関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月25日に出願された米国仮出願第61/220,525号及び2009年10月15日に出願された米国仮出願第61/252,094号の優先権を主張し、これらの開示は、すべての目的のため、参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
過敏性腸症候群(IBS)は、すべての胃腸障害の中で最も一般的であり、総人口の10〜20%が罹患し、消化不調の全患者の50%超を占める。しかしながら、研究により、IBSを罹患する者の約10%〜50%のみが実際には医学的治療を求めるにすぎないと示唆されている。IBSの患者は、異なる症状、例えば、主として排便と関連する腹痛、下痢、便秘または交互に生じる下痢及び便秘、腹部膨張、ガス並びに便中の過剰な粘液などを示す。IBS患者の40%超は非常に激しい症状を示すため、仕事を休み、社会生活を削減し、性交を回避し、約束を取消し、旅行を中止し、薬剤投与を受け、さらに、困惑の恐怖のために家に閉じこもらなければならない。米国で試算されたIBSの医療費は、年間80億ドルである(Talley et al.,Gastroenterol.,109:1736−1741(1995))。
IBSの正確な病態生理は、よく理解されていない。そうではあるが、末梢感作として公知の、内臓痛覚に対する感受性の増大が存在する。この感作は、モノアミン(例えば、カテコールアミン及びインドールアミン)、サブスタンスP並びに種々のサイトカイン及びプロスタノイド、例えば、E型プロスタグランジンを含む種々のメディエーターに起因する、一次求心性神経の変換過程の閾値の低減及び増幅の増加を含む(例えば、Mayer et al.,Gastroenterol.,107:271−293(1994)を参照)。また、管腔内の内容物及び/又はガスの異常な処理をもたらす腸運動機能障害が、IBSの原因病理に関与している(例えば、Kellow et al.,Gastroenterol.,92:1885−1893(1987);Levitt et al.,Ann.Int.Med.,124:422−424(1996)を参照)。心理学的な要因もIBS症状の一因であり得、これによって誘因されていなければ、うつ病及び不安を含む障害とともに現れることがある(例えば、Drossman et al.,Gastroenterol.Int.,8:47−90(1995)を参照)。
IBSの原因は、よく理解されていない。腸壁は、食物を胃から腸管に通して直腸に移動させる際に収縮及び弛緩する筋肉の層により覆われている。通常、これらの筋肉は協調されたリズムで収縮及び弛緩する。IBS患者においては、これらの収縮が、典型的には、正常のものよりも強く、正常のものよりも長く持続する。結果として、食物がより速やかに腸を通過させられ、一部の場合においてはガス、膨満感及び下痢を引き起こす。他の場合においては、逆のことが生じ、食物移動が緩慢であり、便が硬くなり、乾燥し、便秘を引き起こす。
IBSの正確な病態生理については、依然として解明されていない。腸管運動障害及び内臓知覚の変化は、症状の発症に対する重要な要因であるとみなされている(Quigley,Scand.J.Gastroenterol.,38(Suppl.237):1−8(2003);Mayer et al.,Gastroenterol.,122:2032−2048(2002))。一方、この病態は、現在、一般に、脳−腸軸の障害と見なされている。近年、腸管感染症及び腸炎の役割についても提案されている。研究により、細菌学的に確認された胃腸炎に引き続いてIBSが発症することが実証された一方、他の研究により、IBSにおける軽度の粘膜炎症(Spiller et al.,Gut,47:804−811(2000);Dunlop et al.,Gastroenterol.,125:1651−1659(2003);Cumberland et al.,Epidemiol.Infect.,130:453−460(2003)を参照)及び免疫活性化(Gwee et al.,Gut,52:523−526(2003);Pimentel et al.,Am.J.Gastroenterol.,95:3503−3506(2000)を参照)の証拠が提供された。腸管フローラもまた関与し、近年の研究により、免疫活性の調節による障害の治療におけるプロバイオティクス生物ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の効力が実証された(O’Mahony et al.,Gastroenterol.,128:541−551(2005))。
視床下部−下垂体−副腎軸(HPA)はヒトにおける中核内分泌ストレス系であり(De Wied et al.,Front.Neuroendocrinol.,14:251−302(1993))、脳と腸の免疫系との重要な結びつきを提供する。この軸の活性化は身体的及び心理的なストレス因子の両方に応答して起こり(Dinan,Br.J.Psychiatry,164:365−371(1994))、これらストレス因子は両方ともIBSの病態生理に関与している(Cumberland et al.,Epidemiol.Infect.,130:453−460(2003))。IBSの患者は、幼児期における性的及び身体的な虐待の割合が高いとともに、成人期におけるストレスの多い人生の出来事の割合が高いことが報告されている(Gaynes et al.,Baillieres Clin.Gastroenterol.,13:437−452(1999))。このような心理社会的なトラウマ又は乏しい認識に基づく対処方法は、症状の重症度、日常の機能及び健康の結果に深い影響を及ぼす。
IBSの病因は、十分に特性決定されていないが、医学界は、患者病歴に基づくIBS診断を補助するためにローマII基準として公知の合意に基づく定義及び基準を策定した。ローマII基準は、1年の期間にわたり3ヵ月の継続的又は反復的な腹痛又は不快感がみられ、これらの腹痛又は不快感が、排便によって軽減され、及び/又は排便頻度若しくは便の硬さの変化及び以下の2種以上を伴うことを要する:排便頻度の変化、便形態の変化、糞便移動の変化、粘液の移動又は膨満感及び腹部膨張。これらの症状を引き起こし得るいかなる構造的又は生化学的な障害も存在しないことも必要な条件である。結果として、ローマII基準は、実質的な患者病歴が存在する場合にのみ使用することができ、他の点でこの症状を説明する、異常な腸構造又は代謝過程が存在しない場合にのみ信頼性がある。同様に、近年、医学界によって策定されたローマIII基準は、症状の特定の組合せ、詳細な患者病歴及び身体検査の提示が存在する場合にのみ使用することができる。
IBSと他の疾患又は障害との症状の類似性に起因して、患者をIBSとして診断することは困難であり得ることが十分に実証されている。実際、IBS症状は、非常に多くの他の腸疾病症状と類似し又は同一であるため、正確な診断が下されるまでに数年を要し得る。例えば、炎症性腸疾患(IBD)の患者は、軽度の徴候及び症状、例えば、膨満感、下痢、便秘及び腹痛を示すが、IBSの患者と区別することは困難であることがある。結果として、IBSとIBDとの症状の類似性によって、迅速で正確な診断が困難になる。IBSとIBDとを区別して診断することが困難であるため、これらの疾患の早期かつ有効な治療が妨げられている。残念ながら、類似症状を示す他の腸疾患又は障害から、IBSを明確に区別するための迅速かつ正確な診断方法は、現在利用可能ではない。本発明はこの要求を満たし、さらに、関連する利点も提供する。
本発明は、個体からの試料が過敏性腸症候群(IBS)と関連するか否かを正確に分類する方法、アッセイ、システム及びコードを提供する。非限定的な例として、本発明は、統計的アルゴリズム及び/又は経験的データを使用して、個体からの試料をIBS試料として分類するのに有用である。同様に、本発明はまた、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法、アッセイ、システム及びコードを提供する。本発明はまた、統計的アルゴリズム及び/又は経験的データの組合せを使用してIBS様の症状を示す1種以上の疾患又は障害を除外し、IBSを確定するのに有用である。したがって、本発明は、IBSの正確な診断予測及び治療決定の指針に有用な予後情報を提供する。
一態様において、本発明は、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、(a)対象からの血液又は血清試料を、試料中に存在するβ−トリプターゼがβ−トリプターゼ及びβ−トリプターゼ結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、β−トリプターゼ結合部分と接触させること;及び(b)複合体のレベルを決定し、これによって試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定することを含む方法を提供する。
別の態様において、本発明は、対象におけるIBSの診断を補助する方法であって、(a)対象からの血液又は血清試料を、試料中に存在するヒスタミンがヒスタミン及びヒスタミン結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、ヒスタミン結合部分と接触させること;及び(b)複合体のレベルを決定し、これによって試料中に存在するヒスタミンのレベルを決定することを含む方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるIBSの診断を補助する方法であって、(a)対象からの血液又は血清試料を、試料中に存在するPGE2がPGE2及びPGE2結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、プロスタグランジンE2(PGE2)結合部分と接触させること;及び(b)複合体のレベルを決定し、これによって試料中に存在するPGE2のレベルを決定することを含む方法を提供する。
一態様において、本発明は、対象における過敏性腸症候群(IBS)の進行又は退縮をモニタリングする方法であって、(a)1回目に対象から採取された第1の血液又は血清試料を、試料中に存在するβ−トリプターゼがβ−トリプターゼ及びβ−トリプターゼ結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、β−トリプターゼ結合部分と接触させること;(b)複合体のレベルを決定し、これによって第1の試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定すること;(c)2回目に対象から採取された第2の血液又は血清試料を、試料中に存在するβ−トリプターゼがβ−トリプターゼ及びβ−トリプターゼ結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、β−トリプターゼ結合部分と接触させること;(d)複合体のレベルを決定し、これによって第2の試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定すること;及び(e)第1の試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルと第2の試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルとを比較することを含み、第2の試料中のβ−トリプターゼのレベルが第1の試料と比べて高ければ、対象におけるIBSの進行を示し、第2の試料中のβ−トリプターゼのレベルが第1の試料と比べて低ければ、対象におけるIBSの退縮を示す方法を提供する。
別の態様において、本発明は、対象における過敏性腸症候群(IBS)の進行又は退縮をモニタリングする方法であって、(a)1回目に対象から採取された第1の血液又は血清試料を、試料中に存在するヒスタミンがヒスタミン及びヒスタミン結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下においてヒスタミン結合部分と接触させること;(b)複合体のレベルを決定し、これによって第1の試料中に存在するヒスタミンのレベルを決定すること;(c)2回目に対象から採取された第2の血液又は血清試料を、試料中に存在するヒスタミンがヒスタミン及びヒスタミン結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、ヒスタミン結合部分と接触させること;(d)複合体のレベルを決定し、これによって第2の試料中に存在するヒスタミンのレベルを決定すること;及び(e)第1の試料中に存在するヒスタミンのレベルと第2の試料中に存在するヒスタミンのレベルとを比較することを含み、第2の試料中のヒスタミンのレベルが第1の試料と比べて高ければ、対象におけるIBSの進行を示し、第2の試料中のヒスタミンのレベルが第1の試料と比べて低ければ、対象におけるIBSの退縮を示す方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、対象における過敏性腸症候群(IBS)の進行又は退縮をモニタリングする方法であって、(a)1回目に対象から採取された第1の血液又は血清試料をプロスタグランジンE2(PGE2)結合部分と、試料中に存在するPGE2がPGE2及びPGE2結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(b)複合体のレベルを決定し、これによって第1の試料中に存在するPGE2のレベルを決定すること;(c)2回目に対象から採取された第2の血液又は血清試料をPGE2結合部分と、試料中に存在するPGE2がPGE2及びPGE2結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(d)複合体のレベルを決定し、これによって第2の試料中に存在するPGE2のレベルを決定すること;及び(e)第1の試料中に存在するPGE2のレベルと第2の試料中に存在するPGE2のレベルとを比較することを含み、第2の試料中のPGE2のレベルが第1の試料と比べて高ければ、対象におけるIBSの進行を示し、第2の試料中のPGE2のレベルが第1の試料と比べて低ければ、対象におけるIBSの退縮を示す方法を提供する。
一態様において、本発明は、1種以上のプロセッサを制御して対象からの血清又は血液試料が過敏性腸症候群(IBS)と関連するか否かを分類するコードを含むコンピュータ読取可能媒体であって、コードは、診断マーカープロファイルを含むデータセットに統計処理を適用して診断マーカープロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するための指示を含み、診断マーカープロファイルは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の診断マーカーのレベルを示すコンピュータ読取可能媒体を提供する。
別の態様において、本発明は、対象からの血清又は血液試料が過敏性腸症候群(IBS)に関連するか否かを分類するシステムであって、(a)診断マーカープロファイルを含むデータセットを生成するように構成されたデータ収集モジュール(診断マーカープロファイルは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを示す);(b)統計処理をデータセットに適用することによってデータセットを処理して診断マーカープロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;及び(c)統計的に導出される判定を表示するように構成されたディスプレイモジュールを含むシステムを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、血液又は血清試料中のβ−トリプターゼを検出する方法であって、(a)固相表面を第1の抗β−トリプターゼ捕捉抗体によりコーティングする工程;(b)固相表面を血液又は血清試料と、試料中に存在するβ−トリプターゼがβ−トリプターゼ及び抗β−トリプターゼ捕捉抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させる工程;(c)β−トリプターゼ及び抗β−トリプターゼ複合体を、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされた第2の検出抗体と、三重複合体を形成するのに好適な条件下で接触させる工程;及び(d)三重複合体を、CPSD発光基質と接触させる工程を含む方法を提供する。
一態様において、本発明は、個体からの試料がIBSと関連するか否かを分類する方法であって、(a)試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出することによって診断マーカープロファイルを決定する工程;及び(b)診断マーカープロファイルに基づくアルゴリズムを使用して試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む方法を提供する。
本発明の種々の方法及びアッセイの好ましい実施形態において、IBSの予測に有用な診断マーカープロファイルを作成するために、表1に示すバイオマーカーの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25種以上の存在又はレベルが検出される。ある例において、本明細書に記載のバイオマーカーは、免疫アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用して分析される。
本発明の一実施形態における用量応答曲線を示す図である。
本発明の一実施形態における用量応答曲線を示す図である。
本発明の一実施形態における標準曲線を示す図である。ウサギ抗ヒトトリプターゼを免疫アッセイプレート上にコーティングし、アッセイ緩衝液(PBS中5%BSA)によってブロッキングした。異なる濃度のヒトトリプターゼ(標準曲線)又はヒト血清試料(アッセイ緩衝液中で1:5及び1:10に希釈)をウェルに添加し、RTにおいて2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、トリプターゼに対するアルカリホスファターゼ(AP)標識McAb(G3)を添加し、RTにおいて2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、AP基質(CSPD)を各ウェルに添加した。発光プレートリーダーを使用して発光を検出した。血清トリプターゼ濃度は、標準曲線を使用して計算した。(トリプターゼ検出範囲0.019〜5000ng/mL。EC50=65ng/mL;正常プール血清中にスパイクされた20ng/mLのトリプターゼについて回収率81.5%)。実施例16参照。
GI対照、IBS−C及びIBS−Dの血清中のトリプターゼ濃度についての棒グラフを説明する図である。
トリプターゼlog値分布についての棒グラフを説明する図である。
トリプターゼデータの密度分析を説明する図である。
GI対照、IBS−C、IBS−D及びIBS−Aの血清中のトリプターゼ濃度についての棒グラフを説明する図である。
本発明の一実施形態におけるヒトトリプターゼの用量応答曲線を説明する図である。
トリプターゼELISAの最適化を説明する図である。(A)異なる量の捕捉抗体についてのトリプターゼ標準曲線の比較(B)検出抗体希釈の最適化(C)異なる量の正常ヒト血清(NHS)の存在下でのトリプターゼ標準曲線の比較。
健常対照(n=139)及びIBSの対象(n=378)からの血清中のトリプターゼレベルを説明する図である。
健常対照に対するIBS患者におけるヒスタミン及びPGE2の血清レベルの増加を説明する図である。
本明細書に同定及び開示されるIBSマーカーから導出される分子経路の一実施形態を説明する図である。
本発明の一実施形態による疾患分類システム(DCS)を説明する図である。
2007年8月14日に出願され、2008年4月10日に公開された米国特許出願公開第2008/0085524号;2007年8月20日に出願され、2008年7月10日に公開された同2008/0166719号は、すべての目的のため参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
発明の詳細な説明
I.序文
患者を過敏性腸症候群(IBS)として診断することは、IBSと他の疾患又は障害との症状の類似性に起因して困難であり得る。例えば、炎症性腸疾患(IBD)である患者は、軽度な徴候及び症状、例えば、膨満感、下痢、便秘及び腹痛を示すが、IBS患者と区別することは困難であり得る。結果として、IBSとIBDとの症状の類似性によって迅速かつ正確な診断が困難になり、疾患の早期かつ有効な治療が妨げられる。
過敏性腸症候群(IBS)の病理は完全には理解されていないが、多くの研究により、IBSは脳−腸軸の調節不全により引き起こされる障害であるという仮説がもたらされている(総説については、Ohman and Simren,Nat Rev Gastroenterol Hepatol.2010 Mar;7(3):163−73参照)。この理論を支持する一つの観察は、マスト細胞の数の増加をIBSと診断された患者の腸粘膜内で見出すことができるという繰り返しの知見である(Guilarte,M.et al,Gut 56,203−209(2007);Walker,M.M.et al,Pharmacol.Ther.29,765−773(2009);Akbar,A.et al,Gut 57,923−929(2008);Barbara,G.et al,Gastroenterology 126,693−702(2004);Barbara,G.et al,Gastroenterology 132,26−37(2007);Cremon,C.et al,Am.J.Gastroenterol.104,392−400(2009);及びO’Sullivan,M.et al,Neurogastroenterol.Motil.,12,449−457(2000))。同様に、一部の研究により、ヒスタミン及びセリンプロテアーゼ(例えば、トリプターゼ)を含むこれらの細胞から放出されるメディエーターのレベルが、IBS患者の結腸粘膜内で見出されることもわかった(Buhner et al.,Gastroenterology 2009 Oct;137(4);Barbara et al.,Gastroenterology,Volume:122,Number:4Suppl.1,Page:A−276,April 2002)。しかしながら、この知見は、他の研究によりこのような相関が存在しないことが報告されているので、依然として議論の的である(Guilarte et al.,Gut 2007 Feb;56(2):203−9)。
IBS患者の結腸粘膜内でのマスト細胞メディエーターのレベルの増加の存在にかかわらず、結腸生検は侵襲的手順であるため、このような相関は、制限された診断値を有する。研究者は、IBS患者の血液/血清中の同様のパターンを非侵襲的診断に十分好適な体液に探索するが、今日まで相関は報告されていない(Lessof et al.,Ann Allergy.1983 Aug;51(2 Pt 2):249−50;Guilarte,M.et al,Gut 56,203−209(2007);Oehman and Simren,Nat Rev Gastroenterol Hepatol.2010 Mar;7(3):163−73)。
有利には、本発明は、他の態様のうち、過敏性腸症候群の診断及び分類のための非侵襲的方法及びアッセイを提供する。ある実施形態において、これらの方法及びアッセイは、IBSの疑いがある又は既にIBSと診断された対象の血液及び/又は血清中の種々のIBSバイオマーカーの存在又は濃度レベルの検出に関する。好ましい実施形態において、本方法は、対象からの血液及び血清試料中のβ−トリプターゼ及び/又はヒスタミン及び/又はプロスタグランジンE2を検出することを含む。追加のマーカーを使用することもできる。
本発明は、部分的には、ある診断マーカー(例えば、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2、ヒスタミン、サイトカイン、成長因子、抗好中球抗体、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体、抗菌性抗体、ラクトフェリンなど)の存在又はレベルを検出すること単独により、又は1つ以上の質問(例えば、「あなたは現在何らかの症状が経験していますか?」)に対する個体の回答に基づくIBS関連症状の存在又は重症度を同定することの組合せによって、個体からの生物試料をIBS試料として分類する精度を、顕著に改善することができるという驚くべき発見に基づく。図12は、本明細書において同定及び開示されたIBSマーカーによって導出された分子経路の非限定的な例を示す。一部の態様において、本発明は、IBS試料又は非IBS試料としての試料の分類を補助するため、統計的アルゴリズムを使用する。他の態様において、本発明は、IBSの分類を補助するため、他の腸疾患(例えば、IBD)を除外し、次いで非IBD試料を分類する統計的アルゴリズムを使用する。
II.定義
本明細書において使用される以下の用語は、特に記載のない限り、これらに帰属する意味を有する。
「分類すること」という用語は、疾患状態を有する試料を「関連づけること」又は「カテゴライズすること」を含む。ある例において、「分類すること」は、統計的証拠、経験的証拠又はこの両方に基づく。ある実施形態において、分類する方法及びシステムは、既知の疾患状態を有する試料の、いわゆるトレーニングセットを使用する。トレーニングデータセットは、確立されると、未知試料の特徴を比較する基準、モデル又は雛形として機能して試料の未知の疾患状態を分類する。ある例において、試料を分類することは、試料の疾患状態を診断することに通じる。ある他の例において、試料を分類することは、試料の疾患状態を別の疾患状態から区別することに通じる。
「過敏性腸症候群」又は「IBS」という用語は、限定されるものではないが、典型的には、いかなる明白な構造的異常も存在せず、腹痛、腹部不快感、排便パターンの変化、便通の消失又はより頻繁な便通、下痢及び便秘を含む1種以上の症状を特徴とする機能的腸障害の群を含む。症状の顕著さに応じて少なくとも3種のIBS型が存在する:(1)下痢優勢型(IBS−D);(2)便秘優勢型(IBS−C)及び(3)交互に生じる排便パターンを有するIBS(IBS−A)。IBSはまた、症状の混合型としても発症し得る(IBS−M)。種々なIBSの臨床サブタイプ、例えば、感染後IBSも存在する(IBS−PI)。
「試料を転換すること」という用語は、マーカーを抽出するため、又は本明細書に定義のマーカーを変化させ、若しくは改変するための試料の物理的及び/又は化学的変化を含む。マーカーのレベル又は濃度を計測するための試料又はマーカーの抽出、操作、化学的沈殿、ELISA、複合体化、免疫抽出、物理的又は化学的改変は、すべて転換を構成する。試料又はマーカーが転換工程前後で同一でない限り、変化又は改変が転換である。
「試料」という用語は、個体から得られる任意の生物試験体を含む。本発明における使用に好適な試料は、限定されるものではないが、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(すなわち、便)、涙液及び他の任意の体液又は組織試料(例えば、生検物)、例えば、小腸又は結腸試料並びにこれらの細胞抽出物(例えば、赤血球細胞抽出物)を含む。好ましい実施形態において、試料は、血液、血漿又は血清試料である。より好ましい実施形態において、試料は、血清試料である。血清、唾液及び尿などの試料の使用は、当分野において周知である(例えば、Hashida et al.,J.Clin.Lab.Anal.,11:267−86(1997)参照)。当業者は、血清試料などの試料をマーカーレベルの分析の前に希釈することができることを認識している。
「バイオマーカー」又は「マーカー」という用語は、個体からの試料をIBS試料として分類するため又は個体からの試料におけるIBS様症状と関連する1種以上の疾患又は障害を除外するために使用することができる任意の診断マーカー、例えば、生化学マーカー、血清学マーカー、遺伝子マーカー又は他の臨床的若しくは超音波検査上の特徴を含む。「バイオマーカー」又は「マーカー」という用語はまた、IBSをこの種々の型又は臨床サブタイプの1種に分類するために使用することができる任意の分類マーカー、例えば、生化学マーカー、血清学マーカー、遺伝子マーカー又は他の臨床的若しくは超音波検査上の特徴を包含する。本発明における使用に好適な診断マーカーの非限定的な例は、以下に記載され、サイトカイン、成長因子、抗好中球抗体、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体、抗菌性抗体、抗組織トランスグルタミナーゼ(tTG)抗体、リポカリン、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子(TIMP)、アルファ−グロブリン、アクチン切断タンパク質、S100タンパク質、フィブリノペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、タキキニン、グレリン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプターゼ、エラスターゼ)、プロスタグランジン(例えば、PGE2)、ヒスタミン、C反応性タンパク質(CRP)、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、セロトニン再取り込み輸送体(SERT)、トリプトファンヒドロキシラーゼ−1、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT))、ラクツロースなどを含む。分類マーカーの例は、限定されるものではないが、レプチン、SERT、トリプトファンヒドロキシラーゼ−1、5−HT、胃幽門洞粘膜タンパク質8、ケラチン−8、クローディン−8、ゾヌリン、コルチコトロピン放出ホルモン受容体1(CRHR1)、コルチコトロピン放出ホルモン受容体2(CRHR2)、トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)などを含む。一部の実施形態において、診断マーカーは、IBSをこの種々の型又は臨床サブタイプの1種に分類するために使用することができる。他の実施形態において、分類マーカーは、試料をIBS試料として分類するため、又はIBS様症状と関連する1種以上の疾患及び障害を除外するために使用することができる。当業者は、本発明における使用に好適な追加の診断及び分類マーカーについて理解する。
ある例において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適なハイブリダイゼーションアッセイ及び増幅ベースアッセイの例は、上記のものである。ある他の例において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、免疫アッセイ又は免疫組織化学アッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適な免疫アッセイ及び免疫組織化学アッセイの非限定的な例は、本明細書に記載のものである。
本明細書において使用される「プロファイル」という用語は、疾患又は障害、例えば、IBS又はIBDと関連する明確な特徴又は特性を表す、任意のデータのセットを含む。本用語は、試料中の1種以上の診断マーカーを分析する「診断マーカープロファイル」、個体が経験している又は経験した1種以上のIBS関連臨床因子(例えば、症状)を同定する「症状プロファイル」及びこれらの組合せを含む。例えば、「診断マーカープロファイル」は、IBS及び/又はIBDと関連する1種以上の診断マーカーの存在又はレベルを表すデータのセットを含むことができる。同様に、「症状プロファイル」は、IBS及び/又はIBDと関連する1種以上の症状の存在、重症度、頻度及び/又は持続期間を表すデータのセットを含むことができる。
一部の実施形態において、上記の診断マーカー及び/又は診断プロファイルの1種以上を計測するためのパネルは、試料をIBS試料又は非IBS試料として分類するために構築及び使用することができる。当業者は、例えば、個体試料のアリコート又は希釈物を使用して複数の診断マーカーの存在又はレベルを同時に又は連続的に決定することができることを認識する。ある例において、個体試料中の特定の診断マーカーのレベルは、これが比較試料(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料)又は試料群中の同一マーカーのレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%又は1000%上回る(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料の比較群中の同一マーカーの中央レベルを上回る)場合、上昇しているとみなされる。ある他の例において、個体試料中の特定の診断マーカーのレベルは、これが比較試料(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料)又は試料群中の同一マーカーのレベルを少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%下回る(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料の比較群中の同一マーカーの中央レベルを下回る)場合、低下しているとみなされる。
「個体」、「対象」又は「患者」という用語は、典型的にはヒトを指すが、例えば、他の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む他の動物も指す。
本明細書において使用される「実質的に同一のアミノ酸配列」という用語は、天然に生じるアミノ酸配列と類似するが、同一ではないアミノ酸配列を含む。例えば、天然に生じるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列は、天然に生じるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列と関連する1種以上の改変、例えば、アミノ酸付加、欠失又は置換を有することができ、但し、この改変された配列が実質的に、天然に生じるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の少なくとも1種の生物学的活性、例えば、免疫活性を保持することを条件とする。アミノ酸配列間の実質的な類似性の比較は、通常、約6〜100残基間、好ましくは約10〜100残基間、より好ましくは約25〜35残基間の配列を用いて実施される。本発明のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質若しくはこの断片の特に有用な改変は、例えば、安定性の増加をもたらす改変である。1個以上のD型アミノ酸の取り込みは、ポリペプチド又はポリペプチド断片の安定性の増加において有用な改変である。同様にリジン残基の欠失又は置換は、ポリペプチド又はポリペプチド断片を分解から保護することによって安定性を増加させることができる。
「IBSの進行又は退縮をモニタリングする」という用語は、個体の疾患状態(例えば、IBSの存在又は重症度)を決定するための本発明の方法、システム及びコードの使用を含む。ある例において、アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム(learning statistical classifier system))の結果は、より早期において同一個体について得られた結果と比較される。一部の実施形態において、本発明の方法、システム及びコードは、例えば、診断マーカーの分析及び/若しくはこの同定又はIBS関連症状に基づき、個体においてIBSが急速又は緩慢に進行する可能性を決定することによって、IBSの進行を予測するために使用することができる。他の実施形態において、本発明の方法、システム及びコードは、例えば、診断マーカーの分析及び/若しくはこの同定又はIBS関連症状に基づき、個体においてIBSが急速又は緩慢に退縮する可能性を決定することによって、IBSの退縮を予測するために使用することができる。
「IBSの治療に有用な薬物を服用している個体における薬物の効力をモニタリングすること」という用語は、IBSを治療する治療剤が投与された後、この治療剤の有効性を決定するための本発明の方法、システム及びコードを使用することを含む。ある例において、アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)の結果は、治療剤の使用開始前又は治療のより早期の段階における同一個体について得られた結果と比較される。本明細書において使用されるIBSの治療に有用な薬物は、個体の健康を改善するために使用される任意の化合物又は薬物であり、限定されるものではないが、IBS薬、例えば、セロトニン作動薬、抗うつ剤、塩化物チャネル活性化因子、クロライドチャネル遮断薬、グアニル酸シクラーゼアゴニスト、抗生物質、オピオイド、ニューロキニンアンタゴニスト、抗痙攣又は抗コリン作動薬、ベラドンナアルカロイド、バルビツール酸塩、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)アナログ、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、プロバイオティクス、これらの遊離塩基、医薬的に許容されるこれらの塩、これらの誘導体、これらのアナログ及びこれらの組合せを含む。
「治療有効量又は用量」という用語は、治療効果の達成が必要とされる対象における治療効果を達成することができる薬物の用量を含む。例えば、IBSの治療に有用な薬物の治療有効量は、IBSと関連する1種以上の症状を予防又は軽減することができる量であり得る。正確な量は、当業者が公知技術を使用して確認することができる(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms,Vols.1−3(1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkins(2003)参照)。
III.実施形態の説明
本発明は、対象における過敏性腸症候群の診断を補助する方法、システム及びコードを提供する。同様に、本発明は、個体からの試料が過敏性腸症候群(IBS)と関連するか否かを正確に分類する方法、システム及びコードを提供する。一部の実施形態において、本発明は、統計的アルゴリズム(例えば、学習統計的分類子システム)及び/又は経験的データ(例えば、IBSマーカーの存在又はレベル)の使用に依存する。本発明はまた、統計的アルゴリズム及び/又は経験的データの組合せを使用してIBS様症状を示す1種以上の疾患又は障害を除外し、IBSを確定するために有用である。したがって、本発明はIBSの正確な診断的予測及び治療決定の指針に有用な予後情報を提供する。
A.過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法
一態様において、本発明は、表1に示すバイオマーカーの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25種以上のレベルを決定することによって、対象における過敏性腸症候群の診断を補助する方法を提供する。好ましい実施形態において、本明細書において提供される方法は、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの検出によるものである。
ある実施形態において、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種のバイオマーカーのレベルを、脳由来神経栄養因子(Brain-Derived Neurotropic Factor;BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(Neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin;NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TNF-related Weak Inducer of Apoptosis;TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(Growth-Related Oncogene Alpha;GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(Interleukin-1 Beta;IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase-1;TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のバイオマーカーとともに決定することによって、対象における過敏性腸症候群の診断を補助する方法が提供される。
さらに他の実施形態において、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種のバイオマーカーのレベルを、サイトカイン(例えば、IL−8、IL−1β、TWEAK、レプチン、OPG、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4及び/又はCXCL7/NAP−2)、成長因子(例えば、EGF、VEGF、PEDF、BDNF及び/又はSDGF)、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA及び/又はSAPPA)、ASCA(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG及び/又はASCA−IgM)、抗菌性抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体及び/又は抗I2抗体)、ラクトフェリン、抗tTG抗体、リポカリン(例えば、NGAL、NGAL/MMP−9複合体)、MMP(例えば、MMP−9)、TIMP(例えば、TIMP−1)、アルファ−グロブリン(例えば、アルファ−2−マクログロブリン、ハプトグロビン及び/又はオロソムコイド)、アクチン切断タンパク質(例えば、ゲルゾリン)、S100タンパク質(例えば、カルグラニュリン)、フィブリノペプチド(例えば、FIBA)、CGRP、タキキニン(例えば、サブスタンスP)、グレリン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ホルモン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のバイオマーカーとともに決定することによって、対象における過敏性腸症候群の診断を補助する方法が提供される。さらに他の実施形態において、他の診断マーカー、例えば、抗ラクトフェリン抗体、L−セレクチン/CD62L、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、抗U1−70kDa自己抗体、閉鎖帯1(ZO−1)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、血清アミロイドA、ガストリン及びこれらの組合せなどの存在又はレベルを検出することもできる。
別の態様において、本発明は、個体からの試料がIBSと関連するか否かを分類する方法であって、(a)試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出することによって、診断マーカープロファイルを決定すること;(b)診断マーカープロファイルに基づく第1の統計的アルゴリズムを使用して試料をIBD試料又は非IBD試料として分類すること;及び試料が非IBD試料として分類された場合、(c)工程(a)において決定されたものと同一の診断マーカープロファイル又は異なる診断マーカープロファイルに基づく第2の統計的アルゴリズムを使用して非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む方法を提供する。
IBDを除外するために使用される診断マーカーは、IBSを確定するために使用される診断マーカーと同一であってよい。あるいは、IBDを除外するために使用される診断マーカーは、IBSを確定するために使用される診断マーカーと異なっていてよい。
一部の実施形態において、第1にIBDを除外し(すなわち、試料をIBD試料又は非IBD試料として分類し)、次いでIBSを確定する(すなわち、非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する)方法は、症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づく第1の統計的アルゴリズムを使用して試料をIBD試料又は非IBD試料として分類すること;及び試料が非IBD試料として分類された場合、工程(a)において決定されたものと同一のプロファイル又は異なるプロファイルに基づく第2の統計的アルゴリズムを使用して非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む。当業者は、診断マーカープロファイル及び症状プロファイルを同時に又は任意の順序で連続的に決定することができることを認識する。
追加の実施形態において、本発明の方法は腸炎を除外することをさらに含む。腸炎の非限定的な例は、急性炎症、憩室炎、回腸嚢肛門吻合、顕微鏡的大腸炎、感染性下痢及びこれらの組合せを含む。一部の例において、腸炎はC反応性タンパク質(CRP)、ラクトフェリン、カルプロテクチン又はこれらの組合せの存在又はレベルに基づき除外される。
本明細書に記載のとおり、本発明の方法は、臨床医、例えば、胃腸科専門医又は一般開業医にIBS分類結果を送付することをさらに含むことができる。本方法は、個体がIBSを有する確率の形式で診断を提供することもできる。例えば、個体は、約0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上のIBSを有する確率を有し得る。一部の例において、本発明の方法は、個体におけるIBSの予後をさらに提供する。例えば、予後は、外科処置、IBSのカテゴリー若しくは臨床サブタイプの発現、1種以上の症状の発現又は疾患からの回復であり得る。
1.β−トリプターゼ
一態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、(a)対象からの血液又は血清試料を、試料中に存在するβ−トリプターゼがβ−トリプターゼ及びβ−トリプターゼ結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、β−トリプターゼ結合部分と接触させること;及び(b)複合体のレベルを決定し、これによって試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定することを含む方法が提供される。一実施形態において、本方法は、(c)試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルと対照レベルとを比較することをさらに含み、対照レベルに対する試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルの差が、対象がIBSである可能性の増加を示す。
特定の実施形態において、本発明は、IBSの診断を補助するアッセイであって、(a)β−トリプターゼが含有される試料を、β−トリプターゼがβ−トリプターゼ及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
ある実施形態において、対照レベルは、健常対象からの血液若しくは血清試料中に存在するβ−トリプターゼのレベル又は健常対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するβ−トリプターゼの平均レベルである。他の実施形態において、対照レベルは、非IBS対象からの血液若しくは血清試料中に存在するβ−トリプターゼのレベル又は非IBS対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するβ−トリプターゼの平均レベルである。別の実施形態において、対照レベルは、疾患対象からの血液若しくは血清試料中に存在するβ−トリプターゼのレベル又は疾患対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するβ−トリプターゼの平均レベルである。対照レベルを決定するために有用な疾患対象の非限定的な例は、IBSの対象、非IBS胃腸疾患の対象、炎症性腸疾患(IBD)の対象、潰瘍性大腸炎(UC)の対象、クローン病(CD)の対象、セリアック病の対象、胃食道逆流症(GERD)の対象、癌の対象、胃腸管の癌の対象、胃癌の対象、小腸又は大腸癌の対象などを含む。
対照レベルが1人以上の健常対象の血液又は血清試料中のβ−トリプターゼのレベルである場合、対照レベルに対する試料中に存在する対象からのβ−トリプターゼのレベルの増加が、対象がIBSである可能性の増加を示す。逆に、対照が1人以上の健常対象である場合、対象からの試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルが対照レベルと比べて同様であるか又は低減していれば、対象がIBSでない可能性の増加を示す。
対照レベルが1人以上のIBSの対象の血液又は血清試料中のβ−トリプターゼのレベルである場合、対象からの試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルが対照レベルと比べて同様であるか又は増加していれば、対象がIBSである可能性の増加を示す。逆に、対照が1人以上のIBSの対象である場合、対照レベルに対する試料中に存在するβ−トリプターゼの対象からの低減したレベルが、対象がIBSでない可能性の増加を示す。
本発明のある態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、血液又は血清試料中のβ−トリプターゼ並びにヒスタミン及びプロスタグランジンE2(PGE2)から選択される少なくとも1種の追加の血液又は血清バイオマーカーを検出することを含む方法が提供される。一実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及びヒスタミンのレベルを検出又は決定することを含む。別の実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及びPGE2のレベルを検出又は決定することを含む。第3の実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ、ヒスタミン及びPGE2のレベルを検出又は決定することを含む。好ましくは、β−トリプターゼ、ヒスタミン及び/又はPGE2は、同一の血液又は血清試料から検出されるが、ある例において、バイオマーカーは、同一個体から採取された異なる血液又は血清試料中で、例えば、同時に又は異なる時間において検出することができる。ある実施形態において、バイオマーカーは、対象からの血液又は血清試料の異なるアリコートを用いて実施される別個のアッセイにおいて検出することができる。他の実施形態において、バイオマーカーは、単一マルチプレックス検出アッセイ、例えば、Luminex(著作権)xMAP(著作権)アッセイにおいて検出することができる。
本発明のさらに他の態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、血液又は血清試料中のβ−トリプターゼ並びに脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の追加のバイオマーカーを検出することを含む方法が提供される。ある実施形態において、追加のバイオマーカーの少なくとも2種を検出することができる。他の実施形態において、追加のバイオマーカーの少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10種を検出することができる。
少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出又は決定するために使用される試料は、典型的には、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(すなわち、便)、涙液及び任意の他の体液又は組織試料(すなわち、生検物)、例えば、小腸若しくは結腸の試料である。好ましくは、試料は、血清、全血、血漿、糞便、尿又は組織生検物である。ある例において、本発明の方法は、試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出又は決定する前に個体からの試料を得ることをさらに含む。好ましい実施形態において、追加のバイオマーカーは、血液又は血清試料から検出することができる。他の実施形態において、追加のバイオマーカーは、糞便試料又は対象の腸からの生検物から検出することができる。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの脳由来神経栄養因子(BDNF)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、脳由来神経栄養因子(BDNF)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、脳由来神経栄養因子(BDNF)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からのTNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からのインターロイキン−1ベータ(IL−1β)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの抗CBir−1抗体(CBir1)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗CBir−1抗体(CBir1)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗CBir−1抗体(CBir1)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ及び生物試料からの抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのβ−トリプターゼ並びに血液又は血清試料、糞便試料又は対象の腸の生検物からの脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)及び抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)のすべてのレベルを検出又は決定することを含む。
ある実施形態において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適なハイブリダイゼーションアッセイの例は、限定されるものではないが、ノザンブロッティング、ドットブロッティング、RNアーゼプロテクション及びこれらの組合せを含む。本発明の方法における使用に好適な増幅ベースアッセイの非限定的な例は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含む。
ある他の実施形態において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、免疫アッセイ又は免疫組織化学アッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適な免疫アッセイの非限定的な例は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。本発明の方法における使用に好適な免疫組織化学アッセイの例は、限定されるものではないが、免疫蛍光アッセイ、例えば、直接的蛍光抗体アッセイ、間接的蛍光抗体(IFA)アッセイ、抗補体免疫蛍光アッセイ及びアビジン−ビオチン免疫蛍光アッセイを含む。他のタイプの免疫組織化学アッセイは、免疫ペルオキシダーゼアッセイを含む。
好ましい実施形態において、β−トリプターゼの存在又はレベルは、サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定される。サンドイッチELISAにおける抗体の捕捉及び検出のため、任意の好適な抗体ペアを使用することができる。当業者は、アッセイに適切な抗体ペアを選択する方法を理解及び認識する。一般に、対象となる標的、例えば、β−トリプターゼに、第1の(捕捉)抗体の結合が第2の(検出)抗体を干渉しないように、異なるエピトープにおいて結合する2種の抗体が選択される。ある実施形態において、複合体の検出を補助するため、検出抗体は、酵素、例えば、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされている。他の実施形態において、検出抗体に結合する酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)にコンジュゲートされた二次抗体をアッセイにおいて使用することができる。一般に、次いで複合体は、発光基質、例えば、Ultra LITE(商品名)(NAG Research Laboratories);SensoLyte(商標)(AnaSpec);SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Scientific);SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific);CPSD(ジナトリウム3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルホスフェート;Tropix,Inc)の使用によって検出される。好ましい実施形態において、β−トリプターゼサンドイッチELISAは、アッセイ感度を向上させるため、検出抗体としてのアルカリホスファターゼにコンジュゲートされた抗トリプターゼ抗体及びCPSD含有発光基質の使用を含む。CPSD基質は、化学発光検出系、例えば、ELISA−Light(商品名)System(Applied Biosystems)に見出すことができる。特に好ましい実施形態において、サンドイッチELISAにおいて使用される検出抗体は、抗トリプターゼ抗体G3(sc−33676;Santa Cruz Biotechnology,Inc.;Santa Cruz,CA)である。
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、対象についての症状プロファイルを決定する工程をさらに含み、症状プロファイルは、対象における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される。好ましい実施形態において、本方法は、(d)対象についての症状プロファイルを決定すること(症状プロファイルは、対象における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);及び(e)IBSバイオマーカーのレベル及びシステムプロファイルに基づくアルゴリズムを使用して対象がIBSであること又はIBSでないことを診断することを含む。好ましい実施形態において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法は、例えば、症状プロファイルと場合により組み合わせてβ−トリプターゼ又は上記のこの組合せについての診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);並びに診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む。
症状プロファイルは、典型的には、胸痛、胸部不快感、胸焼け、普通量の食事後の不快な膨満感、普通量の食事の完食不能、腹痛、腹部不快感、便秘、下痢、膨満感、腹部膨張、疼痛又は不快感を有することに伴う消極的な思考又は感情及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の症状の存在及び重症度を同定することによって決定される。
好ましい実施形態において、IBSを予測するのに有用な症状プロファイルを作成するため、本明細書に記載の症状の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上の存在又は重症度が同定される。ある例において、質問票(questionnaire)又は他の形式の記述、口頭若しくは電話調査が、症状プロファイルを生成するために使用される。質問票又は調査は、典型的には、回答者から現在及び/又は最近のIBS関連症状について情報を収集する目的のための標準化された一連の質問及び回答を含む。
一部の実施形態において、症状プロファイルは、質問票又は調査において示された質問に対する回答のすべて又は一部を編集及び/又は分析することによって生成される。他の実施形態において、症状プロファイルは、以下の質問:「あなたは現在何らかの症状を経験していますか?」に対する個人の回答に基づき生成される。これらの実施形態のいずれかに従って作成される症状プロファイルは、IBS予測の精度を改善するため、本明細書に記載のアルゴリズムベースの方法において、診断マーカープロファイルと組み合わせて使用することができる。
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、対象がIBSである見込みを提供することをさらに含む。ある実施形態において、本方法は、対象が、IBSの可能性が極めて低い、IBSの可能性が低い、IBSの可能性が高い、又はIBSの可能性が極めて高いという見込みを提供することを含むことができる。関連の実施形態において、IBS試料又は非IBS試料と分類された試料がIBSの対象からのものである見込みを提供することをさらに含む方法が提供される。ある実施形態において、本方法は、試料が、IBSの可能性が極めて低い、IBSの可能性が低い、IBSの可能性が高い、又はIBSの可能性が極めて高い対象からのものである見込みを提供することを含むことができる。
他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)として分類することをさらに含む。関連の実施形態において、試料をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)試料としてさらに分類する方法が本明細書において提供される。
一実施形態において、本発明は、IBS−Cからの、IBS−D及びIBS−Aの区別を補助するアッセイであって、(a)β−トリプターゼが含有される試料を、β−トリプターゼがβ−トリプターゼ及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
一部の例において、IBS−Cからの、IBS−D及びIBS−Aの区別を補助するアッセイは、試料中のプロスタグランジン(例えば、PGE2);及び/又はヒスタミンの存在又はレベルを検出することをさらに含む。
さらに他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSでない対象を、IBDである、IBDでない、セリアック病である、セリアック病でない、健常対象である、又は胃腸疾患でないとして診断することをさらに含む。関連の実施形態において、非IBS試料をIBD試料、非IBD試料、健常試料、非胃腸疾患試料、セリアック試料などとしてさらに分類する方法が本明細書において提供される。
一実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSバイオマーカーのレベルに基づくアルゴリズムの使用を含む。ある実施形態において、アルゴリズムは、さらにシステムプロファイルに基づく。好ましい実施形態において、アルゴリズムは、統計的アルゴリズム、例えば、学習統計的分類子システムを含む。より好ましい実施形態において、アルゴリズムは、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せを含む。最も好ましい実施形態において、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せは、ランダムフォレスト分類子及びニューラルネットワーク分類子を含む。
2.ヒスタミン
1つの特定の態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、(a)対象からの血液又は血清試料を、試料中に存在するヒスタミンがヒスタミン及びヒスタミン結合部分を含む複合体に転換させるのに好適な条件下において、ヒスタミン結合部分と接触させること;及び(b)複合体のレベルを決定し、これによって試料中に存在するヒスタミンのレベルを決定することを含む方法が提供される。一実施形態において、本方法は、(c)試料中に存在するヒスタミンのレベルと対照レベルとを比較することをさらに含み、対照レベルに対する試料中に存在するヒスタミンのレベルの差が、対象がIBSである可能性の増加を示す。
特定の実施形態において、本発明は、IBSの診断を補助するアッセイであって、(a)ヒスタミンが含有される試料を、ヒスタミンがヒスタミン及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のヒスタミンの存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
ある実施形態において、対照レベルは、健常対象からの血液若しくは血清試料中に存在するヒスタミンのレベル又は健常対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するヒスタミンの平均レベルである。他の実施形態において、対照レベルは、非IBS対象からの血液若しくは血清試料中に存在するヒスタミンのレベル又は非IBS対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するヒスタミンの平均レベルである。別の実施形態において、対照レベルは、疾患対象からの血液若しくは血清試料中に存在するヒスタミンのレベル又は疾患対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するヒスタミンの平均レベルである。対照レベルを決定するために有用な疾患対象の非限定的な例は、IBSの対象、非IBS胃腸疾患の対象、炎症性腸疾患(IBD)の対象、潰瘍性大腸炎(UC)の対象、クローン病(CD)の対象、セリアック病の対象、胃食道逆流症(GERD)の対象、癌の対象、胃腸管の癌の対象、胃癌の対象、小腸又は大腸癌の対象などを含む。
対照レベルが1人以上の健常対象からの血液又は血清試料中のヒスタミンのレベルである場合、対照レベルに対する対象からの試料中に存在するヒスタミンの増加したレベルが、対象がIBSである可能性の増加を示す。逆に、対照が1人以上の健常対象である場合、対象からの試料中に存在するヒスタミンのレベルが対照レベルと比べて同様であるか又は低減していれば、対象がIBSでない可能性の増加を示す。
対照レベルが1人以上のIBSの対象の血液又は血清試料中のヒスタミンのレベルである場合、対象からの試料中に存在するヒスタミンのレベルが対照レベルと比べて同様であるか又は増加していれば、対象がIBSである可能性の増加を示す。逆に、対照が1人以上のIBSの対象である場合、対照レベルに対する対象からの試料中に存在するヒスタミンの低減したレベルが、対象がIBSでない可能性の増加を示す。
本発明のある態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、血液又は血清試料中のヒスタミン並びにプロスタグランジンE2(PGE2)及びβ−トリプターゼから選択される少なくとも1種の追加の血液又は血清バイオマーカーを検出することを含む方法が提供される。一実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのヒスタミン及びプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルを検出又は決定することを含む。別の実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのヒスタミン及びβ−トリプターゼのレベルを検出又は決定することを含む。第3の実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びβ−トリプターゼのレベルを検出又は決定することを含む。好ましくは、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及び/又はβ−トリプターゼは、同一の血液又は血清試料から検出されるが、ある例において、バイオマーカーは、同一個体から採取された異なる血液又は血清試料中で、例えば、同時に又は異なる時間において検出することができる。ある実施形態において、バイオマーカーは、対象からの血液又は血清試料の異なるアリコートを用いて実施される別個のアッセイにおいて検出することができる。他の実施形態において、バイオマーカーは、単一マルチプレックス検出アッセイ、例えば、Luminex(著作権)xMAP(著作権)アッセイにおいて検出することができる。
本発明のさらに他の態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、血液又は血清試料中のヒスタミン並びに脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の追加のバイオマーカーを検出することを含む方法が提供される。ある実施形態において、追加のバイオマーカーの少なくとも2種を検出することができる。他の実施形態において、追加のバイオマーカーの少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10種を検出することができる。
少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出又は決定するために使用される試料は、典型的には、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(すなわち、便)、涙液及び任意の他の体液又は組織試料(すなわち、生検物)、例えば、小腸若しくは結腸の試料である。好ましくは、試料は、血清、全血、血漿、糞便、尿、又は組織生検物である。ある例において、本発明の方法は、試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出又は決定する前に個体からの試料を得ることをさらに含む。好ましい実施形態において、追加のバイオマーカーは、血液又は血清試料から検出することができる。他の実施形態において、追加のバイオマーカーは、糞便試料又は対象の腸からの生検物から検出することができる。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの脳由来神経栄養因子(BDNF)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、脳由来神経栄養因子(BDNF)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、脳由来神経栄養因子(BDNF)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からのTNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からのインターロイキン−1ベータ(IL−1β)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの抗CBir−1抗体(CBir1)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗CBir−1抗体(CBir1)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗CBir−1抗体(CBir1)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン及び生物試料からの抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのヒスタミン並びに血液又は血清試料、糞便試料又は対象の腸の生検物からの脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)及び抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)のすべてのレベルを検出又は決定することを含む。
ある実施形態において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適なハイブリダイゼーションアッセイの例は、限定されるものではないが、ノザンブロッティング、ドットブロッティング、RNアーゼプロテクション及びこれらの組合せを含む。本発明の方法における使用に好適な増幅ベースアッセイの非限定的な例は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含む。
ある他の実施形態において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、免疫アッセイ又は免疫組織化学アッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適な免疫アッセイの非限定的な例は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。本発明の方法における使用に好適な免疫組織化学アッセイの例は、限定されるものではないが、免疫蛍光アッセイ、例えば、直接的蛍光抗体アッセイ、間接的蛍光抗体(IFA)アッセイ、抗補体免疫蛍光アッセイ及びアビジン−ビオチン免疫蛍光アッセイを含む。他のタイプの免疫組織化学アッセイは、免疫ペルオキシダーゼアッセイを含む。
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、対象についての症状プロファイルを決定する工程をさらに含み、症状プロファイルは、対象における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される。好ましい実施形態において、本方法は、(d)対象についての症状プロファイルを決定すること(症状プロファイルは、対象における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);及び(e)IBSバイオマーカーのレベル及びシステムプロファイルに基づくアルゴリズムを使用して対象がIBSである又はIBSでないとして診断することを含む。好ましい実施形態において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法は、例えば、症状プロファイルと場合により組み合わせてヒスタミン又は上記のこの組合せについての診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);並びに診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む。
症状プロファイルは、典型的には、胸痛、胸部不快感、胸焼け、普通量の食事後の不快な膨満感、普通量の食事の完食不能、腹痛、腹部不快感、便秘、下痢、膨満感、腹部膨張、疼痛又は不快感を有することに伴う消極的な思考又は感情及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の症状の存在及び重症度を同定することによって決定される。
好ましい実施形態において、IBSを予測するのに有用な症状プロファイルを作成するため、本明細書に記載の症状の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上の存在又は重症度が同定される。ある例において、質問票又は他の形式の記述、口頭若しくは電話調査が、症状プロファイルを生成するために使用される。質問票又は調査は、典型的には、回答者から現在及び/又は最近のIBS関連症状について、情報を収集する目的のための標準化された一連の質問及び回答を含む。
一部の実施形態において、症状プロファイルは、質問票又は調査において示された質問に対する回答のすべて又は一部を編集及び/又は分析することによって生成される。他の実施形態において、症状プロファイルは、以下の質問:「あなたは現在何らかの症状を経験していますか?」に対する個人の回答に基づき生成される。これらの実施形態のいずれかに従って作成される症状プロファイルは、IBS予測の精度を改善するため、本明細書に記載のアルゴリズムベースの方法において、診断マーカープロファイルと組み合わせて使用することができる。
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、対象がIBSである見込みを提供することをさらに含む。ある実施形態において、本方法は、対象が、IBSの可能性が極めて低い、IBSの可能性が低い、IBSの可能性が高い、又はIBSの可能性が極めて高いという見込みを提供することを含むことができる。関連の実施形態において、IBS試料又は非IBS試料と分類された試料がIBSの対象からのものである見込みを提供することをさらに含む方法が提供される。ある実施形態において、本方法は、試料が、IBSの可能性が極めて低い、IBSの可能性が低い、IBSの可能性が高い、又はIBSの可能性が極めて高い対象からのものである見込みを提供することを含むことができる。
他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)として分類することをさらに含む。関連の実施形態において、試料をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)試料としてさらに分類する方法が本明細書において提供される。
一実施形態において、本発明は、IBS−Cからの、IBS−D及びIBS−Aの区別を補助するアッセイであって、(a)ヒスタミンが含有される試料を、ヒスタミンがヒスタミン及び捕捉抗ヒスタミン抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下で接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のヒスタミンの存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
一部の例において、IBS−Cからの、IBS−D及びIBS−Aの区別を補助するアッセイは、試料中のβ−トリプターゼ;及び/又はプロスタグランジンE2(PGE2)の存在又はレベルを検出することをさらに含む。
さらに他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSでない対象を、IBDである、IBDでない、セリアック病である、セリアック病でない、健常対象である又は胃腸疾患でないとして診断することをさらに含む。関連の実施形態において、非IBS試料をIBD試料、非IBD試料、健常試料、非胃腸疾患試料、セリアック試料などとしてさらに分類する方法が本明細書において提供される。
一実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSバイオマーカーのレベルに基づくアルゴリズムの使用を含む。ある実施形態において、アルゴリズムは、さらにシステムプロファイルに基づく。好ましい実施形態において、アルゴリズムは、統計的アルゴリズム、例えば、学習統計的分類子システムを含む。より好ましい実施形態において、アルゴリズムは、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せを含む。最も好ましい実施形態において、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せは、ランダムフォレスト分類子及びニューラルネットワーク分類子を含む。
3.プロスタグランジンE 2 (PGE 2 )
1つの特定の態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、(a)対象からの血液又は血清試料を、試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)がプロスタグランジンE2(PGE2)及びプロスタグランジンE2(PGE2)結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、プロスタグランジンE2(PGE2)結合部分と接触させること;及び(b)複合体のレベルを決定し、これによって試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルを決定することを含む方法が提供される。一実施形態において、本方法は、(c)試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルと対照レベルとを比較することをさらに含み、試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルを対照レベルと比べて差があれば、対象がIBSである可能性の増加を示す。
特定の実施形態において、本発明は、IBSの診断を補助するアッセイであって、(a)プロスタグランジンE2(PGE2)が含有される試料を、プロスタグランジンE2(PGE2)を、プロスタグランジンE2(PGE2)及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下で接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)の存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
ある実施形態において、対照レベルは、健常対象からの血液若しくは血清試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベル又は健常対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)の平均レベルである。他の実施形態において、対照レベルは、非IBS対象からの血液若しくは血清試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベル又は非IBS対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)の平均レベルである。別の実施形態において、対照レベルは、疾患対象からの血液若しくは血清試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベル又は疾患対象のコホートからの血液若しくは血清試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)の平均レベルである。対照レベルを決定するために有用な疾患対象の非限定的な例は、IBSの対象、非IBS胃腸疾患の対象、炎症性腸疾患(IBD)の対象、潰瘍性大腸炎(UC)の対象、クローン病(CD)の対象、セリアック病の対象、胃食道逆流症(GERD)の対象、癌の対象、胃腸管の癌の対象、胃癌の対象、小腸又は大腸癌の対象などを含む。
対照レベルが1人以上の健常対象の血液又は血清試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルである場合、対象からの試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルが対照レベルと比べて増加していれば、対象がIBSである可能性の増加を示す。逆に、対照が1人以上の健常対象である場合、対象からの試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルが対照レベルと比べて同様であるか又は低減していれば、対象がIBSでない可能性の増加を示す。
対照レベルが1人以上のIBSの対象の血液又は血清試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルである場合、対象からの試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルが対照レベルと比べて同様であるか又は増加していれば、対象がIBSである可能性の増加を示す。逆に、対照が1人以上のIBSの対象である場合、対象からの試料中に存在するプロスタグランジンE2(PGE2)のレベルが対照レベルと比べて低減していれば、対象がIBSでない可能性の増加を示す。
本発明のある態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、血液又は血清試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)並びにヒスタミン及びβ−トリプターゼから選択される少なくとも1種の追加の血液又は血清バイオマーカーを検出することを含む方法が提供される。一実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及びヒスタミンのレベルを検出又は決定することを含む。別の実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及びβ−トリプターゼのレベルを検出又は決定することを含む。第3の実施形態において、本方法は、対象からの血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)、ヒスタミン及びβ−トリプターゼのレベルを検出又は決定することを含む。好ましくは、プロスタグランジンE2(PGE2)、ヒスタミン及び/又はβ−トリプターゼは、同一の血液又は血清試料から検出されるが、ある例において、バイオマーカーは、同一個体から採取された異なる血液又は血清試料中で、例えば、同時に又は異なる時間において検出することができる。ある実施形態において、バイオマーカーは、対象からの血液又は血清試料の異なるアリコートを用いて実施される別個のアッセイにおいて検出することができる。他の実施形態において、バイオマーカーは、単一マルチプレックス検出アッセイ、例えば、Luminex(著作権)xMAP(著作権)アッセイにおいて検出することができる。
本発明のさらに他の態様において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法であって、血液又は血清試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)並びに脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の追加のバイオマーカーを検出することを含む方法が提供される。ある実施形態において、追加のバイオマーカーの少なくとも2種を検出することができる。他の実施形態において、追加のバイオマーカーの少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10種を検出することができる。
少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出又は決定するために使用される試料は、典型的には、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(すなわち、便)、涙液及び任意の他の体液又は組織試料(すなわち、生検物)、例えば、小腸若しくは結腸の試料である。好ましくは、試料は、血清、全血、血漿、糞便、尿又は組織生検物である。ある例において、本発明の方法は、試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出又は決定する前に個体からの試料を得ることをさらに含む。好ましい実施形態において、追加のバイオマーカーは、血液又は血清試料から検出することができる。他の実施形態において、追加のバイオマーカーは、糞便試料又は対象の腸からの生検物から検出することができる。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの脳由来神経栄養因子(BDNF)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、脳由来神経栄養因子(BDNF)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、脳由来神経栄養因子(BDNF)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からのTNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からのインターロイキン−1ベータ(IL−1β)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの抗CBir−1抗体(CBir1)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗CBir−1抗体(CBir1)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗CBir−1抗体(CBir1)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)及び生物試料からの抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)のレベルを検出又は決定することを含む。好ましい実施形態において、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。別の好ましい実施形態において、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)は、糞便試料又は対象の腸からの生検物中で検出される。他の実施形態において、少なくとも1種の追加のバイオマーカーも検出される。
一実施形態において、本方法は、血液又は血清試料からのプロスタグランジンE2(PGE2)並びに血液又は血清試料、糞便試料又は対象の腸の生検物からの脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)及び抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)のすべてのレベルを検出又は決定することを含む。
ある実施形態において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適なハイブリダイゼーションアッセイの例は、限定されるものではないが、ノザンブロッティング、ドットブロッティング、RNアーゼプロテクション及びこれらの組合せを含む。本発明の方法における使用に好適な増幅ベースアッセイの非限定的な例は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含む。
ある他の実施形態において、少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルは、免疫アッセイ又は免疫組織化学アッセイを使用して決定される。本発明の方法における使用に好適な免疫アッセイの非限定的な例は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。本発明の方法における使用に好適な免疫組織化学アッセイの例は、限定されるものではないが、免疫蛍光アッセイ、例えば、直接的蛍光抗体アッセイ、間接的蛍光抗体(IFA)アッセイ、抗補体免疫蛍光アッセイ及びアビジン−ビオチン免疫蛍光アッセイを含む。他のタイプの免疫組織化学アッセイは、免疫ペルオキシダーゼアッセイを含む。
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、対象についての症状プロファイルを決定する工程をさらに含み、症状プロファイルは、対象における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される。好ましい実施形態において、本方法は、(d)対象についての症状プロファイルを決定すること(症状プロファイルは、対象における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);及び(e)IBSバイオマーカーのレベル及びシステムプロファイルに基づくアルゴリズムを使用して対象がIBSである又はIBSでないとして診断することを含む。好ましい実施形態において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法は、例えば、症状プロファイルと場合により組み合わせてプロスタグランジンE2(PGE2)又は上記のこの組合せについての診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);及び診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む。
症状プロファイルは、典型的には、胸痛、胸部不快感、胸焼け、普通量の食事後の不快な膨満感、普通量の食事の完食不能、腹痛、腹部不快感、便秘、下痢、膨満感、腹部膨張、疼痛又は不快感を有することに伴う消極的な思考又は感情及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の症状の存在及び重症度を同定することによって決定される。
好ましい実施形態において、IBSを予測するのに有用な症状プロファイルを作成するため、本明細書に記載の症状の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上の存在又は重症度が同定される。ある例において、質問票又は他の形式の記述、口頭若しくは電話調査が、症状プロファイルを生成するために使用される。質問票又は調査は、典型的には、回答者から現在及び/又は最近のIBS関連症状について情報を収集する目的のための標準化された一連の質問及び回答を含む。
一部の実施形態において、症状プロファイルは、質問票又は調査において示された質問に対する回答のすべて又は一部の編集及び/又は分析することによって生成される。他の実施形態において、症状プロファイルは、以下の質問:「あなたは現在何らかの症状を経験していますか?」に対する個人の回答に基づき生成される。これらの実施形態のいずれかに従って作成される症状プロファイルは、IBS予測の精度を改善するため、本明細書に記載のアルゴリズムベースの方法において、診断マーカープロファイルと組み合わせて使用することができる。
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、対象がIBSである見込みを提供することをさらに含む。ある実施形態において、本方法は、対象が、IBSの可能性が極めて低い、IBSの可能性が低い、IBSの可能性が高い、又はIBSの可能性が極めて高いという見込みを提供することを含むことができる。関連の実施形態において、IBS試料又は非IBS試料と分類された試料がIBSの対象からのものである見込みを提供することをさらに含む方法が提供される。ある実施形態において、本方法は、試料が、IBSの可能性が極めて低い、IBSの可能性が低い、IBSの可能性が高い、又はIBSの可能性が極めて高い対象からのものである見込みを提供することを含むことができる。
他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)として分類することをさらに含む。関連の実施形態において、試料をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)試料としてさらに分類する方法が本明細書において提供される。
一実施形態において、本発明は、IBS−Cからの、IBS−D及びIBS−Aの区別を補助するアッセイであって、(a)プロスタグランジンE2(PGE2)が含有される試料を、プロスタグランジンE2(PGE2)を、プロスタグランジンE2(PGE2)及び捕捉抗プロスタグランジンE2(PGE2)抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下で接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)の存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
一部の例において、IBS−Cからの、IBS−D及びIBS−Aの区別を補助するアッセイは、試料中のβ−トリプターゼ;及び/又はヒスタミンの存在又はレベルを検出することをさらに含む。
さらに他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSでない対象を、IBDである、IBDでない、セリアック病である、セリアック病でない、健常対象である又は胃腸疾患でないとして診断することをさらに含む。関連の実施形態において、非IBS試料をIBD試料、非IBD試料、健常試料、非胃腸疾患試料、セリアック試料などとしてさらに分類する方法が本明細書において提供される。
一実施形態において、本明細書において提供される方法は、IBSバイオマーカーのレベルに基づくアルゴリズムの使用を含む。ある実施形態において、アルゴリズムは、さらにシステムプロファイルに基づく。好ましい実施形態において、アルゴリズムは、統計的アルゴリズム、例えば、学習統計的分類子システムを含む。より好ましい実施形態において、アルゴリズムは、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せを含む。最も好ましい実施形態において、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せは、ランダムフォレスト分類子及びニューラルネットワーク分類子を含む。
4.症状プロファイル
一部の実施形態において、IBSの診断を補助する方法は、症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);並びに診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む。当業者は、診断マーカープロファイル及び症状プロファイルを同時に又は任意の順序で連続的に決定することができることを認識する。
症状プロファイルは、典型的には、胸痛、胸部不快感、胸焼け、普通量の食事後の不快な膨満感、普通量の食事の完食不能、腹痛、腹部不快感、便秘、下痢、膨満感、腹部膨張、疼痛又は不快感を有することに伴う消極的な思考又は感情及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の症状の存在及び重症度を同定することによって決定される。
好ましい実施形態において、IBSを予測するのに有用な症状プロファイルを作成するため、本明細書に記載の症状の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上の存在又は重症度が同定される。ある例において、質問票又は他の形式の記述、口頭若しくは電話調査が、症状プロファイルを生成するために使用される。質問票又は調査は、典型的には、回答者から現在及び/又は最近のIBS関連症状について情報を収集する目的のための標準化された一連の質問及び回答を含む。例えば、実施例13は、個体における1種以上のIBS関連症状の存在又は重症度を同定するために質問票に含めることができる例示的な質問を提供する。
ある実施形態において、症状プロファイルは、質問票又は調査において示された質問に対する回答のすべて又は一部を編集及び/又は分析することによって生成される。ある他の実施形態において、症状プロファイルは、以下の質問:「あなたは現在何らかの症状を経験していますか?」に対する個人の回答に基づき生成される。これらの実施形態のいずれかに従って作成される症状プロファイルは、IBS予測の精度を改善するため、本明細書に記載のアルゴリズムベースの方法において、診断マーカープロファイルと組み合わせて使用することができる。
5.統計的アルゴリズムの使用
一部の実施形態において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法は、統計的アルゴリズムと併用する診断マーカープロファイル単独又は症状プロファイルとの組合せに基づく。ある例において、統計的アルゴリズムは、学習統計的分類子システムである。学習統計的分類子システムは、ランダムフォレスト(RF)、分類及び回帰ツリー(C&RT)、ブーストされたツリー、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシン(SVM)、一般的なカイ二乗自動相互作用検出モデル、インタラクティブツリー、多変量適応的回帰スプライン、機械学習分類子及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、学習統計的分類子システムは、ツリーベースの統計的アルゴリズム(例えば、RF、C&RTなど)及び/又はNN(例えば、人工的NNなど)である。本発明における使用に好適な学習統計的分類子システムの追加の例は、米国特許出願第11/368,285号に記載されている。ある実施形態において、本方法は、対象からの試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することを含む。
ある例において、統計的アルゴリズムは、単一の学習統計的分類子システムである。好ましくは、単一の学習統計的分類子システムは、ツリーベースの統計的アルゴリズム、例えば、RF又はC&RTを含む。非限定的な例として、単一の学習統計的分類子システムは、予測値又は確率値、及び少なくとも1種の診断マーカー(すなわち、診断マーカープロファイル)の存在若しくはレベル単独、又は少なくとも1種の症状(すなわち、症状プロファイル)の存在若しくは重症度との組合せに基づき、試料をIBS試料又は非IBS試料として分類するために使用することができる。単一の学習統計的分類子システムの使用は、典型的には、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率及び/又は全体精度を伴い、試料をIBS試料として分類する。例えば、試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することは、対象におけるIBSの診断の補助に有用である。
ある他の例において、統計的アルゴリズムは、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せである。好ましくは、学習統計的分類子システムの組合せは、例えば、タンデム又はパラレルで使用されるRF及びNNを含む。非限定的な例として、最初にRFを使用して診断マーカープロファイル単独、又は症状プロファイルとの組合せに基づく予測値又は確率値を作成することができ、次いでNNを使用して予測値又は確率値及び同一又は異なる診断マーカープロファイル又はプロファイルの組合せに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類することができる。有利には、本発明の複合型RF/NN学習統計的分類子システムは、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率及び/又は全体精度を伴い、試料をIBS試料として分類する。特に好ましい実施形態において、統計的アルゴリズムは、ランダムフォレスト分類子又はランダムフォレスト分類子及びニューラルネットワーク分類子の組合せである。
一部の例において、1種以上の学習統計的分類子システムを使用して得られたデータは、処理アルゴリズムを使用して処理することができる。このような処理アルゴリズムは、例えば、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク及びレーベンバーグ・マルカートアルゴリズムからなる群から選択することができる。他の例において、このような処理アルゴリズムの組合せを、例えばパラレル又はシリアル方式で使用することができる。
ある他の実施形態において、本発明の方法は、臨床医、例えば、胃腸科専門医又は一般開業医にIBS分類結果を送付することをさらに含む。別の実施形態において、本発明の方法は、個体がIBSである確率の形式で診断を提供することができる。例えば、個体は、IBSである確率が約0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上であり得る。さらに別の実施形態において、本発明の方法は、個体におけるIBSの予後をさらに提供することができる。例えば、予後は、外科処置、IBSのカテゴリー若しくは臨床サブタイプの発現、1種以上の症状の発現又は疾患からの回復であり得る。
B.アッセイ及びキット
一態様において、本発明は、血液又は血清試料中のβ−トリプターゼを検出するアッセイであって、(a)固相表面を第1の抗β−トリプターゼ捕捉抗体によりコーティングする工程;(b)固相表面を血液又は血清試料と、試料中に存在するβ−トリプターゼがβ−トリプターゼ及び抗β−トリプターゼ捕捉抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において接触させる工程;(c)β−トリプターゼ及び抗β−トリプターゼ複合体を、第2の検出抗体と、三重複合体を形成するのに好適な条件下で接触させる工程;及び(d)三重複合体を、発光又は化学発光基質と接触させる工程を含む方法を提供する。
一実施形態において、検出抗体は、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされている。他の実施形態において、検出抗体は酵素にコンジュゲートされておらず、本方法は、(i)三重複合体を、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされた第3の抗体と、四重複合体を形成するのに好適な条件下で接触させる工程及び(ii)四重複合体を発光又は化学発光基質と接触させる工程をさらに含む。
サンドイッチELISAにおける抗体の捕捉及び検出のため、任意の好適な抗体ペアを使用することができる。当業者は、アッセイに適切な抗体ペアを選択する方法を理解及び認識する。一般に、対象となる標的、例えば、β−トリプターゼに、第1の(捕捉)抗体の結合が第2の(検出)抗体を干渉しないように、異なるエピトープにおいて結合する2種の抗体が選択される。ある実施形態において、複合体の検出を補助するため、検出抗体は、酵素、例えば、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされている。他の実施形態において、検出抗体に結合する酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)にコンジュゲートされた二次抗体をアッセイにおいて使用することができる。
一般に、複合体は、発光基質、例えば、キット、例えば、Ultra LITE(商品名)(NAG Research Laboratories);SensoLyte(商標)(AnaSpec);SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Scientific);SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific)に見出される発光基質;又はCPSD(ジナトリウム3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルホスフェート;Tropix,Inc)の使用により検出される。
好ましい実施形態において、β−トリプターゼの存在又はレベルを検出するアッセイは、アッセイ感度を向上させるため、検出抗体としてのアルカリホスファターゼにコンジュゲートされた抗トリプターゼ抗体及びCPSD含有発光基質の使用に依存するサンドイッチELISAを含む。CPSD基質は、化学発光検出系、例えば、ELISA−Light(商品名)System(Applied Biosystems)に見出すことができる。特に好ましい実施形態において、サンドイッチELISAにおいて使用される検出抗体は、抗トリプターゼ抗体G3(sc−33676;Santa Cruz Biotechnology,Inc.;Santa Cruz,CA)である。
本アッセイの好ましい実施形態において、血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼの検出限界は、約500pg/mL未満である。ある実施形態において、血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼの検出限界は、約500pg/mL未満又は約400pg/mL未満、300pg/mL、250pg/mL、200pg/mL、150pg/mL、100pg/mL、75pg/mL、50pg/mL、40pg/mL、30pg/mL、25pg/mL、20pg/mL、15pg/mL又は約10pg/mL未満である。好ましい実施形態において、血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼの検出限界は、約200pg/mL未満である。より好ましい実施形態において、血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼの検出限界は、約100pg/mL未満である。より好ましい実施形態において、血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼの検出限界は、約50pg/mL未満である。最も好ましい実施形態において、血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼの検出限界は、約25pg/mL未満である。
別の態様において、本発明は、IBSの診断を補助するアッセイであって、(a)β−トリプターゼを有する試料を、β−トリプターゼがβ−トリプターゼ及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
IBSの診断を補助するアッセイの一実施形態において、試料はヒト血清である。
IBSの診断を補助するアッセイの別の実施形態において、試料はIBSの疑いがある対象から得られる。
IBSの診断を補助するアッセイの別の実施形態において、試料中のβ−トリプターゼのレベルが健常対照と比べて高ければ、対象がIBSである可能性の増加を示す。
IBSの診断を補助するアッセイの別の実施形態において、アッセイは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。
IBSの診断を補助するアッセイの別の実施形態において、試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルの検出は、検出装置の使用を含む。
IBSの診断を補助するアッセイの別の実施形態において、検出装置は発光プレートリーダーを含む。
IBSの診断を補助するアッセイの別の実施形態において、検出装置は分光光度計を含む。
IBSの診断を補助するアッセイの別の実施形態において、アッセイは、試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)及び/又はヒスタミンの存在又はレベルの検出をさらに含む。
別の態様において、本発明は、IBSの臨床サブタイプの区別を補助するアッセイであって、(a)β−トリプターゼを有する試料を、β−トリプターゼがβ−トリプターゼ及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
IBSの臨床サブタイプの区別を補助するアッセイの一実施形態において、アッセイは、IBS−D及びIBS−AとIBS−Cとの区別を補助する。
IBSの臨床サブタイプの区別を補助するアッセイの別の実施形態において、試料はヒト血清である。
IBSの臨床サブタイプの区別を補助するアッセイの別の実施形態において、アッセイは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。
IBSの臨床サブタイプの区別を補助するアッセイの別の実施形態において、試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルの検出は、検出装置の使用を含む。
IBSの臨床サブタイプの区別を補助するアッセイの別の実施形態において、アッセイは、試料中のプロスタグランジンE2(PGE2)及び/又はヒスタミンの存在又はレベルの検出をさらに含む。
さらに別の態様において、本発明は、IBSの診断を補助するアッセイであって、(a)β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンを有する試料を、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンが、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン並びに捕捉抗β−トリプターゼ、抗プロスタグランジンE2及び/又は抗ヒスタミン抗体を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、接触させること;(b)複合体を酵素標識指示抗体と接触させて複合体を標識複合体に転換すること;(c)標識複合体を酵素用基質と接触させること;及び(d)試料中のβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンの存在又はレベルを検出することを含むアッセイを提供する。
ある実施形態において、本明細書において提供されるアッセイは、脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加のバイオマーカーの存在又はレベルを検出することをさらに含むことができる。
さらに他の実施形態において、本明細書において提供されるアッセイは、サイトカイン(例えば、IL−8、IL−1β、TWEAK、レプチン、OPG、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4及び/又はCXCL7/NAP−2)、成長因子(例えば、EGF、VEGF、PEDF、BDNF及び/又はSDGF)、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA及び/又はSAPPA)、ASCA(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG及び/又はASCA−IgM)、抗菌性抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体及び/又は抗I2抗体)、ラクトフェリン、抗tTG抗体、リポカリン(例えば、NGAL、NGAL/MMP−9複合体)、MMP(例えば、MMP−9)、TIMP(例えば、TIMP−1)、アルファ−グロブリン(例えば、アルファ−2−マクログロブリン、ハプトグロビン及び/又はオロソムコイド)、アクチン切断タンパク質(例えば、ゲルゾリン)、S100タンパク質(例えば、カルグラニュリン)、フィブリノペプチド(例えば、FIBA)、CGRP、タキキニン(例えば、サブスタンスP)、グレリン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ホルモン並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加のバイオマーカーの存在又はレベルを検出することをさらに含むことができる。さらに他の実施形態において、他の診断マーカー、例えば、抗ラクトフェリン抗体、L−セレクチン/CD62L、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、抗U1−70kDa自己抗体、閉鎖帯1(ZO−1)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、血清アミロイドA、ガストリン及びこれらの組合せなどの存在又はレベルを検出することもできる。
ある実施形態において、提供されるアッセイは、本明細書に記載のバイオマーカーの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30種以上の検出を含むことができる。
別の態様において、対象におけるIBSの診断を補助するキット又は試料をIBS試料若しくは非IBS試料として分類するキットが提供される。ある実施形態において、本明細書において提供されるキットは、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンから選択されるIBSバイオマーカーの存在又はレベルを検出するための結合部分を含有する。
他の実施形態において、キットは、脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せからなる群から選択される追加のバイオマーカーのための少なくとも1種の結合部分も含有する。
さらに他の実施形態において、キットは、サイトカイン(例えば、IL−8、IL−1β、TWEAK、レプチン、OPG、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4及び/又はCXCL7/NAP−2)、成長因子(例えば、EGF、VEGF、PEDF、BDNF及び/又はSDGF)、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA及び/又はSAPPA)、ASCA(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG及び/又はASCA−IgM)、抗菌性抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体及び/又は抗I2抗体)、ラクトフェリン、抗tTG抗体、リポカリン(例えば、NGAL、NGAL/MMP−9複合体)、MMP(例えば、MMP−9)、TIMP(例えば、TIMP−1)、アルファ−グロブリン(例えば、アルファ−2−マクログロブリン、ハプトグロビン及び/又はオロソムコイド)、アクチン切断タンパク質(例えば、ゲルゾリン)、S100タンパク質(例えば、カルグラニュリン)、フィブリノペプチド(例えば、FIBA)、CGRP、タキキニン(例えば、サブスタンスP)、グレリン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ホルモン、抗ラクトフェリン抗体、L−セレクチン/CD62L、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、抗U1−70kDa自己抗体、閉鎖帯1(ZO−1)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、血清アミロイドA、ガストリン並びにこれらの組合せからなる群から選択される追加のバイオマーカーのための少なくとも1種の結合部分を含有する。
ある実施形態において、提供されるキットは、本明細書に記載のバイオマーカーの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30種以上のための結合部分を含有することができる。
好ましい実施形態において、血液又は血清試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出するキットが提供される。一実施形態において、キットは、場合により固体表面に結合している第1の捕捉抗体及び捕捉抗体とは異なるβ−トリプターゼ上のエピトープに結合する第2の検出抗体を含有する。ある実施形態において、検出抗体はアルカリホスファターゼにコンジュゲートされている。他の実施形態において、検出抗体は、酵素、すなわち、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされていない。好ましい実施形態において、検出抗体は、抗トリプターゼ抗体G3(sc−33676;Santa Cruz Biotechnology,Inc.;Santa Cruz,CA)である。より好ましい実施形態において、抗トリプターゼ抗体G3は、さらにアルカリホスファターゼにコンジュゲートされている。検出抗体が酵素にコンジュゲートされていないある実施形態において、キットは、検出抗体に特異的な第3の抗体をさらに含むことができ、第3の抗体は、酵素、例えば、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされている。
ある実施形態においてキットは、発光又は化学発光基質、例えば、Ultra LITE(商品名)(NAG Research Laboratories);SensoLyte(商標)(AnaSpec);SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Scientific);SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific);に見出される発光基質又はCPSD(ジナトリウム3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルホスフェート;Tropix,Inc)も含有する。好ましい実施形態において、発光基質は、CPSD(ジナトリウム3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルホスフェートである。
ある実施形態において、β−トリプターゼの存在又はレベルを検出するキットは、約500pg/mL未満の濃度において血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼを検出するのに好適である。ある実施形態において、本キットは、約500pg/mL未満又は約400pg/mL未満、300pg/mL、250pg/mL、200pg/mL、150pg/mL、100pg/mL、75pg/mL、50pg/mL、40pg/mL、30pg/mL、25pg/mL、20pg/mL、15pg/mL又は約10pg/mL未満の濃度において血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼを検出するのに好適である。好ましい実施形態において、本キットは、約200pg/mL未満の濃度において血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼを検出するのに好適である。より好ましい実施形態において、本キットは、約100pg/mL未満の濃度において血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼを検出するのに好適である。より好ましい実施形態において、本キットは、約50pg/mL未満の濃度において血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼを検出するのに好適である。最も好ましい実施形態において、本キットは、約25pg/mL未満の濃度において血液又は血清試料中に存在するβ−トリプターゼを検出するのに好適である。
C.治療をモニタリング及び割り付ける方法
一部の実施形態において、個体をIBSであるとして診断した後、IBSに関連する1種以上の症状の治療に有用な薬物の治療有効量を個体に投与する。好適なIBS薬は、限定されるものではないが、セロトニン作動薬、抗うつ剤、クロライドチャネル活性化因子、クロライドチャネル遮断薬、グアニル酸シクラーゼアゴニスト、抗生物質、オピオイドアゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、抗痙攣又は抗コリン作動薬、ベラドンナアルカロイド、バルビツール酸塩、GLP−1アナログ、CRFアンタゴニスト、プロバイオティクス、これらの遊離塩基、医薬的に許容されるこれらの塩、これらの誘導体、これらのアナログ及びこれらの組合せを含む。他のIBS薬は、増量剤、ドーパミンアンタゴニスト、駆風剤、トランキライザー、デクストフィソパム、フェニトイン、チモロール及びジルチアゼムを含む。さらに、神経又はグリア細胞シグナリングに影響を及ぼすことによって腸透過性を調節するグルタミン及びグルタミン酸などのアミノ酸は、IBSの患者を治療するために投与することができる。
他の実施形態において、本発明の方法は、IBS試料又はIBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)試料又は診断として分類することをさらに含む。ある例において、IBS試料又は診断をIBSのカテゴリー、形態又は臨床サブタイプに分類することは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上の本明細書に提供される分類マーカーの存在又はレベルに基づく。好ましくは、IBSの少なくとも1種の形態は、レプチン、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンの存在又はレベルに基づきIBSの少なくとも1種の他の形態から区別される。ある例において、本発明の方法は、既にIBSであると同定された個体において、IBS−C試料とIBS−A及び/又はIBS−D試料とを区別するために使用することができる。ある他の例において、本発明の方法は、既にIBSでないと診断された個体からの試料をIBS−A試料、IBS−C試料、IBS−D試料又は非IBS試料として分類するために使用することができる。
ある実施形態において、本方法は、分類から得られた結果を臨床医に送付することをさらに含む。ある他の実施形態において、本方法は、個体がIBS−A、IBS−C、IBS−D、IBS−M又はIBS−PIである確率の形式の診断をさらに提供する。本発明の方法は、IBS−A、IBS−C、IBS−D、IBS−M及び/又はIBS−PIの治療に有用な薬物の治療有効量を個体に投与することをさらに含むことができる。好適な薬物は、限定されるものではないが、テガセロド(Zelnorm(商品名))、アロセトロン(Lotronex(商標))、ルビプロストン(Amitiza(商品名))、リファミキシン(Xifaxan(商品名))、MD−1100、プロバイオティクス及びこれらの組合せを含む。
試料がIBS−A又はIBS−C試料として分類され、及び/又は個体がIBS−A又はIBS−Cであると診断された例において、テガセロド又は他の5−HT4アゴニスト(例えば、モサプリド、レンザプリド、AG1−001など)の治療有効用量を個体に投与することができる。一部の例において、試料がIBS−Cとして分類され、及び/又は個体がIBS−Cである診断された場合、ルビプロストン又は他のクロライドチャネル活性化因子、リファミキシン又は腸内細菌の過剰成長を制御できる他の抗生物質、MD−1100又は他のグアニル酸シクラーゼアゴニスト、アシマドリン又は他のオピオイドアゴニスト又はタルネタント又は他のニューロキシンアンタゴニストの治療有効量を個体に投与することができる。他の例において、試料がIBS−Dとして分類され、及び/又は個体がIBS−Dであると診断された場合、アロセトロン又は他の5−HT3アンタゴニスト(例えば、ラモセトロン、DDP−225など)、クロフェレマー又は他のクロライドチャネル遮断薬、タルネタント又は他のニューロキニンアンタゴニスト(例えば、サレデュータントなど)又は抗うつ剤、例えば、三環系抗うつ剤の治療有効量を個体に投与することができる。
さらに別の態様において、本発明は、個体におけるIBSの進行及び退縮をモニタリングする方法であって、(a)試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出することによって診断マーカープロファイルを決定すること;及び(b)診断マーカープロファイルに基づくアルゴリズムを使用して個体におけるIBSの存在又は重症度を決定することを含む方法を提供する。
一実施形態において、IBSの進行及び退縮をモニタリングする方法は、症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);並びに診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して個体におけるIBSの存在又は重症度を決定することを含む。
関連の態様において、本発明は、IBSの治療に有用な薬物を服用する個体における薬物の効力をモニタリングする方法であって、(a)試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを検出することによって診断マーカープロファイルを決定すること;及び(b)診断マーカープロファイルに基づくアルゴリズムを使用して薬物の有効性を決定することを含む方法を提供する。
一実施形態において、IBS薬の効力をモニタリングする方法は、症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);並びに診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して薬物の有効性を決定することを含む。
一実施形態において、本発明は、対象における過敏性腸症候群(IBS)の進行又は退縮をモニタリングする方法であって、(a)1回目に対象から採取された第1の血液又は血清試料を、試料中に存在するβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンが、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン並びにβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン結合部分と接触させること;(b)複合体のレベルを決定し、これによって第1の試料中に存在するβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンのレベルを決定すること;(c)2回目に対象から採取された第2の血液又は血清試料を、試料中に存在するβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンがβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン並びにβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン結合部分を含む複合体に転換するのに好適な条件下において、β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン結合部分と接触させること;(d)複合体のレベルを決定し、これによって第2の試料中に存在するβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンのレベルを決定すること;及び(e)第1の試料中に存在するβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンのレベルと第2の試料中に存在するβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンのレベルとを比較することを含み、第2の試料中のβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンのレベルが第1の試料と比べて高ければ、対象におけるIBSの進行を示し、第2の試料中のβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンのレベルが第1の試料と比べて低ければ、対象におけるIBSの退縮を示す方法を提供する。
治療をモニタリング及び割り付ける方法のある実施形態において、本方法は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加のバイオマーカーのレベルの存在を検出することをさらに含む。ある実施形態において、本方法は、上記に提供した追加のバイオマーカーの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10種すべての存在又はレベルを検出することを含む。
さらに他の実施形態において、本方法は、サイトカイン(例えば、IL−8、IL−1β、TWEAK、レプチン、OPG、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4及び/又はCXCL7/NAP−2)、成長因子(例えば、EGF、VEGF、PEDF、BDNF及び/又はSDGF)、抗好中球抗体(例えば、mayANCA、pANCA、cANCA、NSNA及び/又はSAPPA)、ASCA(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG及び/又はASCA−IgM)、抗菌性抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体及び/又は抗I2抗体)、ラクトフェリン、抗tTG抗体、リポカリン(例えば、NGAL、NGAL/MMP−9複合体)、MMP(例えば、MMP−9)、TIMP(例えば、TIMP−1)、アルファ−グロブリン(例えば、アルファ−2−マクログロブリン、ハプトグロビン及び/又はオロソムコイド)、アクチン切断タンパク質(例えば、ゲルゾリン)、S100タンパク質(例えば、カルグラニュリン)、フィブリノペプチド(例えば、FIBA)、CGRP、タキキニン(例えば、サブスタンスP)、グレリン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ホルモン並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のバイオマーカーのレベルの存在を検出することをさらに含むことができる。さらに他の実施形態において、他の診断マーカー、例えば、抗ラクトフェリン抗体、L−セレクチン/CD62L、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、抗U1−70kDa自己抗体、閉鎖帯1(ZO−1)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、血清アミロイドA、ガストリン及びこれらの組合せなどの存在又はレベルを検出することもできる。
一部の実施形態において、上記の診断マーカーの1種以上を計測するためのパネルを、IBSの存在若しくは重症度を決定するため又はIBS薬の有効性を決定するために構築及び使用することができる。当業者は、例えば、個体試料のアリコート又は希釈物を使用して複数の診断マーカーの存在又はレベルを同時に又は連続的に決定することができることを認識する。上記のとおり、個体試料中の特定の診断マーカーのレベルは、一般に、これが比較試料又は試料群における同一のマーカーのレベルを少なくとも約10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%又は1000%上回る(例えば、中央値を上回る)場合、上昇しているとみなされる。同様に、個体試料中の特定の診断マーカーのレベルは、典型的には、比較試料又は試料群における同一のマーカーのレベルを少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%下回る(例えば、中央値を下回る)場合、低下しているとみなされる。
ある実施形態において、IBSの進行及び退縮をモニタリングする方法は、症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);並びに診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して個体のIBSの存在又は重症度を決定することを含む。ある他の実施形態において、IBS薬の効力をモニタリングする方法は、症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを決定すること(症状プロファイルは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を同定することによって決定される);並びに診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づくアルゴリズムを使用して薬物の有効性を決定することを含む。当業者は、診断マーカープロファイル及び症状プロファイルを同時に又は任意の順序で連続的に決定することができることを認識する。
一部の実施形態において、IBSの存在若しくは重症度又はIBS薬の有効性を決定することは、統計的アルゴリズムを併用する診断マーカープロファイル単独又は症状プロファイルとの組合せに基づく。ある例において、統計的アルゴリズムは、学習統計的分類子システムである。学習統計的分類子システムは、本明細書に記載の学習統計的分類子システムのいずれかを含む。
ある実施形態において、本発明の方法は、工程(b)において決定された個体におけるIBSの存在又は重症度を、より早期の個体におけるIBSの存在又は重症度と比較することをさらに含むことができる。非限定的な例として、IBS薬を服用している個体について決定されたIBSの存在又は重症度を、IBS薬の使用開始前又は治療のより早期の同一個体について決定されたIBSの存在又は重症度と比較することができる。ある他の実施形態において、本発明の方法は、工程(b)において決定されたIBS薬の有効性と治療のより早期の個体におけるIBS薬の有効性とを比較することによって、IBS薬の有効性を決定することを含むことができる。追加の実施形態において、本方法は、IBSのモニタリング結果を臨床医、例えば、胃腸科専門医又は一般開業医に送付することをさらに含むことができる。
D.試料を分類するためのコンピュータ読取可能媒体及びシステム
一態様において、本発明は、1種以上のプロセッサを制御して対象からの血液又は血清試料が過敏性腸症候群(IBS)と関連するか否かを分類するコードを含むコンピュータ読取可能媒体であって、コードは、診断マーカープロファイルを含むデータセットに統計処理を適用して診断マーカープロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するための指示を含み、診断マーカープロファイルは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びこれらの組合せからなる群から選択される試料中の少なくとも1種の診断マーカーのレベルを示すコンピュータ読取可能媒体を提供する。
他の実施形態において、IBSを確定するためのコンピュータ読取可能媒体は、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を示す症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを含むデータセットに統計処理を適用して診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するための指示を含む。当業者は、統計処理を診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに同時に又は任意の順序で連続的に適用することができることを認識する。
特定の実施形態において、本発明は、1種以上のプロセッサを制御して個体からの試料が過敏性腸症候群(IBS)と関連するか否かを分類するコードを含むコンピュータ読取可能媒体であって、コードは、診断マーカープロファイルを含むデータセットに統計処理を適用して診断マーカープロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するための指示を含み、診断マーカープロファイルは、試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを示すコンピュータ読取可能媒体を提供する。
関連の態様において、本発明は、1種以上のプロセッサを制御して個体からの試料がIBSと関連するか否かを分類するコードを含むコンピュータ読取可能媒体であって、コードは、(a)診断マーカープロファイルを含むデータセットに第1の統計処理を適用して診断マーカープロファイルに基づき試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する統計的に導出される判定を生成するための指示(診断マーカープロファイルは、試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを示す);及び試料が非IBD試料として分類された場合、(b)同一又は異なるデータセットに第2の統計処理を適用して非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する第2の統計的に導出される判定を生成するための指示を含むコンピュータ読取可能媒体を提供する。
一実施形態において、IBSを確定するためのコンピュータ読取可能媒体は、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を示す症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを含むデータセットに統計処理を適用して診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するための指示を含む。
他の実施形態において、第1にIBDを除外し、次いでIBSを確定するためのコンピュータ読取可能媒体は、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を示す症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを含むデータセットに第1の統計処理を適用して診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づき試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する統計的に導出される判定を生成するための指示;及び試料が非IBD試料として分類された場合、同一又は異なるデータセットに第2の統計処理を適用して非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する第2の統計的に導出される判定を生成するための指示を含む。当業者は、第1及び/又は第2の統計処理を診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに同時に又は任意の順序で連続的に適用することができることを認識する。
一実施形態において、第1及び第2の統計処理は、異なるプロセッサにおいて実装される。あるいは、第1及び第2の統計処理は、単一のプロセッサにおいて実装される。別の実施形態において、第1の統計処理は、学習統計的分類子システムである。本発明における使用に好適な学習統計的分類子システムの例は、上記のとおりである。ある例において、第1及び/又は第2の統計処理は、単一の学習統計的分類子システム、例えば、RF又はC&RTなどである。ある他の例において、第1及び/又は第2の統計処理は、少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せである。非限定的な例として、学習統計的分類子システムの組合せは、例えば、タンデムで使用されるRF及びNN又はSVMを含む。一部の例において、1種以上の学習統計的分類子システムを使用して得られたデータは、処理アルゴリズムを使用して処理することができる。
別の態様において、本発明は、対象からの血液又は血清試料が過敏性腸症候群(IBS)と関連するか否かを分類するシステムであって、(a)診断マーカープロファイルを含むデータセットを生成するように構成されたデータ収集モジュール(診断マーカープロファイルは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを示す);(b)データセットに統計処理を適用することによってデータセットを処理して診断マーカープロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;及び(c)統計的に導出される判定を表示するように構成されたディスプレイモジュールを含むシステムを提供する。
ある実施形態において、血液又は血清試料がIBSと関連するか否かを分類する、IBSの診断を補助する又はIBSを確定するシステムは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を示す症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを含むデータセットを生成するように構成されたデータ収集モジュール;データセットに統計処理を適用することによってデータセットを処理して診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;及び統計的に導出される判定を表示するように構成されたディスプレイモジュールを含むシステムを提供する。
関連の態様において、本発明は、個体からの試料がIBSと関連するか否かを分類するシステムであって、(a)診断マーカープロファイルを含むデータセットを生成するように構成されたデータ収集モジュール(診断マーカープロファイルは、試料中の少なくとも1種の診断マーカーの存在又はレベルを示す);(b)データセットに第1の統計処理を適用することによってデータセットを処理して診断マーカープロファイルに基づき試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する第1の統計的に導出される判定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;試料が非IBD試料として分類された場合、同一又は異なるデータセットに第2の統計処理を適用して非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する第2の統計的に導出される判定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;及び(c)第1及び/又は第2の統計的に導出される判定を表示するように構成されたディスプレイモジュールを含むシステムを提供する。
一実施形態において、第1にIBDを除外し、次いでIBSを確定するシステムは、個体における少なくとも1種の症状の存在又は重症度を示す症状プロファイルと場合により組み合わせて診断マーカープロファイルを含むデータセットを生成するように構成されたデータ収集モジュール;データセットに第1の統計処理を適用することによってデータセットを処理して診断マーカープロファイル及び症状プロファイルに基づき試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する第1の統計的に導出される判定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;試料が非IBD試料として分類された場合、同一又は異なるデータセットに第2の統計処理を適用して非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する第2の統計的に導出される判定を生成するように構成されたデータ処理モジュール;並びに第1及び/又は第2の統計的に導出される判定を表示するように構成されたディスプレイモジュールを含む。
ある実施形態において、診断マーカープロファイルは、脳由来神経栄養因子(BDNF)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、成長関連癌遺伝子アルファ(GRO−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子−1(TIMP−1)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA−IgA)、抗CBir−1抗体(CBir1)、抗ヒト好中球細胞質抗体(ANCA)、抗ヒト組織トランスグルタミナーゼIgA(tTG)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加の診断マーカーのレベルを示す。ある実施形態において、本方法は、上記に提供した追加のバイオマーカーの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10種すべての存在又はレベルを検出することを含む。
さらに他の実施形態において、診断マーカープロファイルは、サイトカイン(例えば、IL−8、IL−1β、TWEAK、レプチン、OPG、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4及び/又はCXCL7/NAP−2)、成長因子(例えば、EGF、VEGF、PEDF、BDNF及び/又はSDGF)、抗好中球抗体(例えば、ANCA、pANCA、cANCA、NSNA及び/又はSAPPA)、ASCA(例えば、ASCA−IgA、ASCA−IgG及び/又はASCA−IgM)、抗菌性抗体(例えば、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体及び/又は抗I2抗体)、ラクトフェリン、抗tTG抗体、リポカリン(例えば、NGAL、NGAL/MMP−9複合体)、MMP(例えば、MMP−9)、TIMP(例えば、TIMP−1)、アルファ−グロブリン(例えば、アルファ−2−マクログロブリン、ハプトグロビン及び/又はオロソムコイド)、アクチン切断タンパク質(例えば、ゲルゾリン)、S100タンパク質(例えば、カルグラニュリン)、フィブリノペプチド(例えば、FIBA)、CGRP、タキキニン(例えば、サブスタンスP)、グレリン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ホルモン並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加の診断マーカーのレベルを示す。さらに他の実施形態において、他の診断マーカー、例えば、抗ラクトフェリン抗体、L−セレクチン/CD62L、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、抗U1−70kDa自己抗体、閉鎖帯1(ZO−1)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、血清アミロイドA、ガストリン及びこれらの組合せなどの存在又はレベルを検出することもできる。
IV.IBS様症状を示す疾患及び障害
種々の構造又は代謝疾患及び障害は、IBSと類似する兆候又は症状を引き起こし得る。非限定的な例として、炎症性腸疾患(IBD)、セリアック病(CD)、急性炎症、憩室炎、回腸嚢肛門吻合、顕微鏡的大腸炎、慢性感染性下痢、ラクターゼ欠損症、癌(例えば、結腸直腸癌)、小腸又は結腸の機械的閉塞、腸管感染症、虚血、消化不良、吸収不良、子宮内膜症及び未同定の腸管の炎症性疾患などの疾患及び障害の患者は、IBSと同様の、軽度から中等度の疼痛並びに便の硬さ及び/又は便通の頻度における変化を伴う腹部不快感を示し得る。追加のIBS様症状は、慢性下痢若しくは慢性便秘又は便秘と下痢を交互に繰り返す症状、体重減少、腹部膨張又は膨満感及び糞便粘液を含むことができる。
大部分のIBD患者は、2種の明確な臨床サブタイプであるクローン病及び潰瘍性大腸炎のうちの1種に分類することができる。クローン病は、回腸下部を侵襲し、結腸及び腸管の他の領域を患うことが多い炎症性疾患である。潰瘍性大腸炎は、主として大腸の粘膜及び粘膜下層中に局在する炎症を特徴とする。IBDのこれらの臨床サブタイプを罹患する患者は、典型的には、IBS様症状、例えば、腹痛、慢性下痢、体重減少及び筋痙攣などを示す。
セリアック病の臨床所見も、IBS様症状、例えば、慢性下痢、体重減少及び腹部膨張を伴う腹部不快感を特徴とする。セリアック病は、典型的には絨毛萎縮、陰窩の過形成及び/又は小腸の粘膜内層の炎症を伴う腸粘膜の免疫介在障害である。セリアック病の個体は、栄養の吸収不良に加えて、無機物欠損、ビタミン欠損、骨粗鬆症、自己免疫疾患及び腸悪性腫瘍(例えば、リンパ腫及び癌腫)に対する危険に面している。妥当な遺伝的及び環境的状況におけるタンパク質、例えば、グルテン(例えば、コムギ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、キビ、ライコムギ、スペルトムギ及びカムート中に存在するグルテニン及びプロラミンタンパク質)への暴露が、セリアック病を引き起こす原因であると考えられている。
IBS様症状を示す腸炎を特徴とする他の疾患及び障害は、例えば、急性炎症、憩室炎、回腸嚢肛門吻合、顕微鏡的大腸炎及び慢性感染性下痢並びに未同定の腸管の炎症性障害を含む。急性炎症のエピソードを経験している患者は、典型的には、IBS様症状に加えてC反応性タンパク質(CRP)レベルが上昇している。CRPは、炎症過程の急性期に肝臓によって産生され、通常、炎症過程の開始約24時間後に放出される。憩室炎、回腸嚢肛門吻合、顕微鏡的大腸炎及び慢性感染性下痢を罹患する患者は、典型的には、IBS様症状に加えて、糞中のラクトフェリン及び/又はカルプロテクチンのレベルが増加している。ラクトフェリンは、粘膜によって分泌される糖タンパク質であり、白血球の二次顆粒中の主要なタンパク質である。白血球は一般に炎症部位にリクルートされ、活性化され、周辺領域に顆粒の内容物を放出する。この過程が便中のラクトフェリンの濃度を増加させる。
過敏性嚢症候群のような嚢の他の非炎症病態と比較して、回腸嚢肛門吻合(すなわち、クローン病の重症例の場合、結腸の完全切除後に嚢が作出される)の患者においては、ラクトフェリンレベルの増加が観察される。ラクトフェリンレベルの上昇は憩室炎患者においても観察され、この憩室炎は、消化管における膨張した嚢(すなわち、憩室)が炎症を起こし、及び/又は感染し、重症度の腹痛、発熱、悪心及び排便習慣の顕著な変化を引き起こす病態である。顕微鏡的大腸炎は、これもまた便中ラクトフェリンレベルの増加を伴う慢性炎症性障害である。顕微鏡的大腸炎は、持続性の水様下痢(非血性)、通常、体重減少を伴う腹痛、大腸内視鏡検査及び放射線検査における正常な粘膜並びに非常に特異的な組織病理学的変化を特徴とする。顕微鏡的大腸炎は、コラーゲン性大腸炎及びリンパ性大腸炎の2種の疾患からなる。コラーゲン性大腸炎は、病因が不明であり、長期の水様下痢及び正常な大腸内視鏡検査結果を示す患者に見出される。コラーゲン性大腸炎及びリンパ性大腸炎は両方とも、結腸内膜におけるリンパ球の増加を特徴とする。コラーゲン性大腸炎はさらに、結腸の上皮下コラーゲン層の肥大化を特徴とする。慢性感染性下痢も、便中ラクトフェリンレベルの増加を伴う疾病である。慢性感染性下痢は通常、細菌、ウイルス又は原生動物の感染によって引き起こされ、患者はIBS様症状、例えば、下痢及び腹痛を示す。ラクトフェリンレベルの増加は、IBDの患者においても観察される。
腸炎を伴う疾患及び障害は、CRP及び/又はラクトフェリン及び/又はカルプロテクチンレベルを決定することに加えて、糞便中血液の存在、例えば、便中ヘモグロビンを検出することによって排除することもできる。患者の自覚なく起こる腸出血は、潜在出血又は潜出血と呼ばれる。潜在出血の存在(例えば、便中ヘモグロビン)は、典型的には、患者の糞便試料中で観察される。他の病態、例えば、潰瘍(例えば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、癌(胃癌、大腸癌)及び痔も、腹痛及び便の硬さ及び/又は排便頻度の変化を含むIBS様症状を示し得る。
さらに、便中カルプロテクチンレベルを評価することもできる。カルプロテクチンは、主に好中球及び単球に由来する抗菌活性を有するカルシウム結合タンパク質である。カルプロテクチンは、嚢胞性繊維症、関節リウマチ、IBD、結腸直腸癌、HIV及び他の炎症性疾患と臨床的関連を有することが見出されている。このレベルは、血清、血漿、口腔、脳脊髄及び滑液、尿及び便中で計測されている。GI障害における便中カルプロテクチンの利点は、以下のとおり認識されている:室温において3〜7日間安定であり、このことによって普通郵便による試料の運搬が可能になり;クローン病の患者の便中アルファ1−アンチトリプシンと相関し;ほとんど大部分の消化管癌及びIBDの患者において上昇する。便中カルプロテクチンは、潰瘍性大腸炎における疾患活性の内視鏡的及び組織学的格付け並びにIBDにおける疾患活性の指標であるインジウム111によって標識された好中性顆粒球の便排泄と十分相関することが見出された。
上記事項を考慮すると、広範囲の疾患及び障害がIBS様症状を引き起こし得、これによって試料をIBS試料として明確に分類することに対する実質的な障壁を作出することが明らかである。しかしながら、本発明は、例えば、統計的アルゴリズムを使用して個体からの試料をIBS試料として分類することによって、又は、例えば、統計的アルゴリズムの組合せを使用してIBSと類似する臨床所見を共有するこれらの疾患及び障害を排除(すなわち、除外)し、試料中のIBS試料を同定(すなわち、確定)することによってこの制限を克服する。
V.診断マーカー
種々の診断マーカーが、個体からの試料をIBS試料として分類する、又は個体からの試料におけるIBS様症状と関連する1種以上の疾患又は障害を除外する本発明の方法、システム及びコードにおける使用に好適である。診断マーカーの例は、限定されるものではないが、サイトカイン、成長因子、抗好中球抗体、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体、抗菌性抗体、抗組織トランスグルタミナーゼ(tTG)抗体、リポカリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、リポカリン及びMMPの複合体、組織型メタロプロテアーゼ阻害因子(TIMP)、グロブリン(例えばアルファ−グロブリン)、アクチン切断タンパク質、S100タンパク質、フィブリノペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、タキキニン、グレリン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプターゼ、例えば、β−トリプターゼ、エラスターゼなど)、プロスタグランジン(例えば、PGE2)、ヒスタミン、C反応性タンパク質(CRP)、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、セロトニン再取り込み輸送体(SERT)、トリプトファンヒドロキシラーゼ1、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、ラクツロース並びにこれらの組合せを含む。本発明に従って、IBSを予測するための追加の診断マーカーは、すべての目的のために参照により全体として本明細書に取り込まれる2007年8月14日に出願された米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例14に記載の技術を使用して選択することができる。当業者は、本発明における使用に好適な他の診断マーカーについても理解する。
特定の実施形態において、診断マーカープロファイルは、以下のバイオマーカー:セリンプロテアーゼ(例えば、トリプターゼ、例えば、β−トリプターゼ);プロスタグランジン(例えば、PGE2);及び/又はヒスタミンの少なくとも1、2又は3種すべての存在又はレベルを検出することにより決定される。
他の実施形態において、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10種以上の診断マーカーの存在又はレベルが個体試料中で決定される。ある例において、サイトカインは、下記のサイトカインの1種以上を含む。好ましくは、IL−8、IL−1β、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、レプチン、オステオプロテジェリン(OPG)、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4及び/又はCXCL7/NAP−2の存在又はレベルが個体試料中で決定される。ある他の例において、成長因子は、下記の成長因子の1種以上を含む。好ましくは、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)及び/又はアンフィレギュリン(SDGF)の存在又はレベルが個体試料中で決定される。
一部の例において、抗好中球抗体は、ANCA、ANCA、cANCA、NSNA、SAPPA及びこれらの組合せを含む。他の例において、ASCAは、ASCA−IgA、ASCA−IgG、ASCA−IgM及びこれらの組合せを含む。さらなる例において、抗菌性抗体は、抗OmpC抗体、抗フラジェリン抗体、抗I2抗体及びこれらの組合せを含む。
ある例において、リポカリンは、下記のリポカリンの1種以上を含む。好ましくは、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)並びに/又はNGAL及びマトリックスメタロプロテイナーゼの複合体(例えば、NGAL/MMP−9複合体)の存在又はレベルが、個体試料中で決定される。他の例において、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、下記のMMPの1種以上を含む。好ましくは、MMP−9の存在又はレベルが個体試料中で決定される。さらなる例において、組織メタロプロテイナーゼ阻害因子(TIMP)は、下記のTIMPの1種以上を含む。好ましくは、TIMP−1の存在又はレベルが個体試料中で決定される。いっそうさらなる例において、アルファ−グロブリンは、下記のアルファ−グロブリンの1種以上を含む。好ましくは、アルファ−2−マクログロブリン、ハプトグロビン及び/又はオロソムコイドの存在又はレベルが、個体試料中で決定される。
ある他の例において、アクチン切断タンパク質は、下記のアクチン切断タンパク質の1種以上を含む。好ましくは、ゲルゾリンの存在又はレベルが個体試料中で決定される。追加の例において、S100タンパク質は、例えば、カルグラニュリンを含む下記のS100タンパク質の1種以上を含む。さらに他の例において、フィブリノペプチドは、下記のフィブリノペプチドの1種以上を含む。好ましくは、フィブリノペプチドA(FIBA)の存在又はレベルが個体試料中で決定される。さらなる例において、タキキニン、例えば、サブスタンスP、ニューロキニンA及び/又はニューロキニンBの存在又はレベルが、個体試料中で決定される。
一部の例において、セリンプロテアーゼは、下記のセリンプロテアーゼの1種以上を含む。好ましくは、セリンプロテアーゼ、例えば、トリプターゼ(例えば、β−トリプターゼ)の存在又はレベルが、個体試料中で決定される。他の例において、プロスタグランジンは、下記のプロスタグランジンの1種以上を含む。好ましくは、プロスタグランジン、例えば、PGE2の存在又はレベルが個体試料中で決定される。
他の診断マーカー、例えば、抗ラクトフェリン抗体、L−セレクチン/CD62L、エラスターゼ、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、抗U1−70kDa自己抗体、閉鎖帯1(ZO−1)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、血清アミロイドA及び/又はガストリンなどの存在又はレベルを決定することもできる。
A.セリンプロテアーゼ
試料中の少なくとも1種のセリンプロテアーゼの存在又はレベルの決定は、本発明において有用である。本明細書において使用される用語「セリンプロテアーゼ」は、活性部位のアミノ酸の1個がセリンであるプロテアーゼのファミリーの任意のメンバーを含む。セリンプロテアーゼの非限定的な例は、トリプターゼ(例えば、α−トリプターゼ、β−トリプターゼ、γ−トリプターゼ及び/又はΔ−トリプターゼ)、エラスターゼ、キモトリプシン、トリプシン、サブチリシン及びこれらの組合せを含む。トリプターゼは、種々の生体液中で計測することができ、マスト細胞活性化についての有用なマーカーとして機能することができるヒトマスト細胞の豊富な特異的中性プロテアーゼである。実際、トリプターゼは、IBSにおけるマスト細胞活性化についてのマーカーとして使用することができる。トリプターゼは、おそらくプロテアーゼ活性化受容体2の活性化によって、マスト細胞のプロ分泌及びプロ炎症効果を説明する良好な候補と考えられているが、他のマスト細胞メディエーターも関与し得る。好ましい実施形態において、β−トリプターゼ(TPBAB1)は、対象からの血液又は血清試料中で検出される。β−トリプターゼは、一般に、トリプターゼベータ−1又はトリプターゼIとも称され、トリプターゼアルファ/ベータ1遺伝子(TPSAB1;NM_003294)によってコードされ、翻訳されて275個のアミノ酸のトリプターゼベータ−1前駆体タンパク質(NP_003285)が形成される。次いで、前駆体タンパク質はシグナルペプチド(アミノ酸1〜18)及び活性化ペプチドプロペプチド(アミノ酸19〜30)の除去によりプロセッシングされ、成熟トリプターゼベータ−1ポリペプチド(アミノ酸31〜275;UniProt:Q15661)がもたらされる。
ある例において、特定のセリンプロテアーゼ、例えば、トリプターゼの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどにより、mRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のセリンプロテアーゼ、例えば、トリプターゼの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清試料中のトリプターゼの存在又はレベルを決定するために好適なELISA技術は、本明細書に記載されている。特に好ましい実施形態において、β−トリプターゼのレベルは、検出抗体がアルカリホスファターゼにコンジュゲートされた抗β−トリプターゼ抗体、例えば、市販の抗体G3であるサンドイッチELISAアッセイを使用して血液又は血清試料中で検出される。この場合、アッセイの感度を向上させるため、発光基質、例えば、CPSD(ジナトリウム3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルホスフェート)を使用することができる。
B.プロスタグランジン
試料中の少なくとも1種のプロスタグランジンの存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される用語「プロスタグランジン」は、脂肪酸から酵素的に誘導され、動物体内における重要な機能を有する脂質化合物の群の任意のメンバーを含む。すべてのプロスタグランジンは、5炭素環を含む20個の炭素原子を含有する。プロスタグランジンは、トロンボキサン及びプロスタサイクリンと一緒になって、プロスタノイドクラスの脂肪酸誘導体を形成する。プロスタノイドクラスは、エイコサノイドのサブクラスである。プロスタグランジンの非限定的な例は、プロスタグランジンI2(PGI2)、プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF2α(PGF2α)及びこれらの組合せを含む。好ましい実施形態において、プロスタグランジンE2(PGE2)が、対象、例えば、IBSの疑いがある対象からの血液又は血清試料中で検出される。ある実施形態において、PGE2は、ELISA又は化学発光アッセイにより検出することができる。血清試料中のPGE2の存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Cayman Chemical Co.(Ann Arbor,MI)から入手可能である。
C.ヒスタミン
試料中のヒスタミンの存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される用語「ヒスタミン」は、局所免疫応答に関与し、腸内の生理学的機能を調節し、神経伝達物質として作用する生体アミンを含む。ヒスタミンは、炎症応答を誘引する。外部病原体に対する免疫応答の一部として、ヒスタミンは、好塩基球及び結合組織付近に見出されるマスト細胞により産生される。ヒスタミンは、白血球及び他のタンパク質に対する毛細血管の浸透性を増加させて患部組織内でこれらを外部侵入物と交戦させる。このことは、実質的にすべての動物体細胞内で見出される。好ましい実施形態において、ヒスタミンは、対象、例えば、IBSの疑いがある対象からの血液又は血清試料中で検出される。ある実施形態において、ヒスタミンは、ELISA又は化学発光アッセイにより検出することができる。血清試料中のヒスタミンの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Immunotech(Czech Republic)及びCayman Chemical Co.(Ann Arbor,MI)から入手可能である。
D.サイトカイン
試料中の少なくとも1種のサイトカインの存在又はレベルの決定は、本発明において特に有用である。本明細書において使用される「サイトカイン」という用語は、一連の免疫システム機能を調節する免疫細胞によって分泌される、種々のポリペプチド又はタンパク質のいずかを含み、小分子サイトカイン、例えば、ケモカインを包含する。「サイトカイン」という用語は、例えば、体重、造血、血管新生、創傷治癒、インスリン耐性、免疫応答及び炎症応答の調節において機能する脂肪細胞によって分泌されるサイトカインの群を含むアディポサイトカインも含む。
ある態様において、限定されるものではないが、TNF−α、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、オステオプロテジェリン(OPG)、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL−1α、IL−1β、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、可溶性IL−6受容体(sIL−6R)、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17、IL−23及びIL−27を含む少なくとも1種のサイトカインの存在又はレベルが、試料中で決定される。ある他の態様において、少なくとも1種のケモカイン、例えば、CXCL1/GRO1/GROα、CXCL2/GRO2、CXCL3/GRO3、CXCL4/PF−4、CXCL5/ENA−78、CXCL6/GCP−2、CXCL7/NAP−2、CXCL9/MIG、CXCL10/IP−10、CXCL11/I−TAC、CXCL12/SDF−1、CXCL13/BCA−1、CXCL14/BRAK、CXCL15、CXCL16、CXCL17/DMC、CCL1、CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL6/C10、CCL7/MCP−3、CCL8/MCP−2、CCL9/CCL10、CCL11/エオタキシン、CCL12/MCP−5、CCL13/MCP−4、CCL14/HCC−1、CCL15/MIP−5、CCL16/LEC、CCL17/TARC、CCL18/MIP−4、CCL19/MIP−3β、CCL20/MIP−3α、CCL21/SLC、CCL22/MDC、CCL23/MPIF1、CCL24/エオタキシン−2、CCL25/TECK、CCL26/エオタキシン−3、CCL27/CTACK、CCL28/MEC、CL1、CL2及びCX3CL1などの存在又はレベルが、試料中で決定される。あるさらなる態様において、限定されるものではないが、レプチン、アディポネクチン、レジスチン、活性型又は総プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PAI−1)、ビスファチン及びレチノール結合タンパク質4(RBP4)を含む少なくとも1種のアディポサイトカインの存在又はレベルが、試料中で決定される。好ましくは、IL−8、IL−1β、TWEAK、レプチン、OPG、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4及び/又はCXCL7/NAP−2の存在又はレベルが決定される。
ある例において、特定のサイトカインの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のサイトカインの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿、唾液又は尿試料中のサイトカイン、例えば、IL−8、IL−1β、MIP−3β、GROα、CXCL4/PF−4又はCXCL7/NAP−2の存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えばR&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)、Neogen Corp.(Lexington,KY)、Alpco Diagnostics(Salem,NH)、Assay Designs,Inc.(Ann Arbor,MI)、BD Biosciences Pharmingen(San Diego,CA)、Invitrogen(Camarillo,CA)、Calbiochem(San Diego,CA)、CHEMICON International,Inc.(Temecula,CA)、Antigenix America Inc.(Huntington Station,NY)、QIAGEN Inc.(Valencia,CA)、Bio−Rad Laboratories,Inc.(Hercules,CA)及び/又はBender MedSystems Inc.(Burlingame,CA)から入手可能である。
1.TWEAK
TWEAKは、構造的に関連するサイトカインのTNFスーパーファミリーのメンバーである。全長膜アンカー型TWEAKは、多くの細胞型の表面上に見出すことができ、タンパク質分解性プロセッシングによって生じる、より小さな生物学的活性型は細胞外でも検出されている(例えば、Chicheportiche et al.,J.Biol.Chem.,272:32401−32410(1997)を参照)。TWEAKは、繊維芽細胞成長因子誘導性14(Fn14;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー12A又はTNFRSF12Aとしても公知)と命名されたTNF受容体スーパーファミリーメンバーと結合することによって作用する。TWEAKは、細胞成長及び血管新生の刺激、炎症性サイトカインの誘導並びにアポトーシスの刺激を含む複数の生物学的活性を有する(例えば、Wiley et al.,Cytokine Growth Factor Rev.,14:241−249(2003)を参照)。特に、TWEAKは、繊維芽細胞及び滑膜細胞において、PGE2、MMP−1、IL−6、IL−8、RANTES及びIP−10の発現を誘導すること並びに内皮細胞においてICAM−1、E−セレクチン、IL−8及びMCP−1の発現を上方調節することが示されている(例えば、Campbell et al.,Front.Biosci.,9:2273−2284(2004)を参照)。FN14受容体へのTWEAKの結合又は構成的なFn14の過剰発現は、免疫又は炎症過程、発癌、癌治療耐性及び腫瘍形成において重要な役割を担うNF−KBシグナリング経路を活性化することも実証されている(例えば、Winkles et al.,Cancer Lett.,235:11−17(2006);及びWinkles et al.,Front.Biosci.,12:2761−2771(2007)を参照)。当業者は、TWEAKが腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー12(TNFSF12)、APO3リガンド(APO3L)、CD255、DR3リガンド、FN14及びUNQ181/PRO207としても公知であることを認識する。
生物試料、例えば、血清、血漿、唾液又は尿試料中のTWEAKの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Antigenix America Inc.(Huntington Station,NY)、Bender MedSystems Inc.(Burlingame,CA)、Agdia Inc.(Elkhart,IN)、American Research Products Inc.(Belmont,MA)、Biomeda Corp.(Foster City,CA)、BioVision,Inc.(Mountain View,CA)及びKamiya Biomedical Co.(Seattle,WA)から入手可能である。
2.オステオプロテジェリン(OPG)
OPGは、構造的に関連するサイトカインのTNFスーパーファミリーの401個のアミノ酸メンバーである。OPGは、NFKBの受容体活性化因子(RANK)と相同性を示し、RANKリガンド(RANKL;OPGリガンド(OPGL)としても公知)の可溶性デコイ受容体として作用することによってマクロファージの破骨細胞への分化を阻害し、破骨細胞の吸収を調節する。結果としてOPG−RANK−RANKL系は、破骨細胞の形成、機能及び生存において直接的かつ本質的な役割を担う。OPG−RANK−RANKL系はまた、癌細胞遊走をモジュレートし、こうして骨への転移の発現を制御することが示されている。当業者は、OPGがオステオプロテジェリン及び破骨細胞形成阻害因子(OCIF)としても公知であることを認識する。
血清、血漿、唾液又は尿試料中のOPGの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Antigenix America Inc.(Huntington Station,NY)、Immunodiagnostic Systems Ltd.(Boldon,United Kingdom)及びBio Vender,LLC(Candler,NC)から入手可能である。
3.レプチン
レプチンは、サイトカインのアディポサイトカインファミリーのメンバーであり、食物の取り込みを阻害し、エネルギー消費を刺激することによって体重の調節において決定的な役割を担う16kDのペプチドホルモンである。レプチンは主に脂肪細胞によって合成され、体脂肪含量に比例した量で血漿中を循環する(例えば、Maffei et al.,Nat.Med.,1:1155−1161(1995);Considine et al.,Diabetes,45:992−994(1996)を参照)。レプチンは、異種間で非常に高い程度の相同性を示し、他のサイトカインとも構造が類似している(例えば、Madej et al.,FEBS Lett.,373:13−18(1995)を参照)。レプチンは、細胞外モチーフである4個のシステイン残基及び多数のフィブロネクチンタイプIIIドメインを特徴とする受容体のI型サイトカインスーパーファミリーの一回膜貫通ドメイン受容体であるレプチン受容体を介して作用する(例えば、Heim,Eur.J.Clin.Invest.,26:1−12(1996)を参照)。レプチン受容体は、ホモ二量体として存在することが公知であり、受容体にリガンドが結合した後に生じる構造変化によって活性化される(例えば、Devos et al.,J.Biol.Chem.,272:18304−18310(1997)を参照)。オルタナティブスライシングによって生じる、6種のレプチン受容体のアイソフォームがこれまでに同定されている(例えば,Wang et al.,Nature,393:684−688(1998);Lee et al.,Nature,379:632−635(1996)を参照)。
生物試料、例えば、血清、血漿、唾液又は尿試料中のレプチンの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)、B−Bridge International(Mountain View,CA)、Neogen Corp.(Lexington,KY)、Assay Designs,Inc.(Ann Arbor,MI)、Invitrogen(Camarillo,CA)、CHEMICON International,Inc.(Temecula,CA)、Antigenix America Inc.(Huntington Station,NY)、LINCO Research,Inc.(St.Charles,MO)、Diagnostic Systems Laboratories,Inc.(Webster,TX)、Immuno−Biological Labratories,Inc.(Minneapolis,MN)及びCayman Chemical Co.(Ann Arbor,MI)から入手可能である。
E.成長因子
試料中の1種以上の成長因子の存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「成長因子」という用語は、細胞増殖及び/又は細胞分化を刺激することができる種々のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のいずれかを含む。
ある態様において、限定されるものではないが、上皮細胞成長因子(EGF)、ヘパリン結合性上皮成長因子(HB−EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、色素上皮由来因子(PEDF;SERPINF1としても公知)、アンフィレギュリン(AREG;神経鞘腫由来成長因子(SDGF)としても公知)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、肝細胞成長因子(HGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)、骨形成タンパク質(例えばBMP1−BMP15)、血小板由来成長因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)、β神経成長因子(β−NGF)、神経栄養因子(例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT3)、ニューロトロフィン4(NT4)など)、成長分化因子−9(GDF−9)、顆粒球・コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ミオスタチン(GDF−8)、エリスロポエチン(EPO)及びトロンボポエチン(TPO)を含む少なくとも1種の成長因子の存在又はレベルが、試料中で決定される。好ましくは、EGF、VEGF、PEDF、アンフィレギュリン(SDGF)及び/又はBDNFの存在又はレベルが決定される。
ある例において、特定の成長因子の存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどにより、mRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定の成長因子の存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿、唾液又は尿試料中の成長因子、例えば、EGF、VEGF、PEDF、SDGF又はBDNFの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Antigenix America Inc.(Huntington Station,NY)、Promega(Madison,WI)、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)、Invitrogen(Camarillo,CA)、CHEMICON International,Inc.(Temecula,CA)、Neogen Corp.(Lexington,KY)、PeproTech(Rocky Hill,NJ)、Alpco Diagnostics(Salem,NH)、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford,IL)及び/又はAbazyme(Needham,MA)から入手可能である。
F.リポカリン
試料中の1種以上のリポカリンの存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「リポカリン」という用語は、いくつかの共通する分子認識特性:一連の疎水性小分子と結合する能力;特異的な細胞表面受容体への結合;及び可溶性高分子との複合体の形成を特徴とする、種々の小分子細胞外タンパク質のいずれかを含む(例えば、Flowers,Biochem.J.,318:1−14(1996)を参照)。リポカリンの生物学的機能の変化は、これらの特徴の1種以上によって媒介される。リポカリンタンパク質ファミリーは顕著な機能の多様性を示し、レチノール輸送、無脊椎動物の隠蔽色、嗅覚及びフェロモン輸送並びにプロスタグランジンの生合成における役割を担う。リポカリンは、細胞の恒常性の調節及び免疫応答の調節に関与し、キャリアタンパク質として、内因性及び外因性化合物の一般的なクリアランスにも作用する。リポカリンは配列レベルにおいて顕著な多様性を有するが、これらの3次元構造は統一した特徴がある。リポカリンの結晶構造は高度に保存されており、内部のリガンド結合部位を囲む、単一の8本鎖の連続的に水素結合した逆平行ベータバレルを含む。
ある態様において、限定されるものではないが、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL);ヒト好中球リポカリン(HNL)又はリポカリン−2としても公知)、フォンエブネル腺タンパク質(VEGP);リポカリン−1としても公知)、レチノール結合タンパク質(RBP)、プルプリン(PURP)、レチノイン酸結合タンパク質(RABP)、α2u−グロブリン(A2U)、主要尿タンパク質(MUP)、ビリン結合タンパク質(BBP)、α−クルスタシアニン、妊娠性タンパク質14(PP14)、β−ラクトグロブリン(Blg)、α1−ミクログロブリン(A1M)、C8のガンマ鎖(C8γ)、アポリポタンパク質D(ApoD)、ラザリロ(LAZ)、プロスタグランジンD2シンターゼ(PGDS)、休眠特異的タンパク質(QSP)、脈絡叢タンパク質、臭気物質結合タンパク質(OBP)、α11−酸性糖タンパク質(AGP)、プロバシン(PBAS)、アフロジシン、オロソムコイド及びプロゲステロン関連子宮内膜タンパク質(PAEP)を含む少なくとも1種のリポカリンの存在又はレベルが、試料中で決定される。ある他の態様において、例えば、NGAL及びマトリックスメタロプロテイナーゼの複合体(例えば、NGAL/MMP−9複合体)を含む少なくとも1種のリポカリン複合体の存在又はレベルが決定される。好ましくは、NGAL又はMMP−9とのこの複合体の存在又はレベルが決定される。
ある例において、特定のリポカリンの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のリポカリンの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿又は尿試料中のリポカリン、例えば、NGALの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、AntibodyShop A/S(Gentofte,Denmark)、LabClinics SA(Barcelona,Spain)、Lucerna−Chem AG(Luzern,Switzerland)、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)及びAssay Designs,Inc.(Ann Arbor,MI)から入手することができる。NGAL/MMP−9複合体の存在又はレベルを決定するための適切なELISAキットは、例えばR&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から入手可能である。追加のNGAL及びNGAL/MMP−9複合体のELISA技術は、例えば、Kjeldsen et al.,Blood,83:799−807(1994);及びKjeldsen et al.,J.Immunol.Methods,198:155−164(1996)に記載されている。
G.マトリックスメタロプロテイナーゼ
試料中の少なくとも1種のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「マトリックスメタロプロテイナーゼ」又は「MMP」という用語は、種々の細胞外マトリックスタンパク質を分解し、細胞表面受容体を開裂させ、アポトーシスリガンドを放出し、及び/又はケモカインを調節することができる亜鉛依存型エンドペプチダーゼを含む。MMPは、細胞挙動、例えば、細胞増殖、遊走(接着/分散)、分化、血管新生および宿主防御において主要な役割を担うとも考えられている。
ある態様において、限定されるものではないが、MMP−1(間質性コラゲナーゼ)、MMP−2(ゼラチナーゼA)、MMP−3(ストロメリシン−1)、MMP−7(マトリリシン)、MMP−8(好中球コラゲナーゼ)、MMP−9(ゼラチナーゼB)、MMP−10(ストロメライシン−2)、MMP−11(ストロメリシン−3)、MMP−12(マクロファージメタロエラスターゼ)、MMP−13(コラゲナーゼ−3)、MMP−14、MMP−15、MMP−16、MMP−17、MMP−18(コラゲナーゼ−4)、MMP−19、MMP−20(エナメリシン)、MMP−21、MMP−23、MMP−24、MMP−25、MMP−26(マトリリシン−2)、MMP−27及びMMP−28(エピリシン)を含む少なくとも1種の少なくとも1種のMMPの存在又はレベルが試料中で決定される。好ましくは、MMP−9の存在又はレベルが決定される。
ある例において、特定のMMPの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のMMPの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清又は血漿試料中のMMP、例えば、MMP−9の存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Calbiochem(San Diego,CA)、CHEMICON International,Inc.(Temecula,CA)及びR&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から入手可能である。
H.組織メタロプロテイナーゼ阻害因子
試料中の少なくとも1種の組織メタロプロテイナーゼ阻害因子(TIMP)の存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「組織メタロプロテイナーゼ阻害因子」又は「TIMP」という用語は、MMPを阻害することができるタンパク質を含む。
ある態様において、限定されるものではないが、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3及びTIMP−4を含む少なくとも1種の少なくとも1種のTIMPの存在又はレベルが試料中で決定される。好ましくは、TIMP−1の存在又はレベルが決定される。
ある例において、特定のTIMPの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のTIMPの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清又は血漿試料中のTIMP、例えば、TIMP−1の存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Alpco Diagnostics(Salem,NH)、Calbiochem(San Diego,CA)、Invitrogen(Camarillo,CA)、CHEMICON International,Inc.(Temecula,CA)及びR&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から入手可能である。
I.グロブリン
試料中の少なくとも1種のグロブリンの存在又はレベルの決定も、本発明においては有用である。本明細書において使用される「グロブリン」という用語は、血清電気泳動時にアルブミンよりも移動しない血清タンパク質ファミリーの異種系列の任意のメンバーを含む。タンパク質電気泳動は、典型的には、グロブリンを以下の3種のカテゴリー:アルファ−グロブリン(すなわち、アルファ−1−グロブリン又はアルファ−2−グロブリン);ベータ−グロブリン;及びガンマ−グロブリンにカテゴライズするために使用される。
アルファ−グロブリンは、アルカリ又は電荷を帯びた溶液中でよく移動する血漿中の球状タンパク質の集団を含む。これらは、一般に、ある血液プロテアーゼ及び阻害活性を阻害するように機能する。アルファ−グロブリンの例は、限定されるものではないが、アルファ−2−マクログロブリン(α2−MG)、ハプトグロビン(Hp)、オロソムコイド、アルファ−1−アンチトリプシン、アルファ−1−アンチキモトリプシン、アルファ−2−アンチプラスミン、アンチトロンビン、セルロプラスミン、ヘパリン補因子II、レチノール結合タンパク質及びトランスコルチンを含む。好ましくは、α2−MG、ハプトグロビン及び/又はオロソムコイドの存在又はレベルが決定される。ある例において、1種以上のハプトグロビンアロタイプ、例えば、Hp前駆体、Hpβ、Hpα1及びHpα2などが決定される。
ある例において、特定のグロブリンの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のグロブリンの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿又は尿試料中のグロブリン、例えば、α2−MG、ハプトグロビン又はオロソムコイドの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、GenWay Biotech,Inc.(San Diego,CA)及び/又はImmundiagnostik AG(Bensheim,Germany)から入手可能である。
J.アクチン切断タンパク質
試料中の少なくとも1種のアクチン切断タンパク質の存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「アクチン切断タンパク質」という用語は、アクチンのリモデリング及び細胞運動性の調節に関与するタンパク質ファミリーの任意のメンバーを含む。アクチン切断タンパク質の非限定的な例は、ゲルゾリン(ブレビン又はアクチン脱重合因子としても公知)、ビリン、フラグミン及びアドセベリンを含む。例えば、ゲルゾリンは白血球、血小板及び他の細胞のタンパク質であり、マイクロモーラ−未満のカルシウム存在下でアクチンフィラメントを切断し、これによって細胞質のアクチンゲルをゾル化する。
ある例において、特定のアクチン切断タンパク質の存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のアクチン切断タンパク質の存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血漿試料中のアクチン切断タンパク質、例えば、ゲルゾリンの存在又はレベルを決定するために好適なELISA技術は、例えば、Smith et al.,J.Lab.Clin.Med.,110:189−195(1987);及びHiyoshi et al.,Biochem.Mol.Biol.Int.,32:755−762(1994)に記載されている。
K.S100タンパク質
試料中の少なくとも1種のS100タンパク質の存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「S100タンパク質」という用語は、細胞型特異的な発現及び2個のEFハンドカルシウム結合ドメインの存在を特徴とする低分子量酸性タンパク質ファミリーの任意のメンバーを含む。ヒトには、少なくとも21種の異なるタイプのS100タンパク質が存在する。この名称は、S100タンパク質が中性pHの硫酸アンモニウム中で100%可溶である事実に由来する。ほとんどのS100タンパク質は、ホモ2量体を形成し、非共有結合によって一緒に保持される2個の同一のポリペプチドからなる。S100タンパク質は構造的にはカルモジュリンと類似するが、環境因子に応じて異なるレベルにおいて特定の細胞内で細胞特異的に発現する点で異なる。S100タンパク質は、通常、神経冠に由来する細胞(例えば、シュワン細胞、メラノサイト、グリア細胞)、軟骨細胞、脂肪細胞、筋上皮細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞及びケラチノサイト内に存在する。S100タンパク質は、種々の細胞内及び細胞外の機能、例えば、タンパク質のリン酸化、転写因子、カルシウムイオン(Ca2+)の恒常性、細胞骨格構成成分の動態、酵素活性、細胞成長及び分化並びに炎症応答の調節に関与している。
カルグラニュリンは、腎上皮細胞及び好中球を含む複数の細胞タイプにおいて発現されるS100タンパク質であり、慢性炎症の病態下における浸潤単球及び顆粒球中に豊富である。カルグラニュリンの例は、限定されるものではないが、カルグラニュリンA(S100A8又はMRP−8としても公知)、カルグラニュリンB(S100A9又はMRP−14としても公知)及びカルグラニュリンC(S100A12としても公知)を含む。
ある例において、特定のS100タンパク質の存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のS100タンパク質の存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿、又は尿試料中のS100タンパク質、例えば、カルグラニュリンA(S100A8)、カルグラニュリンB(S100A9)の存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Peninsula Laboratories Inc.(San Carlos,CA)及びHycult bitechnology b.v.(Uden,The Netherlands)から入手可能である。
S100A8及びS100A9の複合体カルプロテクチンは、好中球、単球及びケラチノサイトの細胞質におけるカルシウム及び亜鉛結合性タンパク質である。カルプロテクチンは、好中性顆粒球及びマクロファージにおける主要なタンパク質であり、これらの細胞中の細胞質分画における総タンパク質の60%ほどを占める。したがって、カルプロテクチンは好中球の代謝回転の代理マーカーである。糞便中のカルプロテクチン濃度は、腸粘膜好中球の浸潤の強度及び炎症の重症度と相関する。一部の例において、カルプロテクチンは、少量(50〜100mg)の便試料を使用するELISA法により計測することができる(例えば、Johne et al.,Scand J Gastroenterol.,36:291−296(2001)を参照)。
L.タキキニン
試料中の少なくとも1種のタキキニンの存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「タキキニン」という用語は、カルボキシ末端の配列Phe−X−Gly−Leu−Met−NH2を共有するアミド化されたニューロペプチドを含む。タキキニンは、典型的には、1種以上のタキキニン受容体(例えば、TACR1、TACR2及び/又はTACR3)に結合する。
ある態様において、限定されるものではないが、サブスタンスP、ニューロキニンA及びニューロキニンBを含む少なくとも1種のタキキニンの存在又はレベルが試料中で決定される。好ましくは、サブスタンスPの存在又はレベルが決定される。サブスタンスPは、中枢及び末梢神経系の両方において、神経末端から放出される、長さ11アミノ酸のペプチドである。サブスタンスP放出神経が分布する非常に多くの生物学的な部位には、皮膚、腸、胃、膀胱及び心血管系がある。
ある例において、特定のタキキニンの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、特定のタキキニンの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿、唾液又は尿試料中のタキキニン、例えば、サブスタンスPの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、MD Biosciences Inc.(St.Paul,MN)、Assay Designs,Inc.(Ann Arbor,MI)、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)及びCayman Chemical Co.(Ann Arbor,MI)から入手可能である。
M.グレリン
試料中のグレリンの存在又はレベルの決定も、本発明においては有用である。本明細書において使用される「グレリン」という用語は、成長ホルモン分泌促進受容体(GHSR)に対する内因性リガンドであり、成長ホルモン放出の調節に関与する28アミノ酸のペプチドを含む。グレリンは、典型的には、3番目のセリン残基においてn−オクタノイル基によってアシル化されて活性型グレリンが形成され得る。あるいは、グレリンは、非アシル化型(すなわち、デスアシルグレリン)として存在することができる。グレリンは、胃底の粘膜内に主に局在する特殊化クロム親和性細胞内で主として発現され、レプチンとは反対の代謝効果を有する。グレリンは、食物の取り込みを刺激し、炭水化物の使用を向上させ、脂肪の利用を低減させ、胃の運動及び酸分泌を増加させ、自発運動を低減させる。
ある例において、グレリンの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、グレリンの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿、唾液又は尿試料中の活性型グレリン又はデスアシル−グレリンの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Alpco Diagnostics(Salem,NH)、Cayman Chemical Co.(Ann Arbor,MI)、LINCO Research,Inc.(St.Charles,MO)及びDiagnostic Systems Laboratories,Inc.(Webster,TX)から入手可能である。
N.ニューロテンシン
試料中のニューロテンシンの存在又はレベルの決定も、本発明においては有用である。本明細書において使用される「ニューロテンシン」という用語は、中枢神経系及び胃腸管にわたり広く分布するトリデカペプチドを含む。ニューロテンシンは、いくつかの胃腸機能及び疾患状態の発現及び進行において重要なメディエーターとして同定されており、神経、上皮細胞及び/又は免疫及び炎症系の細胞に対して直接的又は間接的に作用する特定の受容体と相互作用することによって、その効果を発揮する(例えば、Zhao et al.,Peptides,27:2434−2444(2006)を参照)。
ある例において、ニューロテンシンの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、ニューロテンシンの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。試料中のニューロテンシンの存在又はレベルを決定するために好適なELISA技術は、例えば、Davis et al.,J.Neurosci.Methods,14:15−23(1985);及びWilliams et al.,J.Histochem.Cytochem.,37:831−841(1989)に記載されている。
O.コルチコトロピン放出ホルモン
試料中のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH;コルチコトロピン放出因子又はCRFとしても公知)の存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「コルチコトロピン放出ホルモン」、「CRH」、「コルチコトロピン放出因子」又は「CRF」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトにおけるストレスに対する応答の近位部を媒介する視床下部の室傍核によって分泌される41アミノ酸ペプチドを含む。CRHは、典型的には、1種以上のコルチコトロピン放出ホルモン受容体(例えば、CRHR1及び/又はCRHR2)に結合する。CRHは、視床下部、脊髄、胃、脾臓、十二指腸、副腎及び胎盤によって発現される。
ある例において、CRHの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、CRHの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えば、ELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。血清、血漿、唾液、又は尿試料中のCRHの存在又はレベルを決定するために好適なELISAキットは、例えば、Alpco Diagnostics(Salem,NH)及びCosmo Bio Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)から入手可能である。
P.抗好中球抗体
試料中のANCAレベル及び/又はpANCAの存在又は非存在の決定も、本発明においては有用である。本明細書において使用される「抗好中球細胞質抗体」又は「ANCA」という用語は、好中球の細胞質及び/又は核成分に対する抗体を含む。ANCA活性は、好中球におけるANCAの染色パターン:(1)核周囲の際立った明るさを有しない好中球細胞質の染色(cANCA);(2)核の外縁周りの核周囲の染色(pANCA);(3)核の内縁周りの核周囲の染色(NSNA);及び(4)好中球全体にわたる斑点を有する拡散した染色(SAPPA)に基づき、いくつかの幅のあるカテゴリーに分割することができる。ある例において、pANCA染色は、DNアーゼ処理に感受性を示す。ANCAという用語は、限定されるものではないが、cANCA、pANCA、NSNA及びSAPPAを含む、すべての種々の抗好中球反応性を包含する。同様にANCAという用語は、限定されるものではないが、免疫グロブリンA及びGを含むすべての免疫グロブリンのアイソタイプを包含する。
個体からの試料中のANCAレベルは、例えば、アルコール固定された好中球を用いて免疫アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定することができる。特定のカテゴリーのANCA、例えば、pANCAの存在又は非存在は、例えば、免疫組織化学アッセイ、例えば、間接的蛍光抗体(IFA)アッセイを使用して決定することができる。好ましくは、試料中のpANCAの存在又は非存在は、DNアーゼ処理され、固定された好中球を用いて免疫蛍光アッセイを使用して決定される。固定された好中球に加えて、ANCAレベルを決定するために好適なANCAに特異的な抗原は、限定されるものではないが、非精製の又は部分精製された好中球抽出物;精製タンパク質、タンパク質断片又は合成ペプチド、例えば、ヒストンH1又はこれらのANCA反応性断片(例えば、米国特許第6,074,835号を参照);ヒストンH1様抗原、ポーリン抗原、バクテロイド抗原又はこれらのANCA反応性断片(例えば、米国特許第6,033,864号を参照);分泌小胞抗原又はこのANCA反応性断片(例えば、米国特許出願第08/804,106号を参照);及び抗ANCAのイディオタイプの抗体を含む。当業者は、ANCAに特異的な追加の抗原の使用が本発明の範囲内であることを認識する。
Q.抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体
試料中のASCA(例えば、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgG)レベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「抗サッカロマイセス・セレビシエ免疫グロブリンA」又は「ASCA−IgA」という用語は、S.セレビシエと特異的に反応する免疫グロブリンAのアイソタイプの抗体を含む。同様に、「抗サッカロマイセス・セレビシエ免疫グロブリンG」又は「ASCA−IgG」という用語は、S.セレビシエと特異的に反応する免疫グロブリンGのアイソタイプの抗体を含む。
試料がASCA−IgA又はASCA−IgGについて陽性であるか否かの決定は、ASCAに特異的な抗原を使用して行われる。このような抗原は、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgGによって特異的に結合される任意の抗原又は抗原の混合物であることができる。ASCA抗体は、最初はS.セレビシエへの結合能を特徴としていたが、当業者は、ASCAによって特異的に結合される抗原が、S.セレビシエから又は抗原がASCA抗体に特異的に結合することができる限り種々の他の源から得ることができることを理解する。したがって、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGレベルを決定するために使用することができるASCAに特異的な抗原の例示的な源は、限定されるものではないが、完全死滅酵母細胞、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)又はカンジダ(Candida)細胞;酵母細胞壁マンナン、例えば、ホスホペプチドマンナン(PPM);オリゴ糖、例えば、オリゴマンノシド;ネオ糖脂質;抗ASCAイディオタイプ抗体などを含む。酵母の異なる種及び株、例えば、S.セレビシエ株Su1、Su2、CBS1315若しくはBM156又はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)株VW32は、ASCA−IgA及び/又はASCA−IgGに特異的な抗原としての使用に好適である。ASCAに特異的な精製及び合成抗原も、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGレベルの決定における使用に好適である。精製抗原の例は、限定されるものではないが、精製オリゴ糖抗原、例えば、オリゴマンノシドを含む。合成抗原の例は、限定されるものではないが、合成オリゴマンノシド、例えば、米国特許出願公開第20030105060号に記載のもの、例えば、D−Manβ(1−2)D−Manβ(1−2)D−Manβ(1−2)D−Man−OR、D−Manα(1−2)D−Manα(1−2)D−Manα(1−2)D−Man−OR、及びD−Manα(1−3)D−Manα(1−2)D−Manα(1−2)D−Man−ORであり、Rは水素原子、C1からC20のアルキル又は場合により標識された連結基である。
酵母細胞壁マンナン、例えば、PPMの調製物は、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGレベルの決定において使用することができる。このような水溶性表面抗原は、当分野において公知の適切な任意の抽出技術、例えば、高圧滅菌処理によって調製することができ、又は市販品として得ることができる(例えば、Lindberg et al.,Gut,33:909−913(1992)を参照)。PPMの酸安定性分画はまた、本発明の統計的アルゴリズムにおいて有用である(例えば、Sendid et al.,Clin.Diag.Lab.Immunol.,3:219−226(1996)を参照)。試料中のASCAレベルの決定において有用である例示的なPPMは、S.ウバラム(S.uvarum)株ATCC#38926に由来する。
精製オリゴ糖抗原、例えば、オリゴマンノシドも、試料中のASCA−IgA及び/又はASCA−IgGレベルの決定において有用であり得る。精製オリゴマンノシド抗原は、例えば、Faille et al.,Eur.J.Microbiol.Infect.Dis.,11:438−446(1992)に記載のとおり、好ましくは、ネオ糖脂質に変換される。当業者は、このようなオリゴマンノシド抗原のASCAとの反応性が、マンノシル鎖長(Frosh et al.,Proc Natl.Acad.Sci.USA,82:1194−1198(1985));アノマー配置(Fukazawa et al.,In“Immunology of Fungal Disease,”E.Kurstak(ed.),Marcel Dekker Inc.,New York,pp.37−62(1989);Nishikawa et al.,Microbiol.Immunol.,34:825−840(1990);Poulain et al.,Eur.J.Clin.Microbiol.,23:46−52(1993);Shibata et al.,Arch.Biochem.Biophys.,243:338−348(1985);Trinel et al.,Infect.Immun.,60:3845−3851(1992)を参照);又は結合の位置(Kikuchi et al.,Planta,190:525−535(1993)を参照)を変えることによって最適化することができることを理解する。
本発明の方法における使用に好適なオリゴマンノシドは、限定されるものではないが、マンノテトラオースMan(1−3)Man(1−2)Man(1−2)Manを有するオリゴマンノシドを含む。このようなオリゴマンノシドは、例えば、Faille et al.,(前掲)に記載のとおりPPMから精製することができる。ASCAに特異的な例示的ネオ糖脂質は、このそれぞれのPPMからオリゴマンノシドを放出させ、続いて放出されたオリゴマンノシドを4−ヘキサデシルアニリンなどにカップリングさせることによって構築することができる。
R.抗菌性抗体
試料中の抗OmpC抗体レベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「抗外膜タンパク質C抗体」又は「抗OmpC抗体」という用語は、例えば、国際公開第WO01/89361号に記載のとおり細菌の外膜ポーリンに対する抗体を含む。「外膜タンパク質C」又は「OmpC」という用語は、抗OmpC抗体との免疫反応性を示す細菌のポーリンを指す。
個体からの試料中に存在する抗OmpC抗体のレベルは、OmpCタンパク質又はこの断片、例えば、この免疫反応性断片を使用して決定することができる。試料中の抗OmpC抗体のレベルの決定において有用である好適なOmpC抗原は、限定されるものではないが、OmpCタンパク質、OmpCタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するOmpCポリペプチド又はこの断片、例えば、この免疫反応性断片を含む。本明細書において使用されるOmpCポリペプチドは、一般に、配列アライメントプログラム、例えば、CLUSTALWを使用して決定されるアミノ酸同一性において、OmpCタンパク質と約50%超の同一性、好ましくは約60%超の同一性、より好ましくは約70%超の同一性、いっそうより好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%超のアミノ酸配列の同一性のあるアミノ酸配列を有するポリペプチドを説明する。このような抗原は、腸内細菌、例えば、エシェリヒア・コリ(E. coli)からの精製、核酸、例えば、Genbankアクセッション番号K00541の組換えによる発現、合成手段、例えば、液相若しくは固相ペプチド合成又はファージディスプレイを使用することによって調製することができる。
試料中の抗I2抗体レベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「抗I2抗体」という用語は、例えば、米国特許第6,309,643号に記載の細菌の転写制御因子と相同性を共有する微生物抗原に対する抗体を含む。「I2」という用語は、抗I2抗体との免疫反応性を示す微生物抗原を指す。微生物I2タンパク質は、C・パスツリアヌム(C. pasteurianum)由来の予測タンパク質4、マイコバクテリウム・ツバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)由来のRv3557c及びアクイフェクス・エオリカス(Aquifex aeolicus)由来の転写制御因子とある程度の類似性と弱い相同性を共有する100アミノ酸のポリペプチドである。I2タンパク質についての核酸及びタンパク質配列は、例えば、米国特許第6,309,643号に記載されている。
個体からの試料中に存在する抗I2抗体のレベルは、I2タンパク質又はこの断片、例えば、この免疫反応性断片を使用して決定することができる。試料中の抗I2抗体のレベルの決定において有用である好適なI2抗原は、限定されるものではないが、I2タンパク質、I2タンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するI2ポリペプチド又はこの断片、例えば、この免疫反応性断片を含む。このようなI2ポリペプチドは、C・パスツリアヌムのタンパク質4よりもI2タンパク質と高い配列類似性を示し、このアイソタイプ変異型及びホモログを含む。本明細書において使用されるI2ポリペプチドは、一般に、配列アライメントプログラム、例えば、CLUSTALWを使用して決定されるアミノ酸同一性において、天然に生じるI2タンパク質と約50%超の同一性、好ましくは約60%超の同一性、より好ましくは約70%超の同一性、いっそうより好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%超のアミノ酸配列の同一性のあるアミノ酸配列を有するポリペプチドを説明する。このようなI2抗原は、例えば、微生物からの精製、I2抗原をコードする核酸の組換えによる発現、合成手段、例えば、液相若しくは固相ペプチド合成又はファージディスプレイを使用することによって調製することができる。
試料中の抗フラジェリン抗体レベルの決定も、本発明において有用である。本明細書において使用される「抗フラジェリン抗体」という用語は、例えば、国際公開第WO03/053220号及び米国特許出願公開第20040043931号に記載の細菌鞭毛のタンパク質構成成分に対する抗体を含む。「フラジェリン」という用語は、抗フラジェリン抗体との免疫反応性を示す細菌の鞭毛タンパク質を指す。微生物のフラジェリンは、フィラメント形成のために中空の筒状に配置された細菌の鞭毛中に見出されるタンパク質である。
個体からの試料中の抗フラジェリン抗体のレベルは、フラジェリンタンパク質又はこの断片、例えば、この免疫反応性断片を使用して決定することができる。試料中の抗フラジェリン抗体のレベルの決定において有用である好適なフラジェリン抗原は、限定されるものではないが、フラジェリンタンパク質、例えば、Cbir−1フラジェリン、フラジェリンX、フラジェリンA、フラジェリンB、これらの断片及びこれらの組合せ、フラジェリンタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するフラジェリンポリペプチド又はこの断片、例えば、この免疫反応性断片を含む。本明細書において使用されるフラジェリンポリペプチドは、一般に、配列アライメントプログラム、例えば、CLUSTALWを使用して決定されるアミノ酸同一性において、天然に生じるフラジェリンタンパク質と約50%超の同一性、好ましくは約60%超の同一性、より好ましくは約70%超の同一性、いっそうより好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%超のアミノ酸配列の同一性のあるアミノ酸配列を有するポリペプチドを説明する。このようなフラジェリン抗原は、細菌、例えば、ヘリコバクター・ビリス(Helicobacter Bilis)、ヘリコバクター・ムステレ(Helicobacter mustelae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)及び盲腸中に見出される細菌からの精製、フラジェリン抗原をコードする核酸の組換えによる発現、合成手段、例えば、液相若しくは固相ペプチド合成又はファージディスプレイを使用することによって調製することができる。
S.他の診断マーカー
試料中のラクトフェリンの存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。ある例において、ラクトフェリンの存在又はレベルは、アッセイ、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅ベースアッセイなどによりmRNA発現のレベルにおいて検出される。ある他の例において、ラクトフェリンの存在又はレベルは、例えば、免疫アッセイ(例えばELISA)又は免疫組織化学アッセイを使用してタンパク質発現のレベルにおいて検出される。Calbiochem(San Diego,CA)から入手可能なラクトフェリンのELISAキットは、血漿、尿、気管支肺胞洗浄物、脳脊髄液試料中のヒトラクトフェリンを検出するために使用することができる。同様に、U.S.Biological(Swampscott,MA)から入手可能なELISAキットは、血漿試料中のラクトフェリンのレベルを決定するために使用することができる。米国特許出願公開第20040137536号は、糞便試料中のラクトフェリンレベルの上昇の存在を決定するためのELISAアッセイを記載している。同様に、米国特許出願公開第20040033537号は、糞便、粘液又は胆汁試料中の内因性ラクトフェリン濃度を決定するためのELISAアッセイを記載している。一部の実施形態において、この場合、抗ラクトフェリン抗体の存在又はレベルは、例えば、ラクトフェリンタンパク質又はこの断片を使用して試料中で検出することができる。
免疫アッセイ、例えば、ELISAはまた、試料中のC反応性タンパク質(CRP)の存在又はレベルを決定するために特に有用である。例えば、Alpco Diagnostics(Salem,NH)から入手可能なサンドイッチ比色ELISAアッセイは、血清、血漿、尿又は糞便試料中のCRPのレベルを決定するために使用することができる。同様に、Biomeda Corporation(Foster City,CA)から入手可能なELISAキットは、試料中のCRPレベルを検出するために使用することができる。試料中のCRPレベルを決定する他の方法は、例えば米国特許第6,838,250号及び同第6,406,862号;並びに米国特許出願公開第20060024682号及び同第20060019410号に記載されている。
さらに、潜血、便潜血は、胃腸疾病の指標となることが多く、種々のキットが胃腸出血をモニタリングするために開発されてきた。例えば、Hemoccult SENSAは、Beckman Coulterの製品であるが、胃腸出血、鉄欠乏、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎及び一部の例においては結腸直腸癌のスクリーニングにおいて、診断の補助となるものである。この特定のアッセイは、青色を生じる過酸化水素によるグアヤク脂の酸化に基づく。同様の比色アッセイが、糞便試料中の血液を検出するためにHelena Laboratories(Beaumont,TX)から市販されている。ヘモグロビン又はヘム活性の存在又はレベルを決定することによる糞便試料中の潜血を検出する他の方法は、例えば米国特許第4,277,250号、同第4,920,045号、同第5,081,040号及び同第5,310,684号に記載されている。
試料中のフィブリノーゲン又はこのタンパク質分解産物、例えば、フィブリノペプチドの存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。フィブリノーゲンは、肝臓内で合成される血漿糖タンパク質で、3種の構造的に異なるサブユニット:アルファ(FGA);ベータ(FGB);及びガンマ(FGG)から構成される。トロンビンは、フィブリノーゲン分子の限定的なタンパク質分解を引き起こし、この間にフィブリノペプチドA及びBがアルファ及びベータ鎖のN末端領域からそれぞれ放出される。フィブリノペプチドA及びBは、多くの種において配列解読がなされており、血管収縮物質としての生理的役割を有することができ、血液凝固時の局所止血を補助することができる。一実施形態において、ヒトフィブリノペプチドAは、配列:Ala−Asp−Ser−Gly−Glu−Gly−Asp−Phe−Leu−Ala−Glu−Gly−Gly−Gly−Val−Arg(配列番号1)を含む。別の実施形態において、ヒトフィブリノペプチドBは、配列:Glp−Gly−Val−Asn−Asp−Asn−Glu−Glu−Gly−Phe−Phe−Ser−Ala−Arg(配列番号2)を含む。American Diagnostica Inc.(Stamford,CT)から入手可能なELISAキットは、血漿又は他の生体液中のヒトフィブリノペプチドAの存在又はレベルを検出するために使用することができる。
ある実施形態において、試料中のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の存在又はレベルの決定も、本発明において有用である。カルシトニンは、甲状腺の傍濾胞細胞によって合成される32アミノ酸のペプチドホルモンである。カルシトニンは、副甲状腺ホルモンのものとは反対の効果である、血清カルシウムの低減を引き起こす。CGRPは、カルシトニンとともに、第11染色体上に局在するCT/CGRP遺伝子に由来する。CGRPは37アミノ酸のペプチドであり、強力な内因性血管拡張物質である。CGRPは主に神経組織内で産生され;しかしながら、この受容体は体中に発現する。Cayman Chemical Co.(Ann Arbor,MI)から入手可能なELISAキットは、血漿、血清、神経組織、CSF及び培養液を含む種々の試料中のヒトCGRPの存在又はレベルを検出するために使用することができる。
他の実施形態において、試料中の抗組織トランスグルタミナーゼ抗体(tTG)抗体の存在又はレベルの決定が、本発明において有用である。本明細書において使用される「抗tTG抗体」という用語は、組織トランスグルタミナーゼ(tTG)又はこの断片を認識する任意の抗体を含む。トランスグルタミナーゼは、ユビキタスであり、種間で高度に保存されたCa2+依存性酵素の多様なファミリーである。すべてのトランスグルタミナーゼの中で、tTGは最も広く分布している。ある例において、抗tTG抗体は、抗tTG IgA抗体、抗tTG IgG抗体又はこれらの混合物である。ScheBo Biotech USA Inc.(Marietta,GA)から入手可能なELISAキットは、血液試料中のヒト抗tTG IgA抗体の存在又はレベルを検出するために使用することができる。
試料中のNOD2/CARD15遺伝子における多型の存在の決定も、本発明において有用である。例えば、NOD2遺伝子における多型、例えば、R703Wタンパク質変異をもたらすC2107T核酸変異を個体からの試料中で同定することができる(例えば、米国特許出願公開第20030190639号を参照)。代替的実施形態において、NOD2のmRNAレベルは、IBSの分類を補助するために本発明の診断マーカーとして使用することができる。
試料中のセロトニン再取り込み輸送体(SERT)遺伝子における多型の存在の決定も、本発明において有用である。例えば、SERT遺伝子のプロモーター領域における多型は、転写活性に影響し、5−HT再取り込み効率の変化をもたらす。SERT−P欠失/欠失遺伝子型とIBS表現型との間には強い遺伝子型の関連が観察されることが示されている(例えば、Yeo Gut,53:1396−1399(2004)を参照)。代替的実施形態において、SERTのmRNAレベルは、IBSの分類を補助するために本発明の診断マーカーとして使用することができる(例えば、Gershon,J.Clin.Gastroenterol.,39(5 Suppl.):S184−193(2005)を参照)。
ある態様において、トリプトファンヒドロキシラーゼ1のmRNAのレベルが診断マーカーである。例えば、トリプトファンヒドロキシラーゼ1のmRNAは、IBSにおいては顕著に減少していることが示されている(例えば、Coats,Gatroenterology,126:1897−1899(2004)を参照)。ある他の態様において、細菌の過剰成長の指標となるメタンを計測するためのラクツロース呼気検査を、IBSについての診断マーカーとして使用することができる。
追加の診断マーカーは、限定されるものではないが、L−セレクチン/CD62L、抗U1−70kDa自己抗体、閉鎖帯1(ZO−1)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、血清アミロイドA、ガストリン、NB3遺伝子多型、NCI1遺伝子多型、便中白血球、α2A及びα2Cアドレナリン受容体遺伝子多型、IL−10遺伝子多型、TNF−α遺伝子多型、TNF−β1遺伝子多型、αアドレナリン受容体、Gタンパク質、5−HT2A遺伝子多型、5−HTT LPR遺伝子多型、5−HT4受容体遺伝子多型、ゾヌリン並びに33量体ペプチドを含む(Shan et al.,Science,297:2275−2279(2002);国際公開第03/068170号を参照)。
VI.分類マーカー
種々の分類マーカーが、IBSをカテゴリー、形態、臨床サブタイプ、例えば、IBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)などに分類する本発明の方法、システム及びコードにおける使用に好適である。分類マーカーの例は、限定されるものではないが、上記の診断マーカーのいずれか(例えば、レプチン、セロトニン再取り込み輸送体(SERT)、トリプトファンヒドロキシラーゼ−1、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、トリプターゼ、PGE2、ヒスタミンなど)及び腔粘膜タンパク質8、ケラチン−8、クローディン−8、ゾヌリン、コルチコトロピン放出ホルモン受容体1(CRHR1)、コルチコトロピン放出ホルモン受容体2(CRHR2)などを含む。
例えば、以下の実施例1及び2は、β−トリプターゼレベルの計測がIBS−C患者試料とIBS−A及びIBS−D患者試料とを区別するために特に有用であることを示す。同様に、すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる2007年8月14日に出願された米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例1は、レプチンレベルを計測することがIBS−C患者試料とIBS−A及びIBS−D患者試料とを区別するために特に有用であることを説明している。さらに、粘膜SERT及びトリプトファンヒドロキシラーゼ1の発現は、IBS−C及びIBS−Dにおいて減少していることが示されている(例えば、Gershon,J.Clin.Gastroenterol.,39(5 Suppl):S184−193(2005)を参照)。さらに、IBS−C患者は、食後の5−HT放出の障害を示す一方、IBS−PI患者は、5−HTのより高いピークレベルを有する(例えば、Dunlop,Clin Gstroenterol Hepatol.,3:349−357(2005)を参照)。さらに、図11において理解することができるとおり、ヒスタミン及びPGE2の血清レベルも、IBS−D患者試料とIBS−A、IBS−C及び健常対照の患者試料とを区別するために特に有用である。
VII.アッセイ及びキット
当分野において公知の種々のアッセイ、技術及びキットのいずれかを、試料がIBSと関連するか否かを分類するために試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを決定するために使用することができる。
本発明は、部分的には、個体から得られる試料中の少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを決定することに依存する。本明細書において使用される「少なくとも1種のマーカーの存在を決定すること」という用語は、当業者に公知の任意の定量又は定性アッセイを使用することによって、対象となる各マーカーの存在を決定することを含む。ある例において、特定の形質、変化又は生化学的若しくは血清学的な物質(例えば、タンパク質又は抗体)の存在又は非存在を決定する定性アッセイは、対象となる各マーカーを検出するために好適である。ある他の例において、RNA、タンパク質、抗体又は活性の存在又は非存在を決定する定量アッセイは、対象となる各マーカーを検出するために好適である。本明細書において使用される「少なくとも1種のマーカーのレベルを決定する」という用語は、当業者に公知の任意の直接的又は間接的な定量アッセイを使用することによって、対象となる各マーカーのレベルを決定することを含む。ある例において、例えば、RNA、タンパク質、抗体又は活性の相対量又は絶対量を決定する定量アッセイは、対象となる各マーカーのレベルを決定するために好適である。当業者は、マーカーのレベルを決定するために有用な任意のアッセイも、マーカーの存在又は非存在を決定するために有用であることを認識する。
本明細書において使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の集団を含み、この分子はポリクローナル若しくはモノクローナル若しくは任意のアイソタイプであってよく、又は免疫グロブリン分子の免疫活性断片であってよい。このような免疫活性断片は、重鎖及び短鎖の可変領域を含有し、これらは抗原に特異的に結合する抗体分子の一部を構成する。例えば、当分野においてFab、Fab’又はF(ab’)2として公知の免疫グロブリン分子の免疫活性断片は、抗体という用語の意味に含まれる。
フローサイトメトリーは、試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを決定するために使用することができる。このようなフローサイトメトリーアッセイは、ビーズベース免疫アッセイを含み、例えば、カンジダ・アルビカンス及びHIVタンパク質に対する血清抗体の検出について記載されている方法と同一の方法において抗体マーカーレベルを決定するために使用することができる(例えば、Bishop and Davis,J.Immunol.Methods,210:79−87(1997);McHugh et al.,J.Immunol.Methods,116:213(1989);Scillian et al.,Blood,73:2041(1989)を参照)。
マーカーに特異的な組換え抗原を発現させるためのファージディスプレイ技術も、試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを決定するために使用することができる。例えば、抗体マーカーに特異的な抗原を発現するファージ粒子は、所望により、抗体、例えば、抗ファージモノクローナル抗体を使用してマルチウェルプレートに固定することができる(Felici et al.,“Phage−Displayed Peptides as Tools for Characterization of Human Sera”in Abelson(Ed.),Methods in Enzymol.,267,San Diego:Academic Press,Inc.(1996)を参照)。
種々の免疫アッセイ技術は、競合的及び非競合的免疫アッセイを含み、試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを決定するために使用することができる(例えば、Self and Cook,Curr.Opin.Biotechnol.,7:60−65(1996)を参照)。免疫アッセイという用語は、限定されるものではないが、酵素免疫アッセイ(EIA)、例えば、酵素増幅免疫アッセイ技術(EMIT))、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、抗原捕捉ELISA、サンドイッチELISA、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)及び微粒子酵素免疫アッセイ(MEIA);キャピラリー電気泳動免疫アッセイ(CEIA);放射免疫アッセイ(RIA);免疫放射定量アッセイ(IRMA);蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA);並びに化学発光アッセイ(CL)を含む技術を包含する。所望により、このような免疫アッセイは、自動化されていてよい。免疫アッセイは、レーザーにより誘導される蛍光とともに使用することもできる(例えば、Schmalzing and Nashabeh,Electrophoresis,18:2184−2193(1997);Bao,J.Chromatogr.B.Biomed.Sci.,699:463−480(1997)を参照)。リポソーム免疫アッセイ、例えば、フローインジェクションリポソーム免疫アッセイ及びリポソーム免疫センサーも、本発明における使用に好適である(例えば、Rongen et al.,J.Immunol.Methods,204:105−133(1997)を参照)。さらに、タンパク質/抗体複合体の形成が、マーカー濃度に応じてピーク速度信号に変換される光分散の増加をもたらすネフェロメトリーアッセイが、本発明における使用に好適である。ネフェロメトリーアッセイはBeckman Coulter(Brea,CA;Kit#449430)から市販されており、Behring Nephelometer Analyzerを使用して実施することができる(Fink et al.,J.Clin.Chem.Clin.Biol.Chem.,27:261−276(1989)を参照)。
抗原捕捉ELISAは、試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルの決定に有用であり得る。例えば、抗原捕捉ELISAにおいては、対象となるマーカーに対する抗体が固相に結合され、マーカーが抗体によって結合されるように試料が添加される。非結合タンパク質が洗浄によって除去された後、結合マーカーの量を、例えば、放射免疫アッセイを使用して定量することができる。(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)を参照)。サンドイッチELISAも、本発明における使用に好適であり得る。例えば、2抗体サンドイッチアッセイにおいて、第1の抗体が固体担体に結合され、対象となるマーカーが第1の抗体に結合することが可能となる。マーカーの量は、マーカーに結合する第2の抗体の量を計測することによって定量される。抗体は、種々の固体担体、例えば、磁性又はクロマトグラフマトリックス粒子、アッセイプレートの表面(例えば、マイクロタイタープレート)、固体基材または膜の一片(例えば、プラスチック、ナイロン、紙)などに固定化することができる。アッセイストリップは、抗体又は複数の抗体を固体担体上のアレイにおいてコーティングすることによって調製することができる。次いで、このストリップは、試験試料中に浸漬することができ、洗浄及び検出工程によって迅速に処理して計測可能なシグナル、例えば、有色点を生成することができる。
例えば、ヨウ素−125(125I)標識された第2の抗体(Harlow and Lane,前掲)を使用する放射免疫アッセイも、試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを決定するために好適である。化学発光マーカーによって標識された第2の抗体も、本発明における使用に好適である。第2の化学発光抗体を使用する化学発光アッセイは、マーカーレベルの高感度な非放射性検出に好適である。このような第2の抗体は、種々の源、例えば、Amersham Lifesciences,Inc.(Arlington Heights,IL)から市販品として得ることができる。
上記免疫アッセイは、試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを決定するために特に有用である。非限定的な例として、IL−8結合分子、例えば、抗IL−8抗体又は細胞外IL−8結合タンパク質(例えば、IL−8受容体)を使用するELISAは、試料がIL−8タンパク質について陽性か否かを決定するため、又は試料中のIL−8タンパク質レベルを決定するために有用である。固定好中球ELISAは、試料がANCAについて陽性か否かを決定するため、又は試料中のANCAレベルを決定するために有用である。同様に、酵母細胞壁ホスホペプチドマンナンを使用するELISAは、試料がASCA−IgA及び/若しくはASCA−IgGについて陽性か否かを決定するため、又は試料中のASCA−IgA及び/若しくはASCA−IgGレベルを決定するために有用である。OmpCタンパク質又はこの断片を使用するELISAは、試料が抗OmpC抗体について陽性か否かを決定するため、又は試料中の抗OmpC抗体レベルを決定するために有用である。I2タンパク質又はこの断片を使用するELISAは、試料が抗I2抗体について陽性か否かを決定するため、又は試料中の抗I2抗体レベルを決定するために有用である。フラジェリンタンパク質(例えば、Cbir−1フラジェリン)又はこの断片を使用するELISAは、試料が抗フラジェリン抗体について陽性か否かを決定するため、又は試料中の抗フラジェリン抗体レベルを決定するために有用である。さらに、上記免疫アッセイは、試料中の他の診断マーカーの存在又はレベルを決定するために特に有用である。
対象となるマーカーに対する抗体の特異的な免疫結合は、直接的又は間接的に検出することができる。直接的標識は、蛍光又は発光タグ、金属、色素、放射性核種などを含み、抗体に結合される。ヨウ素125(125I)によって標識された抗体は、試料中の1種以上のマーカーのレベルを決定するために使用することができる。マーカーに特異的な化学発光抗体を使用する化学発光アッセイは、マーカーレベルの高感度な非放射性検出に好適である。蛍光色素によって標識された抗体も、試料中の1種以上のマーカーのレベルを決定するために好適である。蛍光色素の例は、限定されるものではないが、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリスリン、R−フィコエリスリン、ローダミン、テキサスレッド及びリサミンを含む。蛍光色素に結合している2次抗体は、市販品として得ることができ、例えば、ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG−FITCは、Tago Immunologicals(Burlingame,CA)から入手可能である。
間接的標識は、当分野において周知の種々の酵素、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ、ウレアーゼなどを含む。セイヨウワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば、発色基質テトラメチルベンジジン(TMB)とともに使用することができ、過酸化水素の存在下で450nmにおいて検出可能な可溶性生成物を生じさせる。アルカリホスファターゼ検出系は、発色基質p−ニトロフェニルホスフェートとともに使用することができ、例えば、405nmにおいて容易に検出可能な可溶性生成物を生じさせる。同様に、βガラクトシダーゼ検出系は、発色基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)とともに使用することができ、410nmにおいて検出可能な可溶性生成物を生じさせる。ウレアーゼ検出系は、ウレア−ブロモクレゾールパープル(Sigma Immunochemicals;St.Louis,MO)などの基質とともに使用することができる。酵素に結合している有用な2次抗体は、多数の市販源から得ることができ、例えば、ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG−アルカリホスファターゼは、Jackson ImmunoResearch(West Grove,PA)から購入することができる。
直接又は間接的標識からのシグナルは、例えば、発色基質からの色を検出するための分光光度計;放射線を検出するための放射線カウンター、例えば、125Iの検出のためのガンマカウンター;又はある波長の光の存在下で蛍光を検出するための蛍光光度計を使用して分析することができる。酵素結合抗体の検出のため、マーカーレベルの量の定量分析は、分光光度計、例えば、EMAX Microplate Reader(Molecular Devices;Menlo Park,CA)を使用して製造業者の説明書に従って行うことができる。所望により、本発明のアッセイは、自動化又はロボットによって実施することができ、複数の試料からのシグナルを同時に検出することができる。
定量ウエスタンブロッティングも、試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを検出又は決定するために使用することができる。ウエスタンブロットは、周知の方法、例えば、走査デンシメトリー又はホスホイメージングによって定量することができる。非限定的な例として、タンパク質試料は、10%SDS−PAGE Laemmliゲル上で電気泳動される。1次マウスモノクローナル抗体はブロットと反応され、抗体結合は、予備的なスロットブロット実験を使用して線形であることを確認することができる。ヤギ抗マウスセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗体(BioRad)は、2次抗体として使用され、シグナル検出は、化学発光を使用して、例えば、Renaissance化学発光キット(New England Nuclear;Boston,MA)を用いて製造業者の説明書に従って実施される。ブロットのオートラジオグラフは、走査デンシトメーター(Molecular Dynamics;Sunnyvale,CA)を使用して分析され、陽性対照に対して正規化される。値は、例えば、実値と陽性対照との比として報告される(デンシトメトリーインデックス)。このような方法は、例えばParra et al.,J.Vasc.Surg.,28:669−675(1998)に記載のとおり当分野において周知である。
あるいは、種々の免疫組織化学アッセイ技術を試料中の1種以上のマーカーの存在又はレベルを決定するために使用することができる。免疫組織化学アッセイという用語は、蛍光顕微鏡又は光学顕微鏡を使用する、対象となるマーカーと反応する抗体に結合させた(すなわち、コンジュゲートさせた)蛍光色素又は酵素の視覚的検出を利用する技術を包含し、限定されるものではないが、直接的蛍光抗体アッセイ、間接的蛍光抗体(IFA)アッセイ、抗補体免疫蛍光、アビジン−ビオチン免疫蛍光及び免疫ペルオキシダーゼアッセイを含む。例えば、IFAアッセイは、試料がANCAについて陽性か否か、試料中のANCAのレベル、試料がpANCSについて陽性か否か、試料中のpANCAのレベル及び/又はANCA染色パターン(例えば、cANCA、pANCA、NSNA及び/又はSAPPA染色パターン)を決定するために有用である。試料中のANCAの濃度は、例えば、終点滴定によって、又は既知の参照標準と比較して視覚的蛍光強度を測定することによって定量することができる。
あるいは、対象となるマーカーの存在又はレベルは、精製マーカーの量を検出又は定量することによって決定することができる。マーカーの精製は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)単独又は質量分析との組合せ(例えば、MALDI/MS、MALDI−TOF/MS、SELDI−TOF/MS、タンデムMSなど)によって達成することができる。対象となるマーカーの定性又は定量検出はまた、限定されるものではないが、ブラッドフォードアッセイ、クマシーブルー染色、銀染色、放射標識タンパク質のためのアッセイ及び質量分析を含む周知の方法によって決定することができる。
複数のマーカーの分析は、1つの試験試料について別個に又は同時に実施することができる。マーカーの別個又は連続的アッセイのため、好適な機器は、臨床実験室用分析装置、例えば、ElecSys(Roche)、AxSym(Abbott)、Access(Beckman)、ADVIA(商標)、CENTAUR(商標)(Bayer)及びNICHOLS ADVANTAGE(商標)(Nichols Institute)免疫アッセイ系を含む。好ましい機器又はタンパク質チップは、単一表面上で複数のマーカーの同時アッセイを実施する。特に有用な物理フォーマットは、複数の異なるマーカー検出のため、複数の独立したアドレス可能なロケーションを有する表面を含む。このようなフォーマットは、タンパク質マイクロアレイ又は「タンパク質チップ」(例えば、Ng et al.,J.Cell Mol.Med.,6:329−340(2002))及びある種のキャピラリー装置を含む(例えば、米国特許第6,019,944号を参照)。これらの実施形態においては、それぞれの独立した表面上のロケーションは、それぞれの領域における検出のための1種以上のマーカーを固定化するために抗体を含むことができる。あるいは、表面は、表面の独立したロケーションに固定された1種以上の独立した粒子(例えば、マイクロ粒子又はナノ粒子)を含むことができ、マイクロ粒子は、検出のための1種以上のマーカーを固定化するために抗体を含む。
対象となる種々のマーカーの存在又はレベルを決定する上記アッセイに加え、定型的な技術、例えば、ノザン分析、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、又はマーカーをコードする配列の一部に相補的な核酸配列に対するハイブリダイゼーションに基づく他の任意の方法(例えば、スロットブロットハイブリダイゼーション)を使用するマーカーのmRNAレベルの分析も本発明の範囲内である。適用可能なPCR増幅技術は、例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.New York(1999),Chapter 7 and Supplement 47;Theophilus et al.,“PCR Mutation Detection Protocols”,Humana Press,(2002);及びInnis et al.,PCR Protocols,San Diego,Academic Press,Inc.(1990)に記載されている。一般的な核酸ハイブリダイゼーション法は、Anderson,“Nucleic Acid Hybridization”,BIOS Scientific Publishers,1999に記載されている。複数の転写された核酸配列(例えば、mRNA又はcDNA)の増幅又はハイブリダイゼーションも、マイクロアレイ上に配列されたmRNA又はcDNA配列から実施することができる。マイクロアレイ法は、一般に、Hardiman,“Microarrays Methods and Applications:Nuts & Bolts”,DNA Press,2003;及びBaldi et al.,“DNA Microarrays and Gene Expression:From Experiments to Data Analysis and Modeling”,Cambridge University Press,2002に記載されている。
マーカーの遺伝子型、例えば、遺伝子マーカーの分析は、限定されるものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列解析及び電気泳動分析を含む当分野において公知の技術を使用して実施することができる。PCRベース分析の非限定的な例は、Applied Biosystemsから入手可能なTaqman(商標)対立遺伝子識別アッセイを含む。配列分析の非限定的な例は、マキサム・ギルバートシーケンシング、サンガーシーケンシング、キャピラリーアレイDNAシーケンシング、サーマルサイクルシーケンシング(Sears et al.,Biotechniques,13:626−633(1992))、固相シーケンシング(Zimmerman et al.,Methods Mol.Cell Biol.,3:39−42(1992))、質量分析、例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF/MS;Fu et al.,Nature Biotech.,16:381−384(1998))を用いるシーケンシング及びハイブリダイゼーションによるシーケンシング(Chee et al.,Science,274:610−614(1996);Drmanac et al.,Science,260:1649−1652(1993);Drmanac et al.,Nature Biotech.,16:54−58(1998))を含む。電気泳動分析の非限定的な例は、スラブゲル電気泳動、例えば、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動及び変性勾配ゲル電気泳動を含む。マーカー中の多型部位における個体の遺伝子型を決定する他の方法は、例えば、Third Wave Technologies,Inc.からのINVADER(商標)アッセイ、制限酵素断片長多型(RFLP)分析、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、ヘテロ二本鎖モビリティアッセイ及び一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)分析を含む。
対象となるいくつかのマーカーは、複数の試料の効果的な処理のために1つの試験に合することができる。さらに、当業者は、同一対象からの、試験する複数の試料の値(例えば、連続的な時点などにおけるもの)を認識する。このような一連の試料の試験によって、経時的なマーカーレベルの変化の同定が可能となる。マーカーレベルの増加又は減少並びにマーカーレベルの変化の非存在も、IBSを分類するため又はIBS様症状と関連する疾患及び障害を除外するための有用な情報を提供することができる。
上記の1種以上のマーカーを計測するためのパネルは、試料をIBSと関連するとして分類するための本発明のアプローチに関連する関連情報を提供するために構築することができる。このようなパネルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40種以上の個々のマーカーの存在又はレベルを決定するために構築することができる。単一のマーカー又はマーカーのサブセットの分析も、種々の臨床背景において当業者が実施することができる。これらは、限定されるものではないが、巡回、緊急治療、救急救命治療、集中治療、モニタリングユニット、入院患者、通院患者、診療所、医療クリニック及び集団検診を含む。
マーカーの分析は、同様に種々の物理フォーマットにおいて実施することができる。例えば、マイクロタイタープレートの使用又は自動化は、多数の試験試料の処理を促進するために使用することができる。あるいは、単一の試料フォーマットを、適時の様式において治療及び診断を簡略化するために開発することができる。
VIII.統計的アルゴリズム
一部の態様において、本発明は、試料をIBS試料又は非IBS試料として分類するための統計的アルゴリズム又は処理を使用して試料がIBSと関連するか否かを分類する方法、アッセイ、システム及びコードを提供する。他の態様において、本発明は、試料を非IBD試料又はIBD試料として分類するための第1の統計的アルゴリズム又は処理を使用し(すなわち、IBD除外工程)、次いで非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類するための第2の統計的アルゴリズム又は処理を使用して(すなわち、IBS確定工程)、試料がIBSと関連するか否かを分類する方法、システム及びコードを提供する。好ましくは、統計的アルゴリズム又は処理は、1種以上の学習統計的分類子システムを独立して含む。本明細書に記載のとおり、学習統計的分類子システムの組合せは、有利には、試料がIBSと関連するか否かを分類することについての感度、特異度、陰性適中率、陽性適中率及び/又は全体精度の改善を提供する。好ましい実施形態において、本明細書において提供される方法、アッセイ、システム及びコードは、少なくとも2種の統計的アルゴリズムの組合せを使用する。
一部の実施形態において、第1の統計的アルゴリズムは、ランダムフォレスト(RF)、分類及び回帰ツリー(C&RT)、ブーストされたツリー、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシン(SVM)、一般的なカイ二乗による自動相互作用検出モデル、インタラクティブツリー、多変量適応的回帰スプライン、機械学習分類子及びこれらの組合せからなる群から選択される学習統計的分類子システムである。ある例において、第1の統計的アルゴリズムは単一の学習統計的分類子システムである。好ましくは、単一の学習統計的分類子システムは、ツリーベース統計的アルゴリズム、例えば、RF又はC&RTを含む。ある他の例において、第1の統計的アルゴリズムは、例えばタンデム又はパラレルで使用される少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せである。非限定的な例として、最初にRFを使用して診断マーカープロファイル単独又は症状プロファイルとの組合せに基づき予測値又は確率値を作成することができ、次いでNN(例えば人工的NN)を使用して予測値又は確率値及び同一又は異なる診断マーカープロファイル又はプロファイルの組合せに基づき試料を非IBD試料又はIBD試料として分類することができる。本発明の複合型RF/NN学習統計的分類子システムは、典型的には、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率及び/又は全体精度を伴い、試料を非IBD試料として分類する。
ある実施形態において、第2の統計的アルゴリズムは、上記の学習統計的分類子システムのいずれかを含む。ある例において、第2の統計的アルゴリズムは、単一の学習統計的分類子システム、例えば、ツリーベース統計的アルゴリズム(例えば、RF又はC&RT)などである。ある他の例において、第2の統計的アルゴリズムは、例えばタンデム又はパラレルで使用される少なくとも2種の学習統計的分類子システムの組合せである。非限定的な例として、最初にRFを使用して診断マーカープロファイル単独又は症状プロファイルとの組合せに基づき予測値又は確率値を作成することができ、次いでNN(例えば人工的NN)又はSVMを使用して予測値又は確率値及び同一又は異なる診断マーカープロファイル又はプロファイルの組合せに基づき非IBD試料を非IBS試料又はIBS試料として分類することができる。本明細書に記載の複合型RF/NN又はRF/SVM学習統計的分類子システムは、典型的には、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率及び/又は全体精度を伴い、試料をIBS試料として分類する。
一部の例において、1種以上の学習統計的分類子システムを使用して得られたデータは、処理アルゴリズムを使用して処理することができる。このような処理アルゴリズムは、例えば、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク及びレーベンバーグ・マルカート・アルゴリズムからなる群から選択することができる。他の例において、このような処理アルゴリズムの組合せを、例えば、パラレル又はシリアル方式で使用することができる。
「統計的アルゴリズム」又は「統計処理」という用語は、可変要素間の関係を決定するために使用される種々の統計分析のいずれかを含む。本発明において、可変要素は、対象となる少なくとも1種のマーカーの存在若しくはレベル及び/又は少なくとも1種のIBS関連症状の存在若しくは重症度である。任意数のマーカー及び/又は症状を、本明細書に記載の統計的アルゴリズムを使用して分析することができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60種以上のバイオマーカー及び/又は症状を統計的アルゴリズムに含めることができる。一実施形態において、ロジスティック回帰が使用される。別の実施形態において、直線回帰が使用される。ある例において、本発明の統計的アルゴリズムは、可変要素として所与の母集団内における特定のマーカーの分位値の大きさを使用することができる。分位値は、(可能な限り)等数の観察結果を含む群にデータサンプルを分割する一組の「カットポイント」である。例えば、四分位値は、データサンプルを(可能な限り)等数の観察結果を含む4つの群に分割する値である。下位四分位値は、順位づけられたデータセットから上位4分の1のデータ値であり;上位四分位値は、順位づけられたデータセットから下位4分の1のデータ値である。五分位値は、データサンプルを(可能な限り)等数の観察結果を含む5つの集団に分割する値である。本発明は、アルゴリズムにおける可変要素として(ちょうど連続可変要素と同じように)、マーカーレベルの百分率範囲(例えば、三分位値、四分位値、五分位値など)又はこれらの累積指数(例えば、マーカーレベルの四分位値の合計など)の使用も含むことができる。
好ましくは、本発明の統計的アルゴリズムは、1種以上の学習統計的分類子システムを含む。本明細書において使用される「学習統計的分類子システム」という用語は、複雑なデータセット(例えば、対象となるマーカーのパネル及び/又はIBS関連症状のリスト)に適合し、このようなデータセットに基づき決定を下すことができる機械学習アルゴリズム技術を含む。一部の実施形態において、単一の学習統計的分類子システム、例えば、分類ツリー(例えば、ランダムフォレスト)が使用される。他の実施形態において、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上の学習統計的分類子システムの組合せが好ましくはタンデムで使用される。学習統計的分類子システムの例は、限定されるものではないが、帰納学習を使用するもの(例えば、決定/分類ツリー、例えば、ランダムフォレスト、分類及び回帰ツリー(C&RT)、ブーストされたツリーなど)、確率的で近似的に正しい(PAC)学習、コネクショニスト学習(例えば、ニューラルネットワーク(NN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ニューロファジーネットワーク(NFN)、ネットワーク構造、パーセプトロン、例えば、多層パーセプトロン、多層フィードフォワードネットワーク、ニューラルネットワークの適用、ビリーフネットワークにおけるベイジアン学習など)、強化学習(例えば、既知環境下での受動的学習、例えば、ナイーブ学習、適応的動的学習及び時間差分学習、未知環境下での受動的学習、未知環境下での能動学習、学習行動価値関数、強化学習の適用など)並びに遺伝的アルゴリズム及び進化的プログラミングを含む。他の学習統計的分類子システムは、サポートベクターマシン(例えば、カーネル法)、多変量適応的回帰スプライン(MARS)、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズム、ガウス・ニュートンアルゴリズム、ガウス混合、勾配降下アルゴリズム及び学習ベクトル量子化(LVQ)を含む。
ランダムフォレストは、Leo Breiman及びAdele Cutlerによって開発されたアルゴリズムを使用して構築される学習統計的分類子システムである。ランダムフォレストは、多数の個々の決定ツリーを使用し、個々のツリーによって決定されたクラスのモード(すなわち、最も頻繁に生じること)を選択することによってクラスを決定する。ランダムフォレスト分析は、例えば、Salford Systems(San Diego,CA)から入手可能なRandomForestsソフトウエアを使用して実施することができる。ランダムフォレストの説明については、例えば、Breiman,Machine Learning,45:5−32(2001);及びhttp://stat−www.berkeley.edu/users/breiman/RandomForests/cc_home.htmを参照。
分類及び回帰ツリーは、古典的回帰モデルにフィッティングすることに対するコンピュータを駆使した代替案を提示し、典型的には、1個以上の予測因子に基づく対象となるカテゴリカル又は連続的応答のために考えられる最良のモデルを決定するために使用される。分類及び回帰ツリー分析は、例えば、Salford Systemsから入手可能なCARTソフトウエア又はStatSoft,Inc.(Tulsa,OK)から入手可能なStatisticaデータ分析ソフトウエアを使用して実施することができる。分類及び回帰ツリーの説明は、例えば、Breiman et al.,“Classification and Regression Trees”,Chapman and Hall,New York(1984);及びSteinberg et al.,“CART:Tree−Structured Non−Parametric Data Analysis”,Salford Systems,San Diego,(1995)に見出される。
ニューラルネットワークは、計算に対するコネクショニストアプローチに基づく情報処理のための数学又は計算モデルを使用する、相互結合している人工ニューロン群である。典型的には、ニューラルネットワークは、このネットワークを流れる外部又は内部情報に基づき、これらの構造を変化させる適応型システムである。ニューラルネットワークの具体的な例は、フィードフォワードニューラルネットワーク、例えば、パーセプトロン、単層パーセプトロン、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、ADALINEネットワーク、MADALINEネットワーク、ラーンマトリクスネットワーク(Learnmatrix networks)、放射基底関数(RBF)ネットワーク及び自己組織化マップ又はコホネン自己組織化ネットワーク;リカレントニューラルネットワーク、例えば、単純リカレントネットワーク及びホップフィールド・ネットワーク;確率的ニューラルネットワーク、例えば、ボルツマンマシン;モジュール型ニューラルネットワーク、例えば、コミッティマシン及び関連ニューラルネットワーク;並びに他のタイプのネットワーク、例えば、即座に訓練されたニューラルネットワーク、スパイキングニューラルネットワーク、動的ニューラルネットワーク及びカスケーディングニューラルネットワークを含む。ニューラルネットワーク分析は、例えば、StatSoft,Inc.から入手可能なStatisticaデータ分析ソフトウエアを使用して実施することができる。ニューラルネットワークの説明については、例えば、Freeman et al.,In“Neural Networks:Algorithms,Applications and Programming Techniques”,Addison−Wesley Publishing Company(1991);Zadeh,Information and Control,8:338−353(1965);Zadeh,“IEEE Trans.on Systems,Man and Cybernetics”,3:28−44(1973);Gersho et al.,In “Vector Quantization and Signal Compression”,Kluywer Academic Publishers,Boston,Dordrecht,London(1992);及びHassoun,“Fundamentals of Artificial Neural Networks”,MIT Press,Cambridge,Massachusetts,London(1995)を参照。
サポートベクターマシンは、分類及び回帰に使用される一連の関連する教師付き学習技術であり、例えば、Cristianini et al.,“An Introduction to Support Vector Machines and Other Kernel−Based Learning Methods”,Cambridge University Press(2000)に記載されている。サポートベクターマシン分析は、例えば、Thorsten Joachims(Cornell University)によって開発されたSVMlightソフトウエア又はChih−Chung Chang及びChih−Jen Lin(National Taiwan University)によって開発されたLIBSVMソフトウエアを使用して実施することができる。
本明細書に記載の学習統計的分類子システムは、健常個体、IBS患者、IBD患者及び/又はセリアック病患者からの試料のコホート(例えば、血清試料)を使用してトレーニング及び試験することができる。例えば、生検、大腸内視鏡検査又は例えば、米国特許第6,218,129号に記載の免疫アッセイを使用して、医師、好ましくは胃腸科専門医によってIBDを保有していると診断された患者からの試料は、本発明の学習統計的分類子システムのトレーニング及び試験における使用に好適である。IBDと診断された患者からの試料はまた、例えば、米国特許第5,750,355号及び同第5,830,675号に記載の免疫アッセイを使用して、クローン病又は潰瘍性大腸炎に階層化することができる。公表された基準、例えば、マニング、ローマI、ローマII又はローマIII診断基準を使用してIBSと診断された患者からの試料は、本発明の学習統計的分類子システムのトレーニング及び試験における使用に好適である。健常個体からの試料は、IBD及び/又はIBS試料として同定されなかったものを含むことができる。当業者は、本発明の学習統計的分類子システムのトレーニング及び試験において使用することができる患者試料のコホートを得るための追加の技術及び診断基準について理解する。
本明細書において使用される「感度」という用語は、本発明の診断方法、システム又はコードが、試料が陽性である(例えば、IBSを有する)場合に陽性結果を出す確率を指す。感度は、真陽性の結果の数を真陽性及び偽陰性の合計によって割ったものとして計算される。感度は、本質的には、本発明の方法、システム又はコードがいかに正しくIBSを有するものを、疾患を有しないものから区別するかの尺度である。統計的アルゴリズムは、IBSを分類する感度が少なくとも約60%であり、例えば、少なくとも約65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%であり得るように選択することができる。好ましい実施形態において、IBSを分類する感度は、学習統計的分類子システムの組合せが使用される場合(すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例10を参照)には少なくとも約90%であり、又は単一の学習統計的分類子システムが使用される場合(すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例11を参照)には少なくとも約85%である。
「特異度」という用語は、本発明の診断方法、システム又はコードが、試料が陽性ではない(例えばIBSを有しない)場合に陰性結果を出す確率を指す。特異度は、真陰性の結果の数を真陰性及び偽陽性の合計によって割ったものとして計算される。特異度は、本質的には、本発明の方法、システム又はコードがいかに正しくIBSを有しないものを、疾患を有するものから排除するかの尺度である。統計的アルゴリズムは、IBSを分類する特異度が少なくとも約70%であり、例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%であるように選択することができる。好ましい実施形態において、IBSを分類する特異度は、学習統計的分類子システムの組合せが使用される場合(すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例10を参照)には少なくとも約86%であり、又は単一の学習統計的分類子システムが使用される場合(すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例11を参照)には少なくとも約84%である。
本明細書において使用される「陰性適中率」又は「NPV」という用語は、IBSを有しないと同定された個体が実際に疾患を有しない確率を指す。陰性適中率は、真陰性の数を真陰性及び偽陰性の合計によって割ったものとして計算することができる。陰性適中率は、診断方法、システム又はコードの特徴及び分析された母集団における疾患の有病率によって決定される。統計的アルゴリズムは、疾患の有病率を有する母集団における陰性適中率が、約70%〜約99%の範囲内にあり、例えば、少なくとも約70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%であり得るように選択することができる。好ましい実施形態においては、IBSを分類する陰性適中率は、学習統計的分類子システムの組合せが使用される場合(すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例10を参照)には、少なくとも約87%である。
「陽性適中率」又は「PPV」という用語は、IBSを有すると同定された個体が実際に疾患を有する確率を指す。陽性適中率は、真陽性の数を真陽性及び偽陽性の合計によって割ったものとして計算することができる。陽性適中率は、診断方法、システム又はコードの特徴及び分析された母集団における疾患の有病率によって決定される。統計的アルゴリズムは、疾患の有病率を持つ母集団における陽性適中率が、約80%〜約99%の範囲内にあり、例えば、少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%であり得るように選択することができる。好ましい実施形態において、IBSを分類する陽性適中率は、学習統計的分類子システムの組合せが使用される場合(すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例10を参照)には、少なくとも約90%である。
予測値は、陰性及び陽性適中率を含み、分析される母集団における疾患の有病率に影響される。本発明の方法、システム又はコードにおいて、統計的アルゴリズムは、特定のIBS保有率を有する臨床母集団のための望ましい臨床パラメータを生成するように選択することができる。例えば、学習統計的分類子システムは、例えば、診療所、例えば、胃腸科専門医の診療所又は一般開業医の診療所において認められ得る、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%又は70%までのIBS有病率に対して選択することができる。
本明細書において使用される「全体一致」又は「全体精度」という用語は、本発明の方法、システム又はコードが疾患状態を分類する精度を指す。全体精度は、真陽性及び真陰性の合計を試料結果の総数によって割ったものとして計算され、分析される母集団における疾患の有病率によって影響を受ける。例えば、統計的アルゴリズムは、疾患有病率を有する患者の母集団における全体精度が少なくとも約60%であり、例えば、少なくとも約65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%であり得るように選択することができる。好ましい実施形態において、IBSを分類する全体精度は、学習統計的分類子システムの組合せが使用される場合(すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例10を参照)には、少なくとも約80%である。
IX.疾患分類システム
図13は、本発明の一実施形態に従った疾患分類システム(DCS)(200)を説明する。図に示されるとおり、DCSは、DCS知能モジュール(205)、例えば、プロセッサ(215)及び記憶モジュール(210)を有するコンピュータを含む。知能モジュールは、1種以上の直接接続(例えば、USB、Firewire又は他のインターフェース)及び1種以上のネットワーク接続(例えば、モデム又は他のネットワークインターフェース装置を含む)を通して情報を伝達及び受信するためのコミュニケーションモジュール(図示せず)も含む。記憶モジュールは、内部記憶装置及び1個以上の外部記憶装置を含むことができる。知能モジュールは、ディスプレイモジュール(225)、例えば、モニタ又はプリンタも含む。一態様において、知能モジュールは、データ、例えば、データ収集モジュール、例えば、試験システム(250)からの患者試験結果を、直接接続を介し、又はネットワーク(240)上のいずれかで受信する。例えば、試験システムは、1個以上の患者試料(255)に対し多重分析検定を実行し、試験結果を知能モジュールに自動的に提供するように配列されていてよい。データは、ユーザによる直接入力を介して知能モジュールに提供することもでき、又は携帯用媒体、例えば、コンパクトディスク(CD)若しくはデジタル多用途ディスク(DVD)からダウンロードすることができる。試験システムは、知能モジュールと直接的に連結させて知能モジュールと統合することができ、又はネットワーク上で知能モジュールと遠隔的に連結することができる。知能モジュールは、周知のネットワーク上で1個以上のクライアントシステム(230)とデータを交信することもできる。例えば、要求している医師及び健康管理提供者は、クライアントシステム(230)を使用して、研究室又は病院に常駐させることができる知能モジュールから報告を取得及び閲覧することができる。
ネットワークは、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)、無線ネットワーク、2地点間ネットワーク、スター型ネットワーク、トークンリングネットワーク、ハブネットワーク又は他の構成であり得る。現在使用されている最も一般的なタイプのネットワークは、TCP/IP(伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル)ネットワーク、例えば、大文字の「I」を用いて「インターネット(Internet)」と称されることが多いネットワークのグローバルインターネットワークであり、本明細書の実施例の多くにおいて使用されるものの、TCP/IPは現在好ましいプロトコルではあるが、本発明が使用することができるネットワークは、これに限定されないと理解すべきである。
米国特許出願公開第2008/0085524号からの、図2に示したシステムにおけるいくつかの要素は、本明細書において詳細に説明する必要がない慣用で周知の要素を含むことができる。例えば、知能モジュールは、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、ワークステーション、大型汎用コンピュータ、ノート型コンピュータなどとして実装することができる。各クライアントシステムは、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、ワークステーション、ノート型コンピュータ、PDA、携帯電話又は任意のWAP可能な装置又はインターネット若しくは他のネットワーク接続に直接若しくは間接的に接続可能な任意の他のコンピュータ装置を含むことができる。クライアントシステムは、典型的には、HTTPクライアント、例えば、閲覧プログラム、例えば、MicrosoftのInternet Explorer(商品名)ブラウザ、Netscape’s Navigator(商品名)ブラウザ、Operaブラウザ若しくは携帯電話、PDA又は他の無線装置の場合にはWAP可能なブラウザなどを実行し、クライアントシステムのユーザがネットワーク上で知能モジュールから利用可能な情報及びページにアクセスし、処理し、閲覧することを可能にする。各クライアントシステムは、典型的には、1個以上のユーザインターフェース装置、例えば、知能モジュールによって提供されるページ、フォーム及び他の情報とともにディスプレイ(例えば、モニタスクリーン、LCDディスプレイなど)(235)にブラウザによって提供されるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)と相互作用するために、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ペンなども含む。上記のとおり、本発明は、ネットワークの特定のグローバルインターネットワークを指す、インターネットとともに使用することに好適である。しかしながら、他のネットワーク、例えば、イントラネット、エクストラネット、仮想プライベートネットワーク(VPN)、非TCP/IPベースネットワーク、任意のLAN又はWANなどをインターネットの代わりに使用することができることと理解すべきである。
一実施形態によれば、各クライアントシステム及びこの構成要素のすべては、アプリケーション、例えば、中央処理装置、例えば、Intel(商標)Pentium(商標)プロセッサなどを使用するコンピュータコードの実行を含むブラウザを使用してオペレータによる設定が可能である。同様に、知能モジュール及びこの構成要素のすべては、中央処理装置(215)、例えば、Intel Pentiumプロセッサなど又は複数のプロセッサユニットを使用するコンピュータコードの実行を含む(1種以上の)アプリケーションを使用してオペレータにより設定可能であり得る。本明細書に記載の、知能モジュールを操作及び設定してデータ及び試験結果を処理するためのコンピュータコードは、好ましくは、ハードディスク上にダウンロード及び保存されるが、全体のプログラムコード又はこの一部は、任意の他の揮発性若しくは不揮発性記憶媒体又は周知の装置、例えば、ROM若しくはRAMに保存されてもよく、又はプログラムコードを保存することができる任意の他のコンピュータ読取可能媒体(260)、例えば、コンパクトディスク(CD)媒体、デジタル多用途ディスク(DVD)媒体、フロッピー(登録商標)ディスク、ROM、RAMなどに提供されてもよい。
本発明の種々の態様及び実施形態を実装するためのコンピュータコードは、コンピュータシステム、例えば、C、C++、C#、HTML、Java(登録商標)、JavaScript(登録商標)など又は任意の他のスクリプト言語、例えば、VBScript上で実行可能な任意のプログラミング言語において実装することができる。さらに、プログラムコード全体又はこの一部は、搬送波信号として具体化することができ、この信号は、周知の任意の通信媒体又はプロトコル(例えば、TCP/IP、HTTP、HTTPS、Ethernet(登録商標)など)を使用して、インターネット上で、又は周知の任意の他の慣用的なネットワーク接続(例えば、エクストラネット、VPN、LANなど)上でソフトウエア源(例えば、サーバ)から伝達及びダウンロードすることができる。
一実施形態によれば、知能モジュールは、患者の試験結果及び/又は質問票の回答を分析するための疾患分類処理を実装して患者試料がIBSと関連するか否かを決定する。データは、メモリ(210)内の1個以上のデータ表若しくは他の論理データ構造又は知能モジュールと接続された別個の記憶装置若しくはデータベースシステムに保存することができる。1種以上の統計処理が、典型的には、特定の患者についての試験データを含むデータセットに適用される。例えば、試験データは、患者からの試料中の少なくとも1種のマーカーの存在又はレベルを示すデータを含む診断マーカープロファイルを含むことができる。試験データは、患者が患っている又は最近患っていたIBSと関連する、少なくとも1種の症状の存在又は重症度を示すデータを含む症状プロファイルを含むこともできる。一態様において、統計処理は、診断マーカープロファイル及び/又は症状プロファイル基づき患者試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する統計的に導出される判定を生成する。別の態様において、第1の統計処理は、診断マーカープロファイル及び/又は症状プロファイルに基づき患者試料をIBD試料又は非IBD試料として分類する第1の統計的に導出される判定を生成する。患者試料が非IBD試料として分類された場合、第2の統計処理が同一又は異なるデータセットに適用されて非IBD試料をIBS試料又は非IBS試料として分類する第2の統計的に導出される判定が生成される。第1及び/又は第2の統計的に導出される判定は、知能モジュールに付随又は接続されたディスプレイ装置に表示されてもよく、又は(1個以上の)判定は別個のシステム、例えばクライアントシステム(230)に提供及び表示することができる。表示された結果によって、医師が妥当な診断又は予後を下すことが可能になる。
X.治療及び治療モニタリング
個体からの試料がIBS試料として分類されると、本発明の方法、システム及びコードは、IBSと関連する1種以上の症状の治療に有用な薬物(すなわち、IBS薬)の治療有効量をこの個体に投与することをさらに含むことができる。治療用途のため、IBS薬は、単独で投与することができ、又は1種以上の追加のIBS薬及び/若しくはIBS薬と関連する副作用を軽減する1種以上の薬物と組み合わせて同時投与することができる。
IBS薬は、必要に応じて好適な医薬賦形剤とともに投与することができ、許容された投与方式のいずれかによって実施することができる。したがって、投与は、例えば、静脈内、局所、皮下、経皮的、経皮、筋肉内、経口、バッカル、舌下、歯肉、口蓋、関節内、非経口、動脈内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻内、直腸、膣内又は吸入であり得る。「同時投与」は、IBS薬が、第2薬物(例えば、別のIBS薬、IBS薬の副作用の軽減に有用な薬物など)の投与と同時に、この投与直前に、又はこの投与直後に投与されることを意味する。
IBS薬の治療有効量は、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8回以上繰り返し投与することができ、又は用量を連続注入によって投与することができる。用量は、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体剤形、例えば、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁液剤、乳剤、坐剤、持続性浣腸剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、エアロゾル剤、フォーム剤などの形態を取り得、好ましくは、正確な投与量の簡単な投与に好適な単位剤形のものである。
本明細書において使用される「単位剤形」は、ヒト対象及び他の哺乳動物に対する単一の投与量として好適な物理的に分離した単位を指し、各単位は、所望の発現、忍容性及び/又は治療効果を生成するように計算された、IBS薬の所定量を、好適な医薬賦形剤とともに含有する(例えば、アンプル)。さらに、より濃縮された剤形を調製することができ、次いでこれからより希釈された単位剤形を生成することができる。したがって、より濃縮された剤形は、実質的には、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍以上の量のIBS薬を含有する。
このような剤形を調製方法は、当業者に公知である(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18TH ED.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)を参照)。剤形は、典型的には、慣用の医薬担体又は賦形剤を含み、他の医薬剤、担体、助剤、希釈剤、組織透過促進剤、可溶化剤などをさらに含むことができる。適切な賦形剤は、当分野において周知の方法によって、特定の剤形及び投与経路に応じて個々に調整することができる(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、前掲)。
好適な賦形剤の例は、限定されるものではないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリアクリル酸、例えば、Carbopol、例えば、Carbopol 941、Carbopol 980、Carbopol 981などを含む。剤形は、滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油;湿潤剤;乳化剤;懸濁化剤;保存剤、例えば、メチル−、エチル−及びプロピル−ヒドロキシ−ベンゾエート(すなわち、パラベン);pH調整剤、例えば、無機及び有機酸及び塩基;甘味剤;並びに付香剤をさらに含むことができる。剤形は、生分解性ポリマービーズ、デキストラン及びシクロデキストリン包接錯体を含むこともできる。
経口投与のため、治療有効用量は、錠剤、カプセル剤、乳剤、懸濁液剤、液剤、シロップ剤、噴霧剤、トローチ剤、散剤及び徐放性配合物の形態であり得る。経口投与に好適な賦形剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む。
一部の実施形態において、治療有効用量は、丸剤、錠剤又はカプセル剤の形態を取り、したがって、剤形は、IBS薬とともに、以下のいずれか:希釈剤、例えば、ラクトース、スクロース、第二リン酸カルシウムなど;崩壊剤、例えば、デンプン又はこの誘導体;滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなど;及び結合剤、例えば、デンプン、アカシアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びこれらの誘導体を含有することができる。IBS薬は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体中に配置される坐剤に配合することもできる。
液体剤形は、例えば、経口、局所又は静脈内投与のための液剤又は懸濁液剤を形成するため、担体、例えば、生理食塩水(例えば、0.9w/v%塩化ナトリウム)、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの中で、IBS薬及び場合により1種以上の医薬的に許容される助剤を溶解又は分散させることによって調製することができる。IBS薬は、持続性浣腸剤に配合することもできる。
局所投与のため、治療有効用量は、乳剤、ローション剤、ゲル剤、フォーム剤、クリーム剤、ゼリー剤、液剤、懸濁液剤、軟膏剤及び経皮貼付剤の形態であり得る。吸入による投与のため、IBS薬は、乾燥粉末として又はネブライザを介して液体形態で送達することができる。非経口投与のため、治療有効用量は、滅菌注射液剤及び滅菌包装粉末の形態であり得る。好ましくは、注射液剤は、約4.5〜約7.5のpHにおいて配合される。
治療有効用量は、凍結乾燥形態で提供することもできる。このような剤形は、投与前の再構成のために緩衝液、例えば、重炭酸塩を含むことができ、又は緩衝液は、例えば、水により再構成するために凍結乾燥剤形中に含めることができる。凍結乾燥剤形は、好適な血管収縮剤、例えば、エピネフリンをさらに含むことができる。凍結乾燥剤形は、シリンジ中で提供することができ、場合により、再構成された剤形を個体に直ちに投与することができるように、再構成のための緩衝液と組み合わせて包装することができる。
IBS治療のための治療的使用において、IBS薬は、一日あたり約0.001mg/kg〜約1000mg/kgの初回投与量において投与することができる。約0.01mg/kg〜約500mg/kg、約0.1mg/kg〜約200mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg又は約10mg/kg〜約50mg/kgの1日用量の範囲を使用することができる。しかしながら、投与量は、個体の要求、IBS症状の重症度及び用いられるIBS薬に応じて変えることができる。例えば、投与量は、本明細書に記載の方法に従ってIBSであるとして分類された個体におけるIBS症状の重症度を考慮して経験的に決定することができる。個体に投与される用量は、本発明に関して、経時的に個体における有益な治療応答に影響を及ぼすのに十分でなければならない。用量のサイズは、個体における特定のIBS薬の投与に伴う任意の不利益な副作用の存在、性質及び程度によって決定することもできる。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、医師の技能の範囲内である。一般に、治療は、IBS薬の最適な用量よりも少ない投与量で開始される。その後、投与量は、状況下における最適な効果に達するまで少しずつ増加される。便宜上、所望により、総1日投与量は、その日の間で分割し、分けて投与することができる。
本明細書において使用される「IBS薬」という用語は、IBSと関連する1種以上の症状の治療に有用な薬物のすべての医薬的に許容される形態を含む。例えば、IBS薬は、ラセミ体又は異性体の混合物、イオン交換樹脂に結合した固体複合体などであり得る。さらに、IBS薬は溶媒和形態であり得る。「IBS薬」という用語は、記載されているIBS薬のすべての医薬的に許容される塩、誘導体及びアナログ並びにこれらの組合せも含むものとする。例えば、IBS薬の医薬的に許容される塩は、限定されるものではないが、IBS薬の酒石酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、二塩酸塩、サリチル酸塩、ヘミコハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、塩酸塩、カルバミン酸塩、硫酸塩、硝酸塩及び安息香酸塩の形態並びにこれらの組合せなどを含む。IBS薬の任意の形態、例えばIBS薬の医薬的に許容される塩、IBS薬の遊離塩基又はこれらの混合物は、本発明の方法における使用に好適である。
IBSと関連する1種以上の症状の治療に有用な好適な薬物は、限定されるものではないが、セロトニン作動薬、抗うつ剤、クロライドチャネル活性化因子、クロライドチャネル遮断薬、グアニル酸シクラーゼアゴニスト、抗生物質、オピオイド、ニューロキニンアンタゴニスト、抗痙攣あるいは抗コリン作動薬、ベラドンナアルカロイド、バルビツール酸塩、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)アナログ、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、プロバイオティクス、これらの遊離塩基、これらの医薬的に許容される塩、これらの誘導体、これらのアナログ及びこれらの組合せを含む。他のIBS薬は、増量剤、ドーパミンアンタゴニスト、駆風剤、トランキライザー、デクストフィソパム、フェニトイン、チモロール及びジルチアゼムを含む。
セロトニン作動薬は、IBS症状、例えば、便秘、下痢及び/又は交互に発症する下痢と便秘の治療に有用である。セロトニン作動薬の非限定的な例は、Cash et al.,Aliment.Pharmacol.Ther.,22:1047−1060(2005)に記載されており、5−HT3受容体アゴニスト(例えば、MKC−733など)、5−HT4受容体アゴニスト(例えば、テガセロド(Zelnorm(商品名))、プルカロプリド、AG1−001など)、5−HT3受容体アンタゴニスト(例えば、アロセトロン(Lotronex(商標))、シランセトロン、オンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、ラモセトロン、パロノセトロン、E−3620、DDP−225、DDP−733など)、5−HT3受容体アンタゴニスト/5−HT4受容体アゴニストの混合物(例えば、シサプリド、モサプリド、レンザプリドなど)、これらの遊離塩基、これらの医薬的に許容される塩、これらの誘導体、これらのアナログ及びこれらの組合せを含む。さらに、神経またはグリア細胞シグナリングに影響を及ぼすことによって腸透過性を調節するアミノ酸、例えば、グルタミン及びグルタミン酸を、IBS患者を治療するために投与することができる。
抗うつ剤、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)又は三環系抗うつ剤は、IBS症状、例えば、腹痛、便秘及び/又は下痢の治療に特に有用である。SSRI抗うつ剤の非限定的な例は、シタロプラム、フルボキサミン、パロキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、これらの遊離塩基、これらの医薬的に許容される塩、これらの誘導体、これらのアナログ及びこれらの組合せを含む。三環系抗うつ剤の例は、限定されるものではないが、デシプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、トリミプラミン、マプロチリン、アモキサピン、クロミプラミン、これらの遊離塩基、これらの医薬的に許容される塩、これらの誘導体、これらのアナログ及びこれらの組合せを含む。
クロライドチャネル活性化因子は、IBS症状、例えば、便秘の治療に有用である。クロライドチャネル活性化因子の非限定的な例は、ルビプロストン(Amitiza(商標))、この遊離塩基、この医薬的に許容される塩、この誘導体又はこのアナログである。さらに、クロフェレマーなどのクロライドチャネル遮断薬は、IBS症状、例えば、下痢の治療に有用である。グアニル酸シクラーゼアゴニスト、例えば、MD−1100は、IBSと関連する便秘の治療に有用である(例えば、Bryant et al.,Gstroenterol.,128:A−257(2005)を参照)。抗生物質、例えば、ネオマイシンも、IBSと関連する便秘の治療における使用に好適であり得る(例えば、Park et al.,Gastroenterol.,128:A−258(2005)を参照)。非吸収性抗生物質、例えば、リファキシミン(Xifaxan(商品名))は、IBSと関連する小腸の細菌過剰成長及び/又は便秘を治療するために好適である(例えば、Sharara et al.,Am.J.Gastroenterol.,101:326−333(2006)を参照)。
オピオイド、例えば、カッパオピオイド(例えば、アシマドリン)は、IBSと関連する疼痛及び/又は便秘を治療するのに有用であり得る。ニューロキニン(NK)アンタゴニスト、例えば、タルネタント、サレデュータント並びに他のNK2及び/又はNK3アンタゴニストは、IBS症状、例えば、結腸中の筋肉の過敏性、便秘及び/又は下痢を治療するのに有用であり得る。抗痙攣又は抗コリン作動薬、例えば、ジサイクロミンは、IBS症状、例えば、腸及び膀胱の筋肉における痙攣を治療するために有用であり得る。他の抗痙攣又は抗コリン作動薬、例えば、ベラドンナアルカロイド(例えば、アトロピン、スコポラミン、ヒヨスチアミンなど)は、IBSに関連する腸痙攣を軽減するためにバルビツール酸塩、例えば、フェノバルビタールと組み合わせて使用することができる。GLP−1アナログ、例えば、GTP−010は、IBS症状、例えば、便秘を治療するために有用であり得る。CRFアンタゴニスト、例えば、アストレシン及びプロバイオティクス、例えば、VSL#3(商標)は、1種以上のIBS症状を治療するために有用であり得る。当業者は、現在使用されている又は開発中のIBSと関連する1種以上の症状を治療するために好適な追加のIBS薬について理解する。
個体からの試料がIBS試料として分類されたら、個体を定期的な間隔でモニタリングしてある治療レジメンの効力を評価することもできる。例えば、あるマーカーのレベルは、治療、例えば、薬物の治療効果に基づき変化する。患者は、個別的アプローチにおいて応答を評価し、ある薬物又は治療の効果を理解するためにモニタリングされる。さらに、患者は薬物に応答しないことがあるが、マーカーは変化し得、このことは、患者が、これらのマーカーレベルによって同定することができる特別な集団(非応答性)に属することを示唆する。これらの患者は、患者の現在の治療及び処方された代替の治療を中止することができる。
XI.実施例
以下の実施例は説明のために提供するものであり、特許請求される発明を限定するものではない。
2007年8月14日に出願された米国特許出願公開第2008/0085524号からの実施例は、すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる。
A.《実施例1》IBSを予測するためのトリプターゼELISA
本実施例は、マスト細胞β−トリプターゼの存在又はレベルを検出するための高感度ELISAを説明する。なお、図1〜7を参照のこと。
背景:マスト細胞は、過敏性腸症候群(IBS)の発病において重要な役割を担う。遠位腸セグメント内でのマスト細胞浸潤及び活性化の増加は、IBSの症状の発症及び重症度に関連する。マスト細胞は、IBS患者における粘膜刺激に対する内臓求心性神経の応答の上昇に関与している。マスト細胞マーカーの計測は、IBSの臨床診断において重要な意味を有し得る。しかしながら、この試みは、高感度アッセイの欠如に起因して遅れていた。
方法:本明細書において、本発明者らは、ヒト血清試料中のトリプターゼレベルを計測するための高感度両面ELISAアッセイ(検出限界0.019ng/mL)の開発及び検証を報告する。このアッセイは正確であり、堅牢であり、再現性を示す。健常対照及びIBS患者における血清トリプターゼ濃度を、このアッセイを使用して計測した。
結果:健常対照における平均血清トリプターゼレベルは、9.32±2.1ng/mL(n=156)であった。IBS−D及びIBS−A患者は、顕著に高い血清トリプターゼ濃度を示す(IBS−Dについて12.71ng/mL(n=209)、IBS−Aについて11.94ng/mL(n=57)、p<0.01)一方、IBS−Cについての平均トリプターゼレベルは、9.34ng/mL(n=118)であり、IBS−Cについての健常対照との顕著な差はない。
結論:これは、IBS−D及びIBS−A患者とIBS−C患者及び健常対照とを区別するこれまでのところ開発された最初のバイオマーカーである。血清トリプターゼレベルを他のPrometheus IBSバイオマーカーと組み合わせることによって、本発明者らは、IBS−D及びIBS−A患者の診断の精度を改善することができた。
捕捉抗体としてのウサギ抗トリプターゼ及び検出抗体としてのアルカリホスファターゼにコンジュゲートされたG3を使用して血清マスト細胞β−トリプターゼのレベルを決定するためのELISAアッセイを開発した。アッセイ感度を向上させるため、発光基質CPSD(ジナトリウム3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルホスフェート)を使用した。5%BSA及び10%正常ヒト血清を有する緩衝液中でβ−トリプターゼについて1〜1000ng/mLの標準範囲にわたり線形用量応答曲線が観察された。このアッセイの下限は、0.019ng/mLであり、イントラアッセイ及びインターアッセイ変動係数は、1ng/mL及び1000ng/mLのトリプターゼ濃度において15%未満であった。血清に添加された既知量の精製トリプターゼの回収率は、88%であった。健常対照、IBS−C及びIBS−D患者からのトリプターゼの血清レベルを試験するため、免疫アッセイを利用した。健常対照における平均血清トリプターゼレベルは、7.0+2.1ng/mL(n=113)であった。IBS−C及びIBS−Dにおける平均トリプターゼレベルは、それぞれ9.6ng/mL(n=116)及び12.7(n=209)であった。11.4ng/mL(平均+2SD)のカットオフ値を使用すると、GI健常対照についてのアッセイ特異度は82%(n=156)であり、IBS−C及びIBS−Dについてのアッセイ感度は、それぞれ21.5%及び24.9%であった。患者の症状及びIBSについての他のマーカーと血清トリプターゼレベルを組み合わせることは、IBS−Dと他のタイプの過敏性腸症候群を区別するのに役立ち得る。
B.《実施例2》IBSにおける血清トリプターゼレベルの診断有用性の評価
背景:マスト細胞は、過敏性腸症候群(IBS)の発病において重要な役割を担う。遠位腸セグメント内でのマスト細胞浸潤及び活性化の増加は、IBSの症状の発症及び重症度に関連する。マスト細胞は、IBS患者における粘膜刺激に対する内臓求心性神経の応答の上昇に関与している。マスト細胞マーカーの計測は、IBSの臨床診断において重要な意味を有し得る。しかしながら、この試みは、高感度アッセイの欠如に起因して遅れていた。
方法:本明細書において、本発明者らは、ヒト血清試料中のトリプターゼレベルを計測するための高感度2部位ELISAアッセイ(検出限界0.019ng/mL)の開発及び検証を報告する。このアッセイは正確であり、堅牢であり、再現性を示す。健常対照及びIBS患者における血清トリプターゼ濃度を、このアッセイを使用して計測した。
結果:健常対照における平均血清トリプターゼレベルは、7.1±2.5ng/mLであった。IBS−D及びIBS−A患者は、健常対照対象よりも高い血清トリプターゼ濃度を示す(IBS−Dについて10.3±8.7ng/mL、IBS−Aについて12.1±10.7ng/mL)一方、IBS−Cについての平均トリプターゼレベルは、9.6±9.4ng/mLであった。IBS−C群とIBS−D群との血清トリプターゼレベルの統計的差異が存在した(p<0.01)。
結論:血清トリプターゼ濃度は、IBS−D患者とIBS−C患者とを区別するこれまでのところ開発された最初のバイオマーカーである。血清トリプターゼレベルを他のIBSバイオマーカーと組み合わせてIBSの診断の精度を改善することができる。
図8は、本明細書に記載のトリプターゼELISAにおけるヒトトリプターゼの用量依存性応答を示す。プロトコル:96ウェルマイクロタイタ−プレートを、炭酸ナトリウム(pH9.6)中100mLの2mg/mL抗ヒトトリプターゼ抗体によって4℃において一晩コーティングした。PBSTによって洗浄した後、プレートを300mL/ウェルのブロッキング/アッセイ緩衝液(PBS中5%BSA)と、室温(RT)において30分間穏やかに撹拌しながらインキュベートした。洗浄後、100mL/ウェルの段階希釈(アッセイ緩衝液中1:8)したヒトトリプターゼをプレートに添加した。RTにおいてさらに2時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、次いでアッセイ緩衝液中で最適に希釈した100mLのAPにコンジュゲートされた抗ヒトトリプターゼとインキュベートした。プレートを穏やかに撹拌しながら2時間インキュベートし、次いで洗浄した。100mLのTropix CSPD基質を各ウェルに添加し、暗所で30分間インキュベートしてから、発光プレートリーダーによって発光を読み取った。相対発光単位(RLU)及びトリプターゼ濃度をPrism Graphpad Programによってプロットした。トリプターゼ検出範囲=0.019〜5000ng/mL。EC50=65ng/mL。回収率は、正常プール血清中にスパイクされた20ngについて81.5%であった。
図9は、本明細書に記載のトリプターゼELISAの最適化を示す。図10は、健常対照(n=139)及びIBSの対象(n=378)からの血清中のトリプターゼレベルを示す。トリプターゼレベルを、アッセイ緩衝液によって10倍希釈した血清試料中でELISAによって計測した。IBS患者はまた、このサブタイプ:IBS−D(n=206):下痢優勢型;IBS−C(n=116):便秘優勢型;IBS−A(n=56):交互症状に従って示す。各値は、二重決定の平均である。実線は、各群からの中央値である。12ng/mLのカットオフ値は、中央プラス2SDを有する健常対象から計算した(点線)。健常対象に対して*p<0.0001;IBS−Dに対して**p<0.0001;マン・ホイットニーU検定。表2は、IBSサブタイプ及び健常対象におけるトリプターゼレベルの概要を提供する(カットオフ=12.0ng/mL)。
図11は、健常対照に対するIBS患者におけるヒスタミン及びPGE2の血清レベルの増加を示す。PGE2は、Cayman製キットを使用するELISAによって50μLの血清中で計測した。ヒスタミンは、Immunotech EIAキットを使用して10μLの血清中で計測した。試料は二重に試験した。実線は、各群の中央値である。例えば、ある態様において、IBS−Dは、健常対照、IBS−A及び/又はIBS−C試料若しくは標準と比べて高いレベルのPGE2を検出することによって、診断又はIBSの他の臨床サブタイプから区別することができる。ある他の態様において、IBS−D又はIBS−Aは、健常対照及び/又はIBS−C試料若しくは標準と比べて高いレベルのヒスタミンを検出することによって、診断又はIBS−Cと区別することができる。
結論:(1)血清トリプターゼレベルを高感度で、高精度で正確に計測することができるサンドイッチELISA法を開発した。このアッセイは、高程度の再現性を有し、多数のヒト血清の定型的試験に好適である。(2)このELISAを使用して、本発明者らは、健常対照とIBS患者との血清トリプターゼレベルの有意差を見出した。IBS患者のうち、IBS−D及びIBS−A患者は、IBS−C患者と比較して統計的に高いトリプターゼレベルを有した。(3)追加のマスト細胞マーカー、ヒスタミン及びPGE2も、IBS患者血清試料中で異常であることを見出した。これらのマーカーをトリプターゼと組み合わせることは、IBSの診断精度の改善をもたらした。
C.《実施例3》IBSと関連する症状の存在又は重症度を同定するための質問票
本実施例は、個人における1種以上のIBS関連症状の存在又は重症度を同定するために有用な質問票について説明する。本質問票は、クリニック又は若しくは開業医の診療所で個人によってすべての項目を記入されてもよいし、又は家に持ち帰り、個人がクリニック又は開業医の診療所に戻ってくる(例えば、患者の採血のため)ときに提出することができる。
一部の実施形態において、本質問票は、個人に、1種以上のIBSと関連する症状の存在又は重症度に関する回答を提供することを求める一連の質問を含有する第1のセクションを含む。本質問票は、一般に、IBS関連症状、例えば、胸痛、胸部不快感、胸焼け、普通量の食事後の不快な膨満感、普通量の食事の完食不能、腹痛、腹部不快感、便秘、下痢、膨満感及び/又は腹部膨張の存在、重症度、頻度及び/又は持続期間を同定することを対象とした質問を含む。
ある例において、質問票の第1のセクションは、ローマIII基準に基づく、ローマ委員会によって策定された、http://www.romecriteria.org/questionnaires/から入手可能な質問票からの質問のすべて又は一部を含む。例えば、質問票は、成人機能性GI障害に対するローマIII診断質問票(別表C)(http://www.romecriteria.org/pdfs/AdultFunctGIQ.pdfから入手可能)の920〜936ページに説明される93個の質問のすべて又は一部を含むことができる。好ましくは、質問票の第1のセクションは、ローマIII診断質問票に説明される93個の質問の16個を含有する(表3を参照)。あるいは、質問票の第1のセクションは、表3に示される16個の質問の一部(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個)を含有することができる。非限定的な例として、表3に説明される以下の10個の質問:質問番号、2、3、5、6、9、10、11、13、15及び16を質問票に含めることができる。当業者は、質問票の第1のセクションが、疼痛、不快感及び/又は便の硬さの変化に関する表3に示す質問に類似する質問を含むことができることを認識する。
他の実施形態において、質問票は、個人にIBSと関連する疼痛又は不快感を有することに伴う消極的な思考又は感情の存在又は重症度に関する回答を提供することを求める一連の質問を含有する第2のセクションを含む。例えば、本質問票は、個人がIBSの1種以上の症状と関連する疼痛又は不快感を経験している時の不安、恐れ、緊張感、懸念、心配、悩み、ストレス、落ち込み、失望感、絶望、悲観、疑念及び/又は否定的なことの存在、重症度、頻度及び/又は持続期間を同定することを対象とした質問を含むことができる。
ある例において、質問票の第2のセクションは、Sullivan et al.,The Pain Catastrophizing Scale:Development and Validation,Psychol.Assess.,7:524−532(1995)に記載の質問票からの質問のすべて又は一部を含む。例えば、質問票は、個人が疼痛を経験した場合にある消極的な思考又は感情を有する程度:0=全くない、1=軽度、2=中程度、3=重度、4=いつも、を示す痛みの認知面の評価(PCS)に従って個人によって回答されるべき一連の質問を含むことができる。質問票の第2のセクションは、IBSと関連する疼痛又は不快感を有することに伴う消極的な思考又は感情の存在又は重症度を同定することに関連する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個以上の質問又は記述を含有することができる。非限定的な例として、個人が疼痛を経験した場合以下の思考又は感情の1つ以上:「私はいつも疼痛が止むかどうか心配している」;「私はもうこれ以上疼痛に耐えられないと感じる」;「私は疼痛が悪化するのではないかと恐れている」;「私は疼痛が消えることを切望している」;及び「私は疼痛がどれほど痛いかについて考え続けている」を有する程度を評価するように個人に求めることができる。当業者は、質問票がIBSと関連する疼痛又は不快感を有することに伴う消極的な思考又は感情に関する類似の質問を含むことができると理解する。
一部の実施形態において、質問票は、質問票の第1のセクション又はこの一部からの質問(例えば、表3を参照)のみを含む。他の実施形態においては、質問票は、質問票の第2セクション又はこの一部からの質問のみを含む。
個人によって本質問票がすべて記入されると、各質問に対する回答に対応する数字を合わせることができ、得られる値は、個体からの試料中の1種以上の診断マーカーの分析と組み合わせ、本明細書に記載の統計的アルゴリズムを使用して処理してIBS予測の精度を増加させることができる。
あるいは、以下質問:「あなたは現在何らかの症状を経験していますか?」に対する個人からの「はい」又は「いいえ」の回答は、本明細書に記載のバイオマーカーの1種以上の分析結果と組み合わせ、単一の統計的アルゴリズム又は統計的アルゴリズムの組合せを使用して処理してIBS予測の精度を増加させることができる。
D.《実施例4》過敏性腸症候群(IBS)の診断のための血液ベース診断アッセイ
本実施例は、過敏性腸症候群(IBS)についての最初の血液ベースバイオマーカー試験を説明する。本試験は、IBSの診断において臨床医を補助することができる。下記のIBS診断は、承認されたIBS専門家及びGIクリニックから回収された十分に特性決定されたIBS試料を使用して検証した。試料は、ローマII又はローマIII陽性であり、患者は、1年超にわたりIBSの診断を受けた。試験は、50%の感度、88%の特異度、70%の全体精度を有する。
本アッセイを開発するために使用された全コホートは、1721個の血清試料からなるものであった。使用された検証コホートは、516個の血清試料からなるものであり、このうち50%はローマII又はローマIII基準に従ってIBSと診断されたものであり;36%は非IBS疾患対照であり;及び14%は正常健常対照であった。アッセイの感度は50%であり、特異度は88%である。医師が患者において疾患の確率が約75%であると決定し、IBSを確定する場合、陽性試験結果の94%は真陽性である一方、陰性試験結果の38%は真陰性である。医師が患者において疾患の確率が約25%であると決定し、IBSを除外する場合、陰性試験結果の86%は真陰性である一方、陽性試験結果の61%は真陽性である。
アッセイは、ランダムフォレスト分類子及びニューラルネットワーク分類子からなる2種の学習統計的分類子システムと組み合わせたバイオマーカーの定量分析を含む。
アッセイの試験体要件は、例えば、SSTチューブ中の2.0mLの分離血清を医師が得ることからなる。最良の結果のため、試料を回収から2時間以内に遠心分離及び冷蔵すべきである。アッセイ検出前に試料を運搬する必要がある場合、試料は冷蔵又は冷凍すべきである。最良の結果のため、試料を使用前に4℃において7日以下又は冷凍の場合は30日間貯蔵すべきである。
手短に述べると、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、IBSバイオマーカーのASCA−IgA、CBir1、ANCA及びtTGについて特異的な抗体を用いて実施する。さらに、化学発光アッセイは、IBSバイオマーカーのBDNF、NGAL、TWEAK、GRO−α、IL−1β及びTIMP−1について実施する。健常対象におけるこれらのマーカーの正常範囲についての参照値を、表4に提供する。
ある例において、上記IBSバイオマーカーの検出からの情報は、患者によって提供される症状情報と組み合わせることができる。例えば、IBSの診断において臨床医をさらに補助するため、患者は、患者の症状のチェックリストを記入することができ、これからの情報を、IBSバイオマーカーからの情報と組み合わせることができる。この方式において使用することができるチェックリストの例を、表5に提供する。
E.参考文献:
1.Barbara G and Cremon C.Serine proteases:new players in diarrhoea−predominant irritable bowel syndrome.Gut.2008 May;57(5):591−9。
2.Barbara G,Wang B,Stanghellini V,et al.Mast Cell−Dependent Excitation of Visceral−Nociceptive Sensory Neurons in Irritable Bowel Syndrome.Gastroenterology 2007;132:26−37。
本発明を、明確な理解の目的のために、説明及び実施例によっていくらか詳細に記載したが、当業者は、ある変更及び改変を添付の特許請求の範囲の範囲内で実施することができると理解する。さらに、本明細書において提供される各参考文献は、各参考文献が参照により個々に組み込まれたのと同程度に全体として参照により組み込まれる。