以下、本発明の一実施の形態の測定装置について、図1〜図14を参照しながら説明する。
図1は、測定装置のハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。測定装置11は、例えば、インピーダンスアナライザまたはLCRメータなどであり、専用の測定装置とされるか、または各種の機器に組み込まれ、測定の対象である試料12の電気的特性を測定する。試料12は、コイル、抵抗、コンデンサまたは振動子などの電気回路の素子である。ここで電気的特性は、インピーダンスまたは位相などである。
測定装置11は、測定部31、制御部32、操作部33、表示部34、および記憶部35からなる。測定部31は、所定の周波数の電圧を試料12に印加するか、所定の周波数の電流を試料12に流すなどして、試料12に接続される端子に流れる電流や端子間の電圧を取得する。制御部32は、専用の集積回路、マイクロコンピュータ、または組み込み型のマイクロプロセッサなどからなり、操作部33からの信号の基に、測定部31、制御部32、表示部34、および記憶部35を制御する。操作部33は、スイッチ、ダイヤル、タッチパネルの入力部などからなり、ユーザによって操作されると、その操作に応じた信号を制御部32に供給する。
表示部34は、液晶表示装置または有機EL(electroluminescence)表示装置などからなり、制御部32の指示に応じて、各種の情報を表示する。記憶部35は、半導体メモリやハードディスクドライブなどからなり、制御部32から供給された各種の情報を記憶する。
図2は、制御部32の機能の構成の一例を示すブロック図である。すなわち、制御部32の機能には、掃引周波数設定部51、周波数特性測定制御部52、判定部53、および等価回路モード選択部54が含まれる。
掃引周波数設定部51は、ユーザの操作に応じた信号を操作部33から取得するか、図示せぬ通信部を介して外部の機器からコマンドを取得することで、極値が取得されるように掃引周波数を設定する。すなわち、掃引周波数設定部51は、掃引を開始する周波数、掃引を終了する周波数、および測定する周波数の間隔または測定するポイントの数などを設定することで、掃引周波数を設定する。
周波数特性測定制御部52は、測定部31を制御し、測定部31に、所定の周波数の電圧を試料12に印加させるとともに、試料12に接続される端子に流れる電流などを取得させ、これにより、測定の設定に応じた試料12のインピーダンスおよび位相を測定させ、インピーダンスおよび位相の測定値(以下、測定により得られたインピーダンスの値をインピーダンス測定値と称し、測定により得られた位相の値を位相測定値と称する。)を取得する。
判定部53は、インピーダンス測定値に極大値または極小値があるか否かを判定するか、または位相が測定された周波数の範囲のうち低い側の所定の周波数である位相判定周波数における位相測定値が予め定めた閾値である45度より大きいか、または位相判定周波数における位相測定値が予め定めた閾値である−45度より小さいかを判定する。判定部53は、インピーダンス極値判定部61および最低周波数位相判定部62を含む。なお、位相判定周波数は、位相-周波数特性の変化が所定値以下の周波数範囲のうち、低周波数側の周波数とすることができる。以下、位相判定周波数として、最も低い周波数(最低周波数)を例に説明する。
インピーダンス極値判定部61は、インピーダンス測定値に極大値または極小値があるか否かを判定する。最低周波数位相判定部62は、最低周波数における位相測定値が45度より大きいか、または最低周波数における位相測定値が−45度より小さいかを判定する。
等価回路モード選択部54は、極大値または極小値があるか否かの判定結果によって、試料12の等価回路を示す等価回路モデルを用いて測定が行われる等価回路モードを選択する。
以下、等価回路モデルA〜Eのそれぞれを用いて測定が行われる等価回路モードを、それぞれ等価回路モードA〜Eと称する。
図3は、等価回路モードの選択の処理の例を説明するフローチャートである。ステップS11において、掃引周波数設定部51は、極値が取得されるように掃引周波数を設定する。ステップS12において、周波数特性測定制御部52は、測定部31を制御し、試料12のインピーダンスおよび位相の周波数特性を測定し、取得する。
ステップS13において、判定部53のインピーダンス極値判定部61は、インピーダンス測定値に極大値があるか否かを判定する。ステップS13において、極大値があると判定された場合、手続はステップS14に進み、判定部53のインピーダンス極値判定部61は、インピーダンス測定値に極小値があるか否かを判定する。
ステップS14において、極小値がないと判定された場合、手続はステップS15に進み、判定部53の最低周波数位相判定部62は、最低周波数における位相測定値が予め定めた閾値である45度より大きいか否かを判定する。ステップS15において、最低周波数における位相測定値が45度より大きいと判定された場合、手続はステップS16に進み、等価回路モード選択部54は、試料12の等価回路を示す等価回路モデルとして等価回路モデルAを選択する。そして、等価回路モード選択部54は、選択された等価回路モデルAを用いて測定が行われる等価回路モードAを選択する。ステップS16の後、手続はステップS23に進む。
ステップS15において、最低周波数における位相測定値が45度より大きくないと判定された場合、手続はステップS17に進み、等価回路モード選択部54は、試料12の等価回路を示す等価回路モデルとして等価回路モデルBを選択する。等価回路モード選択部54は、選択された等価回路モデルBを用いて測定が行われる等価回路モードBを選択する。ステップS17の後、手続はステップS23に進む。
ステップS14において、極小値があると判定された場合、手続はステップS18に進み、等価回路モード選択部54は、試料12の等価回路を示す等価回路モデルとして等価回路モデルEを選択する。等価回路モード選択部54は、選択された等価回路モデルEを用いて測定が行われる等価回路モードEを選択する。ステップS18の後、手続はステップS23に進む。
ステップS13において、極大値がないと判定された場合、手続はステップS19に進み、判定部53のインピーダンス極値判定部61は、インピーダンス測定値に極小値があるか否かを判定する。
ステップS19において、極小値があると判定された場合、手続はステップS20に進み、判定部53の最低周波数位相判定部62は、最低周波数における位相測定値が予め定めた閾値である−45度より小さいか否かを判定する。ステップS20において、最低周波数における位相測定値が−45度より小さくないと判定された場合、手続はステップS21に進み、等価回路モード選択部54は、試料12の等価回路を示す等価回路モデルとして等価回路モデルCを選択する。等価回路モード選択部54は、選択された等価回路モデルCを用いて測定が行われる等価回路モードCを選択する。ステップS21の後、手続はステップS23に進む。
ステップS20において、最低周波数における位相測定値が−45度より小さいと判定された場合、手続はステップS22に進み、等価回路モード選択部54は、試料12の等価回路を示す等価回路モデルとして等価回路モデルDを選択する。等価回路モード選択部54は、選択された等価回路モデルDを用いて測定が行われる等価回路モードDを選択する。ステップS22の後、手続はステップS23に進む。
ステップS19において、極小値がないと判定された場合、等価回路モデルおよび等価回路モードを選択しないで、手続はステップS23に進む。
ステップS23において、判定部53は、等価回路モードA〜Eのいずれかが選択されたか否かを判定し、等価回路モードA〜Eのいずれかが選択されたと判定された場合、等価回路モードの選択の処理は終了し、続いて、等価回路解析の処理が実行される。
ステップS23において、等価回路モードA〜Eのいずれも選択されていないと判定された場合、等価回路解析の処理は実行しないで、等価回路モードの選択の処理は終了する。
このように、極値が1つである場合、最低周波数における位相測定値と45度または−45度の閾値とによって等価回路モードA〜Dのいずれかが選択され、極値が2つである場合、等価回路モードEが選択される。なお、閾値は変更できるようにしてもよい。
セグメント掃引を活用するなどして、低周波エリアと共振周波数エリアとを取得するようにすることで、周波数特性を取得後に自動で等価回路モードを設定し、各パラメータを算出することができる。
以上のように、より簡単に、より迅速に等価回路モードを選択できる。
また、全ての等価回路モデルA〜Eについて等価回路解析を行い、測定値と推定値との差の絶対値の和が最も小さいものを最適な等価回路モデルとすることもできる。この場合も、等価回路モデルの選択が測定装置11により自動的に行われる。
図4は、制御部32の機能の構成の他の例を示すブロック図である。すなわち、制御部32の機能には、初期化部81、周波数特性測定制御部82、LCR値推定部83、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84、差分絶対値積算部85、および等価回路モード選択部86が含まれる。
初期化部81は、測定値と推定値との差の絶対値を保持する変数deltaZ[5]を初期化する。周波数特性測定制御部82は、測定部31を制御し、測定部31に、所定の周波数の電圧を試料12に印加させるとともに、試料12に接続される端子に流れる電流などを取得させ、これにより、測定の設定に応じた試料12のインピーダンス測定値および位相測定値を取得する。
LCR値推定部83は、等価回路モデルA〜Eについて、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、L(インダクタンス),C(キャパシタンス),R(レジスタンス)の値を推定する。すなわち、LCR値推定部83は、等価回路モデルA〜Eにおけるインダクタンス、キャパシタンス、およびレジスタンスを、インピーダンス測定値および位相測定値から推定する。
等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、等価回路モデルA〜Eのいずれかについて、L,C,Rの推定値を基にしたhZ(f,L,C,R)関数の戻り値として周波数特性を得る。言い換えれば、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、等価回路モデルA〜Eと、推定されたインダクタンス、キャパシタンス、およびレジスタンスとから、それぞれの周波数に対するインピーダンスを推定する。以下、推定されたインピーダンスの値をインピーダンス推定値と称する。
また、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、等価回路モデルA〜Eのいずれかについて、L,C,Rの推定値を基にしたhθ(f,L,C,R)関数の戻り値として周波数特性を得る。すなわち、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、等価回路モデルA〜Eと、推定されたインダクタンス、キャパシタンス、およびレジスタンスとから、それぞれの周波数に対する位相を推定する。以下、推定されたインピーダンスの値を位相推定値と称する。
差分絶対値積算部85は、掃引周波数の範囲で、各掃引ポイントの測定値と推定値との差を計算し、その絶対値をdeltaZに加算していく。等価回路モード選択部86は、deltaZの値が最も小さい等価回路モデルを用いて測定が行われる等価回路モードを選択する。
図5は、等価回路モードの選択の処理の他の例を説明するフローチャートである。ステップS41において、初期化部81は、測定値と推定値との差の絶対値を保持する変数deltaZ[5]を無限大またはdeltaZが取り得る最大値に初期化する。ステップS42において、初期化部81は、変数M[5]={A,B,C,D,E}により等価回路モードを定義する。
ステップS43において、周波数特性測定制御部82は、測定部31を制御し、試料12のインピーダンスZおよび位相θの周波数特性を測定する。なお、測定されたインピーダンス値Zは、gZ(f)関数へ周波数を引数として渡すことで得ることができる。
ステップS44とステップS50とにおいて、LCR値推定部83は、変数iの初期値を0とし、変数iを1ずつインクリメントして、変数iが4になるまでの間、ステップS45〜ステップS49の手続を繰り返すように繰り返しを制御する。
ステップS45において、LCR値推定部83は、等価回路モデルA〜Eについて、測定したインピーダンスZ(インピーダンス測定値)および位相θ(位相測定値)の値を用いて、M[i]モードの等価回路推定アルゴリズムでL,C,Rの値を推定する。なお、推定値を元にした周波数特性はhZ(f,L,C,R)関数の戻り値として得ることができる。
図6は、各掃引ポイントのインピーダンス測定値とhZ(f,L,C,R)関数の戻り値の例を示す図である。図6中の横軸は、周波数を示し、縦軸は、インピーダンスZを示す。図6中において、点線上の丸は、hZ(f,L,C,R)関数の戻り値を示し、実線上の丸は、各掃引ポイントのインピーダンス測定値を示す。
ここで、インピーダンス推定値および位相推定値の推定の詳細について説明する。レジスタンスRおよびリアクタンスXから、インピーダンスZは、式(1)により求められ、位相θは、式(2)により求められる。
・・・(1)
また、コンダクタンスGおよびサセプタンスBから、インピーダンスZは、式(3)により求められ、位相θは、式(4)により求められる。
・・・(3)
等価回路モデルAについて、L,C,Rの値から、コンダクタンスGは、式(5)により求められ、サセプタンスBは、式(6)により求められる。
・・・(5)
すなわち、等価回路モデルAについて、等価回路モデルAのL,C,Rの値から、式(5)および式(6)により、コンダクタンスGおよびサセプタンスBが求められ、コンダクタンスGおよびサセプタンスBから、式(3)または式(4)により、インピーダンスZ(インピーダンス推定値)または位相θ(位相推定値)が推定される。
等価回路モデルBについて、L,C,Rの値から、コンダクタンスGは、式(7)により求められ、サセプタンスBは、式(8)により求められる。
・・・(7)
すなわち、等価回路モデルBについて、等価回路モデルBのL,C,Rの値から、式(7)および式(8)により、コンダクタンスGおよびサセプタンスBが求められ、コンダクタンスGおよびサセプタンスBから、式(3)または式(4)により、インピーダンスZ(インピーダンス推定値)または位相θ(位相推定値)が推定される。
また、等価回路モデルCについて、L,C,Rの値から、レジスタンスRは、式(9)により求められ、リアクタンスXは、式(10)により求められる。
・・・(9)
すなわち、等価回路モデルCについて、等価回路モデルCのL,C,Rの値から、式(9)および式(10)により、レジスタンスRおよびリアクタンスXが求められ、レジスタンスRおよびリアクタンスXから、式(1)または式(2)により、インピーダンスZ(インピーダンス推定値)または位相θ(位相推定値)が推定される。
等価回路モデルDについて、L,C,Rの値から、レジスタンスRは、式(11)により求められ、リアクタンスXは、式(12)により求められる。
・・・(11)
すなわち、等価回路モデルDについて、等価回路モデルDのL,C,Rの値から、式(11)および式(12)により、レジスタンスRおよびリアクタンスXが求められ、レジスタンスRおよびリアクタンスXから、式(1)または式(2)により、インピーダンスZ(インピーダンス推定値)または位相θ(位相推定値)が推定される。
さらに、等価回路モデルEについて、L,C
0,C
1,Rの値から、コンダクタンスGは、式(13)により求められ、サセプタンスBは、式(14)により求められる。
・・・(13)
すなわち、等価回路モデルEについて、等価回路モデルEのL,C0,C1,Rの値から、式(13)および式(14)により、コンダクタンスGおよびサセプタンスBが求められ、コンダクタンスGおよびサセプタンスBから、式(3)または式(4)により、インピーダンスZ(インピーダンス推定値)または位相θ(位相推定値)が推定される。
ステップS45において、解析できなかった場合、手続はステップS44に戻り、次の変数iについて、処理が繰り返される。ステップS45において、正常に解析できた場合、手続はステップS46に進み、差分絶対値積算部85は、deltaZ[i]に0を設定する。解析が正常にできた時点でゼロにしないと、解析できなかったものが最適になってしまうため、ステップS46において、deltaZ[i]が0にされる。ステップS47とステップS49とにおいて、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、掃引周波数fの初期値をfminとし、掃引周波数fをstepずつインクリメントして、掃引周波数fがfmax以下の間、ステップS48の手続を繰り返すように繰り返しを制御する。
ステップS48において、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、hZ(f,L,C,R)関数の戻り値から周波数特性(周波数に対するインピーダンス)を求める。そして、差分絶対値積算部85は、掃引周波数の範囲(fmin〜fmax)で、各掃引ポイントのインピーダンス測定値とインピーダンス推定値との差Δ(deltaZ)を計算し、その絶対値をdeltaZ[i]に加算していく。
すなわち、図6に示されるように、掃引周波数fが、fminからfmaxになるまで、各掃引ポイントを示すようにstep毎に、hZ(f,L,C,R)関数の戻り値(インピーダンス推定値)が求められ、戻り値と測定値(インピーダンス測定値)との差deltaZが求められ、その絶対値がdeltaZ[i]に加算される。
ステップS51において、等価回路モード選択部86は、deltaZの値が最も小さいものを最適なモデルとして、等価回路モードの選択の処理は終了する。すなわち、ステップS51において、等価回路モード選択部86は、等価回路モデルA〜Eのうち、deltaZ[i]の値が最も小さい等価回路モデルを用いて測定が行われる等価回路モードを選択する。
このように、全ての等価回路モデルA〜Eにおいてインピーダンス推定値を計算し、インピーダンス測定値と最も近い周波数特性になる等価回路モデルを自動的に選択することが可能である。
図7は、等価回路モードの選択の処理のさらに他の例を説明するフローチャートである。ステップS61において、初期化部81は、測定値と推定値との差の絶対値を保持する変数deltaθ[5]を無限大またはdeltaθが取り得る最大値に初期化する。ステップS62において、初期化部81は、変数M[5]={A,B,C,D,E}により等価回路モードを定義する。
ステップS63において、周波数特性測定制御部82は、測定部31を制御し、試料12のインピーダンスZおよび位相θの周波数特性を測定する。なお、測定された位相値θは、gθ(f)関数へ周波数を引数として渡すことで得ることができる。
ステップS64とステップS70とにおいて、LCR値推定部83は、変数iの初期値を0とし、変数iを1ずつインクリメントして、変数iが4になるまでの間、ステップS65〜ステップS69の手続を繰り返すように繰り返しを制御する。
ステップS65において、LCR値推定部83は、等価回路モデルA〜Eについて、測定したインピーダンスZ(インピーダンス測定値)および位相θ(位相測定値)の値を用いて、M[i]モードの等価回路推定アルゴリズムでL,C,Rの値を推定する。なお、推定値を元にした周波数特性はhθ(f,L,C,R)関数の戻り値として得ることができる。
ステップS65において、解析できなかった場合、手続はステップS64に戻り、次の変数iについて、処理が繰り返される。
図8は、各掃引ポイントの位相推定値とhθ(f,L,C,R)関数の戻り値の例を示す図である。図8中の横軸は、周波数を示し、縦軸は、位相を示す。図8中において、点線上の丸は、hθ(f,L,C,R)関数の戻り値を示し、実線上の丸は、各掃引ポイントの位相測定値を示す。
ステップS65において、正常に解析できた場合、手続はステップS66に進み、ステップS66において、差分絶対値積算部85は、deltaθ[i]に0を設定する。解析が正常にできた時点でゼロにしないと、解析できなかったものが最適になってしまうため、ステップS66において、deltaθ[i]が0にされる。ステップS67とステップS69とにおいて、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、掃引周波数fの初期値をfminとし、掃引周波数fをstepずつインクリメントして、掃引周波数fがfmax以下の間、ステップS68の手続を繰り返すように繰り返しを制御する。
ステップS68において、等価回路モデルインピーダンス位相推定部84は、hθ(f,L,C,R)関数の戻り値から周波数特性(周波数に対する位相)を求める。そして、差分絶対値積算部85は、掃引周波数の範囲(fmin〜fmax)で、各掃引ポイントの位相測定値と位相推定値との差Δ(deltaθ)を計算し、その絶対値をdeltaθ[i]に加算していく。
すなわち、図8に示されるように、掃引周波数fが、fminからfmaxになるまで、各掃引ポイントを示すようにstep毎に、hθ(f,L,C,R)関数の戻り値(位相推定値)が求められ、戻り値と測定値(位相測定値)との差deltaθが求められ、その絶対値がdeltaθ[i]に加算される。
ステップS71において、等価回路モード選択部86は、deltaθの値が最も小さいものを最適なモデルとして、等価回路モードの選択の処理は終了する。すなわち、ステップS71において、等価回路モード選択部86は、等価回路モデルA〜Eのうち、deltaθ[i]の値が最も小さい等価回路モデルを用いて測定が行われる等価回路モードを選択する。
このように、全ての等価回路モデルA〜Eにおいて位相推定値を計算し、位相測定値と最も近い周波数特性になる等価回路モデルを自動的に選択することが可能である。
以上のように、全ての等価回路モデルA〜Eにおいて推定値を計算し、測定値と最も近い周波数特性になる等価回路モデルを自動的に選択することが可能である。
また、各種の試料12を測定すると、インピーダンスの極値が等価回路モデルA〜Eにあてはまらないこともある。図9は、測定されたインピーダンスおよび位相の例を示す図である。図9において、横軸は周波数を示し、縦軸はインピーダンスまたは位相を示す。図9において、実線は、インピーダンスを示し、点線は、位相を示す。また、図9(B)〜(E)において、丸は極値を示す。
図9(A)は、正常な等価回路モデルEの周波数特性を示す図である。図9(B)は、等価回路モデルAに近似しながら極値が2つある周波数特性の例を示す図である。図9(C)は、等価回路モデルBに近似しながら極値が2つある周波数特性の例を示す図である。図9(D)は、等価回路モデルCに近似しながら極値が2つある周波数特性の例を示す図である。図9(E)は、等価回路モデルDに近似しながら極値が2つある周波数特性の例を示す図である。図9(B)〜(E)に示される場合において、適切な回路モデルの選択を誤る可能性がある。
次に説明するように、図9に示される周波数特性でも適切な等価回路モードを選択できるようにすることができる。
図10は、制御部32の機能の構成のさらに他の例を示すブロック図である。すなわち、制御部32の機能には、掃引周波数設定部101、周波数特性測定制御部102、インピーダンス極値判定部103、LCR値推定結果算出部104、理論値算出部105、差分算出部106、差分判定部107、ソート部108、および等価回路モード選択部109が含まれる。
掃引周波数設定部101は、ユーザの操作に応じた信号を操作部33から取得するか、または図示せぬ通信部を介して外部の機器からコマンドを取得することで、極値が取得されるように掃引周波数を設定する。周波数特性測定制御部102は、測定部31を制御し、測定の設定に応じた試料12のインピーダンス測定値および位相測定値を取得する。インピーダンス極値判定部103は、インピーダンス測定値に極大値または極小値があるか否かを判定する。
LCR値推定結果算出部104は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルA〜EのL,C,Rの値の推定結果を算出する。理論値算出部105は、等価回路モデルA〜EのL,C,Rの値の推定結果における位相の理論値(以下、位相理論値と称する。)を算出する。差分算出部106は、位相測定値と位相理論値との差分を算出する。
差分判定部107は、等価回路モデルCについての位相測定値と位相理論値との差分が等価回路モデルDについての位相測定値と位相理論値との差分より大きいか否かを判定するか、等価回路モデルBについての位相測定値と位相理論値との差分が等価回路モデルAについての位相測定値と位相理論値との差分より大きいか否かを判定する。また、差分判定部107は、等価回路モデルA〜Eのうち、最も残差が小さい等価回路モデルがいずれであるかを判定する。
ソート部108は、等価回路モデルA〜Eについての位相測定値と位相理論値との差分を昇順にソートする。
等価回路モード選択部109は、差分の大小の判定結果によって、試料12の等価回路を示す等価回路モデルを用いて測定が行われる等価回路モードを選択する。
図11は、等価回路モードの選択の処理のさらに他の例を説明するフローチャートである。
ステップS81において、掃引周波数設定部101は、極値が取得されるように掃引周波数を設定する。ステップS82において、周波数特性測定制御部102は、試料12の周波数特性を測定し、取得する。すなわち、周波数特性測定制御部102は、設定された掃引周波数で試料12を測定し、試料12のインピーダンス測定値および位相測定値を取得する。ステップS83において、インピーダンス極値判定部103は、インピーダンス測定値に極大値があるか否かを判定する。
ステップS83において、インピーダンス測定値に極大値があると判定された場合、手続はステップS84に進み、インピーダンス極値判定部103は、インピーダンス測定値に極小値があるか否かを判定する。ステップS84において、インピーダンス測定値に極小値があると判定された場合、すなわち、インピーダンス測定値に極大値および極小値があるので、手続はステップS85に進み、LCR値推定結果算出部104は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルEのL,C,Rの値の推定結果を算出する。ステップS85において、L,C,Rの値の推定結果が算出された場合、手続はステップS86に進み、理論値算出部105は、等価回路モデルEのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値を算出する。なお、位相理論値の算出の詳細は、式(1)〜式(14)を参照して説明したものと同様なので、その説明は省略する。
ステップS87において、差分算出部106は、実測値、すなわち位相測定値と、等価回路モデルEのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値との差分を算出し、その差分を差分ΔEとする。
ステップS88において、LCR値推定結果算出部104は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルA,B,CおよびDのそれぞれのL,C,Rの値の推定結果を算出する。ステップS89において、理論値算出部105は、等価回路モデルA,B,CおよびDのそれぞれのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値を算出する。
ステップS90において、差分算出部106は、実測値、すなわち位相測定値と、等価回路モデルA,B,CおよびDのそれぞれのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値との差分を算出し、その差分をそれぞれ差分ΔA、差分ΔB、差分ΔC、差分ΔDとする。なお、ステップS88において、等価回路モデルA〜DのいずれかについてのL,C,Rの値の推定が解析不可の場合、差分ΔA〜差分ΔDのうち、解析不可の等価回路モデルA〜Dに対応するものは無限大または評価式が取り得る最大値などの大きな値にされ、解析不可の等価回路モデルA〜Dのいずれかが最適なモデルとして選択されないようにされる。
ステップS91において、ソート部108は、差分ΔA、差分ΔB、差分ΔC、差分ΔD、差分ΔEを昇順にソートする。以下、差分ΔA〜ΔEを残差とも称する。その結果、差分ΔA〜ΔEは、小さい順に並ぶことになり、差分ΔA〜ΔEのうち、最も小さい残差が先頭に配置される。
ステップS92において、差分判定部107は、等価回路モデルA〜Eのうち、最も残差が小さい等価回路モデルがいずれであるか、すなわち、昇順のソートの結果先頭に配置された残差の等価回路モデルがいずれであるかを判定する。ステップS92において、差分ΔA〜ΔEのうち、差分ΔEが最も小さく、最も残差が小さい等価回路モデルが等価回路モデルEであると判定された場合、手続はステップS93に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルEを用いて測定が行われる等価回路モードEを選択する。
ステップS92において、差分ΔA〜ΔEのうち、差分ΔDが最も小さく、最も残差が小さい等価回路モデルが等価回路モデルDであると判定された場合、手続はステップS94に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルDを用いて測定が行われる等価回路モードDを選択する。
ステップS92において、差分ΔA〜ΔEのうち、差分ΔCが最も小さく、最も残差が小さい等価回路モデルが等価回路モデルCであると判定された場合、手続はステップS95に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルCを用いて測定が行われる等価回路モードCを選択する。
ステップS92において、差分ΔA〜ΔEのうち、差分ΔBが最も小さく、最も残差が小さい等価回路モデルが等価回路モデルBであると判定された場合、手続はステップS96に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルBを用いて測定が行われる等価回路モードBを選択する。
ステップS92において、差分ΔA〜ΔEのうち、差分ΔAが最も小さく、最も残差が小さい等価回路モデルが等価回路モデルAであると判定された場合、手続はステップS97に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルAを用いて測定が行われる等価回路モードAを選択する。
ステップS93〜ステップS97の後、手続はステップS98に進み、制御部32は、等価回路モードの選択の結果を表示部34に表示させて、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS84において、インピーダンス測定値に極小値がないと判定された場合、すなわち、インピーダンス測定値に極大値があり、極小値がない場合、言い換えれば、共振が1つしか現れず、それが反共振である場合には、等価回路モデルAまたは等価回路モデルBとなるので、手続はステップS99に進み、LCR値推定結果算出部104は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルAおよびBのL,C,Rの値の推定結果を算出する。ステップS99において、L,C,Rの値の推定結果が算出された場合、手続はステップS100に進み、理論値算出部105は、等価回路モデルAおよびBのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値を算出する。
ステップS101において、差分算出部106は、実測値、すなわち位相測定値と、等価回路モデルAまたはBのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値との差分をそれぞれ算出し、それぞれの差分を差分ΔAまたは差分ΔBとする。
ステップS102において、差分判定部107は、差分ΔBが差分ΔAより大きいか否かを判定する。ステップS102において、差分ΔBが差分ΔAより大きいと判定された場合、手続はステップS103に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルAを用いて測定が行われる等価回路モードAを選択する。ステップS102において、差分ΔBが差分ΔAより大きくないと判定された場合、手続はステップS104に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルBを用いて測定が行われる等価回路モードBを選択する。
ステップS103またはステップS104の後、手続はステップS98に進み、制御部32は、等価回路モードの選択の結果を表示部34に表示させて、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS99において、L,C,Rの値の推定結果が解析不可である場合、すなわちL,C,Rの値の推定結果が算出されなかった場合、手続はステップS105に進み、制御部32は、エラー表示を表示部34に表示させて、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS85において、L,C,Rの値の推定結果が解析不可である場合、すなわちL,C,Rの値の推定結果が算出されなかった場合、手続はステップS99に進む。
ステップS83において、インピーダンス測定値に極大値がないと判定された場合、手続はステップS106に進み、インピーダンス極値判定部103は、インピーダンス測定値に極小値があるか否かを判定する。ステップS106において、インピーダンス測定値に極小値があると判定された場合、すなわち、インピーダンス測定値に極大値がなく、極小値がある場合、言い換えれば、共振が1つしか現れず、それが共振である場合には、等価回路モデルCまたは等価回路モデルDとなるので、手続はステップS107に進み、LCR値推定結果算出部104は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルCおよびDのL,C,Rの値の推定結果を算出する。ステップS107において、L,C,Rの値の推定結果が算出された場合、手続はステップS108に進み、理論値算出部105は、等価回路モデルCおよびDのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値を算出する。
ステップS109において、差分算出部106は、実測値、すなわち位相測定値と、等価回路モデルCまたはDのL,C,Rの値の推定結果における位相理論値との差分をそれぞれ算出し、それぞれの差分を差分ΔCまたは差分ΔDとする。
ステップS110において、差分判定部107は、差分ΔCが差分ΔDより大きいか否かを判定する。ステップS110において、差分ΔCが差分ΔDより大きくないと判定された場合、手続はステップS111に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルCを用いて測定が行われる等価回路モードCを選択する。ステップS110において、差分ΔCが差分ΔDより大きいと判定された場合、手続はステップS112に進み、等価回路モード選択部109は、等価回路モデルDを用いて測定が行われる等価回路モードDを選択する。
ステップS111またはステップS112の後、手続はステップS98に進み、制御部32は、等価回路モードの選択の結果を表示部34に表示させて、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS107において、L,C,Rの値の推定結果が解析不可である場合、すなわちL,C,Rの値の推定結果が算出されなかった場合、手続はステップS113に進み、制御部32は、エラー表示を表示部34に表示させて、等価回路モードの選択の処理は終了する。
このように、極値が2つある周波数特性が得られた場合でも等価回路モードが適切に選択できるようになる。
なお、差分の大小の判定に限らず、差分の2乗平均値の大小を判定するようにしてもよい。
また、位相測定値と位相理論値との差分である残差の大小の判定の結果から、等価回路モードを選択すると説明したが、インピーダンス測定値とインピーダンス理論値との差分である残差の大小の判定の結果から、等価回路モードを選択するようにしてもよい。さらに、位相測定値と位相理論値との差分である残差およびインピーダンス測定値とインピーダンス理論値との差分である残差の双方を用いて、その大小の判定の結果から、等価回路モードを選択するようにしてもよい。
また、インピーダンス測定値の極値の有無、最低周波数の位相測定値、および位相測定値と位相の理想周波数特性値との差分である残差の大小の判定の結果から、等価回路モードを選択することもできる。
図12は、制御部32の機能の構成のさらに他の例を示すブロック図である。すなわち、制御部32の機能には、掃引周波数設定部121、周波数特性測定制御部122、判定部123、等価回路解析部124、位相周波数特性値算出部125、差分算出部126、および等価回路モード選択部127が含まれる。
掃引周波数設定部121は、ユーザの操作に応じた信号を操作部33から取得するか、または図示せぬ通信部を介して外部の機器からコマンドを取得することで、極値が取得されるように掃引周波数を設定する。周波数特性測定制御部122は、測定部31を制御し、測定の設定に応じた試料12のインピーダンス測定値および位相測定値を取得する。
判定部123は、インピーダンス測定値に極大値または極小値があるか否かを判定する。また、判定部123は、最も低い周波数(最低周波数)における位相測定値が予め定めた閾値である45度より大きいか、または最低周波数における位相測定値が予め定めた閾値である−45度より小さいかを判定する。さらに、判定部123は、等価回路モデルCについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分が等価回路モデルBについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分より大きいか否かを判定するか、等価回路モデルDについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分が等価回路モデルEについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分より大きいか否かを判定する。
判定部123は、インピーダンス極値判定部131、最低周波数位相判定部132、および差分判定部133を含む。
インピーダンス極値判定部131は、インピーダンス測定値に極大値または極小値があるか否かを判定する。最低周波数位相判定部132は、最低周波数における位相測定値が45度より大きいか、または最低周波数における位相測定値が−45度より小さいかを判定する。差分判定部133は、等価回路モデルCについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分が等価回路モデルBについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分より大きいか否かを判定するか、等価回路モデルDについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分が等価回路モデルEについての位相測定値と位相周波数特性値算出部125において算出される位相の理想周波数特性値との差分より大きいか否かを判定する。
等価回路解析部124は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、試料12の等価回路を解析し、等価回路モデルA〜EのL,C,Rの値を算出する。位相周波数特性値算出部125は、等価回路の解析の結果得られた等価回路モデルA〜EのL,C,Rの値における位相の理想周波数特性値(以下、位相理想周波数特性値と称する。)を算出する。差分算出部126は、位相測定値と位相理想周波数特性値との差分を算出する。
等価回路モード選択部127は、インピーダンス測定値の極値の有無、最低周波数の位相測定値、および位相測定値と位相理想周波数特性値との差分である残差の大小の判定の結果から、試料12の等価回路を示す等価回路モデルを用いて測定が行われる等価回路モードを選択する。
図13は、等価回路モードの選択の処理のさらに他の例を説明するフローチャートである。ステップS101において、掃引周波数設定部121は、極値が取得されるように掃引周波数を設定する。ステップS102において、周波数特性測定制御部122は、測定部31を制御し、試料12のインピーダンスおよび位相の周波数特性を測定し、取得する。
ステップS103において、判定部123のインピーダンス極値判定部131は、インピーダンス測定値に極大値があるか否かを判定する。ステップS103において、極大値があると判定された場合、手続はステップS104に進み、判定部123のインピーダンス極値判定部131は、インピーダンス測定値に極小値があるか否かを判定する。
ステップS104において、極小値があると判定された場合、手続はステップS105に進み、判定部123の最低周波数位相判定部132は、最低周波数における位相測定値が予め定めた閾値である−45度より小さいか否かを判定する。
ステップS105において、最低周波数における位相測定値が−45度より小さいと判定された場合、手続はステップS106に進み、等価回路解析部124は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルEで試料12の等価回路を解析し、L,C,Rの値を算出する。ステップS107において、位相周波数特性値算出部125は、等価回路の解析の結果得られた等価回路モデルEのL,C,Rの値における位相理想周波数特性値を算出する。なお、位相理想周波数特性値の算出の詳細は、式(1)〜式(14)を参照して説明したものと同様なので、その説明は省略する。
ステップS108において、差分算出部126は、実測値、すなわち位相測定値と、シミュレーション値、すなわち位相理想周波数特性値との差分ΔEを算出する。
ステップS109において、等価回路解析部124は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルDで試料12の等価回路を解析し、L,C,Rの値を算出する。ステップS110において、位相周波数特性値算出部125は、等価回路の解析の結果得られた等価回路モデルDのL,C,Rの値における位相理想周波数特性値を算出する。ステップS111において、差分算出部126は、実測値、すなわち位相測定値と、シミュレーション値、すなわち位相理想周波数特性値との差分ΔDを算出する。
ステップS112において、判定部123の差分判定部133は、差分ΔDが差分ΔEより大きいか否かを判定する。ステップS112において、差分ΔDが差分ΔEより大きいと判定された場合、手続はステップS113に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルEを用いて測定が行われる等価回路モードEを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS112において、差分ΔDが差分ΔEより大きくないと判定された場合、手続はステップS114に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルDを用いて測定が行われる等価回路モードDを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS105において、最低周波数における位相測定値が−45度より小さくないと判定された場合、手続はステップS115に進み、判定部123の最低周波数位相判定部132は、最低周波数における位相測定値が予め定めた閾値である45度より大きいか否かを判定する。ステップS115において、最低周波数における位相測定値が45度より大きくないと判定された場合、手続はステップS116に進み、等価回路解析部124は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルBで試料12の等価回路を解析し、L,C,Rの値を算出する。ステップS117において、位相周波数特性値算出部125は、等価回路の解析の結果得られた等価回路モデルBのL,C,Rの値における位相理想周波数特性値を算出する。ステップS118において、差分算出部126は、実測値、すなわち位相測定値と、シミュレーション値、すなわち位相理想周波数特性値との差分ΔBを算出する。
ステップS119において、等価回路解析部124は、インピーダンス測定値および位相測定値を用いて、等価回路モデルCで試料12の等価回路を解析し、L,C,Rの値を算出する。ステップS120において、位相周波数特性値算出部125は、等価回路の解析の結果得られた等価回路モデルCのL,C,Rの値における位相理想周波数特性値を算出する。ステップS121において、差分算出部126は、実測値、すなわち位相測定値と、シミュレーション値、すなわち位相理想周波数特性値との差分ΔCを算出する。
ステップS122において、判定部123の差分判定部133は、差分ΔCが差分ΔBより大きいか否かを判定する。ステップS122において、差分ΔCが差分ΔBより大きいと判定された場合、手続はステップS123に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルBを用いて測定が行われる等価回路モードBを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS122において、差分ΔCが差分ΔBより大きくないと判定された場合、手続はステップS124に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルCを用いて測定が行われる等価回路モードCを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS104において、極小値がないと判定された場合、手続はステップS125に進み、判定部123の最低周波数位相判定部132は、最低周波数における位相測定値が予め定めた閾値である45度より大きいか否かを判定する。ステップS125において、最低周波数における位相測定値が45度より大きいと判定された場合、手続はステップS126に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルAを用いて測定が行われる等価回路モードAを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS125において、最低周波数における位相測定値が45度より大きくないと判定された場合、手続はステップS127に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルBを用いて測定が行われる等価回路モードBを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS115において、最低周波数における位相測定値が45度より大きいと判定された場合、手続はステップS126に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルAを用いて測定が行われる等価回路モードAを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS103において、極大値がないと判定された場合、手続はステップS128に進み、判定部123のインピーダンス極値判定部131は、インピーダンス測定値に極小値があるか否かを判定する。ステップS128において、インピーダンス測定値に極小値があると判定された場合、手続はステップS129に進み、判定部123の最低周波数位相判定部132は、最低周波数における位相測定値が予め定めた閾値である−45度より小さいか否かを判定する。
ステップS129において、最低周波数における位相測定値が−45度より小さいと判定された場合、手続はステップS130に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルDを用いて測定が行われる等価回路モードDを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS129において、最低周波数における位相測定値が−45度より小さくないと判定された場合、手続はステップS131に進み、等価回路モード選択部127は、等価回路モデルCを用いて測定が行われる等価回路モードCを選択して、等価回路モードの選択の処理は終了する。
ステップS128において、インピーダンス測定値に極小値がないと判定された場合、等価回路モードを選択することなく、等価回路モードの選択の処理は終了する。
このように、インピーダンス測定値の極値の有無、最低周波数の位相測定値、および位相測定値と位相理想周波数特性値との差分である残差の大小の判定の結果から、等価回路モードが選択される。
以上のように、より簡単に、より迅速に等価回路モードを選択できる。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
図14は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部208、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部209、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動するドライブ210が接続されている。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
そして、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208に記憶することで、コンピュータにインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208に記憶することで、コンピュータにインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208にあらかじめ記憶しておくことで、コンピュータにあらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。