JP5731488B2 - 癌のマーカーとしてのセセルニン‐1 - Google Patents

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Description

本発明は、癌の診断を助ける方法に関する。本発明は、異なる癌型に対する万能マーカーとしてのセセルニン‐1タンパク質(=SCRN1)の使用を開示する。さらに、本発明は、特に、個体由来のサンプル中のSCRN1を測定することによる液体サンプルからの癌の診断方法に関する。SCRN1の計測は、例えば癌の早期発見または手術を受ける患者のサーベイランスに使用され得る。
検出と治療法の進歩にもかかわらず、癌は依然として公衆衛生の大きな課題である。癌細胞は、癌関連マーカータンパク質の産生を特徴とする。癌関連タンパク質は、癌細胞を保有している個体の組織内および体液中の両方に見られる。それらのレベルは、通常、発癌進行の初期ステージでは低く、そして疾患の進行の間、増加するが、ごく稀に疾患進行の途中でレベル低下を示すタンパク質が観察される。これらのタンパク質の高感度検出は、癌の診断のために、特に癌の初期ステージ診断において有利、且つ、有望なアプローチである。最も有病率の高い癌型は、乳癌(BC)、肺癌(LC)および結腸直腸癌(CRC)である。
固形腫瘍に対する最も重要な治療アプローチは、以下の:
a)腫瘍の外科切除、
b)化学療法、
c)放射線療法、
d)抗腫瘍抗体または抗血管形成性抗体のような生物製剤による処置、および
e)上記の方法の組合せ、
である。
腫瘍の外科切除は、初期ステージの固形腫瘍の一次治療として広く受け入れられている。しかしながら、ほとんどの癌は、症状が出た場合、すなわち患者が既に疾患進行のかなり後期ステージにある場合にのみ検出される。
癌のステージ分類は、程度、進行、および重症度の点での疾患の分類である。これは、予後および治療法の選択に関して一般化が行われ得るように、癌患者を分類する。
CRCの種々のステージがデュークスステージA〜Dによって分類されていた。今日、TNMシステムは、癌の解剖学的程度について最も広く使用される分類法である。これは、国際的に受け入れられた統一ステージ分類システムを表す。3つの基本変数:T(原発性腫瘍の程度)、N(限局的リンパ節の状態)およびM(遠位転移の存在または不存在)がある。TNM基準は、UICC(国際対癌連合)、Sobin, L.H., Wittekind, Ch (eds.), TNM Classification of Malignant Tumours, six edtion (2002)によって公表されている。TNM状態がいったん決定されると、患者は、IVが最も進行したステージとなるI〜IVのローマ数字で示されるステージに分類される。TNMステージ分類およびUICCステージは、Sobin and Wittekind (eds.)(前掲)から得られる以下の表中に示されているように互いに対応している。
Figure 0005731488
特に重要なことは、例えばCRCの癌の早期診断が非常に良好な予後につながることである。CRCにおいて、結腸直腸の悪性腫瘍は、良性腫瘍、すなわち腺腫から生じる。そのため、最良の予後は、腺腫ステージで診断される患者にある。ステージTis、N0、M0またはT1〜3;N0;M0ほどの早期で診断された患者は、適切に処理されると、遠隔転移が既に存在しているときに診断された患者でのわずか10%の5年生存率と比べて、診断後の90%を超える5年後の生存機会を有する。
X線または核共鳴画像化などの画像化法を含めた現在の検出方法は、理論上、一般的なスクリーニング手段としての使用に関して少なくとも部分的には適当であり得る。しかしながら、これらは、非常に費用がかかり、多数の被験体、特になにも腫瘍症状のない被験体のマススクリーニングにおける一般的で広範な使用のための健康管理システムとしては手頃な費用ではない。
よって、本発明の目的は、例えば癌を患っていると疑われる個体を同定するための、簡単でコスト効率の高い腫瘍診断の手順を提供することである。このために、体液、例えば血液、血清もしくは血漿で検出可能な一般的な腫瘍マーカー、またはそういったマーカーのパネルが望ましい。
多くの血清腫瘍マーカーが既に臨床使用にある。例えば、サイトケラチン19の可溶性の30kDa断片(CYFRA21‐1)、癌胎児性抗原(CEA)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、および扁平上皮癌抗原(SCC)が最も代表的なLCマーカーである。しかしながら、それらのいずれもがスクリーニング手段に必要な感度および特異度の基準を満たしていない(Thomas, L., Labor und Diagnose, TH Books Verlagsgesellschaft, Frankfurt/Main, Germany (2000))。
臨床有用性のあるものであるためには、単一マーカーとしての新規診断マーカーが、当該技術分野で公知の他のマーカーに匹敵するか、または優れているべきである。すなわち、それぞれ単独でまたは1もしくは複数の他のマーカーと組合せて使用される場合のいずれかで、新規マーカーが診断感度および/または特異度における進歩をもたらすべきである。試験の診断感度および/または特異度は、その受診者動作特性によって最も評価されるので、これを以下で詳細に記載する。
全血、血清または血漿は、臨床ルーチンで最も広く使用されるサンプルの供給源である。信頼性の高い癌検出を助けるか、または初期予後情報を提供する初期腫瘍マーカーの同定によって、この疾患の診断および管理を大きな助けとなる方法がもたらされる。そのため、癌、特にLCのインビトロ診断を改善するための緊急の臨床必要性が存在する。早期に診断される患者の生存機会が疾患の進行した段階で診断される患者と比べて非常に高いため、癌、例えばLCの早期診断を改善することが特に重要である。
肺癌における生化学マーカーの臨床有用性が最近概説された(Duffy, M.J., Critical Reviews in Clinical Laboratory Sciences 38 (2001) 225-262)。
CYFRA21‐1は、肺癌について現在公知の腫瘍マーカーのうちで最良のものであると現在のところみなされている。臓器特異的ではないが、これは主に肺組織で見られる。他の良性肺疾患に対して95%の特異度において、肺癌に対するCYFRA21‐1の感度は46〜61%であると記載されている。CYFRA21‐1の増大した血清レベルはさらに、顕著な良性肝臓疾患、腎臓機能不全および浸潤性膀胱癌とも関連している。CYFRA21‐1試験は、術後治療法サーベイランスに推奨されている。
CEAは、癌胎児抗原群に属し、通常、胚発生中に産生される。CEAは、臓器特異的ではなく、結腸直腸癌のモニタリングに主に使用される。悪性疾患の他にも、いくつかの良性疾患、例えば肝硬変、気管支炎、膵臓炎および自己免疫疾患などがCEA血清レベルの増大と関連している。良性肺疾患に対する95%の特異度において、肺癌の感度は29〜44%であると報告されている。CEAの好ましい使用は、肺癌の治療法サーベイランスである。
NSEは、SCLCの腫瘍マーカーである。一般的に、NSE血清レベルの増大は、神経外胚葉腫瘍および神経内分泌腫瘍に関連していることが分かっている。また、増大した血清レベルが、良性肺疾患および脳疾患、例えば髄膜炎または脳の他の炎症疾患および頭部への外傷性損傷を患っている患者で見られる。SCLCに関して95%の特異度である一方で、感度は60〜87%であると報告されているが、NSCLCのNSE試験の性能は不良である(7〜25%)。NSEは、SCLCの治療サーベイランスに推奨される。
糖脂質上のCA19‐9((糖鎖抗原19‐9)、シアリル化Lewis(a)抗原)は消化器癌の腫瘍マーカーがある。これは胎児の胃、腸および膵臓の上皮に生じる。低濃度はまた、肝臓、肺、および膵臓の成体組織でも見られる。腫瘍質量とCA19‐9アッセイ値の間には相関関係が全くないので、そのためCA19‐9の測定は膵臓癌の早期検出に使用できない。ムチンは肝臓を介してのみ排出されるので、軽度の胆汁うっ滞でさえ場合によっては明らかに上昇したCA19‐9血清レベルにつながる。このマーカーは、確定された膵臓癌を患っている患者の疾患状態のモニタリングにおける補助がとして主に使用される(感度70〜87%)。3〜7%の人が、Lewis a‐陰性/b‐陰性血液型構造を持っており、反応決定部位CA19‐9を有するムチンを発現することができない。このことは、前記知見を解釈するときに考慮されなければならない。
CA125は、上皮起源の非粘液性卵巣腫瘍の高い割合で見られ、そして血清中で検出され得る。卵巣癌は婦人科腫瘍のうちの約20%を占める。最も高いCA125値は卵巣癌に罹患している患者で起こるが、明らかに増大した値はさらに、子宮内膜、乳房、胃腸管の悪性腫瘍、および他の様々な悪性腫瘍で観察される。増大した値は、卵巣嚢腫、卵巣の化生、子宮内膜症、筋腫性子宮または子宮頚管炎などの様々な良性婦人科疾患において時々見られる。このマーカーのわずかな増大はさらに、早期妊娠や様々な良性疾患(例えば急性および慢性膵炎、良性の胃腸疾患、腎臓機能不全、自己免疫疾患および他の疾患)でも起こることがある。顕著に増大したレベルは、肝臓硬変症や肝炎などの良性肝臓疾患に見られた。極端な増大は、悪性および良性の疾患によるあらゆる種類の腹水でも起こり得る。CA125は比較的に非特異的なマーカーではあるが、今日、それが、漿液性卵巣癌を患っている患者の治療法と経過を観察するための最も重要な腫瘍マーカーである。69〜79%の感度が、82〜93%の特異度に対して報告されている。
PSA(「前立腺関連抗原」)は、血液試験に使用される一般的に試験される腫瘍マーカーである。PSAは高い組織特異度を有するようである;糖タンパク質は、正常な前立腺上皮および分泌物に見られるが、他の組織には見られない。PSAは、前立腺の癌の存在に関して感度が高い。その上昇はステージおよび腫瘍体積と相関する。それは再発や治療に対する反応を予測する。そして、この抗原は、手術前に非常に高い値を有する患者が再発する可能性が高いという点で予後的重要性がある。
NNMT(ニコチンアミドN‐メチルトランスフェラーゼ;Swiss‐PROT:P40261)は、29.6kDaの見かけ分子量および5.56の等電点を有する。NNMTは、ニコチンアミドおよび他のピリジンのN‐メチル化を触媒する。この活性は、多くの薬物および生体異物化合物の生体内変化に重要である。このタンパク質は、主に肝臓内で発現され、細胞質内に位置することが報告されている。NNMTは、ヒト肝臓由来のcDNAからクローン化され、29.6kDaの計算上の分子量を有する264個のアミノ酸のタンパク質をコードする792個のヌクレオチドのオープンリーティングフレームを含んでいる(Aksoy, S. et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 14835-14840)。ヒト癌における該酵素の潜在的役割については、文献ではほとんど知られていない。ある論文では、肝臓NNMTの酵素活性の増大が、マウスにおける癌悪液質のマーカーであると報告された(Okamura, A. et al., Jpn. J. Cancer Res. 89 (1998) 649-656)。最近の報告では、放射線感受性細胞株において放射線に応答したNNMT遺伝子の下方制御が示された(Kassem, H.S. et al., Int. J. Cancer 101 (2002) 454-460)。NMMTがCRCの評価に重要であろうことが最近わかった(WO 2004/057336)。
ProGRPは腫瘍マーカーであり、SCLCの検出やモニタリングに有用である。増大した血清レベルはさらに、特発性肺線維症またはサルコイドーシスなどの非悪性肺/胸膜疾患の患者でも見られる。SCLCの分野におけるproGRPの感度が(95%の特異度にて)47〜86%であると報告されるとはいえ、感度が10%未満であると報告されることから、NSCLCの分野におけるproGRP試験の性能は低い。
SCCは元々、子宮頚部の扁平上皮細胞CAで同定された。LCに関するSCCの感度は一般的に低い(18〜27%)。そのため、SCC試験はスクリーニングに好適ではないとされている。しかしながら、CYFRA21‐1のほうが一般により性能が高いとはいえ、扁平上皮細胞CAに対する高感度のため、SCCの好ましい使用は治療サーベイランスである。
p53(TP53、細胞腫瘍抗原p53、腫瘍サプレッサーp53またはリン酸化タンパク質p53)は、細胞増殖停止またはアポトーシスを誘導する転写因子である(Appella, E. et al., Pathol. Biol. 48 (2000) 227-245)である。p53は多くの腫瘍型で腫瘍抑制物質として働いているので、この遺伝子の不活性化突然変異がヒトの癌発生を促進する最も一般的な遺伝的事象である(Olivier, M. and Petitjean, A., Cancer Gene Ther. 16 (2009) 1-12;Petitjean, A. et al., Oncogene 26 (2007) 2157-2165において概説されている)。p53突然変異は、結腸直腸癌腫の40〜50%で観察されており、癌腫の攻撃性に関連する(Soussi, T.s Cancer Res. 60 (2000) 1777-1788)。p53遺伝子における突然変異は、タンパク質機能の障害につながるだけではなく、腫瘍関連抗原(TAA)の発現、自己免疫性応答の開始、および癌患者の血清中での特異的な抗p53自家抗体の産生にもつながる(hang, J.Y. et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 12 (2003) 136-143;Soussi, T., Cancer Res. 60 (2000) 1777-1788)。ヒト血清中の抗p53自家抗体の検出は癌の診断とマネジメントのための新たなツールである。癌型によって、血清中の抗p53自家抗体の頻度は、17.8%(CRC)〜16.1%(LC)および7.8%(乳癌)に及ぶ(Tan, E.M. and Zhang, J., Immunological Reviews 222 (2008) 328-340;Zhang, J.Y. et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 12 (2003) 136-143)。
セプラーゼ、別名線維芽細胞活性化タンパク質(=FAP)は、2つの同一の単量体セプラーゼユニットから成る、ゼラチナーゼおよびジペプチジルペプチダーゼ活性を有する170kDaの糖タンパク質として存在する(Pineiro-Sanchez, M.L. et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 7595-7601;Park, J.E. et al., J. Biol. Chem. 274 (1999) 36505-36512)。ヒト膜結合セプラーゼタンパク質の単量体は760個のアミノ酸を含んでなる。ヒト・セプラーゼは、繊維芽細胞の細胞質中にその最初の4つのN末端残基、続いて21残基の膜貫通ドメイン、次いで734残基の細胞外C末端触媒ドメインを持っていると予測される(Goldstein et al., Biochim Biophys Acta. 1361 (1997) 11-19;Scanlan, M.L et al., Proc Natl Acad Sci USA 91 (1994) 5657-5661)。ヒト・セプラーゼタンパク質のより短い形態は、可溶性セプラーゼまたは循環抗プラスミン開裂酵素(=APCE)として当業者に知られており(Lee, K.N. et al., Blood 103 (2004) 3783-3788;Lee, K.N. et al., Blood 107 (2006) 1397-1404)、Swissprotデータベース受入番号Q12884の第26〜760位アミノ酸を含んでなる。可溶性セプラーゼの二量体は、2つの同一の単量体可溶性セプラーゼタンパク質ユニットから成る160kDaの糖タンパク質である。Pineiro-Sanchezら(前掲)は、セプラーゼの発現増大がヒト黒色腫および癌腫細胞の浸潤性表現型と相関することを発見した。Henry, L.R. et al., Clin. Cancer Res. 13 (2007) 1736-1741では、高レベルの間質セプラーゼを生じるヒト結腸腫瘍患者には攻撃的な疾患進行および転移または再発の潜在的発生がある可能性がより高いことを説明している。
ヒト・ジペプチジルペプチダーゼIV(=DPPIV)、別名CD26は、110kDaの細胞表面分子である。ヒトDPPIVタンパク質のアミノ酸配列は766個のアミノ酸を含んでなる。ヒトDPPIVには、3番目のアミノ酸位置にプロリンまたはアラニンを持つペプチドからN末端ジペプチドを選択的に取り外す固有のジペプチジルペプチダーゼIV活性がある。ヒトDPPIVは、様々な細胞外分子と相互作用し、さらに細胞内情報伝達カスケードにも関与している。ヒトDPPIVの多機能活性は、タンパク質分解酵素、細胞表面受容体、共刺激相互作用タンパク質およびシグナル伝達メディエーターとしてのその役割に影響を及ぼす細胞型および細胞内または細胞外の状況に依存している。ヒトDPPIVは、短い細胞質ドメインである第1〜6位のアミノ酸、膜貫通領域である第7〜28位のアミノ酸、および固有のジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)活性を有する細胞外ドメインである第29〜766位のアミノ酸を持つ。ヒト可溶性ジペプチジルペプチダーゼIV(=可溶性DPPIV)は、Swissprotデータベース受入番号P27487の第29〜766位アミノ酸を含んでなる。可溶性DPPIVの二量体は、2つの同一の単量体可溶性DPPIVユニットから成る170kDaの糖タンパク質である。
可溶性DPPIV/セプラーゼ複合体(=DPPIV/セプラーゼ)とは、330kDaの分子量を持つ可溶性DPPIVホモ二量体(170kDa)と可溶性セプラーゼ・ホモ二量体(160kDa)により形成された可溶性複合体を指す。一定の条件下で、この複合体は660kDaの分子量を持つ二重複合体を形成することができる。
マーカーのプロファイリングに関して、および肺癌の診断の改善を目的として、CYFRA21‐1、NSEおよび一般的な炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)の血清レベルを組合せるファジー論理型分類アルゴリズムを使用する方法が公表された(Schneider, J., et al., Int. J. Clin. Oncol. 7 (2002) 145-151)。筆者らは、95%の特異性で92%の感度を報告している。しかしながら、この研究で、例えば単一腫瘍マーカーとしてのCYFRA21‐1の感度は、95%の特異性で72%であると報告されており、これは多くの他の報告された研究よりも有意に高い。Duffy, M.J.は、Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 38 (2001) 225-262において、46%〜61%の感度を報告している。Schneiderらによって達成されたこの異常な高性能は、ある疑いを生じ、且つ、いくつかの事実に起因するものであり得る。第一に、対照患者の集団が患者集団よりも若いように思われる、すなわち両方の集団は年齢で十分適合しておらず、患者集団は多くが後期ステージを含む。第二に、そしてさらにより重要なことには、アルゴリズムの性能がファジー論理型限定子の決定に使用された訓練集団のサンプルにより確認されている。そのため、これらの限定子は、厳密に言うとこの集団のために「オーダーメイドされたもの」であって、独立した確認集団には適用されない。通常の状況下で、大きく、独立し、且つ、十分にバランスがとれた確認集団に適用される同じアルゴリズムが有意に減少した全体性能につながるであろうことが予測されるはずである。
発明の概要
本発明の目的は、癌疾患の診断に使用され得る生化学マーカーが同定され得るかどうかを調べることであった。特に、本発明の発明者らは、体液中で、肺、乳房、結腸、前立腺および腎臓の癌などの種々の癌型を診断するための生化学マーカーが同定され得るかどうかを調べた。本発明の非常に好ましい態様において、肺癌(LC)の診断のための生化学マーカーの同定が調べられた。
驚いたことに、セセルニン‐1タンパク質(=SCRN1)の使用が、当該技術分野の水準で現在公知のマーカーの問題のいくつかを少なくとも部分的に克服し得ることが見出された。
驚いたことに、試験サンプル中のSCRN1の濃度の増大は、癌の発生と関連することが見出された。SCRN1が、単一型の癌に特異的なマーカーではなく、様々な型の癌のマーカー、すなわち汎用腫瘍マーカーであることが見出された。SCRN1は腫瘍形成プロセスにかなり特異的であるように思われるために、新規腫瘍マーカーSCRN1は、様々なクラスの腫瘍型について臨床上有用なものである可能性が高い。
驚いたことに、サンプルおよび/または体液中のSCRN1の濃度の測定が、例えば肺、卵巣、子宮内膜の癌、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌の診断を可能にすることが見出された。よりいっそう驚いたことに、正常対照と比べて、サンプルおよび/または体液中のSCRN1またはその断片の濃度の増大が、癌のリスクまたは発生を示すことが見出された。
本発明は、免疫学的検出方法によってSCRN1の濃度をサンプル中で測定し、そして癌の診断において測定結果、特に測定した濃度を使用するステップを含む、インビトロでの癌の診断方法に関する。
一実施形態では、本発明は、(a)セセルニン‐1タンパク質(=SCRN1)および/またはその断片の濃度、(b)場合により1もしくは複数の他の癌マーカーの濃度を液体サンプル中で計測し、そして(c)癌の診断においてステップ(a)の測定結果および場合によりステップ(b)の測定結果を使用するステップを含み、ここで、SCRN1の濃度の増大が癌を示す、インビトロでの癌の診断方法に関する。
さらに、本発明は、癌の診断におけるSCRN1の使用に関する。
さらに、本発明は、癌の診断におけるSCRN1に対する抗体の組合せの使用に関し、ここで、SCRN1の濃度の増大が癌を示す。
さらに、本発明は、癌の診断におけるSCRN1および場合により1もしくは複数の他の癌マーカーを含むマーカーパネルの使用方法であって、ここで、SCRN1の濃度の増大が癌を示す使用方法を開示する。
さらに、本発明は、(a)セセルニン‐1タンパク質(=SCRN1)および/またはその断片の濃度、(b)場合により1もしくは複数の他の癌マーカーの濃度を液体サンプル中で計測し、そして(c)癌の診断においてステップ(a)の測定結果および場合によりステップ(b)の測定結果を使用するステップを含み、ここで、SCRN1の濃度の増大が癌を示す、インビトロでの癌の診断方法を実施するためのキットであって、SCRN1を特異的に計測するのに必要な試薬、および場合により1若しくは複数の他の癌マーカーを特異的に測定するのに必要な試薬を含むものに関する。
驚いたことに、試験サンプル中のSCRN1および/またはその断片の濃度の増大は、癌の発生と関連することが見出された。SCRN1が、単一型の癌に特異的なマーカーではなく、様々な型の癌のマーカー、すなわち汎用腫瘍マーカーであることが見出された。SCRN1は腫瘍形成プロセスにかなり特異的であるように思われるために、新規腫瘍マーカーSCRN1は、様々なクラスの腫瘍型について臨床上有用なものである可能性が高い。
図1は、20個の肺癌組織溶解物のウェスタンブロット分析を示す。癌(CA)の組織溶解物と対応する対照組織溶解物の15μgの総タンパク質を、実施例3に記載のとおり分析した。M=分子量マーカー;T=腫瘍組織溶解物;N=対応する対照組織溶解物;rec ag=遺伝子組み換えにより作製したセセルニン‐1(=SCRN1);矢印はセセルニン‐1(=SCRN1)の位置を示す。 図2は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、LCを患っている患者から採取した365個のサンプルの診断に関して0.85のAUCを有する、LCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図3は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、頭部/頚部癌を患っている患者から採取した30個のサンプルの診断に関して0.86のAUCを有する、H/NCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図4は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、子宮内膜癌を患っている患者から採取した23個のサンプルの診断に関して0.84のAUCを有する、ECサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図5は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、卵巣癌を患っている患者から採取した42個のサンプルの診断に関して0.83のAUCを有する、OCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図6は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、悪性黒色腫を患っている患者から採取した16個のサンプルの診断に関して0.82のAUCを有する、MMサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図7は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、乳癌を患っている患者から採取した47個のサンプルの診断に関して0.77のAUCを有する、BCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図8は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、子宮頚癌を患っている患者から採取した20個のサンプルの診断に関して0.74のAUCを有する、CCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図9は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、膵臓癌を患っている患者から採取した49個のサンプルの診断に関して0.70のAUCを有する、PACサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図10は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、結腸直腸癌を患っている患者から採取した50個のサンプルの診断に関して0.67のAUCを有する、CRCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図11は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、卵巣癌を患っている患者から採取した50個のサンプルの診断に関して0.65のAUCを有する、BLCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図12は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、腎臓癌を患っている患者から採取した25個のサンプルの診断に関して0.60のAUCを有する、KCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図13は、明らかな健常者から採取した50個の対照サンプルと比較した場合に、前立腺癌を患っている患者から採取した50個のサンプルの診断に関して0.58のAUCを有する、PCサンプルにおけるSCRN1の受診者動作特性に関するプロット(ROC‐プロット)を示す。 図14は、ヒトSCRN1タンパク質;SwissProtデータベース受入番号:Q12765(配列番号1)のアミノ酸配列に示す。
発明の詳細な説明
好ましい実施形態では、本発明は、SCRN1および/またはその断片の濃度をサンプル中で計測し、そしてその測定結果、特に癌の診断で測定した濃度を使用することを含む、インビトロでの癌の診断方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、(a)SCRN1および/またはその断片の濃度、(b)場合により1もしくは複数の他の癌マーカーの濃度を液体サンプル中で計測し、そして(c)癌の診断においてステップ(a)の測定結果および場合によりステップ(b)の測定結果を使用するステップを含み、ここで、SCRN1の濃度の増大が癌を示す、インビトロでの癌の診断方法に関する。
本発明の方法は多くの異なった型の癌の診断に好適である。正常対照と比べた場合に、サンプル中のSCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度の増大は、それぞれ例えば肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌のような特定の癌型において見られた。
本発明の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度は、インビトロで癌を診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度は、インビトロで特定の癌型、例えば肺癌(LC)、卵巣癌(OC)、子宮内膜癌(EC)、黒色腫(MM)、乳癌(BC)、頭頚部癌(H/NC)、膀胱癌(BLC)、膵臓癌(PAC)、結腸癌(CRC)、子宮頚癌(CC)、腎臓癌(KC)または前立腺癌(PC)などを診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば肺、結腸、前立腺、膀胱、卵巣、または乳房の癌などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば肺癌(LC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば卵巣癌(OC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば子宮内膜癌(EC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば黒色腫癌(MM)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば乳癌(BC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば頭頚部癌(H/NC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば膀胱癌(BLC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば膵臓癌(PAC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば結腸直腸癌(CRC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば子宮頚癌(CC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば腎臓癌(KC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が、癌、例えば前立腺癌(PC)などをインビトロで診断するためにサンプル中で計測される。
本発明の一実施形態は、おそらく癌のない個体と、「疑わしい」症例として分類され得る個体とを区別するための集団のマススクリーニングに関する。後者の群の個体は、次いで、例えば画像化方法または他の好適な手段によって、さらなる診断手順を受け得る。
本発明のさらなる実施形態は、一般的な癌の診断に好適である腫瘍マーカーパネル、または特定の腫瘍型、例えば肺癌の診断に好適な腫瘍マーカーパネルの改善に関する。
本発明はさらに、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度、ならびに癌に特異的な1もしくは複数の他のマーカーの濃度をサンプル中で計測し、そして癌の診断において測定結果、特に測定した濃度を使用するステップを含む、生化学マーカーによるインビトロでの癌の診断方法に関する。SCRN1と組合せた使用に好ましいマーカーは、一方で、汎用腫瘍マーカー(すなわち、単一腫瘍型に特異的ではないマーカー)のマーカーであり、他方で、特異的腫瘍マーカー(単一腫瘍型に特異的なマーカー)のマーカーである。癌、例えば肺癌または結腸癌の診断に好ましいマーカーは、Cyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよび可溶性DPPIV/セプラーゼ複合体(=DPPIV/セプラーゼ)である。これらのマーカーは、個々にそれぞれまたはSCRN1と共にいずれかの組合せで使用され得る。
本発明はさらに、DPPIV/セプラーゼの濃度および1もしくは複数の他の癌マーカー、例えば1若しくは複数の肺または結腸癌の他のマーカーの濃度をサンプル中で計測し、そして癌の診断において測定結果、特に測定した濃度を使用するステップを含む、インビトロでの生化学的マーカーによる癌、例えば肺癌または結腸癌などの診断方法をも対象とする。前記1もしくは複数の他のマーカーが、Cyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択されることが好ましい。
本発明はさらに、癌、例えばLCの診断における、少なくともマーカーSCRN1、ならびに以下の:Cyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される少なくとも1つの他の腫瘍マーカーを含むマーカーパネルの使用をも対象とする。
好ましくは、本発明はさらに、SCRN1および/またはその断片の濃度および1もしくは複数の他の癌マーカー、例えば1若しくは複数の肺または結腸癌の他のマーカーの濃度をサンプル中で計測し、そして癌の診断において測定結果、特に測定した濃度を使用するステップを含む、インビトロでの生化学的マーカーによる癌、例えば肺癌または結腸癌などの診断方法をも対象とする。前記1もしくは複数の他のマーカーが、Cyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択されることが好ましい。
本発明はさらに、SCRN1および/またはその断片の濃度の増大が癌を示す、癌の診断におけるSCRN1タンパク質および/またはその断片の使用に関する。
本発明はさらに、サンプルが血清または血漿である、インビトロでの癌の診断におけるSCRN1タンパク質および/またはその断片の使用に関する。
本発明はさらに、いくつかの特定の型の癌、特に肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌の診断におけるSCRN1の使用に関する。
本発明はさらに、いくつかの特定の型の癌、特に肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓または結腸の癌の診断におけるSCRN1の使用に関する。
本発明はさらに、いくつかの特定の型の癌、特に肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房または頭頚部の癌の診断におけるSCRN1の使用に関する。
本発明はさらに、SCRN1および/またはその断片の濃度の増大が癌を示す、癌の診断におけるSCRN1タンパク質および/またはその断片に対する抗体の使用に関する。
好ましくは、SCRN1は、サンドイッチ型免疫学的アッセイ形式(=サンドイッチ免疫アッセイ)で検出される。
本発明はさらに、少なくとも、SCRN1タンパク質および/またはその断片を特異的に計測するのに必要とされる試薬ならびに1若しくは複数の他の癌マーカーを含む、本発明による方法を実施するためのキットを提供する。
本発明はさらに、少なくとも、SCRN1タンパク質および/またはその断片を特異的に計測するのに必要とされる試薬、ならびに場合により1若しくは複数の先に記載の他の癌マーカー、例えば肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌のマーカーを含み、ここで、前記他のマーカーを個別にまたはそれらのいずれかの組合せでそれぞれ使用できる、本発明による方法を実施するためのキットを提供する。
本発明はさらに、少なくとも、SCRN1を特異的に計測するのに必要とされる試薬、ならびにCyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される1若しくは複数の他のマーカー、そして場合によりその計測を実施するための補助試薬を含む本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
本発明はさらに、SCRN1、ならびにCyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される1若しくは複数の他のマーカーを特異的に計測するための本発明による方法を実施するためのバイオチップ・アレイ、そして場合により当該計測を実施するための補助試薬を提供する。
本発明はさらに、癌の診断において、SCRN1、ならびにCyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される1若しくは複数の他のマーカーを特異的に計測するための本発明による方法を実施するためのバイオチップ・アレイを提供する。
本発明はさらに、癌の診断において、SCRN1、ならびにCyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される1若しくは複数の他のマーカーを特異的に計測するための本発明による方法を実施するためのバイオチップ・アレイ、そして場合により当該計測を実施するための補助試薬を提供する。
用語「計測」は、好ましくはサンプル中のSCRN1タンパク質および/またはその断片の定性的、半定量的、または定量的計測を含む。好ましい実施形態では、計測は、半定量的計測である、すなわち、SCRN1の濃度がカットオフ値より高いか低いかを計測する。当業者に認識されるように、イエス‐(存在)またはノー‐(非存在)アッセイでは、アッセイ感度は、通常、カットオフ値に適合するように設定される。カットオフ値は、例えば健常個体の群の試験から決定され得る。好ましくは、カットオフは90%の特異性をもたらすように設定され、また好ましくはカットオフは95%の特異性をもたらすように設定され、あるいはまた好ましくはカットオフは98%の特異性をもたらすように設定される。カットオフ値より高い値は、例えば癌の存在を示し得る。特に、カットオフ値より高い値は、例えば肺、結腸、乳房、卵巣、子宮頚部、頭頚部、子宮内膜、黒色腫、膀胱、腎臓、膵臓、前立腺、食道、胃および/または胆管の癌の存在を示し得る。さらに好ましい実施形態では、SCRN1の計測は、定量的計測である。さらなる実施形態では、SCRN1の濃度は、根本的な診断的疑問、例えば疾患のステージ、疾患進行、または治療への応答などに相関する。
別の好ましい実施形態では、カットオフは90%の感度をもたらすように設定され、また好ましくはカットオフは95%の感度をもたらすように設定され、あるいはまた好ましくはカットオフは98%の感度をもたらすように設定される。
カットオフ値より低い値は、例えば癌の不存在を示し得る。特に、カットオフ値より低い値は、例えば肺、結腸、乳房、卵巣、子宮頚部、頭頚部、子宮内膜、黒色腫、膀胱、腎臓、膵臓、前立腺、食道、胃および/または胆管の癌の不存在を示し得る。
さらに好ましい実施形態では、SCRN1の計測は、定量的計測である。さらなる実施形態では、SCRN1の濃度は、根本的な診断に関する問題、例えば疾患のステージ、疾患進行、または治療への応答などに相関する。
セセルニン‐1タンパク質(=SCRN1)、Swiss PROT ID:Q12765は、配列番号1(図14)に示された配列を特徴とする46.4kDaの分子量を有する414個のアミノ酸から成るサイトゾルタンパク質である。SCRN1のコード配列は、骨髄由来のcDNAクローンの分析によってNagase, T.らにより1996年に予測された(Nagase, T. et al., DNA Res. 3 (1996) 17-24)。最近になって、それぞれの遺伝子が第7染色体上に位置していることや、遺伝子構造が解明された(Hillier, L.N. et al., Nature 424 (2003) 157-164)。現在、遺伝子は十分に特徴づけられているが、SCRN1の生物学的役割と機能は部分的にしか理解されていない。SCRN1は、マスト細胞の分泌を調節し、そしてカルシウムでの刺激に対する細胞の感度を増強する(Way, G. et al., Mol. Biol. Cell 13 (2002) 3344-3354)。SCRN1はまた、そのタンパク質の機能が定義されていないにもかかわらず、プロテオミックス法によって血小板中で検出された(O'Neill, E.E. et al., Proteomics 2 (2002) 288-305)。最近の刊行物では、RNA発現のレベルが胃癌に関係していた(Yamashita, S. et al., Cancer Sci. 97 (2006) 64-71、Suda, T. et al., Cancer Sci. 97 (2006) 411-419)。レーザーキャプチャー顕微解剖によって単離され、続いてcDNAを作製した細胞を、アフィメトリックスマイクロアレイを使用して分析すると、発現増加はまた、前癌状態であるバレット食道においても見られた(Sabo, E. et al., Clin. Cancer. Res. 14 (2008) 6440-6448)。しかしながら、これらの研究のいずれもタンパク質レベルに対する確認を示さなかった。今までのところ、癌の診断マーカーとしての体液中のタンパク質SCRN1の検出は文献に記載されていない。
本明細書で使用される場合、以下の用語のそれぞれは、本項のものと関連する意味を有する。
冠詞「a」および「an」は、1つまたは1つより多く(すなわち少なくとも1つ)の冠詞の文法的対象物を示すために本明細書中で使用される。例として、「マーカー(a marker)」は、1つのマーカーまたは2つ以上のマーカーを意味する。用語「少なくとも」は、場合により1もしくは複数のさらなる対象物が存在し得ることを示すために使用される。例として、少なくとも(マーカー)SCRN1およびCYFRA21‐1を含むマーカーパネルは、場合により1もしくは複数の他のマーカーを含み得る。
表現「1もしくは複数」は、1〜50、好ましくは1〜20、また好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、または15を示す。
用語「チップ」、「バイオチップ」、「ポリマーチップ」または「タンパク質チップ」は、互換的に使用されて、ケイ素ウエハー、ナイロン片、プラスチック片、またはガラススライドの一部であり得る共用基板上に配置された多数のプローブ、マーカーまたは生化学的マーカーの集合体を指す。
「アレイ」、「マクロアレイ」または「マイクロアレイ」は、基板または固体表面、例えばガラス、プラスチック、シリコンチップまたはアレイを形成する他の材料に取り付けられたかまたはそれらの上に組立てられた物質、例えば分子、マーカー、開口部、マイクロコイル、検出装置および/またはセンサーなどの意図的に作製された集合体である。アレイは、同時に多数、例えば数十個、数千個または数百万個の反応または組合せのレベルを計測するのに使用される。アレイはさらに、例えば少数、1個、数個または1ダースの物質を含むこともできる。アレイ内の物質は、互いに同一であってもまたは異なっていてもよい。アレイは、様々な形式、例えば可溶性分子に関するライブラリー、固定化分子に関するライブラリー、固定化抗体に関するライブラリー、樹脂ビーズ、シリカチップまたは他の固体支持体につながれた化合物に関するライブラリーを想定している。アレイは、アレイ上のパッドのサイズによってマクロアレイまたはマイクロアレイのいずれかであり得る。マクロアレイは、一般に、約300ミクロン(μm)以上のパッドサイズを含み、ゲルやブロットスキャナによって容易に画像化できる。マイクロアレイは、一般に、300ミクロン(μm)未満のパッドサイズを含むであるだろう。
「固体支持体」は、ライブラリーメンバーまたは試薬が固定化されるように、または(濾過、遠心分離、洗浄などによって)それらを過剰な試薬、可溶性の反応副産物、もしくは溶媒から容易に分離できるように、そこに取り付けられうるか、または(多くの場合リンカーを介して)共有結合させる不溶性の官能化された重合物質である。
用語「マーカー」または「生化学マーカー」は、本明細書で使用される場合、患者の試験サンプルを分析するための標的として使用される分子を指す。かかる分子標的の例は、タンパク質またはポリペプチドである。本発明でマーカーとして使用されるタンパク質またはポリペプチドは、前述のタンパク質の天然の変異体、ならびに前述のタンパク質または前述の変異体の断片、特に免疫学的に検出可能な断片を含むことが考えられる。免疫学的に検出可能な断片は、好ましくは前述のマーカーポリペプチドの少なくとも6、7、8、10、12、15または20個の連続したアミノ酸を含む。当業者は、細胞によって放出されるタンパク質または細胞外マトリックスに存在するタンパク質が、例えば炎症中に損傷され得、かかる断片に分解または切断され得ることを理解する。特定のマーカーは不活性形態で合成され、その後タンパク質分解によって活性化され得る。当業者に認識されるように、タンパク質またはその断片が複合体の一部としても存在し得る。また、かかる複合体は、本発明の意味でのマーカーとして使用され得る。マーカーポリペプチドの変異体は、同じ遺伝子によってコードされるが、例えば選択的mRNAまたはプレmRNAのプロセッシングの結果として等電点(=PI)または分子量(=MW)あるいはその両方で異なり得る。変異体のアミノ酸配列は、対応するマーカー配列と95%以上同一である。加えて、もしくはあるいは、マーカーポリペプチドまたはその変異体は、翻訳後修飾を有し得る。翻訳後修飾の制限されることのない例は、グリコシル化、アシル化、および/またはリン酸化である。
SCRN1タンパク質、特に可溶性形態のSCRN1タンパク質および/またはその断片は、適切なサンプル中で検出される。好ましいサンプルは、組織サンプル、組織溶解物または体液、例えば血液、血漿、血清、尿、気管支肺胞洗浄液(=BLA;LCが疑わしい症例において好ましい)または上皮内層液(=ELF;LCが疑わしい症例において好ましい)などである。好ましくは、サンプルは、ヒト被験体、例えば腫瘍患者または腫瘍のリスクがあるヒトあるいは腫瘍を患っていると疑われるヒトに由来する。
本発明による好ましい実施形態では、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度が測定される。一実施形態では、マーカーSCRN1は、特異的結合物質の使用によってサンプルから特異的に測定される。
特異的結合物質は、例えばSCRN1のレセプター、SCRN1に結合するレクチン、またはSCRN1と反応する抗体である。特異的結合物質は、その対応する標的分子に対して少なくとも107l/molの親和性を有する。特異的結合物質は、好ましくはその標的分子に対して108l/molあるいはまた好ましくは109l/molの親和性を有する。
当業者に認識されるように、特異的という用語はサンプル中に存在する他の生体分子がSCRN1に特異的な結合物質と有意に結合しないことを示すために使用される。好ましくは、標的分子以外の生体分子と結合するレベルは、それぞれ標的分子に対する結合親和性のせいぜい10%以下だけ、5%以下だけ、2%以下だけ、または1%以下だけの結合親和性である。好ましい特異的結合物質は、親和性ならびに特異性の先の最小基準の両方を満たす。
特異的結合物質は、好ましくはSCRN1と反応する抗体である。抗体という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、かかる抗体の抗原結合フラグメント、単鎖抗体ならびに抗体の結合ドメインを含む遺伝子構築物を指す。
特異的結合物質の先の基準を満たす任意の抗体断片が使用され得る。抗体は、当該技術の水準の方法によって、例えばTijssen(Tijssen, P., Practice and theory of enzyme immunoassays, 11, Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdamの本全体、特に43〜78頁)に記載されるように作製される。加えて、当業者は、抗体の特異的単離に使用され得る免疫吸着剤に基づく方法を知っている。これらの手段によって、ポリクローナル抗体の質が高められ得、従って免疫アッセイの性能が高められ得る(Tijssen, P.、前掲、108〜115頁)。
本発明に開示される成果のために、ウサギにおいて惹起されたポリクローナル抗体が使用され得る。しかし、明らかに、異なる種、例えばヒツジまたはヤギ由来のポリクローナル抗体、ならびにモノクローナル抗体も使用され得る。モノクローナル抗体は任意の必要量で一定した性質で産生され得るために、これらは臨床ルーチンのアッセイの開発において理想的なツールとなる。本発明による方法におけるSCRN1に対するモノクローナル抗体の作製および使用のそれぞれを、さらに他の好ましい実施形態にして表す。
免疫学的アッセイは、当業者にとって周知である。かかるアッセイ、ならびに実用適用や手順を実施するための方法は関連する教本にまとめられている。関連する教本の例は、Tijssen, P., Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates, In: Practice and theory of enzyme immunoassays, pp. 221-278、Burden, R.H. and v. Knippenberg, P.H. (eds.), Elsevier, Amsterdam (1990)、および免疫学的検出法を扱っているMethods in Enzymology, Colowick, S.P., and Caplan, N.O. (eds.), Academic Pressの様々な巻、特に70、73、74、84、92および121巻である。
ここで、当業者に認識されるように、SCRN1は、癌、好ましくは肺癌の診断において有用なマーカーとして同定された。本発明の成果に匹敵する結果に達するために様々な免疫診断手順が使用され得る。例えば、抗体を作製するための代替的戦略が使用され得る。かかる戦略は、中でも免疫化のためのSCRN1のエピトープを提示する合成ペプチドの使用を含む。あるいは、DNAワクチン接種としても知られるDNA免疫化が使用され得る。
計測のために、個体から得られたサンプルは、結合物質SCRN1複合体の形成に適切な条件下でSCRN1に特異的結合物質とインキュベートされる。当業者はいかなる発明的努力なしに、かかる適切なインキュベーション条件を容易に同定し得るため、かかる条件は特定される必要はない。結合物質SCRN1複合体の量が計測され、そして癌、好ましくは肺癌の診断に使用される。当業者に認識されるように、特異的結合物質SCRN1複合体の量を計測する多くの方法が存在し、そのすべててが関連の教本に詳細に記載されている(例えば、Tijssen P.、前掲またはDiamandis, E.P. and Christopoulos, T.K. (eds.), Immunoassay, Academic Press, Boston (1996)を参照のこと)。
好ましくは、SCRN1は、サンドイッチ型アッセイ形式(=サンドイッチ免疫アッセイ)で検出される。かかるアッセイにおいて、一方でSCRN1を捕捉するために第一の特異的結合物質が使用され、他方で直接的または間接的に検出可能に標識される第二の特異的結合物質が使用される。サンドイッチ型アッセイ形式で使用される特異的結合物質は、SCRN1に対して特異的な抗体であり得る。
本発明の意味において「癌のマーカー」は、マーカーSCRN1と組合せた場合に、癌疾患の診断において、一般的な癌の診断または特定の癌の型の診断において、例えばLC、PRO、BLC、OC、BCまたはCRCの診断において関連する情報を付加する任意のマーカーである。癌の診断に対して、所定の特異性での感度または所定の感度での特異性それぞれが、マーカーSCRN1を既に含むマーカー組合せに前述のマーカーを含めることによって改善され得る場合に、情報は関連するまたは付加的な価値とみなされる。癌診断の好ましい実施形態では、感度または特異性それぞれの改善は、p=.05、.02、.01またはそれ以下の有意性のレベルにて統計学的に有意である。好ましくは、1もしくは複数の他の腫瘍マーカーは、Cyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される。
用語「サンプル」は、本明細書で使用される場合、インビトロでの診断の目的で得られる生物学的サンプルを指す。本発明の方法において、サンプルまたは患者サンプルは、好ましくは任意の体液を含み得る。好ましいサンプルは、組織サンプル、組織溶解物または体液、例えば全血、血漿、血清、尿、気管支肺胞洗浄液(=BLA;LCが疑わしい症例において好ましい)または上皮内層液(=ELF;LCが疑わしい症例において好ましい)などであり、血漿または血清が最も好ましい。
「組織サンプル」および/または「組織切片」という用語は、本明細書中では、インビトロでの診断の目的のために細胞または組織の取り出しにかかわる手術、治療的な切除または生検(例えば、切開生検、切除生検、コア生検または細針吸引生検)中に患者から取り出された生物学的サンプルを指す。本発明による分析を実施するとき、組織サンプル物質はそのまま使用されるかまたは「組織溶解物」として使用される。「組織サンプル」はまた、本明細書中で使用される場合、通常、ミクロトームの使用によって達成される薄い組織切片も指す。生物学的サンプルにかかわるいずれの開示された方法の実施形態でも、かかる生物学的サンプルは、顕微鏡用スライド上に封入されることができ(しかし必ずというわけではない)、組織切片(ホルマリン固定化やパラフィン包埋組織切片など)であり、および/または新生物組織(肺癌、結腸直腸癌、頭頚部癌、胃癌、または神経膠芽腫)である。
「細胞溶解物」、「組織溶解物」、「溶解物」、「溶解サンプル」、「組織抽出物」または「細胞抽出物」は、本明細書中で使用される場合、溶解した組織または細胞を含むサンプルおよび/または生物学的サンプル物質を指す、すなわち、このなかでは、組織または細胞の構造完全性は失われている。細胞または組織サンプルの内容物を放出するために、材料は、通常、かかる組織または細胞の細胞壁や細胞膜を溶解、分解または破壊するために酵素および/または化学物質で処理される。当業者は、溶解物を得るための適当な方法を完全に熟知している。この工程は「溶解」という用語によって網羅される。
用語「癌の診断」、特に「肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌の診断」は、本発明の方法が(単独または他のマーカーもしくは変数、例えばUICC(前記参照)に示される基準と共に)、例えば医師が癌、特にLCまたはCRCの不存在または存在を確立または確認することを補助し、あるいは予後、再発の検出(手術後の患者の追跡)および/または処置のモニタリング、特に化学療法のモニタリングにおいて医師を補助することを示すために使用される。
当業者に認識されるように、任意のかかる診断はインビトロで行われる。患者サンプルは後で廃棄される。患者サンプルは、本発明のインビトロ診断方法だけに使用され、患者サンプルの物質は、患者の体内に戻されない。典型的には、サンプルは、液体サンプル、例えば全血、血清、または血漿である。
別段の注意がない限り、専門用語は慣例的用法に従って使用される。細胞および分子生物学における一般用語の定義は、Lewin, B., Genes V(Oxford University Pressにより刊行(1994)、ISBN 0-19-854287 9);Kendrew, J. et al.(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology(Blackwell Science Ltd.により刊行(1994)、ISBN 0-632-02182-9);およびMeyers, R.A.(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference(VCH Publishers, Inc.により刊行(1995)、ISBN 1-56081-569 8)の中に見ることができる。
好ましい実施形態では、本発明は、SCRN1の濃度をサンプル中で計測し、そして計測した濃度を癌、例えばLCの診断において使用するステップを含む、生化学マーカーによるインビトロでの癌、例えばLCの診断方法に関する。
他の好ましい実施形態では、本発明は、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度をサンプル中で計測し、そして計測した濃度をLCの診断において使用するステップを含む、生化学マーカーによるインビトロでのLCの診断方法に関する。
本発明の発明者らは、驚いたことに、癌、特に肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌を患っている患者に由来するサンプルから有意な確率でマーカーSCRN1の濃度の増大を検出できた。さらにより驚いたことに、発明者らは、個体から得られたかかるサンプル中のSCRN1の濃度の増大が癌、特に先に触れた癌疾患の診断に使用され得ることを示すことができた。
診断の理想的なシナリオは、単一の事象またはプロセスがそれぞれの疾患、例えば感染性疾患を引き起こす状況である。すべてての他の症例において、正確な診断は、特に疾患の病因が、多くの癌型、例えばLCの症例のように十分に理解されていない場合に非常に困難であり得る。当業者が理解するように、所定の多要因疾患、例えばLCについて100%特異性および同時に100%感度で診断する生化学マーカーはない。むしろ、生化学マーカー、例えばCyfra21‐1、CEA、NSE、または本明細書に示されるSCRN1は、特定の可能性または予測値で、例えば疾患の存在、不存在または重症度を診断するために使用され得る。したがって、日常的な臨床診断において、一般的に様々な臨床症状および生物学的マーカーは、根本的な疾患の診断、治療および管理において共に考慮される。
生化学マーカーは、個々に計測され得るか、または本発明の好ましい実施形態では、これらはチップまたはビーズベースのアレイ技術の使用によって同時に計測され得る。生物マーカーの濃度は、次いで、例えば各マーカーのそれぞれのカットオフを使用して独立して解釈されるか、またはこれらが解釈のために組合せられるかのいずれかである。
さらに好ましい実施形態では、本発明による癌の診断は、a)SCRN1タンパク質および/またはその断片、およびb)1もしくは複数の他の癌マーカーの濃度をサンプル中で計測し、そしてc)癌の診断においてステップ(a)およびステップ(b)のそれぞれで計測した計測結果、例えば濃度を使用するステップを含む方法により実施される。
癌の診断において、マーカーSCRN1は以下の態様:スクリーニング;診断補助;予後;化学療法、放射線療法、および免疫療法などの療法のモニタリングの1もしくは複数で有利である。
スクリーニング:
スクリーニングは、疾患の指標、例えば癌の存在について、個体、例えばリスクのある個体を同定するための試験の体系的な適用と規定される。好ましくは、スクリーニング集団は、癌のリスクが平均より高いことが知られた個体で構成される。例えば、肺癌のスクリーニング集団は、喫煙者、元喫煙者、およびウラン、石英またはアスベストに晒された労働者などの肺癌のリスクが平均より高いことが知られた個体で構成される。
好ましい実施形態では、組織サンプル、組織溶解物またはいずれかの体液、例えば全血、血漿、血清、尿、気管支肺胞洗浄液(=BLA;LCが疑わしい症例において好ましい)または上皮内層液(=ELF;LCが疑わしい症例において好ましい)などが、癌、例えば肺癌のスクリーニングにおけるサンプルとして使用される。
多くの疾患について、スクリーニング目的に必要な感度および特異性の基準を常に満たす、循環中の単一生化学マーカーはない。このことは癌、特に肺癌についてもいえると思われる。複数のマーカーを含むマーカーパネルが癌のスクリーニングに使用されなければならないことが予想されるはずである。本発明において確立されたデータは、マーカーSCRN1がスクリーニング目的に適したマーカーパネルの不可欠な部分を形成することを示唆している。したがって、本発明は、癌マーカーパネル、すなわち、SCRN1および癌スクリーニング目的のための1もしくは複数のさらなるマーカーを含むマーカーパネルのマーカーの1つとしてのSCRN1の使用に関する。特に、本発明は、一般的な癌マーカーパネルのマーカーの1つとしてのSCRN1の使用に関する。かかるマーカーパネルは、マーカーSCRN1および1もしくは複数のさらなるマーカー、例えば、一般的な癌マーカーおよび/または先に触れた癌型のマーカーを含む。
マーカーの組合せは、分子アッセイの値を有意に改善する。第一に、マーカーパネルを使用するアッセイの感度が有意に改善される。第二に、精巧な統計モデルが多マーカーアッセイのROC曲線分析を可能にするため、その結果は、最良の個々のマーカーと比較して診断精度が有意に増強されたことを裏付けている。
SCRN1はさらに、ある種の特定の癌型、例えば肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌のマーカーパネルに寄与する可能性がある。
SCRN1を含むマーカーパネルで診断される他の好ましい癌型は、肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓または結腸の癌である。
SCRN1を含むマーカーパネルで診断される他の好ましい癌型は、肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房または頭頚部の癌である。
SCRN1を含むマーカーパネルで診断される他の好ましい癌型は、肺癌(LC)または結腸癌(CRC)である。
SCRN1を含むマーカーパネルで診断される癌の好ましい型は肺癌(LC)である。
当該データは、さらに、マーカーの特定の組合せが癌のスクリーニングに有利であることを示唆している。
例えば、癌のスクリーニングの好ましい実施形態に関して、本発明はさらに、SCRN1、ならびにCyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される少なくとも1つもしくは複数のマーカーを含むマーカーパネルの使用にも関する。
診断補助:
マーカーは、特定の臓器の良性疾患対悪性疾患の鑑別診断を補助するか、異なる組織学的腫瘍型の識別を補助するか、または手術前のベースラインマーカー値を確立するかのいずれかであり得る。
今日、肺癌の検出に使用される重要な方法は、放射線学および/またはコンピューター連動断層撮影(CT)スキャンである。小結節、すなわち、疑わしい組織の小領域は、これらの方法によって可視化され得る。しかしながら、これらの結節の多く‐CTで90%超‐は良性組織変化を示し、少数の結節のみが癌性組織を示す。マーカーSCRN1の使用は、良性対悪性疾患の識別を補助し得る。
好ましい実施形態では、マーカーSCRN1は、異なった組織学的癌型を確立するかまたは確認するための免疫組織学的方法において使用される。
単独マーカーとしてのSCRN1は、例えばLCの場合において、CEAまたはNSEなどの他のマーカーを超越し得るため、SCRN1は、特に、手術前のベースライン値を確立することにより診断補助として使用されることが予測されるはずである。よって、本発明はさらに、手術前の癌のベースライン値を確立するためのSCRN1の使用にも関する。
予後:
診断指標は、一定の尤度で疾患転帰を予測する癌患者およびその腫瘍の臨床的、病理学的、または生化学的特徴と定義され得る。それらの主な使用は、患者管理の合理的な計画、すなわち、それぞれ急性進行性疾患の過少処置および進行が遅い疾患の過剰処置の回避を補助すべきである。Molina, R. et al., Tumor Biol. 24 (2003) 209-218では、NSCLCにおいてCEA、CA125、CYFRA21‐1、SSCおよびNSEの予後値が診断された。彼らの研究では、マーカーNSE、CEA、およびLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の異常血清レベルは、短い生存を示すようであった。
SCRN1は単独で癌患者、例えば、LC患者と健常対照との識別に有意に寄与するので、癌、好ましくはLCを患っている患者の予後の診断を補助することが予測されるはずである。手術前のSCRN1のレベルは、大抵、1もしくは複数の他の癌マーカーおよび/またはTNMステージ分類システムと組み合わされる。好ましい実施形態では、SCRN1はLCを患っている患者の予後に使用される。
化学療法のモニタリング:
Merle, P. et al., Int. J. of Biological Markers 19 (2004) 310-315では、導入化学療法で処置された局所進行NSCLCを患っている患者におけるCYFRA21‐1血清レベルの変化が診断された。彼らは、CYFRA21‐1血清レベルの早期モニタリングがステージIIIのNSCLC患者の腫瘍応答および生存の有用な予後ツールであり得ると結論づけた。加えて、報告により、LCを患っている患者の処置のモニタリングにおけるCEAの使用が記載された(Fukasawa, T. et al., Cancer & Chemotherapy 13 (1986) 1862-1867)。これらの研究のほとんどは、遡及的で、ランダムではなく、少数の患者しか含んでいなかった。CYFRA21‐1を用いた研究の場合のように、CEA研究は、a)化学療法を受けている間にCEAレベルが増大した患者は、大抵、CEAレベルが増大しなかった患者よりも良好な結果を有し、(b)ほぼすべての患者で、CEAレベルの増加は疾患の進行と関連したことを示した。
SCRN1は、それぞれCYFRA21‐1またはCEAと少なくとも同程度に良好な化学療法のモニタリングのためのマーカーであることが予測される。そのため、本発明はさらに、療法下の癌患者、好ましくは肺癌(LC)患者のモニタリングにおけるSCRN1の使用に関する。
処置のモニタリングにおいて、好ましい一実施形態では、SCRN1の計測値と、Cyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーの計測値が、肺癌(LC)の診断において組み合わされ、そして使用される。
追跡:
癌性組織の完全な除去を目的とした外科的切除を受けるLC患者の大部分は、後に再発性または転移性の疾患を発症する(Wagner, H. Chest 117 (2000) 110-118;Buccheri, G. et al., Ann. Thorac. Surg. 75 (2003) 973-980)。これらの再発のほとんどは、手術後最初の2〜3年以内に起こる。再発性/転移性疾患は、検出が遅すぎた場合は常に致死的であるため、多数の研究が、その初期ひいては潜在的に処置可能なステージでの癌再発に焦点を当てている。
その結果、多くの癌患者、例えばLC患者は、多くの場合CEAの定期的モニタリングを含む、術後のサーベイランスプログラムを受ける。外科的切除後1年間のCEAの連続モニタリングにより、再発性/転移性疾患が、疑わしい症状または徴候がない場合であっても、早期の術後再発性/転移性疾患がほぼ97%の特異性でほぼ29%の感度で検出されることが示された(Buccheri, G. et al., Ann. Thorac. Surg. 75 (2003) 973-980)。とって、手術後のLCを患っていた患者の追跡は、適切な生化学的マーカーの使用の最も重要な領域の1つである。調査したLC患者におけるSCRN1の高い感度のため、おそらく、SCRN1単独または1もしくは複数の他のマーカーとの組合せは、LC患者の追跡、特に手術後のLC患者の追跡に非常に有用である。LC患者の追跡におけるSCRN1およびLCの1もしくは複数の他のマーカーを含むマーカーパネルの使用は、本発明のさらに好ましい実施形態を示す。
本発明は、好ましい実施形態では、癌の診断分野におけるSCRN1の使用に関する。好ましくは、SCRN1は、肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌のそれぞれの診断に使用される。
またさらに好ましい実施形態では、本発明は、1もしくは複数のさらなる癌マーカー分子と組合せた、癌、例えば、一般的な癌または肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓または前立腺の癌などの特定の癌型のマーカー分子としてのSCRN1の使用に関する。さらなるマーカー分子は、癌型に非特異的な一般マーカー分子および/または癌型に特異的なマーカー分子、例えば、肺癌のマーカー分子であり得る。SCRN1および少なくとも1つのさらなるマーカーが、個体から得られた液体サンプルにおいて癌、例えば肺癌の診断に使用される。SCRN1の計測と組み合わされ得る、選択される好ましい他の癌マーカーは、Cyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼである。特に、SCRN1の計測と組み合わされ得る、選択される好ましい他のLCマーカーは、CYFRA21‐1、CEA、CA19‐9、SCC、CA125、proGRPおよび/またはNSEである。またさらに好ましくは、癌、例えばLCの診断において使用されるマーカーパネルは、SCRN1、ならびにCYFRA21‐1およびCEAから成る群から選択される少なくとも1つの他のマーカー分子を含む。
当業者に理解されるように、調査中の診断上の疑問を改善するために2種類以上のマーカーの計測値を使用する多くの方法がある。全く単純に、しかしながら、しばしば効果的なアプローチにおいて、調査された少なくとも1種類のマーカーについてサンプルが陽性である場合、陽性の結果が仮定される。このことは、例えばAIDSのような感染性疾患の診断の場合であり得る。
しかしながら、頻繁にマーカーの組合せが評価される。好ましくは、マーカーパネルのマーカー、例えばSCRN1およびCYFRA21‐1についての計測値は、数学的に組合され、組合された値は診断的疑問の原因と相関される。マーカー値は、当該技術分野の技術水準の任意の適切な数学的方法により組合され得る。マーカーの組合せを疾患に相関させる周知の数学的方法には、判別分析(DA)(すなわち、一次、二次、標準化DA)、Kernel法(すなわちSVM)、ノンパラメトリック法(すなわちk‐最近接分類)、PLS(部分最小二乗)、ツリーベース法(すなわち論理回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バギング(Boosting/Bagging)法)、一般化線形モデル(すなわちロジスティック回帰)、主成分ベース法(すなわちSIMCA)、汎用付加モデル、ファジー理論ベースの方法、ニューラルネットワークおよび遺伝的アルゴリズムベースの方法のような方法を用いる。当業者は、本発明のマーカーの組合せを診断するための適切な方法の選択を問題としない。好ましくは、本発明のマーカーの組合せを、例えばLCの有無に相関させることに用いられる方法は、DA(すなわち一次、二次、標準化判別分析)、Kernel法(すなわちSVM)、ノンパラメトリック法(すなわちk‐最近接分類)、PLS(部分最小二乗)、ツリーベース法(すなわち論理回帰、CART,ランダムフォレスト法、ブースティング法)、または一般化線形モデル(すなわちロジスティック回帰)から選ばれる。これらの統計的方法に関する詳細は、以下の参考文献:Ruczinski, I., et al, J. of Computational and Graphical Statistics 12 (2003) 475-511;Friedman, J.H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175;Hastie, T. et al., The Elements of Statistical Learning, Springer Series in Statistics (2001);Breiman, L., et al., Classification and regression trees, California: Wadsworth (1984);Breiman, L., Random Forests, Machine Learning, 45 (2001) 5-32;Pepe, M.S., The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction, Oxford Statistical Science Series, 28 (2003);およびDuda, R.O. et al., Pattern Classification, Wiley Interscience, 2nd edition (2001)中に見られる。
生物学的マーカーの基礎的な組合せに対して最適な多変量カットオフを使用し、状態Aを状態Bと、例えば、疾患状態を健常と区別することは、本発明の好ましい実施形態である。このタイプの解析では、マーカーは、もはや独立的ではなくマーカーパネルを形成する。
診断方法の精度は、その受診者動作特性(ROC)によって最もよく示される(特にZweig, M.H., and Campbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577を参照のこと)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって判定閾値を連続的に変えることにより得られるすべての感度/特異性ペアのプロットである。
実験室での試験の臨床成績は、その診断の精度または被験体を臨床的に関連する亜群へと正確に分類する能力に依存している。診断の精度は、検査を受けた被験体の2つの異なる状態を正確に区別する試験の能力を診断するものである。かかる状態は、例えば健常と疾患または良性疾患対悪性疾患である。
各場合において、ROCプロットは、判定閾値の全範囲について1‐特異性に対して感度をプロットすることにより2つの分布間の重複を示す。y軸上は感度、すなわち真陽性の割合[(真陽性試験結果の数)/(真陽性の数+偽陰性試験結果の数)と定義される]である。これはまた、疾患または状態の存在下での陽性と称されている。それは罹患した亜群単独から算出される。x軸上は偽陽性の割合、すなわち1‐特異性[(偽陽性結果の数)/(真陰性の数+偽陽性結果の数)と定義される]である。これは特異性の指標であり、罹患していない亜群全体から算出される。真陽性および偽陽性の割合は、2つの異なる亜群由来の試験結果を用いて全く別々に算出されるため、ROCプロットはサンプル中の疾患の罹患率から独立している。ROCプロット上の各点は、特定の判定閾値に対応する感度/1‐特異性のペアを表している。完全な区別を伴う試験(結果の2つの分布に重複がない)は、左上の角を通るROCプロットを有し、この場合、真陽性の割合は1.0すなわち100%(完全な感度)であり、偽陽性の割合は0(完全な特異性)である。区別を伴わない試験の理論的プロット(2つの群の結果の分布が同一)は、左下の角から右上の角に向かって45°の斜め線となる。ほとんどのプロットはこれらの両極間に含まれる。(ROCプロットが45°の斜め線の下方に完全に含まれる場合、これは「陽性度」についての基準を「より大きい」から「より少ない」に入れ換えることにより容易に修正される。逆も同じ)。定性的には、プロットが左上の角に近づくにしたがって、試験の全体的な精度は高くなる。
実験室での試験の診断の精度を定量化するための好ましい方法の1つは、単一の数によりその成績を表すことである。かかる全般的パラメータは、例えば、いわゆる「総誤差」あるいは「曲線下面積=AUC」である。最も一般的な世界的尺度はROCプロット下面積である。慣例により、この面積は常に≧0.5である(もしそうでなければ、そうなるように決定基準を入れ換えることができる)。数値は1.0(2群の試験値の完全な分離)と0.5(2群間の試験値に明らかな分布の差が無い)の間の範囲である。この面積は、斜め線に最も近い点または90%特異性での感度などのプロットの特定の部分だけでなく、全プロットにも依存する。これは、ROCプロットが完全なもの(面積=1.0)にどれだけ近いかということの定量的で説明的な表現である。
SCRN1の測定値をCyfra21‐1もしくはCEAのような他のマーカーと、またはまだ発見されていないLCの他のマーカーと組合せることで、SCRN1は、それぞれLCの診断におけるさらなる改善をもたらすか、またはもたらすであろう。
好ましい実施形態では、本発明は、サンプル中の少なくともSCRN1の濃度、ならびにCyfra21‐1、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される1若しくは複数の他の腫瘍マーカーの濃度をそれぞれ計測し、そして計測した濃度を癌、例えばLCの有無と相関させることによって、癌、例えばLC対健常対照の診断の精度を改善するための方法であって、改善により、いずれかの単一マーカー単独での調査に基づいた分類と比べて、健常対照に対してより多くの患者が癌、例えばLCを患っていると正確に分類される方法に関する。
さらに好ましい実施形態では、本発明は、サンプル中の少なくともSCRN1およびCyfra21‐1の濃度、そして場合によりCEAおよび/またはNSEの濃度をそれぞれ計測し、そして計測した濃度を癌、例えばLCの有無と相関させることによって、癌、例えばLC対健常対照の診断の精度を改善するための方法であって、改善により、いずれかの単一マーカー単独での調査に基づいた分類と比べて、健常対照に対してより多くの患者が癌、例えばLCを患っていると正確に分類される方法に関する。
以下の実施例および図面は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。本発明の要旨から逸脱することなく記載した手順において修飾が行われ得ることは理解されている。
実施例1
肺癌に対する潜在的マーカーとしてのSCRN1の同定
組織の起源:
肺癌に対する潜在的診断マーカーとしての腫瘍特異的タンパク質を同定するために、プロテオミックス法を使用して異なる2種類の組織の分析を実施する。
合計で、20人の肺癌(LC)に罹患している患者から採取した組織標本を分析する。各患者からの2種類の異なった組織タイプ:腫瘍組織(>80%の腫瘍)(T)と隣接している健全な組織(N)を治療的な切除から採集する。後者は、対応する健常対照サンプルとしての役割を果たす。組織は、切除後すぐにスナップ冷凍し、加工まで−80℃にて貯蔵する。腫瘍を組織病理学基準によって診断する。
組織サンプル:
0.8〜1.2gの凍結組織を、小片に切断し、ミキサーボールミルの冷やした破砕ジャーに移し、そして液体窒素によって完全に凍らせる。組織を、ボールミルにより粉末にし、10倍量の溶解バッファー(40mMのクエン酸Na、5mMのMgCl2、1%のGenapol X‐080、0.02%のアジ化Na、Complete(登録商標)EDTA不含[Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany、カタログ番号1 873 580])を有する)中に溶かし、それに続いてWheaton(登録商標)ガラス・ホモジナイザーによりで均質化する(20×ゆるい状態、20×ぴったりの状態)。均質化したものを遠心分離にかけ(5,000×gにて10分間)、上清を別のバイアルに移し、そして再び遠心分離にかける(20,000×gにて15分間)。得られた上清には可溶性タンパク質が含まれており、それをさらなる分析に使用する。
分画電気泳動(IEF)とSDS‐PAGE:
IEFのために、3mlの懸濁液を、12mlのサンプルバッファー(7Mの尿素、2Mのチオ尿素、2%のCHAPS、0.4%のIPGバッファー pH4〜7、0.5%のDTT)と混合し、そして1時間インキュベートした。そのサンプルを、Amicon(登録商標)Ultra‐15デバイス(Millipore GmbH、Schwalbach, Germany)により濃縮し、そしてタンパク質濃度を、供給業者の取扱説明書の指示に従ってBio‐Rad(登録商標)タンパク質アッセイ(カタログ番号500-0006;Bio-Rad Laboratories GmbH、Munchen, Germany)を使用して測定した。1.5mgのタンパク質に相当する量に対して、サンプルバッファーを350μlの終量まで加えた。この溶液を、IPG片 pH4〜7(Amersham Biosciences、Freiburg, Germany)を再水和するために一晩使用した。IEFを、以下のグラジエントプロトコールを使用して実施した:1.)1分で500Vまで;2.)2時間で3500Vまで;3.)22時間一定した3500Vにて82kVhを生じる。IEF後に、小片を−80℃にて保存するか、またはSDS‐PAGEにそのまま使用した。
SDS‐PAGEに先立ち、小片を、還元のためにDDTを加えた(15分間、+50mgのDTT/10ml)、およびアルキル化のためにIAAを加えた(15分間、+235mgのヨードアセトアミド/10ml)を加えた、平衡バッファー(6Mの尿素、50mMのTris/HCl、pH8.8、30%のグリセロール、2%のSDS)中でインキュベートした。その小片を、12.5%のポリアクリルアミドゲル上に乗せ、そして1W/ゲルにて1時間、その後17W/ゲルにて電気泳動にかけた。それに続いて、そのゲルを固定し(50%のメタノール、10%のアセタート)、そしてNovex(商標)Colloidal Blue Staining Kit(Invitrogen、Karlsruhe, Germany、カタログ番号LC6025, 45-7101)を用いて一晩染色した。
肺癌に対する潜在的マーカーとしてのSCRN1の検出:
各患者を、ProteomeWeaver(登録商標)ソフトウェア(Definiens AG、Germany, Munchen)を用いた画像解析によって別々に分析した。加えて、ゲルのすべてのスポットをピッキングロボットによって切り出し、そしてスポット内に存在しているタンパク質をMALDI‐TOF質量分析法(Ultraflex(商標)Tof/Tof、Bruker Daltonik GmbH、Bremen, Germany)によって同定した。各患者について、腫瘍サンプルからの3つのゲルを、隣接した正常組織からのそれぞれ3つのゲルと比較し、そして示差的な発現されたタンパク質に該当する特有のスポットについて分析した。SCRN1を、16人の患者の腫瘍サンプルおよび1つの対照サンプルでのみ同定した。このようにして、タンパク質SCRN1が特異的に発現されるか、または腫瘍組織で強く過剰発現されることがそれぞれわかった。そのため、タンパク質SCRN1は、肺癌の診断における使用のための候補マーカーとしての資格を得た。以下のSCRN1由来のトリプシンペプチドを同定した:
Figure 0005731488
実施例2
癌マーカータンパク質SCRN1に対する抗体の作出
肺癌マーカータンパク質SCRN1に対するポリクローナル抗体を、免疫検出アッセイ、例えばウエスタンブロッティングやELISAによるSCRN1の血清および血漿レベルまたは他の体液中の濃度の計測におけるその抗体のさらなる使用のために作出する。
E.コリ(E.coli)による組換タンパク質の発現:
SCRN1に対する抗体を作出するために、組換抗原をE.コリに産生される:そのため、SCRN1をコードする領域を、以下のプライマーを使用して、German Resource Center for Genome Research(RZPD、Berlin, Germany)から入手した完全長cDNAクローンからPCR増幅した:
順方向プライマー(配列番号3):
5’‐acgtgaattcattaaagaggagaaattaactATGAGAGGATCGCATCACCATCACCATCACATTGAAGGCCGTGCTGCAGCTCCTCCAAGTTACTG‐3’
(EcoRI部位に下線を引いた、コーディングヌクレオチドは大文字)。
逆方向プライマー(配列番号4):
5’‐acgtaagcttTCATTACTTAAAGAACTTAATCTCCGTG‐3’
(HindIII部位に下線を引いた、コーディングヌクレオチドは大文字)。
順方向プライマー(EcoRIクローニング部位とリボソーム結合部位以外)は、5’末端においてフレーム単位でSCRN1遺伝子に融合したN末端MRGSHHHHHHIEGRペプチド伸長物(配列番号2に示す)をコードしている。EcoRI/HindIII消化したPCR断片を、pQE80Lベクター(Qiagen、Hilden, Germany))内に連結する。それに続いて、E.コリ XL‐1ブルー・コンピテント細胞を、作出したプラスミドで形質転換する。配列分析後に、E.コリC600コンピテント細胞を、製造業者の取扱説明書に従って、pQEベクターシリーズのT5プロモーターの制御下のIPTG誘導発現のために作出したプラスミドで形質転換する。
MRGSHHHHHHIEGR‐SCRN1融合タンパク質の精製のために、1Lの一晩誘発した細菌培養物を遠心分離によってペレットにし、そしてその細胞ペレットを溶解バッファー(20mMのリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4、500mMの塩化ナトリウム(NaCl))中に再懸濁する。細胞を、1500barの圧力でフレンチプレスによって破壊する。不溶性物質を遠心分離(25000g、15分間、4℃)によってペレットにし、そして上清をNi‐ニトリロ三酢酸(Ni‐NTA)金属親和性カラムにかける。抗原の適用後に、カラム体積の数倍量の洗浄バッファー(20mMのリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール)で洗浄する。最後に、結合抗原を、20mM‐500mMのイミダゾールによる線形勾配を含む洗浄バッファーを使用して溶出し、そして抗原を含む画分(それぞれ7mL)を紫外吸光検出器によりO.D.280にて特定する。抗原含有画分を、それぞれ貯留し、保管バッファー(75mMのHEPES、pH7.5、100mMのNaCl、1mMのEDTA、6.5%(w/v)のサッカロース)に対して透析し、そして4℃または−80℃にて保存する。
免疫化のためのペプチド免疫原の作出:
SCRN1に特異的なポリクローナル抗体を作製するために、他の既知のヒト・タンパク質に顕著な相同性を示さないペプチド配列を同定する。SCRN1のアミノ酸配列を、Swiss Institute of Bioinformaticsにてアクセス可能なヒト・タンパク質のデータバンクに対してソフトウェアBlastを使用して適用する。アミノ酸配列398〜413は、セセルニン‐2(=SCRN2)または他のヒト・タンパク質に対して顕著な相同性を示さないため、それをSCRN1特異的抗体を作製するために選択する。それぞれの配列を合成し、そして化学的にKLH(=キーホールリンペットヘモシアニン)とコンジュゲートされた、免疫化のための免疫原を得る。
ポリクローナル抗体の作出:
a)免疫化
免疫化のために、1:1の比率でタンパク質溶液(100μg/mlのタンパク質SCRN1または500μg/mlのKLHをSCRN1アミノ酸398〜413からのペプチドに結合させた)と完全フロイントアジュバントとの新しい乳濁液を調製する。各ウサギを、1、7、14および30、60および90日目にその乳濁液1mlで免疫する。採血し、そして得られた抗SCRN1血清を実施例3および4に記載のとおりさらなる実験のために使用する。
b)カプリル酸および硫酸アンモニウムを用いた連続沈殿によるウサギ血清からのIgG(免疫グロブリンG)の精製
1倍量のウサギ血清を、4倍量の酢酸バッファー(60mM、pH4.0)で希釈する。pHを2MのTris塩基で4.5に調整する。カプリル酸(25μl/mlの希釈サンプル)を、激しく撹拌しながら滴下して加える。30分後に、サンプルを遠心分離し(13000×g、30分間、4℃)、ペレットを捨て、そして上清を回収する。上清のpHを2MのTris塩基の添加により7.5に調整し、そして濾過する(0.2μm)。
2Mの終濃度までの4M硫酸アンモニウム溶液の滴下による添加によって、激しい撹拌下、上清中の免疫グロブリンを沈殿させる。沈殿した免疫グロブリンを、遠心分離(8000×g、15分間、4℃)によって回収する。
上清を捨てる。ペレットを10mMのNaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mMのNaCl中に溶解し、そして十分に透析する。透析液を遠心分離し(13000×g、15分間、4℃)、そして濾過する(0.2μm)。
ポリクローナル・ウサギIgGのビオチン化:
ポリクローナル・ウサギIgGを、10mMのNaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mMのNaCl中で10mg/mlにする。1mlのIgGにつき、50μlの溶液ビオチン‐N‐ヒドロキシスクシンイミド(DMSO中、3.6mg/ml)を加える。室温にて30分後に、サンプルを、Superdex200(10mMのNaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mMのNaCl)によりクロマトグラフィー処理する。ビオチン化IgGを含有している画分を回収する。モノクローナル抗体を、同じ手順によりビオチン化した。
ポリクローナル・ウサギIgGのジゴキシゲニン化:
ポリクローナル・ウサギIgGを、10mMのNaH2PO4/NaOH、30mMのNaCl、pH7.5中で10mg/mlにする。1mlのIgG溶液につき、50μlのジゴキシゲニン‐3‐O‐メチルカルボニル‐ε‐アミノカプロン酸‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、(Roche Diagnostics、Mannheim,Germany、カタログ番号1 333 054)(DMSO中、3.8mg/ml)を加える。室温にて30分後に、サンプルを、SuperdexR200(10mMのNaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mMのNaCl)によりクロマトグラフィー処理する。ジゴキシゲニン化IgGを含有している画分を回収する。モノクローナル抗体を、同じ手順によりジゴキシゲニンで標識した。
実施例3
実施例2で作出したポリクローナル抗体を使用したヒト肺癌(LC)組織におけるSCRN1の検出のためのウエスタンブロッティング
腫瘍サンプルと健康対照サンプルからの組織溶解物を、実施例1の「組織サンプル」に記載のとおり調製する。
SDS‐PAGEそしてウエスタンブロッティングを、Invitrogen、Karlsruhe, Germanyの試薬と装置を使用して実施する。試験した各組織サンプルに関しては、15μgの組織溶解物を、還元NuPAGE(登録商標)(Invitrogen)SDSサンプルバッファー中に希釈し、そして95℃にて10分間加熱する。サンプルを、MESランニングバッファー系中、4〜12%のNuPAGE(登録商標)ゲル(Tris‐グリシン)上で泳動する。ゲルで切り出したタンパク質混合物を、Invitrogen XCell II(商標)Blot Module(Invitrogen)およびNuPAGE(登録商標)転写バッファー系を使用してニトロセルロース膜上にブロットする。その膜を、PBS/0.05%のTween‐20中で3回洗浄し、そしてRoti(登録商標)‐Blockブロッキングバッファー(A151.1;Carl Roth GmbH、Karlsruhe Germany)で2時間ブロッキングする。一次抗体であるポリクローナル・ウサギ抗SCRN1血清(作出は実施例2に記載した)を、Roti(登録商標)‐Block中に1:10,000で希釈し、そして膜と一緒に1時間インキュベートした。膜を、PBS/0.05%のTween‐20中で6回洗浄する。特異的に結合した一次ウサギ抗体を、0.5×Roti(登録商標)‐Blockブロッキングバッファー中で10mU/mlに希釈したPODコンジュゲートポリクローナル・ヒツジ抗ウサギIgG抗体で標識する。1時間のインキュベーション後に、膜をPBS/0.05%のTween‐20中で6回洗浄する。結合したPODコンジュゲート抗ウサギ抗体の検出のために、膜を、Lumi‐LightPLUS Western Blotting Substrate(注文番号2015196、Roche Diagnostics GmbH、Mannheim, Germany)と一緒にインキュベートし、そしてオートラジオグラフィーフィルムに感光させる。
SCRN1のシグナル強度は、20人の異なったLC患者から採取した20個の腫瘍組織溶解物のうちの19個で増大している(図1)。よって、実施例1でMALDIによって検出した腫瘍組織中のSCRN1の増大した存在量は、ウエスタンブロッティング分析によって明確に確認される。
実施例4
ヒト血清および血漿サンプルまたは他の体液中のSCRN1の計測のためのELISA
ヒト血清または血漿中のSCRN1の検出のために、サンドイッチELISA法を実施例2の抗体を使用して開発する。抗原の捕獲のために、ペプチド398〜413に対する抗体をビオチンとコンジュゲートさせ、その一方で、SCRN1完全長配列に対する抗体をジゴキシゲニンとコンジュゲートさせる。
アッセイの較正のために、米国立癌研究所のNCI60腫瘍細胞株に含まれるヒト黒色腫細胞株であるLOXIMVI細胞を増殖させ、そして細胞溶解物を較正に使用する。前記溶解物の1:2500希釈物(タンパク質濃度=7.7mg/ml)を、場合により1U/mlに設定した。
ストレプトアビジンでコートした96ウェルマイクロタイタープレートに10mMのホスファート、pH7.4、1%のBSA、0、9%のNaClおよび0.1%のTween20中、10μg/mlのビオチン化抗SCRN1、aa398〜413、ポリクローナル抗体100μlを入れて60分間インキュベートする。インキュベーション後に、プレートを0.9%のNaCl、0.1%のTween20で3回洗浄する。次いで、ウェルに、基準抗原としての組み換えタンパク質(実施例2を参照のこと)の希釈系列または希釈した患者からの血清/血漿/ELFサンプルを入れて一晩インキュベートする。
SCRN1の結合後に、プレートを0.9%のNaCl、0.1%のTween20で3回洗浄する。結合したSCRN1の特異的検出のために、ウェルに10mMのホスファート、pH7.4、1%のBSA、0、9%のNaClおよび0.1%のTween20中、10μg/mlのジゴキシゲニン化抗SCRN1ポリクローナル抗体100μlを入れて60分間インキュベートする。その後、プレートを3回洗浄して、非結合抗体を取り除いた。次のステップで、ウェルに10mMのホスファート、pH7.4、1%のBSA、0.9%のNaClおよび0.1%のTween20中、50mU/mlの抗ジゴキシゲニン‐PODコンジュゲート(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim, Germany、カタログ番号1633716)を入れて60分間インキュベートする。それに続いて、プレートを同じバッファーで3回洗浄する。抗原‐抗体複合体の検出のために、ウェルに100μlのABTS溶液(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim, Germany、カタログ番号11685767)を入れてインキュベートし、そしてODを、ELISAリーダーを用いて30〜60分後に405nmにて計測する。
実施例5
肺癌(LC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表3に示したUICC分類を有する365人の十分に特徴づけされた肺癌患者(146人がアデノCA、87人が扁平上皮細胞CA、44人が小細胞CA、88人が肺の他のCA)から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表3のLCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.85のAUCを有する(図2)。
実施例6
頭部/頚部癌(H/NC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表4に示したUICC分類を有する30人の十分に特徴づけされた頭部/頚部癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のH/NCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.86のAUCという結果をもたらす(図3)。
実施例7
子宮内膜癌(EC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表5に示したUICC分類を有する23人の十分に特徴づけされた子宮内膜癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のECサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.84のAUCという結果をもたらす(図4)。
実施例8
卵巣癌(OC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表6に示したUICC分類を有する42人の十分に特徴づけされた卵巣癌(OC)患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のOCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.83のAUCという結果をもたらす(図5)。
実施例9
悪性黒色腫(MM)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表7に示したUICC分類を有する16人の十分に特徴づけされた悪性黒色腫患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のMMサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.82のAUCという結果をもたらす(図6)。
実施例10
乳癌(BC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表8に示したUICC分類を有する47人の十分に特徴づけされた乳癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表5のBCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.77のAUCという結果をもたらす(図6)。
実施例11
子宮頚癌(CC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表9に示したUICC分類を有する20人の十分に特徴づけされた子宮頚癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のCCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.74のAUCという結果をもたらす(図8)。
実施例12
膵臓癌(PAC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表10に示したUICC分類を有する49人の十分に特徴づけされた膵臓癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のPACサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.70のAUCという結果をもたらす(図9)。
実施例13
結腸直腸癌(CRC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表11に示したUICC分類を有する50人の十分に特徴づけされた大腸癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表4のCRCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.67のAUCという結果をもたらす(図10)。
実施例14
膀胱癌(BLC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表12に示したUICC分類を有する50人の十分に特徴づけされた膀胱癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のPCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.65のAUCという結果をもたらす(図11)。
実施例15
腎臓癌(KC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表13に示したUICC分類を有する25人の十分に特徴づけされた子宮内膜癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のKCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.60のAUCという結果をもたらす(図12)。
実施例16
前立腺癌(PC)に対する血清マーカーとしてのSCRN1
表14に示したUICC分類を有する50人の十分に特徴づけされた前立腺癌患者から採取したサンプルを使用する。
Figure 0005731488
表6のPCサンプルのSCRN1のレベルは、明らかな健常者(=対照コホート)から採取した50個の対照サンプルとの比較により評価され、そして0.58のAUCという結果をもたらす(図13)。
実施例17
上皮内層液(ELF)中のSCRN1‐気管支鏡によるマイクロサンプリング
気管支鏡によるマイクロサンプリング(BMS)は、主に非侵襲性の様式による小さな肺結節付近での上皮内層体液(ELF)の回収の可能性を提供する。それに続いて、悪性小結節を特定するために、ELF中の腫瘍マーカーの濃度を計測することが可能である。患者に特有のそれぞれの腫瘍マーカーのベースライン濃度は、対側肺におけるELFのサンプリングによって得られる。
BMSプローブ(Olympus Medical Systems Corp.、Tokyo, Japan、カタログ番号:BC-402C)は、気管支鏡を通して肺の中に挿入され、ステンレス製のガイドに取り付けられた外側のポリエチレン製のさやおよび内側のコットンプローブから成る。内側のプローブを小結節の近くまで進め、そしてBMSを数秒間実施する。その後、内側のプローブを外側にさやの中に引っ込め、そして両デバイスを同時に引っ込める。コットンチップを切取り、そして−80℃にてそのまま冷凍する。測定のために、ELFを、コットンチップから溶出し、その後に分析することができた。SCRN1の濃度を、実施例4に記載のELISAを用いてELF中で測定する。
SCRN1は、コンピューター断層撮影によって検出される肺腫瘤がある患者からのELF中で検出できた。表15で使用している略語は、PM(=肺腫瘤のある肺)およびCl(=対側肺)である。最終的には、癌に対する診断は、表中に示されているものが得られた。
Figure 0005731488
配列の説明
配列番号1は、図14によるヒトSCRN1タンパク質;SwissProtデータベース受入番号:Q12765のアミノ酸配列を示す。
配列番号2は、合成されたペプチド伸長を示す。
配列番号3は、合成された順方向プライマーを示す。
配列番号4は、合成された逆方向プライマーを示す。

Claims (12)

  1. 癌の危険性にある対象由来の体液サンプル中の癌をインビトロで評価する方法であって、
    (a)体液中のセセルニン‐1タンパク質(SCRN1)および/またはその断片の濃度を計測し、
    (b)ステップ(a)で得られた結果を、正常個体由来の体液サンプルを用いて得られた結果と比較し、それによって、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度の増大が癌を示すと評価する、方法。
  2. 前記体液中の1又は複数の他の癌マーカーの濃度を計測することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. サンドイッチ免疫アッセイである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記癌が、肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓および前立腺の癌からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記の1もしくは複数の他のマーカーが、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される、請求項に記載の方法。
  6. 癌の危険性にある対象由来の体液サンプル中の癌をインビトロで評価する方法であって、
    (a)SCRN1タンパク質および/またはその断片に対する抗体を用いて体液中のセセルニン‐1タンパク質(=SCRN1)および/またはその断片の濃度を計測し、
    (b)ステップ(a)で得られた結果を、正常個体由来の体液サンプルを用いて得られた結果と比較し、それによって、SCRN1タンパク質および/またはその断片の濃度の増大が癌を示すと評価する、方法。
  7. 1もしくは複数の他のマーカーがさらに使用され、CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される、請求項に記載の方法。
  8. 前記癌が、肺、卵巣、子宮内膜、黒色腫、乳房、頭頚部、膀胱、膵臓、結腸、子宮頚部、腎臓および前立腺の癌からなる群から選択される、請求項またはに記載の方法。
  9. SCRN1タンパク質および/またはその断片を特異的に計測するのに必要とされる試薬を含む、請求項1に記載の方法を実施するためのキット。
  10. 1もしくは複数の他の癌マーカーを特異的に計測するのに必要とされる試薬をさらに含む、請求項に記載キット。
  11. (i)SCRN1、ならびに(ii)CEA、NSE、CA19‐9、CA125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗p53自家抗体、セプラーゼおよびDPPIV/セプラーゼから成る群から選択される1もしくは複数の他のマーカーを特異的に計測する請求項1に記載の方法を実施するための、SCRN1に対する抗体および該1以上のマーカーが固体支持体上に固定されているアレイ。
  12. 前記計測を実施するための補助試薬をさらに含む、請求項11に記載のアレイ。
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