図面を参照しながら、本発明を適用した容積型ポンプを説明する。
(全体構成)
図1は、本発明を適用した容積型ポンプの外観斜視図である。図2は図1の容積型ポンプの縦断面図である。容積型ポンプ1は、ポンプユニット2と、このポンプユニット2の下方に並列に配置された電磁式直動アクチュエータ3およびアクティブバルブ4を備えている。なお、以下の説明では、電磁式直動アクチュエータ3およびアクティブバルブ4が並んでいる方向を装置幅方向(図1では左右方向として示す)とし、この装置幅方向および上下方向と直交する方向を装置前後方向とする。電磁式直動アクチュエータ3は装置幅方向の左側に配置されており、アクティブバルブ4は装置幅方向の右側に配置されている。
ポンプユニット2の左側部分には上方に突出する流出管5が設けられており、流出管5の上端開口は流体出口5aとなっている。アクティブバルブ4の下方には、流入管6が設けられており、流入管6の下端開口は流体入口6aとなっている。電磁式直動アクチュエータ3およびアクティブバルブ4は駆動制御部7によって駆動制御される。
図2に示すように、ポンプユニット2の内部にはポンプ室8が形成されている。流体入口6aとポンプ室8の間には流入側流路9が形成されており、流入側流路9には、この流入側流路9を開閉するアクティブバルブ4が配置されている。ポンプ室8と流体出口5aの間には流出側流路10が形成されている。流出側流路10には流体の逆流を防止するための逆止弁11が配置されている。
ポンプ室8の底面はダイヤフラム(可動体)12によって規定されており、電磁式直動アクチュエータ3によってダイヤフラム12を往復動させることによりポンプ室8の容積が変化する。すなわち、容積型ポンプ1は、アクティブバルブ4を開けてポンプ室8の容積を拡大することによって流体入口6aからポンプ室8に流体を吸引し、アクティブバルブ4を閉めてポンプ室8の容積を縮小することによってポンプ室8に吸引した流体を流体出口5aから吐出する。
(ポンプユニット)
図3は容積型ポンプ1の分解斜視図である。図2、図3を参照して、ポンプユニット2を説明する。ポンプユニット2は、上側ハウジング21と、上側ハウジング21の下方に配置された下側ハウジング22を有している。
上側ハウジング21は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂から形成されている。流出管5は、上側ハウジング21の上端面の左側部分から上方に突出している。上側ハウジング21の下端面の左側部分には、図2に示すように、上方に窪む円形の第1凹部211が設けられている。第1凹部211の天井面の中央部分には流出管5に連通する第1流路212の下端開口212aが露出している。
下側ハウジング22は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂から形成されている。上端面の左側部分には上側ハウジング21の第1凹部211と嵌合する円形の上側突出部221が形成されている。上側突出部221の中央部分には、下方に窪む円形の第2凹部222が形成されている。上側突出部221は第1凹部211に嵌め込まれており、上側ハウジング21の第1凹部211と下側ハウジング22の第2凹部222によって流出管5と同軸に弁室13が形成されている。上側突出部221の外周面と第1凹部211の内周面との間にはOリング14が配置されている。弁室13内には逆止弁11が構成されている。
下側ハウジング22の左側部分の下面には、円形の下側突出部223が形成されている。下側突出部223の中心には、上方に窪む円形の第3凹部224が設けられている。第3凹部224の天井面224aは中心部分に向かって上方に傾斜するテーパー面となっており、中心部分には、弁室13に連通している第2流路225の下端開口225aが露出している。第2流路225の上端開口225bは弁室13の円形底面13aの中央部分に露出している。第3凹部224の天井面224aおよび内周側面は、ポンプ室8の天井面および内周面を規定している。ポンプ室8、第2流路225、弁室13、第1流路212、および流出管5は同軸上に形成されており、第2流路225、弁室13、第1流路212、流出管5によって流出側流路10が構成されている。
下側突出部223の下方にはポンプ室8の底面を規定するダイヤフラム12が配置されている。ダイヤフラム12は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などからなるゴム製の弾性体であり、上方から見たときに円形の平面形状を備えている。ダイヤフラム12は、中央部分と外周縁部分が厚肉に形成されており、中央部分と外周縁部分との間には、上方に膨らむように湾曲する一定厚さの連結膜部分を備えている。ダイヤフラム12の中央部分の下側部分には、電磁式直動アクチュエータ3を接続する接続部12aが設けられている。
電磁式直動アクチュエータ3は、下側突出部223の外周側を利用して下側ハウジング22に取り付けられている。電磁式直動アクチュエータ3が取り付けられると、ダイヤフラム12は、その外周縁部分が、下側突出部223の円環状下端面と、電磁式直動アクチュエータ3との間に挟まれた状態となり、固定される。
下側ハウジング22の右側部分の下面には、上方に窪む円形の第4凹部226が形成されている。第4凹部226は下側から、扁平な大径部226aと、大径部分よりも小径の小径部226bを備えている。第4凹部226にはアクティブバルブ4の上端側部分がOリング15を介して挿入されている。
アクティブバルブ4を第4凹部226に挿入した状態では小径部226bの上端部分226cには空間が形成されるようになっており、この上端部分226cとポンプ室8の間には、これらの間を連通させる第3流路227が形成されている。第3流路227の右端開口は小径部226bの上端部分226cの内周側面に露出しており、第3流路227の左端開口は、ポンプ室8の天井面および第2流路225の下端部分に露出している。
(電磁式直動アクチュエータ)
図1、図3〜図5を参照して電磁式直動アクチュエータ3を説明する。図4は移動体33が上昇位置にある状態の電磁式直動アクチュエータ3の周辺の部分断面図である。図5は図4のA−A´線における電磁式直動アクチュエータ3の断面図である。
図1に示すように、電磁式直動アクチュエータ3は、全体として直方体をしているアクチュエータケース30を有している。アクチュエータケース30は、図3に示すように、下端が開口となっている箱型の上側ケース31と、上側ケース31の下端の開口を閉鎖するように取り付けられている下側ケース32を備えている。上側ケース31および下側ケース32の内部には、上下方向に直動可能な移動体33と、この移動体33を移動させるための固定体34が配置されている。移動体33はその上端部分がダイヤフラム12の接続部12aに固定されており、移動体33が上下方向に往復移動すると、ダイヤフラム12は上下方向に往復動してポンプ室8の容積を変化させる。固定体34は、装置幅方向において移動体33の左側に配置されている第1固定体35と、右側に配置されている第2固定体36を備えている。
移動体33は、図3に示すように、側面がこの移動体33の移動方向と平行になるように配置された直方体形状のマグネット331を備えている。マグネット331は2極着磁されており、装置幅方向を向いている左右の側面が異なる極に着磁された磁極面331a、331bとなっている。本実施形態では、磁極面331aがS極に着磁され、磁極面331bがN極に着磁されている(図6参照)。また、移動体33は、マグネット331の磁極面331a、331bを除く外周面部分を保持しているマグネットホルダ332を備えている。
マグネットホルダ332は、マグネット331の前後の側面を装置前後方向から保持している前後の縦枠部332aと、前後の縦枠部332aの上端部を連結している上側枠部332bと、前後の縦枠部332aの下端部を連結している下側枠部332cを備えている。前後の縦枠部332aには、それぞれ、磁極面331a、331bと平行に突出するガイド突部333、333が設けられている。各ガイド突部333は直方体形状をしており、上下方向に所定の長さ寸法を備えている。上側枠部332bには、ダイヤフラム12との接続部334が上方に突出するように設けられている。下側枠部332cには、下方に突出するガイド軸335が設けられている。
第1固定体35および第2固定体36は、それぞれ、ヨーク37、37およびヨーク37、37に巻き回されている駆動コイル38、38を備えている。図5に示すように、第1固定体35は、その駆動コイル38が移動体33の磁極面331aと一定のギャップを開けて対向するように配置されており、第2固定体36は、その駆動コイル38が磁極面331bと一定のギャップを開けて対向するように配置されている。
図4に示すように、各ヨーク37、37は、それぞれ、上下方向に延びる軸部371と、軸部371の上端部分から内側に突出している第1突部372、372、および、軸部371の下端部分から内側に突出している第2突部373、373を備えている。
各駆動コイル38、38は、ヨーク37、37における第1突部372、372と第2突部373、373との間の部位に、移動体33の移動方向(上下方向)と直交する方向に巻き回されている。図5に示すように、各駆動コイル38、38は、移動体33の移動方向と直交する平面による断面形状が長方形となっており、断面形状の一方の長辺となっている外周面部分38a、38aがマグネット331の各磁極面331a、331bと対向している。
ここで、移動体33のマグネット331の装置前後方向の幅寸法は、外周面部分38a、38aの装置前後方向の幅寸法よりも短く設定されている。また、移動体33のマグネット331の上下方向の長さ寸法aは、各ヨーク37、37における第1突部372、372と第2突部373、373との間の長さ寸法bよりも短い長さ寸法とされている(図4参照)。マグネット331の長さ寸法aは、上下方向において所定の移動範囲を移動体33が移動した際、マグネット331と第1突部372、372、第2突部373、373との間で磁気的な吸引力が働かない、または磁気的な吸引力の影響が小さい領域を有するようになっている。具体的には、この領域は、図9に示すグラフにおいて変位量0mm、推力0mNを通過するほぼ直線の範囲(変位量が−0.3mm〜0.2mmあたり)である。
さらに、図3に示すように、各ヨーク37、37の下端部分は下側ケース32によって保持されており、各ヨーク37、37の上端部分は枠状のスペーサ39によって支持されている。これにより、第1固定体35の駆動コイル38と第2固定体36の駆動コイル38は、移動体33の移動方向に沿って一定の間隔で維持されている。また、ヨーク37、37において、第1突部372、372および第2突部373、373の移動体33側の端は、駆動コイル38、38の外周面部分38a、38aよりも移動体33の側に位置しており、軸部371、371から移動体33の側に突出する第1突部372、372の突出量と第2突部373、373の突出量は同一になっている。
下側ケース32は、扁平な直方体形状をしており、上端面にヨーク37、37の保持部となる一対の凹部322、322が形成されている。装置幅方向における一対の凹部322、322の間には装置前後方向に延びる溝323が形成されており、溝323の中央部分には円形の貫通孔324が形成されている。貫通孔324にはマグネットホルダ332のガイド軸335が挿入されている。装置幅方向における一対の凹部322、322の外側には上方に突出する一対の係合突起325が形成されている。
上側ケース31は、図3に示すように、矩形の上板311と、上板311の四方の縁から下方に延びる4枚の側板312〜315を備えている。上板311には、その上端面から上方の突出する矩形の接続部316が設けられている。接続部316の中央部分には貫通孔316aが形成されており、この貫通孔316aの上端部分には外側に広がる段部316bが設けられている。下側ハウジング22に電磁式直動アクチュエータ3が取り付けられた状態では、図4に示すように、段部316bの内側に下側ハウジング22の下側突出部223が挿入され、下側突出部223の円環状下端面と段部316bの円環状端面との間にダイヤフラム12の周縁部分が挟み込まれた状態となる。
装置幅方向で平行に延びている2枚の側板312、314には、上下方向に延びる係合凹部317、317が形成されている。上側ケース31が下側ケース32に被せられると、一対の係合突起325、325が側板312、314の係合凹部317、317と係合して上側ケース31を下側ケース32に固定する。
装置前後方向で平行に延びている2枚の側板313、315には、装置幅方向の中央部分の下端縁から一定の幅で上方に延びるガイド溝318、318が形成されている。ガイド溝318、318は、装置幅方向において第1固定体35と第2固定体36の中央に位置している。上側ケース31が下側ケース32に被せられる際には、図1に示すように、上側ケース31の前後のガイド溝318、318に、移動体33の前後のガイド突部333、333が挿入される。ここで、ガイド突部333、333およびガイド溝318、318は、移動体33を、各磁極面331a、331bと各駆動コイル38、38の間のギャップを一定に維持した状態で上下方向に案内するガイド機構40、40を構成しており、移動体33は、ガイド機構40、40によって、ポンプ室8、第2流路225、弁室13、第1流路212および流出管5の軸線上を案内される。
各ガイド溝318、318の上端縁318a、318aは、移動体33の移動範囲の上限を規定している。すなわち、移動体33が図4に示す上昇位置(第1位置)33Aよりも上方に移動しようとすると、各ガイド溝318、318の上端縁318a、318aに各ガイド突部333、333が当接して、その移動を阻止する。上昇位置33Aでは、移動体33のマグネット331の上端面331cは、各ヨーク37、37の第1突部372、372の上端面よりも下方に位置している。また、移動体33が上昇位置33Aに位置した状態では、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最小の第1容積としている。なお、移動体33の各ガイド突部333、333が上側ケース31のガイド溝318、318の上端縁318a、318aに当接することにより、移動体33が上昇位置33Aに位置決めされるように構成することもできる。すなわち、上端縁318a、318aを、移動体33の移動範囲の上限を規定する移動体位置決め部としての機能を備えるようにしてもよい。
また、下側ケース32の上端面32a、32aは、移動体33の移動範囲の下限を規定している。すなわち、移動体33は下降位置(第2位置)33B(図7参照)よりも下方に移動しようとすると、各ガイド突部333、333が下側ケース32の上端面32a、32aに当接して、その移動を阻止する。下降位置33Bでは、移動体33のマグネット331の下端面331dは、各ヨーク37、37の第2突部373、373の下端面よりも上方に位置している。また、移動体33が下降位置33Bに位置した状態では、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最大の第2容積に拡大させている。なお、移動体33の各ガイド突部333、333が下側ケース32の上端面32a、32aに当接することにより、移動体33が下降位置33Bに位置決めされるように構成することもできる。すなわち、上端面32a、32aは、上述した上端縁318a、318aと対をなし、移動体33の移動範囲の下限を規定する移動体位置決め部としての機能を備えるようにしてもよい。
また、移動体33が上昇位置33Aと下降位置33Bとの間を移動する間、マグネットホルダ332から下方に延びているガイド軸335が貫通孔324に挿入された状態が維持される。これにより、移動体33は移動方向に対して傾斜することなく、その姿勢が維持された状態で直動する。
(電磁式直動アクチュエータの駆動制御および動作)
図2、図6〜図10を参照して、電磁式直動アクチュエータ3の駆動制御および動作を説明する。図6は電磁式直動アクチュエータ3の駆動制御および動作を説明するための説明図であり、移動体33が上昇位置33Aにある状態を示している。図7は移動体33が下降位置33Bにある状態の電磁式直動アクチュエータ周辺の部分断面図である。図8は電磁式直動アクチュエータ3へ印加する励磁電流の電流値を示すタイムチャートであり、移動体33を上昇位置33Aと下降位置33Bとの間で往復移動させる間における励磁電流の電流値を示している。図9は移動体33の位置と推力との関係を駆動コイル38、38へ供給する励磁電流の電流値を変えて検証したグラフである。図9には移動体33の位置とダイヤフラム12から移動体33に働く反力との関係を示すグラフも示してある。図10はダイヤフラム12の反力を考慮した状態において移動体33の位置と推力との関係を駆動コイル38、38へ供給する励磁電流の電流値を変えて検証したグラフである。
なお、図9および図10における変位量0mmの位置では、移動体33およびダイヤフラム12は図2に示す位置にあり、移動体33の移動方向(上下方向)でマグネット331の中心と駆動コイル38、38の中心とが一致している。変位量0.6mmの位置では移動体33は図6に示す上昇位置33Aに位置しており、変位量−0.6mmの位置では移動体33は図7に示す下降位置33Bに位置している。また、図9において、推力0mN、変位量0mmを通過する右上がりのグラフは駆動コイル38、38への給電が行なわれていない状態で、移動体33の各位置(変位)における推力を測定したものである。図9において、推力0mN、変位量0mmを通過する右下がりグラフは、駆動コイル38、38への給電が行なわれていない状態で、移動体33の各位置(変位)においてダイヤフラム12から移動体33に働く反力を測定したものである。電流値に付与された−の符合は励磁電流を流す方向を示すものであり、図6に示す第1方向D1に励磁電流を流すことを意味している。+の符合は図6に示す方向とは反対の第2方向D2に励磁電流を流すことを意味している。また、推力に付与された符合は推力の働く方向を示すものであり、+の符合は上方を示しており、−の符合は下方を示している。
まず、駆動コイル38、38への給電が行なわれていない状態では、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1とダイヤフラム12の反力R1の作用によって上昇位置33Aで停止しており、図6に示すように、上昇位置33Aに保持されている。
本例では、移動体33が上昇位置33Aにあるときには、図9の電流値0mAのグラフに示すように、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1によって約200mNの推力が上向きに発生している。一方、移動体33が上昇位置33Aにあるときには、図6に示すように、ダイヤフラム12はポンプ室8の容積を最小の第1容積に縮小しており、その中心部分が外周縁部分に対して上方に変位した状態となっている。従って、ダイヤフラム12は約100mNの反力R1を下向きに発生させている。この結果、図10に示すように、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1からダイヤフラム12の反力R1を差し引いた上向きの力(約100mN)によって、上昇位置33Aで停止する。
次に、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる往動工程(第1移動工程)を行なう際には、駆動コイル38、38への給電を行なう。本例では、図6に示すように、移動体33のマグネット331は、左側の磁極面331aがS極に着磁されており、右側の磁極面331bがN極に着磁されている。従って、磁極面331aと対向する左側の駆動コイル38には、工程開始時点t0から磁極面331aと対向している外周面部分38aを構成している巻線部分を流れる励磁電流が装置前方から装置後方に向かう第1方向D1の励磁電流が流される。また、右側の磁極面331bと対向する右側の駆動コイル38には、工程開始時点t0から磁極面331bと対向している巻線部分を流れる励磁電流が装置前方から装置後方に向かう第1方向D1の励磁電流が流される。
ここで、駆動コイル38、38の外周側には移動体33のマグネット331が位置しているので、給電によって駆動コイル38、38を流れる励磁電流の向きとマグネット331による磁界の向きが直交する。この結果、駆動コイル38、38への給電が行なわれると、フレミングの左手の法則により、駆動コイル38、38とマグネット331の磁界との間に働くローレンツ力が、移動体33を下方に移動させる力F2として働く。
また、アンペールの右ネジの法則により、駆動コイル38、38への給電によって、駆動コイル38、38およびヨーク37、37は電磁コイル(電磁石)として機能する。すなわち、移動体33の左側に配置されている第1固定体35は、上側をS極とし、下側をN極とする電磁コイルとして機能する。移動体33の右側に配置されている第2固定体36は、上側をN極とし、下側をS極とする電磁コイルとして機能する。この結果、移動体33のマグネット331と、第1固定体35および第2固定体36の間には、上側において電磁的な反発力が発生し、下側において、電磁的な吸引力が発生する。これら電磁的な反発力および吸引力の合力F3は、移動体33を下方に移動させる力F2とともに、移動体33を下に向かって移動させるための推力となる。
移動体33を下方に移動させる力F2および電磁的な反発力および吸引力の合力F3による推力は、図9において電流値0mAのグラフと各電流値のグラフの推力の差として現れている。本例では、駆動コイル38、38へ−10mAの励磁電流を供給した場合には、電流値0mAのグラフと電流値−10mAのグラフの差として現れているように、100mN弱の下向きの推力が得られる。同様に、駆動コイル38、38へ−30mAの励磁電流を供給した場合には、200mNを超える下向きの推力が得られる。駆動コイル38、38へ−50mAの励磁電流を供給した場合には、300mNを超える下向きの推力が得られる。
ここで、本例では、移動体33は、上昇位置33Aにおいて約100mNの上向きの力で上昇位置33Aに保持されている。従って、本例では、図10に示すように移動体33が上昇位置33Aから離れる第1区間P1では、図8に示すように駆動コイル38、38へ−30mAの第1励磁電流I1を供給して100mNを超える下向きの推力を発生させる。これにより、移動体33は上昇位置33Aから離れて、下方に向かって移動する。
次に、移動体33が上昇位置33Aから離れると、マグネット331が各ヨーク37、37の第1突部372、372から離れるので、図9の電流値0mAのグラフに示すように、これらの間に働いていた磁気的な吸引力F1は距離の二乗に反比例して減少する。そして、移動体33が変位量0.2mm〜−0.2mmの範囲では、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372の間に磁気的な吸引力F1の影響をほとんど受けず、すなわち、磁気的な吸引力F1が実質的に零となる。
また、移動体33が変位量0mmの位置にあるときには、図2に示すように、ダイヤフラム12は上下方向に変位していない。従って、図9のダイヤフラム12からの反力R1(ダイヤフラム12が有する弾性力)のグラフに示すように、ダイヤフラム12から移動体33へ反力R1が働かない状態となる。従って、移動体33が変位量0mmの位置の近傍を通過する第2区間P2では、移動体33に対して僅かな推力を付与するだけで、移動体33を下降させることが可能となる。
そこで、本例では、図8、図10に示すように、移動体33が変位量0mmの位置の近傍を通過する第2区間P2では、駆動コイル38、38へ、第1励磁電流I1よりも小さな−10mAの第2励磁電流I2を供給することにより100mN弱の下向きの推力を発生させ、これにより移動体33を下降させる。なお、図4において、マグネット331の上下方向の寸法aを第1突部372、372と第2突部373、373との間の寸法bよりも、さらに短く設定することにより、マグネット331と第1突部372、372および第2突部373、373との間に働く磁気的な吸引力が実質的に零の状態となる第2区間P2を長くすることが可能である。
その後、移動体33が下降位置33Bに接近すると、マグネット331が第2突部373、373に接近するので、マグネット331と第2突部373、373との間の磁気的な吸引力F4が働き出し、その吸引力F4の大きさは距離の二乗に反比例して増加する。また、吸引力F4は下向きに働く力なので、吸引力F4が移動体33を下に向かって移動させる推力となる。ここで、移動体33が下降位置33Bに接近すると、図7に示すようにダイヤフラム12はその中心部分が外周縁部分に対して下方に変位した状態となるので、図9のダイヤフラム12からの反力R1のグラフに示すように、ダイヤフラム12から移動体33への反力R1は上向きに働く。しかし、図9に示されるように、ダイヤフラム12から移動体33に働く反力R1は、マグネット331と第2突部373、373との間の磁気的な吸引力F4と比較して小さいので、移動体33は吸引力F4によって下降位置33Bまで下降する。
すなわち、本例では、移動体33が下降位置33Bに接近した第3区間P3では、吸引力F4のみによって移動体33が下降する。従って、本例では、図8、図10に示すように、移動体33が下降位置33Bに接近した第3区間P3においては、駆動コイル38、38へ供給する第3励磁電流I3を零とし、すなわち、駆動コイル38、38への給電を停止して吸引力F4のみによって移動体33を下降させる。
しかる後に、移動体33が図7に示す下降位置33Bに至ると、マグネット331と各ヨーク37、37の第2突部373、373との磁気的な吸引力F4と、移動体33によって下方に変位させられたダイヤフラム12からの反力R1とがバランスして、移動体33が停止する。
下降位置33Bでは、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最大の第2容積に拡大させる。すなわち、下降位置33Bでは、容積型ポンプ1が作動し、電磁式直動アクチュエータ3が動作している場合において、駆動コイル38、38への給電が行なわれていないので、移動体33のマグネット331と、各ヨーク37、37の第2突部373、373と間に磁気的な吸引力F4とダイヤフラム12からの反力R1とが作用し、移動体33が停止する。また、本例では、容積型ポンプ1が作動していない状態では、駆動コイル38、38への給電が行なわれていないので、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37、37の第2突部373、373との磁気的な吸引力F4とダイヤフラム12の反力R1の作用によって、移動体33は下降位置33Bに保持される。
次に、移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ移動させる復動工程(第2移動工程)では、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる間とは同様の力が反対方向に働く。従って、図8に示すように、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる往動工程とは反対の第2方向D2の第1〜第3励磁電流I1〜I3を、工程開始時点t0からこの順番で駆動コイル38、38へ供給する。これにより、移動体33は、給電によって発生するローレンツ力および電磁的な吸引力および電磁的な吸引力の合力、および、マグネット331と第1突部372、372との間に磁気的な吸引力F1を推力として上昇し、上昇位置33Aに至る。本例では、往動工程と復動工程を連続して行なっているので、移動体33が下降位置33Bに到達した往動工程の工程終了時点t1が、次の復動工程の工程開始時点t0となっている。
その後、移動体33が上昇位置33Aに位置すると、マグネット331と各ヨーク37、37の第1突部372、372との磁気的な吸引力F1と、移動体33によって上方に変位させられたダイヤフラム12からの反力R1とがバランスして、移動体33が停止する。また、本例では、容積型ポンプ1が作動していない状態では、駆動コイル38、38への給電が行なわれておらず、上昇位置33Aでは、移動体33のマグネット331と、各ヨーク37、37の第1突部372、372と間に磁気的な吸引力F1が働いているので、移動体33は上昇位置33Aに保持される。
ここで、図10に示すように、本例では、移動体33を確実に移動させるために、移動体33が上昇位置33Aから変位量0.2mmの位置へ移動するまでを第1区間P1として−30mAの第1励磁電流I1を供給している。移動体33が変位量0.2mmの位置から変位量−0.4mmの位置へ移動するまでを第2区間P2として−10mAの第2励磁電流I2を供給している。移動体33が変位量−0.4mmを通過して下降位置33Bに至るまでを第3区間P3として給電を停止している。
一方、図10への記載は省略するが、移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ移動させる際には、移動体33が下降位置33Bから変位量−0.2mmの位置へ移動するまでを第1区間P1として30mAの第1励磁電流I1を供給し、移動体33が変位量−0.2mmの位置から変位量0.4mmの位置へ移動するまでを第2区間P2として10mAの第2励磁電流I2を供給し、移動体33が変位量0.4mmを通過して上昇位置33Aに至るまでを第3区間P3として給電を停止している。
なお、本例では、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる際に、移動体33が上昇位置33Aから変位量0.4mmの位置へ移動するまでを第1区間P1として−30mAの第1励磁電流I1を供給し、移動体33が変位量0.4mmの位置から変位量0mmの位置へ移動するまでを第2区間P2として−10mAの第2励磁電流I2を供給し、移動体33が変位量0mmを通過した後に給電を停止してもよい。このようにしても、移動体33を下方に移動させる推力を得ることができるので、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させることができる。また、本例では、第3励磁電流I3を零としてあるが、移動体33を確実に移動させるために、第3励磁電流I3として第2励磁電流I2よりも小さい第3励磁電流I3を駆動コイル38、38へ供給してもよい。例えば、第3励磁電流I3は、零に近い電流でもよい。
(逆止弁)
図11は弁室13周辺の部分断面図である。図11に示すように、逆止弁11は、第2流路225の上端開口225bが形成されている弁座111と、この弁座111に流体の流通方向の下流側から当接して上端開口225bを塞いでいる弁体112と、弁体112と弁室13の円形天井面13bとの間に挿入され、弁体112を所定の付勢力で弁座111に付勢している付勢部材を備えている。本実施形態では、付勢部材は圧縮コイルバネ113であり、弁座111は弁室13の円形底面13aである。
弁体112は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのゴム製の弾性材料からなり、弁座111に対向している円形の平板形状の閉鎖部112aと、この閉鎖部112aの下面から下方に向けて突出する円環状突部112bとを備えている。円環状突部112bは閉鎖部112aと同軸上に形成されており、弁座111において、第2流路225の上端開口225bの周りに当接している。円環状突部112bは、閉鎖部112aの下面の外周縁から外側に向かって下方に傾斜するように形成されており、閉鎖部112aから離れるのに従って厚さ寸法が減少するように先細りになっている。
また、弁体112は、閉鎖部112aの弁座111とは反対側に位置する上面に、圧縮コイルバネ113の当接位置を位置決めするための位置決め部112cを備えている。位置決め部112cは圧縮コイルバネ113の下端開口113aの内径に対応する外径を備える円柱形状の突部であり、円環状突部112bと同軸上に形成されている。
圧縮コイルバネ113は、上方に向かって内径の寸法が増加している。下端開口113aの内径は、第2流路225の上端開口225bの開口径よりも大きく、位置決め部112cを挿入可能な大きさに設定されている。位置決め部112cに圧縮コイルバネ113の下端開口113aを挿入した状態で逆止弁11を弁室13内に配置すると、圧縮コイルバネ113は、上端の円形端部が弁室13の円形天井面13bの第1流路212の下端開口212aの周りに当接し、下端の円形端部が閉鎖部112aの上面に当接し、圧縮された状態となる。これにより、圧縮コイルバネ113は、弁体112を弁座111に向けて付勢する。なお、圧縮コイルバネ113は、下端の円形端部が、閉鎖部112aの上面において円環状突部112bと対応する位置またはその近傍に当接するように配置することが好ましい。
逆止弁11は、ポンプ室8の容積がダイヤフラム12によって縮小されることによりポンプ室8が高圧になった場合などに、流出側流路10において圧縮コイルバネ113による所定の付勢力以上の所定圧力が流出方向にかかると、第2流路225の上端開口225bを開き、流出側流路10を開き状態とする。また、流出側流路10に流出方向とは反対方向に圧力がかかると、第2流路225の上端開口225bを閉じ、流出側流路10を閉じ状態とする。
(アクティブバルブ)
次に、図2、図3、図12を参照してアクティブバルブ4を詳細に説明する。図12は流入側流路9を閉じている状態のアクティブバルブ4の周辺の部分断面図である。図3に示すように、アクティブバルブ4は、円筒形状の胴部41と、胴部41から上方に同軸で延びているオリフィス構成部42と、胴部41から下方に同軸で延びている流入管6を備えている。
オリフィス構成部42は胴部41よりも小径であり、流入管6はオリフィス構成部42よりも小径である。流入管6は容積型ポンプ1の流入管6を兼ねるものであり、下流端が流体入口6aとなっている。図2に示すように、アクティブバルブ4は、オリフィス構成部42が下側ハウジング22の第4凹部226の小径部226bに挿入され、胴部41の上端部分が大径部226aに挿入された状態で下側ハウジング22に取り付けられている。
図12に示すように、オリフィス構成部42は、円柱形状部分421と、この円柱形状部分421の下端の外周側に形成された円環状のフランジ部分422を備えている。円柱形状部分421には、その中心軸に沿って上下方向に貫通するオリフィス423が形成されている。オリフィス423の下端開口423aは円柱形状部分421の下端面に露出している。また、円柱形状部分421の下端面には、オリフィス423の下端開口423aの周りに円環状凹部424が形成されており、これにより、オリフィス423の下端開口423aの周縁は環状突部となっている。環状突部はオリフィス423の下端開口423aを開閉する弁体43の弁座44となる。
胴部41は、内側に、流入管6とオリフィス423とを連通させる流体流路45を備えている。流体流路45は、オリフィス423および流入管6と同軸上に設けられている。アクティブバルブ4が下側ハウジング22に固定されると、第3流路227、第4凹部226の上端部分226cおよびアクティブバルブ4によって、ポンプ室8から流体入口6aに至る流入側流路9が構成される。流体流路45内には軸線方向に往復移動可能な状態で弁体43が挿入されている。弁体43はオリフィス423の流体流路45の側の下端開口423aを開閉することによって流入側流路9を開閉する。
弁体43は、円柱形状をしている。弁体43はステンレス製のパイプ431と、パイプ431の内側に上下方向に配列された円柱状の4つのマグネット432、隣り合うマグネット432との間に各々配置された3枚の円板状の磁性板433、上端および下端にそれぞれ配置された2枚の円盤状の磁性板434、上端の磁性板434の上に配置されたステンレス製の蓋板435、下端の磁性板434の下に配置されたステンレス製の底板436を備えている。なお、パイプ431、蓋板435、底板436として樹脂製のものを用いることもできる。蓋板435の上面には、円形のゴムシート437が接着等の方法で取り付けられている。ここで、隣り合うマグネット432は、互いに同一の極を相手方のマグネットの方に向けている。より詳細には、上端のマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されており、その下方に隣接配置されているマグネット432は上がN極、下がS極となるように配置されており、さらにその下方に配置されているマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されており、下端のマグネット432は上がN極、下がS極となるように配置されている。この結果、弁体43では、磁性板433が位置する個所に磁力線が集中している。
流体流路45は、弁体43を駆動するための駆動コイル46を巻き回しているコイルボビン47の内側に形成されている。コイルボビン47の外周側には円筒形のヨーク48が配置されている。
コイルボビン47は樹脂製であり、コイルボビン47の上端部分にはオリフィス構成部42を取り付けるための円環状の係合凹部471が形成されている。係合凹部471には、ゴムパッキン49を介してオリフィス構成部42のフランジ部分422が挿入されて固定される。オリフィス構成部42の円柱形状部分421の外周側には円環状の押さえ板50が上方から嵌め込まれており、この押さえ板50がコイルボビン47の上端面およびヨーク48の上端面に固定されることにより、オリフィス構成部42はコイルボビン47およびヨーク48に固定されている。押さえ板50は磁性材料から形成されている。なお、押さえ板50が磁性材料から形成されることで、押さえ板50は、弁体43に搭載されているマグネット432との間で磁気的な吸引力を発生することができるようになっている。
また、コイルボビン47は、上下方向に延びる筒状胴部472と、筒状胴部472の外周面で拡径する6つのフランジ部473を備えている。コイルボビン47の筒状胴部472および6つのフランジ部473によって囲まれた5つの空間は、駆動コイル46が巻回される5つの巻線部となっている。
コイルボビン47に巻回された5つの駆動コイル46は、励磁電流の向きを逆にするために、隣り合う駆動コイル46同士の巻回方向が逆である。また、5つの駆動コイル46は、例えば、直列に電気的に接続される。或いは、軸線方向の内側に位置する3つの駆動コイル46を並列に電気的に接続し、それらの接続部分に対して、軸線方向の両側の駆動コイル46を直列に電気的に接続した構成を採用することもできる。また、本例では、上端および下端の駆動コイル46の上下方向の寸法は、その間に位置している3つの駆動コイル46の上下方向の寸法の1/2としてある。弁体43において、上端および下端のマグネット432の上下方向の寸法は、その間の2つのマグネット432の上下方向の寸法の1/2としてある。この結果、弁体43が弁座44に当接して、オリフィス423の下端開口423aを閉鎖している状態では、磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置している。
ここで、弁体43の外径寸法は、コイルボビン47の筒状胴部472の内径寸法よりもわずかだけ小さく、弁体43がコイルボビン47の筒状胴部472の内側の空間内に挿入された状態では、弁体43の外周側面とコイルボビン47の筒状胴部472の内周面との間を流体が流れる。
(アクティブバルブの動作)
図12〜図14を参照してアクティブバルブ4の動作を説明する。図13はアクティブバルブ4の弁体43に働く力を説明するための説明図である。図14は流入側流路9を開いている状態のアクティブバルブ4の周辺の部分断面図である。アクティブバルブ4は駆動制御部7によって駆動コイル46への給電が制御されることにより、駆動制御される。
図13に示すように、駆動コイル46への給電が行なわれていない状態では、弁体43は、弁体43のマグネット432と押さえ板50との磁気的な吸引力F5によって閉鎖位置43Aに保持されている。閉鎖位置43Aでは、弁体43はコイルボビン47の内側の流体流路45を上端まで移動しており、弁体43の上端面にあるゴムシート437が弁座44に当接し、オリフィス423の下端開口423aを塞いでいる。これにより流入側流路9は閉じ状態となる。また、弁体43の磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置している。
ここで、弁体43は、オリフィス423の下端開口423aが設けられている弁座44よりも流体の流通方向の上流側に位置しており、オリフィス423と同軸に形成されている流体流路45の中を流体の流通方向に移動するように構成されている。このため、流体入口6aからアクティブバルブ4の中へ流れ込む流体の流体圧(背圧)が弁体43を閉鎖位置43Aに向かって移動させる方向に力F6を働かせている。
次に、流入側流路9を開き状態とする際には、駆動コイル46への給電を行なう。アクティブバルブ4では、マグネット432の外周側に筒状に巻き回された駆動コイル46が配置されているので、給電によって駆動コイル46を流れる励磁電流の向きとマグネット432による磁界の向きが直交する。この結果、図14に示すように、駆動コイル46への給電が行なわれると、マグネット432の磁束と駆動コイル46との間に働くローレンツ力が弁体43を閉鎖位置43Aから下方に移動させる力F7として働く。ここで、駆動コイル46への給電の開始時点では、弁体43の磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置しており、駆動コイルと鎖交する磁界を効率よく形成しているので、力F7として大きな推力が発生する。従って、弁体43は、図13に示されている押さえ板50との間の磁気的な吸引力F5および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力F6に抗して下方の開放位置43Bに移動する。
弁体43が開放位置43Bに移動すると、弁体43が弁座44から流体の流通方向の上流側に離れ、ゴムシート437がオリフィス423の下端開口423aから離間する。これにより、流入側流路9は開き状態となる。開放位置43Bでは、弁体43は、その下端部がコイルボビン47の内部に形成された突状部474に当接し、或いは当接せずにバランスして停止した開き位置に至る。開放位置43Bでは、流体入口6aから流入管6(流体通路45)を介して流入した流体は、弁体43の外周面とコイルボビン47の筒状胴部472との間に流れ込み、下端開口423aを介して、オリフィス423を通過し、ポンプ室8へ向かう。
また、流入側流路9を閉じ状態とする際には、駆動コイル46への給電を停止する。駆動コイル46への給電を停止すると、図13に示されている押さえ板50との間の磁気的な吸引力F5および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力F6により、弁体43は閉鎖位置43Aに移動し、弁体43は弁座44に当接し、上端のゴムシート437でオリフィス423の下端開口423aを塞いだ状態に戻る。従って、流入側流路9は閉じ状態となる。
なお、流入側流路9を閉じ状態とする際には、弁体43を閉じ位置から開き位置へ移動させる場合と反対方向の励磁電流を駆動コイル46へ供給するようにしてもよい。このようにすれば、弁体43は、弁体43のマグネット432と駆動コイル46との間に発生するローレンツ力、弁体43と押さえ板50との間の磁気的な吸引力F5および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力F6によって上方に移動する。弁体43が閉じ位置に至った後には、駆動コイル46への給電を停止すれば、弁体43は閉鎖位置43Aに保持される。
(容積型ポンプの動作)
次に、容積型ポンプ1の動作を説明する。容積型ポンプ1の電磁式直動アクチュエータ3とアクティブバルブ4とは、駆動制御部7によって同期して駆動制御される。
電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38およびアクティブバルブ4の駆動コイル46に給電されていない状態では、図12に示すように、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置43Aに保持されており、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉じ状態としている。また、電磁式直動アクチュエータ3の移動体33は、図4に示すように、上昇位置33Aに保持されており、ダイヤフラム12はポンプ室8の容積を最小の第1容積としている。逆止弁11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって第2流路225の上端開口225bを塞ぎ、流出側流路10を閉じ状態としている。
ポンプ室8内への流体の吸引が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電によって弁体43が閉鎖位置43Aから開放位置43Bへ駆動され、流入側流路9が開き状態とされる。すなわち、アクティブバルブ4は図14に示す状態となる。これと並行して、電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38、38へ第1方向D1の給電が行なわれる。すなわち、第1方向D1の励磁電流が駆動コイル38、38に供給され、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bへ駆動される。この結果、図7に示すように、ポンプ室8の容積は最大の第2容積に拡大する。
移動体33が下降してダイヤフラム12が下方に変位すると、ポンプ室8には負圧が発生するので、流体はポンプ室8内に吸い込まれる。ポンプ室8内に負圧が発生した状態では、逆止弁11は第2流路225の上端開口225bを閉鎖し、流出側流路10を閉じ状態としている。
次に、ポンプ室8からの流体の吐出が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電が停止される。この結果、図13に示すように、弁体43は開放位置43Bから閉鎖位置43Aに上昇して、流入側流路9が閉じ状態となる。これと並行して、電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38、38への給電が行なわれる。すなわち、流体の吸引時とは逆の第2方向D2の励磁電流が駆動コイル38、38に供給され、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aへ駆動される。この結果、図4、図6に示すように、ポンプ室8の容積は最小の第1容積に縮小する。
ここで、ポンプ室8の容積が縮小されるとポンプ室8は高圧となるので、流出側流路10では、圧縮コイルバネ113による弁体112の付勢力と対応する所定圧力以上の力が流出方向にかかる。この結果、流体は、弁体112を流出方向に移動させて、第2流路225の上端開口225bから流出し、流体出口5aから吐出される。
その後に容積型ポンプ1が待機状態となると、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置43Aに保持され、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉じ状態とする。また、電磁式直動アクチュエータ3の移動体33は上昇位置33Aに保持され、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を第1容積とする。逆止弁11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって第2流路225の上端開口225bを塞ぎ、流出側流路10を閉じ状態とする。
(作用効果)
本例によれば、容積型ポンプ1を駆動制御する駆動制御部7は、電磁式直動アクチュエータ3の移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させてポンプ室8を拡大する往動工程では、駆動コイル38に対して第1励磁電流I1、第1励磁電流I1よりも小さい第2励磁電流I2および第2励磁電流I2よりも小さい第3励磁電流I3をこの順番で供給している。また、駆動制御部7は、移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ移動させてポンプ室8を縮小する復動工程では、駆動コイル38、38に対して第1励磁電流I1、第1励磁電流I1よりも小さい第2励磁電流I2、および第2励磁電流I2よりも更に小さい第3励磁電流I3をこの順番で供給している。従って、移動体33を上昇位置33Aと下降位置33Bの間で往復移動させる間に一定の大きさの電流を駆動コイル38に供給し続ける場合と比較して、容積型ポンプ1の消費電力を低減させることができる。また、本例では、第3励磁電流I3を零としてあるので、一層の省電力化が図られている。
さらに、本例によれば、駆動コイル38、38に対して供給される励磁電流が、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bに接近するのに伴って小さくなるので、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bに移動させる際に一定の大きさの励磁電流を供給し続ける場合と比較して、下降位置33Bの近傍における移動体33の加速度を抑えることができる。従って、移動体33の各ガイド突部333、333が上側ケース31のガイド溝318、318の上端縁318a、318aに当接することにより、移動体33が上昇位置33Aに位置決めされるように構成した場合などにおいては、移動体33とガイド溝318、318の上端縁318a、318aの衝突の衝撃を抑制することができる。同様に、駆動コイル38、38に対して供給される励磁電流が、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aに接近するのに伴って小さくなるので、移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ向かって移動させる際に、上昇位置33Aの近傍における移動体の加速度を抑えることができる。従って、移動体33の各ガイド突部333、333が下側ケース32の上端面32a、32aに当接することにより、移動体33が下降位置33Bに位置決めされるように構成した場合などにおいては、移動体33と下側ケース32の上端面32a、32aの衝突の衝撃を抑制することができる。この結果、衝突音を抑制することができるとともに、装置の寿命を延ばすことができる。
また、本例によれば、電磁式直動アクチュエータ3の固定体34は、移動体33の移動方向と平行なマグネット331の磁極面331a、331bと対向し、移動体33の移動方向と直交する方向に巻き回されている駆動コイル38、38を備えている。従って、駆動コイル38、38への給電を行なって電磁式直動アクチュエータ3を励磁すると、駆動コイル38、38を流れる励磁電流の向きと、マグネット331の磁界の方向とが直交して、ローレンツ力が発生する。また、駆動コイル38、38はヨーク37、37に巻き回されているので、駆動コイル38、38への給電を行なうと、駆動コイル38、38およびヨーク37、37は電磁コイル(電磁石)として機能し、電磁コイルとマグネット331との間に、電磁的な吸引力および電磁的な反発力が発生する。また、移動体33の移動方向に延びているヨーク37、37の両端に第1突部372、372、第2突部373、373が設けられているので、直動する移動体33がこれら第1突部372、372、第2突部373、373のいずれかに接近すると、マグネット331と第1突部372、372、第2突部373、373との間に磁気的な吸引力が発生する。すなわち、容積型ポンプ1では、ローレンツ力と、電磁的な吸引力および電磁的な反発力と、磁気的な吸引力とをダイヤフラム12の推力とすることができる。この結果、これら3つの力を用いて推力を得ることができるので、容積型ポンプ1によれば、ポンプ室8の容積を変化させるための可動体を効率よく駆動できる。よって、駆動コイル38、38に供給する励磁電流を抑えることができる。
また、駆動コイル38、38への給電を停止して、電磁式直動アクチュエータ3を消磁状態とすると、マグネット331と第1突部372、372または第2突部373、373との磁気的な吸引力によって移動体33は上昇位置33Aまたは下降位置33Bに選択的に保持される。従って、駆動コイル38、38への給電を行なわなくても、外部から加わる振動などにより移動体33が移動してしまうことを防止できる。この結果、待機状態における電磁式直動アクチュエータ3の消費電力を抑えることができるので、容積型ポンプ1の消費電力を抑えることができる。
(容積型ポンプの駆動制御方法の変形例)
上記の実施の形態では、電磁式直動アクチュエータへ供給する励磁電流の電流値を往動工程および復動工程のそれぞれにおいて3段階に制御しているが、励磁電流の電流値の制御はこれに限られるものではない。図15、図16は、変形例1〜4における電磁式直動アクチュエータへ印加する励磁電流の電流値を示すタイムチャートである。
[変形例1]
例えば、図15(a)に示すように、第1励磁電流I1と、第1励磁電流よりも小さい第2励磁電流I2を供給するように2段階に制御しても、消費電力を抑えることができる。なお、励磁電流を減少させる段階を4段階以上としても消費電力を抑えることができる。
[変形例2]
また、図15(b)に示すように、励磁電流を時間の経過に連れて一定の割合で漸減させても、消費電力を抑えることができる。
[変形例3]
さらに、図15(c)に示すように、励磁電流が時間経過に連れてカーブを描いて減少するように制御しても、消費電力を抑えることができる。
[変形例4]
また、励磁電流を間歇的に印加し、印加される励磁電流の電流値を、往動工程および復動工程において、工程開始時点t0から時間経過に連れて減少させてもよい。例えば、図16に示す変形例4では、第1励磁電流I1と第2励磁電流I2をパルス波形で印加している。ここで、本例では、間歇的に印加される第1励磁電流I1と第2励磁電流I2の間に給電が行なわれていない区間が存在するが、この区間では、移動体33は、当該移動体33に働く慣性によって移動する。本例によれば励磁電流が間歇的に印加されるので、消費電力を抑制する効果が向上する。
[変形例5]
図17に示す変形例5では、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bに向けて移動する往動工程、或いは、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aに向けて移動する復動工程において、工程開始時点t0から工程終了時点t1までの間に切替時点t2を設定している。そして、工程開始時点t0から切替時点t2までの間において励磁電流を時間経過に連れて段階的に減少させ、切替時点t2から工程終了時点t1までの間において、それまでの励磁電流とは逆極性の励磁電流を連続して印加している。
本例では、上記の実施の形態の第3励磁電流I3として、第1励磁電流I1、第2励磁電流I2とは逆極性の励磁電流を供給している。より具体的には、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる往動工程では、図10等に示す第3区間P3において、第1方向D1とは逆の第2方向D2に流れる10mAの第3励磁電流I3を供給している。
ここで、第3区間P3において第2方向D2に流れる第3励磁電流I3を印加すると、移動体33を移動方向とは反対の上方に移動させようとする電磁力が発生する。すなわち、駆動コイル38、38への給電により発生するローレンツ力による力F2と、駆動コイル38、38およびヨーク37、37が電磁コイル(電磁石)として機能することにより発生する磁気的な力F3は図6に示されている方向とは反対方向に働き、これらの合力は、移動体33を移動方向とは反対の上方に移動させようとする力となる。しかし、この力によって、移動体33が移動途中で停止させられることはなく、移動体33は慣性によって下降位置33Bに接近する。そして、移動体33が下降位置33Bの近傍に至ると、図7に示すように、マグネット331と第2突部373、373との間の磁気的な吸引力F4による推力が、移動体33を上方に移動させる力よりも大きくなるので、移動体33は下降位置33Bに到達する。
また、本例では、移動体33を下降位置33Bから上昇位置33Aへ移動させる復動工程では、移動体33が変位量0.4mmを通過して上昇位置33Aに至るまでを第3区間P3として−10mAの第3励磁電流I3(第1方向D1に流れる10mAの励磁電流)を供給している。この場合も、移動体33を上昇位置33Aから下降位置33Bへ移動させる際と同様に、第3区間P3において移動体33を移動方向とは反対方向の下方に移動させる電磁力が発生するが、この力によって、移動体33が移動途中で停止させられることはなく、移動体33は慣性によって上昇位置33Aに接近する。そして、移動体33が上昇位置33Aの近傍に至ると、図6に示すように、マグネット331と第1突部372、372との間の磁気的な吸引力F1による推力が、移動体33を下方に移動させる力よりも大きくなるので、移動体33は上昇位置33Aに到達する。
本例においても、移動体33を上昇位置33Aと下降位置33Bの間で移動させる間に一定の大きさの励磁電流を電磁式直動アクチュエータ3に印加し続ける場合と比較して、容積型ポンプ1の消費電力を抑えることができる。
また、本例では、切替時点t2から供給方向が逆方向となる逆極性の励磁電流を駆動コイル38に供給しているので、切替時点t2以降に移動体33を移動方向とは反対方向に移動させようとする電磁力が発生し、移動体33の移動速度が低下する。より詳細には、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bに向けて移動する往動工程では、下降位置33Bの近傍で移動体33の移動速度が低下し、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aに向けて移動する復動工程では、上昇位置33Aの近傍で移動体33の移動速度が低下する。この結果、移動体33を上昇位置33A及び下降位置33Bの間で往復移動させる際に、その動きが滑らかなものとなる。
さらに、移動体33の各ガイド突部333、333が上側ケース31のガイド溝318、318の上端縁318a、318aに当接することにより、移動体33が上昇位置33Aに位置決めされるように構成した場合、或いは、移動体33の各ガイド突部333、333が下側ケース32の上端面32a、32aに当接することにより、移動体33が下降位置33Bに位置決めされるように構成した場合には、移動体33がこれらガイド溝318、318の上端縁318a、318或いは下側ケース32の上端面32a、32aに衝突する際の衝撃および衝撃音を抑制することができる。
[変形例6]
図18に示す変形例6においても、往動工程或いは復動工程において、工程開始時点t0から工程終了時点t1までの間に切替時点t2を設定している。また、工程開始時点t0から切替時点t2までの間において励磁電流を時間経過に連れて漸減させ、切替時点t2から工程終了時点t1までの間において、それまでの励磁電流とは逆極性の励磁電流を印加している。
さらに、本例では、切替時点t2から、逆極性の励磁電流の電流値の絶対値を時間経過に連れて漸増させている。また、本例では、励磁電流を、電流波形が工程開始時点t0および工程終了時点t1で電流値の絶対値が最大となる余弦波となるように変化させている。往動工程において、工程開始時点t0で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は−30mA(第1方向D1に流れる30mAの励磁電流)となっており、工程終了時点t1で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は30mA(第2方向D2に流れる30mAの励磁電流)となっている。復動工程において、工程開始時点t0で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は30mA(第2方向D2に流れる30mAの励磁電流)となっており、工程終了時点t1で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は−30mA(第1方向D1に流れる30mAの励磁電流)となっている。
発明者らの実験によれば、電流波形が余弦波を描く励磁電流を電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38へ供給することによっても、移動体33を上昇位置33Aおよび下降位置33Bの間で往復移動させ、ポンプ室8の容積を最大容積および最小容積に変化させることができることが確認された。
ここで、電流波形が余弦波となる励磁電流によって移動体33が上昇位置33Aと下降位置33Bとの間で移動する理由は、移動体33に働く慣性によるものであると推察される。すなわち、切替時点t2からは、ローレンツ力による力F2と、駆動コイル38、38およびヨーク37、37が電磁コイル(電磁石)として機能することにより発生する磁気的な力F3の合力は移動体33を移動方向とは反対方向に移動させようとする力となるが、この力によって移動体33の慣性による移動が停止させられることがなく、移動体33は上昇位置33Aまたは下降位置33に接近する。そして、上昇位置33Aまたは下降位置33Bの近傍ではマグネット331と第1突部372、372または第2突部373、373との間の磁気的な吸引力F4が働くので、これにより、移動体33は下降位置33Bに到達する。
本例においても、移動体33を上昇位置33Aと下降位置33Bの間で移動させる間に一定の大きさの励磁電流を電磁式直動アクチュエータ3に印加し続ける場合と比較して、容積型ポンプ1の消費電力を抑えることができる。
また、本例では、切替時点t2から逆極性の励磁電流を時間経過に連れて増大させている。従って、切替時点t2から移動体33を移動方向とは反対方向に移動させようとする電磁力が発生するとともに、この電磁力が増大して、移動体33にマイナスの加速度を付与する。この結果、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bに向けて移動する往動工程では、下降位置33Bの近傍で移動体33の移動速度が十分に低下し、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aに向けて移動する復動工程では、上昇位置33Aの近傍で移動体33の移動速度が十分に低下する。よって、移動体33を上昇位置33A及び下降位置33Bの間で往復移動させる際に、その動きが滑らかなものとなる。
さらに、電流波形が余弦波となる励磁電流を印加する電流制御回路は簡易に実現できるので、容積型ポンプ1を駆動制御するための駆動制御部7を簡易に構成することができる。また、このような励磁電流を供給すれば、励磁電流の電流値が連続的に変化するので、移動体33の動きが滑らかなものとなる。
[変形例7]
図19に示す変形例7は、変形例6に示す電流波形の励磁電流を間歇的に印加したものである。換言すれば、間歇的に印加される励磁電流の電流値を、工程開始時点t0および工程終了時点t1で電流値の絶対値が最大となる余弦波に沿うように変化させたものである。
本例においても、往動工程或いは復動工程において、工程開始時点t0から工程終了時点t1までの間に切替時点t2を設定している。また、工程開始時点t0から切替時点t2までは、間歇的に印加される励磁電流の電流値を工程開始時点t0から時間経過に連れて減少させており、切替時点t2からは、間歇的に印加される励磁電流の電流値を時間経過に連れて増大させている。往動工程において、工程開始時点t0で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は−30mA(第1方向D1に流れる30mAの励磁電流)となっており、工程終了時点t1で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は30mA(第2方向D2に流れる30mAの励磁電流)となっている。復動工程において、工程開始時点t0で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は30mA(第2方向D2に流れる30mAの励磁電流)となっており、工程終了時点t1で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は−30mA(第1方向D1に流れる30mAの励磁電流)となっている。
ここで、図19(a)に示す例では、励磁電流を印加するパルス波形のパルス幅S1を一定幅としており、図19(b)に示す例では、パルス波形のパルス幅S2を、工程開始時点t0を含む時点において最大とし、切替時点t2に向けて漸減させ、切替時点t2から工程終了時点t1に向けて漸増させている。
発明者らの実験によれば、図19(a)、(b)に示すような励磁電流を電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38へ印加することによっても、移動体33を上昇位置33Aおよび下降位置33Bの間で往復移動させ、ポンプ室8の容積を最大容積および最小容積に変化させることができることが確認された。
本例においても、移動体33を上昇位置33Aと下降位置33Bの間で移動させる間に一定の大きさの励磁電流を電磁式直動アクチュエータ3に印加し続ける場合と比較して、容積型ポンプ1の消費電力を抑えることができる。
また、本例においても、切替時点t2から逆極性の励磁電流を時間経過に連れて増大させている。従って、切替時点t2から移動体33を移動方向とは反対方向に移動させようとする電磁力が発生するとともに、この電磁力が増大して、移動体33にマイナスの加速度を付与する。この結果、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bに向けて移動する往動工程では、下降位置33Bの近傍で移動体33の移動速度が十分に低下し、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aに向けて移動する復動工程では、上昇位置33Aの近傍で移動体33の移動速度が十分に低下する。よって、移動体33を上昇位置33A及び下降位置33Bの間で往復移動させる際に、その動きが滑らかなものとなる。
さらに、図19(a)に示す例では、励磁電流を印加するパルス波形は、余弦波信号をパルス振幅変調することなどによって得ることができるので、励磁電流を印加するための電流制御回路を簡易に実現することができる。よって、容積型ポンプ1を駆動制御するための駆動制御部7を簡易に構成することができる。また、図19(b)に示す例では、パルス幅が一定のパルス波形を用いて励磁電流を印加する場合と比較して、移動体33の移動が滑らかなものとなることが確認されている。
[変形例8]
図20に示す変形例8においても、往動工程或いは復動工程において、工程開始時点t0から工程終了時点t1までの間に切替時点t2を設定している。また、本例では、工程開始時点t0から切替時点t2までの間において励磁電流の電流値を第1割合で減少させ、切替時点t2からは工程終了時点t1までの間において励磁電流の電流値を第2割合で増大させている。
ここで、図20(a)に示す例では、切替時点t2を、工程開始時点t0と工程終了時点t1のちょうど中間の時点に設定しており、第1割合と第2割合を同一の割合としている。図20(b)に示す例では、切替時点t2を、工程開始時点t0と工程終了時点t1の中間よりも工程終了時点t1の側に寄った時点に設定しており、第1割合を第2割合よりも小さくしている。いずれの例でも、励磁電流の電流値の絶対値は、工程開始時点t0および工程終了時点t1で最大としてある。すなわち、往動工程において、工程開始時点t0で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は−30mA(第1方向D1に流れる30mAの励磁電流)となっており、工程終了時点t1で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は30mA(第2方向D2に流れる30mAの励磁電流)となっている。復動工程において、工程開始時点t0で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は30mA(第2方向D2に流れる30mAの励磁電流)となっており、工程終了時点t1で駆動コイル38、38に供給される励磁電流は−30mA(第1方向D1に流れる30mAの励磁電流)となっている。
発明者らの実験によれば、図20(a)、(b)に示すような励磁電流を電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38へ印加することによっても、移動体33を上昇位置33Aおよび下降位置33Bの間で往復移動させ、ポンプ室8の容積を最大容積および最小容積に変化させることができることが確認された。
本例においても、移動体33を上昇位置33Aと下降位置33Bの間で移動させる間に一定の大きさの励磁電流を電磁式直動アクチュエータ3に印加し続ける場合と比較して、容積型ポンプ1の消費電力を抑えることができる。
また、本例においても、切替時点t2から逆極性の励磁電流を時間経過に連れて増大させている。従って、切替時点t2から移動体33を移動方向とは反対方向に移動させようとする電磁力が発生するとともに、この電磁力が増大して、移動体33にマイナスの加速度を付与する。この結果、移動体33が上昇位置33Aから下降位置33Bに向けて移動する往動工程では、下降位置33Bの近傍で移動体33の移動速度が十分に低下し、移動体33が下降位置33Bから上昇位置33Aに向けて移動する復動工程では、上昇位置33Aの近傍で移動体33の移動速度が十分に低下する。よって、移動体33を上昇位置33A及び下降位置33Bの間で往復移動させる際に、その動きが滑らかなものとなる。
さらに、本例では、励磁電流を所定の割合で連続的に変化させているので、電流制御回路を簡易に実現できる。従って、容積型ポンプ1を駆動制御するための駆動制御部7を簡易に構成することができる。
なお、図20(a)、(b)に示す例では、励磁電流の電流値を直線的に変化させているが、図20(c)に例示するように、励磁電流を時間経過に伴う電流値の変化が曲線を描くようにしてもよい。また、電流値が図20(a)、(b)に示す例の電流波形に沿うように、励磁電流を間歇的に印加してもよく、励磁電流を階段状に段階的に変化させてもよい。
(電磁式直動アクチュエータの変形例)
さらに、図21、図22に示すような電磁式直動アクチュエータを搭載する容積型ポンプにおいても、本発明の駆動制御方法を適用できる。図21は変形例の電磁式直動アクチュエータを説明するための説明図である。図21では、移動体33と固定体34の配置をマグネット331、ヨーク37および駆動コイル38の配置で示している。また、図21では、マグネット331、ヨーク37および駆動コイル38は、移動体33の移動方向と直交する平面で切断した状態を示してある。
上記の実施の形態では、移動体33を装置幅方向の両側から挟むようにして第1固定体35と第2固定体36が配置されているが、図21(a)に示すように、第1固定体35および第2固定体36のいずれか一方を省略することができる。すなわち、移動体33を、この移動体33と対向する一つの固定体34によって直動駆動してもよい。
また、移動体のマグネットを上下方向に延びる多角柱形状とするとともに、その各側面を磁極面としておき、磁極面と対応する数だけ固定体を備えるように構成することもできる。この場合には、図21(b)に示すように、例えば、移動体33が四角柱形状のマグネット331Aを備えるものとする。また、マグネット331Aにおいては、移動体33の移動方向と平行な4つの側面をそれぞれ磁極面331a、331a´、331b、331b´とする。そして、これらの磁極面331a、331a´、331b、331b´のそれぞれと駆動コイル38、38、38、38が対向するように4つの固定体34を配置する。固定体34の数を増やせば大きな推力を得ることができるので、容積型ポンプの効率を向上させることができる。
さらに、図21(c)に示すように、移動体33のマグネット331Bとしては、上下方向に延びる円柱形状のものであって、周方向に分極着磁したものを用いることもできる。この場合には、分極着磁によって形成された磁極面331a、331a´、331b、331b´と対応する4つの固定体34を備え、磁極面331a、331a´、331b、331b´と対向する位置に、4つの駆動コイル38がマグネット331Bの各磁極面331a、331a´、331b、331b´と対向するように4つの固定体34を配置すればよい。
図22はさらに別の変形例の電磁式直動アクチュエータを説明するための説明図である。図22では、移動体33と固定体34の配置をマグネット331、ヨーク37および駆動コイル38の配置で示している。また、図22では、マグネット331、ヨーク37および駆動コイル38は、移動体33の移動方向と平行な平面で切断した状態を示してある。
図22(a)に示すように、本例では、ダイヤフラム12が取り付けられる移動体33の側にヨーク37および駆動コイル38を備えており、固定体34の側にマグネット331を備えている。本例においても、マグネット331は、磁極面331aが移動体33の移動方向に平行となるように配置されている。また、ヨーク37の両端にはマグネット331の側に突出する第1突部372および第2突部373が設けられており、駆動コイル38は移動体33の移動方向と直交する方向に巻き回された状態で、マグネット331の磁極面331aに対向するように配置されている。さらに、マグネット331の移動体33の移動方向における長さ寸法は、ヨーク37の移動体33の移動方向における長さ寸法よりも短く設定されている。なお、本例では、移動体33は、マグネット331と第2突部373との間の磁気的吸引力F4´によって上昇位置33Aに保持される。また、移動体33は、マグネット331と第1突部372との間の磁気的吸引力F1´によって下降位置33Bに保持される。
図22(b)に示す例は、ヨーク37および駆動コイル38を備える移動体33の回りに、マグネット331を備える固定体34を複数配置したものである。この場合には、各固定体34、34の各マグネット331、331は、同一の極が駆動コイル38の外周面と対向するように配置しておく。また、この場合には、第1突部372、第2突部373を円盤状に形成することにより、第1突部372および第2突部373を各マグネット331、331に向かって突出させる。固定体34の数を増やせば大きな推力を得ることができるので、容積型ポンプの効率を向上させることができる。
図22に示す例においても、駆動コイル38への給電を行なうと、フレミングの左手の法則により、駆動コイル38を流れる励磁電流の向きと、マグネット331の磁界の方向とが直交して、ローレンツ力が発生する。また、アンペールの右ネジの法則により、駆動コイル38はヨーク37に巻き回されているので、駆動コイル38への給電を行なうと、駆動コイル38およびヨーク37は電磁コイル(電磁石)として機能し、電磁コイルとマグネット331との間に、電磁的な吸引力および電磁的な反発力が発生する。さらに、移動体33の移動方向に延びているヨーク37の両端に第1突部372、第2突部373が設けられているので、直動する移動体33がこれら第1、第2突部372、373のいずれかに接近すると、マグネット331と第1、第2突部372、373との間に磁気的な吸引力が発生する。すなわち、容積型ポンプ1では、ローレンツ力と、電磁的な吸引力および電磁的な反発力と、磁気的な吸引力とをダイヤフラム12の推力とすることができる。
(容積型ポンプの変形例)
次に、図23を参照して、容積型ポンプの変形例を説明する。上記の実施の形態では、流入側流路9に給電によって駆動されるアクティブバルブ4が配置されているが、パッシブバルブを配置することができる。図23はアクティブバルブ4に代えてパッシブバルブを配置した変形例の容積型ポンプの縦断面図である。なお、本例の容積型ポンプ1Aは上記の実施の形態の容積型ポンプ1と同様の構成を備えているので、対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
容積型ポンプ1Aでは、上側ハウジング21の上端面の右側部分から流入管6が突出している。流入管6の上端は流体入口6aとなっている。上側ハウジング21の下端面の右側部分には、上方に窪む円形の第5凹部71が設けられている。第5凹部71の天井面の中央部分には流入管6に連通する第4流路72の下端開口72aが露出している。
下側ハウジング22の上端面の右側部分には上側ハウジング21の第5凹部71と嵌合する円形の第2上側突出部73が形成されている。第2上側突出部73の中央部分には、下方に窪む円形の第6凹部74が形成されている。第2上側突出部73は第5凹部71に嵌め込まれており、上側ハウジング21の第5凹部71と下側ハウジング22の第6凹部74によって流入管6と同軸に流入側弁室75が形成されている。第2上側突出部73の外周面と第5凹部71の内周面との間にはOリング76が配置されている。流入側弁室75内にはパッシブバルブ77が構成されている。
下側ハウジング22の流入側弁室75と弁室13との間には、ハウジング内流路78が形成されている。ハウジング内流路78は、流入側弁室75から下方に延びる第1流路部分79と、第1流路部分79の下端から装置幅方向を弁室13の側に向かって延びる第2流路部分80と、第2流路部分80の左端から上方に延びる第3流路部分81を備えている。第1流路部分79の上端開口79aは流入側弁室75の円形底面75aの中央部分に露出しており、第3流路部分81の上端開口81aは弁室13の円形底面13aの中央部分に露出している。ポンプ室8は下側ハウジング22の装置幅方向の中央部分に形成されており、第2流路部分80の装置幅方向の中央部分はポンプ室8の上端部分に連通している。ポンプ室8の下方には電磁式直動アクチュエータ3が配置されている。
パッシブバルブ77は、第4流路72の下端開口72aが形成されている弁座82と、この弁座82に流体の流通方向の下流側から当接して下端開口72a塞いでいる弁体83と、弁体83と流入側弁室75の円形底面75aとの間に挿入され、弁体83を所定の付勢力で弁座82に付勢している付勢部材を備えている。ここで、弁座82は流入側弁室75の円形天井面75bであり、付勢部材は圧縮コイルバネ84である。なお、弁体83は逆止弁11の弁体112と同様の構成を備えており、圧縮コイルバネ84は逆止弁11の圧縮コイルバネ113と同様の構成を備えているので、その説明を省略する。
ここで、パッシブバルブ77は、ポンプ室8の容積が拡大されることによりポンプ室8に負圧が発生した場合などに、流入側流路9において圧縮コイルバネ84による所定の付勢力以上の所定圧力が流出方向にかかると第4流路72の下端開口72aを開く。また、流入側流路9に流出方向とは反対方向に圧力がかかったときに上端開口79aを閉じる。
なお、ポンプ室8の容積を変化させるための可動体としては、ダイヤフラム12以外のものを用いることができる。例えば、シリンダのように、ポンプ室8の底面を移動体33の移動に伴って昇降させるように構成してもよい。