(実施形態1)
以下、図1〜図9を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1〜図4に示すように、楽器本体1を備えている。この楽器本体1は、脚部を兼ねる一対の側板2と、この一対の側板2間に架け渡された底板である棚板3と、この棚板3の前端部(図1では左端部)に起立して設けられた前板4と、棚板3の後端部(図1では右端部)に起立して設けられた後板5と、この後板5および一対の側板2の各上端部に設けられた上板6とを備えている。
この場合、上板6は、図1〜図4に示すように、その前後方向(図1では左右方向)の長さが一対の側板2の各前後方向の長さのほぼ半分程度の長さに形成されている。また、この上板6の後部(図1では右側部)には、その後側下部に向けて傾斜する傾斜部6aが形成されており、この上板6の前端部(図1では左端部)には、下側に向けてほぼ垂直に垂れ下がる垂下り部6bが設けられている。これにより、この楽器本体1は、上板6の前方に位置する部分が上方に開放されたほぼ箱形状に形成されている。
この楽器本体1の内部には、図1〜図4に示すように、鍵盤部7が設けられている。この鍵盤部7は、白鍵7aと黒鍵7bとを備え、これら白鍵7aと黒鍵7bとが鍵盤シャーシ(図示せず)上に並列に配列された状態で上下方向に回転可能に取り付けられた構成なっている。これにより、鍵盤部7は、鍵盤シャーシが楽器本体1の棚板3上に配置され、白鍵7aおよび黒鍵7bの各後部(図1では右側部)が上板6で覆われた状態で、白鍵7aおよび黒鍵7bが上板6の垂下り部6bと前板4との間から上方に露出するように構成されている。
また、この楽器本体1には、図1〜図4に示すように、鍵盤部7を開閉自在に覆う鍵盤蓋8が一対の支持アーム部10によって開閉可能に取り付けられている。この鍵盤蓋8は、一対の支持アーム部10によって上下方向に回転することにより、図1に示すように、楽器本体1の上部に配置されて鍵盤部7を覆って閉じ、また図4に示すように、楽器本体1の後方(図4では右側)に少し傾いて起立した状態で、鍵盤部7を露出させて開くように構成されている。
一対の支持アーム部10は、図1〜図4に示すように、その各一端部が鍵盤蓋8の内面(図1では下面)における両側部にそれぞれ取り付けられ、各他端部が上板6および後板5に亘って設けられたスリット状の挿入孔11を通して楽器本体1内に挿入し、この挿入した各他端部が一対の側板2の各内面に設けられた各アーム支持軸12にそれぞれ回転可能に取り付けられた構成になっている。この場合、スリット状の挿入孔11は、上板6および後板5の各両側部に位置する箇所において、上板6の前後方向の中間部から後板5の上部に亘って連続して形成されている。
これにより、一対の支持アーム部10は、図1〜図4に示すように、上板6および後板5に亘って設けられたスリット状の挿入孔11内を移動しながら、一対の側板2に設けられた各アーム支持軸12を中心に上下方向に回転するように構成されている。この場合、一対の支持アーム部10は、各アーム支持軸12を中心に反時計回りに回転すると、図1に示すように、鍵盤蓋8を楽器本体1の上部に配置させて閉じ、また各アーム支持軸12を中心に時計回りに回転すると、図4に示すように、鍵盤蓋8を楽器本体1の後方(図4では右側)に少し傾けて起立させた状態で開くように構成されている。
ところで、この鍵盤楽器は、譜面台装置を備えている。この譜面台装置は、図4および図8に示すように、鍵盤蓋8に譜面13を立て掛けるための譜面受け14が回転可能に取り付けられた構成になっている。譜面受け14は、図8に示すように、その前後方向(図8では左右方向)における中間部が窪み、その両側が上方に向けて傾斜する板状に形成されている。この譜面受け14の後端部(図8では右端部)には、軸取付孔15が鍵盤部7の鍵配列方向に沿って設けられており、この軸取付孔15内には回転軸16が挿入されている。
この回転軸16は、図8および図9に示すように、鍵盤蓋8の内面(図8では左側面)に設けられた軸受け部17(図9参照)に上下方向に回転可能に取り付けられている。これにより、譜面受け14は、鍵盤蓋8の軸受け部17に回転可能に取り付けられた回転軸16を中心に、譜面受け14の自重によって鍵盤蓋8の内面から離れる方向に向けて回転して開くように構成されている。
また、この譜面受け14は、図5〜図8に示すように、連動機構20によって鍵盤蓋8の開閉動作に連動して回転するように構成されている。この連動機構20は、鍵盤蓋8が回転して起立した状態に開く際に、譜面受け14を回転させて譜面13が載せられる状態に開き、且つ鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、譜面受け14を閉じる方向に回転させるように構成されている。
すなわち、この連動機構20は、図5〜図8に示すように、鍵盤蓋8にスライド可能に設けられて鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する際に自重でスライドするスライダ部21と、楽器本体1に設けられて鍵盤蓋8の開閉動作に応じてスライダ部21のスライド動作を制御するスライド制御部22と、スライダ部21のスライド動作に応じて譜面受け14を連動させて回転させる連結部材23とを備えている。
スライダ部21は、図5〜図9に示すように、鍵盤蓋8の前後方向(図5では上下方向)に沿って細長い板状に形成されている。このスライダ部21の後部(図5では下部)には、錘部21aが設けられており、この錘部21aの後端部(図5では下部)には、スライダ部21のスライド方向と直交する方向において、上部(図5では右端部)から前側下部(図5では左側上部)に向けて傾斜する傾斜部21bが設けられている。これにより、スライダ部21は、鍵盤蓋8の後部(図5では下部)内に設けられた収納部24内にスライド可能に配置された構成になっている。
この収納部24は、スライダ部21と同様、鍵盤蓋8の前後方向(図5では上下方向)に沿って細長く形成された空洞部である。この収納部24の前部(図5では上部)には、図5〜図9に示すように、開口部24aが鍵盤蓋8の内面側(図5では左面側)に開放されて設けられている。また、この収納部24の後部(図5では下部)には、切欠き部24bが鍵盤蓋8の内面側(図5では左面側)から鍵盤蓋8の後端部(図5では下端部)の中間に亘って開放された状態で設けられている。
さらに、この収納部24内における後部(図5では下部)には、図5〜図8に示すように、スライダ部21が収納部24内から脱落するのを防ぐためのストッパ部24cが、スライダ部21の厚みの半分程度の高さで設けられている。これにより、スライダ部21は、図3〜図8に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した際に、収納部24内をスライドしながら降下して、その下端部である後端部がストッパ部24cに当接して停止し、この状態でスライダ部21の後端部の傾斜部21bが切欠き部24bから外部に露出するように構成されている。
スライド制御部22は、図5〜図8に示すように、楽器本体1の後板5にその後方(図5では右側)に向けて突出して設けられた突起部である。このスライド制御部22の後端部(図5では右端部)には、その後側下部に向けて傾斜する傾斜部22aが、スライダ部21の傾斜部21bと同じ傾斜角度で設けられている。このスライド制御部22は、図3および図5に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した際に、鍵盤蓋8の収納部24における切欠き部24bの下部に位置して、降下したスライダ部21の傾斜部21bに対面するように構成されている。
また、このスライド制御部22は、図6に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から少し開く方向に向けて回転する際に、鍵盤蓋8が徐々に下がりながら回転し、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22aが切欠き部24b内に相対的に挿入し、この挿入したスライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに接近もしくは当接するように構成されている。
さらに、このスライド制御部22は、図7に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に開く方向に回転する際に、鍵盤蓋8が徐々に下がりながら回転し、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22aが収納部24内に相対的に挿入し、この挿入したスライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに当接し、この状態で鍵盤蓋8が徐々に下がりながら回転する鍵盤蓋8の回転移動に伴って、スライド制御部22の傾斜部22aが相対的にスライダ部21を徐々に押し上げるように構成されている。
また、このスライド制御部22は、図5〜図8に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方(図8では右側)に向けて少し傾いて起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、その鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22bが、スライダ部21の傾斜部21bから徐々に離れる方向に向けて相対的に移動して、スライダ部21をその自重で降下させるように構成されている。
これにより、スライド制御部22は、図3〜図8に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に開く方向(時計回り方向)に向けて回転する際に、その鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライダ部21を押し上げ、また鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に向けて少し傾いた状態で起立して開いた状態から閉じる方向(反時計回り方向に)に向けて回転する際に、その鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライダ部21から徐々に離れてスライダ部21をその自重で降下させるように制御する構成になっている。
一方、連結部材23は、図5〜図8に示すように、ワイヤや紐などの連結線材であり、その一端部23aがスライダ部21の前端部(図5では上端部)に取り付けられ、他端部23bが収納部24の開口部24aを通して譜面受け14の回転中心から偏心した位置、つまり譜面受け14に設けられた連結突起部25に取り付けられた構成になっている。
この場合、連結突起部25は、図8に示すように、譜面受け14が鍵盤蓋8から離れて開いた状態において、譜面受け14の後端部(図8では右端部)に起立した状態で設けられ、この起立した先端部(図8では上端部)に連結部材23の他端部23bが取り付けられている。また、この連結突起部25は、図5に示すように、連結部材23がスライダ部21によって引っ張られ、譜面受け14が鍵盤蓋8に向けて接近して閉じた際に、先端部(図5では右端部)が鍵盤蓋8の開口部24aを通して収納部24内に挿入するように構成されている。
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
まず、鍵盤蓋8が楽器本体1上に配置されて閉じている状態から鍵盤蓋8を開く場合について説明する。この場合、鍵盤蓋8が楽器本体1上に配置されて閉じている状態では、図1に示すように、連動機構20のスライダ部21の傾斜部21bが鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接している。このため、連結部材23がスライダ部21によって引っ張られ、譜面受け14を鍵盤蓋8の内面に接近させて閉じた状態になっている。これにより、譜面受け14が楽器本体1の上面や鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bに接触することがない。
この状態で、鍵盤蓋8の前端部(図1では左端部)を持ち上げると、図2に示すように、鍵盤蓋8が一対の支持アーム部10と共に各アーム支持軸12を中心に上方に向けて時計回りに回転する。このときにも、連動機構20のスライダ部21の傾斜部21bが鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接している。このため、連結部材23がスライダ部21によって引っ張られ、これにより譜面受け14が鍵盤蓋8の内面に接近して閉じた状態を維持する。
この後、鍵盤蓋8が更に一対の支持アーム部10と共に各アーム支持軸12を中心に時計回りに回転すると、図3および図5に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態に開く。このときにも、連動機構20のスライダ部21の傾斜部21bが鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接している。このため、連結部材23がスライダ部21によって引っ張られ、これにより譜面受け14が鍵盤蓋8の内面に接近して閉じた状態を維持している。
また、このときには、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立するため、図3および図5に示すように、鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接したスライダ部22の傾斜部21bが、鍵盤蓋8の切欠き部24bの下部に位置して露出している。これにより、露出したスライダ部21の傾斜部21bが、鍵盤蓋8の回転移動に伴って連動機構20のスライド制御部22の傾斜部22aに接近して対面する。
この後、図5に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から少し開く方向に向けて回転すると、図6に示すように、鍵盤蓋8が一対の支持アーム部10の各アーム支持軸12を中心に回転しながら徐々に下がり、この鍵盤蓋8の徐々に下がる回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22aが切欠き部24b内に相対的に挿入し、この挿入したスライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに更に接近して当接する。
この状態で、鍵盤蓋8が更に開く方向に向けて回転すると、図7に示すように、鍵盤蓋8が更に回転しながら下がるので、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22aが収納部24内に相対的に挿入しながら、スライダ部21を鍵盤蓋8に対して相対的に徐々に押し上げる。すなわち、スライド制御部22は、常に所定位置に位置しているが、鍵盤蓋8が回転しながら徐々に下がることにより、スライダ部21がスライド制御部22の傾斜部22aによって押し上げられることになる。
このように、鍵盤蓋8が時計回りに回転して、スライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられる際には、図7に示すように、連結部材23による譜面受け14の引っ張りが緩んで解除される。すると、譜面受け14が、その自重によって回転軸16を中心に回転し、図4および図8に示すように、スライダ部21の上昇に応じて鍵盤蓋8の内面から徐々に離れて開く。
これにより、図4および図8に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に向けて傾いて起立した状態で開き、楽器本体1内の鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bが上板6の垂下り部6bと前板4との間から上方に露出するので、演奏が可能な状態になる。このときには、譜面受け14が鍵盤蓋8の内面から離れて開いているので、この譜面受け14上に譜面13を立て掛け、この譜面13を見ながら演奏することができる。
次に、鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる場合について説明する。このときには、図4および図8に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に向けて少し傾いて起立した状態で開き、連動機構20のスライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられ、譜面受け14が開いている。
この状態で、鍵盤蓋8を閉じる方向に回転させると、図7に示すように、一対の支持アーム部10の各アーム支持軸12を中心に反時計回りに回転することにより、鍵盤蓋8が上方に少しずつ移動しながら回転し、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22が鍵盤蓋8に対して相対的に徐々に下がりながら鍵盤蓋8から離れる方向に向けて徐々に移動するので、スライダ部21もその自重で徐々に下がる。
すると、連結部材23がスライダ部21の降下に伴って引っ張られ、譜面受け14を鍵盤蓋8の内面に接近させる方向に向けて回転させる。そして、鍵盤蓋8が更に閉じる方向に回転すると、図6に示すように、鍵盤蓋8が上方に少しずつ移動しながら回転し、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22が鍵盤蓋8の収納部24内から相対的に離脱する。すると、スライダ部24が更に降下してスライダ部21の傾斜部21bが収納部24のストッパ部24cに当接する。
これにより、連結部材23がスライダ部21によって更に引っ張られ、譜面受け14を鍵盤蓋8の内面に接近させて閉じる。この後、鍵盤蓋8が更に閉じる方向に回転すると、図3および図5に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の後板5から徐々に離れるので、連動機構20のスライド制御部22が鍵盤蓋8から相対的に離れて、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する。
そして、鍵盤蓋8が更に閉じる方向に回転する際には、図2に示すように、スライダ部21が収納部24のストッパ部24cに当接して位置規制され、譜面受け14が連結部材23によって鍵盤蓋8の内面に接近して閉じた状態で、鍵盤蓋8が支持アーム部10と共にアーム支持軸12を中心に反時計回りに回転し、図1に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の上部に配置されて鍵盤部7を覆って閉じる。
このときには、図1および図2に示すように、譜面受け14が連結部材23によって鍵盤蓋8の内面に接近して閉じているので、鍵盤蓋8を閉じる際、および鍵盤蓋8を閉じた際に、譜面受け14が楽器本体1の上板6の上面に接触したり、鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bに接触したりすることがなく、楽器本体1の上板6の上面や鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bを傷つけることがない。
このように、この鍵盤楽器の譜面台装置によれば、鍵盤部7を備えた楽器本体1に鍵盤部7を開閉可能に覆う鍵盤蓋8が回転可能に取り付けられ、この鍵盤蓋8に譜面13を載せて立て掛けるための譜面受け14が回転可能に取り付けられた譜面台装置において、鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、譜面受け14が鍵盤蓋8に接近して閉じる方向に向けて譜面受け14を回転させる連動機構20を備えているので、譜面受け14の閉じ忘れを確実に防ぐことができる。
すなわち、この譜面台装置では、鍵盤蓋8を起立させて開いた状態から閉じる方向に向けて回転させる際に、連動機構20によって譜面受け14を自動的に閉じる方向に回転させることができる。このため、譜面受け14の閉じ忘れを確実に防ぐことができ、これにより楽器本体1の上面や楽器本体1内の鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bを傷つけることがなく、良好に鍵盤蓋8を閉じることができる。
この場合、連動機構20は、鍵盤蓋8にスライド可能に設けられて鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する際に自重でスライドするスライダ部21と、楽器本体1に設けられて鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際にスライダ部21に対する係止を解除してスライダ部21を自重でスライドさせるスライド制御部22と、スライダ部21のスライド動作に応じて譜面受け14を連動させて回転させる連結部材23とを備えていることにより、鍵盤蓋8の閉動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に連動させて閉じることができる。
すなわち、この連動機構20は、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に少し傾いて起立した状態からほぼ垂直に起立する際に、スライド制御部22がスライダ部21から徐々に離れることにより、スライダ部21を自重でスライドさせることができ、このスライダ部21のスライド動作に応じて連結部材23が譜面受け14を鍵盤蓋8に接近させる方向に回転させて閉じることができる。このため、鍵盤蓋8の閉動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に連動させて閉じることができる。
また、この連動機構20は、鍵盤蓋8が回転して起立した状態に開く際に、譜面受け14を鍵盤蓋8から離れる方向に回転させて譜面13が載せられる状態に開く構成であることにより、鍵盤蓋8を回転させて起立した状態に開く際に、連動機構20によって譜面受け14を自動的に回転させて譜面13が載せられる状態に開くことができる。このため、この連動機構20では、鍵盤蓋8の開閉動作に応じて譜面受け14を自動的に連動させて開閉させることができる。
この場合、連動機構部20のスライド制御部22は、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に閉じる方向に向けて回転する際に、スライダ部21を押し上げる構成であることにより、譜面受け14を自動的に回転させて鍵盤蓋8から離れる方向に向けて開くことができる。
すなわち、このスライド制御部22は、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態のときに、スライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに接近して当接し、この状態から更に鍵盤蓋8を開く方向に回転させると、この鍵盤蓋8の回転動作に伴うスライド制御部22の相対的な移動によって、スライダ部21を確実に且つ良好に押し上げることができ、これにより譜面受け14を自動的に回転させて開くことができる。
さらに、この連動機構部20の連結部材23は、その一端部23aがスライダ部21に取り付けられ、他端部23bが譜面受け14の回転中心から偏心した位置、つまり譜面受け14の連結突起部25に取り付けられたワイヤや紐などの結線材であることにより、スライダ部21と譜面受け14とを簡単に且つ容易に連結することができると共に、スライダ部21が自重でスライドした際に、そのスライダ部21のスライド動作に応じて連結部材23が確実に引っ張られるので、この連結部材23によって譜面受け14を確実に回転させて鍵盤蓋8に接近させて閉じることができる。
また、この連結部材23は、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立して開いた状態から更に開く方向に向けて回転する際に、スライド制御部22によってスライダ部21が押し上げられると、このスライダ部21による連結部材23の引っ張りが緩んで解除されるので、譜面受け14をその自重で回転させることができ、これにより譜面受け14を自動的に鍵盤蓋8から離れる方向に回転させて開くことができる。
なお、上述した実施形態1では、連結部材23として、ワイヤや紐などの連結線材を用いた場合について述べたが、これに限らず、例えば棒状の連結線材を用いても良い。この場合には、連結線材の一端部をスライダ部21に回転可能に取り付け、他端部を譜面受け14の回転中心から偏心した位置、つまり譜面受け14の連結突起部25に回転可能に取り付けることにより、リンク機構の構造にすれば良い。このように構成しても、実施形態1と同様の作用効果がある。
(実施形態2)
次に、図10〜図15を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図9に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図10〜図12に示すように、譜面台装置における連動機構30の連結部材31が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、この連動機構30は、実施形態1と同様、鍵盤蓋8が回転して起立した状態に開く際に、譜面受け14を回転させて譜面13が載せられる状態に開き、且つ鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、譜面受け14を閉じる方向に回転させるように構成されている。
この場合、連動機構30は、図13〜図15に示すように、鍵盤蓋8にスライド可能に設けられて鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する際に自重でスライドするスライダ部21と、楽器本体1に設けられて鍵盤蓋8の開閉動作に応じてスライダ部21のスライド動作を制御するスライド制御部22と、スライダ部21のスライド動作に応じて譜面受け14を連動させて回転させる連結部材31とを備えている。
スライダ部21は、実施形態1と同様、鍵盤蓋8の後部内に設けられた収納部24内にスライド可能に配置された構成になっている。この収納部24も、実施形態1と同様、鍵盤蓋の前後方向(図13では上下方向)に沿って細長く形成された空洞部である。この収納部24の前部(図13では上部)には、開口部24aが設けられている。また、収納部24の後部(図13では下部)には、切欠き部24bが設けられている。さらに、この収納部24内における後部(図13では下部)には、ストッパ部24cが設けられている。
スライド制御部22も、実施形態1と同様、楽器本体1の後板5にその後方(図13では右側)に向けて突出して設けられた突起部である。このスライド制御部22の後端部(図13では下端部)には、その後側下部に向けて傾斜する傾斜部22aが、スライダ部21の傾斜部21bと同じ傾斜角度で設けられている。このスライド制御部22は、図13に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した際に、鍵盤蓋8の収納部24における切欠き部24bの下部に挿入して、降下したスライダ部21の傾斜部21bに対面するように構成されている。
また、このスライド制御部22は、実施形態1と同様、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に開く方向に回転して楽器本体1の後方に向けて傾いた状態に起立する際に、スライド制御部22の傾斜部22aが鍵盤蓋8の回転移動に伴って収納部24内に向けて相対的に挿入し、この挿入したスライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに接近もしくは接触するように構成されている。
さらに、このスライド制御部22は、実施形態1と同様、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に開く方向に回転する際に、鍵盤蓋8が徐々に下がりながら回転し、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22aが収納部24内に相対的に挿入し、この挿入したスライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに当接し、この状態で鍵盤蓋8が徐々に下がりながら回転する鍵盤蓋8の回転移動に伴って、スライド制御部22の傾斜部22aが相対的にスライダ部21を徐々に押し上げるように構成されている。
また、このスライド制御部22は、図13および図14に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に向けて少し傾いた状態で起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、その鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22bが、スライダ部21の傾斜部21bから徐々に離れる方向に向けて相対的に移動して、スライダ部21をその自重で降下させるように構成されている。
これにより、スライド制御部22は、図11〜図14に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に開く方向(時計回り方向)に向けて回転する際に、その鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライダ部21を押し上げ、また鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に向けて少し傾いた状態で起立して開いた状態から閉じる方向(反時計回り方向)に向けて回転する際に、その鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライダ部21から徐々に離れてスライダ部21を自重で降下させるように制御する構成になっている。
一方、連結部材31は、図13〜図15に示すように、スライダ部21に設けられたラックギア32と、譜面受け14に設けられてラックギア32に噛み合って回転するピニオンギア33とを備えている。すなわち、ラックギア32は、スライダ部21の前部下面(図13では上部の左側面)にスライダ部21のスライド方向に沿って設けられている。この場合、ラックギア32は、その長さがスライダ部21のスライド長さと同じか、それよりも長く形成されている。
また、ピニオンギア33は、図13および図14に示すように、譜面受け14の回転軸16を中心に回転するほぼ半円形の扇状に形成され、その外周部に歯部33aが形成された構成になっている。このピニオンギア33は、図13および図14に示すように、譜面受け14に一体的に設けられていると共に、鍵盤蓋8の開口部24a内に回転可能な状態で配置されて、外周部の歯部33aがスライダ部21のラックギア32に噛み合って譜面受け14と共に回転するように構成されている。
これにより、連結部材31は、図13に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立してスライダ部21が降下する際に、ピニオンギア33がラックギア32に噛み合って時計回りに回転して、ピニオンギア33の一端部側(図13では上部側)に位置する歯部33aがラックギア32の前端部32a側(図13では上部側)に位置することにより、譜面受け14を鍵盤蓋8の内面(図8では左側面)に接近する方向に回転させて閉じるように構成されている。
また、この連結部材31は、図13および図14に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態で更に開く方向に回転してスライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられる際に、ピニオンギア33がラックギア32に噛み合って反時計回りに回転して、ピニオンギア33の他端部(図14では下部側)に位置する歯部33aがラックギア32の後端部32b側(図14では下部側)に位置することにより、譜面受け14を鍵盤蓋8の内面(図14では左側面)から離れる方向に回転させて開くように構成されている。
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
まず、鍵盤蓋8が楽器本体1上に配置されて閉じている状態から鍵盤蓋8を開く場合について説明する。この場合には、実施形態1と同様、鍵盤蓋8が楽器本体1上に配置されて閉じている。このときには、図10に示すように、連動機構30のスライダ部21の傾斜部21bが鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接している。
このため、スライダ部21が鍵盤蓋8の収納部24内における後部側(図10では右側)に位置し、これに伴ってスライダ部21のラックギア32も後部側に移動している。これにより、連結部材31のピニオンギア33は、その歯部33aがスライダ部21のラックギア32の後端部32b側(図10では右端部側)に位置で噛み合っている。このため、譜面受け14は鍵盤蓋8の内面(図10では左側面)に接近する方向に回転して閉じている。これにより、譜面受け14が楽器本体1の上面や鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bに接触することがない。
この状態で、鍵盤蓋8の前端部(図10では左端部)を押し上げると、実施形態1と同様、鍵盤蓋8が一対の支持アーム部10と共に各アーム支持軸12を中心に上方に向けて時計回りに回転する。このときには、連動機構30のスライダ部21の傾斜部21bが鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接している。このため、連結部材31のピニオンギア33は、その歯部33aがスライダ部21のラックギア32の後端部32b側(図8では右端部側)に位置で噛み合っており、これにより譜面受け14が鍵盤蓋8の内面に接近して閉じた状態を維持する。
この後、鍵盤蓋8が更に一対の支持アーム部10と共に各アーム支持軸12を中心に上方に向けて時計回りに回転すると、図11に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態に開く。このときにも、連動機構30のスライダ部21の傾斜部21bが鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接している。このため、連結部材23のピニオンギア33は、その歯部33aがスライダ部21のラックギア32の後端部32b側(図8では右端部側)に位置で噛み合っており、これにより譜面受け14が鍵盤蓋8の内面に接近して閉じた状態を維持している。
また、このときには、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立するため、図11および図13に示すように、鍵盤蓋8の収納部24のストッパ部24cに当接したスライダ部22の傾斜部21bが、鍵盤蓋8の切欠き部24bの下部に位置して露出している。これにより、露出したスライダ部21の傾斜部21bが、鍵盤蓋8の回転に伴って連動機構20のスライド制御部22の傾斜部22aに接近して対面する。
この後、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から少し開く方向に向けて回転すると、実施形態1と同様、鍵盤蓋8が一対の支持アーム部10の各アーム支持軸12を中心に回転しながら徐々に下がり、この鍵盤蓋8の徐々に下がる回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22aが切欠き部24b内に相対的に挿入し、この挿入したスライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに更に接近して当接する。
この状態で、鍵盤蓋8が更に開く方向に向けて回転すると、鍵盤蓋8が更に回転しながら下がるので、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22の傾斜部22aが収納部24内に相対的に挿入しながら、スライダ部21を鍵盤蓋8に対して相対的に徐々に押し上げる。すなわち、スライド制御部22は、常に所定位置に位置しているが、鍵盤蓋8が回転しながら徐々に下がることにより、スライダ部21がスライド制御部22の傾斜部22aによって押し上げられることになる。
このように、鍵盤蓋8が時計回りに回転して、スライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられる際には、連結部材31のラックギア32が上昇するので、このラックギア32に噛み合っているピニオンギア33が譜面受け14と共に反時計回りに回転しながらラックギア32の後端部32b側に回転移動し、図14に示すように、ピニオンギア33の歯部33aがラックギア32の後端部32b側に位置して噛み合う。これにより、譜面受け14は鍵盤蓋8の内面から離れる方向に向けて回転して開く。
この状態では、図12に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に向けて傾いて起立した状態で開き、楽器本体1内の鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bが上板6の垂下り部6bと前板4との間から上方に露出するので、演奏が可能な状態になる。また、このときには、譜面受け14が鍵盤蓋8の内面から離れて開いているので、この譜面受け14上に譜面13を立て掛け、この譜面13を見ながら演奏することができる。
次に、鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる場合について説明する。このときには、図12および図14に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に向けて少し傾いて起立した状態で開き、連動機構30のスライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられ、譜面受け14が開いている。
この状態で、鍵盤蓋8を閉じる方向に回転させると、図11および図13に示すように、鍵盤蓋8が一対の支持アーム部10と共に各アーム支持軸12を中心に反時計回りに回転することにより、鍵盤蓋8が上方に少しずつ移動しながら回転し、この鍵盤蓋8の回転移動に伴ってスライド制御部22が鍵盤蓋8に対して相対的に徐々に下がりながら鍵盤蓋8から離れる方向に向けて徐々に移動するので、スライダ部21もその自重で徐々に下がる。
すると、鍵盤蓋8の後部(図13では下部)が楽器本体1の後板5から徐々に離れて、図13に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する。このときには、連動機構30のスライド制御部22が鍵盤蓋8から相対的に離れる方向に移動するので、鍵盤蓋8の収納部24内に配置されたスライダ部21がその自重によってスライド制御部22の傾斜部22aと共に徐々に降下する。これに伴って連結部材31のラックギア32も徐々に下側に移動し、ピニオンギア33が徐々に反時計回りに回転する。
この状態で、鍵盤蓋8が更に閉じる方向に回転すると、連動機構30のスライド制御部22が相対的にスライダ部21から離れるので、スライダ部21がその自重で降下して、スライダ部21の傾斜部21bが収納部24の後端部(図13では下端部)に設けられたストッパ部24cに当接する。
このときには、連結部材31のラックギア32がスライダ部21と共に降下するので、このラックギア32に噛み合っているピニオンギア33が譜面受け14と共に時計回りに回転しながら、ラックギア32の前端部32a側に回転移動し、ピニオンギア33の歯部33aがラックギア32の前端部32a側に位置する。これにより、譜面受け14は鍵盤蓋8の内面に接近する方向に向けて回転して閉じる。
そして、鍵盤蓋8が更に閉じる方向に回転する際には、実施形態1と同様、スライダ部21が収納部24のストッパ部24cに当接して位置規制され、譜面受け14が連結部材31によって鍵盤蓋8の内面に接近して閉じた状態で、鍵盤蓋8が支持アーム部10と共にアーム支持軸12を中心に反時計回りに回転し、図10に示すように、鍵盤蓋8が楽器本体1の上部に配置されて鍵盤部7を覆って閉じる。
このときには、図10に示すように、譜面受け14が連結部材31によって鍵盤蓋8の内面に接近して閉じているので、鍵盤蓋8を閉じる際、および鍵盤蓋8を閉じた際に、譜面受け14が楽器本体1の上板6の上面に接触したり、鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bに接触したりすることがなく、楽器本体1の上板6の上面や鍵盤部7の白鍵7aおよび黒鍵7bを傷つけることがない。
このように、この鍵盤楽器の譜面台装置においても、実施形態1と同様、鍵盤蓋8を起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転させる際に、連動機構30によって譜面受け14を自動的に閉じる方向に回転させることができる。このため、譜面受け14の閉じ忘れを確実に防ぐことができ、これにより楽器本体1の上面や楽器本体1内に設けられた鍵盤部7を傷つけることがなく、良好に鍵盤蓋8を閉じることができる。
この場合、連動機構30は、鍵盤蓋8にスライド可能に設けられて鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する際に自重でスライドするスライダ部21と、楽器本体1に設けられて鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際にスライダ部21に対する係止を解除してスライダ部21を自重でスライドさせるスライド制御部22と、スライダ部21のスライド動作に応じて譜面受け14を連動させて回転させる連結部材31とを備えていることにより、実施形態1と同様、鍵盤蓋8の閉動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に連動させて閉じることができる。
すなわち、この連動機構30は、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に少し傾いて起立した状態からほぼ垂直に起立する際に、実施形態1と同様、スライド制御部22がスライダ部21から徐々に離れるので、スライダ部21を自重でスライドさせることができ、このスライダ部21のスライド動作に応じて連結部材30が譜面受け14を回転させて鍵盤蓋8に接近させて閉じることができる。これにより、鍵盤蓋8の閉動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に連動させて閉じることができる。
また、この連動機構30は、鍵盤蓋8が回転して起立した状態に開く際に、譜面受け14を鍵盤蓋8から離れる方向に回転させて譜面13が載せられる状態に開くように構成されていることにより、実施形態1と同様、鍵盤蓋8を回転させて起立した状態に開く際に、連動機構30によって譜面受け14を自動的に回転させて譜面13が載せられる状態に開くことができる。このため、この連動機構30においても、実施形態1と同様、鍵盤蓋8の開閉動作に応じて譜面受け14を自動的に連動させて開閉させることができる。
この場合にも、連動機構部30のスライド制御部22は、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に閉じる方向に向けて回転する際に、スライダ部21を押し上げる構成であることにより、譜面受け14を自動的に回転させて鍵盤蓋8から離れる方向に向けて開くことができる。
すなわち、このスライド制御部22も、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態のときに、スライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに接近して当接し、この状態から更に鍵盤蓋8を開く方向に回転させると、この鍵盤蓋8の回転動作に伴うスライド制御部22の相対的な移動によって、スライダ部21を確実に且つ良好に押し上げることができ、これにより譜面受け14を自動的に回転させて開くことができる。
さらに、この連動機構部30の連結部材31は、スライダ部21に設けられたラックギア32と、譜面受け14に設けられてラックギア32に噛み合って回転するピニオンギア33とを備えていることにより、スライド部21のスライド動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に開閉させることができる。
すなわち、この連結部材31では、スライダ部21が自重で降下する際に、そのスライダ部21のスライド動作に伴ってラックギア32が下側にスライドすることにより、このラックギア32に噛み合っているピニオンギア33が譜面受け14と共に回転するので、この連結部材31によって譜面受け14を確実に鍵盤蓋8に接近する方向に回転させて閉じることができる。
また、この連結部材31では、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に閉じる方向に向けて回転して、スライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられる際に、スライダ部21のスライド動作に伴ってラックギア32が上方にスライドすることにより、このラックギア32に噛み合っているピニオンギア33が譜面受け14と共に回転するので、この連結部材31によって譜面受け14を確実に鍵盤蓋8から離れる方向に回転させて開くことができる。
(実施形態3)
次に、図16および図17を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態3について説明する。この場合にも、図1〜図9に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図16および図17に示すように、連動機構40の連結部材41が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、この連動機構40は、実施形態1と同様、鍵盤蓋8が回転して起立した状態に開く際に、譜面受け14を回転させて譜面13が載せられる状態に開き、且つ鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、譜面受け14を閉じる方向に回転させるように構成されている。
この場合、連動機構40は、図16および図17に示すように、鍵盤蓋8にスライド可能に設けられて鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する際に自重でスライドするスライダ部21と、楽器本体1に設けられて鍵盤蓋8の開閉動作に応じてスライダ部21のスライド動作を制御するスライド制御部22と、スライダ部21のスライド動作に応じて譜面受け14を連動させて回転させる連結部材41とを備えている。
この連結部材41は、図16および図17に示すように、譜面受け14に設けられた連動アーム部42と、スライダ部21に設けられて連動アーム部42が挿入する係合孔43とを備えている。連動アーム部42は、譜面受け14の後部に鍵盤蓋8の開口部24aに向けて突出して設け、その先端部42aが鍵盤蓋8の開口部24aを通して収納部24内に挿入するように構成されている。
また、係合孔43は、スライダ部21の前部(図16では上部)に位置する箇所に、スライダ部21の厚み方向に貫通して設けられ、その内部に連動アーム部42の先端部42aがスライダ部21の厚み方向に移動可能に挿入されるように構成されている。これにより、係合孔43は、鍵盤蓋8の開閉動作に応じてスライダ部21が収納部24内をスライドする際に、そのスライダ部21のスライド動作に伴って移動し、連動アーム部42の先端部42aを移動させて譜面受け14を回転させるように構成されている。
すなわち、この連結部材41は、図16に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立してスライダ部21が降下した際に、スライダ部21と共に係合孔43が降下して、連動アーム部42の先端部42aを押し下げることにより、連動アーム部42が譜面受け14の回転軸16を中心に時計回りに回転し、譜面受け14を鍵盤蓋8の内面(図8では左側面)に接近する方向に回転させて閉じるように構成されている。
また、この連結部材41は、図17に示すように、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態で更に開く方向に回転してスライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられる際に、スライダ部21と共に係合孔43が上昇して、連動アーム部42の先端部42aを押し上げることにより、連動アーム部42が譜面受け14の回転軸16を中心に反時計回りに回転し、譜面受け14を鍵盤蓋8の内面(図17では左側面)から離れる方向に回転させて開くように構成されている。
このような鍵盤楽器の譜面台装置においても、実施形態1と同様、鍵盤蓋8を起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転させる際に、連動機構40によって譜面受け14を自動的に閉じる方向に回転させることができる。このため、譜面受け14の閉じ忘れを確実に防ぐことができ、これにより楽器本体1の上面や楽器本体1内に設けられた鍵盤部7を傷つけることがなく、良好に鍵盤蓋8を開閉させることができる。
この場合、連動機構40は、鍵盤蓋8にスライド可能に設けられて鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立する際に自重でスライドするスライダ部21と、楽器本体1に設けられて鍵盤蓋8が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際にスライダ部21に対する係止を解除してスライダ部21を自重でスライドさせるスライド制御部22と、スライダ部21のスライド動作に応じて譜面受け14を連動させて回転させる連結部材41とを備えていることにより、実施形態1と同様、鍵盤蓋8の閉動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に連動させて閉じることができる。
すなわち、この連動機構40は、鍵盤蓋8が楽器本体1の後方に少し傾いて起立した状態からほぼ垂直に起立する際に、実施形態1と同様、スライド制御部22がスライダ部21から徐々に離れるので、スライダ部21を自重でスライドさせることができ、このスライダ部21のスライド動作に応じて連結部材40が譜面受け14を回転させて鍵盤蓋8に接近させて閉じることができる。これにより、鍵盤蓋8の閉動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に連動させて閉じることができる。
また、この連動機構40は、鍵盤蓋8が回転して起立した状態に開く際に、譜面受け14を鍵盤蓋8から離れる方向に回転させて譜面13が載せられる状態に開くように構成されていることにより、実施形態1と同様、鍵盤蓋8を回転させて起立した状態に開く際に、連動機構30によって譜面受け14を自動的に回転させて譜面13が載せられる状態に開くことができる。このため、この連動機構40においても、実施形態1と同様、鍵盤蓋8の開閉動作に応じて譜面受け14を自動的に連動させて開閉させることができる。
この場合にも、連動機構部40のスライド制御部22は、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態から更に閉じる方向に向けて回転する際に、スライダ部21を押し上げる構成であることにより、譜面受け14を自動的に回転させて鍵盤蓋8から離れる方向に向けて開くことができる。
すなわち、このスライド制御部22も、鍵盤蓋8がほぼ垂直に起立した状態のときに、スライド制御部22の傾斜部22aがスライダ部21の傾斜部21bに接近して当接し、この状態から更に鍵盤蓋8を開く方向に回転させると、この鍵盤蓋8の回転動作に伴うスライド制御部22の相対的な移動によって、スライダ部21を確実に且つ良好に押し上げることができ、これにより譜面受け14を自動的に回転させて開くことができる。
さらに、連動機構部40の連結部材41は、譜面受け14に設けられた連動アーム部42と、スライダ部21に設けられて連動アーム部42の先端部42aが挿入する係合孔43とを備えていることにより、構造が簡単で、組み立て作業も容易にできると共に、スライド部21のスライド動作に応じて譜面受け14を確実に且つ良好に開閉させることができる。
すなわち、この連結部材41では、スライダ部21が自重で降下する際に、そのスライダ部21のスライド動作に伴って係合孔43が下側に移動して連動アーム部42を譜面受け14と共に回転させることができるので、この連結部材41によって譜面受け14を確実に鍵盤蓋8に接近させる方向に回転させて閉じることができる。
また、この連結部材41では、スライダ部21がスライド制御部22によって押し上げられる際に、そのスライダ部21のスライド動作に伴って係合孔43が上方に移動して連動アーム部42を譜面受け14と共に回転させることができるので、この連結部材41によって譜面受け14を確実に鍵盤蓋8から離れる方向に回転させて開くことができる。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、鍵盤部を備えた楽器本体に前記鍵盤部を開閉可能に覆う鍵盤蓋が回転可能に取り付けられ、この鍵盤蓋に譜面を載せて立て掛けるための譜面受けが回転可能に取り付けられた譜面台装置において、前記鍵盤蓋が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、前記譜面受けが前記鍵盤蓋に接近して閉じる方向に向けて前記譜面受けを回転させる連動機構を備えていることを特徴とする譜面台装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の譜面台装置において、前記連動機構は、前記鍵盤蓋にスライド可能に設けられ、前記鍵盤蓋がほぼ垂直に起立する際に自重でスライドするスライダ部と、前記楽器本体に設けられ、前記鍵盤蓋が起立して開いた状態から閉じる方向に向けて回転する際に、前記スライダ部に対する係止を解除して前記スライダ部を自重でスライドさせるスライド制御部と、前記スライダ部のスライド動作に応じて前記譜面受けを連動させて回転させる連結部材とを備えていることを特徴とする譜面台装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の譜面台装置において、前記連動機構は、前記鍵盤蓋が回転して起立した状態に開く際に、前記譜面受けを前記鍵盤蓋から離れる方向に回転させて前記譜面が載せられる状態に開く構成であることを特徴とする譜面台装置である。
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3のいずれに記載の譜面台装置において、前記スライド制御部は、前記鍵盤蓋がほぼ垂直に起立して開いた状態から更に開く方向に向けて回転する際に、前記スライダ部をその自重に抗して押し上げる構成であることを特徴とする譜面台装置である。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の譜面台装置において、前記連結部材は、その一端部が前記スライダ部に取り付けられ、他端部が前記譜面受けの回転中心から偏心した位置に取り付けられた連結線材であることを特徴とする譜面台装置である。
請求項6に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の譜面台装置において、前記連結部材は、前記スライダ部に設けられたラックギアと、前記譜面受けに設けられて前記ラックギアに噛み合って回転するピニオンギアとを備えていることを特徴とする譜面台装置である。