以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド2と、当該シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するとともに上記ピストンロッド2に軸方向に移動自在に連結されるピストン3と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路4と、ピストンロッド2に連結されるハウジング5と、当該ハウジング5内に移動自在に挿入されてピストンロッド2に対し軸方向に移動可能であってハウジング5内を一方室6と他方室7とに区画するとともにピストン3に連結される可動隔壁8と、一方室6を伸側室R1へ連通する第一通路9と、他方室7を圧側室R2へ連通する第二通路10とを備えて構成され、車両における車体と車軸との間に介装されて減衰力を発生し車体の振動を抑制するものである。なお、伸側室R1とは、車体と車軸が離間して緩衝器Dが伸長作動する際に圧縮される室のことであり、圧側室R2とは、車体と車軸が接近して緩衝器Dが収縮作動する際に圧縮される室のことである。
そして、伸側室R1および圧側室R2には作動油等の液体が充満されている。液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。
また、図示はしないが、ピストンロッド2は、シリンダ1の上端に設けたロッドガイドによって摺動自在に軸支されていて、シリンダ1の上端から外方へ突出されている。このように、緩衝器Dは、いわゆる片ロッド型に設定されているため、図示はしないが、緩衝器Dが気体室やリザーバを備えており、緩衝器Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積を補償するようになっている。なお、緩衝器Dは、片ロッド型ではなく、両ロッド型に設定されてもよい。
以下、各部について詳細に説明する。まず、ピストンロッド2は、その図1中下端側に小径部2aが形成され、小径部2aの先端側には小径部2aよりもさらに小径な螺子部2bが形成されている。また、ピストンロッド2には、小径部2aの上端から螺子部2bの手前までにかけて軸方向に沿って縦溝2cが設けられている。
このピストンロッド2の小径部2aの外周には、可動隔壁8が摺動自在に装着されている。可動隔壁8は、ピストンロッド2の小径部2aの外周に摺動自在に装着される筒状のスライダ11と、スライダ11の外周に設けられる隔壁部12とを備えている。
スライダ11は、図1中上端の外周に螺子部11aを備え、この螺子部11aには、ピストンナット13が螺着される。また、スライダ11は、下端外径が大径に設定された大径部11bを備えていて、この大径部11bの外周に隔壁部12が設けられている。隔壁部12は、大径部11bの外周に設けたフランジ状の鍔部12aと、この鍔部12aの外周に設けた摺接筒12bとを備えている。
また、スライダ11は、内周にピストンロッド2に設けた縦溝2cに対向可能な環状溝11cを備えていて、この環状溝11cは、可動隔壁8がピストンロッド2に対して軸方向となる図1中上下方向へストロークしても常に縦溝2cに対向して当該縦溝2cとの連通が確保されるようになっている。また、スライダ11は、その外周であって大径部11bのすぐ上から開口して環状溝11cに通じる絞り弁としてのオリフィス孔11dを備えている。なお、この場合、縦溝2cの図1中下方の終端は、可動隔壁8がピストンロッド2に対して図1中最上方へストロークしてもスライダ11の下端より下方に突出することがないようになっていて、また、縦溝2cの図1中上方の終端は、可動隔壁8がピストンロッド2に対して図1中最上方へストロークしてもスライダ11の上端より上方に臨んで伸側室R1との連通が断たれることがないようになっている。
そして、このスライダ11の外周には、筒状のスペーサ30、環状のバルブストッパ31、伸側リーフバルブ17、ピストン3および圧側リーフバルブ18が順に組み付けられ、ピストンナット13によってこれらの部材がスライダ11に固定される。スペーサ30は、内周に設けた環状の切欠30aと、外周から開口して切欠30aに通じる透孔30bを備えていて、上述のようにスライダ11に固定されると、切欠30aがスライダ11に設けたオリフィス孔11dに対向して、透孔30bは、切欠30a、オリフィス孔11d、環状溝11cおよび縦溝2cを介して伸側室R1に連通される。なお、スペーサ30を設ける代わりにスライダ11にスペーサ30を一体化してこれらが一部品として構成されてもよく、この場合には、スライダ11の内周に設けた環状溝11cをオリフィス孔11dでスライダ11の外周へ連通すればよいので、切欠30aおよび透孔30bを設ける必要はない。
つづいて、ピストン3は、外周に設けられてシリンダ1の内周に摺接するピストンリング14と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート15と圧側ポート16を備えている。また、ピストン3の図1中下端となる圧側室側端には、伸側ポート15の下端を開閉する伸側リーフバルブ17が積層され、ピストン3の図1中上端となる伸側室側端には、圧側ポート16の下端を開閉する圧側リーフバルブ18が積層されている。この伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ18は、共に環状に形成され、ピストン3、スペーサ30およびバルブストッパ31とともにスライダ11の外周に装着されて、大径部11bとピストンナット13によって挟持され、スライダ11に装着される。
上述のようにピストン3、伸側リーフバルブ17、圧側リーフバルブ18、スペーサ30およびバルブストッパ31は、スライダ11の大径部11bとピストンナット13によって挟持され、これらはスライダ11と一体となってピストンロッド2に軸方向となる図1中上下方向へ移動自在に連結されている。また、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ18は、大径部11bとピストンナット13にて内周側が固定されているので、外周側の撓みが許容されている。なお、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ18を構成する環状板の積層枚数や厚みは、望む減衰特性に応じて任意に変更することができる。
そして、伸側リーフバルブ17は、緩衝器Dの伸長作動時に伸側室R1と圧側室R2の差圧によって撓んで開弁し伸側ポート15を開放して伸側室R1から圧側室R2へ移動する流体の流れに抵抗を与えるとともに、緩衝器Dの収縮作動時には伸側ポート15を閉塞するようになっていて伸側ポート15を一方通行に設定している。圧側リーフバルブ18は、伸側リーフバルブ17とは反対に緩衝器Dの収縮作動時に圧側室R2と伸側室R1の差圧によって撓んで開弁し圧側ポート16を開放して圧側室R2から伸側室R1へ移動する流体の流れに抵抗を与えるとともに、伸長作動時には圧側ポート16を閉塞するようになっていて圧側ポート16を一方通行に設定している。すなわち、伸側リーフバルブ17は、緩衝器Dの伸長作動時における伸側減衰力を発生する減衰力発生要素であり、他方の圧側リーフバルブ18は、緩衝器Dの収縮作動時における圧側減衰力を発生する減衰力発生要素である。よって、この実施の形態にあっては、減衰通路4は、伸側ポート15、伸側リーフバルブ17、圧側ポート16および圧側リーフバルブ18とで構成されている。また、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ18は、それぞれ伸側ポート15および圧側ポート16を閉じた状態にあっても、図示はしない周知のオリフィスによって伸側室R1と圧側室R2とが連通されるようになっており、オリフィスは、たとえば、各リーフバルブ17,18の外周に切欠を設けたり、ピストン3に設けられて各リーフバルブ17,18が着座する弁座に凹部を設けたりするなどして形成される。減衰力発生要素は、上記したところではリーフバルブとされているが、これ以外のバルブを用いてもよく、減衰通路4は、伸側室R1と圧側室R2とを連通していればよいので、ピストン3以外に設けることも可能である。
つづいて、ピストンロッド2の小径部2aのピストン3よりも図1中下方には、ハウジング5が装着されている。ハウジング5は、ピストンロッド2の図1中下端となる先端の外周に設けた螺子部2bに螺着されるナット部19と、ナット部19の外周に一体化される筒状のケース部20とを備えて構成されている。
より詳しくは、ナット部19は、螺子部19bを備えた袋ナット状のナット本体19aと、ナット本体19aの外周に設けたフランジ19cとを備えている。ケース部20は、有頂筒状とされており、図1中下端の開口端をナット部19のフランジ19cの外周へ加締めることでナット部19に一体化されている。また、ケース部20は、頂部にスライダ11の挿通を許容する挿通孔20aを備えている。具体的には、この挿通孔20aの内周は、可動隔壁8のスライダ11の外周に装着したスペーサ30の外周に摺接している。また、ケース部20の内周には、可動隔壁8の隔壁部12における摺動筒12bが摺接している。したがって、可動隔壁8は、ハウジング5に対してピストンロッド2の軸方向となる図1中上下方向に移動することが可能とされている。
このようにハウジング5内に可動隔壁8におけるスライダ11の下端と隔壁部12が収容されるとともに、ハウジング5をピストンロッド2に螺着することによって、ハウジング5内は圧側室R2から独立した部屋を形成する。また、ハウジング5内は、可動隔壁8における隔壁部12によって、図1中上方側の一方室6と図1中下方側の他方室7とに区画される。
また、ハウジング5のケース部20の頂部と隔壁部12の鍔部12aとの間にはばね21が圧縮状態で介装され、ハウジング5のナット部19のフランジ19cと隔壁部12の鍔部12aとの間にはばね22が圧縮状態で介装され、これらばね21,22によって附勢されて、隔壁部12がハウジング5に対して軸方向に位置決めされ、これに連結されるピストン3もピストンロッド2に対して軸方向に位置決められる。ピストン3は、上述したように、ピストンロッド2上を図1中上下方向となる軸方向へストロークすることが可能となっており、これらばね21,22によってピストン3が位置決めされる位置はピストン3のストローク中心である中立位置とされる。
なお、この場合、一対のばね21,22でピストン3を中立位置へ位置決めするように附勢しているが、一端が隔壁部12に他端がハウジング5に連結される一つのばねを用いてピストン3を中立位置へ位置決めるようにしてもよい。また、ばね21,22は、図示したところではコイルばねとされているが、これに限られず、スプリングワッシャ、皿ばねといった他種のばねやゴム等といった弾性体とされればよい。
そして、ハウジング5内に形成された一方室6は、スペーサ30に設けた透孔30bに臨んでおり、この透孔30b、切欠30a、絞り弁としてのオリフィス孔11d、環状溝11cおよび縦溝2cでなる第一通路9を介して伸側室R1へ連通されている。なお、この場合、絞り弁としてのオリフィス孔11dを可動隔壁8に設けているが、第一通路9が途中に絞り弁を備えていればよいので、絞り弁は、可動隔壁8に限らず、第一通路9を形成するスペーサ30やピストンロッド2に設けるようにしてもよい。また、他方室7は、ケース部20の筒部に設けた絞り弁としてのオリフィス孔でなる第二通路10を介して圧側室R2に連通されている。なお、上記した第一通路9の構成は一例であり、縦溝2cの代わりに、スライダ11の内周にその上端から環状溝11dまで通じる縦溝を設けるようにしてもよいし、ピストンロッド2に環状溝11dに通じる孔を設けてこれを第一通路9としてもよい。
なお、スライダ11が大径部11bを備えていて、この大径部11bがケース部20の下端に当接すると、可動隔壁8のそれ以上のピストンロッド2に対する図1中上方への移動が規制されるようになっている。また、スライダ11の下端がハウジング5のナット部19のナット本体19aに当接すると、可動隔壁8のそれ以上のピストンロッド2に対する図1中下方への移動が規制されるようになっている。
第一通路9は、可動隔壁8がピストンロッド2に対して図1中上方の伸側室側へストロークエンドまで移動すると、ケース部20の頂部の挿通孔20aを形成する内周壁が透孔30bに対向して閉塞されることで遮断されるようになっている。第二通路10は、可動隔壁8がピストンロッド2に対して図1中下方の圧側室側へストロークエンドまで移動すると、摺動筒12bの外周によって閉塞されて遮断されるようになっている。この場合、可動隔壁8が下方へストロークエンドまで移動することで第二通路10を遮断するようになっているので、ケース部20の筒部に第二通路10を設けているが、その必要がない場合には、ナット部19のフランジ19c等に第二通路10を設けるようにしてもよい。
さて、緩衝器Dは、以上のように構成されるが、続いて緩衝器Dの作動について説明する。
最初に、緩衝器Dが伸縮する際の速度が低速である時の作動について説明する。まず、緩衝器Dが伸長する場合、伸側室R1が圧縮されるため、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなる。また、緩衝器Dが伸長する際には、ピストンロッド2が図1中上方へ移動し、伸側室R1の圧力が高くなり圧側室R2内の圧力が低くなって、伸側室R1と圧側室R2との差圧がピストン3に作用し、ピストン3には、ピストンロッド2の移動方向とは逆に図1中下方へ移動しようとする力が働き、下方へ移動しようとする。ピストン3が可動隔壁8に連結されていて、ハウジング5内では、隔壁部12がハウジング5に対して下方へ移動しようとするので、一方室6が拡大されて減圧され、他方室7が圧縮されて昇圧されることになる。整理すると、ピストン3は、伸側室R1と圧側室R2の差圧によってピストンロッド2の移動方向とは逆の図1中下方へ移動しようとする力が働き、ピストン3が下方へ移動しようとするのに対し、可動隔壁8は一方室6と他方室7の差圧によってピストン3の移動を妨げる力を受けることになる。
一方室6はオリフィス孔11dを備えた第一通路9を介して伸側室R1に連通され、他方室7はオリフィス孔でなる第二通路10を介して圧側室R2に連通されているが、緩衝器Dの伸長速度が低速であるために、ピストン3のピストンロッド2に対する移動速度は低く、一方室6と他方室7の差圧は小さい。よって、緩衝器Dが伸長する際の速度が低速である場合、可動隔壁8が一方室6と他方室7の差圧を受けることによって可動隔壁8のハウジング5に対する下方への移動を妨げる力は小さい。
このように、一方室6と他方室7の差圧によってピストン3のピストンロッド2に対する下方への移動を妨げる力が小さいため、伸側室R1と圧側室R2の差圧によってピストン3をピストンロッド2に対して図1中下方へ移動させる力に対抗できず、ピストン3は、図2に示すように、ピストンロッド2に対し下方へ移動することになる。
すると、緩衝器Dが低速で伸長する場合、ピストンロッド2に対してピストン3が圧側室側へ移動するので、ピストンロッドにピストンが固定的に設けられた緩衝器に比較して、伸側ポート15を介して伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流量が減少して、緩衝器Dが発生する減衰力は低くなる。
また、緩衝器Dが低速で収縮する場合には、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなるため、圧側室R2と伸側室R1の差圧によってピストン3には図1中押し上げる力が作用する。可動隔壁8にも一方室6と他方室7の差圧が作用するピストン3は伸長時とは逆向きの上方の伸側室側へ移動しようとするから、一方室6の圧力の方が他方室7の圧力よりも大きくなり、一方室6と他方室7の差圧によって可動隔壁8にはピストン3の移動を妨げる方向の力が作用する。しかしながら、収縮速度が低速であり、ピストン3の移動速度も低いため、伸長時と同様に、ピストン3の上方への移動を妨げる力が小さく、伸側室R1と圧側室R2の差圧によってピストン3をピストンロッド2に対して図1中上方へ移動させる力に対抗できず、ピストン3は、図3に示すように、ピストンロッド2に対し上方へ移動することになる。
すると、緩衝器Dが低速で収縮する場合、ピストンロッド2に対してピストン3が伸側室側へ移動するので、ピストンロッドにピストンが固定的に設けられた緩衝器に比較して、圧側ポート16を介して圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流量が減少して、緩衝器Dが発生する減衰力は低くなる。
これに対して、緩衝器Dが高速で伸長する場合、ピストンロッド2が上方へ高速で移動しようとするため、ピストン3は相対的にピストンロッド2に対して高速で下方へ移動することになる。このように、緩衝器Dが高速で伸長する場合、ピストン3のピストンロッド2に対する移動速度は速くなるため、一方室6と他方室7の差圧が大きくなり、可動隔壁8が一方室6と他方室7の差圧を受けることによって可動隔壁8のハウジング5に対する下方への移動を妨げる力が大きくなる。
すると、一方室6と他方室7の差圧によってピストン3のピストンロッド2に対する下方への移動を妨げる力が大きくなって、伸側室R1と圧側室R2の差圧によってピストン3をピストンロッド2に対して図1中下方へ移動させる力に拮抗して、ピストン3のピストンロッド2に対する下方への移動が抑制されて、中立位置近傍からさほど変位しなくなる。
このため、緩衝器Dが高速で伸長する場合、低速で伸長する場合に比較して、ピストンロッド2に対してピストン3が圧側室側へ変位しなくなる分、伸側ポート15を介して伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流量が多くなり、緩衝器Dが発生する減衰力は高くなる。
また、緩衝器Dが高速で収縮する場合には、ピストンロッド2が下方へ高速で移動しようとするため、ピストン3は相対的にピストンロッド2に対して高速で上方へ移動することになる。このように、緩衝器Dが高速で収縮する場合、ピストン3のピストンロッド2に対する移動速度は速くなるため、一方室6と他方室7の差圧が大きくなり、可動隔壁8が一方室6と他方室7の差圧を受けることによって可動隔壁8のハウジング5に対する上方への移動を妨げる力が大きくなる。
すると、一方室6と他方室7の差圧によってピストン3のピストンロッド2に対する上方への移動を妨げる力が大きくなって、伸側室R1と圧側室R2の差圧によってピストン3をピストンロッド2に対して図1中上方へ移動させる力に拮抗して、ピストン3のピストンロッド2に対する上方への移動が抑制されて、中立位置近傍からさほど変位しなくなる。
このため、緩衝器Dが高速で収縮する場合、低速で収縮する場合に比較して、ピストンロッド2に対してピストン3が伸側室側へ変位しなくなる分、圧側ポート16を介して圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流量が多くなり、緩衝器Dが発生する減衰力は高くなる。
つまり、緩衝器Dが高速で伸縮する場合、あたかもピストンロッドにピストンが固定的に設けられたかの如くに振る舞うので、緩衝器Dが発生する減衰力は高くなるのである。
このように、本発明の緩衝器Dによれば、伸縮速度が低速である時には減衰力を低くすることができ、伸縮速度が高速である時には減衰力を高くすることができ、車両における乗り心地と車両の操縦性とを両立することができる。
また、この緩衝器Dの場合、可動隔壁8がピストンロッド2の外周に摺動自在に装着される筒状のスライダ11と、このスライダ11の外周に設けられてハウジング5内を一方室6と他方室7とに区画する隔壁部12とを備え、ピストン3が環状であってスライダ11の外周に装着されるようにしたので、可動隔壁8とピストン3とをアッセンブリ化することができ、ピストンロッド2への組み付けが簡単となる。
加えて、この緩衝器Dの場合、ハウジング5が、内周に螺子部19bを備えたナット部19と、当該ナット部19の外周に一体化されて内周に可動隔壁8が摺動自在に挿入される筒状のケース部20とを備え、ナット部19をピストンロッド2の先端に螺着することでピストンロッド2に連結されるようにしたので、可動隔壁8とハウジング5を予めアッセンブリ化して、ハウジング5と可動隔壁8のピストンロッド2への装着が容易となる。
さらに、この緩衝器Dの場合、ピストン3を中立位置へ位置決めるように附勢する弾性体(この実施の形態の場合、ばね21,22)を備えたので、ピストン3を弾性体によって中立位置へ戻すことができるので、たとえば、緩衝器Dが伸縮作動を繰返すことによってピストン3がストロークエンドまで変位したままの位置に留まってしまい減衰力を低減する効果を発揮できなくなるような機会が多発することがなく、乗心地をより良好なものとすることができる。なお、弾性体がなくとも、緩衝器Dの効果が失われることは無いが、このように、弾性体を設けることで上記した利点を享受することができる。
また、この緩衝器Dの場合、可動隔壁8がハウジング5内を一方室6を圧縮する方向へストロークエンドまで移動すると第一通路9を遮断して一方室6の内圧を高め、他方室7を圧縮する方向へストロークエンドまで移動すると第二通路10を遮断して他方室7の内圧を高めることができる。そのため、可動隔壁8がストロークエンドまで変位する場合に、可動隔壁8の移動速度を一方室6の圧力或いは他方室7の圧力によって減じることができ、可動隔壁8とハウジング5と勢い良く衝突することが回避され、打音が抑制される。そして、可動隔壁8がストロークエンドまで変位するのは、緩衝器Dが低速で伸縮する場合であって、ピストン3のピストンロッド2に対する移動速度もストロークエンド近傍まで来ると減速されることになるから、ピストン3がストロークエンドで急激に移動が阻止されることがなく、それまで低かった減衰力が急激に高くなる減衰力の急変を阻止することができ、車両における乗り心地をより一層良好なものとすることができる。
またさらに、この緩衝器Dの場合、ピストン3と伸側リーフバルブ17と圧側リーフバルブ18がスライダ11の先端に螺着されるピストンナット13によってスライダ11に固定されるので、可動隔壁8へのピストン3、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ18の固定も容易であり、組み付け性もよい。
なお、上記したところでは、一方室6を伸側室R1へ連通し、他方室7を圧側室R2へ連通するようにしているが、一方室6を伸側室R1ではなく圧側室R2へ連通してもよく、他方室7を圧側室R2ではなく伸側室R1へ連通してもよい。要するに、一方室6と他方室7を伸側室R1或いは圧側室R2へ任意に第一通路9と第二通路10で連通すればよく、可動隔壁8がハウジング5内を高速で移動する際にこれを強く抑制するように一方室6と他方室7に差圧を生じさせるようにすればよい。
ハウジング5は、ピストンロッド2のピストン3よりも上方に設けてもよい、つまり、伸側室R1内に配置するようにしてもよい。ハウジング5を伸側室R1内に配置するには、たとえば、ピストンロッド2のハウジング5や可動隔壁8が装着される先端をピストンロッド2の上方側から切り離し、先端を図1とは天地逆向きにして再度ピストンロッド2の上方側に連結するような構造を採ることで実現することができる。なお、この構造は一例であって、他の構造を採ることでハウジング5を伸側室R1内に配置するようにしてもよいことは当然である。
さらに、図1のスライダ11の上端側にも隔壁部12を設け、ハウジングを一対のカップ状部材で構成して、このカップ状部材をピストンロッド2の伸側室R1側と圧側室R2側にそれぞれ開口部を向きあうようにして設置し、スライダ11の上方の隔壁部12を伸側室R1側のカップ状部材内に摺動自在に挿入してカップ状部材内に一方室6を形成するとともにスライダ11の下方の隔壁部12を圧側室R2側のカップ状部材内に摺動自在に挿入して他方室7を形成してもよい。そして、一方室6と他方室7を伸側室R1或いは圧側室R2へ任意に第一通路9と第二通路10で連通すればよい。この場合、ばね21は一方室6内に、ばね22は他方室7内に収容しておけばよい。このような構成であっても上記した効果を奏することができる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。