JP5747192B2 - 排水処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、工場などから排出される高濃度有機性排水を生物処理する排水処理装置に関するものである。
一般に、有機性排水の処理方法としては、活性汚泥法が広く利用されている。この活性汚泥法を用いた排水処理装置は、排水と活性汚泥とを混合した活性汚泥混合液を曝気処理して排水中の汚濁物を活性汚泥に分解させる曝気槽と、処理水と活性汚泥とを分離する固液分離装置とを備え、分離された処理水のみを放流し、活性汚泥の一部を曝気槽に戻し、残りを余剰汚泥として廃棄する。
前記固液分離装置には、例えば、曝気槽とは別に沈降槽を設けるものがある。すなわち、曝気槽で曝気処理された活性汚泥混合液を沈降槽に移し、沈降槽内で汚泥を重力沈降させる。そして、沈降槽内の上澄水は処理水として放流する一方、沈降した汚泥の一部は曝気槽に返送し、残りの汚泥は余剰汚泥として引き抜き産業廃棄物として処分する。
また、ろ過膜を用いて活性汚濁混合水を固液分離する膜分離法もある。この膜分離法では、沈降槽にろ過膜を設置する場合が多く、重力沈降によりある程度固液分離された上澄水に混入している汚泥をさらに分離する。
ここで、好気性バクテリアが排水中の有機物を好気的分解するに必要な酸素量つまり生物化学的酸素要求量BODが1000mg/L〜5000mg/Lとなる高濃度排水を活性汚泥法により処理する場合、曝気槽での生物処理に長時間を要するため、滞留時間を長くする必要がある。このため、時間あたりの排水処理量を保つためには、曝気槽の容量を大型化する必要があり、設備費および維持管理費が嵩んでしまう。
かかる点から、曝気槽内の活性汚泥量を8000mg/L〜10000mg/Lという非常に高いMLSS濃度に維持し、汚泥単位量当りの処理する有機物量(汚泥当りの負荷量)を小さくすることで、設備の拡大を回避する方式が取られる。
このような高いMLSS濃度では、後工程で行われる沈降槽での固液分離が難しく、膜ろ過による強制的な固液分離が必須となる。しかしながら、高いMLSS濃度であれば、ろ過膜面が微細な汚泥によって目詰まりを起こし易く、ろ過速度が直ぐに低下し、頻繁に膜を洗浄しなければならない。
そこで、従来より、ろ過膜の汚泥による目詰まりを低減させるために、汚泥を凝集化することが行われている。この汚泥を凝集化させる方法としては、特許文献1及び2に示すように、凝集剤を添加することが行われている。
また、特許文献3に示すように、揺動担体(バイオフリンジ(登録商標))を利用し、曝気装置により曝気処理された活性汚泥混合液中の活性汚泥を揺動担体に付着させ、その付着した活性汚泥を揺動担体の揺動に伴い凝集化させるようにしたものもある。このものでは、凝集剤を添加する必要がなく、凝集剤を使用することによる費用と手間が削減される。
特許第4426088号公報 特開2000−300963号公報 特開2010−137216号公報
ところが、前記特許文献3の揺動担体は、生物化学的酸素要求量BODが1000mg/L程度の排水に使用されている。そのため、前述したような生物化学的酸素要求量BODが5000mg/Lとなる高濃度排水では、発生する余剰汚泥量が大変多くなり、揺動担体の揺動による凝集効果だけでは、ろ過膜の目詰まりを抑えてろ過効率を十分に向上させることができない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生物化学的酸素要求量BODが高い高濃度排水においても活性汚泥を円滑に凝集化させ、ろ過効率を十分に向上させることができる排水処理装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明では、活性汚泥混合液を曝気処理する曝気装置と、この曝気装置により曝気処理される活性汚泥混合液中の活性汚泥を付着させる担体と、前記曝気装置により曝気処理された活性汚泥混合液を処理水と汚泥とに分離する膜ろ過装置とを備えた排水処理装置であって、前記担体が、繊維集合体からなるシート状の基布と、この基布の少なくとも片面側から突出するカットパイル糸とからなり、前記カットパイル糸は、その突出長さが1〜6cmに設定されているとともに、太さが650〜1000dtexに設定され、前記基布に対し1cm 2 当たり1〜5本が設けられ、前記曝気装置の曝気処理によって根元部分及びその付近の基布に付着した活性汚泥の一部を嫌気雰囲気としつつ揺れ動くことを特徴とする。
この特定事項により、曝気装置により曝気処理される活性汚泥混合液中の活性汚泥は、曝気処理により揺れ動くパイル糸のみならず表面積のある基布の表裏に広範囲に亘って付着する。このため、生物化学的酸素要求量BODが高い高濃度排水であっても、パイル糸及び基布に広範囲に亘って付着した活性汚泥がそのパイル糸及び基布の揺動によって円滑に凝集化されて脱落していく。
しかも、活性汚泥の円滑な凝集化によって余剰汚泥の廃棄量が減らされ、活性汚泥量が高いMLSS濃度に維持される。
更に、パイル糸の根元部分及びその付近の基布に付着した活性汚泥は、曝気処理中でも脱離し難いために汚泥齢が長くなり、その一部が嫌気雰囲気となる。このため、パイル糸の根元部分及びその付近の基布に付着した活性汚泥では、微生物の多様化が進んで大型微生物である後生動物が発生し、食物連鎖により活性汚泥が減容されて余剰汚泥量が減容化される。
これにより、パイル糸及び基布に広範囲に亘って付着する活性汚泥の凝集化が円滑に図れる上、活性汚泥量が高いMLSS濃度に維持され、さらに、食物連鎖による余剰汚泥量の減容化も図れ、ろ過膜の目詰まりを抑えてろ過効率を十分に向上させることが可能となる。
また、前記担体として、パイル織物又はパイル編物を適用していることが好ましい。
この場合には、繊維集合体からなるシート状の基布、及び基布から突出するパイル糸を、パイル織物又はパイル編物の編成時に簡単に作成することができる。
また、前記基布として、網目状の繊維集合体を適用していることが好ましい。
この場合には、曝気処理される活性汚泥混合液が基布の表裏面を流通し易くなって、活性汚泥混合液中の活性汚泥の付着性能を向上させることができる。
そして、前記担体としては、前記基布が、太さ300〜1000dtexの糸を用いてたて編み網目状のネット組織に編成され網目の大きさが0.09cm2〜0.16cm2であり、前記パイル糸が、25mm程度の突出長さを有していることがさらに好ましい。
更に、前記曝気装置が、前記担体と共に曝気槽内に設置されている一方、前記膜ろ過装置が、前記曝気槽から取り入れられた活性汚泥混合液中の汚泥を沈降させて処理水と分離する沈降槽内に設置されていてもよい。
この場合には、膜ろ過装置が曝気槽とは別の沈降槽内に設置されているので、曝気処理による活性汚泥混合液の流れに影響されることなく活性汚泥が円滑に沈降し、処理水との分離を円滑に行うことができ、ろ過膜の目詰まりを抑えてろ過効率をさらに向上させることができる。
また、前記曝気槽は、前記曝気装置がそれぞれ設置された複数の槽部に上流側から順に仕切られ、前記各槽部を上流側から順に経た活性汚泥混合液が前記沈降槽に取り入れられるように連結されていてもよい。
この場合には、活性汚泥混合液中の活性汚泥の凝集性が複数の槽部を上流側から順に経る都度高められ、沈降槽に取り入れられた活性汚泥混合液中の活性汚泥の沈降性をより一層向上させることができる。
これに対し、前記曝気装置と膜ろ過装置とが同じ槽内に設置されていてもよい。
この場合には、膜ろ過装置が曝気槽と同じ槽内に設置されているものの、生物化学的酸素要求量BODが比較的低い排水であれば、曝気装置により曝気処理された活性汚泥混合液中の活性汚泥は、曝気処理により揺れ動くパイル糸及び基布によって円滑に凝集化されて脱落していく。しかも、活性汚泥の円滑な凝集化によって余剰汚泥の廃棄量が減らされて活性汚泥量が高いMLSS濃度に良好に維持される。また、パイル糸の根元部分及びその付近の基布に付着した活性汚泥は、食物連鎖により活性汚泥が減容されて余剰汚泥量が減容化される。これにより、膜ろ過装置が曝気槽と同じ槽内に設置されていても、ろ過膜の目詰まりを抑えてろ過効率を十分に向上させることができる。
以上、要するに、繊維集合体からなるシート状の基布とこの基布の少なくとも片面側から突出するパイル糸とで担体を構成することで、生物化学的酸素要求量BODが高い高濃度排水であっても、パイル糸及び基布に広範囲に亘って付着する活性汚泥の凝集化を円滑に図ることができる上、活性汚泥量を高いMLSS濃度に維持でき、さらに、食物連鎖による余剰汚泥量の減容化も図ることができ、よってろ過膜の目詰まりを抑えてろ過効率を十分に向上させることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る排水処理装置を概略的に示す側面図である。 図1の排水処理装置を一部切り欠いた状態で斜め側方から見た斜視図である。 担体の斜視図である。 図3のパイル担体を一部拡大して示す拡大図である。 図1の排水処理装置のパイル担体を実験用に用いた実験例1と従来の揺動担体を実験用に用いた実験例2との活性汚泥の凝集性を比較した特性図である。 本発明の第2の実施の形態に係る排水処理装置を概略的に示す側面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る排水処理装置を概略的に示す側面図である。
以下、本発明を図示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る排水処理装置を概略的に示す側面図である。この排水処理装置1は、活性汚泥混合液を曝気処理する曝気装置2と、この曝気装置2により曝気処理される活性汚泥混合液中の活性汚泥を付着させるパイル担体3(担体)と、前記曝気装置2により曝気処理された活性汚泥混合液を処理水と凝集された活性汚泥とに分離する膜ろ過装置4とを備えている。この場合、活性汚泥混合液としては、生活排水や、食品工場、化学工場、電子産業工場、及びパルプ工場等の排水等と、細菌、原生動物、後生動物などの微生物種を有する活性汚泥とを混合させたものが適用されている。また、排水としては、生物化学的酸素要求量BODが5000mg/L程度となる高濃度排水が適用されている。
前記曝気装置2は、活性汚泥混合液を貯留する曝気槽21と、この曝気槽21の底部に設置され、図示しないエアーポンプから供給された空気により活性汚泥混合液中に気泡を発生させる薄箱状の散気体22とを備えている。この場合、散気体22からの気泡によって、活性汚泥混合液中の微生物が有機物を好気的に分解するのを促進させている。
前記曝気槽21は、図2において詳細に示すように、仕切壁23によって上流側槽部21Aと下流側槽部21Bとに仕切られている。この仕切壁23は、その上縁が天井面との間に隙間を存するように若干低く設定され、当該仕切壁23の上部に開口する連通孔231,231,…を備えている。そして、曝気槽21内の活性汚泥混合液は、仕切壁23の上縁及び各連通孔231を介して上流側槽部21Aと下流側槽部21Bとの間での流通が可能となっている。また、前記曝気槽21の上流側槽部21Aには、排水を投入する投入管24が接続されている。この場合、活性汚泥混合液が上流側の上流側槽部21Aから下流側の下流側槽部21Bに順に経ることで、活性汚泥の凝集性が増し、その凝集された凝集汚泥の粒径が大きくなっている。
前記膜ろ過装置4は、曝気槽21の下流側槽部21Bの上部に連通管25を介して活性汚泥混合液が流通可能に連通する沈降槽41の内部に設置されている。この沈降槽41では、連通管25を介して流通する活性汚泥混合液を活性汚泥(凝集汚泥)と上澄水とに固液分離している。また、前記膜ろ過装置4は、沈降槽41において固液分離された上澄水をろ過するろ過膜42を備えている。このろ過膜42の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、逆浸透膜(RO膜)、限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)などが挙げられる。また、前記ろ過膜42の構造としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニールアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの素材により直径数mmの中空糸状に形成された、いわゆる中空糸膜などと呼ばれるタイプのものや、薄い板状の膜たる平膜と呼ばれるタイプのものなど、従来公知のものを採用することができる。このろ過膜42は、沈降槽41の液面下に浸漬膜として設置される。
そして、前記膜ろ過装置4には、ろ過膜42により上澄み水をろ過して得られた透過水を汲み上げて移送する移送管43が接続されている。また、前記沈降槽41の底部には、固液分離されて重力沈下する凝集汚泥を定期的に排出する汚泥排出管44の一端が接続されている。この汚泥排出管44の他端は、二分岐しており、一方が上流側槽部21Aに接続され、他方が投棄場に導かれている。この場合、汚泥排出管44を介して上流側槽部21Aに戻された凝集汚泥によって曝気槽21の上流側槽部21A及び下流側槽部21Bの活性汚泥量を高いMLSS濃度に維持している。
前記パイル担体3は、前記曝気槽21の上流側槽21A及び下流側槽21Bにそれぞれ設置されている。このパイル担体3は、パイル編物よりなり、図3に示すように、繊維集合体からなるシート状の複数枚の基布31,31,…と、この各基布31の表裏両面側からそれぞれ突出するパイル糸32,32,…(図4に表れる)とからなる。前記各基布31としては、その幅が5〜10cm程度で、上下長さが100〜300cm程度となる縦長のものが適用されている。この各基布31の上下両端には、幅が基布31と同じ程度の略円筒形状の支持部材311,312が設けられている。また、パイル担体3は、上流側槽21A及び下流側槽21Bに脱着自在に装着される略矩形枠状の固定化材26(図3では四隅の鍔部261,262のみ示す)に取り付けられている。この固定化材26は、その上下両端を略水平方向に延びる上下一対のパイプ材よりなる上側及び下側枠体と、この上側及び下側枠体の左右両端に脱着自在に装着される鍔部261,262と、左右両端を略鉛直方向に延び、前記鍔部261,262を介して前記上側及び下側枠体の端部に脱着自在に装着される左右一対の左側及び右側枠体とを備えている。この場合、パイル担体3は、固定化材26の左側又は右側枠体を取り外した状態で、各基布31の上下両端の支持部材311,312を上側及び下側枠体にそれぞれ挿通させることによって固定化材26に取り付けられる。
そして、図4に示すように、各基布31は、略台形をつなぎ合わせたような網目状に形成されている。この各基布31は、太さ0.2〜0.3mm程度のアクリル、モノアクリル、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アセテート、ビニロンなどの糸を用いてたて編み機により編成され、網目(台形)の大きさを0.09cm2〜0.16cm2としている。また、各パイル糸32は、各基布31の網目の台形部分の所定部位(具体的には網目の台形部分の上辺略中央部位)から表裏両外方に向けてそれぞれ突出している。この各パイル糸32としては、太さ1.5〜2mm程度のアクリル、モノアクリル、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アセテート、ビニロンなどが適用され、突出長さが1〜6cm程度とされている。この場合、パイル糸32の本数は、1cm2当たり1〜5本程度とされている。
次に、本発明のパイル担体3を実験用に用いた実験例1と、広く用いられている不織布からなる担体を実験用に用いた実験例2とについて比較する。
実験例1で用いたパイル担体は、太さ300〜1000dtex程度のアクリル紡績糸を用いてダブルラッセル編機(14〜18G/インチ)によりたて編みのネット組織に編成された略台形の網目状の基布と、太さ650〜10000dtex程度のポリエステル繊維で25mm程度の突出長さを有するパイル糸とからなる。そして、基布としては、幅が50cmで長さが100cmとなるシート状のものが適用されている。また、基布の網目(台形)の大きさを0.09cm2〜0.16cm2としており、パイル糸32の本数を基布の1cm2当たり1〜5本程度としている。この場合、曝気槽に投入される固定化材には、このパイル担体を1セットに3枚取り付けている。
一方、実験例2で用いた不織布担体としては、日本バイリーン(株)社製の不織布BF−T9を使用した。この不織布担体は、幅が50cmで長さが100cmのポリエステル繊維のシート8枚を菊花状に張り合わせたもので、曝気槽内では揺動しないものとする。そして、この不織布を1セットに15本取り付けた固定化材を作製した。
そして、実験例1の実験装置としては、次の構成のものを用いた。すなわち、底部に気泡を発生させる曝気装置を配置した、容積が1m3の曝気槽と、下流側に沈降槽と、を有する実験装置を2セット作製した。そして、1箇所から流出する排水を2系統に分け、両実験装置の曝気槽に同時に排水を流入させるように配管した。
また、一方の実験装置の曝気槽には、パイル担体を取り付けた固定化材を3セット投入し、他方は固定化材を投入しない通常の曝気槽とした。
そして、各曝気槽に投入される排水としては、梅加工場のものが用いられている。この排水は、水中にある有機物が酸化剤によって酸化されるときに消費される酸素量を示す化学的酸素要求量(又は化学的酸素消費量)CODが1000〜3000mg/Lで、水中の有機物に含まれる炭素の量を示す全有機炭素量TOCが300〜2000mg/Lで、生物化学的酸素要求量BODが2000〜6000mg/Lで、pH4と有機物濃度が高く、酸性を示している。
ここで、排水と処理水とについてTOC濃度を分析することによって処理性能を、余剰汚泥量を測定することによって汚泥減容化をそれぞれ評価する。
表1の上段は、滞留時間は2日で、350日間の連続運転における、通常の曝気のみの場合と、パイル担体を用いた場合との性能比較の結果を示している。
次に、実験例2について、一方の実験装置の曝気槽に投入する固定化材を、不織布担体を取り付けたものに変更したことと、連続運転期間が114日であること以外は、実験例1と同様の方法により、処理能力と汚泥減容化とを比較した。
表1の下段に結果を示している。
実験例1においては、固定化材の効果を調べるために、固定化材を投入していない通常の曝気槽と固定化材を投入した曝気槽とについて、同じ排水を同じ運転条件で処理した場合の比較を示す。固定化材としては、揺動するパイル担体と揺動しない不織布とを使用する。ここで、投入排水と処理水とを分析することによって処理性能を、余剰汚泥量を測定することによって汚泥減容化をそれぞれ評価する。
表1の上段は、滞留時間は2日で、350日間の連続運転における、通常の曝気槽のみの場合とパイル担体を用いた場合との性能比較の結果を示している。また、下段は、114日間の連続運転における、通常の曝気槽のみの場合と不織布担体を用いた場合との性能比較の結果を示している。
Figure 0005747192
この表1から、通常の曝気処理に比べ、パイル担体を投入した方は処理効率が上がり、余剰汚泥が少なくなったことが判る。また、実験例1のパイル担体と実験例2の不織布とでは、有機物除去率(全有機炭素量TOCの除去率)は、同等の処理性能を示しているものと考えられる。しかし、余剰汚泥発生量では、パイル担体を使用した場合は、通常の曝気処理の0.47倍に対し、実験例2の不織布を使用した場合は0.7倍となり、パイル担体の方が不織布より高い汚泥減容化を示している。
次に、本発明のパイル担体3を実験用に用いた実験例1と、本発明の背景技術で説明した特許文献3の揺動担体を実験用に用いた実験例3とについて比較する。
実験例3で用いた揺動担体としては、NET(株)社製のバイオフリンジ(登録商標)を使用した。このバイオフリンジは、心糸に直径1cm、長さ10cmの棒状アクリル繊維を連ねた担体であり、曝気槽中で曝気による液の流動によって揺動運動を行う。固定化材には、このバイオフリンジを1セット当たりに10本取り付けている。
実験には、上記した実験例1と通常の曝気との比較で用いた2セットの実験装置を用い、一方の実験装置の曝気槽にパイル担体を取り付けた固定化材を3セット投入し、他方の曝気槽にはバイオフリンジを3セット投入した。
そして、114日間の連続処理実験を行った後、TOC濃度を分析することによって処理性能を、余剰汚泥量を測定することによって汚泥減容化をそれぞれ評価した。
その結果、表2に示すように、TOC除去率は、ほぼ等しく同等の処理能力を示していることが判る。一方、余剰汚泥発生量では、実験例1のパイル担体が4.3L/日であるのに対し、実験例3のバイオフリンジは7.2L/日となり、実験例1のパイル担体の方が余剰汚泥の引抜き量が少なかった。
Figure 0005747192
ここで、活性汚泥の凝集性及び沈降性について、実験例1のパイル担体と実験例3のバイオフリンジとを比較評価する。
図5に示すように、運転中の曝気槽内での汚泥の沈降性の判断指針となる汚泥容積指標SVIは、実験例1のパイル担体の方が実験例3のバイオフリンジよりも低い。これにより、パイル担体の方がバイオフリンジよりも活性汚泥の凝集性が良く、沈降性が優れた汚泥であることが判る。これは、パイル担体のパイル糸及びバイオフリンジが共に揺動運動することにより、実験結果から得られた凝集性の違いは、パイル担体が揺動による凝集効果と汚泥を長く保持する効果との相互作用により、より凝集に優れた汚泥を生成したものと考えられる。
したがって、本実施の形態では、曝気装置2により曝気処理される活性汚泥混合液中の活性汚泥は、曝気処理により揺れ動く各パイル糸32のみならず表面積のある基布31の表裏両面に広範囲に亘って付着する。このため、生物化学的酸素要求量BODが高い高濃度排水であっても、各パイル糸32及び基布31に広範囲に亘って付着した活性汚泥がその各パイル糸32の揺動によって円滑に凝集化されて脱落していく。
しかも、活性汚泥の円滑な凝集化によって余剰汚泥の廃棄量が減らされ、活性汚泥量が高いMLSS濃度に維持される。
更に、各パイル糸32の根元部分及びその付近の基布31に付着した活性汚泥は、曝気処理中でも脱離し難いために汚泥齢が長くなり、その一部が嫌気雰囲気となる。このため、各パイル糸32の根元部分及びその付近の基布31に付着した活性汚泥では、微生物の多様化が進んで大型微生物である後生動物が発生し、食物連鎖により活性汚泥が減容されて余剰汚泥量が減容化される。
これにより、各パイル糸32及び基布32に広範囲に亘って付着する活性汚泥の凝集化が円滑に図れる上、活性汚泥量が高いMLSS濃度に維持され、さらに、食物連鎖による余剰汚泥量の減容化も図れ、ろ過膜42の目詰まりを抑えてろ過効率を十分に向上させることができる。
また、前記パイル担体3としてパイル編物が適用されているので、繊維集合体からなるシート状の基布31、及び基布31の表裏両面から突出するパイル糸32,32,…を、パイル編物の編成時に簡単に作成することができる。
また、前記基布31として網目状の繊維集合体が適用されているので、曝気処理される活性汚泥混合液が基布31の表裏面を流通し易くなって、活性汚泥混合液中の活性汚泥の付着性能を向上させることができる。
更に、膜ろ過装置4が曝気槽21に対し連通管25を介して活性汚泥混合液が流通可能に連通する沈降槽41の内部に設置されているので、曝気処理による活性汚泥混合液の流れに影響されることなく活性汚泥が円滑に沈降し、処理水との分離を円滑に行うことができ、ろ過膜42の目詰まりを抑えてろ過効率をさらに向上させることができる。
しかも、前記曝気槽21は、仕切壁23によって上流側槽部21Aと下流側槽部21Bとに仕切られ、仕切壁23の上縁及び各連通孔231を介して活性汚泥混合液の流通が可能となっている上、下流側槽部21Bが連通管25を介して沈降槽41と連通しているので、活性汚泥混合液中の活性汚泥の凝集性が上流側槽部21Aから下流側槽部21Bを経る都度高められ、沈降槽41に取り入れられた活性汚泥混合液中の活性汚泥の沈降性をより一層向上させることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態を図6に基づいて説明する。
この実施の形態では、曝気槽を仕切板により仕切った仕切空間に膜ろ過装置を設置している。なお、仕切空間を除くその他の構成は、上記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
すなわち、本実施の形態では、図6に示すように、排水処理装置5は、曝気槽51の内部において仕切壁52により仕切られた沈降槽53を備えている。この仕切壁52は、その上縁が曝気槽51の天井面との間に隙間を存するように若干低く設定され、当該仕切壁52の上部に開口する連通孔(図示せず)を備えている。そして、曝気槽51内の活性汚泥混合液は、仕切壁52の上縁及び各連通孔を介して沈降槽53との間での流通が可能となっている。また、前記曝気槽51の反沈降槽53側(図6では左側)には、排水を投入する投入管24が接続されているとともに、汚泥排出管44の二分岐する一方の他端が接続されている。この場合、曝気槽51内の活性汚泥混合液としては、生活排水や、食品工場、化学工場、電子産業工場、及びパルプ工場等の排水等と、細菌、原生動物、後生動物などの微生物種を有する活性汚泥とを混合させたものが適用されている。また、曝気槽51に投入される排水としても、生物化学的酸素要求量BODが5000mg/L程度となる高濃度排水が適用されている。
この場合には、膜ろ過装置4が曝気槽51の内部において仕切壁52により仕切られた沈降槽53内に設置されているものの、曝気装置2の散気体22から発生する気泡により曝気処理された活性汚泥混合液中の活性汚泥は、曝気処理により揺れ動く各パイル糸32及び基布31によって円滑に凝集化されて脱落していく。しかも、活性汚泥の円滑な凝集化によって余剰汚泥の廃棄量が減らされて活性汚泥量が高いMLSS濃度に良好に維持される。また、各パイル糸32の根元部分及びその付近の基布31に付着した活性汚泥は、食物連鎖により活性汚泥が減容されて余剰汚泥量が減容化される。これにより、膜ろ過装置4が曝気槽51の内部において仕切壁52により仕切られた沈降槽53内に設置されていても、ろ過膜42の目詰まりを抑えてろ過効率を十分に向上させることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態を図7に基づいて説明する。
この実施の形態では、曝気槽内に膜ろ過装置を設置している。なお、曝気槽を除くその他の構成は、上記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
すなわち、本実施の形態では、図7に示すように、排水処理装置6は、曝気槽61を備え、この曝気槽61内で活性汚泥混合液を自在に循環させている。また、曝気槽61内の一側(図7では右側)には膜ろ過装置4が設置されている。そして、前記曝気槽61の他側(図7では左側)には、排水を投入する投入管24が接続されている。この場合、曝気槽61内の活性汚泥混合液としては、生活排水や、食品工場、化学工場、電子産業工場、及びパルプ工場等の排水等と、細菌、原生動物、後生動物などの微生物種を有する活性汚泥とを混合させたものが適用されている。また、曝気槽61に投入される排水としても、生物化学的酸素要求量BODが5000mg/L程度となる高濃度排水が適用されている。
この場合には、膜ろ過装置4が曝気槽61の内部に設置されているものの、曝気装置2の散気体22から発生する気泡により曝気処理された活性汚泥混合液中の活性汚泥は、曝気処理により揺れ動く各パイル糸32及び基布31によって円滑に凝集化されて脱落していく。しかも、活性汚泥の円滑な凝集化によって余剰汚泥の廃棄量が減らされて活性汚泥量が高いMLSS濃度に良好に維持される。また、各パイル糸32の根元部分及びその付近の基布31に付着した活性汚泥は、食物連鎖により活性汚泥が減容されて余剰汚泥量が減容化される。これにより、膜ろ過装置4が曝気槽61の内部に設置されていても、ろ過膜42の目詰まりを抑えてろ過効率を十分に向上させることができる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、上記第1の実施の形態では、曝気槽21を仕切壁23によって上流側槽部21Aと下流側槽部21Bとに仕切ったが、曝気槽が、曝気装置をそれぞれ設置した3つ以上の槽部に上流側から順に仕切られ、その各槽部を上流側から順に経た活性汚泥混合液が沈降槽に取り入れられるように連結されていてもよい。
また、上記各実施の形態では、略台形をつなぎ合わせたような網目状の基布31を用いたが、略三角形状以上の多角形状や略円形状をつなぎ合わせたような網目状の基布が用いられていてもよい。また、上記各実施の形態では、各パイル糸32を基布31の網目の台形部分の上辺略中央部位から突出させたが、各パイル糸が編目の台形部分のどの部位から突出させてもよいのはいうまでもない。
また、上記各実施の形態では、各パイル糸32各基布31から表裏両面側から突出させたが、各パイル糸が基布から表裏両面のうちの一方の面からのみ突出していてもよい。
また、本発明に係るパイル担体は、実験例1で示したダブルラッセル編機によりたて編みのネット組織に編成した基布にパイル糸を有するものの他、繊維集合体からなるシート状の基布と、この基布の少なくとも片面側から突出するパイル糸とからなるものであればよく、ハイパイル編機で編成した横編組織の基布にパイルを有するもの、織物の基布にパイルを有するパイル織物も含まれる。
なお、ハイパイル編機は、丸編で編成中に単繊維太さ2〜50dtexの原綿を編針に供給することにより、よこ編組織上にパイルを形成させる。したがって、製造時には糸ではないが、完成時には単繊維が本発明に係る基布から突出するパイル糸として機能する。
1 排水処理装置
2 曝気装置
21 曝気槽
21A 上流側槽部(槽部)
21B 下流側槽部(槽部)
3 パイル担体(担体)
31 基布
32 パイル糸
4 膜ろ過装置
41 沈降槽
5 排水処理装置
51 曝気槽
53 沈降槽
6 排水処理装置
61 曝気槽

Claims (5)

  1. 活性汚泥混合液を曝気処理する曝気装置と、この曝気装置により曝気処理される活性汚泥混合液中の活性汚泥を付着させる担体と、前記曝気装置により曝気処理された活性汚泥混合液を処理水と汚泥とに分離する膜ろ過装置とを備えた排水処理装置であって、
    前記担体が、繊維集合体からなるシート状の基布と、この基布の少なくとも片面側から突出するカットパイル糸とからなり、
    前記カットパイル糸は、その突出長さが1〜6cmに設定されているとともに、太さが650〜1000dtexに設定され、前記基布に対し1cm 2 当たり1〜5本が設けられ、前記曝気装置の曝気処理によって根元部分及びその付近の基布に付着した活性汚泥の一部を嫌気雰囲気としつつ揺れ動くことを特徴とする排水処理装置。
  2. 前記担体としては、前記基布が、太さ300〜1000dtexの糸を用いて網目状のネット組織に編成され網目の大きさが0.09cm 2 〜0.16cm 2 であり、
    前記パイル糸が、25mm程度の突出長さを有している請求項1に記載の排水処理装置。
  3. 前記曝気装置が、前記担体と共に曝気槽内に設置されている一方、
    前記膜ろ過装置が、前記曝気槽から取り入れられた活性汚泥混合液中の汚泥を沈降させて処理水と分離する沈降槽内に設置されている請求項1又は請求項2に記載の排水処理装置。
  4. 前記曝気槽は、前記曝気装置がそれぞれ設置された複数の槽部に上流側から順に仕切られ、前記各槽部を上流側から順に経た活性汚泥混合液が前記沈降槽に取り入れられるよう
    に連結されている請求項3に記載の排水処理装置。
  5. 前記曝気装置と前記膜ろ過装置とが同じ槽内に設置されている請求項1又は請求項2に記載の排水処理装置。
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