JP5724242B2 - 塗料組成物、およびそれを用いた反射防止部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、反射防止部材に好適な塗料組成物、及び当該塗料組成物を用いた反射防止部材の製造方法に関する。
反射防止部材は一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。このような反射防止部材として、より広い波長領域の反射率を低減するために、屈折率の高い物質からなる高屈折率層と屈折率の低い物質からなる低屈折率層との多層の被膜をフィルムなどの支持基材の表面に作製する、いわゆるマルチコーティングが知られている(特許文献1)。
この反射防止部材を少ない工程で製造する方法として、1回の塗布により形成された1層の液膜から、2層以上の層を形成する反射防止積層体、製造方法が提案されている。特許文献2には「バインダー樹脂中に低屈折率微粒子と中乃至高屈折率微粒子が分散されているコーティング組成物を用いてワンコートにて形成された塗膜を含む反射防止積層体であって、該低屈折率微粒子としてフッ素系化合物により処理されているシリカ微粒子が用いられることにより、比重の差により塗膜の上部乃至中間部において低屈折率微粒子が偏在し、且つ中間部乃至下部において中乃至高屈折率微粒子が偏在していることを特徴とする反射防止積層体。」が提案されており、また、特許文献3には「構成元素が異なる2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物を1回塗布乾燥硬化する工程のみで反射率の異なる複数の層を構成する反射防止フィルムの製造方法であって、少なくとも一種類の無機粒子にフッ素化合物による表面処理が成されていることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。」が提案されている。さらに、特許文献4には「基材と、その上に多層構造を有する積層体の製造方法であって、前記基材上又は基材上に形成された層の上に、下記成分(A)〜(F)を含む液状硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、この1の塗膜から溶媒を蒸発させることにより、2以上の層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。」が提案されている
また、このような反射防止フィルムは、塗工面状の欠陥(塗工欠陥)に対する許容が狭く、高い品質が求められる。この塗工欠陥の防止方法として、特許文献5には「透明支持体上に、少なくとも1層のハードコート層と、最外に位置する低屈折率層それぞれの塗布液を塗布し、乾燥することで形成する反射防止フィルムの製造方法において、いずれのハードコート層および
低屈折率層も、塗布液を塗布した後、10℃以上40℃以下に保たれた第一の乾燥部にて、塗布膜のセットを終了させることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。」が提案されており、また、一般的なコーティングにおける欠陥の対策として非特許文献1に記載がある。
特開平7−5452号公報 特開2007−272132号公報 特開2008−070414号公報 特開2005−297539号公報 特開2003−315505号公報
コーティングにおける欠陥の発生原因と対策 科学技術総合研究所 1988
本発明者らが前述の1回の塗布により形成された1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法として、特許文献2と3の方法について確認したところ、高屈折率層(または最表面から2層目)の膜厚を厚くすると、その塗工面には面状欠陥、特にクラック(割れ)状の欠陥が製造工程、特に乾燥工程にて発生することがあり、製造適性に問題があることを見出した。また、特許文献4の方法について確認したところ、この方法は耐擦傷性、耐磨耗性が劣り、反射防止部材としての実際の使用には問題があった。
前述の面状欠陥に対して、特許文献5、および非特許文献1に記載の方法で解決を試みたが、面状欠陥、特にクラック(割れ)状の欠陥について解決することができなかった。従って本発明が解決しようとする課題は、製造工程にて面状欠陥、特にクラックなどの面状欠陥を生じることなく、簡易な方法で低反射率、耐擦傷性、耐磨耗性に優れた反射防止部材を製造可能な塗料組成物、および反射防止部材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1) 2種類以上の無機粒子と2種類以上の溶媒とを含む塗料組成物であって、
最も含有量の多い溶媒を溶媒A、2番目に含有量の多い溶媒を溶媒Bとしたとき、溶媒Aの溶解度パラメーターが17(MPa)1/2以上21(MPa)1/2以下であり、溶媒Bの溶解度パラメーターが、19(MPa)1/2以上24(MPa)1/2以下であり、少なくとも1種類の無機粒子が下記一般式(III)で示される化合物Dで処理し、次いで下記一般式(II)で示されるフッ素化合物Aにより処理された無機粒子であり、
他の少なくとも1種類の無機粒子が、下記一般式(I)で示される化合物Bにより処理された無機粒子(以下、化合物Bにより処理された無機粒子を、無機粒子Bとする)であることを特徴とする塗料組成物。
化合物B: R−R−SiR n1(OR3−n1 一般式(I)
(ここで、Rは反応性部位、R、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1から3のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造を示す。また、n1は0から2のいずれかの整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
フッ素化合物A: R −R −R 一般式(II)
(ここで、R はフルオロアルキル基、R は反応性部位、R は炭素数1から6のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造を示す。それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
化合物D: R −R −SiR n2 (OR 10 3−n2 一般式(III)
(上記一般式(III)中のR は反応性部位を示し、R は炭素数1から6のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R 、R 10 は水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、n2は0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
2) 全ての溶媒の合計を100質量%とした際に、前記溶媒Aが60質量%以上90質量%以下、前記溶媒Bが、5質量%以上40質量%以下であることを特徴とする、前記1)に記載の塗料組成物。
3) 溶媒Aの酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度(ASTM D3539−87(2004))が、溶媒Bの酢酸n−ブチルを基準とした前記相対蒸発速度よりも高いことを特徴とする、前記1)または2)に記載の塗料組成物。
4) 前記溶媒Aがケトン類であることを特徴とする前記1)から3)のいずれかに記載の塗料組成物。
) 前記無機粒子Bが、比表面積X(m/g)、質量Xの無機粒子を、最小被覆面積Y(m/g)、質量Yの化合物Bにより処理した無機粒子Bであり、
、X、Y、Yが以下の関係式を満たすことを特徴とする、前記1)から)のいずれかに記載の塗料組成物。
50≦((Y×Y)/(X×X))×100≦300
) 前記溶媒Bが、炭素数3以下のアルコール類、及び炭素数7以下のグリコールエーテル類からなる群より選ばれる一つであることを特徴とする前記1)から)のいずれかに記載の塗料組成物。
) 前記1)〜)のいずれかに記載の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
本発明によれば、面状欠陥、とくにクラック状欠陥が少なく、良好な反射防止性能、優れた耐擦傷性、耐磨耗性を有する反射防止部材を、簡易な工程で製造可能な塗料組成物を提供可能である。また、本発明の製造方法を用いることにより、生産性を向上することもできる。
本発明の対象物である反射防止部材の例である。 本発明の対象物である反射防止部材のより好ましい例である。
本発明者らは1回の塗布により形成した1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法において、製造工程にて塗工面にクラック状の欠陥が発生する原因を次のように考えた。
まず、この製造方法にて反射防止部材が優れた反射防止性能を得るには、最表面から第1層目と第2層目の界面は明確になっていることが重要であり、この2つの層は支持基材上に塗工により液膜を形成後、溶媒の乾燥にともない自発的に形成するものである。本発明者らがこの乾燥過程を解析した結果、自発的な層構造の形成は乾燥過程の初期にて発生しており、残存溶媒が多い状態で2つの層が形成されていることが重要であった。そのため、乾燥過程において最表面から第2層目は溶媒が多い状態で、第1層目によって表面に蓋がされた状態であり、乾燥過程にて溶媒の揮発時に応力が発生しやすいことが分かった。
さらに、1回の塗布により形成した1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法では、反射防止部材に必要な耐擦傷性、耐摩耗性を得るには、反射防止層の最表面側から2番目の層(第2層)の厚さを厚くすることが重要であるが、第2層の膜厚を厚くした場合には、第2層に存在する粒子の濃度勾配が形成されることを見出した。具体的には、この第2層の濃度勾配は、反射防止層の最表層(第1層)に近いほどバインダー成分が多く、支持基材に近いほど粒子の比率が高く、脆くなる。
従って、塗工面のクラック状の欠陥の発生は、残存溶媒が多い状態で2つの層が形成されているため、第2層に残った溶媒が蒸発するとき第2層に応力が発生し、第2層の膜厚を厚くしたために発生した粒子の濃度勾配により、脆くなった支持基材近傍部分の破壊がきっかけとなっていると考えた。
そこで、本発明者らは、1回の塗布により形成した1層の液膜から2層以上の層を形成する反射防止部材の製造方法において、反射防止性能と耐擦傷性、耐摩耗性を維持しつつ、クラック状の面状欠陥を抑制するという課題に対して、以下の塗料組成物を用いることにより解決できることを見出した。
この本発明の塗料組成物は、塗料組成物中に含まれる溶媒に着目したもので、塗膜からの溶媒の拡散を促進することにより、応力を抑制しクラック状欠陥の発生を抑制するものである。その方法は、2種類以上の無機粒子と、2種類以上の特定の溶解度パラメーターを有する溶媒を用いることによりこれを達成した。
具体的には塗料組成物中の2種類以上の溶媒について、最も含有量の多い溶媒を溶媒A、2番目に含有量の多い溶媒を溶媒Bとしたとき、溶媒Aの溶解度パラメーターが17(MPa)1/2以上21(MPa)1/2以下であり、溶媒Bの溶解度パラメーターが、19(MPa)1/2以上24(MPa)1/2以下である態様の塗料組成物である。
溶媒Aの溶解度パラメーターは、より好ましくは17.2(MPa)1/2以上19(MPa)1/2以下であり、溶媒Bの溶解度パラメーターは、より好ましくは19.4(MPa)1/2以上23.6(MPa)1/2以下である。
ここで、溶解度パラメーター(solubility parameter;δ)とは、溶媒の極性値を表す尺度で、下記式で表されるように、凝集エネルギー密度と分子容の負の平方根で表される値である。
溶解度パラメーター(δ)=(△Ev /V)1/2
(ここで、△Ev は凝集エネルギー密度であり、Vは分子容である。)
本発明に用いられる溶媒の溶解度パラメーターは、“Polymer Handbook (fourth Edition)”,J.BRANDRUPら編(JOHN WILEY & SONS)にその値が記載されており、ここに値が記されていない溶媒については、該文献のVII−P675に記された方法により求めることができる。
なお溶媒Aとは、塗料組成物中に質量的に最も含有量の大きい溶媒であり、塗料組成物中に質量的に2番目に含有量の大きい溶媒を溶媒Bである。
溶媒Aの溶解度パラメーターが17(MPa)1/2未満の場合や、溶媒Bの溶解度パラメーターが19(MPa)1/2以上24(MPa)1/2以下の範囲から外れる場合には、塗料組成物中の無機粒子の分散安定性が低下するため、そのような塗料組成物を用いて製造した反射防止部材には、異物、ハジキ状の面状欠陥が発生しやすくなる問題がある。
溶解度パラメーターが17(MPa)1/2以上、19(MPa)1/2以下の例としては、メチルイソブチルケトン(17.2)、テトラヒドロフラン(18.6)、ジアセトンアルコール(18.8)、メチルエチルケトン(19.0)があり、溶解度パラメーターが19(MPa)1/2以上、21(MPa)1/2以下の例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル(19.4)、シクロヘキサノン(20.3)があり、溶解度パラメーターが21(MPa)1/2以上、24(MPa)1/2以下の例としては、イソプロピルアルコール(23.5)がある。
また、前記溶媒Aの溶解度パラメーターが21(MPa)1/2よりも大きい場合には、溶媒の拡散が不十分になり、そのような塗料組成物を用いて製造した反射防止部材にクラック状の面状欠陥が発生しやすくなる。
さらに、塗料組成物中の前記溶媒Aと前記溶媒Bの比率には好ましい範囲があり、塗料組成物中の全ての溶媒の合計を100質量%とした際に、前記溶媒Aが60質量%以上90質量%以下、前記溶媒Bが、5質量%以上40質量%以下、より好ましくは前記溶媒Aが70質量%以上85質量%以下、前記溶媒Bが、10質量%以上35質量%以下である。
塗料組成物中の全ての溶媒の合計を100質量%とした際に、溶媒Aが90質量%を越える場合や溶媒Bが5質量%未満の場合には、塗料組成物中の無機粒子の分散安定性が低下するため、反射防止部材に異物状の面状欠陥が発生しやすくなりやすくなる。また、塗料組成物中の全ての溶媒の合計を100質量%とした際に、溶媒Aが60質量%未満の場合や溶媒Bが40質量%を越える場合には、溶媒の拡散が不十分になり、反射防止部材にクラック状の面状欠陥が発生する場合がある。
また、前記溶媒A,Bの間には好ましい蒸発速度の関係があり、具体的には溶媒Aの酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度(ASTM D3539−87(2004))が、溶媒Bの酢酸n−ブチルを基準とした前記相対蒸発速度よりも高いことが好ましい。この溶媒の相対蒸発速度とは、ASTMD3539−87(2004)に準拠して測定される蒸発速度であって、具体的には、乾燥空気下で酢酸n−ブチルが90質量%蒸発するのに要する時間を基準とする蒸発速度の相対値として定義される。前記溶媒A,Bの相対蒸発速度の関係が上記の関係を満たさなかった場合、反射防止部材にハジキ状の面状欠陥が出やすいという問題が発生する場合がある。
溶媒Aの酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度が、溶媒Bの酢酸n−ブチルを基準とした前記相対蒸発速度よりも高い組み合わせの例としては、溶媒Aがメチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン、溶媒Bがエチレングリコールモノブチルエーテル又はイソプロピルアルコールである態様や、溶媒Aがシクロヘキサノン又はジアセトンアルコールであり、溶媒Bがエチレングリコールモノブチルエーテルである態様を挙げることができる。
前記溶媒Aの種類には好ましい種類があり、溶媒Aはケトン類であることが好ましい。
ここで溶媒の種類の定義については後述する。
本発明におけるケトン類とは、カルボニル基の両端にアルキル基、またはアリール基が結合したものを指し、さらにその両端が結合した環状、複素環状のものも含む。カルボニル基の両端に付くアルキル基、アリール基は同一であっても、そうでなくても良い。さらに、アルキル基、アリール基を介して、他の官能基が存在する場合には、IUPAC命名法に従い、そこで含まれるもっとも優先順位の高い官能基がカルボニル基である場合をケトン類としてとり扱う。例えば、ジアセトンアルコールは水酸基とカルボニル基の両方を有するが、IUPAC命名法に基づくとカルボニル基が優先されるため、アルコール類としてではなくケトン類として取り扱う。
本発明にて溶媒Aとして好ましいケトン類としては、具体的にはジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどがあり、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンがより好ましい。
また、前記溶媒Bの種類には、好ましい種類があり、炭素数3以下のアルコール類、及び炭素数7以下のグリコールエーテル類からなる群から選ばれる一つであること好ましい。
ここで述べるアルコール類とは炭化水素の水素原子を水酸基で置換した化合物で、一般式R−OHで表される。但し、水酸基が直接ベンゼン環に結合したものは含まない。水酸基の数が1分子あたり、1個、2個、3個などのアルコール(1価、2価、3価アルコール)や、水酸基が第1、第2、第3炭素原子に結合しているアルコール(第1、第2、第3アルコール)、水酸基が芳香族炭化水素の側鎖に付いたもの(芳香族アルコール)などがある。本発明では、溶媒Bが複数の官能基を有する場合には、IUPAC命名法に従い構造中に含まれるもっとも優先順位の高い官能基が水酸基である場合にアルコールとして分類するが、分子中にエーテル結合と水酸基の両方を有する場合には例外として、後述するグリコールエーテル類として取り扱う。本発明においては、溶媒Bは炭素数3以下のアルコールが好ましく、炭素数2以上3以下のアルコールがより好ましい。この範囲よりも炭素数が少ない場合、多い場合ともにフッ素処理無機粒子の分散安定性が低下し、凝集物起因の欠陥や、塗膜の透明性の低下を生じる。
溶媒Bとして好ましい炭素数3以下のアルコール類としては、具体的にはn−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノールなどがある。
またグリコールエーテル類とは、一分子内に一般式R−O−Rで表されるエーテル類の構造と前述のアルコール類の構造の両方を有する化合物である。本発明においては、炭素数7以下のグリコールエーテル類が好ましく、炭素数4以上6以下のグリコールエーテルがより好ましい。炭素数が8以上の場合、フッ素処理無機粒子の分散安定性が低下し、凝集物起因の欠陥や、塗膜の透明性の低下を生じる。
溶媒Bとして好ましい炭素数7以下のグリコールエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテルなどが挙げられる。
反射防止性能と耐擦傷性、耐摩耗性を維持しつつ、クラック状の面状欠陥を抑制するという効果をさらに高めるためには、塗料組成物中に含まれる2種類以上の無機粒子のうち、少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより処理された無機粒子(以下、フッ素化合物Aにより処理された無機粒子を、フッ素処理無機粒子とする)であり、他の少なくとも1種類の無機粒子が、別の特定の表面処理がされていることが好ましい。
具体的には、本発明の塗料組成物に含まれる2種類以上の無機粒子のうち、少なくとも1種類の無機粒子がフッ素処理無機粒子であり、他の少なくとも1種類の無機粒子が、化合物Bにより処理された無機粒子(以下、化合物Bにより処理された無機粒子を、無機粒子Bとする)である。
この化合物Bは、次の一般式(I)のように表される。
−R−SiR n1(OR3−n1 一般式(I)
ここで、Rは反応性部位、R、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1から3のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造を示す。また、n1は0から2のいずれかの整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
塗料組成物中の無機粒子が、フッ素処理無機粒子と無機粒子Bとを含有することにより、乾燥過程にて前述の第2層の粒子の濃度勾配が形成することを抑制して、第2層の粒子を均一な分散状態にすることが可能になる。
さらに、無機粒子Bの表面処理量については、好ましい範囲が存在する。具体的には前記無機粒子Bが、比表面積X(m/g)、質量Xの無機粒子を、最小被覆面積Y(m/g)、質量Yの化合物Bにより処理した無機粒子Bであり、X、X、Y、Yが以下の関係式を満たすことが好ましい。
50≦(Y×Y)/(X×X)×100≦300
なお、比表面積Xおよび最小被覆面積Yの詳細は後述する。
「(Y×Y)/(X×X)×100」の値が、50よりも小さい場合には、表面処理が不十分になるため、第2層の粒子を均一が分散状態にする効果が不十分であり、100よりも大きい場合には、表面処理が過剰になり、反応性部位が多くなるために反応時の収縮量が大きくなり、逆にクラック状欠陥が発生しやすくなる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、1つの液体である塗料組成物中に2種類以上の無機粒子(フッ素処理無機粒子、無機粒子Bなど),2種類以上の溶媒(少なくとも溶媒A、溶媒B)を含んでいることが必要で、これにより本発明の塗料組成物を支持基材に1回のみ塗工することによって、高屈折率層、低屈折率層といった、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を有する反射防止部材を得ることができる。フッ素処理無機粒子,無機粒子Bの詳細については後述する。
ここで、「粒子」とは原料粒子に対して表面などの処理を施したものも含む。この表面などの処理とは、原料粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
本発明の塗料組成物におけるフッ素処理無機粒子と無機粒子Bとは、異なる種類の無機粒子に対して処理することで得られたものであることが好ましい。そのため、本発明の塗料組成物は、2種類以上の粒子を含むことが好ましい。2種類以上の粒子の内、少なくとも1種類は、他方の粒子に対して相対的に屈折率が低いことが好ましい。
また、本発明における「溶媒」とは、塗工後の乾燥工程にて大部分を蒸発させることが可能な液体を指す。
本発明の塗料組成物は、前記フッ素処理無機粒子、無機粒子B、溶媒A,溶媒B以外の成分を含んでいてもよく、このような成分としては、バインダー原料、硬化剤、界面活性剤、分散剤、反応性部位を有するフッ素化合物Bなどを含んでもよい。
[溶媒]
本発明の塗料組成物は、少なくとも溶媒A、溶媒Bの2種類の溶媒を含む。溶媒の種類数としては2種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは2種類以上4種類以下である。
ここで、溶媒の種類とは、溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。溶媒A,溶媒Bの詳細については前述の通りである。
本発明において、溶媒A,溶媒B以外の種類の溶媒を含む場合には、前述の溶媒Aまたは溶媒Bのいずれか、または両方の好ましい溶解度パラメーターの範囲に含まれることが好ましい。この範囲を外れた領域では、塗料組成物中の無機粒子の分散性が低下する。
[無機粒子]
本発明の塗料組成物は2種類以上の無機粒子を含む。そして好ましい態様は、フッ素処理無機粒子と無機粒子Bを含む。
無機粒子は、粒子の表面から中心までが同一の元素組成であってもよく、複数の元素組成のものが中心から層状になって形成された粒子でもよい。粒子の種類数としては2種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは2種類以上3種類以下であり、最も好ましくは2種類である。
ここで粒子の種類とは、粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
[フッ素処理無機粒子]
塗料組成物中のフッ素処理無機粒子に関して説明する。フッ素処理無機粒子の原料として好適な粒子としては、Si,Na,K,Ca,およびMgから選択される元素を含む無機粒子が好ましく挙げられ、さらに好ましくはシリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物(NaF,KFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)から選ばれる化合物を含む無機粒子であり、耐久性、屈折率、コストなどの点からシリカ粒子が特に好ましい。このシリカ粒子とは、ケイ素化合物又は有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含む粒子を指し、一般例として、SiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。
フッ素処理無機粒子の原料に好適な粒子の形状は特に限定されないが、本発明の塗料組成物により形成される反射防止層の屈折率や光学異方性の観点から球状が好ましい。より好ましくは、フッ素処理無機粒子がシリカ粒子を含有し、該シリカ粒子の一部または全てが、中空及び/又は多孔質の形状であることが好ましい。ここで中空シリカ粒子とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子であり、多孔質シリカ粒子とは、粒子の表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子である。
中空及び/又は多孔質を有する粒子を用いることにより、得られる反射防止層の密度が下がるため、その結果屈折率を下げる効果が得られる。なお、中空及び/又は多孔質を有する粒子のことを、以下中空粒子と記載する。
使用する粒子の数平均粒子径(表面処理を施した粒子の場合には、表面処理前の数平均粒子径)は1nm以上200nmが好ましい。200nmよりも大きくなると、光散乱により良好な透明性が得られなくなり好ましくない。また、数平均粒子径が小さい分には特に影響はないが、現実的に安定して得られる粒子の数平均粒子径は1〜5nm程度が下限である。
粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により求めた粒子径をいう。分散物を蒸発、乾固した状態のサンプルについて透過型電子顕微鏡で観察を行い、その際の測定倍率は50万倍とし、その画面に存在する100個の粒子の外径を測定しその平均値とした。
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
次に本発明の塗料組成物に含まれるフッ素処理無機粒子を得るための表面などの処理について説明する。前述の粒子、特にシリカなどの無機粒子に対するフッ素化合物Aによる処理とは、無機粒子を化学的に修飾して、無機粒子にフッ素化合物Aを導入する工程を指し、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階でフッ素化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみでフッ素化合物Aを用いても良い。ここで導入とは、フッ素化合物Aが、無機粒子に化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)している状態を指す。
このフッ素化合物Aは、次の一般式(II)で表される化合物である。
フッ素化合物A: R−R−R一般式(II)
ここで、Rはフルオロアルキル基、Rは反応性部位、Rは炭素数1から6のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造を示す。それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
フルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ水素の一部、あるいはすべてがフッ素に置き換わった置換基であり、主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基である。
反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位をさす。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる、反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
このフッ素化合物Aを導入する処理の一つの方法は、このフッ素化合物Aとして、前記一般式(II)にて、Rがアルコキシシリル基、シリルエーテル基、シリルエーテル基になったフルオロアルコキシシラン化合物を少なくとも1種類以上と、無機粒子、もしくは粒子分散物と溶媒、触媒等とを共に撹拌、場合によっては加熱、または脱アルコール処理をし、無機粒子表面のシラノール基と縮合させることにより成される方法である。
ここでいう粒子分散物とは、前記無機粒子が溶媒中に分散された状態のものを指し、ゾル、サスペンジョン、スラリー、コロイド溶液ともよばれることもあり、無機粒子、溶媒のほかに、分散剤、界面活性剤、表面処理剤等、安定化剤等を含んでもよい。粒子を微細に分散した状態で扱う観点から、分散物の状態で表面処理を行うことが好ましい。
この場合のフッ素化合物Aの具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソシアネートシラン、2−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、2−パーフルオロオクチルイソシアネートシラン等が挙げられる。
フッ素化合物Aによる無機粒子の処理の別の方法には、無機粒子、もしくは粒子分散物を化合物Dにて処理し、次いでフッ素化合物Aとつなぎ合わせる方法がある。
この化合物Dは、分子内にフッ素は無いが、フッ素化合物Aと反応可能な反応性部位と、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指す。化合物Dにおける無機粒子と反応可能な部位としては、反応性の観点からアルコキシシリル基、シリルエーテル基、及びシラノール基であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
この方法は具体的には、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)を下記一般式(III)で示される化合物Dと前述の一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理するものであり、より好ましくは、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)を下記一般式(III)で示される化合物Dで処理し、次いで前述の一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理するものである。
化合物D: R−R−SiR n2(OR103−n2 一般式(III)
上記一般式(III)中のRは反応性部位を示し、Rは炭素数1から6のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R、R10は水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、n2は0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
上記一般式中のより好ましい形態は、一般式(II)のRと一般式(III)のRで表される反応性部位が反応性二重結合基であることである。
反応性二重結合基とは、光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
この化合物Dの具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
また、この場合のフッ素化合物Aの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
分子中にフルオロアルキル基Rを有さない一般式(III)で表される化合物Dを用いることにより、簡便な反応条件で、中空シリカなどのシリカ粒子表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性二重結合及びフルオロアルキル基Rを有するフッ素化合物Aをシリカ粒子表面で反応させることが可能になる。
[無機粒子B]
塗料組成物中の無機粒子Bに関して説明する。無機粒子Bの原料に好適な無機粒子としては、フッ素処理無機粒子の原料に好適に使用される無機粒子とは異なる種類の無機粒子が好ましく用いられる。この無機粒子は特に限定されないが、金属、半金属酸化物、窒化物、ホウ素化物であることが好ましく、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、半金属の酸化物粒子であることがさらに好ましい。また無機粒子Bの原料として好適に用いられる無機粒子としては、フッ素処理無機粒子の原料に好適に使用される無機粒子よりも屈折率が高い粒子が好ましく、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物(In)から選ばれる少なくとも一つの無機化合物、あるいはこれらの無機化合物間の固溶体、および一部元素を置換、または一部元素が格子間に侵入、または一部元素の格子点が欠損した固溶体であり、特に好ましくはリン含有酸化スズ(PTO)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)や酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)である。
無機粒子Bを得るために使用する無機粒子の数平均粒子径(処理を施した粒子の場合には、処理前の数平均粒子径)は、好ましくは150nm以下、より好ましくは50nm以下である。現実的に製造可能な数平均粒子径は1nm程度である。
なお、ここでいう数平均粒子径も透過型電子顕微鏡により求めた粒子径を指し、該粒子を含む分散物を蒸発、乾固した状態のサンプルについて透過型電子顕微鏡で観察を行い、その際の測定倍率は50万倍とし、その画面に存在する100個の粒子の外径を測定しその平均値とした。なお外径とは、前述の通り粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表す。
無機粒子Bの原料として好適な無機粒子の屈折率は、好ましくは1.55〜2.80、より好ましくは1.58〜2.50である。無機粒子の屈折率が1.55よりも小さくなると、得られる反射防止部材に形成された高屈折率層の屈折率が低下して、フッ素処理無機粒子を含む低屈折率層と無機粒子Bを含む高屈折率層との屈折率差が小さくなって、良好な反射防止性能が得られなくなり、無機粒子の屈折率が2.80よりも大きくなると、フッ素処理無機粒子を含む低屈折率層と無機粒子Bを含む高屈折率層との屈折率差、及び高屈折率層と支持基材との屈折率差が上昇し、良好な反射防止性能が得られなくなり、またわずかな膜厚の変化が干渉色の変化を引き起こし、これに起因する干渉縞が検知されて発生し外観が悪化することがある。
さらに本発明の塗料組成物において、フッ素処理無機粒子の原料となる無機粒子がシリカ粒子の場合は、無機粒子Bの原料が該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましく、このような該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が20nm以下で、かつ屈折率が1.60から2.80の無機化合物が好ましく用いられる。そのような無機化合物の具体例としては、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、リウム含有酸化亜鉛(GZO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、及び/または酸化チタン(TiO)が挙げられ、特に反射防止性の点から屈折率が高い酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。
次に本発明の塗料組成物に含まれる無機粒子Bの処理について説明する。前述の無機粒子Bの原料となる無機粒子に対する処理とは、フッ素化合物Aによる処理と同様に化学的に修飾し、無機粒子Bの原料となる無機粒子に化合物Bを導入させる工程を指し、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。
この化合物Bは、前記一般式(I)で示される化合物である。
化合物Bは、粒子表面に化学結合や吸着可能な部位(一般式(I)における、Si−(OR)部分)と、前述の反応性部位を少なくとも一カ所以上持っている化合物を指す。
粒子表面に化学結合や吸着可能な部位しては、アルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基が挙げられる。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
化合物Bによる無機粒子の処理の一つの方法には、上記化合物Bと無機粒子、もしくは無機粒子の粒子分散物と触媒、水、溶媒等とを共に撹拌、加熱、脱アルコール等し、粒子表面のシラノール基と縮合させることによりなされる方法がある。ここでいう粒子分散物については、前述の通りである。
上記一般式中のより好ましい形態は、前記Rが反応性二重結合基、またはエポキシ基であることである。この反応性二重結合基とは前述の通りである。
化合物Bによる無機粒子の処理には最適な範囲が存在するが、それは前述の通りである。
化合物Bの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
[バインダー原料]
本発明の塗料組成物中にはバインダー原料を含むことが好ましい。塗料組成物中のバインダー原料としては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料であることが好ましく、バインダー原料は一種類であっても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。ここでバインダー原料とは、塗料組成物中に含まれる化合物であり、反射防止層のバインダー成分の原料である。つまり、本発明の塗料組成物中に含まれるバインダー原料が、熱、電離放射線などにより硬化したものをバインダー成分という。なお、一部のバインダー原料については、反射防止層中でも塗料組成物中と同様の状態で存在する場合もあり(未反応のまま、反射防止層中に存在する場合もあり)、その場合でも反射防止層中のものはバインダー成分という。
また、本発明における前記フッ素処理無機粒子、無機粒子B等を膜中に保持する観点より、分子中にアルコキシ基、シラノール基、反応性二重結合、および開環反応可能な官能基を有しているモノマー、オリゴマーがバインダー原料であることが好ましい。さらにUV線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、嫌気性雰囲気下で硬化する方がより好ましい。酸素濃度を下げることにより最表面の硬化状態が向上し、耐薬品耐性が良化する場合がある。
このような塗料組成物中のバインダー原料として、具体的には多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー等を含むのが好ましく、多官能アクリレートモノマー、オリゴマーがより好ましい。
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
[その他の添加剤]
本発明の塗料組成物としては、更に開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。
開始剤及び触媒は、フッ素処理無機粒子同士、無機粒子B同士、バインダー原料同士、フッ素処理無機粒子とバインダー原料間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
該開始剤、該硬化剤、及び触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
なお、該開始剤及び該硬化剤の含有割合は、塗料組成物中のバインダー成分の合計100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
その他として、本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。
また、本発明の塗料組成物を用いたより好ましい製造方法として、支持基材上にハードコート層を設けずに透明基材上に高屈折率ハードコート層を直接形成する場合には、本願塗料組成物に上記添加物のほかに、フルオロアルキル基及び反応性部位を有するフッ素化合物Bを含むことが好ましい。
フッ素化合物Bが有するフルオロアルキル基は、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf3であることが好ましい。フルオロアルキル基Rf3は、塗料組成物の乾燥時のフッ素処理粒子同士の粒子間相互作用の抑制の点から炭素数4以上10以下が好ましく、さらに好ましくは炭素数6以上である。また分岐状に比べ直鎖状か立体障害が小さく、成分Aに吸着し易い点から直鎖状が好ましい。フルオロアルキル基を、炭素数4〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf3とすることにより、粒子の分離性が良化し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易になり、反射防止性が良化するため好ましい。このフッ素化合物Bは、前述の一般式(II)の化合物、またはその重合体でもよい。つまりフッ素化合物Bとは、フッ素化合物Aと同一の化合物であっても構わない。フッ素化合物Aは、フッ素処理無機粒子の得るための原料に相当する化合物であり、一方でフッ素化合物Bは、塗料組成物中に含有されるフッ素化合物を意味する。
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子と2種類以上の溶媒とを含み、最も含有量の多い溶媒を溶媒A、2番目に含有量の多い溶媒を溶媒Bとしたとき、(溶媒A+溶媒B)/(無機粒子)=5.0〜10.0であることが好ましい。なお、溶媒Aと溶媒Bの質量比率については、前述の通りである。上記範囲にすることにより、無機粒子の分散安定性と、自発的な層構造の形成を両立することができる。
更に好ましい様態としては、本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子としてフッ素処理無機粒子、無機粒子Bを含み、それぞれの質量部の比がフッ素処理無機粒子/無機粒子B=1/30〜1/1、であることが好ましい。
ここで塗料組成物中の各成分の質量部は、各成分が固体として取り扱える扱える場合には塗料組成物に添加した質量から、各成分が分散物の状態である時には分散物中の成分の固形分濃度を後述する方法で求め、それに塗料組成物に添加した分散物の質量を乗ずることにより求められる。
フッ素処理無機粒子/(無機粒子B)=1/30〜1/1とすることで、本塗料組成物を基材上に塗工して得られる反射防止部材の低屈折率層の厚みと高屈折率層の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗工で、低屈折率層と高屈折率層の厚みを同時に、反射防止機能を有する厚みとすることが容易であるため好ましい。
また高屈折率層の厚みを厚くし、ハードコート機能を付与しようとする場合にも、反射防止機能を損なうことなく、1回の塗工で必要な厚みとすることができるため、反射防止機能とハードコート機能の両立の点からフッ素処理無機粒子/(無機粒子B)を上記範囲とすることが可能となるため好ましい。
フッ素処理無機粒子/無機粒子Bの含有比率(質量比率)として、より好ましくはフッ素処理無機粒子/(無機粒子B)=1/29〜1/5、さらに好ましくは1/26〜1/10、特に好ましくは1/23〜1/15である。
また好ましくは、本発明の塗料組成物100質量%において、フッ素処理無機粒子、無機粒子Bの合計が0.2質量%以上40質量%以下、溶媒Aと溶媒Bを含んだ全ての溶媒の合計量が40質量%以上98質量%以下、バインダー原料が1質量%以上30質量%以下、開始剤、硬化剤、触媒、およびフッ素化合物Bなどのその他の成分が0.1質量%以上20質量%以下の態様であり、より好ましくは、フッ素処理無機粒子、無機粒子Bの合計が1質量%以上35質量%以下、溶媒Aと溶媒Bを含む全ての溶媒の合計量が50質量%以上97質量%以下、フッ素化合物Bを2質量%以上25質量%以下、その他の成分を1質量%以上15質量%以下含む態様である。
[反射防止部材]
本発明の塗料組成物を用いて得られる反射防止部材とは、各種支持基材の少なくとも片面に反射防止機能を有する層が形成された部材を指し、支持基材がプラスチックフィルムの場合には一般に反射防止フィルムと呼ばれる。その必要性や要求される性能などは特開昭59−50401号公報に記載されている様に、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層以上の反射防止層を支持基材上に積層させることで構成された様態である。また支持基材上の層、つまり反射防止層内の各層の屈折率差は5.0以下であることが好ましい。この屈折率差とは隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。
図1に本発明の対象物である反射防止部材の構造の1例を示す。反射防止部材1は支持基材2の片面上のハードコート層5の上に、屈折率の異なる2層からなる反射防止層が形成されている。反射防止層は最表面側に低屈折率層4、次いで高屈折率層3から構成される、支持基材上に3つの層が形成されている。この構成の場合には、支持基材上に通常は3回の塗工を必要とするが、本発明の塗料組成物を用いることにより、2回(ハードコート層と反射防止層)の塗工で形成することが可能になる。
図2により好ましい例として、ハードコート層の代わりに、高屈折率層に高屈折率の機能に加えて耐傷性を有する場合付与させ、高屈折率ハードコート層6を設けた例を示す。高屈折率ハードコート層は、支持基材2と低屈折率層3との接着を強化する機能も有する。この構成の場合には、支持基材上に通常は2回の塗工を必要とするが、高屈折率ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。本発明の塗料組成物を用いることにより、1回の塗工で形成することが可能である。
なお、このような本発明の反射防止部材中の反射防止層には、屈折率の異なる2層以上の層である高屈折率層と低屈折率層との間には粒子の配列による明確な界面があることが好ましい。
本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより判断することができる界面を表し、後述する方法に従い判断することができる。
反射防止部材として良好な性能を示すには、分光測定に置いて最低反射率が好ましくは0%以上1.0%以下、より好ましくは0%以上0.8%以下、さらに好ましくは0%以上0.6%以下であり、特に好ましくは0%以上0.5%以下であることが望ましい。
また、反射防止部材として良好な性質を示すには更に、透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。本発明の製造方法により得られる反射防止部材の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止部材のヘイズ値としては好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.0%未満、更に好ましくは1.6%未満であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が2.0%を超えると、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
反射防止部材として良好な性質を示すには、高屈折率層、低屈折率の厚みが特定の厚みであることが望ましく、低屈折率層の厚みが好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。低屈折率層の厚みが50nm未満であると光の干渉効果が得られず反射防止効果が得られず画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。また200nmを超える場合も光の干渉効果が得られなくなるため画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。
高屈折率層の厚みについては好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。
また、支持基材上にハードコート層を設けずに高屈折率層を形成する場合は、好ましくは500nm以上2000nm以下、さらに好ましくは600nm以上2000nm以下、特に好ましくは600nm以上1500nm以下であることが望ましい。反射防止層側の最表層から2層目の層(第2層)の厚みを500nm以上2000nm以下とすることで、耐擦傷性、耐摩耗性と、反射防止部材のカールや反射率、透過率の改善、塗膜表面のクラック発生を抑制することができるために望ましい。
本発明の反射防止部材には、さらに、易接着層、防湿層、帯電防止層、シールド層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
[支持基材]
反射防止部材をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止部材は支持基材を有することが重要である。支持基材に特に限定はないが、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
本発明の塗料組成物を基材上に塗工して得られた反射防止部材、および本発明の反射防止部材の製造方法により得られた反射防止部材の好ましい態様では、上述のような耐擦傷性が十分でないプラスチックを支持基材に使用しても、高屈折率層の厚みを制御することで反射防止性に加えて耐擦傷性も付与できるため、公知技術のように、支持基材上にハードコート層を設ける必要は必ずしもない。また上述のように、支持基材は接着層、シールド層、滑り層などの各種機能層を有するフィルムとすることもできる。
支持基材の光透過率は、80%以上100%以下であることが好ましく、86%以上100%以下であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1(1997)に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。反射防止部材の光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。
支持基材のヘイズは、0.01%以上2.0%以下であることが好ましく、0.05%以上1.0%以下であることがさらに好ましい。
支持基材の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。なお、ここでいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
支持基材には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、支持基材の全成分100質量%において0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を支持基材に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。更に、支持基材に、表面処理を実施してもよい。
支持基材の反射防止塗料組成物を塗工する側の面の表面粗さには好ましい範囲があり、40nm以下であると好ましく、より好ましくは35nm以下、さらに30nm以下である。なお。前述の機能層を有するプラスチックフィルムを支持基材として用いた場合、前記支持基材の反射防止塗料組成物を塗工する側の面としてはプラスチックフィルム側の面であっても、機能層側の面であっても特に限定されない。但し、得られる反射防止部材にハードコート性を付与するためハードコート層を有するプラスチックフィルムを用いる場合には、ハードコート層側を反射防止塗料組成物を塗工する側の面とすることが重要であり、また反射防止層と支持基材との接着性を向上させる場合には、易接着層を有するプラスチックフィルムの易接着層側を反射防止塗料組成物を塗工する側の面とすることが必要である。
支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[フッ素処理無機粒子、無機粒子Bの製造方法]
フッ素処理無機粒子および無機粒子Bの製造方法は、各種顔料、無機化合物取り扱いメーカーから粉体状態、または溶媒(分散媒とも呼ばれる)に分散された粒子分散物(粒子分散液、コロイド溶液、またはゾルとも呼ばれる)の形で入手したいずれの無機粒子に対しても前述の処理を行うことで得ることができるが、粒子分散物の形で入手した無機粒子に対して処理を行う方が、粗大粒子の除去や塗料組成物の分散安定性の面で好ましい。粉体状態で入手された無機粒子を用いる場合には、表面処理を行う前の段階で分散媒、分散剤、表面処理剤等と共にメディア型分散機で解砕、分散処理を行い、一旦、粒子分散物を調製してから表面処理を行うことが好ましい。
フッ素処理無機粒子、無機粒子Bは、前記無機粒子または前記粒子分散物に対して各種化合物(フッ素化合物A,化合物B、化合物Dなど)、溶媒、反応触媒、重合開始剤、反応停止剤、重合禁止剤、凝集防止剤、分散剤等を添加し、混合、攪拌しながら、加熱または冷却状態で反応させることにより得られ、加えてエバポレーターや逆浸透膜による脱アルコール処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂、イオン交換膜によるイオン交換処理などをおこなってもよい。
処理時の固形分濃度は、可能な範囲で低い濃度であることが好ましく、1質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、これよりも固形分濃度が低すぎると反応を十分に進めることができず、これよりも高すぎると、無機粒子の凝集による異物の発生、さらにはゲル化、凝集、沈降を起こす場合がある。また、反応終了後は、安定性を付与するため溶媒による希釈や、反応停止剤、重合禁止剤、凝集防止剤を添加してもよい。
処理の温度は、用いる反応系より異なるが、無機粒子間の架橋を起こす副反応の抑制や、無機粒子表面の分散剤等の脱離を抑制するため反応可能な範囲で低いことが好ましい。たとえばシラノール縮合を伴う表面処理では用いるシランカップリング剤の種類により異なるが、室温から90℃の間が好ましく、30℃から70℃の間がより好ましい。ラジカル重合を伴う表面処理では用いる重合開始剤の種類により反応温度は全く異なるが、例えばアゾイゾブチロニトリルを用いる場合には、60℃から100℃の間が好ましく、70℃から90℃がより好ましい。
処理の攪拌条件、攪拌装置は特に限定されないが、液全体が十分混合するのに必要な装置、および回転数であればよく、反応液中での局所的なせん断速度が10−1よりも小さく、かつ反応槽内のレイノルズ数が1000以上である範囲であることが、粒子分散物のせん断破壊による凝集と局所的な滞留による凝集、沈降を防ぐために好ましい。
処理は複数の反応系を組み合わせて行ってもよく、例えば、シラノール縮合による処理とラジカル重合による処理を組み合わせてもよい。この際には、同時、逐次いずれの方法でもよいが、逐次的に行う方がより好ましい。
処理の終了後、副反応生成物やゲル化物を除去するため、適当なろ過処理を行ってもよい。この適当なろ過とは、溶媒、粒子の表面の極性状態に合わせたフィルター材料、フィルター目開きを選択し、粒子分散物の分散状態を破壊しないせん断速度、フィルター構造に合わせた圧力条件にてろ過することを示唆する。
処理の終了後、粒子分散物の形で得られた粒子は、スプレードライ法などにより一旦粉体にして取りだしてもよいし、そのままの粒子分散物の形で取り扱ってもよいが、後工程(塗料組成物の製造工程)での取り扱いの容易さや凝集物の抑制から粒子分散物の形で取り扱う方が好ましい。
[塗料組成物の製造方法]
塗料組成物は、2種類以上の無機粒子、特定の2種類以上の溶媒、好ましくはさらにバインダー原料、他添加物(開始剤、硬化剤、触媒等)を混合して得られる。その製造方法は、前記成分の処方量を重量、または体積で計量し、これらを攪拌により混合することにより得られる。この時、加えて減圧や逆浸透膜による脱溶媒処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂によるイオン交換処理などをおこなってもよい。
無機粒子(フッ素処理無機粒子、無機粒子Bなど)は粒子分散物、粉体いずれの形で添加してもよいが、粒子分散物の形で取り扱うことが凝集、異物発生を防止する面で好ましい。粉体を原料としてとり扱う場合には、メディア型分散機などの各種分散機により溶媒(分散媒)に分散する工程を経た方が好ましい。粒子分散物として添加する場合の処方量は、粒子分散物の固形分濃度と粒子分散物の質量の積から求めた粒子の質量を用いることできる。
この固形分濃度の測定は、粒子分散物を、アルミ皿(この質量をWとする)に約2gを秤量後(この質量をWとする)、120℃の熱風オーブン内で1時間乾燥、デシケーター中で室温まで冷却後、秤量(この質量をWとする)し、下記の式に従って固形分濃度を求めることができる。
固形分濃度 =(W−W)/(W−W)×100
塗料組成物調合時の攪拌条件、攪拌装置は特に限定されないが、液全体が十分混合するのに必要な装置、および回転数であればよく、液中での局所的なせん断速度が10−1よりも小さく、かつレイノルズ数が1000以上である範囲であることが、粒子分散物のせん断破壊による凝集と局所的な滞留による凝集や、混合不良を防ぐために好ましい。
塗料組成物調合時の、粒子、溶媒、バインダー原料、他添加物(開始剤、硬化剤、触媒)の添加順、添加速度については特に限定されないが、好ましくは、粒子分散物に対し、溶媒と混合して希釈したバインダー原料、および他添加物の混合物を攪拌しながら少量ずつ添加していくことが、バインダー成分の粒子表面への吸着による凝集、さらに異物発生を防ぐために好ましい。
得られた塗料組成物は、塗工する前に適当なろ過処理を行ってもよい。この適当なろ過処理とは、溶媒、粒子の表面の極性状態に合わせたフィルター材料、フィルター目開きを選択し、粒子分散物の分散状態を破壊しないせん断速度、フィルター構造に合わせた圧力条件にてろ過することがより好ましい。
[反射防止部材の製造方法]
本発明の反射防止部材の製造方法としては、支持基材の少なくとも片面に、本発明の塗料組成物を1回のみ塗工することにより形成される1層の液膜が、前記2層からなる反射防止層を形成する方法であることが望ましい。この製造方法は、塗工工程で2つの層を形成できるため経済性の面で好ましい。
ここで、支持基材の少なくとも片面に塗料組成物を1回のみ塗工することにより形成される1層の液膜とは、支持基材に対して1回の塗工工程にて1種類の塗料組成物からなる1層の液膜を形成することを指し、1回の塗工工程にて複数層からなる液膜を同時に1回塗工する多層同時塗工や、1回の塗工時に1層の液膜を複数回の塗工、乾燥工程を有する連続逐次塗工、1回の塗工時に1層の液膜を複数回の塗工し、次いで乾燥する、ウェットオンウェット塗工などを行わないことを指す。
まず、本発明の塗料組成物を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許2681294号明細書参照)などにより支持基材上に塗工する。
これらの塗工方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗工方法として好ましい。グラビアコート法は反射防止層のような塗工量の少ない塗料組成物を均一な膜厚で塗工することに優れており、グラビアコート法の中でもダイレクトグラビア法で、グラビアロール直径の小さい小径グラビアロールを用いることが、メニスカス部の安定性確保の面からより好ましい。このような塗工方法としては、マイクログラビア法が提案されている。
また、ダイコート法は、反射防止層のような塗工量の少ない場合には、ビード背圧の印加など工夫を要するが、前計量方式のためコーティングダイへの供給液量にて膜厚の制御が可能であり、また、原理的に塗料組成物の滞留部、蒸発部がないため、塗料組成物の安定性の面からも優れている。
次いで、支持基材上に塗工された液膜を乾燥する。得られる反射防止部材中から完全に溶媒を除去する事に加え、自発的に層構造を形成させるために液膜中での粒子の運動を促進するという観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥初期においては0.1g/(m.s)以上1.4g/(m.s)以下の範囲の乾燥速度が得られるならば、特に特定の風速、温度に限定されない。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向で乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましく、さらに恒率乾燥期間においては、幅方向で均一な乾燥速度を達成するため、対流伝熱による乾燥の場合には、制御可能な風速を維持しつつ、乾燥時の総括物質移動係数を下げることが可能な方法として、支持基材に対して平行で、基材の搬送方向に対して平行、あるいは垂直な方向に熱風を送風する方式が望ましい。
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の2層に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐アルカリ性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3000mW/cm、好ましくは200〜2000mW/cm、さらに好ましくは300〜1500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3000mJ/cm、好ましく200〜2000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。また本発明の反射防止部材は、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。なおこの際は、反射防止部材における支持基材側を画像表示装置側として、反射防止部材などを設けることが重要である。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[フッ素処理無機粒子の調製]
[フッ素処理無機粒子分散物(a)]
中空シリカ粒子イソプロピルアルコール分散物(日揮触媒化成株式会社製中空シリカ:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 60nm)15gに、(CH=C(CH)COOCSi(OCH)1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17g、水0.306gとを混合し、70℃にて1時間撹拌した。次いでフッ素化合物AとしてHC=CHCOOCH(CFF 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。次いで、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンを加え希釈し、固形分3.5質量%のフッ素処理無機粒子分散物(a)分散物とした。この結果、得られたフッ素処理無機粒子分散物(a)が含有する溶媒の種類は、メチルイソブチルケトンとイソプロピルアルコールで、全溶媒成分に占める質量割合はそれぞれ、92.5質量%と7.5質量%である。
[フッ素処理無機粒子分散物(b)〜(g)の調製]
フッ素処理無機粒子分散物(a)に対し、表1に示す希釈溶媒の種類を変更した以外は同様にして、フッ素処理無機粒子分散物(b)〜(g)を調製した。また、表1中にフッ素処理無機粒子分散物(b)〜(g)が含有する溶媒の種類と比率を示す。
[無機粒子Bの調製]
[無機粒子B(a)分散物]
原料粒子分散物として、酸化ジルコニウムメタノール分散物(日産化学株式会社製:“ナノユース”OZ−30M 固形分濃度31質量%)167g(X=150m/g X=51.77g)を用い、化合物BとしてCH=CHCOOCSi(OCH25g(Mw=234.3 Y=334.2m/g=25.0g)を滴下、均一に攪拌した。
次いで、これに20%酢酸水溶液12.5g、イオン交換水12.9gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。
さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、50℃、680mmHgにて脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30%に調製、精密ろ過をして無機粒子B(a)分散物を得た。この無機粒子B(a)の(Y)/(X)の値は、1.08であった。
[無機粒子B(b)分散物〜無機粒子B(e)分散物、無機粒子B(g)分散物〜無機粒子B(n)分散物の調整]
無機粒子B(b)分散物から無機粒子B(e)分散物、無機粒子B(g)分散物から無機粒子B(n)分散物の調製は、前述の無機粒子B(a)分散物の製造方法に対して、表2に示すように、化合物Bの添加量、種類,置換溶媒、原料粒子分散物の種類を変更して得た。また、得られた無機粒子B(b)分散物〜無機粒子B(e)分散物、無機粒子B(g)分散物〜無機粒子B(n)分散物の(Y)/(X)の値は、表2に示す。
[塗料組成物]
〔塗料組成物1〜27の調製〕
[塗料組成物1] 下記材料を混合し、塗料組成物1を得た。
フッ素処理無機粒子(a)分散物 43 質量部
無機粒子B(a)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルイソブチルケトン 4.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物2] 下記材料を混合し、塗料組成物2を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
イソプロピルアルコール 6.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 8.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物3] 下記材料を混合し、塗料組成物3を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 4.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物4] 下記材料を混合し、塗料組成物4を得た。
フッ素処理無機粒子(c)分散物 43 質量部
無機粒子B(c)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
シクロヘキサノン 4.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物5] 下記材料を混合し、塗料組成物5を得た。
フッ素処理無機粒子(d)分散物 43 質量部
無機粒子B(d)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
ジアセトンアルコール 4.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物6] 下記材料を混合し、塗料組成物6を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(e)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
イソプロピルアルコール 6.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 8.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物7] 下記材料を混合し、塗料組成物7を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(e)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 8.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 6.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物8] 下記材料を混合し、塗料組成物8を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 7.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 7.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物9] 下記材料を混合し、塗料組成物9を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 10.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 4.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物10] 下記材料を混合し、塗料組成物10を得た。
フッ素処理無機粒子(c)分散物 43 質量部
無機粒子B(e)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
シクロヘキサノン 8.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 6.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物11] 下記材料を混合し、塗料組成物11を得た。
フッ素処理無機粒子(c)分散物 43 質量部
無機粒子B(e)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
ジアセトンアルコール 8.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 6.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物12] 下記材料を混合し、塗料組成物12を得た。
フッ素処理無機粒子(e)分散物 43 質量部
無機粒子B(e)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
テトラヒドロフラン 8.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 6.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物13] 下記材料を混合し、塗料組成物13を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(n)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
イソプロピルアルコール 6.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 8.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物14〜20]
塗料組成物3に対し、無機粒子B(b)分散物を、表3に示す無機粒子B分散物に変更した以外は同様にして、塗料組成物14〜20を得た。
[塗料組成物21] 下記材料を混合し、塗料組成物21を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 4.2 質量部
n−ブタノール 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物22] 下記材料を混合し、塗料組成物22を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 4.2 質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物23] 下記材料を混合し、塗料組成物23を得た。
フッ素処理無機粒子(f)分散物 43 質量部
無機粒子B(e)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
イソプロピルアルコール 14.2質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物24] 下記材料を混合し、塗料組成物24を得た。
フッ素処理無機粒子(f)分散物 43 質量部
無機粒子B(e)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
イソプロピルアルコール 4.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物25] 下記材料を混合し、塗料組成物25を得た。
フッ素処理無機粒子(g)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 8.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 6.0 質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物26] 下記材料を混合し、塗料組成物26を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(a)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 4.2 質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[塗料組成物27] 下記材料を混合し、塗料組成物26を得た。
フッ素処理無機粒子(b)分散物 43 質量部
無機粒子B(b)分散物 28 質量部
カヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%) 5.8 質量部
メチルエチルケトン 4.2 質量部
ジエチレングリコール 10.0質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.3 質量部
R1820(ダイキン化成品製:固形分100質量%) 8.7 質量部
[反射防止部材の作製]
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗工されている“ルミラー”U46(東レ(株)製)を用いた。この支持基材の易接着塗料が塗工されている面上に、塗料組成物1〜27をバーコーター(#10)を用いて塗工後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
第一段階
熱風温度25℃
熱風風速0.5m/s
風向 塗工面に対して平行
乾燥時間2分間
第二段階
熱風温度130℃
熱風風速5m/s
風向 塗工面に対して垂直
乾燥時間2分間
なお、熱風の風速は動静圧管による測定値を使用した。乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させ、実施例1〜22、比較例1〜5の反射防止部材を作成した。
[相対蒸発速度]
溶媒A,Bの相対蒸発速度は、酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度(ASTM D3539−87(2004))として求めた。詳細は、TECHNIQUES OF CHEMISTRY VOL.2 ORGANIC SOLVENTS Physical Properties and methods of purification 4th ed.(Inter science Publishers,Inc.1986 page62)に記載のとおりである。
[無機粒子B分散物の固形分濃度の算出]
無機粒子B分散物の固形分濃度は、無機粒子B分散物をアルミ皿(この質量をWとする)に約2gを秤量後(この質量をWとする)、120℃の熱風オーブン内で1時間乾燥、デシケーター中で室温まで冷却後、秤量(この質量をWとする)し、下記の式に従って固形分濃度を求めた。
固形分濃度 =(W−W)/(W−W)×100
[無機粒子Bの比表面積X(m/g)の算出]
無機粒子Bの比表面積Xは、前述の方法で作成した無機粒子B分散物を乾燥させたものについて、JIS Z 8830(2001)に基づく方法で、Micromeritics社製流動式比表面積自動測定装置フローソーブIII2305を用い窒素吸着法で測定を行った。
〔化合物Bの最小被覆面積Y
化合物Bの最小被覆面積Yとは、化合物Bが粒子表面に結合するときの1分子あたりの占有面積(m/mol)であり、Stuart−brieglebの分子モデルから計算されたものを指し、下記式により求める。
最小被覆面積Y(m/g)=(78.3×1000)/化合物Bの分子量
[反射防止部材の評価]
作製した反射防止部材について次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表4に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[面状欠陥]
A4サイズの反射防止部材20枚について目視で確認を行い、欠陥部の外接円の直径が0.5mm以上の欠陥を面状欠陥としてカウントし、1枚あたりの欠陥の個数を求め、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点 面状欠陥の数 1個未満
4点 面状欠陥の数 1個以上3個未満
3点 面状欠陥の数 3個以上5個未満
2点 面状欠陥の数 5個以上10個以下
1点 面状欠陥の数 10個以上
[界面状態]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、反射防止層中の高屈折率層と低屈折率層の間で形成される界面の有無を判断した。界面の有無の判断は以下の方法に従い判断した。反射防止層の超薄切片に対し、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整した。さらに2種類の粒子が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。このとき1つの層と他の層との間に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなした。
明確な境界を引くことができる場合 「○」
明確な境界を引くことができない場合「×」
[耐擦傷性]
反射防止部材に250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上。
[耐摩耗性]
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端(先端部面積 1cm)に、白ネル〔興和(株)製〕を取り付け、500gの荷重をかけて反射防止部材上を5cm、5000回往復、及び1000g荷重をかけて反射防止部材上を5cm、200回往復摩擦し、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点: 傷なし
4点: 1〜10本の傷
3点: 11〜20本の傷
2点: 21本以上の傷
1点: 試験部分の反射防止層が全面剥離。
[透明性]
透明性はヘイズ値を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止部材サンプルの支持基材とは反対側(反射防止層側)から光を透過するように装置に置いて測定を行い、ヘイズ値が2.0%未満を合格とした。
[反射防止性能]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、最低反射率(ボトム反射率)を測定し、0.8%未満を合格とした。反射率は波長550nm付近で極小値(最低反射率)となったときの値を示した。
表1から表3にフッ素処理無機粒子分散物、無機粒子B分散物,および塗料組成物の組成を、表4に実施例、比較例の構成と得られた反射防止部材の評価結果をまとめた。評価項目において1項目でも合格とならないものについて、課題未達成と判断した。
表4に示すように本発明の実施例は、耐擦傷性、耐摩耗性と透明性、反射防止性能いずれにおいても合格しており、本発明が解決しようとする課題を達成している。
溶媒A、溶媒Bの割合が本発明の好ましい範囲から外れる実施例6と実施例9では、透明性、反射防止性能、面状欠陥がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
溶媒Aと溶媒Bのnー酢酸ブチルを基準とした相対蒸発速度が、本発明の好ましい組み合わせとは異なる実施例10、11では、透明性、反射防止性能がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
溶媒Aの種類が、本発明の好ましい種類とは異なる実施例12では、透明性、反射防止性能、面状欠陥がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
無機粒子Bに対して、本発明の好ましい表面処理がなされていない参考例13、および無機粒子Bに対する表面処理が、本発明の好ましい領域から外れている実施例17、20では、面状欠陥、と耐摩耗性がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
溶媒Bの種類が、本発明の好ましい種類とは異なる実施例21、22では面状欠陥がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
Figure 0005724242
Figure 0005724242
Figure 0005724242
Figure 0005724242
1 反射防止部材
2 支持基材
3 反射防止層
4 低屈折率層
5 高屈折率層
6 高屈折率ハードコート層
本発明の塗料組成物、それを用いた反射防止部材の製造方法、及び反射防止部材は、例えば、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材;フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜;各種基材の接着剤、シーリング材;印刷インクのバインダー材等として好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 2種類以上の無機粒子と2種類以上の溶媒とを含む塗料組成物であって、
    最も含有量の多い溶媒を溶媒A、2番目に含有量の多い溶媒を溶媒Bとしたとき、溶媒Aの溶解度パラメーターが17(MPa)1/2以上21(MPa)1/2以下であり、溶媒Bの溶解度パラメーターが、19(MPa)1/2以上24(MPa)1/2以下であり、少なくとも1種類の無機粒子が下記一般式(III)で示される化合物Dで処理し、次いで下記一般式(II)で示されるフッ素化合物Aにより処理された無機粒子であり、
    他の少なくとも1種類の無機粒子が、下記一般式(I)で示される化合物Bにより処理された無機粒子(以下、化合物Bにより処理された無機粒子を、無機粒子Bとする)であることを特徴とする塗料組成物。
    化合物B: R−R−SiR n1(OR3−n1 一般式(I)
    (ここで、Rは反応性部位、R、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1から3のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造を示す。また、n1は0から2のいずれかの整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
    フッ素化合物A: R −R −R 一般式(II)
    (ここで、R はフルオロアルキル基、R は反応性部位、R は炭素数1から6のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造を示す。それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
    化合物D: R −R −SiR n2 (OR 10 3−n2 一般式(III)
    (上記一般式(III)中のR は反応性部位を示し、R は炭素数1から6のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R 、R 10 は水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、n2は0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
  2. 全ての溶媒の合計を100質量%とした際に、前記溶媒Aが60質量%以上90質量%以下、前記溶媒Bが、5質量%以上40質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
  3. 溶媒Aの酢酸n−ブチルを基準とした相対蒸発速度(ASTM D3539−87(2004))が、溶媒Bの酢酸n−ブチルを基準とした前記相対蒸発速度よりも高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の塗料組成物。
  4. 前記溶媒Aがケトン類であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の塗料組成物。
  5. 前記無機粒子Bが、比表面積X(m/g)、質量Xの無機粒子を、最小被覆面積Y(m/g)、質量Yの化合物Bにより処理した無機粒子Bであり、
    、X、Y、Yが以下の関係式を満たすことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の塗料組成物。
    50≦((Y×Y)/(X×X))×100≦300
  6. 前記溶媒Bが、炭素数3以下のアルコール類、及び炭素数7以下のグリコールエーテル類からなる群より選ばれる一つであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の塗料組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
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