以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を具体的に説明する。まず、図1を参照しつつ、本発明に係る汚染土壌浄化装置の概略構成を説明する。図1に示すように、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sは、破砕部1と、分級部2と、沈降分離部3と、濾過部4と、洗浄水再生部5と、洗浄水還流機構6とを備えている。
この汚染土壌浄化装置Sにおいて、破砕部1は、基本的には、石及び/又は礫が混在しかつ有害金属等(有害金属及び/又はその化合物)で汚染された土壌を受け入れ、該土壌中に混在している石及び/又は礫を破砕する。分級部2は、破砕部1から排出された土壌と、キレート剤を含む洗浄水とを混合し、土壌に付着している有害金属等を該土壌から離脱させてキレート剤に捕捉させるとともに、該土壌から粗骨材及び砂を分離して回収する。この実施形態では、キレート剤を含む洗浄水が破砕部1にも供給され、破砕部1でも土壌に付着している有害金属等が該土壌から離脱させられ、キレート剤に捕捉される。
沈降分離部3は、分級部2から排出された細粒土(シルト及び/又は粘土)を含む洗浄水を、沈降分離により、上澄水と、細粒土を含むスラッジとに分離する。濾過部4は、沈降分離部3から排出されたスラッジを濾過して濾過ケークを生成する。洗浄水再生部5は、沈降分離部3から排出された上澄水を受け入れ、キレート剤よりも錯生成力が高い固相吸着材を用いて、上澄水中の有害金属等を捕捉しているキレート剤から有害金属等を除去し、上澄水を洗浄水として再生する。なお、洗浄水再生部5の具体的な構成及び機能は、後で詳しく説明する。洗浄水還流機構6は、ポンプ及び管路(図示せず)を有し、洗浄水再生部5で再生された洗浄水を破砕部1及び分級部2に還流させる。すなわち、汚染土壌浄化装置Sは、基本的には洗浄水を循環させ、外部には排出しないので、洗浄水に関してはクローズドシステムである。
次に、図2を参照しつつ、汚染土壌浄化装置Sの具体的な構成及び機能を説明する。図2に示すように、汚染土壌浄化装置Sにおいては、まず、有害金属等(有害金属及び/又はその化合物)で汚染され、場合によってはその他の汚染物質(例えば、フッ素、ホウ素、シアン等の第二種特定有害物質)で汚染された地盤の掘削等により採取された土壌(汚染土壌)が、投入ホッパ11に受け入れられる。そして、投入ホッパ11内の土壌はまず混合装置12に投入され、混合装置12内で、キレート剤を含む洗浄水と混合される。ここで、土壌は、細粒土(粒径が0.075mm以下のシルト又は粘土)及び種々の粒径の土石ないしは土砂、例えば石(粒径が75mm以上)、礫(粒径が2ないし75mm)及び/又は砂(粒径が0.075ないし2mm)等を含むものである。
投入ホッパ11内の土壌は有害金属等で汚染され、場合によってはさらにその他の汚染物質で汚染されている。ここで、有害金属等としては、例えばクロム、鉛、カドミウム、セレン、水銀、金属砒素及びこれらの化合物などが挙げられる。その他の汚染物質としては、例えば、フッ素又はその化合物、ホウ素又はその化合物、シアン化合物等の第二種特定有害物質などが挙げられる。
混合装置12で生成された土壌と洗浄水の混合物(以下「土壌・水混合物」という。)は湿式のミルブレーカ13に移送される。このようなミルブレーカ13としては、例えば湿式のロッドミルを用いることができる。ロッドミルは、詳しくは図示していないが、ドラムの中に複数のロッド(例えば、10本の75mmφ×2mのスチールロッド)が配置された破砕装置であり、ドラムの回転によってロッドが互いに平行に転動して線接触し、その衝撃力、剪断力、摩擦力等により、比較的粒径の大きい石、礫等を破砕する。その際、石、礫等に付着し又は含まれている有害金属等あるいはその他の汚染物質は剥離又は除去され、洗浄水中に離脱する。
かくして、土壌の表面から離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質ないしはこれらのイオンは、洗浄水中のキレート剤によって捕捉される。ここで、ミルブレーカ13はロッドミルに限定されるわけではなく、その他の破砕装置、例えば湿式のボールミルなどを用いることができるのはもちろんである。なお、混合装置12を設けず、投入ホッパ11内の土壌をミルブレーカ13に直接供給する一方、キレート剤を含む洗浄水をミルブレーカ13に直接供給するようにしてもよい。
ここで、洗浄水に用いられるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、あるいは生分解性を有するHIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などが挙げられる。これらのキレート剤は、いずれも土壌に付着している有害金属等ないしはこれらのイオンを有効に捕捉する(キレートする)ことができものである。なお、実際に土壌を処理する際には、土壌に含まれる有害金属等の種類に応じて、その処理に適したキレート剤が選択され、又は複数種のキレート剤が用いられる。洗浄水中のキレート剤の濃度は、高ければ高い程有害金属等ないしはこれらのイオンの捕捉量が増えるが、実用上は0.005〜0.1モル/リットルの範囲、好ましくは0.01〜0.05モル/リットルの範囲に設定すればよい。
ミルブレーカ13から排出された土壌・水混合物はトロンメル14に導入される。トロンメル14は、詳しくは図示していないが、洗浄水を貯留することができる受槽と、水平面に対して傾斜して配置された略円筒形のドラムスクリーンとを有する湿式の篩分装置であって、ドラムスクリーンは、モータによりその中心軸(円筒の中心軸)まわりに回転することができるようになっている。また、ドラムスクリーン内に、洗浄水をスプレー状で噴射することができるようになっている。
トロンメル14の回転しているドラムスクリーンの内部を土壌・水混合物が流れる際に、ドラムスクリーンの網目より細かい土壌粒子は、洗浄水とともにドラムスクリーンの網目を通り抜け、ドラムスクリーン外に出て受槽内に入る。他方、ドラムスクリーンの網目より粗い土壌粒子は、ドラムスクリーンの網目を通り抜けることができないので、ドラムスクリーンの下側の開口端を経由して、ドラムスクリーン外に排出される。トロンメル14内では、土壌・水混合物中の土壌粒子同士が互いに擦れ合うので、土壌粒子の表面に残留・付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質が剥離され、洗浄水中に離脱させられる。このように洗浄水中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質ないしはこれらのイオンは、洗浄水中のキレート剤によって捕捉される。
この実施形態では、トロンメル14のドラムスクリーンの網目の分級径(目開き)は、粒径が2mm未満の土壌粒子がドラムスクリーンの網目を通り抜けるように設定されている。したがって、このトロンメル14では、粒径が2mm以上の土壌粒子(礫、石)が土壌・水混合物から分離ないしは回収される。このような粒径が2mm以上の土壌粒子(礫、石)は、ほとんど汚染物質を含まない。このため、トロンメル14で分離された粒径が2mm以上の土壌粒子(礫、石)は、例えばコンクリート用の骨材ないしは粗骨材として用いることができ、あるいは販売することができる。
また、このような粒径が2mm以上の骨材ないしは粗骨材を、例えば篩分装置を用いて分級し、粒径が異なる複数種の骨材ないしは粗骨材を生産してもよい。例えば、粒径が5mm未満の比較的細かい粗骨材と、粒径が5mm以上の比較的粗い粗骨材に分級してもよい。なお、トロンメル14のドラムスクリーンの網目の寸法(目開き)は前記のものに限定されるわけではなく、得ようとする比較的粒径が大きい土壌粒子の粒径に応じて、任意に設定することができるのはもちろんである。
トロンメル14の受槽内に収容された粒径が2mm未満の土壌粒子と洗浄水とを含む土壌・水混合物はサイクロン15に導入される。サイクロン15は、詳しくは図示していないが、下方に向かって狭まる略円錐状のシリンダ内に土壌・水混合物をポンプで圧送して旋回流を生じさせ、これによって生じる遠心力を利用して、土壌・水混合物を、比較的粒径が小さい(例えば0.075mm未満)細粒土と洗浄水の混合物と、比較的粒径が大きい(例えば0.075mm以上)土壌粒子(ある程度の洗浄水を含む)とに分離する。そして、細粒土と洗浄水の混合物(以下「細粒土含有水」という。)はサイクロン15の上端部から排出され、比較的粒径が大きい土壌粒子はサイクロン15の下端部から排出される。ここで、細粒土含有水はシールタンク16(中間貯槽)に一時的に貯留される。細粒土含有水に含まれる細粒土は、例えばその粒径が0.075mm未満のシルト又は粘土である。
他方、サイクロン15の下端部から排出された比較的粒径が大きい土壌粒子(ある程度の洗浄水を含む)はサンドスクリーン17に導入される。なお、この比較的粒径が大きい土壌粒子は、例えばその粒径が0.075〜2mmの砂である。サンドスクリーン17は、所定の圧力及び水量で洗浄水を流動させて、比較的粒径が大きい土壌粒子すなわち砂にすすぎ洗浄処理を施すとともに、残留している浮遊物ないしは異物を捕集して除去する。サンドスクリーン17で捕集された浮遊物ないしは異物は、可燃物であれば燃料として再利用される(サーマルリサイクル)。また、すすぎ洗浄処理が施された比較的粒径が大きい土壌粒子すなわち砂(洗い砂)は、汚染物質をほとんど含んでいないので、再生砂として使用され、あるいは販売される。サンドスクリーン17から排出された洗浄水は、フィードタンク18(中間貯槽)に一時的に貯留される。
シールタンク16に一時的に貯留された細粒土含有水はpH調整槽19に導入される。また、フィードタンク18に一時的に貯留された洗浄水もpH調整槽19に導入され、細粒土含有水に加えられる。そして、pH調整槽19では、細粒土含有水(加えられた洗浄水を含む)のpHが、pH調整剤、例えば酸性液(例えば、硫酸、塩酸等)及びアルカリ性液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)を用いて、ほぼ中性又は所定のpH(例えば、pH7〜8)となるように調整される。なお、図示していないが、pH調整槽19においては、細粒土含有水のpHは、pHメータ等を備えたpH自動制御装置により自動的に調整される。
pH調整槽19でpHが調整された細粒土含有水は原水槽20に一時的に貯留される。原水槽20では、細粒土含有水にポリ塩化アルミニウム液(PAC)と、高分子凝集剤と、pH調整剤(酸性液又はアルカリ性液)とが添加される。これにより、原水槽20内に非水溶性の金属水酸化物と細粒土とが混在する多数のフロックが生成される。その際、洗浄水中の水質汚濁物質がフロックに吸着され又はフロックに付着する。なお、ポリ塩化アルミニウム液及び高分子凝集剤を、原水槽20ではなく、pH調整槽19で細粒土含有水に添加してもよい。また、pH調整槽19と原水槽20の間に、細粒土含有水にポリ塩化アルミニウム液と高分子凝集剤とpH調整剤とを添加する凝集反応槽を設けてもよい。
原水槽20内の細粒土含有水は、浮遊物回収装置21により浮遊物が除去された後、シックナ22に導入される。シックナ22は、詳しくは図示していないが、細粒土含有水がほぼ静止している状態で非水溶性のフロックないしは細粒土を重力により沈降させ、下部に位置するスラッジ層(例えば、固形分の比率が5〜10%)と、上部に位置しほとんどフロックないしは細粒土を含まない上澄水(洗浄水)とを形成する。上澄水の表面に浮遊している浮上油は、少量の上澄水をシックナ22の上部から溢流させることにより除去される。なお、上澄水を溢流させず、シックナ22の水面に、例えばオイル吸収マットなどを浮遊させて浮上油を除去するようにしてもよい。
シックナ22の下部に滞留ないしは堆積しているスラッジは、スラッジポンプ等により引き抜かれて中間タンク23に移送され、中間タンク23内に一時的に貯留される。そして、中間タンク23内のスラッジは、適宜に又は連続的に、フィルタプレス24に移送される。フィルタプレス24は、詳しくは図示していないが、バッチ式又は半連続式の加圧式濾過器であって、中間タンク23から受け入れたスラッジを加圧濾過し、濾過ケークと濾液とを生成する。フィルタプレス24の濾過圧力は、例えば濾過ケークの含水率が30〜40%となるように設定される。ここで、フィルタプレス24の濾液はシックナ22に戻される。なお、フィルタプレス以外の濾過器、例えば真空濾過器(オリバー式濾過器)等を用いてもよい。フィルタプレス24から排出された濾過ケークは、有害金属等あるいはその他の汚染物質をほとんど含まないので、必要に応じて乾燥処理を施した上で、改良土として使用し、又は販売することができる。
他方、シックナ22内の上澄水は、処理水槽25に導入されて貯留される。処理水槽25が満杯になったときには予備水槽26が使用される。処理水層25ないしは予備水槽26に貯留されている処理水は、後でその構成及び機能を詳しく説明する洗浄水再生部5に導入される。なお、処理水槽25に貯留されている処理水(循環水)が蒸発等により減少したときには、適宜に処理水槽25に水道水が補給される。
この汚染土壌浄化装置Sにおいては、有害金属等で汚染された土壌が順に混合装置12とミルブレーカ13とトロンメル14とサイクロン15とサンドスクリーン17とで処理される際に、土壌に付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質は、キレート剤を含む洗浄水中に離脱するが、洗浄水中に離脱したこれらの汚染物質は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に集約される(環境省、水・大気環境局、土壌環境課「汚染土壌処理業の許可審査等に関する技術的留意事項」第21頁、平成25年8月発行、参照)。したがって、トロンメル14で回収される粗骨材、あるいはサンドスクリーン17で回収される砂(洗い砂)は、ほとんど有害金属等を含まないので、土木・建築用の材料として再使用することができる。
前記のとおり、混合装置12からサンドスクリーン17までの土壌及び洗浄水の流通過程で洗浄水中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に集約されるが、細粒土は、シールタンク16又はフィードタンク18からシックナ22までの細粒土含有水の流通過程で、キレート剤を含む洗浄水と、十分に長い時間(例えば、1〜4時間)接触する。このため、細粒土に付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質は、ほとんど洗浄水中に離脱する。そして、洗浄水中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質ないしはこれらのイオンはキレート剤に捕捉される。したがって、フィルタプレス24で生成される濾過ケーク(改良土)は、有害金属等あるいはその他の汚染物質をほとんど含まないので、例えば連続式の通気バンド乾燥機、通気回転乾燥機などを用いて乾燥させ、再使用することができる。
以下、図3を参照しつつ、洗浄水再生部5の構成及び機能を説明する。まず、洗浄水再生部5の概略構成を説明する。図3に示すように、洗浄水再生部5は、上澄水貯槽31と、酸液貯槽32と、水貯槽33と、粒子保持器34(固相吸着材粒子保持器)と、粒子保持器搬送装置35(以下、略して「搬送装置35」という。)と、粒子保持器載置台36(以下、略して「載置台36」という。)とを備えている。ここで、上澄水貯槽31は、処理水槽25から導入される上澄水を一時的に貯留する。
上澄水貯槽31において、上澄水は、連続的に又は所定の周期で間欠的に導入され、排出される。酸液貯槽32は、後で説明する固相吸着材粒子を再生するための酸液を貯留する。水貯槽33は、固相吸着材粒子に付着している酸液を除去するためのすすぎ水を貯留する。酸液貯槽32内の酸液又は水貯槽33内のすすぎ水は、上澄水のように連続的又は間欠的に導入又は排出されるのではなく、必要に応じて適宜に交換される。例えば、酸液はその有害金属等の濃度が予め設定された値を超えたときに交換され、すすぎ水はその酸濃度が予め設定された値を超えたときに交換される。なお、酸液及びすすぎ水を、一定期間毎に交換するようにしてもよい。
粒子保持器34は、固相吸着材粒子を収容する一方、少なくともその側部(又は周部)が、固相吸着材粒子を通過させない網状体又は多孔体で形成されている。搬送装置35は、粒子保持器34を上澄水貯槽31内、酸液貯槽32内、水貯槽33内又は載置台36上に移動させることができ、粒子保持器34を上澄水、酸液又はすすぎ水に浸漬することができる。なお、載置台36は、粒子保持器34を、上澄水、酸液又はすすぎ水に浸漬しないときに一時的に保管しておくための台である。
この洗浄水再生部5において、粒子保持器34が上澄水貯槽31内の上澄水に浸漬されたときには、固相吸着材粒子によって上澄水中のキレート剤から有害金属等が除去され、上澄水が洗浄水として再生される。粒子保持器34が酸液貯槽32内の酸液に浸漬されたときには、固相吸着材粒子に吸着された有害金属等が酸液中に離脱させられる。粒子保持器34が水貯槽33内のすすぎ水に浸漬されたときには、固相吸着材粒子に付着している酸液が除去される。ここで、固相吸着材は、担体に環状分子を担持させ、該環状分子にキレート配位子を修飾した配位結合及び水素結合による多点相互作用を有するとともに有害金属等のイオンを選択的に取り込むものである。
固相吸着材粒子は、キレート剤より錯生成力が高く、キレート剤に捕捉されている有害金属等を吸着又は抽出する固相吸着材からなる粒子又はこのような固相吸着材を含む粒子である。固相吸着材は、上澄水(洗浄水)と接触したときに、上澄水中のキレート剤に捕捉されている有害金属等を吸着又は抽出することができるものである。このような固相吸着材は、例えばゲル等の固体状のものであり、一般に、金属を捕捉しているキレート剤を含む水溶液と接触したときに、キレート剤と配位結合している金属イオンをキレート剤から離脱させて該固相吸着材に移動させることができる程度の共有結合以外の強い結合力を有しているものである。このような固相吸着材は、例えばキレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いる場合、濃度が10mM/lであるEDTA水溶液から、ほぼ100%の金属イオンを回収することができる強い結合力を有するものである。
このような固相吸着材としては、例えばシリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものなどが挙げられる。このような固相吸着材を用いる場合、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合などの複数の様々な結合や相互作用が生じて多点相互作用が生じ、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むことができる。
以下、図3を参照しつつ洗浄水再生部5の具体的な構成及び機能を説明する。なお、以下では、洗浄水再生部5の各構成要素の位置関係を簡明に示すため、便宜上、載置台36と上澄水貯槽31と酸液貯槽32と水貯槽33とが並ぶ方向(図3中の位置関係では左右方向)に関して、水貯槽33が位置する側(図1中の位置関係では右側)を「前」といい、載置台36が位置する側(図1中の位置関係では左側)を「後」ということにする。
粒子保持器34は、略直方体の外形を有し、その内部に固相吸着材粒子を収容することができる籠状ないしは箱状の容器である。そして、粒子保持器34の四方の側部及び底部は、金網、プラスチック網等の網状体(メッシュ)で形成される一方、その上部は開放されている。なお、粒子保持器34の上部に、網状体からなる蓋を設けてもよい。網状体の網目の寸法ないしは口径は、上澄水、酸液又はすすぎ水に対する網状体の流動抵抗を低減するため、固相吸着材粒子の通り抜けを阻止することができる範囲内で可及的に大きく設定される。なお、粒子保持器34の側部及び底部を、網状体ではなく、網状体の網目と同様の寸法ないしは口径の多数の穴が形成された多孔体で形成してもよい。また、粒子保持器34は、外形が略直方体のものに限定される訳ではなく、固相吸着材粒子を適切に収容することができれば、どのような形状のものであってもよい。例えば、粒子保持器34を、外形が略円柱形となるように形成してもよい。
搬送装置35は、レール37と、レール37に沿って前後方向に走行することができる走行具38と、走行具38に取り付けられ粒子保持器34を保持して昇降させるハンガー装置39とを備えている。レール37は、載置台36、上澄水貯槽31、酸液貯槽32及び水貯槽33の上方に配置され前後方向に水平に伸びている。ハンガー装置39は、上下方向に伸縮又は移動して粒子保持器34を昇降させるようになっている。ハンガー装置39は、収縮し又は上昇したときには、粒子保持器34を、載置台36、上澄水貯槽31、酸液貯槽32又は水貯槽33の上方の位置に保持する。他方、伸長し又は下降したときには、粒子保持器34を、載置台36の上に載置し、又は上澄水貯槽31内の上澄水、酸液貯槽32内の酸液もしくは水貯槽33内のすすぎ水に浸漬するようになっている。ハンガー装置39の伸縮機構としては、例えばピストン・シリンダ機構を用いることができる。
上澄水貯槽31は、前後方向に長手となる略直方体の槽である。そして、上澄水貯槽31には、槽下部において前端側の側壁(周壁)に設けられた上澄水出口部42と槽上部において後端側の側壁に設けられた上澄水入口部43とを連通させる管路44と、管路44に介設されたポンプ45とが付設されている。かくして、ポンプ45の運転時には、上澄水貯槽31内に、上澄水の激しい流れが生じ、上澄水貯槽31内の上澄水は激しい乱流状態(例えば、レイノルズ数が10000〜50000)となる。なお、上澄水は、全体としては後側から前側に流れる。
ここで、上澄水出口部42及び上澄水入口部43を配置する位置は、前記の位置に限定される訳ではなく、上澄水貯槽31内の上澄水を激しい乱流状態にすることができれば、どのような位置でもよい。なお、上澄水出口部42と上澄水入口部43の前後を逆にしてもよい。また、上澄水貯槽31は、前後方向に長手となる略直方体のものに限定される訳ではなく、粒子保持器34を適切に収容することができれば、どのような形状のものであってもよい。例えば、粒子保持器34が略円柱形の場合は、上澄水貯槽31を略円柱形に形成してもよい。
酸液貯槽32及び水貯槽33は、それぞれ、上澄水貯槽31とほぼ同様の形状の槽である。そして、酸液貯槽32には、上澄水貯槽31の場合とほぼ同様の仕様で、酸液出口部46と酸液入口部47と管路48とポンプ49とが付設され、水貯槽33には、上澄水貯槽31の場合とほぼ同様の仕様で、水出口部50と水入口部51と管路52とポンプ53とが付設されている。
以下、洗浄水再生部5の運転手順を説明する。なお、この運転手順は、単なる例示であって、本発明を限定するものではないことはもちろんである。上澄水を回分操作(バッチプロセス)で洗浄水として再生するときは、固相吸着材粒子を収容している粒子保持器34を、実質的に空の上澄水貯槽31内に配置した状態で、処理水槽25内の上澄水を上澄水貯槽31に導入し、粒子保持器34(固相吸着材粒子)を上澄水中に浸漬する。そして、ポンプ45を運転し、上澄水貯槽31内に、全体としては後側から前側に向かう上澄水の激しい流れを生じさせる。その結果、上澄水は、粒子保持器34内の多数の固相吸着材粒子間の間隙を高速で流れる。なお、上澄水を上澄水貯槽31に導入した後に、搬送装置35により、粒子保持器34を上澄水貯槽31内に搬送して上澄水に浸漬してもよい。
これにより、有害金属等ないしはこれらのイオンを捕捉しているキレート剤を含む上澄水(洗浄水)が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材(固相吸着材粒子)と接触させられる。その結果、キレート剤に捕捉されている有害金属等ないしはこれらのイオンがキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着ないしは抽出される。これにより、上澄水(洗浄水)から有害金属等が除去・回収される一方、キレート剤は再び有害金属等を捕捉することができる状態となり、上澄水が洗浄水として再生される。ここで、ポンプ45によって、上澄水貯槽31内の上澄水の乱流度(レイノルズ数)が高められるので、固相吸着材によるキレート剤からの有害金属等の除去が促進される。
そして、土壌に含まれる有害金属等の種類及び用いるキレート剤の種類に応じて予め設定された上澄水の滞留時間が経過したときには、洗浄水還流機構6(図2参照)により、上澄水貯槽31内の再生された上澄水ないしは洗浄水が、混合装置12、トロンメル14及びサンドスクリーン17に供給される。なお、上澄水貯槽31内における上澄水の滞留時間は、有害金属等の種類、キレート剤の種類等によって変わるが、おおむね5〜30分の範囲に設定される。回分操作の場合は、上澄水ないしは洗浄水は、上澄水貯槽31に対して間欠的に給排される。
ここで、固相吸着材の有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達していなければ、粒子保持器34を上澄水貯槽31内に残留させた状態で、再び処理水槽25内の上澄水を実質的に空の上澄水貯槽31に導入し、粒子保持器34(固相吸着材粒子)を上澄水中に浸漬し、洗浄水ないしはキレート剤の再生を繰り返す。他方、固相吸着材の有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達していれば、搬送装置35により、固相吸着材粒子を収容している粒子保持器34を、上澄水貯槽31から除去し、酸液貯槽32内に搬送する。なお、固相吸着材の有害金属吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したか否かは、上澄水貯槽31から排出された洗浄水中の有害金属等の含有量を検出することにより判定することができる。
上澄水を連続操作(連続プロセス)で洗浄水として再生するときは、上澄水貯槽31内に上澄水をほぼ満たした状態で、固相吸着材粒子を収容している粒子保持器34を上澄水貯槽31内に配置した上で、処理水槽25内の上澄水を所定(一定)の流量で上澄水貯槽31の後端部に連続的に導入する一方、これと同一の流量で処理水槽25内の上澄水を、上澄水貯槽31の前端部から連続的に排出して混合装置12、トロンメル14及びサンドスクリーン17に供給する。なお、上澄水貯槽31内における上澄水の平均滞留時間は、有害金属等の種類、キレート剤の種類等によって変わるが、おおむね5〜30分の範囲に設定される。
そして、固相吸着材粒子における固相吸着材の有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、上澄水貯槽31への上澄水の導入を停止するとともに洗浄水の混合装置12、トロンメル14及びサンドスクリーン17への供給を停止する一方、搬送装置35により、固相吸着材粒子を収容している粒子保持器34を、上澄水貯槽31から除去して酸液貯槽32内に搬送する。
固相吸着材粒子を酸液で再生するときは、酸液貯槽32内に酸液をほぼ満たした状態で、搬送装置35により、粒子保持器34を酸液貯槽32内に搬送して酸液中に浸漬する。なお、酸液貯槽32内における固相吸着材粒子の再生操作は回分操作(バッチプロセス)である。そして、ポンプ49を運転し、酸液貯槽32内に、全体としては後側から前側に向かう酸液の激しい流れが生じさせる。その結果、酸液は、粒子保持器34内の多数の固相吸着材粒子間の間隙を高速で流れる。
そして、固相吸着材粒子が吸着している有害金属等の種類及び酸液の種類に応じて予め設定された粒子保持器34(固相吸着材粒子)の滞留時間が経過したときには、搬送装置35により、固相吸着材粒子を収容している粒子保持器34を、酸液貯槽32内から除去して水貯槽33内に搬送する。なお、酸液貯槽32内における粒子保持器34(固相吸着材粒子)の滞留時間は、有害金属等の種類、酸液の種類等によって変わるが、おおむね5〜20分の範囲に設定される。なお、酸液は、その有害金属等の濃度が設定値を超えたときには交換される。かくして、酸液貯槽32内では、固相吸着材粒子が酸液と接触させられ、固相吸着材に捕捉されている有害金属等ないしはこれらのイオンが酸液中に離脱させられる。これにより、固相吸着材から有害金属等が除去され、固相吸着材ないしは固相吸着材粒子が再生される。
固相吸着材粒子に付着している酸液をすすぎ水で洗浄して除去するときは、水貯槽33内にすすぎ水をほぼ満たした状態で、搬送装置35により、粒子保持器34を水貯槽33内に搬送してすすぎ水中に浸漬する。なお、水貯槽33内における固相吸着材粒子の洗浄操作は回分操作(バッチプロセス)である。そして、ポンプ53を運転し、水貯槽33内に、全体としては後側から前側に向かうすすぎ水の流れを生じさせる。その結果、すすぎ水は、粒子保持器34内の多数の固相吸着材粒子間の間隙を流れる。
そして、予め設定された粒子保持器34(固相吸着材粒子)の滞留時間が経過したときには、固相吸着材ないしは固相吸着材粒子の再生が完了し、搬送装置35により、固相吸着材粒子を収容している粒子保持器34を、水貯槽33内から除去して、載置台36上、又は上澄水貯槽31内に搬送する。固相吸着材粒子に付着している酸液は、すすぎ水による洗浄で比較的容易に除去することができるので、水貯槽33内における粒子保持器34(固相吸着材粒子)の滞留時間は、5〜10分程度でよい。なお、すすぎ水は、その酸濃度が設定値を超えたときには交換される。
本発明に係る汚染土壌浄化装置Sないしは洗浄水再生部5によれば、破砕部1(混合装置2、ミルブレーカ3)から排出された土壌が、分級部2(トロンメル14、サイクロン15、サンドスクリーン17)においてキレート剤を含む洗浄水によって洗浄されるので、土壌に含まれる粗骨材(石及び/又は礫)、砂、細粒土等に付着している有害金属等が除去される。このため、分級部2で分離・回収された粗骨材又は砂、あるいは濾過部4(フィルタプレス24)から排出される濾過ケークに含まれる細粒土は、有害金属等をほとんど含まない。したがって、粗骨材又は砂は土木・建築材料として使用することができ、また濾過ケークは、例えば改良土として使用することができる。よって、有害金属等で汚染された土壌から、有害金属等をほとんど含まず再使用することができる粗骨材、砂(洗い砂)及び/又は細粒土(改良土)を生成することができる。また、特定のキレート剤を用いることにより、有害金属等以外の特定の汚染物質、例えば、ホウ素、フッ素なども除去することが可能である。
また、キレート剤を含む洗浄水は循環して使用され、循環の途中でキレート剤に捕捉されている有害金属等が固相吸着材により除去され、また適宜に固相吸着材に吸着されている有害金属等が酸液により除去される。このため、キレート剤又は固相吸着材をほとんど補充することなく、有害金属等で汚染された大量の土壌を連続的に浄化して、清浄な骨材ないしは粗骨材、洗い砂、改良土等を生成することができる。
よって、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sないしは洗浄水再生部5によれば、特許文献4に記載された発明に係る有害金属汚染物の浄化方法を利用して、大量の有害金属汚染土壌、さらには有害金属等以外の所定の汚染物質をも含む有害金属汚染土壌を事業として現実に浄化することが可能となる。