JP5752472B2 - モデル作成装置、その方法及びそのプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、組成物のモデルを作成するモデル作成装置、その方法及びそのプログラムに関するものである。
従来より、タイヤの材料に用いられる組成物に関して、有限要素法を用いた数値解析を行うためのモデルを作成する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
このモデルを作成する場合には、組成物を、フィラー領域とマトリックス領域に分割している。ところが、このモデルを作成する場合に、フィラー領域とマトリックス領域以外に、フィラー領域に隣接する界面領域を設定する必要がある。各特許文献においては、この界面領域を設定する場合には、例えばフィラー領域を連続して取り囲み、かつ、薄い厚さで設定される。
特開2005−121535号公報 特開2008−122154号公報 特開2009−3747号公報 特開2009−216612号公報 特開2010−205165号公報
しかし、上記のような従来技術の界面領域の設定方法では、界面領域の境界を一義的に設定できない場合があるという問題点があった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、界面領域の境界を一義的に設定することができるモデル作成装置、その方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
本発明は、第1材料と第2材料を含んだ組成物の入力画像を入力する入力部と、前記入力画像から前記第1材料の第1材料領域と前記第2材料の第2材料領域とに分けられた初期モデルを作成する初期モデル作成部と、前記第1材料領域と前記第2材料領域の境界線を表す境界点列群を作成する境界作成部と、前記初期モデルの全領域に関して、前記有限要素法に用いる複数の要素に分割する分割部と、前記各要素の重心点を求める重心点計算部と、前記各重心点が、前記第1材料領域に含まれるか、又は、前記第2材料領域に含まれるかを識別する識別部と、(1)前記各要素の前記重心点と最短距離にある前記境界点列群の中の境界点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記要素毎に計算し、(2)前記最短距離の値に関して前記重心点が前記第1材料領域に含まれるか否かでプラス又はマイナスを付加する関数計算部と、前記第1材料領域の外側であって、前記境界線から所定の距離にある等位線を、前記レベルセット関数の値を用いて計算する等位線計算部と、前記境界線と前記等位線との間の領域を、前記第1材料と前記第2材料との界面領域であると決定する決定部と、を有することを特徴とするモデル作成装置である。
本発明によれば、レベルセット関数を用いた等位線によって界面領域の境界を設定できる。
第1の実施形態を示す解析装置のブロック図である。 初期モデル作成部のブロック図である。 モデル作成装置のフローチャートである。 二値化画像の図である。 ぼかし画像の図である。 スプライン曲線を用いて平滑化するための説明図である。 平滑化画像の図である。 界面領域設定部のブロック図である。 界面領域設定部のフローチャートである。 初期モデルのに境界線及び要素を付加した状態の図である。 レベルセット関数を説明する図である。 −5nmの等位線を求める図である。 バウンドラバー領域を求めたモデルの図である。 解析部のブロック図である。 解析部のフローチャートである。 材料物性関数E(r)を説明する図である。 材料物性関数E(r)を示すグラフである。 材料物性関数E(r)を示すグラフの変更例である。 第2の実施形態において、等高線を表したモデルである。 等高線を表したモデルの第1の変更例である。 等高線を表したモデルの第2の変更例である。 等高線を表したモデルの第3の変更例である。
以下、本発明の一実施形態の解析装置10について図面に基づいて説明する。
以下、本発明の第1の実施形態の解析装置10について図1〜図18に基づいて説明する。
本実施形態の解析装置10は、タイヤの材料の組成物であるフィラーが配合されたゴム(例えば、カーボン補強ゴム)に関して、有限要素法を用いて数値解析する装置である。
(1)定義
「フィラー」とは、ゴム組成物中で顕微鏡等で観察可能な大きさ並びに識別可能な界面を有する微粒子又は領域として均一分散可能な成分が存在していればよく、ゴム用添加剤として好適に用いられる充填剤に留まらず、ゴムブレンド中の各ゴム成分のドメインも「フィラー」としてモデル化できる。
組成物への充填剤は特に限定されないが、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、等の無機酸化物、クレー、マイカ等の天然鉱物粒子、ポリマーゲル、竹炭等の炭化物、ポリエチレン、フェノール樹脂等の合成樹脂粒子、もしくは、胡桃、リグニン等の天然物の粉砕品が挙げられる。また、本実施形態でモデル化可能なゴムも特に限定されないが、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のジエン系ゴム、ブチルゴム(IIR)、及びハロゲン化ブチルゴム(XIIR)のいすれかの2種類以上のブレンドが特に好ましい。
これらの組成物は、例えば天然ゴム/ブタジエンゴム/カーボン/ポリマーゲル組成物のように通常複数のゴム成分、又は、添加剤を含む前記ゴム成分が、各成分の大きさ、分散条件、及び解析目的に応じて、「フィラー」としてモデル化する成分を適宜選択できる。
例えば、前記組成物の場合、ポリマーゲルよりもカーボンが十分に小さく、かつカーボンがゴム領域にのみ分散しているときは、ポリマーゲルをフィラーとして選択し、残りのゴム成分並びにカーボンをマトリックスとしてモデル化する。逆に、ポリマーゲルの方が小さい場合には、カーボンをフィラーとして選択し、ゴム成分並びにポリマーゲルをマトリックスとしてモデル化してもよい。更にはゴム成分同士の分散状態を解析したい場合には、カーボンやポリマーゲルではなく、天然ゴムもしくはブタジエンゴムの一方をフィラーに選択し、他方をカーボン、ポリマーゲルと共にマトリックスとしてモデル化してもよい。
「有限要素法」とは、数値解析の手法のうち、有限の境界で閉じられた面領域又は空間領域を有限の部分領域にメッシュ分割し,メッシュ分割によって作成された対象を微小で単純な要素の集合体とみなして、各要素に分割して要素毎の解析を行い、全体の挙動の近似値を求める手法のことである。
そして、本実施形態におけるモデルは、上記したようにタイヤに使用されるゴムをフィラーで補強したモデルを用いる。このモデルにおいて、フィラー領域Fは第1材料領域(補強材料領域)、ゴム領域Gは、上記で説明したマトリックス領域である第2材料領域(被補強材料領域)、バウンドラバー領域Bは界面領域にそれぞれ対応する。
なお、バウンドラバー領域Bはゴム領域Gの一部であり、フィラー領域Fの周囲を取り囲む部分である。バウンドラバー領域Bは、材料物性関数Eによりゴム単体と異なる物性値が付与されるゴム領域Gの一部であり、この部分は、ゴム領域Gの他の部分と区分される。
(2)解析装置10の構成
本実施形態の解析装置10について図1に基づいて説明する。図1は、解析装置10のブロック図である。
図1に示すように、解析装置10は、初期モデル作成部20、界面領域設定部30、解析部40、出力部50を有する。初期モデル作成部20、界面領域設定部30によって、有限要素法を用いて数値解析されるモデルを作成するモデル作成装置が構成される。
なお、この解析装置10は、例えば、マウスとキーボードを有する汎用のコンピュータを基本ハードウェアとして用いることでも実現することが可能である。すなわち、初期モデル作成部20、界面領域設定部30、解析部40、出力部50は、上記のコンピュータに搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することができる。このとき、解析装置10は、上記のプログラムをコンピュータに予めインストールすることで実現してもよいし、CD−ROM等の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して上記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータに適宜インストールすることで実現してもよい。
以下、各部20〜50の構成と機能について順番に説明する。
(3)初期モデル作成部20の構成
初期モデル作成部20の構成について図2を用いて説明する。図2は、初期モデル作成部20のブロック図である。
図2に示すように、初期モデル作成部20は、入力部202、二値化部204、ぼかし部206、エッジ検出部208、点設定部210、平滑化部212、領域設定部214を有している。
なお、「初期モデル」とは、フィラー領域Fとゴム領域Gからなる2次元のモデルを意味し、界面領域であるバウンドラバー領域Bが、まだ設定されていない。
(4)入力部202
まず、入力部202について説明する。
入力部202は、マトリックスとフィラーを含んだ組成物の2次元の入力画像を取得する。例えば、組成物であるカーボン補強ゴムを、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、以下、「TEM」という)で撮影した透過断面像が入力画像として入力される。TEMは、マトリックス中にカーボンが分散配置(3次元的配置)されたカーボン補強ゴムから100nm程度の厚さ部分の透過断面画像を撮影する。なお、一般的に透過断面画像は、目的のフィラーの大きさの100倍以下で撮影するが、この程度の大きさでは均一分散していないことが多く、撮影箇所によって画像中のフィラー面積比率は変動する。このため、実際のフィラー体積比率と同程度の面積比率となる画像を選択することが必要となる。例えば、体積比率が40%のカーボン補強ゴムの場合は、面積比率が36〜44%の画像を選択してモデル化を行うのが好ましい。
しかしながら、この入力画像の取得方法は、カーボンの輪郭が画像として明瞭に得られれば、特にどのような方法であってもよい。
次に、入力部202が取得する入力画像は、TEMからデジタルデータとして直接取り込んでもよいが、写真撮影した後、その全部又はその一部をイメージスキャナー等でラスタースキャンして読み込み、必要な領域をデジタル化してデジタル入力画像を作成する方法でもよい。
(5)二値化部204
次に、二値化部204について図4に基づいて説明する。
二値化部204が、デジタル入力画像に対し予め定めた基準値に基づいて二値化を行い、二値化画像(図4参照)を作成する。
(6)ぼかし部206
次に、ぼかし部206について図5に基づいて説明する。
ぼかし部206は、二値化画像に対しぼかし処理を行ってばかし画像(図5参照)を作成する。このぼかし処理を行うことにより、小さく不要なフィラーと界面の細かく粗い部分を除去できる。
二値化画像をぼかす方法としては、ガウシアンフィルターで処理したり、二値化画像をフーリエ変換して高周波成分を取り除き、その後に逆フーリエ変換を行ってぼかす方法がある。ガウシアンフィルターで処理する場合は、フィルターの半径ぼかし幅を予め不要と決めたフィラーの大きさ程度とし、フーリエ変換して高周波成分を取り除く場合には、予め不要と決めたフィラーの大きさに相当する周波数以上を取り除くのが好ましい。
(7)エッジ検出部208
次に、エッジ検出部208について説明する。
エッジ検出部208は、ぼかし画像に写っているエッジを検出してエッジ画像を作成する。このエッジが、フィラー領域を囲む界面となる。エッジの検出方法としては、例えば、二値化されたぼかし画像の各画素の輝度が、周囲の画素の輝度と閾値以上に変化する部分をエッジとして検出する。
(8)点設定部210
次に、点設定部210について説明する。
点設定部210は、エッジ画像において、エッジ上に複数の境界点を設定する。
この境界点の設定が重要であり、境界点の間隔が広いとフィラー領域の形状が平滑になりすぎ、逆に、境界点の間隔が狭いとフィラー領域の形状が細かくなりすぎる。そのため、境界点の設定方法としては、例えば、ユーザーがマウス等によって人為的に設定してもよく、また、エッジ上の所定距離毎に境界点を発生させてもよい。この設定する規則としては、例えば、体積比率が40%のカーボン補強ゴムの入力画像をモデル化に使用した場合は、点設定後の面積比率が36〜44%程度の範囲に収まるように、境界点を設定していくことが好ましい。
(9)平滑化部212
次に、平滑化部212について図6に基づいて説明する。
平滑化部212は、図6に示すように、エッジ画像におけるエッジ上にある複数の境界点を、多項式で表される少なくとも一つの平滑化曲線で結ぶことにより平滑化エッジを形成した図7に示すような平滑化画像を作成する。
前記平滑化曲線は微分可能であれば特に限定されないが、n次スプライン曲線、B−スプライン曲線、ベジェ曲線、又は、指定した境界点を通るように多項式補間で作成された曲線のいずれかを用いることが好ましい。このn次スプライン曲線を用いた場合は、図6に示すように、ある区間に存在する複数の境界点を結んで平滑化エッジを作成するものであり、区間毎にそれぞれn次のスプライン曲線を作成する。なお、このときnは、n=1,2,3,・・・の自然数のうち任意の数値を表す。また、多項式補間で作成される曲線を用いる場合には、ニュートン補間、ラグランジュ補間等で補間することが好ましい。
(10)領域設定部214
次に、領域設定部214について説明する。
領域設定部214は、平滑化画像中の平滑化エッジの内側領域を、フィラー領域として設定する。
フィラー領域の設定は、ユーザーが平滑化画像上の領域をマウス等で指定して設定してもよく、また、閉領域を領域設定部214が判定して、その判定した領域をフィラー領域として設定してもよい。そして、領域設定部214はフィラー領域以外をマトリックス領域に設定する。逆に、マトリックス領域を先に設定し、それ以外の領域をフィラー領域に設定してもよい。
領域設定部214は、フィラー領域とマトリックス領域が設定された初期モデルを、界面領域設定部30に出力する。
(11)初期モデル作成部20の動作状態
次に、初期モデル作成部20の動作状態について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS1において、入力部202が、TEMから透過断面画像を入力画像として取得した後にデジタル化してデジタル入力画像を作成する。
ステップS2において、二値化部204が、デジタル入力画像を二値化して二値化画像を作成する。
ステップS3において、ぼかし部206が、二値化画像をぼかしてぼかし画像を作成する。
ステップS4において、エッジ検出部208が、ぼかし画像上のエッジを検出してエッジ画像を作成する。
ステップS5において、点設定部210が、エッジ画像におけるエッジ上に複数の境界点を設定する。
ステップS6において、平滑化部212は、エッジ画像における複数の境界点を多項式で表される少なくとも一つの平滑化曲線で結び平滑化して、平滑化画像を作成する。
ステップS7において、領域設定部214が、平滑化画像について、フィラー領域及びマトリックス領域を設定して、初期モデルを作成する。
ステップS8において、領域設定部214は、界面領域設定部30に初期モデルを出力する。
(12)界面領域設定部30
次に、界面領域設定部30について、図8〜図13に基づいて説明する。
界面領域設定部30は、初期モデル作成部20によって作成されたフィラー領域Fとゴム領域Gからなる初期モデルに対し界面領域を設定する。
なお、初期モデル作成部20において作成された初期モデルは図7に示すようなものであったが、この構造は複雑であるため、説明を判り易くするために、以下では図10に示すような初期モデルにおいて説明する。
図10に示す初期モデルは、5個のフィラー領域F1〜F5よりなり、各フィラー領域F1〜F5は、ほぼ円形とする。また、この初期モデルにおいて、横軸をx軸、縦軸をy軸とからなる直交座標系を設定している。
界面領域設定部30は、図8のブロック図に示すように、境界作成部302、分割部304、重心点計算部306、識別部308、関数計算部310、等位線計算部312、決定部314とを有する。
以下、各部302〜314の機能について説明する。
(13)境界作成部302
まず、境界作成部302について説明する。
境界作成部302は、図10における初期モデルにおいて、フィラー領域Fとゴム領域Gとの間の境界線に沿って、境界点の点列群を作成する。この境界点の設定方法は、点設定部210と同様に、ユーザーがマウス等によって人為的に設定してもよく、また、エッジ上の所定距離毎に境界点を発生させてもよい。各境界点は、直交座標系において(x,y)で表される。
(14)分割部304
次に、分割部304について説明する。
分割部304は、初期モデルに関して、有限要素法に用いられる複数の要素からなるメッシュ状に分割する。この分割は、境界作成部302における境界点の作成の後に行ってもよく、また、同時に行ってもよく、また、境界点を作成する前に行ってもよい。
メッシュ状に分割された各要素の形状は、例えば三角形又は四角形が好ましい。また、各要素の大きさは、数値解析の目的などに応じて予め好ましい範囲を定め、その範囲内に収まるようにする。なお、以下の説明では各要素は格子状、すなわち、正方形を成している。
(15)重心点計算部306
次に、重心点計算部306について説明する。
重心点計算部306は、上記のようにして分割した各要素の重心点の座標位置を求める。各要素は、上記したように正方形であるため各要素の中心点の座標を、重心点の座標とする。
(16)識別部308
次に、識別部308について説明する。
識別部308は、初期モデルの各要素の重心点が、フィラー領域Fに含まれているか否かを識別する。この識別方法としては、ユーザー自身が行ってもよく、また、アプリケーションを用いてフィラー領域F(閉領域)内部にある場合には、その要素にフラグを立て、フィラー領域Fより外側にある場合にはフラグを立てないなどの方法を行う。
(17)関数計算部310
次に、関数計算部310について説明する。
関数計算部310は、要素毎にレベルセット関数φを計算する。まず、レベルセット関数φとは、図11に示すように、各要素の重心点Pと最短距離にある境界点Qを求め、これら点Pと点Qの間の最短距離を求める関数である。このレベルセット関数φについて更に詳しく説明する。
レベルセット関数φは、各要素で値を持ち、その評価点を要素の中心点(重心点)Pと設定し、その重心点の位置ベクトルをP=(xP,yP)とすると、レベルセット関数はφ(P)で表される。任意の要素における中心点(重心点)の位置ベクトルP(xP,yP)と、境界線を表す境界点の中で、位置ベクトルPに対して最短距離にある境界点の位置ベクトルをQ=(xQ,yQ)とすると、重心点Pにおけるレベルセット関数φ(P)は、次の式(1)で表せる。
そこで、関数計算部310は、式(1)を用いて、要素毎にレベルセット関数φ(P)を計算する。
次に、関数計算部310は、要素毎に求めたレベルセット関数φ(P)を評価する。レベルセット関数φ(P)を評価するとは、レベルセット関数φ(P)が求めた最短距離に+又は−の符号を付加することである。このレベルセット関数φ(P)で表される最短距離の符号は、フィラー領域F(閉領域)の内側又は外側にあるかを示す。
識別部308において、各要素の重心点がフィラー領域Fの内側又は外側にあるかを示しているため、要素の重心点Pがフィラー領域Fの外側にあれば、レベルセット関数φ(P)で求めた最短距離の符号に−を付加し、フィラー領域Fの内側にあれば+の符号を付加する。
(18)等位線計算部312
次に、等位線計算部312について図12に基づいて説明する。
図12には、各要素の重心点Pを結んだ仮想要素を示し、仮想要素の各節点は、要素における中心点(重心点)Pを示している。この仮想要素の辺を構成する節点に、関数計算部310で求めたレベルセット関数φ(P)の値が格納されている。但し、Pは各節点(重心点)における位置ベクトルである。
このレベルセット関数φ(P)に基づいて、フィラー領域Fの外側であって、境界線から所定の距離にある等位線を計算する。この等位線の厚みが、バウンドラバー領域Bの厚みとなる。そのため、このバウンドラバー領域Bの厚みは、1nm〜20nmであり、好ましくは5nm〜10nmである。例えば、−5nmの等位線を作成する。符号がマイナスの理由は、フィラー領域Fの外側において、レベルセット関数φの符号をマイナスと設定しているからである。
等位線計算部312は、レベルセット関数φが、−5nmの近傍の値をとる節点を求める。そして、求めた2つの節点に関して、レベルセット関数φの値で内分した−5nmの位置をそれぞれ求め、それぞれを線で結んで−5nmの等位線を求める。例えば図12において、−4.6nmの値を持つ節点と、−5.4nmの値を持つ節点とを選び出し、この2つの値を内分して、−5nmの位置を辺上に決定する。
(19)決定部314
次に、決定部314について図13に基づいて説明する。
決定部314は、フィラー領域Fの境界線と、上記のようにして求めた等位線との間の領域をバウンドラバー領域B(界面領域)に設定する。例えば、図13に示すフィラー領域Fの外側のハッチングの領域がバウンドラバー領域B(界面領域)である。これによって、数値解析に用いるモデルが完成するので、決定部314は、解析部40に出力する。
決定部314は、図13に示すように、フィラー領域F3とフィラー領域F5とが接近して界面領域が重なってはいるが、レベルセット関数から求めた等位線を用いているので、1つの要素において1つのレベルセット関数しか存在せず、このような重複した部分においてもバウンドラバー領域B(界面領域)の範囲を一義的に決定できる。
(20)界面領域設定部30の動作状態
次に、界面領域設定部30の動作状態について、図9のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS11において、境界作成部302がフィラー領域Fとゴム領域Gとの間の境界線上に境界点の点列群を作成する。そしてステップS12に進む。
ステップS12において、分割部304が、初期モデルの全領域に関して、有限要素法に用いる要素に分割する。そしてステップS13に進む。
ステップS13において、重心点計算部306は、分割された各要素の重心点の座標値を求める。そしてステップS14に進む。
ステップS14において、識別部308は、各要素の重心点が、フィラー領域Fに含まれているか否かを識別し、含まれている場合にはフラグを立て、含まれていない場合にはフラグを立てない。そしてステップS15に進む。
ステップS15において、関数計算部310は、各要素の重心点に関してレベルセット関数φを計算すると共に、レベルセット関数φの値に符号を付けて評価する。そしてステップS16に進む。
ステップS16において、等位線計算部312が、フィラー領域Fの外側であって、境界線から所定の距離にある等位線を計算する。そしてステップS17に進む。
ステップS17において、決定部314は、境界線と等位線との間の領域をバウンドラバー領域B(界面領域)として決定し、解析部40に出力する。
(21)解析部40
次に、解析部40について図13〜図18に基づいて説明する。
解析部40は、上記のようにして作成されたモデルを用いてタイヤの組成物の数値解析を行う。解析部40は、第1代表点設定部402、第2代表点設定部404、付与部406、数値解析部408とを有する。
以下、各部402〜408の機能について説明する。
(22)領域代表点設定部402
まず、領域代表点設定部402について、図13に基づいて説明する。
領域代表点設定部402は、モデルにおけるフィラー領域Fの位置を代表する領域代表点を設定する。例えば、領域代表点設定部402は、図13に示すように、5つのフィラー領域F毎に、その中心点を領域代表点O1、・・・O5としてそれぞれ設定する。ここで、フィラー領域Fの中心点はその重心点である。この領域代表点は、ユーザがマウス等からの入力により定めてもよく、円形のフィラー領域の中心点の座標を計算で求めてもよい。
(23)要素代表点設定部404
次に、要素代表点設定部404について説明する。
要素代表点設定部404は、モデル内のバウンドラバー領域Bとゴム領域Gとフィラー領域Fの各要素に、要素代表点をそれぞれ設定する。ここで、要素代表点は、バウンドラバー領域Bとゴム領域Gとフィラー領域Fとに含まれる要素の位置を要素毎に代表する点である。要素代表点設定部404は、各要素の重心点、又は、要素の積分点を要素代表点と定める。積分点は、ガウス積分点であり、要素内の数値解析における計算結果の算出点とされるものであり、節点と共に用いて要素内の応力や歪等の物理量の勾配を定めることのできる、要素に応じて設定される点である。
(24)付与部406
次に、付与部406について図16、図17に基づいて説明する。
付与部406は、領域代表点設定部402が設定した領域代表点及び要素代表点設定部404が設定した要素代表点を用い、材料物性関数E(r)によって各要素の材料物性を表わす物性値を作成し、次に、物性値を各要素に付与する。
ここで、ユーザーは、フィラー領域Fにおける物性値E0と、ゴム領域Gにおける物性値E1とを、付与部406にマウス等から入力する。また、ユーザーは、図16に示すように、フィラー領域Fの領域代表点(中心点)Oからフィラー領域Fの外側(バウンドラバー領域Bの内側)の境界までの距離r1と、フィラー領域Fの領域代表点(中心点)Oからゴム領域G(バウンドラバー領域Bの外側)の境界までの距離r2を付与部406に入力するか、又は、付与部406が、距離r1,r2を計算で求める。なお、物性値E0、E1は、例えば、ヤング率を表し、さらに詳しくは縦弾性特性値、横弾性特性値、剪断弾性特性値、粘弾性特性、超弾性ポテンシャルに基づく物性値を用いる。また、物性値は異なる2つ以上の物性値であってもよく、例えば、上記いずれか1つの弾性率特性値と粘弾性特性値との2つの物性値でを用いてもよい。これにより、ゴム材料の力学特性の予想精度が高まる。さらに、rは、フィラー領域Fの領域代表点(重心点)Oから要素の要素代表点までの距離である。
付与部406は、図17に示すように、材料物性関数E(r)として、フィラー領域F(但し、0<=r<r1である)ではE(r)=E0、ゴム領域G(但し、r2<=r<∞である)ではE(r)=E1と設定し、バウンドラバー領域Bにおいては、フィラー領域Fの領域代表点(重心点)Oから離れるにしたがって、フィラー領域Fの物性値E0からゴム領域Gの物性値E1に変化するように設定する。次に、付与部406は、材料物性関数E(r)に基づいて、各要素の要素代表点の物性値をそれぞれ計算する。次に、付与部406は、要素代表点におけるそれぞれの物性値を各要素に付与する。この各要素に付与される物性値が、数値解析部408が行なう数値解析に用いられる。
なお、図17に示すように、バウンドラバー領域Bにおいて材料物性関数E(r)が、指数関数的に減少するような関数であってもよいが、図18に示すように、直線的に減少する関数であってもよい。この場合の材料物性関数E(r)は、境界点からのレベルセット関数φの値を用いることによって実現できる。
(25)数値解析部408
次に、数値解析部408について説明する。
数値解析部408は、各要素の要素代表点に物性値が付与されたモデルに関して数値解析を行う。すなわち、モデルに対し境界条件を与えて数値解析を行い、バウンドラバー領域Bとゴム領域Gとフィラー領域Fとを含む組成物の力学特性を取得する。境界条件としては、例えば、図13に示すモデルのx方向への1軸伸長による25%の歪、又は、モデルの対向する2辺上の対応する2点における相対変位を許容する周期対称条件などである。
なお、この数値解析は、ユーザーが希望に応じて各要素に境界条件を与えて、数値解析するればよい。
(26)解析部40の動作状態
次に、解析部40の動作状態について、図15のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS21において、領域代表点設定部402が、界面領域設定部30で作成されたモデルのフィラー領域F内に領域代表点Oを設定する。そして、ステップS21に進む。
ステップS22において、要素代表点設定部404が、フィラー領域F、ゴム領域G、バウンドラバー領域Bにおける各要素の要素代表点を設定する。そしてステップS23に進む。
ステップS23において、付与部406が、領域代表点設定部402が設定した領域代表点及び要素代表点設定部404が設定した要素代表点を用い、モデル内の要素の材料物性を表す物性値を、材料物性関数E(r)から計算し、各要素に物性値を付与する。そしてステップS24に進む。
ステップS24において、数値解析部408が、物性値が付与されたモデルに対し、境界条件を与えて、数値解析を行い、バウンドラバー領域Bとゴム領域Gとフィラー領域Fとからなる組成物の力学特性が取得し、その結果を出力部50に出力する。
(27)出力部50
次に、出力部50について説明する。
出力部50は、解析部40によって求められたモデルの数値解析の結果を、ディスプレイ、又は、プリンタによって出力する。
(28)効果
本実施形態によれば、フィラー領域の境界からレベルセット関数を用いて等位線を求め、この等位線をバウンドラバー領域(界面領域)の境界とすると、2個のフィラー領域とフィラー領域の界面領域が重なっていても、レベルセット関数φは、1つの要素において1つしか存在しないため、重複した部分においてもバウンドラバー領域B(界面領域)の範囲は一義的に決定できる。すなわち、重複部分における要素のレベルセット関数は一つしか存在しないため、バウンドラバー領域B(界面領域)の範囲は一義的に決定できる。
以下、第2の実施形態の解析装置10について図19〜図22に基づいて説明する。
本実施形態と第1の実施形態の異なる点は、界面領域設定部30にある。
第1の実施形態における界面領域設定部30では、バウンドラバー領域Bの厚さに応じた距離の等位線を求めた。
しかし、本実施形態では、図19に示すように、界面領域設定部30が、例えば1nm単位毎に等位線を設定し、等高線のように設定し、各等位線に基づいて数値解析をそれぞれ行い、その数値解析の結果が、実際の組成物の動向と最も近い等位線を、バウンドラバー領域Bの外側の境界線と定める。なお、図19中のフィラー領域Fは黒色の領域で示し、バウンドラバー領域Bは灰色の領域で示す。
本実施形態であれば、バウンドラバー領域Bを正確に求めることができる。
また、図20は、等高線を描いた第1の変更例であり、接近したフィラー領域が3個配置されたモデルの場合であって、このモデルにレベルセット関数の等高線を描いたものである。
また、図21は、等高線を描いた第2の変更例であり、離れた2個のフィラー領域のモデルの場合であって、このモデルにレベルセット関数の等高線を描いたものである。
また、図22は、等高線を描いた第3の変更例であり、接近した2個のフィラー領域と離れた2個のフィラー領域が2個配置されたモデルの場合であって、このモデルにレベルセット関数の等高線を描いたものである。
第1の変更例から第3の変更例の何れの場合であっても、バウンドラバー領域Bを正確に求めることができる。
変更例
上記実施形態では、被第1材料としてマトリックスゴムを想定しているが、この他マトリックス樹脂等であってもよい。
上記実施形態では、2次元のモデルで説明したが、3次元のモデルでも同様に適応できる。
また、解析部40が行うタイヤの組成物の数値解析は、上記実施形態で説明した数値解析の方法以外の方法を適応してもよい。
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 解析装置
20 初期モデル作成部
30 界面領域設定部
40 解析部
50 出力部
202 入力部
204 二値化部
206 ぼかし部
208 エッジ検出部
210 点設定部
212 平滑化部
214 領域設定部
302 境界作成部
304 分割部
306 重心点計算部
308 識別部
310 関数計算部
312 等位線計算部
314 決定部
402 領域代表点設定部
404 要素代表点設定部
406 付与部
408 数値解析部

Claims (7)

  1. 第1材料と第2材料を含んだ組成物の入力画像を入力する入力部と、
    前記入力画像から前記第1材料の第1材料領域と前記第2材料の第2材料領域とに分けられた初期モデルを作成する初期モデル作成部と、
    前記第1材料領域と前記第2材料領域の境界線を表す境界点列群を作成する境界作成部と、
    前記初期モデルの全領域に関して、前記有限要素法に用いる複数の要素に分割する分割部と、
    前記各要素の重心点を求める重心点計算部と、
    前記各重心点が、前記第1材料領域に含まれるか、又は、前記第2材料領域に含まれるかを識別する識別部と、
    (1)前記各要素の前記重心点と最短距離にある前記境界点列群の中の境界点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記要素毎に計算し、(2)前記最短距離の値に関して前記重心点が前記第1材料領域に含まれるか否かでプラス又はマイナスを付加する関数計算部と、
    前記第1材料領域の外側であって、前記境界線から所定の距離にある等位線を、前記レベルセット関数の値を用いて計算する等位線計算部と、
    前記境界線と前記等位線との間の領域を、前記第1材料と前記第2材料との界面領域であると決定する決定部と、
    を有することを特徴とするモデル作成装置。
  2. 前記等位線計算部における前記所定距離が、前記界面領域の厚みである、
    ことを特徴とする請求項1に記載のモデル作成装置。
  3. 前記等位線計算部は、前記等位線を所定距離毎に複数計算し、等高線状に求める、
    ことを特徴とする請求項1に記載のモデル作成装置。
  4. 前記第1材料がフィラーであり、前記第2材料がマトリックスである、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
  5. 前記組成物がタイヤの材料であり、前記第1材料がフィラーであり、前記第2材料がゴムであり、前記界面領域がバウンドラバー領域である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
  6. 入力部が、第1材料と第2材料を含んだ組成物の入力画像を入力し、
    初期モデル作成部が、前記入力画像から前記第1材料の第1材料領域と前記第2材料の第2材料領域とに分けられた初期モデルを作成し、
    境界作成部が、前記第1材料領域と前記第2材料領域の境界線を表す境界点列群を作成し、
    分割部が、前記初期モデルの全領域に関して、前記有限要素法に用いる複数の要素に分割し、
    重心点計算部が、前記各要素の重心点を求め、
    識別部が、前記各重心点が、前記第1材料領域に含まれるか、又は、前記第2材料領域に含まれるかを識別し、
    関数計算部が、(1)前記各要素の前記重心点と最短距離にある前記境界点列群の中の境界点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記要素毎に計算し、(2)前記最短距離の値に関して前記重心点が前記第1材料領域に含まれるか否かでプラス又はマイナスを付加し、
    等位線計算部が、前記第1材料領域の外側であって、前記境界線から所定の距離にある等位線を、前記レベルセット関数の値を用いて計算し、
    決定部が、前記境界線と前記等位線との間の領域を、前記第1材料と前記第2材料との界面領域であると決定する
    ことを特徴とするモデル作成方法。
  7. コンピュータに、
    第1材料と第2材料を含んだ組成物の入力画像を入力する入力機能と、
    前記入力画像から前記第1材料の第1材料領域と前記第2材料の第2材料領域とに分けられた初期モデルを作成する初期モデル作成機能と、
    前記第1材料領域と前記第2材料領域の境界線を表す境界点列群を作成する境界作成機能と、
    前記初期モデルの全領域に関して、前記有限要素法に用いる複数の要素に分割する分割機能と、
    前記各要素の重心点を求める重心点計算機能と、
    前記各重心点が、前記第1材料領域に含まれるか、又は、前記第2材料領域に含まれるかを識別する識別機能と、
    (1)前記各要素の前記重心点と最短距離にある前記境界点列群の中の境界点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記要素毎に計算し、(2)前記最短距離の値に関して前記重心点が前記第1材料領域に含まれるか否かでプラス又はマイナスを付加する関数計算機能と、
    前記第1材料領域の外側であって、前記境界線から所定の距離にある等位線を、前記レベルセット関数の値を用いて計算する等位線計算機能と、
    前記境界線と前記等位線との間の領域を、前記第1材料と前記第2材料との界面領域であると決定する決定機能と、
    を実現させるためのモデル作成プログラム。
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