(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明による第1実施形態である睡眠評価装置を実施するための形態について説明する。
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態の睡眠評価装置の構成を説明する。図1は、睡眠評価装置1の使用時の外観図、図2は、睡眠評価装置1のブロック図である。図1に示すように、睡眠評価装置1は、寝具に横臥した被験者の生体情報を検出して生体信号として出力するセンサ部2(生体情報検出手段)と、センサ部2に接続され睡眠段階の判定及び睡眠の質の評価を行なう制御ボックス3とを備える。制御ボックス3は、睡眠段階の判定結果及び睡眠の評価指標などのガイダンス表示などを行なう表示部4及び電源オン/オフ又は測定開始/終了などの操作を行なう操作部5を備える。
センサ部2は、例えば、非圧縮性の流体を内封したマットレスの圧力変動を、マイクロホン(例えば、コンデンサマイクロホン)を用いて検出するものであり、図1に示すように、マットレスを寝具の下に敷くことにより、仰臥位の被験者の生体信号や姿勢の変化を検出するものである。
また、図2に示すように、制御ボックス3において、センサ部2、表示部4及び操作部5はCPU6に接続される。また、CPU6は、センサ部2で検出された生体信号から呼吸信号、体動信号、心拍信号のそれぞれを検出する生体データ検出部7、睡眠評価のための各種判定および演算を行なう判定部8、睡眠段階判定および睡眠評価のための各種条件式や判定結果および演算結果を記憶しておく記憶部9と、睡眠の質を評価する評価部20と、睡眠評価装置1に電力を供給する電源10とに接続される。この場合において、CPU6は、睡眠評価装置1を制御する制御部と時間を計測する計時部とを内部に備える。判定部8は、より具体的には、入床・離床判定部11、体動判定部12、覚醒判定部13、入眠判定部14、深睡眠判定部15、REM・浅睡眠判定部16、中途覚醒判定部17及び起床判定部18(図示略)を含む。なお、これらの各判定部については、各々フローチャートを用いて後述する。
さらに、判定部8は、睡眠判定データ演算部30(図示略)と、睡眠評価スコア演算部40(図示略)と、判別確率算出部50(図示略)と、睡眠タイプ判定部60(図示略)と、を有する。
睡眠判定データ演算部30は、睡眠評価スコア(後述)を算出するための基礎となる睡眠判定データ(複数の変数データ)を演算するものである。睡眠判定データは、深睡眠率(%)、差分睡眠周期スコア、総就床時間(分)、睡眠周期(分)、深睡眠出現量(分)、差分総就床時間スコア、中長時間覚醒回数(回)、短時間覚醒回数(回)、睡眠効率(%)の9種類のデータを用いるのが好適である。よって、睡眠判定データ算出部30として、深睡眠率演算部、差分睡眠周期スコア演算部、総就床時間演算部、睡眠周期演算部、深睡眠出現量演算部、差分総就床時間スコア演算部、中長時間覚醒回数演算部、短時間覚醒回数演算部、睡眠効率演算部を有する(いずれも図示略)。本実施形態では、これらの9種類の睡眠判定データを用いる睡眠評価システム及び睡眠評価装置を説明するが、これら以外の睡眠判定データ(変数データ)を更に追加しても良い。
ここで、複数の変数データである前記9種類の睡眠判定データについて更に説明する。深睡眠率(%)は、睡眠時間における深い睡眠の割合を意味し、「(深い睡眠の時間/睡眠時間)×100」、すなわち「(深い睡眠の時間/(入眠から最終覚醒までの時間))×100」として求めることができる。差分睡眠周期スコアは、睡眠周期(分)が基準時間(例えば90分)に対してどの程度の差があるかを表すスコアである。「−|睡眠周期−所定基準時間|」(||は絶対値を表す。)により求めることができる。従って、基準時間を90分と設定した場合に、被験者の睡眠周期が90分であれば、差分睡眠周期スコアの値は0になり最大値を示し、睡眠周期が120分又は60分であれば、差分睡眠周期スコアの値は−30となる。総就床時間(分)は、就床から離床までの時間を意味する。睡眠周期(分)は、REM睡眠の終了から次のREM睡眠の終了までを1周期とした場合の、当該周期の平均値を意味する。但し、第1周期は、入眠してから最初に現れるREM睡眠の終了までとする。深睡眠出現量(分)は、深い睡眠の時間の総和を意味する。差分総就床時間スコアは、総就床時間(分)が基準時間(例えば6.5時間(390分))に対してどの程度の差があるかを表すスコアである。「−|総就床時間−基準時間|」(||は絶対値を表す。)により求めることができる。従って、基準時間を390分と設定した場合に、被験者の総就床時間が390分であれば、差分総就床時間スコアの値は0になり最大値を示し、総就床時間が420分又は360分であれば、差分総就床時間スコアの値は−30となる。中長時間覚醒回数(回)は、睡眠中に現れる基準時間(例えば、2分30秒)以上の覚醒の回数を意味する。短時間覚醒回数(回)は、睡眠中に現れる基準時間(例えば2分)以内の覚醒の回数を意味する。睡眠効率(%)は、総就床時間に対する実際に眠っていた時間の割合を意味し、「(総睡眠時間/総就床時間)×100」、すなわち「((総就床時間−睡眠中に覚醒した時間の総和)/総就床時間)×100」として求めることができる。
本発明においては、前記9種類の睡眠判定データ(所定項目)は、PSGの測定データと既存の睡眠評価装置の測定データとの相関がよいものとして抽出されている上に、特に(一例として90分基準の)差分睡眠周期スコアや、(一例として6.5時間(390分)基準の)差分総就床時間スコアを有しているため、従来技術にはない、睡眠時間や睡眠周期をも考慮した睡眠の質の評価、すなわち睡眠点数を演算することが可能であり、PSGの睡眠判定の結果に対して、睡眠点数の相関を向上させることができる。
睡眠評価スコア演算部40は、睡眠の質の評価の基礎となる睡眠評価スコアを演算するものである。睡眠評価スコアは、一例として、第1主成分スコアとして睡眠深度スコア、第2主成分スコアとして睡眠周期スコア、第3主成分スコアとして睡眠時間スコア、第4主成分スコアとして中途覚醒スコアの4成分スコアで構成するのが好適である。さらに、睡眠中に生じる体動の発生頻度に関するスコアとしての体動頻度スコアをも睡眠評価スコアの1つとして加えるのが好適である。よって、睡眠評価スコア演算部40は、睡眠深度スコア演算部、睡眠周期スコア演算部、睡眠時間スコア演算部、中途覚醒スコア演算部、体動頻度スコア演算部を有する(いずれも図示略)。より正確に睡眠の質を評価する際には、睡眠の深さ、睡眠の周期、睡眠の時間、中途覚醒、体動頻度の程度が重要な指標となるため、本実施形態では前記5種類の成分スコアを用いる睡眠評価装置を説明するが、これら以外の睡眠評価スコアを更に追加しても良い。
判別確率算出部50は、SAS患者のような睡眠障害者である確率を示す判別確率(後述)を演算するものである。
睡眠タイプ判定部60は、予め設定されている複数の睡眠タイプ(後述)のうち、いずれの睡眠タイプに該当する睡眠であったかを判定するものである。
評価部20は、睡眠評価スコア演算部40が睡眠判定データに基づいて演算した睡眠評価スコアと、判別確率算出部50が演算した判別確率と、に基づいて睡眠点数(睡眠指数)を演算する。また、睡眠タイプ判定部60は、被験者の睡眠がいずれの睡眠タイプに該当するかを判定する。このような睡眠点数や睡眠タイプを含む睡眠の質の評価の結果を表示部4に表示する。睡眠判定データ演算部30、睡眠評価スコア演算部40、判別確率算出部50、睡眠タイプ判定部60、及び、評価部20が実行する処理については、各フローチャートを用いて後述する。なお、生体データ検出部7、判定部8、評価部20、睡眠判定データ演算部30と、睡眠評価スコア演算部40と、判別確率算出部50と、睡眠タイプ判定部60とは、CPU6が所定のプログラムを実行することによって、それらの機能を実現してもよい。
次に図3及び図4のフローチャートを用いて、睡眠評価装置1の主な動作を説明する。図3は、メイン動作を示すフローチャート、図4は、前記各判定部11〜18を用いた睡眠段階判定の流れを示すフローチャートである。
まず図3に示すように、操作部5の電源オン操作により睡眠評価装置1の電源をオンすると、ステップS1において、就寝姿勢を取り、操作部5の測定開始の操作を行うように指示するガイダンスが表示部4に表示され、測定開始操作がされたか否かを判定する。測定開始操作がされなければNOに進み、ステップS1において前記ガイダンスを表示し続ける。また、測定開始操作がされたらYESに進み、ステップS2において、センサ部2により生体信号が検出され、CPU6に内蔵の計時部で計測した時刻と共に生体信号データとして記憶部9に記憶される。
ステップS3において、測定終了の操作がされたか否かが判断され、測定終了操作がされなければNOに進み、ステップS2の生体信号の検出及び記憶を続け、測定終了操作がされたらYESに進み、ステップS4において、CPU6内の制御部により検出した生体信号の処理をするよう各部を制御する。すなわち、記憶部9に記憶した生体信号データを読み出し、生体データ検出部7において呼吸信号、体動信号、心拍信号を検出し、これらの呼吸信号、体動信号、心拍信号により得られるそれぞれの波形の振幅及び周期が演算され、呼吸データ、体動データ、心拍データとして記憶部9に記憶する。このとき、呼吸データ、体動データ、心拍データは、所定時間、例えば30秒を1単位とする単位区間毎に記憶されるものとする(以下、この単位区間を「エポック」という)。なお、呼吸信号、体動信号、心拍信号の波形の振幅及び周期の演算に関しては、既に公知であるため省略する。また、エポックの長さは30秒に限られるものではなく、判定の精度を損なわない範囲で任意の値に設定することができる。
記憶部9に記憶された総ての生体信号データに対して、呼吸データ、体動データ、心拍データが検出され記憶されると、ステップS5において、それらの呼吸データ、体動データ、心拍データを用いて、判定部8内の各判定部11〜18により、睡眠段階判定(後述)が行なわれる。
ステップS6において、睡眠段階判定の結果に基づいて睡眠判定データ(複数の変数データ)の演算、睡眠評価スコアの演算、判別確率の演算を行い、睡眠点数が演算される。ステップS7において、被験者の睡眠が、予め設定されている複数の睡眠タイプのうち、いずれの睡眠タイプに該当する睡眠であったかが判定される。ステップS8において、睡眠点数や睡眠タイプを含む睡眠の質の評価の結果が表示部4に表示される。ステップS9において、操作部5の電源オフ操作がされたか否かが判断され、電源オフ操作がされていなければNOに進み、ステップS8の表示を続け、電源オフ操作された場合にはYESに進み、睡眠評価装置1の電源をオフにし終了となる。
次に図4のフローチャートを用いて、判定部8内における各判定部11〜18を用いた睡眠段階判定の流れを説明する。判定部8は、CPU6に制御され、図3のステップS4において記憶部9に前記エポック毎に記憶された呼吸データ、体動データ、心拍データに基づいて、以下の判定処理を順次行なうものである。
ステップS11(入床・離床判定ステップ)において、入床・離床判定部11は、呼吸データ、体動データ、心拍データの変動に基づいて、測定開始から測定終了までの間の入床又は離床の判定を行なう。ステップS12(体動判定ステップ)において、体動判定部12は、呼吸データ、体動データ、心拍データから得られる波形の振幅又は周期などに基づいて、寝返りなどの大きな動きである粗体動、いびきなどの小さな動きである細体動、及び、安定した呼吸・心拍・体動状態のときに得られる無体動、の各状態の内、各エポックがどの状態にあるかを判定する。ステップS13(覚醒判定ステップ)において、覚醒判定部13は、前記判定された体動の状態に基づいて明らかな覚醒状態であるか否かを判定する。ステップS14(入眠判定ステップ)において、入眠判定部14は、入床直後の覚醒状態から、どのエポックにおいて睡眠状態へ移行したか(以下、入眠区間、または、入眠潜時と言う。)を判定する。ステップS15(深睡眠判定ステップ)において、深睡眠判定部15は、呼吸データ及び心拍データの変動と前記判定された体動の状態とから、深い睡眠状態にあるか否か判定する。ステップS16(REM・浅睡眠判定ステップ)において、REM・浅睡眠判定部16は、深睡眠判定部15により深睡眠状態と判定されなかった各エポックに対して、REM睡眠状態又は浅い睡眠状態のいずれかを判定する。ステップS17(中途覚醒判定ステップ)において、中途覚醒判定部17は、体動の継続期間に基づいて入眠状態途中での覚醒状態の有無を判定する。ステップS18(起床判定ステップ)において、起床判定部18により、どのエポックにおいて睡眠状態から起床状態へ移行したか(以下、起床区間と言う。)を判定する。
以上の総ての判定が終了すると、図3のメイン動作を示すフローチャートに戻り、ステップ6における睡眠点数の演算処理、ステップ7における睡眠タイプ判定が実行されたのち、ステップS8において、睡眠点数や睡眠タイプを含む睡眠の質の評価の結果が表示されるものである。
前記各判定部11〜18の処理を、各々図5乃至図16の各フローチャートを用いて順を追って説明する。ただし、以下アルファベットなどで示された各定数は、睡眠ポリグラフ検査のデータによる睡眠段階判定と睡眠評価装置1による実測データとの相関に基づいて設定されるものであるとする。
図5のフローチャートを用いて入床・離床判定部11の処理を説明する。
ステップS21において、記憶部9に記憶された呼吸データ、体動データ、心拍データに対して設定した各エポックの総数をnmax区間とし、n=1区間目からn=nmax区間目までの各エポック毎に処理するため、n=0として初期設定する。続いてステップS22において、n=n+1として1エポック分進め記憶部9の該当するエポックの呼吸データを読み込む。
ステップS23において、人が通常の仰臥位でいるときに認められる呼吸振幅の大きさの最小値をAとし、前記エポックn内の呼吸波形の振幅について、大きさA以上の振幅がt(sec)以上継続しているかどうか判定される(図6参照)。ここで、A及びtは定数であり、t<単位時間である。これに当たる場合には、呼吸が検出されていると判断しYESに進み、ステップS24において、被験者は入床状態にあるとして、前記エポックnを入床区間と判定し、ステップS25において、該当するエポックnに関連付けて記憶部9に記憶する。また、前記ステップS23の条件に当てはまらない場合には、呼吸は検出されていないと判断しNOに進み、ステップS27において、被験者は離床状態であるとして、前記エポックnを離床区間と判定し、ステップS25において、前記と同様にして記憶される。ステップS26において、全エポックnmaxにおいて前記入床・離床判定がなされたか否か、すなわちn=nmaxかが判断され、全エポックの判定がなされていなければNOに進み再びステップS22において、n=n+1として入床・離床判定を繰り返し、全エポックの判定がなされるとYESに進み、図4のフローチャートに戻り、次の判定に進む。なお、呼吸データを用いる例を説明したが、体動データ、心拍データを用いても良いことは言うまでもない。この入床・離床判定部11の処理結果に基づいて、前記総就床時間演算部及び差分総就床時間スコア演算部は、前記睡眠判定データとしての総就床時間(分)及び差分総就床時間スコアを演算することが可能となる。また、入床・離床判定部11の処理結果に基づいて、睡眠効率演算部は、睡眠効率(%)を演算するために必要な「総就床時間」を演算することが可能となる。
図7のフローチャートを用いて体動判定部12の処理を説明する。
体動判定部の処理は、まず、前記エポックnに関わらず、呼吸信号の波形の振幅から体動の大きさを判定し、次に、エポックn内における前記判定された体動の有無により、各エポックnの体動状態を判定するものである。
よって、ステップS31において、測定開始から測定終了までの総呼吸数をimax回とし、i=0として初期設定する。続いてステップS32において、i=i+1として1呼吸数分進め、記憶部9のi=1回目からi=imax回目までの各呼吸数iに該当する呼吸波形を読み込む。
ステップS32において、更にi=i+2回目とi=i+3回目の呼吸波形を読み込み、この連続する3つの呼吸波形の振幅のばらつきにより体動の有無を判定する。すなわち、ステップS33において、前記3つの呼吸波形の振幅の標準偏差≧B1(ここで、B1は、呼吸波形が安定しているか否かの閾値をしめす定数である。)かどうかを判定する。標準偏差<B1であった場合、呼吸のばらつきは小さいため呼吸波形が安定していると判断しNOに進み、ステップS38において、前記連続する3つの呼吸波形の内、i=i+1回目の呼吸は無体動状態を示すものと判定する。
また、ステップS33において標準偏差≧B1であった場合、呼吸のばらつきが大きいため体動有り、と判断してYESに進み、ステップS34において、前記i=i+1回目の呼吸波形の振幅の大きさ≧B2(ここで、B2は、人が通常の仰臥位でいるときに認められる呼吸振幅の最大値であり、B2>Aなる定数である。)かどうかを判定する。前記振幅の大きさ≧B2であった場合YESに進み、ステップS35において、i=i+1回目の呼吸は粗体動状態であると判定する(図9参照)。また、前記振幅の大きさ<B2であった場合NOに進み、ステップS36において、呼吸波形の周期により体動の大きさを判定する。すなわち、前記i=i+1回目の呼吸周期≧B3であるかどうかを判定する。前記呼吸周期≧B3であった場合YESに進み、粗体動と状態であると判定する。また、呼吸周期<B3であった場合NOに進み、ステップS37において、呼吸波形の振幅及び周期共に小さいが変動が大きいと判断され、細体動状態であると判定される(図10参照)。
このように、粗体動、細体動及び無体動の各体動の状態が判定されると、ステップS39において、該当する呼吸数iに関連付けて記憶部9に記憶され、ステップS40において、全呼吸数imaxにおいて前記体動判定がなされたか否か、すなわちi=imaxかが判断され、全エポックの判定がなされていなければNOに進み、再びステップS32からi=i+1として体動判定を繰り返し、全呼吸数の判定がなされるとYESに進み、今度は、ステップS41以降のエポックn毎の体動判定を行なう(図11参照)。
すなわち、図5のステップS21及びステップS22と同様にして、図7のステップS41においてエポックn=0と初期設定し、ステップS42において、n=n+1として該当するエポックの呼吸データを読み込む。続くステップS43において、前記読み込んだエポックn内に、前記粗体動状態と判定された呼吸波形が有るかどうか判定され、有る場合にはYESに進み、ステップS44において、このエポックnを粗体動区間と判定する。また、無い場合にはNOに進み、ステップS45において、同エポックnに、前記細体動状態と判定された呼吸波形が有るかどうか判定され、有る場合にはYESに進み、ステップS46において、このエポックnを細体動区間と判定する。また、無い場合にはNOに進み、ステップS47において、このエポックnを無体動区間と判定する。
このように、粗体動区間、細体動区間及び無体動区間の判定がなされると、ステップS48において、該当するエポックnに関連付けて判定結果が記憶部9に記憶され、ステップS49において、全エポックnmaxにおいて上記判定がなされたか否か判断され、全エポックの判定がなされていなければNOに進み、再びステップS42からn=n+1としてエポック毎の体動判定を繰り返し、全エポックの判定がなされるとYESに進み、図4のフローチャートに戻り、次の判定に進む。
図12のフローチャートを用いて覚醒判定部13の処理を説明する。
前述と同様にエポック毎の判定を行なうため、ステップS51において、エポックn=0と初期設定し、ステップS52において、n=n+1として該当するエポックnの呼吸データを読み込む。以下、図12に示すように、続くステップS53において、例えば、前記読み込んだエポックnの前後各±2区間の合計5区間のエポックが記憶部9内に存在するかどうか判断される。存在しない場合にはNOに進み、再びステップS52に戻りn=n+1として進める。また前記5区間が存在する場合にはYESに進み、5区間を記憶部9より読み込む。続くステップS55において、前記5区間の各エポックの体動値Zを求める。体動値Zは、図7を用いて詳述した体動判定部12の体動区間の判定に基づき、粗体動区間であればZ=2、細体動区間であればZ=1、無体動区間であればZ=0として定義される値である。これと共に、前記各エポックの体動値Zに基づいて5区間の体動値Zの総和(ここで、0≦Zの総和≦10であり、以下、Zの総和をΣZと言う場合がある。)も求める。
ステップS56において、前記5区間の体動値Zの総和=10であるか否かが判定される。前記Zの総和=10であった場合YESに進み、ステップS57において、前記5区間全てが粗体動区間であることから、前記ステップS52で読み込んだエポックn(5区間の中央のエポック)を覚醒状態にある覚醒区間と判定する。また、体動値Zの総和が10に満たない場合NOに進み、ステップS58において、ステップS56と同様にして、5≦前記体動値Zの総和≦9であるか否かが判定される。前記Zの総和がこの範囲内にあった場合にはYESに進み、ステップS59において、前記エポックnを、呼吸状態が比較的不安定であるREM睡眠又は浅睡眠状態の可能性が高い不安定区間と判定する。また、Zの総和が前記範囲になかった場合、すなわちZの総和≦4であった場合にはNOに進み、前記エポックnを呼吸状態が比較的安定している深睡眠又は浅睡眠状態の可能性が高い安定区間と判断する。
このように、覚醒区間、不安定区間及び安定区間の判定がなされると、ステップS61において、該当するエポックnに関連付けて記憶部9に記憶され、ステップS62において、エポックnmaxが前記5区間の中に存在したかどうか判断され、存在していなければNOに進み、再びステップS52に戻りn=n+1としてエポック毎の覚醒判定を繰り返し、存在していた場合にはYESに進み、図4のフローチャートに戻り、次の判定に進む。
図13のフローチャートを用いて入眠判定部14の処理を説明する。
入床直後の初期の覚醒状態から睡眠状態へ移行するエポック(以下、入眠区間と言う。)を判定するために、図12に詳述した覚醒判定部13により、体動値Zによる覚醒判定に加えて、人の入眠の傾向に基づいて、より詳細に初期の覚醒区間を判定していくことによって前記入眠区間を定義するものである。
前述と同様にエポック毎の判定を行なうため、ステップS71において、エポックn=0と初期設定し、ステップS72おいて、n=n+1として該当するエポックnの呼吸データを読み込む。続くステップS73において、読み込んだエポックnが、図12で詳述した不安定区間であるか否かを判定する。ただし、この不安定区間は初期の覚醒区間の継続後に初めて出現する不安定区間である。よって、不安定区間でない場合にはNOに進み、このエポックを改めて覚醒区間として置き換えて記憶し、再びステップS72からの処理を不安定区間を読み込むまで繰り返す。このとき、前記エポックが安定区間であった場合であっても、通常の人の呼吸においては、入床直後の初期の覚醒状態から不安定状態を経ずに、突如として安定状態が現れることは考えにくい。従って、この安定区間は信頼性の低いデータであると容易に推定可能であり、覚醒区間として置き換えることは妥当であると言える。
また、前記エポックnが不安定区間であった場合にはYESに進み、前記エポックnから一定区間数C1までの間に覚醒区間と判定されたエポックが存在するか否かが判定される。ここで、前記エポックnが入眠区間であるとした場合、人の睡眠において、入眠直後に覚醒することは考えにくいことから、前記一定区間数C1は、人が通常入眠直後に覚醒しないとされる範囲を設定した定数である。従って、前記エポックnから一定区間数C1までの間に覚醒区間が存在した場合にはNOに進み、前記エポックnを覚醒区間と置き換えて記憶し、再びステップS72からの処理を繰り返す。また、覚醒区間が存在しなかった場合にはYESに進み、ステップS75において前記エポックnを入眠(仮)区間として、ステップS77以降の処理によって、より厳密に入眠区間を判定する。
ステップS77以降の処理は、実測により見出した、人の入眠付近の3つの呼吸変動傾向に基づいて、前記入眠(仮)区間以降の不安定区間と判定されたエポックの内、どのエポックまでを覚醒区間と見なして置換すべきかを判定することにより、その直後のエポックを入眠区間として定義するものである。
まず、ステップS77において、図5を用いて詳述した入床・離床判定部11により入床区間と判定された各エポックの内、測定開始後最も早く入床区間と判定されたエポックから前記入眠(仮)区間の直前のエポックまでを基準範囲として設定し、この基準範囲において、各エポック毎の呼吸数に対する分散σ2を求める。また、前記基準範囲を含み、前記入眠(仮)区間から一定区間数α、β及びγ(ここで、α、β及びγは、α<β<γとして設定される定数であり、前記3つの呼吸変動傾向を判別するために適した時間間隔を実測から割り出して設定されるものである。)分増加させた範囲までを、各々α範囲、β範囲及びγ範囲とし、各範囲を設定するエポックを各々α区間、β区間及びγ区間として定義し、前記基準範囲と同様にして、これら各範囲の呼吸数の分散を求め、各々σα2、σβ2及びσγ2とする。これら分散σ2、σα2、σβ2及びσγ2に基づいて、前記3つの呼吸変動傾向を各々条件D、条件E及び条件Fとして判定する。
1つ目の呼吸変動傾向は、被験者の呼吸のばらつきが急速に低減して睡眠状態に至るものである。従って、ステップS78において、「σα2>σβ2(式1)」且つ「σβ2≦C2(式2)」なる式により定義される条件Dにより判定される。すなわち、前記式1に示すように、範囲の増加に従って急速に呼吸数のばらつきが減少し、且つ、前記式2に示すように、母集団の増加に伴う分散が一定数C2よりも小さくなるものである。ここで、前記C2は、入眠後に現れる呼吸数のばらつきに有意に近しいと判定可能な定数である。この条件Dに該当する場合には、β区間はすでに睡眠状態にあると判定できる。
これに従い、条件Dに該当する場合にはYESに進み、ステップS79において、少なくとも、α区間までは覚醒区間であると判定し、このα区間の直後のエポックを入眠区間として決定する。また、条件Dに該当しない場合にはNOに進み、ステップS80において、2つ目の呼吸変動傾向の判定を行なう。
2つめの呼吸変動傾向は、被験者の呼吸のばらつきが徐々に低減して睡眠状態に至るものである。従って、「σ2×C3≧σα2≧σβ2(式3)」なる式により定義される条件Eにより判定される。ここで、前記C3は、C3<1なる定数であり、基準範囲のばらつきに対して何割か低減させるものである。ただし、前記式2のC2との間にはσ2×C3>C2なる関係が存在する。従って、式3に示すように、前記C3により低減した基準範囲のばらつきに対し、α範囲のばらつきが小さく、β範囲のばらつきは更に小さくなるものである。
これに従い、条件Eに該当する場合にはYESに進み、ステップS79において、ばらつきは非常に緩やかではあるが減少傾向にあることから、前記β区間までを覚醒区間であると判定し、このβ区間の直後のエポックを入眠区間として決定する。また条件Eに該当しない場合にはNOに進み、ステップS81において、3つ目の呼吸変動傾向の判定を行なう。
3つ目の呼吸変動傾向は、被験者の呼吸のばらつきが、基準範囲の呼吸のばらつきに比べて一旦ばらつきが増大した後に、再び減少するものである。従って、「σ2<σβ2(式4)」且つ「σγ2<σβ2(式5)」なる式により定義される条件Fにより判定される。ここで、この傾向は条件D及びEに比べ、比較的長いスパンで見られる現象であることから、上記β範囲及びγ範囲を用いた条件としたものである。
これに従い、条件Fに該当する場合にはYESに進み、ステップS79において、前記γ範囲の内、少なくとも前記ばらつきが増大したβ区間までは覚醒区間であると判定し、β区間の直後のエポックを入眠区間として決定する。
また条件Fに該当しない場合にはNOに進む。これは、前記条件D、E及びFの何れの条件にも該当しなかった場合であり、ステップS82において、前記区間数α、β及びγを各々区間数δだけ増加して、α範囲、β範囲及びγ範囲を各々再設定した上で、再びステップS78に戻り、前記条件D、条件E及び条件Fを、入眠区間が決定するまで繰り返す。
また、前記ステップS79において、入眠区間が決定されると、ステップS83において、該当するエポックnに関連付けて、前記覚醒区間及び入眠区間を記憶した後、図4のフローチャートに戻り、次の判定に進む。以上の覚醒判定部13及び入眠判定部14の処理結果に基づいて、前記深睡眠率演算部は、深睡眠率(%)を演算するために必要な「睡眠時間」すなわち「入眠から最終覚醒までの時間」を演算することが可能となる。また、覚醒判定部13及び入眠判定部14の処理結果に基づいて、睡眠効率演算部は、睡眠効率(%)を演算するために必要な「睡眠中に覚醒した時間の総和」を演算することが可能となる。
図14のフローチャートを用いて深睡眠判定部15の処理を説明する。
ここで、深睡眠状態において、呼吸は穏やかな一定リズムになり、体動はほぼ起こらなくなることから、以下の判定を行なうものである。
前述と同様にエポック毎の判定を行なうため、ステップS91において、エポックn=0と初期設定し、ステップS92おいて、n=n+1として該当するエポックnの呼吸データを読み込む。続くステップS93において、読み込んだエポックnが、図12で詳述した安定区間であるか否かを判定する。安定区間でない場合には、再びステップS92に戻りn=n+1として安定区間に該当するまで繰り返す。また安定区間であった場合にはYESに進み、ステップS94において、多数の判定条件を複合した条件Gの判定を行なう。
前記条件Gは、「エポックn内の呼吸数≦H1」且つ「エポックn内の呼吸波形の周期の標準偏差≦H2」且つ「エポックnとエポックnの±1区間との呼吸数の差≦H3」且つ「エポックnは無体動区間である」の条件を満たすときに、前記エポックnを深睡眠区間として判定するものである(ここで、H1、H2及びH3は、実測により求められる定数である。
従って、ステップS94において、読み込んだエポックnが条件Gを満たした場合にはYESに進み、ステップS95において、前記エポックnを深睡眠区間と判定し、ステップS96において判定結果を記憶部9に記憶する。また、条件Gを満たさなかった場合にはNOに進み、ステップS97において、不安定区間であると判断し、ステップS96において、前記安定区間を不安定区間として置きかえて記憶部9に記憶する。ステップS98において、全エポックnmaxにおいて上記判定がなされたか否か判断され、全エポックの判定がなされていなければNOに進み、再びステップS92からのステップを繰り返し、全エポックの判定がなされるとYESに進み、図4のフローチャートに戻り、次の判定に進む。この深睡眠判定部15の処理結果に基づいて、前記深睡眠出現量演算部は、前記睡眠判定データとしての深睡眠出現量(分)を演算することが可能となる。また、この深睡眠判定部15の処理結果に基づいて、深睡眠率演算部は、深睡眠率(%)を演算するために必要な「深い睡眠の時間」を演算することが可能となる。
図15のフローチャートを用いて、REM・浅睡眠判定部16の処理を説明する。
ここで、REM睡眠状態においては、呼吸数の増加及び変動が継続して起こり、体動も多くなることから、以下の判定を行なうものである。
前述と同様にエポック毎の判定を行なうため、ステップS101において、エポックn=0と初期設定し、ステップS102において、n=n+1として該当するエポックnの呼吸データを読み込む。
ステップS103において、読み込んだエポックnが、n≠nmaxであるか且つ前記図12で詳述した不安定区間であるか否かを判定する。エポックnがn≠nmax且つ不安定区間であった場合にはYESに進み、ステップS104において、不安定区間の継続回数をj=j+1としてカウントし、続くステップS105において、「全入床区間における各エポック内の呼吸数の平均値≦エポックnの呼吸数」なる、条件Iの判定を行なう。すなわち、前述したように、REM睡眠においては呼吸数の増加が見られることから、睡眠中の平均的な呼吸数よりも前記エポックnの呼吸数の方が多いか否かを判定するものである。
この条件Iを満たさない場合にはNOに進み、ステップS106において、前記継続回数j=1からj=jまでの各エポックを浅睡眠区間と判定する。また、条件Iを満たす場合にはYESに進み、再びステップS102においてn=n+1として不安定区間の検出を行う。
前記ステップS103において、エポックnが、n=nmaxであるか又は不安定区間でない場合にはNOに進み、ステップS110において、不安定区間の継続回数j=0か否かを判断しj=0であればYESに進み、再びステップS102に戻ってn=n+1として不安定区間に該当するまで繰り返す。またj=0でない場合にはNOに進み、ステップS111において、前記条件Iを満たす、継続回数j=1からj=jまでの不安定区間に対して、継続回数jが一定回数jx以上か否か、j≧jx(ここで、jxは、REM睡眠状態の可能性を示唆する継続数である。)の判定がなされる。超えていない場合にはNOに進み、前記ステップS106に示したj=1からj=jまでの各エポックを浅睡眠区間と判定する。また、超えた場合にはYESに進み、ステップS112において、前記継続回数j=1からjまではREM睡眠状態である可能性が高いとして、各エポックをREM睡眠(仮)区間と判定する。
ここで、睡眠時無呼吸症候群などによる無呼吸状態があった場合には、努力性呼吸が起きるため、前記ステップS105における条件Iの「エポックnの呼吸数」は増加することになり、この異常値に基づいて前記条件Iが判定され、浅睡眠区間と判定されるべき区間がREM(仮)区間と判定されてしまう。そこで、ステップS113において、「全入床区間における安定区間数/(全入床区間数−覚醒区間)≧k」なる条件Kの判定により、睡眠中の安定区間(すなわち深睡眠状態又は浅睡眠状態)が、所定の割合k以上出現しているか否かを判定することにより、少なくとも一般的に正常とされる睡眠が保たれているかどうか判定するものである。前記条件Kを満たす場合には、睡眠は正常であり、条件Iの判定は妥当であると判断しYESに進み、ステップS115において、継続回数j=1からjまでの各エポックをREM睡眠区間と決定する。また、前記条件Kを満たさない場合、異常な睡眠状態があったと判断しNOに進み、ステップS114において、条件Lによる判定を行なう。
条件Lは、継続回数j=1からjまでのREM睡眠(仮)区間において、「(各区間の最大呼吸数−各区間の最小呼吸数)/REM睡眠(仮)区間数≧Lx」の判定により、呼吸数にばらつきがあってもそれが正常な範囲か否かを判定するものであり、Lxは、呼吸が異常であると定義する最小値である。すなわち、前記継続回数j=1からjまでのREM睡眠(仮)区間のいずれかに無呼吸状態が出現したとするものである。従って、条件Lを満たす場合、すなわち呼吸に異常がある場合にはYESに進み、ステップS106において、前記REM睡眠(仮)区間とした継続回数j=1からjまでの各エポックを前記浅睡眠区間として決定する。また、条件Lを満たさない場合、すなわち呼吸が正常である場合にはNOに進み、ステップS115において、前記REM睡眠(仮)区間とした継続回数j=1からjまでの各エポックを前記REM睡眠区間と決定する。
前記REM睡眠区間及び浅睡眠区間が決定されると、ステップS107において各エポックnに関連付けて記憶部9に記憶され、ステップS108において、継続回数jを一旦0に戻し、ステップS109において、全エポックnmaxにおいて上記判定がなされたか否か判断され、全エポックの判定がなされていなければNOに進み、再びステップS102からのステップを繰り返し、全エポックの判定がなされるとYESに進み、図4のフローチャートに戻り、次の判定に進む。このREM・浅睡眠判定部16の処理結果に基づいて、前記睡眠周期演算部及び差分睡眠周期スコア演算部は、前記睡眠判定データとしての睡眠周期(分)及び差分睡眠周期スコアを演算することが可能となる。
図16のフローチャートを用いて、中途覚醒判定部17の処理を説明する。
睡眠状態にあっても、体動がある一定時間以上継続した場合には、途中で目覚めたと解することができ、以下の判定を行なうものである。
前述と同様にエポック毎の判定を行なうため、ステップS121において、エポックn=0と初期設定し、ステップS122おいて、n=n+1として該当するエポックnの呼吸データを読み込む。ステップS123において、読み込んだエポックnが、n≠nmaxであるか、且つ、図7に詳述した体動判定部12で判定した、粗体動、細体動及び無体動の内、粗体動区間又は細体動区間のいずれか一方(以下、体動区間と言う)であるかを判定する。
エポックnがn≠nmax且つ体動区間であった場合にはYESに進み、ステップS124において、継続回数m=m+1としてカウントし、再びステップS122においてn=n+1として体動区間の検出を繰り返す。また、エポックnが、n=nmaxであるか又は体動区間であった場合にはNOに進み、ステップS125において、前記継続回数mがm≧mx(ここで、mxは、中途覚醒の可能性を含む体動区間継続数である。)であるか否かが判断され、m≧mxの場合にはYESに進み、ステップS126において、m=1からm=mまでの各エポックは覚醒状態にあると判定し、各エポックが深睡眠区間、浅睡眠区間及びREM睡眠区間として記憶されている場合であっても、各エポックを覚醒区間と置きなおして記憶部9に記憶し、ステップS127において、継続回数mを一旦0に戻す。
また、継続回数mがmxを超えていない場合にはNOに進み、そのまま前記ステップS127において、継続回数m=0とする。ステップS128において、全エポックnmaxにおいて上記判定がなされたか否か判断され、全エポックの判定がなされていなければNOに進み、再びステップS102からのステップを繰り返し、全エポックの判定がなされるとYESに進み、図17に詳述する中途覚醒条件判定において、発明者が実測により見出した、人の中途覚醒時の傾向に基づいて定義した各条件により詳細に中途覚醒を判定する。この判定がなされた後に、図4のフローチャートに戻り、次の判定に進む。この中途覚醒判定部17の処理結果に基づいて、前記中長時間覚醒回数演算部及び短時間覚醒回数演算部は、前記睡眠判定データとしての中長時間覚醒回数(回)及び短時間覚醒回数(回)を演算することが可能となる。
ここで、図17のフローチャートを用いて、中途覚醒条件判定を説明する。中途覚醒条件判定は、ステップS131において、エポックn=0と初期設定し、ステップS132において、n=n+1として該当するエポックnの呼吸データを読み込む。
ステップS133においては、まず、各エポックn毎の体動の状態を求める。すなわち、前述の体動判定部12の説明において、図7のフローチャートのステップS39において、1呼吸iに関連付けて記憶した粗体動、細体動及び無体動の各状態に対して、前記粗体動状態であればU=2とし、同様にして細体動状態であればU=1、無体動状態であればU=0として、前記読み込んだエポックn内の各呼吸iに応じて前記体動の状態を前記Uの総和(以下、ΣUと言う)として求める。
次に、前記エポックnにおいてΣU≧2か否かが判断される。ΣU≧2の場合にはYESに進み、ステップS134において、継続回数m=m+1としてカウントする。また、ΣU≧2でなかった場合にはNOに進み、継続回数をカウントせずにステップS135において、前回までカウントした継続回数がm≧mp(ここで、mpは、中途覚醒の可能性を含む体動区間継続数を示す定数であり、mp<mxなる定数である。)であるか否かを判断する。m≧mpでなかった場合には、中途覚醒の可能性はないとしてNOに進み、ステップS140において継続回数をm=0に戻す。また、m≧mpであった場合には、継続回数m=1からm=mまでの各エポックnが覚醒状態にある可能性があるといえるためYESに進み、次の条件判定を行なう。
すなわち、ステップS136において、前記継続回数m=1からm=mまでのエポックの内、「(ΣU≧10のエポックnの数)≧m1%」(ここで、m1は全継続回数mに対する割合を示す定数である。)に該当するか否かを判定する。この条件に該当する場合にはYESに進み、ステップS139において、前記継続回数m=1からm=mまでの各エポックnを覚醒区間として置きなおし、記憶部9に記憶する。また、前記条件に該当しない場合にはNOに進み、次の条件判定を行なう。
すなわち、ステップS137において、「(ΣU≧10のエポックnの数)≧m2%」(ここで、m2は全継続回数mに対する割合を示す定数であり、m2<m1なる定数である。)に該当するか否かを判定する。この条件に該当しない場合には、m=1からm=mまでの間に中途覚醒の可能性はないものとしてNOに進み、ステップS140において継続回数をm=0に戻す。前記条件に該当する場合には、中途覚醒の可能性ありと判定しYESに進み、更に条件を加える。
すなわち、ステップS138において、「(m=1からm=mまでの全エポックの平均呼吸数)≧(n=1からn=nmaxまでの全エポックの平均呼吸数)×mq」に該当するか否かを判定する。ここで、mqはmq>1なる定数であり、一般的に睡眠状態での呼吸数に比べて覚醒状態での呼吸数の方が多いとされていることから、睡眠状態を含むn=1からn=nmaxまでのエポックの平均呼吸数のmq倍よりも、m=1からm=mまでのエポックの平均呼吸数が多ければ、明らかに覚醒状態にあると判定できると言える。
前記条件を満たしていなければ、m=1からm=mまでの間に中途覚醒の可能性はないとしてNOに進み、ステップS140において継続回数をm=0に戻す。また、前記条件を満たしている場合にはYESに進み、ステップS139において、前記継続回数m=1からm=mまでの各エポックnを覚醒区間として置きなおし、記憶部9に記憶した後、ステップS140において継続回数がm=0に戻す。ステップS141において、全エポックnmaxにおいて上記判定がなされたか否か判断され、全エポックの判定がなされていなければNOに進み、再びステップS132からのステップを繰り返し、全エポックの判定がなされるとYESに進み、図16のフローチャートに戻る。
図18のフローチャートを用いて、起床判定部18の処理を説明する。
ステップS151において、エポックn=nmaxとし、ステップS152において、n=n−1として時間的に遡って、該当するエポックnを読み込む。ステップS153において、読み込んだエポックnが、睡眠状態と判定されているか否か、すなわち、深睡眠区間、浅睡眠区間及びREM睡眠区間の内いずれか(以下、睡眠区間と言う。)に該当するか否かを判定する。睡眠区間に該当しない場合にはNOに進み、再びステップS152においてn=n−1として睡眠区間の検出を繰り返す。また前記エポックnが睡眠区間であった場合にはYESに進み、ステップS154において、このエポックnを起床(仮)区間として定義する。続くステップS155において、前記起床(仮)区間から更に一定区間数Rまで遡った各エポックにおいて、覚醒区間が存在するか否かを判定する。ここで、人の通常の睡眠において、目覚める一定時間前に覚醒が起こることはないと見なせることから、前記一定区間数Rは、前記一定時間を定義するものである。前記覚醒区間が存在した場合にはYESに進み、ステップS158において、この検出された覚醒区間から前記起床(仮)区間までの各エポックを覚醒区間として定義し、ステップS154において、前記検出された覚醒区間の一つ前のエポックを新たに起床(仮)区間として再定義し、再びステップS155において、前記一定区間数Rを設定する。また、前記ステップS155において、一定区間数Rまでの間に覚醒区間が存在しなかった場合にはNOに進み、ステップS156において、前記起床(仮)区間を起床区間として決定し、ステップS157において、該当するエポックnに関連付けて記憶部9に記憶して、図3のメイン動作を示すフローチャートに戻る。以上の起床判定部18の処理結果に基づいて、前記深睡眠率演算部は、深睡眠率(%)を演算するために必要な「睡眠時間」すなわち「入眠から最終覚醒までの時間」を演算することが可能となる。
続いて、CPU6は、図3のステップS6に進み、睡眠点数演算処理を実行する。睡眠点数演算処理では、睡眠の質の程度を総合的に示す睡眠点数(睡眠指標)を演算により算出する。被験者が就寝姿勢を取ってから起床するまでの1回の睡眠において、上述した入床・離床判定、体動判定、覚醒判定、入眠判定、深睡眠判定、REM・浅睡眠判定、中途覚醒判定、起床判定によって、睡眠の状態を示す睡眠判定データ(例えば深睡眠時間、中途覚醒回数)を得ることができる。これらの睡眠判定データは、単体でも睡眠の質をある程度評価することができるが、単体での評価は、睡眠の状態のある一部を評価しているに過ぎない。そこで、本実施形態では、PSGの測定データのうち、睡眠の「深さ」、「周期」、「時間」、「中途覚醒」を反映する複数の所定項目(変数)を抽出し、既存の睡眠評価装置と相関のある変数として、深睡眠率(%)、差分睡眠周期スコア、総就床時間(分)、睡眠周期(分)、深睡眠出現量(分)、差分総就床時間スコア、中長時間覚醒回数(回)、短時間覚醒回数(回)、睡眠効率(%)を選定した。さらに、これらの所定項目(変数)を集約した睡眠点数を導くために、主成分分析を実施して睡眠評価スコアを開発すると共に、この睡眠評価スコアと睡眠時無呼吸症候群リスクとを反映する、睡眠点数の回帰式を開発した。なお、本実施形態における回帰式作成に際して解析したPSGの測定データの対象は、健常者49名、SAS患者112名であった。
上記の様に、本実施形態では、睡眠の質を総合的に評価するための評価指数である睡眠点数を導くために、睡眠評価スコアを主成分分析法によって選定する。
第1に、ある母集団について、PSGによって複数の所定項目(変数)を測定する。この例では、複数の所定項目として、深睡眠率(%)、差分睡眠周期スコア、総就床時間(分)、睡眠周期(分)、深睡眠出現量(分)、差分総就床時間スコア、中長時間覚醒回数(回)、短時間覚醒回数(回)、睡眠効率(%)とする。
第2に、前記複数の所定項目の相互の相関係数を算出し、相関行列を求める。9個の項目に基づく相関行列は、以下の式(1)に示す行列式で与えられる。但し、r11〜r99は相関係数である。
第3に、相関行列に基づいて、第1乃至第9主成分Z1〜Z9、固有ベクトルa11〜a99を算出する。これらは、以下の式(2)〜(10)で与えられる。
Z1=a11X1+a12X2+a13X3+a14X4+a15X5+a16X6+a17X7+a18X8+a19X9…式(2)
Z2=a21X1+a22X2+a23X3+a24X4+a25X5+a26X6+a27X7+a28X8+a29X9…式(3)
Z3=a31X1+a32X2+a33X3+a34X4+a35X5+a36X6+a37X7+a38X8+a39X9…式(4)
Z4=a41X1+a42X2+a43X3+a44X4+a45X5+a46X6+a47X7+a48X8+a49X9…式(5)
Z5=a51X1+a52X2+a53X3+a54X4+a55X5+a56X6+a57X7+a58X8+a59X9…式(6)
Z6=a61X1+a62X2+a63X3+a64X4+a65X5+a66X6+a67X7+a68X8+a69X9…式(7)
Z7=a71X1+a72X2+a73X3+a74X4+a75X5+a76X6+a77X7+a78X8+a79X9…式(8)
Z8=a81X1+a82X2+a83X3+a84X4+a85X5+a86X6+a87X7+a88X8+a89X9…式(9)
Z9=a91X1+a92X2+a93X3+a94X4+a95X5+a96X6+a97X7+a98X8+a99X9…式(10)
但し、X1〜X9は、上述した9個の項目である。第1乃至第9主成分Z1〜Z9は互いに直交するように固有ベクトルa11〜a99が定められる。直交するとは互いに独立であり、両者の間に相関がないことを意味する。
第4に、固有ベクトルa11〜a99が適切に第1乃至第9主成分Z1〜Z9の意味を反映しているかを判定する。固有ベクトルa11〜a99が適切に第1乃至第9主成分Z1〜Z9の意味を反映していないのは、項目の選定に誤りがある。このため、項目の組を棄却して、他の項目の組を採用する。
第5に、次の行列式から第1乃至第9主成分Z1〜Z9の固有値λ1〜λ9を求める。
固有値λ1〜λ9は、第1乃至第9主成分Z1〜Z9の分散と関係があり、固有値が大きい程、分散が大きくなり、固有値が小さい程、分散が小さくなる。そして、分散が大きい程、対応する主成分の重要度が高くなる。すなわち、固有値が大きい程、対応する主成分が全体をより適切に表現していることになる。
第6に、第1乃至第9主成分Z1〜Z9の寄与率を算出する。寄与率は各主成分の固有値が総ての固有値の合計に占める割合である。なお、相関行列に基づいて固有値を算出した場合には、寄与率は各固有値λ1〜λ9を主成分数である「9」で割って得られる。
第7に、第1主成分Z1〜Z9を寄与率が大きいものから順に並べ、累積寄与率が0.8を超えた時点で、それまでの主成分を睡眠評価スコアとして採用する。例えば、主成分の分析が下記の表で与えられ、K3<0.8<K4である場合、第4主成分までを睡眠評価スコアとして採用する。
第8に、固有ベクトルに固有値の平方根を乗じて因子負荷量を算出し、所定の基準値(例えば,0.5)以下のものを削除する。なお、削除せずにそのまま用いてよいことは勿論である。
以上、第1乃至第8のステップを経て、4個の睡眠評価スコアが選定され、後述する式(20)〜式(23)が導かれる。
ここで、4個の睡眠評価スコアは、9個の項目X1〜X9の各々と式(2)〜(10)に示す第1係数a11〜a99の積和算によって得られる。第1係数a11〜a99は固有ベクトルであるから、4個の睡眠評価スコアは、互いに一次独立の関係にある。すなわち、9個の項目のうちいずれか2つの相関係数よりも、互いの相関係数が小さい4個の睡眠評価スコアを生成する。したがって、睡眠評価スコアは複数(本実施形態では9個)の所定項目(変数)を睡眠の観点から集約したものであって、各々が睡眠の特徴を端的にあらわしている。よって、睡眠評価スコアを用いて睡眠を評価することによって、前記所定項目の単体や、これらを適当に組み合わせたものと比較して、より的確な評価指標を得ることができる。本実施形態においては、所定項目として深睡眠率(%)、差分睡眠周期スコア、総就床時間(分)、睡眠周期(分)、深睡眠出現量(分)、差分総就床時間スコア、中長時間覚醒回数(回)、短時間覚醒回数(回)、睡眠効率(%)を選定し、これらに基づいて4個の睡眠評価スコアを主成分分析法によって選定し、第1主成分として「睡眠深度スコア」、第2主成分として「睡眠周期スコア」、第3主成分として「睡眠時間スコア」、第4主成分として「中途覚醒スコア」、を得ることができた。「睡眠深度スコア」は深い睡眠を示す項目、「睡眠周期スコア」は睡眠周期を示す項目、「睡眠時間スコア」は睡眠時間を示す項目、「中途覚醒スコア」は中途覚醒を示す項目である。
図19は、睡眠点数演算処理における各演算の流れを示すフローチャートであり、図20〜図26は、ステップS165、ステップS167、ステップS168、ステップS169、ステップS170、ステップS171、ステップS172における各演算処理の詳細な流れを示すフローチャートである。また、図28は、当該演算処理で演算される所定項目を説明するためのタイムチャートである。なお、以下の説明では、これらの処理をCPU6が所定のプログラムに従って実行するものとする。
この睡眠点数演算処理は、被験者が完全に覚醒(すなわち、起床)した後に実行される。被験者が完全に覚醒した状態とは、所定期間、被験者の呼吸が検出されない状態が継続した場合に完全覚醒状態であると判断してもよいし、電源10とは別個に測定開始/終了ボタン(図示略)を設けて、終了ボタンが押し下げされた場合に、完全覚醒状態であると判断してもよい。そして、記憶部9には、測定が開始(図28の時刻t0)されてから終了(時刻te)するまでの各エポックにおける状態(すなわち、ステップS5における睡眠段階判定処理の結果)が記憶されており、睡眠点数演算処理に利用される。
図19に示されるように、睡眠点数演算処理においては、まず、深睡眠率算出処理(ステップS161)が実行される。深睡眠率(%)は、睡眠時間における深い睡眠の割合を意味し、「(深い睡眠の時間/睡眠時間)×100」、すなわち「(深い睡眠の時間/(入眠から最終覚醒までの時間))×100」として求めることができる。深睡眠率(%)を演算するために必要な「睡眠時間」即ち「入眠から最終覚醒までの時間」は、入眠判定部14により入眠区間と判定されて関連付けられているエポックを読み出して、覚醒判定部13により覚醒区間と判定されて関連付けられているエポックまでインクリメントして算出する。また、「深い睡眠の時間」は、図28に示されるように、測定を開始してから終了するまでの間(時刻t0〜te)における深睡眠時間の合計エポック数であり、後述の睡眠出現量DT(分)と同様にして算出すればよい。
続いて、CPU6は、図19のステップS162における差分睡眠周期スコア算出処理を実行する。差分睡眠周期スコアは、睡眠周期(分)が基準時間(例えば90分)に対してどの程度の差があるかを表すスコアである。「−|睡眠周期−所定基準時間|」(||は絶対値を表す。)により求めることができる。睡眠周期は、REM睡眠の終了から次のREM睡眠の終了までを1周期とした場合の平均値であるので、REM・浅睡眠判定部16によりREM睡眠区間と判定されて関連付けられているエポックに基づいて前記平均値を算出すればよい。なお、基準時間としては、例えば90分とすればよいが、特に限定されるものではない。
続いて、CPU6は、図19のステップS163における総就床時間算出処理を実行する。総就床時間(分)は、就床から離床までの時間を意味する。入床・離床判定部11により入床状態と判定されて関連付けられているエポックの合計として算出すればよい。
続いて、CPU6は、図19のステップS164における睡眠周期算出処理を実行する。睡眠周期は、前記差分睡眠周期スコア算出処理と同様に、REM・浅睡眠判定部16によりREM睡眠区間と判定されて関連付けられているエポックに基づいて前記平均値を算出すればよい。
続いて、CPU6は、図19のステップS165における深睡眠出現量算出処理に進み、図20に示す深睡眠出現量算出処理を実行する。深睡眠出現量DT(分)は、深い睡眠の時間の総和を意味し、より具体的には、図28に示されるように、測定を開始してから終了するまでの間(時刻t0〜te)における深睡眠出現量の合計エポック数である。よって、図28に示されるように、時刻t0〜teの期間中に深睡眠出現量DT1とDT2が測定された場合、深睡眠出現量DT=DT1+DT2となる。
図20に示されるように、深睡眠出現量算出処理においては、まず、最初のエポックの次のエポックに進む(ステップS221)。次に、ステップS222において、当該エポックが最終エポックEeであるか否か判定する。この判定条件が否定された場合、続いて、ステップS223において、当該エポックが深睡眠状態であるか否か判定する。この判定条件が肯定された場合、ステップS224において深睡眠出現量DTがインクリメントされ(ただし、DTの初期値DT=0)、処理はステップS221に戻る。一方、ステップS223の判定条件が否定された場合、深睡眠出現量DTはインクリメントされることなく、処理はステップS221に戻る。ステップS221〜S224までの処理、あるいはステップS221〜S223までの処理は、ステップS222の判定条件が肯定されるまで繰り返される。ステップS222の判定条件が肯定されると、処理は図19のフローチャートに戻る。
続いて、CPU6は、図19のステップS166における差分総就床時間スコア算出処理を実行する。差分総就床時間スコアは、総就床時間(分)が基準時間(例えば6.5時間(390分))に対してどの程度の差があるかを表すスコアであり、「−|総就床時間−基準時間|」(||は絶対値を表す。)により求めることができる。総就床時間(分)は、前記総就床時間算出処理と同様に、入床・離床判定部11により入床状態と判定されて関連付けられているエポックの合計として算出すればよい。
続いて、CPU6は、図19のステップS167における中長時間覚醒回数算出処理に進み、図21に示す中長時間覚醒回数算出処理を実行する。中長時間覚醒回数(回)は、睡眠中に現れる基準時間(例えば、2分30秒)以上の覚醒の回数を意味する。図21に示されるように、中長時間覚醒回数算出処理においては、まず、最初のエポックの次のエポックに進む(ステップS191)。次に、ステップS192において、当該エポックが最終エポックEeであるか否か判定する。この判定条件が否定された場合、続いて、ステップS193において、T分以上継続する覚醒か否か判定する。上述したように、本実施形態においては1エポック=30秒であるから、T=2.5の場合、覚醒エポックが連続して5個以上継続した場合には、覚醒状態であるとみなされる。したがって、CPU6は、覚醒状態であるエポックが所定数(例えば、5個以上)連続した場合にのみ、ステップS193の判定を肯定する。続いて、ルーチンはステップS194に進み、中長時間覚醒回数(WN;但し、初期値WN=0)をインクリメントする。続いて、ステップS195において、覚醒が継続した数だけエポックを進め、ステップS191に戻る。一方、ステップS193の判定条件が否定された場合、ステップS191に戻る。ステップS191〜S195あるいはステップS191〜S193の処理は、ステップS192の判定において、判定対象のエポックが最終エポックEeであると判定されるまで繰り返される。ステップS192の判定条件が肯定されると、中長時間覚醒回数算出処理は終了し、ルーチンは、図19のフローチャートに戻る。
続いて、CPU6は、図19のステップS168における短時間覚醒回数算出処理に進み、図22に示す短時間覚醒回数算出処理を実行する。短時間覚醒回数(回)は、睡眠中に現れる基準時間(例えば2分)以内の覚醒の回数を意味する。図22に示されるように、短時間覚醒回数算出処理においては、まず、最初のエポックの次のエポックに進む(ステップS231)。次に、ステップS232において、当該エポックが最終エポックEeであるか否かを判定する。この判定条件が否定された場合、続いて、ステップS233において、T分未満継続する覚醒か否か判定する。上述したように、本実施形態においては1エポック=30秒であるから、T=2.5の場合、連続する覚醒エポックが5個未満である場合には、短時間覚醒であるとみなされる。したがって、CPU6は、連続する覚醒エポックの数が所定数(例えば、5個)未満である場合にのみ、ステップS233の判定を肯定する。続いて、ルーチンはステップS234に進み、短時間覚醒回数(MN;但し、初期値MN=0)をインクリメントする。続いて、ステップS235において、覚醒が継続した数だけエポックを進め、ステップS231に戻る。一方、ステップS233の判定が否定された場合、ステップS231に戻る。ステップS231〜S235あるいはステップS231〜S233の処理は、ステップS232の判定において、判定対象のエポックが最終エポックEeであると判定されるまで繰り返される。ステップS232の判定が肯定されると、短時間覚醒回数算出処理は終了し、ルーチンは、図19のフローチャートに戻る。
続いて、CPU6は、図19のステップS169における睡眠効率算出処理に進み、図23に示す睡眠効率算出処理を実行する。睡眠効率(%)は、総就床時間に対する実際に眠っていた時間の割合を意味し、「(総睡眠時間/総就床時間)×100」、すなわち「((総就床時間−睡眠中に覚醒した時間の総和)/総就床時間)×100」として求めることができる。すなわち、睡眠効率SEは、測定が開始(図28の時刻t0)されてから終了(時刻te)するまでの総エポック数をIAとし、後述の判定ステップS183において覚醒状態であると判定されたエポックの数(覚醒エポック数)をIとした場合に、(IA−I)/IAで求められる値である。よって、当該睡眠効率算出処理において、最初のエポックは覚醒状態であるので、覚醒エポック数(I)の初期値は1に設定され、ステップS183において、判定対象のエポックが覚醒であると判定される度にインクリメントされる(ステップS184)。
図23に示されるように、ステップS181において、CPU6は、まず、次のエポックに進む。続いて、ステップS182において、当該エポックが完全覚醒状態に遷移する直前のエポック(図28の最終エポックEe)であるか否か判定する。この判定が否定された場合、当該エポックは覚醒状態であるか否か判定する(ステップS183)。この判定結果が肯定的された場合、ステップS184に進み、覚醒エポック数(I)の値がインクリメントされ、ステップS181に戻り、次のエポックに進む。一方、ステップS183の判定条件が否定された場合、覚醒エポック数(I)の値をインクリメントすることなく、ステップS181に戻る。CPU6は、ステップS182の判定結果が肯定的にならない限り、ステップS181〜S183あるいはステップS181〜S184の処理を繰り返す。
一方、ステップS182の判定が肯定された場合、ルーチンはステップS185に進み、睡眠効率SEを演算する。すなわち、上記式SE=(IA−I)/IAに、覚醒エポック数Iの最終値および総エポック数IAの数値が代入されて、睡眠効率SEが求められ、当該睡眠効率算出処理は終了し、図19のフローチャートに戻る。
続いて、CPU6は、図19のステップS170における各データ標準化処理を実行する。図24に示されるように、各データ標準化処理においては、上述のステップS161〜S169で取得された睡眠判定データの値の標準化処理が実行される。まず、ステップS241において、深睡眠率Zaの標準値Za(st)は、Za(st)=(Za−平均Za)/標準偏差Zaにより求められる。ここで、各平均Zaおよび標準偏差Zaは、PSGの測定データに基づいた母集団における深睡眠率Zaの各平均値および標準偏差値(各々固定値)である。母集団は、例えば、被験者の年齢が20代の場合、20代のX人の集団である。被験者は、操作部5を用いて自己のパラメータ(例えば、年齢、性別)を予め入力しておくことにより、適切な母集団に関するデータが選択されて、当該標準化処理に利用される。この母集団に関するデータは、記憶部9に予め記憶されている。CPU6は、記憶部9から平均値および標準偏差を読み出してステップS241の演算を実行する。なお、ステップS242〜S249の処理でも同様である。
同様にして、各ステップS242〜S249において、各睡眠判定データの標準化処理が行われる。各睡眠判定データの標準値は、下記式(12)〜式(19)により求められる(ステップS242〜S249)。
差分睡眠周期スコアZb(st)=(Zb−平均Zb)/標準偏差Zb…式(12)
総就床時間Zc(st)=(Zc−平均Zc)/標準偏差Zc…式(13)
睡眠周期Zd(st)=(Zd−平均Zd)/標準偏差Zd…式(14)
深睡眠出現量Ze(st)=(Ze−平均Ze)/標準偏差Ze…式(15)
差分総就床時間スコアZf(st)=(Zf−平均Zf)/標準偏差Zf…式(16)
中長時間覚醒回数Zg(st)=(Zg−平均Zg)/標準偏差Zg…式(17)
短時間覚醒回数Zh(st)=(Zh−平均Zh)/標準偏差Zh…式(18)
睡眠効率Zi(st)=(Zi−平均Zi)/標準偏差Zi…式(19)
この標準化の処理によって、異なるスケールの深睡眠率Za、差分睡眠周期スコアZb、総就床時間Zc、睡眠周期Zd、深睡眠出現量Ze、差分総就床時間スコアZf、中長時間覚醒回数Zg、短時間覚醒回数Zh、及び睡眠効率Ziを同一の処理で取り扱うことが可能となる。ステップS249の処理が終了すると、ルーチンは、図19のフローチャートに戻る。
続いて、CPU6は、図19のステップS171における各主成分スコア演算処理を実行する。図25に示されるように、各主成分スコア演算処理においては、上述のステップS170で取得された各睡眠判定データの標準値が演算に利用される。主成分スコア演算処理では、PSGの測定データに基づいて抽出された、少なくとも睡眠の深さに係る項目と、睡眠のリズムに係る項目と、中途覚醒に係る項目と、を含む複数種類の所定項目について主成分分析を行って得られる睡眠評価スコアの前記所定項目ごとの主成分係数と、前記被験者の前記生体信号から算出された前記所定項目に対応する睡眠判定データと、を乗算して睡眠評価スコアを算出する。より具体的には、9個の睡眠判定データである深睡眠率Za、差分睡眠周期スコアZb、総就床時間Zc、睡眠周期Zd、深睡眠出現量Ze、差分総就床時間スコアZf、中長時間覚醒回数Zg、短時間覚醒回数Zh、及び睡眠効率Ziから、4個の睡眠評価スコアである「睡眠深度スコア」、「睡眠周期スコア」、「睡眠時間スコア」、「中途覚醒スコア」を算出する。CPU6は、「睡眠深度スコア」、「睡眠周期スコア」、「睡眠時間スコア」、「中途覚醒スコア」を以下に示す式(20)〜式(23)に従って算出する(ステップS251〜S254)。
第1主成分スコア(睡眠深度スコア)
= 係数C1a * 標準値Za(st) + 係数C1b * 標準値Zb(st) + 係数C1c * 標準値Zc(st) + 係数C1d * 標準値Zd(st) + 係数C1e * 標準値Ze(st) + 係数C1f * 標準値Zf(st) + 係数C1g * 標準値Zg(st) + 係数C1h * 標準値Zh(st) + 係数C1i * 標準値Zi(st) …式(20)
第2主成分スコア(睡眠周期スコア)
= 係数C2a * 標準値Za(st) + 係数C2b * 標準値Zb(st) + 係数C2c * 標準値Zc(st) + 係数C2d * 標準値Zd(st) + 係数C2e * 標準値Ze(st) + 係数C2f * 標準値Zf(st) + 係数C2g * 標準値Zg(st) + 係数C2h * 標準値Zh(st) + 係数C2i * 標準値Zi(st) …式(21)
第3主成分スコア(睡眠時間スコア)
= 係数C3a * 標準値Za(st) + 係数C3b * 標準値Zb(st) + 係数C3c * 標準値Zc(st) + 係数C3d * 標準値Zd(st) + 係数C3e * 標準値Ze(st) + 係数C3f * 標準値Zf(st) + 係数C3g * 標準値Zg(st) + 係数C3h * 標準値Zh(st) + 係数C3i * 標準値Zi(st) …式(22)
第4主成分スコア(中途覚醒スコア)
= 係数C4a * 標準値Za(st) + 係数C4b * 標準値Zb(st) + 係数C4c * 標準値Zc(st) + 係数C4d * 標準値Zd(st) + 係数C4e * 標準値Ze(st) + 係数C4f * 標準値Zf(st) + 係数C4g * 標準値Zg(st) + 係数C4h * 標準値Zh(st) + 係数C4i * 標準値Zi(st) …式(23)
ここで、前記式(20)乃至式(23)における各係数は、9個の所定項目に基づく主成分分析法から求めた定数であり、記憶部9に記憶されている。CPU6は、それぞれの係数を記憶部9から読み出して、演算処理を実行する。9個の所定項目と主成分スコアとの主成分得点係数行列は、表2に示す通りである。
ステップS254の処理が終了すると、ルーチンは、図19のフローチャートに戻る。
続いて、CPU6は、図19のステップS172における睡眠障害判別確率演算処理を実行する。ここで、睡眠障害判別確率とは、SAS患者のような睡眠障害者である確率をいう。図26に示すように、睡眠障害判別確率演算処理においては、睡眠評価スコアについてロジスティック回帰分析を行って得られる睡眠障害判別確率を算出する。CPU6は、ステップS171において演算された第1主成分スコア(睡眠深度スコア)、第2主成分スコア(睡眠周期スコア)、第3主成分スコア(睡眠時間スコア)、第4主成分スコア(中途覚醒スコア)を用いて、以下の式(24)により変数Pを演算する(ステップS261)。なお、この時、第3主成分スコア(睡眠時間スコア)、第4主成分スコア(中途覚醒スコア)の符号を反転させる処理を適宜行ってもよい。
変数P
= 固定値F1 * 第1主成分スコア + 固定値F2 * 第2主成分スコア + 固定値F3 * 第3主成分スコア + 固定値F4 * 第4主成分スコア …式(24)
ここで、固定値F1〜F4は、ある母集団の主成分分析法から求めた固定値である。これらの固定値は記憶部9に記憶されており、CPU6が読み出して演算に用いる。
次に、CPU6は、ステップS261で演算した変数Pを用いて、以下の式(25)により睡眠障害判別確率を演算する(ステップS262)。
睡眠障害判別確率 = 1/(1+(exp−(P))) …式(25)
ステップS262の処理が終了すると、ルーチンは、図19のフローチャートに戻る。
この後、CPU6は、図19のステップS173の睡眠点数演算処理を実行する。図27に示すように、睡眠点数演算処理においては、CPU6は、ステップS262により演算された睡眠障害判別確率を用いて、以下の式(26)により睡眠点数(睡眠指数)を演算する(ステップS263)。
睡眠点数 = 100 - (睡眠障害判別確率 * 100) …式(26)
CPU6は、ステップS263で得られた睡眠点数を記憶部9に記憶する(ステップS174、図19参照)。
このように、本発明における睡眠点数を求める回帰式は、上記説明した以下の3式に集約されることとなる。
変数P = 固定値F1 * 第1主成分スコア + 固定値F2 * 第2主成分スコア + 固定値F3 * 第3主成分スコア + 固定値F4 * 第4主成分スコア …式(24)
判別確率 = 1/(1+(exp−(P))) …式(25)
睡眠点数 = 100 - (睡眠障害判別確率 * 100) …式(26)
次に、睡眠タイプ判定処理を説明する。
本発明にかかる睡眠評価装置1が実行する睡眠タイプ判定処理は、予め設定されている複数の睡眠タイプのうち、被験者の睡眠がいずれの睡眠タイプに該当するものであったのかを判定するものである。睡眠タイプは、睡眠評価スコアの各値の高低に基づき、睡眠内容の特徴に応じて分類化された種別である。睡眠タイプは、上記の通り演算された睡眠評価スコアである、睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)の他、更に体動頻度スコア(第5スコア)の程度に基づいて予め設定・記憶させておくのが好適である。体動頻度スコアとは、睡眠中に生じる体動の発生頻度に関するスコアである。
睡眠タイプは、一例として、睡眠深度スコア、睡眠周期スコア、睡眠時間スコア、中途覚醒スコア、及び、体動頻度スコアのそれぞれの値を考慮して、図29乃至図33に示すような5種類の睡眠タイプを設定する。図29乃至図33は、第1睡眠タイプ乃至第5睡眠タイプの例を示すレーダーチャートである。図29に示す第1睡眠タイプは、睡眠時間は標準的だが、体動が多く深睡眠・リズムがない、という睡眠タイプである。図30に示す第2睡眠タイプは、睡眠時間が短く、中途覚醒が多く、睡眠リズムが悪い、という睡眠タイプである。図31に示す第3睡眠タイプは、睡眠時間・リズムはほぼ標準だが,体動・中途覚醒が多く、深睡眠が少ない、という睡眠タイプである。図32に示す第4睡眠タイプは、いずれのスコアも標準的、という睡眠タイプである。図33に示す第5睡眠タイプは、睡眠時間・深睡眠が少なく、途中覚醒・体動が多い、という睡眠タイプである。本実施形態では、予め設定されている複数の睡眠タイプとして、5種類の睡眠タイプを説明するが、睡眠タイプの内容や種類を適宜変更してもよいことは言うまでもない。
まず、図34に示すように、体動頻度スコアの演算を実施する。図34は、体動頻度スコア演算を示すフローチャートである。なお、この処理は、体動頻度スコア演算部としてのCPU6が、所定のプログラムに従って実行するものとして説明する。図34に示すように、CPU6は、以下の式(27)により体動頻度スコアを演算し、記憶部9に記憶する(ステップS264)。
体動頻度スコア=体動回数/総就床時間 …(27)
ここで、総就床時間は、上述した通り、図19のステップS163における総就床時間算出処理の実行によって既に算出されている値を用いることができる。
体動回数は、体動によりセンサ部2における出力が所定の閾値よりも大きかった部分を検出することによって求めればよい。その求め方は特に限定されるものではないが、一例としては次の通りである。
(1)センサ部2から検出された信号の中央値を基準にして折り返す(全波整流)。
(2)前記(1)の波形に対して所定のフィルタ処理を行う。例えば、無限インパルス応答(infinite impulse response;IIR)フィルタを用い、低域側0.01Hz、高域側0.1Hzの4次のバンドパスフィルタ(band pass filter;BPF)を、順方向及び逆方向の両方でフィルタ処理する。
(3)前記(2)の波形について所定の閾値を設定する。例えば、前記(2)の波形の全データの平均値と標準偏差とを求め、その両者の和を閾値として設定する。
(4)前記(2)の波形について、前記(3)の閾値を超えた点が存在するエポックの数をカウントし、これを体動回数とする。
続いて、CPU6は、図3のステップS7における睡眠タイプ判定処理を実行する。なお、この処理は、睡眠タイプ判定部60としてのCPU6が、所定のプログラムに従って実行するものとして説明する。睡眠タイプ判定処理の一例を、図35を参照して説明する。図35は、睡眠タイプ判定を示すフローチャートである。
図35に示すように、睡眠タイプ判定処理においては、上述のステップS251〜S254で取得された4個の睡眠評価スコアである、睡眠深度スコア(第1主成分スコア)、睡眠周期スコア(第2主成分スコア)、睡眠時間スコア(第3主成分スコア)、中途覚醒スコア(第4主成分スコア)を、以下に示す式(28)〜式(32)に代入し、第1判定値乃至第5判定値を算出する(ステップS265〜S269)。なお、第1判定値は第1睡眠タイプの該当性を判定するための値、第2判定値は第2睡眠タイプの該当性を判定するための値、第3判定値は第3睡眠タイプの該当性を判定するための値、第4判定値は第4睡眠タイプの該当性を判定するための値、第5判定値は第5睡眠タイプの該当性を判定するための値である。
第1判定値
= 係数V1a * 第1主成分スコア + 係数V2a * 第2主成分スコア + 係数V3a * 第3主成分スコア + 係数V4a * 第4主成分スコア …式(28)
第2判定値
= 係数V1b * 第1主成分スコア + 係数V2b * 第2主成分スコア + 係数V3b * 第3主成分スコア + 係数V4b * 第4主成分スコア …式(29)
第3判定値
= 係数V1c * 第1主成分スコア + 係数V2c * 第2主成分スコア + 係数V3c * 第3主成分スコア + 係数V4c * 第4主成分スコア …式(30)
第4判定値
= 係数V1d * 第1主成分スコア + 係数V2d * 第2主成分スコア + 係数V3d * 第3主成分スコア + 係数V4d * 第4主成分スコア …式(31)
第5判定値
= 係数V1e * 第1主成分スコア + 係数V2e * 第2主成分スコア + 係数V3e * 第3主成分スコア + 係数V4e * 第4主成分スコア …式(32)
ここで、前記式(28)乃至式(32)における各係数は、上記の5種類の睡眠タイプのいずれに最も近いのかを判定するために予め設定された定数であり、記憶部9に記憶されている。CPU6は、それぞれの係数を記憶部9から読み出して、演算処理を実行する。第1乃至第5判定値と主成分スコアとの係数行列は、表3に示す通りである。
第1判定値乃至第5判定値を算出した後(ステップS265〜S269)、最も大きな値である判定値を選定し、その判定値に対応する睡眠タイプを特定することによって、被験者の睡眠タイプが、第1睡眠タイプ乃至第5睡眠タイプのうちいずれに該当するのかを決定し(ステップS270)、記憶部9に記憶する。ステップS270の処理が終了すると、ルーチンは、図3のフローチャートに戻る。
次に、評価結果表示処理(ステップ8、図3参照)について説明する。図36は、CPU6が実行する評価結果表示処理の内容を示すフローチャートであり、図37は、睡眠評価画面の一例であり、図38は、睡眠タイプ及びグラフ表示の表示画面の一例であり、図39は睡眠点数推移画面の一例である。
まず、CPU6は、睡眠点数比較処理を実行する(ステップS271)。この睡眠点数比較処理では、睡眠点数演算処理で得られた睡眠点数Scoreを第1基準値W、第2基準値Yと比較して、睡眠点数Scoreを3段階に分ける。具体的には、ある母集団に含まれていた睡眠異常群の睡眠点数平均値+分散値を第1基準値W、睡眠健常群の睡眠点数平均値+分散値を第2基準値Yとしたとき、睡眠点数Scoreが第1基準値W以下の場合には第1区分、睡眠点数Scoreが第1基準値W上回り第2基準値Y以下の場合には第2区分、睡眠点数Scoreが第2基準値Yを上回る場合には、睡眠点数Scoreを第3区分に分類する。ここで、第1基準値Wは、ある母集団に含まれていた睡眠異常群の睡眠点数平均値+分散値であり、第2基準値Yは睡眠健常群の睡眠点数平均値+分散値である。これらの固定値W,Yは記憶部9に記憶されており、睡眠点数比較処理において読み出される。
次に、CPU6は、睡眠点数Scoreが第1区分に分類された場合には、表示部4に「悪い睡眠です」と表示し、睡眠点数Scoreが第2区分に分類された場合には「普通の睡眠です」と表示し、睡眠点数Scoreが第3区分に分類された場合には「良い睡眠です」と表示する(ステップS272)。例えば、良い睡眠の場合は、図37に示す睡眠評価画面が、表示部4に表示される。この場合、CPU6は、睡眠点数比較処理の処理結果の他、ステップS5及びステップS6の処理結果を用いて、一回の睡眠の段階の遷移を併せて表示するのが好適である。睡眠点数Scoreの外にその区分を表示することによって、利用者は睡眠の質の大まかな良否を知ることができる。さらに、覚醒、浅い、深いといった睡眠の段階の時間経過が表示されるので、自己の体調管理などに役立てることが可能となる。
次に、CPU6は、次画面を表示する操作がなされたか否かを判定し(ステップS273)、操作がなされた場合には、上記の通り演算されて記憶部9に記憶されている睡眠評価スコア、即ち、睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア)のグラフ表示と、該当する睡眠タイプを表示部4に表示する(ステップS274)。グラフ表示は特に限定されるものではなく、一例としては、図38に示すように、中央から放射状に睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア)の軸をとったレーダーチャートとする。このように、複数のスコアの状態を可視化して、睡眠点数の分析及び自己評価を容易に行うことができるものとなる。即ち、睡眠点数という数値がいかなる要因によって低いものであったのか(又は高いものであったのか)を、睡眠深度、睡眠周期、睡眠時間、中途覚醒、体動頻度等の各観点から判断でき、何を改善すれば睡眠点数の向上に繋がるのか、といった改善点を見出しやすくなる。更に、予め複数設定されている代表的な睡眠タイプのうち、被験者の睡眠がいずれの睡眠タイプに該当するものであったか、という評価を表示することにより、被験者自身は自己の睡眠がいかなるものであったのかを極めて容易に理解できるものとなる。また、睡眠タイプの名称として、直感的に分かり易い名称を採用して表示するようにすれば、被験者は自身の睡眠状態をイメージしやすくなるので好適である。例えば、中途覚醒スコアが高い睡眠タイプについて「ギラギラ」、体動頻度スコアが高い睡眠タイプに「ゴロゴロ」、睡眠深度スコアの高低に応じて「ぐっすり」又は「ウトウト」、睡眠時間スコアの高低に応じて「長時間」又は「短時間」としたり、これらを適宜組み合わせた名称を採択してもよい。
次に、CPU6は、次画面を表示する操作がなされたか否かを判定し(ステップS276)、操作がなされた場合には、記憶部9に記憶された睡眠点数Scoreに基づいてその平均値と分散値とを演算し(ステップS276)、さらに睡眠点数推移画面を表示部4に表示する(ステップS277)。例えば、図39に示すように縦軸に睡眠点数Score、横軸に日付を取った棒グラフとする。この場合、睡眠点数ScoreがステップS276で算出した平均値+分散値以下であれば、棒グラフに色を付けて表示する。これによって、利用者は睡眠の質が悪かった日を知ることができ、体調管理に役立てることができる。
次に、CPU6は、次画面を表示する操作がなされたか否かを判定し(ステップS278)、操作がなされた場合には、処理を終了する。
本発明によれば、所定項目の1つとして深睡眠率(%)を選定したため、睡眠の質を評価するための回帰式に深睡眠率が反映されており、睡眠の深さに係る評価能力が向上される。図40は、睡眠点数に関する従来技術と本発明との比較を示すグラフであり、(a)は、従来の睡眠点数と深睡眠率との相関を示すグラフ、(b)は、本発明の睡眠点数と深睡眠率との相関を示すグラフである。従来技術による睡眠点数としては出願人製品の睡眠評価装置(スリープスキャンSL−501)を用いた。また、縦軸の深睡眠率(%)は、(a)及び(b)共に、前記出願人製品の睡眠評価装置による測定結果を用いている。従来の睡眠点数と深睡眠率との相関(図40(a))よりも、本発明の睡眠点数と深睡眠率との相関(図40(b))の方がよいことが明らかであり、睡眠の質の評価において重要な、睡眠の深さに係る項目、睡眠のリズムに係る項目、中途覚醒に係る項目のうち、睡眠の深さに係る項目の評価能力を向上することができる。
本発明によれば、SAS患者のような睡眠障害者である確率(睡眠障害判別確率)を算出し、これを反映して睡眠点数を演算するので、睡眠障害者と健常者とで、睡眠の質の評価結果に違いを持たせることができる。図41は、睡眠点数に関する従来技術と本発明との比較を示すグラフである。従来技術としては出願人製品の睡眠評価装置(スリープスキャンSL−501)を用いた。本発明によれば、SAS患者の睡眠点数と健常者の睡眠点数との違いが、従来技術の場合よりも顕著に表れていることがみてとれる。
(第1実施形態の変形例1)
上記の第1実施形態では、睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア)の5つのスコアを求め、これらに基づいて睡眠タイプを決定し、一例として5角形のレーダーチャート及び該当する睡眠タイプを表示するものを説明した(図38)。これに対して、睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)の4つのスコアを求め、これらに基づいて睡眠タイプを決定し、菱形のレーダーチャート及び該当する睡眠タイプを表示するようにしてもよい。
(第1実施形態の変形例2)
また、睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア)に加え、第6スコアとして睡眠習慣スコアをも含めた6つのスコアを求め、6角形のレーダーチャートを表示するようにしてもよい。以下、これについて説明する。
睡眠習慣スコアとは、所定日数分の睡眠記録における各日の就寝時刻及び起床時刻に基づいて算出されるスコアである。この睡眠習慣スコアは、より具体的には、一例として後述のようにして決定される就寝時刻スコアと起床時刻スコアとの平均値として求める。図42乃至図50に基づいて、睡眠習慣スコア、就寝時刻スコア、起床時刻スコアについて説明する。図42、図45、図47、図49は、睡眠日誌の例を示す図、図43、図46、図48、図50は、就寝時間テーブル及び起床時間テーブルの例を示す図、図44は、睡眠習慣パターンテーブルの例を示す図である。
本発明による睡眠評価装置1は、被験者について測定した睡眠に関するデータを、睡眠日誌(睡眠記録)として集計して、記憶部9に記憶しておく。睡眠日誌の一例としては、図42に示すような睡眠日誌SD1が挙げられる。第1日の記録である項番1の行を参照すると、この被験者は、23時から24時までの間に就寝し、翌日の6時から7時までの間に起床したことを示しており、同様に、その後も、就寝時刻及び起床時刻は一定していることが分かる。睡眠評価装置1は、このような睡眠日誌SD1に沿って、就寝時刻スコア及び起床時刻スコアを算出する。
就寝時刻スコア及び起床時刻スコアを算出するために、睡眠日誌SD1の結果を反映する就寝時刻テーブルST1及び起床時刻テーブルWT1(図43参照)に示す要領で、所定日数の間に観測された最も多い就寝時刻及び起床時刻を求める。本実施例では、睡眠習慣スコアを決定する所定日数として直近7日間である例を示し、そのため、図43に示すように、就寝時刻テーブルST1及び起床時刻テーブルWT1は、いずれも、24時間を示す24列と、7日間を示す7行と、により構成されている。
睡眠日誌SD1において、直近7日分が記録された後、睡眠評価装置1は、その直近7日分の記録に沿って、就寝時刻スコア及び起床時刻スコアを算出する。即ち、睡眠日誌SD1の項番1乃至項番7までが記録された後、睡眠評価装置1は、その項番1乃至項番7までの記録に沿って、就寝時刻テーブルST1及び起床時刻テーブルWT1に入力を行う。なお、次の日には、睡眠日誌SD1には項番8までが記録されるため、睡眠評価装置1は、最も古い項番1の記録を除外して、項番2乃至項番8までの記録に沿って、就寝時刻スコア及び起床時刻スコアを算出することとする。
睡眠日誌SD1の項番1によれば、就寝時間は23時から24時の間であるので、図43に示すように、睡眠評価装置1は、就寝時刻テーブルST1の項番1の、23時から24時の時間帯に対応した列12に「1」を入力する。同様に、睡眠日誌SD1の項番1によれば、起床時間は6時から7時の間であるので、睡眠評価装置1は、起床時刻テーブルWT1の項番1の、6時から7時の時間帯に対応した列19に「1」を入力する。同様にして、睡眠評価装置1は、睡眠日誌SD1の項番2から項番7までの記録に対応させて、就寝時刻テーブルST1及び起床時刻テーブルWT1の項番2から項番7に入力を行う。
就寝時刻テーブルST1及び起床時刻テーブルWT1の項番1乃至項番7への入力後、睡眠評価装置1は、各列の合計値sumST、sumWTを算出し、また、それらのsumST、sumWTの中から最大値を検出する。図43に示す例によれば、sumSTの最大値は列12の「7」、sumWTの最大値は列19の「7」、と検出される。更に、睡眠評価装置1は、検出された最大値を示す列の直前の列及び直後の列におけるsumST、sumWTをも検出する。この結果、図43の就寝時刻テーブルST1では、列11、12、13より「0−7−0」(3値の合計値は「7」)というパターンのsumSTが検出され、同様に、起床時刻テーブルWT1では、列18、19、20より「0−7−0」(3値の合計値は「7」)というパターンのsumWTが検出されることとなる。ここで、sumST、sumWTの最大値を検出することにより、所定日数(例えば7日間)において、最も多かった就寝時刻及び起床時刻、を把握することが可能となる。また、sumST、sumWTの最大値を示す列の直前の列及び直後の列のsumST、sumWTをも検出して睡眠習慣スコアの基礎とするのは、就寝時刻や起床時刻の1時間以内の差異は、睡眠習慣を検討する上では許容可能な範囲であるからである。毎日規則正しい就寝及び起床をしている被験者の場合、sumST及びsumWTの各最大値は、それぞれ所定日数に相当する数(図43では「7」)となる。しかしながら、不規則な就寝及び起床をしている被験者の場合は、ばらつきが生じるため、sumST及びsumWTの各最大値は、所定日数に相当する数(図43では「7」)に満たないことになる。
睡眠評価装置1は、前記のように検出された、sumSTの最大値、その直前の列におけるsumST、及び、直後の列におけるsumSTからなるパターン(前記例によれば「0−7−0」(3値の合計値は「7」))を、予め記憶部9に記憶されている睡眠習慣パターンテーブルと照合し、一致するパターンに対応する点数を「就寝時刻スコア」として決定する。同様に、睡眠評価装置1は、sumWTの最大値、その直前の列におけるsumWT、及び、直後の列におけるsumWTからなるパターン(前記例によれば「0−7−0」(3値の合計値は「7」))を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、一致するパターンに対応する点数を「起床時刻スコア」として決定する。
ここで、図44を参照して、睡眠習慣パターンテーブルについて説明する。図44に示すように、睡眠習慣パターンテーブルは、sumST(sumWT)の最大値、その直前の列におけるsumST(sumWT)、及び、直後の列におけるsumST(sumWT)からなる総てのパターンに対応させて、「起床時刻スコア」である点数が定まるように設定されている。テーブルの上位に位置するパターンは、就寝時刻(起床時刻)が一定して規則正しい睡眠習慣と評価でき、これらに対しては点数が高く設定されている。一方、テーブルの下位に位置するパターンは、就寝時刻(起床時刻)にばらつきがあり不規則な睡眠習慣と評価でき、これらに対しては点数が低く設定されている。
睡眠評価装置1は、sumSTの最大値、その直前の列におけるsumST、及び、直後の列におけるsumSTからなるパターン(前記例によれば「0−7−0」(3値の合計値は「7」))を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、パターンナンバー1と一致するため、これに対応する点数「10」を「就寝時刻スコア」として決定する。同様に、睡眠評価装置1は、sumWTの最大値、その直前の列におけるsumWT、及び、直後の列におけるsumWTからなるパターン(前記例によれば「0−7−0」(3値の合計値は「7」))を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、パターンナンバー1と一致するため、これに対応する点数「10」を「起床時刻スコア」として決定する。
睡眠評価装置1は、以上のように決定した、就寝時刻スコア(前記例では「10」)と起床時刻スコア(前記例では「10」)との平均値を算出し、その平均値(前記例では「10」)を「睡眠習慣スコア」として決定し、記憶部9に記憶する。
図42の睡眠日誌SD1、図43の就寝時間テーブルST1及び起床時間テーブルWT1に基づいて上述した例は、最も規則正しい睡眠習慣を実践している被験者の場合である。以下、別の睡眠習慣の被験者の例を説明する。
図45に示す睡眠日誌SD2は、一般的に休日であることが多い土曜日及び日曜日における就寝及び起床が、月曜日乃至金曜日における就寝及び起床よりも遅くなる被験者の例を示している。このような睡眠日誌SD2において、項番8までの記録がなされた後に、直近7日間の(即ち項番2乃至項番8の)記録に沿って、就寝時刻スコア及び起床時刻スコアを算出する例を説明する。
睡眠日誌SD2の項番2によれば、就寝時間は23時から24時の間であるので、図46に示すように、睡眠評価装置1は、就寝時刻テーブルST2の項番1の、23時から24時の時間帯に対応した列12に「1」を入力する。同様に、睡眠日誌SD2の項番2によれば、起床時間は6時から7時の間であるので、睡眠評価装置1は、起床時刻テーブルWT2の項番1の、6時から7時の時間帯に対応した列19に「1」を入力する。同様にして、睡眠評価装置1は、睡眠日誌SD2の項番3から項番5までの記録に対応させて、就寝時刻テーブルST2及び起床時刻テーブルWT2の項番2から項番4に入力を行う。睡眠日誌SD2の項番6によれば、就寝時間は1時から2時の間であるので、睡眠評価装置1は、就寝時刻テーブルST2の項番5の、1時から2時の時間帯に対応した列14に「1」を入力する。同様に、睡眠日誌SD2の項番6によれば、起床時間は8時から9時の間であるので、睡眠評価装置1は、起床時刻テーブルWT2の項番5の、8時から9時の時間帯に対応した列21に「1」を入力する。同様にして、睡眠評価装置1は、睡眠日誌SD2の項番7、項番8の記録に対応させて、就寝時刻テーブルST2及び起床時刻テーブルWT2の項番6、項番7に入力を行う。
就寝時刻テーブルST2及び起床時刻テーブルWT2の項番1乃至項番7への入力後、睡眠評価装置1は、各列の合計値sumST、sumWTを算出し、また、それらのsumST、sumWTの中から最大値を検出する。図46に示す例によれば、sumSTの最大値は列12の「5」、sumWTの最大値は列19の「5」、と検出される。更に、睡眠評価装置1は、検出された最大値を示す列の直前の列及び直後の列におけるsumST、sumWTをも検出する。この結果、図46の就寝時刻テーブルST2では、列11、12、13より「0−5−0」(3値の合計値は「5」)というパターンのsumSTが検出され、同様に、起床時刻テーブルWT2では、列18、19、20より「0−5−0」(3値の合計値は「5」)というパターンのsumWTが検出されることとなる。
睡眠評価装置1は、sumSTの最大値、その直前の列におけるsumST、及び、直後の列におけるsumSTからなるパターン「0−5−0」(3値の合計値は「5」)を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、パターンナンバー25と一致するため、これに対応する点数「6」を「就寝時刻スコア」として決定する。同様に、睡眠評価装置1は、sumWTの最大値、その直前の列におけるsumWT、及び、直後の列におけるsumWTからなるパターン「0−5−0」(3値の合計値は「5」)を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、パターンナンバー25と一致するため、これに対応する点数「6」を「起床時刻スコア」として決定する。睡眠評価装置1は、以上のように決定した、就寝時刻スコア「6」と起床時刻スコア「6」との平均値を算出し、その平均値「6」を「睡眠習慣スコア」として決定し、記憶部9に記憶する。
図47に示す睡眠日誌SD3は、就寝及び起床が日毎に遅くなる被験者の例を示している。このような睡眠日誌SD3において、項番7までの記録がなされた後に、直近7日間の(即ち項番1乃至項番7の)記録に沿って、就寝時刻スコア及び起床時刻スコアを算出する例を説明する。
睡眠日誌SD3の項番1乃至項番7に沿って、図48に示すように、睡眠評価装置1は、就寝時刻テーブルST3の項番1乃至項番7、起床時刻テーブルWT3の項番1乃至項番7に入力する。
図48に示す例によれば、sumSTの最大値は列12乃至列18の「1」、sumWTの最大値は列19乃至列24及び列1の「1」、と検出される。更に、睡眠評価装置1は、検出された最大値を示す列の直前の列及び直後の列におけるsumST、sumWTをも検出する。この結果、図48の就寝時刻テーブルST3及び起床時刻テーブルWT3では、「0−1−1」(3値の合計値は「2」)、「1−1−1」(3値の合計値は「3」)、「1−1−0」(3値の合計値は「2」)のいずれかのパターンのsumST、sumWTが検出されることとなる。
睡眠評価装置1は、sumST(sumWT)の最大値、その直前の列におけるsumST(sumWT)、及び、直後の列におけるsumST(sumWT)からなるパターン「0−1−1」、「1−1−1」、「1−1−0」を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、少なくともパターンナンバー42、44、45のいずれかと一致すると判断する。このように、複数のパターンナンバーと一致する場合においては、睡眠習慣パターンテーブルの上位の条件(3値の合計値の高いパターン)を優先して適用する、という条件付けを行っておく。これにより、パターンナンバー42が適用されて、これに対応する点数「0」を「就寝時刻スコア」(「起床時刻スコア」)として決定する。睡眠評価装置1は、以上のように決定した、就寝時刻スコア「0」と起床時刻スコア「0」との平均値を算出し、その平均値「0」を「睡眠習慣スコア」として決定し、記憶部9に記憶する。
図49に示す睡眠日誌SD4は、就寝及び起床が日毎にランダムな被験者の例を示している。このような睡眠日誌SD4において、項番8までの記録がなされた後に、直近7日間の(即ち項番2乃至項番8の)記録に沿って、就寝時刻スコア及び起床時刻スコアを算出する例を説明する。
睡眠日誌SD4の項番2乃至項番8に沿って、図50に示すように、睡眠評価装置1は、就寝時刻テーブルST4の項番1乃至項番7、起床時刻テーブルWT4の項番1乃至項番7に入力する。
図50に示す例によれば、sumSTの最大値は列11、列12、列14の「2」、sumWTの最大値は列19の「4」、と検出される。更に、睡眠評価装置1は、検出された最大値を示す列の直前の列及び直後の列におけるsumST、sumWTをも検出する。この結果、図48の就寝時刻テーブルST4では、「0−2−2」(3値の合計値は「4」)、「2−2−1」(3値の合計値は「5」)、「1−2−0」(3値の合計値は「3」)のいずれかのパターンのsumSTが検出され、起床時刻テーブルST4では、「0−4−1」のパターンのsumWTが検出されることとなる。
睡眠評価装置1は、sumSTの最大値、その直前の列におけるsumST、及び、直後の列におけるsumSTからなるパターン「0−2−2」、「2−2−1」、「1−2−0」を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、少なくともパターンナンバー36、32、41のいずれかと一致すると判断する。複数のパターンナンバーと一致する場合においては、睡眠習慣パターンテーブルの上位の条件を優先して適用する、という条件付けにより、パターンナンバー32が適用される。
ここで、「2−2−1」のようなパターンの場合には、就寝時刻テーブルSTにおいて、sumSTの最大値の列の直前の列や直後の列よりも離れた列に、sumSTが「2」となっている列がある可能性もある。そこで、そのように離れた列にsumSTが「2」となっている列があるか否かに応じて、点数を「(a)3」としたり「(b)2」とするなど、点数に差を設けるのが好適である。より具体的には、就寝時刻テーブルST(又は起床時刻テーブルWT)において、(a)sumSTの最大値の列、その直前の列、直後の列、の3列以外には、sumSTが「2」である列がない場合は点数を「3」とし、(b)sumSTの最大値の列から2列以上離れた列に、sumSTが「2」である列がある場合には点数を「2」とする条件を付加する。なお、同様の条件を、パターンナンバー31、34乃至41についても付加するのが好適である。
上記の例では、パターンナンバー32が適用される「2−2−1」というパターンは、就寝時刻テーブルST4の列11(直前の列)、列12(最大値の列)、列13(直後の列)のsumSTに基づいている。sumSTの最大値の列12から2列後(即ち、列14)のsumSTが「2」となっているので、パターンナンバー32の点数は「(b)2」が適用されることになる。一方、睡眠評価装置1は、sumWTの最大値、その直前の列におけるsumWT、及び、直後の列におけるsumWTからなるパターン「0−4−1」を、睡眠習慣パターンテーブルと照合し、パターンナンバー26と一致するため、これに対応する点数「5」を「起床時刻スコア」として決定する。睡眠評価装置1は、以上のように決定した、就寝時刻スコア「2」と起床時刻スコア「5」との平均値を算出し、その平均値「3.5」を「睡眠習慣スコア」として決定し、記憶部9に記憶する。
このように決定した睡眠習慣スコア(第6スコア)は、上記第1実施形態で説明した睡眠評価スコア、即ち、睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア)とともに、グラフ表示すればよい(ステップS274参照)。グラフ表示は特に限定されるものではないが、一例としては、図51に示すように、中央から放射状に睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア)、睡眠習慣スコア(第6スコア)の軸をとった6角形のレーダーチャートとする。
なお、第1実施形態の変形例2としては、第1実施形態で説明した5種類のスコア(睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア))に、睡眠習慣スコア(第6スコア)を加えた、全6種類のスコアを算出し、表示可能な睡眠評価装置を説明したが、例えば、第1実施形態で説明したスコアのうち、体動頻度スコア(第5スコア))に代えて、睡眠習慣スコア(第6スコア)を採用し、全5種類のスコアを算出・表示可能な睡眠評価装置としてもよい。
(第2実施形態)
以下、本発明による第2実施形態である睡眠評価システムを実施するための形態について説明する。上記第1実施形態の睡眠評価装置1は、図1の外観図に示す通り、センサ部2と制御ボックス3とを備えた一つの装置として成立しており、制御ボックス3には、本発明における睡眠点数を求めるための回帰式を含む一連の処理プログラムが、既に組み込まれているものであるため、睡眠評価装置1のみで睡眠判定データの取得及び睡眠点数演算が実現できるものである。
一方、第2実施形態である睡眠評価システムは、被験者の生体信号を取得する測定装置と、本発明における睡眠点数(睡眠指数)を求めるための回帰式を含む一連の処理プログラムを実行するための情報処理端末と、から構成されるシステムである。前記生体信号に基づいて睡眠段階判定等を行う判定部(第1実施形態の判定部8に相当)は、測定装置及び情報処理端末のうちいずれかに構成されていればよい。測定装置で測定されたデータ等の情報処理端末への出力は、例えば有線又は無線の接続手段を用いるなど、特に限定されるものではない。
本発明によれば、睡眠の質を評価するための回帰式はPSGの測定データに基づいて作成されるので、このような回帰式を含む一連の処理プログラムを前記情報処理端末(例えばパーソナルコンピュータ)に導入すると共に、前記測定装置が被験者から検出した生体信号に基づいて、複数の変数データである睡眠判定データを算出して、被験者の睡眠の質の評価、即ち睡眠点数の算出が可能となる。しかも、本発明の睡眠の質を評価するための回帰式はPSGの測定データに基づいて作成されるので、前記取得装置は、所定項目(睡眠判定データ)を算出可能な生体情報を測定できるものであれば特に限定されるものではない。そのため、例えば、PSG測定装置を測定装置として、その睡眠判定データをそのまま代入して睡眠の質の評価に用いることもでき、医療機関における睡眠の質の評価においても有用である。具体的な処理の流れは、前記第1実施形態の睡眠測定装置1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
上述した実施形態においては、9つの睡眠判定データから4つの睡眠評価成分を選定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、睡眠の状態を示すn(nは2以上の自然数)個の睡眠判定データから、独立した関係にあるm(mは、n>mを満たす自然数)個の睡眠評価スコアを算出し、m個の睡眠評価スコアに基づいて、睡眠点数を算出しても良い。この場合、睡眠判定データとしては、入眠潜時、睡眠効率、中長時間覚醒回数、深睡眠潜時、深睡眠時間、短時間覚醒回数、深睡眠率、差分睡眠周期スコア、差分総就床時間スコア、総就床時間、離床潜時、睡眠時間、総睡眠時間、中途覚醒時間、REM睡眠潜時、浅睡眠時間、REM睡眠時間、睡眠段階移行回数、浅睡眠出現数、REM睡眠出現数、深睡眠出現数、REM睡眠持続時間、REM睡眠間隔時間、REM睡眠周期、睡眠周期、前半と後半の浅睡眠の割合、前半と後半のREM睡眠の割合、前半と後半の深睡眠の割合の中から、睡眠の深さに係る項目(例えば深睡眠率又は深睡眠出現量の少なくとも一つ)と、睡眠のリズムに係る項目(例えば睡眠周期又は差分睡眠周期スコアの少なくとも一つ)と、中途覚醒に係る項目(例えば睡眠効率又は中長時間覚醒回数の少なくとも一つ)とを任意に選定してもよい。睡眠の質の評価において重要な指標となる睡眠の深さ、睡眠のリズム、中途覚醒に係る項目を選定すれば、総合的な睡眠の質の程度を示す指標を適切に導出することができる。また、睡眠評価スコアは、睡眠深度スコア、睡眠周期スコア、睡眠時間スコア、及び、中途覚醒スコアのいずれか1以上を含むように構成してもよい。
なお、第1実施形態においては、睡眠評価装置1として、マットレスとコンデンサマイクロホンセンサによる呼吸信号の検出を例としたが、マットレスの下に配して人体の圧力変動を直接検出するものとして、ピエゾケーブルなどの圧電素子、静電容量式センサ、フィルムセンサ又は歪ゲージなどを用いても良いし、呼吸信号や体動信号や心拍信号が検出できるものであれば、公知装置を用いても良い。
また、図17のフローチャートを用いて説明した中途覚醒条件判定のステップS138において、「(m=1からm=mまでの全エポックの平均呼吸数)≧(n=1からn=nmaxまでの全エポックの平均呼吸数)×mq」なる条件で、呼吸数による中途覚醒判定を行ったが、心拍に関する指標を検出する心拍信号検出手段と、前記心拍に関する指標を用いて、前記睡眠段階を補正する補正手段とを更に備えることにより、例えば、「(m=1からm=mまでの全エポックの平均心拍数)≧(n=1からn=nmaxまでの全エポックの平均心拍数)×mv」(ここで、mvは、mv>1なる定数である。)とする条件を加えて、この条件を満たす場合を覚醒状態と判定しても良く、より精度の高い覚醒判定が可能となる。
更に、睡眠評価装置1の判定結果の推移と、心拍信号検出手段により検出された心拍に関する指標の推移とを用いて、公知の相関を取ることにより、前記判定結果を補正しても良い。
また、上述した実施形態では、9個の所定項目と4個の睡眠評価スコアを一例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、n(2以上の自然数)個の所定項目を集約したm(n≧m、mは自然数)個の睡眠評価スコアを用いて睡眠点数を算出してもよい。
また、上述した実施形態では、睡眠の質を評価するための回帰式は、PSGの測定データに基づいて作成されるものを説明したが、例えば、本発明による睡眠評価装置1によって測定される睡眠判定データ(例えば、寝付き時間の長さ、途中の覚醒の多さ、深い睡眠の多さ、体動の多さなど)に関する、不特定多数の被験者のサンプルデータを収集・解析し、睡眠の質を判定するための回帰式を作成して用いても良い。
また、睡眠評価スコア(睡眠深度スコア(第1スコア)、睡眠周期スコア(第2スコア)、睡眠時間スコア(第3スコア)、中途覚醒スコア(第4スコア)、体動頻度スコア(第5スコア)、睡眠習慣スコア(第6スコア))のグラフ表示については、上述した実施形態のようなレーダーチャートの他、棒グラフその他のグラフ表示を適用してもよい。また、グラフ表示に代えて、各スコアに設定されたアイコンによって表してもよい。例えば、キャラクターのアイコンとして、そのキャラクターの異なる表情やポーズに応じてスコアの高低を表示したり、手のアイコンとして、指の折り曲げ状態(人差し指と親指の指先を付けたOKのポーズ、親指を上に立てて握るGOODのポーズなど)に応じてスコアの高低を表示したりしてもよい。
また、上述した実施形態では、睡眠点数や一回の睡眠の段階の遷移(図37参照)、睡眠点数推移(図39参照)を表示する例を説明したが、必ずしもこれらを表示しなければならないものではない。