JP5730418B2 - 翼体及びガスタービン - Google Patents
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Description
このような動翼は、高温であるガスタービンで長時間運転に耐える寿命が不足することから、使用することができないという問題がある。
また、本発明の別の目的は、動翼の翼高さを大きくしたとしても十分な寿命を確保することができ、エネルギー回収率を向上させることができるガスタービンを提供することにある。
すなわち、本発明に係る翼体は、凹面状の正圧面と凸面状の負圧面とが前縁と後縁とを介して連続してなる翼型断面を有し、この翼型断面に交差する翼高さ方向に延在し、冷却流体の流路となる冷却孔が前記前縁から前記後縁に向けて複数配列された翼体であって、前記複数の冷却孔は、必要な肉厚を確保可能な範囲において最も前記前縁側に形成された第一の基準冷却孔と最も前記後縁側に形成された第二の基準冷却孔とを有し、前記負圧面側よりも前記正圧面側のほうが冷却されるように、前記第一の基準冷却孔と第二の基準冷却孔との間において、他の前記冷却孔が形成されており、前記他の冷却孔の全てが、基端から先端まで前記翼高さ方向の全てにおいてキャンバーラインよりも前記正圧面側にのみ形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、上記いずれかの翼体を用いたので、動翼の翼高さを大きくしたとしても長時間運転に耐える十分な寿命を確保することができ、エネルギー回収率を向上させることができる。
(第一実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン1の概略構成を示す半断面図である。図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮空気cを生成する圧縮機2と、圧縮機2から供給される圧縮空気cに燃料を供給して作動流体である燃焼ガスG1を生成する複数の燃焼器3と、一組一段となったタービン静翼10及びタービン動翼6を四段有し、燃焼器3から供給される燃焼ガスG1により回転動力を発生させるタービン4とを備えている。
このタービン4のタービンケーシング5の後端部には、後側に向けて開口した排気室8が連結されている。この排気室8には、タービン静翼10及びタービン動翼6を通過した燃焼ガスG1の動圧を静圧に変換する排気ディフューザ8aが備えられている。
図2に示すように、ロータ7は、その外周に第1段〜第4段のタービン動翼6A〜6Dを固定するロータディスク7A〜7Dを備えている。そして、この第1段のロータディスク7Aの上流側には、シールディスク11が同軸に接続されている。このシールディスク11には、上流側からの圧縮空気cの一部を、各タービン動翼6A〜6Dに向かって供給するために貫通したディスクホール11aが、その軸線を中心として互いに等角度間隔をおいて複数形成されている。
図3に示すように、タービン動翼6Dは、凹面状の正圧面21と凸面状の負圧面22とが前縁20aと後縁20bとを介して連続してなる翼型断面となっており、翼高さHが比較的に大きく形成されたものである。このタービン動翼6Dには、上記翼型断面に交差する翼高さ方向に延在し、圧縮空気cの流路となる冷却孔25が複数形成されている。
これら基準冷却孔25aと基準冷却孔25kとは、正圧面21及び負圧面22までの肉厚が所定の厚み以上となる範囲において、それぞれ前縁20aと後縁20bとに最も近接する位置に形成されている。
なお、所定の厚みとは、遠心力やガス圧等に対する必要強度、放電加工や鋳造、鍛造、機械加工等の加工精度、燃焼ガスG1や冷却空気による熱負荷等の設計条件によって定められたものである。
具体的には、冷却孔25は、相互に隣接する冷却孔25(25a〜25k)の密度が中央領域T3で疎(冷却孔の間隔が大)となり、前領域T1及び後領域T2で密(間隔が小)となるように形成されている。
なお、前領域T1,後領域T2におけるL/LEは、0.5よりも小さく設定することが可能であるが、相互に隣接する冷却孔25eが連通しないように(L/LE=0)、0よりも大きくすることが望ましい。
また、中央領域T3におけるL/LEは、3よりも大きくすることが可能であるが、中央領域T3が過熱状態となることを防ぐために、10以下に設定することが望ましい。
図5に示すように、前領域T1に含まれる一番目の冷却孔25a(第一の基準冷却孔25a)から五番目の冷却孔25eまでの各中心間距離L、及び、七番目の冷却孔25gから十一番目の冷却孔25k(第二の基準冷却孔25k)までの各中心間距離Lが、孔径d1に対して、3〜8に設定されている(3≦L/d≦8)。また、中央領域T3に含まれる五番目の冷却孔25eから七番目の冷却孔25gまでの各中心間距離Lが、孔径d1に対して、9〜20に設定されている(9≦L/d≦20)。
なお、前領域T1,後領域T2におけるL/dは、3よりも小さく設定することが可能であるが、相互に隣接する冷却孔25eが連通しないように(L/d=1)、2以上とすることが望ましい。
また、中央領域T3におけるL/dは、20よりも大きくすることが可能であるが、中央領域T3が過熱状態となることを防ぐために、50以下に設定することが望ましい。
まず、図2に示すように、圧縮機2から抽気されて供給される圧縮空気cのうち一部が、回転するシールディスク11に向かって供給され、各ディスクホール11aを通り抜けてから第1段のロータディスク7Aへと供給される。そして、この供給された圧縮空気cは、順次ディスクホール7A2〜7C2を経て、ロータディスク7Dのラジアルホール7D1に到達する。
一方、中央領域T3においては、冷却孔25の密度が小さく単位面積当たりにおいて、冷却孔25の開口面積が少なく、圧縮空気cの流量が少なくなる。タービン動翼6Dから熱を吸熱した圧縮空気cは、先端6bから流出して燃焼ガスG1に合流する。
また、図6の横軸において、0が前縁(20a)を、1及び−1が後縁(20b)を、+が正圧面21を、−が負圧面22をそれぞれ示している。
ここで、図6に示すように、タービン動翼6D´においては、正圧面及び負圧面において温度が上昇せずに、概略一定であり、翼表面周りにおける前縁及び後縁の高温部と中央部との温度差がΔT2となっている。
一方、図6に示すように、タービン動翼6Dの正圧面21及び負圧面22においては、温度が上昇しており、翼表面周りにおける前縁及び後縁の高温部と中央部との温度差がΔT1となっており、ΔT2と比較して、温度差が小さくなっている。
従って、熱変形に起因する曲げ応力を効果的に抑止することができる。
また、等間隔中心間距離LEに対して、実際の中心間距離Lが、前領域T1及び後領域T2において0.5以上1以下、中央領域T3において1以上3以下の比率で形成されているので、前領域T1及び後領域T2において強度等に影響を与えない範囲で効果的に冷却効果を高めることができる一方、中央領域T3の冷却効果を適度に確保する。これにより、タービン動翼6Dのコード長方向における温度分布を容易に均一化させることが可能となる。
また、第一実施形態では、圧縮空気cを冷却空気としたが、この圧縮空気cを冷却する機構を介して冷却孔25に供給する構成としてもよいし、圧縮機2に代えて外部から冷却空気を供給する構成にしてもよい。
また、第一実施形態では、タービン動翼6Dに本発明を適用したが、タービン動翼6A〜6Cに適用してもよく、タービン静翼10に適用してもよい。また、圧縮機静翼2c及び圧縮機動翼2dに本発明を適用してもよい。
また、第一実施形態では、L/d及びL/LEに関する望ましい数値について述べたが、上述した数値に限定する趣旨ではない。例えば、翼の翼高さが大きくなるに従って中央領域T3におけるL/d及びL/LEの上限の数値は大きくなる。
図7は、本発明の第二実施形態に係るタービン動翼6Eの要部断面図であって、第一実施形態の図3に相当する図である。なお、図1から図6と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
また、本第二実施形態のように、冷却孔25b,25c,25i,25jの全てが同じ孔径d2で形成される必要はなく、例えば、冷却孔25b,25jを孔径d2とし、冷却孔25c,25iの孔径は孔径d2より大きくしてもよい。
図8は、本発明の第三実施形態に係るタービン動翼6Fの要部断面図であって、第一実施形態の図3に相当する図である。なお、図1から図7と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
従って、前領域T1及び後領域T2と、中央領域T3との温度差をさらに小さくすることができ、タービン動翼6Fのコード長方向における温度分布をさらに容易に均一化することができる。
また、冷却孔25e〜25gの全てが同じ孔径d3で形成される必要はなく、例えば、冷却孔25e,25gを孔径d3とし、冷却孔25fの孔径は孔径d3より小さくてもよい。
図9は、本発明の第四実施形態に係るタービン動翼6Gの外観構成図である。なお、図1から図8と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
このタービン動翼6Gは、冷却孔25b〜25jが、基端6aから先端6bまでの翼高さH(径方向)の全てにおいて延在している。
なお、各冷却孔25は、図9に示すように、翼根底面6dから基端6aまでは、径方向に略平行に延在し、基端6aから先端6bに向かってコード長方向の中央側に向かうようにそれぞれ傾きを持って延在している。
また、この構成によれば、コード長が翼高さ方向の基端6a側から先端6b側に向かって次第に小さくなるタービン動翼6Gにおいて、全ての冷却孔25を先端6bまで貫通した場合に先端6b側において隣接する冷却孔25が接近しすぎて必要な肉厚の確保が困難となったり、冷却孔25の孔径を十分大きくすることができなくなったりすることを回避することができる。よって、各翼高さのコード長に合わせて冷却孔25の数や孔径を最適化して必要な肉厚を確保しつつ、熱変形や熱応力、曲げ応力を緩和することができる。
従って、熱変形に起因する曲げ応力を効果的に抑止することができる。
また、冷却孔25a,25kに限定されることはなく、他の冷却孔25b〜25jのうち少なくとも一部を正圧面21及び/または負圧面22に貫通させてもよい。
また、この第四実施形態では、翼高さ方向における貫通孔の位置を1/3程度としたが、1/3〜1/2程度とすると、放電加工の加工誤差による振れ幅を小さいものとし、かつ、熱変形を効果的に抑止することができる。
図10は、本発明の第五実施形態に係るタービン動翼6Hの要部断面図であって、第一実施形態の図3に相当する図である。なお、図1から図9と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
従って、熱変形に起因する曲げ応力をより効果的に抑止することができる。
また、第五実施形態では、冷却孔25b〜25jを、キャンバーラインPよりも正圧面21側に形成したが、一部のみをキャンバーラインPよりも正圧面21側に形成してもよい。
図11は、本発明の第六実施形態に係るタービン動翼6Iの概略構成斜視図であり、図12は、図11におけるII矢視図である。なお、図1から図10と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
図12に示すように、このようなタービン動翼6Iは、取付基準線Q1に対して翼高さ方向が正圧面21側に角度α傾いている(一点鎖線Q2に沿った方向)。
換言すると、タービン動翼6Iの各断面毎の曲げ変形量、および、各曲げ変形量を翼高さ方向に積み重ねた結果、負圧面22側に倒れるタービン動翼6Iの傾斜角を予め計算や実験によって求めておき、この傾斜角をαとして取付基準線Q1に対してタービン動翼6Iを逆の正圧面21側に傾斜させる(一点鎖線Q2に沿った方向)。これにより、運転中のタービン動翼6Iに生じる負圧面22側への曲げ変形により、傾斜角αは略0度、すなわち、タービン動翼6Iは取付基準線Q1に沿った方向に戻る。よって、運転中の遠心力の働く方向にタービン動翼6Iは略一致するため、遠心力により動翼6Iの基端6a近傍に主に生じる曲げ応力を緩和できると共に、所望の性能を発揮できる設計点での所定の位置(取付基準線Q1方向に沿った位置)にタービン動翼6Iを配置することができる。
Claims (4)
- 凹面状の正圧面と凸面状の負圧面とが前縁と後縁とを介して連続してなる翼型断面を有し、この翼型断面に交差する翼高さ方向に延在し、冷却流体の流路となる冷却孔が前記前縁から前記後縁に向けて複数配列された翼体であって、
前記複数の冷却孔は、必要な肉厚を確保可能な範囲において最も前記前縁側に形成された第一の基準冷却孔と最も前記後縁側に形成された第二の基準冷却孔とを有し、
前記負圧面側よりも前記正圧面側のほうが冷却されるように、
前記第一の基準冷却孔と第二の基準冷却孔との間において、他の前記冷却孔が形成されており、
前記他の冷却孔の全てが、基端から先端まで前記翼高さ方向の全てにおいてキャンバーラインよりも前記正圧面側にのみ形成されていることを特徴とする翼体。 - 凹面状の正圧面と凸面状の負圧面とが前縁と後縁とを介して連続してなる翼型断面を有し、この翼型断面に交差する翼高さ方向に延在し、冷却流体の流路となる複数の冷却孔が前記前縁から前記後縁に向けて一列に配列された翼体であって、
前記複数の冷却孔は、必要な肉厚を確保可能な範囲において最も前記前縁側に形成された第一の基準冷却孔と最も前記後縁側に形成された第二の基準冷却孔とを有し、
前記負圧面側よりも前記正圧面側のほうが冷却されるように、
前記第一の基準冷却孔と第二の基準冷却孔との間において、他の前記冷却孔が形成されており、
前記他の冷却孔の全てが、基端から先端まで前記翼高さ方向の全てにおいてキャンバーラインよりも前記正圧面側に形成されていることを特徴とする翼体。 - 複数の前記他の冷却孔は、前記第一の基準冷却孔が含まれる前領域と、前記第二の基準冷却孔が含まれる後領域との間に位置する中央領域の内側に位置する程、キャンバーラインよりも前記正圧面側に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の翼体。
- 請求項1から3のうちいずれか一項に記載の翼体を用いたことを特徴とするガスタービン。
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