JP5750746B1 - チップソー - Google Patents

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Abstract

【課題】チップの固定性や強度が高く切削性能の良い、チップ着脱交換式チップソーを提供する。【解決手段】鋸板1に形成された歯部2に鋸板の背側に向う受け溝11を形成し、該受け溝に切削刃となるチップ8を圧入嵌合して着脱可能に固定する。チップのすくい面3には差込端側が開放され刃先4に至らない途中で刃先側のすくい面を残して閉じられる差込溝8aを形成し、受け溝の下刃側より刃先方向に突出しチップ圧入時に差込溝内に嵌合する突起部12を形成し、該突起部の先端をすくい面から突出しない厚み又は形状とするとともに、該先端から隣接歯部間の歯底面7に至る表面が側面視ですくい面に沿った直線状の面12bと、該直線状の面及び歯底面に連続する滑らかな傾斜面12aとからなり、切削時の切屑を排出案内する案内面となる。チップの背面にもチップ圧入時に受け溝の上刃6側の鋸板を嵌合して収容する差込溝8bを形成する。【選択図】図1

Description

この発明は主として歯部先端に切削刃となるチップを装着したチップソーに関する。
従来、帯鋸等のチップソーのチップを着脱交換可能にするために、帯鋸の歯部の下刃側に受け溝を形成し、この受け溝内にチップを圧入嵌合して固着したチップソーは特許文献1及び特許文献2に示すように公知である。
特許第4087838号公報 特許第4148732号公報
上記特許文献1のものはチップのすくい面側と背面側に係合溝(差込溝)が形成されているため、切削時のチップに片荷重や捩り方向の負荷がかかった際のチップの耐久性や固定力は高められる。しかしチップのすくい面に鋸板の歯部の一部がチップのすくい面の1/2以上の高さまで突出しているため、チップすくい面の外周端(エッジ)による切削作動前にすくい面より突出した鋸板の歯部が切削材に当接するために、切削抵抗が大きくなるという欠点がある。
さらに、上記突出した歯部はチップのすくい面によって歯底方向に案内されて排出されるべき切屑の排出を妨げるために、結果として切削抵抗を大きくする欠点がある。
また、これらの切削抵抗はチップに対する切削負荷を大きくするために、チップの破損や切削反力によるチップの抜け出しを招くという問題がある。
さらにチップの背面やすくい面に角溝状の係合溝を形成すると、切削作動中にチップの刃先やすくい面が材木の節目等の硬度差のある部分に当接した時のように、チップに対して片荷重が掛かって捩り方向の応力が生じると、後述するように係合溝の先端側のコーナー部に応力集中(最大応力)が生じ、この部分で亀裂を生じてチップが破損するという問題がある。このことは、係合溝を背面とすくい面の両側に設けた場合は特に顕著である。
一方、特許文献2の技術では、チップのすくい面の刃先側の2/3以上が突起物のない平坦な面になっており、残り1/3の基端部側は切屑の排出をスムースに行えるように滑らかなカーブになって鋸板の歯部の歯底側のカーブに連続しているために、切削時にすくい面からの突出部によるチップに対する切削抵抗や切削の排出抵抗(屑詰り)は生じ難い。
しかし、特許文献2のチップソーでは、鋸板の受け溝に対してチップの背面側の差込溝のみで幅方向の固定(嵌合)をしているため、チップに対する片荷重の負荷や捩り方向の負荷に対して耐久性が乏しいほか、被切削材の材質や切削速度や送り速度が高速になると切削反力によりチップが抜け出す欠点がある。
上記課題を解決するための本発明のチップソーは、第1に鋸板1に形成された歯部2に鋸板1の背側に向う受け溝11を形成し、該受け溝11に切削刃となるチップ8を圧入嵌合して着脱可能に固定したチップソーにおいて、上記チップ8の平坦面であるすくい面3には差込端側が開放され刃先4に至らない途中で刃先4側のすくい面3を残して閉じられる差込溝8aを形成し、上記受け溝11の下刃側より刃先4方向に突出しチップ圧入時に上記差込溝8a内に嵌合する突起部12を形成し、上記突起部12の先端から隣接歯部2間の歯底面7に至る表面側面視ですくい面3に沿った直線状の面12bと、該直線状の面12b及び歯底面7に連続する滑らかな傾斜面12aとからな切削時の切屑を排出案内する案内面とし、側面視で表面がすくい面3に沿う直線状となる突起部12の先端側の部分の厚みをチップ8のすくい面3側の差込溝8aの深さ以下に形成したことを特徴としている。
第2に、チップ8の背面にチップ8の圧入時に受け溝11の上刃6側の鋸板1を嵌合して収容する差込溝8bを形成し、すくい面3と直交する断面をH形断面としてなることを特徴としている。
第3に、側面視ですくい面3に沿う直線状となる突起部12の先端側の表面部分の厚みをチップ8のすくい面3側の差込溝8aの深さ以下に形成し、当該厚み部分をチップ8の刃先からチップ8の全高さの1/2以上の高さで有効切削範囲Eとして設けたことを特徴としている。
第4に、差込溝8a,8b内の互に隣接する溝底面と側壁内面の交差部を円弧状のアール面に形成してなることを特徴としている。
第5に、すくい面3側の差込溝8aの先端部の内周壁を、先端側に向って両側壁より順次傾斜する傾斜面に形成してなることを特徴としている。
第6に、傾斜面が内周壁の先端側を頂点とする円弧状に形成されたことを特徴としている。
以上のように構成される本発明のチップソーは、以下のような効果を生じる。
(1)チップの下刃面(すくい面)が刃先側を残して歯底側に向って開放される差込溝を形成し、この差込溝に受け溝の下刃側に設けた突起部を刃先部近くまで嵌合できるので、チップのすくい面側と背面側の両側からの固定力と刃先(抜け出し)方向への固定力が高まり、高速切削時においてもチップの抜け出しが防止できるほか、チップに対する片荷重の負荷や捩り方向の負荷に対しても耐久性がある。
また、突起部の先端はチップのすくい面から突出せず、切削を排出する案内面がすくい面に沿った直線状の面と、この直線状の面及び歯底面に連続する滑らかな傾斜面とで形成されるので、切削時の切削抵抗も少なく切屑の歯底側への排出もスムースで、切屑詰りによる切削抵抗も少ない。その結果、切削時のチップの抜け出しも防止できる。
(2)チップのすくい面側と背面側の両方に差込溝を設け、チップの切削方向断面をH形断面にすることにより、チップは切込み方向の前後の2本の差込溝で鋸板に嵌合されるので、上記固定力や耐久性はさらに高くなる。
(3)チップのすくい面側の差込溝に嵌合される突起部の側面視直線状の案内面は、刃先部側から歯底側に向う下部位置までチップのすくい面から突出しないので、この部分でチップの有効な切削範囲が確保でき、切削(切込)性能が向上するとともに高速切削においても切屑の排出もよりスムースになり、切削抵抗も少なく、切削反力による切削時のチップの抜け出しも防止できる。また上記有効な切削範囲をチップの全高さの1/2以上に設けることにより、切削性能が高められ且つ切屑の排出をよりスムースにする利点がある。
(4)突起部の先端側の表面の案内面となる直線状部分は、チップのすくい面からは突出せず、チップのすくい面の先端側の研摩を希望する者にとっても突起部がチップの研摩を妨げることはなく、且つ相当量の研摩可能範囲が得られる利点がある。
(5)差込溝内の互に隣接する交差方向の内面の交差部をアール面に形成することにより、捩り方向の負荷により応力集中が生じた際も、強度維持ができるため、チップの亀裂や破損が生じない。
(6)すくい面側の差込溝の先端内周壁を先端側に向って順次傾斜する傾斜面に形成し、又はさらにこの傾斜面を先端側を頂点とする円弧状に形成することにより、この部分の強度が増大して最大主応力(応力集中)が生じた際のチップの亀裂や破損が防止できる。
本発明のチップソーの実施例を示す鋸歯の全体図である。 本発明に使用するチップの全体斜視図である。 (A)〜(C)は同じくチップの拡大断面図、拡大平面図及び拡大端面図である。 従来の応力集中(最大主応力発生)位置を示す斜視図である。 図1〜3に示すチップの応力集中位置を示す斜視図である。 (A),(B)は共に異なる実施例のチップの応力集中位置を示す斜視図である。
図1〜図3は本発明の1実施例を示し、図1は帯鋸に適用した場合の歯部へのチップの嵌合状態を示しており、鋸板1には1.2mm程度の板厚のものが使用されている。歯側には鋸歯を形成する多数の歯部2が、切削側の下刃(すくい面)3と刃先4及び刃先4を介した背面となる上刃6とによって構成されている。
隣接する歯部2,2間には、上記先行する上刃6の下端と後続する下刃3との間で鋸板1の背側に向って円弧状に湾曲する谷形の歯底7が連続して形成され、上記歯部2の先端には切削刃となるチップ8が着脱可能に圧入嵌合されて固定されている。
チップ8は図示するようにこの例では側面視平面視共に四角形に形成され、側面視では刃先角θ(θ〜θ)が40°〜50°(望ましくは45°〜50°)を有する刃先4を有し、上記刃先角θはチップ8及び歯部2の下刃面(すくい面)3と上刃面6とで形成されている。
チップ8は側面視において、基端部側から先端側に向って厚みを増して背面9側が登り傾斜を形成するように傾斜しており、先端側で前記上刃面6と交差している。そして上記すくい面3の基端側の約2/3程度の範囲(刃先4側を残した範囲)に差込溝8aが、背面9の全長にわたる差込溝8bがそれぞれ角溝状に形成され、チップ8は超硬合金、ハイスピードスチール、その他の材料でその端面視で中央に差込壁8cを残したH形断面に形成されている。
またチップ8の成形寸法は、この例では全長6.4mm,上下最大厚み2.7mm,基端部の厚み2.3mm,同左右幅2.5mm程度であり、切削又は焼結成形したものが用いられ、差込溝8a,8bの溝幅1.2mm,溝深さがそれぞれ0.4mm,0.8mm,差込壁8cの厚み1.1mm程度に成形されている。
他方、上記チップ8の形状に対応して、鋸板1の歯部2側には、上記チップ8の差込壁8cをその基端部側から差込んで圧入嵌合する受け溝11が形成されており、該受け溝11の下刃面3側には上記チップ差込時に、下刃面3側の差込溝8aの先端の最深部まで嵌合する突起部12が突設されている。この時上記突起部12の先端側の切削方向の厚みは、上記下刃側の差込溝8aの深さと同等かそれ以下に形成され、切削時に突起部12の表面が、すくい面3の表面より突出しない寸法になっていることが望ましい。但し、切削性能や切屑排出性能を妨げない範囲ですくい面3より僅かに突出する程度は許容できる。
上記のような構造により、チップ8は鋸板1の歯部2に圧入嵌合して取付けられ、切削刃面側と背面側の差込溝8a,8bに受け溝11部分の鋸板1が共に嵌合し、しかも前後方向及び左右方向で固定されるため、切削時の衝撃やその反動によってチップ8が抜け出して外れるという問題が防止される。
また、チップ8の切削性能としては、チップのすくい面3の表面が平坦面である限り有効且つスムースな切削作用を行い、その切削面から突起物が大きく突出した部分は、切屑の排出が妨げられるために切削送り時に有効な切削範囲として機能しない。即ち、図示する例ではチップ8の基端部側において、そのすくい面3より突起部12が突出した部分より歯底に向う部分はチップの有効な切削範囲とならず、これより刃先4に向う長さの範囲Eが有効切削範囲となる。
ちなみに図1,図3(A)に示すように本実施例においては、チップ8のすくい面3の望ましい有効範囲である全長の1/2を越える約3/4近い部分が有効切削範囲Eとして確保され、歯部全体の切削性能が極めて高いものとなる。
さらに本発明のチップは、着脱交換を可能にすることにより、鋸板全体を持運んで研摩する煩わしさを解消するものではあるが、ユーザーにはこの着脱交換可能チップを装着状態で研摩して再利用する者も少なくない。
このようなユーザーにはチップの刃先側の切削面を研摩して提供することになるが、発明者等の知見によれば、この時の研摩が可能な限度は突起部12の先端が残される限度と考えており、図3(A)におけるFを当初の切削面のラインとすれば、研摩が可能な限度は、突起部12の先端が残るラインFまで切削面が後退するまでである。換言すれば少なくともFからFに至るまでは、当初の切削性能を維持しながら研摩が可能である。
さらに上記チップ8の切削面3又は切削面3と同一高さ又はこれより突出しない突起部12の側面視直線状に表れる面12bと、該直線状の面12b及び歯底面7と連続する部分は、互に凹凸がなく滑らかに連続する曲線又は直線状に形成された傾斜面12aとは切削時の切屑を歯底7に向って排出案内する案内面を形成し、切削時の切屑の排出を容易に行わせる構造となっている。
図4〜6はチップに対し、捩り方向の負荷が作用した際に従来のチップと本発明のチップの応力集中(最大主応力発生)位置を示すチップの斜視図である。例えば節部と通常の木目部の境界部のように材木の内部に硬度差がある部分の切削時には、チップに対して片荷重が掛り、チップに捩り方向の負荷が作用する。
発明者等はチップソー用のチップに対する差込溝の形成位置や形状が、チップに対する片荷重発生による応力集中位置や強度にどのような影響を与えるかにつき、数値解析(シミュレーション)ソフト(「ANSYS」・・・R15.0)を用いて解析したので以下その結果につき、図4〜6に基いて説明する。尚、下記チップはいずれも本発明と同一材料で同一サイズのものを前提としている。
図4は角溝状の差込溝を背面側にのみ設けたものを、図5は同じく背面側とすくい面側両方に設けた本発明の第1実施例(図1〜3)のもので、すくい面側の差込溝8aの先端面が両側壁と直角に交差してコーナーを形成したものを、さらに図6は第2実施例を示し且つ差込溝8aの先端が半円形の円弧状に形成されたものをそれぞれ示している。
尚、各チップに対する突起部12は、いずれも先端部が90°に交差する角形のものを使用することを前提としている。
シミュレーション結果によれば図4のものでは応力集中が、背面側の差込溝8bの先端の底面と側壁内面の交差部Sに生じ、図5のものでは先端面と側壁の交差部コーナーSに生じている。
これに対し、差込溝8aの先端を半円形に形成したものでは、溝底面と両側壁の直線状の交差部コーナーが終了する先端位置Sと、背面側の差込溝8bの底面と側壁の交差する先端位置Sに生じることが判明した。
そして同時にそれぞれの最大主応力の発生量の対比は、S:S:S,Sで約1:1.36:0.85となり、Sでは差込溝をすくい面と背面の両側に設けたことにより、背面側にのみ設けた図4のSより強度低下を招いている。これに対し、図6に示すチップでは両側に差込溝を設けたにもかかわらず、片側に設けた図4のものより高い耐久性を備えていることが明らかである。
これは図6に示すチップの差込溝8aの先端周壁が円弧状に形成され、先端面と両側壁内面との交差方向の面の境界が直線による角度の交差部コーナーを形成しないためと理解される。したがってこの強度アップは、隣接面同士をできるだけ鈍角な傾斜面の接続によっても得られるものと解される。さらに隣接する交差方向の面が交わる交差部をすべてアールに形成することによっても実現できるものと解される。
1 鋸板
2 歯部
3 下刃(面),すくい面
4 刃先
6 上刃(面)
7 歯底(面)
8 チップ
8a,8b 差込溝
8c 差込壁
9 背面
11 受け溝
12 突起部
12a 傾斜面(案内面)
12b 直線状の面(案内面)
E 有効切削範囲
θ(θ,θ) 刃先角

Claims (6)

  1. 鋸板(1)に形成された歯部(2)に鋸板(1)の背側に向う受け溝(11)を形成し、該受け溝(11)に切削刃となるチップ(8)を圧入嵌合して着脱可能に固定したチップソーにおいて、上記チップ(8)の平坦面であるすくい面(3)には差込端側が開放され刃先(4)に至らない途中で刃先(4)側のすくい面(3)を残して閉じられる差込溝(8a)を形成し、上記受け溝(11)の下刃側より刃先(4)方向に突出しチップ圧入時に上記差込溝(8a)内に嵌合する突起部(12)を形成し、上記突起部(12)の先端から隣接歯部(2)間の歯底面(7)に至る表面側面視ですくい面(3)に沿った直線状の面(12b)と、該直線状の面(12b)及び歯底面(7)に連続する滑らかな傾斜面(12a)とからなる切削時の切屑を排出案内する案内面とし、側面視で表面がすくい面(3)に沿う直線状となる突起部(12)の先端側の部分の厚みをチップ(8)のすくい面(3)側の差込溝(8a)の深さ以下に形成したチップソー。
  2. チップ(8)の背面にチップ(8)の圧入時に受け溝(11)の上刃(6)側の鋸板(1)を嵌合して収容する差込溝(8b)を形成し、すくい面(3)と直交する断面をH形断面としてなる請求項1に記載のチップソー。
  3. 側面視ですくい面(3)に沿う直線状となる突起部(12)の先端側の表面部分の厚みをチップ(8)のすくい面(3)側の差込溝(8a)の深さ以下に形成し、当該厚み部分をチップ(8)の刃先からチップ(8)の全高さの1/2以上の高さで有効切削範囲(E)として設けた請求項1又は2に記載のチップソー。
  4. 差込溝(8a),(8b)内の互に隣接する溝底面と側壁内面の交差部を円弧状のアール面に形成してなる請求項1〜3のいずれかに記載のチップソー
  5. すくい面(3)側の差込溝(8a)の先端部の内周壁を、先端側に向って両側壁より順次傾斜する傾斜面に形成してなる請求項1〜3のいずれかに記載のチップソー
  6. 傾斜面が内周壁の先端側を頂点とする円弧状に形成された請求項5に記載のチップソー。
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