JP5737308B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
しかしながら、このような低温定着化に伴って、用いるトナーが熱的安定性の低いものとなり、保管時および輸送時の耐熱保存性が十分に得られないという問題があった。また、着色剤や離型剤などのトナー構成成分がトナー表面から露出することにより、安定した帯電性を長期にわたって維持することができないという問題もあった。
例えば、特許文献3および4には、金属塩の影響を考慮し、2価または3価の金属元素の含有量、多価金属元素の含有量を規定した技術が開示されているが、改良効果は十分ではなく、低温定着性と帯電性能の環境変動差の抑制について樹脂を含めた更なる改良が求められている。
前記結着樹脂が下記一般式(1)で表わされる重合性単量体を重合してなる重合体を含有することを特徴とする。
本発明のトナーは、特定の単量体を重合してなる特定の重合体を含有する結着樹脂を含むトナー粒子よりなり、当該トナー粒子は、所望に応じて、さらに、着色剤、磁性粉、離型剤、荷電制御剤等を含有するものとすることができる。また、当該トナー粒子に対して、流動化剤やクリーニング助剤等の外添剤を添加するものとすることもできる。
(特定の重合体)
本発明のトナーにおける結着樹脂として構成される特定の重合体は、モノマーとして、少なくとも特定の単量体を用いて形成されるものである。
本発明において、結着樹脂として構成される特定の重合体が上記一般式(1)で表わされる重合性単量体を用いて形成されるものであることにより、当該一般式(1)で表わされる重合性単量体がフェニルアラニン骨格を有し、このフェニルアラニン骨格が低温低湿環境下においては親水性を示し、高温高湿環境下においては疎水性を示す性質を有するため、環境雰囲気が変化してもトナー表面近傍をある程度一定の水分状態に維持することができる。その結果、帯電性能の環境変動差を小さく抑制することができ、従って、安定的に高画質の画像を形成することができる。
R3 は、水素原子または置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す。この炭素数1〜4のアルキル基に置換し得る基としては、例えば、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基などが挙げられる。R3 は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
Xは、酸素原子または単結合を示す。
Yは、置換もしくは未置換の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基または単結合を示す。この炭素数1〜4のアルキレン基に置換し得る基としては、例えば、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基などが挙げられる。Yは、メチレン基であることが好ましい。
Arは置換または未置換のアリール基を示す。アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基などが挙げられ、また、アリール基に置換し得る基としては、例えば、水酸基、メトキシ基などが挙げられる。Arは上記一般式(2)で表わされる基であることが、重合反応性の観点から好ましい。一般式(2)中、R4 は、水素原子または置換もしくは未置換の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。この炭素数1〜4のアルキル基に置換し得る基としては、例えば、アリール基などが挙げられる。R4 が複数存在する場合には、R4 は同一のものであっても異なるものであってもよい。R4 は特に水素原子が好ましく、R4 が複数存在する場合には、少なくとも1つのR4 が水素原子であることが好ましい。R4 が水素原子であること、すなわち、フェニルアラニンの骨格の末端に水酸基が導入されることにより、紙の繊維に対する化学的な親和力を高くすることができ、その結果、紙への接着性が高くなり低温定着性が向上する。nは0〜3の整数であり、好ましくは1〜2である。
アミノ酸は、L−体であってもD−体であってもよく、これらの混合物(ラセミ体)であってもよいが、生分解性の観点からは、L−体であることが好ましい。
アミノ酸またはアミノ酸エステルと、メタクリロイル酸またはその誘導体との反応は、水系媒体、メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素溶媒やTHF、アセトニトリル、DMFなどの非プロトン性極性溶媒などの非水系媒体、または、これらの混合溶媒中で、−20〜40℃程度で、1〜24時間程度行われる。また、反応に際して、通常は、等量のトリエチルアミン、t−BuOK、K2 CO3 、Na2 CO3 、NaOHなどの塩基を触媒として添加することが好ましい。以上のような反応の具体例として、フェニルアラニンとメタクリロイルクロライドとの反応を下記反応式(1)に示す。なお、下記反応式(1)において、R1 は、一般式(1)におけるR1 と同義である。
特定の単量体の含有量が上記範囲内であることにより、十分な低温定着性を有すると共に、帯電性能の環境変動差を小さく抑制することができる。
特定の重合体のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、耐熱保管性が十分に得られる。
具体的には、測定試料(特定の重合体)4.5mgをアルミニウム製パン「KIT No.0219−0041」に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行った。ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度として示す。なお、1st.Heat昇温時は200℃にて5分間保持した。
具体的には、装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料(特定の重合体)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
結着樹脂が他の樹脂との混合物である場合においては、他の樹脂は、結着樹脂中10〜40質量%であることが好ましい。
本発明に係るトナー粒子が着色剤を含有するものとして構成される場合において、着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイト等が挙げられる。
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等の染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等の顔料が挙げられる。
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等の染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等の顔料が挙げられる。
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等の染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76等の顔料が挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、本発明に係るトナー粒子が磁性粉を含有するものとして構成される場合において、磁性粉としては、例えばマグネタイト、γ−ヘマタイト、または各種フェライト等を使用することができる。
磁性粉の含有割合は、トナー粒子中10〜500質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜200質量%である。
また、本発明に係るトナー粒子が離型剤を含有するものとして構成される場合において、離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、パラフィン、合成エステルワックス等が挙げられ、特に、低融点および低粘度であることから、合成エステルワックスを用いることが好ましく、合成エステルワックスとしてベヘン酸ベヘニル、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等を用いることが特に好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー粒子中1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量%である。
また、本発明に係るトナー粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成される場合において、荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ、無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤および負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー粒子中0.01〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明のトナーのガラス転移温度が上記範囲内であることにより、耐熱保管性が十分に得られる。
具体的には、測定試料(トナー)4.5mgをアルミニウム製パン「KIT No.0219−0041」に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行った。ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度として示す。なお、1st.Heat昇温時は200℃にて5分間保持した。
まず、20℃、50%RHの環境下において、測定試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所製)によって3820kg/cm2 の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作成し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、結着樹脂の軟化点とされる。
トナーの平均粒径は、例えば体積基準のメジアン径で4〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは6〜9μmとされる。
体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
本発明のトナーは、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.950〜0.980であることが好ましい。
本発明において、トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、以上のようなトナーにおいて、特定の単量体がバイオマス材料、すなわちアミノ酸由来のモノマーであることから、特定の重合体は植物由来の原料から得ることができるので、環境負荷を低く抑制することができる。
本発明のトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練・粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、乳化重合凝集法、ミニエマルション重合凝集法、その他の公知の方法等を挙げることができるが、特に、生産時のエネルギーコスト削減の観点から、水系媒体において少なくとも特定の単量体を用いて乳化重合またはミニエマルション重合を行うことにより、特定の重合体を含有する結着樹脂よりなる微粒子(以下、「樹脂微粒子」ともいう。)を調製し、当該樹脂微粒子を必要に応じて他のトナー粒子構成成分の微粒子と共に凝集、融着する乳化重合凝集法を用いることが好ましい。また、特開2010−191043号公報に開示される懸濁重合法によってトナーを製造する方法も好ましく採用することができる。
(1A)水系媒体中において結着樹脂を形成すべき特定の単量体および必要に応じて他の重合性単量体にラジカル重合開始剤を作用させることにより樹脂微粒子を得る樹脂微粒子重合工程、
(1B)必要に応じて、着色剤による微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)の分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
(2)樹脂微粒子および着色剤微粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い、会合粒子を形成する会合工程、
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナーを形成する熟成工程、
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程、
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程、
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
から構成される。
また、トナー粒子中に荷電制御剤を含有させる方法としては、上記に示した離型剤を含有させる方法と同様の方法を挙げることができる。
この樹脂微粒子重合工程は、具体的には、例えば、水系媒体中に特定の単量体および必要に応じて他の重合性単量体を添加し、機械的エネルギーを付与して分散させて油滴を形成させておき、この状態において特定の単量体をラジカル重合反応することにより、大きさが例えば体積基準のメジアン径で50〜300nm程度の樹脂微粒子を形成するものである。
樹脂微粒子重合工程においては、水系媒体中に微粒子を安定に分散させるために、適宜の分散安定剤を添加することができる。
分散安定剤としては、例えばリン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の一般に界面活性剤として使用されるものも分散安定剤として使用することができる。
このような界面活性剤としては、従来公知の種々のイオン性界面活性剤やノニオン系界面活性剤等を用いることができる。
イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルフォン酸ナトリウム、3,3−ジスルフォンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルフォン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルフォン酸ナトリウム等のスルフォン酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等の硫酸エステル塩;脂肪酸塩等が挙げられる。
また、ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
樹脂微粒子重合工程において使用される重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスシアノ吉草酸等の水溶性重合開始剤や、過酸化水素−アスコルビン酸のような水溶性レドックス重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等の油溶性重合開始剤を用いることができる。
樹脂微粒子重合工程においては、特定の重合体の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、テトラクロロメタン等を挙げることができる。
この着色剤微粒子分散液調製工程は、トナー粒子として着色剤を含有するものを所望する場合に必要に応じて行う工程であって、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤微粒子は、分散した状態で体積基準のメジアン径が10〜300nmとされることが好ましく、さらに好ましくは100〜200nm、特に好ましくは100〜150nmである。
着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定されるものである。
会合工程において使用される凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の二価の金属塩;鉄、アルミニウム等の三価の金属塩等が挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のトナー粒子は、そのままで本発明のトナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー粒子100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、当該トナーのキャリアに対する混合量は、2〜10質量%であることが好ましい。
トナーとキャリアを混合する混合装置は、特に限定されるものではなく、ナウターミキサー、WコーンおよびV型混合機等が挙げられる。
キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなるバインダー型キャリア等用いてもよい。
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
本発明のトナーは、圧力を付与すると共に加熱することができる熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法に好適に用いることができる。特に、定着工程における定着温度が、定着ニップ部における加熱部材の表面温度において80〜110℃、好ましくは80〜95℃となる温度とされる比較的低温の定着温度において定着する画像形成方法に好適に使用することができる。
さらに、定着線速が200〜600mm/secである高速定着の画像形成方法にも好適に使用することができる。
この画像形成方法においては、具体的には、以上のようなトナーを使用して、例えば感光体上に形成された静電潜像を現像してトナー像を得、このトナー像を画像支持体に転写し、その後、画像支持体上に転写されたトナー像を熱圧力定着方式の定着処理によって定着させることにより、可視画像が形成された印画物が得られる。
本発明のトナーを用いた画像形成方法に使用される画像支持体としては、具体的には、例えば薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙等の各種の印刷用紙等の各種を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
L−フェニルアラニン(16.5g、100mmol)、トリエチルアミン(29.2ml、210mmol)の塩化メチレン(200ml)の溶液に、メタクリロイルクロライド(8.5ml、105mmol)を窒素気流下、0℃で滴下し、室温で一日撹拌した。反応混合物を1N−HCl(200ml×2)、飽和NaHCO3 水溶液(200ml×1)、飽和NaCl(200ml×1)で洗浄後、無水MgSO4 にて乾燥、濾過した。濾液の溶媒を減圧留去し粗生成物を得た。これをn−ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(4/1→2/1)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分取し、13.3g(収率60%)の特定の単量体(1)(N−メタクリロイル−L−フェニルアラニン(上記化合物(1))を得た。
特定の単量体の合成例1において、L−フェニルアラニンの代わりにL−フェニルアラニンメチルエステル塩酸塩(21.6g、100mmol)を使用したことの他は同様にして、14.8g(収率60%)の特定の単量体(2)(N−メタクリロイル−L−フェニルアラニンメチルエステル(上記化合物(2))を得た。
特定の単量体の合成例1において、L−フェニルアラニンの代わりにL−チロシン(18.2g、100mmol)を使用したことの他は同様にして、18.0g(収率75%)の特定の単量体(3)(N−メタクリロイル−L−チロシン(上記化合物(3))を得た。
特定の単量体の合成例1において、L−フェニルアラニンの代わりにL−DOPA(19.9g、100mmol)を使用したことの他は同様にして、20.5g(収率80%)の特定の単量体(4)(3,4−ジヒドロキシ−N−メタクリロイル−L−フェニルアラニン(上記化合物(4))を得た。
(1)樹脂微粒子の重合
(a)第1段重合
機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、特定の単量体(1)560質量部、アクリル酸ブチル240質量部およびメタクリル酸68質量部からなる単量体混合液を1時間混合分散処理することにより、乳化粒子を含む乳化分散液〔1a〕を調製した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃まで昇温させた。
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、液温を75℃とした後、乳化分散液〔1a〕を1時間かけて滴下し、この系を75℃で2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合を行い、樹脂微粒子分散液〔1a〕を調製した。
機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、特定の単量体(1)132質量部、アクリル酸ブチル57質量部、メタクリル酸20質量部、n−オクチルメルカプタン0.5質量部および「WEP−5」(日本油脂社製)82質量部からなる単量体混合液を1時間混合分散処理することにより乳化粒子を含む乳化分散液〔1b〕を調製した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水1270質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、80℃に加熱した後、樹脂微粒子分散液〔1a〕を固形分換算で40質量部添加し、さらに、液温を80℃にした後、乳化分散液〔1b〕を添加した。これに、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃で1時間にわたって加熱、撹拌することによって重合を行うことにより、樹脂微粒子分散液〔1〕を調製した。
n−ドデシル硫酸ナトリウム27質量部をイオン交換水500質量部に添加した溶液を撹拌しながら、着色剤としてカーボンブラック30質量部を徐々に添加し、次いで、機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子分散液〔1〕を調製した。
樹脂微粒子分散液〔1〕1250質量部、イオン交換水2000質量部および着色剤微粒子分散液〔1〕165質量部を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌して会合用溶液を準備した。この会合用溶液の内温を30℃に調整した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.0に調整し、次いで、塩化マグネシウム6水和物52.6質量部をイオン交換水72質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後も昇温を開始し、この系を6分間かけて90℃まで昇温した(昇温速度=10℃/分)。
その状態で、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の平均粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.7μmになった時点で、塩化ナトリウム115質量部をイオン交換水700質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、液温度90℃±2℃にて6時間にわたって加熱、撹拌することにより融着を継続させた。この会合粒子の円形度を「FPIA−2100」(シスメックス社製)にて測定したところ、平均円形度は0.958であった。
次いで、6℃/分の条件で30℃まで冷却し、会合粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の熱風で乾燥することにより、トナー粒子〔1〕を得た。
トナー粒子〔1〕100質量部に対して、ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(数平均一次粒径12nm、疎水化度68)1.0質量部およびn−オクチルシラン処理した二酸化チタン(数平均一次粒径20nm、疎水化度63)0.3質量部からなる外添剤を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池鉱業社製)で外添処理を行うことにより、黒色のトナー〔1〕を製造した。
なお、ヘンシェルミキサーによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分間の条件下で行った。
トナーの製造例1において、特定の単量体(1)およびアクリル酸ブチル(BA)の添加量を表1に示す量に変更したことの他は同様にしてトナー〔2〕〜〔3〕を製造した。
トナーの製造例1において、特定の単量体(1)の代わりに特定の単量体(2)を用い、かつ、特定の単量体(2)およびアクリル酸ブチル(BA)の添加量を表2に示す量に変更したことの他は同様にしてトナー〔4〕〜〔6〕を製造した。
トナーの製造例1において、特定の単量体(1)の代わりに特定の単量体(3)を用い、かつ、特定の単量体(3)およびアクリル酸ブチル(BA)の添加量を表3に示す量に変更したことの他は同様にしてトナー〔7〕〜〔9〕を製造した。
トナーの製造例1において、特定の単量体(1)の代わりに特定の単量体(4)を用い、かつ、特定の単量体(4)およびアクリル酸ブチル(BA)の添加量を表4に示す量に変更したことの他は同様にしてトナー〔10〕〜〔12〕を製造した。
トナーの製造例1において、特定の単量体(1)の代わりに表5に示す種類の特定の単量体を用いると共に、スチレンを添加し、かつ、特定の単量体、スチレンおよびアクリル酸ブチル(BA)の添加量を表5に示す量に変更したことの他は同様にしてトナー〔13〕〜〔16〕を製造した。
得られたトナー〔1〕〜〔16〕のガラス転移温度(Tg)を、示差走査カロリメーター「DSC−7」(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。結果を表6に示す。
具体的には、測定試料(トナー)4.5mgをアルミニウム製パン「KIT No.0219−0041」に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行った。ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度として示す。なお、1st.Heat昇温時は200℃にて5分間保持した。
トナー〔1〕〜〔16〕の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径が60μmのフェライトキャリアを、V字型混合機を用いて、トナー濃度が6質量%となるように混合し、現像剤〔1〕〜〔16〕を作製した。
(1)低温定着性の評価
市販の複写機「bizhub Pro C6500」(コニカミノルタビジネステクロノジーズ社製)について、定着装置における加熱ローラーの表面温度を120〜170℃の範囲で5℃刻みで変更することができるように改造し、現像器には現像剤〔1〕〜〔16〕をそれぞれ搭載した。常温常湿(温度20℃、湿度55%RH)環境下において、A4サイズの上質紙(64g/m2 )に1.5cm×1.5cmのベタ黒画像(トナー付着量2.0mg/cm2 )を定着させる定着実験を、設定される定着温度(加熱ローラーの表面温度)を120℃、125℃・・・と5℃刻みで上昇させるよう変更しながら繰り返し行った。
各定着実験において得られたベタ黒画像を真中から2つに折り曲げて、その画像の剥離性を目視にて観察し、全く画像の剥離のない定着実験のうち、最低の定着温度を定着下限温度とした。この定着下限温度が150℃未満である場合に実用上問題なく、合格であると判断される。結果を表6に示す。
各現像剤〔1〕〜〔16〕を、低温低湿環境(温度10℃、湿度20%RH)と高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)に10時間放置した後、下記電界分離法により現像剤の帯電量をそれぞれ測定した。低温低湿環境と高温高湿環境との差が10μC/g以下である場合に合格であると判断される。結果を表6に示す。
電界分離法による帯電量の測定は以下の手順で行われる。
(1)現像剤30gを50mlのポリ瓶に入れ、当該ポリ瓶を120rpmで20分間回転させる。
(2)上記ポリ瓶より現像剤1gをマグネットローラー上にセットし、予め質量を測定しておいた対向電極をセットする。
(3)トナー極性と同極性に1kVのバイアスを印加し、この状態でマグネットローラーを500rpmで1分間回転させる。
(4)上記マグネットローラーの回転終了後、対向電極間の電圧と質量を測定し、対向電極に付着したトナーの質量M(g)、コンデンサの容量(ここでは1μF)と対向電極間の電圧Vとの積Qにより、トナーの帯電量Q/M(μC/g)を算出する。
市販の複写機「bizhub Pro C6500」(コニカミノルタビジネステクロノジーズ社製)の現像器に現像剤〔1〕〜〔16〕をそれぞれ搭載し、低温低湿環境(温度10℃、湿度20%RH)および高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)において画像を形成した。得られた画像について、下記ドット再現性および細線再現性、並びに、画像濃度の評価を行った。結果を表6に示す。
1200dpiのドット画像と縦横5本/mmの細線画像をA4サイズの上質紙(64g/m2 )に形成し、目視にて下記評価基準によって評価した。
−評価基準−
A:ドット再現性および細線再現性共に著しく優れている
B:ドット再現性および細線再現性共に優れている
C:ドット再現性または細線再現性の低下はあるが、実用上問題ない
D:ドット再現性または細線再現性の低下はあり、実用上問題ある
ベタ黒画像をA4サイズの上質紙(64g/m2 )に形成し、ベタ黒画像部上の濃度を、マクベス社製デンシトメーターを用いてランダムに5点測定し、その平均濃度を算出した。平均濃度が1.30以上、および、低温低湿環境と高温高湿環境との差が0.05以下である場合に合格と判断される。
Claims (6)
- 少なくとも結着樹脂を含有するトナー粒子よりなる静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が下記一般式(1)で表わされる重合性単量体を重合してなる重合体を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
〔一般式(1)中、R1 およびR2 は、各々独立に、水素原子または置換もしくは未置換の炭素数1〜2のアルキル基を示し、R3 は、水素原子または置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す。Xは、酸素原子を示し、Yは、置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Arは置換または未置換のアリール基を示す。〕 - 前記一般式(1)において、Arが下記一般式(2)で表わされる基であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
〔一般式(2)中、R4 は、水素原子または置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは0〜3の整数である。nが2または3の整数である場合、複数のR4 は、同一のものであっても異なるものであってもよい。〕 - 前記一般式(2)において、R4 が水素原子であることを特徴とする請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記重合体が、前記一般式(1)で表わされる重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合してなるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記重合体が、前記一般式(1)で表わされる重合性単量体と、(メタ)アクリル酸エステルと、スチレンとを共重合してなるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記一般式(1)で表わされる重合性単量体の含有量が、前記重合体を形成するためのモノマー全量に対して27〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
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