以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を具体的に説明する。
まず、図1を参照しつつ、本発明に係る汚染土壌浄化装置の全体構成を説明する。図1に示すように、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sにおいては、有害金属等(有害金属及び/又はその化合物)で汚染され、場合によってはその他の汚染物質(例えば、フッ素、ホウ素、シアン等の第二種特定有害物質)で汚染された地盤の掘削等により採取された土壌(汚染土壌)が、投入ホッパ1に受け入れられる。そして、投入ホッパ1内の土壌はまず混合装置2に投入され、混合装置2内で循環水ないしは処理水と混合される。ここで、土壌は、細粒土(粒径が0.075mm以下のシルト又は粘土)を含むとともに、種々の粒径の土石ないしは土砂、例えば石(粒径が75mm以上)、礫(粒径が2ないし75mm)及び/又は砂(粒径が0.075ないし2mm)等を含むものである。
そして、投入ホッパ1内の土壌は有害金属等で汚染され、場合によってはさらにその他の汚染物質で汚染されている。ここで、有害金属等としては、例えばクロム、鉛、カドミウム、セレン、水銀、金属砒素及びこれらの化合物などが挙げられる。その他の汚染物質としては、例えば、フッ素又はその化合物、ホウ素又はその化合物、シアン化合物等の第二種特定有害物質などが挙げられる。
混合装置2で生成された土壌と循環水の混合物(以下「土壌・水混合物」という。)はミルブレーカ3に移送される。ミルブレーカ3としては、例えばロッドミルを用いることができる。ロッドミルは、詳しくは図示していないが、ドラムの中に複数のロッド(例えば、10本の75mmφ×2mのスチールロッド)が配置された破砕装置であり、ドラムの回転によってロッドが互いに平行に転動して線接触し、その衝撃力、剪断力、摩擦力等により比較的粒径の大きい石、礫、砂等を破砕するとともに、これらに付着し又は含まれている有害金属等あるいはその他の汚染物質を剥離して水中に離脱させる。
水中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質の一部ないしは大部分は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に付着する(環境省、水・大気環境局、土壌環境課「汚染土壌処理業の許可審査等に関する技術的留意事項」第21頁、平成25年8月発行、参照)。すなわち、土壌中の有害金属等あるいはその他の汚染物質の大部分は、細粒土の表面に集約される。なお、ロッドミルのほかにボールミルも用いることができる。
ミルブレーカ3から排出された土壌・水混合物はトロンメル4に導入される。トロンメル4は、詳しくは図示していないが、水を貯留することができる受槽と、水平面に対して傾斜して配置された略円筒形のドラムスクリーンとを有する篩分装置であって、ドラムスクリーンは、モータによりその中心軸(円筒の中心軸)まわりに回転することができるようになっている。また、ドラムスクリーン内に、水をスプレー状で噴射することができるようになっている。
トロンメル4の回転しているドラムスクリーンの内部を土壌・水混合物が流れる際に、ドラムスクリーンの網目より細かい土壌粒子は、循環水とともにドラムスクリーンの網目を通り抜け、ドラムスクリーン外に出て受槽内に入る。他方、ドラムスクリーンの網目より粗い土壌粒子は、ドラムスクリーンの網目を通り抜けることができないので、ドラムスクリーンの下側の開口端を経由して、ドラムスクリーン外に排出される。トロンメル4内では、土壌・水混合物中の土壌粒子同士が互いに擦れ合うので、土壌粒子の表面に残留・付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質が剥離され、水中に離脱させられる。このように水中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質の一部ないしは大部分は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に付着する。
この実施形態では、ドラムスクリーンの網目の分級径(目開き)は、粒径が2mm未満の土壌粒子がドラムスクリーンの網目を通り抜けるように設定されている。したがって、このトロンメル4では、粒径が2mm以上の土壌粒子(主として礫)が土壌・水混合物から分離される。前記のとおり、比較的粒径が大きい土壌粒子に付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質が水中に剥離されるので、粒径が2mm以上の土壌粒子は、ほとんど汚染物質を含まない。このため、トロンメル4で分離された粒径が2mm以上の土壌粒子は、例えばコンクリート用の骨材ないしは粗骨材として用いることができ、あるいは販売することができる。
また、このような粒径が2mm以上の骨材ないしは粗骨材を、例えば篩分装置を用いて分級し、粒径が異なる複数種の骨材ないしは粗骨材を生産してもよい。例えば、粒径が5mm未満の比較的細かい骨材と、粒径が5mm以上の比較的粗い粗骨材に分級してもよい。なお、トロンメル4のドラムスクリーンの網目の寸法(目開き)は前記のものに限定されるわけではなく、得ようとする比較的粒径が大きい土壌粒子の粒径に応じて、任意に設定することができるのはもちろんである。
トロンメル4の受槽内に収容された粒径が2mm未満の土壌粒子と循環水とを含む土壌・水混合物はサイクロン5に導入される。サイクロン5は、詳しくは図示していないが、下方に向かって狭まる略円錐状のシリンダ内に土壌・水混合物をポンプで圧送して旋回流を生じさせ、これによって生じる遠心力を利用して、土壌・水混合物を、比較的粒径が小さい(例えば0.075mm未満)細粒土と水の混合物と、比較的粒径が大きい(例えば0.075mm以上)土壌粒子とに分離する。そして、細粒土と水の混合物(以下「細粒土含有水」という。)はサイクロン5の上端部から排出され、比較的粒径が大きい土壌粒子はサイクロン5の下端部から排出される。ここで、細粒土含有水はシールタンク6(中間貯槽)に一時的に貯留される。細粒土含有水に含まれる細粒土は、例えばその粒径が0.075mm未満のシルト又は粘土である。
他方、サイクロン5の下端部から排出された比較的粒径が大きい土壌粒子は分級機7に導入される。なお、この比較的粒径が大きい土壌粒子は、例えばその粒径が0.075〜2mmの砂であり、ある程度の水を含んでいる。この実施形態では、分級機7としてサンドスクリーンを用いている。分級機7(サンドスクリーン)は、所定の圧力及び水量で循環水を流動させて、比較的粒径が大きい土壌粒子すなわち砂にすすぎ洗浄処理を施すとともに、残留している浮遊物ないしは異物を捕集する。分級機7で捕集された浮遊物ないしは異物は、可燃物であれば燃料として再利用される(サーマルリサイクル)。また、すすぎ洗浄処理が施された比較的粒径が大きい土壌粒子すなわち洗い砂は、汚染物質をほとんど含んでいないので、再生砂として使用され、あるいは販売される。分級機7(サンドスクリーン)から排出された洗浄水は、フィードタンク8(中間貯槽)に一時的に貯留される。
シールタンク6に一時的に貯留された細粒土含有水はpH調整槽9に導入される。また、フィードタンク8に一時的に貯留された洗浄水もpH調整槽9に導入され、細粒土含有水に加えられる。そして、pH調整槽9では、細粒土含有水(加えられた洗浄水を含む)のpHが、pH調整剤、例えば酸性液(例えば、硫酸、塩酸等)及びアルカリ性液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)を用いて、ほぼ中性又は所定のpH(例えば、pH7〜8)となるように調整される。なお、図示していないが、pH調整槽9では、細粒土含有水のpHは、pHメータ等を備えたpH自動制御装置により自動的に調整される。
pH調整槽9でpHが調整された細粒土含有水は原水槽10に一時的に貯留される。原水槽10では、細粒土含有水にポリ塩化アルミニウム液(PAC)と、高分子凝集剤と、pH調整剤(酸性液又はアルカリ性液)とが添加される。これにより、原水槽10内に非水溶性の金属水酸化物と細粒土とが混在する多数のフロックが生成される。その際、循環水中の有害金属等あるいはその他の汚染物質がフロックに吸着され又はフロックに付着する。その結果、循環水はほとんど有害金属等あるいはその他の汚染物質を含まなくなる。なお、ポリ塩化アルミニウム液及び高分子凝集剤を、原水槽10ではなく、pH調整槽9で細粒土含有水に添加してもよい。また、pH調整槽9と原水槽10の間に、細粒土含有水にポリ塩化アルミニウム液と高分子凝集剤とpH調整剤とを添加する反応槽を設けてもよい。
原水槽10内の細粒土含有水は、浮遊物回収装置11により浮遊物が除去された後、シックナ12に導入される。シックナ12は、詳しくは図示していないが、細粒土含有水がほぼ静止している状態で非水溶性のフロックないしは細粒土を重力により沈降させ、下部に位置するスラッジ層(例えば、固形分の比率が5〜10%)と、上部に位置しほとんどフロックないしは細粒土を含まない上澄水(循環水)とを形成する。なお、上澄水の表面に浮遊している浮上油は、少量の上澄水をシックナ12の上部から溢流させることにより除去される。
シックナ12内の上澄水は、処理水槽13に導入されて貯留される。ここで、処理水槽13が満杯になったときには予備水槽14が使用される。処理水層13ないしは予備水槽14に貯留されている処理水は、活性炭吸着塔15でさらに浄化された後、循環水として混合装置2、トロンメル4及び分級機7(サンドスクリーン)に供給される。なお、処理水槽13に貯留されている処理水ないしは循環水が、蒸発等により減少したときには、適宜に処理水槽13に水道水が補給される。
他方、シックナ12の下部に堆積しているスラッジは、中間タンク16に移送され、一時的に貯留される。そして、中間タンク16内のスラッジは、適宜に又は連続的に、フィルタプレス17に移送される。フィルタプレス17は、詳しくは図示していないが、バッチ式又は半連続式の加圧式濾過器であって、中間タンク16から受け入れたスラッジを加圧濾過し、濾過ケークと濾液とを生成する。フィルタプレス17の濾過圧力は、例えば濾過ケークの含水率が30〜40%となるように好ましく設定される。ここで、フィルタプレス17の濾液はシックナ12に戻される。なお、フィルタプレス以外の濾過器、例えば真空濾過器(オリバー式濾過器)等を用いてもよい。フィルタプレス17から排出された濾過ケークは、キレート剤洗浄装置18に移送され、濾過ケークに含まれる有害金属等(場合によっては、その他の特定の汚染物質も)、すなわち主として濾過ケーク中の細粒土に付着している有害金属等が除去される。
以下、図2を参照しつつ、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sのキレート剤洗浄装置18の概括的な構成及び機能を説明する。図2に示すように、キレート剤洗浄装置18においては、まず混合分散装置19に、フィルタプレス17から排出された濾過ケークと、洗浄液貯槽24内のキレート剤を含む洗浄液とが供給される。前記のとおり、濾過ケークの固体成分である細粒土の表面には、元の汚染土壌に含まれていた有害金属等あるいはその他の汚染物質が集約されて付着している。そして、混合分散装置19は、濾過ケークと洗浄液とを混合し、洗浄液中に細粒土ないしは細粒土の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒土スラリーを生成する。
混合分散装置19により生成された細粒土スラリーは細粒土洗浄装置20に移送される。細粒土洗浄装置20は、細粒土スラリーを、攪拌しつつ予め設定された滞留時間(例えば、0.5〜2時間)を確保できるようにプラグフローで流すことにより、細粒土に付着している有害金属等(場合によっては、その他の特定の汚染物質も)を細粒土から離脱させて洗浄液中のキレート剤に捕捉させる。これにより、細粒土スラリー中の細粒土の表面に付着している有害金属等はほとんど除去される。本明細書において、「プラグフロー」は、例えば川の水の流れのように、流体が細長い(部分的に湾曲又は屈曲している場合を含む)流路を全体的には上流側から下流側に向かって一方的に流れる流動状態を意味するものとする。なお、このようなプラグフローにおいて、局所的には、細粒土スラリーの攪拌等により、流れ方向に沿って細粒土スラリーが前後に乱れて移動する流れ、及び流れ方向と垂直な方向の乱れた流れが生じるのはもちろんである。
ここで、洗浄液に用いられるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、あるいは生分解性を有するHIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などが挙げられる。これらのキレート剤は、いずれも細粒土スラリーないしは細粒土に含まれている有害金属等を有効に捕捉する(キレートする)ことができものである。なお、細粒土に含まれる有害金属等の種類に応じて、その処理に適したキレート剤が選択され、又は複数種のキレート剤が用いられる。
細粒土洗浄装置20から排出された細粒土スラリーは濾過装置21に移送される。濾過装置21は、細粒土スラリーを濾過し、含水率が30〜40パーセントのケークと濾液とを生成する。なお、このような濾過装置21としては、フィルタプレスや真空濾過機などを用いることができる。濾過装置21から排出されたケークは、有害金属等あるいはその他の汚染物質をほとんど含まないので、必要に応じて乾燥処理を施し、改良土として使用し、又は販売することができる。
濾過装置21から排出された濾液は洗浄液再生装置22に導入される。洗浄液再生装置22は、キレート剤よりも錯生成力が高く濾過装置21から排出された濾液と接触したときに該濾液中の有害金属等を吸着する固相吸着材を含む固相吸着材粒子と、濾過装置21から排出された濾液とを混合して攪拌し、濾液中のキレート剤から有害金属等を除去して該濾液を洗浄液として再生する装置である。
洗浄液再生装置22では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含む洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材を含む固相吸着材粒子と接触させられる。固相吸着材は、担体に環状分子を担持させ、環状分子にキレート配位子を修飾した配位結合及び水素結合による多点相互作用を有するとともに有害金属等のイオンを選択的に取り込むものである。これにより、キレート剤に捕捉されている有害金属等はキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着又は抽出される。これにより、洗浄液(キレート剤)から有害金属等が除去・回収される一方、洗浄液(キレート剤)は再び有害金属等を捕捉することができる状態となり、再生される。
洗浄液再生装置22内の固相吸着材粒子と洗浄液の混合物は、洗浄液分離スクリーン23に導入される。洗浄液分離スクリーン23は、固相吸着材粒子と洗浄液の混合物から、洗浄液を分離ないしは除去する。洗浄液分離スクリーン23により分離された洗浄液は、洗浄液貯槽24に一時的に貯留された後、洗浄液還流機構(後記のポンプ34、管路35等)により、混合分散装置19に還流させられる。つまり、キレート剤を含有する洗浄液は、細粒土の浄化とキレート剤の再生とを繰り返しつつ、キレート剤洗浄装置18内を循環する。このようにキレート剤を再生しつつ循環使用するので、基本的にはキレート剤を供給する必要はなく、少量の目減り分を適宜に補充するだけでよい。
他方、洗浄液分離スクリーン23により洗浄液が分離ないしは除去された固相吸着材粒子は、固相吸着材粒子返送機構(後記の第1〜第4バケットコンベア70、72、80、87、第1〜第4ベルトコンベア71、73、81、88等)により洗浄液再生装置22に返送され、繰り返し使用される。キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材は、例えばゲル等の固体状のものであり、一般に、金属を捕捉しているキレート剤を含む水溶液と接触したときに、キレート剤と配位結合している金属イオンをキレート剤から離脱させて該固相吸着材に移動させることができる程度の共有結合以外の強い結合力を有しているものである。このような固相吸着材は、例えばキレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いる場合、濃度が10mM/lであるEDTA水溶液から、ほぼ100%の金属イオンを回収することができる強い結合力を有するものである。
このような固相吸着材としては、例えばシリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものなどが挙げられる。このような固相吸着材を用いる場合、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合などの複数の様々な結合や相互作用が生じて多点相互作用が生じ、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むことができる。
このような洗浄液の再生に伴って、繰り返し使用される固相吸着材における有害金属等の吸着量は経時的に増加してゆくが、固相吸着材の吸着量には上限がある。このため、固相吸着材における有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、固相吸着材は、固相吸着材再生機構によって再生される。この固相吸着材再生機構は、酸液洗浄装置25、酸液分離スクリーン26、酸液貯槽27、水洗装置28、水分離スクリーン29、洗浄水貯槽30及びこれらの付属設備を有している。
固相吸着材を再生する際には、まず洗浄液分離スクリーン23から排出された固相吸着材粒子が酸液貯槽27から供給される酸液とともに酸液洗浄装置25に導入され、攪拌・混合される。これにより、固相吸着材に吸着された有害金属等が酸液により除去され、該固相吸着材が再生される。すなわち、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等を吸着することが可能な状態となる。酸液洗浄装置25内の固相吸着材粒子と酸液の混合物は酸液分離スクリーン26に導入される。酸液分離スクリーン26は、固相吸着材粒子と酸液の混合物から酸液を分離ないしは除去する。酸液分離スクリーン26から排出された酸液は酸液貯槽27に戻され、繰り返し使用される。
他方、酸液分離スクリーン26から排出された固相吸着材粒子は、洗浄水貯槽30から供給される洗浄水とともに水洗装置28に導入され攪拌・混合される。これにより、固相吸着材粒子に付着している酸液が除去され、固相吸着材の再生は完了する。固相吸着材粒子と洗浄水の混合物は、水分離スクリーン29に導入される。水分離スクリーン29は、固相吸着材粒子と洗浄水の混合物から洗浄水を分離ないしは除去する。水分離スクリーン29から排出された洗浄水は洗浄水貯槽30に戻され、繰り返し使用される。他方、水分離スクリーン29から排出された固相吸着材粒子は、固相吸着材粒子返送機構により洗浄液再生装置22に返送され、繰り返し使用される。
以下、キレート剤洗浄装置18の具体的な構成及び機能を説明する。
まず、図3を参照しつつ、キレート剤洗浄装置18の構成要素である混合分散装置19の具体的な構成及び機能を説明する。図3に示すように、混合分散装置19は、フィルタプレス17から排出された濾過ケークを解砕する解砕機31と、解砕機31によって解砕された濾過ケークの小片と洗浄液とを予混合する予混合槽32と、予混合槽32によって生成された混合物を攪拌して細粒土ないしは細粒土の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)を洗浄液中に分散ないしは懸濁させるラインミキサ33とを有している。
そして、混合分散装置19においては、フィルタプレス17から排出された濾過ケークが解砕機31に供給され、濾過ケークは高速回転するブレード31aによって、例えば粒径が数mm(例えば、1〜5mm)の多数の濾過ケーク細片に解砕される。他方、解砕機31へは、洗浄液貯槽24内の洗浄液が、ポンプ34により管路35を介して供給される。詳しくは図示していないが、洗浄液は、ブレード31aにより解砕された直後の多数の濾過ケーク細片に対して噴射ないしは供給され、濾過ケーク細片同士が互いに付着し合うのを防止する。なお、このように濾過ケークを解砕する解砕機31としては、例えば大平洋機工株式会社に係る「脱水ケーキ解砕機」あるいは株式会社氣工社に係る「脱水ケーキリサイクル装置」などを用いることができるが、このような市販の解砕機を用いる場合は、解砕された直後の多数の濾過ケーク細片に対して洗浄液を噴射ないしは供給する機構を付設する必要がある。
解砕機31内の洗浄液及び濾過ケーク細片は予備混合槽32に移送される。予混合槽32内の洗浄液と濾過ケーク細片とは、モータによって回転駆動される攪拌機36によって攪拌され予混合される。そして、予混合槽32内の洗浄液と濾過ケーク細片の混合物は、ポンプ37により管路38を介してラインミキサ33に移送される。ラインミキサ33は、横置き型の略円筒形の攪拌室内に、モータによって非常に高速で回転駆動されるブレードが配置された流通式混合器であり、洗浄液と濾過ケーク細片とを非常に激しく攪拌し、洗浄液中に細粒土又は細粒土の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒土スラリーを生成する。この細粒土スラリーは細粒土洗浄装置20に移送される。このようなラインミキサ33としては、例えば、佐竹化学機械工業株式会社に係る「サタケマルチラインミキサー」などを用いることができる。
以下、図4(a)〜(d)を参照しつつ細粒土洗浄装置20の具体的な構成及び機能を説明する。図4(a)〜(c)に示すように、細粒土洗浄装置20は、4つの平板状の仕切り壁41〜44で仕切ることにより形成された互いに平行に伸びる5つの細長い直方体状ないしは角柱状の水路45〜49を備えた貯槽40を有している。ここで、貯槽40は、例えば地上に設置した鉄製の直方体状の角型タンクであってもよく、またコンクリート製の直方体状のピットであってもよい。また、仕切り壁41〜44は、例えば複数の鉄板又はプラスチック板を水路の伸びる方向に連結することにより形成したものであってもよい。
これらの水路45〜49において隣り合う2つの水路は水路長手方向(図4(a)、(b)における位置関係では左右方向)の一端の連通部(図4(a)中に4つの曲線状の矢印で示された部位)で互いに連通している。すなわち、これらの連通部には仕切り壁41〜44が存在せず、隣り合う水路同士が連通している。かくして、5つの水路45〜49は各連通部で180°折り返す九十九折り状の流通経路を形成している。なお、仕切り壁41〜44及び水路45〜49の数は前記のものに限定されるわけではなく、予め設定される水路内の細粒土スラリーの流速及び滞留時間に応じて任意に設定することができるのはもちろんである。
各水路45〜49の底部には、それぞれ、細粒土スラリー中に空気を放出して該細粒土スラリーを攪拌する空気放出管51〜55が配設されている。各空気放出管51〜55は水路長手方向に伸び、周壁の底部(下側)において水路長手方向に並ぶ複数の空気放出孔が形成された多孔管であり、その中空部は、詳しくは図示していないが、圧縮空気を供給するコンプレッサないしは送風機に接続されている。空気放出管51〜55に加圧された空気が供給されたときには、この空気が空気放出孔から気泡となって細粒土スラリー中に放出されて浮上し、この気泡によって細粒土スラリーが攪拌される。なお、空気放出孔を空気放出管51〜55の周壁の底部(下側)に設けるのは、空気放出管51〜55内に細粒土が堆積するのを防止するためである。
図4(d)は、細粒土スラリーの流れ方向(図4(a)中に曲線状の矢印及び直線状の矢印で示す方向)にみて最も上流側の水路45の断面を示している。図4(d)から明らかなとおり、空気放出管51は、水路45の一方の側面の近傍において水路底部近傍に配置されている。このため、空気放出管51から放出された気泡はこの側面の近傍で上昇する。その結果、水路45内には、水路長手方向と垂直な平面内において矢印Pで示す方向に流れる循環流が形成され、細粒土スラリーが有効に攪拌される。
貯槽40及び各水路45〜49の形状、寸法、容量等、並びに空気放出管51〜55への加圧空気の供給量等は、細粒土洗浄装置20において予め設定される細粒土スラリーの、含水率、流量、滞留時間、流速、流れの乱流度(例えば、レイノルズ数)等に対応して好ましく設定される。例えば、細粒土スラリーの含水率が90wt%であり、流量が140m3/時であり、滞留時間が120分であり、流速が50m/時である場合は、図4に示すような5水路型の貯槽40は、有効容量を280m3とし、長さを20mとし、幅を10mとし、有効深さを1.4mとすることになる。なお、流速をこれより大きくする必要がある場合は、貯槽40の形状を変えることなく、必要な流速に応じて仕切り壁の数、ひいては水路の数を増やせばよい(個々の水路を狭くする。)。
以下、図5を参照しつつ洗浄液再生装置22、洗浄液還流機構、固相吸着材再生機構、固相吸着材粒子返送機構及びこれらに関連する設備の具体的な構成及び機能を説明する。まず、洗浄液再生装置22及び洗浄液還流機構並びにこれらに関連する設備の構成及び機能を説明する。図5に示すように、洗浄液再生装置22は、上下方向に長手となる細長い略円筒状の本体部61と、本体部61内に配置されモータによって回転駆動される攪拌機62と、本体部61の内周面に取り付けられた円環状の複数の邪魔板63とを有している。攪拌機62は、上下方向に伸びる回転軸に取り付けられた複数の撹拌翼ないしはブレードを有している。
ここで、撹拌翼と邪魔板63は、上下方向に交互に並ぶように配設されている。本体部61の寸法(例えば、直径、長さ等)は、該本体部61内を流れる洗浄液及び固相吸着材粒子が、予め設定された滞留時間(例えば、0.1〜0.5時間)を確保することができるように好ましく設定される。また、攪拌機62の撹拌翼の数、形状、回転速度等は、本体部61内において、固相吸着材粒子が洗浄液中にほぼ均一に分散されるような乱流度(レイノルズ数)が達成されるように好ましく設定される。
そして、本体部61の上端開口部には、濾過装置21から排出された濾液ないしは洗浄液が、中間貯槽64に一時的に貯留された後、ポンプ65により管路66を介して供給される。さらに、本体部61の上端開口部には、固相吸着材粒子貯槽67に貯留された固相吸着材粒子が、粒子フィーダー68により供給される。本体部61の上端開口部に供給された洗浄液と固相吸着材粒子とは攪拌機62によって攪拌・混合され、固相吸着材粒子が洗浄液中にほぼ均一に分散されてなる混合物(以下「洗浄液・粒子混合物」という。)が生成され、この洗浄液・粒子混合物は攪拌機62の複数の撹拌翼によって攪拌されながら、全体的には本体部61内を下方に向かって流れる。
かくして、洗浄液再生装置22(本体部61)内では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含む洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材(固相吸着材粒子)と接触させられる。その結果、キレート剤に捕捉されている有害金属等がキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着ないしは抽出される。これにより、洗浄液から有害金属等が除去・回収される一方、キレート剤は再び有害金属等を捕捉することができる状態となり、洗浄液が再生される。ここで、複数の邪魔板63は、本体部61内における混合物の乱流度(レイノルズ数)を高め、これによって固相吸着材によるキレート剤からの有害金属等の除去が促進される。
このようにキレート剤が再生された後、洗浄液・粒子混合物は、本体部61内の下端開口部から、該洗浄液・粒子混合物を洗浄液と固相吸着材粒子に分離する洗浄液分離スクリーン23に導入される。洗浄液分離スクリーン23としては、例えば予め設定された目開き(口径)の金網ないしはメッシュが傾斜して配置された傾斜・水平型振動篩機、あるいは円型振動篩機等を用いることができる。ここで、洗浄液分離スクリーン23の金網ないしはメッシュの目開きは、固相吸着材粒子を通過させず、かつ洗浄液を円滑に通過させられるように好ましく設定される。
かくして、洗浄液分離スクリーン23の金網を通過した洗浄液は、洗浄液貯槽24に導入され、貯留される。洗浄液貯槽24に貯留された洗浄液は、ポンプ34によって、管路35を介して混合分散装置19に供給される。他方、洗浄液分離スクリーン23の金網を通過しない固相吸着材粒子は、洗浄液分離スクリーン23から排出された後、第1バケットコンベア70及び第1ベルトコンベア71により、固相吸着材粒子貯槽67に返送される。
以下、固相吸着材再生機構の具体的な構成及び機能を説明する。洗浄液分離スクリーン23から排出された固相吸着材粒子における固相吸着材の有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、該固相吸着材粒子は第2バケットコンベア72及び第2ベルトコンベア73により、酸液洗浄装置25に移送される。そして、酸液洗浄装置25には、酸液貯槽27に貯留された酸液が、ポンプ77により管路78を介して供給される。
酸液洗浄装置25は、上下方向に長手となる細長い略円筒状の本体部74と、本体部74内に配置されモータによって回転駆動される攪拌機75と、本体部74の内周面に取り付けられた円環状の複数の邪魔板76とを有している。攪拌機75は、上下方向に伸びる回転軸に取り付けられた複数の撹拌翼ないしはブレードを有している。ここで、撹拌翼と邪魔板76は、上下方向に交互に並ぶように配設されている。本体部74の寸法(例えば、直径、長さ等)は、該本体部74内を流れる酸液及び固相吸着材粒子が、予め設定された滞留時間(例えば、0.1〜0.3時間)を確保することができるように好ましく設定される。また、攪拌機75の撹拌翼の数、形状、回転速度等は、本体部74内において、固相吸着材粒子が酸液中にほぼ均一に分散されるような乱流度(レイノルズ数)が達成されるように好ましく設定される。
そして、酸液洗浄装置25の本体部74の上端開口部には、酸液と再生すべき固相吸着材粒子とが供給され、酸液と固相吸着材粒子とは攪拌機75によって攪拌・混合され、固相吸着材粒子が酸液中にほぼ均一に分散されてなる混合物(以下「酸液・粒子混合物」という。)が生成され、この酸液・粒子混合物は攪拌機75の複数の撹拌翼によって攪拌されながら本体部74内を下方に向かって流れる。
かくして、酸液洗浄装置25(本体部74)内では、固相吸着材粒子が酸液と接触させられ、固相吸着材に捕捉されている有害金属等が酸液中に離脱させられる。これにより、固相吸着材から有害金属等が除去され、固相吸着材ないしは固相吸着材粒子が再生される。固相吸着材の有害金属吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したか否かは、洗浄液分離スクリーン23から排出された洗浄液中の有害金属等の含有量を検出することにより判定することができる。なお、邪魔板76は、本体部74内における酸液・粒子混合物の乱流度(レイノルズ数)を高め、これによって固相吸着材からの有害金属等の除去が促進される。
このように固相吸着材が再生された後、酸液・粒子混合物は、本体部74の下端開口部から、該酸液・粒子混合物を酸液と固相吸着材粒子に分離する酸液分離スクリーン26に導入される。酸液分離スクリーン26としては、例えば予め設定された目開き(口径)の金網ないしはメッシュが傾斜して配置された傾斜・水平型振動篩機、あるいは円型振動篩機等を用いることができる。ここで、酸液分離スクリーン26の金網ないしはメッシュの目開きは、洗浄液分離スクリーン23と同様である。
かくして、酸液分離スクリーン26の金網を通過した酸液は、酸液貯槽27に導入され、貯留される。酸液貯槽27に貯留された酸液は、ポンプ77によって、管路78を介して酸液洗浄装置25に供給される。他方、酸液分離スクリーン26の金網を通過しない固相吸着材粒子は、酸液分離スクリーン26から排出された後、第3バケットコンベア80及び第3ベルトコンベア81により、水洗装置28に移送される。
水洗装置28は、略円筒状の本体部82と、本体部82内に配置されモータによって回転駆動される攪拌機83とを有している。攪拌機83は、上下方向に伸びる回転軸に取り付けられた1つ又は複数の撹拌翼ないしはブレードを有している。本体部82の上端開口部には、洗浄水と水洗すべき固相吸着材粒子とが供給され、洗浄水と固相吸着材粒子とは攪拌機83によって攪拌・混合され、固相吸着材粒子が洗浄水中にほぼ均一に分散されてなる混合物(以下「水・粒子混合物」という。)が生成される。かくして、水洗装置28(本体部82)内では、固相吸着材粒子が洗浄水と接触させられ、固相吸着材に付着している酸液が除去される。これにより、固相吸着材ないしは固相吸着材粒子の再生が完了する。
この後、水・粒子混合物は、本体部82の下端開口部から、該水・粒子混合物を洗浄水と固相吸着材粒子に分離する水分離スクリーン29に導入される。水分離スクリーン29としては、例えば予め設定された目開き(口径)の金網ないしはメッシュが傾斜して配置された傾斜・水平型振動篩機、あるいは円型振動篩機等を用いることができる。なお、水分離スクリーン29の金網ないしはメッシュの目開きは、洗浄液分離スクリーン23と同様である。
かくして、水分離スクリーン29の金網を通過した洗浄水は、洗浄水貯槽30に導入され、貯留される。洗浄水貯槽30に貯留された洗浄水は、ポンプ85によって、管路86を介して水洗装置28に供給される。他方、水分離スクリーン29の金網を通過しない固相吸着材粒子は、水分離スクリーン29から排出された後、第4バケットコンベア87及び第4ベルトコンベア88により、固相吸着材粒子貯槽67に返送される。
本発明に係るキレート剤洗浄装置18において、固相吸着材粒子を移送又は返送する手段は、バケットコンベアとベルトコンベアの組み合わせに限定されるわけではなく、粒状物を搬送することができる搬送装置であれば、どのようなものでもよい。なお、第1〜第4バケットコンベア70、72、80、87及び第1〜第4ベルトコンベア71、73、81、88は、固相吸着材粒子返送機構の一部をなす。
本発明に係る汚染土壌浄化装置Sないしは洗浄液再生装置22によれば、細粒土スラリー中の細粒土に付着している有害金属等、場合によってはその他の汚染物質が洗浄液に含まれるキレート剤により除去されるので、細粒土スラリーを濾過装置21で濾過することにより生成されるケークは、有害金属等をほとんど含まず、例えば改良土として利用することができる。一方、汚染土壌に付着している有害金属等は、汚染土壌を水洗浄する際に細粒土の表面に集約され、細粒土以外の土壌成分、例えば石、礫又は砂は有害金属等をほとんど含まない。したがって、有害金属等で汚染された汚染土壌から、有害金属等をほとんど含まず再使用することができる石もしくは礫(骨材、粗骨材)、砂及び/又は細粒土を生成することができる。
また、細粒土洗浄装置20で使用されるキレート剤を含む洗浄液は循環して使用されるが、循環の途中でキレート剤に捕捉されている有害金属等が固相吸着材により除去され、また適宜に固相吸着材に吸着されている有害金属等が酸液により除去される。このため、キレート剤をほとんど補充することなく、有害金属等で汚染された大量の土壌を連続的に浄化して、清浄な骨材ないしは粗骨材、砂、改良土等を生成することができる。
よって、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sないしは洗浄液再生装置22によれば、特許文献4に記載された発明に係る有害金属汚染物の浄化方法を利用して、大量の有害金属汚染土壌、さらには有害金属等以外の所定の汚染物質をも含む有害金属汚染土壌を事業として現実に浄化することが可能となる。