JP5731209B2 - 石鹸製造廃液の処理方法および処理装置 - Google Patents
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Description
ここで、酸発酵を行う酸生成菌としては、通常の嫌気性処理で用いられる種々のものを使用可能であり、たとえば、Bacillus属、Clostridium属、Lactobacillus属、Bacteroides属、Vibrio属、Staphylococcus属、Micrococcus属、Butyrivibrio属、Fusobacterium属、Enterobacter属、Streptococcus属、Peptococcus属等の菌体が例示される。たとえば、Clostridium属菌では、C.formicoaacetium,C.butyricum ATCC 6014,C.thermoacetium,C.thermocellum,C.thermohydro−sulfuricum等;Lactobacillus属菌では、L.casei IFO 3914、L.brevis IFO 13109等の菌が用いられることが知られている。これら微生物は、たとえば、下水処理場の下水汚泥等に含まれる菌体をそのまま利用することができる。
上記目的を達成するための本発明の石鹸製造廃液の処理方法の特徴構成は、
高濃度塩化ナトリウムを含有し高pHの有機廃液としての石鹸製造における塩析工程の廃液を、低濃度塩化ナトリウム含有排水としての石鹸製造における工程において冷却水や洗浄排水として発生する排水で希釈する希釈工程、
前記希釈工程で塩化ナトリウム濃度が希釈された有機廃液を、酸発酵する酸発酵工程、
前記酸発酵工程で酸発酵された有機廃液を、pH5.5〜8.5に中和する中和工程、
前記中和工程でpH5.5〜8.5となった有機廃液を、メタン発酵するメタン発酵工程、を順に行う点にある。
希釈工程により、高濃度塩化ナトリウムを含有し、高pHの有機廃液を希釈すると、微生物の生育に好ましくない高い塩化ナトリウム濃度(以下単に塩濃度と称する)を微生物がメタン発酵活性を示す濃度に低下させることができる。
また、前記希釈部には、低濃度塩化ナトリウム含有排水を供給する。
高濃度塩化ナトリウム含有、高pHの有機廃液の発生する環境では、低濃度塩化ナトリウム含有排水も同時に発生する場合が多い。これらの有機廃液および有機排水を組み合わせることにより、排水中の有機物を効率よくメタン発酵処理部に供給することができるようになり、排水に含まれる有機物もあわせて有効に利用しながら有価物を生産することができるようになり、2種類の有機廃液、有機排水を同時に処理できることになって効率がよい。
また、前記低濃度塩化ナトリウム含有排水が、石鹸製造における工程において冷却水や洗浄排水として発生する排水である。
石鹸製造業においては、各工程における冷却水や洗浄排水として塩濃度の低い有機排水が発生する。このような石鹸製造設備の排水は、有機物を高濃度に含有しつつ、塩濃度が低く、pHも中性に近いので、上記低濃度塩化ナトリウム含有排水として前記希釈部に供給するのに適する。
また、前記有機廃液が、石鹸製造における塩析工程の廃液である。
石鹸製造業においては、塩析工程において高濃度塩化ナトリウム含有、高pHの有機廃液が発生し、かつ、高濃度の有機物を含有するので、上記有機廃液処理装置で先述の有機廃液処理方法により処理する廃液として好適である。尚、石鹸製造業において、各工程における冷却水や洗浄排水として発生する塩濃度の低い有機排水と組み合わせると、きわめて高効率で石鹸製造設備の排水を有効に利用しながら有価物を生産することができる。
また、前記メタン発酵工程でメタン発酵された有機廃液を、さらに好気性菌により分解する好気処理工程を行うことが好ましい。
メタン発酵工程において有機物をメタン発酵させてメタンガスに転換したとしても、実際には処理しきれなかった有機物などが有機廃液中に残存することになる。そこで、これらを好気性菌によって分解することによって、残存有機物を二酸化炭素と水に転換してしまえば、環境負荷の少ない比較的清浄な有機排水のみを排出すればよいことになる。したがって、好気処理工程により、有機廃液をさらに高度に処理することができる有機廃液処理装置を提供することができた。
また、前記酸発酵工程で酸発酵された有機廃液に、好気処理工程で得られた有機廃液を混合して、前記中和工程を行うことができる。
酸発酵工程を経た有機廃液は、通常、酸性である。一方、好気処理工程を経た有機廃液は酸発酵工程を経た有機廃液を中和するために添加したアルカリ等により、通常アルカリ性化している。そこで、前記中和工程において、酸発酵工程を経た酸性の有機廃液を中和するのに、前記好気処理工程で得られた有機廃液を用いると、中和工程で用いるべきアルカリの量を減量しつつ中和工程を行えるとともに、外部に放流される好気処理工程を経た有機廃液の液性を、より無害化すべく中和処理するような場合にもその中和処理に要する酸性物質量を少なくすることができる。
また、前記酸発酵工程で酸発酵された有機廃液に、酸発酵前の有機廃液を混合して前記中和工程を行うことができる。
先述のように酸発酵工程を経た有機廃液は、通常、酸性である。これに対し、酸発酵前の有機廃液は、高pHである。したがって、前記中和工程において、酸発酵工程を経た酸性の有機廃液を中和するのに、前記酸発酵前の有機廃液を用いることによっても、中和工程で用いるべき酸の量を減量しつつ中和工程を行える。尚、このとき、前記酸発酵前の有機廃液としては、希釈前のものであっても、希釈後のものであってもかまわないが、後続の工程での塩濃度の影響を避けるためには、希釈後の有機廃液を用いることが好ましい。尚、ここで用いられる有機廃液は、中和工程後に酸発酵を経ることなくメタン発酵工程に供されることになるので、メタン発酵工程におけるpH変動を考慮して、使用量を制限して設定することが望ましい。
また、前記希釈工程において、有機廃液を塩化ナトリウム濃度が2.0%以下になるように希釈することが好ましい。
通常のUASBで用いられる嫌気性菌は、塩濃度の高い環境下であまり高い活性を示さないが、本発明者らの検討の結果、2.0%以下程度の低塩濃度環境では、十分メタン発酵活性を示すことが後述の実施例より明らかになっている。そのため、前記希釈部において有機廃液を塩化ナトリウム濃度が2.0%以下になるように希釈すると、高い活性のUASBでメタン発酵工程を行い、メタンを生成することができるようになる。
上記目的を達成するための本発明の石鹸製造廃液の処理装置の特徴構成は、
高濃度塩化ナトリウムを含有し高pHの有機廃液としての石鹸製造における塩析工程の廃液を、低濃度塩化ナトリウム含有排水としての石鹸製造における工程において冷却水や洗浄排水として発生する排水で希釈する希釈部、
前記希釈部で塩化ナトリウム濃度が希釈された有機廃液を、酸発酵する酸発酵部、
前記酸発酵部で酸発酵された有機廃液を、pH5.5〜8.5に中和する中和処理部、
前記中和処理部でpH5.5〜8.5となった有機廃液を、メタン発酵するメタン発酵部、
を設け、前記メタン発酵部で得られるメタンガスを燃料として消費するガス消費部を設けた点にある。
上記有機廃液処理装置によると、先述の有機廃液処理方法における希釈工程を希釈部において行うことができ、酸発酵工程を酸発酵部で行うことができ、中和工程を中和処理部で行うことができ、メタン発酵処理をメタン発酵部で行うことができる。すなわち、有機廃液処理装置によると、先述の有機廃液処理方法における高効率な有機廃液処理が行える。また、ガス消費部を設けてあるから、このようにして生成したメタンガスを、有効に消費することができる。
また、前記希釈部に低濃度塩化ナトリウム含有排水を供給する。
高濃度塩化ナトリウム含有、高pHの有機廃液の発生する環境では、低濃度塩化ナトリウム含有排水も同時に発生する場合が多い。これらの有機廃液および有機排水を組み合わせることにより、排水中の有機物を効率よくメタン発酵処理部に供給することができるようになり、排水に含まれる有機物もあわせて有効に利用しながら有価物を生産することができるようになり、2種類の有機廃液、有機排水を同時に処理できることになって効率がよい。
また、前記低濃度塩化ナトリウム含有排水が、石鹸製造における工程において冷却水や洗浄排水として発生する排水である。
たとえば、石鹸製造業においては、各工程における冷却水や洗浄排水として塩濃度の低い有機排水が発生する。このような石鹸製造設備の排水は、有機物を高濃度に含有しつつ、塩濃度が低く、pHも中性に近いので、上記低濃度塩化ナトリウム含有排水として前記
希釈部に供給するのに適する。
また、前記有機廃液が、石鹸製造における塩析工程の廃液である。
石鹸製造業においては、塩析工程において高濃度塩化ナトリウム含有、高pHの有機廃液が発生し、かつ、高濃度の有機物を含有するので、上記有機廃液処理装置で先述の有機廃液処理方法により処理する廃液として好適である。尚、石鹸製造業において、各工程における冷却水や洗浄排水として発生する塩濃度の低い有機排水と組み合わせると、きわめて高効率で石鹸製造設備の排水を有効に利用しながら有価物を生産することができる
また、前記メタン発酵部が、UASB法によりメタン発酵を行うUASB反応槽を備えることが好ましい。
生物処理法としては、嫌気処理法で一般にメタンを生成することができるので、メタン発酵部としていずれの形態を採用してもかまわないが、メタン発酵部としてUASB法を採用すると、有機廃液中の有機物量に対するメタン転換能力が高く、かつ、反応処理速度も速いので好適である。
模擬有機廃液および模擬有機排水として、下記性状の有機廃液および有機排水を用意した。
CODCr:130000(mg/L)
塩濃度 :9.9(%)
pH :12
CODCr:500(mg/L)
塩濃度 :0(%)
pH :7.2
上記有機廃液に硫酸を加えてpH7.5に中和した後、上記有機排水と容量比1:9となるように混合した。得られた混合液8mLを容積200mLのバイアル瓶に採り、UASB反応槽の汚泥10mLを加え、気相部分を窒素で置換した上で密封し、55℃で13日間培養した。培養後のバイアル瓶気相部分のガスを採取し、量、メタンガス濃度を測定した結果、添加したCODの99.9%がメタンに転換されたことが明らかになった。
実験1における中和後の有機廃液に有機排水を容量比で1:4となるように混合した混合液4mLを容積200mLのバイアル瓶に採った以外は実験1と同様の実験を行った。その結果、添加したCODの90.1%がメタンに転換されたことが明らかになった。
実験1における中和後の有機廃液に有機排水を容量比で1:1となるように混合した混合液1.6mLを容積200mLのバイアル瓶に採った以外は実験1と同様の実験を行った。その結果、添加したCODの63.7%がメタンに転換されたことが明らかになった。
実験1における中和後の有機廃液のみ0.8mLを容積200mLのバイアル瓶に採った以外は実験1と同様の実験を行った。その結果、添加したCODの28.1%がメタンに転換されたことが明らかになった。
〔実機運転例〕
図1に示した有機廃液処理装置に、表1に示す石鹸製造業における有機廃液および有機排水を供給した。
1a :有機廃液
10 :タンク
2 :有機排水貯留部
2a :有機排水
20 :タンク
3 :希釈部
3a :有機廃液
3b :有機廃液の一部
30 :希釈槽
31 :バイパス路
4 :酸発酵部
4a :有機廃液
40 :酸発酵槽
41 :供給部
42 :排出部
5 :中和処理部
5a :有機廃液
5b :アルカリ
50 :反応槽
51 :供給部
52 :アルカリ添加部
53 :廃液排出部
54 :原液供給部
55 :排水返送部
6 :メタン発酵部
6a :有機廃液
6b :メタンガス
6c :有機廃液の一部
60 :UASB反応槽
60a :グラニュール
61 :スラッジベッド
62 :有機廃液供給部
63 :分離板
64 :オーバーフロー部
65 :ガス回収部
66 :循環処理液循環路
7 :ガス消費部
7a :可燃性ガス
7b :蒸気や動力
70 :燃料ガス供給部
8 :好気処理部
8a :排水
8b :排水の一部
81 :返送路
Claims (7)
- 高濃度塩化ナトリウムを含有し高pHの有機廃液としての石鹸製造における塩析工程の廃液を、低濃度塩化ナトリウム含有排水としての石鹸製造における工程において冷却水や洗浄排水として発生する排水で希釈する希釈工程、
前記希釈工程で塩化ナトリウム濃度が希釈された有機廃液を、酸発酵する酸発酵工程、
前記酸発酵工程で酸発酵された有機廃液を、pH5.5〜8.5に中和する中和工程、
前記中和工程でpH5.5〜8.5となった有機廃液を、メタン発酵するメタン発酵工程、を順に行う石鹸製造廃液の処理方法。 - 前記メタン発酵工程でメタン発酵された有機廃液を、さらに好気性菌により分解する好気処理工程を行う請求項1に記載の石鹸製造廃液の処理方法。
- 前記酸発酵工程で酸発酵された有機廃液に、好気処理工程で得られた有機廃液を混合して、前記中和工程を行う請求項2に記載の石鹸製造廃液の処理方法。
- 前記酸発酵工程で酸発酵された有機廃液に、酸発酵前の有機廃液を混合して前記中和工程を行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の石鹸製造廃液の処理方法。
- 前記希釈工程において、有機廃液を塩化ナトリウム濃度が2.0%以下になるように希釈する請求項1〜4のいずれか一項に記載の石鹸製造廃液の処理方法。
- 高濃度塩化ナトリウムを含有し高pHの有機廃液としての石鹸製造における塩析工程の廃液を、低濃度塩化ナトリウム含有排水としての石鹸製造における工程において冷却水や洗浄排水として発生する排水で希釈する希釈部、
前記希釈部で塩化ナトリウム濃度が希釈された有機廃液を、酸発酵する酸発酵部、
前記酸発酵部で酸発酵された有機廃液を、pH5.5〜8.5に中和する中和処理部、
前記中和処理部でpH5.5〜8.5となった有機廃液を、メタン発酵するメタン発酵部、
を設け、前記メタン発酵部で得られるメタンガスを燃料として消費するガス消費部を設けた石鹸製造廃液の処理装置。 - 前記メタン発酵部が、UASB法によりメタン発酵を行うUASB反応槽を備えるものである請求項6に記載の石鹸製造廃液の処理装置。
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