素を行うことが好ましい。
Ru{(MeO)3tctpy}Cl3、極性有機溶媒、チオシアン酸塩、塩基及び水の混合比率は特に制限されないが、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3とチオシアン酸塩とは、モル比で1:3〜1:3.5にすることが好ましい。このモル比であると、チオシアン酸塩が反応系に不足無く存在し、NCS置換反応が効率的に進む。
各原料の混合割合の例としては、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3=1g、チオシアン酸塩=3.2gに対して、極性溶媒=80〜160ml、塩基=20〜50ml、水=30〜90ml、が挙げられる。
本発明の製造方法におけるチオシアン酸塩は、NCS置換反応が起こるものであれば特に制限されない。例えば、チオシアン酸テトラブチルアンモニウム(TBANCS)、チオシアン酸アンモニウム等が挙げられる。
チオシアン酸アンモニウムを用いた場合は、前記カウンターカチオンがアンモニウムイオン(NH4 +)であるルテニウム錯体が得られる。
TBANCSを用いた場合は、前記カウンターカチオンがTBAである、下記化学式(B)で表されるルテニウム錯体(N749)が得られる。
Figure 0005752588
このように、原料として添加するチオシアン酸塩のカウンターカチオンを選択することによって、ルテニウム錯体を構成するカウンターカチオン(M+)を選んで調製することができる。また、必要に応じて、前記カウンターカチオンを公知の方法でプロトンに置換することにより、Ru(H3tctpy)(NCS) 3で表される化合物が得られる。
本発明の製造方法によってN749を合成する場合は、より高純度のN749が得られるので、原料のチオシアン酸塩としてTBANCSを用いることが好ましい。
本発明の製造方法における極性有機溶媒は、使用する試薬を溶解でき、不要な副反応を生じないものであれば特に制限されない。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1−ブタノールなどが挙げられる。これらのうち、{(MeO)3tctpy}の溶解性に優れるDMFが好適に用いられる。
本発明の製造方法における塩基は、Ru{(MeO)3tctpy}が有するメトキシ基を水とともに加水分解できるものであれば特に制限されず、例えばトリアルキルアミンが挙げられる。トリアルキルアミンの各アルキル基はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基がより好ましい。本発明の塩基としては、特にトリエチルアミン(NEt3)が好適なものとして例示できる。
Ru{(MeO)3tctpy}Cl3は市販品を用いることができる。また、RuCl3と{(MeO)3tctpy}とをDMF等の溶媒に混合及び加熱することによって得ることもできる。
本発明の製造方法において、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3、極性有機溶媒、チオシアン酸塩、塩基及び水を含む全原料を例えば一口フラスコ内で混合して反応溶液を得て、該反応溶液を不活性雰囲気下で加熱反応させる際の加熱手段は公知の方法が適用できる。例えば、一口フラスコを加熱還流装置に接続し、該一口フラスコをオイルバスで加熱する方法が挙げられる。
また、装置内を窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスでパージすることによって、反応系を不活性雰囲気下とすることができる。更に、反応溶液を脱気することが好ましい。この脱気の方法としては、例えば反応溶液を30分間アルゴンガスでバブリングを行う方法が効果的である。
反応系から充分に酸素を除いた後、反応溶液を加熱することによって、Ru(H3tctpy)(NCS) 3及びその塩を生成する。この反応の一例を以下に示す。
(1)Ru{(MeO)3tctpy}Cl3+3TBANCS → Ru{(MeO)3tctpy}(NCS)3+ 3TBA + 3Cl
(2)Ru{(MeO)3tctpy}(NCS)3+3H2O +DMF→Ru(H3tctpy)(NCS)3+3MeOH +省略
なお、上記(2)の反応を行うことによって、ルテニウムは(III)価から(II)価になると考えられる。この理由としては、DMFにより、還元反応が行われているためと考えられる。
また、酸素によってRu{(MeO)3tctpy}NCSが特に酸化され易い原因として、アニオンの極限構造において負電荷(−)が局在して偏っていることが一因として考えられる。
さらに、上記例ではTBANCSを原料として用いているので反応溶液中にTBAが存在する。このため、以下のようにN749が生成される。
(3)3TBA1+ + [Ru(H3tctpy)(NCS)3] → [2TBA{Ru(Htctpy)(NCS)3}]+ TBA+ + 2H+
上記例と異なり、チオシアン酸塩としてTBANCSを使用せず、例えばH4NNCSを使用した場合は、Ru(H3tctpy)NCS3 + 3NH4 +が得られる。この場合は、アンモニウムをTBAに置換する反応を別途行うことにより、N749が得られる。
したがって、N749を得るために別途TBAを添加する必要が無いので、チオシアン酸塩はTBANCSを用いることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、中間生成物であるRu{(MeO)3tctpy}(NCS)3が生成した後で、塩基及び水を添加する操作が不要であるので、その添加操作時に反応系に混入し易い酸素によって当該中間生成物が酸化されることを防止できる。この結果、不純物となる酸化物が生成されず、Ru{(MeO)3tctpy}(NCS)3のメトキシカルボニル基の加水分解反応、すなわちメトキシカルボニル基中のメトキシ基の加水分解反応、が効率よく進行する。
本発明の製造方法では、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3、前記極性有機溶媒、前記チオシアン酸塩、前記塩基及び水を含む全原料を前記加熱反応の終了まで添加しない。これは、反応開始後、目的生成物の収率が所定値に達する前に、反応原料を添加することはしない、と言い換えられる。
ここで「加熱反応の終了まで添加しない」とは、「加熱による前記加水分解反応及びNCS置換反応の開始後、反応が実質的に終了するまで、追加して添加しない」ことを意味する。これは「当該反応の途中で、追加して添加しない」と言い換えても構わない。
前記加水分解反応が実質的に終了していない段階で反応原料を添加しない理由は、反応途中で反応系に酸素が混入することを極力防止するためである。
なお、反応を終了させる指標としては、反応時間と反応物の収率を予め調べておくことにより、当該反応時間に基づいて判断できる。
次に、溶媒の温度を室温まで下げ、溶媒を除去し、固体とする。溶媒の除去する方法としては、真空引きを行ったり、エバポレーターを用いて行う。
更に、前記固体から不純物を除くことによって、ルテニウム錯体を得る。不純物を除く方法の例としては、まず前記固体をカウンターカチオン(M+)を有するアルカリ溶媒(例えば、TBAOH)に溶かし、酸性溶媒(HNO3)を加え、pHを調整し、再度固体を沈殿させる。この操作により不純物の一部を取り除くことができるが、まだ、不純物として(III)価のルテニウム有している場合がある。これを除くため、次に、この固体をカウンターカチオン(M+)を有するアルカリ溶媒に再び溶かし、この溶液をゲルろ過カラムで精製することで、(III)価のルテニウム錯体を取り除くことができる。その後、酸性溶媒を加え、pHを調整することで固体が沈殿し、粉末状の(II)価のルテニウム錯体を得ることができる。
なお、前記化学式(A)及び前記化学式(B)は、3つのカウンターカチオン(M+)を有するが、錯体中のルテニウムは(II)価であるため、(II)価のルテニウム錯体と一般に呼ばれる。また、前記化学式(A)及び前記化学式(B)において、ルテニウムを含むアニオンは、二つのカルボキシル基が解離して2価の負電荷を帯び、これとは別にさらにアニオン全体で1価の負電荷を帯びているため、アニオン全体として3価の負電荷を有する。
ところで、前記加熱反応は、前記トリメトキシカルボニル基が加水分解される温度まで加熱し、その温度で一定に維持して反応させ後、冷却することが好ましい。この方法(以下、1ステップ反応と呼ぶことがある。)では、反応温度の上昇と下降が各1回となる。
より具体的には、例えば、オイルバス等の加熱手段を用いて、反応溶液を室温から140℃程度まで加熱した後、140℃で一定に維持してNCS置換反応及び加水分解反応を進行させ、加水分解反応が完了したと考えられる時間が経過したら、反応溶液を室温にまで冷却して反応を終了する方法が挙げられる。
なお、加熱装置の性能等の影響により、反応溶液の温度を完全に一定に維持することが不可能な場合もある。この場合は、プラスマイナス3℃未満の変化は、許容範囲として、実質的には一定に維持しているとみなすことができる。
上記1ステップ反応であると、反応溶液の温度変化が生じないので、反応が安定に進行するとともに、反応溶液中に外気が流入することをより一層確実に防止できる。
一方、まずNCS置換反応が効率的に進行する比較的高めの温度(例えば170℃)で反応を進行させ、その後、副生成物の生成を抑制しつつ加水分解反応を安定に行える比較的低めの温度(例えば120℃)に冷却して反応を継続させた場合、冷却に伴う反応容器内部の圧力が低下して、反応容器中に外気が流入する恐れがある。この場合、加水分解が完了する前の前記中間生成物が酸素によって酸化されて、最終生成物の収率の向上が伸び悩む恐れがある。
前記加熱反応における温度は、100〜150℃が好ましく、120〜140℃が特に好ましい。
上記温度範囲の下限値以上とすることによって、反応を効率よく進行させることができる。上記温度範囲の上限値以下とすることによって、不要な分解物の生成を抑制できる。
より詳細には、上記好適な温度範囲のうち、比較的高い温度範囲に設定することにより、NCS置換反応及び加水分解反応を効率よく進行させることができる。また、上記好適な温度範囲のうち、比較的低い温度範囲に設定することにより、反応の律速となりうる加水分解反応を長時間に亘って安定に進行させるとともに、その長時間の反応中に望ましくない分解物等の副生成物が生じることを抑制できる。
前記加熱反応における反応時間は、20〜80時間が好ましく、25〜70時間がより好ましく、30〜60時間が更に好ましい。
上記反応時間の下限値以上とすることによって、NCS置換反応と加水分解反応の両方を充分に完了できる。上記反応の上限値以下とすることによって、不要な分解物の生成を抑制できる。
本発明の製造方法において、反応原料としてRu{(MeO)3tctpy}Cl3に代えて又はRu{(MeO)3tctpy}Cl3と共に、2,2’:6’,2”−ターピリジン−4,4’,4”−トリメトキシカルボニル({(MeO)3tctpy})及び三塩化ルテニウム(RuCl3)を混合しても構わない。
反応の初期段階において、混合した{(MeO)3tctpy}及びRuCl3からRu{(MeO)3tctpy}が生成される。この生成物は、反応原料としてRu{(MeO)3tctpy}Cl3を溶媒中に溶解することによって生成されるものである。
{(MeO)3tctpy}とRuCl3との混合比は、化学量論的観点から、1.5:1〜1:1.5(モル比)が好ましく、1.3:1〜1:1.3(モル比)がより好ましく、1.2:1〜1:1.2(モル比)が更に好ましい。
{(MeO)3tctpy}及びRuCl3とRu{(MeO)3tctpy}Cl3とを併用して混合する場合は、その混合割合は適宜調整される。
本発明の製造方法において、加熱反応前に反応容器中に封入する全原料は、少なくともRu{(MeO)3tctpy}Cl3、極性有機溶媒、チオシアン酸塩、塩基及び水を含むものであり、この他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を加えてもよい。
[実施例1]
図1に示す順序でN749を合成した。
まず、300ml容の一口フラスコに、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3を1150mg、TBANCSを3372mg、DMFを100ml、NEt3を30ml、水を40ml、投入して、穏やかに攪拌して溶解させ、反応溶液を得た。この溶液を30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで酸素を完全に除いた。
続いて、このフラスコをアルゴンで満たされた加熱還流装置に接続し、オイルバスで140℃まで加熱し、140℃で一定に維持して、攪拌しながら36時間反応させた。
次に、室温まで徐々に冷却し、フラスコ内を真空に引いて溶媒を除去した。その後、さらにエバポレーターを用いて、フラスコ内に残った液体成分を完全に除去した。
フラスコの底に乾固したN749を含む固体を水酸化トリブチルアンモニウム(TBAOH)水溶液に溶解して、この水溶液にHNO3水溶液を添加してpH3.5に調整し、4℃で15分間静置して、沈殿させた。
次いで、沈殿した物を吸引ろ過で回収し、更に真空乾燥して、粉末を得た。この粉末を再度TBAOH溶液に溶解して、この水溶液をゲルろ過カラムに通すことで、不純物を除いた。この水溶液にHNO3水溶液を添加してpH3.5に調整し、4℃で15分間静置して、N749を沈殿させた。
次いで、沈殿した物を吸引ろ過で回収し、更に真空乾燥して、粉末状のN749を得た。収率は45%であった。
[実施例2]
図2に示す順序でN749を合成した。すなわち、実施例1と同様に反応溶液を得て、加熱還流装置に設置した後、不活性雰囲気下でオイルバスによって140℃まで加熱して攪拌しながら12時間反応させた後、室温まで徐々に冷却して10時間静置した。続いて、再び140℃まで加熱して攪拌しながら12時間反応させた後、室温まで徐々に冷却して10時間静置した。この加熱と冷却を同様にもう1回繰り返して、合計36時間の反応を行った。その後、N749を回収する方法は実施例1と同様に行った。この結果、回収された粉末状のN749の収率は35%であった。
[比較例1]
図3に示す順序でN749を合成した。
まず、200ml容の四口フラスコに、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3を1150mgを投入し、加熱還流装置を組み立て、反応容器内を真空に引いて脱気し、続いて窒素ガスを導入した。ここに、DMF100mlとTBANCS水溶液20mlとの混合液Aを添加して反応溶液を得た。前記混合液Aは、TBANCS3372mgを、水20mlとDMF100mlを加えた溶液に溶解させて、30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで酸素を予め除去したものである。
続いて、反応装置内を不活性ガスで満たし、オイルバスで120℃まで加熱し、還流させながら8時間反応させた。
次に、室温まで徐々に冷却した後、反応装置を一時的に開放して、NEt330mlと水20mlとの混合液Bを反応溶液に添加して、再び反応装置内を不活性ガスで満たし、オイルバスで140℃まで加熱し、攪拌しながら36時間反応させた。なお、前記混合液Bは、30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで、酸素を予め除去したものである。
次に、室温まで徐々に冷却し、フラスコ内を真空に引いて溶媒を除去した。その後、さらにエバポレーターを用いて、フラスコ内に残った液体成分を完全に除去した。
その後実施例1と同様の方法で、粉末状のN749を得た。収率は28%であった。
[実施例3]
温度を100℃一定に加熱すること以外は、実施例1と同様の方法で粉末状のN749を得た。収率は37%であった。
[実施例4]
温度を150℃一定に加熱すること以外は、実施例1と同様の方法で粉末状のN749を得た。収率は35%であった。
以上から、本発明に係るルテニウム錯体の製造方法は、比較例で示した従来方法に比べて、収率が向上し、反応時間が短縮し、反応に係る操作も簡略化できることが明らかである。
なお、実施例1は反応を一定温度で行っており、実施例2は反応中に温度の変化がある。この反応条件の違いが、実施例1の収率がより向上していることに寄与していることが明らかである。

Claims (7)

  1. 下記化学式(A)で表されるルテニウム錯体の製造方法であって、
    Ru{(MeO)3tctpy}Cl3、極性有機溶媒、チオシアン酸塩、塩基及び水を含む全原料を混合し、不活性雰囲気の反応容器内に前記全原料を封入した後、100〜150℃で加熱反応させる工程を有し、前記加熱反応前に反応溶液を脱酸素することを特徴とするルテニウム錯体の製造方法。
    Figure 0005752588
    (式中、Mはカウンターカチオンを表す。)
    ただし、前記Ru{(MeO)3tctpy}Cl3は、三塩化(2,2’:6’,2”−ターピリジン−4,4’,4”トリメトキシカルボニル)ルテニウム(II)を表す。
  2. 前記加熱反応は、前記トリメトキシカルボニル基が加水分解される温度まで加熱し、その温度で一定に維持して反応させた後、冷却することを特徴とする請求項1に記載のルテニウム錯体の製造方法。
  3. 前記加熱反応における反応時間が、20〜80時間であることを特徴とする請求項1又は2に記載のルテニウム錯体の製造方法。
  4. 前記混合の際、Ru{(MeO)3tctpy}Cl3に代えて又はRu{(MeO)3tctpy}Cl3と共に、
    2,2’:6’,2”−ターピリジン−4,4’,4”−トリメトキシカルボニル及び三塩化ルテニウムを混合することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のルテニウム錯体の製造方法。
  5. 前記極性有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のルテニウム錯体の製造方法。
  6. 前記チオシアン酸塩がチオシアン酸テトラブチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のルテニウム錯体の製造方法。
  7. 前記塩基がトリアルキルアミンであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のルテニウム錯体の製造方法。
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