JP5722524B2 - 補体活性を抑制することによる同種移植片の生存の延長 - Google Patents

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Description

(関連出願)
この出願は、2006年3月2日出願の米国特許仮出願第60/778,859号の利益および優先権を主張し、これにより全体として参照により組み入れられる。
本開示は哺乳動物での同種移植片の生存を延長させるための方法に関する。特に、本開示は、免疫反応を抑制する1以上の薬物または方法に加えて、補体または終末補体(terminal complement)の形成の阻害剤、特に補体C5切断の阻害剤を投与することによる同種移植片の生存を延長させることに関する。
(背景)
臓器移植は、慢性臓器不全を伴う大半の患者において好ましい治療である。腎臓、肝臓、肺および心臓の移植は、レシピエントがより正常なライフスタイルに戻る際に、回復の素晴らしい機会を与えるが、潜在的レシピエントの医学的および外科的な適合性、ドナー不足の深刻化、および移植臓器機能の早期不全によって制限される。
細胞、組織および器官の移植が非常に一般的になっており、救命手段となる場合が多い。臓器移植は慢性臓器不全を伴う大半の患者において好ましい治療である。拒絶反応を抑制するための処置における大きな改善にもかかわらず、拒絶反応が臓器移植の成功における一つの最も大きな障害であり続けている。拒絶反応には急性拒絶反応だけでなく慢性拒絶反応も含まれる。腎臓移植での1年間生存率は、死亡したドナーからの腎臓では平均88.3%、そして生きているドナーから受けた腎臓では平均94.4%である。腎臓移植での対応する5年間生存率は、63.3%および76.5%(OPTN/SRTR Annual Report,2002)である。肝臓では、1年間生存率は、死亡したドナーおよび生きているドナーからの肝臓でそれぞれ80.2%および76.5%である。肝臓移植での対応する生存率は63.5%および73.0%(OPTN/SRTR Annual Report,2002)である。免疫抑制薬、特にシクロスポリンA、そしてより最近ではタクロリムスの使用によって、特に急性拒絶反応を予防することにより臓器移植術の成功率が劇的に改善されている。しかし、上記数字が示す通り、依然として短期および特に長期のいずれの成功率も改善させる必要性がある。腎臓および肝臓の上記移植数から分かる通り、これらの移植器官での5年間失敗率は約25〜35%である。2001年だけで、臓器移植を受けた患者が23,000人以上おり、そのうち約19,000人が腎臓または肝臓であった(OPTN/SRTR Annual Report,2002)。この1年間の移植臓器だけで、現在の技術によって、移植された腎臓および肝臓の約5,000〜6,000が5年以内に失敗すると予測できる。これらの数字には、骨髄などの他の移植器官または移植組織または移植細胞さえも含まれない。
移植には複数の種類が存在する。これらは[Abbasら、2000]に記載されている。1個人から同じ個人に移植された移植片は、自己の移植片または自己移植片と呼ばれる。遺伝的に同一または同系の個人間で移植された移植片は同系移植と呼ばれる。同じ種の遺伝的に異なる2人の個人間で移植された移植片は、同種の移植片または同種移植片と呼ばれる。異なる種の個体間で移植された移植片は、異種の移植片または異種移植と呼ばれる。同種移植片上で異物として認識される分子は同種抗原と呼ばれ、そして異種移植片上の分子は異種抗原と呼ばれる。同種抗原または異種抗原と反応するリンパ球または抗体は、それぞれアロ反応性または異種反応性であると記載される。
現在、米国では毎年40,000例以上の腎臓、心臓、肺、肝臓および膵臓の移植が行なわれている(Abbasら、2000)。他の可能な移植としては、限定はされないが、血管組織、眼、角膜、水晶体、皮膚、骨髄、筋肉、結合組織、胃腸組織、神経組織、骨、幹細胞、膵島、軟骨、肝細胞および造血細胞が挙げられる。不運にも、ドナーよりもずっと多くの移植の候補者が存在する。この不足を克服するために、異種移植の利用方法を学ぶための多大な努力がなされている。この分野が進歩するにつれて、実情は現在のところ大半の移植片が同種移植片である。現在、同種移植は異種移植よりも成功する可能性が高いが、成功するには多数の障害を越えなくてはならない。ドナー器官に対してレシピエントが起こす数種の免疫学的攻撃が存在しており、これらは同種移植片の拒絶反応を招きうる。これらとしては、超急性拒絶反応、急性血管拒絶反応(早期体液性拒絶反応と新たな急性体液性拒絶反応を含む)および慢性拒絶反応が挙げられる。通常、拒絶反応はT細胞媒介性の攻撃または体液性抗体の攻撃の結果であるが、しかし補体およびサイトカインの効果といった追加の二次的因子が含まれうる。
臓器移植を必要とする患者の数と利用可能なドナー臓器の数との絶え間なく増大するギャップが世界中で主要な問題になっている(Parkら、2003)。抗HLA抗体を発生させた個人は、免疫性を付与されている、または感作されていると言われる。(Gloor,2005)重度の抗体媒介性拒絶反応(ABMR)の発生のため、臨床移植における生きているドナーからの器官の最適な使用においてはHLA感作が大きな障壁である。例えば、腎移植を待つすべての個人の50%以上が、複数回の輸血、過去の同種移植片の失敗または妊娠に起因する、反応性の広い同種抗体の濃度が上昇している前感作患者(Glotzら、2002)である(Kupiec−Weglinski,1996)。この種の拒絶反応が同種移植片の機能の急性喪失または慢性喪失を招きうるとの認識のため、現在、ABMRの役割は移植において最も精力的に試験されている分野の1つである(Mehraら、2003)。超急性拒絶反応(HAR)または早期体液性拒絶反応(ACHR)を含む、多数のABMR症例が報告されており、強力な抗T細胞治療に耐性である急性同種移植片傷害、循環ドナー特異的抗体の検出および移植片中の補体成分の沈着を特徴とする。急性拒絶反応の症例の20〜30%において生じる循環同種抗体の上昇および補体活性化を伴うABMRは、細胞性拒絶反応よりも予後不良である(Mauiyyediら、2002)。
高濃度の同種抗体を示す高度に前感作された患者は、通常、即時および侵襲性のHAR を経験する。診療においては、当技術における多大の努力および大幅な進歩によって、ドナーHLA抗原に特異的な抗体を有する感作患者を特定するための移植前リンパ球毒性クロスマッチを得ることでHARを回避する。しかし、ドナーHLAまたは他の非MHC内皮抗原に対する循環抗体は、移植片消失の発生増加に関連する遅延型の急性体液性拒絶反応にも関与しうる。(Collinsら、1999)。したがって、臨床現場においてABMRを模倣する新規の前感作動物モデルの作成は、機序の研究、および前感作宿主における同種移植片の拒絶反応の管理におけるより大きな必要性に対して有益となりうる。
高度に前感作させた患者は、一時的に抗ドナー抗体を排除するように設計および実施される、免疫吸着(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)、血漿搬出および静脈内免疫グロブリン(非特許文献4;非特許文献5)などの介入プログラムから恩典を得ることができる。しかし、それらの恩典に加えて、一部の個人はこれらの効果に対して感受性が低いため、上述の治療は多数の欠点を伴い(非特許文献3;Hakimら、1990;Glotzら、1993;Tyanら、1994)、それらは極めて効果であり、時間がかかり、そしてリスクを伴う(Salamaら、2001)。さらに、これらのプロトコルの一過性かつ変動する効果のため、それらの影響が限定される(Glotzら、2002;Kupinら、1991 ;Schweitzerら、2000)。したがって、ABMRの予防におけるリスクとコストを低減させるための新規戦略を開発することは、同種移植片を受ける前感作レシピエントに有益となりうる。
Palmerら、Lancet(1989)1:10〜12 Rossら、Transplantation(1993)55:785〜789 Kriaaら、Nephrol.Dial.Transplant.(1995)10 Suppl.6:108〜110 Sonnendayら、Transplant.Proc.(2002)34:1614〜1616 Rochaら、Transplantation(2003)75:1490〜1495
(要旨)
したがって、移植した細胞、組織または器官の生存を延長させるための方法を提供する。特に、同種移植した細胞、組織または器官の生存を延長させるための方法を提供する。これらの方法では、補体活性の阻害剤に加えて、1以上の免疫抑制剤および/または免疫抑制方法の使用を対象としている。1以上の薬物または薬物パッケージの製造における1以上の免疫抑制剤および補体活性の阻害剤の使用も提供する。のような薬物あるいは薬物パッケージは、被験体である哺乳動物における同種移植片の生存期間を延長する際に有用である。
同種移植片の例は、同種移植された細胞、組織または臓器であり、限定はされないが、血管組織、眼、角膜、水晶体、皮膚、骨髄、筋肉、結合組織、胃腸組織、神経組織、骨、幹細胞、膵島、軟骨、肝細胞、造血細胞、心臓、肝臓、肺、腎臓および膵臓が挙げられる。
特定の局面では、開示は、レシピエント哺乳動物での腎臓同種移植片の生存を延長させる方法を提供し、該方法は、該哺乳動物に対してa)補体活性を抑制する薬物を投与すること、およびb)少なくとも1つの免疫抑制治療を施すことを含み、該治療がi)少なくとも1つの免疫抑制薬またはii)免疫調節治療から選択される。
特定の態様では、前記哺乳動物がヒトである。特定の態様では、前記同種移植片がMHC不適合である。特定の態様では、前記MHC不適合同種移植片がHLA不適合同種移植片である。特定の態様では、前記レシピエントが前記同種移植片に対してABO不適合である。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が慢性投与される。
特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物がC5bまたはC5aの形成を抑制する。特定の態様では、C5bまたはC5aの形成を抑制する前記薬物が抗体全体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ化抗体または脱免疫化抗体(deimmunized antibody)または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片が補体C5の切断を抑制する。特定の態様では、前記抗体断片がFab、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体からなる群より選択される。特定の態様では、前記抗体断片がペキセリズマブ(pexelizumab)である。特定の態様では、前記抗体全体がエクリズマブである。特定の態様では、前記エクリズマブが慢性投与される。特定の態様では、前記エクリズマブが2週間に1回投与される。
特定の態様では、前記の補体活性の阻害剤がi)可溶性補体受容体、ii)CD59、iii)CD55、iv)CD46およびv)C5、C6、C7、C8またはC9に対する抗体からなる群より選択される。
特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性またはB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性およびB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬が、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、OKT3、コルチコステロイド、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アザチオプレン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、抗T細胞抗体、シクロホスファミド、レフルノミド、ブレキナール、ATG、ALG、15−デオキシスペルグアリン、プリン類似体、リツキサン、CTLA−4−Ig(ベラタセプト)、IVIg、LF15−0195およびブレディニンからなる群より選択される。特定の態様では、2以上の免疫抑制薬が投与される。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)シクロスポリンAを投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物、ii)シクロスポリンAおよびiii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が補体C5の切断を抑制する抗体である。特定の態様では、免疫調節治療法(例、血漿搬出、脾摘除術または免疫吸着)が補体活性の阻害剤と併用される。
特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも20%長い期間生き残る。特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも40%長い期間生き残る。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも3カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも6カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも1年間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも5年間生き残る。特定の態様では、前記ヒトの残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。
特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも14日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも28日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも3ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも6ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも1年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも5年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり慢性投与される。
特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくとも1つの免疫抑制薬が慢性投与される。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともシクロスポリンAが慢性投与される。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともLF15−0195が慢性投与される。
特定の局面では、開示は、レシピエント哺乳動物での腎臓同種移植片の生存を延長させる方法であって、前記哺乳動物に対してa)補体活性を抑制する薬物を投与すること、およびb)少なくとも1つの免疫抑制治療を施すことを含む前記方法であって、前記治療がi)少なくとも1つの免疫抑制薬またはii)免疫調節治療から選択され、前記哺乳動物は前記同種移植片に対して前感作される、方法を提供する。
特定の態様では、前記哺乳動物がヒトである。特定の態様では、前記同種移植片がMHC不適合である。特定の態様では、前記MHC不適合同種移植片がHLA不適合同種移植片である。特定の態様では、前記レシピエントが同種移植片に対してABO不適合である。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が慢性投与される。
特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物がC5bまたはC5aの形成を抑制する。特定の態様では、C5bまたはC5aの形成を抑制する前記薬物が抗体全体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ化抗体または脱免疫化抗体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片が補体C5の切断を抑制する。特定の態様では、前記抗体断片がFab、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体からなる群より選択される。特定の態様では、前記抗体断片がペキセリズマブである。特定の態様では、前記抗体全体がエクリズマブである。特定の態様では、前記エクリズマブが慢性投与される。特定の態様では、前記エクリズマブが2週間に1回投与される。
特定の態様では、前記の補体活性の阻害剤がi)可溶性補体受容体、ii)CD59、iii)CD55、iv)CD46およびv)C5、C6、C7、C8またはC9に対する抗体からなる群より選択される。
特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性またはB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性およびB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬が、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、OKT3、コルチコステロイド、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アザチオプレン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、抗T細胞抗体、シクロホスファミド、レフルノミド、ブレキナール、ATG、ALG、15−デオキシスペルグアリン、プリン類似体、リツキサン、CTLA−4−Ig(ベラタセプト)、IVIg、LF15−0195およびブレディニンからなる群より選択される。特定の態様では、2以上の免疫抑制薬が投与される。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)シクロスポリンAを投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物、ii)シクロスポリンAおよびiii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が補体C5の切断を抑制する抗体である。特定の態様では、免疫調節治療法(例、血漿搬出、脾摘除術または免疫吸着)が補体活性の阻害剤と併用される。
哺乳動物が同種移植片に対して前感作される特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも20%長い期間生き残る。特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも40%長い期間生き残る。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも3カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも6カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも1年間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも5年間生き残る。特定の態様では、前記ヒトの残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。
哺乳動物を同種移植片に対して前感作させる特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも14日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも28日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも3ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも6ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも1年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも5年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり慢性投与される。
哺乳動物が同種移植片に対して前感作用される特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくとも1つの免疫抑制薬が慢性投与される。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともシクロスポリンAが慢性投与される。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともLF15−0195が慢性投与される。
特定の局面では、開示は、哺乳動物での腎臓同種移植片の生存を延長させるための薬物または薬物パッケージの製造における補体活性を抑制する薬物および免疫抑制薬の使用を提供する。特定の態様では、2以上の免疫抑制薬が前記の薬物または薬物パッケージに含まれる。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物および前記免疫抑制薬が前記哺乳動物への同時投与に適した製剤中にある。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物および前記免疫抑制薬が前記哺乳動物への連続投与に適した製剤中にある。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が前記哺乳動物への慢性投与に適した製剤中にある。特定の態様では、前記免疫抑制薬が前記哺乳動物への慢性投与に適した製剤中にある。
特定の局面では、開示は、レシピエント哺乳動物での腎臓同種移植片の生存を延長させる方法であって、前記哺乳動物に対してa)補体活性を抑制する薬物を投与すること、およびb)LF15−0195を含む少なくとも1つの免疫抑制治療を施すことを含み、治療がi)少なくとも1つの免疫抑制薬またはii)免疫調節治療から選択される方法を提供する。
特定の態様では、前記哺乳動物がヒトである。特定の態様では、前記同種移植片がMHC不適合である。特定の態様では、前記MHC不適合同種移植片がHLA不適合同種移植片である。特定の態様では、前記レシピエントが前記同種移植片に対してABO不適合である。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が慢性投与される。
特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物がC5bまたはC5aの形成を抑制する。特定の態様では、C5bまたはC5aの形成を抑制する前記薬物が抗体全体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ化抗体または脱免疫化抗体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片が補体C5の切断を抑制する。特定の態様では、前記抗体断片がFab、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体からなる群より選択される。特定の態様では、前記抗体断片がペキセリズマブである。特定の態様では、前記抗体全体がエクリズマブである。特定の態様では、前記エクリズマブが慢性投与される。特定の態様では、前記エクリズマブが2週間に1回投与される。
特定の態様では、前記の補体活性の阻害剤がi)可溶性補体受容体、ii)CD59、iii)CD55、iv)CD46およびv)C5、C6、C7、C8またはC9に対する抗体からなる群より選択される。
特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性またはB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性およびB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬が、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、OKT3、コルチコステロイド、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アザチオプレン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、抗T細胞抗体、シクロホスファミド、レフルノミド、ブレキナール、ATG、ALG、15−デオキシスペルグアリン、プリン類似体、リツキサン、CTLA−4−Ig(ベラタセプト)、IVIg、LF15−0195およびブレディニンからなる群より選択される。特定の態様では、2以上の免疫抑制薬が投与される。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)シクロスポリンAを投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物、ii)シクロスポリンAおよびiii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が補体C5の切断を抑制する抗体である。特定の態様では、免疫調節治療法(例、血漿搬出、脾摘除術または免疫吸着)が補体活性の阻害剤と併用される。
特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも20%長い期間生き残る。特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも40%長い期間生き残る。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも3カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも6カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも1年間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも5年間生き残る。特定の態様では、前記ヒトの残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。
特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも14日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも28日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも3ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも6ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも1年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも5年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり慢性投与される。
特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくとも1つの免疫抑制薬が慢性投与される。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともシクロスポリンAが慢性投与される。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともLF15−0195が慢性投与される。
特定の局面では、開示は、レシピエント哺乳動物での腎臓同種移植片の生存を延長させる方法であって、前記哺乳動物に対するa)補体活性を抑制する薬物およびb)少なくとも1つの免疫抑制薬を投与することを含み、治療がi)LF15−0195を含む少なくとも1つの免疫抑制薬またはii)免疫調節治療から選択され、哺乳動物が該同種移植片に対して前感作される、方法を提供する。
特定の態様では、前記哺乳動物がヒトである。特定の態様では、前記同種移植片がMHC不適合である。特定の態様では、前記MHC不適合同種移植片がHLA不適合同種移植片である。特定の態様では、前記レシピエントが前記同種移植片に対してABO不適合である。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が慢性投与される。
特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物がC5bまたはC5aの形成を抑制する。特定の態様では、C5bまたはC5aの形成を抑制する前記薬物が抗体全体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ化抗体または脱免疫化抗体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片が補体C5の切断を抑制する。特定の態様では、前記抗体断片がFab、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体からなる群より選択される。特定の態様では、前記抗体断片がペキセリズマブである。特定の態様では、前記抗体全体がエクリズマブである。特定の態様では、前記エクリズマブが慢性投与される。特定の態様では、前記エクリズマブが2週間に1回投与される。
特定の態様では、前記の補体活性の阻害剤がi)可溶性補体受容体、ii)CD59、iii)CD55、iv)CD46およびv)C5、C6、C7、C8またはC9に対する抗体からなる群より選択される。
特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性またはB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬がT細胞活性およびB細胞活性を抑制する。特定の態様では、前記免疫抑制薬が、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、OKT3、コルチコステロイド、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アザチオプレン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、抗T細胞抗体、シクロホスファミド、レフルノミド、ブレキナール、ATG、ALG、15−デオキシスペルグアリン、プリン類似体、リツキサン、CTLA−4−Ig(ベラタセプト)、IVIg、LF15−0195およびブレディニンからなる群より選択される。特定の態様では、2以上の免疫抑制薬が投与される。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)シクロスポリンAを投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物およびii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、前記方法にi)補体活性を抑制する薬物、ii)シクロスポリンAおよびiii)LF15−0195を投与することが含まれる。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が補体C5の切断を抑制する抗体である。特定の態様では、免疫調節治療法(例、血漿搬出、脾摘除術または免疫吸着)が補体活性の阻害剤と併用される。
哺乳動物が同種移植片に対して前感作される特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも20%長い期間生き残る。特定の態様では、前記方法が補体活性を抑制する前記薬物なしで実施された場合に前記同種移植片が少なくとも40%長い期間生き残る。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも3カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも6カ月間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも1年間生き残る。特定の態様では、前記同種移植片が少なくとも5年間生き残る。特定の態様では、前記ヒトの残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る。
哺乳動物が同種移植片に対して前感作される特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも14日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも28日間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも3ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも6ヶ月間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも1年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が少なくとも5年間慢性投与される。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり慢性投与される。
哺乳動物が同種移植片に対して前感作される特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくとも1つの免疫抑制薬が慢性投与される。特定の態様では、哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともシクロスポリンAが慢性投与される。特定の態様では、前記哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともLF15−0195が慢性投与される。
特定の局面では、開示は、哺乳動物での腎臓同種移植片の生存を延長させるための薬物または薬物パッケージの製造における補体活性を抑制する薬物および免疫抑制薬の使用を提供し、少なくとも1つの免疫抑制薬にLF15−0195が含まれる。特定の態様では、2以上の免疫抑制薬が前記の薬物または薬物パッケージに含まれる。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物および前記免疫抑制薬が哺乳動物への同時投与に適した製剤中にある。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物および前記免疫抑制薬が前記哺乳動物への連続投与に適した製剤中にある。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が前記哺乳動物への慢性投与に適した製剤中にある。特定の態様では、前記免疫抑制薬が前記哺乳動物への慢性投与に適した製剤中にある。
特定の局面では、開示は、補体活性を抑制する薬物および少なくとも1つの免疫抑制薬を含む薬学的パッケージであって、該補体活性を抑制する薬物および該免疫抑制薬が慢性投与用に製剤化されており、少なくとも1つの免疫抑制薬がLF15−0195を含む薬学的パッケージを提供する。
特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が抗体および凍結保護剤を含む凍結乾燥製剤中の抗体である。特定の態様では、前記免疫抑制薬が免疫抑制薬および凍結保護剤を含む凍結乾燥製剤中にある。特定の態様では、前記薬物および前記免疫抑制薬が前記薬物、前記免疫抑制薬および凍結保護剤を含む同じ凍結乾燥製剤中にある。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物がカートリッジを備えたシリンジを含む注射システム内にあって、該カートリッジが注射に適した製剤中に該薬物を含む。特定の態様では、前記免疫抑制薬がカートリッジを備えたシリンジを含む注射システム内にあって、該カートリッジが注射に適した製剤中に該免疫抑制薬を含む。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物および前記免疫抑制薬がカートリッジを備えたシリンジを含む注射システム内にあり、該カートリッジが注射に適した製剤中に該薬物および該免疫抑制薬を含む。特定の態様では、補体活性を抑制する前記薬物が単位投薬形態で存在する。特定の態様では、前記免疫抑制薬が単位投薬形態で存在する。
特定の態様では、前記抗体が終末補体またはC5aの形成を抑制する。特定の態様では、抗体は抗体全体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ化抗体または脱免疫化抗体または抗体断片である。特定の態様では、前記の抗体全体または抗体断片が補体C5の切断を抑制する。特定の態様では、前記抗体断片がFab、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体からなる群より選択される。特定の態様では、前記抗体断片がペキセリズマブである。特定の態様では、前記抗体全体がエクリズマブである。
出願では、上記局面および態様の任意の併用についても検討している。
(詳細な説明)
概観:移植器官または移植片の拒絶反応
移植から数分から数時間以内に超急性拒絶反応が発生しており、移植された組織抗原に対して前もって形成された抗体に起因している。これは移植片の血管系での出血および血栓性閉塞を特徴とする。内皮への抗体の結合によって補体が活性化されて、抗体および補体は静脈内血栓症が促進されて、そして血管閉塞を招く移植片の内皮に多くの変化を誘発させて、結果として移植された臓器に不可逆的な虚血性傷害を招く(Abbasら、2000)。
超急性拒絶反応は既存のIgM同種抗体(例、赤血球細胞に発現するABO血液群抗原に対する同種抗体)によって媒介されることが多い。この種の拒絶反応は自然抗体によって媒介され、異種移植の拒絶反応の主な理由である。同種移植は通常ドナーおよびレシピエントのABO型とマッチするように選択されるため、自然のIgM抗体に起因する超急性拒絶反応はもはや同種移植における大きな問題ではない。通常、外来のMHC分子などのタンパク質同種抗原または血管内皮細胞に発現する十分に明らかにされていない同種抗原に対するIgG抗体によって媒介される、ABOマッチ同種移植の超急性拒絶反応が発生する可能性がある。このような抗体は、輸血、先行する移植または多胎妊娠(先行するこの暴露は、「前感作」と呼ばれる)を通して同種抗原への先行する暴露の結果として生じうる(Abbasら、2000)。
急性拒絶反応は、通常、移植の第1週間後に始まるT細胞、マクロファージおよび抗体によって媒介される血管や実質の損傷の過程である。(Abbasら、2001)。Tリンパ球は、血管内皮や実質細胞に存在するMHC分子を含む同種抗原に応答することで急性拒絶反応において中心的な役割を果たす。活性化T細胞は、移植片細胞を直接溶解させるか、または炎症性細胞を動員して、活性化させるサイトカインを産生して、これによって壊死を起こす。CD4+細胞およびCD8+細胞のいずれも急性拒絶反応の一因となりうる。移植片における同種細胞の破壊は高度に特異的であり、CD8+細胞傷害性T細胞による殺傷の特徴である。(Abbasら、2000)。CD4+T細胞は、サイトカインを分泌して、そして移植組織における遅延型感覚過敏症様反応を誘発することによって急性移植片の拒絶反応を媒介する際に重要となりうるが、CD4+T細胞が急性拒絶反応を媒介するのに十分であることを示すいくつかの証拠を入手できる。(Abbasら、2000)。移植片のレシピエントにおいて管壁抗原に対する体液性免疫反応が高まり、そして産生された抗体が管壁に結合して補体を活性化した後、抗体は急性拒絶反応を媒介することもできる(Abbasら、2000)。
慢性拒絶反応は、長期の期間にわたって正常な臓器構造の消失が起こる線維化を特徴とする。慢性拒絶反応の病因は、急性拒絶反応の病因ほどには理解されていない。移植片の動脈性閉塞が内膜平滑筋細胞の増殖の結果として起こりうる(Abbasら、2000)。この過程は、早期の、または移植片の動脈硬化と呼ばれ、移植後6カ月から1年以内に任意の血管新生させる臓器移植において発生しうる。
移植を成功させるには、いくつかの機序の拒絶反応を克服しなくてはならない。拒絶反応を予防するために複数のアプローチが利用される。これには免疫抑制剤、多くの場合には、様々な機序の攻撃、例えば、T細胞攻撃、抗体ならびにサイトカインおよび補体の効果を阻止するためのいくつかの種類の投与が要求されうる。これらをレシピエントと適合させるためのドナーのプレスクリーニングも、拒絶反応の予防、特に超急性拒絶反応の予防における重要な要因である。移植前の抗HLA抗体の免疫吸着によって超急性拒絶反応が軽減されうる。移植前に、レシピエントまたは宿主に抗T細胞試薬、例えば、モノクローナル抗体OKT3、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、シクロスポリンAまたはタクロリムス(FK506)を投与できる。さらに、グルココルチコイドおよび/またはアザチオプリン(または他のプリン類似体)を移植前に宿主に投与できる。移植拒絶反応の予防を補助するために使用する薬物としては、限定はされないが、ATGまたはALG、OKT3、ダクリズマブ、バシリキシマブ、コルチコステロイド、15−デオキシスペルグアリン、LF15−0195、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリンなどのプリン類似体、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、6−メルカプトプリン、ブレディニン、ブレキナール、レフルノミド、シクロホスファミド、シロリムス、抗CD4モノクローナル抗体、CTLA4− Ig、リツキサン、抗CD154モノクローナル抗体、抗LFAlモノクローナル抗体、抗LFA−3モノクローナル抗体、抗CD2モノクローナル抗体および抗CD45が挙げられる。
同種移植片は部分的にT細胞の活性化によって拒絶反応される。移植レシピエントにおいては、同種移植片内の外来抗原をCD4+T細胞が認識後、拒絶反応が高まる。これらの抗原は主要組織適合複合体(MHC)によってコード化される。クラスIおよびクラスIIのいずれのMHC分子も存在する。ヒトでは、クラスIのMHC分子はHLA−A、HLA−BおよびHLA −Cである。ヒトのクラスII MHC分子は、HLA−DR、HLA−DQおよびHLA − DPと呼ばれる。マウスでは、クラスI MHC分子は、H−2K、H−2DおよびH−2Lであり、そしてクラスII MHC分子はI−AおよびI−Eである。CD4+T細胞が外来MHC抗原に結合した際、それらは活性化されて、クローン増殖を遂げる。活性化T細胞は、単球/マクロファージ、B細胞と細胞傷害性CD8+T細胞を活性化する際の補助となるサイトカインを分泌する。活性化単球/マクロファージは、組織傷害を招く薬剤を放出し、B細胞は補体媒介性の組織破壊を招く同種抗体を産生し、そしてCD8+T細胞はアポトーシスおよび細胞溶解を介した抗原特異的な方法で移植片細胞を殺傷する。
免疫抑制剤
移植片の拒絶反応を遅らせる(つまり、移植片の生存期間を長くする)ために使用される多くの薬物が、様々な方法で作用する。免疫抑制剤が広く使用されている。いくつかの免疫抑制薬の作用機序のレビューについては、[Stepkowski,2000]を参照すること。移植片の拒絶反応を抑制する際に、シクロスポリンAは最も広く使用される免疫抑制薬の1つである。これはインターロイキン2またはIL−2の阻害剤(これはインターロイキン2のmRNA転写を阻止する)である。より直接的には、シクロスポリンによって、T細胞受容体刺激時に正常に起こるカルシニューリン活性化が抑制される。カルシニューリンはNFAT(活性T細胞核因子)を脱リン酸化させて、NFATを核内に進入させ、インターロイキン2プロモーターに結合できるようにする。この過程を遮断することによって、シクロスポリンAはCD4+T細胞の活性化および、本来ならば結果として生じうるカスケードの活性化を抑制する。タクロリムスはインターロイキン2の産生を抑制することによって作用するもう1つの免疫抑制剤である。
ラパマイシン(シロリムス)、SDZ RADおよびインターロイキン2受容体遮断薬は、インターロイキン2の作用を抑制して、ひいては上記事象のカスケードを阻止する薬物である。
プリンまたはピリミジン合成の阻害剤は、移植片の拒絶反応の抑制にも使用される。これらはDNA合成を阻止して、そしてそれによってT細胞の分裂能を含む細胞分裂を抑制する。結果として、新しいT細胞の形成を阻止することによってT細胞の活性を阻害する。プリン合成の阻害剤としては、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)およびミゾリビン(ブレディニン)が挙げられる。ピリミジン合成の阻害剤がブレキナールナトリウムとレフルノミドを挙げる。シクロホスファミドは、プリンおよびピリミジンの両方の合成の阻害剤である。
T細胞活性化を阻害するためのさらに別の方法は、T細胞に対する抗体でレシピエントを治療することである。OKT3は、T細胞受容体の一部であるCD3に対するマウスモノクローナル抗体である。この抗体はT細胞受容体を抑制して、そしてT細胞の活性化を抑制する。
同種移植での拒絶反応を遅延させるための多数の他の薬物および方法が、当業者には公知であり、当業者によって使用されている。1つのアプローチは、例えば放射線治療によってT細胞を枯渇させることであった。特に主要HLAの部分的ミスマッチが存在する場合、これは骨髄移植において利用される場合が多い。CD40リガンド−CD40の相互作用の阻害剤(遮断薬)および/またはCD28−B7相互作用の遮断薬のレシピエントへの投与が利用されてきた(米国特許第6,280,957号)。公表されたPCT特許出願国際公開公報第01/37860号には、Th1免疫反応を抑制するための抗CD3モノクローナル抗体およびIL −5の投与について教示している。公表されたPCT特許出願国際公開公報第00/27421号には、腫瘍壊死因子−αアンタゴニストを投与することによる角膜移植の拒絶反応の予防または治療の方法について教示している。Glotzら(2002)は、静脈内免疫グロブリン(IVIg)の投与によって抗HLA抗体の力価の大幅で持続的な低下を誘発されて、これによってHLA不適合臓器の移植が可能になることを示している。同様のプロトコルとしては、血漿交換(Taubeら、1984)または免疫抑制剤を併用した免疫吸着技術(Hiesseら、1992)またはこれらの併用(Montgomeryら、2000)が挙げられる。Changelianら(2003)は、共通のγ鎖(γc)(インターロイキン−2、−4、−7、−9、−15、−21)を利用したサイトカイン受容体の適切なシグナリングに必要な酵素であるヤヌスキナーゼ3(JAK3)の経口阻害剤によって免疫抑制が起こり、結果としてT細胞活性化が抑制されるモデルを教示している。ICAM−1に対するアンチセンス核酸が、心臓同種移植片移植の試験において単剤で、または白血球機能関連抗原1(LFA−1)に特異的なモノクローナル抗体と併用されている(Stepkowski,2000)。同様に、心臓同種移植片を治療するために抗ICAM−1抗体が抗LFA−1抗体と併用されてきた(Stepkowski,2000)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、さらに、心臓または腎臓同種移植片モデルにおいてシクロスポリンと併用されており、結果として生存期間を延長する相乗効果をもたらしている(Stepkowski,2000)。慢性移植拒絶反応は、分化、増殖およびアポトーシスに関与するサイトカインであるTGF−βのアンタゴニストを投与することによって治療された(米国特許出願公開第2003/0180301号)。
補体と移植片/移植片の拒絶反応
移植拒絶反応における補体の役割は周知である。これは特に異種移植に当てはまるが、しかし補体は同種移植での拒絶反応においても役割を果たす。[Platt and Saadi,1999]のレビューを参照すること。補体の役割の一局面は、レシピエントの血液で臓器移植片を再潅流させる際に虚血再潅流障害が起こりうることである。補体は同種移植片の拒絶反応の一部の徴候も起こしうる。
補体系については米国特許第6,355,245号に詳述されている。補体系は、細胞およびウイルスの病原体の侵入を防御する身体の他の免疫系と共に作用する。少なくとも25の補体タンパク質が存在しており、これらは血漿タンパク質と膜補因子の複雑な回収物として見いだされる。血漿タンパク質は、脊椎動物の血清においてグロブリンの約10%を構成する。補体成分は、複雑であるが、正確な一連の酵素切断および膜結合の事象において相互作用することによって補体成分の免疫防御機能を得る。結果として生じる補体カスケードは、オプソニン作用、免疫調節作用および溶菌作用と共に産物の産生をもたらす。
補体カスケードは古典経路または補体活性化第2経路を介して進行する。これらの経路は多くの成分を共用しており、そして、経路はそれらの最初の段階で異なるが、経路は収束して、標的細胞の活性化および破壊に関与する同じ「終末補体」成分(C5からC9)を共用する。
典型的には、古典的な補体経路は、標的細胞上の抗原部位の抗体認識および抗原部位への結合によって開始する。通常、補体活性化第2経路は抗体に依存せず、病原体の表面上にある特定分子によって開始できる。両経路は、補体成分C3が活性プロテアーゼによって切断されて(各経路で異なる)、C3aとC3bを生じる時点で収束する。補体作用の様々な局面をもたらす一連の事象の後半において、補体攻撃を活性化させる他の経路が作用できる。
C3aはアナフィラトキシンである。C3bは、特定のウイルスや免疫複合体の他、細菌細胞および他の細胞に結合して、そしてそれらにタグを付けて血液循環から除外する。この役割におけるC3bは、オプソニンとして知られている。C3bのオプソニン作用は、補体系の最も重要な抗感染作用と見なされる。C3b機能を遮断する遺伝子損傷を伴う患者は、多種多様な病原生物に感染されやすく、補体カスケードシークエンスの後半に損傷を伴う患者、つまりC5機能を遮断する損傷を伴う患者はナイセリア感染にのみ傾向が強く、多少傾向が認められるのみである(Fearon,1983)。
C3bは、各経路に特有な他の成分と複合体も形成して、古典的または代替のC5転化酵素を形成し、これはC5をC5aおよびC5bに切断する。補体活性化第2経路および古典経路のいずれにも必須であることから、従って、C3は補体反応シークエンスにおける中心的なタンパク質と見なされる(Wurznerら、1991)。C3bのこの特性は、C3bに作用してiC3bを産生する血清プロテアーゼ第I 因子 (Factor I)によって調節される。依然としてオプソニンとして機能的であるが、iC3bは活性C5転化酵素を形成できない。
C5は、正常血清において75μg/ml(0.4μM)認められる190 kDaのβ−グロブリンである。C5はグリコシル化され、その質量の約1.5〜3%が炭水化物に起因する。成熟C5は、656個のアミノ酸75kDaβ鎖とジスルフィド結合した999個のアミノ酸115kDaα鎖のヘテロダイマーである。C5は1コピー遺伝子の一本鎖前駆体タンパク質産物として合成される(Havilandら、1991)。この遺伝子の転写産物のcDNA配列から、18個のアミノ酸のリーダー配列を伴う1659個のアミノ酸の分泌型のプロC5前駆体が予測される。
プロC5前駆体は655および659のアミノ酸の後で切断されて、アミノ末端断片としてβ鎖(+1から655アミノ酸残基)およびカルボキシル末端断片としてα鎖(660から1658アミノ酸残基)を生じ、2つの間で4個のアミノ酸が取り除かれる。
C5aは、α鎖の最初の74のアミノ酸を含んでいるアミノ終末断片(つまり、660−733アミノ酸残基)として、代替C5転化酵素または古典的C5転化酵素のいずれかによってC5のα鎖から切断される。C5aの11 kDaの質量の約20%は炭水化物に起因する。転換酵素が作用する切断部位は、733アミノ酸残基またはこれに直接隣接している。この切断部位に結合しうる、または隣接しうる化合物は、C5転化酵素の切断部位への接近を遮断して、これによって補体阻害剤として作用する可能性を持ちうる。
C5は、C5転化酵素活性以外に方法によっても活性化できる。限定トリプシン消化(Minta and Man,1977;Wetsel and Kolb,1982)と酸処理(Yamamoto and Gewurz,1978;Vogtら、1989)によってもC5を切断して、そして活性C5bを産生できる。
C5aはもう1つのアナフィラトキシンである。C5bは、ヘキサメトニウム (C6)、C7およびC8に結合して、標的細胞の表面においてC5b−8複合体を形成する。いくつかのC9分子の結合時に、膜攻撃複合体(MAC、C5b−9、終末補体複合体−TCC)が形成される。十分な数のMACが標的細胞膜に挿入された場合、MACが作る開口(MAC孔)は標的細胞の迅速な浸透圧溶解を媒介する。より低い、溶菌濃度未満のMACは、他の効果をもたらすことができる。特に、内皮細胞および血小板内への少数のC5b−9複合体の膜挿入は、有害な細胞活性化を起こしうる。一部の場合、活性化は細胞溶解より前に起こりうる。
上記の通り、C3aおよびC5aはアナフィラトキシンである。これらの活性化補体成分は、ヒスタミンおよび他の炎症媒介物質を放出するマスト細胞の脱顆粒を引き起こして、結果として平滑筋収縮、血管透過性の上昇、白血球活性化、および超細胞充実性を招く細胞増殖などの他の炎症現象を招く。C5aは走化性ペプチドとしても機能して、補体活性化部位に炎症誘発性顆粒球を集める役割を果たす。
ドナー同種抗原に対する補体結合レシピエント抗体は、超急性移植片の拒絶反応の主因と考えられる。移植前の交差適合試験のために、このプロトタイプの体液性拒絶反応は今日では稀にしか認められない(Regeleら、2001)。今日、データは体液性免疫の機序が他の種類の同種移植片の拒絶反応の一因となりうることを示している(Regeleら、2001)。体液性前感作を示す高濃度のパネル反応性抗体は、腎臓移植片の生存期間の低下に関連していることが判明しており(Opelz,1992)、移植後の同種抗体の出現は、移植の転帰不良を予測すると報告されており(Jeannetら、1970;Halloranら、1992)、ならびに免疫吸着によるレシピエントIgGの選択的除去は、拒絶反応への体液性免疫機序の寄与を示す一部の拒絶反応発症を回復させた(Perssonら、1995;Bohmigら、2000)。移植片内の補体活性化は、抗体媒介性の移植片傷害を示しうる。補体切断産物C4dは、抗体依存性の古典経路の活性化マーカーである。腎臓同種移植片の生検材料における毛細血管C4d沈着物は、移植の転帰不良に関連していた。
近年、補体活性化が同種移植片レシピエントの感作および同種移植片における組織傷害の発生に大きく寄与することを示す証拠が増加している(Plattら、1999)。抗体は、古典的補体経路の活性化において最も徹底的に研究されている媒介物質である。臨床的には、同種抗体は補体を活性化することが知られている(Baldwinら、2001)。HalloranとCollinsは、腎臓同種移植片の傍尿細管毛細血管におけるC4d沈着が循環ドナー特異的抗体の存在に関連する急性体液性拒絶反応の高感度な診断マーカーであることを示している(Collinsら、1999;Halloran,2003)。補体阻害(Prattら、1996;Pruittら、1991 ;Forbesら、1978)または補体欠乏(Prattら、2000;Baurerら、1995)を伴う動物においてさらなる裏づけ証拠が認められ、これらは炎症性傷害の大幅な軽減および抗ドナー免疫反応の低下を呈する。ABMRにおいては、補体は古典経路によって活性化されて、そして病因における主要な役割を果たすことが示されている(Collardら、1997)。異種移植後のHARまたは急性血管拒絶反応(AVR)における補体の役割については十分に立証されているが(Plattら、1999)、同種移植術後のABMRの病因における補体の厳密な機序につてはまだ明らかにされていない。
補体のC5成分が切断されて、複数の炎症誘発性作用を伴う産物を形成して、これによって免疫媒介性の炎症反応内で補体阻害の魅力的な標的を示す。上記の通り、C5aは強力なアナフィラトキシンおよび走化性因子である。C5aによる細胞の活性化は、複数のさらなる炎症性媒介物質の放出を誘発する(Joseら、1983)。補体活性化経路(古典経路、補体活性化第2経路またはマンナン結合レクチン経路)は、最終的には細胞溶解性の膜攻撃複合体C5b−9の形成を導き(Kirschfunk,2001)、これは細胞溶解による直接的な組織傷害および溶解量未満での炎症誘発性細胞活性化の両方を媒介できる(Saadiら、1995;Papadimitriouら、1991)。したがって、C5aとC5b−9の両方の産生を遮断することが、移植後の補体媒介性の炎症反応の最適な抑制に必要となりうる。同時に、C5での補体カスケードの抑制はC3b産生を妨げず、免疫複合体の可溶化およびクリアランスの他、病原微生物のC3b媒介性オプソニン化を保護する(Liszewski,1993)。
抗C5mAbの有益な効果は、自己免疫疾患(Kirschfink、2001)、両心バイパスおよび急性心筋梗塞におけるヒトでの臨床試験の他、心筋再潅流(Vakevaら、1998)、全身性紅斑性狼瘡(Wangら、1996)および関節リウマチ(Wangら、1995)を含む数例の実験において報告されている。また、抗C5モノクローナル抗体(mAb)の機能的遮断による補体不活化によって、異種移植モデルでのHARが予防された(Kroshusら、1995;Wangら、1999)。
補体阻害剤の投与による同種移植での拒絶反応を延期させる方法が試験された。公表PCT特許出願国際公開公報第92/10205号には、前感作ラットモデルにおける心臓同種移植の拒絶反応を抑制するシクロスポリンと可溶性補体受容体(sCRl)の併用が開示されている。補体受容体1は、補体C3bおよびC4bに結合する。可溶型の補体受容体1は自然発生する、または組換えDNA技術によって作成できる。これらの可溶性補体受容体は、インビトロで補体活性化の結果を抑制する(米国特許第6,057,131号)。国際公開広報第92/10205号では、受け取る心臓同種移植片に対して前感作させたラットに、移植の2日前から10mg/kg /日のシクロスポリンAの筋肉内投与を開始して、そして移植片の拒絶反応時まで続けた。さらに、移植片の再潅流の直前に可溶性補体受容体1(sCR1)を15mg/kgの静脈内ボーラス単回投与した。薬物療法のない対照動物は、平均3.8日で移植片が拒絶反応された。シクロスポリンAを単剤投与された動物は、平均57日で移植片を拒絶反応した(これにはばらつきがあり、2匹のラットが2日目および4日目に急に拒絶して、そして3番目のラットが166日目に拒絶反応した)。sCR1を単剤投与されたラットは、平均44日目に移植片を拒絶反応した。シクロスポリンAとsCR1を併用投与されたラットは、平均147日目に移植片を拒絶反応した。慢性シクロスポリンAおよび単回ボーラスsCR1の併用では、結果として移植片の拒絶反応までの時間を大幅に延長させる相乗効果が認められた。PruittとBollingerによる過去の試験(1991年)では、前感作ラットでの同種移植の同様のモデル動物を使用しており、補体を不活化させるためのsCR1単剤投与によって移植片の拒絶反応までの時間が延長されることを示している。
Simsら(米国特許第5,135,916号)は、移植される臓器および組織の血管内皮を処理するために、補体の阻害剤(例、CD59またはC5b−9複合体の形成を遮断するC7またはC9に対する抗体)の使用を示唆している。これによってC5b−9によって開始される細胞壊死が阻止されうる。C5b−9不活化物質を灌流液または保存培地に添加して、インビトロでの保存中に血管内層(vascular lining)細胞を補体活性化の進行から保護する。さらに、移植時に開始する補体活性化に起因する細胞溶解および血栓性効果から臓器または組織を防御して、これによって補体媒介性の急性拒絶反応を回避しうる。Simsら(米国特許第5,573,940号および米国特許第6,100,443号)は、移植された臓器を拒絶反応から保護するための移植された組織または臓器におけるCD59の発現方法についても教示している。移植される細胞にトランスフェクトすることでこれを達成できる。
ドナーの同種移植片をレシピエントに適合させるためのドナーとレシピエントをプレスクリーニングする方法と併用される、今日まで開発された数種の薬物によって、同種移植片の平均生存期間が経時的に増加しているが、しかしながら、多くの同種移植片はレシピエントの生存期間中に拒絶反応される。一般的に、先行技術の進歩は、主に、移植片の急性拒絶反応を克服することに向けられてきた。さらに、抗体媒介性の同種移植片の拒絶反応における活性化された終末補体成分の役割は、C5タンパク質レベルで補体カスケードを特異的に標的とする阻害剤を用いて試験されることはなかった。本明細書に記載の方法および実施例に例示した方法は、同種移植片、特に前感作させたレシピエントの同種移植片の慢性拒絶反応を抑制することによっての同種移植の技術を進歩させる。補体阻害剤の慢性投与との併用での免疫抑制薬の適切な併用を利用することによって、同種移植片の生存を延長させるための新しい方法を示している。
方法と使用
本明細書に開示する方法を利用して、同種移植片の生存を延長させる。一般的に、方法には、1以上の免疫抑制剤との併用での補体活性の阻害剤の投与が含まれる。
適当な補体阻害剤は、当業者には公知である。抗体は、活性化補体の個々の成分に対して作成できる(例えば、C5a、C7、C9などに対する抗体)(例、米国特許第6,534,058号;米国特許出願第2003/0129187号;および米国特許第5,660,825号を参照すること)。CD59、CD55、CD46およびC8とC9の他の阻害剤を含む、補体媒介性の溶解を抑制するタンパク質が知られている(例、米国特許第6,100,443号を参照すること)。米国特許第6,355,245号には、C5に結合して、そしてC5aおよびC5bへ切断されることを阻止して、これによってC5aの形成のみならずC5b−9複合体の形成も阻止する抗体について教示している。補体受容体として知られており、補体に結合するタンパク質も知られている(公表されているPCT特許出願国際公開広報第92/10205号および米国特許第6,057,131号を参照すること)。可溶化型の補体受容体(例、可溶性CR1)の使用によって、好中球の酸化的破壊、補体媒介性の溶血、ならびにC3aおよびC5aの産生などの補体活性化の結果を抑制できる。当業者であれば、補体および補体の活性化を阻害する上記の既知の方法の全てではないが、その一部を認識する。
適当な免疫抑制剤としては、限定はされないが、ATGまたはALG、OKT3、ダクリズマブ、バシリキシマブ、コルチコステロイド、15−デオキシスペルグアリン、LF15−0195、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、6−メルカプトプリン、ブレディニン、ブレキナール、レフルノミド、シクロホスファミド、シロリムス、抗CD4モノクローナル抗体、CTLA4−Ig、リツキサン、抗CD154モノクローナル抗体、抗LFA1モノクローナル抗体、抗LFA−3モノクローナル抗体、抗CD2モノクローナル抗体および抗CD45が挙げられる。
同種移植片としては、移植された臓器、臓器の一部、組織または細胞を挙げることができる。これらには、限定はされないが、心臓、腎臓、肺、膵臓、肝臓、血管組織、眼、角膜、水晶体、皮膚、骨髄、筋肉、結合組織、胃腸組織、神経組織、骨、幹細胞、膵島、軟骨、肝細胞および造血細胞が挙げられる。
同種移植片の不全の理由の少なくとも一部は、同種移植片のレシピエントによる1つの反応が補体活性化であるということである。これは、結果的に強力な炎症誘発性分子であるC5aおよびC5b−9の形成を招き、これらは移植片の不全を起こす際の補助となる。提示している任意の理論に拘束されることを望まないが、C5aおよびC5b−9の形成を抑制すること、または存在するC5aおよびC5b−9を抑制することは、移植片不全を予防する際の補助となりうることを出願者は理論化した。さらに、同種移植片が存在する限りレシピエントは移植片に対する免疫反応を高める試みを続けて、そしてこの反応にはC5aおよびC5b−9を産生する試みが含まれうることが理論化された。阻止されない場合、この補体反応は短期的には急性血管拒絶反応を招き、そして長期的には慢性移植片の拒絶反応の一因となりうる。先行技術における補体活性の阻害剤の使用方法は、移植時にのみこれらの阻害剤を投与することに限られる。これは急性拒絶反応の予防に役立つが、本明細書で開示する結果が例示する通り、長期間のこのような阻害剤の投与によって改善された結果が得られる。この長期投与は、急性拒絶反応を予防する際に補助するだけであるのとは対照的に、同種移植片の慢性拒絶反応を予防する際の補助となる。結果的に、補体活性の阻害剤を投与しない、または同種移植片の移植時にのみこのような阻害剤を投与することのいずれかと比較して、同種移植片の生存期間はより長期になる。非常に多くの場合、同種移植片がレシピエントの残りの生存期間にわたり生き残ることが望ましいが、同種移植片が短期間にわたり必要な場合がある(例、レシピエント自身の臓器が、それ自体が回復できるまでの時間を橋渡しするブリッジ臓器(bridge organ)であって、この時には同種移植片はもはや必要とされない)。このような移植片が必要とされる時間の長さは変動するが、しかし、通常、急性拒絶反応が起こる時間よりは長く、そして慢性拒絶反応が起こるのに十分長くなりうる。ブリッジ移植片(bridge graft)のための所望のこの生存期間は数カ月、例えば、6カ月間でよい。
補体活性の長期抑制によって同種移植片の生存期間が延長されることを証明するために、補体活性化が移植時のみでなく、慢性的に阻害された実験を行なった。慢性治療とは、同種移植片の生存期間まで延長させた期間中での治療を意味する。これは毎日の治療でよいが、しかし、毎日の治療に限定されない。慢性治療では、同種移植片のレシピエントにおいて有効量の薬物が維持されうる。例えば、好ましい方法では、治療に抗C5モノクローナル抗体エクリズマブを含む。発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を患う人々での試験では、12〜14日に1回、900mg/患者の用量でエクリズマブが投与された。この投薬では、終末補体活性が完全かつ一貫して遮断されて、そしてPNHの徴候が大幅に抑制されることが見出されている(Hillmenら、2004)。投薬量では、エクリズマブが不活化される、または身体から除去される前の約2週間にわたり、補体の効果を遮断できる。したがって、エクリズマブの慢性投与は、例えば、患者の残りの生存期間にわたり2週間に1回、同種移植片のレシピエントに900mgの投与でよい。同様に、これが毎日であるのか、もしくは同種移植片のレシピエントにおいて薬物の有効量を維持するために別のスケジュールが必要となるかを問わず、適宜、他の薬物を慢性デリバリーできる。移植片の拒絶反応が、補体活性化のみではなくそれ以上のもの、例えば、T細胞活性によって起こりうることが周知であるため、移植片の拒絶反応の予防をさらに補助するために、実験にはシクロスポリンなどの免疫抑制剤が含まれた。
補体活性の好ましい抑制方法は、補体C5に結合して、C5の切断を阻止するモノクローナル抗体の使用である。これはC5aおよびC5b−9いずれの形成も阻止して、同時にレシピエントに有益なC3aおよびC3bの形成を可能にする。ヒト補体に特異的なこのような抗体が公知である(米国特許第6,355,245号)。米国特許第6,355,245号に開示されているこれらの抗体としては、抗体全体または完全長抗体(現在はエクリズマブと名付けられている)および単鎖抗体(現在はペキセリズマブと名付けられている)が挙げられる。マウスC5に対する同様の抗体が、BB5.1と呼ばれている(Freiら、1987)。BB5.1が下記の実験で使用された。補体活性を抑制する抗体は、モノクローナル抗体である必要はない。それらは、例えば、ポリクローナル抗体でよい。それらはさらに抗体断片でよい。抗体断片としては、限定はされないが、Fab、F(ab’)、F(ab’)、単鎖抗体、ドメイン抗体およびFvが挙げられる。さらに、抗体は、ヒト化(Jonesら、1986)、キメラ化または脱免疫化できることが、当業者には周知である。抗体は変異Fc部分も含むことができ、このような変異Fcは補体を活性化しない。本開示で使用する抗体は、これらのいずれかでよい。同種移植片のレシピエントがヒトである場合、ヒト化抗体を使用することが好ましい。
投与と製剤
補体活性の阻害剤の投与は、当業者に公知の方法に従って実施される。これらの阻害剤は、好ましくは、同種移植片の移植時前または移植時に投与され、投与を慢性的に持続させる。このような症状が強く発現した場合、拒絶反応発症中にこれらの阻害剤を追加投与できる。
本開示は、薬物または薬物パッケージの製造における補体活性を抑制する薬物および免疫抑制剤の使用を提供する。このような薬物または薬物パッケージは、レシピエントにおいて同種移植片の生存を延長させる際、特に、同種移植片の長期生存に有用である。好ましい態様では、薬物または薬物パッケージは、同種移植片のレシピエントに対する慢性投与に適するように製剤化および調製され、例えば、安定製剤が採用される。特定の態様では、薬物または薬物パッケージは、同種移植片のレシピエントに対して補体活性を抑制する薬物および免疫抑制薬の同時投与に適するように製剤化および調製される。特定の態様では、薬物または薬物パッケージは、同種移植片のレシピエントに対して補体活性を抑制する薬物および免疫抑制薬の連続(いずれかの順番での)投与に適するように製剤化および調製される。
本開示の薬学的パッケージは、補体活性を抑制する薬物と少なくとも1つの免疫抑制剤を含むことができる。薬学的パッケージは、慢性投与のラベルをさらに含むことができる。薬学的パッケージは、患者による自己投与のためのラベルを含むこともでき、例えば、移植した移植片のレシピエントまたは移植片のレシピエントの介護者に対する指示も含むことができる。特定の態様では、薬物と薬学的パッケージ中の薬剤は、慢性投与および/または自己投与に適した製剤または個々の製剤中にある。
本開示は、凍結乾燥製剤および注射に適した製剤も提供する。特定の態様は、補体活性を抑制する抗体および凍結保護剤(lyoprotectant)を含む凍結乾燥抗体製剤を提供する。好ましい態様では、抗体製剤は慢性投与に適しており、例えば、抗体製剤は安定である。別の態様は、シリンジから成る注射システムを提供し、シリンジは補体活性を抑制し、注射に適した製剤中にある抗体を含むカートリッジから成る。
好ましくは、本開示の様々な態様で利用される抗体は、終末補体またはC5aの形成を抑制する。特定の態様では、終末補体またはC5aの形成を抑制する抗体は抗体全体または抗体断片である。抗体全体または抗体断片は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ化抗体または脱免疫化抗体または抗体断片でよい。特定の態様では、抗体全体または抗体断片は補体C5の切断を抑制しうる。特定の態様では、抗体断片はFab、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体である。好ましい態様では、抗体断片はペキセリズマブである。代わりの好ましい態様では、抗体全体はエクリズマブである。
特定の態様では、補体活性を抑制する抗体などの薬物は、自己投与に特に適した単位剤形中に存在する。同様に、本開示の免疫抑制剤も単位剤形中に存在できる。本開示の製剤化させた製品は、容器内、典型的には、例えば、小瓶、薬包、充填済みシリンジまたは使い捨てペン内に含めることができる。米国特許第6,302,855号に記載の投薬装置などの投薬器、例えば、本開示の注射システムも使用できる。
特定の態様では、最初4週間は7±2日ごとに25〜45分間の静脈内注射により600mg、これに続き7±2日ごとに5回量で900mg、次にその後14±2日ごとに900mgという投薬計画でエクリズマブをデリバリーできる。投与は25〜45分間にわたる静脈内注射でよい。エクリズマブは投与前に最終濃度5mg/mlに希釈できる。
「安定」製剤は、薬物(例、抗体)または薬物中の薬剤が保存時にその物理化学的な安定性および完全性を実質的に保持する製剤である。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が当技術分野において利用可能であり、[Peptide and Protein Drug Delivery,247−301、Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.、New York,N.Y.,Pubs.(1991)およびJones,A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29−90 (1993)]においてレビューされている。
安定性は、選択した時間にわたり選択した温度で測定できる。例えば、凍結乾燥および保存後の凝集の程度は、タンパク質の安定性の指標として使用できる。例えば、「安定」製剤は、製剤中の凝集体として約10%未満、好ましくは約5%未満のタンパク質が存在する製剤でありうる。他の態様では、凍結乾燥製剤の凍結乾燥および保存後の凝集体形成の増加を測定できる。例えば、「安定」凍結乾燥製剤は、凍結乾燥製剤を2〜8℃で少なくとも1年間保存した場合に凍結乾燥製剤中の凝集物の増加が約5%未満、好ましくは約3%未満である製剤でありうる。他の態様では、タンパク質製剤の安定性は生物活性アッセイを利用して測定できる。
「再生」製剤は、タンパク質が再生した製剤中に分散されるように、希釈剤中の凍結乾燥タンパク質製剤を溶解させることにより調製されてきた。再生製剤は、対象のタンパク質で治療される患者への投与(例、非経口投与)に適しており、特定の態様では、皮下投与に適した製剤でよい。
等張性の再生製剤が特定の態様において好まれる。「等張性」とは、対象となる製剤の浸透圧がヒトの血液の浸透圧と実質的に同じである。等張性製剤の浸透圧は、一般的に、約250〜350 mOsmである。等張性は、例えば、蒸気圧または氷凍結型の浸透圧計を使用して測定できる。
「凍結保護剤(lyoprotectant)」は、対象の薬物(例、抗体)と混合した際に、凍結乾燥および保存時の薬物(例、抗体)の化学的および/または物理的な不安定性を予防または軽減させる分子である。例示的な凍結保護剤としては、ショ糖またはトレハロースなどの糖、グルタミン酸ナトリウムまたはヒスチジンなどのアミノ酸、ベタインなどのメチルアミン、硫酸マグネシウムなどの離液性塩、三価以上の糖アルコール(例、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトール)などのポリオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、Pluronicsおよびこれらの配合物が挙げられる。好ましい凍結保護剤は、トレハロースやショ糖などの非還元糖である。
凍結乾燥前の製剤に「凍結保護量」の凍結保護剤を添加するが、これは凍結保護量の凍結保護剤の存在下での薬物(例、抗体)の凍結乾燥後、凍結乾燥および保存中に薬物(例、抗体)がその物理化学的な安定性および完全性を実質的に保持することを意味する。
本明細書の対象の「希釈剤」は、薬学的に受容でき(ヒトへの投与において安全かつ毒性がない)、そして再生製剤の調製に有用な希釈剤である。例示的な希釈剤には、滅菌水、静菌性注射用蒸留水(BWFI)、pH緩衝液(例、リン酸塩緩衝生理食塩液)、滅菌食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
「保存剤」は、再生製剤中での細菌作用を本質的に低減させるための希釈剤に添加して、これによって、例えば、多用途の再生製剤の産生を促進させる化合物である。潜在的な保存剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキソメソニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの混合物)および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。他の種類の保存剤としては、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチルパラペンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノールおよびm−メタクレゾールが挙げられる。
「バルク剤」は凍結乾燥混合物に質量付加して、そして凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する化合物である(例、開放孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの産生を促進させる)。例示的なバルク剤としては、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが挙げられる。
したがって、安定な凍結乾燥抗体製剤は、凍結保護剤(好ましくはショ糖またはトレハロースなどの糖)を使用して調製できるが、この凍結乾燥製剤を再生させて、凍結乾燥前の製剤における抗体濃度よりも有意に高い(例、約2〜40倍高く、好ましくは3〜10倍高く、そして最も好ましくは3〜6倍高い)抗体濃度を有する安定した再生製剤を生成できる。再生製剤におけるこのような高タンパク質濃度は、製剤が皮下投与を意図している場合に特に有用であると考えられる。再生製剤における非常に高いタンパク質濃度にもかかわらず、再生製剤は2〜8℃において少なくとも約30日間安定でありうる(つまり、有意な、または受容できないレベルのタンパク質の化学的または物理的な不安定性を示さない)。米国特許第6,821,515号を参照すること。特定の態様では、再生製剤は等張性である。
保存剤を含む希釈剤(静菌性注射用蒸留水(BWFI)など)で再生する場合、再生製剤は複数使用製剤として使用できる。このような製剤は、例えば、被験体である患者が薬物または抗体および/または慢性症状を治療するための薬剤の頻繁な投与を必要とする場合に有用である。複数使用製剤の利点は、数用量が1本のバイアルに包装されているため、患者への使いやすさを促して、バイアル容量の完全な使用を可能にすることで無駄を減らして、製造業者に大幅なコスト削減をもたらす点である(充填および出荷コストの低減)。
本開示は、(a)抗体と凍結保護剤の混合物を凍結乾燥させること、および(b)再生製剤が等張性であり、安定するように(a)段階の凍結乾燥混合物を再生することの段階を含む方法も提供する。
(a)抗体と凍結保護剤の凍結乾燥混合物を含む容器、および(b)再生製剤における望ましい抗体濃度に希釈剤で凍結乾燥混合物を再生するための指示を含む製造品目も本明細書において提供する。製造品目は、希釈剤(例、芳香族アルコールを含む静菌性注射用蒸留水(BWFI))を含む第2の容器をさらに含むことができる。
本開示の注射システムでは、米国特許第5,308,341号に記載する薬物デリバリーペンを使用できる。薬物デリバリーペンは、薬物の自己投与を容易にするために開発された。本開示の薬物は、補体活性を抑制する薬物、例えば補体C5に特異的な抗体および/または免疫抑制剤でありうる。1つの薬物デリバリーペンには、その中にインシュリンまたは他の薬物のバイアルを入れることのできるバイアルホルダーが含まれる。一般的に、バイアルホルダーは、近位端と遠位端を伴う細長い管状構造物である。バイアルホルダーの遠位端には、両頭針カニューレを引くための取り付け手段が含まれる。近位端には、ドライバーおよび用量設定装置を含むペン体を引くための取り付け手段が含まれる。先行技術のバイアルホルダーと共に使用するバイアルを含む使い捨て投薬には、両頭針カニューレの1端によって貫通できる穴を開けることのできる弾性隔膜を持つ遠位端が含まれる。このバイアルの近位端は、バイアルの円筒状壁を伴う流体密封結合内にスライド可能なように配置された停止装置が含まれる。この薬物デリバリーペンは、薬物バイアルをバイアルホルダーに挿入することによって使用する。次に、ペン体をバイアルホルダーの近位端に接続する。ペン体には、ペンによってデリバリーされる薬物の用量を指定するための用量設定装置、および選択した用量に対応した距離で遠位にバイアルのストッパーを押し進めるためのドライビング装置が含まれる。
ニードルカニューレの近位点がバイアル上の隔膜に穴を開けるように、ペンの使用者はバイアルホルダーの遠位端に両頭針カニューレを取り付ける。次に、患者は用量を選択して、そしてペンを操作して、選択された用量をデリバリーするためにストッパーを遠位に押し進める。用量選択装置は、選択した用量の注射時にゼロに戻る。次に、患者はニードルカニューレを取り除いて、捨てて、そして次に必要な薬物投与のために便利な場所に先行技術の薬物デリバリーペンを保つ。バイアル内の薬物は、薬物のこのような数回の投与後に使い尽くされる。次に、患者はペン体からバイアルホルダーを分離させる。次に、空バイアルを取り除いて、捨てることができる。新しいバイアルをバイアルホルダーに挿入でき、そして上記で説明する通りにバイアルホルダーとペン体を再び組み立てて使用できる。
したがって、一般的に、薬物デリバリーペンは正確な投薬と使いやすさのためのドライブ機構を備えている。回転ノブなどの投与機構によって、使用者は包装前の薬物からペンによって注射される薬物の量を正確に調整できる。薬物の用量を注射するために、使用者は皮膚下に針を挿入して、押し下がる限りノブを1回押し下げる。ペンは全体が機械装置でありうる、もしくは使用者に注射される薬物の用量を正確に設定および/または示すために電子回路と併用できる。米国特許第6,192,891号を参照すること。
本開示では、薬物の慢性投与および/または自己投与に適した放出制御製剤または徐放製剤を提示している。
ボーラスとして、もしくは一定期間におよぶ持続注入による静脈投与、筋肉内、腹腔内、脳室内、皮下、関節内、滑液内、くも膜下腔内、経口、局所または吸入経路によって、薬物(例、本開示の抗体および少なくとも1つの免疫抑制剤)による治療を必要とする患者(例、同種移植片のレシピエント)に様々な製剤を投与できる。
特定の態様では、皮下(つまり、皮膚の下への)投与によって製剤を患者に投与する。このような目的で、注射器を使用して製剤を注射できる。一方では、注射器具(例、Inject−ease(登録商標)デバイスおよびGenject(登録商標)デバイス)、インジェクターペン(GenPen(登録商標))、無針器具(例、MediJector(登録商標)およびBioJector(登録商標))および皮下パッチデリバリーシステムなどの製剤投与用の他の装置を利用できる。
本方法および使用は、以下の実施例を参照して記載しており、実施例は例示として与えられており、決して開示を限定することを意図していない。当技術分野または以下で具体的に記載する技術において周知の標準的技術が利用される。本明細書では以下の略語を使用する:ABMR、抗体媒介性拒絶反応;ACHR、早期体液性拒絶反応;ACR、急性細胞拒絶反応;AVR、急性血管拒絶反応;CsA、シクロスポリン;CyP、シクロホスファミド;HAR、超急性拒絶反応;MCP−I、単球走化性タンパク質1;MST、平均生存時間;POD、手術後日数。
実施例1
方法
動物と免疫抑制薬 体重25〜30 gの雄C3H(H−2)成体マウスおよびBALB/c(H−2)マウス(Jackson Labs,Bar Harbor,Maine)をそれぞれドナーおよびレシピエントとして選んだ。免疫抑制を受けている群では、レシピエントはCsA(0日目からエンドポイント拒絶反応まで、または100日目まで15mg/kg/日を毎日皮下)、またはCyP(0日目および1日目に40mg/kg/日を静脈内)、または抗C5mAb(0〜2日目、続いて0〜60日目に週2回、クローンBB5.1(Alexion Pharmaceuticals Inc)。40mg/kg/日を腹腔内)を注射した。従来の条件下で動物をUniversity of Western OntarioのAnimal Care Facilityに収容して、そしてCanadian Council on Animal Careが定めたガイドラインに従って飼育した。(Olfertら、1993)。
皮膚前感作 C3Hドナーから採取した全層皮膚移植片を1×1 cmの正方形の小片に切り、そして同じドナーからの心臓移植の1週前にBALB/cレシピエントの胸部の背後部に移植した。拒絶反応は、皮膚移植片の完全な壊死と定義した。
腹部および子宮頸管への心臓移植 皮膚前感作から7日後にドナー大動脈とレシピエント大動脈およびドナー肺動脈とレシピエント下大静脈を吻合することで前感作BALB/cレシピエントの腹部にC3Hマウスの心臓を移植した。再移植群では、ドナー大動脈とレシピエント頚動脈およびドナー肺動脈とレシピエント外頚静脈(端側)を吻合することで、長期生存中の腹部の第1の心臓移植片を持つレシピエントの子宮頸管部に、未感作C3Hマウスまたは長期生存中の前感作BALB/cレシピエントから採った第2の心臓移植片を移植した。特記ある場合を除き、拒絶反応まで毎日心臓移植片をモニターして、拒絶反応は鼓動の完全な中止と定義した。
実験群 前感作レシピエントを8群に無作為に割り当てて、各群は8匹の動物から成った:1群、未治療マウス;2群、CsA治療マウス;3群、CyP治療マウス;4群、CsA+CyP治療マウス;5群、抗C5mAb治療マウス;6群、抗C5 mAb+CsA治療マウス;7群、抗C5 mAb+CyP治療マウス;8群、CsA+CyPの併用で抗C5 mAb治療マウス。心拍動がもはや触知できなくなった、またはPOD100に、ルーチンの組織学的解析、免疫組織化学的解析およびウェスタンブロット解析のために移植片を摘出して、フローサイトメトリー解析および補体溶血アッセイのために血清検体を採取した。POD3に、6群および8群(1群、5群、7群ではMST)内に追加で5匹の動物を置いて、そして殺して、同一の時間点で比較できるようにした。抗ドナー抗体の濃度および補体活性の連続変化を検出するために、8群においてPOD11、21、28および60でも血清検体を採取した。また、3剤併用療法で治療した前感作レシピエントが第1の心臓移植片を受けて100日目に、第2の心臓を再移植させた。別の前感作BALB/cレシピエントからの未感作C3H心臓または100日間生存中のC3H心臓を第2の心臓として使用した。各再移植群には8匹の動物が含まれた。
移植片組織像 組織検体を10%緩衝ホルムアルデヒトで固定させた。次に、試料をパラフィン包埋して、そしてH&E染色のために切片にした。拒絶反応の重症度について、病理学者が盲検法によって顕微鏡用切片を調べた。移植片の拒絶反応の基準には、脈管炎、血栓症、出血およびリンパ球浸潤の有無が含まれた。これらの変化を得点化した:0、不変;1、最小変化;2、軽度の変化;3、中程度の変化;または4、顕著な変化。
免疫組織化学 ゼラチンコーティング済みの顕微鏡用ガラススライド上に乗せたTissue−Tek O.C.Tゲル(Optimum Cutting Temperature,Skura Finetek,Torrance,CA)に包埋させた組織検体から4μmの切片を切り、Elite Vectastain ABC kit(Vector Laboratories Inc.,Burlingame,CA)を使用した標準的な間接アビジン−ビオチン免疫ペルオキシダーゼ染色法によって染色した。CD4+とCD8+について、それぞれビオチン結合ラット抗マウスCD4 mAb(clone YTS 191.1.2,Cedarlane Laboratories Ltd.,Hornby,Ontario,Canada)およびビオチン結合ラット抗マウスCD8 mAb(clone 53−6.7,Pharmingen,Franklin Lakes,NJ)によって試料を染色した。ビオチン結合ラット抗マウスMac−1mAb(Cedarlane Laboratories Ltd.,Hornby,Ontario,Canada)染色によって、移植片内への単球/マクロファージ浸潤を検出した。ビオチン結合ヤギ抗マウスIgGおよびヤギ抗マウスIgM(Cedarlane)を使用して、移植片内のマウスIgGおよびIgMの沈着を検出した。補体沈着の同定では、ヤギ抗C3または抗C5ポリクローナル抗体(Quidel,San Diego,CA)、ビオチン化ウサギ抗ヤギIgG(Vector Laboratories)、そしてHRP結合ストレプトアビジン(Zymed Laboratories,South San Francisco,CA)によって切片を連続的にインキュベートさせた。段階間でスライドをリン酸緩衝生理的食塩水で洗って、そして光学顕微鏡下で観察した。一次抗体を除くことで、陰性対照とした。各切片の5つの高倍率視野において免疫染色を点数化して、そして5つの独立した実験を行なった。免疫ペルオキシダーゼ染色の切片は染色強度に従って0から4に採点した:0、陰性;1+判定不能;2+、弱染色;3+、中程度の染色;そして4+、非常に強い染色。
フローサイトメトリー FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson,Mountain View,CA)によってレシピエント血清中の循環抗ドナー特異的IgG抗体およびIgM抗体を評価した。(Glotzら、(1993);Tyan et al.(1994))。簡単に説明すると、C3Hマウス脾細胞を単離して、そして未感作の対照群および実験群の血清と37℃で30分間インキュベートさせた。全IgG、IgGl、IgG2a、IgG2bおよびIgMの染色のために、細胞を洗って、マウスIgGのFc部分に特異的なFITC結合ヤギ抗体、またはマウスIgMのμ鎖に特異的なフィコエリスリン結合ヤギ抗体(Jackson lmmuno Research Laboratories,West Grove,PA)、またはFITC結合ヤギ抗マウスIgG1(CALTAG Laboratories,Burlingame,CA)、またはFITC結合ヤギ抗マウスIgG2a(CALTAG)またはFITC結合ヤギ抗マウスIgG2b(CALTAG)とインキュベートさせた。40℃で1時間の染色後、細胞をPBSで洗って、5×106/mLに再浮遊させて、そして抗体結合反応性を示す平均チャンネル蛍光強度のフローサイトメトリーによって解析した。
補体溶血アッセイ 精製抗体C5 mAbをGVB2+緩衝液(ゼラチン緩衝生理食塩水:0.1%ゼラチン、141 mM NaCl、0.5 mM MgCl、0.15 mM CaClおよび1.8 mMナトリウムバルビタール)で2倍希釈(175−0.1μg/ml)して、そして96ウェルプレートに3通り添加した(50μl/ウェル)。BALB/cマウス血清をGVB2+緩衝液で40%(v/v)に希釈させて、各ウェルのBALB/cマウス血清の最終濃度が20%になるように96ウェルプレートの列に添加した。次に、ニワトリ赤血球を調製する間に、プレートを室温で約30分間インキュベートさせた。チキン赤血球を1 mlのGVB2+緩衝液で5回洗って、GVB2+中で最終濃度5×107/mlに再浮遊させた。抗トリRBCポリクローナル抗体(Intercell Technologies,Hopewell,NJ,0.1% v/v)を添加することで4 mlのニワトリ赤血球を感作させて、そして頻繁にボルテックスしながら4℃で15分間細胞をインキュベートさせた。次に、細胞を1 mlのGVB2+で2回洗って、最終容量2.4 mlのGVB2+中に再浮遊させた。上記の通り、血清および抗C5 mAbを含むプレートにニワトリ赤血球を添加して(30μl/ウェル;2.5×10細胞)、十分に混合させて、37℃で30分間インキュベートさせた。次に、プレートを2分間1000×gで遠心分離させて、そして85μlの上精を新しい96ウェルマイクロタイタプレートに移した。マイクロプレートリーダーを使用して、OD 415 nmでプレートを読み、そして以下の化学式を用いて溶血反応のパーセンテージを決定した:
Figure 0005722524
先に調製した30 μg/mlのニワトリ赤血球に、0.1% NP−40を含む100μlのGVB2+を添加することよって得られた100%溶解対照。
ウェスタンブロット解析 RIPA溶解緩衝液(Santa Cruz Biotechnology,Inc)。中で、4℃で1分間、10秒間隔で凍結心臓検体の超音波処理を行い、続いて4℃で10分間、13,000 rpmの極小遠心分離にかけた。Detergent−compatible protein assay kit(BIO−RAD)を使用して、清浄化させた上精のタンパク質含量を迅速に3回定量した。心臓溶解物をNuPAGE4〜12%勾配Bis−TrisゲルおよびMES緩衝系において分離させて(10μgタンパク質/ウェル)、セミドライトランスファー装置(BIO−RAD)を使用してポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン(孔サイズ0.45μm;Invitrogen)にトランスファーさせた。各ブロットが試験抗体と内部対照抗体に暴露されるように、メンブレンを正確な分子量の位置で適切に切り、ブロットごとに2つの異なる一次抗体でのブロットの展開を可能にして、検体の等しい添加量を保証した。抗Bcl−2(N−19)ウサギポリクローナル血清(Santa Cruz Biotechnology,Inc)。および抗BclXS(Bcl−XS)/L(M−125)ウサギポリクローナル血清(Santa Cruz Biotechnology,Inc)。を含む試験一次抗体を使用して、移植片内でのBcl−2およびBcl−xlタンパク質の発現を検出した。抗カルセケストリンウサギポリクローナル血清(Calbiochem)を内部対照の一次抗体として使用した(Kobayashiら、1999)。先述の通り(Arpら、1996)、洗ったインキュベート済みブロットをホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ポリクローナルヤギ抗ウサギIgG分画に暴露させることで、一次抗体の結合を検出して、HRP結合抗体(Roche Laboratories)の化学発光を高めるための暴露によって適切に現像した。
統計解析
平均値±SDでデータを報告した。ランクログテストを利用して、同種移植片の生存期間を実験群間で比較された。マンホイットニーU 検定を利用して、組織学的所見および免疫組織学的所見を解析した。One−way ANOVAを利用して、フローサイトメトリーのデータおよびウェスタンブロットのデータを解析した。p値が0.05未満の差を有意と見なした。
実施例2
C3Hドナー皮膚移植片での前感作によって、BALB/cレシピエントの心臓同種移植片に抗体媒介性のACHRを誘発される。
臨床での前感作患者を模倣した適当な小型動物モデルを作成して、ABMRを試験するために、マウスレシピエントの前感作によって新しい完全MHC不適合マウスABMRモデルを作成した。このモデルでは、BALB/cレシピエントは心臓移植の1週間目に同じドナーからのC3Hドナー皮膚移植片で前感作させた。ドナー皮膚の前感作から7日目、IgM抗体ではなく、抗ドナーIgGの血清濃度が顕著に高まり、そして前感作BALB/cレシピエントにおけるピーク濃度に達した(図1A)。次に、これらの高度に感作させたレシピエントにおいて同じドナーからの心臓を移植した。免疫抑制なしで、C3H心臓移植片はACHRによって3.1±0.4日内に迅速に拒絶されて、重度の血栓症、出血および梗塞を特徴とした(図1B−a)。対照的に、非感作BALB/cレシピエントにおける同じ心臓移植片(平均生存期間、8.2±0.8日のMST)は、手術後(POD)3日目に正常な組織像を示している(図1Bb)。同日の非感作BALB/cレシピエントと比較した場合、前感作動物における心臓移植片では、多量のIgG抗体および補体(C3およびC5)の沈着が明らかになったが、しかしCD4+細胞およびCD8+細胞浸潤は最小限であった(表1)。さらに、前感作レシピエントにおける循環抗ドナーIgG濃度は、POD3に心臓移植片を受けた同じ非感作レシピエントでの濃度よりも有意により高かった(P<0.01、図1C)。しかし、抗ドナーIgMは、血液循環(図1C)および心臓移植片のいずれにおいても非常に低い濃度のままであり(表1)、非感作レシピエントと前感作レシピエントとの間で有意差は認められなかった。また、治療なしの前感作心臓レシピエントおよび非感作心臓レシピエントのいずれでも補体溶血活性が示された(図1D)。これらのデータは、これが、補体が病因において重要な役割を果たす前感作レシピエントにおいてABMRを試験するための理想的な移植モデルであることを示す。
(表1)
POD3での非感作BALB/cレシピエントおよび前感作BALB/cレシピエントにおけるC3H心臓同種移植片の免疫組織学的変化の比較
Figure 0005722524
免疫ペルオキシダーゼ染色の採点:0、陰性;1+、判定不能;2+、弱;3+、中程度;4+、強。CsAおよびCyPと併用での抗C5 mAbによってABMRが予防されて、そして前感作マウスレシピエントでの心臓同種移植片の生存期間が無期限になる。
補体がABMRにおいて重要な役割を果たすことが示された。しかし、高度に感作させたレシピエントにおいてC5濃度で終末補体カスケードを機能的に遮断することの抑制効果は不明である。本明細書で示す試験では、前感作モデルを使用して、ABMRの予防における抗C5 mAb単剤またはCsAおよび/またはCyPと併用した抗C5 mAbの有効性を試験した。図2Aに示す通り、CsAまたはCyPもしくは2つの薬物の併用による治療によってABMRは予防されず、移植片はそれぞれ3.0±0.0日間、3.3±0.5日間、そして3.5±0.6日間で拒絶され、未治療の前感作BALB/cレシピエントにおける心臓移植片とは識別できない静脈内血栓症および組織内出血(図2B−b、c、d)を含むACHRの典型的な病理学的特徴を伴った(図2B−a)。抗C5単剤療法またはCyPとの併用によって、移植片の生存期間を改善させることはできず、心臓移植片はそれぞれ3.5±0.6日間、そして3.2±0.4日間でACHR(図2B−e,f)によって拒絶された(図2A)。非感作動物において心臓同種移植片の長期生存期間を誘発できるプロトコルである抗C5 mAbとCsAの併用療法によって、この前感作モデルにおける移植片の生存期間がわずかに延長されたが、心臓移植片は11.9±1.8日間で脈管炎、血栓症、出血、最小限の細胞浸潤(図2B−g)を伴う重度の体液性拒絶反応によって同様に拒絶された(図2A)。対照的に、CsAとCyPを併用した抗C5 mAbの3剤併用療法では、前感作動物において心臓移植片の生存期間が100日間を超えて無期限となり(P<0.01、未治療動物、もしくは単剤療法または2つの薬物で併用療法された動物に対して)(図2A)、拒絶反応の徴候も認められなかった(図2B−h)。表2に示す通り、この前感作マウスモデルでは、3日以内に心臓移植片を拒絶したレシピエントにおいて移植片内へのCD4+細胞およびCD8+細胞のわずかな浸潤のみが認められた。しかし、拒絶反応の時点(POD11)での抗C5 mAb+CsA治療レシピエントにおいて、移植片の生存期間の初期段階(例、POD11)に3剤併用療法によって治療したレシピエントで心臓移植片がより長く生存した場合、これらのT細胞の個数はわずかに増加していた。さらに、3剤併用療法群におけるCsA連続治療では、POD60およびPOD100に長期生存中の心臓移植片において、CD4+細胞およびCD8+細胞の浸潤が抑制された。また、CsA、CyPまたはCsA+CyP治療動物において、移植片内に単球とマクロファージを含むMac−1細胞の中程度の浸潤が認められ、これらの細胞の浸潤は抗C5 mAb治療動物において有意に減少した(表2)。これらの結果は、抗C5 mAbを機能的に遮断することで従来の免疫抑制剤の使用と有効性に可能性を与えて、これによって前感作レシピエントにおいてABMRを予防して、そして心臓移植片の生存期間を無期限とする。
(表2)
剖検時の前感作マウスレシピエントにおける心臓同種移植片の免疫ペルオキシダーゼ染色の採点
Figure 0005722524
採点:0、陰性;1+、判定不能;2+、弱;3+、中程度;4+、強
心臓同種移植を受けた前感作レシピエントにおいて、抗C5 mAbによって補体の全溶血活性および局所的なC5沈着が完全に抑制された。
抗C5 mAbによって補体タンパク質C5の炎症誘発性分子C5aおよびC5b−9への切断が遮断されて(Kxoshusら、1995)、そして完全かつ一貫してマウスにおける終末補体活性が遮断されることが過去に示されている(Wangら、1999)。現在の試験では、抗体によって前感作されたニワトリ赤血球をレシピエントマウス血清が溶解させる能力を評価することによって、終末補体活性を測定して、そして同じ時間点(POD3)で比較した。CsAまたはCyPのいずれか、もしくは2つの薬物の併用によるマウスの治療では、終末補体活性に及ぼす効果は認められず、抗C5 mAb単剤またはCsAおよび/またはCyPの併用による治療によってこの活性は完全に抑制された(図3;P<0.01、対CsA、CyPまたはCsA+CyPで治療した動物の他、未感作動物および未治療動物)。また、より早いいくつかの時間点で抗C5 mAb治療した動物から得られた血清では、同様に溶血活性が低下しており、治療期間を通じて血清終末補体が抑制されることを示唆している。さらに、心臓移植片における局所的なC5沈着は、抗C5 mAbで治療された前感作レシピエントにおいて完全に阻止されたが、未治療、またはCsA、CyPおよびCsA+CyPで治療された前感作動物においては阻止されなかった(表2)。予測された通り、抗C5 mAbでの治療によって移植片内のC3沈着は阻止されなかった(表2)。これらの結果は、抗C5治療によって、高度に感作されたレシピエントにおける心臓同種移植後の全補体活性が完全に遮断されることを示唆している。
前感作動物における長期生存中の心臓移植片は、低濃度の抗ドナー抗体および補体の存在下(適応状態)における液性免疫に耐性である。
体液性拒絶反応における抗C5 mAbの役割をさらに研究するために、免疫染色技術を利用したフローサイトメトリーおよび移植片内の抗体沈着によって、異なる群におけるレシピエント血清中の抗ドナー同種抗体濃度を測定した。図4Aは、POD3に未治療の前感作BALB/cレシピエントにおいて循環抗ドナーIgG抗体の濃度が高いことを示している。単剤療法または2つの薬物の併用(CsAおよび/またはCyP)を受けている前感作レシピエントでは循環抗ドナーIgG濃度が部分的に下方制御されており、抗C5 mAb単剤もしくはCsAまたはCyPとの併用での治療によって同日に抗ドナー抗体の濃度に及ぼすさらなる影響はなかった。対照的に、抗C5 mAb、CsAおよびCyPの3剤併用療法によって、高濃度の循環抗ドナーIgGが徐々に下方制御されて、POD60には低濃度に達して、その後100日目までこの濃度のままであった(図4B)。異なる治療群における循環抗体の濃度と同様に、抗マウスIgGの強い沈着が、未治療である、もしくは単剤療法または2つの薬剤の併用療法を受けた前作動物の急速に拒絶された心臓移植片に存在することを表2は示している。興味深いことに、3剤併用療法によって、POD 100にはIgG抗体沈着が長期生存中の心臓移植片の軽度のレベルにまで次第に減弱された(図4C−a、表2)。このモデルでは、IgMは、治療の有無にかかわらず、前感作血レシピエントの循環中(図4A、B)または移植した心臓移植片(図4C−b、表2)のいずれかにおいての非常に低い濃度のままであった。また、抗C5 mAbによる治療によって、60日目までに補体活性が検出できないレベルにまで除去され、その後、3剤併用療法を受けている前感作マウスレシピエントにおける抗C5治療の中断後、POD100には枯渇前濃度に漸進的に回復した(図4D)。さらに、移植片内C5沈着が100日間生存中の前感作動物においても検出された(表2)。これらのデータは、抗移植片抗体および補体活性化の存在にもかかわらず、3剤併用療法での治療を受けた前感作レシピエントにおいて継続的な移植適応が発生することを実証している。
CsAとCyPを併用した抗C5 mAbによって、IgG1/IgG2a比が低下して、そして適応させた移植片を伴うレシピエントにおけるIgG2bへのIgGサブクラスシフトが引き起こされた。
抗C5 mAbベースの3剤併用療法によって、適応に関連しうるIgGサブクラスシフトが誘発されるか否かを判定するために、未治療レシピエントと適応させた心臓移植片を伴うレシピエントとで、IgG1、IgG2aおよびIgG2bの抗ドナーIgGサブクラスの血清濃度を比較した。未治療レシピエントからの血清には、高比率のIgG1/IgG2aによって示される、主なIgG1アイソタイプが含まれた(図5A)。対照的に、適応させた移植片を有するレシピエントにおいてIgG1/IgG2a比率の有意な低下が認められた(図5A、P<0.01)。さらに、適応させた心臓移植片を伴う前感作レシピエントは、拒絶移植片を伴う同じレシピエントと比較して、抗ドナーIgG2bの濃度上昇を示した(図5B、P<0.01)。また、単剤療法または2つの薬物の併用療法を受けたレシピエントのIgGアイソタイプのパターンは、未治療動物のパターンと区別できない。これらのデータは、抗ドナーIgG1アイソタイプが、移植片の拒絶反応に関連する可能性があり、抗ドナーIgG2bサブクラスの産生が保護抗体として作用して、適応の誘発において重要な役割を果たす可能性を示している。
CsAとCyPを併用した抗C5 mAbは、高度に感作させたマウスレシピエントにおいて移植片内Bcl−2およびBcl−xlの発現を誘発させた。
このモデルにおいて保護タンパク質の移植片内発現と液性免疫に対する移植片の耐性との間に因果関係が存在するか否かを判定するために、ウェスタンブロット解析を利用して、高度に感作させたマウスレシピエントからの心臓移植片組織内において対象のタンパク質を検出した。長期生存中の心臓移植片においてPOD100に高濃度のBcl−2およびBcl−xlタンパク質が発現していることが見出されており、そして抗C5 mAbベースの3剤併用療法を受けた高度に感作させたレシピエントにおける心臓移植から12日目の早期にこれらのタンパク質は検出された。対照的に、未治療動物(図6)または単剤療法または2つの薬物の併用療法を受けた動物の心臓移植片においてBcl−2およびBcl−xlタンパク質の発現は認められなかった。この結果は、無期限に生存する動物における液性免疫に対する移植片の耐性が、この前感作モデルにおけるBcl−2およびBcl−xlタンパク質がもたらす保護に関連していることを示唆している。
適応中の第1の心臓移植片を伴う前感作レシピエントは、適応させた第2の心臓移植片を受容するが、同じドナーからの第2の未処理の心臓移植片は拒絶する。
拒絶反応に対する適応させた移植片の耐性能については、未感作移植片が同種移植術後に拒絶反応を受ける病態生理学的条件下では直接試験されたことがない。このモデルでは、適応中の第1の心臓移植片を伴う前感作レシピエントが第2の適応させた移植片を受容するが、しかし、第2の未感作移植片は拒絶するか否かを判定するために、再移植シナリオを実施した。抗C5 mAbベースの3剤併用療法で治療した適応させた前感作BALB/cレシピエントにおいて、低濃度の同種抗体が検出され(図4B)、補体活性が治療前のレベルまで戻った(図4D)100日点まで適応させたC3H心臓移植片が生存後、これらのレシピエントは第2の心臓移植片を受けた。具体的には、別の前感作BALB/cレシピエントからの未感作C3H心臓(図7A)または100日間適応させたC3H心臓(図7B)のいずれかを適応中の第1のC3H心臓を有する前感作レシピエントの頸部に移植した。これらのレシピエントは、重度のAVRを伴い6.6±1.1日目に第2の未処理の心臓を拒絶したが(図8A)、第1の心臓は生存し続けた。対照的に、異なる前感作マウスにおいて既に100日間生存していた適応させた心臓を第2の移植片として使用した場合、これらの移植片は、適応中の第1の心臓移植片を有する前感作レシピエントによって受容された。2回目の移植から90日後、これらの適応させた第2の心臓移植片において拒絶反応の徴候は認められなかった(図8−b)。これらのデータは、適応させた移植片が、これらの前感作レシピエントにおいて同種移植片の拒絶反応を通常媒介する抗ドナー抗体および補体の効果に対して耐性であることを示している。さらに、適応させた移植片の宿主が新しい移植片を拒絶したという事実は、適応には移植片に対する変化が伴うことを示唆している。
CsAで治療中の前感作レシピエントは、適応させた心臓移植片を拒絶する。
この前感作モデルにおける適応が移植片および/またはレシピエントの変化によって起こされたのか否かを判定するために、別の再移植を実施した。具体的には、前感作BALB/cマウスにおいてC3H心臓移植片を100日間の適応させた後、次に適応させた心臓移植片を、CsA単剤で治療した第2の前感作BALB/cレシピエントに再移植させ(図7C)、この治療では細胞性拒絶反応を予防できるが、しかし前感作レシピエントにおける新しいC3H心臓の早期体液性拒絶反応を予防できない。適応させたC3H心臓移植片は、CsA治療した前感作BALB/cレシピエントにおいて迅速に拒絶された。再移植後、適応させた心臓移植片の病理像は、正常(図9A)から重度のACHRに変化しており、多量の組織内出血を伴ったが、細胞の浸潤はほとんど認められなかった(図9B)。また、適応させたC3H心臓を受けたこれらのレシピエントにおける高濃度の抗ドナーIgGおよび正常レベルの補体溶血活性は、未感作C3H心臓を受けるCsA治療済み前感作レシピエントでの濃度と類似していた。この結果は、抗C5 mAbベースの3剤併用療法によって誘発された適応が、移植片だけでなく、レシピエントに対する変化も含む機序に起因しうることをさらに示している。
実施例3
心臓移植モデルにおける急性血管拒絶反応
終末補体の形成の阻害剤を含めることで急性血管拒絶反応が減弱されるか否か、そして免疫抑制剤とこのような阻害剤の併用によって同種移植片の長期生存期間が達成されるか否かを判定するために実験を行なった。この一連の実験では、抗C5モノクローナル抗体がシクロスポリンと併用された。使用したモデルは、C3HマウスからBALB/cマウスへの同種移植片の異所性心臓移植であった。このモデルは、強くMHC不適合であるC3HおよびBALB /cマウスの厳密な急性血管拒絶モデルである。Wangら(2003)が記載している通りに、移植と他の方法を実施した。
異所性心臓移植 Wangら(2003)が記載している通りに、腹腔内異所性心臓移植を実施した。簡単に説明すると、ドナーに胸骨正中切開術を施して、そして上大静脈と肺静脈を結紮させて、分離させる前に、下大静脈と大動脈を通して1.0 mlの冷ヘパリン化リンガー乳酸液によりin situで心臓移植片を徐々に潅流させた。上行大動脈と肺動脈を切断して、そして移植片をドナーから摘出した。ドナーの大動脈とレシピエントの腹部大動脈の他、ドナーの肺動脈とレシピエントの下大静脈の間を、11−0ナイロン縫合糸を使用した端側吻合によって移植片に血管移植させた。直接の腹部触診法によって、移植した心臓の鼓動を毎日モニターした。鼓動の程度を点数化した:A、強い鼓動;B、鼓動の強さの顕著な低下;またはC、心拍動の完全な停止。心拍動がもはや触知できない場合、ルーチンの組織学的分析のために移植片を摘出した。特定の例では、組織学的分析のために、まだ機能している移植片を犠牲にした。
結果
マウス(体重25〜30gの8〜12週齢の雄マウス)を6つの実験群(各群マウス6〜8匹)に分けた。0日目に移植を実施した。エンドポイント(移植片不全であるエンドポイント)で組織学的変化を調べて、もしくは一部の場合に移植片不全前にマウスを殺した。過去の試験から、 投与したBB5.1の用量(週3回40mg/kg体重)によって終末補体活性が完全に抑制されることが知られていた。
1’群(対照) −1、0、1、2日目にマウスに0.75 mlの生理食塩水を腹腔内投与した。その後、エンドポイントまで週3回(月曜日、水曜日、金曜日)0.75 mlの生理食塩水をこれらのマウスに腹腔内投与した。
2’群(シクロスポリンA単剤) 0日目(移植日)から開始して、エンドポイントまで毎日15mg/kg体重のシクロスポリンAをマウスに皮下投与した。
3’群(抗補体抗体単剤) −1、0、1、2日目に40mg/kg体重の抗マウスC5抗体BB5.1(Freiら、1987)をマウスに腹腔内投与し、続いてエンドポイントまで週3回(月曜日、水曜日、金曜日)40mg/kg体重を投与した。
4’群(移植後14日目までの抗補体抗体+シクロスポリンA) −1日目から14日目に40mg/kg体重のC5抗体BB5.1をマウスに静脈内投与して、0日目から開始してエンドポイントまで毎日15mg/kg体重のシクロスポリンAも投与した。この群は、BB5.1が毎日静脈内投与された点で、他の群とは異なることに注意すること。
5’群(移植後28日目までの抗補体抗体+シクロスポリンA) −1、0、1、2日目に40mg/kg体重の抗マウスC5抗体BB5.1をマウスに腹腔内投与し、続いて28日目まで週3回(月曜日、水曜日、金曜日)40mg/kg体重を投与し、0日目から開始してエンドポイントまで毎日15mg/kg体重のシクロスポリンAも投与した。
6’群(移植後100日目までの抗補体抗体の慢性投与+シクロスポリンA) −1、0、1、2日目に40mg/kg体重の抗マウスC5抗体BB5.1をマウスに腹腔内投与し、続いて100日目まで週3回(月曜日、水曜日、金曜日)40mg/kg体重を投与し、0日目から開始して100日目まで毎日15mg/kg体重のシクロスポリンAも投与した。
この実験の結果を表3および表4に示している。表3には移植片の生存期間を示している。表4には組織像の採点を示している。
(表3)
同種移植片の生存期間
Figure 0005722524
(表4)
剖検での心臓同種移植片の組織学的変化スコアの中央値
Figure 0005722524
スコアの中央値:0、正常;1、最小限の変化;2、軽度の変化;3、中程度の変更;4、顕著な変化。N/A−該当なし
* Vasc−脈管炎;Infar−梗塞;Lymph−リンパ球浸潤;Throm−血栓症;Hemo−出血;フィブリン−フィブリン沈着;PMN−多形核細胞浸潤物。
結果は、免疫抑制剤に加えて補体阻害薬を使うことの相乗効果を示している。未治療マウスでは、移植片は約8日間で拒絶された。免疫抑制剤シクロスポリンA単剤の毎日の慢性使用は、移植から約15日間まで移植片の生存期間を延ばした。終末補体の形成を抑制するための抗C5抗体BB5.1の使用は、それ自体には影響を及ぼさず、対照群において移植片の拒絶反応が移植から8日目に起った(1’群)。移植後28日目までのシクロスポリンAとBB5.1の併用では相乗効果が認められ、移植片の生存期間が約80日目まで延長した。より驚くべき結果は、BB5.1とシクロスポリンAが移植後に慢性投与された5’群での結果である。この場合、移植片の生存期間は100日間以上であった(現在入手可能な限りのデータ)。さらに、表4に示した組織学的結果では、BB5.1とシクロスポリンAの両剤の投与がBB5.1またはシクロスポリンA単剤よりもずっと良く移植片を変化から保護し、そしてBB5.1とシクロスポリンAの慢性投与では、移植後100日目でさえ移植心臓において組織学的変化が認められない程度にまで移植片を保護することが示されている。これらのモデルでの生存期間100日間が判断基準と見なされる。モデルでの生存期間100日間は、同種移植片の生存期間が無期限であると考えられる。28日目にBB5.1投与を止めた際、移植片は保護されたが、しかし、それらは移植片不全が起こった時点である約80日目までに最小限から軽度の組織学的変化を確実に示し始めた。
静脈投与によってBB5.1を毎日投与された点で、4’群のマウスは異なる治療を受けた。これらの動物は発病して、体重減少および尿貯留を呈し、そして機能は低下していたが、移植心臓がまだ鼓動していた時に殺した。これは、試験されたマウスの第1群であり、そしてこれらの病的影響がなぜ認められたのかは不明である。BB5.1を週3回のスケジュールで腹腔内投与した場合、これらの病的影響は認められなかった。以下の実施例4で見られる通り、腹腔内経路を介したBB5.1の連日投与は病的影響を起こさなかった。また、静脈内投与はこれらの動物において必ずしも病気の原因ではなかった。PNHの試験(Hillmenら、2004)では、病的影響なしにエクリズマブの静脈内投与(ヒトC5に結合する点でBB5.1に対するヒトの同等の抗体)に成功している。補体阻害剤は、静脈内および腹腔内に加えて、他の経路によって投与でき、これらの全ての経路は当業者には周知である。
実施例4
前感作心臓移植モデルにおける早期拒絶反応
実施例3の実験と類似の第2組の実験を行なったが、しかし、レシピエントマウスはドナー臓器に前感作させていた。これらの実験において、皮膚移植片の事前の移植によって前感作を起こさせた。一般的に、前感作は、以前に同種移植片を受け取ったことの結果としてのみでなく、頻回輸血または妊娠していた女性においても生じうる。このような前感作の方法の他、このような攻撃を阻止する措置を取らない場合、ABO抗原に対して先に形成された抗体のために、ABO不適合の同種移植片は迅速に攻撃されて拒絶される。
これらの試験における一部のマウスに対して、BB5.1および/またはシクロスポリンAに加えて、シクロホスファミドを投与した。これらの実験では、(Pruitt and Bollinger,1991の方法を利用して)BALB/cレシピエントマウスは心臓移植の1週間前に同じドナーからのC3H皮膚移植片で前感作させていた。このモデルは、特に早期体液性拒絶反応に関連して、ヒトにおける前感作移植を模倣するようにデザインする。レシピエントマウスを各6〜8匹のマウスの8群に分けた。治療を以下のように継続した。
1’’群(対照)
マウス(体重25〜30 gの8〜12週齢の雄マウス)に−1日目から開始してエンドポイント(移植片の拒絶反応)まで0.75 mlの生理食塩水を腹腔内投与した。
2’’群(シクロスポリンA単剤)
マウスに0日目(移植日)から開始してエンドポイントまで15mg/kg体重の用量のシクロスポリンAを皮下投与した。
3’’群(BB5.1単剤)
マウスに−1日目(移植日)から開始してエンドポイントまで継続して毎日40mg/kg体重の用量の抗マウス補体モノクローナル抗体BB5.1を腹腔内投与した。
4’’群(シクロホスファミド単剤)
マウスに0日目および1日目の各日に40mg/kg体重の用量のシクロホスファミドを静脈内投与した。
5’’群(BB5.1+シクロスポリンA)
マウスに−1日目から開始してエンドポイントまで継続して毎日40mg/kg体重の用量のBB5.1を腹腔内投与した。これらのマウスには0日目からエンドポイントまで毎日15mg/kg体重の用量のシクロスポリンAを皮下に追加投与した。
6’’群(BB5.1+シクロホスファミド)
マウスに−1日目から開始してエンドポイントまで継続して毎日40mg/kg体重の用量のBB5.1を腹腔内投与した。これらのマウスには0日目および1日目の各日に40mg/kg体重の用量のシクロホスファミドを静脈内に追加投与した。
7’’群(シクロスポリンA+シクロホスファミド)
マウスに0日目からエンドポイントまで毎日15mg/kg体重の用量のシクロスポリンAを皮下投与した。これらのマウスには0日目および1日目の各日に40mg/kg体重の用量のシクロホスファミドを静脈内に追加投与した。
8’’群(BB5.1+シクロスポリンA+シクロホスファミド)
マウスに−1日目から100日目まで継続して毎日40mg/kg体重の用量のBB5.1を腹腔内投与した。これらのマウスには0日目から100日目まで15mg/kg体重の用量のシクロスポリンAを皮下に追加投与した。これらのマウスには0日目および1日目の各日に40mg/kg体重の用量のシクロホスファミドを静脈内に追加投与した。この群内の2匹のマウスを組織学的研究のために60日目に殺し(拒絶反応はまだ起っていなかった)、残りの4匹のマウスは100日目まで依然として移植片を拒絶しなかった。
さらに、1’’群では、前感作させていないが、生理食塩水治療のみを受けたマウスの対照群を試験した。
これらの実験の結果を表5と表6に示している。表5には移植片の生存期間を記載しており、表6には組織学的結果をまとめている。
表5
同種移植片の生存
Figure 0005722524
*P<0.01 1’’群 対 前感作なし
**P<0.01 5’’群 対 1’’〜4’’群および6’’〜7’’群
***P<0.01 8’’群 対 1’’〜7’’群。
表6
剖検時の心臓同種移植片の組織学的変化スコアの中央値
Figure 0005722524
スコアの中央値:0、正常;1、最小変化;2、軽度の変化;3、中程度の変更;4、顕著な変化。N/A−該当なし
*Vasc−脈管炎;Infar−梗塞;Lymph−リンパ球浸潤;Throm−血栓症;Hemo−出血;フィブリン−フィブリン沈着;PMN−多形核細胞浸潤物。
表5には、実施例3で使用した前感作マウスモデルと前感作させていないマウスモデルとの違いを示している。結果は、前感作がない場合には、薬物療法がない限り移植片は約8日間で拒絶されることを示している。動物を前感作させることで拒絶反応がより迅速に起り、薬物療法がない場合には前感作動物において移植片の拒絶が約3日以内に認められる。BB5.1、シクロスポリンAまたはシクロホスファミドのいずれかによる治療が移植片の生存期間に及ぼす影響は認められず、これらの各群の動物において移植片は約3〜4日以内に拒絶された。BB5.1とシクロスポリンAの併用は一定の効果を示し、拒絶反応が12日目前後に起った。BB5.1とシクロホスファミドの併用には保護作用は認められず、拒絶反応が3日目前後に起った。同様に、シクロスポリンAとシクロホスファミドの併用では実質的な保護作用は認められず、拒絶反応が3〜4日目に起った。非常に驚くべきことに、3つ全ての薬物の併用(BB5.1とシクロスポリンプラスの慢性投与+移植時のシクロホスファミド)では高い相乗効果が認められ、全てのマウスが100日間以上におよび生存した。ここでも、このモデルでの100日間の生存期間が判断基準と見なされて、無期限の生存期間が想定される。
表6に示した組織学的結果の他、これらの結果は、前感作マウスの治療における補体阻害剤およびシクロスポリンAなどの免疫抑制剤による慢性治療の併用が、早期拒絶反応をある程度軽減させることを示している。移植時および移植後1日目にシクロホスファミドによるこれらの動物の追加治療によって、生存期間がずっと長くなり、少なくとも100日目までは拒絶反応が認められなかった。
実施例5
C3H腎臓同種移植片は前感作BALB/cレシピエントにおいてABMRのため壊死する。
高度に前感作させた患者における腎臓同種移植術の臨床状況を厳密に模倣した特徴を有する新規マウスABMRモデルを作成した。レシピエントBALB/cマウスを完全同種C3Hドナー皮膚移植片で前感作させた。前感作後、循環抗ドナーIgG濃度が著しく上昇して、皮膚移植後7日目にピーク濃度に達した(図10A)。この時、同じドナー株(C3H)からの腎臓同種移植片を前感作レシピエントに移植した;これらの移植片は8.5±1.3日で全ての動物において迅速に拒絶された(図11A)。拒絶された移植片としては、1)腎糸球体および腎尿細管壊死の他、脈管炎、間質内の出血と浮腫(図10B−a)、2)IgG(図10B−c)、C3(図10B−e)およびC5(図10B−g)の広範な移植片内沈着、3)移植後の同日に評価された前感作されていないレシピエントにおいて認められる濃度と比較して有意に高い循環抗ドナーIgG濃度(p<0.01;図10C)、4)正常レベルの補体活性(図10D)、ならびに5)単球やマクロファージを含む多数のMac−1細胞の移植片内浸潤(図10B−i)を含む早期体液性拒絶反応と一致する組織学的特徴が挙げられる。対照的に、前感作させていないBALB/cマウスは、55.2± 5.6日間でC3H腎臓移植片を拒絶して、そしてPOD8に移植片の正常な組織像(図10B−b)を示し、検出可能なIgG沈着は認められず(図10B−d)、Mac−1細胞の浸潤はほとんど認められず(図10B−j)、そしてC3(図10B−f)と(図10B−h)の軽度の沈着のみが認められた。ドナー皮膚での前感作によって、循環抗ドナーIgM濃度(図10C)または血清補体活性(図10D)が上昇するようには見えなかった。これらのデータは、この新規の腎臓同種移植片モデルが、高度に前感作させたレシピエントでの抗体媒介性の腎臓同種移植片の拒絶反応における補体の潜在的役割を研究するための優れた手段を提供することを示唆している。CsAとLFの併用での抗C5 mAbはABMRを予防して、そして前感作マウスレシピエントにおける腎臓同種移植片の生存期間を無期限とする。
このモデルの作成中に実施された初期実験では、腎臓移植片の生存を延長させる際のCsAとシクロホスファミド(CyP)の免疫抑制作用が評価された。一方で、CyP治療は深刻な腎毒性に関連しており、さらなる評価を妨げた(データ未提示)。LFでの短期治療は腎毒性に関連しておらず、そしてさらなるモデリングでは実験的な免疫抑制計画の一部としてこの薬剤を使用した。
単剤またはCsAと併用した抗C5 mAbおよび短期間のLF治療によって、腎臓同種移植片を受けた前感作マウスレシピエントにおいてABMRを予防できるか否かを評価した。図11Aに示される通り、CsAまたはLFの単剤療法、または2つの薬物の併用療法を受けた前感作レシピエントの移植片は、それぞれ9.3±2.5日間、6.0±1.0日間、そして11.7±2.1日間で拒絶された。また、抗C5 mAb単剤療法、もしくはCsAまたはLFと抗C5 mAbの併用によって移植片の生存期間を改善させることはできず、拒絶反応がそれぞれ7.0±1.0日間、7.0±1.0日間、そして8.3±3.2日間で起った(図11A)。これらの拒絶された腎臓移植片は、抗体媒介性の体液性拒絶反応の典型的な病理学的特徴も発現しており(データ未提示)、拒絶反応のパターンは、未治療の前感作BALB/cレシピエントにおいて認められるパターンと実質的に同じであった(図10B−a)。対照的に、抗C5 mAb、CsAおよび短期LF治療から成る3剤併用療法によって移植片の拒絶反応が効果的に予防されて、そして前感作動物において腎臓同種移植片の生存期間が100日間を超えて無期限になった(図11A)。さらに、正常範囲内の血清クレアチニン濃度によって示される通り、長期生存中の腎臓移植片は正常な腎臓機能を示した(図11B;p<0.01、対未治療マウスまたはCsAまたはLFの単剤療法または2つの薬物の併用療法を受けたマウス)。3剤併用療法によって治療された前感作レシピエントにおけるPOD100での腎臓同種移植片の組織像は正常であり(図11C−a)、CD4+、CD8+またはMac−1+細胞の浸潤は検出できなかった(図11C −b、c、d)。また、多数のMac−1+細胞の移植片内浸潤が未治療動物およびCsA、LFまたはCsA+LF治療動物において認められ、これらの細胞の浸潤は抗C5 mAb治療動物において有意に減少した(表7)。これらの結果は、CsAおよび短期間のLFを併用した抗C5 mAbを機能的に遮断することによる治療によって、高度に前感作させたレシピエントにおいてABMRが予防されて、腎臓同種移植片の生存期間を無期限にすることができることを示している。
抗C5 mAb治療によって、腎臓同種移植片を受けた前感作レシピエントにおいて終末補体活性および局所的なC5沈着が完全に抑制される。
このモデルにおける抗C5 mAb治療の全身的および局所的な有効性を判定するために、同じ時間点(POD7)の異なる治療群のマウスにおいてインビトロでの血清溶血アッセイによる測定によって補体活性を評価した。CsAまたはLF、もしくは2つの薬物の併用によるマウスの治療では、終末補体活性に及ぼす抑制作用は認められず、抗C5 mAb単剤もしくはCsAおよび/またはLFとの併用による治療によって血清補体活性は完全に抑制された(p<0.01、未感作マウス、未治療の前感作マウスまたはCsA、LFまたはCsA+LF治療動物)(図12)。POD60での治療中止後、POD100までに補体溶血活性が正常濃度に回復した(表12)。さらに、局所的な(移植片内の)C5沈着は抗C5 mAb治療を受けた前感作レシピエントにおいて完全に予防されたが、無治療またはCsA、LFおよびCsA+LF治療を受けた前感作動物においては顕著であった(表7)。予測された通り、抗C5 mAb治療によって移植片内C3沈着は阻止されなかった(表7)。これらの結果は、抗C5 mAb治療によって終末補体活性が完全に遮断されるが、しかし、前感作レシピエントにおける同種腎移植後の初期補体成分が維持されることを示している。
長期生存中の腎臓移植片は、適応によって前感作レシピエントにおける液性免疫に抵抗性を示す。
これらの腎臓移植片の長期生存期間が適応の発生に関連しているか否かを調べるために、拒絶反応の時点での異なる治療群のマウスにおける循環抗ドナー抗体の濃度、血清補体活性および移植片内抗体および補体沈着を測定した。未治療の前感作BALB/cレシピエントが高濃度の循環抗ドナーIgG抗体を産生し(図13A)、これらはCsAまたはLFの単剤または併用での治療時に部分的に減少した。CsAまたはLFのいずれの単剤療法に抗C5を加えても抗ドナー抗体の濃度がさらに減弱することはなかった。抗C5 mAb、CsAおよびLFの3剤併用療法では、循環抗ドナーIgG濃度は顕著に抑制されて、そしてPOD100では依然として低いままであった(*p<0.01、対未治療の前感作動物もしくは単剤療法または2つの薬物の併用療法を受けた動物)。しかし、この低い抗体濃度は、未感作動物での抗体濃度よりも依然として高かった(**p<0.05、対3剤併用療法で治療した前感作動物)。循環抗ドナー抗体の濃度に及ぼす治療効果と矛盾なく、未治療の前感作レシピエント、もしくはCsAまたはLFの単剤療法または2つの薬物の併用のいずれかを受けているレシピエントにおいて顕著な移植片内IgG沈着が認められた(表7)。興味深いことに、POD100では、3剤併用療法によって治療された動物からの長期生存中の腎臓移植片も軽度のIgG沈着を示した(図11C−e、表7)。さらに、軽度から中程度のC3およびC5の沈着が、前感作動物の100日間生存中の腎臓移植片において検出された(図11C−f、g、表7)。血液循環中(図13A)または移植された腎臓移植片(表7)中の抗ドナーIgM濃度は、治療にかかわらず全ての前感作レシピエントにおいて依然として低いままであった。まとめると、これらのデータは、実証可能な移植片内のIgGおよび補体の沈着の存在にも関わらず、抗C5 mAbベースの3剤併用療法によってABMRが予防されることを示しており、移植片の長期生存期間が適応過程を通じて達成されることを示唆している。
適応させた腎臓移植片を有する長期生存中の前感作レシピエントにおけるIgG2bへのIgGサブクラスシフト
抗C5 mAbベースの3剤併用療法がIgGサブクラスシフトに関連するか否かを判定するために、未治療の前感作レシピエントおよび適応させた腎臓移植片を有するレシピエントにおいて、抗ドナーIgGサブクラスの血清濃度間で比較を行なった。未治療の前感作レシピエントからの血清には、主にIgG1、IgG2aおよびIgG3抗ドナー抗体が含まれていた(図13B)。CsA、LF、または2つの薬物の併用で治療された前感作レシピエントにおいて同じパターンが認められた(データ未提示)。対照的に、適応させた移植片を有する前感作レシピエントにおいて(POD100)、主な抗ドナーIgGサブクラスはIgG2bであった(図13B、p<0.01)。これらのデータは、抗ドナーIgG2b抗体の産生が移植片の適応誘導に関連しうることを示唆する。
保護タンパク質Bcl−2およびBcl−xlは、適応させた腎臓移植片で発現する。
低濃度の同種抗体および補体に対する適応させた移植片の耐性は、過去に異種移植モデルでの適応させた移植片の血管内において上方制御されていることが報告されているBcl−xlやBcl−2などの保護タンパク質の移植片内での発現に関連している可能性があると仮定されている(Bachら、1997)。これらのタンパク質の発現は、抗C5 mAbベースの3剤併用療法を受けている前感作レシピエントにおいて評価した。抗C5 mAbベースの3剤併用療法で治療した前感作レシピエントからの適応させた腎臓移植片はPOD100に高濃度のBcl−2およびBcl−xlタンパク質を発現していた(図14)。対照的に、これらのタンパク質の発現は、未治療の前感作動物(図14)、もしくはCsAまたはLFの単剤療法または2つの薬物の併用療法を受けた前感作動物の拒絶された腎臓移植片においては検出できなかった(データ未提示)。これらの結果は、これらの前感作動物における液性免疫に対する適応させた移植片の耐性がBcl−2およびBcl−xlタンパク質によってもたらされる保護に関連しうることを示唆している。
表7
剖検時の前感作マウスレシピエントにおける腎臓同種移植片の免疫ペルオキシダーゼ染色*
Figure 0005722524
*拒絶反応の時点または移植後のPOD100(3剤併用療法群について)に移植片を回収した。染色強度は以下の通り点数化した:0、陰性;1+、判定不能 ;2+、弱;3+、中程度;4+、強。
実施例6 実施例5の方法
動物 体重25〜30 gの雄の成体C3H(H−2k)マウスおよびBALB/c(H−2d)マウス(Jackson Labs,Bar Harbor,Maine)をそれぞれドナーおよびレシピエントとして選んだ。The University of Western OntarioのAnimal Care Facilityにおいて従来の条件下で動物を収容させて、そしてCanadian Council on Animal Careが定めたガイドラインに従って飼育した。
皮膚前感作 C3Hドナーから採取した全層皮膚移植片を1×1 cmの小片に切り、そしてBALB/cレシピエントマウスの背部に移植した。拒絶反応は皮膚移植片の完全な壊死と定義した。
同所性腎移植 皮膚前感作から7日後、11−0ナイロン縫合糸を使用してドナーとレシピエントの大動脈およびドナー腎静脈とレシピエントの下大静脈に吻合させることによって前感作BALB/cレシピエントの腹部にC3Hマウス腎臓を移植させた。また、10−0縫合糸を使用してドナー尿管をレシピエント膀胱に縫合された。移植直後に固有腎を摘出した。宿主に死を招く移植片の拒絶反応を腎臓移植での拒絶反応のエンドポイントとして利用した。
実験群 前感作レシピエントを各5匹の動物から成る8群に無作為に割り当てた:1群、未治療マウス;2群、CsA治療マウス(15mg/kg /日、皮下、0日目から試験エンドポイントまで毎日(移植片の拒絶反応または手術後日数(POD)100);3群、抗C5 mAb治療マウス(クローンBB5.1、Alexion Pharmaceuticals Inc.、40mg/kg /日、腹腔内、毎日、0〜14日目、その後、60日目まで週2回);4群、LF15−0195治療マウス(LF、2mg/kg /日、皮下、0〜14日目);5群、抗C5 mAb治療マウス;6群、抗C5 mAb+LF治療マウス;7群、CsA+LF治療マウス;8群、抗C5 mAb、CsAおよびLFから成る3剤併用療法治療を受けたマウス。拒絶反応の時点で、ルーチンの組織学的研究、免疫組織化学的研究およびウェスタンブロット分析のために腎臓移植片を摘出して、そして抗ドナー抗体の濃度および補体活性の評価のために血清抗体を採取した。
血清中クレアチニンの測定 腎移植後、試験エンドポイント(拒絶反応またはPOD100の時点)で血清検体を得た。ヤッフェ反応の速度修飾(kinetic modification)(Jungeら、2004)によってクレアチニンを測定するSigma Diagnostics(Sigma,St. Louis,MO)の手順を利用して、10μL検体中で血清中クレアチニン濃度を定量した。
移植片組織像 剖検時に、組織検体をヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色法(Wang et al,JI 2003)で処理して、そして脈管炎、血栓症、出血およびリンパ球浸潤を評価した。変化を以下の通りに採点した:0、なし;1、最小限;2、軽度;3、中程度または4、正常組織と比較して顕著。
免疫組織化学 Optimum Cutting Temperature(O.C.T)ゲル(Skura Finetek、トランス (Torrance)、CA)包埋した組織検体を切片にして、そしてElite Vectastain ABC kit(Vector Laboratories Inc.,Burlingame,CA)を使用してCD4+、CD8+およびとMac−1+浸潤細胞、ならびにIgG、IgM、C3およびC5沈着を染色した。一次ビオチン化抗体として、抗CD4(YTS 191.1.2,Cedarlane Laboratories Ltd.,Homby,Ontario,Canada)、抗CD8(53− 6.7,BD Biosciences,Franklin Lakes,NJ)および抗Mac−1(Cedarlane)が挙げられる。ビオチン化ヤギ抗マウスIgGとヤギ抗マウスIgM(Cedarlane)を使用して移植片内のIgGおよびIgMの沈着を検出した。ヤギ抗マウスC3または抗マウスC5ポリクローナル抗体(Quidel,San Diego,CA)、ビオチン化ウサギ抗ヤギIgG(Vector Laboratories)およびHRP結合ストレプトアビジン(Zymed Laboratories,South San Francisco,CA)による連続インキュベーション後に補体沈着を検出した。一次抗体を除くことによって陰性対照とした。動物5匹/実験群からの組織検体を使用して、各切片の5つの高倍率視野内で免疫染色を点数化した。免疫反応性が以下の通り染色強度に従って0から4+で採点した:0、陰性;1+、判定不能;2+、弱;3+、中程度;4+、非常に強度の染色。
フローサイトメトリー フローサイトメトリーによってレシピエント血清中の循環抗ドナー特異的IgG抗体およびIgM抗体を評価した。簡単に説明すると、C3Hマウス脾細胞が単離して、そして様々な治療群からのマウスから指定された時間点で得た血清検体と37℃で30分間インキュベートさせた。全IgGまたは特異的抗体サブクラスを染色するために、マウスIgG、マウスIgG1、マウスIgG2a、マウスIgG2bまたはマウスIgG3(全てCALTAG Laboratories,Burlingame,CA)のFc部分に特異的なFITC結合ヤギ抗マウス抗体またはマウスIgM(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)に特異的なフィコエリスリン結合ヤギ抗体と、洗った細胞を4℃で1時間インキュベートさせて、洗い、FACScan flow cytometer(Becton Dickinson,Mountain View,CA)で分析した(Collinsら、1999;Prattら、1996)。結果は、検体中の各抗ドナーアイソタイプの濃度の測定値として、平均チャンネル蛍光強度で表している。
補体溶血アッセイ レシピエントマウスの血清における終末補体活性を標準的方法によって測定して、過去に記載された通りに(Wangら、1999)、赤血球特異的抗体で前感作させたニワトリ赤血球に対する血清の溶解能を評価した。
ウェスタンブロット解析 凍結腎臓検体を超音波分解させて、電気泳動で分離させてそしてポリビニリデンジフルオリド(PVDF;Invitrogen)メンブレンにトランスファーさせた。Bcl−2とBcl−Xs/Lの移植片内発現をそれぞれポリクローナル血清N−19とM−125を使用して検出した(Santa Cruz Biotechnology,Inc)。。ポリクローナル抗カルセケストリン(Calbiochem)は、検体添加対照として使用した(Kobayashiら、1999)。ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgGによって抗体結合が検出され、そして化学発光(Roche Laboratories)が高められた(Arpら、1996)。
統計解析 平均値±標準偏差(SD)でデータを報告する。ログランクテストを利用して、同種移植片の生存期間を実験群間で比較した。ランク(on rank)ANOVAを利用して組織学的所見と免疫組織学的所見を解析した。一元配置ANOVAを利用してフローサイトメトリーとウェスタンブロットのデータを解析した。p値の差が0.05未満を有意と見なした。
本開示の方法および組成物は、様々な態様の形で組み込むことができ、その少数のみを本明細書で開示していることが理解される。他の態様が存在し、そして開示の精神から逸脱しないことは当業者には明らかであろう。従って、記載している態様は例示であり、そして限定的であると解釈してはならない。
参考文献のリスト
開示の背景を明らかにするために本明細書で使用する出版物および他の資料、特に、実行に関する追加の詳細を提供する事例は、本明細書において全体として参照により組み入れられ、そして便宜のための、著者および日付により参照され、以下の参考文献のリストにおいてそれぞれグループ分けしている。
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本明細書で引用されたすべての参考文献の内容は、全体として参照により組み入れられる。
図1A−1Bには、異なる治療下での、前感作させたレシピエントに対する非感作レシピエントの抗体濃度を示している。 図1C−1Dには、異なる治療下での、前感作させたレシピエントに対する非感作レシピエントの抗体濃度を示している。 図2Aには、前感作させた同種移植レシピエントにおける抗C5抗体、CsAおよびCyPを使用した3剤併用療法と、前感作させた同種移植レシピエントにおける抗C5抗体およびCsAを使用した併用療法との比較を示している。図2Aでは、異なる治療下での様々なレシピエントにおける心臓同種移植片の生存期間を比較している。 図2Bには、前感作させた同種移植レシピエントにおける抗C5抗体、CsAおよびCyPを使用した3剤併用療法と、前感作させた同種移植レシピエントにおける抗C5抗体およびCsAを使用した併用療法との比較を示している。図2Bには、例えば、異なる群のレシピエントでの心同種移植におけるリンパ球浸潤の組織像および免疫組織像を示している。 図3には、免疫抑制剤と比較した、抗C5抗体によって遮断された終末補体活性を示している。 図4A−4Bでは、抗C5抗体での単剤療法、抗C5抗体およびCsAでの併用療法、ならびに抗C5抗体、CsAおよびCyPでの併用療法下での前感作レシピエントにおける抗ドナー抗体の濃度を比較している。 図4C−4Dでは、抗C5抗体での単剤療法、抗C5抗体およびCsAでの併用療法、ならびに抗C5抗体、CsAおよびCyPでの併用療法下での前感作レシピエントにおける抗ドナー抗体の濃度を比較している。 図5には、未治療であった、または異なる治療下にあった同種移植レシピエントにおけるIgGアイソタイプの比率の変化を示している。 図6には、未治療動物の心臓移植片と比較した、長期生存中の心臓移植片におけるBcl−2およびBcl−xlタンパク質の高レベル発現を示している。 図7A−7Cには、初回移植レシピエントからの適応させた移植片の2回目の移植(再移植)での改善を示している。 図8A−8Bには、再移植実験での結果を示している。 図9A−9Bには、再移植実験での結果を示している。 図10A−10Dには、異なる治療下での、前感作させたレシピエントに対する未感作レシピエントの抗体濃度を示している。 図10A−10Dには、異なる治療下での、前感作させたレシピエントに対する未感作レシピエントの抗体濃度を示している。 図10A−10Dには、異なる治療下での、前感作させたレシピエントに対する未感作レシピエントの抗体濃度を示している。 図11A−11Bには、CsAと抗体C5 mAbとの併用を示しており、LFによって前感作マウスにおける腎臓移植片の生存期間が無期限になる。 図11Cには、CsAと抗体C5 mAbとの併用を示しており、LFによって前感作マウスにおける腎臓移植片の生存期間が無期限になる。 図12には、前感作BALB/cマウス血清において補体の溶血活性が完全に抑制されることを示している。 図13A−13Bには、未治療であった、または異なる治療下にあった同種移植レシピエントにおけるIgGアイソタイプの比率の変化を示している。 図14には、前感作レシピエントの長期生存腎臓移植片における防御タンパク質の発現を示している。

Claims (31)

  1. レシピエント哺乳動物での腎臓同種移植片の生存を延長させるための組成物であって、該組成物は、補体活性を抑制する薬物を含み、該組成物は、(a)IL−2阻害剤および(b)少なくとも1つの他の腎毒性を引き起こさない免疫抑制薬と組み合わせて投与され、それにより該レシピエント哺乳動物での該腎臓同種移植片の生存を延長させることを特徴とし、該IL−2阻害剤は、シクロスポリンAであり、そして、該腎毒性を引き起こさない免疫抑制薬がLF15−0195である組成物。
  2. 前記レシピエント哺乳動物がヒトである、請求項1記載の組成物。
  3. 前記同種移植片がMHC不適合である、請求項1記載の組成物。
  4. MHC不適合である前記同種移植片がHLA不適合同種移植片である、請求項3記載の組成物。
  5. 前記レシピエント哺乳動物が前記同種移植片に対してABO不適合である、請求項1記載の組成物。
  6. 慢性投与されるものであることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
  7. 前記補体活性を抑制する薬物がC5bまたはC5aの形成を抑制する、請求項1記載の組成物。
  8. 前記C5bまたはC5aの形成を抑制する薬物が抗体全体またはその抗原結合断片である、請求項7記載の組成物。
  9. 前記抗体全体がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ化抗体または脱免疫化抗体である、請求項8記載の組成物。
  10. 前記抗体全体またはその抗原結合断片が補体C5の切断を抑制する、請求項8記載の組成
    物。
  11. 前記抗原結合断片がFab、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体からなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
  12. 前記抗原結合断片がペキセリズマブ(pexelizumab)である、請求項8記載の組成物。
  13. 前記抗体全体がエクリズマブ(eculizumab)である、請求項8記載の組成物。
  14. 前記エクリズマブが2週間に1回投与される、請求項13記載の組成物。
  15. 前記補体活性を抑制する薬物がi)可溶性補体受容体、ii)CD59、iii)CD55、iv)CD46およびv)C5、C6、C7、C8またはC9に対する抗体からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
  16. 前記レシピエント哺乳動物の残りの生存期間にわたり前記同種移植片が生き残る、請求項1記載の組成物。
  17. 前記同種移植片が少なくとも3カ月間生き残る、請求項2記載の組成物。
  18. 前記同種移植片が少なくとも6カ月間生き残る、請求項2記載の組成物。
  19. 前記同種移植片が少なくとも1年間生き残る、請求項2記載の組成物。
  20. 前記同種移植片が少なくとも5年間生き残る、請求項2記載の組成物。
  21. 少なくとも14日間慢性投与されることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
  22. 少なくとも28日間慢性投与されることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
  23. 少なくとも3カ月間慢性投与されることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
  24. 少なくとも6カ月間慢性投与されることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
  25. 少なくとも1年間慢性投与されることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
  26. 少なくとも5年間慢性投与されることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
  27. 前記レシピエント哺乳動物の残りの生存期間にわたり慢性投与されることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
  28. 前記IL−2阻害剤および前記腎毒性を引き起こさない免疫抑制薬の方が、前記レシピエント哺乳動物の残りの生存期間にわたり慢性投与されることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
  29. 前記レシピエント哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともシクロスポリンAが慢性投与されることを特徴とする、請求項28記載の組成物。
  30. 前記レシピエント哺乳動物の残りの生存期間にわたり少なくともLF15−0195が慢性投与されることを特徴とする、請求項28記載の組成物。
  31. 前記レシピエント哺乳動物が前記同種移植片に対して前感作されていることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
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