JP5740199B2 - 複合成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
また、繊維系複合材によるアンダーカバーが提案されている。(例えば、特許文献1、特許文献2)
特許文献1に記載のアンダーカバーは、グラスファイバー等の補強材とオレフィン系樹脂を混合し、グラスファイバー等の補強繊維を膨張させることにより、また、特許文献2に記載のアンダーカバーは、ガラス繊維間に多数の気孔を存在させることにより、軽量化がなされ、かつ吸音性も向上させている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、ガラス繊維間に多数の気孔を存在させ軽量性と吸音性を具備しながら、必要な材料の強度を確保できる複合成形体の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、次の〔1〕の製造方法を提供するものである。
〔1〕(1)無機繊維aと、融点Mbが200℃以上の耐熱性有機繊維bと、無機繊維a及び有機繊維bを結着する融点Mcの結着樹脂繊維cとを混合してなる繊維マット(I)の少なくとも一方の表面に、融点Mdの結着樹脂dを含有する合成樹脂フィルム(II)を積層し、一対の搬送ベルト間に供給して搬送しながら、耐熱性有機繊維bの融点Mb未満で、結着樹脂繊維cの融点Mc以上及び結着樹脂dの融点Md以上の温度Tに加熱して、繊維マット(I)と合成樹脂フィルム(II)を圧接し、繊維マット(I)内の結着樹脂繊維cを溶融しつつ、合成樹脂フィルム(II)の結着樹脂dの少なくとも一部を、繊維マット(I)の内部に含浸させた後冷却して、繊維マット(I)内部の無機繊維aと耐熱性有機繊維bを結着させるとともに、合成樹脂フィルム(II)の一部を繊維マット(I)に含浸結着させた複合シート(III)を得る第1の工程と、
(2)この複合シート(III)を常圧下又は減圧下で、前記温度Tで加熱して、少なくとも無機繊維aと耐熱性有機繊維bにバックリング現象を生じさた後、冷却金型にて賦型加圧成形する第2の工程とを、
有する複合成形体の製造方法であって、
前記第1の工程において、温度Tにおける結着樹脂dの溶融粘度が20,000Pa・s以下である、こと特徴とする複合成形体の製造方法。
を提供できる。
特に、繊維マットが無機繊維及び耐熱性有機繊維を含有しているので機械的強度に優れている。更に、本発明の製造方法で得られる複合成形体は、耐熱性有機繊維によって優れた弾性が付与されており、飛び石の衝突などによる衝撃を効果的に吸収し、破れにくくなる。
繊維マット(I)は、無機繊維aと、融点Mbが200℃以上の耐熱性有機繊維bと、無機繊維a及び有機繊維bを結着する融点Mcの結着樹脂繊維cとを混合し、これら絡合させてなる。以下、繊維マット(I)の構成要素について説明する。
繊維マット(I)中における無機繊維aの含有量は、軽量で十分な機械的強度を有するアンダーカバー等の車両外装材としての複合成形体が得られるので、50〜80質量%が好ましく、55〜80質量%がより好ましく。60〜75質量%がさらに好ましい。
繊維マット(I)を構成する無機繊維aとしては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、金属繊維、炭素繊維などが挙げられる。無機繊維aは、取り扱いやすいことからガラス繊維、ロックウールが好ましく、ガラス繊維がより好ましい。なお、無機繊維aは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
無機繊維aの長さは、5〜250mmが好ましく、30〜150mmがより好ましい。無機繊維aの太さは、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましく、6〜15μmがさらに好ましい。
また、繊維マット(I)を構成している融点Mbが200℃以上の耐熱性有機繊維bとしては、融点が200℃以上である必要があり、製造工程中において溶融することなく形態を保持できるものであればよい。
すなわち、耐熱性有機繊維bは、当該耐熱性有機繊維bの融点Mb未満で、結着樹脂繊維cの融点Mc以上及び結着樹脂dの融点Md以上の温度Tにおいて不織布が繊維形態を保ち、溶融はしない耐熱性を有している必要がある。
より具体的には、耐熱性有機繊維bとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維などの合成樹脂繊維や、綿、麻、ケナフ、羊毛などの天然繊維が挙げられる。なお、耐熱性有機繊維bの融点Mbは、JIS K 7121に準拠して測定されたものをいう。耐熱性有機繊維bは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
また、耐熱性有機繊維bの繊度は、繊維を均質に混合分散できるので、1〜30dtexが好ましく、1.5〜20dtexがより好ましい。
繊維マット(I)中には結着樹脂繊維cが含有されており、この融点Mcの結着樹脂繊維cによって無機繊維aと、融点が200℃以上の耐熱性有機繊維bとが結着されている。結着樹脂繊維cを構成している合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
結着樹脂繊維cの形態としては、単一の合成樹脂から形成された繊維の他に、芯鞘構造の繊維であってもよい。芯鞘構造の繊維の場合には、繊維表面を構成している合成樹脂によって無機繊維aと融点が200℃以上の耐熱性有機繊維bとが結着される。
結着樹脂繊維cの長さは、5〜250mmが好ましく、30〜150mmがより好ましい。結着樹脂繊維cの繊度は、繊維に均一に分散させ易く取り扱い易いので、1〜50dtexが好ましく、1.5〜30dtexがより好ましい。
上記繊維マット(I)の少なくとも一方の表面、好ましくは両面に合成樹脂フィルム(II)が積層一体化されており、合成樹脂フィルム(II)の一部が溶融して繊維マット(I)内に含浸している。以下、合成樹脂フィルム(II)について説明する。
(結着樹脂d)
合成樹脂フィルム(II)を構成している合成樹脂は、繊維マット(I)内に含浸して、無機繊維aと融点が200℃以上の耐熱性有機繊維bとを結着させることができる結着樹脂dを含有している。
そして、この結着樹脂dは、温度Tに加熱して、繊維マット(I)と合成樹脂フィルム(II)を圧接する際の繊維マット(I)への含浸のし易さの観点から、温度Tにおける溶融粘度が20,000Pa・s以下であることを要する。さらには、溶融粘度は、15,000Pa・s以下が好ましい。
なお、本発明において、温度Tにおける溶融粘度は、せん断速度(角周波数)が0.1(1/sec)の時の複素粘度(Pa・s)をいう。溶融粘度はコーンプレートを用いた粘弾性測定装置(例えば、Anton Paar社製モジュラーコンパクトレオメーター:Physica MCR301)を用いて測定することができる。
複合シート(III)は、常圧下又は減圧下で、結着樹脂繊維cの融点Mc以上及び結着樹脂dの融点Md以上の温度Tで加熱すると、複合シート(III)中の結着樹脂繊維c及び結着樹脂dが溶融して、無機繊維a及び耐熱性有機繊維bを結着する力が弱くなり、特に無機繊維aは、剛性を有しているので、自らの復元力で繊維マットとして絡合された状態に膨張(膨化)して戻る、いわゆるバックリング現象を呈し厚みを回復させる。
結着樹脂繊維cがポリプロピレン繊維、耐熱性有機繊維が融点155℃のPET繊維である場合、温度Tは、170〜220℃、さらには、180〜210℃が好ましい。
この時、結着樹脂dの例としては、たとえば、日本ポリプロ(株)のポリプロピレン樹脂MG2T、FY6C、旭化成ケミカルズ(株)のポリエチレン樹脂, サンテックJ240、J340などのオレフィン系樹脂が挙げられる。
上述では、合成樹脂フィルム(II)が単層である場合を説明したが、図2に示したように、合成樹脂フィルム2は、複数の合成樹脂層21、21・・・から構成された合成樹脂フィルムであってもよい。この場合、合成樹脂フィルム2のうち、最内層の合成樹脂層21a、即ち、繊維マット(I)に接している合成樹脂層21aには、単層の合成樹脂フィルム(II)を構成している合成樹脂と同様の合成樹脂が用いられる。なお、繊維マット(I)の両面に合成樹脂フィルム(II)積層一体化されている場合、何れか一方の合成樹脂フィルム(II)のみが複層の合成樹脂フィルムであっても、或いは、両方の合成樹脂フィルム(II)が複層の合成樹脂フィルムであってもよい。なお、図2では、一方の合成樹脂フィルム(II)が複層の合成樹脂フィルムである場合を示した。
他の材料としては、一般に合成樹脂に混合される微粒子や繊維(これらを併せて「フィラー」ということがある。)を必要に応じて混合して用いることができる。
微粒子や繊維としては、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、マイカ、タルク、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラス短繊維、グラファイト粒子、カーボンナノチューブ、粒子状のゴムなどを挙げることができる。
微粒子や繊維は、結着樹脂dと複合しての強度の増加効果を有する。
微粒子の平均粒径は、大き過ぎると溶融した合成樹脂と一緒に繊維マットに含浸していきにくいので微細な形状が好都合であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは50μm以下、さらには20μm以下が好ましい。
また、これらのフィラーは、結着樹脂の繊維マット(I)への含浸に伴い、表面層側により多く構成されることになり表面層の耐チッピング特性などの強化効果を発現する。
他の合成樹脂としては、超高分子量ポリエチレン樹脂やフッ素樹脂、合成ゴム樹脂などが挙げられ、溶融混合されたり、粒子状で混合することが可能である。
これらの合成樹脂は、フィラーと同様に耐チッピング特性の強化効果を有する。
これらのフィラーや合成樹脂などを混合使用する量的割合は、結着樹脂成分100質量部に対して1〜20質量部、さらには10質量部以下が好ましい。
さらにまた、合成樹脂フィルム(II)には、カーボンブラックなどの顔料、酸化防止剤、スリップ剤、結晶化核剤などが含有されていてもよい。
不織布は、合成樹脂の溶融層と接してベルト間に挟まれて加熱下で押圧されて一体化した複合層を形成する。無数の不織布繊維の間隙には合成樹脂が満たされると同時に無数の細孔が発生する構造となる。不織布で表面層に合成樹脂との複合層を形成することにより外層材として取付られる時の、取付強度の補強効果を発現する。また無数の細孔の発生効果として吸音性を発現する。
不織布に用いられる繊維は、一種類の繊維から構成されても良いし、複数の種類の繊維の混合構成でも良い。
この時、複数の繊維の混合構成の場合は、その繊維の太さ・長さなどの形状は、一種類の繊維を用いても良いし、複数の形状の繊維の混合構成でも良い。
不織布に用いられる繊維の単繊維の太さは、1〜50dtexが好ましく、さらには1.5〜30dtexがより好ましい。また、複数の形状の繊維を混合した構成であっても良い。
かかる混合した構成では、1〜10dtexの繊維と25〜50dtexの2種類の繊維を混合したものが用いられる。
繊維の種類としては、ポリエステル繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維などが用いられる。
不織布の目付量としては、積層された複合シート(III)及び複合成形体の軽量性と機械的強度の補強性能、吸音性能等の観点から30〜200g/m2が好ましくさらには、50〜150g/m2がより好ましい。目付量が20g/m2未満では、取付強度の補強効果が得られない。
また、目付量が200g/m2超えると、表面層に合成樹脂成分が不足し外装材として取り付けられた時、表面の吸水が過多となり極寒時にその水分が凍結するなどして車の走行に支障をきたすことがある。
織布の場合、繊維交点が賦型加圧成型時に固定されず、移動可能な結節交点を有するものが好適である。
例えば、ガラス長繊維やポリエステル長繊維からなるからみ織や平織と呼ばれる織布や、ユニチカ社製のガラス長繊維製直交ネットが好適に用いられる。なお、合成樹脂の含浸性から、目のあいた目開きタイプの織布が好適である。
これらの織布やネットの目付は20〜400g/m2のものが、さらには30〜300g/m2のものが好適であり、これらの厚さは、概ね0.03〜0.4mmである。
これらの不織布や織布やネット等の積層面材は、少なくとも一方の合成樹脂フィルム(II)と繊維マット(I)との間に、積層されてもよい。
たとえば、前記の第一工程において、図6に示すように、長尺状に巻かれた積層面材11,12を、所望とする積層部位に供給して、図6に示す装置を用いて積層することができる。
同図においては、図5に示す如き複合成形体Aを得るべく、積層面材11、12を、合成樹脂フィルム2の上部及び、合成樹脂フィルム2と繊維マット1の間に積層する場合を示しているが、積層面材11、12の積層位置は、合成樹脂フィルム2の上層、又は下層の合成樹脂フィルム2の下、或いは、上層又は下層の合成樹脂フィルム2と繊維マット1の間の何れか、又は双方であってよく、積層面材11、12も互い異なるものを組み合わせて用いても良い。
合成樹脂フィルムの結着樹脂は繊維マットに含浸してガラス繊維や耐熱性有機繊維との間に微細な孔を生成するが、これらの積層面材はこれを妨げることなく吸音性能は保持され、かつ、表面層の耐チッピング性や取付強度特性を強化する。
また、合成樹脂フィルム(II)が2層以上からなる場合は、積層面材は、いずれかの層間に積層されてもよい。
さらにまた、部位によっては吸音性よりは耐熱性をより強く求められるエンジン下部のような場合は、アルミガラスクロスやアルミ箔などの面材を積層することも可能である。
このような場合は、面材は複合成型体の最も外側に位置するように積層されるのが好ましい。面材は、熱を反射する機能を有してもよく、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅、黄銅などの金属類からなるフィルム、あるいはこれらの金属が蒸着あるいは積層されている積層樹脂フィルムなどが挙げられる。面材の厚さは、特に限定されないが0.05〜0.5mmであることが好ましい。
次に、本発明の複合成形体の製造方法の第1の工程について説明する。先ず、繊維マット(I)の製造方法について説明する。
(繊維マット(I)の製造)
繊維マット(I)の製造方法としては、例えば、無機繊維aと、融点が200℃以上の耐熱性有機繊維bと、結着樹脂繊維cとを混合してなる混合繊維をカード機に供給してマットとした後、繊維同士を交絡させて繊維マットを製造する方法が挙げられる。
繊維同士を交絡させる方法としては、マットにニードルパンチを施すニードルパンチ法、マットに水流を衝突させる水流交絡法などが挙げられる。なお、マットにニードルパンチを行う場合、ニードルパンチは、1cm2当り1〜150箇所が好ましく、10〜100箇所がより好ましい。
次に、繊維マット(I)の片面又は両面に合成樹脂フィルム(II)を直接、積層して複合シート(III)を形成する。なお、繊維マット(I)上に合成樹脂フィルム(II)を積層するにあたって、押出機から押し出した直後の溶融状態の合成樹脂フィルム(II)を連続的に繊維マット(I)上に供給して、繊維マット(I)上に合成樹脂フィルム(II)を積層してもよい。
さらに、合成樹脂フィルム(II)の表面に前記の不織布を積層することができる。
温度Tは、結着とバックリング現象の観点で設定すれば良く特に制限は無いが、樹脂の劣化などを考慮して、120〜300℃の範囲を例示することが出来る。
本発明の複合成形体の製造方法は、複合シート(III)を得るための前記第1の工程の後、
この複合シート(III)を常圧下又は減圧下で、結着樹脂繊維cの融点Mc以上及び結着樹脂dの融点Md以上の温度Tで加熱して、無機繊維aと耐熱性有機繊維bにバックリング現象を生じさた後、冷却金型にて賦型加圧成形する第2の工程を有している。
複合シート(III)は、常圧下又は減圧下で、結着樹脂繊維cの融点Mc以上及び結着樹脂dの融点Md以上の温度Tで加熱すると、複合シート(III)中の結着樹脂繊維c及び結着樹脂dが溶融して、無機繊維a及び耐熱性有機繊維b結着する力が弱くなり、特に無機繊維aは、剛性を有しているので、自らの復元力で繊維マットとして絡合された状態に膨張(膨化)して戻る、いわゆるバックリング現象を呈し厚みを回復させる。このような作用によって厚みが回復した複合シート(III)は、複雑な形状の複合成形体に加熱成形することができる。
すなわち、この加熱によりバックリング現象が生じている複合シートを、得ようとする成形体の形状に対応する冷却金型にセットして、賦型加圧成形することで、所望の複合成形体を得ることができる。
図4は、本願発明の第2の工程の一例を示している。同図(A)は複合シート(III)の加熱工程、同図(B)は冷却金型による賦型加圧成形工程、同図(C)は成形品としての複合成形体を示している、図4(A)に示す符号8は複合シートAを加熱するための加熱装置で、加熱温度は、結着樹脂繊維cの融点Mc以上及び結着樹脂dの融点Md以上である温度Tに制御される。熱源としては、熱風や遠赤外線ヒーター等を挙げることができる。加熱装置8は、ネット状のコンベアベルト81を備え、熱風吹き出し口82から熱風が循環する構造のものである。加熱装置8で所定時間加熱された複合シートAは、無機繊維のバックリング現象により厚み方向に膨張した状態の成形用加熱体(ホットブランク)A'となる。これを、図4(B)に示す、得ようとする成形の形状に対応した空隙部を有する冷却金型9A、9Bを備えたプレス装置9の下金型9B上に供給して、賦型加圧成形し、金型より取り出して賦型された成形品としての複合成形体10とされる。
複合成形体は、車両外装材としては、例えば、車両アンダーカバー、車両のフェンダーカバー、タイヤハウジングなどが挙げられる。車両アンダーカバーは、車両の底部を全面的に被覆し或いは部分的に被覆して、車両の底部の空気抵抗を軽減し、或いは、車両の底部を保護するために用いられる。
なお、以下の実施例において、溶融粘度の測定は、粘弾性測定機(Anton Paar社製、レオプラス Physica MCR301)を用い、せん断速度0.1(1/sec)、温度Tにおける溶融粘度は測定チャートから読み取った。
車両外装材の評価方法
(1)軽量性の評価
複合シート(III)の目付が1500g/m2以下のものを合格「〇」とし、1500g/m2を超えるものを「×」とした。
(2)吸音性の評価
成形品(複合成形体)について、車両に取付け時の方向性として、「車両側」と「路面側」について、JIS 1405に準拠して垂直入射吸音法を用いて吸音性を測定した。測定された9点の各周波数における吸音率の合計を、吸音率とした。(0.8kz、1.0kz、1.25kz、1.6kz、2.0kz、2.5kz、3.15kz、4.0kz、5.0kz)平均で吸音率が30%以上となるもの(約−3dB)を合格とし、したがって、9点の各周波数における吸音率の合計が270%以上を合格とした。
(3)取付強度
大きさ1500×650mmのフロアアンダーカバーを10個の取付ボルトで固定することを想定して、9000サイクル以上を合格とした。JIS K7128−3に準拠した引き裂き試験に使用する直角形引裂試験片(サンプル)をダンベルで打ち抜き、このサンプルにつき引張応力120Nを5サイクル/secで負荷する疲労試験を行い、取付ボルト孔部に亀裂が生じる迄の回数を計測した。
(4)飛び石耐性
成形品から試験片を縦220mm、横290mmの長方形に切り出し、この試験片を金属製の額縁状枠体内に固定した。次に、試験片の中央部に、直径6mmの鋼球を市販のモエアガンを用いて衝突させた。
試験片の同一個所に鋼球を30回繰返し衝突させ、鋼球を衝突させることによって破壊の有無を測定した。
無機繊維aとして、長さが40〜75mmで且つ直径が10μmのガラス繊維60質量%と、繊度が6.6dtexで且つ長さが64mmのポリプロピレン繊維(融点:160℃)30質量%と、繊度が1.7dtexで且つ長さが64mmのポリエチレンテレフタレート繊維(融点:255℃)10質量%とによって、850g/m2の目付量となるように混合しカード機に供給して解繊及び混繊して長尺状のマットを得た。得られたマットにニードルパンチを1cm2当たり20箇所打って繊維同士を交絡させて目付が850g/m2の長尺状の繊維マット(I)を得た。
実施例1において、繊維マット(I)の上下面に積層するポリプロピレン樹脂からなる合成樹脂フィルムの厚みを、200μmから150μmとした他は実施例1と同様にして目付が1120g/m2の複合シート(III)を得た。得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
合成樹脂フィルムを3層の構成とし、繊維マット(I)と接する最内層を200℃における溶融粘度が1500Pa・sのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)のMA1B)で厚みが75μmのもの、中間層を200℃における溶融粘度が3000Pa・sのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)のMG2T)で厚みが50μm、最外層を200℃における溶融粘度が6000Pa・sのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)のノバテックPP MA3)で厚みが75μm、合成樹フィルム全体厚みを200μmとした他は、実施例1と同様にして目付が1210g/m2の複合シート(III)を得た。得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
実施例1において、繊維マット(I)の上下面に200℃における溶融粘度が8000Pa・sのポリプロピレン樹脂(旭化成ケミカルズ社のサンテックJ345)からなり、合成樹脂フィルムの厚みを、200μmから150μmとした他は実施例1と同様にして目付が1120g/m2の複合シート(III)を得た。得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
実施例1と同じ繊維マット(I)、合成樹脂フィルム(II)を用い、一方の合成樹脂フィルムの上のポリエステル樹脂からなる目付100g/m2のスパンボンド不織布を積層して厚み約6mmの積層シートBを得た。これを、以下、実施例1と同様にして目付が1310g/m2の複合シート(III)を得た。得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
無機繊維aとして、長さが40〜75mmで且つ直径が10μmのガラス繊維75質量%と、繊度が6.6dtexで且つ長さが64mmのポリプロピレン繊維(融点:160℃)20質量%と、繊度が1.7dtexで且つ長さが64mmのポリエチレンテレフタレート繊維(融点:255℃)5質量%とによって、850g/m2の目付量となるように混合しカード機に供給して解繊及び混繊して長尺状のマットを得た。得られたマットにニードルパンチを1cm2当たり20箇所打って繊維同士を交絡させて目付が850g/m2の長尺状の繊維マット(I)を得た。
この繊維マット(I)を用いた他は実施例1と同様にして、目付が1210g/m2の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
無機繊維aとして、長さが40〜75mmで且つ直径が10μmのガラス繊維80質量%と、繊度が6.6dtexで且つ長さが64mmのポリプロピレン繊維(融点:160℃)15質量%と、繊度が1.7dtexで且つ長さが64mmのポリエチレンテレフタレート繊維(融点:255℃)5質量%とによって、950g/m2の目付量となるように混合し、カード機に供給して解繊及び混繊して長尺状のマットを得た。得られたマットにニードルパンチを1cm2当たり20箇所打って繊維同士を交絡させて目付が950g/m2の長尺状の繊維マット(I)を得た。
この繊維マット(I)を用いた他は実施例1と同様にして、目付が1310g/m2の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
無機繊維aとして、長さが40〜75mmで且つ直径が10μmのガラス繊維80質量%と、繊度が6.6dtexで且つ長さが64mmのポリプロピレン繊維(融点:160℃)15質量%と、繊度が1.7dtexで且つ長さが64mmのポリエチレンテレフタレート繊維(融点:255℃)5質量%とによって、850g/m2の目付量となるように混合しカード機に供給して解繊及び混繊して長尺状のマットを得た。得られたマットにニードルパンチを1cm2当たり20箇所打って繊維同士を交絡させて目付が850g/m2の長尺状の繊維マット(I)を得た。
次に、長尺状の繊維マット(I)の上下面に積層する、結着樹脂dからなる以下の単一層の合成樹脂フィルム(II)を準備した。結着樹脂は、200℃において、せん断速度を0.1(1/sec)として、溶融粘度が15,000Pa.sのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)のFY6C)からなる厚さが100μm(目付:90g/m2)の長尺状の合成樹脂フィルム(II)である。合成樹脂フィルム(II)、(II)を連続状の繊維マット(I)の上下面に連続的に積層して厚みが約6mmの積層シートBを得た。
この繊維シートBを用いた他は実施例1と同様にして、目付が1030g/m2の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
以上、各実施例の複合シート、複合成形体の製造条件及び評価結果をまとめて表1に示す。
実施例1と同一の繊維マット(I)を用い、合成樹脂フィルム(II)の結着性樹脂として、比較例1が200℃の溶融粘度が15000Pa・sのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)、ノバテックPP FY6C)、比較例2が同溶融粘度が300Pa・sのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)、ノバテックPP MG03B)による、実施例1と同一の厚みの合成樹脂フィルム(II)を用いた他は実施例1と同様にして目付が1210g/m2の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
無機繊維aとして、長さが40〜75mmで且つ直径が10μmのガラス繊維40質量%、(比較例3)、80質量%(比較例4)、及び90質量%(比較例5)と、繊度が6.6dtexで且つ長さが64mmのポリプロピレン繊維(融点:160℃)30質量%(比較例3)、19質量%(比較例4)、及び5質量%(比較例5)、繊度が1.7dtexで且つ長さが64mmのポリエチレンテレフタレート繊維(融点:255℃)30質量%(比較例3)、1質量%(比較例4)、及び5質量%(比較例5)とによって、850g/m2の目付量となるように混合しカード機に供給して解繊及び混繊して比較例3〜5の長尺状の繊維マットを得た。得られた繊維マットにニードルパンチを1cm2当たり20箇所打って繊維同士を交絡させて目付が850g/m2の長尺状の繊維マット(I)を得た。
繊維マット(I)が異なる他は、実施例1と同様にして目付が1210g/m2の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
実施例1において、繊維マット(I)の耐熱性有機繊維bとして、繊度が1.7dtexに代えて35dtexのポリエチレンテレフタレート繊維とした他は同様にして実施例1と同一目付の繊維マット(I)を得、他も同様にして同一目付の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
実施例1において、繊維間の質量比は変えることなく、繊維マット(I)の目付を1500g/m2とし、さらに合成樹脂フィルムの厚みを300μmとした他は、実施例1と同様にして、目付が2040g/m2の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
比較例5と同じ繊維マット(I)、合成樹脂フィルム(II)を用い、一方の合成樹脂フィルム上の実施例5において用いた目付100g/m2のポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布を目付250g/m2とした他は比較例1と同様にして目付1460g/m2の複合シート(III)を得た。
得られた複合シート(III)により、実施例1と同一条件で車両外装材としてのフロアアンダーカバーを成形した。
実施例1で得られた複合シート(III)を用い、前記の実施例や比較例と比較して、図4において、熱風加熱装置8を用いることなく、すなわちバックリング現象を呈したホットブランクとすることなく、プレス装置9の上下金型9A、9Bを、当初200℃迄昇温し、厚み4mmの複合シート(III)を直接、下金型9B上に載置し、しかる後上金型も下降させて、複合シート(III)を加温し、次いで型締めして、金型に冷却水を循環して60℃として、成形された車両外装材としてのフロアアンダーカバーを型から取り出した。
以上、各比較例の複合シート、複合成形体の製造条件及び評価結果をまとめて表2に示す。
本発明の製造方法で得られる複合成形体は、特に繊維マットが無機繊維及び耐熱性有機繊維を含有しているので機械的強度に優れ、更に、耐熱性有機繊維によって優れた弾性が付与されており、飛び石の衝突などによる衝撃を効果的に吸収し、破れにくくなるので、飛び石の衝突などによる衝撃を効果的に吸収し、破れにくく、車両アンダーカバー、車両のフェンダーカバー、タイヤハウジング、エンジンカバーなどの車両外装材の用途に好適に用いることができる。
2 合成樹脂フィルム(II)
21、21a、21b 合成樹脂層
3 搬送ベルト
4 熱風加熱炉
5 平板プレス
6 上下真空拡開装置
7 冷却装置
8 加熱装置
9 プレス装置
9A 上冷却金型
9B 下冷却金型
10 複合成形体
11,12 積層面材
81 コンベアベルト
82 熱風吹出し口
A 複合シート(III)
A' 複合シートの成形用加熱体(ホットブランク)
Claims (6)
- (1)繊維長が30〜150mmの無機繊維aと、融点Mbが200℃以上の耐熱性有機繊維bと、無機繊維a及び有機繊維bを結着する融点Mcの結着樹脂繊維cとを混合してなる繊維マット(I)であって、該繊維マット(I)を100質量%とした時、該無機繊維aが60〜75質量%、該耐熱性有機繊維bが3〜20質量%、及び該結着樹脂繊維cが10〜30質量%である繊維マット(I)の少なくとも一方の表面に、融点Mdの結着樹脂dを含有する合成樹脂フィルム(II)を積層し、一対の搬送ベルト間に供給して搬送しながら、耐熱性有機繊維bの融点Mb未満で、結着樹脂繊維cの融点Mc以上及び結着樹脂dの融点Md以上の温度Tに加熱して、繊維マット(I)と合成樹脂フィルム(II)を圧接し、繊維マット(I)内の結着樹脂繊維cを溶融しつつ、合成樹脂フィルム(II)の結着樹脂dの少なくとも一部を、繊維マット(I)の内部に含浸させた後冷却して、繊維マット(I)内部の無機繊維aと耐熱性有機繊維bを結着させるとともに、合成樹脂フィルム(II)の一部を繊維マット(I)に含浸結着させた複合シート(III)を得る第1の工程と、
(2)この複合シート(III)を常圧下又は減圧下で、前記温度Tで加熱して、無機繊維aと耐熱性有機繊維bにバックリング現象を生じさせた後、冷却金型にて賦型加圧成形する第2の工程とを、
有する複合成形体の製造方法であって、
前記第1の工程において、温度Tにおける結着樹脂dの溶融粘度が3,000Pa・s以上20,000Pa・s以下である、こと特徴とする車両外装材用複合成形体の製造方法。 - 前記合成樹脂フィルム(II)が、2層以上の合成樹脂層からなり、繊維マットとの積層時に繊維マットと接触する最内層の合成樹脂層から最外層の樹脂層に向かって樹脂の溶融粘度が高くなる構成であり、少なくとも最外層の合成樹脂の温度Tにおける溶融粘度が20,000Pa・s以下である、請求項1に記載の車両外装材用複合成形体の製造方法。
- 少なくとも一方の最外層に耐熱性合成繊維からなる不織布が積層一体化されている、請求項1又は請求項2に記載の車両外装材用複合成形体の製造方法。
- 少なくとも一方の合成樹脂フィルム(II)と繊維マット(I)との間に、
不織布、織布、及びネットから選ばれる少なくとも1種が積層一体化されている、請求項1〜3のいずれかに記載の車両外装材用複合成形体の製造方法。 - 前記繊維マット(I)がニードルパンチにより形成されてなるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の車両外装材用複合成形体の製造方法。
- 前記繊維マット(I)の目付け量が300〜1000g/m2であり、前記合成樹脂フィルム(II)の目付け量が60〜300g/m2である、請求項1〜5のいずれかに記載の車両外装材用複合成形体の製造方法。
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