JP5742385B2 - 光学性能のシミュレーション方法、露光方法、及び記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、光学系の光学性能のシミュレーション技術、このシミュレーション技術を用いる露光技術、そのシミュレーション技術に関する情報を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及びその露光技術を用いるデバイス製造技術に関する。
例えば半導体素子又は液晶表示素子等のデバイス(電子デバイス又はマイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程中で、レチクル(マスク)のパターンの投影光学系による像をウエハ又はガラスプレート等の基板の表面に転写するために、一括露光型の露光装置又は走査露光型の露光装置等が使用されている。
これらの露光装置においては、転写対象のレチクルのパターンに対する照明光学系の照明条件(例えば瞳面における二次光源の形状又はコヒーレンスファクタ(σ値)等)及び/又は投影光学系の開口数等を最適化するために、種々の照明条件等のもとで投影光学系の像面に形成される空間像の状態、ひいては結像特性をシミュレーションによって予測することが行われている。最近では、転写対象のパターンが微細化し、そのパターンの材料の厚さが無視できなくなりつつあり、かつパターンが複数層化しているため、レチクルのパターンを三次元構造とみなしてより厳密にシミュレーションを行うことが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
Sven Burger et al., "EMF simulation of Isolated and Periodic 3D Photo Mask Patterns," Proc. of SPIE (米国) Vol. 6730, 67301W (2007)
例えば或る形状の二次光源を使用するという照明条件のもとで、レチクルのパターンを三次元構造とみなして通常のコンピュータを用いて厳密に空間像のシミュレーションを行うには、長い計算時間が必要である。さらに、例えば最適な二次光源の形状を求めるために、二次光源の形状を僅かに変えながら空間像のシミュレーションを行う場合、従来は各計算を最初から繰り返す必要があるため、計算時間が非常に長くなっていた。
一方、その計算時間を短縮するために、計算精度を低下させるものとすると、レチクルのパターンを三次元構造とみなして厳密に計算しても、レチクルのパターンを二次元構造とみなした場合とほぼ同等の計算結果しか得られなくなるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、計算精度を実質的に低下させることなく、かつ計算時間を短縮して光学性能のシミュレーションを行うことができるようにすることを目的とする。
本発明の第1の態様によれば、第1面からの光でパターンを照明する照明系とそのパターンの像を第2面に形成する投影光学系とを含む光学系の光学性能のシミュレーション方法が提供される。このシミュレーション方法は、そのパターンの三次元構造を設定することと、その第1面に二次元的に分布する複数の点光源を配置することと、その複数の点光源のそれぞれについて、一つの点光源からの光がその照明系及びその三次元構造のパターンを通過した後の複素振幅分布情報を計算することと、計算されたその複素振幅分布情報をその複数の点光源に対応させて記録したデータベースを作成することと、その第1面に所定領域を設定することと、その複数の点光源のうち、その所定領域内に配置される複数の点光源に関してそのデータベースから読み出されるその複素振幅分布情報を用いてその第2面の空間像の強度分布を計算することとを含むものである。
また、本発明の第2の態様によれば、第1面からの光で照明系を介してパターンを照明し、そのパターン及び投影光学系を介して第2面に配置される基板を露光する露光方法において、本発明の光学性能のシミュレーション方法を用いてその照明系のその第1面の面光源の形状、又はその投影光学系の開口数を求める工程と、その求められた形状の面光源を用いる照明条件、又はその投影光学系をその求められた開口数に設定する条件でその基板を露光する工程とを含む露光方法が提供される。
また、本発明の第3の態様によれば、第1面からの光で照明系を介して照明されるパターンを通過した光の複素振幅分布情報のデータベースの情報を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。その記録媒体において、そのデータベースは、その第1面に設定されて二次元的に分布する複数の点光源と、その点光源毎にその点光源から射出されてその照明系及びそのパターンを通過した光の複素振幅分布情報とを対応させて記録したものであり、その複素振幅分布情報は、そのパターンを三次元構造とみなし、その複数の点光源のうちの対応する点光源から射出されて、その照明系及びその三次元構造のパターンを通過した後の光の複素振幅分布情報として計算されるものである。
また、本発明の第4の態様によれば、第1面からの光でパターンを照明する照明系とそのパターンの像を第2面に形成する投影光学系とを含む露光装置を制御するコンピュータに、その第2面の空間像の強度分布を計算させる処理を実行させるプログラムであって、本発明の態様のシミュレーション方法を前記コンピュータに実行させるプログラムが提供される。
また、本発明の第の態様によれば、本発明の露光方法を用いて物体にパターンを形成することと、そのパターンが形成されたその物体を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
本発明によれば、点光源のそれぞれについて、点光源からの光が三次元構造のパターンを通過した後の複素振幅分布情報を対応させたデータベースが作成される。従って、例えば第1面上の種々の形状の面光源からの光によるその三次元構造のパターンの空間像を計算する場合には、各面光源の形状に応じてそのデータベースから読み出される複素振幅分布情報に基づいて計算される光量分布を加算するだけで、各空間像の強度分布を容易に計算できる。従って、その強度分布を用いることで、計算精度を実質的に低下させることなく、かつ計算時間を短縮して光学性能のシミュレーションを行うことができる。
実施形態の一例の露光装置を示す概略構成図である。 (A)は図1の空間光変調器13の一部のミラー要素を拡大して示す図、(B)は2極照明時の二次光源を示す図、(C)は輪帯照明時の二次光源を示す図である。 シミュレーション方法の一例を示すフローチャートである。 (A)は二次元のグリッドに分割された面光源を示す図、(B)はレチクルの三次元構造のパターンの一部を示す拡大断面図、(C)は図4(B)の評価面R1Pにおいて計算される複素振幅分布の一例を示す図である。 データベースのデータ構造の一例を示す図である。 (A)は設定された面光源の内部の点光源を示す図、(B)は図6(A)の一つの点光源からの光による複素振幅分布の一部を示す図、(C)は図6(B)の複素振幅分布に対応する像の強度分布を示す拡大図、(D)は図6(A)の別の点光源からの光による複素振幅分の一部を示す図、(E)は図6(D)の複素振幅分布に対応する像の強度分布を示す拡大図である。 (A)は強度分布の重み付きの積算結果の一例を示す図、(B)は図7(A)の強度分布に対応するレジストパターンの一例を示す平面図である。 (A)は内径が変更された面光源の内部の点光源を示す図、(B)はさらに外径が変更された面光源の内部の点光源を示す図である。 電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の好ましい実施形態の一例につき図1〜図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態の露光装置EXの概略構成を示す。一例として、露光装置EXはスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の投影露光装置である。図1において、露光装置EXは、パルス発光を行う露光用の光源7と、光源7からの露光用の照明光(露光光)ILでレチクルR(マスク)のパターン面(被照射面)を照明する照明光学系ILSと、レチクルRの位置決め及び移動を行うレチクルステージRSTと、レチクルRのパターンの像をウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系30と、各種制御系等とを備えている。図1において、ウエハステージWSTのガイド面(不図示)に垂直にZ軸を設定し、Z軸に垂直な平面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定して説明する。本実施形態では、露光時にレチクルR及びウエハWはY方向(走査方向)に走査される。また、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向とも呼ぶ。
図1の光源7としては、波長193nmでパルス幅50ns程度のほぼ直線偏光のレーザ光を4〜6kHz程度の周波数でパルス発光するArFエキシマレーザ光源が使用されている。なお、光源7として、波長248nmのパルス光を供給するKrFエキシマレーザ光源、又はYAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を生成する固体パルスレーザ光源も使用できる。固体パルスレーザ光源は、例えば波長193nm(これ以外の種々の波長が可能)でパルス幅1ns程度のレーザ光を1〜2MHz程度の周波数でパルス発光可能である。
本実施形態においては、光源7には電源部32が連結されている。主制御系30が、パルス発光のタイミング及び光量(パルスエネルギー)を指示する発光トリガーパルスTPを電源部32に供給する。その発光トリガーパルスTPに同期して、電源部32は指示されたタイミング及び光量で光源7にパルス発光を行わせる。
光源7から射出された断面形状が矩形でほぼ平行光束のパルスレーザ光よりなる直線偏光の照明光ILは、ビームエキスパンダ8及び照明光ILの偏光方向を回転するための1/2波長板9(偏光光学系)を通過して光路折り曲げ用のミラー11に入射する。主制御系30が駆動部33を介して1/2波長板9の回転角を制御して、照明光ILの偏光方向を制御する。さらに、主制御系30は、駆動部33を介して1/2波長板9を照明光ILを円偏光に変換する1/4波長板(不図示)及び照明光ILをランダム偏光(非偏光)に変換するデポラライザ(不図示)と交換可能である。
ミラー11で+Y方向に反射された照明光ILは、照明光学系ILSの光軸AXI(ここではY軸に平行な軸)に垂直な入射面12d及び射出面12eを有するK型プリズム12(以下、単にプリズム12という。)の入射面12dに入射する。プリズム12は、照明光ILを透過する蛍石(CaF2 )又は石英等の光学材料から形成されている。一例として、プリズム12は、入射面12dに対してθx方向の時計周りにほぼ60°で交差する第1反射面12aと、この第1反射面12aとXZ平面に平行な面に対してほぼ対称な第2反射面12bと、XY平面に平行で入射面12d(射出面12e)に対して直交する透過面12cとを有している。
また、プリズム12の近傍に、ほぼXY平面内に二次元のアレイ状に配列されたそれぞれ傾斜角が可変の微小なミラーである多数のミラー要素3と、これらのミラー要素3を駆動する駆動部4とを有する空間光変調器13が設置されている。空間光変調器13の多数のミラー要素3は、全体として透過面12cにほぼ平行に、かつ近接して配置されている。各ミラー要素3は、それぞれθx方向及びθy方向(直交する2軸の回り)の反射面の傾斜角が所定の可変範囲内でほぼ連続的に制御可能である。一例として、その可変範囲内の中央においては、各ミラー要素3の反射面は透過面12cにほぼ平行である。主制御系30が変調制御部31に照明条件の情報及び照明光ILの発光タイミングの情報を供給する。変調制御部31では、その照明条件に応じて全部のミラー要素3の2軸の回りの傾斜角の分布を制御する。
空間光変調器13としては、例えば米国特許第6,900,915号明細書、米国特許第7,095,546号明細書、又は米国特許公開第2005/0095749号明細書等に開示される空間光変調器を用いることができる。
本実施形態において、光軸AXIに平行にプリズム12の入射面12dに入射した照明光ILは、第1反射面12aで全反射された後、透過面12cを透過して空間光変調器13のミラー要素3に入射する。そして、ミラー要素3で反射された照明光ILは、再び透過面12cに入射した後、第2反射面12bで全反射されて射出面12eから射出される。この際に、任意のミラー要素3の反射面が透過面12cにほぼ平行であれば、そのミラー要素3で反射された照明光ILは、射出面12eを経て光軸AXIにほぼ平行に射出される。従って、各ミラー要素3の2軸の回りの傾斜角を制御することによって、そのミラー要素3で反射されてプリズム12から射出される照明光ILの光軸AXIに対する直交する2方向の角度を制御できる。このようにプリズム12の反射面12a,12bは全反射を用いているが、その反射面12a,12bに反射膜を形成して、この反射膜で照明光ILを反射してもよい。さらに、プリズム12の代わりに、反射面12a,12bを2つの反射面とする山形のミラーを使用してもよい。
そして、プリズム12から射出された照明光ILは、リレー光学系14を介してフライアイレンズ15(オプティカルインテグレータ)に入射する。ここでは、リレー光学系14のほぼ前側焦点面に各ミラー要素3の反射面が配置され、リレー光学系14のほぼ後側焦点面にフライアイレンズ15の入射面が配置されているが、必ずしもこの配置に限定されない。
図2(A)は、図1のプリズム12(ミラー要素3をミラー要素3A〜3Gで表している)からフライアイレンズ15までの光学系を示す。図2(A)において、リレー光学系14に入射する光束の光軸AXIに対する傾斜角をθ、リレー光学系14の後側焦点距離をfとすると、一例として、フライアイレンズ15の入射面においてその光束が集光される位置の光軸AXIからの高さhは次のようになる。
h=f・tanθ …(1)
従って、図1において、プリズム12を介して空間光変調器13に入射した照明光ILは、ミラー要素3を単位として分割され、各ミラー要素3の傾斜方向及び傾斜角に従い、所定方向に所定角度をもって偏向(反射)される。そして、各ミラー要素3からの反射光は、プリズム12及びリレー光学系14によって、式(1)に従ってフライアイレンズ15の入射面上の任意の位置に集光可能である。
フライアイレンズ15に入射した照明光ILは、多数のレンズエレメントにより二次元的に分割され、各レンズエレメントの後側焦点面にはそれぞれ光源が形成される。こうして、フライアイレンズ15の後側焦点面である照明光学系ILSの瞳面IPP(照明瞳面)には、フライアイレンズ15への入射光束によって形成される照明領域とほぼ同じ強度分布を有する二次光源、すなわち実質的な面光源からなる照明光源が形成される。本実施形態においては、空間光変調器13の各ミラー要素3の反射面の傾斜方向及び傾斜角を個別に制御することによって、フライアイレンズ15の入射面上の光強度分布、ひいては瞳面IPPにおける照明光源の強度分布を、一つのミラー要素3で反射される光束を単位として、ほぼ任意の分布に制御することが可能である。
例えば図1のレチクルRのパターン面(レチクル面)において、Y方向(又はX方向)に解像限界に近いピッチで配列されたライン・アンド・スペースパターンを主に露光する場合には、瞳面IPPにおける照明光源は、図2(B)のZ方向(レチクル面のY方向に対応する)に2極の照明光源22A,22B(又はX方向に2極の照明光源)に設定される。同様に、空間光変調器13によって、瞳面IPP上の照明光源を、図2(C)の輪帯照明用の照明光源23、通常照明用の円形の照明光源(不図示)、又は4極照明用の4極の照明光源(不図示)等の任意の形状に設定可能である。さらに、空間光変調器13によって、図2(C)において、輪帯照明用の照明光源23の外径及び内径を例えばコヒーレンスファクタ(σ値)が1となる円形領域23Zの内部で任意の値に変更することも可能である。この場合、照明光学系ILSの射出側の開口数NAi及び投影光学系PLの入射側の開口数NArを用いて、σ値=NAi/NArである。
なお、フライアイレンズ15の代わりに、マイクロレンズアレイ等も使用可能である。
図1において、瞳面IPPに形成された照明光源からの照明光ILは、第1リレーレンズ16、レチクルブラインド(視野絞り)17、第2リレーレンズ18、光路折り曲げ用のミラー19、及びコンデンサ光学系20を介して、レチクルRのパターン面(下面)のX方向(走査方向に直交する非走査方向)に細長い矩形の照明領域26を均一な照度分布が得られるように重畳して照明する。ビームエキスパンダ8からコンデンサ光学系20までの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。照明光学系ILSの空間光変調器13を含む各光学部材は、不図示のフレームに支持されている。
また、レチクルRはレチクルステージRSTのXY平面に平行な上面に吸着保持され、レチクルステージRSTは、不図示のレチクルベースの上面(ガイド面)にY方向に一定速度で移動可能に、かつ少なくともX方向、Y方向、θz方向に移動可能に載置されている。レチクルステージRSTの二次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて主制御系30が、リニアモータ等の駆動系(不図示)を介してレチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
レチクルRの照明領域26内のパターンは、両側(又はウエハ側に片側)テレセントリックの投影光学系PLを介して、フォトレジスト(感光材料)が塗布されたウエハWの一つのショット領域上の露光領域27(照明領域26と光学的に共役な領域)に所定の投影倍率(例えば1/4,1/5等)で投影される。主制御系30は、駆動部34を介して投影光学系PLの開口絞りASの開口径を制御することで、投影光学系PLの開口数NAを制御できる。
また、本実施形態の露光装置EXが、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書等に開示される液浸型の露光装置である場合には、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間の局所的な領域に照明光ILを透過する液体を供給して回収する液体供給装置(不図示)が設けられる。なお、露光装置EXがドライ型である場合には、その液体供給装置を備える必要はない。
一方、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTの上部に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のベース部材のガイド面(上面)上でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動可能である。ウエハステージWSTのそのガイド面上での二次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて主制御系30が、リニアモータ等の駆動系(不図示)を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。なお、レチクルRのアライメントを行うために、レチクルRのアライメントマークを検出する空間像計測系(不図示)がウエハステージWST内に設けられ、ウエハWのアライメントを行うために、ウエハWのアライメントマークの位置を検出するアライメント系(不図示)等も備えられている。
さらに、主制御系30には、例えば磁気記憶装置等の記憶装置35及びコンピュータよりなる演算装置36が接続されている。記憶装置35には、後述の所定のデータベースが記録される第1ファイルF1、及び後述のレチクルの三次元構造のパターンのデータ等が記録された第2ファイルF2(露光データファイル)が記憶されている。演算装置36は、設定された照明条件及び投影光学系PLの開口数NAのもとで、所定のレチクルのパターンの空間像の状態のシミュレーションを行い、その結果を主制御系30に供給する(詳細後述)。主制御系30には、オペレータとの間で制御情報等の入出力を行う入出力インタフェース(不図示)が接続されている。
露光装置EXによるウエハWの露光時に、主制御系30は、レチクルRのパターンに応じて照明条件(照明光源の形状及び照明光ILの偏光状態)を選択し、選択した照明条件を変調制御部31及び駆動部33に設定する。さらに、投影光学系PLの開口数NAも設定される。変調制御部31は、空間光変調器13の各ミラー要素3の傾斜方向及び傾斜角を個別に制御して、照明光源の形状を設定する。続いて、ウエハステージWSTのステップ移動によってウエハWが走査開始位置に移動する。その後、光源7のパルス発光を開始して、レチクルRのパターンの投影光学系PLによる像でウエハWを露光しつつ、レチクルステージRST及びウエハステージWSTを介してレチクルR及びウエハWを投影倍率を速度比として同期して移動することで、ウエハWの一つのショット領域にレチクルRのパターンの像が走査露光される。このようにウエハWのステップ移動と走査露光とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作によって、ウエハWの全部のショット領域にレチクルRのパターンの像が露光される。
次に、本実施形態において、あるレチクルのパターンを露光する際に、照明光学系ILSの照明条件(ここでは照明光源の形状)及び投影光学系PLの開口数NAを最適化するために、種々の照明条件及び開口数NAのもとでどのような空間像が投影光学系の像面に形成されるか(光学性能)をシミュレーションによって求める(予測する)方法の一例につき、図3のフローチャートを参照して説明する。そのシミュレーションは、主制御系30の制御のもとで演算装置36によって実行される。主制御系30は、オペレーティングシステムを含み、演算装置36は、光学性能のシミュレーション用のプログラムを実行する。このシミュレーション用のプログラムは記憶装置35に記憶されている。なお、主制御系30及び演算装置36は一つのコンピュータのソフトウェア上の別の機能であってもよい。また、記憶装置35は、そのコンピュータ内の記憶装置であってもよい。演算装置36のソフトウェア(シミュレーション用のプログラム)上の機能は、各手段の動作を統括的に制御する制御手段36a、後述の演算をそれぞれ実行する第1手段36b、第2手段36c、第3手段36d、及び判定手段36eに分かれている。一例として、転写対象のパターンが形成されたレチクルは、図4(B)のレチクルR1であるとする。
図4(B)は、レチクルR1を図1のレチクルステージRSTにロードした状態の要部の拡大断面図を示す。図4(B)において、レチクルR1は、石英(SiO2)よりなるガラス基板41の下面に、例えば酸化ケイ素(SiO2)の薄膜及びフッ化物(例えばフッ化ランタン(LaF3))の薄膜を積層して反射防止膜42を形成し、反射防止膜42の表面にクロム(Cr)のパターン44を形成したものである。パターン44は、Y方向に投影光学系PLの解像限界程度の線幅でX方向に所定の長さのラインパターン43A,43B,43C、及びラインパターン43A〜43Cを90°回転した複数のラインパターン(不図示)を含む。一例として、ガラス基板41の厚さt1は約6.4mm、反射防止膜42の厚さt2は約60nm、ラインパターン43A〜43Cの厚さt3は約100nmである。
なお、パターン44は、実際には例えば光学的近接効果を補正するためのパターンであるOPC(Optical Proximity Correction )用の補助パターン(不図示)を含んでいてもよい。このようなレチクルR1のパターン44の三次元構造のデータ(ガラス基板41の厚さt1及び透過率、反射防止膜42を構成する複数の薄膜の厚さ及び屈折率、並びにラインパターン43A〜43C等の形状、厚さ、及び減光率等のデータ)は、図1の記憶装置35の第2ファイルF2に記録されている。そのレチクルR1のパターンのデータには、レチクルR1を照明する照明光ILの設計上の偏光状態、並びにレチクルR1のパターンを照明するための瞳面IPPにおける設計上の照明光源の形状及び投影光学系PLの設計上の開口数NAの値の情報も含まれている。
まず、図3のステップ102において、演算装置36の制御手段36aは、記憶装置35の第2ファイルF2から転写対象のレチクルR1のパターン(マスクパターン)の三次元構造のデータを読み出し、読み出したデータを第1手段36bに供給する。次のステップ104において、制御手段36aは、第2ファイルF2から、照明光学系ILSの構造を表すデータ(空間光変調器13のミラー要素3の配列、瞳面IPPにおいて一つのミラー要素3からの光が形成する面光源(最小の照明光源)の大きさ、最大の照明光源の大きさ、及び照明光源の光軸AXIからの距離とその照明光源からの光のレチクル面に対する入射角との関係等)を読み出し、読み出したデータを第1手段36bに供給する。
次のステップ106において、第1手段36bは、図4(A)に示すように、仮想的に、瞳面IPP(照明瞳面)において光軸AXIを中心として上記の最大の照明光源を含む正方形の領域を、X方向及びZ方向(レチクル面のY方向に対応する領域)にピッチΔX及びΔYで二次元のグリッド(格子)GRに分割する。一例として、ΔX=ΔYとする。この場合、グリッドGRの各格子点にX方向及びY方向の幅ΔXの小さい照明光源よりなる点光源24を配置可能である。また、−X方向の端部及び−Z方向の端部の点光源の位置を位置P(1,1)として、+X方向にi番目で+Z方向にj番目の点光源24を位置P(i,j)(i=1〜I;j=1〜J)の点光源24と呼ぶ。一例として、点光源24の大きさ(幅ΔX)は、空間光変調器13の一つのミラー要素3からの光束によって形成される照明光源の大きさとほぼ同じである。また、一例として、点光源24の配列数(整数I,J)は数100である。なお、点光源24を、空間光変調器13の一つのミラー要素3からの光束によって形成される照明光源をX方向、Z方向に複数に分割して得られる大きさに設定することも可能である。
次のステップ108において、第1手段36bは、瞳面IPPに設定した位置P(i,j)の各格子点にある幅ΔXの均一な規格化された輝度の点光源24について、この点光源24から指定された偏光状態で、指定された角度範囲内に射出された照明光ILによって、図4(B)のレチクルR1のパターン面の直下の評価面R1Pに形成される光のX方向、Y方向の複素振幅分布を計算する。その複素振幅分布は、例えばレチクルR1のパターンの三次元構造に基づいて、マックスウェル方程式を解いて厳密に電磁場(electromagnetic field: EMF)を計算すること(いわゆる三次元電磁場解析)によって求めることができる。
図4(B)の評価面R1Pに形成される光の複素振幅分布は、例えば図4(C)に示すように、座標(X,Y)の関数よりなる実部IN1R(曲線BR1で表されている)及び虚部IN1R(曲線BI1で表されている)よりなり、それらをX方向、Y方向に所定間隔でサンプリングした値(以下、計算値という。)IN1R(i,j),IN1I(i,j)が実際に計算される。計算結果は座標(i,j)に対応させて演算装置36内のメモリ(不図示)に記憶される。なお、レチクルR1のパターン面に形成されているパターンは、例えば図4(B)のパターン44の繰り返しである。従って、ステップ108の複素振幅分布の計算は、そのパターン44の部分でのみ行えばよい。又は、レチクルR1のパターン面に、微細度が異なる複数のパターンが形成されている場合、最も微細なパターンについてのみステップ108の複素振幅分布の計算を行うようにしてもよい。
次のステップ110において、第1手段36bは、図5に示すように、各点光源24の位置P(i,j)を示す座標(i,j)(i=1〜I;j=1〜J)に対応させて、ステップ108で計算された、レチクルR1の評価面R1Pに形成される光の複素振幅の実部の計算値IN1R(i,j)及び虚部の計算値IN1I(i,j)を記録したデータベースDB1を作成する。このように作成されたデータベースDB1は記憶装置35内の第1ファイルF1に記録される。次のステップ112において、演算装置36の制御手段36aは、記憶装置35の第2ファイルF2からレチクルR1を照明するための設計上の照明光源の形状(ここでは輪帯照明用の照明光源であるとする。)、及び投影光学系PLの設計上の開口数NAの値を読み出し、読み出した形状及び値を第2手段36cに設定(供給)する。第2手段36cには、図4(A)の瞳面IPPのグリッドGRの点光源24の配列の情報、及び記憶装置35の第1ファイルF1(データベースDB1)の情報も供給される。
次のステップ114において、第2手段36cは、図6(A)に示すように瞳面IPPのグリッドGR上の点光源24に関して、設定された輪帯状の照明光源23A内に中心が収まる全部の点光源24Aの位置P(i,j)を特定する。照明光源23Aの外半径はr1、内半径はr2である。また、点光源24Aの全体によって内側及び外側が階段状の斜線を施した有効領域25が形成される。さらに、第2手段36cは、有効領域25内の全部の位置P(p,q)(p=p1,…,pP;q=q1,…,qQ)(p1及びq1等は整数)の点光源24Aについて、それぞれデータベースDB1から対応する複素振幅の実部の計算値IN1R(p,q)及び虚部の計算値IN1I(p,q)を読み出し、読み出した複素振幅を持つ光束によって開口数NAの投影光学系PLを介して像面に形成される空間像のX方向、Y方向の強度分布INT1(p,q)を計算する。
有効領域25内の一つの点光源24Aに関して読み出される複素振幅の計算値IN1R(p,q)等を補間したデータを、例えば図6(B)の曲線BR1,BI1で表される複素振幅分布の実部IN1R及び虚部IN1Iとすると、その複素振幅に対応して計算される空間像の強度分布INT11は例えば図6(C)のようになる。なお、図6(C)及び図6(E)の横軸Yは図6(B)及び図6(D)に対して投影倍率の逆数倍で拡大されている。また、有効領域25内の別の点光源24Aに関して読み出される複素振幅の計算値IN1R(p,q)等を補間したデータを、例えば図6(D)の曲線BR2,BI2で表される複素振幅分布の実部IN1R及び虚部IN1Iとすると、その複素振幅に対応して計算される空間像の強度分布INT12は例えば図6(E)のようになる。計算された空間像の強度分布は演算装置36内のメモリ(不図示)に記憶される。
次のステップ116において、第3手段36dは、ステップ114で有効領域25内の点光源24A毎に計算された投影光学系PLの像面の空間像の強度分布INT1(p,q)の重み付きの和の強度分布INT1を計算する。これは瞳面IPPの複数の点光源24が、互いにインコヒーレントであるとみなせる場合の計算である。位置P(p,q)の点光源24Aの重みをw(p,q)とすると、強度分布INT1は次式で表される。次式の加算(Σ)は、位置P(p,q)が図6(A)の有効領域25内にある範囲で実行される。その重みw(p,q)は、一例として位置P(p,q)の点光源24Aの輝度の相対値(照明光源23Aの設計上の輝度分布に応じて定まる値)に応じて設定される。
INT1=Σw(p,q)・INT1(p,q) …(2)
図7(A)は、計算された強度分布INT1の一例の一部を示す。さらに、第3手段36dは、計算された強度分布INT1に対してフォトレジストの感光レベルに対応する閾値Th1を例えば最大値と最小値との中央に設定し、強度分布INT1が閾値Th1を横切るエッジ部で規定されるレジストパターンの形状を求める。図7(B)は、そのようにして求められる線幅d1の複数のレジストパターン45を示す。その線幅d1は、いわゆるCD(critical dimension)の計算値(予測値)とみなすこともできる。そのCDをレチクル面での線幅が同じでピッチが異なる複数のパターンについて計算すると、投影光学系PLの光学的近接効果(Optical Proximity Effect)の結像特性を予測することができる。そのレジストパターン45の線幅d1及び間隔の情報は演算装置36内のメモリに記憶される。
次のステップ118において、判定手段36eは、そのレジストパターン45の線幅d1及び間隔が目標値に対して許容範囲内かどうか、即ちステップ114で計算された強度分布INT1が目標とする強度分布に対して許容範囲内かどうかを判定する。そのレジストパターン45の線幅d1及び間隔が許容範囲内でないときには、ステップ120に移行して、制御手段36aは、照明光源の形状又は投影光学系PLの開口数NAを微調整する。ここでは、図8(A)に示すように、瞳面IPPにおいて、図6(A)の照明光源23Aの内半径r2を半径r3に縮小した照明光源23Bを設定する。その後、動作はステップ114に移行する。
ステップ114において、第2手段36cは、図8(A)の微調整後の照明光源23B内に中心が収まる点光源24、即ち有効領域25A内の全部の点光源24Aの位置P(i,j)を特定する。そして、点光源24Aに関してステップ114,116,118が繰り返されて、図7(B)と同様のレジストパターンの線幅及び間隔が許容範囲内かどうかが判定される。そして、線幅及び間隔が許容範囲内でないときには、ステップ120に移行して、一例として、図8(B)に示すように、瞳面IPPにおいて、図8(A)の照明光源23Bの外半径r1を半径r4に拡大した照明光源23Cを設定する。その後、動作はステップ114に移行する。
ステップ114において、第2手段36cは、図8(B)の微調整後の輪帯状の照明光源23C内に中心が収まる点光源24、即ち有効領域25B内の全部の点光源24Aの位置P(i,j)を特定する。そして、点光源24Aに関してステップ114,116,118が繰り返されて、図7(B)と同様のレジストパターンの線幅及び間隔が許容範囲内かどうかが判定される。また、照明光源23A〜23Cに対してもレジストパターンの線幅及び間隔が許容範囲内でない場合には、一例としてステップ120で投影光学系PLの開口数NAの値を微調整した後、ステップ114,116,118が繰り返される。
その後、ステップ118で、計算された空間像の強度分布INT1に対応するレジストパターンの線幅及び間隔が許容範囲内であると判定されたときに、動作はステップ122に移行して、この時点での瞳面IPPの照明光源の形状(例えば内半径及び外半径)及び投影光学系PLの開口数NAの値が、制御手段36aによって第2ファイルF2に記録される。
その後のステップ124の露光工程において、レチクルR1のパターンの像を露光する場合には、主制御系30は、第2ファイルF2からレチクルR1に対応する照明光源の形状及び開口数NAの値を読み出し、変調制御部31を介してミラー要素3の傾斜角の分布を制御して、瞳面IPPの照明光源の形状をその読み出した形状に設定し、駆動部34を介して投影光学系PLの開口数NAをその読み出した値に設定する。この照明条件及び投影光学系PLの開口数NAのもとで、レチクルR1のパターンを投影光学系PLを介してウエハWの各ショット領域に走査露光することによって、レチクルR1のパターンに対応する像を各ショット領域に高精度に露光できる。
この際に、本実施形態によれば、照明光源23Aの形状を照明光源23B,23Cに変更して空間像を求める際に、データベースDB1から読み出した照明光源23B,23C内の点光源24Aに対応する複素振幅分布から計算した投影光学系PLの像面の強度分布の加重和を計算するだけでよい。同様に投影光学系PLの開口数NAの値を変えて空間像を求める際にも、データベースDB1から読み出した照明光源23C内の点光源24Aに対応する複素振幅分布から計算した強度分布の加重和を計算するだけでよい。従って、図4(B)のレチクルR1の三次元構造のデータを用いて評価面R1Pにおける複素振幅を計算する動作を繰り返す必要がないため、照明条件及び開口数NAを種々に変更して空間像のシミュレーションを繰り返す場合に、計算精度を低下させることなく、全体の演算時間を大幅に短縮できる。
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置EXの記憶装置35及び演算装置36を用いて行われる光学性能のシミュレーション方法は、瞳面IPP(第1面)からの照明光ILでレチクルR1のパターン44を照明する照明光学系ILS及び投影光学系PLよりなる光学系によって投影光学系PLの像面(第2面)に形成される空間像のシミュレーション方法である。このシミュレーション方法は、制御手段36aによってパターン44の三次元構造を設定するステップ104と、第1手段36bによって、瞳面IPP(照明瞳面)に二次元的に分布する複数の点光源24を配置するステップ106と、複数の点光源24のそれぞれからの光が照明光学系ILS及びその三次元構造のパターン44を通過した後の複素振幅分布IN1R,IN1I を計算するステップ108と、計算された複素振幅分布を複数の点光源24に対応させて記録したデータベースDB1を作成するステップ110とを含んでいる。
また、本実施形態の光学性能のシミュレーション用のプログラムは、コンピュータを、ステップ104を実行する制御手段36a、及びステップ106,108,110を実行してデータベースDB1を作成する第1手段36bとして機能させている。
本実施形態によれば、例えば瞳面IPP上の種々の形状の照明光源(面光源)からの光によるその三次元構造のパターン44の空間像を計算する場合には、各照明光源の形状に応じてデータベースDB1から読み出される複素振幅分布に基づいて計算される強度分布の加重和を加算するだけでよい。従って、その強度分布を用いることで、計算精度を実質的に低下させることなく、かつ計算時間を大幅に短縮して光学性能のシミュレーションを行うことができる。
また、転写対象のレチクルのパターンが変更された場合にも、最初にデータベースを作成するのみで、その後はそのデータベースを用いることによって、種々の照明条件及び投影光学系PLの開口数の条件下での空間像のシミュレーションを高精度にかつ短時間に行うことができる。
(2)また、本実施形態のシミュレーション方法は、第2手段36cによって、瞳面IPPに照明光源23A(面光源)を設定するステップ112と、複数の点光源24のうち、照明光源23A内に中心が配置される複数の点光源24Aに関してデータベースDB1から読み出される複素振幅分布を用いて投影光学系PLの像面の空間像の強度分布を計算するステップ114と、第3手段36dによって、計算された強度分布の重み付きの積算値(加重和)を求めるステップ116とを含む。
また、本実施形態の光学性能のシミュレーション用のプログラムは、コンピュータを、ステップ112,114を実行する第2手段36c、及びステップ116を実行する第3手段36dとして機能させている。
従って、照明光源23A内の点光源24による個々の強度分布を計算するだけで、複雑な三次元構造のパターンに関する電磁場計算を行うことなく、容易にかつ高精度に空間像の強度分布を計算できる。
(3)また、本実施形態の露光装置EXによる露光方法は、瞳面IPPからの照明光ILで照明光学系ILS(照明系)を介してレチクルRのパターンを照明し、照明光ILでそのパターン及び投影光学系PLを介して像面に配置されるウエハW(基板)を露光する露光方法である。そして、この露光方法は、本実施形態の光学性能のシミュレーション方法を用いて瞳面IPPの照明光源23A等の最適な形状及び/又は投影光学系PLの開口数NAの最適な値を求めるステップステップ102〜120と、その求められた形状の照明光源及び/又は投影光学系PLの開口数NAを用いる照明条件(露光条件)でウエハWを露光するステップ124とを含んでいる。
この露光方法によれば、シミュレーションを高精度にかつ単時間に行うことができるため、最適な照明条件(露光条件)を短時間に求めることができる。
(4)また、本実施形態のコンピュータ読み取り可能な記憶装置35(記録媒体)は、瞳面IPPからの光で照明光学系ILSを介して照明されるパターンを通過した光の複素振幅分布情報のデータベースDB1の情報を記録したものである。そのデータベースDB1を用いて本実施形態の光学性能のシミュレーションを行うことができる。
なお、記録媒体としては、磁気記憶装置(磁気ディスク装置)の他に、DVD(digital versatile disk)、CD、又はフラッシュメモリー等も使用可能である。
なお、上記の実施形態は以下のような変形が可能である。
まず、上記の実施形態では、ステップ108で、各点光源24からの照明光ILによって形成されるレチクルR1(三次元構造のマスクパターン)のパターン面の直下の評価面R1Pにおける光の複素振幅分布を計算している。この代わりに、その複素振幅分布のフーリエ変換(フーリエスペクトル)を計算し、そのフーリエ変換成分を複素振幅情報として光源24の位置(i,j)に対応させてデータベースDB1に記録してもよい。この場合には、ステップ114で一つの点光源24からの光による空間像の強度分布を計算するときに、そのフーリエ変換成分を逆フーリエ変換して得られる複素振幅分布を使用してもよい。
また、例えば投影光学系PLの開口数NAがほぼ一定である場合、又は開口数NAを例えば最大に設定する場合には、ステップ108で、各点光源24からの照明光ILによってレチクルR1及び投影光学系PLを介して投影光学系PLの像面に形成される空間像の複素振幅分布又は強度分布を計算し、この複素振幅分布又は強度分布を複素振幅情報として光源24の位置(i,j)に対応させてデータベースDB1に記録してもよい。データベースDB1に強度分布を記録した場合には、ステップ114で一つの点光源24からの光による空間像の強度分布を計算するときには、単にデータベースDB1から対応する強度分布を読み出すだけでよい。
さらに、その各点光源24からの照明光によって形成される空間像の強度分布を計算する際に、投影光学系PLの収差及び偏光特性を考慮し、さらに必要に応じて露光装置EXのレチクルステージRST及びウエハステージWSTの制御特性等をも考慮してもよい。
また、上記のデータベースDB1は、複数のデータファイルを含むディレクトリ構造でもよく、リレーショナル・データベース・マネージメントシステム(Relational DataBase Management System: RDBMS)のような本格的な構造でもよい。
また、上記の実施形態の照明光学系ILSは、空間光変調器13を用いているため、瞳面IPPの照明光源の形状を容易に任意の形状に設定可能である。なお、空間光変調器13を用いることなく、例えば複数の回折光学素子(Diffractive Optical Element: DOE)から選択した回折光学素子を照明光路に設定する機構及びズーム光学系等を含む光量分布設定機構を使用してもよい。
また、図1の波面分割型のインテグレータであるフライアイレンズ15に代えて、内面反射型のオプティカルインテグレータとしてのロッド型インテグレータを用いることもできる。
また、上記の実施形態の露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造する場合、このデバイスは、図9に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造するステップ223、前述した実施形態の露光方法によりマスクのパターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
言い換えると、上記のデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光方法を用いてウエハWを露光する工程(ステップ124)と、露光されたウエハWを処理する工程(ステップ224)とを含んでいる。このデバイス製造方法によれば、光学性能のシミュレーションを高精度に短時間に行うことができるため、種々のデバイスの生産の立ち上げを迅速に行うことができる。
なお、上記の実施形態のシミュレーション方法は、ステッパー等の一括露光型の露光装置(投影露光装置)、又は投影光学系を用いないプロキシミティ方式の露光装置等で空間像の状態をシミュレーションによって予測する場合にも適用することができる。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ等の製造プロセスや、撮像素子(CMOS型、CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイス(電子デバイス)の製造プロセスにも広く適用できる。このように本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
EX…露光装置、DB1…データベース、ILS…照明光学系、R…レチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、3…ミラー要素、12…プリズム、13…空間光変調器、30…主制御系、31…変調制御部、36…演算装置、35…記憶装置

Claims (10)

  1. 第1面からの光でパターンを照明する照明系と前記パターンの像を第2面に形成する投影光学系とを含む光学系の光学性能のシミュレーション方法において、
    前記パターンの三次元構造を設定することと
    前記第1面に二次元的に分布する複数の点光源を配置することと
    前記複数の点光源のそれぞれについて、一つの点光源からの光が前記照明系及び前記三次元構造のパターンを通過した後の複素振幅分布情報を計算することと
    計算された前記複素振幅分布情報を前記複数の点光源に対応させて記録したデータベースを作成することと、
    前記第1面に所定領域を設定することと、
    前記複数の点光源のうち、前記所定領域内に配置される複数の点光源に関して前記データベースから読み出される前記複素振幅分布情報を用いて前記第2面の空間像の強度分布を計算することと
    を含む光学性能のシミュレーション方法。
  2. 前記複素振幅分布情報を計算するときに、一つの点光源からの光が前記照明系、前記三次元構造のパターン、及び前記投影光学系を通過した後の前記第2面における空間像の複素振幅分布情報を計算する請求項1に記載の光学性能のシミュレーション方法。
  3. 前記第2面の空間像の強度分布を計算することは、計算された前記強度分布の重み付きの積算値を求める
    ことを含む請求項1又は請求項2に記載の光学性能のシミュレーション方法。
  4. 前記第2面の空間像の第1の強度分布を目標とする強度分布として設定し、
    前記所定領域の形状を変化させながら、前記データベースから読み出される前記複素振幅分布情報を用いて前記第2面の空間像の第2の強度分布を計算し、
    前記第2の強度分布が前記第1の強度分布に許容範囲内で合致するときの前記所定領域の形状を求める請求項3に記載の光学性能のシミュレーション方法。
  5. 前記第2面の空間像の第1の強度分布を目標とする強度分布として設定し、
    前記投影光学系の開口数の値を変えながら、前記データベースから読み出される前記複素振幅分布情報を用いて前記第2面の空間像の第2の強度分布を計算し、
    前記第2の強度分布が前記第1の強度分布に許容範囲内で合致するときの前記投影光学系の開口数を求める請求項3又は請求項4に記載の光学性能のシミュレーション方法。
  6. 第1面からの光で照明系を介してパターンを照明し、前記パターン及び投影光学系を介して第2面に配置される基板を露光する露光方法において、
    請求項4に記載の光学性能のシミュレーション方法を用いて前記照明系の前記第1面の所定領域の形状を求める工程と、
    前記求められた所定領域の形状となる面光源を用いる照明条件で前記基板を露光する工程と
    を含む露光方法。
  7. 前記照明系は、前記第1面の面光源の光量分布を制御する空間光変調器を含む請求項6に記載の露光方法。
  8. 第1面からの光で照明系を介してパターンを照明し、前記パターン及び投影光学系を介して第2面に配置される基板を露光する露光方法において、
    請求項5に記載の光学性能のシミュレーション方法を用いて前記投影光学系の開口数を求める工程と、
    前記投影光学系を前記求められた開口数に設定する条件で前記基板を露光する工程と
    を含む露光方法。
  9. 第1面からの光でパターンを照明する照明系と前記パターンの像を第2面に形成する投影光学系とを含む露光装置を制御するコンピュータに、前記第2面の空間像の強度分布を計算させる処理を実行させるプログラムであって、
    請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法を前記コンピュータに実行させるプログラム。
  10. 請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の露光方法を用いて、基板にパターンを露光することと、
    前記パターンが露光された前記基板を前記パターンに基づいて加工することと、
    を含むデバイス製造方法。
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