JP2004292646A - 強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途 - Google Patents
強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004292646A JP2004292646A JP2003087160A JP2003087160A JP2004292646A JP 2004292646 A JP2004292646 A JP 2004292646A JP 2003087160 A JP2003087160 A JP 2003087160A JP 2003087160 A JP2003087160 A JP 2003087160A JP 2004292646 A JP2004292646 A JP 2004292646A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fiber
- sheet
- thermoplastic resin
- fiber sheet
- web
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Reinforced Plastic Materials (AREA)
Abstract
【課題】自動車天井材などに使用されている表皮付きスタンパブルシート廃材のリサイクル (再生利用)方法として有用な強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途の提供。
【解決手段】湿式抄造原料として、(A)無機強化繊維同士が部分的に熱可塑性樹脂で結着された繊維間空隙をもつ多孔質成形体からなる基材と、該基材の表面に貼着された繊維質表皮とを有する積層成形品を破砕径2〜10mmφに破砕した破砕物と、(B)上記破砕物の破砕径よりも長い繊維長を有し、水系分散液中で単繊維である不連続繊維とを、特定量比で使用して、強化繊維シートを製造する。
【選択図】なし
【解決手段】湿式抄造原料として、(A)無機強化繊維同士が部分的に熱可塑性樹脂で結着された繊維間空隙をもつ多孔質成形体からなる基材と、該基材の表面に貼着された繊維質表皮とを有する積層成形品を破砕径2〜10mmφに破砕した破砕物と、(B)上記破砕物の破砕径よりも長い繊維長を有し、水系分散液中で単繊維である不連続繊維とを、特定量比で使用して、強化繊維シートを製造する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車天井材などに使用されている表皮付きスタンパブルシート廃材のリサイクル (再生利用)方法として有用な強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維などの強化繊維を、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂で部分的に結着した圧密シート(スタンパブルシート)の膨張成形品は、繊維間空隙構造を有し、軽量でつぶれにくく、衝撃吸収性、触感、吸音性などに優れた多孔質基材(芯材)として汎用されている。たとえばこの多孔質基材表面にポリエステル繊維不織布などの表皮を貼着して自動車天井材などとして利用されている。
【0003】
上記表皮を有するスタンパブルシートから自動車用天井部材を製造する際には、通常、膨張前の圧密状態のスタンパブルシート表面に、表皮以外のフィルムを貼着して積層したものを、所望の型を用いて加熱し、基材を膨張させた後、ポリエステル不織布などの表皮を載せ、型に合わせて成形すると同時に基材に多孔質構造を形成する。次いで成形品のトリミング、他の部品をはめ込む部位の打抜きなどを行って仕上げる。
これら過程では、成形バリ、耳などの不要部分、仕上げの際に切り落されるトリミング屑、打抜き屑などを生じる。また自動車の廃棄に伴い、内装材廃材を多量に生じている。これら廃材を回収して有効利用することは望まれているが、無機繊維を含む複合材は、樹脂廃材のような完全なサーマルリサイクルができないため、その多くは埋め立て処理されているのが実情である。
【0004】
上記のような無機繊維を含む複合材のリサイクル方法もいくつか提案されており、たとえば無機繊維と熱可塑性樹脂とからなる無機繊維含有率20〜60重量%の再生用繊維複合体の粉砕物を、無機繊維を主体とするマット状物中に含浸させる方法が開示されている(特許文献1〜3など参照)。具体的には、マット状物に熱可塑性樹脂フィルムを積層して加熱加圧して繊維複合体を形成する際に、予め上記粉砕物を含む熱可塑性樹脂フィルムを作成する(特許文献1および特許文献2参照)か、あるいは上記粉砕物を、マット状物の片面全体に散布した後、熱可塑性樹脂フィルムを積層する(特許文献3参照)ことにより、加熱加圧後に得られる繊維複合体中に含浸させている。
【0005】
上記公報には、通常の繊維複合体と強度(曲げ強度)において遜色のない繊維複合体が得られることが示されている。しかしながら、最終繊維複合体の粉砕物含有率(以降リサイクル率ともいう)は10〜40重量%であり、すなわちリサイクル率は40重量%までに制限される。また繊維複合体中の熱可塑性樹脂はすべて同一または同系に制限される (特許文献2)ため、利用できる粉砕物に制約がある。異質材料同士の積層成形品を、上記方法でそのまま利用することは困難である。
【0006】
一方、樹脂成形品のリサイクル方法は数多く提案されており、たとえば強化繊維と、熱可塑性樹脂粉体とから、分散法により繊維強化複合材料を製造する際に、分散原料中に合成樹脂廃材を含ませる方法がいくつか提案されている。たとえば熱可塑性樹脂粉体15〜85重量%、不連続強化繊維5〜70重量%、合成樹脂含有スクラップの機械的粉砕物を5〜70重量%の量で用いて湿式または乾式分散法により得られる繊維強化複合材料が開示されている(特許文献4〜5参照)。また、湿式分散法によりスタンパブルシートを製造する際に、使用済みプラスチック製品の粉砕物を、原料中に2〜90重量%含ませる (特許文献6)ことが開示されている。
【0007】
上記では、廃材(または廃材モデル)として、ポリプロピレン、ポリウレタンなどのバンパーカバー樹脂成形品、バンパースクラップ(メタリック塗装ポリプロピレン)、ポリエステル−ポリアミド混抄の不織布などを使用した例が示されており、合成樹脂廃材が樹脂以外に、布、紙、塗料、接着剤、シール剤、ガラス繊維、ロックウールなどを若干量ないし30重量%以下であれば含んでもよいとするものでは、ガラス繊維含量約20重量%のPET成形品(弱電機器部品)などを使用した例 (特許文献4)も示されている。
【0008】
また、プラスチック系スクラップ粉砕品を用いて、抄紙法によりスタンパブルシートを製造する際に、不連続繊維として、単繊維をバインダー樹脂で複数本集束した繊維束を用いる方法も開示されている (特許文献7)。ここには、プラスチック系スクラップとして、上記のようなバンパー(フェイシア)スクラップ、あるいはガラス繊維含有率40重量%のスタンパブルシート成形品を用いた例が示されている。この公報に示されるスクラップ含有率は5〜70重量%であり、前記含浸法によるリサイクルに比べて高いリサイクル率が許容される。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−155645号公報
【特許文献2】
特開平6−226740号公報
【特許文献3】
特開平6−200463号公報
【特許文献4】
特開平6−39834号公報
【特許文献5】
特開平5−154840号公報
【特許文献6】
特開平5−111917号公報
【特許文献7】
特開平6−155463号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記において、不織布のリサイクル検討例、あるいはこれとは別のリサイクル方法で検討されたガラス繊維含有率40重量%のスタンパブルシート成形品のリサイクル例が示されているが、表皮付きスタンパブルシートの廃材を分別せずにそのままリサイクルすることは具体的に検討されていない。
一般に、互いに異質材からなる積層成形品、たとえば表皮付きスタンパブルシートからなる自動車天井材の廃材などを、表皮と基材とを分別して再生利用すると非常に手間がかかるため、実際的とはいえない。
【0011】
また表皮付きスタンパブルシートの廃材の破砕品を散布して、カード機等でウェブ状とし、プレスする乾式分散方法の適用も考えられるが、比較例として後述するように、リサイクル率が高くなると、繊維の絡まりが不充分となって、ハンドリング可能なマットを得ることが困難となる。
リサイクル率を60%程度とし、新品の繊維添加量を多くすればマットを得ることはできるが、このマットの加熱圧縮により最終的に得られるシートの力学的特性は、廃材中の表皮部分が欠陥となって充分とはいえない。
【0012】
さらに上記廃材の破砕品を溶融押出しして、ロールプレスすれば、リサイクル率の高いシートを得ることが可能であるが、この方法では薄いシートを製造しようとしても押出し直後に切れる可能性が高い。このためシートを厚くするか、高目付けする傾向があり、高リサイクル率の薄いシートを得ることは困難である。
【0013】
本発明は、表皮付きスタンパブルシート (成形品)をそのままで、かつ高リサイクル率で再生利用することができ、特に自動車内装材の廃材、端材の効率的なリサイクル方法として有用な強化繊維シートの製造方法、それにより得られる強化繊維シートおよびその用途を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、異質材料の積層成形品の分別処理のない再生利用を実現すべく、特に湿式抄造法について検討したところ、繊維質表皮を有するスタンパブルシートを抄造原料とする場合には、その破砕物に、特定の不連続繊維を、該不連続繊維が所定の延べ長さ(繊度との繊維の含量%との量比で決定される)となる量で加えるだけで湿式抄造法によりハンドリング可能なウェブを得ることができることを見出した。これは、上記のように繊維質表皮を有するスタンパブルシートを抄造原料とする場合には、破砕により表皮の繊維が抄造時に解繊されることにより、ウェブ体積が大きくなるとともに、その内部に廃棄物の樹脂が分散して、ウェブの強度保持に寄与するためと考えられる。
なお、表皮繊維がない場合、新品の不連続繊維が形成するウェブは比較的薄くなってしまうため、破砕径が大きければウェブに凹凸ができる。このようなウェブは非常に弱く、接着剤(熱可塑性樹脂)を必要とする。またウェブ中の破砕物、粉末の保持性にも乏しいため抄紙工程中などにこれらがこぼれ落ち、ハンドリング性に劣る傾向がある。
【0015】
上記知見に基づき検討を続け、抄造系に添加する新品の不連続繊維量が少量であったり、また場合によっては熱可塑性樹脂を添加しなくても、ハンドリング性に優れたウェブが得られることが確認できた。不連続繊維が所定の延べ長さとなる量比を満たせば、熱可塑性樹脂は加えずとも、加えても少量でよいため、上記破砕物を、抄造原料中に従来のリサイクルでは達成しえないような高含率で含ませることができることも確認できた。上記不連続繊維の条件を満たせば、場合によっては原料中の破砕物割合を95質量%以上とすることも可能である。
【0016】
破砕物の破砕径(破砕機の内径メッシュに相当)は、あまり小さすぎても表皮繊維が短くなり上記効果を発現しにくいが、通常2mmφ以上であれば解繊繊維の効果を発現することができる。
上記により得られるウェブは平坦性に優れ、目付け量が小さくともハンドリング可能であるため、その加熱・圧縮により、最終的に厚みの薄いシートを得ることができることも確認できた。また乾式散布法によるシートで見られるような表皮由来の欠陥も認められず、最終的に力学的特性に優れた強化繊維シートが得られる。
【0017】
さらに上記により得られるシートは、原料破砕サイズにもよるが、通常顔料で着色された繊維質表皮、ほぼ白色の基材および不連続繊維の混在により、マーブル模様を呈し、意匠性が高い。上記ウェブは、シート状だけでなく、皿、筐体などの形状にも成形可能であり、また通常の使用には耐える充分な機械強度を有するが、フィルムなどを積層することも容易である。このため、ドアトリム、パッケージトレー、トノカバーなどの自動車用部材、建材用部材、部品などをハンドリングするための筐体などとして利用価値が高い。これにより、繊維質表皮を有するスタンパブルシートからなる自動車天井材などの廃材を高リサイクル率で再生利用することができる。
【0018】
すなわち本発明は、
(A)無機強化繊維同士が部分的に熱可塑性樹脂で結着された繊維間空隙をもつ多孔質成形体からなる基材と、該基材の表面に貼着された繊維質表皮とを有する積層成形品を破砕径2〜10mmφに破砕した破砕物と、
(B)上記破砕物の破砕径よりも長い繊維長を有し、水系分散液中で単繊維である不連続繊維とを、
(A)および(B)合計質量中の(B)の質量%の値bと、前記単繊維の繊度dtex 値とが、b/dtex ≧0.8の関係を満たす量比で用い、
これらを水系分散液中で攪拌し、抄造してウェブを作製し、得られたウェブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱・圧縮してシート化する強化繊維シートの製造方法を提供する。
【0019】
前記水系分散液中に、(C)熱可塑性樹脂を、前記破砕物(A)と不連続繊維(B)および熱可塑性樹脂 (C)の合計100質量%に対し、5質量%以下の量で添加してもよい。
【0020】
前記抄造原料の積層成形品として、自動車天井材の廃材または端材を利用することができる。これらの代表例として、ガラス繊維(基材):熱可塑性樹脂(基材):ポリエステル不織布(表皮)が1:1:1(質量比)の組成が挙げられる。
【0021】
上記により目付け量300〜2000g/m2 の強化繊維シートを得ることができる。
【0022】
本発明では、上記で得られる強化繊維シートを提供するが、この強化繊維シートとして、厚み2mm以下、必要ならば1mm以下の薄いシートを提供することができる。
上記で得られる強化繊維シートは、積層成形品(破砕物)(A)を1〜95質量%の高い自由度で含むことができるが、好ましい具体例として、
(A)積層成形品(破砕物)を50〜95質量%、
(B)不連続繊維を5〜30質量%、
(C)熱可塑性樹脂を0〜25質量%の量で含む、積層成形品(A)含有率の高い、すなわち高リサイクル率の強化繊維シートが挙げられる。
【0023】
また前記ウェブは、その少なくとも片面に配置した熱可塑性樹脂フィルムとともに加熱・圧縮してシート化することができる。
本発明では、少なくとも片面に熱可塑性樹脂層が積層された強化繊維シートも提供する。
【0024】
本発明で得られる強化繊維シートは、シート状で、あるいはさらに適宜に所望形状を付与して、自動車用部材、建材用部材、部品収納筐体などとして好適に使用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明では、湿式抄造法(湿式分散法、抄紙法)により、強化繊維シートを製造するに際して、抄造原料として、無機強化繊維同士が部分的に前記熱可塑性樹脂で結着された繊維間空隙をもつ多孔質成形体からなる基材と、該基材の表面に貼着された繊維質表皮とを有する積層成形品の破砕物(A)を使用する。
上記破砕前の積層成形品は、具体的には、自動車天井、ドアトリムなどの内装材に使用するために膨張成形された不織布(表皮)の貼合された多孔質強化繊維シートである。膨張前の基材は、スタンパブルシート(圧密化シートまたはコンソリッドシート)と通称される。これらの廃材、成形時端材などを好適に使用することができる。
【0026】
上記積層成形品の基材は、強化繊維と熱可塑性樹脂とから多孔質体に製造された公知のスタンパブルシートであればよく、その製造方法は特に制限されない。上記強化繊維は、無機繊維または有機繊維のいずれであってもよく、これらを複合した繊維であってもよい。たとえばガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、ボロン繊維、ステンレス鋼繊維、その他の金属繊維、鉱物繊維などの無機繊維;木質繊維、麻、絹、羊毛、セルロースなどの天然繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維が挙げられ、これらを単独であるいは2種以上含んでいてもよいが、自動車内装材用途のスタンパブルシートに含まれるのは、通常、無機繊維、特にガラス繊維である。
強化繊維の直径は、5〜30μm程度、通常7〜25μm程度である。
基材中の強化繊維はシランカップリング剤などによる処理が施されたものであってもよい。
【0027】
また基材中に含まれる熱可塑性樹脂としては、通常、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などの共重合体、EPM、EPDMなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物などの酸、エポキシ化合物などで変性されたものであってもよい。複数種の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
自動車内装材用途のスタンパブルシートに含まれるのは、通常、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂であり、特にポリプロピレンである。
【0028】
自動車内装材に使用されるスタンパブルシートは、上記のような強化繊維および熱可塑性樹脂を、通常、強化繊維/熱可塑性樹脂(質量比)=30/70〜70/30で含み、代表的には50/50である。
【0029】
積層成形品に含まれる表皮は、繊維質表皮であればよい。具体的には、植物繊維、動物繊維などの天然繊維、セルロース系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリプロピレン系の合成樹脂繊維などからなる織布もしくは不織布などが挙げられる。
これらのうちでも、自動車内装材用途の表皮は、不織布、通常ポリエステル系不織布が使用される。ホットメルト層を有する表皮材が用いられていてもよい。
【0030】
積層成形品全体の組成は、基材の組成によっても異なるが、自動車内装材用途の積層成形品の場合には、通常、ガラス繊維(基材):熱可塑性樹脂(基材):ポリエステル不織布(表皮)の質量比で1:1:1が代表的である。
【0031】
上記のような積層成形品は、破砕機で2mm以上の内径メッシュを通過するように破砕する。なお本明細書では、破砕機の内径メッシュを破砕物の破砕径mmφと称する。
破砕物の破砕径は、2mmφ以上であれば繊維効果を発現することができ、一方その上限は最終的に得られる強化繊維シートの用途によっても異なるが、あまり大きいと不連続繊維と絡みにくくなるため、通常最大10mmφ程度である。破砕物の破砕径は、好ましくは2〜8mmφ、より好ましくは2〜5mmφ、さらに好ましくは2〜3mmφである。この程度に破砕されていれば、分散液中で攪拌時に表皮を解繊することができる。
【0032】
本発明において、抄造原料として使用する不連続繊維(B)は、上記破砕物(A)の破砕径よりも長い繊維長を有し、つなぎの効果を発揮するためには、通常破砕径の1.5倍以上、好ましくは2倍以上の繊維長を有する。具体的には、不連続繊維の繊維長は、通常、18mm程度である。
【0033】
また不連続繊維の繊度dtex (恒長式表示法による繊維太さ)は、繊維の種類などによっても異なるが、通常、0.5〜10g/10000m、好ましくは1〜8g/10000m程度である。
【0034】
不連続繊維は、上記繊維長、繊度を満たせば、無機繊維であっても有機繊維であってもよく、具体的にはスタンパブルシート中の強化繊維として先に例示したを挙げることができる。ガラス繊維、炭素繊維、ロックウールなどの無機繊維、ポリエステル、絹、羊毛、セルロースなどの有機繊維を使用することができる。これらを複数種使用することもできる。
これらのうちでも、熱によって溶融しないか、あるいは前記スタンパブルシート中の成分または原料 (C)として後述する熱可塑性樹脂の融点よりも高い融点を有するものが好ましい。抄紙後のウェブは、通常熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱乾燥されるため、その温度で溶融する不連続繊維を使用するとウェブの収縮が起るのを避けるためである。
【0035】
また本発明では、均一なウェブを得るために、上記不連続繊維は、水系分散液中で単繊維である必要がある。水系分散液中で単繊維として分散するものであれば、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA、可溶性でんぷん等の水溶性収束剤で結束された不連続繊維を用いることもできる。
【0036】
本発明では、上記抄造原料(A)および(B)の使用量は、不連続繊維(B)の繊度dtex 値との関係で決定される。
抄造原料全量((A)および(B)場合によって (C)の合計を100質量%とするとき)に対する(B)の割合をb質量%とするとき、該b値と、前記繊度dtex 値とが、b/dtex ≧0.8の関係を満たす量比で(B)を用いる。
このb/dtex は、不連続繊維の延べ長さ(m)の目安となる値であり、このb/dtex 値は、さらに好ましくは1以上である。
特に破砕物(A)に対する不連続繊維(B)の有効量は、不連続繊維の種類、繊度などにより、比重なども異なり、質量単位で単純に決定することはできないが、上記b/dtex ≧0.8を満たす量比で(A)量に対する(B)量を用いれば、ハンドリング等で製造上問題のないウェブを得ることができる。
【0037】
なお、複数種の不連続繊維を使用する場合には、各繊維について求められる上記b/dtex の合計値が0.8以上、好ましくは1以上となるように、使用すればよい。具体的には、n種の不連続繊維を使用する場合、各繊維1、繊維2・・繊維nの抄造原料全量中の含有率をそれぞれb1 、b2 ・・bn とし、それぞれの繊度を、d1tex、d2tex・・dn tex とするとき、
(b1 /d1tex)+(b2 /d2tex)+・・・+(bn /dn tex )≧0.8
好ましくは1以上を満たせばよい。
上記のような条件を満たしていれば、抄造原料中の破砕物(A)の含有率が高くて、場合によっては95%程度でも、ハンドリング等で製造上問題のないウェブを得ることができる。なお上記を満たさない場合には、ウェブは抄造直後の含水状態では自重で切れる傾向がある。
【0038】
本発明では、抄造原料として、必ずしも必要ではないが、必要に応じて熱可塑性樹脂 (C)を使用することができる。
ここでの熱可塑性樹脂の具体例は、先にスタンパブルシート中の成分として例示したものと同様のものを挙げることができる。上記例示のうちでも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましく使用される。複数種の熱可塑性樹脂を使用してもよい。
特にMFR(JISK6758、210℃、21.2Nで測定)が1〜200g/10分のポリプロピレンが強度、剛性および成形性の点から好ましい。
熱可塑性樹脂の形態は、特には限定されず、たとえば粉末、ペレット、フレークなどの粒子形態のどれでも使用することができ、種々形状の混在したものであってもよい。なかでも、ウェブ中で均一分散しやすい粒径10〜500μm程度の粉末が特に好ましく用いられる。
【0039】
本発明に係る強化繊維シートの製造方法は、上記のような特定の(A)および(B)を含む抄造原料を使用すること以外は、湿式分散方法自体は特に限定されず、公知の湿式分散法を広く採用することができる。
水系分散液中で、抄造原料を攪拌し、抄造してウェブを得た後、加熱・圧縮してシート化する。
具体的には、抄造原料を含む水系分散液を、攪拌後、メッシュ状の支持体(ワイヤ)に供給し、支持体裏側から吸引することにより、分散液中の固形分を不織布状に堆積させ、ウェブを作製する。
上記において、分散性をよくするために、水系分散液は界面活性剤を含む泡液であることが好ましく、微小気泡(空気)が分散した界面活性剤水溶液中に、抄造原料を分散させることにより、原料間の比重差が大きくても、全体的にほぼ均一な材料構成のウェブ(シート)を得ることができる。
【0040】
上記の湿式分散法によれば、抄造原料の分散性に優れたウェブが容易に得られ、最終的に乾式法よりも均一性が高く、力学的特性に優れたシートが得られる。すなわち乾式法の場合には、表皮はたとえ5mmφに破砕したものであっても解繊しないためシートの力学的欠陥になるのに対し、本発明の方法であれば、表皮はウェブの体積増加、保型作用し、均質で、表面平坦なシートを形成し、力学的強度を発揮させる作用をする。
また湿式分散法で製造されたウェブは、加熱乾燥以前でも、含水により繊維間が締まり、保型性が良好であるため、ハンドリング性に優れる。乾式法の場合、破砕物(A)の含量が多くなると、カード機等で解繊しても保型性がほとんどなく、以降のハンドリングが困難である。
【0041】
ウェブは、必要に応じてニードルパンチなどの処理を施してもよい。
また本発明の効果を損なわない範囲であれば、ウェブ中に、酸化防止剤、対光安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、カーボンブラックなどの添加剤や着色剤などを含有させることができる。
【0042】
上記により、通常500〜2000g/m2 程度の所望目付のウェブを得ることができるが、本発明では、300〜500g/m2 程度の低目付けのウェブを作製することも可能である。
【0043】
本発明では、ウェブをシート状体だけでなく、皿、筐体などの形状にも成形可能であるが、以下シートを例にとって説明する。
上記で得られたウェブは、乾燥し、熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度で加熱・圧縮 (熱間プレス)し、望ましくは引き続き冷間プレスすることによりシートを得る。冷間プレスを施すことにより、シートの平坦性をさらにあげることができる。
熱間プレスおよび冷間プレスの圧力、プレス時間は、シートの目付け、目標厚みによっても異なり、一概にはいえないが、一般には0.1〜1MPaで10〜300秒間の範囲のうちから、ウェブ中の熱可塑性樹脂を溶融しうる圧力、時間が選ばれる。
【0044】
シート厚みは、用途によっても異なるが、本発明では、必要であれば、厚み2mm以下、1mm以下の薄いシートを得ることができる。
ウェブのプレス時には、所望する厚み、目付けに応じ、複数のウェブを重ねてプレスし、1枚のシートとすることも可能である。
【0045】
上記でウェブ得られる強化繊維シート (便宜的に単層と称す)は、積層成形品(破砕物)(A)を1〜95質量%の高い自由度で含むことができるが、好ましい具体例として、(A)積層成形品(破砕物)を50〜95質量%、(B)不連続繊維を5〜30質量%、 (C)熱可塑性樹脂を0〜25質量%の量で含む、積層成形品(A)含有率の高い、すなわち高リサイクル率の強化繊維シートが挙げられる。
特には、(A)積層成形品(破砕物)を70〜90質量%、(B)不連続繊維を10〜30質量%、 (C)熱可塑性樹脂を0〜20質量%の量で含む強化繊維シートが挙げられる。
【0046】
また本発明では、シートの片面または両面に、剛性向上、非通気性の付与、触感、外観の向上、意匠性を付与するなどの目的で、必要に応じて熱可塑性樹脂フィルム、不織布、フェルト状表皮などの他層を積層することができる。
他層は、上記で得られたシートに貼合などにより積層してもよく、またウェブのプレス時に積層してもよい。
積層に使用する熱可塑性樹脂フィルム材料あるいは不織布は、上記熱可塑性樹脂と同様のものを使用することができ、2種以上のフィルムを積層してもよい。また必要に応じて、熱可塑性樹脂フィルム層中に繊維、フィラー、着色剤などを含ませたり、貫通孔を設けたり、用途に応じて適宜に設計することができる。
【0047】
上記で得られるシートは、破砕物(A)中の表皮繊維がシート全体に均質に分散しているため、表皮による力学的欠陥にならず、通常の使用には耐える充分な機械強度を有する。さらに高目付け、フィルム積層などにより強度を上げることは容易である。
また原料破砕サイズにもよるが、通常顔料で着色された繊維質表皮、ほぼ白色の基材および不連続繊維の混在により、マーブル模様を呈し、意匠性が高い。
このため、ドアトリム、パッケージトレー、トノカバーなどの自動車用板部材、部品などをハンドリングするための筐体などとして利用価値が高い。
これにより、繊維質表皮を有するスタンパブルシートからなる自動車天井材などの廃材を高リサイクル率で再生利用することができる。
【0048】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、特にことわりのない限り各成分の量比は質量に基づく値である。
(実施例1〜13)
(1)廃材原料の破砕
廃材原料として、自動車天井を製造する際に発生する、下記材料からなる表皮付きスタンパブルシートの端材を、破砕機(ホーライ社製BO−480)を用いて、表1に示す破砕径/mmφとして示す各内径のメッシュを通過するまで破砕した。
スタンパブルシートの基材(ケープラシート社製KPシート)は、PP(ホモPP、融点162℃、MFR22g/10分):ガラス繊維(繊維直径:17μm)=1:1(乾燥質量比)からなる。
表皮は、ポリエステルフェルト(DSC法によるポリエステルの融点255℃)である。
表皮付きのスタンパブルシートは、全体での組成比は、PP:ガラス繊維:ポリエステル繊維=1:1:1(乾燥質量比)であり、少量のPA接着層フィルムを含む。
【0049】
(2)ウェブの作製
上記で得られた(a)廃材原料の破砕品および表1に示す量比の各原料を、泡液中で混合して分散させ、脱水・脱泡し、湿式抄造によりウェブを得た。以下のようにして評価した乾燥前のウェブのハンドリング性を表1に示す。
この評価で、ハンドリング可能(○または△の評価)と判断されたウェブは、次いで、180℃の熱風で乾燥した。乾燥ウェブの目付け量を表1に示す。
なおハンドリング不可(×評価)と判断されたウェブは、以降の評価は行わなかった。
【0050】
<ウェブのハンドリング性評価>
得られたウェブ(未乾燥)から、250mm×250mmの大きさに切り出し、幅30mm×長さ300mmの金属片をウェブ下面の1辺に沿って差込み、手で上から押さえて200mmの高さまで持ち上げ、3秒間保持した後、元に戻して、ウェブの状態を確認した。以下のようにハンドリング性を評価した。
○…持ち上げても目視で何ら変化がなく、ハンドリング性が良好のもの
△…持ち上げるとウェブが伸びる等、目視で明らかな変形があり、注意が必要であるがハンドリングは可能なもの
×…持ち上げるとウェブが切れてしまい、以降のハンドリングは不可能なもの
【0051】
(3)シートの作製
上記で乾燥したウェブを、220℃、0.3MPa(3kgf/cm2 )で熱プレスを行った後、同圧力で冷間プレスを30秒間行った。このとき一部のシートには、ウェブの両面に厚さ200μmのポリプロピレン(融点165℃)を貼合した。シートの曲げ試験を行った。シートの厚みおよび曲げ最大強度を表1に示す。
【0052】
<曲げ試験>
シートを幅50mm×長さ150mmに切り出し、スパン100mm、速度50mm/秒で曲げ試験を行った。
各試験片とも、撓み20mmまで曲げ、破断の有無にかかわらず、撓み0〜20mm間で最大荷重 (曲げ最大強度)を記録した。
【0053】
【表1】
*1)融点(DSC法)255℃のポリエステル
*2)熱可塑性樹脂:PP(ホモPP、融点162℃、MFR22g/10分)
【0054】
(比較例1〜7)
実施例1の(2)ウェブの作製において、湿式抄造に代えて、表1に示す原料を、乾式で混合、散布し、カード機に供給して解繊する乾式散布によりウェブを得た。結果を表1に示す。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、表皮つきスタンパブルシートからなる自動車内装材の廃材、端材を、表皮と基材とを分別することなく使用することができ、廃材を高含有率で含む強化繊維シートを得ることができる。廃材含有率、目付けが同じであれば乾式散布法で製造した強化繊維シートよりも力学的強度に優れる。自動車内装材の廃材などを高いリサイクル率で再生利用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車天井材などに使用されている表皮付きスタンパブルシート廃材のリサイクル (再生利用)方法として有用な強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維などの強化繊維を、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂で部分的に結着した圧密シート(スタンパブルシート)の膨張成形品は、繊維間空隙構造を有し、軽量でつぶれにくく、衝撃吸収性、触感、吸音性などに優れた多孔質基材(芯材)として汎用されている。たとえばこの多孔質基材表面にポリエステル繊維不織布などの表皮を貼着して自動車天井材などとして利用されている。
【0003】
上記表皮を有するスタンパブルシートから自動車用天井部材を製造する際には、通常、膨張前の圧密状態のスタンパブルシート表面に、表皮以外のフィルムを貼着して積層したものを、所望の型を用いて加熱し、基材を膨張させた後、ポリエステル不織布などの表皮を載せ、型に合わせて成形すると同時に基材に多孔質構造を形成する。次いで成形品のトリミング、他の部品をはめ込む部位の打抜きなどを行って仕上げる。
これら過程では、成形バリ、耳などの不要部分、仕上げの際に切り落されるトリミング屑、打抜き屑などを生じる。また自動車の廃棄に伴い、内装材廃材を多量に生じている。これら廃材を回収して有効利用することは望まれているが、無機繊維を含む複合材は、樹脂廃材のような完全なサーマルリサイクルができないため、その多くは埋め立て処理されているのが実情である。
【0004】
上記のような無機繊維を含む複合材のリサイクル方法もいくつか提案されており、たとえば無機繊維と熱可塑性樹脂とからなる無機繊維含有率20〜60重量%の再生用繊維複合体の粉砕物を、無機繊維を主体とするマット状物中に含浸させる方法が開示されている(特許文献1〜3など参照)。具体的には、マット状物に熱可塑性樹脂フィルムを積層して加熱加圧して繊維複合体を形成する際に、予め上記粉砕物を含む熱可塑性樹脂フィルムを作成する(特許文献1および特許文献2参照)か、あるいは上記粉砕物を、マット状物の片面全体に散布した後、熱可塑性樹脂フィルムを積層する(特許文献3参照)ことにより、加熱加圧後に得られる繊維複合体中に含浸させている。
【0005】
上記公報には、通常の繊維複合体と強度(曲げ強度)において遜色のない繊維複合体が得られることが示されている。しかしながら、最終繊維複合体の粉砕物含有率(以降リサイクル率ともいう)は10〜40重量%であり、すなわちリサイクル率は40重量%までに制限される。また繊維複合体中の熱可塑性樹脂はすべて同一または同系に制限される (特許文献2)ため、利用できる粉砕物に制約がある。異質材料同士の積層成形品を、上記方法でそのまま利用することは困難である。
【0006】
一方、樹脂成形品のリサイクル方法は数多く提案されており、たとえば強化繊維と、熱可塑性樹脂粉体とから、分散法により繊維強化複合材料を製造する際に、分散原料中に合成樹脂廃材を含ませる方法がいくつか提案されている。たとえば熱可塑性樹脂粉体15〜85重量%、不連続強化繊維5〜70重量%、合成樹脂含有スクラップの機械的粉砕物を5〜70重量%の量で用いて湿式または乾式分散法により得られる繊維強化複合材料が開示されている(特許文献4〜5参照)。また、湿式分散法によりスタンパブルシートを製造する際に、使用済みプラスチック製品の粉砕物を、原料中に2〜90重量%含ませる (特許文献6)ことが開示されている。
【0007】
上記では、廃材(または廃材モデル)として、ポリプロピレン、ポリウレタンなどのバンパーカバー樹脂成形品、バンパースクラップ(メタリック塗装ポリプロピレン)、ポリエステル−ポリアミド混抄の不織布などを使用した例が示されており、合成樹脂廃材が樹脂以外に、布、紙、塗料、接着剤、シール剤、ガラス繊維、ロックウールなどを若干量ないし30重量%以下であれば含んでもよいとするものでは、ガラス繊維含量約20重量%のPET成形品(弱電機器部品)などを使用した例 (特許文献4)も示されている。
【0008】
また、プラスチック系スクラップ粉砕品を用いて、抄紙法によりスタンパブルシートを製造する際に、不連続繊維として、単繊維をバインダー樹脂で複数本集束した繊維束を用いる方法も開示されている (特許文献7)。ここには、プラスチック系スクラップとして、上記のようなバンパー(フェイシア)スクラップ、あるいはガラス繊維含有率40重量%のスタンパブルシート成形品を用いた例が示されている。この公報に示されるスクラップ含有率は5〜70重量%であり、前記含浸法によるリサイクルに比べて高いリサイクル率が許容される。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−155645号公報
【特許文献2】
特開平6−226740号公報
【特許文献3】
特開平6−200463号公報
【特許文献4】
特開平6−39834号公報
【特許文献5】
特開平5−154840号公報
【特許文献6】
特開平5−111917号公報
【特許文献7】
特開平6−155463号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記において、不織布のリサイクル検討例、あるいはこれとは別のリサイクル方法で検討されたガラス繊維含有率40重量%のスタンパブルシート成形品のリサイクル例が示されているが、表皮付きスタンパブルシートの廃材を分別せずにそのままリサイクルすることは具体的に検討されていない。
一般に、互いに異質材からなる積層成形品、たとえば表皮付きスタンパブルシートからなる自動車天井材の廃材などを、表皮と基材とを分別して再生利用すると非常に手間がかかるため、実際的とはいえない。
【0011】
また表皮付きスタンパブルシートの廃材の破砕品を散布して、カード機等でウェブ状とし、プレスする乾式分散方法の適用も考えられるが、比較例として後述するように、リサイクル率が高くなると、繊維の絡まりが不充分となって、ハンドリング可能なマットを得ることが困難となる。
リサイクル率を60%程度とし、新品の繊維添加量を多くすればマットを得ることはできるが、このマットの加熱圧縮により最終的に得られるシートの力学的特性は、廃材中の表皮部分が欠陥となって充分とはいえない。
【0012】
さらに上記廃材の破砕品を溶融押出しして、ロールプレスすれば、リサイクル率の高いシートを得ることが可能であるが、この方法では薄いシートを製造しようとしても押出し直後に切れる可能性が高い。このためシートを厚くするか、高目付けする傾向があり、高リサイクル率の薄いシートを得ることは困難である。
【0013】
本発明は、表皮付きスタンパブルシート (成形品)をそのままで、かつ高リサイクル率で再生利用することができ、特に自動車内装材の廃材、端材の効率的なリサイクル方法として有用な強化繊維シートの製造方法、それにより得られる強化繊維シートおよびその用途を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、異質材料の積層成形品の分別処理のない再生利用を実現すべく、特に湿式抄造法について検討したところ、繊維質表皮を有するスタンパブルシートを抄造原料とする場合には、その破砕物に、特定の不連続繊維を、該不連続繊維が所定の延べ長さ(繊度との繊維の含量%との量比で決定される)となる量で加えるだけで湿式抄造法によりハンドリング可能なウェブを得ることができることを見出した。これは、上記のように繊維質表皮を有するスタンパブルシートを抄造原料とする場合には、破砕により表皮の繊維が抄造時に解繊されることにより、ウェブ体積が大きくなるとともに、その内部に廃棄物の樹脂が分散して、ウェブの強度保持に寄与するためと考えられる。
なお、表皮繊維がない場合、新品の不連続繊維が形成するウェブは比較的薄くなってしまうため、破砕径が大きければウェブに凹凸ができる。このようなウェブは非常に弱く、接着剤(熱可塑性樹脂)を必要とする。またウェブ中の破砕物、粉末の保持性にも乏しいため抄紙工程中などにこれらがこぼれ落ち、ハンドリング性に劣る傾向がある。
【0015】
上記知見に基づき検討を続け、抄造系に添加する新品の不連続繊維量が少量であったり、また場合によっては熱可塑性樹脂を添加しなくても、ハンドリング性に優れたウェブが得られることが確認できた。不連続繊維が所定の延べ長さとなる量比を満たせば、熱可塑性樹脂は加えずとも、加えても少量でよいため、上記破砕物を、抄造原料中に従来のリサイクルでは達成しえないような高含率で含ませることができることも確認できた。上記不連続繊維の条件を満たせば、場合によっては原料中の破砕物割合を95質量%以上とすることも可能である。
【0016】
破砕物の破砕径(破砕機の内径メッシュに相当)は、あまり小さすぎても表皮繊維が短くなり上記効果を発現しにくいが、通常2mmφ以上であれば解繊繊維の効果を発現することができる。
上記により得られるウェブは平坦性に優れ、目付け量が小さくともハンドリング可能であるため、その加熱・圧縮により、最終的に厚みの薄いシートを得ることができることも確認できた。また乾式散布法によるシートで見られるような表皮由来の欠陥も認められず、最終的に力学的特性に優れた強化繊維シートが得られる。
【0017】
さらに上記により得られるシートは、原料破砕サイズにもよるが、通常顔料で着色された繊維質表皮、ほぼ白色の基材および不連続繊維の混在により、マーブル模様を呈し、意匠性が高い。上記ウェブは、シート状だけでなく、皿、筐体などの形状にも成形可能であり、また通常の使用には耐える充分な機械強度を有するが、フィルムなどを積層することも容易である。このため、ドアトリム、パッケージトレー、トノカバーなどの自動車用部材、建材用部材、部品などをハンドリングするための筐体などとして利用価値が高い。これにより、繊維質表皮を有するスタンパブルシートからなる自動車天井材などの廃材を高リサイクル率で再生利用することができる。
【0018】
すなわち本発明は、
(A)無機強化繊維同士が部分的に熱可塑性樹脂で結着された繊維間空隙をもつ多孔質成形体からなる基材と、該基材の表面に貼着された繊維質表皮とを有する積層成形品を破砕径2〜10mmφに破砕した破砕物と、
(B)上記破砕物の破砕径よりも長い繊維長を有し、水系分散液中で単繊維である不連続繊維とを、
(A)および(B)合計質量中の(B)の質量%の値bと、前記単繊維の繊度dtex 値とが、b/dtex ≧0.8の関係を満たす量比で用い、
これらを水系分散液中で攪拌し、抄造してウェブを作製し、得られたウェブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱・圧縮してシート化する強化繊維シートの製造方法を提供する。
【0019】
前記水系分散液中に、(C)熱可塑性樹脂を、前記破砕物(A)と不連続繊維(B)および熱可塑性樹脂 (C)の合計100質量%に対し、5質量%以下の量で添加してもよい。
【0020】
前記抄造原料の積層成形品として、自動車天井材の廃材または端材を利用することができる。これらの代表例として、ガラス繊維(基材):熱可塑性樹脂(基材):ポリエステル不織布(表皮)が1:1:1(質量比)の組成が挙げられる。
【0021】
上記により目付け量300〜2000g/m2 の強化繊維シートを得ることができる。
【0022】
本発明では、上記で得られる強化繊維シートを提供するが、この強化繊維シートとして、厚み2mm以下、必要ならば1mm以下の薄いシートを提供することができる。
上記で得られる強化繊維シートは、積層成形品(破砕物)(A)を1〜95質量%の高い自由度で含むことができるが、好ましい具体例として、
(A)積層成形品(破砕物)を50〜95質量%、
(B)不連続繊維を5〜30質量%、
(C)熱可塑性樹脂を0〜25質量%の量で含む、積層成形品(A)含有率の高い、すなわち高リサイクル率の強化繊維シートが挙げられる。
【0023】
また前記ウェブは、その少なくとも片面に配置した熱可塑性樹脂フィルムとともに加熱・圧縮してシート化することができる。
本発明では、少なくとも片面に熱可塑性樹脂層が積層された強化繊維シートも提供する。
【0024】
本発明で得られる強化繊維シートは、シート状で、あるいはさらに適宜に所望形状を付与して、自動車用部材、建材用部材、部品収納筐体などとして好適に使用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明では、湿式抄造法(湿式分散法、抄紙法)により、強化繊維シートを製造するに際して、抄造原料として、無機強化繊維同士が部分的に前記熱可塑性樹脂で結着された繊維間空隙をもつ多孔質成形体からなる基材と、該基材の表面に貼着された繊維質表皮とを有する積層成形品の破砕物(A)を使用する。
上記破砕前の積層成形品は、具体的には、自動車天井、ドアトリムなどの内装材に使用するために膨張成形された不織布(表皮)の貼合された多孔質強化繊維シートである。膨張前の基材は、スタンパブルシート(圧密化シートまたはコンソリッドシート)と通称される。これらの廃材、成形時端材などを好適に使用することができる。
【0026】
上記積層成形品の基材は、強化繊維と熱可塑性樹脂とから多孔質体に製造された公知のスタンパブルシートであればよく、その製造方法は特に制限されない。上記強化繊維は、無機繊維または有機繊維のいずれであってもよく、これらを複合した繊維であってもよい。たとえばガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、ボロン繊維、ステンレス鋼繊維、その他の金属繊維、鉱物繊維などの無機繊維;木質繊維、麻、絹、羊毛、セルロースなどの天然繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維が挙げられ、これらを単独であるいは2種以上含んでいてもよいが、自動車内装材用途のスタンパブルシートに含まれるのは、通常、無機繊維、特にガラス繊維である。
強化繊維の直径は、5〜30μm程度、通常7〜25μm程度である。
基材中の強化繊維はシランカップリング剤などによる処理が施されたものであってもよい。
【0027】
また基材中に含まれる熱可塑性樹脂としては、通常、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などの共重合体、EPM、EPDMなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物などの酸、エポキシ化合物などで変性されたものであってもよい。複数種の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
自動車内装材用途のスタンパブルシートに含まれるのは、通常、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂であり、特にポリプロピレンである。
【0028】
自動車内装材に使用されるスタンパブルシートは、上記のような強化繊維および熱可塑性樹脂を、通常、強化繊維/熱可塑性樹脂(質量比)=30/70〜70/30で含み、代表的には50/50である。
【0029】
積層成形品に含まれる表皮は、繊維質表皮であればよい。具体的には、植物繊維、動物繊維などの天然繊維、セルロース系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリプロピレン系の合成樹脂繊維などからなる織布もしくは不織布などが挙げられる。
これらのうちでも、自動車内装材用途の表皮は、不織布、通常ポリエステル系不織布が使用される。ホットメルト層を有する表皮材が用いられていてもよい。
【0030】
積層成形品全体の組成は、基材の組成によっても異なるが、自動車内装材用途の積層成形品の場合には、通常、ガラス繊維(基材):熱可塑性樹脂(基材):ポリエステル不織布(表皮)の質量比で1:1:1が代表的である。
【0031】
上記のような積層成形品は、破砕機で2mm以上の内径メッシュを通過するように破砕する。なお本明細書では、破砕機の内径メッシュを破砕物の破砕径mmφと称する。
破砕物の破砕径は、2mmφ以上であれば繊維効果を発現することができ、一方その上限は最終的に得られる強化繊維シートの用途によっても異なるが、あまり大きいと不連続繊維と絡みにくくなるため、通常最大10mmφ程度である。破砕物の破砕径は、好ましくは2〜8mmφ、より好ましくは2〜5mmφ、さらに好ましくは2〜3mmφである。この程度に破砕されていれば、分散液中で攪拌時に表皮を解繊することができる。
【0032】
本発明において、抄造原料として使用する不連続繊維(B)は、上記破砕物(A)の破砕径よりも長い繊維長を有し、つなぎの効果を発揮するためには、通常破砕径の1.5倍以上、好ましくは2倍以上の繊維長を有する。具体的には、不連続繊維の繊維長は、通常、18mm程度である。
【0033】
また不連続繊維の繊度dtex (恒長式表示法による繊維太さ)は、繊維の種類などによっても異なるが、通常、0.5〜10g/10000m、好ましくは1〜8g/10000m程度である。
【0034】
不連続繊維は、上記繊維長、繊度を満たせば、無機繊維であっても有機繊維であってもよく、具体的にはスタンパブルシート中の強化繊維として先に例示したを挙げることができる。ガラス繊維、炭素繊維、ロックウールなどの無機繊維、ポリエステル、絹、羊毛、セルロースなどの有機繊維を使用することができる。これらを複数種使用することもできる。
これらのうちでも、熱によって溶融しないか、あるいは前記スタンパブルシート中の成分または原料 (C)として後述する熱可塑性樹脂の融点よりも高い融点を有するものが好ましい。抄紙後のウェブは、通常熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱乾燥されるため、その温度で溶融する不連続繊維を使用するとウェブの収縮が起るのを避けるためである。
【0035】
また本発明では、均一なウェブを得るために、上記不連続繊維は、水系分散液中で単繊維である必要がある。水系分散液中で単繊維として分散するものであれば、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA、可溶性でんぷん等の水溶性収束剤で結束された不連続繊維を用いることもできる。
【0036】
本発明では、上記抄造原料(A)および(B)の使用量は、不連続繊維(B)の繊度dtex 値との関係で決定される。
抄造原料全量((A)および(B)場合によって (C)の合計を100質量%とするとき)に対する(B)の割合をb質量%とするとき、該b値と、前記繊度dtex 値とが、b/dtex ≧0.8の関係を満たす量比で(B)を用いる。
このb/dtex は、不連続繊維の延べ長さ(m)の目安となる値であり、このb/dtex 値は、さらに好ましくは1以上である。
特に破砕物(A)に対する不連続繊維(B)の有効量は、不連続繊維の種類、繊度などにより、比重なども異なり、質量単位で単純に決定することはできないが、上記b/dtex ≧0.8を満たす量比で(A)量に対する(B)量を用いれば、ハンドリング等で製造上問題のないウェブを得ることができる。
【0037】
なお、複数種の不連続繊維を使用する場合には、各繊維について求められる上記b/dtex の合計値が0.8以上、好ましくは1以上となるように、使用すればよい。具体的には、n種の不連続繊維を使用する場合、各繊維1、繊維2・・繊維nの抄造原料全量中の含有率をそれぞれb1 、b2 ・・bn とし、それぞれの繊度を、d1tex、d2tex・・dn tex とするとき、
(b1 /d1tex)+(b2 /d2tex)+・・・+(bn /dn tex )≧0.8
好ましくは1以上を満たせばよい。
上記のような条件を満たしていれば、抄造原料中の破砕物(A)の含有率が高くて、場合によっては95%程度でも、ハンドリング等で製造上問題のないウェブを得ることができる。なお上記を満たさない場合には、ウェブは抄造直後の含水状態では自重で切れる傾向がある。
【0038】
本発明では、抄造原料として、必ずしも必要ではないが、必要に応じて熱可塑性樹脂 (C)を使用することができる。
ここでの熱可塑性樹脂の具体例は、先にスタンパブルシート中の成分として例示したものと同様のものを挙げることができる。上記例示のうちでも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましく使用される。複数種の熱可塑性樹脂を使用してもよい。
特にMFR(JISK6758、210℃、21.2Nで測定)が1〜200g/10分のポリプロピレンが強度、剛性および成形性の点から好ましい。
熱可塑性樹脂の形態は、特には限定されず、たとえば粉末、ペレット、フレークなどの粒子形態のどれでも使用することができ、種々形状の混在したものであってもよい。なかでも、ウェブ中で均一分散しやすい粒径10〜500μm程度の粉末が特に好ましく用いられる。
【0039】
本発明に係る強化繊維シートの製造方法は、上記のような特定の(A)および(B)を含む抄造原料を使用すること以外は、湿式分散方法自体は特に限定されず、公知の湿式分散法を広く採用することができる。
水系分散液中で、抄造原料を攪拌し、抄造してウェブを得た後、加熱・圧縮してシート化する。
具体的には、抄造原料を含む水系分散液を、攪拌後、メッシュ状の支持体(ワイヤ)に供給し、支持体裏側から吸引することにより、分散液中の固形分を不織布状に堆積させ、ウェブを作製する。
上記において、分散性をよくするために、水系分散液は界面活性剤を含む泡液であることが好ましく、微小気泡(空気)が分散した界面活性剤水溶液中に、抄造原料を分散させることにより、原料間の比重差が大きくても、全体的にほぼ均一な材料構成のウェブ(シート)を得ることができる。
【0040】
上記の湿式分散法によれば、抄造原料の分散性に優れたウェブが容易に得られ、最終的に乾式法よりも均一性が高く、力学的特性に優れたシートが得られる。すなわち乾式法の場合には、表皮はたとえ5mmφに破砕したものであっても解繊しないためシートの力学的欠陥になるのに対し、本発明の方法であれば、表皮はウェブの体積増加、保型作用し、均質で、表面平坦なシートを形成し、力学的強度を発揮させる作用をする。
また湿式分散法で製造されたウェブは、加熱乾燥以前でも、含水により繊維間が締まり、保型性が良好であるため、ハンドリング性に優れる。乾式法の場合、破砕物(A)の含量が多くなると、カード機等で解繊しても保型性がほとんどなく、以降のハンドリングが困難である。
【0041】
ウェブは、必要に応じてニードルパンチなどの処理を施してもよい。
また本発明の効果を損なわない範囲であれば、ウェブ中に、酸化防止剤、対光安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、カーボンブラックなどの添加剤や着色剤などを含有させることができる。
【0042】
上記により、通常500〜2000g/m2 程度の所望目付のウェブを得ることができるが、本発明では、300〜500g/m2 程度の低目付けのウェブを作製することも可能である。
【0043】
本発明では、ウェブをシート状体だけでなく、皿、筐体などの形状にも成形可能であるが、以下シートを例にとって説明する。
上記で得られたウェブは、乾燥し、熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度で加熱・圧縮 (熱間プレス)し、望ましくは引き続き冷間プレスすることによりシートを得る。冷間プレスを施すことにより、シートの平坦性をさらにあげることができる。
熱間プレスおよび冷間プレスの圧力、プレス時間は、シートの目付け、目標厚みによっても異なり、一概にはいえないが、一般には0.1〜1MPaで10〜300秒間の範囲のうちから、ウェブ中の熱可塑性樹脂を溶融しうる圧力、時間が選ばれる。
【0044】
シート厚みは、用途によっても異なるが、本発明では、必要であれば、厚み2mm以下、1mm以下の薄いシートを得ることができる。
ウェブのプレス時には、所望する厚み、目付けに応じ、複数のウェブを重ねてプレスし、1枚のシートとすることも可能である。
【0045】
上記でウェブ得られる強化繊維シート (便宜的に単層と称す)は、積層成形品(破砕物)(A)を1〜95質量%の高い自由度で含むことができるが、好ましい具体例として、(A)積層成形品(破砕物)を50〜95質量%、(B)不連続繊維を5〜30質量%、 (C)熱可塑性樹脂を0〜25質量%の量で含む、積層成形品(A)含有率の高い、すなわち高リサイクル率の強化繊維シートが挙げられる。
特には、(A)積層成形品(破砕物)を70〜90質量%、(B)不連続繊維を10〜30質量%、 (C)熱可塑性樹脂を0〜20質量%の量で含む強化繊維シートが挙げられる。
【0046】
また本発明では、シートの片面または両面に、剛性向上、非通気性の付与、触感、外観の向上、意匠性を付与するなどの目的で、必要に応じて熱可塑性樹脂フィルム、不織布、フェルト状表皮などの他層を積層することができる。
他層は、上記で得られたシートに貼合などにより積層してもよく、またウェブのプレス時に積層してもよい。
積層に使用する熱可塑性樹脂フィルム材料あるいは不織布は、上記熱可塑性樹脂と同様のものを使用することができ、2種以上のフィルムを積層してもよい。また必要に応じて、熱可塑性樹脂フィルム層中に繊維、フィラー、着色剤などを含ませたり、貫通孔を設けたり、用途に応じて適宜に設計することができる。
【0047】
上記で得られるシートは、破砕物(A)中の表皮繊維がシート全体に均質に分散しているため、表皮による力学的欠陥にならず、通常の使用には耐える充分な機械強度を有する。さらに高目付け、フィルム積層などにより強度を上げることは容易である。
また原料破砕サイズにもよるが、通常顔料で着色された繊維質表皮、ほぼ白色の基材および不連続繊維の混在により、マーブル模様を呈し、意匠性が高い。
このため、ドアトリム、パッケージトレー、トノカバーなどの自動車用板部材、部品などをハンドリングするための筐体などとして利用価値が高い。
これにより、繊維質表皮を有するスタンパブルシートからなる自動車天井材などの廃材を高リサイクル率で再生利用することができる。
【0048】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、特にことわりのない限り各成分の量比は質量に基づく値である。
(実施例1〜13)
(1)廃材原料の破砕
廃材原料として、自動車天井を製造する際に発生する、下記材料からなる表皮付きスタンパブルシートの端材を、破砕機(ホーライ社製BO−480)を用いて、表1に示す破砕径/mmφとして示す各内径のメッシュを通過するまで破砕した。
スタンパブルシートの基材(ケープラシート社製KPシート)は、PP(ホモPP、融点162℃、MFR22g/10分):ガラス繊維(繊維直径:17μm)=1:1(乾燥質量比)からなる。
表皮は、ポリエステルフェルト(DSC法によるポリエステルの融点255℃)である。
表皮付きのスタンパブルシートは、全体での組成比は、PP:ガラス繊維:ポリエステル繊維=1:1:1(乾燥質量比)であり、少量のPA接着層フィルムを含む。
【0049】
(2)ウェブの作製
上記で得られた(a)廃材原料の破砕品および表1に示す量比の各原料を、泡液中で混合して分散させ、脱水・脱泡し、湿式抄造によりウェブを得た。以下のようにして評価した乾燥前のウェブのハンドリング性を表1に示す。
この評価で、ハンドリング可能(○または△の評価)と判断されたウェブは、次いで、180℃の熱風で乾燥した。乾燥ウェブの目付け量を表1に示す。
なおハンドリング不可(×評価)と判断されたウェブは、以降の評価は行わなかった。
【0050】
<ウェブのハンドリング性評価>
得られたウェブ(未乾燥)から、250mm×250mmの大きさに切り出し、幅30mm×長さ300mmの金属片をウェブ下面の1辺に沿って差込み、手で上から押さえて200mmの高さまで持ち上げ、3秒間保持した後、元に戻して、ウェブの状態を確認した。以下のようにハンドリング性を評価した。
○…持ち上げても目視で何ら変化がなく、ハンドリング性が良好のもの
△…持ち上げるとウェブが伸びる等、目視で明らかな変形があり、注意が必要であるがハンドリングは可能なもの
×…持ち上げるとウェブが切れてしまい、以降のハンドリングは不可能なもの
【0051】
(3)シートの作製
上記で乾燥したウェブを、220℃、0.3MPa(3kgf/cm2 )で熱プレスを行った後、同圧力で冷間プレスを30秒間行った。このとき一部のシートには、ウェブの両面に厚さ200μmのポリプロピレン(融点165℃)を貼合した。シートの曲げ試験を行った。シートの厚みおよび曲げ最大強度を表1に示す。
【0052】
<曲げ試験>
シートを幅50mm×長さ150mmに切り出し、スパン100mm、速度50mm/秒で曲げ試験を行った。
各試験片とも、撓み20mmまで曲げ、破断の有無にかかわらず、撓み0〜20mm間で最大荷重 (曲げ最大強度)を記録した。
【0053】
【表1】
*1)融点(DSC法)255℃のポリエステル
*2)熱可塑性樹脂:PP(ホモPP、融点162℃、MFR22g/10分)
【0054】
(比較例1〜7)
実施例1の(2)ウェブの作製において、湿式抄造に代えて、表1に示す原料を、乾式で混合、散布し、カード機に供給して解繊する乾式散布によりウェブを得た。結果を表1に示す。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、表皮つきスタンパブルシートからなる自動車内装材の廃材、端材を、表皮と基材とを分別することなく使用することができ、廃材を高含有率で含む強化繊維シートを得ることができる。廃材含有率、目付けが同じであれば乾式散布法で製造した強化繊維シートよりも力学的強度に優れる。自動車内装材の廃材などを高いリサイクル率で再生利用することができる。
Claims (9)
- (A)無機強化繊維同士が部分的に熱可塑性樹脂で結着された繊維間空隙をもつ多孔質成形体からなる基材と、該基材の表面に貼着された繊維質表皮とを有する積層成形品を破砕径2〜10mmφに破砕した破砕物と、
(B)上記破砕物の破砕径よりも長い繊維長を有し、水系分散液中で単繊維である不連続繊維とを、
(A)および(B)合計質量中の(B)の質量%の値bと、前記単繊維の繊度dtex 値とが、b/dtex ≧0.8の関係を満たす量比で用い、
これらを水系分散液中で攪拌し、抄造してウェブを作製し、得られたウェブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱・圧縮してシート化する強化繊維シートの製造方法。 - 前記水系分散液中に、(C)熱可塑性樹脂を、前記破砕物(A)と不連続繊維(B)および熱可塑性樹脂 (C)の合計100質量%に対し、5質量%以下の量で添加する請求項1に記載の強化繊維シートの製造方法。
- 前記積層成形品が、自動車天井材の廃材または端材である請求項1または2に記載の強化繊維シートの製造方法。
- 前記ウェブを、その少なくとも片面に配置した熱可塑性樹脂フィルムとともに加熱・圧縮してシート化する請求項1ないし3のいずれかに記載の強化繊維シートの製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の方法により得られる強化繊維シート。
- 請求項4に記載の方法により得られる、少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を有する強化繊維シート。
- 厚み2mm以下である請求項5または6に記載の強化繊維シート。
- 請求項5ないし7のいずれかに記載の強化繊維シートからなる自動車用部材。
- 請求項5ないし7のいずれかに記載の強化繊維シートからなる建材用部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003087160A JP2004292646A (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | 強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003087160A JP2004292646A (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | 強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004292646A true JP2004292646A (ja) | 2004-10-21 |
Family
ID=33401599
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003087160A Withdrawn JP2004292646A (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | 強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004292646A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008105668A (ja) * | 2006-09-28 | 2008-05-08 | Nitto Denko Corp | 車両天井材用補強材 |
JPWO2015076283A1 (ja) * | 2013-11-20 | 2017-03-16 | 東洋紡株式会社 | 繊維強化熱可塑性樹脂シート |
WO2018021336A1 (ja) * | 2016-07-28 | 2018-02-01 | 住友ベークライト株式会社 | 複合成形体、複合成形体用中間体、複合成形体の製造方法および輸送機器用内装材 |
-
2003
- 2003-03-27 JP JP2003087160A patent/JP2004292646A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008105668A (ja) * | 2006-09-28 | 2008-05-08 | Nitto Denko Corp | 車両天井材用補強材 |
JPWO2015076283A1 (ja) * | 2013-11-20 | 2017-03-16 | 東洋紡株式会社 | 繊維強化熱可塑性樹脂シート |
WO2018021336A1 (ja) * | 2016-07-28 | 2018-02-01 | 住友ベークライト株式会社 | 複合成形体、複合成形体用中間体、複合成形体の製造方法および輸送機器用内装材 |
JPWO2018021336A1 (ja) * | 2016-07-28 | 2018-08-02 | 住友ベークライト株式会社 | 複合成形体、複合成形体用中間体、複合成形体の製造方法および輸送機器用内装材 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101263960B1 (ko) | 천연 섬유를 함유하는 복합재 열가소성 시트 | |
AU2017375758B2 (en) | Composite articles including surface layers that provide enhanced formability | |
US12037047B2 (en) | Underbody shield compositions and articles that provide enhanced peel strength and methods of using them | |
EP1844927B2 (en) | Lightweight thermoplastic sheets including reinforcing skins | |
CN104024497B (zh) | 深度拉伸复合物和其使用方法 | |
CA2879293C (en) | Articles including high melt flow index resins | |
EP2919983B1 (en) | Articles including frims | |
US7482048B2 (en) | Composite thermoplastic sheets including an integral hinge | |
JP4257818B2 (ja) | 車両用防音材及びその製造方法 | |
JP2004217829A (ja) | スタンパブルシート、その製造方法、マットおよび膨張成形品 | |
CA3111324A1 (en) | Core layers and composite articles with a variable basis weight | |
JP2004292646A (ja) | 強化繊維シートの製造方法、強化繊維シートおよびその用途 | |
CA2590946A1 (en) | Fire retardant panel composition and methods of making the same | |
JP2022523732A (ja) | 二成分繊維を含む軽量強化熱可塑性複合物品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060606 |