JP5718319B2 - Her2標的化療法に対する乳癌細胞の感受性を決定するためのバイオマーカー - Google Patents

Her2標的化療法に対する乳癌細胞の感受性を決定するためのバイオマーカー Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
《関連出願の相互参照》
本出願は、2009年5月14日に出願された米国特許仮出願第61/178,458号、2009年5月22日に出願された米国特許仮出願第61/180,787号、2009年6月15日に出願された米国特許仮出願第61/187,246号、2009年6月24日に出願された米国特許仮出願第61/228,522号、2009年8月20日に出願された米国特許仮出願第61/235,646号、2009年9月11日に出願された米国特許仮出願第61/241,804号、2009年11月19日に出願された米国特許仮出願第61/262,856号、及び、2009年11月30日に出願された米国特許仮出願第61/265,227号についての優先権を主張し、これらの開示内容は、あらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
《発明の背景》
細胞内のシグナル伝達のプロセスは、少数の例を挙げると細胞の分裂及び死、代謝、免疫細胞活性化、神経伝達、並びに感覚的知覚を含む様々な生物学的機能に関与している。従って、細胞内の正常シグナル伝達の混乱は、糖尿病、心疾患、自己免疫、及び癌などの多数の疾患状態を引き起こす可能性がある。
1つの充分に特徴付けられたシグナル伝達経路は、細胞内における上皮成長因子(EGF)から細胞増殖促進へシグナルを伝達することに関与するMAPキナーゼ経路である(国際公開第2009/108637号パンフレットの図1参照、この開示内容はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。EGFは、EGFの結合によって活性化される上皮成長因子受容体(EGFR)である膜貫通受容体結合チロシンキナーゼに結合する。EGFのEGFRへの結合は、受容体の細胞質ドメインであるチロシンキナーゼ活性を活性化する。このキナーゼ活性化の1つの結果は、チロシン残基上でのEGFRの自己リン酸化である。活性化されたEGFR上のリン酸化チロシン残基は、GRB2などのアダプタータンパク質を含有するSH2ドメインの結合のためのドッキング部位を提供する。アダプターとしてのその機能において、GRB2は、GRB2上のSH3ドメインによって、グアニンヌクレオチド交換因子であるSOSへさらに結合する。複合体EGFR−GRB2−SOSの形成は、RasからのGDPの除去を促進するグアニンヌクレオチド交換因子のSOS活性化をもたらす。GDPが除去されると、RasはGTPに結合し、活性化されるようになる。
活性化後、Rasは、セリン/トレオニン特異的プロテインキナーゼであるRAFキナーゼに結合して、そのプロテインキナーゼ活性を活性化する。その後には、細胞増殖を導くプロテインキナーゼカスケードの活性化が続く。概略を述べると、RAFキナーゼは次に、別のセリン/トレオニンキナーゼであるMEKをリン酸化して活性化する。活性化されたMEKは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)をリン酸化して活性化する。MAPKによる別のリン酸化の標的には、40SリボソームプロテインS6キナーゼ(RSK)がある。MAPKによるRSKのリン酸化は、RSKの活性化を生じさせ、これは順にリボソームプロテインS6をリン酸化する。MAPKの別の公知の標的は、様々な癌において変異している、細胞増殖のために重要な遺伝子である癌原遺伝子c−Mycである。MAPKは別のプロテインキナーゼであるMNKもリン酸化して活性化するが、これは順に転写因子であるCREBをリン酸化する。間接的には、MAPKは細胞増殖に関係しているさらに別の転写因子をコードするFos遺伝子の転写も調節する。このような転写因子のレベル及び活性を変化させることによって、MAPKは、EGFから、細胞周期の進行のために重要である遺伝子の変更された転写へオリジナルの細胞外シグナルを伝達する。
シグナル伝達経路が細胞増殖において果たす中心的な役割を考慮すると、細胞増殖経路の異常な活性化を生じさせるシグナル伝達成分における突然変異及び他の変化の結果として多数の癌が発生することは驚くには当たらない。例えば、EGFRの過剰発現若しくは活動過剰は、多形神経膠芽腫、結腸癌及び肺癌を含む多数の癌と関連付けられてきた。これは肺癌のためのゲフィチニブ及びエルロチニブ、並びに結腸癌のためのセツキシマブを含む、EGFRに向けられた抗癌療法薬の開発を促進してきた。
セツキシマブは、EGFRの細胞外リガンド結合ドメインに結合するモノクローナル抗体阻害剤の一例であり、そこでEGFRチロシンキナーゼを活性化するリガンドの結合を妨害する。これとは対照的に、ゲフィチニブ及びエルロチニブは、細胞内に局在するEGFRチロシンキナーゼを阻害する低分子である。キナーゼ活性の非存在下では、EGFRは、GRB2などの下流アダプタータンパク質の結合の前提条件である、チロシン残基での自己リン酸化を受けることができない。成長のためにこの経路に依存する細胞内のシグナル伝達カスケードを停止させることによって、腫瘍の増殖及び移動が低減される。
さらに、他の試験は、ヒト黒色腫の約70%及びこれより低い割合の他の腫瘍が、MAPK経路の持続性の活性化をもたらすRaf遺伝子における点変異(V599E)を有することを証明している(例えば、Davies et al., Nature, 417:949-954 (2002)参照)。このような結果は、特定のシグナル伝達経路における突然変異が特定のタイプの腫瘍に特徴的であることがあり、そしてこのような特異的な、変化したシグナル伝達経路が、化学療法的介入にとって有望な標的となる可能性のあることを示唆している。
様々な癌治療、とりわけ癌化学療法が、細胞増殖又は細胞死の各々に関与する細胞シグナル伝達経路を遮断又は活性化することによって直接的又は間接的に機能することができることを前提に、特定形態の癌における所定のシグナル伝達経路の活性は、様々な癌治療の有効性についての優れたインジケータとして機能することができる。従って、本発明は、他の要求を満たすことに加えて、個別患者にとって有望な抗癌療法の有効性を評価するための方法を提供する。従って、本発明は、医師が患者ごとに適切な用量及び適切な時点で適合する癌療法を選択することを支援するための方法を提供する。
《発明の概要》
本発明は、腫瘍細胞(例えば、乳房腫瘍の循環細胞)中のシグナル伝達経路の成分の状態(例えば、発現及び/又は活性化レベル)を検出するための組成物及び方法を提供する。本発明の実施から得られるシグナル伝達経路の成分の発現及び/又は活性化状態に関する情報は、癌の診断、予後診断、及び癌治療の設計に用いることができる。
特定の側面において、本発明は、特定の癌がHER2調節性化合物(例えば、HER2阻害剤)に対して有利に反応することができるか又は反応する可能性があるか否かを決定又は予測することを可能にする分子マーカー(バイオマーカー)を提供する。本明細書に記載のように、意外にも、HER2及びp95HER2などのHER2経路中のバイオマーカーは、HER2活性を調節する化合物(例えば、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤など)に対する乳癌細胞などの細胞の感受性を決定し又は予測するのにとりわけ有用であることが見出された。
1つの側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する細胞の感受性を決定又は予測する方法であって:
(a)細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルをHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルとHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記細胞が前記化合物に対して感受性であるか又は耐性であるか(すなわち、感受性でない)ということを示す、方法を提供する。
好ましい側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する細胞の感受性を決定し又は予測する方法であって、
(a)細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2又はp95HER2の活性化レベルをHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較する工程;を含み、
HER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して感受性でない(すなわち、耐性である)ことを示す、方法を提供する。
或る実施形態において、本発明の方法はHER2活性を調節する化合物に対する細胞の感受性を決定又は予測することを補助又は支援するのに有用であることができる。他の実施形態において、本発明の方法は、HER2活性を調節する化合物に対する細胞の感受性の決定又は予測を改善するのに有用であることができる。
別の側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する腫瘍の応答を予測する方法であって:
(a)腫瘍から得られた細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルをHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルとHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記腫瘍が前記化合物に対して応答する可能性を有する又は有しない(例えば、前記腫瘍が前記化合物に対する応答の増加又は減少の可能性を有する)ことを示す、方法を提供する。
好ましい側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する腫瘍の応答を予測する方法であって:
(a)腫瘍から得られた細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2又はp95HER2の活性化レベルをHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較する工程;を含み、
HER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在が、前記腫瘍が前記化合物に対して応答する可能性を有しない(例えば、前記腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す、方法を提供する。
或る実施形態において、本発明の方法は、HER2活性を調節する化合物に対する腫瘍の応答を予測することを補助又は支援するのに有用であることができる。他の実施形態において、本発明の方法は、HER2活性を調節する化合物に対する腫瘍の応答の予測を改善するのに有用であることができる。
なお別の側面において、本発明は、腫瘍を有しかつHER2活性を調節する化合物を用いた療法を受ける被験者における、該化合物を用いた療法に対する応答を監視する方法であって、
(a)腫瘍から得られた細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(b)前記細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定する工程;及び
(c)工程(b)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルをHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(b)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルとHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記化合物を用いた療法を継続すべきか又は調整すべきか(例えば、化合物の現在の用量を維持する、化合物の今後の用量を変更する、又は代わりの抗癌剤を選択する)を示す、方法を提供する。
好ましい側面において、本発明は、腫瘍を有しかつHER2活性を調節する化合物を用いた療法を受ける被験者における、該化合物を用いた療法に対する応答を監視する方法であって、
(a)腫瘍から得られた細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(b)前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程;及び
(c)工程(b)で決定されたHER2又はp95HER2の活性化レベルをHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較する工程;を含み、
HER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在が、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、化合物の今後の用量を変更する又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す、方法を提供する。
或る実施形態において、本発明の方法は、HER2活性を調節する化合物を用いた治療に対する応答を監視することを補助又は支援するのに有用であることができる。他の実施形態において、本発明の方法は、HER2活性を調節する化合物を用いた療法に対する応答の予後診断を提供するのに有用であることができる。
更なる側面において、本発明は、初期HER2陰性の原発性乳房腫瘍を有する被験者のHER2状態を監視する方法であって、
循環細胞中の活性化HER2の存在を検出することによって被験者から得られた固形腫瘍の循環細胞のHER2状態を決定する工程を含み、前記循環細胞中の活性化HER2の存在が被験者のHER2陰性状態からHER2陽性状態への転換を示す、方法を提供する。
或る実施形態において、本発明の方法は、初期HER2陰性の原発性乳房腫瘍を有する被験者のHER2状態を監視することを補助又は支援するのに有用であることができる。他の実施形態において、本発明の方法は、固形腫瘍の循環細胞中の被験者のHER2状態を決定することによって初期HER2陰性の原発性乳房腫瘍を有する被験者の予後診断を提供するのに有用であることができる。
追加的な側面において、本発明は、乳房腫瘍の治療に適した抗癌剤を選択する方法であって:
(a)腫瘍の微細針吸引液(FNA)試料から得られた細胞を抗癌剤と接触させる工程:
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のシグナル伝達分子1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたシグナル伝達分子1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルを該シグナル伝達分子1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(c)で決定されたシグナル伝達分子1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルと該シグナル伝達分子1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記抗癌剤が前記乳房腫瘍の治療に適しているか又は適していないかを示す、方法を提供する。
或る実施形態において、本発明の方法は、乳房腫瘍の治療に適した抗癌剤の選択を補助又は支援するのに有用であることができる。他の実施形態において、本発明の方法は、乳房腫瘍の治療に適した抗癌剤の選択を改善するのに有用であることができる。
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な記載及び図面から当業者に明らかとなるであろう。
採取した全血試料からのCTCの単離の典型的な試料処理フローチャートを示す。
全ての癌試料についてのVeridex CTC計数の結果を示す。左欄:「BC」=乳癌;「OC1」又は「OC2」=他の癌タイプ;「3」=ステージ3の癌;「4」=ステージ4の癌。データは5回の再試験患者を含む。**=Veridex計数。
本明細書に記載した近接アッセイを用いてCTC陽性試料において観察されたHER1及びHER2リン酸化の要約を示す。
本明細書に記載した近接アッセイを用いてpHER1及びpHER2を検出するための単細胞感度を示す。
様々な程度のErbB−RTK発現を有する細胞系を用いた種々のタイプの乳癌に対する異種移植片−FNAモデルを示す。
本明細書で記載した近接アッセイを用いて検出されたHER2受容体の活性化が腫瘍IHCスコアと一致した、凍結組織−FNAモデルを示す。「未知」=最初のIHC状態を有しない試料。
図7(左)は、既知又は未知のHER2 IHC状態を有する乳癌組織及び正常組織からのFNA試料中の活性化HER1及びHER2のレベルの要約を示す。図7(右)は、未知のHER2 IHC状態を有するFNA試料中のpEGFR及びpHER2レベルのグラフによる図解を示す。
高いIHCスコアを有するFNA試料中のpHER2レベルの滴定分析を示す。
一連の希釈の4つの異なる捕捉抗体濃度を用いた、2つの異なる時点でのFNA試料中のpEGFR及びpHER2の検出を示す。
疾患管理の様々な段階における療法誘導診断及び療法監視を示す。とりわけ、この図は、本発明の方法を用いて特定の患者に対する適切な乳癌療法を選択することに関して臨床実践に影響を及ぼす複数のポイントを示す。
本明細書に記載の近接アッセイを用いてpHER1及びpHER2を検出するための単細胞感度を示す。
凍結組織由来のFNAを用いた近接アッセイ結果とIHCとの相関関係を示す。
図13(上部)は、既知のHER2 IHC状態を有するFNA試料由来の活性化HER1、HER2、HER3、PI3K、SHC、及びp95のレベルを示す「ヒートマップ」を示す。図13(下部)は、既知のHER2 IHC状態を有するFNA試料のサブセット中のトータルHER2及びp95レベルのウェスタンブロット分析を示す。
HER2陰性原発性腫瘍(IHCによる)からのHER2陽性CTCへの転換(本明細書に記載の近接アッセイを用いて検出)を示す。
IHC画像(Veridex)によるCTC中のHER2発現の確認を示す。
図16(上部)は、Herceptin(商標)処理したBT/R細胞及びBT474細胞中のリン酸化HER2レベル及びトータルHER2レベルを示す。図16(下部)は、Herceptin(商標)処理したBT/R細胞及びBT474細胞中のリン酸化HER2レベル及びトータルHER2レベルのウェスタンブロット分析を示す。
BT474細胞とBT/R細胞との間に活性化p95レベルの有意な差があったこと及びHerceptin(商標)処理を用いたBT474細胞とBT/R細胞のいずれにもホスホ−HER3、PI3K、及びSHCの減少があったことを示す。
Herceptin(商標)処理を用いたBT474細胞においてHER2のリン酸化の阻害があったことを示す。
Herceptin(商標)の非存在下でのBT474細胞中のErbB経路の模式図を示す。図中のグレースケールの濃淡は活性化のレベルを示す(より濃いグレーはより高い活性化レベルを表す)。
Herceptin(商標)処理を用いたBT474細胞中のErbB経路の調節の模式図を示す。図中のグレースケールの濃淡は活性化のレベルを示す(より濃いグレーはより高い活性化レベルを表す)。
Herceptin(商標)の非存在下でのBT/R細胞中のErbB経路の模式図を示す。図中のグレースケールの濃淡は活性化のレベルを示す(より濃いグレーはより高い活性化レベルを表す)。
Herceptin(商標)処理を用いたBT/R細胞中のErbB経路の調節の模式図を示す。図中のグレースケールの濃淡は活性化のレベルを示す(より濃いグレーはより高い活性化レベルを表す)。
トータル及びリン酸化HER1レベル並びにトータル及びリン酸化HER2レベルを分析するための典型的なスライドフォーマットのアレイデザインを示す。
リン酸化HER1を検出するための本発明の典型的な協調的近接イムノアッセイ(COPIA)の模式図を示す。
トータル及び活性化全長HER2並びにトータル及び活性化切断(truncated)HER2の検出を示す。
トータル及びリン酸化p95の検出を示す。
Herceptin(商標)を用いた処理が耐性であって感受性ではない細胞中の全長及び切断HER2の活性化レベルを増加させることを示す。トータルHER2(A)及びリン酸化HER2(C)並びにトータルpHER2(B)及びリン酸化pHER2(D)の発現について細胞溶解物を分析した。
Herceptin(商標)を用いた処理及び様々な時間における感受性(BT474)細胞及び耐性(BT/R)細胞中のHER3及びPI3Kの活性化のレベルを示す。
目的のシグナル伝達物質のトータルレベル及びリン酸化レベルを検出するための典型的な近接アッセイフォーマットの模式図を示す。
活性化HER2(pHER2)、発現HER2(tHER2)、及びCKのレベルの分布を示す。
08Onc02コホートについてのCTC−HER2状態転換を示す。
08Onc02 BCA患者についてのコ−メット(co-met)及び処理評価を示す。pHER2及びtHER2の両方についてHER2状態転換を示す。6週間及び12週間時点での処理評価も要約する。
COPIA及びFISHによる機能的HER2プロファイリングを示す。(CU/10細胞)
原発性乳癌(BCA)組織中のp95HER2発現及び活性化を示す。
IHC対COPIAによって決定されたHER2発現状態の間の相関を示す。IHC法とIP−ウェスタン法との間で不一致のHER2状態を有する試料は赤色で同定される。
不一致の試料中のHER2発現状態を確認するために実施されたIP−ウェスタン分析を示す。IHCとCOPIAとの間で不一致のHER2状態を有する試料をさらにIP−ウェスタンによりHER2発現について調査した。試料のサブセットを示す。HER2−IHC陽性試料も対照として用いた。
COPIAによる機能的経路プロファイリングの例を示す。
実施例11に記載の試験に用いたマイクロアレイスライドフォーマットを示す。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの例を提供する。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの第2の例を提供する。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの第3の例を提供する。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの第4の例を提供する。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの第5の例を提供する。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの第6の例を提供する。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの第7の例を提供する。
転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料についての経路プロファイリングの第8の例を提供する。
(a)それぞれMDA−MB468及びSKBr3中の単細胞の感度レベルでのHER1及びHER2の活性化;(b)1レーン当たりトータルタンパク質12μg(約4000細胞)から生成されたウェスタンブロットデータ;(c)pHER1(リン酸化HER1)又はpHER2(リン酸化HER2)に対し20%シグナル飽和(又は12000RFU)を検出するのに必要な細胞数を用いて低いRTK発現(RFU/細胞)を伴う細胞の1細胞当たりのRTK活性化を計算した;(d)異種移植片を種々の程度のErbB−RTK発現を伴う細胞系:MDA−MB−231、MDA−MB−435及びBT474から得た;(e)26例のステージII〜III凍結BCA(12例のHER2−IHC 3+、7例のHER2−IHC 1+、7例のHER2−IHC −)及び4例の正常隣接組織由来の組織試料をHER2/HER1発現及び活性化について分析した;(f)トータルHER2発現及びHER2リン酸化についての26例のBCA試料の散布図。
(a)各スライドについて、細胞系MD−468(HER1陽性)細胞及びSKBr3(HER2陽性)細胞の溶解物から、連続的に希釈された細胞溶解物からなる標準曲線を作成した;(b)pHER1及びpHER2の両方について検出限界(LOD)値が1CUより低いことが決定された;(c)HER2発現及び活性化について分析された27例の乳癌試料の全てを表に示す。
データ整理(data reduction)及びデータ解析の方法の概要を提供する。
(a)標準曲線及び(b)1の分析物についての計算を示す。
国際公開第2009/108637号パンフレットからの図表は、あらゆる目的のためにこれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
《発明の詳細な記載》
I.序論
上述したように、細胞増殖に関与するシグナル伝達経路の活性化及び細胞死に関与する経路の非活性化は、多数の様々なタイプの癌を特性付ける分子的特徴の限定的でない例である。多くの場合において、特定のシグナル伝達経路の活性、及びそれらの成分は、所定のタイプの癌に対する分子シグニチャーとして機能することができる。このような活性化された成分は、治療介入に対して有用な標的をさらに提供することができる。従って、治療前、治療中、及び治療後の癌細胞内での特定シグナル伝達系の活性レベルに関する知見は、採用するべき適切な治療経過を選択するために用いることができる高度に重要な情報を医師に提供する。さらに、治療が進行するにつれて癌細胞内で活性になるシグナル伝達経路の持続的監視は、医師に治療の有効性に関する追加の情報を提供して、例えば、同じ又は別のシグナル伝達経路のいずれかを活性化する別の異常を通して癌細胞が治療に対して耐性になった場合に、医師に特定の治療コースを持続するか、又は別の治療ラインへ切り替えるかを促すことができる。
従って、本発明は、特異的な多重の高スループットアッセイにおいて固形腫瘍の腫瘍組織又は希少循環細胞などの腫瘍外細胞中での複数の無秩序のシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化状態を検出するための方法及び組成物を提供する。本発明は、無秩序なシグナル伝達経路をダウンレギュレート又は活動停止させるために適切な療法(単剤又は薬物の組み合わせ)を選択するための方法及び組成物も提供する。このように、本発明を用いることによって、癌患者に合わせた個別の療法の設計を促進することができる。
単細胞のレベルでのシグナル伝達経路の活性の決定を通して循環中の腫瘍細胞を検出及び同定する能力は、本発明の重要な利点である。腫瘍細胞は、「微小転移」(播種性腫瘍細胞)としての様々な初期段階の癌を有する患者の血液中に見出されることが多く、転移性癌においても見出される。血液中の腫瘍細胞の数は、腫瘍のステージ及びタイプに依存するであろう。生検は典型的には原発性腫瘍において入手され、大部分の転移性腫瘍では生検が行われないので、このような腫瘍試料の分子分析を行うことは極めて困難である。腫瘍転移中には、大多数の侵攻性腫瘍細胞は原発性腫瘍を離れ、血液系及びリンパ系を通って移動し、遠隔部位に達する。このように、血液由来の循環腫瘍細胞は、腫瘍細胞の最も侵攻性で均質な集団を表す。しかしながら、血液中の転移性腫瘍細胞の数は、極めて少ないことが多く、血液1mL当たり1個〜数千個まで様々である。このような希少細胞中のシグナル伝達経路を単離してアッセイし、この情報をより効果的な癌治療に向けて適用する能力は、本発明の1つの目的である。
或る実施形態において、本発明の多重の高スループットイムノアッセイは、固形腫瘍の循環細胞中のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化状態を単細胞レベルで検出することができる。実際に、EGFRなどのシグナル伝達分子を、約100ゼプトモルの感度及び約100ゼプトモル〜約100フェムトモルの線形ダイナミックレンジで検出することができる。従って、希少循環細胞中の複数のシグナル伝達物質の活性化状態の単細胞的検出は、癌の予後診断及び診断並びに個別の標的化療法の設計を促進する。
希少循環細胞には、固形腫瘍から転移又は微小転移している固形腫瘍の循環細胞が含まれる。循環腫瘍細胞、癌幹細胞、及び、腫瘍へ移動している(例えば、化学走化性による)細胞、例えば、循環内皮前駆細胞、循環内皮細胞、循環前血管新生骨髄性細胞、及び循環樹状細胞は、固形腫瘍と関連付けられた循環細胞の一部の例である。
目的のシグナル伝達分子を、典型的には循環細胞を単離した直後に、好ましくは約24、6、又は1時間以内、及びより好ましくは約30、15、又は5分間以内に抽出して、それらのインサイチュ(in situ)活性化状態を保持する。単離した細胞は、さらに、通常はナノモル〜ミクロモル濃度の成長因子1種又は2種以上と約1〜30分間にわたりインキュベートして、シグナル伝達分子の活性化を復活させ又は刺激することができる(例えば、Irish et al., Cell, 118:217-228 (2004)参照)。
本明細書でより詳細に説明するように、個別患者に対して有望な抗癌療法を評価するために、単離した細胞を様々な量の抗癌剤1種又は2種以上とインキュベートすることができる。次いで、成長因子刺激を数分間(例えば、約1〜5分間)又は数時間(例えば、約1〜6時間)にわたり実施することができる。抗癌剤を用いた及び用いないシグナル伝達経路の活性化の差異は、各個別患者に対する適正用量での適切な癌療法の選択に役立つことができる。循環細胞を抗癌剤治療中の患者試料から単離し、成長因子1種又は2種以上を用いて刺激することにより、療法の変更を実施すべきかどうかを決定することもできる。従って、本発明の方法は、有利なことに、医師が患者ごとに適切な時点で適切な用量の適切な抗癌剤を提供することを支援する。
乳癌に関連して、現行の試験選択肢は不十分であるが、それは乳癌患者における原発性腫瘍及び転移性腫瘍の両方の治療が、疾患の初期ステージの間に採取された生検試料からの1回限りの診断に基づいているからである。詳細には、乳癌の初期及び転移ステージの両方についての治療介入は、転移癌患者からの生検試料の入手が実行不可能であるために、疾患の初期ステージに採取された生検試料からの初期診断のみに基づいている。しかしながら、乳房腫瘍は、時間及び治療の関数として進展する(evolving)ので、乳房腫瘍の時間的監視は乳癌患者の最適な管理のために極めて重要である。例えば、受容体チロシンキナーゼのErbB(HER)ファミリーの1つ又は2つ以上の活性化状態における変化は、再発時の治療選択に影響を及ぼす可能性がある。実際に、原発性癌と転移性癌との間のHER2状態における不一致は、全乳癌患者の37%までがHER2陰性の原発性腫瘍からHER2陽性の転移性癌へ変化するために、一般的である。さらに、患者はHER1/2活性化によってホルモン療法に対する初めからの耐性を有し又は獲得耐性を発生することがある。或る場合には、患者は、p95HER2を発現する腫瘍細胞の存在によってErbB標的化療法への初めからの耐性を有し又は獲得耐性を発生することがある。結果として、現行技術は感受性及び特異性を欠いており、療法下の患者を監視するためには用いることができず、そして個別治療決定を誘導するための経路プロファイリングを利用しないので、医師が適切な時点で適切な癌療法を処方することを支援するアッセイに対する満たされていない臨床的要求が存在する。
現在利用できる乳癌検査の選択肢とは対照的に、本発明の方法は、血液及び/又は微細針吸引液(FNA)に由来する循環腫瘍細胞(CTC)などの試料を用いて固形乳房腫瘍の「リアルタイム生検」を提供することによって、疾患の全ステージを通して乳癌患者を監視することを可能にする。限定的でない例として、本明細書に記載した乳癌アッセイは、疾患の初期ステージにおいて患者の乳癌の初期診断に用いることができる。適切な癌療法の選択は、本明細書に記載したアッセイを用いて、抗癌剤を用いて及び用いないで特異的シグナル伝達経路の発現及び/又は活性化状態をプロファイリングすることによって誘導される。有利には、本発明の方法は、疾患の任意の段階に採取され、本明細書に記載したアッセイを用いて分析される試料に基づいて治療的介入を行うことができるので、疾患の進行又は退行を監視するためにも用いることができる。従って、乳癌の初期及び転移ステージに対する適切な癌療法の選択は、リアルタイム診断及び特異的シグナル伝達経路分子の発現及び/又は活性化状態の分析によって誘導される。
有利なことに、本発明の方法は、癌管理における重要な問題に対処し、乳癌患者に対してより高度の標準治療を提供できるように作られているが、それは前記方法が(1)高められた感度を提供する(例えば、EGFR及びHER2などのトータル及びリン酸化シグナル伝達分子を検出するために単細胞検出を達成することができる)、(2)高められた特異性を提供する(例えば、3抗体近接アッセイはトータル及びリン酸化シグナル伝達分子を検出するための特異性を高める)、(3)経路プロファイリングを可能にする(例えば、特異的シグナル伝達分子の発現及び/又は活性化状態を患者由来のCTC及びFNA中で検出できる)、及び(4)患者試料を入手することに伴うあらゆる問題を排除する(例えば、アッセイは少数の腫瘍細胞で実施することができる)からである。本明細書に記載したアッセイではあらゆる試料を使用できるが、CTCは最も侵攻性の腫瘍細胞を表し、各腫瘍はCTCを遊離させることが知られており、遺残腫瘍又は入手が困難な転移性腫瘍の唯一の供給源であることができ、そしてそれらは血中に見出されるので、特に有用である。従って、本発明の方法は、乳房腫瘍組織の連続サンプリングによって、時間及び療法の関数として腫瘍細胞内で生ずる変化に関する有用な情報を得ることを可能にし、そして急速に進展する癌経路シグニチャーを監視するための手段を医師に提供することを可能にする。
これらをまとめると、本発明の組成物及び方法は有利には、多重化された、抗体に基づく近接アッセイを用いて、容易に入手可能な腫瘍細胞についての経路プロファイリングを実施することによって標的化療法から最も利益が得られると考えられる癌患者(例えば、乳癌患者)の正確な予測、選択、及び監視を提供する。
II.定義
本明細書で使用する場合に、以下の用語は、他に特に規定しない限り、それらに与えられた意味を有する。
用語「癌」は、異常細胞の制御されない増殖を特徴とする疾患クラスの任意のメンバーを含むことを意図する。この用語は、悪性、良性、軟組織、若しくは固形、又は転移前及び転移後癌を含むあらゆるステージ及びグレードの癌のいずれであると特徴付けられようと、あらゆる公知の癌及び腫瘍状態を含む。様々な癌のタイプの例として、乳癌;肺癌(例えば、非小細胞肺癌);結腸直腸癌、消化管間質腫瘍、消化管カルチノイド腫瘍、結腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌、及び胃癌などの消化器及び消化管癌;食道癌;胆嚢癌;肝臓癌;膵臓癌;虫垂癌;卵巣癌;腎臓癌(例えば、腎細胞癌);中枢神経系の癌;皮膚癌;リンパ腫;絨毛腫;頭頸部癌;骨原性肉腫;並びに血液癌を挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書で使用する「腫瘍」は、癌性細胞(cancerous cell)1個又は2個以上を含む。1つの実施形態では、乳房腫瘍は、浸潤性若しくは非浸潤性の乳管癌又は小葉癌を有する被験者に由来する。別の実施形態では、乳房腫瘍は、再発性又は転移性乳癌を有する患者に由来する。
用語「分析物」には、目的の任意の分子、典型的にはその存在、量(発現レベル)、活性化状態、及び/又は同一性が決定されるポリペプチドなどの高分子が含まれる。所定の場合には、分析物は、例えば、HER2(ErbB2)シグナル伝達経路の成分などのシグナル伝達分子である。
用語「シグナル伝達分子」又は「シグナル伝達物質」は、それにより細胞が細胞外シグナル又は刺激を応答に転換するプロセスであって、典型的には細胞の内部での順序付けられた生化学反応の順序を含むプロセスを実施するタンパク質及び他の分子を含む。シグナル伝達分子の例として、受容体チロシンキナーゼ、例えば、EGFR(例えば、EGFR/HER1/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4)、VEGFR1/FLT1、VEGFR2/FLK1/KDR、VEGFR3/FLT4、FLT3/FLK2、PDGFR(例えば、PDGFRA、PDGFRB)、c−KIT/SCFR、INSR(インスリン受容体)、IGF−IR、IGF−IIR、IRR(インスリン受容体関連受容体)、CSF−1R、FGFR1−4、HGFR1−2、CCK4、TRK A−C、c−MET、RON、EPHA1−8、EPHB1−6、AXL、MER、TYRO3、TIE1−2、TEK、RYK、DDR1−2、RET、c−ROS、V−カドヘリン、LTK(白血球チロシンキナーゼ)、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)、ROR1−2、MUSK、AATYK1−3、及びRTK106;受容体チロシンキナーゼの切断形、例えば、欠損(missing)アミノ末端細胞外ドメインを有する切断HER2受容体(例えば、p95ErbB2(p95m)、p110、p95c、p95nなど);受容体チロシンキナーゼ二量体(例えば、p95HER2/HER3、p95HER2/HER2、HER2/HER2、HER2/HER3、HER1/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4など);非受容体チロシンキナーゼ、例えば、BCR−ABL、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、及びLIMK;チロシンキナーゼシグナル伝達カスケード成分、例えば、AKT(例えば、AKT1、AKT2、AKT3)、MEK(MAP2K1)、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PI3K(例えば、PIK3CA(p110)、PIK3R1(p85))、PDK1、PDK2、ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)、SGK3、4E−BP1、P70S6K(例えば、p70S6キナーゼスプライスバリアントアルファI)、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1など)、RAF、PLA2、MEKK、JNKK、JNK、p38、Shc(p66)、Ras(例えば、K−Ras、N−Ras、H−Ras)、Rho、Rac1、Cdc42、PLC、PKC、p53、サイクリンD1、STAT1、STAT3、ホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート(PIP2)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(PIP3)、mTOR、BAD、p21、p27、ROCK、IP3、TSP−1、NOS、GSK−3β、RSK1−3、JNK、c−Jun、Rb、CREB、Ki67、及びパキシリン;核ホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、アンドロゲン受容体、グルココルチコイド受容体、鉱質コルチコイド受容体、ビタミンA受容体、ビタミンD受容体、レチノイド受容体、甲状腺ホルモン受容体、及びオーファン受容体;それぞれ、乳癌−1(AIB1)及び核受容体コリプレッサー1(NCOR)内で増幅されるような核受容体コアクチベーター及びリプレッサー;並びにそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。
用語「HER2シグナル伝達経路の成分」には、HER2の上流リガンド、HER2の結合パートナー、及び/又はHER2を介して調節される下流エフェクタ分子のいずれか1種又は2種以上が含まれる。HER2シグナル伝達経路の成分の例として、ヘレグリン(heregulin)、HER1/ErbB1、HER2/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4,AKT(例えば、AKT1、AKT2、AKT3)、MEK(MAP2K1)、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PI3K(例えば、PIK3CA(p110)、PIK3R1(p85))、PDK1、PDK2、PTEN、SGK3、4E−BP1、P70S6K(例えば、スプライスバリアントアルファI)、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1など)、HER2二量体(例えば、p95HER2/HER3、p95HER2/HER2、HER2/HER2、HER2/HER3、HER1/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4など)、GSK−3β、PIP2、PIP3、p27及びそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。
用語「活性化状態」は、HER2シグナル伝達経路成分などの特定のシグナル伝達分子が活性化されているか否かを意味する。同様に、用語「活性化レベル」は、HER2シグナル伝達経路成分などの特定のシグナル伝達分子がどの程度活性化されているかを意味する。活性化状態は典型的には、シグナル伝達分子1種又は2種以上のリン酸化、ユビキチン化、及び/又は複合体形成状態に対応する。活性化状態の限定的でない例(括弧内に列挙)として:EGFR(EGFRvIII、リン酸化(p−)EGFR、EGFR:Shc、ユビキチン化(u−)EGFR、p−EGFRvIII);ErbB2(p−ErbB2、p95HER2(切断ErbB2)、p−p95HER2、ErbB2:Shc、ErbB2:PI3K、ErbB2:EGFR、ErbB2:ErbB3、ErbB2:ErbB4);ErbB3(p−ErbB3、ErbB3:PI3K、p−ErbB3:PI3K、ErbB3:Shc);ErbB4(p−ErbB4、ErbB4:Shc);c−MET(p−c−MET);AKT1(p−AKT1);AKT2(p−AKT2);AKT3(p−AKT3);PTEN(p−PTEN);P70S6K(p−P70S6K);MEK(p−MEK);ERK1(p−ERK1);ERK2(p−ERK2);PDK1(p−PDK1);PDK2(p−PDK2);SGK3(p−SGK3);4E−BP1(p−4E−BP1);PIK3R1(p−PIK3R1);c−KIT(p−c−KIT);ER(p−ER);IGF−1R(p−IGF−1R、IGF−1R:IRS、IRS:PI3K、p−IRS、IGF−1R:PI3K);INSR(p−INSR);FLT3(p−FLT3);HGFR1(p−HGFR1);HGFR2(p−HGFR2);RET(p−RET);PDGFRA(p−PDGFRA);PDGFRB(p−PDGFRB);VEGFR1(p−VEGFR1、VEGFR1:PLCγ、VEGFR1:Src);VEGFR2(p−VEGFR2、VEGFR2:PLCγ、VEGFR2:Src、VEGFR2:ヘパリンスルフェート、VEGFR2:VE−カドヘリン);VEGFR3(p−VEGFR3);FGFR1(p−FGFR1);FGFR2(p−FGFR2);FGFR3(p−FGFR3);FGFR4(p−FGFR4);TIEl(p−TIEl);TIE2(p−TIE2);EPHA(p−EPHA);EPHB(p−EPHB);GSK−3β(p−GSK−3β);NFKB(p−NFKB)、IKB(p−IKB、p−P65:IKB);BAD(p−BAD、BAD:14−3−3);mTOR(p−mTOR);Rsk−1(p−Rsk−1);Jnk(p−Jnk);P38(p−P38);STAT3(p−STAT3);Fak(p−Fak);Rb(p−Rb);Ki67;p53(p−p53);CREB(p−CREB);c−Jun(p−c−Jun);c−Src(p−c−Src);及びパキシリン(p−パキシリン)を挙げることができる。
本明細書で使用する用語「希釈系列」は、特定の試料(例えば、細胞溶解物)又は試薬(例えば、抗体)の一連の減少する濃度を含むことを意図する。希釈系列は、典型的には、測定された量の出発濃度の試料又は試薬を希釈液(例えば、希釈バッファ)と混合して低濃度の試料又は試薬を作成するプロセスと、所望の数の連続希釈液を得るために充分な回数にわたり前記プロセスを繰り返す工程によって生成される。試料又は試薬を、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500、又は1,000倍に連続的に希釈して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、又は50の減少濃度の試料又は試薬を含む希釈系列を生成することができる。例えば、出発濃度1mg/mLの捕捉抗体試薬の2倍連続希釈を含む希釈系列は、或る量の前記出発濃度の捕捉抗体を等量の希釈バッファと混合して0.5mg/mL濃度の捕捉抗体を作成することと、該プロセスを繰り返して0.25mg/mL、0.125mg/mL、0.0625mg/mL、0.0325mg/mLなどの捕捉抗体濃度を得ることによって生成することができる。
本明細書で使用する用語「優れたダイナミックレンジ」とは、1個という少ない細胞内又は数千個という多数の細胞内で特異的分析物を検出するアッセイの能力を意味する。例えば、本明細書に記載したイムノアッセイは、有利には希釈系列の捕捉抗体濃度を用いて約1〜10,000細胞(例えば、約1、5、10、25、50、75、100、250、500、750、1,000、2,500、5,000、7,500、若しくは10,000細胞)中で目的の特定シグナル伝達分子を検出するので、優れたダイナミックレンジを有する。
本明細書で使用する用語「循環細胞」は、固形腫瘍から転移した又は微小転移したいずれかである腫瘍外細胞を含む。循環細胞の例として、循環腫瘍細胞、癌幹細胞、及び/又は腫瘍へ移動中である細胞(例えば、循環内皮前駆細胞、循環内皮細胞、循環前血管新生骨髄性細胞、循環樹状細胞など)を挙げることができるがそれらに限定されない。循環細胞を含有する患者試料は、任意の入手可能な体液(例えば、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、微細針吸引液など)から得ることができる。所定の場合には、全血試料は、血漿又は血清分画及び細胞分画(すなわち、細胞ペレット)に分離される。細胞分画は、典型的には、赤血球、白血球、及び/又は固形腫瘍の循環細胞、例えば、循環腫瘍細胞(CTC)、循環内皮細胞(CEC)、循環内皮前駆細胞(CEPC)、癌幹細胞(CSC)、リンパ節の播種性腫瘍細胞、及びそれらの組み合わせを含有する。血漿又は血清分画は、通常は、特に、固形腫瘍の循環細胞によって遊離される核酸(例えば、DNA、RNA)及びタンパク質を含有する。
循環細胞を、典型的には、例えば、免疫磁気分離法(例えば、Racila et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:4589-4594 (1998);Bilkenroth et al., Int. J. Cancer, 92:577-582 (2001)参照)、Immunicon社(ペンシルバニア州ハンティントン・バレー)によるCellTracks(商標)システム、マイクロ流体分離法(例えば、Mohamed et al., IEEE Trans. Nanobiosci., 3:251-256 (2004);Lin et al., Abstract No. 5147, 97th AACR Annual Meeting, Washington, D.C. (2006)参照)、FACS(例えば、Mancuso et al., Blood, 97:3658-3661 (2001)参照)、密度勾配遠心分離法(例えば、Baker et al., Clin. Cancer Res., 13:4865-4871 (2003)参照)、及び枯渇法(例えば、Meye et al., Int. J. Oncol., 21:521-530 (2002)参照)を含む1つ又は2つ以上の分離方法を用いて患者試料から単離する。
本明細書で使用する用語「試料」は、患者から得られる任意の生物学的検体を含む。試料として、限定的でなく、全血、血漿、血清、赤血球、白血球(例えば、末梢血単核球)、乳管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液(例えば、リンパ節の播種性腫瘍細胞)、骨髄吸引液、唾液、尿、便(すなわち大便)、痰、気管支洗浄液、涙液、微細針吸引液(例えば、乳輪周囲の無作為微細針吸引により採取)、任意の他の体液、腫瘍の生検(例えば、針生検)又はリンパ節の生検(例えば、センチネルリンパ節生検)などの組織試料(例えば、腫瘍組織)、並びにそれらの細胞抽出物を挙げることができる。或る実施形態において、試料は、全血又は血漿、血清、若しくは細胞ペレットなどの全血の分画成分である。好ましい実施形態において、当業者に公知である任意の技術を用いて全血又はその細胞分画から固形腫瘍の循環細胞を単離することによって試料を入手する。他の実施形態において、試料は、例えば、乳房の固形腫瘍由来の、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料である。
「生検」は、診断的又は予後診断的評価のために組織試料を取り出す工程及び組織検体自体を意味する。当分野において公知の任意の生検技術を、本発明の方法及び組成物に適用することができる。適用される生検技術は、一般には、他の因子の中でも特に、評価すべき組織タイプ並びに腫瘍の大きさ及びタイプ(すなわち、固形又は浮遊型(すなわち、血液又は腹水))に依存するであろう。代表的な生検技術には、切除生検、切開生検、針生検(例えば、コア針生検、微細針吸引生検など)、外科生検、及び骨髄生検が含まれる。生検技術は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine, Kasper, et al., eds., 16th ed., 2005, Chapter 70及び Part V全体において考察されている。当業者であれば、所定の組織試料中で癌性及び/又は前癌性細胞を同定するために生検技術を実施できることを理解されよう。
用語「被験者」又は「患者」又は「個人」は、典型的にはヒトを含むが、例えば、他の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどの他の動物も含むことができる。
「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、例えば、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズなど)、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、繊維束、又は任意の他の適切な基材などの固体支持体上に固定化又は拘束された(restrained)個別のセット及び/又は希釈系列の捕捉抗体を含む。捕捉抗体は、一般に共有又は非共有相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間結合)を介して固体支持体上に固定化又は拘束される。所定の場合には、捕捉抗体は、固体支持体に結合した捕捉剤と相互作用する捕捉タグを含む。本明細書に記載のアッセイにおいて使用されるアレイは、典型的には、異なる既知/アドレス可能な場所において固体支持体の表面に結合している複数の異なる捕捉抗体及び/又は捕捉抗体濃度を含む。
用語「捕捉抗体」は、細胞抽出物などの試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)固定化された抗体を含むことを意図している。特定の実施形態において、捕捉抗体は、アレイ内の固体支持体上に拘束される。固体支持体上で様々なシグナル伝達分子のいずれかを固定化するのに適切な捕捉抗体は、Upstate社(カリフォルニア州テメキュラ)、Biosource社(カリフォルニア州カマリロ)、Cell Signaling Technologies社(マサチューセッツ州ダンバーズ)、R&D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス)、Lab Vision社(カリフォルニア州フレモント)、Santa Cruz Biotechnology社(カリフォルニア州サンタクルーズ)、Sigma社(ミズーリ州セントルイス)、及びBD Biosciences社(カリフォルニア州サンノゼ)から入手することができる。
本明細書で使用する用語「検出抗体」は、試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)検出可能な標識を含む抗体を含む。この用語は、目的の分析物1種又は2種以上に特異的である抗体を含み、該抗体を検出可能な標識を含む別の種に結合させることができる。検出可能な標識の例として、ビオチン/ストレプトアビジン標識、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)標識、化学的反応性の標識、蛍光標識、酵素標識、放射活性標識、及びそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。様々なシグナル伝達分子のいずれかの活性化状態及び/又は全量を検出するのに適切な検出抗体は、Upstate社(カリフォルニア州テメキュラ)、Biosource社(カリフォルニア州カマリロ)、Cell Signaling Technologies社(マサチューセッツ州ダンバーズ)、R&D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス)、Lab Vision社(カリフォルニア州フレモント)、Santa Cruz Biotechnology社(カリフォルニア州サンタクルーズ)、Sigma社(ミズーリ州セントルイス)、及びBD Biosciences社(カリフォルニア州サンノゼ)から入手することができる。限定的でない例として、EGFR、c−KIT、c−Src、FLK−1、PDGFRA、PDGFRB、AKT、MAPK、PTEN、Raf、及びMEKなどのシグナル伝達分子の様々なリン酸化形に対するリン特異的抗体は、Santa Cruz Biotechnology社から入手することができる。
用語「活性化状態依存性抗体」は、試料中の目的の分析物1種又は2種以上の特定の活性化状態に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)検出抗体を含む。好ましい実施形態において、活性化状態依存性抗体は、シグナル伝達分子1種又は2種以上などの分析物1種又は2種以上のリン酸化、ユビキチン化、及び/又は複合体形成状態を検出する。或る実施形態において、受容体チロシンキナーゼのEGFRファミリーのメンバーのリン酸化及び/又はEGFRファミリーメンバー間のヘテロ二量体複合体の形成を、活性化状態依存性抗体を用いて検出する。特定の実施形態において、活性化状態依存性抗体は、以下のシグナル伝達分子1種又は2種以上におけるリン酸化の1つ又は2つ以上の部位(ヒトタンパク質配列中のアミノ酸の位置に対応するリン酸化部位)を検出するのに有用である:EGFR/HER1/ErbB1(例えば、チロシン(Y)1068);ErbB2/HER2(例えば、Y1248);ErbB3/HER3(例えば、Y1289);ErbB4/HER4(例えば、Y1284);SGK3(例えば、トレオニン(T)256及び/又はセリン(S)422);4E−BP1(例えば、T70);ERK1(例えば、T202及び/又はY204);ERK2(例えば、T202);MEK(例えば、S217及び/又はS221);PIK3R1(例えば、Y688);PDK1(例えば、S241);P70S6K(例えば、T229、T389、及び/又はS421);c−MET(例えば、Y1349);PTEN(例えば、S380);AKT1(例えば、S473及び/又はT308);AKT2(例えば、S474及び/又はT309);AKT3(例えば、S472及び/又はT305);GSK−3β(例えば、S9);NFKB(例えば、S536);IKB(例えば、S32);BAD(例えば、S112及び/又はS136);mTOR(例えば、S2448);Rsk−1(例えば、T357及び/又はS363);Jnk(例えば、T183及び/又はY185);P38(例えば、T180及び/又はY182);STAT3(例えば、Y705及び/又はS727);FAK(例えば、Y576);Rb(例えば、S249、T252、及び/又はS780);p53(例えば、S392及び/又はS20);CREB(例えば、S133);c−Jun(例えば、S63);c−Src(例えば、Y416);及びパキシリン(例えば、Y118)。
用語「活性化状態非依存性抗体」は、それらの活性化状態とは無関係に試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)検出抗体を含む。例えば、活性化状態非依存性抗体は、例えばシグナル伝達分子1種又は2種以上などの分析物1種又は2種以上のリン酸化形及び非リン酸化形の両方を検出することができる。
用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、例えば、DNA及びRNAなどの一本鎖形又は二本鎖形のいずれかにあるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを含む。核酸には、合成、天然型、及び非天然型である、並びに参照核酸と同様の結合特性を有する、公知のヌクレオチドアナログ又は修飾バックボーン残基若しくは結合を含有する核酸が含まれる。このようなアナログの例として、限定的でなく、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2’−O−メチルリボヌクレオチド、及びペプチド−核酸(PNA)を挙げることができる。特に限定しない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの公知のアナログを含有する核酸を包含する。他に特に規定しない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたそれらの変異体及び相補的配列を黙示的に並びに指示された配列を明示的に含む。
用語「オリゴヌクレオチド」は、RNA、DNA、RNA/DNAハイブリッド、及び/又はそれらの模倣剤の、一本鎖オリゴマー若しくはポリマーを意味する。所定の場合に、オリゴヌクレオチドは、天然型(すなわち、未修飾)核酸塩基、糖、及びインターヌクレオシド(バックボーン)結合から構成される。所定の他の場合には、オリゴヌクレオチドは、修飾された核酸塩基、糖、及び/又はインターヌクレオシド結合を含む。
本明細書で使用する用語「ミスマッチモチーフ」若しくは「ミスマッチ領域」は、その相補的配列に対して100%相補性を有していないオリゴヌクレオチドの一部分を意味する。オリゴヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、又は7以上のミスマッチ領域を有していることができる。ミスマッチ領域は隣接していることができ、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13以上のヌクレオチドによって分離されていることができる。ミスマッチモチーフ又は領域は、単一のヌクレオチドを含んでいることができ、又は2、3、4、5、又は6以上のヌクレオチドを含んでいることができる。
語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、オリゴヌクレオチドがその相補性配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる状況では異なるであろう。長い配列は、詳細には高温でハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広汎なガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に見出される。一般に、規定のイオン強度pHで特異的配列に対して熱融点(T)より約5〜10℃低くなるようにストリンジェントな条件を選択する。Tは、標的に相補的であるプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下で)である(標的配列が過剰に存在するとき、Tにおいて、プローブの50%は平衡状態で占められる)。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションに対して、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。
用語「実質的に同一」又は「実質的同一性」は、核酸が2種又は3種以上のある状況において、配列比較アルゴリズムを用いて又は手動アラインメント及び目視検査によって測定されるように比較窓若しくは指定領域にわたって最大対応について比較及びアライメントした場合に、同一であるか又は同一であると規定されるパーセンテージのヌクレオチド(すなわち、規定領域にわたって少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性)を有する2種又は3種以上の配列又はサブシーケンスを意味する。この定義は、その状況が示す場合は、配列の補体(complement)も意味する。好ましくは、実質的同一性は、長さが少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、又は100ヌクレオチドである領域にわたって存在する。
用語「インキュベートする」は、「接触させる」及び「曝露させる」と同義的に使用され、他に規定しない限り任意の特定の時間又は温度要件を意味しない。
《実施形態の説明》
本発明は、本明細書に記載したような特異的な多重の高スループット近接アッセイなどのアッセイを用いて腫瘍組織に由来する腫瘍細胞又は固形腫瘍の循環細胞中でのシグナル伝達経路の成分の状態(例えば、発現及び/又は活性化レベル)を検出するための方法及び組成物を提供する。本発明は、1つ又は2つ以上の無秩序なシグナル伝達経路をダウンレギュレート又は活動停止させるのに適切な療法を選択するための方法及び組成物も提供する。このように、本発明の所定の実施形態を用いて、所定の患者の腫瘍におけるトータル及び活性化されたシグナル伝達タンパク質の収集によって提供される特定分子シグニチャーに基づいて各個人の療法の設計を促進することができる。
特定の側面において、本発明は、特定の癌がHER2調節性化合物(例えば、HER2阻害剤)に対して有利に反応することができるか又は反応する可能性を有するか否かの決定又は予測を可能とする分子マーカー(バイオマーカー)を提供する。特定の実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、及び/又はSHC)1種又は2種以上の活性化のレベルを測定することは、HER2活性を調節する化合物(例えば、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))、チロシンキナーゼ阻害剤など)に対する乳癌細胞(例えば、単離された循環腫瘍細胞、微細針吸引液(FNA)細胞など)などの細胞の感受性を決定し又は予測するのにとりわけ有用である。
或る側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する細胞の感受性を決定し又は予測する方法であって:
(a)細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルをHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルとHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記細胞が前記化合物に対して感受性であるか又は耐性であるか(すなわち、感受性でない)ということを示す、方法を提供する。
好ましい側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する細胞の感受性を決定し又は予測する方法であって:
(a)細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2又はp95HER2の活性化レベルをHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較する工程;を含み、
HER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して感受性でない(すなわち、耐性である)ことを示す、方法を提供する。
インサイチュ活性化状態を保存するために、典型的には、細胞が単離された直後に、好ましくは96、72、48、24、6、又は1時間以内に、より好ましくは30、15、又は5分間以内にHER2経路成分などのシグナル伝達タンパク質を抽出する。単離した細胞は、通常ナノモル〜ミクロモル濃度の成長因子と約1〜30分間にわたりインキュベートして、シグナル伝達物質の活性化を復活させ又は刺激することができる(例えば、Irish et al., Cell, 118:217-228 (2004)参照)。刺激性成長因子として、上皮成長因子(EGF)、ヘレグリン(HRG)、TGF−α、PIGF、アンジオポエチン(Ang)、NRG1、PGF、TNF−α、VEGF、PDGF、IGF、FGF、HGF、サイトカインなどを挙げることができる。HER2活性を調節する化合物(例えば、抗HER2モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ)に対する単離した細胞の感受性を評価するために、成長因子の刺激の前、間、及び/又は後に、単離した細胞を様々な用量の化合物とインキュベートすることができる。成長因子の刺激は、数分間又は数時間(例えば、約1〜5分間から約1〜6時間)にわたり実施することができる。単離、HER2調節性化合物を用いた処理、及び/又は成長因子刺激の後に、当分野において公知の任意の技術を用いて細胞を溶解させ、HER2経路成分などのシグナル伝達タンパク質を抽出する。好ましくは、細胞溶解を、成長因子刺激後約1〜360分間の間に、及びより好ましくは2つの異なる時間間隔:(1)成長因子刺激の約1〜5分間後;及び(2)成長因子刺激後約30〜180分間で、開始する。代わりに、溶解物を、使用まで−80℃で保存することができる。
HER2活性を調節する化合物の限定的でない例として、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2活性を阻害し及び/又はHER2シグナル伝達をブロックし、例えば、HER2阻害剤である。HER2阻害剤の例として、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))及びペルツズマブ(2C4);小分子チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ピリチニブ(pilitinib)、CP−654577、CP−724714、カネルチニブ(CI 1033)、HKI−272、ラパチニブ(GW−572016;Tykerb(商標))、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW 2992、ARRY−334543、JNJ−26483327、及びJNJ−26483327;並びにそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。他の実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2経路を活性化し、例えば、HER2活性化剤である。
或る実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いて処理された前記化合物に感受性の細胞(例えば、Herceptin(商標)感受性細胞)から得られる。或る実施形態において、前記化合物に感受性の細胞(すなわち、化合物感受性細胞)は、BT−474細胞、SKBR3細胞、NH27細胞、MDA−MB−361細胞、UACC−812細胞、UACC−893細胞、MDA−MB−175細胞、SUM190細胞、SUM225細胞、N87細胞、OE19細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、Tseng et al., Mol. Pharmacol., 70:1534-41 (2006);Wainberg et al., Clin. Cancer Res., 16:1509-19 (2010);Emlet et al., Mol. Cancer Ther., 6:2664-74 (2007);Konecny et al., Cancer Res., 66:1630-9 (2006)を参照されたい。或る場合に、存在する細胞又は細胞系(例えば、化合物耐性細胞又は細胞系)から化合物感受性細胞を遺伝子組み換えして前記化合物に感受性である細胞又は細胞系を形成する(例えば、前記細胞又は細胞系において前記化合物により調節されるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2)を発現させることによる)。好ましくは、化合物感受性細胞は、BT−474細胞などのHerceptin(商標)感受性細胞である。
他の実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いて処理された前記化合物に耐性の細胞(例えば、Herceptin(商標)耐性細胞)から得られる。或る実施形態において、前記化合物に耐性である細胞(すなわち、化合物耐性細胞)は、BT/R細胞、MDA−MB−231細胞、SKBR3/IGF−1R細胞、JIMT−1細胞、BT−474/HR20細胞、SKBR3/P2細胞、NH29細胞、NH47細胞、MCF−7細胞、MCF−7/713細胞、MCF−7/HER2Δ16細胞、ZR−75−1細胞、BT20細胞、MDA−MB−435細胞、T47D細胞、MDA−MB−453細胞、MDA−MB−468細胞、CAMA1細胞、MDA−MB−157細胞、EFM192A細胞、KPL1細胞、EFM19細胞、CAL51細胞、NUGC3細胞、NUGC4細胞、FU97細胞、SNU16細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、Tseng et al., Mol. Pharmacol., 70:1534-41 (2006);Wainberg et al., Clin. Cancer Res., 16:1509-19 (2010);Emlet et al., Mol. Cancer Ther., 6:2664-74 (2007);Konecny et al., Cancer Res., 66:1630-9 (2006)を参照されたい。或る場合に、存在する細胞又は細胞系(例えば、化合物感受性細胞又は細胞系)から化合物耐性細胞を遺伝子組み換えして前記化合物に耐性である細胞又は細胞系を形成する(例えば、前記細胞又は細胞系において前記化合物により調節されるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2)をノックアウトすることによる)。好ましくは、化合物耐性細胞は、BT/R細胞などのHerceptin(商標)耐性細胞である。
更なる実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いた処理がされていない、腫瘍細胞などの細胞から得られる。或る場合に、前記腫瘍細胞は患者試料から得られた乳癌細胞である。他の場合に、前記腫瘍細胞は患者試料から得られた胃癌細胞である。更なる場合に、前記腫瘍細胞は、その原発性起源が乳癌細胞又は胃癌細胞のいずれかである転移性腫瘍細胞である。特定の実施形態において、前記化合物を用いた処理がされていない細胞は、細胞抽出物を生成するために用いられる単離細胞(例えば、調査すべき被検細胞)が得られる試料と同じ試料から得られる。
或る実施形態において、発現又は活性化レベルが、前記化合物を用いて処理された化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中の、前記化合物を用いて処理された化合物耐性細胞(例えば、BT/R細胞)中の、又は前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中の、対応するHER2シグナル伝達経路成分の参照の発現又は活性化レベルより少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は100倍高い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20、又は5〜50倍高い)場合に、HER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)のより高い発現又は活性化レベルが細胞抽出物中に存在していると考えられる。
他の実施形態において、発現又は活性化レベルが、前記化合物を用いて処理された化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中の、前記化合物を用いて処理された化合物耐性細胞(例えば、BT/R細胞)中の、又は前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中の、対応するHER2シグナル伝達経路成分の参照の発現又は活性化レベルより少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は100倍低い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20、又は5〜50倍低い)場合に、HER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)のより低い発現又は活性化レベルが細胞抽出物中に存在していると考えられる。
或る実施形態において、化合物感受性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性ではない(すなわち、耐性である)ことを示す。他の実施形態では、化合物感受性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性である(すなわち、耐性ではない)ことを示す。1つの実施形態において、細胞抽出物中のHER2活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のHER2の参照の活性化レベルより少なくとも2〜3倍高い。別の実施形態において、細胞抽出物中のp95HER2活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のp95HER2の参照の活性化レベルより少なくとも5倍高い。
或る実施形態において、化合物耐性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより低い、細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性である(すなわち、耐性ではない)ことを示す。他の実施形態において、化合物耐性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性ではない(すなわち、耐性である)ことを示す。
或る実施形態において、前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性である(すなわち、耐性ではない)ことを示す。他の実施形態において、前記化合物を用いた処理がされていない細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性ではない(すなわち、耐性である)ことを示す。
或る実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中のHER2及びp95HER2の両方の活性化レベルを決定する工程を含む。特定の実施形態において、HER2又はp95HER2の活性化レベルはHER2又はp95HER2のリン酸化レベルを含む。
或る他の実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中の追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程をさらに含む。追加のシグナル伝達分子の限定的でない例として、EGFR(HER1)、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、SHC、IGF−1R、c−MET、c−KIT、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、受容体二量体(例えば、p95HER2/HER3ヘテロ二量体、HER2/HER2ホモ二量体、HER2/HER3ヘテロ二量体、HER1/HER2ヘテロ二量体、及び/又はHER2/HER3ヘテロ二量体)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実施形態において、前記追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルはこのような分子のリン酸化レベルを含む。更なる実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中のHER3、PI3K、及び/又はp95HER2/HER3へテロ二量体1種又は2種以上とともにHER2及び/又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程を含む。
或る実施形態において、本発明の方法はさらに又は代わりに、HER3、PI3K、及び/又はp95HER2/HER3へテロ二量体1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程を含む。所定の場合には、化合物感受性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性ではない(すなわち、耐性である)ことを示す。他の場合には、化合物感受性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性である(すなわち、耐性ではない)ことを示す。1つの実施形態において、細胞抽出物中のHER3の活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のHER3の参照の活性化レベルより少なくとも2〜3倍高い。
所定の場合には、化合物耐性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性である(すなわち、耐性ではない)ことを示す。他の場合には、化合物耐性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性ではない(すなわち、耐性である)ことを示す。
或る場合に、前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性である(すなわち、耐性ではない)ことを示す。他の場合には、前記化合物を用いた処理がされていない細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記細胞(例えば、細胞抽出物が生成された被検細胞)が前記化合物に対して感受性ではない(すなわち、耐性である)ことを示す。
或る実施形態において、細胞(例えば、細胞抽出物が生成される被検細胞)は、乳癌細胞、胃癌細胞、及び/又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞である。所定の場合には、前記腫瘍細胞は、腫瘍から得られた微細針吸引液(FNA)細胞又は循環腫瘍細胞である。他の実施形態において、細胞(例えば、細胞抽出物が生成される被検細胞)は、例えば、乳癌又は胃癌患者から、得られる試料から単離される。限定的でない試料の例として、例えば、全血、血清、血漿、乳管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液、骨髄吸引液、尿、唾液、及び/又は微細針吸引液(FNA)試料などの体液試料を挙げることができる。特定の実施形態では、試料は全血、血清、血漿、及び/又は乳房若しくは胃腫瘍組織又はHER2発現性腫瘍組織などの腫瘍組織試料を含む。
所定の場合に、本発明の方法は、読み取り可能なフォーマットでユーザー(例えば、腫瘍医又は一般開業医などの医師)に工程(d)で得られた比較の結果を提供する工程(e)をさらに含んでいることができる。或る場合には、本発明の方法は、工程(d)で得られた比較の結果を医師、例えば、腫瘍医又は一般開業医に送り又は報告する工程をさらに含んでいることができる。他の場合には、本発明の方法は、コンピュータデータベースに又は、例えば、研究室で、情報を保存するための他の適切な機械若しくはデバイスに工程(d)で得られた比較の結果を記録又は保存する工程をさらに含んでいることができる。
或る実施形態において、工程(c)においてHER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、及び/又はSHC)1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程は、検出すべきHER2シグナル伝達経路の各成分のリン酸化形に特異的な抗体を用いて細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路成分1種又は2種以上のリン酸化レベルを検出する工程を含む。
リン酸化レベル及び/又は状態は様々な技術のいずれかを用いて決定することができる。例えば、リン酸化形のタンパク質を特異的に認識する抗体を用いたイムノアッセイによってリン酸化タンパク質を検出することができることが当分野において周知である(例えば、Lin et al., Br. J. Cancer, 93:1372-1381 (2005)参照)。イムノアッセイには一般にイムノブロッティング(例えば、ウェスタンブロッティング)、RIA、及びELISAが含まれる。さらに特異的なタイプのイムノアッセイには、抗原捕捉/抗原競合、抗体捕捉/抗原競合、2抗体サンドイッチ、抗体捕捉/抗体過剰、及び抗体捕捉/抗原過剰が含まれる。抗体の製造方法は、本明細書に及びHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに記載されている。ホスホ特異的(phospho-specifc)抗体は新規に製造することができ又は商業的若しくは非商業的供給源から入手することができる。[γ−32P]ATP又は[γ−33P]ATP形の放射性ホスフェートを用いて細胞を代謝的に標識化することによってもリン酸化レベル及び/又は状態を決定することができる。リン酸化タンパク質は放射性になるので、シンチレーション測定、ラジオグラフィー(radiography)などによって追跡可能及び定量化可能となる(例えば、Wang et al., J. Biol. Chem., 253:7605-7608 (1978)参照)。例えば、代謝的に標識化されたタンパク質を、細胞から抽出し、ゲル電気泳動によって分離し、膜に移し、特定のHER2シグナル伝達経路成分に特異的な抗体を用いてプローブしそしてオートラジオグラフィーに付して32P又は33Pを検出することができる。代わりに、膜への移動及び抗体によるプロービングの前にゲルをオートラジオグラフィーに付すことができる。
特定の実施形態において、本明細書に記載のように例えば単一の検出アッセイすなわち近接二重検出アッセイ(例えば、協調的近接イムノアッセイ(COllaborative Proximity ImmunoAssay)(COPIA)などのイムノアッセイを用いて、工程(c)におけるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、及び/又はSHC)1種又は2種以上の活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態を検出する。
或る実施形態では、工程(c)においてHER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER1、HER2、HER3など)1種又は2種以上の活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定は、以下の段階:
(i)細胞抽出物を希釈系列の捕捉抗体(例えば、HER2に特異的な捕捉抗体)とインキュベートして(例えば、接触させて)複数の捕捉された分析物(例えば、捕捉された受容体)を形成する段階であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている(例えば、そのことによって細胞抽出物中に存在する分析物を、該分析物と捕捉抗体とを含む捕捉された分析物の複合体に変換する)段階;
(ii)前記複数の捕捉された分析物(例えば、捕捉された受容体)を対応する分析物に特異的な活性化状態依存性抗体(例えば、HER2に特異的な活性化状態依存性抗体)を含む検出抗体とインキュベートして(例えば、接触させて)複数の検出可能な捕捉された分析物(例えば、検出可能な捕捉された受容体)を形成する(例えば、前記捕捉された分析物の複合体を、前記捕捉された分析物と活性化状態依存性抗体とを含む検出可能な捕捉された分析物の複合体に変換する)段階;
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物(例えば、検出可能な捕捉された受容体)をシグナル増幅対の第1及び第2のメンバーとインキュベートして(例えば、接触させて)増幅シグナルを生成する段階;及び
(iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する段階;を含む。
所定の他の実施形態において、工程(c)においてHER2シグナル伝達経路の切断受容体(例えば、p95HER2)1種又は2種以上の活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定は、以下の段階:
(i)細胞抽出物を、全長受容体(例えば、全長HER2)の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートする(接触させる)段階;
(ii)前記細胞抽出物から前記複数のビーズを除去し、それによって前記全長受容体(例えば、全長HER2)を除去して、該全長受容体(例えば、全長HER2)を含まない細胞抽出物を形成する(例えば、前記細胞抽出物を特異的な全長受容体又は全長受容体のファミリーを含まない細胞抽出物に変換する)段階;
(iii)前記全長受容体(例えば、全長HER2)を含まない前記細胞抽出物を、該全長受容体(例えば、全長HER2)の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして(例えば、接触させて)複数の捕捉された切断受容体を形成する段階であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている(例えば、そのことによって全長受容体枯渇(depleted)細胞抽出物中に存在する前記切断受容体を切断受容体と捕捉抗体との複合体に変換する)段階;
(iv)前記複数の捕捉された切断受容体を、前記全長受容体(例えば、全長HER2)のICD結合領域に特異的な活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして(例えば、接触させて)複数の検出可能な捕捉された切断受容体を形成する(例えば、捕捉された切断受容体の前記複合体を、前記捕捉された切断受容体と活性化状態依存性抗体とを含む検出可能な捕捉された切断受容体の複合体に変換する)段階;
(v)前記複数の検出可能な捕捉された切断受容体を、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーとインキュベートして(例えば、接触させて)増幅シグナルを生成する段階;及び
(vi)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する段階;を含む。
或る場合において、活性化状態依存性抗体は、結合対の第1のメンバー(例えば、ビオチン)を含む。他の場合には、シグナル増幅対の第1のメンバー(例えば、HRPなどのペルオキシダーゼ)は、結合対の第2のメンバー(例えば、ストレプトアビジン)を含む。所定の場合には、シグナル増幅対の第2のメンバーは、例えば、チラミド試薬(例えば、ビオチン−チラミド)であることができる。好ましくは、増幅シグナルは、活性化チラミドを生成する(例えば、ビオチン−チラミドを活性化チラミドに変換する)ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって生成される。活性化チラミドは、例えば、シグナル検出性試薬を添加すると、直接的に又は間接的に検出することができる。前記シグナル検出性試薬の限定的でない例として、ストレプトアビジン標識化フルオロフォア及びストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)などの発色試薬との組み合わせを挙げることができる。
前記切断受容体は、典型的には、全長受容体の断片であり、細胞内ドメイン(ICD)結合領域を全長受容体と共有する。所定の実施形態では、全長受容体は、細胞外ドメイン(ECD)結合領域、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメイン(ICD)結合領域を含む。いかなる特定の理論にもとらわれることなく、切断受容体は、全長受容体のECDのタンパク質分解プロセッシングによって、又は、膜貫通ドメインの前、内、又は後に位置するメチオニン残基からの翻訳の代替的開始により生じて、例えば、短縮ECDを有する切断受容体又は膜関連若しくは細胞質ICD断片を含む切断受容体を形成することができる。
所定の好ましい実施形態において、切断受容体はp95HER2であり、対応する全長受容体はHER2である。しかし当業者であれば、切断タンパク質を検出するための本明細書に記載した方法は、EGFR V111変異体(膠芽細胞腫、結腸直腸癌などに関係する)、他の切断受容体チロシンキナーゼ、カスパーゼなどを含むがそれらに限定されない多数の様々なタンパク質に適用できることを理解するであろう。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットの実施例12は、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットの単一検出マイクロアレイELISAを用いて細胞中のp95HER2などの切断受容体を検出するための、本発明のアッセイ方法の典型的な実施形態を提供している。
或る実施形態において、ECD結合領域に特異的な複数のビーズはストレプトアビジン−ビオチン対を含み、ここでストレプトアビジンはビーズに結合しており、ビオチンは抗体に結合している。所定の場合に、抗体は、全長受容体(例えば、全長HER2)のECD結合領域に特異的である。
或る実施形態において、各捕捉抗体の希釈系列は、一連の減少する捕捉抗体濃度を含む。所定の場合には、捕捉抗体を連続的に少なくとも2倍(例えば、2、5、10、20、50、100、500、又は1000倍)に希釈してアレイ上にスポットされる減少する捕捉抗体濃度の或るセット数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は25を超える)を含む希釈系列を生成する。好ましくは、それぞれの捕捉抗体希釈液を少なくとも2、3、4、5、又は6回反復してアレイ上にスポットする。
他の実施形態において、固体支持体は、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、繊維束、又は任意の他の適切な基材を含む。好ましい実施形態において、捕捉抗体は、例えば、Whatman社(ニュージャージー州フローラムパーク)から商業的に入手することができるFAST(商標)スライドなどの、ニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド上に(例えば、共有結合性又は非共有結合性相互作用によって)拘束される。
或る実施形態において、工程(c)においてHER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER1、HER2、HER3など)1種又は2種以上の活性化レベル(例えば、リン酸化)を決定は、以下の段階:
(i)細胞抽出物を捕捉抗体の希釈系列(例えば、HER2に特異的な捕捉抗体)とインキュベートして(例えば、接触させて)複数の捕捉された分析物(例えば、捕捉された受容体)を形成する段階であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている(例えば、そのことによって細胞抽出物中に存在する分析物を該分析物と捕捉抗体とを含む捕捉された分析物の複合体に変換する)段階;
(ii)前記複数の捕捉された分析物(例えば、捕捉された受容体)を、対応する分析物に特異的な活性化状態非依存性抗体(例えば、HER2に特異的な活性化状態非依存性抗体)及び対応する分析物に特異的な活性化状態依存性抗体(例えば、HER2に特異的な活性化状態依存性抗体)を含む検出抗体とインキュベートして(例えば、接触させて)、複数の検出可能な捕捉された分析物(例えば、検出可能な捕捉された受容体)を形成する(例えば、捕捉された分析物の複合体を、捕捉された分析物及び検出抗体を含む検出可能な捕捉された分析物の複合体に変換する)段階であって、
前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分が前記シグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する段階;
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物(例えば、検出可能な捕捉された受容体)を前記シグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして(例えば、接触させて)増幅シグナルを生成する段階;及び
(iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する段階;を含む。
所定の他の実施形態において、工程(c)においてHER2シグナル伝達経路の切断受容体(例えば、p95HER2)1種又は2種以上の活性化レベル(例えば、リン酸化)を決定は、以下の段階:
(i)細胞抽出物を、全長受容体(例えば、全長HER2)の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートする(例えば、接触させる)段階;
(ii)前記細胞抽出物から前記複数のビーズを除去し、それによって前記全長受容体(例えば、全長HER2)を除去して、該全長受容体(例えば、全長HER2)を含まない細胞抽出物を形成する(例えば、前記細胞抽出物を、特異的な全長受容体又は全長受容体のファミリーを含まない細胞抽出物に変換する)段階;
(iii)前記全長受容体(例えば、全長HER2)を含まない細胞抽出物を前記全長受容体(例えば、全長HER2)の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な複数の捕捉抗体とインキュベートして(例えば、接触させて)複数の捕捉された切断受容体を形成する段階であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている(例えば、そのことによって全長受容体枯渇細胞抽出物中に存在する前記切断受容体を切断受容体と捕捉抗体との複合体に変換する)段階;
(iv)前記複数の捕捉された切断受容体を、前記全長受容体(例えば、全長HER2)のICD結合領域に特異的な活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして(例えば、接触させて)、複数の検出可能な捕捉された切断受容体を形成する(例えば、捕捉された切断受容体の前記複合体を、前記捕捉された切断受容体及び検出抗体を含む検出可能な捕捉された切断受容体の複合体に変換する)段階であって、
前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分がシグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する段階;
(v)前記複数の検出可能な捕捉された切断受容体を、前記シグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして(例えば、接触させて)、増幅シグナルを生成する段階;及び
(vi)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する段階;を含む。
活性化状態非依存性抗体は、促進成分を用いて直接的に標識化することができ、又は促進成分を用いて、例えば、該活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドと該促進成分にコンジュゲートされた相補的オリゴヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションによって、間接的に標識化することができる。同様に、活性化状態依存性抗体は、シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて直接的に標識化することができ、又はシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて、例えば、該活性化状態依存性抗体にコンジュゲートされた結合対の第1のメンバーと該シグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされた結合対の第2のメンバーとの間の結合によって、間接的に標識化することができる。所定の場合に、結合対の第1のメンバーはビオチンであり、結合対の第2のメンバーはストレプトアビジン又はニュートラビジンなどのアビジンである。
或る実施形態において、促進成分は、例えば、グルコースオキシダーゼであることができる。所定の場合には、グルコースオキシダーゼ及び活性化状態非依存性抗体を、例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットの実施例16〜17に記載したように、スルフヒドリル活性化デキストラン分子にコンジュゲートさせることができる。スルフヒドリル活性化デキストラン分子は、典型的には、約500kDa(例えば、約250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、又は750kDa)の分子量を有する。他の実施形態では、酸化剤は、例えば、過酸化水素(H)であることができる。さらに他の実施形態では、シグナル増幅対の第1のメンバーは、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼであることができる。更なる実施形態では、シグナル増幅対の第2のメンバーは、例えば、チラミド試薬(例えば、ビオチン−チラミド)であることができる。好ましくは、増幅シグナルは、活性化チラミドを生成する(例えば、ビオチン−チラミドを活性化チラミドに変換する)ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって生成される。活性化チラミドは、直接的に検出することができるか、又は、例えば、シグナル検出性試薬の添加により間接的に検出することができる。シグナル検出性試薬の限定的でない例として、ストレプトアビジン標識化フルオロフォア、及びストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)などの発色試薬との組み合わせを挙げることができる。
所定の場合には、西洋ワサビペルオキシダーゼ及び活性化状態依存性抗体は、スルフヒドリル活性化デキストラン分子にコンジュゲートさせることができる。スルフヒドリル活性化デキストラン分子は、典型的には、約70kDa(例えば、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100kDa)の分子量を有している。
切断受容体は、典型的には全長受容体の断片であり、細胞内ドメイン(ICD)結合領域を全長受容体と共有する。所定の実施形態では、全長受容体は、細胞外ドメイン(ECD)結合領域、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメイン(ICD)結合領域を含む。いかなる特定の理論にもとらわれることなく、切断受容体は、全長受容体のECDのタンパク質分解プロセッシングによって、又は、膜貫通ドメインの前、内、又は後に位置するメチオニン残基からの翻訳の代替的開始により生じて、例えば、短縮ECDを有する切断受容体又は膜関連若しくは細胞質ICD断片を含む切断受容体を形成することができる。
所定の好ましい実施形態において、切断受容体はp95HER2であり、対応する全長受容体はHER2である。しかしながら、当業者であれば、切断タンパク質を検出するための本明細書に記載した方法は、EGFR V111変異体(膠芽細胞腫、結腸直腸癌などに関係する)、他の切断受容体チロシンキナーゼ、カスパーゼなどを含むがそれらに限定されない多数の様々なタンパク質に適用できることを理解するであろう。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットの実施例12は、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットの近接二重検出マイクロアレイELISAを用いて細胞中のp95HER2などの切断受容体を検出するための、本発明のアッセイ方法の典型的な実施形態を提供している。
或る実施形態において、ECD結合領域に特異的な複数のビーズはストレプトアビジン−ビオチン対を含み、ここでストレプトアビジンはビーズに結合しており、ビオチンは抗体に結合している。所定の場合には、抗体は、全長受容体(例えば、全長HER2)のECD結合領域に特異的である。
或る実施形態において、各捕捉抗体の希釈系列は、一連の減少する捕捉抗体濃度を含む。所定の場合には、捕捉抗体を連続的に少なくとも2倍(例えば、2、5、10、20、50、100、500、又は1000倍)に希釈してアレイ上にスポットされる減少する捕捉抗体濃度の或るセット数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は25を超える)を含む希釈系列を生成する。好ましくは、それぞれの捕捉抗体希釈液を少なくとも2、3、4、5、又は6回反復してアレイ上にスポットする。
他の実施形態において、固体支持体は、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、繊維束、又は任意の他の適切な基材を含む。好ましい実施形態において、捕捉抗体は、例えば、Whatman社(ニュージャージー州フローラムパーク)から商業的に入手することができるFAST(商標)スライドなどの、ニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド上に(例えば、共有結合性又は非共有結合性相互作用によって)拘束される。
別の側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する腫瘍の応答を予測する方法であって:
(a)腫瘍から得られた細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルをHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(c)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルとHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記腫瘍が前記化合物に応答する可能性を有する又は有しない(例えば、前記腫瘍が前記化合物に対する応答の増加の又は減少の可能性を有する)ことを示す、方法を提供する。
好ましい側面において、本発明は、HER2活性を調節する化合物に対する腫瘍の応答を予測する方法であって:
(a)腫瘍から得られた細胞を前記化合物と接触させる工程;
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたHER2又はp95HER2の活性化レベルをHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較する工程、を含み、
HER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在が、前記腫瘍が前記化合物に応答する可能性を有しない(例えば、前記腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す、方法を提供する。
HER2活性を調節する化合物の限定的でない例として、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2活性を阻害し及び/又はHER2シグナル伝達をブロックし、例えば、HER2阻害剤である。HER2阻害剤の例として、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))及びペルツズマブ(2C4);小分子チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ピリチニブ、CP−654577、CP−724714、カネルチニブ(CI 1033)、HKI−272、ラパチニブ(GW−572016;Tykerb(商標))、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW 2992、ARRY−334543、JNJ−26483327、及びJNJ−26483327;並びにそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。他の実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2経路を活性化し、例えば、HER2活性化剤である。
或る実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いて処理される前記化合物に感受性の細胞(例えば、Herceptin(商標)感受性細胞)から得られる。或る実施形態において、前記化合物に感受性の細胞(すなわち、化合物感受性細胞)は、BT−474細胞、SKBR3細胞、NH27細胞、MDA−MB−361細胞、UACC−812細胞、UACC−893細胞、MDA−MB−175細胞、SUM190細胞、SUM225細胞、N87細胞、OE19細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。或る場合に、存在する細胞又は細胞系(例えば、化合物耐性細胞又は細胞系)から化合物感受性細胞を遺伝子組み換えして前記化合物に感受性である細胞又は細胞系を形成する(例えば、前記細胞又は細胞系において前記化合物により調節されるHER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2)を発現させることによる)。好ましくは、化合物感受性細胞は、BT−474細胞などのHerceptin(商標)感受性細胞である。
他の実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いて処理される前記化合物に耐性の細胞(例えば、Herceptin(商標)耐性細胞)から得られる。或る実施形態において、前記化合物に耐性である細胞(すなわち、化合物耐性細胞)は、BT/R細胞、MDA−MB−231細胞、SKBR3/IGF−1R細胞、JIMT−1細胞、BT−474/HR20細胞、SKBR3/P2細胞、NH29細胞、NH47細胞、MCF−7細胞、MCF−7/713細胞、MCF−7/HER2Δ16細胞、ZR−75−1細胞、BT20細胞、MDA−MB−435細胞、T47D細胞、MDA−MB−453細胞、MDA−MB−468細胞、CAMA1細胞、MDA−MB−157細胞、EFM192A細胞、KPL1細胞、EFM19細胞、CAL51細胞、NUGC3細胞、NUGC4細胞、FU97細胞、SNU16細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。或る場合に、存在する細胞又は細胞系(例えば、化合物感受性細胞又は細胞系)から化合物耐性細胞を遺伝子組み換えして前記化合物に耐性である細胞又は細胞系を形成する(例えば、前記細胞又は細胞系において前記化合物により調節されるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2)をノックアウトすることによる)。好ましくは、化合物耐性細胞は、BT/R細胞などのHerceptin(商標)耐性細胞である。
更なる実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いた処理がされてない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)から得られる。特定の実施形態において、前記化合物を用いた処理がされていない細胞は、細胞抽出物を生成するために用いられる単離細胞(例えば、調査すべき被検細胞)が得られる試料と同じ試料から得られる。
所定の実施形態において、発現又は活性化レベルが、前記化合物を用いて処理された化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中の、前記化合物を用いて処理された化合物耐性細胞(例えば、BT/R細胞)中の、又は前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中の、対応するHER2シグナル伝達経路成分の参照の発現又は活性化レベルより少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は100倍高い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20、又は5〜50倍高い)場合に、HER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)のより高い発現又は活性化レベルが細胞抽出物中に存在していると考えられる。
他の実施形態において、発現又は活性化レベルが、前記化合物を用いて処理された化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中の、前記化合物を用いて処理された化合物耐性細胞(例えば、BT/R細胞)中の、又は前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中の、対応するHER2シグナル伝達経路成分の参照の発現又は活性化レベルより少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は100倍低い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20、又は5〜50倍低い)場合に、HER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)のより低い発現又は活性化レベルが細胞抽出物中に存在していると考えられる。
或る実施形態において、化合物感受性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に応答する可能性を有しない(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す。他の実施形態では、化合物感受性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に応答する可能性を有する(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の増加の可能性を有する)ことを示す。1つの実施形態において、細胞抽出物中のHER2活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のHER2の参照の活性化レベルより少なくとも2〜3倍高い。別の実施形態において、細胞抽出物中のp95HER2活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のp95HER2の参照の活性化レベルより少なくとも5倍高い。
或る実施形態において、化合物耐性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に応答する可能性を有する(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の増加の可能性を有する)ことを示す。他の実施形態では、化合物耐性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有しない(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す。
或る実施形態において、前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、該腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有する(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の増加の可能性を有する)ことを示す。他の実施形態では、前記化合物を用いた処理がされていない細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有しない(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す。
或る実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中のHER2及びp95HER2の両方の活性化レベルを決定する工程を含む。特定の実施形態において、HER2又はp95HER2の活性化レベルはHER2又はp95HER2のリン酸化レベルを含む。
或る他の実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中の追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程をさらに含む。追加のシグナル伝達分子の限定的でない例として、EGFR(HER1)、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、SHC、IGF−1R、c−MET、c−KIT、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、受容体二量体(例えば、p95HER2/HER3ヘテロ二量体、HER2/HER2ホモ二量体、HER2/HER3ヘテロ二量体、HER1/HER2ヘテロ二量体、及び/又はHER2/HER3ヘテロ二量体)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実施形態では、前記追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルはこのような分子のリン酸化レベルを含む。更なる実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中のHER3、PI3K、及び/又はp95HER2/HER3へテロ二量体1種又は2種以上とともにHER2及び/又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程を含む。
或る実施形態において、本発明の方法はさらに又は代わりに、HER3、PI3K、及び/又はp95HER2/HER3へテロ二量体1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程を含む。所定の場合には、化合物感受性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有しない(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す。他の場合には、化合物感受性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有する(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の増加の可能性を有する)ことを示す。1つの実施形態において、細胞抽出物中のHER3の活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のHER3の参照の活性化レベルより少なくとも2〜3倍高い。
所定の場合には、化合物耐性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有する(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の増加の可能性を有する)ことを示す。他の場合には、化合物耐性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有しない(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す。
或る場合に、前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有する(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の増加の可能性を有する)ことを示す。他の場合には、前記化合物を用いた処理がされていない細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、腫瘍(例えば、乳房腫瘍又は胃腫瘍)が前記化合物に対して応答する可能性を有しない(例えば、腫瘍が前記化合物に対する応答の減少の可能性を有する)ことを示す。
或る実施形態において、細胞(例えば、細胞抽出物が生成される被検細胞)は、乳癌細胞、胃癌細胞、及び/又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞である。所定の場合には、前記腫瘍細胞は、腫瘍から得られた微細針吸引液(FNA)細胞又は循環腫瘍細胞である。他の実施形態では、細胞(例えば、細胞抽出物が生成される被検細胞)は、例えば、乳癌又は胃癌患者から、得られる試料から単離される。限定的でない試料の例として、例えば、全血、血清、血漿、乳管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液、骨髄吸引液、尿、唾液、及び/又は微細針吸引液(FNA)試料などの体液試料を挙げることができる。特定の実施形態では、試料は全血、血清、血漿、及び/又は乳房若しくは胃腫瘍組織又はHER2発現性腫瘍組織などの腫瘍組織試料を含む。
所定の場合に、本発明の方法は、読み取り可能なフォーマットでユーザー(例えば、腫瘍医又は一般開業医などの医師)に工程(d)で得られた比較の結果を提供する工程(e)をさらに含んでいることができる。或る場合には、本発明の方法は、工程(d)で得られた比較の結果を医師、例えば、腫瘍医又は一般開業医に送り又は報告する工程をさらに含んでいることができる。他の場合に、本発明の方法は、コンピュータデータベースに又は、例えば、研究室で、情報を保存するための他の適切な機械若しくはデバイスに工程(d)で得られた比較の結果を記録又は保存する工程をさらに含んでいることができる。
或る実施形態において、工程(c)においてHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、及び/又はSHC)1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程は、検出すべきHER2シグナル伝達経路の各成分のリン酸化形に特異的な抗体を用いて細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路成分1種又は2種以上のリン酸化レベルを検出することを含む。
活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態は様々な技術のいずれかを用いて決定することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載のように単一の検出アッセイすなわち近接二重検出アッセイ(例えば、協調的近接イムノアッセイ(COPIA))などのイムノアッセイを用いて、工程(c)におけるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、及び/又はSHC)1種又は2種以上の活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態を検出する。
なお別の側面において、本発明は、腫瘍を有しかつHER2活性を調節する化合物を用いた療法を受ける被験者における、該化合物を用いた療法に対する応答を監視する方法であって、
(a)腫瘍から得られた細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(b)前記細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベルを決定する工程;及び
(c)工程(b)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルをHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(b)で決定されたHER2シグナル伝達経路の成分1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルとHER2シグナル伝達経路の該成分1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記化合物を用いた療法を継続すべきか又は調整すべきか(例えば、化合物の現在の用量を維持する、化合物の今後の用量を変更する、又は代わりの抗癌剤を選択する)を示す、方法を提供する。
好ましい側面において、本発明は、腫瘍を有しかつHER2活性を調節する化合物を用いた療法を受ける被験者における、該化合物を用いた療法に対する応答を監視する方法であって、
(a)腫瘍から得られた細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(b)前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程;及び
(c)工程(b)で決定されたHER2又はp95HER2の活性化レベルをHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較する工程;を含み、
HER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在が、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、化合物の今後の用量を変更する又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す、方法を提供する。
HER2活性を調節する化合物の限定的でない例として、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2活性を阻害し及び/又はHER2シグナル伝達をブロックし、例えば、HER2阻害剤である。HER2阻害剤の例として、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))及びペルツズマブ(2C4);小分子チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ピリチニブ、CP−654577、CP−724714、カネルチニブ(CI 1033)、HKI−272、ラパチニブ(GW−572016;Tykerb(商標))、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW 2992、ARRY−334543、JNJ−26483327、及びJNJ−26483327;及びそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。他の実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2経路を活性化し、例えば、HER2活性化剤である。
或る実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いて処理される前記化合物に感受性の細胞(例えば、Herceptin(商標)感受性細胞)から得られる。或る実施形態において、前記化合物に感受性の細胞(すなわち、化合物感受性細胞)は、BT−474細胞、SKBR3細胞、NH27細胞、MDA−MB−361細胞、UACC−812細胞、UACC−893細胞、MDA−MB−175細胞、SUM190細胞、SUM225細胞、N87細胞、OE19細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。或る場合に、存在する細胞又は細胞系(例えば、化合物耐性細胞又は細胞系)から化合物感受性細胞を遺伝子組み換えして前記化合物に感受性である細胞又は細胞系を形成する(例えば、前記細胞又は細胞系において前記化合物により調節されるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2)を発現させることによる)。好ましくは、化合物感受性細胞は、BT−474細胞などのHerceptin(商標)感受性細胞である。
他の実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いて処理される前記化合物に耐性の細胞(例えば、Herceptin(商標)耐性細胞)から得られる。或る実施形態において、前記化合物に耐性である細胞(すなわち、化合物耐性細胞)は、BT/R細胞、MDA−MB−231細胞、SKBR3/IGF−1R細胞、JIMT−1細胞、BT−474/HR20細胞、SKBR3/P2細胞、NH29細胞、NH47細胞、MCF−7細胞、MCF−7/713細胞、MCF−7/HER2Δ16細胞、ZR−75−1細胞、BT20細胞、MDA−MB−435細胞、T47D細胞、MDA−MB−453細胞、MDA−MB−468細胞、CAMA1細胞、MDA−MB−157細胞、EFM192A細胞、KPL1細胞、EFM19細胞、CAL51細胞、NUGC3細胞、NUGC4細胞、FU97細胞、SNU16細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。或る場合に、存在する細胞又は細胞系(例えば、化合物感受性細胞又は細胞系)から化合物耐性細胞を遺伝子組み換えして前記化合物に耐性である細胞又は細胞系を形成する(例えば、前記細胞又は細胞系において前記化合物により調節されるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2)をノックアウトすることによる)。好ましくは、化合物耐性細胞は、BT/R細胞などのHerceptin(商標)耐性細胞である。
更なる実施形態において、HER2シグナル伝達経路の成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)1種又は2種以上の参照の発現又は活性化レベルは、前記化合物(例えば、Herceptin(商標))を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)から得られる。特定の実施形態において、前記化合物を用いた処理がされていない細胞は、細胞抽出物を生成するために用いられる単離細胞(例えば、調査すべき被検細胞)が得られる試料と同じ試料から得られる。
或る実施形態において、発現又は活性化レベルが、前記化合物を用いて処理された化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中の、前記化合物を用いて処理された化合物耐性細胞(例えば、BT/R細胞)中の、又は前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中の、対応するHER2シグナル伝達経路成分の参照の発現又は活性化レベルより少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は100倍高い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20、又は5〜50倍高い)場合に、HER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)のより高い発現又は活性化レベルが細胞抽出物中に存在していると考えられる。
他の実施形態において、発現又は活性化レベルが、前記化合物を用いて処理された化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中の、前記化合物を用いて処理された化合物耐性細胞(例えば、BT/R細胞)中の、又は前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中の、対応するHER2シグナル伝達経路成分の参照の発現又は活性化レベルより少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は100倍低い(例えば、約1.5〜3、2〜3、2〜4、2〜5、2〜10、2〜20、2〜50、3〜5、3〜10、3〜20、3〜50、4〜5、4〜10、4〜20、4〜50、5〜10、5〜15、5〜20、又は5〜50倍低い)場合に、HER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、SHCなど)のより低い発現又は活性化レベルが細胞抽出物中に存在していると考えられる。
或る実施形態において、化合物感受性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、今後の用量を増加又は減少させることによって前記化合物の今後の用量を変更し又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す。他の実施形態では、化合物感受性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を継続すべきである(例えば、化合物の現在の用量を維持する)ことを示す。1つの実施形態において、細胞抽出物中のHER2活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のHER2の参照の活性化レベルより少なくとも2〜3倍高い。別の実施形態において、細胞抽出物中のp95HER2活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のp95HER2の参照の活性化レベルより少なくとも5倍高い。
或る実施形態において、化合物耐性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2の活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を継続すべきである(例えば、化合物の現在の用量を維持する)ことを示す。他の実施形態では、化合物耐性細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、今後の用量を増加又は減少させることによって前記化合物の今後の用量を変更し又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す。
或る実施形態において、前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を継続すべきである(例えば、化合物の現在の用量を維持する)ことを示す。他の実施形態では、前記化合物を用いた処理がされていない細胞中のHER2又はp95HER2の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER2又はp95HER2活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、今後の用量を増加又は減少させることによって前記化合物の今後の用量を変更し又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す。
或る実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中のHER2及びp95HER2の両方の活性化レベルを決定する工程を含む。特定の実施形態において、HER2又はp95HER2の活性化レベルはHER2又はp95HER2のリン酸化レベルを含む。
或る他の実施形態において、本発明の方法はさらに、細胞抽出物中の追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程を含む。追加のシグナル伝達分子の限定的でない例として、EGFR(HER1)、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、SHC、IGF−1R、c−MET、c−KIT、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、受容体二量体(例えば、p95HER2/HER3ヘテロ二量体、HER2/HER2ホモ二量体、HER2/HER3ヘテロ二量体、HER1/HER2ヘテロ二量体、及び/又はHER2/HER3ヘテロ二量体)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実施形態では、前記追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルはこのような分子のリン酸化レベルを含む。更なる実施形態において、本発明の方法は、細胞抽出物中のHER3、PI3K、及び/又はp95HER2/HER3へテロ二量体1種又は2種以上とともにHER2及び/又はp95HER2の活性化レベルを決定する工程を含む。
或る実施形態において、本発明の方法はさらに又は代わりに、HER3、PI3K、及び/又はp95HER2/HER3へテロ二量体1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程を含む。所定の場合には、化合物感受性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、今後の用量を増加又は減少させることによって前記化合物の今後の用量を変更し又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す。他の場合には、化合物感受性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を継続すべきである(例えば、化合物の現在の用量を維持する)ことを示す。1つの実施形態において、細胞抽出物中のHER3の活性化レベルは、化合物感受性細胞(例えば、BT−474細胞)中のHER3の参照の活性化レベルより少なくとも2〜3倍高い。
所定の場合には、化合物耐性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を継続すべきである(例えば、化合物の現在の用量を維持する)ことを示す。他の場合には、化合物耐性細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、今後の用量を増加又は減少させることによって前記化合物の今後の用量を変更し又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す。
或る場合に、前記化合物を用いた処理がされていない細胞(例えば、患者試料から得られた乳癌細胞、胃癌細胞、又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞)中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較してより低い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を継続すべきである(例えば、化合物の現在の用量を維持する)ことを示す。他の場合には、前記化合物を用いた処理がされていない細胞中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の参照の活性化レベルと比較して同程度の又はより高い細胞抽出物中のHER3、PI3K、又はp95HER2/HER3へテロ二量体の活性化レベルの存在は、前記化合物を用いた療法を調整すべきである(例えば、今後の用量を増加又は減少させることによって前記化合物の今後の用量を変更し又は代わりの抗癌剤を選択する)ことを示す。
或る実施形態において、細胞(細胞抽出物が生成される被検細胞)は、乳癌細胞、胃癌細胞、及び/又はHER2発現性腫瘍細胞などの腫瘍細胞である。所定の場合には、前記腫瘍細胞は、腫瘍から得られた微細針吸引液(FNA)細胞又は循環腫瘍細胞である。他の実施形態において、細胞(細胞抽出物が生成される被検細胞)は、例えば、乳癌又は胃癌患者から得られる試料から単離される。限定的でない試料の例として、例えば、全血、血清、血漿、乳管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液、骨髄吸引液、尿、唾液、及び/又は微細針吸引液(FNA)試料などの体液試料を挙げることができる。特定の実施形態において、試料は全血、血清、血漿、及び/又は乳房若しくは胃腫瘍組織又はHER2発現性腫瘍組織などの腫瘍組織試料を含む。
所定の場合には、本発明の方法は、読み取り可能なフォーマットでユーザー(例えば、腫瘍医又は一般開業医などの医師)に工程(c)で得られた比較の結果を提供する工程(d)をさらに含んでいることができる。或る場合に、本発明の方法は、工程(c)で得られた比較の結果を医師、例えば、腫瘍医又は一般開業医に送り又は報告する工程をさらに含んでいることができる。他の場合には、本発明の方法は、コンピュータデータベースに又は、例えば、研究室で、情報を保存するための他の適切な機械若しくはデバイスに工程(c)で得られた比較の結果を記録又は保存する工程をさらに含んでいることができる。
或る実施形態において、工程(b)においてHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、及び/又はSHC)1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程は、検出すべきHER2シグナル伝達経路の各成分のリン酸化形に特異的な抗体を用いて細胞抽出物中のHER2シグナル伝達経路成分1種又は2種以上のリン酸化レベルを検出する工程を含む。
活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態は様々な技術のいずれかを用いて決定することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載のように単一の検出アッセイすなわち近接二重検出アッセイ(例えば、協調的近接イムノアッセイ(COPIA))などのイムノアッセイを用いて、工程(b)におけるHER2シグナル伝達経路成分(例えば、HER2、p95HER2、HER3、PI3K、p95HER2/HER3、HER1、及び/又はSHC)1種又は2種以上の活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態を検出する。
更なる側面において、本発明は、初期HER2陰性の原発性乳房腫瘍を有する被験者のHER2状態を監視する方法であって、
循環細胞中の活性化HER2の存在を検出することによって被験者から得られた固形腫瘍の循環細胞のHER2状態を決定する工程を含み、前記循環細胞中の活性化HER2の存在が被験者のHER2陰性状態からHER2陽性状態への転換を示す、方法を提供する。
1つの実施形態において、被験者(例えば、ヒト)は転移性乳癌を有する。別の実施形態において、固体腫瘍の循環細胞は、循環腫瘍細胞、循環内皮細胞、循環内皮前駆細胞、癌幹細胞、播種性腫瘍細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。更なる実施形態において、循環細胞のHER2状態を決定する前に原発性乳房腫瘍のHER2状態を決定する。
所定の実施形態において、循環細胞中の活性化HER2の存在は、HER2活性を調節する化合物を用いた処理に対する被験者の応答と関連付けられる。HER2活性を調節する化合物の限定的でない例として、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2活性を阻害し及び/又はHER2シグナル伝達をブロックし、例えば、HER2阻害剤である。HER2阻害剤の例として、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))及びペルツズマブ(2C4);小分子チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ピリチニブ、CP−654577、CP−724714、カネルチニブ(CI 1033)、HKI−272、ラパチニブ(GW−572016;Tykerb(商標))、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW 2992、ARRY−334543、JNJ−26483327、及びJNJ−26483327;並びにそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。他の実施形態において、HER2調節性化合物は、HER2経路を活性化し、例えば、HER2活性化剤である。
或る実施形態において、本発明の方法は、乳癌腫瘍の細胞が単離される乳房腫瘍を有する被験者から試料を得る工程をさらに含んでいることができる。試料は、HER2調節性化合物を用いた処理の前に及び/又はHER2調節性化合物の投与後に(例えば、癌治療過程の全期間を通じて任意のときに)乳癌被験者から得ることができる。適切な試料として、全血、血清、血漿、及びそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。1つの好ましい実施形態において、試料は全血試料である。この実施形態において、全血試料から乳房腫瘍の循環細胞を単離することができる。HER2調節性化合物を用いた処理を受けなかった被験者から単離細胞を得る場合、適当な条件下にインビトロで該単離細胞をHER2調節性化合物の1つ又は混合物(cocktail)とインキュベートすることができる。
当分野で公知の任意の技術によって、例えば、免疫磁気分離法、CellTracks(商標)System、マイクロ流体分離法、FACS、密度勾配遠心分離法、及び枯渇法によって、試料から乳房腫瘍の循環細胞を単離することができる。循環細胞などの単離細胞を溶解させ、それによって当分野で公知の任意の技術により単離細胞を細胞抽出物に変換することができる。
他の実施形態において、本発明の方法は、固形腫瘍の循環細胞中の(例えば、循環細胞の溶解から生成された細胞抽出物中の)追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の状態(例えば、活性化レベル又は状態)を決定する工程をさらに含む。追加のシグナル伝達分子の限定的でない例として、HER2シグナル伝達経路の成分、例えば、p95HER2、EGFR(HER1)、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、SHC、IGF−1R、c−MET、c−KIT、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、受容体二量体(例えば、p95HER2/HER3へテロ二量体、HER2/HER2ホモ二量体、HER2/HER3へテロ二量体、HER1/HER2へテロ二量体、及び/又はHER2/HER3へテロ二量体)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実施形態において、HER2及び/又は追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルはこのような分子のリン酸化レベルを含む。
活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態は様々な技術のいずれかを用いて決定することができる。或る実施形態において、固形腫瘍の循環細胞中のHER2の活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態は本明細書に記載のように単一の検出アッセイすなわち近接二重検出アッセイ(例えば、協調的近接イムノアッセイ(COPIA))などのイムノアッセイを用いて検出される。
特定の実施形態において、活性化HER2の存在は、以下の工程:
(i)循環細胞の細胞抽出物を希釈系列のHER2に特異的な捕捉抗体とインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている工程;
(ii)前記複数の捕捉された分析物をHER2に特異的な活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程であって、
前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分が前記シグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する工程;
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を前記シグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして増幅シグナルを生成する工程;及び
(iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する工程;を含むイムノアッセイを用いて検出される。
所定の場合には、本発明の方法は、読み取り可能なフォーマットでユーザー(例えば、腫瘍医又は一般開業医などの医師)にHER2状態決定の結果を提供する工程をさらに含んでいることができる。或る場合に、本発明の方法は、HER2状態決定の結果を医師、例えば、腫瘍医又は一般開業医に送り又は報告する工程をさらに含んでいることができる。他の場合には、本発明の方法は、コンピュータデータベースに又は、例えば、研究室で、情報を保存するための他の適切な機械若しくはデバイスにHER2状態決定の結果を記録又は保存する工程をさらに含んでいることができる。
追加的な側面において、本発明は、乳房腫瘍の治療に適した抗癌剤を選択する方法であって:
(a)腫瘍の微細針吸引液(FNA)試料から得られた細胞を抗癌剤と接触させる工程:
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のシグナル伝達分子1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたシグナル伝達分子1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルを該シグナル伝達分子1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
工程(c)で決定されたシグナル伝達分子1種又は2種以上の発現及び/又は活性化レベルと該シグナル伝達分子1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルとの差異が、前記抗癌剤が乳房腫瘍の治療に適しているか又は適していないかを示す、方法を提供する。
特定の実施形態において、乳房腫瘍の治療に適した抗癌剤を選択する方法は、
(a)腫瘍の微細針吸引液(FNA)試料から得られた細胞を抗癌剤と接触させる工程:
(b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記細胞抽出物中のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程;及び
(d)工程(c)で決定されたシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルを前記抗癌剤の非存在下に生成された該シグナル伝達分子1種又は2種以上の参照の発現及び/又は活性化レベルと比較する工程;を含み、
前記シグナル伝達分子1種又は2種以上の参照の活性化レベルと比較して実質的に低下した細胞抽出物中の該シグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルの存在は、前記抗癌剤が乳房腫瘍の治療に適していることを示す。
或る実施形態において、シグナル伝達分子の活性化レベルは、該シグナル伝達分子が抗癌剤の非存在下におけるより少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%低く活性化される場合に、抗癌剤の存在下で「実質的に低減」されると考えられる。他の実施形態において、(1)抗癌剤を用いない場合のシグナル伝達分子の高い又は強い活性化から抗癌剤を用いた場合のシグナル伝達分子の中間の、弱い、低い、又は極めて弱い活性化への変化がある場合に、又は(2)抗癌剤を用いない場合のシグナル伝達分子の中間の活性化から抗癌剤を用いた場合のシグナル伝達分子の弱い、低い、又は極めて弱い活性化への変化がある場合に、シグナル伝達分子の活性化レベルは抗癌剤の存在下で「実質的に低減」されると考えられる。
1つの実施形態において、FNA試料は転移性乳癌を有する被験者(例えば、ヒト)から得られる。別の実施形態において、本発明の方法は、抗癌剤が乳癌腫瘍の治療に適していると同定される場合に該乳癌剤を投与する工程をさらに含む。
或る実施形態において、抗癌剤は、癌細胞中の活性化されたシグナル伝達経路成分の機能を妨げる薬剤を含む。このような薬剤の限定的でない例として、以下の表1に列挙した薬剤を挙げることができる。
所定の実施形態において、抗癌剤は、抗シグナル伝達剤(すなわち、細胞増殖抑制薬)、例えば、モノクローナル抗体若しくはチロシンキナーゼ阻害剤;抗増殖剤;化学療法剤(すなわち、細胞毒性薬);ホルモン療法剤;放射線療法剤;ワクチン;及び/又は癌性細胞などの異常な細胞の制御されない増殖を低減又は阻害する能力を有する任意の他の化合物を含む。或る実施形態において、化学療法剤少なくとも1種と組み合わせた1種又は2種以上の抗シグナル伝達剤、抗増殖剤、及び/又はホルモン療法剤を用いて単離された細胞を処理する。
本発明において使用するのに適切な抗シグナル伝達剤の例として、限定的でなく、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))、ペルツズマブ(2C4)、アレムツズマブ(Campath(商標))、ベバシズマブ(Avastin(商標))、セツキシマブ(Erbitux(商標))、ゲムツズマブ(Mylotarg(商標))、パニツムマブ(Vectibix(商品名))、リツキシマブ(Rituxan(商標))、及びトシツモマブ(BEXXAR(商標));チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、スニチニブ(Sutent(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ラパチニブ(GW−572016;Tykerb(商標))、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006;Nexavar(商標))、イマチニブメシレート(Gleevec(商標))、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ZACTIMA(商品名);ZD6474)、ピリチニブ、CP−654577、CP−724714、HKI−272、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW 2992、ARRY−334543、JNJ−26483327、及びJNJ−26483327;並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
典型的な抗増殖剤として、mTOR阻害剤、例えば、シロリムス(ラパマイシン)、テムシロリムス(CCI−779)、及びエベロリムス(RAD001);AKT阻害剤、例えば、1L6−ヒドロキシメチル−chiro−イノシトール−2−(R)−2−O−メチル−3−O−オクタデシル−sn−グリセロカーボネート、9−メトキシ−2−メチルエリプチシニウムアセテート、1,3−ジヒドロ−1−(1−((4−(6−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−g]キノキサリン−7−イル)フェニル)メチル)−4−ピペリジニル)−2H−ベンズイミダゾール−2−オン、10−(4’−(N−ジエチルアミノ)ブチル)−2−クロロフェノキサジン、3−ホルミルクロモンチオセミカルバゾン(Cu(II)Cl複合体)、API−2、プロトオンコジーンTCL1のアミノ酸10〜24に由来する15−merペプチド(Hiromura et al., J. Biol. Chem., 279:53407-53418 (2004)、KP372−1、及びKozikowski et al., J. Am. Chem. Soc., 125:1144-1145 (2003)及びKau et al., Cancer Cell, 4:463-476 (2003)に記載の化合物;並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
化学療法剤の限定的でない例として、白金に基づく薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、サトラプラチンなど)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアなど)、代謝拮抗薬(例えば、5−フルオロウラシル、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ロイコボリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、ペメトレキセド(ALIMTA(商標))、ラルチトレキセドなど)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル(Taxol(商標))、ドセタキセル(Taxotere(商標))など)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、エトポシドホスフェート、テニポシドなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシンなど)、それらの薬学的に許容することのできる塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
ホルモン療法剤の例として、限定的でなく、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール(Arimidex(商標))、レトロゾール(Femara(商標))、ボロゾール、エキセメスタン(Aromasin(商標))、4−アンドロステン−3,6,17−トリオン(6−OXO)、1,4,6−アンドロスタトリエン−3,17−ジオン(ATD)、フォルメスタン(Lentaron(商標))など)、選択的エストロゲン受容体調節剤(例えば、バゼドキシフェン、クロミフェン、フルベストラント、ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェンなど)、ステロイド剤(例えば、デキサメタゾン)、フィナステリド、及びゴセレリンなどのゴナドトロピン放出性ホルモンアゴニスト(GnRH)、それらの薬学的に許容することのできる塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
本発明において有用な癌ワクチンの限定的でない例として、Active Biotech社からのANYARA、Northwest Biotherapeutics社からのDCVax−LB、IDM Pharma社からのEP−2101、Pharmexa社からのGV1001、Idera Pharmaceuticals社からのIO−2055、Introgen Therapeutics社からのINGN225及びBiomira/Merck社からのStimuvaxを挙げることができる。
放射線療法剤の例として、限定的でなく、腫瘍抗原に向けられた抗体に場合によりコンジュゲートされていることがある、例えば47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、及び212Biなどの放射性核種を挙げることができる。
本発明を用いて調査することができるシグナル伝達分子及び経路の限定的でない例として表2に示すものを挙げることができる。
細胞抽出物中の調査することができるシグナル伝達分子の限定的でない例として、限定的でなく、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼシグナル伝達カスケード成分、核ホルモン受容体、核受容体コアクチベーター、核受容体リプレッサー、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。所定の場合に、複数のシグナル伝達分子は、EGFR(ErbB1)、HER2(ErbB2)、p95HER2、HER3(ErbB3)、HER4(ErbB4)、PI3K、SHC、Raf、SRC、MEK、NFkB−IkB、mTOR、PI3K、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、EPH−A、EPH−B、EPH−C、EPH−D、c−MET、FGFR、c−KIT、FLT−3、TIE−1、TIE−2、c−FMS、PDGFRA、PDGFRB、Abl、FTL3、RET、HGFR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、IGF−1R、ER、PR、NCOR、AIB1、AKT、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、PDK2、PTEN、SGK3、4E−BP1、P70S6K、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1など)、受容体二量体、GSK−3β、PIP2、PIP3、p27、及びそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態において、シグナル伝達分子1種又は2種以上は、ErbB1/HER1、ErbB2/HER2、p95HER2、ErbB3/HER3、c−MET、IGF−1R、c−KIT、PI3K、SHC、VEGFR、又はそれらの組み合わせを含む。
全発現及び活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態は、様々な技術のいずれかを用いて決定することができる。所定の場合に、FNA試料中のシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)レベル及び/又は状態は、本明細書に記載のように単一の検出アッセイすなわち近接二重検出アッセイ(例えば、協調的近接イムノアッセイ(COPIA))などのイムノアッセイを用いて検出される。
特定の実施形態において、活性化されたシグナル伝達分子の存在は、以下の工程:
(i)FNA細胞の細胞抽出物を複数の希釈系列のシグナル伝達分子1種又は2種以上に特異的な捕捉抗体とインキュベートして複数の捕捉されたシグナル伝達分子を形成する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている工程;
(ii)前記複数の捕捉されたシグナル伝達分子を、対応するシグナル伝達分子に特異的な複数の活性化状態依存性抗体及び活性化状態非依存性抗体を含む複数の検出抗体とインキュベートして複数の検出可能な捕捉されたシグナル伝達分子を形成する工程であって、
前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分が前記シグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する工程;
(iii)前記複数の検出可能な捕捉されたシグナル伝達分子を前記シグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして増幅シグナルを生成する工程;及び
(iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する工程;を含むイムノアッセイを用いて検出される。
所定の場合に、本発明の方法は、読み取り可能なフォーマットでユーザー(例えば、腫瘍医又は一般開業医などの医師)に工程(d)で得られた比較の結果を提供する工程(e)をさらに含んでいることができる。或る場合に、本発明の方法は、工程(d)で得られた比較の結果を医師、例えば、腫瘍医又は一般開業医に送り又は報告する工程をさらに含んでいることができる。他の場合に、本発明の方法は、コンピュータデータベースに又は、例えば、研究室で、情報を保存するための他の適切な機械若しくはデバイスに工程(d)で得られた比較の結果を記録又は保存する工程をさらに含んでいることができる。
IV.乳癌
乳癌は、肺癌、胃癌、肝臓癌、及び結腸癌に続く、世界中の癌死亡の5番目に最も一般的な原因である。2005年には、乳癌のために世界中で502,000人が死亡した。世界中の女性の間で、乳癌は癌死亡の最も一般的な原因となっている。米国では、乳癌は、肺癌及び結腸癌に続く、癌死の3番目に最も一般的な原因である。2007年には、米国内で乳癌が原因で40,000人を超える人が亡くなっている。米国の女性の間で、乳癌は最も一般的な癌であり、癌死の2番目に最も一般的な原因である。実際に、米国の女性は8人に1人が生涯に浸潤性乳癌を発症する可能性がありそして33人に1人が乳癌により死亡する可能性がある。世界中の乳癌の症例数は1970年代以降に有意に増加してきており、一部には西洋世界における現代のライフスタイルに原因があるとされる現象である。乳房は男性及び女性において同一組織から構成されているので、あまり一般的ではないが、乳癌は男性においても発生する。
分類
乳癌は、各々、下記の基準に基づく4つの異なる分類スキームを用いて説明することができる:
1.病理学。病理学者は、その組織学的外観及び他の基準に基づいて各腫瘍を分類することができる。乳癌の最も一般的な病理学的タイプは、浸潤性乳管癌及び浸潤性小葉癌である。
2.腫瘍のグレード。組織学的グレードは、病理学者が顕微鏡下で決定することができる。高分化型(低グレード)の腫瘍は正常組織に似ている。低分化型(高グレード)の腫瘍は組織化されていない細胞から構成され、正常組織のようには見えない。中分化型(中グレード)腫瘍は、その中間のどこかにある。
3.タンパク質及び遺伝子発現の状態。乳癌は、例えば、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、及びHer2/Neu/ErbB2などのシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化について試験することができる。本明細書に記載したように、所定の腫瘍の発現のプロファイルはその予後診断の予測に役立ち、腫瘍医が最も適切な治療を選択する際の支援をする。
4.腫瘍のステージ。乳癌は、TNM分類方式に従ってステージ分けすることができる:
a.腫瘍。浸潤癌の存否、浸潤癌の寸法、及び乳房の外側の(例えば、乳房の皮膚又は下部の筋肉若しくは胸郭への)浸潤の存否に依存する5つの値(Tis、T1、T2、T3、又はT4)。
b.リンパ節。リンパ節内の転移性沈着物の数、大きさ、及び位置に依存する4つの値(N0、N1、N2、又はN3)。
c.転移。リンパ節以外の転移(例えば、骨、脳、肺などへのいわゆる遠隔転移)の存否に依存する2つの値(M0又はM1)。
病理学
病理学に関して、WHO(世界保健機関)の乳房腫瘍の分類は、以下の組織学的タイプを規定している:
1.浸潤性乳癌、例えば、浸潤性乳管癌(例えば、基底細胞様癌、混合型癌、多形癌、破骨巨細胞を有する癌、絨毛癌性の特徴を有する癌、黒色性の特徴を有する癌)、浸潤性小葉癌、管状腺癌、浸潤性篩状癌、髄様癌、粘液性癌、及び豊富なムチンを伴うその他の腫瘍(例えば、粘液性癌、嚢胞腺癌及び円柱細胞粘液性癌、印環細胞癌)、神経内分泌腫瘍(例えば、固形神経内分泌癌(乳房のカルチノイド)、非定型カルチノイド腫瘍、小細胞/燕麦細胞癌、大細胞神経内分泌癌)、浸潤性乳頭状癌、浸潤性微小乳頭状癌、アポクリン腺癌、化生性癌(例えば、混合上皮/間葉性化生性癌又は純粋上皮化生性癌、例えば、扁平上皮細胞癌、紡錘細胞化生を伴う腺癌、腺扁平上皮癌、及び粘液性類表皮癌)、脂質リッチ癌、分泌性乳癌、膨大細胞癌、腺様嚢胞癌、腺房細胞癌、グリコーゲンリッチ明細胞癌、皮脂腺癌、炎症性乳癌、及び両側乳癌;
2.前駆病変、例えば、小葉新生物(例えば、非浸潤性小葉癌)、乳管内増殖性病変(例えば、通常の乳管過形成、扁平上皮過形成、非定型乳管過形成、非浸潤性乳管癌)、微小浸潤癌、及び管内乳頭新生物(例えば、中枢性乳頭腫、末梢性乳頭腫、非定型乳頭腫、管内乳頭癌、嚢胞内乳頭癌、良性上皮性病変);
3.良性上皮性病変、例えば、変形(例えば、硬化性腺疾患、アポクリン腺疾患、閉塞性腺症、微小乳腺腺症、腺筋上皮性腺疾患)を含む腺疾患、放射状瘢痕/複合硬化性病変、及び腺腫(例えば、管状腺腫、乳汁分泌性腺腫、アポクリン腺腫、多形腺腫、管状腺腫);
4.筋上皮病変、例えば、筋上皮症、腺筋上皮腺症、腺筋上皮腫、及び悪性筋上皮腫;
5.間葉腫、例えば、肉腫、血管腫、血管腫症、血管周囲細胞腫、偽血管腫性間質過形成、筋繊維芽細胞腫、線維腫症(侵攻性)、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、脂肪腫(例えば、血管脂肪腫)、顆粒細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫、血管肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋腫、及び平滑筋肉腫;
6.線維上皮腫瘍、例えば、線維腺腫、葉状腫瘍(例えば、良性、境界型、悪性)、低グレード乳管周囲間質性肉腫、及び乳房過誤腫;
7.乳頭の腫瘍、例えば、乳頭腺腫、乳頭の汗管腺腫、及び乳頭のパジェット病;
8.悪性リンパ腫;
9.転移性腫瘍;並びに
10.男性乳房の腫瘍、例えば、女性化乳房及び非浸潤性又は浸潤性の癌。
乳管癌は、女性における乳癌の最も一般的なタイプであり、乳房の乳管内での癌細胞の発達を意味する。乳管癌は、2つの形態:浸潤性の悪性新生物である浸潤性乳管癌(IDC);及び非浸潤性新生物である非浸潤性乳管癌(DCIS)に分けられる。IDCは、浸潤性乳癌の中で最も一般的な形態である。IDCは、乳癌のあらゆるタイプの約80%を占める。マンモグラフィでは、IDCは、通常は辺縁から放射状に広がる微細なスパイクを有する塊として視認される。理学的検査では、通常この塊は、良性乳房病変よりはるかに硬く又は締まっているように感じられる。顕微鏡検査では、癌性細胞は、周囲の正常組織に浸潤して取って代わる。DCISは、女性における非浸潤性乳癌の中で最も一般的なタイプである。スクリーニング用マンモグラフィがより普及していくにつれて、DCISは、最も一般的に診断される乳房条件の1つとなってきた。DCISは、「ステージゼロ」乳癌と呼ばれることが多い。DCISは、通常はマンモグラムを通して微小石灰化として知られる極めて小さなカルシウム片として発見される。しかし、微小石灰化の全部が、生検によって確認されなければならないDCISの存在を示す訳ではない。DCISは、多病巣性であることがあり、治療は、クリアな周辺部を残して、異常な乳管要素全部を切除することを目指す。切除後、治療は局所放射線療法を含むことが多い。適切な治療を行うと、DCISは、浸潤性癌に発達する可能性が低い。放射線を伴う外科的切除は、DCISが再発する、又は浸潤性乳癌が発生するリスクを低下させる。
浸潤性小葉癌(ILC)は、小葉内で始まり、周囲乳房組織に広がるタイプの乳癌である。初期段階で治療されないと、ILCは、子宮又は卵巣などの身体の他の部分内に移動する可能性がある。ILCは、全乳癌症例の約10〜15%を占める、浸潤性乳癌の2番目に最も一般的なタイプである。ILCは、通常は乳頭の上方で腕に向かう区間である乳房領域の一般的肥厚化を特徴とする。ILCは、マンモグラム上に現れる可能性が低い。ILCが現れる場合は、ILCは辺縁から放射状に広がる微細なスパイクを有する塊として現れ、又はもう一方の乳房に比較して非対称に見えることがある。
療法
乳癌では、重要なシグナル伝達成分における多数の変化が証明されてきた。これらには:活性化を生じさせるEGFR突然変異;cMetなどの他の受容体チロシンキナーゼの活性化;HER2及びHER3の活性化又はHER2の増幅を伴うEGFR活性化;PI3K突然変異を伴うEGFR活性化;PTEN枯渇(deletion)を伴うEGFR活性化;及びRas突然変異を伴うEGFR活性化が含まれる。シグナル伝達経路の種々の成分における様々な変化は、様々な形態の化学療法の標的とされてきた。
同時に、血管新生と呼ばれるプロセスである腫瘍細胞への新規な血管の形成を標的とすることができる。VEGFは、新規な血管の形成のために必須である内皮細胞生存因子である。従って、VEGF媒介血管新生の調節のための1つのアプローチは、VEGFタンパク質自体又はVEGFRに対して向けられた抗体を使用することである。VEGFに対する組換えヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブは、化学療法と相乗的に作用し、結腸直腸癌、乳癌、及び肺癌を有する患者における生存率を改善させることが証明されている。
すべての内分泌療法は、固有の方法でエストロゲン受容体(ER)機能を遮断するように設計されている。例えば、タモキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)はERに結合してその活性を部分的に遮断する。卵巣切除、黄体形成ホルモン放出性ホルモンアゴニスト、並びに、アロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール(Arimidex(商標))、レトロゾール(Femara(商標))及びエキセメスタン(Aromasin(商標))は、エストロゲンのレベルを低下させ、ERのリガンド誘発性活性化を阻害する。理想的なSERMは、乳房及び子宮内で抗エストロゲンとして、並びに骨格系、心血管系、及び中枢神経系、並びに消化管及び膣内での部分的エストロゲンアゴニストとして機能するはずである。
フルベストラントなどのステロイド性抗エストロゲンは、ERとより緊密に結合するので、その機能を完全に遮断し、受容体分解を誘導する。
選択的エストロゲン受容体(ER)調節因子であるタモキシフェンは、ER陽性乳癌の治療のために最も広く使用されている薬剤である。タモキシフェンのアジュバント療法試験は、再発及び死亡率の確率において40%〜50%の減少を示す。タモキシフェンはさらに、転移性疾患を有する患者の30%〜50%において一時的緩解を与え、さらに乳癌の予防においても有効である。
アロマターゼ阻害剤は、乳癌を有する閉経後女性の治療において看護の標準となっているが、閉経前女性においては依然としてタモキシフェンが標準である。アロマターゼ阻害剤はタモキシフェンよりわずかに有効性が高いことがあるが、アロマターゼ阻害剤は、アジュバント療法に対しこれらの薬剤を用いて順々に実証づけられたその利点に鑑み、そして転移性疾患において役割を有し続けるであろうことに鑑みて、依然として重要な薬剤である。
耐性
タモキシフェンに対する初めからの耐性(初期療法に非応答;一次耐性)及び獲得耐性(療法に対する初期応答を示した後の疾患再発若しくは進行;二次耐性)は、重要な問題である。結果として、腫瘍生物学及び耐性のメカニズムの理解は、重要な臨床上の意味を与えることができる。
ER/PR生物学:ER及びPRは、それらがリガンドに結合した場合に核内の転写因子として機能する核ホルモン受容体である。ER及びPRは、類似の構造を有し、DNA結合ドメイン、二量体化ドメイン、ホルモン結合ドメイン、及び幾つかの転写活性化ドメインを含む。ER陽性、PR陰性腫瘍を有する患者と比較して、ER陽性、PR陽性腫瘍を有する患者では、再発に対するリスクのより大きな低減が認められた。
ER機能:ERに結合するホルモンは、リン酸化を介してタンパク質を活性化し、熱ショックタンパク質90などのシャペロンタンパク質を解離させ、その構造を変化させる。ホルモン結合(「活性化」)ERは、次に別の受容体と二量体化し、該二量体は、エストロゲン応答遺伝子のプロモータ内に存在するエストロゲン応答エレメント(特異的DNA配列)に結合する。プロモータ結合ER二量体は、エストロゲン応答遺伝子の転写に影響を及ぼすように協調的に作用する乳癌1内で増幅されるような共調節タンパク質(AIB1又はSRC3)と複合体を形成する。典型的には、コアクチベーターは受容体がエストロゲンに結合するとERに結合するが、コリプレッサーはERがタモキシフェンに結合する場合に結合する。AIB1は乳癌の65%において過剰発現し、対応する遺伝子は5%において増幅される。高レベルのAIB1は、エストロゲンアゴニスト活性を高める(例えば、アロマターゼ阻害剤を用いて治療する)ことによってSERM耐性に寄与することができる。ER二量体はまた、NCORなどのコリプレッサータンパク質と複合体を形成して、所定の遺伝子(例えば、HOXB13)の遺伝子発現をダウンレギュレートする。
成長因子シグナル伝達ネットワーク内の数種のキナーゼは、リガンド非依存性活性化と呼ばれるプロセスにおいてERを活性化することもできる。高いErbBファミリー活性(例えば、高いHER2又はHER1活性)などの所定の条件下で、ERはAIB1とのタモキシフェン複合体に結合し、タモキシフェンのエストロゲンアゴニスト活性を増加させた(例えば、キナーゼ阻害剤と一緒にフルベストラント又はアロマターゼ阻害剤を用いて治療)。
この非核ER作用又は膜開始ステロイドシグナル伝達(MISS)は、エストロゲンの添加後数分間以内に生ずる。タモキシフェンなどのSERMは、膜ERを活性化することもできる。これらの受容体は、骨細胞、神経細胞、子宮細胞、脂肪細胞、及び内皮細胞中で見出されている。エストロゲンが膜ER機能を活性化するメカニズムは、解明され始めている。インスリン様成長因子1受容体、PI3Kのp85調節サブユニット、Src、及び様々な成長因子チロシンキナーゼ受容体へERを直接的に結合させることのできるタンパク質であるShcなどの様々な膜シグナル伝達分子とERとの間の直接的な相互作用が観察されてきた。エストロゲンによるこれらの経路の活性化は、AKT及びMAPKの活性化を介して強力な細胞生存及び細胞増殖性シグナルを送り出す。さらに、これらのキナーゼは、ER及びその共調節因子をリン酸化して、核ERシグナル伝達を強化することができる。これらのタンパク質のリン酸化は、タモキシフェン及び他のSERMのエストロゲンアゴニスト様活性を増加させることもできる。
純粋な抗エストロゲン剤であるフルベストラントは、同じ方法では膜ERを活性化しない;しかしながら、タモキシフェンなどのSERMは、エストロゲンと同様にして膜ERを活性化する。ERの膜作用は、その核活性と同様に、細胞、受容体サブタイプ、及びリガンドに特異的であることがあり、また、例えば、ErbB1又はHER2を過剰発現する乳癌において、はるかにより顕著である成長因子シグナル伝達環境によって影響を受けることもある。タモキシフェン及び他のSERMによるERのMISS活性の刺激は、HER2過剰発現腫瘍において時々観察されるこれらの薬剤への耐性を部分的に説明することができる。
核及び形質膜と関連するER機能(膜開始ステロイドシグナル伝達;MISS)に加えて、ERは、他の経路分子とコンジュゲートしてその後の腫瘍進行を促進する。この分子クロストークは、アロマターゼ阻害剤を用いると最良に治療できるが、SERMではできない。
ERは、少なくとも2つの主要機能を有する。ERは、エストロゲン調節遺伝子の転写因子として及び核内の他の転写因子のコアクチベーターとして機能する。ERはまた、細胞質内及び形質膜内で成長因子シグナル伝達を活性化するようにも機能する。一部の乳房腫瘍、特にHER2増幅などの高活性の成長因子シグナル伝達経路を有する乳房腫瘍では、エストロゲンが成長因子シグナル伝達を活性化し、成長因子シグナル伝達経路がさらにERを活性化するという悪循環が確立される。そのような腫瘍内のエストロゲンは、腫瘍進行において重要な複数の経路を活性化することによって支配的な因子となると予測されるであろう。この分子クロストークは、乳癌を治療するための重要な意味を有する。1つの例として、アロマターゼ阻害剤を用いたエストロゲン欠乏(estrogen-deprivation)療法は、ERの核開始ステロイドシグナル伝達及びMISS活性の両方を停止させることによってHER2増幅腫瘍においてSERMより有効となるはずである。
転移性疾患
乳房腫瘍の3分の2又はそれ以上は、増殖に関してエストロゲン依存性である。転移性乳癌の治療には、多数のエストロゲン遮断剤を使用することができる。しかしながら、これらの薬剤に対する治療応答は予測できず、エストロゲン又はプロゲステロンに対する受容体を有する転移性乳癌を有する患者の約3分の1は、ホルモン療法から利益を得られない。転移性乳癌を有する患者のほぼ全ては、ホルモン受容体が未だ存在するという事実にもかかわらず、最終的にはホルモン療法に対して耐性になる。
療法の選択は、シグナル伝達経路の活性化又は腫瘍生物学のより良い理解に基づいて決定される。特定の実施形態において、本発明は、有利なことに、診断的/予後診断的チップと共にアッセイ方法を提供して、腫瘍医が個別の患者に対して最良の治療を決定するのを支援する。
V.抗体アッセイの構築
所定の側面において、乳癌細胞などの腫瘍細胞の細胞抽出物中のシグナル伝達分子(例えば、HER2シグナル伝達経路成分)1種又は2種以上(例えば、複数種)の発現レベル及び/又は活性化状態は、固体支持体上に拘束された希釈系列の捕捉抗体を含む抗体に基づくアレイを用いて検出される。これらのアレイは、典型的には、種々のアドレス可能な場所において固体支持体の表面に結合している或る範囲の捕捉抗体濃度の複数の異なる捕捉抗体を含む。
1つの特定の実施形態において、本発明は、固体支持体上に拘束された複数の希釈系列の捕捉抗体を含む優れたダイナミックレンジを有するアドレス可能なアレイであって、それぞれの希釈系列における捕捉抗体がシグナル伝達経路の成分及び他の標的タンパク質に対応する分析物1種又は2種以上に特異的であるアレイを提供する。種々の側面において、この実施形態は、特定の腫瘍の特性を示すシグナル伝達経路、例えば、乳癌細胞において活性であるシグナル伝達経路(例えば、HER2経路)の成分を含むアレイを含む。このように、本発明は、癌を引き起こす潜在的な発現又は活性化の欠損を伴う目的の各シグナル伝達分子又は他のタンパク質が単一のアレイ又はチップ上に表現されることにおいて有利に実施することができる。或る側面において、特定の腫瘍細胞中で活性な所定のシグナル伝達経路の成分は、情報が細胞内のシグナル伝達経路を通してリレーされる順序に対応する直線的順序で配列される。このような配列の例は、本明細書に記載するが、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットの図5〜9にも示されている。特定の腫瘍細胞中で活性な所定のシグナル伝達経路の成分1種又は2種以上に特異的な捕捉抗体を、無作為にプリントして任意の表面に関連した人為的結果を最小にすることもできる。
固体支持体は、タンパク質を固定化するのに適切な任意の基材を含むことができる。固体支持体の例として、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、ゲル、金属、セラミックなどを挙げることができるがそれらに限定されない。ナイロン(Biotrans(商品名)、ICN Biomedicals社(カリフォルニア州コスタメサ);Zeta−Probe(商標)、Bio−Rad Laboratories社(カリフォルニア州ハーキュリーズ))、ニトロセルロース(Protran(商標)、Whatman社(ニュージャージー州フローラムパーク))、及びPVDF(Immobilon(商品名)、Millipore社(マサチューセッツ州ビルリカ))などの膜は、本発明のアレイにおける固体支持体として使用するのに適切である。好ましくは、捕捉抗体は、例えば、Whatman社(ニュージャージー州フローラムパーク)から商業的に入手することができるFAST(商標)スライドなどのニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド上に拘束される。
固体支持体の望ましい特定の側面には、大量の捕捉抗体と結合する能力及び最小の変性で捕捉抗体と結合する能力が含まれる。別の適切な側面は、固体支持体が、捕捉抗体を含有する抗体溶液が前記支持体に適用される場合に最小の「ウィッキング(wicking)」を示すことである。最小のウィッキングを有する固体支持体は、前記支持体に適用された捕捉抗体溶液の小アリコートが固定化された捕捉抗体の小さな規定スポットを生じさせることを可能にする。
捕捉抗体は、典型的には、共有結合性又は非共有結合性相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間結合)を介して固体支持体上に直接的又は間接的に(例えば、捕捉タグを介して)拘束される。或る実施形態では、標準架橋方法及び条件を用いるホモ二官能性又はヘテロ二官能性架橋剤を用いて前記固体支持体へ捕捉抗体が共有結合される。適切な架橋剤は、例えば、Pierce Biotechnology社(イリノイ州ロックフォード)などの販売業者から商業的に入手することができる。
本発明において使用するのに適切なアレイを生成するための方法として、タンパク質又は核酸アレイを構築するために用いられる任意の技術を挙げることができるがそれらに限定されない。或る実施形態では、捕捉抗体は、典型的にはスプリットピン、ブラントピン、又はインクジェットプリンティングを備えたロボットプリンターである、マイクロスポッターを用いてアレイ上にスポットされる。本明細書に記載した抗体アレイをプリントするのに適切なロボットシステムとして、ChipMaker2スプリットピン(TeleChem International社;カリフォルニア州サニーベール)を備えるPixSys 5000ロボット(Cartesian Technologies社;カリフォルニア州アーヴィン)並びにBioRobics社(マサチューセッツ州ウォバーン)及びPackard Instrument社(コネチカット州メリデン)から入手することができる他のロボットプリンターを挙げることができる。好ましくは、各捕捉抗体希釈液を少なくとも2、3、4、5、又は6回反復してアレイ上にスポットする。
本発明において使用するのに適切なアレイを生成するための別の方法は、支持体上に規定容量の液体を引き出すのに有効な条件下で固体支持体上にキャピラリーディスペンサを接触させることによって、それぞれの選択されたアレイ位置に既知容量の捕捉抗体希釈液を分注する工程を含み、それぞれの選択されたアレイ位置において選択された捕捉抗体希釈液を用いてこのプロセスが繰り返されて完全なアレイを作成する。前記方法は、複数のこのようなアレイを形成する際に実施することができるが、ここで溶液堆積工程は複数の各固体支持体上の選択された位置にそれぞれ反復サイクルで適用される。このような方法の詳細な説明は、例えば、米国特許第5,807,522号明細書の中に見出すことができる。
所定の場合には、紙にプリントするためのデバイスを用いて抗体アレイを生成することができる。例えば、デスクトップ型ジェットプリンターのプリントヘッド内に所望の捕捉抗体希釈液を充填して適切な固体支持体上にプリントすることができる(例えば、Silzel et al., Clin. Chem., 44:2036-2043 (1998)参照)。
或る実施形態において、固体支持体上に生成されたアレイは、少なくとも約5スポット/cm、及び好ましくは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000又は9000、又は10,000スポット/cmの密度を有する。
所定の場合に、固体支持体上のスポットは各々、異なる捕捉抗体を表す。所定の他の場合に、固体支持体上の複数のスポットは、例えば、一連の減少する捕捉抗体濃度を含む希釈系列として、同一の捕捉抗体を表す。
固体支持体上に抗体アレイを調製及び構築するための方法の追加の例は、米国特許第6,197,599号明細書、第6,777,239号明細書、第6,780,582号明細書、第6,897,073号明細書、第7,179,638号明細書、及び第7,192,720号明細書;米国特許出願公開第20060115810号明細書、第20060263837号明細書、第20060292680号明細書、及び第20070054326号明細書;並びにVarnum et al., Methods Mol. Biol., 264:161-172 (2004)に記載されている。
抗体アレイを走査する方法は当分野において公知であり、そしてその方法として、限定的でなく、タンパク質又は核酸アレイを走査するために用いられる任意の技術を挙げることができる。本発明において使用するのに適切なマイクロアレイスキャナーは、PerkinElmer社(マサチューセッツ州ボストン)、Agilent Technologies社(カリフォルニア州パロアルト)、Applied Precision社(ワシントン州イサクアー)、GSI Lumonics社(マサチューセッツ州ビルリカ)、及びAxon Instruments社(カリフォルニア州ユニオンシティ)から入手することができる。限定的でない例として、蛍光検出用のGSI ScanArray3000を、定量に対してImaGeneソフトウエアとともに使用することができる。
VI.単一の検出アッセイ
一部の実施形態において、腫瘍細胞などの細胞の細胞抽出物中の目的の特定の分析物(例えば、HER2シグナル伝達経路の成分などのシグナル伝達分子)の発現及び/又は活性化レベルを検出するためのアッセイは、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットの2抗体アッセイである。限定的でない例として、前記アッセイにおいて使用される2つの抗体は:(1)分析物に特異的な捕捉抗体;及び(2)前記分析物の活性化形に特異的な検出抗体(すなわち、活性化状態依存性抗体)を含んでいることができる。活性化状態依存性抗体は、例えば、前記分析物のリン酸化、ユビキチン化、及び/又は複合体形成状態を検出することができる。代わりに、検出抗体は、細胞抽出物中の前記分析物の総量を検出する、活性化状態非依存性抗体を含む。
1つの特定の実施形態において、目的の分析物の発現又は活性化レベルを検出するための2抗体アッセイは、以下の工程:
(i)細胞抽出物を1つ又は複数の希釈系列の捕捉抗体とインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成する工程;
(ii)前記複数の捕捉された分析物を対応する分析物に特異的な検出抗体とインキュベートして複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程であって、前記検出抗体が前記分析物の活性化(例えば、リン酸化)レベルを検出するための活性化状態依存性抗体又は前記分析物の発現レベル(例えば、総量)を検出するための活性化状態非依存性抗体を含む工程;
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物をシグナル増幅対の第1及び第2のメンバーとインキュベートして増幅シグナルを生成する工程;及び
(iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する工程;を含む。
本明細書に記載した2抗体アッセイは、典型的には、種々のアドレス可能な位置において固体支持体の表面に結合している或る範囲の捕捉抗体濃度の複数の種々の捕捉抗体を含む、抗体に基づくアレイである。本発明において使用するのに適切な固体支持体の例は、前記に記載されている。
捕捉抗体及び検出抗体を、好ましくは、分析物結合に関するそれらの間の競合を最小化するように選択する(すなわち、捕捉抗体及び検出抗体の両方は、それらの対応するシグナル伝達分子に同時に結合することができる)。
1つの実施形態において、検出抗体は結合対の第1のメンバー(例えば、ビオチン)を含み、シグナル増幅対の第1のメンバーは前記結合対の第2メンバー(例えば、ストレプトアビジン)を含む。結合対メンバーを、当分野において周知の方法を用いて、検出抗体に又はシグナル増幅対の第1のメンバーに直接的又は間接的に結合させることができる。所定の場合に、シグナル増幅対の第1メンバーはペルオキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、チトクロームcペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼ、脱ヨード酵素など)であり、シグナル増幅対の第2メンバーはチラミド試薬(例えば、ビオチン−チラミド)である。これらの場合に、増幅シグナルは、過酸化水素(H)の存在下において活性化チラミドを生成する、チラミド試薬のペルオキシダーゼ酸化によって生成される。
活性化チラミドは、直接的に検出されるか、又は、例えば、ストレプトアビジン標識化フルオロフォア又はストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと発色試薬との組み合わせなどのシグナル検出性試薬の添加により検出される。本発明において使用するのに適切なフルオロフォアの例として、Alexa Fluor(商標)ダイ(例えば、Alexa Fluor(商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Oregon Green(商品名);ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商品名)フルオル(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)などを挙げることができるがそれらに限定されない。ストレプトアビジン標識を、当分野において周知の方法を用いてフルオロフォア又はペルオキシダーゼに直接的又は間接的に結合させることができる。本発明において使用するのに適切な発色試薬の限定的でない例として、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)、及び/又はポルフィリノーゲンを挙げることができる。
本明細書に記載した2抗体アッセイを実施するための典型的なプロトコールは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットの実施例3に与えられている。
2抗体アプローチの別の実施形態において、本発明は、切断受容体の発現又は活性化レベルを検出する方法であって、以下の工程:
(i)細胞抽出物を、全長受容体の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートする工程;
(ii)前記細胞抽出物から前記複数のビーズを除去し、それによって前記全長受容体を除去して該全長受容体を含まない細胞抽出物を形成する工程;
(iii)前記全長受容体を含まない前記細胞抽出物を、該全長受容体の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な希釈系列の1つ又は複数の捕捉抗体とインキュベートして、複数の捕捉された切断受容体を形成する工程;
(iv)前記複数の捕捉された切断受容体を、前記全長受容体のICD結合領域に特異的な検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された切断受容体を形成する工程であって、前記検出抗体が前記切断受容体の活性化(例えば、リン酸化)レベルを検出するための活性化状態依存性抗体又は前記切断受容体の発現レベル(例えば、総量)を検出するための活性化状態非依存性抗体を含む工程;
(v)前記複数の検出可能な捕捉された切断受容体を、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(vi)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された増幅シグナルを検出する工程、を含む方法を提供する。
所定の実施形態において、切断受容体はp95HER2であり、全長受容体はHER2である。所定の他の実施形態において、細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズはストレプトアビジン−ビオチン対を含み、ここでビオチンは前記ビーズに結合しており、そしてビオチンは抗体に結合している(例えば、前記抗体は前記全長受容体のECD結合領域に特異的である)。
あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットの図14Aは、目的の受容体の細胞外ドメイン(ECD)に向けられた抗体でコーティングされたビーズが全長受容体(例えば、HER2)に結合するが、切断受容体(例えば、p95HER2)には結合しないので、アッセイからあらゆる全長受容体が除去されることを示している。国際公開第2009/108637号パンフレットの図14Bは、切断受容体(例えば、p95HER2)がいったん捕捉抗体に結合すれば、全長受容体(例えば、HER2)の細胞内ドメイン(ICD)に特異的な検出抗体によって検出できることを示している。検出抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に直接的にコンジュゲートさせることができる。次いで、チラミドシグナル増幅(TSA)を実施して、検出すべきシグナルを生成することができる。切断受容体(例えば、p95HER2)の発現レベル又は活性化状態を調査して、例えば、その総濃度又はそのリン酸化状態、ユビキチン化状態、及び/又は複合体形成状態を決定することができる。
別の実施形態において、本発明は、前記の2抗体アッセイを実施するためのキットであって、以下:(a)固体支持体上に拘束された希釈系列の1つ又は複数の捕捉抗体;及び(b)1つ又は複数の検出抗体(例えば、活性化状態非依存性抗体及び/又は活性化状態依存性抗体)を含むキットを提供する。或る場合には、前記キットは、腫瘍細胞などの細胞の1つ又は複数のシグナル伝達分子の発現レベル及び/又は活性化状態を検出するキットの使用方法の説明書をさらに含んでいることができる。前記キットはまた、本発明の固有の方法を実施することに関して前記の追加の試薬のいずれか、例えば、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバー、チラミドシグナル増幅試薬、洗浄バッファなども含んでいることができる。
VII.近接二重検出アッセイ
或る実施形態において、腫瘍細胞などの細胞の細胞抽出物中の目的の特定の分析物(例えば、HER2シグナル伝達経路の成分などのシグナル伝達分子)の発現及び/又は活性化レベルを検出するためのアッセイは、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットの近接(すなわち、3抗体)アッセイである。限定的でない例として、前記近接アッセイにおいて使用される3つの抗体は:(1)分析物に特異的な捕捉抗体;(2)分析物の活性化形に特異的な検出抗体(すなわち、活性化状態依存性抗体);及び(3)分析物の総量を検出する検出抗体(すなわち、活性化状態非依存性抗体)を含むことができる。活性化状態依存性抗体は、例えば、分析物のリン酸化、ユビキチン化、及び/又は複合体形成状態を検出することができる。活性化状態非依存性抗体は、分析物の総量を検出することができる。
1つの特定の実施形態において、目的の分析物の活性化レベル又は状態を検出するための近接アッセイは、以下の工程:
(i)細胞抽出物を1つ又は複数の希釈系列の捕捉抗体とインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成する工程;
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な1つ又は複数の活性化状態非依存性抗体及び1つ又は複数の活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程であって、前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分が前記シグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する工程;
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして増幅シグナルを生成する工程;及び
(iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する工程;を含む。
別の特定の実施形態において、切断受容体である目的の分析物の活性化レベル又は状態を検出するための近接アッセイは、以下の工程:
(i)細胞抽出物を、全長受容体の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートする工程;
(ii)前記細胞抽出物から前記複数のビーズを除去し、それによって前記全長受容体を除去して該全長受容体を含まない細胞抽出物を形成する工程;
(iii)前記全長受容体を含まない前記細胞抽出物を、前記全長受容体の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な1つ又は複数の捕捉抗体とインキュベートして、複数の捕捉された切断受容体を形成する工程;
(iv)前記複数の捕捉された切断受容体を、前記全長受容体のICD結合領域に特異的な1つ又は複数の活性化状態非依存性抗体及び1つ又は複数の活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された切断受容体を形成する工程であって、
前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分がシグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する工程;
(v)前記複数の検出可能な捕捉された切断受容体を、シグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(vi)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された増幅シグナルを検出する工程;を含む。
所定の実施形態において、前記切断受容体はp95HER2であり、そして全長受容体はHER2である。所定の他の実施形態において、細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズはストレプトアビジン−ビオチン対を含み、ここでビオチンはビーズに結合しており、そしてビオチンは抗体に結合している(例えば、ここで抗体は全長受容体のECD結合領域に特異的である)。
代わりの実施形態において、活性化状態依存性抗体は促進成分を用いて標識化することができ、そして活性化状態非依存性抗体はシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化することができる。
別の限定的でない例として、近接アッセイに用いられる3つの抗体は、以下:(1)分析物に特異的な捕捉抗体;(2)分析物の総量を検出する特異的な第1の検出抗体(すなわち、第1の活性化状態非依存性抗体);及び(3)分析物の総量を検出する第2の検出抗体(すなわち、第2の活性化状態非依存性抗体)、を含んでいることができる。好ましい実施形態では、第1及び第2の活性化状態非依存性抗体は、分析物上の異なる(例えば、他と全く別な)エピトープを認識する。
1つの特定の実施形態において、目的の分析物の発現レベルを検出するための近接アッセイは、以下の工程:
(i)細胞抽出物を1つ又は複数の希釈系列の捕捉抗体とインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程;
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な1つ又は複数の第1及び第2の活性化状態非依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程であって、
前記第1の活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記第2の活性化状態非依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分が前記シグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する工程;
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして増幅シグナルを生成する工程;及び
(iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する工程;を含む。
別の特定の実施形態において、切断受容体である目的の分析物の発現レベルを検出するための近接アッセイは、以下の工程:
(i)細胞抽出物を、全長受容体の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートする工程;
(ii)前記細胞抽出物から前記複数のビーズを除去し、それによって前記全長受容体を除去して該全長受容体を含まない細胞抽出物を形成する工程;
(iii)前記全長受容体を含まない前記細胞抽出物を、該全長受容体の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な1つ又は複数の捕捉抗体とインキュベートして、複数の捕捉された切断受容体を形成する工程;
(iv)前記複数の捕捉された切断受容体を、前記全長受容体のICD結合領域に特異的な1つ又は複数の第1及び第2の活性化状態非依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された切断受容体を形成する工程であって、
前記第1の活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記第2の活性化状態非依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分がシグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する工程;
(v)前記複数の検出可能な捕捉された切断受容体をシグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして増幅シグナルを生成する工程;及び
(vi)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された増幅シグナルを検出する工程、を含む。
所定の実施形態において、前記切断受容体はp95HER2であり、そして全長受容体はHER2である。所定の他の実施形態において、細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズはストレプトアビジン−ビオチン対を含み、ここでビオチンは前記ビーズに結合しており、そしてビオチンは抗体に結合している(例えば、前記抗体は前記全長受容体のECD結合領域に特異的である)。
代わりの実施形態において、前記第1の活性化状態非依存性抗体はシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化することができ、そして前記第2の活性化状態非依存性抗体は促進成分を用いて標識化することができる。
本明細書に記載した近接アッセイは、典型的には、種々のアドレス可能な位置において固体支持体の表面に結合している或る範囲の捕捉抗体濃度の1つ又は複数の種々の捕捉抗体を含む、抗体に基づくアッセイである。本発明において使用するのに適切な固体支持体の例は、前記に記載されている。
捕捉抗体、活性状態非依存性抗体、及び活性化状態依存性抗体を、好ましくは、分析物結合に関するそれらの間の競合を最小化するように選択する(すなわち、全ての抗体は、それらの対応するシグナル伝達分子に同時に結合することができる)。
或る実施形態において、分析物1種又は2種以上の活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体、又は、代わりに、分析物1種又は2種以上の発現レベルを検出するための第1の活性化状態非依存性抗体は、検出可能な成分をさらに含む。このような場合に、前記検出可能な成分の量は、細胞抽出物中の分析物1種又は2種以上の量と相関的である。検出可能な成分の例として、蛍光標識、化学的に反応性の標識、酵素標識、放射活性標識などを挙げることができるがそれらに限定されない。好ましくは、検出可能な成分は、フルオロフォア、例えば、Alexa Fluor(商標)ダイ(例えば、Alexa Fluor(商標)647)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Oregon Green(商品名);ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商品名)フルオル(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)である。検出可能な成分は、当分野において周知の方法を用いて活性化状態非依存性抗体に直接的又は間接的に結合させることができる。
所定の場合に、分析物1種又は2種以上の活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体、又は、代わりに、分析物1種又は2種以上の発現レベルを検出するための第1の活性化状態非依存性抗体を、促進成分を用いて直接的に標識化する。促進成分を、当分野において周知の方法を用いて活性化状態非依存性抗体に結合させることができる。本発明において使用するのに適した促進成分として、該促進成分に近接した(すなわち、空間的に近接する又は近い)別の分子へチャネリングして(すなわち、該分子へ方向付けられて)該分子と反応する(すなわち、結合する、それによって結合される、又は一緒に複合体を形成する)酸化剤を生成することができる任意の分子を挙げることができる。促進成分の例として、限定的でなく、グルコースオキシダーゼ又は電子受容体として分子酸素(O)を含む酸化/還元反応を触媒する任意の他の酵素などの酵素、及びメチレンブルー、ローズベンガル、ポルフィリン、スクアレート染料、フタロシアニンなどの光増感剤を挙げることができる。酸化剤の限定的でない例として、過酸化水素(H)、一重項酸素、及び酸化/還元反応において酸素原子を移動させ又は電子を獲得する任意の他の化合物を挙げることができる。好ましくは、適切な基質(例えば、グルコース、光など)の存在下で、促進成分(例えば、グルコースオキシダーゼ、光増感剤など)は、2つの成分が相互に近接している場合に、シグナル増幅対の第1のメンバー(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、保護基によって保護されたハプテン、酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化された酵素など)へチャネリングして該第1のメンバーと反応する酸化剤(例えば、過酸化水素(H)、一重項酸素など)を生成する。
所定の他の場合に、分析物1種又は2種以上の活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体、又は、代わりに、分析物1種又は2種以上の発現レベルを検出するための第1の活性化状態非依存性抗体を、活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドリンカーと促進成分にコンジュゲートされた相補的オリゴヌクレオチドリンカーとの間のハイブリダイゼーションを介して促進成分を用いて間接的に標識化する。オリゴヌクレオチドリンカーを、当分野において周知の方法を用いて促進成分又は活性化状態非依存性抗体に結合することができる。或る実施形態において、促進成分にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドリンカーは、活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドリンカーに対して100%の相補性を有する。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドリンカー対は、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイゼーションする際に、少なくとも1、2、3、4、5、6以上のミスマッチ領域を含む。当業者であれば、異なる分析物に特異的な活性化状態非依存性抗体を、同一のオリゴヌクレオチドリンカー又は異なるオリゴヌクレオチドリンカーのいずれかにコンジュゲートさせることができることを理解されよう。
促進成分又は活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートするオリゴヌクレオチドリンカーの長さは、様々であることができる。一般に、リンカー配列は、長さが少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、又は100ヌクレオチドであることができる。典型的には、結合のためのランダム核酸配列が生成される。限定的でない例として、オリゴヌクレオチドリンカーのライブラリーは、3つの別個の隣接するドメイン:スペーサードメイン;シグニチャードメイン;及びコンジュゲーションドメインを有するように設計することができる。好ましくは、オリゴヌクレオチドリンカーは、それらがコンジュゲートされる促進成分又は活性化状態非依存性抗体の機能を破壊することなく効率的に結合するように設計される。
オリゴヌクレオチドリンカー配列は、様々なアッセイ条件下で任意の二次構造形成を防止し又は最小にするように設計することができる。典型的には、リンカー内の各セグメントについて融解温度を注意深く監視して、全アッセイ手順においてそれらが関与できるようにする。一般には、リンカー配列のセグメントの融解温度の範囲は、1〜10℃である。規定されたイオン濃度下で融解温度、二次構造、及びヘアピン構造を決定するためのコンピュータアルゴリズム(例えば、OLIGO 6.0)を用いて、各リンカー内の3つの異なるドメインそれぞれを分析することができる。その全結合配列を、それらの構造的特徴付け及び他のコンジュゲートされるオリゴヌクレオチドリンカー配列に対するそれらの相補性についても、例えば、それらがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で相補的なオリゴヌクレオチドリンカーにハイブリダイズするか否かについても分析することができる。
オリゴヌクレオチドリンカーのスペーサー領域は、オリゴヌクレオチド架橋部位からのコンジュゲートドメインの適切な分離を与える。コンジュゲートドメインは、相補的オリゴヌクレオチドリンカー配列で標識化された分子を核酸ハイブリダイゼーションによってコンジュゲーションドメインへ結合させるように機能する。核酸媒介ハイブリダイゼーションは、抗体−分析物(すなわち、抗原)複合体形成の前後のいずれかで実施することができるので、より柔軟性のあるアッセイフォーマットを提供することができる。多数の直接的抗体コンジュゲーション方法と異なり、抗体又は他の分子への比較的に小さなオリゴヌクレオチドの結合は、標的分析物に対する抗体の特異的親和性又はコンジュゲートされた分子の機能に与える影響を最小にする。
或る実施形態において、オリゴヌクレオチドリンカーのシグニチャー配列ドメインは、複合多重化タンパク質アッセイに用いることができる。異なるシグニチャー配列を有するオリゴヌクレオチドリンカーと複数の抗体とをコンジュゲートさせることができる。多重イムノアッセイにおいて、適切なプローブで標識化されたレポーターオリゴヌクレオチド配列を用いて、多重アッセイフォーマットにおける抗体とそれらの抗原との間の交差反応性を検出することができる。
オリゴヌクレオチドリンカーを、幾つかの異なる方法を用いて抗体又は他の分子にコンジュゲートすることができる。例えば、5’又は3’末端上のチオール基を用いてオリゴヌクレオチドリンカーを合成することができる。還元剤(例えば、TCEP−HCl)を用いてチオール基を脱保護することができ、生じたリンカーを脱塩スピンカラムを用いることによって精製することができる。得られた脱保護オリゴヌクレオチドリンカーを、SMCCなどのヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体又は他のタイプのタンパク質の第一アミンにコンジュゲートすることができる。代わりに、水溶性カルボジイミドEDCを用いてオリゴヌクレオチド上の5’−リン酸基を処理してリン酸エステルを形成しそして引き続いてアミン含有分子に結合することができる。所定の場合に、3’−リボース残基上のジオールをアルデヒド基へ酸化し、次いで還元的アミノ化を用いて抗体又は他のタイプのタンパク質のアミン基にコンジュゲートすることができる。所定の他の場合に、オリゴヌクレオチドリンカーを、3’又は5’末端上でのビオチン修飾により合成し、ストレプトアビジン標識化分子へコンジュゲートすることができる。
オリゴヌクレオチドリンカーは、当分野において公知である様々な技術のいずれか、例えば、Usman et al., J. Am. Chem. Soc., 109:7845 (1987);Scaringe et al., Nucl. Acids Res., 18:5433 (1990);Wincott et al., Nucl. Acids Res., 23:2677-2684 (1995);及びWincott et al., Methods Mol. Bio., 74:59 (1997)に記載されている技術を用いて合成することができる。一般に、オリゴヌクレオチドの合成は、例えば、5’末端におけるジメトキシトリチル及び3’末端におけるホスホルアミジットなどの共通の核酸保護基及び結合基を利用する。オリゴヌクレオチド合成に適切な試薬、核酸脱保護の方法、及び核酸精製の方法は、当業者には公知である。
所定の場合に、分析物1種又は2種以上の活性化レベルを検出するための活性化状態依存性抗体又は、代わりに、分析物1種又は2種以上の発現レベルを検出するための第2の活性化状態非依存性抗体を、シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて直接的に標識化する。当分野において周知の方法を用いて、活性化レベルを検出するために活性化状態依存性抗体に又は発現レベルを検出するために第2の活性化状態非依存性抗体にシグナル増幅対のメンバーを結合させることができる。所定の他の場合に、活性化状態依存性抗体又は第2の活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされた結合対の第1のメンバーとシグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされた結合対の第2のメンバーとの間の結合を介してシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて活性化状態依存性抗体又は第2の活性化状態非依存性抗体を直接的に標識化する。当分野において周知の方法を用いてシグナル増幅対のメンバー又は活性化状態依存性抗体若しくは第2の活性化状態非依存性抗体に結合対メンバー(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)を結合することができる。シグナル増幅対のメンバーの例として、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、チトクロームcペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼ、脱ヨード酵素などを挙げることができるがそれらに限定されない。シグナル増幅対のメンバーの他の例として、保護基によって保護されたハプテン及び酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化された酵素を挙げることができる。
近接チャネリングの1つの例において、促進成分はグルコースオキシダーゼ(GO)であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。GOをグルコースなどの基質と接触させると、GOは酸化剤(すなわち、過酸化水素(H))を生成する。HRPがGOに対してチャネリング近接内にあると、GOによって生成されたHは、HRPへチャネリングしHRPと複合体化してHRP−H複合体を形成し、該複合体はシグナル増幅対の第2のメンバー(例えば、ルミノール若しくはイソルミノールなどの化学発光基質又はチラミド(例えば、ビオチン−チラミド)、ホモバニリン酸、若しくは4−ヒドロキシフェニル酢酸などの蛍光発生性基質)の存在下で増幅シグナルを生成する。近接アッセイにおいてGO及びHRPを使用する方法は、例えば、Langry et al., U.S. Dept. of Energy Report No. UCRL-ID-136797 (1999)に記載されている。ビオチン−チラミドをシグナル増幅対の第2メンバーとして用いる場合、HRP−H複合体はチラミドを酸化して、近くの求核性残基に共有的に結合する反応性チラミド基を生成する。活性化されたチラミドは、直接的に検出されるか、又は、例えば、ストレプトアビジン標識化フルオロフォア若しくはストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと発色試薬との組み合わせなどのシグナル検出性試薬の添加により検出される。本発明において用いるのに適切なフルオロフォアの例として、Alexa Fluor(商標)ダイ(例えば、Alexa Fluor(商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Oregon Green(商品名);ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商品名)フルオル(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)などを挙げることができるがそれらに限定されない。当分野において周知の方法を用いてフルオロフォア又はペルオキシダーゼに直接的又は間接的にストレプトアビジン標識を結合することができる。本発明において用いるのに適切な発色試薬の限定的でない例として、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)、及び/又はポルフィリノーゲンを挙げることができる。
近接チャネリングの別の例において、促進成分は光増感剤であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは特異的結合パートナー(例えば、リガンド、抗体など)へのハプテンの結合を防止する保護基を用いて保護されている複数のハプテンを用いて標識化された大分子である。例えば、シグナル増幅対のメンバーは、保護されたビオチン、クマリン、及び/又はフルオレセイン分子で標識化されたデキストラン分子であることができる。適切な保護基として、フェノキシ−、アナリノ−、オレフィン−、チオエーテル−、及びセレノエーテル−保護基が含まれるがそれらに限定されない。本発明の近接アッセイにおいて使用するのに適切な追加の光増感剤及び保護されたハプテン分子は、米国特許第5,807,675号明細書に記載されている。光増感剤は光で励起されると、酸化剤(すなわち、一重項酸素)を生成する。ハプテン分子が光増感剤に対してチャネリング近接内に存在する場合は、光増感剤によって生成された一重項酸素は、ハプテンの保護基上のチオエーテルへチャネリングし、そして該チオエーテルと反応してカルボニル基(ケトン又はアルデヒド)及びスルフィン酸を生じて、ハプテンから保護基を遊離させる。次いで、この保護されていないハプテンは、前記シグナル増幅対の第2のメンバー(例えば、検出可能なシグナルを生成することができる特異的結合パートナー)へ特異的に結合するのに利用することができる。例えば、ハプテンがビオチンである場合は、特異的結合パートナーは酵素標識化されたストレプトアビジンであることができる。典型的な酵素として、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、HRPなどを挙げることができる。洗浄して未結合の試薬を除去した後、酵素の検出可能な(例えば、蛍光、化学発光、発色性などの)基質を添加することによって検出可能なシグナルを生成し、そして当分野において公知の適切な方法及び計測手段を用いてこれを検出することができる。代わりに、チラミドシグナル増幅を用いて検出可能なシグナルを増幅し、そして活性化されたチラミドを直接的に検出し又は前記のようにシグナル検出性試薬の添加により検出することができる。
近接チャネリングの更に別の例において、促進成分は光増感剤であり、そしてシグナル増幅対の第1のメンバーは酵素−阻害剤複合体である。酵素及び阻害剤(例えば、ホスホン酸で標識化されたデキストラン)を、開裂可能なリンカー(例えば、チオエーテル)によって一緒に結合する。光増感剤は光で励起されると、酸化剤(すなわち、一重項酸素)を生成する。酵素−阻害剤複合体が光増感剤に対してチャネリング近接内に存在する場合、前記光増感剤によって生成された一重項酸素は、開裂可能なリンカーへチャネリングされて該リンカーと反応し、酵素から阻害剤を遊離させ、それにより酵素を活性化する。酵素基質を添加して検出可能なシグナルを生成するか、又は代わりに、増幅試薬を添加して増幅シグナルを生成する。
近接チャネリングの更なる例において、促進成分はHRPであり、シグナル増幅対の第1のメンバーは前記のように保護されたハプテン又は酵素−阻害剤複合体であり、そして保護基はp−アルコキシフェノールを含む。フェニレンジアミン及びHの添加は、保護されたハプテン又は酵素−阻害剤複合体にチャネリングしp−アルコキシフェノール保護基と反応して露出されたハプテン又は反応性酵素を生ずる、反応性フェニレンジイミンを生成する。増幅シグナルは、前記のように生成及び検出される(例えば、米国特許第5,532,138号明細書及び第5,445,944号明細書参照)。
本明細書に記載した近接アッセイを実施するための典型的なプロトコールは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットの実施例4に提供されている。
別の実施形態において、本発明は、前記の近接アッセイを実施するためのキットであって、以下:(a)固体支持体上に拘束された希釈系列の1つ又は複数の捕捉抗体;及び(b)1つ又は複数の検出抗体(例えば、活性化レベルを検出するための活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体の組み合わせ及び/又は発現レベルを検出するための第1及び第2の活性化状態非依存性抗体の組み合わせ)を含むキットを提供する。或る場合に、本発明のキットは、腫瘍細胞などの細胞の1つ又は複数のシグナル伝達分子の発現及び/又は活性化状態を検出するためのキットの使用方法についての説明書をさらに含んでいることができる。本発明のキットは、例えば、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバー、チラミドシグナル増幅試薬、促進成分の基質、洗浄バッファなどの、本発明の特定の方法を実施することに関連して前記の追加の試薬のいずれかをさらに含んでいることもできる。
VIII.抗体の製造
本発明による腫瘍細胞などの細胞中のシグナル伝達分子(例えば、HER2シグナル伝達経路成分)の発現及び/又は活性化レベルを分析するための未だ商業的に入手することができない抗体の生成及び選択は、幾つかの方法によって達成することができる。例えば、1つの方法は、当分野において公知のタンパク質発現及び精製方法を用いて目的のポリペプチド(すなわち、抗原)を発現及び/又は精製する方法であり、一方、別の方法は当分野において公知の固相ペプチド合成法を用いて目的のポリペプチドを合成する方法である。例えば、Guide to Protein Purification, Murray P. Deutcher, ed., Meth. Enzymol., Vol. 182 (1990);Solid Phase Peptide Synthesis, Greg B. Fields, ed., Meth. Enzymol., Vol. 289 (1997);Kiso et al., Chem. Pharm. Bull., 38:1192-99 (1990);Mostafavi et al., Biomed. Pept. Proteins Nucleic Acids, 1:255-60, (1995);及びFujiwara et al., Chem. Pharm. Bull., 44:1326-31 (1996)を参照されたい。精製又は合成されたポリペプチドは、次に、例えば、マウス又はウサギに注射して、ポリクローナル又はモノクローナル抗体を生成することができる。当業者であれば、例えば、Antibodies, A Laboratory Manual, Harlow and Lane, Eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988)に記載されているように、抗体を製造するために多くの方法が利用できることを認識しているであろう。当業者であれば、抗体を模倣する(例えば、抗体の機能的結合領域を保持する)Fab断片又は結合断片も様々な方法によって遺伝情報から調製できることも理解しているであろう。例えば、Antibody Engineering: A Practical Approach, Borrebaeck, Ed., Oxford University Press, Oxford (1995);及びHuse et al., J. Immunol., 149:3914-3920 (1992)を参照されたい。
さらに、多くの刊行物は、選択された標的抗原に結合するためのポリペプチドのライブラリーを生成及びスクリーニングするファージディスプレイ技術の使用を報告している(例えば、Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378-6382 (1990);Devlin et al., Science, 249:404-406 (1990);Scott et al., Science, 249:386-388 (1990);及びLadnerら、米国特許第5,571,698号明細書参照)。ファージディスプレイ法の基本的概念は、ファージDNAによってコードされたポリペプチドと標的抗原との間の物理的会合の確立である。この物理的会合は、ポリペプチドをコードするファージゲノムを取り囲むカプシドの一部としてポリペプチドをディスプレイする、ファージ粒子によって提供される。ポリペプチドとそれらの遺伝子材料との間の物理的会合の確立は、種々のポリペプチドを有する極めて多数のファージの同時マススクリーニングを可能にする。標的抗原に対して親和性を有するポリペプチドをディスプレイするファージは標的抗原に結合し、これらのファージは標的抗原に対する親和性スクリーニングによって濃縮される(enriched)。これらのファージからディスプレイされたポリペプチドの同一性を、それらの各ゲノムから決定することができる。これらの方法を使用すると、所望の標的抗原に対する結合親和性を有すると同定されたポリペプチドを、常用手段によって大量に合成することができる(例えば、米国特許第6,057,098号明細書参照)。
次いで、これらの方法によって生成される抗体を、目的の精製ポリペプチド抗原との親和性及び特異性に対する最初のスクリーニングによって、及び必要に応じて、その結果を、結合から排除されることが望ましい他のポリペプチド抗原を有する抗体の親和性及び特異性と比較することによって選択することができる。スクリーニング法は、マイクロタイタープレートの個々のウェル内での精製ポリペプチド抗原の固定化を含んでいることができる。次いで、潜在的な抗体又は抗体群を含有する溶液を、各マイクロタイターウェル内に配置し、約30分間〜2時間にわたりインキュベートする。次いで、このマイクロタイターウェルを洗浄し、標識化された二次抗体(例えば、産生された抗体がマウス抗体であればアルカリホスファターゼにコンジュゲートされた抗マウス抗体)をウエルに添加し、約30分間にわたりインキュベートした後に洗浄する。基質をウェルに添加すると、固定化されたポリペプチド抗原に対する抗体が存在する場合は、呈色反応が現れるであろう。
次いで、このように同定された抗体を、親和性及び特異性についてさらに分析することができる。標的タンパク質に対するイムノアッセイの開発において、精製された標的タンパク質は、選択された抗体を用いてイムノアッセイの感受性及び特異性を判断するための標準として機能する。様々な抗体の結合親和性は相異することがあり、例えば、所定の抗体の組み合わせが相互に立体的に干渉することがあるので、抗体のアッセイ性能は、その抗体の絶対的な親和性及び特異性より重要な尺度となることがある。
当業者であれば、抗体又は結合断片を生成し並びに目的の様々なポリペプチドに対する親和性及び特異性についてスクリーニング及び選択する際に多くのアプローチを採用することができるが、これらのアプローチが本発明の範囲を変化させるものではないことを理解されよう。
A.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、目的のポリペプチド及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物において産生される。二官能性剤又は誘導体化剤を用いて、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシ・チログロブリン、又はダイズトリプシン阻害剤などの、免疫されるべき種において免疫原性であるタンパク質担体へ、目的のポリペプチドをコンジュゲートするのが有用であることがある。二官能性剤又は誘導体化剤の限定的でない例として、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介するコンジュゲーション)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、及びRN=C=NR(式中、R及びRは異なるアルキル基である)を挙げることができる。
例えば、100μg(ウサギに対して)又は5μg(マウスに対して)の抗原又はコンジュゲートを3容量のフロイント完全アジュバントと一緒にしてその溶液を動物の複数の部位に皮下的に注射することによって、目的のポリペプチド又はその免疫原性コンジュゲート若しくは誘導体に対して動物を免疫する。1カ月後、複数部位での皮下注射によってフロイント完全アジュバント中最初の量の約1/5〜1/10のポリペプチド又はコンジュゲートを用いて動物を追加免疫する。7〜14日後に、動物から採血し、抗体力価についてその血清をアッセイする。一般には、力価が安定状態に達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、同一のポリペプチドのコンジュゲートを用いて動物を追加免疫するが、異なる免疫原性タンパク質に対する及び/又は異なる架橋試薬を介したコンジュゲーションを用いることができる。コンジュゲートは、融合タンパク質として組換え細胞培養において作成することもできる。所定の場合には、ミョウバンなどの凝集剤を用いて免疫応答を強化することができる。
B.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、一般には、実質的に均質な抗体の集団から得られ、すなわち、少量で存在することがある可能性のある天然型変異を除いて前記集団を含む個別の抗体は同一である。このように、修飾語句「モノクローナル」は、抗体の性質が個々別々の抗体の混合物ではないことを示している。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法を用いて又は当分野において公知の任意の組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書参照)によって作成することができる。
ハイブリドーマ法において、マウス又は他の適切な宿主動物(例えば、ハムスター)を前記のように免疫して、免疫に用いられる目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生する又は産生することができるリンパ球を誘発する。代わりに、リンパ球をインビトロで免疫する。次いで、免疫されたリンパ球をポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いてリンパ球骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する(例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, pp. 59-103 (1986)参照)。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する物質1種又は2種以上を好ましくは含有する適切な培地中に播種して増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマ細胞のための培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含んでいるであろう。
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定的な高レベルの産生を支持し、及び/又はHAT培地などの培地に感受性である骨髄腫細胞である。ヒトモノクローナル抗体の産生に対しこのような好ましい骨髄腫細胞系の例として、MOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍から誘導されたマウス骨髄腫系(Salk Institute Cell Distribution Center;カリフォルニア州サンディエゴから入手できる)などのマウス骨髄腫系、SP−2又はX63−Ag8−653細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション;メリーランド州ロックビルから入手できる)、及びヒト骨髄腫又はマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系(例えば、Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);及びBrodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, pp. 51-63 (1987)参照)を挙げることができるがそれらに限定されない。
目的のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の産生のためにハイブリドーマ細胞が増殖する培地をアッセイすることができる。好ましくは、免疫沈降法によって又はラジオイムノアッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を決定する。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、the Scatchard analysis of Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980)を用いて決定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限定希釈法によってサブクローニングし、標準的方法によって増殖させることができる(例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, pp. 59-103 (1986)参照)。この目的のために適切な培地として、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地を挙げることができる。さらに、ハイブリドーマ細胞を、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖することができる。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体を、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動法、透析法、又はアフィニティークロマトグラフィーなどの常用の抗体精製方法によって培地、腹水液、又は血清から分離することができる。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、常用の方法を用いて(例えば、マウス抗体のH鎖及びL鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離しシーケンシングすることができる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として機能する。単離後に、DNAを発現ベクター中に配置し、次いでこの発現ベクターを他の場合には抗体を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞中にトランスフェクトしてこの組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を誘導することができる。例えば、Skerra et al., Curr. Opin. Immunol., 5:256-262 (1993);及びPluckthun, Immunol Rev., 130:151-188 (1992)を参照されたい。例えば、相同性マウス配列に代えてヒトH鎖及びL鎖定常ドメインをコードする配列に置換することによって(例えば、米国特許第4,816,567号明細書;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984)参照)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列の全部若しくは一部を共有的に結合させることによって、DNAを修飾することもできる。
更なる実施形態において、例えば、McCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990);Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991);及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載された技術を用いて生成された抗体ファージライブラリーからモノクローナル抗体又は抗体断片を単離することができる。チェーンシャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒトモノクローナル抗体の産生は、Marks et al., BioTechnology, 10:779-783 (1992)に記載されている。極めて大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換えの使用は、Waterhouse et al., Nuc. Acids Res., 21:2265-2266 (1993)に記載されている。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体を生成するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な代替法である。
C.ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当分野において公知である。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒトである起源から導入されたアミノ酸残基1個又は2個以上を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と呼ばれることが多く、典型的には「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、本質的には、非ヒト抗体の超可変性領域配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって実施することができる。例えば、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);及びVerhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988)を参照されたい。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(例えば、米国特許第4,816,567号明細書参照)であって、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない配列が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は一般にヒト抗体であって、一部の超可変性領域残基及び可能な一部のフレームワーク領域(FR)残基が齧歯類抗体の類似部位由来の残基によって置換される。
本明細書に記載したヒト化抗体を作成するのに用いられるL鎖及びH鎖両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を減少させるために重要な検討事項である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対して齧歯類抗体の可変ドメインの配列をスクリーニングする。次いで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列をヒト化抗体のためのヒトFRとして許容する(例えば、Sims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993);及びChothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987)参照)。別の方法は、L鎖又はH鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のFRを用いる。数種の異なるヒト化抗体に対して同一のFRを用いることができる(例えば、Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);及びPresta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993)参照)。
抗原に対する高親和性及びその他の好適な生物学的特性を保有する抗体をヒト化することもまた重要である。この目標を達成するために、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列及び様々な概念的ヒト化生成物を分析するプロセスによってヒト化抗体を調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の考え得る三次元立体配座構造を図解し表示するコンピュータプログラムを利用することができる。これらの表示を検査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、すなわち、前記候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する増大した親和性などの所望の抗体特性が達成されるように、レシピエント配列及びインポート配列からFR残基を選択し組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を与えることに直接的かつ特異的に関与する。
本発明によれば、様々な形態のヒト化抗体が意図される。例えば、ヒト化抗体は、Fab断片などの抗体断片であることができる。代わりに、ヒト化抗体は、インタクトなIgA、IgG、又はIgM抗体などのインタクト抗体であることができる。
D.ヒト抗体
ヒト化の代替法として、ヒト抗体を生成することができる。或る実施形態において、免疫によって、内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することができる。例えば、キメラマウス及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体H鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は内因性抗体産生の完全な阻害を生じさせると記載されている。このような生殖系列突然変異マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジに基づくヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immun., 7:33 (1993);並びに米国特許第5,591,669号明細書、第5,589,369号明細書、及び第5,545,807号明細書を参照されたい。
代わりに、ファージディスプレイ技術(例えば、McCafferty et al., Nature, 348:552-553 (1990)参照)を用いて、非免疫化ドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーを使用し、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を生成することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13又はfdなどの繊維状バクテリオファージの主要又は微量コートタンパク質遺伝子のいずれかの中にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能的特性に基づいた選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択も生じさせる。このように、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは、例えば、Johnson et al., Curr. Opin. Struct. Biol., 3:564-571 (1993)に記載されたように様々なフォーマットで実施することができる。V遺伝子セグメントの幾つかの供給源をファージディスプレイに使用することができる。例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)を参照されたい。非免疫化ヒトドナー由来のV遺伝子の一レパートリーを構築することができ、様々な抗原アレイ(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Griffith et al., EMBO J., 12:725-734 (1993);並びに米国特許第5,565,332号明細書及び第5,573,905号明細書に記載された技術に本質的に従って単離することができる。
所定の場合には、例えば、米国特許第5,567,610号明細書及び第5,229,275号明細書に記載されたように、インビトロ活性化B細胞によってヒト抗体を生成することができる。
E.抗体断片
抗体断片の生成について、様々な技術が開発されてきた。伝統的には、インタクト抗体のタンパク質分解によってこれらの断片を得た(例えば、Morimoto et al., J. Biochem. Biophys. Meth., 24:107-117 (1992);及びBrennan et al., Science, 229:81 (1985)参照)。しかしながら、今や、組換え宿主細胞を用いてこれらの断片を直接的に生成することができる。例えば、前記の抗体ファージライブラリーから抗体断片を単離することができる。代わりに、Fab’−SH断片を大腸菌細胞から直接的に回収し、化学的に結合させてF(ab’)断片を形成することができる(例えば、Carter et al., BioTechnology, 10:163-167 (1992)参照)。別のアプローチによれば、F(ab’)断片を、組換え宿主細胞培養物から直接的に単離することができる。抗体断片を生成するための他の技術は、当業者には明白であろう。他の実施形態において、好適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。例えば、国際公開第93/16185号パンフレット;並びに米国特許第5,571,894号明細書及び第5,587,458号明細書を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号明細書に記載されたような線状抗体であることもできる。このような線状抗体断片は、単一特異的又は二重特異的であることができる。
F.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。典型的な二重特異性抗体は、目的の同一のポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合することができる。他の二重特異性抗体は、目的のポリペプチドに対する結合部位を追加の抗原1種又は2種以上に対する結合部位と組み合わせることができる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体の作成方法は、当分野において公知である。全長二重特異性抗体の伝統的な作成は、2つの免疫グロブリンH鎖−L鎖対の共発現に基づいており、ここで前記2つの鎖は異なる特異性を有する(例えば、Millstein et al., Nature, 305:537-539 (1983)参照)。免疫グロブリンH鎖及びL鎖の無作為組合せのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadroma))は10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製を、通常はアフィニティークロマトグラフィーによって実施する。同様の方法は、国際公開第93/08829号パンフレット及びTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。この融合は、好ましくはヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリンH鎖定常ドメインを用いる。L鎖結合に必要な部位を含有する第1H鎖定常領域(CH1)が融合の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリンH鎖融合をコードするDNA、及び、所望であれば、免疫グロブリンL鎖を、別個の発現ベクター内に挿入し、適切な宿主生物内に同時トランスフェクトする。これにより、構築に使用される不等比率の3つのポリペプチド鎖が最適の収率を与える場合の実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調整するのに大きな柔軟性が与えられる。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現がより高い収率を生じさせる場合、又は比率が特に有意ではない場合は、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することができる。
このアプローチの好ましい実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアーム中の第1の結合特異性を備えるハイブリッド免疫グロブリンH鎖、及び他方のアーム中の(第2の結合特異性を与える)ハイブリッド免疫グロブリンH鎖−L鎖対から構成される。二重特異性分子の半分にのみ免疫グロブリンL鎖が存在することで容易な分離方法が提供されるので、この非対称構造は望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進する。例えば、国際公開第94/04690号パンフレット及びSuresh et al., Meth. Enzymol., 121:210 (1986)を参照されたい。
米国特許第5,731,168号明細書に記載された別のアプローチによれば、抗体分子対の間の境界面を操作して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大化することができる。好ましい境界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の境界面から小さいアミノ酸側鎖1つ又は2つ以上を、より大きい側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)に置き換える。大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)に置き換えることによって第2抗体分子の境界面上に、前記の大きい側鎖と同一又は同様のサイズの代償的な「空洞(cavities)」を作成する。これにより、ホモ二量体などの他の望ましくない最終生成物に比してヘテロ二量体の収率を増加させる機構が提供される。
二重特異性抗体は、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方をアビジンに、他方をビオチンに結合させることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて作成することができる。適切な架橋剤及び架橋技術は、当分野において周知であり、例えば、米国特許第4,676,980号明細書に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を生成するのに適切な技術も当分野において公知である。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。所定の場合には、インタクト抗体をタンパク質分解により切断してF(ab’)断片を生成する方法によって二重特異性抗体を生成することができる(例えば、Brennan et al., Science, 229:81 (1985)参照)。これらの断片をジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、隣接ジチオールを安定化させ分子間ジスルフィド形成を防止する。次いで、生成したFab’断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転換する。次いで、Fab’−TNB誘導体の1つを、メルカプトエチルアミンを用いた還元によってFab’−チオールへ再転換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。
或る実施形態では、Fab’−SH断片を、大腸菌から直接的に回収し化学的に結合させて二重特異性抗体を形成することができる。例えば、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)分子を、Shalaby et al., J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)に記載された方法によって生成することができる。各Fab’断片を大腸菌から別個に分泌させ、インビトロでの指向性(directed)化学結合に付して二重特異性抗体を形成する。
組換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体断片を作成し及び単離するための様々な技術も記載されてきた。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて生成されてきた。例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148:1547-1553 (1992)を参照されたい。遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分にFosタンパク質及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを結合した。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、次いで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の生成にも利用することができる。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に記載された「ディアボディ(diabody)」技術は、二重特異性抗体断片を作成するための代替的機構を提供している。該断片は、同一鎖上で2つのドメイン間の対合を行うことができないほど短いリンカーによってL鎖可変ドメイン(VL)に連結されたH鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つの断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的VL及びVHドメインと対合することを余儀なくされ、それによって2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体を用いることにより二重特異性抗体断片を作成する別の戦略が、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)に記載されている。
3以上の結合価(valencies)を有する抗体も意図している。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。例えば、Tutt et al., J. Immunol., 147:60 (1991)を参照されたい。
G.抗体精製
組み換え技術を使用すると、抗体を、単離された宿主細胞内で、宿主細胞の細胞周辺腔内で産生させることができ、又は宿主細胞から培地中へ直接分泌させることができる。抗体を細胞内で産生させる場合に、最初に微粒子破片を、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去する。Carter et al., BioTech., 10:163-167 (1992)は、大腸菌の細胞周辺腔内に分泌される抗体を単離する方法を記載している。簡単に説明すると、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間にわたり細胞ペーストを溶かす。遠心分離によって細胞破片を取り除くことができる。抗体が培地中に分泌される場合、一般には、例えば、Amicon社又はMillipore Pellicon社製の限外濾過装置である商業的に入手することができるタンパク質濃縮フィルターを用いて、そのような発現系由来の上澄を濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記工程のいずれかに含めてタンパク質分解を阻害することができ、そして抗生物質を含めて外来性汚染菌の増殖を防止することができる。
細胞から調製された抗体組成物を、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができる。プロテインAの親和性リガンドとしての適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプに依存する。プロテインAを用いて、ヒトγ1H鎖、ヒトγ2H鎖、又はヒトγ4H鎖に基づく抗体を精製することができる(例えば、Lindmark et al., J. Immunol. Meth., 62:1-13 (1983)参照)。プロテインGは、全てのマウスのアイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(例えば、Guss et al., EMBO J., 5:1567-1575 (1986)参照)。親和性リガンドが結合するマトリックスは、多くの場合にアガロースであるが、他のマトリックスも利用することができる。制御された細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースを用いて達成することができる場合より高い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABX(商品名)樹脂(J.T.Baker社;ニュージャージー州フィリップスバーグ)が精製に有用である。他のタンパク質精製技術、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商品名)上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も回収すべき抗体に応じて利用することができる。
任意の予備精製工程の後、目的の抗体及び夾雑物を含む混合物を、pH約2.5〜4.5の溶出バッファを用い、好ましくは低塩濃度(例えば、塩約0〜0.25M)で実施される、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付することができる。
当業者であれば、抗体に類似する機能を有する任意の結合分子、例えば、試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である結合分子又は結合パートナーも、本発明の方法及び組成物において使用することができることを理解されよう。適切な抗体様分子の例として、ドメイン抗体、ユニボディ、ナノボディ、サメ抗原反応性タンパク質、アビマー、アドネクチン、アンチカルム(anticalm)、親和性リガンド、フィロマー(phylomer)、アプタマー、アフィボディ、トリネクチンなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
IX.投与方法
本発明の方法によれば、本明細書に記載したHER2調節性化合物及び他の抗癌剤(まとめて「抗癌剤」)を、当分野において公知の任意の簡便手段によって被験者に投与する。本発明の方法を用いて、HER2調節性化合物などの抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせを用いた治療に対する細胞(例えば、腫瘍細胞)の感受性を決定又は予測することができる。本発明の方法を用いて、HER2調節性化合物などの抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせを用いた治療に対する腫瘍(例えば、乳房腫瘍)の応答を決定、予測、同定、及び/又は監視することもできる。さらに、本発明の方法を用いて、被験者における腫瘍(例えば、乳房腫瘍)の治療に対して適切なHER2調節性化合物などの抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせを選択することができる。当業者であれば、本明細書に記載した抗癌剤を単独で、又は、通常の化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、及び/又は手術との併用療法アプローチの一部として投与することができることを理解されよう。
所定の実施形態において、抗癌剤は、モノクローナル抗体又はチロシンキナーゼ阻害剤などの抗シグナル伝達剤(すなわち、細胞増殖抑制薬);抗増殖剤;化学療法剤(すなわち、細胞毒性薬);ホルモン療法剤;放射線療法剤;ワクチン;及び/又は癌性細胞などの異常な細胞の制御されない増殖を低減又は阻害する能力を有する任意の他の化合物を含む。或る実施形態では、化学療法薬少なくとも1種との併用により1種又は2種以上の抗シグナル伝達剤、抗増殖剤、及び/又はホルモン療法剤を用いて被験者を治療する。典型的なモノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、抗増殖剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、及びワクチンは前記に記載されている。
特定の実施形態において、抗癌剤はモノクローナル抗体を含むHER2活性を調節する化合物1種又は2種以上、チロシンキナーゼ阻害剤、及びそれらの組み合わせを含む。HER2調節性化合物の限定的でない例として、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))及びペルツズマブ(2C4);小分子チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ピリチニブ、CP−654577、CP−724714、カネルチニブ(CI 1033)、HKI−272、ラパチニブ(GW−572016;Tykerb(商標))、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW 2992、ARRY−334543、JNJ−26483327、及びJNJ−26483327;並びにそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。所定の実施形態において、HER2調節性化合物を、本明細書に記載した又は当業者に公知の他の抗癌剤1種又は2種以上と併用して用いることができる。
或る実施形態において、本明細書に記載の抗癌剤は、通常の免疫療法剤と同時投与することができ、該免疫療法剤として、免疫賦活剤(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)(BCG)、レバミゾール、インターロイキン−2、α−インターフェロンなど)、免疫毒素(例えば、抗CD33モノクローナル抗体−カリケアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体−シュードモナス外毒素コンジュゲートなど)、及び放射免疫療法(例えば、111In、90Y、又は131Iなどにコンジュゲートされた抗CD20モノクローナル抗体)を挙げることができるが、それらに限定されない。
抗癌剤を、必要に応じて適切な医薬賦形剤を用いて投与することができ、許容された投与様式のいずれかによって実施することができる。従って、投与は、例えば、経口、経頬(buccal)、舌下、経歯肉、経口蓋、静脈内、局所、皮下、経皮的、経皮性、筋肉内、関節内、非経口、動脈内、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内、膀胱内、髄腔内(intrathecal)、病巣内、鼻腔内、直腸的、膣的、又は吸入によるものであることができる。「同時投与する」とは、抗癌剤が第2薬(例えば、別の抗癌剤、抗癌剤療法に関連した副作用を減少させるために有用な薬剤、放射線療法剤、ホルモン療法剤、免疫療法剤など)の投与と同時に、その投与直前に、又はその投与直後に投与されることを意味する。
治療的有効量の抗癌剤を反復して、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8回、又は9回以上反復して投与することができ、又は、その量を連続注入によって投与することができる。投与は、固形、半固形、凍結乾燥粉末、又は液体の剤形、例えば、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、粉末剤、液剤、懸濁剤、油剤、坐剤、停留浣腸剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、エアロゾル剤、フォーム剤などの剤形であることができ、好ましくは、正確な用量の単一の投与に適した単位剤形であることができる。
本明細書で使用する用語「単位剤形」とは、ヒト被験者及び他の哺乳動物に対する単位投与量として適切な物理的に分離した単位を指し、各単位は所望の作用発現、寛容性、及び/又は治療効果を生ずるように計算された予定量の抗癌剤を適切な医薬賦形剤と共に含む(例えば、アンプル)。さらに、より濃縮した剤形を調製することができ、次に該濃縮剤形からより希釈した単位剤形を製造することができる。このように、より濃縮した剤形は、実質的により多量の抗癌剤、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、又は11倍以上の量の抗癌剤を含有する。
このような剤形の調製方法は、当業者には公知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)参照)。剤形は、典型的には、通常の医薬担体又は医薬賦形剤を含み、さらに、他の薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織浸透促進剤、可溶化剤などを含んでいることができる。適切な賦形剤を、当分野において周知の方法によって、特定の剤形及び投与経路に合わせて作成することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記参照)。
適切な賦形剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩液、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリアクリル酸、例えば、Carbopol、例えば、Carbopol 941、Carbopol 980、Carbopol 981などを挙げることができるがそれらに限定されない。剤形は、さらに、潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油;湿潤剤;乳化剤;懸濁剤;保存剤、例えば、メチル−ヒドロキシ−ベンゾエート、エチル−ヒドロキシ−ベンゾエート、及びプロピル−ヒドロキシ−ベンゾエート(すなわち、パラベン);pH調整剤、例えば、無機及び有機の酸及び塩基;甘味剤;並びに香味剤を含んでいることができる。剤形は、生分解性ポリマービーズ、デキストラン、及びシクロデキストリン包接複合体も含んでいることができる。
経口投与に対する治療有効量は、錠剤、カプセル剤、油剤、懸濁剤、液剤、シロップ、スプレー、ロゼンジ、粉末剤、及び持続放出性製剤の形態であることができる。経口投与に対して適切な賦形剤として、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
或る実施形態において、治療有効量は、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態を取り、従って、その剤形は、抗癌剤と共に、以下:希釈剤、例えば、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えば、デンプン又はその誘導体;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなど;及び結合剤、例えば、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びそれらの誘導体、の任意のものを含んでいることができる。抗癌剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体中に配置される(disposed)坐剤中に、配合することもできる。
抗癌剤及び場合により薬剤学的に許容することのできるアジュバント1種又は2種以上を、例えば、生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム0.9w/v%)、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの担体中に溶解又は分散させて、例えば、経口投与、局所投与、又は静脈内投与のための液剤又は懸濁剤を形成することにより、液体剤形を製造することができる。抗癌剤は停留浣腸中に配合することもできる。
局所投与に対して、治療有効量は、油剤、ローション剤、ゲル剤、フォーム剤、クリーム剤、ジェリー剤、液剤、懸濁剤、軟膏剤、及び経皮パッチの形態であることができる。吸入による投与に対して、抗癌剤を、乾燥粉末として又はネブライザーを介する液体形態で送達することができる。非経口投与に対して、治療有効量は、滅菌された注射溶液及び滅菌包装された粉末剤の形態であることができる。好ましくは、注射溶液をpH約4.5〜約7.5で製剤化する。
治療有効量を凍結乾燥形態で提供することもできる。このような剤形は、投与前の再構成のために、緩衝剤、例えば、炭酸水素塩を含んでいることができ、又は、例えば、水、を用いた再構成のために凍結乾燥剤形に緩衝剤を含めることができる。凍結乾燥剤形は、適切な血管収縮剤、例えば、エピネフリンをさらに含んでいることができる。凍結乾燥剤形は、再構成された剤形を被験者に直ちに投与することができるように、場合により再構成のための緩衝剤と組み合わせて包装された注射器により提供することができる。
所定の療法レジメンの有効性を評価するために周期的な時間間隔で被験者を監視することもできる。例えば、所定のシグナル伝達分子の活性化状態は、本明細書に記載した抗癌剤1種又は2種以上を用いた治療の治療効果に基づいて変化することがある。被験者を監視して、個別化されたアプローチにおける所定の薬剤又は治療の応答を評価しそれらの効果を理解することができる。さらに、特定の抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせに対して初期には応答する被験者が、その薬剤又は薬剤の組み合わせに対して無反応性となるがあり、このことはこれらの被験者が獲得薬剤耐性を生じたことを示している。これらの被験者の現在の療法を中止し、本発明の方法に従って彼らに代わりの療法を処方することができる。
所定の側面において、本明細書に記載した方法を、例えば、リンパ節陰性疾患を有する女性の様々な集団における乳癌の予後診断及び/又は再発の可能性を予測する遺伝子発現マーカーのパネルと共に使用することができる。これらの遺伝子パネルは、再発を経験する可能性が低く、従って、アジュバント化学療法から利益を得る可能性が低い女性を同定するのに有用であることができる。これらの発現パネルを用いて、無疾患生存率及び全体的生存率(disease-free and overall survival)の結果に悪影響を与えずに、安全にアジュバント化学療法を回避することができる女性を同定することができる。適切なシステムとして、Genomic Health社からの21遺伝子パネルであるOncotype DX(商品名);Agendia社からの70遺伝子パネルであるMammaPrint(商標);及びVeridex社からの76遺伝子パネルを挙げることができるがそれらに限定されない。
さらに、所定の他の側面において、本明細書に記載した方法を、原発性不明癌(CUP)に対して最初の腫瘍を同定する遺伝子発現マーカーのパネルと共に使用することができる。これらの遺伝子パネルは、初期に乳癌と診断された女性に与えられた療法と一致する療法から利益を得られると考えられる転移性癌を有する女性を同定するのに有用であることができる。適切なシステムとして、92の遺伝子を測定して39の腫瘍タイプに対する原発性起源部位を同定するRT−PCRベース発現アッセイであるAviara CancerTYPE IDアッセイ;及びマイクロアレイ上で1,600超の遺伝子の発現を測定して15の既知の組織タイプのものに対して腫瘍の遺伝子発現「シグニチャー」を比較するPathwork(商標)Tissue of Origin Testを挙げることができるがそれらに限定されない。
X.実施例
以下の実施例を、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するためではなく例示するために提供する。
国際公開第2009/108637号パンフレットの実施例が、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
実施例1.磁気捕捉及び高感度イムノアッセイを用いた癌患者における循環腫瘍細胞(CTC)の検出、計数、及び特徴付け
この実施例は、癌患者から単離したCTCを用いて本明細書に記載した近接アッセイの妥当性確認を行った臨床試料について実施した試験を説明する。
この試験において登録に含める基準は以下の通りであった:(1)18歳より上;(2)組織学的に確認された固形腫瘍(ステージ3b又は4);及び(3)LNステージングN1、N2、又はN3を有するステージ3bの乳癌又は肺癌。この試験において登録から除外する基準は以下の通りであった:(1)18歳又はそれ未満;(2)転移を有しない;(3)前立腺癌又は黒色腫の診断;(4)過去5年以内に他の癌の前病歴;及び(6)LNステージングNX又はNOを有するステージ3b乳癌又は肺癌。
静脈穿刺により全血20mLを以下のように採取した:(1)CellSave検体保存チューブ(CellSave Preservation Tube)中に10mL;及び(2)EDTA Vacutainerチューブ中に10mL。試料を、採取した日に周囲温度でFedExにより発送した。症例報告フォームは、年齢、性別、民族性、癌タイプ、現在及び前の療法、付随の薬物(medication)、及び有害事象を含んでいた。乳癌患者については、ER、PR,及びHER2状態もそこに含めた。
100例の癌タイプ(乳癌を有する35例を含む)に対応する全体で121例の患者及び25例の対照をこの試験に登録した。患者の人口統計を表3〜表4に示す。
図1は、採取した全血試料からCTCを単離するための典型的な試料処理フローチャートを示す。図2は、全ての癌試料についてのVeridex CTC計数結果を示す。とりわけ、CTCについて陽性の患者数は癌の後期ステージ(ステージ4対ステージ3の癌)において増加した。図3は、本明細書に記載した近接アッセイを用いて乳癌患者及び他の癌タイプ由来のCTC陽性試料において観察されたHER1及びHER2の要約を提供する。
実施例2.ErbBファミリー受容体チロシンキナーゼの活性化を検出するための新規方法
要約
単細胞レベル感度でErbBファミリー受容体チロシンキナーゼ(RTK)におけるリン酸化事象を特異的に検出することができる新規技術を開発した。この多重されたタンパク質マイクロアレイプラットホームは、特有の「三重抗体−酵素チャネリング」免疫複合体の形成を利用する。この原理を、限られた数の以下の標的細胞:(1)患者の全血中に見出された癌細胞(循環腫瘍細胞、CTC);及び(2)患者の微細針吸引液(FNA)試料中に見出された癌細胞、を有する2つの乳癌モデル系に適用した。この例は、CTCモデル系における単細胞の感度レベルでの、及び様々な異種移植片腫瘍だけでなく様々な程度のErbB−RTK発現を有する凍結乳癌組織を用いた転移性FNA(mFNA)モデル系における、HER1及びHER2(pHER1及びpHER2)の活性化の首尾よい検出を説明する。
序論
腫瘍組織の分析に基づく原発性乳癌と遠隔転移との間のHER−2遺伝子状態の関係をいくつかの群により分析した(1〜6)。原発性腫瘍組織中の療法標的の発現は、遠隔腫瘍部位における発現と異なっていることがあり、そして経時的にその相異が現れることがある。治療と関連した又は一部の患者における疾患の自然経過による、経時的な標的発現の低下は、標的に向けられた薬剤の効果に影響を与えることがあり、それを確実にタイムリーに知ることができれば、患者の治療の管理に有用であることができよう。さらに、原発性腫瘍中のHER−2遺伝子状態と対応するCTC中のHER−2遺伝子状態との間の良好な一致は、試料を同期的に(synchronously)得た場合にのみ示されるという癌の「進展(evolution)」の動的性質が最近の研究において示された:初期HER−2陰性原発性腫瘍を有する24例の再発患者由来のCTCは、24例の患者の9例(37%)がそのCTC中にHER−2増幅を獲得したことを示した(7)。
mFNA試料を用いて器官型及び部位特異的な転移性腫瘍プロファイルを提供することができ、一方、CTCを用いて、癌が進行し及び治療が継続され又は修正されるのに伴う腫瘍の変化を検出することができるであろう。従って、FNAによる腫瘍組織の連続的なサンプリングは、時間及び療法の関数として腫瘍の変化を監視するのに重要であることができる。ヒト腫瘍の1回通過(single-passage)FNA由来のRTKの信頼性ある機能的状態を得ることは、有効な治療決定を導くのに不可欠な情報を提供する重要な技術的進歩であろう。FNAは最小限の侵襲性であるので、連続的な腫瘍サンプリングとしてより許容性を有する。さらに、この方法を用いて取り出された細胞を腫瘍から取り出して数分間以内に処理することができるので;FNA検体のプロテオミクス・プロファイルはインビボのプロファイルに極めて近似していると予想される。
本発明のアッセイは、多重化された近接媒介性協調的イムノアッセイフォーマットを含み、限定量の試料を処理するのに極めて有用であり、そして有利なことに、連続的に採取されたCTC及びmFNA腫瘍試料についてのキナーゼ及び他のシグナル伝達経路分子の発現/活性化プロファイリングを提供する。
方法
多重化近接アッセイ:所定の実施形態において、本発明のアッセイは、(1)多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームと(2)三重抗体−酵素チャネリングシグナル増幅法との組み合わせに基づいている。マイクロアレイプラットフォームは、多数のマーカーを収容するのに必要な拡張性だけでなく商業的に展開するのに必要なスケーラビリティを提供する。特異性を保存しながら超高感度を与える三重抗体−酵素アプローチにより特有かつ新規の設計を提供する:(1)マイクロアレイ表面上に連続希釈によりプリントされた標的特異的な抗体によって、選択された標的を捕捉する。次いで、このフォーマットは、結合した各標的タンパク質ごとに引き続きのチャネリング事象のために酵素と結合した2つの追加の検出子(detector)−抗体の共局在性を必要とする(例えば、図24参照)。(2)捕捉抗体による最初の標的結合と捕捉された標的分子上の交替(alternate)エピトープを認識するグルコースオキシダーゼ(GO、TON10/分間)コンジュゲート抗体の二次結合とによって形成される免疫複合体はGO基質であるグルコースの存在下にHを生成することができる。(3)次いで、捕捉された標的上のリン酸化ペプチドに結合する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP、TON10/分間)とコンジュゲートされたホスホ−ペプチド特異的抗体によって、標的特異的なHの局所的流入が利用されることで、標的特異的なシグナルが増幅される。リン酸化された標的の検出のための特異性は、3つの異なるタイプの抗体の同時結合の要件を前提として、協調的免疫検出及び増幅プロセスにより大きく高められる。本発明の方法により、わずか〜2〜3×10というリン酸化事象の検出及び定量化がルーチン的に達成され、このことはその検出を「単」細胞レベルに導く。さらに、この協調的イムノアッセイの構成をタンパク質相互作用及び活性化を調査するのに適用することができる。
スライドプリンティング:捕捉抗体を、界面活性剤(detergent)を用いて1×PBS中に希釈した。接触型マイクロアレイプリンター(Genetix社)を用いて、16パッドのニトロセルロースFASTスライド(Whatman社)上にプリントした。スポット径は約175μmであり、プリントしたスライドを4℃の乾燥チャンバー内で保持した。
FNA:凍結した乳癌組織はProteoGenex社の製品であった。患者は全て、ステージII又はIIIの乳管癌を有する白人であった。G23ニードルを用いて凍結腫瘍組織に5〜10回通すことによってFNA試料を採取した。採取したFNAを100μL溶解バッファ中に溶かしそして得られた試料を近接アッセイを実施するまで−80℃で保存した。
異種移植片腫瘍:MDA−MB435、MDA−MB231、及びBT474のヒト乳癌細胞系をヌードマウスに皮下注射した。腫瘍容量が大きさ400mmに達した時に、G23ニードルを用いてFNA試料を採取した。採取したFNA試料を上記のように処理した。
結果
感度:本発明者らは、複数の細胞系(MDA−MB−468、A431、BT−474、及びSKBr−3細胞系)中のHER1及びHER2の活性化及び発現を単細胞の感度レベルで検出した。これらの細胞系は、それらの細胞膜上で1細胞当たり全RTK〜1×10を発現するが、全RTKのサブセットだけがリン酸化されており、このようなリン酸化は経路活性化に必要とされる。SKBR−3細胞はHER2の増幅により自発的なHER2活性化を有するので、SKBR−3細胞は陽性対照の参照を提供する。MDA−MB−468細胞はHER1リン酸化を誘導するためにはEGF(TGFa)を用いて刺激されることが必要であり、刺激前後のDA−MB−468細胞のシグニチャーを陰性対照及び陽性対照として用いることができる。DA−MB−468は刺激前には限界的(marginal)HER1活性化を有するが、両方の細胞系はそれらの活性化されたRTKの約10%でピークに達する(1細胞当たり〜1×10リン酸化事象)。本発明者らのフォーマットは、図4に示したように、本発明者らが単細胞感度で10より少ない活性化事象を検出することを可能にした。
異種移植片−FNA:mFNA試料における本発明者らのアッセイの可能な用途を示すために、本発明者らは、図5に示したように、様々な程度のErbB−RTK発現を有する細胞系(MDA−MB−231、MDA−MB−435、及びBT474)を用いて種々のタイプの乳癌に対する異種移植片モデルをまず開発した。本発明者らは、MDA−MB−231異種移植片−FNA中に低レベルのpHER2及びpHER1を、BT474異種移植片から得られたFNA中に有意レベルのpHER2を、そしてMDA−MB−435異種移植片から得られたFNA中に極めて低いHER1及びHER2活性化を検出した。異種移植片−FNAモデル系からの本発明者らの知見はドライバー細胞系HER2プロファイルと一致し、このことは本発明の方法を用いて、最小限の侵襲的方法から得られる試料、例えば、乳癌及び他のタイプの転移性癌のCTC及びFNA中のErbB受容体の活性化を検出することができるということを示している。
凍結組織−FNA:本発明者らのアッセイフォーマットの有用性をさらに証明するために、本発明者らは、29例のステージII又はIIIの凍結乳管癌(14例は既知のHER2 IHC状態を有する)からG23ニードルを用いてFNA試料を採取した。本発明者らのアッセイによって検出されたHER2受容体の活性化は腫瘍IHCスコアと一致する(図6)。本発明者らは、原発性腫瘍において高いIHCスコア(3+)を有する4例の患者を把握している。彼らは皆、高いHER2活性を有している。興味深いことに、4例の患者のうち1例はEGFR及びHER2受容体の両方の活性が高い。このことは、TKI阻害剤の療法がHerceptin(商標)単独より効果的である可能性を示している。
図7(左)は、既知又は未知のHER2 IHC状態を有する乳癌組織由来のFNA試料及び正常組織中の活性化されたHER1レベル及びHER2レベルの要約を提供する。図7(右)は、未知HER2 IHC状態を有するFNA試料中のpEGFRレベル及びpHER2レベルの図解を提供する。図8は、高いIHCスコア(3+)を有するFNA試料(試料ID番号012855T2及び012897T2)中のpHER2レベルの滴定分析を示す。図9は、連続希釈の4つの異なる捕捉抗体濃度を用いた2つの異なる時点におけるFNA試料中のpEGFR及びpHER2の検出を示す。
結論
希少CTCに対する使用を可能にする感度でErbBファミリー受容体中のリン酸化を特異的に検出することができる新規の技術を開発した。CTCの連続的サンプリングにおけるキナーゼ及び他のシグナル伝達経路分子の発現/活性化プロファイリングは、時間及び療法の関数として腫瘍細胞中に生ずる変化についての有用な情報を提供する。この療法誘導診断を、図10に示したように、疾患管理の様々な段階で用いることができる。その比類なき感度及び特異性のため、本発明者らのアプローチは、希少循環腫瘍細胞(CTC)中のErbBファミリー受容体中のリン酸化事象を検出するのに適用することができる。CTC及びFNA試料中のHER1及びHER2活性化を同定することによって、本発明の方法は、標的化治療手段の初期選択に対してだけでなく、それぞれの患者において急速に「進展する」癌シグニチャーに対するその後の監視においても、指針を提供することができる。
従って、本発明の多重化近接ベース協調的イムノアッセイプラットフォームは、超感度及び特異性をもってCTC及びmFNAなどの限られた試料について有用な臨床情報を提供して、腫瘍医が「個人的」癌プロファイル変化に従ってそれぞれの患者に対する疾患治療選択肢を調整することを補助又は支援する。
参考文献
1.Tanner M, Ja¨rvinen P, and Isola J. Amplification of HER-2/neu and Topoisomerase IIa in Primary and Metastatic Breast Cancer. Cancer Research 61, 5345-5348. 2001
2.Tapia C, Savic S, Wagner U, Rene Schonegg R, Hedvika Novotny H, Grilli B, Herzog M, Barascud A, Zlobec I, Cathomas G, Terracciano L, Feichter G, Bubendorf L. HER2 gene status in primary breast cancers and matched distant metastases. Breast Cancer Research 9, R31. 2007
3.Lear-Kaul K, Yoon H, Kleinschmidt-DeMasters BK, McGavran L, Singh M. HER-2/neu Status in Breast Cancer Metastases to the Central Nervous System. Arch Pathol Lab Med, 127, 1451-1457. 2003
4.Simmons C, Miller N, Geddie W, Gianfelice D, Oldfield M, Draitsaries G, Clemons M. Does confirmatory tumor biopsy alter the management of breast cancer patients with distant metastases? Ann of Oncology, doi:10.1093/ annonc/ mdp028, 2009
5.Fabi A, Benedetto A, Metro G, Melucci E, Vici P, Nistico C, Fussillo M, Cognetti F, Mottolese M. Changes in HER2 overexpression between primary tumor and autologous metastases: Correlations with clinical and biological features
6.Meng S, Tripathy D, Shete S, Ashfaw R, Saboorian H, Haley B, Frenkel E, Euhus D, Leitch M, Osborne C, Clifford E, Perkens S, Beitsch P, Khan A, Morrison L, Herlyn D, Terstappen LW, Lane N, Wang J, Urh J. uPAR and HER-2 gene status in individual breast cancer cells from blood and tissues. PNAS 103:17361-4, 2006
7.Meng S, Tripathy D, Shete S, Ashfaw R, Haley B, Perkins S, Beitsch P, Khan A, Euhus D, Osborne C, Frenkel E, Hoover S, Leitch M, Clifford E, Vitetta E, Morrison L, Herlyn D, Terstappen L, Flemming T, Fehm T, Tucker R, Lane N, Wang J, Uhr J. HER-2 gene amplification can be acquired as breast cancer progresses. PNAS 101:9393-8. 2004
実施例3.近接媒介性マイクロアレイイムノアッセイを用いた転移性腫瘍における循環腫瘍細胞(CTC)中の受容体チロシンキナーゼ(RTK)のプロファイリング
要約
EGFR及びHER2の異常な活性化は様々なタイプの癌進行に結び付けられており、そして原発性腫瘍とCTCとの間の発現状態の変化は有意な頻度で生ずると報告されている。連続的に採取されたCTC中のEGFR/HER2リン酸化を検出する方法は全体的な疾患プロファイル変化への有用な洞察を提供することができるので、個々の患者に対する療法の組み合わせにより良い選択に導くことができる。標的分子におけるリン酸化を検出するために、三重抗体−酵素チャネリング多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームを開発した。それは、標的タンパク質がマイクロアレイ表面上に捕捉されると2つの検出子の酵素コンジュゲート抗体の共局在性により特有な免疫複合体が形成されることを利用する。近接した2つの検出子の酵素の間のチャネリング事象は、単細胞レベル感度でのRTKのプロファイリングを可能にした。臨床試料について本発明の方法の妥当性確認をするために、様々な療法レジメンにおける転移性疾患を有する27例の乳癌患者由来のCTCを分析した。本発明の多重化された近接媒介性イムノアッセイは、様々な癌患者から単離されたCTC中のRTKの増幅及び活性を首尾よく検出した。増幅及び活性化したHER2を伴うCTCを、HER2陰性原発性腫瘍を有する17例の乳癌患者のうち5例(29%)で見出した。転移性ステージにおいて見出されるCTCは最も侵攻性の侵入細胞集団を表すので、連続的なCTCプロファイリングはより良好な療法選択/調整及び疾患監視に導くことができる。
序論
固形腫瘍を有する患者の血液中の癌細胞の検出を報告する多数の研究がある。転移性乳癌を有する患者における第一選択療法の開始前の循環腫瘍細胞(CTC)の検出は、無進行生存率(progression free survival)及び全体的生存率を高度に予測する(1〜3)。乳癌において、腫瘍組織の分析に基づいた、原発性乳癌と遠隔転移との間のHER−2遺伝子状態の関係は多くの研究において記載されている(4〜10)。原発性腫瘍組織中での療法標的の発現は遠隔腫瘍部位における発現と異なっていることがあり、その相異は経時的に現れることがある。標的発現の変化は治療の効果に影響を与えることがあり、そしてその変化を確実にタイムリーに知ることができれば、療法を誘導するのに用いることができよう。それらは連続的な腫瘍生検より容易に患者から得ることができるので、CTC(転移部位から採取されるFNA試料と同様に)を用いてこれらの変化を監視することができる。本明細書に記載の多重化近接ベースイムノアッセイを用いてCTC中のErbBファミリー受容体チロシンキナーゼ(RTK)EGFR及びHER2の発現及び活性化レベルをプロファイルする。
方法
多重化近接アッセイ:所定の実施形態において、本発明のアッセイは、(1)多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームを(2)三重抗体−酵素チャネリングシグナル増幅法と組み合わせて基礎とする。特異性を保存しながら超高感度を与える三重抗体−酵素アプローチにより特有かつ新規な設計を提供する:(1)マイクロアレイ表面上に連続希釈によりプリントされた標的特異的な抗体によって、選択された標的を捕捉する。このフォーマットは、酵素と結合した2つの追加の検出子−抗体の共局在性を必要とする(例えば、図24参照)。(2)捕捉抗体による最初の標的結合と捕捉された標的分子上の交替エピトープを認識するグルコースオキシダーゼ(GO、TON10/分間)コンジュゲート抗体の二次結合とによって形成される免疫複合体はGO基質であるグルコースの存在下にHを生成する。(3)次いで、捕捉された標的に結合する西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートされたホスホ−ペプチド特異的抗体によって、標的特異的なHの局所的流入が利用される。リン酸化された標的の検出のための特異性は、3つの異なる抗体の同時結合の要件によって大きく高められる。本発明の方法により、わずか〜2〜3×10というリン酸化事象の検出及び定量化がルーチン的に達成され、このことはその検出を「単」細胞レベルに導く。
スライドプリンティング:接触型マイクロアレイプリンター(Genetix社)を用いて、16パッドのニトロセルロースFASTスライド(Whatman社)上にプリントした。
FNA:凍結した乳癌組織はProteoGenex社の製品であった。患者は全て、ステージII又はIIIの乳管癌を有する白人であった。G23ニードルを用いて凍結腫瘍組織に5〜10回通すことによってFNA試料を採取した。採取したFNAを溶かしそして近接アッセイを実施するまで−80℃で保存した。
CTC:CTC−Profiler(Veridex社)を用いて抗Ep−CAM抗体でコーティングされた磁性粒子により癌患者の全血からCTCを単離した。濃縮CTCを活性化し、溶解させ、そしてアッセイの実施まで−80℃で保存した。
結果
感度
本発明者らは、細胞系A431及びSKBR−3において単細胞の感度レベルでEGFR及びHER2の活性化及び発現を検出した。これらの細胞系は、それらの細胞膜上で1細胞当たり全RTK〜1×10を発現するが、全RTKのサブセットだけがリン酸化されており、このようなリン酸化は経路活性化に必要とされる。両方の細胞系はそれらの活性化されたRTKの約10%でピークに達する(1細胞当たり〜1×10リン酸化事象)。本発明者らのフォーマットは、図11に示したように、本発明者らが単細胞感度で10より少ない活性化事象を検出することを可能にした。
凍結組織FNA:本発明者らのアッセイフォーマットの有用性をさらに証明するために、本発明者らは、29例のステージII又はIIIの凍結乳管癌(14例は既知のHER2−IHC状態を有する)からG23ニードルを用いてFNA試料を採取した。本発明者らのアッセイによって検出されたHER2受容体の発現及び活性化は腫瘍IHCスコアと一致する(図12)。本発明者らは、4例の患者が原発性腫瘍において高いIHCスコア(3+)を有していることを知っており、この4例の患者は皆、HER2の高い発現及び高い活性化を有している。興味深いことに、HER2発現(+1 IHC)を有するER陽性患者の20%はかなりの量の活性化HER2を有する。このことは、ホルモン療法に対して耐性の患者において意味を有していることができよう。
図13(上部)は、既知のHER2 IHC状態を有する12例のFNA試料由来のリン酸化ErbB受容体(HER1、HER2、HER3、及びp95)、PI3K、及びSHCのレベルを説明する「ヒートマップ」を示す。この図に示されたデータは、近接アッセイフォーマットにより検出されたHER2受容体の活性化が原発性腫瘍IHCスコアと一致することを確証する。図13(下部)は、既知のHER2 IHC状態を有するFNA試料のサブセット中のトータルHER2及びp95レベルのウェスタンブロット分析を示す。
CTC:転移性癌を有する患者の血液からCTCを単離した。とりわけ、27例の転移性乳癌患者及び60例の健常なボランティアの全血に由来するCTCを、EGRF(HER1)及びHER2発現及び活性化について分析した。原発性腫瘍において陰性HER2発現であってかつCTCにおいてHER2陽性への転換を有する乳癌患者の数を図14に示す。重要なことには、HER2陰性原発性腫瘍を有する患者の29%が増幅されかつ活性化されたHER2を伴うCTCを有していた。図15は、IHC画像法(Veridex社)によるCTC中のHER2の発現の確認を示している。
検出の限界:60例の健常な対照の試験に基づいて、トータル及びリン酸化HER1及びトータル及びリン酸化HER2について検出の下限(LOD)及び定量化の下限(LLOQ)を決定した。既知レベルのHER1又はHER2及び刺激後のリン酸化度を発現する細胞系を用いて作成された標準曲線からの計算に基づく算出単位(computed unit)(CU)によるデータを表5に示す。
結論
比類なき感度及び特異性を有する新規な技術は、癌患者から単離したCTC中のErbB RTKの活性化を首尾よく検出した。活性化EGFR及びHER2を単細胞感度で検出した。凍結乳癌組織由来のFNA試料の試験は、報告されたHER2状態(IHC)と本発明者らの近接アッセイを用いた結果との間での一致を示した。CTCの連続的サンプリングにおけるキナーゼ及び他のシグナル伝達経路分子の発現/活性化プロファイリングは、時間及び療法の関数としての腫瘍細胞中に生ずる変化についての有用な情報を提供する。この方法は、適切量であるが限られた量の試料、例えば、CTC、転移性FNA、気管支洗浄液などを分析することにより、標的化治療手段の初期選択に対してだけでなく、それぞれの患者において急速に「進展する」癌シグニチャーに対するその後の監視においても、指針を提供することができる。
重要なことには、本発明の方法は、HER2などの所定のErbB RTKの活性化及び/又は発現状態に関して原発性腫瘍とCTCとの間で変化が生じた患者の同定を可能にする。例えば、活性化HER2を有するCTCがHER2陰性原発性腫瘍を有する転移性乳癌患者の29%に見出されたが、このことは、HER2陰性原発性腫瘍のHER2陽性CTCへの転換を検出しそして治療決定(例えば、HER2陽性CTCの検出に基づくHerceptin(商標)療法)を誘導する上で本明細書に記載した方法の有用性を示している。転移性ステージにおいて見出されるCTCは最も侵攻性の侵入細胞集団を表すので、連続的なCTCプロファイリングはより良好な療法選択/調整及び疾患監視に導くことができる。
参考文献
1.Cristofanilli M. Budd GT, Ellis MJ, Stopeck A, Matera J, Miller MC, Reuben JM, Doyle GV, Allard WJ, Terstappen LW, Hayes DF. Circulating tumor cells, disease progression, and survival in metastatic breast cancer. N Engl J Med 351:781-91, 2004
2.Riethdorf S, Fritsche H, Muller V, Rau T, Schindlbeck C, Rack B, Janni W, Coith C, Beck K, Janickje F, Jackson S, Gornet T, Cristofanilli M, Pantel K. Detection of circulating tumor cells in peripheral blood of patients with metastatic breast cancer: a validation study of the CellSearch system. Clin Cancer Res 13:920-8, 2007
3.Cristofanilli M, Broglio KR, Guarneri V, Jackson S, Fritsche HA, Islam R, Dawood S, Reuben JM, Kaum SW, Lara JM, Krishnamurthy S, Ueno NT, Hortobagyi GN, Valero V. Circulating tumor cells in metastatic breast cancer: biologic staging beyond tumor burden. Clin Breast Cancer 7:471-9, 2007
4.Tanner M, Ja¨rvinen P, and Isola J. Amplification of HER-2/neu and Topoisomerase IIa in Primary and Metastatic Breast Cancer. Cancer Research 61, 5345-5348. 2001
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10.Meng S, Tripathy D, Shete S, Ashfaw R, Haley B, Perkins S, Beitsch P, Khan A, Euhus D, Osborne C, Frenkel E, Hoover S, Leitch M, Clifford E, Vitetta E, Morrison L, Herlyn D, Terstappen L, Flemming T, Fehm T, Tucker R, Lane N, Wang J, Uhr J. HER-2 gene amplification can be acquired as breast cancer progresses. PNAS 101:9393-8. 2004
11.Pusztai L, Ayers M, Stec J, Clark E, Hess K, Stivers D, Damokosh A, Sneige N, Buchholz TA, Esteva FJ, Arun B, Cristofanilli M, Booser D, Rosales M, Valero V, Adams C, Hortobagyi GN, and Symmans FW. Gene Expression Profiles Obtained from Fine-Needle Aspirations of Breast Cancer Reliably Identify Routine Prognostic Markers and Reveal Large-Scale Molecular Differences between Estrogen-negative and Estrogen-positive Tumors. Clinical Cancer Research, Vol. 9, 2406-2415, July 2003
実施例4.Herceptin(商標)感受性及び耐性細胞中のErbBファミリー受容体チロシンキナーゼ(RTK)活性化の分析
本例は、Herceptin(商標)感受性細胞及びHerceptin(商標)耐性細胞中のErbB活性化及び二量体形成の分析を示す。とりわけ、本例は、活性化p95/HER3ヘテロ二量体の増加したレベルがHerceptin(商標)に対する耐性と関連付けられることを示す。本例は、高レベルの活性化p95及びHER2がHerceptin(商標)耐性細胞中に存在することも示す。最後に、本例は、Herceptin(商標)感受性細胞が低レベルの活性化p95、HER2、HER3、及びPI3Kを有することを示す。従って、活性化p95/HER3ヘテロ二量体レベル及び/又は活性化p95、HER2、HER3、及び/又はPI3Kレベルにおける何らかの変化の存否を検出することによって、Herceptin(商標)治療の有効性を評価し及び最適化することができる。この方法は、有利なことに、より事実に通じた療法選択/調整及び疾患監視に導く。
Herceptin(商標)耐性細胞系(BT/R):BT−474細胞から細胞をクローニングした。Herceptin(商標)はBT/R細胞中のHER2リン酸化及び細胞増殖を阻害しない。BT/R細胞及びBT−474細胞試料を、Herceptin(商標)100μg/mLを用いて2、8、及び24時間処理した。これらの細胞を溶解させ、BCAタンパク質アッセイによってタンパク質濃度を決定した。
図16は、Herceptin(商標)処理におけるHerceptin(商標)感受性BT474細胞では、Herceptin(商標)処理を行わないBT474細胞と比較して、HER2のリン酸化の有意な阻害があったことを示す。図16は、Herceptin(商標)耐性BT/R細胞がHerceptin(商標)処理においてHerceptin(商標)感受性BT474細胞と比較して有意に高いHER2の活性化を示したことも示している。図16はさらに、BT474細胞及びBT/R細胞の両方についてHerceptin(商標)処理を行わない同じ細胞と比較して、トータルHER2レベルにおいて穏やかな減少があったことを示す。
図17は、Herceptin(商標)耐性BT/R細胞がHerceptin(商標)処理においてHerceptin(商標)感受性BT474細胞と比較して有意に高いp95HER2の活性化を示したことを示している。図17は、Herceptin(商標)耐性BT/R細胞がHerceptin(商標)処理においてHerceptin(商標)感受性BT474細胞と比較してHER2、HER3、及びPI3Kの増加した活性化を示したことも示す。図18は、Herceptin(商標)を用いて処理されたBT474細胞及びBT/R細胞の両方におけるHER1、p95HER2、HER2、HER3、PI3K、及びSHCの発現を示す。
図19は、Herceptin(商標)の非存在下でのBT474細胞におけるErbB経路の模式図を示す。HER2/HER2二量体及びHER2/HER3二量体を検出した。HER1/HER2二量体は極めて弱かった。p95/HER3二量体はBT/R細胞中より3〜4倍弱かった。
図20は、Herceptin(商標)処理を用いたBT474細胞におけるErbB経路調節の模式図を示す。HER2/HER2二量体及びHER2/HER3二量体はダウンレギュレートされた。p95/HER3レベルには変化がなかった。
図21は、Herceptin(商標)の非存在下でのBT/R細胞におけるErbB経路の模式図を示す。HER2/HER2二量体及びHER2/HER3二量体はBT474細胞中より2〜3倍強かった。HER1/HER2二量体は弱いシグナルを与えた。p95/HER3はBT474細胞中より〜3倍強かった。
図22は、Herceptin(商標)処理を用いたBT/R細胞におけるErbB経路調節の模式図を示す。HER2/HER2二量体は2時間の時点で増加し、その後で減少した。HER2/HER3二量体はダウンレギュレートされた。HER1/HER2二量体はダウンレギュレートされた。p95/HER3は増加し、その後に安定化した。
実施例5.典型的な近接アッセイスライドフォーマット
本例は、本発明の近接アッセイの1つの好ましい実施形態を説明する。この実施形態の近接アッセイは、循環腫瘍細胞(CTC)及び/又は組織試料(例えば、FNA)中の標的タンパク質の発現及び活性化を測定する抗体−マイクロアレイをベースとしたプラットフォームを用いる。この近接アッセイは、HER1及びHER2のリン酸化の程度を分析することによってタンパク質発現のレベル及び活性化の状態を分析する。或る場合に、この実施形態の近接アッセイは、CTC−Profiler(Veridex社)を用いて抗Ep−CAM抗体でコーティングされた磁性粒子により全血約7.5mLから単離されたCTCを用いる。次いで、単離されたCTCを成長因子(例えば、EGF+ヘレグリン)で刺激した後、その後のErbB経路発現/活性化に対する免疫分析を行うことができる。
所定の場合には、この実施形態の近接アッセイはスライドフォーマットを用いそして複数の標準物質及び対照を含む。図23は、トータル及びリン酸化HER1及びHER2レベルを分析するための典型的なスライドフォーマットのアレイデザインを示す。各スライド上には16のパッドがあり、各パッド上には300スポット用の場所が備えられている。接触型マイクロアレイプリンターを用いて16パッドニトロセルローススライド上にプリントした。各スポットは、追跡用染料及び連続希釈により三連にプリントされた特異的捕捉抗体(Ab)又は対照のいずれかを含んでいる。捕捉Abを1mg/mL、0.5mg/mL、及び0.25mg/mLでプリントした。トータル及びホスホ(Phospho)両方のアッセイにおけるオリエンテーション参照として精製IgGをプリントした。試薬対照としてBSA−ホスホをプリントした。分析キャリブレーション反応を8パッド上で及び内部品質管理反応を2パッド上で実施する。各スライドで、4つまでの未知患者試料の処理を行うことができる。トータルの標的タンパク質又はリン酸化された活性化タンパク質の発現を、目的のタンパク質を発現する陽性の細胞系由来の希釈溶解物の標準曲線からの計算に基づく単位である、算出単位(CU)により報告することができる。それぞれの試料に対して2つの別個のスライドを用い;一方のスライドを全血から単離された細胞中の標的タンパク質の発現を検出するために(「全アッセイスライド」)そして他方を標的タンパク質活性化の程度を検出するリン酸化の検出に(「ホスホアッセイスライド」)用いる。
この実施形態において、患者及び正常対照個体からの全血をETDAチューブに採取する。採血の間のあらゆる皮膚細胞汚染を防ぐために、本発明者らの方法では、採取した最初の血液3mLを廃棄する(又はCTC計数及びCellSearchキットを用いた可視的免疫染色のためにCellSaveチューブに採取する)ことを明記している。次いで、2つの追加のEDTAチューブを用いてそれぞれのチューブに全血7.5mLを採取する。次いで、自動化磁性細胞分離装置(Veridex AutoPrep)を用いてそれぞれのチューブからCTCを単離する。次いで、濃縮された試料を合して、成長因子を用いて刺激する。次いで、活性化された細胞を溶解させ、すぐに処理するか又はその後の免疫分析のために−80℃で保存する。
刺激された細胞の溶解物中のタンパク質標的をイムノ−マイクロアレイ表面上の捕捉抗体とインキュベートすることにより、この実施形態の近接アッセイを開始する。細胞溶解物中のあらゆるHER1又はHER2 RTKはそれらの対応する捕捉抗体に結合し、引き続いて2つの追加の検出子抗体によって固有の免疫複合体が形成される。検出子抗体の1つはグルコースオキシダーゼ(GO)にコンジュゲートされておりグルコースの存在下でHを発生する。第2のHRPコンジュゲート検出子抗体が前記免疫複合体内で近接して結合すると、陽性シグナルが生成される。引き続いてのチラミド媒介性シグナル増幅プロセスはアッセイの感度を高める。3つの特異的Abが異なるエピトープに同時に結合することによりタンパク質検出の特異性が高められ、そして感度は増幅によって単細胞ほどの高感度となることができる。図24は、リン酸化HER1を検出するための典型的な近接アッセイの模式図を示す。
本明細書に記載したマイクロアレイプラットフォームは多重化の利益を提供する。アッセイを拡大する能力は、限られた利用可能な試料から複数の受容体及びシグナル伝達分子の測定を行うハイコンテンツな分析を可能にする。マイクロアレイはスケーラブルであり、臨床的に有用な診断アッセイに必要なスループットを達成する潜在能力を有している。
実施例6.マイクロアレイイムノアッセイを用いたHER2受容体及び他の受容体チロシンキナーゼの切断形の検出
HER2過剰発現性の乳癌は予後不良であり、HER2標的化モノクローナル抗体療法に対して耐性であることが多い。初めからの耐性又は獲得耐性のメカニズムの1つは、アミノ末端細胞外ドメインを消失している切断HER2受容体であるp95HER2の発現である。ヘテロ二量体を形成する潜在能力を有する様々な形態のHER2受容体及び他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)を原発性腫瘍及び転移性腫瘍におけるヘテロ二量体の発現レベル及び活性化の程度についてプロファイリングする方法は、変化する疾患原因への有用な洞察を提供する。
方法:本明細書に記載した技術はErbBファミリーRTK中のリン酸化事象を特異的に検出することができる。多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームは、標的タンパク質がマイクロアレイ表面上に捕捉されると2つの検出子の酵素コンジュゲート抗体の共局在性を要件として特有な免疫複合体が形成されることを利用する。近接した2つの検出子酵素(グルコースオキシダーゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼ)間のチャネリング事象は極限感度でのRTKのプロファイリングを可能にした。分析上の特異性は、3つの異なる抗体の同時結合の要件を前提として大きく高められる。検出子抗体の異なる配置は切断された標的(例えば、p95HER2)のその正常のカウンターパート(例えば、HER2)からの区別された検出を可能にする。様々なER/PR/HER2状態を有する乳癌患者(ステージII〜IV)から採取された240例のFNA試料を用いたシグナル伝達経路分子の発現及び活性化についての首尾よいプロファイリングを本明細書に記載する。
G23ゲージニードルを用いて採取したFNA試料を、p95HER2、HER2、HER1、HER3、PI3K、Shc及びIGF−1Rを含む様々なRTKの発現及び活性化状態について分析した。その結果は、以下を示す:
▼原発性HER2−IHC状態とHER2発現との間の100%一致
▼HER2陽性(HER2:3+及び2+でFISH+)患者の40%を超える患者における様々な程度のp95HER2の存在
▼p95HER2発現体の〜50%は活性化p95HER2を有していた
▼HER2陽性試料の25%は或るレベルのHER1活性化も有していた
▼HER2陰性(HER2:2+でFISF−、1+及び0)試料もHER2発現と100%一致したが、それらの多くは低いが有意なレベルのHER2及びHER1活性化を示した。
これらの知見を適切な標的化治療手段の選択に用いることができる。
考察:多重化イムノ−マイクロアレイを用いて、様々なER/PR/HER2状態を有する固有の乳癌患者から採取された240例のFNA試料中のp95HER2、HER2、他のRTK(HER3、HER1、IGF−1R、SHC、及びPI3Kを含む)の発現及びリン酸化を検出した。拡大された経路パネルを用いて様々な転移部位の腫瘍をプロファイルすることができることにより、それらの様々な転移潜在能力についての情報を与えることができた;従って、最小限の侵襲的な1回通過のmFNA試料を用いて、疾患プロファイルが変化するにつれてそれに合わせた療法を選択することができる。
実施例7.治療的意味としての循環腫瘍細胞を用いた再発性乳癌患者のErbB経路についてのプロファイリング
HER2は上皮成長因子受容体ファミリーにおける4つの膜貫通受容体チロシンキナーゼ(RTK)の1つであり、HER2陽性表現型はHER2遺伝子増幅を伴う侵攻性サブタイプの乳癌と関連付けられてきた。IHC又はFISH分析により乳癌の約15〜20%がHER2陽性であると考えられる。再発転移性疾患に見出される循環腫瘍細胞(CTC)と原発性腫瘍との間のHER2発現状態の変化は有意な頻度で生ずることが報告されている。連続的に採取されたCTC中のHER2発現及びリン酸化を検出する方法は全体的な疾患プロファイル変化への有用な洞察を提供することができ、従って個々の患者に対する療法の組み合わせのより良い選択に導くことができる。
方法:標的分子におけるリン酸化を検出するために、三重抗体−酵素チャネリング多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームを開発した。標的タンパク質がマイクロアレイ表面上に捕捉されると2つの検出子の酵素コンジュゲート抗体の共局在性を介した免疫複合体が形成されることによって典型的な高いアッセイ特異性を達成した。近接した2つの検出子の酵素間のチャネリング事象は、単細胞レベル感度でのRTKのプロファイリングを可能にした。臨床試料について本発明の方法の妥当性確認をするために、様々な療法レジメンによる77例の乳癌患者由来のCTCを、該患者の治療過程に沿って様々な時点で分析した。
結果:77例の転移性癌患者及び60例の健常ボランティアの全血由来のCTCを、HER2発現及び活性について分析した。再発性疾患について有意なHER2状態転換が観察された。原発性腫瘍で陰性のHER2発現を有する患者の29%が単離されたCTC中でHER2増幅を示した。原発性HER2陰性疾患を有する患者の52%に、リン酸化HER2受容体が見出された。近接媒介性イムノアッセイを用いたアッセイ感度及び特異性の向上は、単離されたCTCをリガンドを用いて刺激した場合のHER2活性化(増幅を有しない場合でさえ)の検出を可能にした。
考察:本発明の多重化された近接媒介性イムノアッセイは、再発性乳癌患者から単離されたCTC中でHER2 RTKの発現及びその活性化の程度を首尾よく検出した。転移性ステージで見出されたCTCは最も侵攻性かつ浸潤性の細胞集団を表しており、連続的CTCプロファイリングは、RTK標的化療法として適切なキナーゼ阻害剤を選択することができる選択肢がある場合に、より良好な療法選択/調整及び疾患/治療監視に導く。有意な数の患者はCTC中にHER2増幅を獲得したが、再発転移性疾患においては実質的により高率のCTC−HER2活性化が見出された。本発明の特有の三重抗体媒介性イムノマイクロアレイ分析はCTC−HER2の単細胞レベルのプロファイリングを可能にした。この原理をさらに、他のシグナル伝達経路分子の発現/活性化をプロファイリングするのに適用する。連続的に採取されたCTCをプロファイリングできることにより、時間及び療法の関数として腫瘍細胞中に生ずる変化についての有用な情報が提供される。本発明の方法は、標的化治療手段の初期選択に対してだけでなく、それぞれの患者において急速に「進展する」癌シグニチャーに対するその後の監視においても、指針を提供することができる。
実施例8.イムノ−マイクロアレイをベースとした経路分析を用いるHerceptin(商標)耐性の特徴付け
背景:HER2過剰発現性の乳癌は予後不良であり、HER2標的化モノクローナル抗体療法に対して耐性であることが多い。初めからの耐性又は獲得耐性のメカニズムの1つは、p95HER2の発現によるもの及び/又はErbB受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーの他のメンバーとのヘテロ二量体を形成することによるものである。癌細胞はシグナル伝達経路の重複性も利用し、IGF−1Rなどの非ErbB RTKとヘテロ二量体を形成する。この例は、抗HER2モノクローナル抗体療法に対する様々な感受性を有するHER2増幅細胞系を用いてHerceptin(商標)耐性のメカニズムの特徴付けを説明する。HER2増幅を伴う乳癌をさらに他の経路分子についてサブプロファイリングして最も効果的な標的化薬剤を同定するべきである。
方法:ErbBファミリーRTK(例えば、p95HER2、HER2、HER3、及びHER1)、それに続く下流の経路分子(例えば、Shc及びPI3K)、及び非ErbB RTK(例えば、IGF−1R)における発現レベル及びリン酸化度を特異的に検出することができる新規の技術を開発した。この多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームは、標的タンパク質がマイクロアレイ表面上に捕捉されると2つの検出子の酵素コンジュゲート抗体の共局在性を要件として特有な免疫複合体が形成されることを用いる。近接した2つの検出子の酵素(グルコースオキシダーゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼ)の間のチャネリング事象は、極限感度でのRTKのプロファイリングを可能にする。3つの異なる抗体の同時結合の要件を前提として分析特異性が大きく高められる。検出子抗体の異なる配置は、切断された標的(例えば、p95HER2)のその正常のカウンターパート(例えば、HER2)からの特異的な検出を可能にする。この例は、HER2標的化モノクローナル抗体療法に対して様々な感受性を有するHER2増幅細胞におけるHerceptin(商標)処理による、p95HER2、HER2、HER1、HER3、PI3K、Shc、及びIGF−1Rを含む、p95HER2に関連した(例えば、p95HER2/HER3ヘテロ二量体)及び関連しないシグナル伝達経路分子の特異的なパターンを説明する。
結果:
●Herceptin(商標)耐性BT474細胞は、Herceptin(商標)で処理された際にHerceptin(商標)感受性細胞集団より約5倍強いp95HER2媒介性経路活性化を示した。
●Herceptin(商標)耐性細胞集団において、2〜3倍高いレベルのリン酸化HER2及びHER3のほかに、弱いHER1活性化も見出された。
●Herceptin(商標)処理は、Herceptin(商標)感受性細胞においてHER2及びHER3 RTKの間でリン酸化レベルを低下させた。
考察:多重化イムノマイクロアレイを用いて、p95HER2、HER2、ヘテロ二量体を形成する潜在能力を有する他のRTK(HER3、HER1、及びIGF−1Rを含む)、及び下流経路分子(Shc及びPI3Kを含む)の発現及びリン酸化を検出した。本発明の多重化イムノマイクロアレイは、その固有の三重イムノアッセイフォーマットにより極めて高い特異性及び感度を有しているので、限られた量の試料(例えば、CTC及びFNA)に対して用いることができる特有の潜在能力を有している。連続的に採取した試料を可能性のある標的化薬剤を用いて処理することができ、そして処理後の経路分析を行って、このような処理の有効性のレベルへの機構的な洞察を提供することができた。このプラットフォームは、最も効果的な療法を選択し及び施された療法を監視するための関連する臨床情報を提供する。
実施例9.Herceptin(商標)耐性の特徴付け
HER2の全長及び切断形(例えば、p95HER2)におけるリン酸化事象を特異的に検出することができる新規の技術を開発した。ここで、本発明者らは、抗HER2モノクローナル抗体療法に対して様々な感受性を有するHER2増幅細胞系を用いて、Herceptin(商標)耐性のメカニズムの特徴付けを報告する。Herceptin(商標)処理におけるHerceptin(商標)感受性及びHerceptin(商標)耐性のHER2増幅細胞中のp95HER2、HER2、HER3、及びPI3Kの特異的な活性化パターンを報告する。Herceptin(商標)耐性BT474細胞は、Herceptin(商標)を用いた処理においてHerceptin(商標)感受性細胞より有意に高いp95HER2のリン酸化を示したが、トータルHER2及びp95HER2の発現は感受性細胞及び耐性細胞のいずれでも減少した。活性化p95HER2の発現などの耐性の潜在的メカニズム及び経路活性化の分析を用いて、特定の患者を最も利すると考えられる標的化療法を選択し及び経時的に療法に対する応答を監視する。
HER2は乳癌の約25%で過剰発現されており、その過剰発現は予後不良と関連付けられる。HER2標的化モノクローナルAb(Herceptin(商標))を用いた標的化療法は、実質的な臨床的利益を提供する。しかしながら、HER2過剰発現性乳癌を有する多くの患者は初めからの耐性のために応答しないか又は経時的にHerceptin(商標)に対する耐性を獲得する。IGF−1Rの活性化、c−METの活性化、及びPTENの不活性化又は低下を含む、Herceptin(商標)耐性についての多数の潜在的メカニズムが記載されてきた。耐性の別の潜在的メカニズムは、細胞外ドメインを欠くがキナーゼ活性を有するHER2受容体の切断形の発現である。p95HER2として知られる切断HER2はHER2を過剰発現する乳癌の約30%で発現される(Scaltriti 2007)。p95はHER3をヘテロ二量体化することができ、ヘレグリンを用いた活性化はp95HER2リン酸化を誘導する。チロシンキナーゼ阻害剤によってp95の活性化を阻害することができるがHerceptin(商標)によっては阻害されない(Xia 2004)。原発性乳房腫瘍組織中の高いレベルのp95の存在は、HER2陽性乳癌患者のサブセットを悪い結果に対してマークする、強力な予後診断因子であることが示された(Saez 2006)。ここで、本発明者らは、抗HER2モノクローナル抗体療法に対する様々な感受性を有するHER2増幅細胞系を用いたHerceptin(商標)耐性のメカニズムの特徴付けを報告する。
方法
ErbBファミリーRTK(例えば、p95HER2、HER2、HER3、及びHER1)、それに続く下流の経路分子(例えば、PI3K)、及び非ErbB RTK(例えば、IGF−1R及びc−MET)における発現レベル及びリン酸化度を特異的に検出することができる新規の技術を開発した。
1.マイクロアレイ表面上に連続希釈によりプリントされた標的特異的抗体によって選択された標的を捕捉する。このフォーマットは、2つの追加の検出子−酵素結合抗体の共局在性を利用することができる(図24に図示)。
2.捕捉抗体による最初の標的結合及び捕捉された標的分子上の交替エピトープを認識するグルコースオキシダーゼ(GO)コンジュゲート抗体の二次結合により形成された免疫複合体は、GO基質であるグルコースの存在下にHを生成することができる。
3.次いで、前記捕捉された標的に結合する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたホスホ−ペプチド特異的抗体により標的特異的なHの局所的流入が利用される。3つの異なる抗体の同時結合の要件によってリン酸化標的の検出に対する特異性が大きく高められる。この方法により、わずか〜2〜3×10というリン酸化事象の検出及び定量化がルーチン的に達成される。
●スライドプリンティング:非接触型マイクロアレイプリンター(Gesim社)を用いて16パッドのニトロセルロースFASTスライド(Whatman社)上にプリントした。
図25は、トータル及び活性化全長及び切断HER2の検出を示す。BT474細胞溶解物を、HER2の細胞外ドメイン(ECD)又は細胞内ドメイン(ICD)に対するAbを用いて免疫沈降させた後、ホスホチロシン又はICDのいずれかに対するAbを用いてウェスタンブロットした。
図26は、トータル及びリン酸化p95の検出を示す。細胞外HER2エピトープ(ECD)及び細胞内HER2エピトープ(ICD1、CD2、及びICD3)に対する捕捉抗体をプリントした。表示した数の細胞を有するBT474細胞溶解物を試験し、トータル及び活性化p95HER2の発現を決定した。結果は、10〜50細胞の感度を実証している。
図27は、Herceptin(商標)を用いた処理が耐性細胞において全長及び切断HER2の活性化レベルを増加させるが感受性細胞においては増加させないことを示している。感受性(BT474)細胞及び耐性(BT/R)細胞を様々な時間にわたりHerceptin(商標)を用いて処理しそして溶解させた。細胞溶解物を、トータルHER2(A)及びリン酸化HER2(C)の発現について並びに全p95HER2(B)及びリン酸化p95HER2(D)の発現について分析した。
図28は、Herceptin(商標)を用いた処理並びに様々な時点における感受性(BT474)細胞及び耐性(BT/R)細胞中のHER3及びPI3Kの活性化レベルを示す。
要約
全長及び切断HER2を、高感度多重イムノアッセイにより分析した。
Herceptin(商標)耐性BT474細胞は、Herceptin(商標)を用いた処理においてHerceptin(商標)感受性細胞より有意に高いp95HER2のリン酸化を示した。
トータルHER2及びトータルp95HER2の発現は、Herceptin(商標)を用いて処理された感受性細胞及び耐性細胞のいずれにおいても減少した。
Herceptin(商標)を用いて処理された細胞中のHER3及びPI3Kリン酸化は、早期時点では耐性細胞でより高いが、後の時点では感受性細胞及び耐性細胞中の活性化されたHER3及びPI3Kのレベルは同様である。
IGF−1R及びc−METの発現及びリン酸化レベルは感受性及び耐性BT474細胞で同等であった。
このアッセイは、その高い特異性及び感度により、限られた試料中の全長及び切断HER2を検出することができ、そして循環腫瘍細胞及び微細針吸引液に対して用いることができる能力を有している。活性化p95HER2の発現などの耐性の潜在的メカニズム及び経路活性化の分析を用いて、特定の患者を最も利すると考えられる標的化療法を選択することができる。連続的に採取された試料の分析は、標的化治療の有効性のレベルへの洞察を提供することができ、そして医師が経時的に患者の療法を調整することができるようにする。
実施例10.再発性乳癌における循環腫瘍細胞(CTC)中のHER2及び他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)の過剰発現及び活性化の検出の療法的意味
要約
HER2は上皮成長因子受容体ファミリーにおける4つの膜貫通RTKの1つであり、HER2陽性表現型はHER2遺伝子増幅を伴う侵攻性サブタイプの乳癌と関連付けられてきた。IHC又はFISH分析により乳癌の約15〜20%がHER2陽性であると考えられる。最近において、再発転移性疾患に見出される原発性腫瘍とCTCとの間のHER2発現状態の変化は有意な頻度で生ずることが報告されている。連続的に採取されたCTC中のHER2の機能的プロファイリングは全体的な疾患プロファイル変化への有用な洞察を提供することができるので、個々の患者に対する療法のより良い選択に導くことができる。治療過程の間の複数の時点で2つのコホート内の51例の転移性癌患者及び60例の健常ボランティアから採取した全血をCTC−HER2発現及び活性化について分析した。本発明者らは、再発性疾患について有意なHER2状態の転換を観察した。原発性腫瘍においてHER2陰性状態を有する患者の約30%が、単離されたCTC中でHER2過剰発現を示した。リン酸化HER2受容体を、原発性HER2陰性疾患を有する患者の53〜60%に見出した。
序論
原発性腫瘍を調べて標的化療法に対する潜在的な応答性を決定することが治療の標準になってきている。しかしながら、標的発現、活性化及び下流細胞のシグナル伝達タンパク質の完全な特徴付けはめったに行われない。初期診断から転移性疾患の再発までの時間枠の間の腫瘍細胞集団におけるRTK発現パターンの変化は事実上全く評価されていない。原発性腫瘍中のHER2遺伝子状態と対応するCTC中のHER2遺伝子状態との間の良好な一致は、試料を同期的に得た場合に報告された。しかしながら、初期HER2陰性の原発性腫瘍を有する再発患者由来のCTCはHER2増幅を獲得することがあり(1)、このことは疾患管理を変更するのに充分な有意性の原発性病変と転移性病変との間の実質的な不一致を示している。原発性部位と転移部位との間のHER2過剰発現における有意な不一致は乳癌においてIHCを用いて報告されており(2)、そしてCTC中の獲得されたHER2遺伝子増幅は別のグループにより確認された(3)。この疾患プロファイル変化は、細胞シグナル伝達のパターンを経時的に進展させる多くの癌の異種の腫瘍細胞集団への療法上の及び他の圧力(therapeutic and other pressures)によるものであることがある。
多重化近接アッセイ:協調的近接イムノアッセイ(COPIA)は、三重抗体−酵素チャネリングシグナル増幅法と組み合わせた多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームに基づく。この特有かつ新規の設計は、特異性を保存しながら超高感度を与える三重抗体酵素アプローチにより提供される:(1)マイクロアレイ表面上に連続希釈によりプリントされた標的特異的抗体によって、選択された標的を捕捉する。このフォーマットは、2つの追加の検出子−酵素結合抗体の共局在性を要件とする(図29に示す)。(2)捕捉抗体による最初の標的結合と捕捉された標的分子上の交替エピトープを認識するグルコースオキシダーゼ(GO)コンジュゲート抗体の二次結合とによって形成された免疫複合体はGO基質であるグルコースの存在下でHを生成することができる。(3)次いで、捕捉された標的に結合する、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされたホスホペプチド特異的抗体によって、標的特異的なHの局所的流入が利用される。リン酸化された標的の検出のための特異性は、3つの異なる抗体の同時結合の要件によって大きく高められる。この方法により、わずか2〜3×10というリン酸化事象の検出及び定量化がルーチン的に達成され、このことはその検出を「単」細胞レベルに導く。典型的なスライド構成を図29に示す。
07Onc01コホート:局所性リンパ節又は遠隔転移を伴う組織学的に確認された固形癌を有する患者(ステージ3b又は4)。ステージ3b乳癌を有する患者は局所リンパ節ステージングN1、N2、又はN3を有していた。患者らの治療状態を問わず試料を採取した。
08Onc02コホート:侵攻性で、転移ステージIVと評価できる乳癌を有する患者であって、全身治療を開始しようとしている患者。両方のコホートにおける疾患の程度は、主治医(primary physician)による理学的検査及び画像診断によって決定された。用いられた試験は以下の1つ又は2つ以上を含んでいることができる:骨スキャン、PET/CTスキャン、腹部のCT、胸部X線検査及び/又は内臓転移に対する胸部CT、ソノグラム及び/又は軟部組織疾患に対するMRI。
結果
正常血液試料に基づいて参照値を設けた。活性化HER2(pHER2)、発現HER2(tHER2)、及びCKのレベルの分布を図30に要約する。
t検定と同様のノンパラメトリック検定である、両側ウィルコクソン順位和検定(two-sided Wilcoxon rank sum test)を用いてp値を計算した。全ての比較は、統計的有意差(p<0.01)を示す。pHER2及びtHER2状態を決定するために、バックグランドを減算し、CK発現レベルに基づいてシグナルを重み付けした。各患者のCTC中のHER2状態の転換を表6に要約する。経過観察過程の間の08Onc02コホート中のHER2状態変換を図31に示す。コ−メット及び治療評価を図32に示す。
CTCモデル系でCTC−HER2 FISH分析を行った。全血中にスパイクされた細胞を免疫磁気的に単離しHER2状態について分析した。対応するCOPIAに基づく機能的HER2プロファイリングを図33に要約する。
要約
本例は、乳癌患者から単離したCTC中のHER2の活性化を首尾よく検出する比類なき感度及び特異性を持った新規の技術を説明する。転移性乳癌患者由来のCTCの分析により、HER2陰性原発性腫瘍を有する患者の〜60%は活性化HER2を伴うCTCを有していた一方で、〜30%だけがHER2の過剰発現を示したことが示された。活性化HER2及びHER2の過剰発現を有する患者数が処理の12週間にわたり増加した。COPIA対FISHによるCTCの機能的プロファイリングを相関させた。BCA患者におけるCTCのHER2状態の分析に対してCOPIAとFISHとの間の評価相関を行うことができる。
CTCの連続的サンプリングにおけるキナーゼ及び他のシグナル伝達経路分子の発現/活性化プロファイリングをCOPIAプラットフォームを用いて行うことができ、そしてこれは時間及び療法の関数として腫瘍細胞中に生ずる変化について有用な情報を提供する。この方法は、標的化治療手段の初期選択に対してだけでなく、各患者において急速に「進展する」癌シグニチャーに対するその後の監視においても、指針を提供する。本発明者らのHER2転換の知見は、異種の原発性腫瘍細胞集団内でのHER2陽性細胞のクローン選択又は過剰発現に対する遺伝的能力(すなわち、遺伝子増幅)の獲得によるものであることができる。HER2転換の背後のメカニズムを問わず、CTC中のHER2の存在は臨床的注意を要する。
参考文献
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2.Zidan J, Dashkovsky I, Stayerman C, Basher W, Cozacov C, Hadary A. Comparison of HER-2 overexpression in primary breast cancer and metastatic sites and its effect on biological targeting therapy of metastatic disease. Br J Cancer 93:552-6, 2005
3.Hayes DF, Walker TM, Singh B, Vitetta ES, Uhr JW, Gross S, Rao C, Doyle GV, Terstappen LW. Monitoring expression of HER-2 on circulating epithelial cells in patients with advanced breast cancer. Int J Oncol 21:1111-7, 2002
実施例11.乳癌における活性化及び全p95HER2及び他の受容体チロシンキナーゼの発生率(prevalence)
要約
HER2過剰発現性乳癌(BCA)は予後不良であり、HER2標的化モノクローナル抗体療法に対して耐性であることが多い。初めからの耐性又は獲得耐性のメカニズムの1つは、集合的にp95HER2と呼ぶ、アミノ末端細胞外ドメインを消失している様々な形態の切断HER2受容体の発現である。原発性腫瘍及び転移性腫瘍におけるトランス活性化潜在能力を有する様々な形態のHER2受容体及び他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)をプロファイリングする方法は、変化する疾患原因への有用な洞察を与えることができる。本例は、110例の凍結原発性乳癌組織及び様々なER/PR/HER2状態を有する乳癌患者の転移部位から採取された8例のFNA試料におけるシグナル伝達経路タンパク質の発現及び活性化に対するパネルの首尾よいプロファイリングを記載する。
序論
トラスツズマブ耐性についてのいくつかのメカニズムが報告されている。最初に、他のメカニズムの中でもとりわけ、他のRTK(例えば、IGF1−R)の活性化及び切断形のHER2の蓄積が多く報告されている。とりわけ、集合的にp95HER2として知られる、HER2のアミノ末端切断カルボキシル末端断片は、HER2発現性乳癌細胞系及び腫瘍中に頻繁に見出される。様々なシグナル伝達経路間のクロストーク及びフィードバックループは所定の療法的圧力下に腫瘍に対する回避メカニズムを提供し又は経路依存(pathway addiction)は「経路ネットワーク分析」を行う包括的診断ツールを必要とする。いくつかの選択されたバイオマーカーに対して実施される現行のIHC/FISHに基づく技術から得られる臨床情報に基づいてなされる治療決定は、急速に進展する異種疾患を有する患者を治療するには効果的ではない。さらに、現在の技術はそれらの技術が「静的かつ限定された」情報を提供できるに過ぎないので限定されているだけでなく、相当量の組織も必要としている。充分量の試料を得ることは全くチャレンジングなことであったと言え、リアルタイムの疾患監視は不可能に近い。本明細書に記載した特有なアッセイプラットフォームは限られた試料量で多重分析を行うことができる、極めて分析的な特異性を提供する。検出子である抗体の異なる配置は、切断標的(例えば、p95HER2)のその全長カウンターパート(例えば、HER2)からの特異的な検出を可能にする。この研究において、HER2、p95HER2、HER1、HER3、及びIGF1R並びに下流シグナル伝達タンパク質PI3K、Shc、及びc−METの機能的状態(発現及び活性化)を分析した。
方法
多重化近接アッセイ:協調的近接イムノアッセイ(COPIA)は、三重抗体−酵素チャネリングシグナル増幅法と組み合わせた多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームに基づく。この特有かつ新規の設計は、特異性を保存しながら超高感度を与える三重抗体酵素アプローチにより提供される:(1)マイクロアレイ表面上に連続希釈によりプリントされた標的特異的抗体によって、選択された標的を捕捉する。このフォーマットは、2つの追加の検出子−酵素結合抗体の共局在性を要件とする(図29に示す)。(2)捕捉抗体による最初の標的結合と捕捉された標的分子上の交替エピトープを認識するグルコースオキシダーゼ(GO)コンジュゲート抗体の二次結合とによって形成される免疫複合体はGO基質であるグルコースの存在下でHを生成することができる。(3)次いで、捕捉された標的に結合する、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされたホスホペプチド特異的抗体によって、標的特異的なHの局所的流入が利用される。
リン酸化された標的の検出のための特異性は、3つの異なる抗体の同時結合の要件を通じて大きく高められる。本発明の方法により、わずか〜2〜3×10というリン酸化事象の検出及び定量化がルーチン的に達成され、このことはその検出を「単」細胞レベルに導く。
凍結組織:凍結乳癌組織は、ステージII又はIIIの乳管癌を有する白人の患者由来であった。採取された組織試料を溶解させ近接アッセイの実施まで−80℃で保存した。
臨床試料:侵攻性で、転移ステージIIIB、及び/又はステージIVと測定することができる乳癌を有する患者であって、全身療法を開始しようとしている患者からFNA試料を採取した。患者は、ECOGパフォーマンス状態0〜2(注:ECOG3=起きている時間の50%を超える時間がベッド又は椅子に限られ、限定されたセルフケアだけを行うことができる)を有する、組織学的に又は細胞学的に確認される浸潤性乳癌を有しているはずである。全患者が、生検に従う疾患の遠隔転移部位を有していた。G23ゲージニードルを用いてFNA試料を採取し、p95HER2、HER2、HER1、HER3、IGF−1R、PI3K、及びShcを含む様々なRTK及び下流シグナル伝達分子の発現及び活性化状態について分析した。FNA試料を、採取場所で「ProteinLater」細胞溶解バッファを用いて直ちに処理した後に発送した。
結果
110例の原発性BCA組織中のp95HER2の存在:様々なHER2発現状態を有するBCA組織中のp95HER2の発現を図34(A)に示す。様々なレベルのp95HER2を有する試料中のp95HER2リン酸化レベルを図34(B)に示す。点の色はIHCにより決定されたHER2状態を表す。
IHCとCOPIAとの間の比較:図35は、IHC又は/及びFISH対COPIAにより決定されたHER2発現状態の間の相関を示す。2つの方法の間には約15%の不一致があった。IP−ウェスタン分析を行って図36に示したように不一致の試料におけるHER2発現状態を確認した。COPIAにより決定されたHER2状態はIP−ウェスタン分析との100%相関を示した。IHC/FISHにより決定されたHER2状態の間の高いレベルの相違は、以前に多くのグループによって報告されているが、手順/判定上の変動又は腫瘍の不均一性によるものではないかと考えられる。
拡大された経路分析:HER2、p95HER2、及びCKのほかに、HER1、HER3,IGF1−R、c−MET、c−KIT、PI3K、及びShcについて他の経路タンパク質の発現レベル及び活性化程度を分析した。
図37は、COPIAによる機能的経路プロファイリングの例を提供する。ケース1においては、HER2及びHER3の両方が高く発現されているが、HER2だけが活性化されている。ケース2は、極めて高いレベルのHER1、及び多少有意なレベルのHER2及びHER3を有するが、有意な活性化はなんら示さない。ケース3は多少のHER2の発現を示すが、HER2シグナルをCKシグナルと比較した場合に、この患者においてHER2は過剰発現(又は増幅)されていないことを明確に示す。ケース4のHER2発現では、HER2とCKとの間の比がケース3より有意に高いので、HER2の過剰発現がよく現れている。
凍結組織試料において観察される活性化レベルは、手術後の組織処理における変動のためベースラインとなるインビボ機能的プロファイルを表さないかもしれない。経路タンパク質のインビボ機能的プロファイルを監視するには、採集された試料の即時の処理が望ましい。「ProteinLater」はFNA手順後の即時の試料処理に適している。
BCA FNA分析:BCA患者の転移部位からFNA試料を採取した。単離された細胞をすぐに「ProteinLater」中に溶解させ、その後の機能的経路プロファイリングのために発送した。この研究の1つの目的は、標的化阻害剤に応答するであろう患者を同定することであった。別の目的は、標的化剤の組み合わせから利益を得るであろう患者を同定することであった。FNA試料を、治療の前又は1週間の治療休みの間に採取した。
FNA試料から得られた細胞抽出物を、以下のシグナル伝達物質の発現及び活性化状態について分析した:ErbB1/HER1、ErbB2/HER2、ErbB3/HER3、c−Met、IGF−1R、c−Kit、PI3K、及びShc。IgG及びCKを対照として用いた。図38は、この試験に用いたマイクロアレイスライドフォーマットを示す。異なるスライド上でトータル及びリン酸化p95HER2レベルを検出した。その活性化及び/又は発現状態を検出することができる追加のシグナル伝達物質として、Akt(Ser 473)、P70S6K(T229)、Erk2(T202/Y204)、RSK(T359/S363)、Stat3(Y705)、及びそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。或る実施形態では、FNA試料を2つの異なる濃度で分析して定量的な発現レベル及び活性化程度を提供することができる。
本明細書に記載したCOPIAプラットフォームを用いたFNA試料に関する機能的経路プロファイリングは、細胞数、受容体発現、及び受容体活性化を高い正確性で得ることができる定量的な方法であるので、とりわけ有利である。図39〜46は、転移性乳癌を有する患者から得られたFNA試料に関する経路プロファイリングの例を提供する。各図中の表は、相対光単位(RLU)で各マーカーのトータル及びリン酸化レベルの定量化を提供する。以下の表7は、これらのFNA試料中に検出された特定のシグナル伝達物質の発現及び活性化状態の要約を提供し、そして推奨される治療コースも提供する。
要約
BCA患者から得られた原発性凍結組織及び転移部位から採取されたFNAについて実施された多重化COPIA経路プロファイリングは以下を示した:
●原発性HER2−IHC状態とCOPIA−HER2発現分析との間の一致85.5%
●HER2陽性(HER2:3+及び2+でFISH+)患者の40%を超える患者に有意なp95HER2の存在、及び他の組織学(histology)HER2−IHCが02+(FISH−)/1+/0の一部の組織に検出可能レベルの存在
●p95HER2発現体の50%超は活性化p95HER2を有していた。
●HER2陽性試料の25%は他のRTK発現及び/又は活性化も有していた。
これらの結果は、RTK発現及びシグナル伝達経路活性化における不均一性を示し、適切な標的化療法の選択に対する潜在的な意味を強調している。
実施例12.乳癌患者における複数のシグナル経路タンパク質の機能的プロファイリング
協調的近接イムノアッセイ(COPIA)は、2つの検出子−抗体の共局在性を必要とする特有の免疫複合体の形成を利用する多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームである。この検出子−抗体は、対応するチャネリング酵素であるグルコースオキシダーゼ(GO)及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされている。標的タンパク質が捕捉抗体に結合されると、近接したGOとHRPとの間のチャネリング事象が極感度での標的タンパク質のプロファイリングを可能にする。COPIAは、シグナル生成/増幅に対して標的特異的近接内での複数の実体を必要とするので、極めて高い分析的特異性を実現する。COPIAをそれぞれの特異的標的タンパク質に対して構成して、切断標的(例えば、p95HER2)をその正常のカウンターパート(例えば、全長HER2)から特異的なに検出することもできる。COPIAを適用して、HER1、HER2、p95HER2、HER3、IGF1−R、c−MET、PI3K、Shc、VEGFR、panCK、及びシグナル伝達経路における他の標的の発現及び活性化のレベルを調査した。
本例は、様々な原発性組織学(histology)を有するBCA患者から得られた250例の凍結組織及び様々なER/PR/HER2状態を有する進行性BCA患者の転移部位から採取された50例の微細針吸引液(FNA)試料(mFNA)中の複数のタンパク質に対する機能的経路シグニチャーを説明する。原発性HER2−IHC状態とCOPIA−HER2発現分析との間に高い一致があった。有意レベルのp95HER2がHER2陽性(HER2:3+及び2+でFISH+)患者の40%超で観察されたが、IHC−HER2陰性(2+でFISH−/1+/0)を有する一部の試料組織において低いレベルであるが検出可能なレベルも観察された。p95HER2発現体の50%超は活性化p95HER2を有しており、そしてHER2陽性試料の25%超はHER1、HER3、IGF1−R並びに他のRTK及び伝達タンパク質の発現及び/又は活性化も有していた。疾患プロファイルは再発乳癌において変化することが多いので、本明細書に記載した特有のアッセイフォーマットを用いることにより、進展する疾患から得られる限られた試料に基づいて有用な臨床情報を提供して腫瘍医が患者の「個人的」癌プロファイル変化に従ってそれぞれの患者に対する疾患治療選択肢を調整するのを補助することができる。拡大された経路パネルを用いて様々な転移部位における腫瘍をプロファイルする能力を有することにより、腫瘍の特異的な転移潜在能力についての情報が提供されるので;最小限の侵襲的な1回通過のmFNA試料を用いて治療選択肢をそれに応じて調整することができる。
実施例13.転移性乳癌(MBC)を有する患者における微細針吸引液(FNA)のHER2機能的プロファイリングの特徴付け
背景:協調的近接イムノアッセイ(COPIA)は、2つの検出子−抗体の共局在性を要件とする特有の免疫複合体の形成を利用する多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームである。この検出子−抗体は、HER1、HER2、p95HER2、HER3、IGF1−R、c−MET、PI3K、Shc、VEGFR、CK、及び他のシグナル伝達タンパク質の発現及び活性化プロファイリングに対して近接媒介性シグナル生成/増幅のための対応するチャネリング酵素とコンジュゲートされている。本例は、この新規技術を用いた、MBC患者由来の微細針吸引液(FNA)生検試料におけるHER2発現及び活性化プロファイリングを示す。
方法:侵攻性のステージIIIB/IV乳癌を有する女性患者(N=25、ベースライン年齢42±13歳)から転移部位からFNA試料を採取した。IHC染色による様々な臨床的原発性EP/PR/HER2状態を有する患者をこの試験に許容した。原発性腫瘍試料のEP/PR/HER2状態をローカルサイトによって得た。FNA試料についてCOPIAを用いてHER2及び他のシグナル伝達タンパク質(STP)の発現及び活性化状態を測定した。
結果:最初の10例の患者のFNA試料からのデータは、5例(50%)がHER2活性化(pHER2+)、2例(20%)がHER2過剰発現(tHER2+)、pHER2+及びp95HER2過剰発現であることを示した。10例のFNA試料中7例は、様々なpHER2レベルを有して弱レベルから中程度レベルのtHER2を発現した。HER2状態(発現/活性化)は1例の患者で陰性であった。FNAからのCOPIA誘導データと原発性腫瘍IHCとの間の一致を評価する予定である。さらに、HER1、HER3、IGF1−R、及びc−METを含む他のSTPの過剰発現及び/又は活性化を、COPIAを用いてコホート全体において測定する予定である。
結論:COPIAアッセイを用いてFNA検体におけるSTPの発現及び活性化を定量化することができる。これらの結果により、再発乳癌患者における治療決定についての情報を与えるという有用性が見出される。
実施例14.転移性乳癌(MBC)を有する患者における経時的なHER2機能的プロファイリングの変化
背景:HER2過剰発現/増幅を有する乳癌患者は、再発までのより短い期間及びより短い無病生存率(disease-free survival)及び全生存率(overall survival)と関連付けられる。乳癌の15〜20%はIHC又はFISHによればHER2陽性である。原発性腫瘍と転移性腫瘍との間でHER2状態の変化が起こることが報告されており、これを評価することは治療的な影響を及ぼすであろう。本例は、連続的に採取された循環腫瘍細胞(CTC)におけるMBC患者の経時的HER2状態の変換を示す。
方法:IHC染色によって決定された、様々な原発性ER/PR/HER2状態のステージIIIB〜IV MBCを有する50例の女性患者(ベースライン年齢57±13歳)を登録し14週まで経過観察し、そこで前記患者は患者らの医師の裁量によって様々なMBC療法を受けた。相互に5〜7週間離れた3回の試験来院時に、CTCの単離のために全血試料を採取した。Veridex法を用いて連続的なCTCを計数し、新規の多重化マイクロアレイ(協調的近接イムノアッセイ、COPIA)を用いてHER1、HER2、及びCKの発現及びリン酸化(活性化)について試験した。このプラットフォームは、高レベルの感度及び特異性でシグナル伝達経路の標的タンパク質のプロファイリングができるように開発されている。2回目及び3回目の来院時に、X線検査による腫瘍評価を行った。
結果:原発性IHC−HER2陰性乳房腫瘍の中で、新たな治療を開始する前のCTCにおいて30%がHER2過剰発現(tHER2+)され、そして56%がHER2活性化(pHER2+)されていた。37%の患者にCTC≧5が観察され、そしてCKレベルは細胞数(cell counts)と相関していた。検出CTCを有しない又はCTC<5を有する患者は予測できないレベルのCKを有していたが、それらの患者のそれぞれ31%及び47%のCTCにおいてHER2発現又は活性化が検出された。CTC≧5を有する患者の87%がIHC−HER2陰性原発性腫瘍を有しており、15例の患者からの11例(73%)はER/PR陽性であった。CTC≧5を有する患者の13%はIHC−HER2陽性の原発性腫瘍を有しており、全てはER/PR陰性であった。
結論:COPIAを用いてCTCにおけるHER2状態を測定することができる。MBCを有する患者におけるHER2機能的プロファイリングの経時的変化が観察された。従って、本例は、予後診断及び診断プロファイリングに対する組織の潜在的供給源としてのCTCの価値を説明している。
実施例15.乳癌における切断HER2発現及び活性化の分析
背景:HER2過剰発現性乳癌は予後不良であり、HER2標的化モノクローナル抗体療法に対して耐性であることが多い。初めからの耐性又は獲得耐性のメカニズムの1つは、侵攻性疾患、不良予後及びHerceptin(商標)に対する応答の欠如と臨床的に関連付けられるp95HER2の発現である。p95HER2に関する臨床試験は、その発現及び活性化を正確に測定する高い感度及び特異性のアッセイが欠如しているため限定されている。
方法:受容体チロシンキナーゼ(RTK)の発現及びリン酸化を特異的に検出することができる新規の技術(COPIAアッセイ)を用いて全長HER2からp95HER2を特異的に検出した。この多重化タンパク質マイクロアレイプラットフォームは、近接した場合に高感度でRTKのプロファイリングを可能にする2つの検出子である酵素コンジュゲート抗体の共局在性を要件とする。このアッセイを用いて、本発明者らは、229例の凍結乳癌組織(ステージII〜IV)におけるp95HER2並びにHER1、HER2、HER3、IGF1−R、c−MET、PI3K、Shc、VEGFR、及びCKを含む他の主要な腫瘍形成性経路の発現及び活性化を分析した。HER2、p95HER2、及びPI3Kの発現及び活性化を、Herceptin(商標)耐性細胞及び感受性BT474細胞においても測定した。
結果:本例は、IHCによって決定されかつCOPIAによって試験された、凍結原発性乳癌組織におけるHER2及びp95HER2発現及び活性化の首尾よいプロファイリングを説明する。IHC3+試料の約50%は活性化p95HER2を有していた。IHC2+、1+及び陰性のサブセットにおけるp95HER2の発現及び活性化のレベルは劇的に低かったが、一部の組織では有意なままであった。試験した10のマーカーの全てがシグナル経路の多様な活性化及び不均一性を示した。本発明者らの前臨床試験において、Herceptin(商標)耐性BT474細胞は、Herceptin(商標)処理においてHerceptin(商標)感受性BT474細胞と比較してp95HER2、全長HER2、及びPI3Kの有意に高い活性化を示した。Herceptin(商標)処理の最初の24時間の間に、HER3の増加した活性化が観察された。
結論:高感度及び高い特異性のp95HER2 COPIAアッセイは、微細針吸引液又はコア生検などの少量の腫瘍試料において全長HER2並びにトータル及び活性化p95HER2の正確な検出を可能とする。p95HER2の定量化はHerceptin(商標)に最も応答する可能性のある患者を選択することを可能にした。COPIAアッセイは、同じ試料において複数のキナーゼを同時に検出することを可能にし、このことはp95HER2に関連したHerceptin(商標)耐性のメカニズムを明らかにする。Herceptin(商標)治療に対する臨床的応答者及び非応答者におけるp95HER2発現及び活性化を測定することができる。従って、経時的なp95HER2発現及び活性化の変化が治療に関連したものであるか又は疾患の自然過程によるものであるかの分析は、個々の患者に対する療法のより効果的な選択及び調整を可能にする。
実施例16.協調的近接イムノアッセイ(COPIA)による受容体チロシンキナーゼの発現及び活性化プロファイリング
本例は、抗体−マイクロアレイプラットフォーム上での特有の免疫複合体の形成の更なる説明を提供する。1つの実施形態において、検出子抗体の一方はグルコースオキシダーゼ(GO)にコンジュゲートされており、そして他方は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRLP)にコンジュゲートされている。免疫複合体が首尾よく形成されるとシグナルが生成されそして捕捉された標的タンパク質上で共局在化されたGOとHRPとの間の酵素チャネリングにより前記シグナルが増幅されることを前提として、アッセイの特異性及び感度が高められる。この方法を適用して癌試料中の関連するバイオマーカーの発現及びリン酸化をプロファイリングすることができる。この方法は潜在的な治療応答を予測するのに有用であるので、標的化療法のより良好な初期選択及びその後の監視に導く。
本明細書に記載したイムノアッセイは、シグナル伝達タンパク質の機能的プロファイリング及び癌細胞におけるプロファイル変化を監視する能力を提供する。この方法は、疾患原因全体への有用な洞察を提供する。この方法は、単細胞レベルでErbBファミリー受容体チロシンキナーゼ(RTK)におけるリン酸化事象を特異的に検出する。
序論
正常組織及び異常組織における遺伝子発現の複数標的の評価は、多くの疾患の病態生理学の理解を広げた。mRNAプロファイリングは有用な生物学的情報を与えることができるが、その臨床的潜在能力は転写後の欠陥(defects)に対する複数の原因により限定されることがある。これらの限定にもかかわらず、基礎的研究及びトランスレーショナルリサーチにおいてなされた進歩により、癌などの複合疾患に対する臨床用途へのゲノム技術の導入がもたらされ、このようにして新たなゲノムベースの患者管理の道が敷かれた(Paik, S. et al., N. Engl. J. Med. 351, 2819-26 (2004);Paik, S. et al., J. Cln. Oncol. 24, 3726-3734 (2006))。配列特異的標的増幅方法に基づく分子テクノロジーの鋭敏な感度及び特異性により多重化ゲノム分析は成熟した。対照的に、プロテオームに基づく方法はまだ、実用的な多重化フォーマットまで開発が進んでいない。大部分の現在のタンパク質ベースの適用は、伝統的な免疫組織化学(IHC)原理に基づいており、相当量の試料を必要とする。プロテオーム技術のより首尾よい臨床適用に、より良好な感度及び特異性が待たれている。より重要なことには、タンパク質の活性化(リン酸化)状態が細胞機能へのそれらタンパク質の影響を反映しているので、プロテオーム診断プラットフォームはタンパク質発現のレベル及びタンパク質活性化の程度を識別できなければならない。
治療及び予後結果に対するプロテオーム評価を行う上で最も広く用いられる適用の1つは、IHCを用いた乳癌(BCA)患者におけるヒト上皮成長因子受容体2(HER2)タンパク質発現の検出によるものであった。しかしながら、この方法は、分析感度、標的特異性、多重化能力、及び画像解釈の主観性に伴う技術的制限を有している(Gown, A.M., Mod. Pathol. 21, S8-S15 (2008);Rhodes, A. et al., J. Clin. Pathol. 53, 125-130 (2000))。さらに、別々の研究室で実施されたHER2試験の結果の間に有意レベルの不一致があることが報告されている(Reddy, J.C. et al., Clin. Breast Cancer 7, 153-7 (2006))。それゆえに、IHCに基づく結果が曖昧である場合に、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)技術を現在用いてHER2遺伝子増幅を検出している。両方の技術を段階的に使用して、BCA患者に対するHER2標的化治療である、トラスツズマブに対する患者の適格性を決定する(Cuadros, M. and Villegas, M., Appl. Immun. Mol. Morph. 17, 1-7 (2009))。現行アッセイ法の一層の制限は、標的タンパク質の活性化状態を決定することができないことである。
浸潤性BCA患者の20%〜25%は過剰発現されたHER2 RTKを示す(Slamon, D.J. et al., Science, 235, 177-82 (1987))。HER2の過剰発現は細胞増殖及び疾患進行を引き起こし、HER2陽性BCAは高い再発率及び低下した生存率を有する(Slamon, D.J. et al., Science, 235, 177-82 (1987))。HER2状態は療法選択に対して必須であるので、BCA患者のHER2状態を決定することは不可欠である(Cuadros, M. and Villegas, M., Appl. Immun. Mol. Morph. 17, 1-7 (2009);Slamon, D.J. et al., Science, 235, 177-82 (1987))。しかしながら、HER2陽性患者の約50%だけが初期にトラスツズマブ補完治療に応答し、そしてこれらの患者のサブセットは劇的な初期の応答を示した後に固有の耐性を示すか又は最終的に耐性を発現する(Nahta, R. and Esteva, F.J., Breast Cancer Res. 8, 215-27 (2006))。HER2−IHC及びHER2−FISHは予備的な患者選択に有用であるが、それらのいずれの試験も応答性の患者と非応答性の患者とを識別することはできない。従って、HER2陽性患者がHER2標的化剤に対して応答することを識別する信頼性ある方法の開発が急務である。このような試験は、HER2タンパク質の機能的状態をその潜在的なヘテロ二量体パートナーのプロファイルと共に決定し、それにより最も効果的な療法選択肢の合理的な選択における極めて重要な情報を提供することができるものでなければならない。
腫瘍は極めて不均一であるので、原発性部位の細胞は再発疾患における腫瘍細胞のプロファイルを反映していないことがある。療法を導くための腫瘍細胞のより関連性のある供給源は再発疾患の転移であると考えられる。腫瘍細胞の代替的供給源は、侵攻性疾患を有する患者において腫瘍細胞の小さなサブ集団が見出される場合には血液である(Cristofonilli, M. et al., N. Engl. J. Med. 351, 781-91 (2004);Hayes, D.F. et al., Clin. Cancer Res.12, 4218-4224 (2006);Pachmann, K. et al., J. Clin. Oncol. 28, 1208-1215 (2008))。血液中の腫瘍細胞の数は、腫瘍のステージ及びタイプに依存しており、血液1mL当たり検出せずから数千個の細胞まで変化する(Cristofonilli, M. et al., N. Engl. J. Med. 351, 781-91 (2004); Hayes, D.F. et al., Clin. Cancer Res. 12, 4218-4224 (2006); Pachmann, K. et al., J. Clin. Oncol.28, 1208-1215 (2008); Nagrath, S. et al., Nature 450, 1235-1239 (2007))。
結果
循環腫瘍細胞(CTC)は、超高感度かつ超高特異性を有し、約100ゼプトモル(又は標的分子1×10〜1×10)の分析感度を有する単細胞レベルで複数のシグナル伝達タンパク質の活性化状態を検出することができる、協調的近接イムノアッセイ(COPIA、図24)を用いて、転移性癌患者について非侵襲的な「リアルタイム生検」を実施する機会を提供する。本明細書に記載したように、COPIAを用いて様々な癌細胞系、異種移植片、凍結腫瘍組織、及びBCA患者から単離されたCTC中のHER1及びHER2の発現及びリン酸化を定量化することができる。
図24をみると、標的タンパク質の活性化状態を検出するのに用いられる、標的特異的複合体を形成する抗体の個々の成分が示されている。捕捉抗体及び検出抗体の間の競合が最小となるように捕捉抗体及び検出抗体を選択する(すなわち、全ての抗体が同時にシグナル伝達分子上のそれら抗体に対応するエピトープに結合する)。標的分子と例えば連続希釈によりプリントされたそれらの対応する捕捉抗体との間の相互作用によって特異性の第1歩が達成される。活性化状態非依存性検出子抗体をチャネリング成分、例えば、グルコースオキシダーゼ(GO)とコンジュゲートさせ、活性化状態依存性検出子抗体をシグナル増幅成分、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いて標識化する。
図47(a)は、それぞれ、MDA−MB468及びSKBr3中の単細胞の感度レベルでのHER1及びHER2の活性化を示す。これらの細胞系は、1細胞当たりそれらの細胞膜上で約1〜2×10HER1又はHER2 RTKを発現する。細胞数3、1、0.3及び陰性対照のマイクロアレイスライド画像を細胞滴定曲線の上に示す。MDA−MB468細胞をEGFで処理してHER1 RTKをリン酸化したが、一方で、HER2 RTKはSKBR3細胞中で自発的にリン酸化される。それぞれのパッド上の細胞量は連続希釈により生成した。捕捉抗体を、1.0mg/mL、0.5mg/mL、0.25mg/mL及び0.125mg/mLの連続希釈により三連で1スポット当たり500pLでプリントした。
図47(b)に示したウェスタンブロットを1レーン当たり全タンパク質12μg(約4000細胞)から生成した。各細胞系におけるドミナントなRTK発現レベルをEGF又はHRG刺激の前後で決定した。ホスホ−チロシン特異的抗体を用いてHER1又はHER2のリン酸化度を検出した。MDA−MB−468におけるHER1に対する刺激の前後間の差は、成長因子刺激によるリン酸化度についての情報を提供する。
図47(c)に示すように、pHER1(リン酸化HER1)又はpHER2(リン酸化HER2)に対して20%シグナル飽和(又は12000RFU)を検出するのに必要な細胞数を用いて、低いRTK発現を有する細胞について1細胞当たりのRTK活性化を計算した(RFU/細胞)。各細胞系において検出不能なシグナルを、表中でNDとして示した。MDA MB 468細胞は、EGFで刺激された場合pHER2は検出不能であったが、〜992.5RFU/細胞レベルのpHER1を有している。T47D細胞は1細胞当たり実質的に低レベルのHER1及びHER2を発現するが、10細胞を分析した場合には有意レベルのRTKリン酸化を検出しており、これらの細胞をEGF又はHRGで刺激した場合に特異的な活性化パターンを生じた。
図47(d)に示すように、様々な程度のErbB−RTK発現を有する細胞系:MDA−MB−231、MDA−MB−435及びBT474から異種移植片を得た(Imai, Y. et al., Cancer Res. 42, 4394-4398;Filmus, J., et al., Mol. Cell Bio. 7, 251-7 (1987); Uherek, C. et al., Blood. 100, 1265-73 (2002))。Dragowska, W.H. et al., Mol. Cancer Res. 2, 606-619 (2004))。本発明者らは、MD−MB−231異種移植片中に低レベルのpHER−1及びpHER−2を、BT474異種移植片から得られたFNA試料中に高レベルのpHER2及び有意レベルのpHER1(増幅されたHER−2との共発現による)を検出した。MDA−MB−435異種移植片から得られたFNA中に極めて低いHER−1及びHER−2活性化を検出した。
図47(e)に示すように、26例のステージII〜IIIの凍結BCA(12例のHER2−IHC 3+、7例のHER2−IHC 1+、7例のHER2−IHC −)及び4例の正常の隣接組織を、HER2/HER1発現及び活性化について分析した。高いIHCスコア(3+)を有する全ての原発性腫瘍試料は高レベルのHER−2発現を有し、高い活性化度のHER−2を示した。本発明者らのアッセイによって検出されたHER2受容体の発現及び活性化は腫瘍IHCスコアと一致する。全てのRTK分析について、全タンパク質100ngからRFU値を生成した。ホスホ−RTK分析について、全タンパク質500ngからRFU値を生成した。HER2発現及び活性化の陽性対照としてBT474細胞を用いた。
図47(f)は、トータルHER2発現及びHER2リン酸化について26例のBCA試料の撒布図を示す。4例の正常な隣接腫瘍試料は全て、HER1発現がないことを示した。
図48(a)に注目すると、各スライドについて、細胞系MD−468(HER1陽性)細胞及びSKBr3(HER2陽性)細胞の溶解物から、連続希釈された細胞溶解物からの標準曲線を作成した。HER1及び/又はHER2発現レベル及びリン酸化度を正確に決定する定量的情報を得るように各スライドを設定した。標準曲線を作成するために全体で7パッド(連続希釈によるパッド1、2、3、4、11、13及び14)を用いた。各スライドは2つの品質管理(パッド5及び6)と共にバッファ対照パッドを有していた。各スライドにおいて試料を4パッド(パッド7、8、9、10)上でアッセイした。
図48(b)において、pHER1及びpHER2の両方に対して検出限界(LOD)値を1CU未満であるように決定した。tHER2及びtCKについて1細胞に近い感度(near 1 cell sensitivity)を観察した。それぞれの分析物に対するLODを、バッファ対照値の平均濃度+2標準偏差として計算する。図48(c)は、HER2発現及び活性化について分析された全27例の乳癌試料を表中に示す。原発性HER2−IHC陰性状態を有する転移性乳癌患者から17例の血液試料を得た。初期HER2−IHC陰性試料の59%(10/17)までが、その患者らのCTC中にHER2活性化の証拠を示した(網掛け部分)。原発性HER2陰性状態を有する転移性乳癌患者から得られた17例の血液試料のうち7例(網掛け部分)(41%)に、HER2発現を有するCTCを見出した。HER2発現及びリン酸化のレベルをCU単位で示す。
COPIAの前臨床性能
本発明者らは既知レベルのHER1及びHER2 RTK発現を有する組織培養細胞系を用いてマイクロアレイフォーマット上でCOPIAの実行可能性を実証した。MDA−MB−468細胞を用いて上皮成長因子(EGF)刺激後のHER1発現レベル及びHER1活性化度を分析し、そしてSKBR3細胞を用いてタンパク質過剰発現によるHER2発現及びHER2活性化のレベルを検出した。様々なレベルのHER1及びHER2を発現するBT474細胞及びT47D細胞並びに他のErbB RTKファミリー構成員を用いて、本発明者らのアッセイ法の分析的特異性を示した。
分析感度
本発明者らは、それぞれ、MDA−MB468及びSKBR3において単細胞の感度レベルでHER1及びHER2の活性化及び発現を検出した(図47a)。これらの細胞系は、他者によりErbB RTK発現について充分に特徴付けされている(Uherek, C. et al., Blood, 100, 1265-1273 (2002);Dragowska, W.H. et al., Mol. Cancer Res. 2, 606-619 (2004);Harari, D. and Yarden, Y., Oncogene 19, 6102-6114 (2000);Riethdorf, S. et al. Clin. Cancer Res. 13, 920-28 (2007))。これらの細胞系はそれらの細胞膜上で約1〜2×10のHER1又はHER2 RTKを発現する。しかしながら、発現されたRTKのサブセットだけが成長因子(HER1)を用いて処理され又は過剰発現された場合にリン酸化され、このようなリン酸化レベルは下流経路活性化に適切かつ充分である(Dragowska, W.H. et al., Mol. Cancer Res. 2, 606-619 (2004))。HER2過剰発現性SKBR−3細胞は構成的な(constitutive)HER2活性化を有するが、MDA−MB−468細胞は非リン酸化状態で存在しそしてHER1リン酸化を導くにはEGFにより刺激される必要がある(Dragowska, W.H. et al., Mol. Cancer Res. 2, 606-619 (2004);Cristofanilli, M. et al., Clin. Breast Cancer 7,471-89 (2007))。EGF(ホモ二量体化又はヘテロ二量体化による直接的HER1刺激)又はヘレグリン(HGR、HER3とのヘテロ二量体を介する間接的刺激)のいずれかにより媒介されるHER1及びHER2の特異的な活性化は、図47bに示したように様々なレベルのErbBファミリーRTK発現を発現する細胞系をもたらす。MDA−MB−468細胞は刺激前に少しのHER1活性化を示すが、EGF結合するとHER1リン酸化を示す(図47a及び図47b)。典型的には、高度に発現されたRTKの2〜10%だけが活性化され(MDA−MB−468細胞又はSKBr3細胞につき約2×10〜1×10のリン酸化事象)、そしてこれは細胞増殖に充分である(Dragowska, W.H. et al., Mol. Cancer Res. 2, 606-619 (2004))。本発明のアッセイフォーマットは本発明者らが約10活性化事象を検出することを可能にし、このようにして単細胞感度を形成した(図47a)。
分析特異性
このCOPIAフォーマットは、捕捉抗体に加えて各標的タンパク質への2検出子抗体の結合事象を要件とするので、その分析特異性は極めて高かった。様々なRTKレベルを有する複数の細胞系について実施された比較試験に基づいて、このアッセイフォーマットの分析的特異性が99.99%を超えることが見出された(図47c)。極めて低量のHER2を発現するMB468細胞を用いた場合、1アッセイにつき〜1000細胞を用いるのはHER2捕捉部位において任意のシグナルを検出するには不充分(ND)であった。pHER2は検出不能であったが、MDA MB 468細胞はEGFで刺激された場合に〜992.5RFU/細胞レベルのpHER1を有する。T47D細胞は1細胞当たり実質的に低いレベルのHER1及びHER2を発現するが、102個の細胞を分析した場合には有意レベルのRTKリン酸化が検出され、そしてこれらの細胞をEGF又はHRGのいずれかで刺激した場合には特異的な活性化パターンが生じた。T47D細胞はHER1より有意に高いレベルのHER3を発現するので、HER2−HER3へテロ二量体化形成を介してHRGで細胞を活性化した場合により高いHER2活性化が観察された。HRG処理はこの細胞集団においてHER1活性化を誘導しなかったが、このことはアッセイ特異性を実証している。他方で、T47D細胞のEGF処理は、HRG媒介性の活性化より低いレベルであるが、HER1−HER2ヘテロ二量体化を介してHER1及びHER2両方の活性化をもたらした。MDA−MB−468細胞溶解物中の検出不能なpHER2及びEGF処理されたSKBr3細胞中のpHER2より実質的に低レベルのpHER1(図47c)はこのアッセイの特異性を実証した。近接依存性酵素チャネリング方法の高い特異性は共通の標的上での複数の検出子−抗体結合事象を要件とする特有の構成に基づいている。従って、複数の検出子及び捕捉抗体の共局在化を要件とするこのCOPIAフォーマットは複合経路の多重化分析に対する理想的なプラットフォームである。
異種移植片
COPIAを用いて、異種移植片動物から微細針吸引(FNA)法によって得られた腫瘍組織中のHER1及びHER2をプロファイリングした。様々なErbB−RTK発現度を有する細胞系(MDA−MB−231、MDA−MB−435及びBT474)から、異種移植片を得た(Imai, Y. et al., Cancer Res., 42, 4394-4398;Filmus, J. et al., Mol. Cell Bio. 7, 251-7 (1987);Uherek, C. et al., Blood 100, 1265-73 (2002);Dragowska, W.H. et al., Mol. Cancer Res. 2, 606-619 (2004))。本発明者らはMD−MB−231異種移植片において低レベルのpHER1及びpHER2を、BT474異種移植片から得られたFNA試料において高レベルのpHER2及び有意レベルのpHER1(増幅HER2との共発現による)を検出した。MDA−MB−435異種移植片から得られたFNAにおいて極めて低いHER1及びHER2活性化を検出した(GIG.2d)。異種移植片−FNAモデル系からの本発明者らの知見は親細胞系のHER2プロファイルと一致しており、このことは本発明の方法を用いて最小限の侵襲性FNA法から得られる試料においてErbB受容体の活性化を検出することができることを実証している。
COPIAの臨床的性能
凍結組織
さらにCOPIAの臨床的有用性を実証するために、本発明者らはFNA法により26例のステージII〜IIIの凍結BCA及び4例の正常隣接組織から組織試料を採取した。高いIHCスコア(3+)を有する全ての原発性腫瘍試料は高レベルのHER2発現を有しかつ高いHER2活性化度を示した。12例のHER2−IHC陽性試料のうち2例(26135及び20013)は他のHER2−IHC陽性試料より低いトータルHER2シグナルを有していたが、それらは両方ともHER2陰性試料より実質的に高いシグナルを有していた。全てのIHC−HER2陽性試料は有意レベルのpHER2シグナルを示した。本発明者らのアッセイによって検出されたHER2の発現及び活性化は原発性腫瘍IHCスコアと一致する(図47e及び図47f)。興味深いことに、12例の原発性HER2−IHC陽性患者のうち2例は検出可能な全HER1を有して(12855)又は検出可能な全HER1を有しないで(12895)有意量のpHER1も示した。この観察は、両方のRTKを標的とすることができるチロシンキナーゼ阻害剤の療法がHER2 RTKを単独に標的とする療法よりこのプロファイルを有する患者に対してより効果的である可能性があることを示唆する。検出不能の又は低レベルの原発性HER2−IHCを有する組織は全て低レベルのHER2発現を示したが、一部の試料は低いが有意レベルのHER2活性化を示しており、このことはホルモン療法に耐性の患者において意味を有していることができた。
循環腫瘍細胞
最近になって、転移性癌患者の血液中に見出されるCTCは、非侵襲的に、時間に関連のある腫瘍の評価を行う機会を提供することから、大きな注目を集めてきた(Cristofonilli, M. et al., N. Engl. J. Med. 351, 781-91 (2004);Hayes, D.F. et al., Clin. Cancer Res. 12, 4218-4224 (2006);Pachmann, K. et al., J. Clin. Oncol. 28, 1208-1215 (2008);Riethdorf, S. et al. Clin. Cancer Res. 13, 920-28 (2007); Cristofanilli, M. et al., Clin. Breast Cancer 7,471-89 (2007))。転移性癌患者に見出されるCTCを調査するCOPIAの能力を調べるためには」、この技術が鋭敏であり、特異的であり、再現性があり、標準化されており、そして臨床結果と関連していることが実証されなければならない。RFU値は細胞の単位当たりの情報を提供しないので、経路発現/活性化プロファイリングに対する分析的評価を既知のHER1及びHER2発現を有する標準的な細胞系を用いて行った。RFU値を算出単位(CU)に変換するアルゴリズムである、細胞系対照に基づく標準的機能単位を開発した。各スライドについて、連続希釈した細胞溶解物からなる標準曲線を、図48aに示したように細胞系MD−468(HER1陽性)及びSKBr3(HER2陽性)の溶解物から作成した。HER1及び/又はHER2発現レベル及びリン酸化度、並びにサイトケラチン(CK)のレベルを正確に決定するべき定量的情報を得るように各スライドを構成した。pHER1(リン酸化HER1)及びpHER2(リン酸化HER2)の両方に対して1CU未満となるように検出限界(LOD)値を決定した(図48b)。1に近い細胞感度がHER2及びCKについて観察された。CKレベルは概してCTCの量と相関するが、CTCは様々なCKレベルを有する(100のMDA−MB468細胞は9.7CU未満を示しそして10のSKBr3細胞は6.1CUを示した)。CK発現量における変化に加えて、発現されるCKのタイプも異なる組織起源の腫瘍ごとに変化する(Rakha, E.A. et al., J. Clin. Oncol. 26, 2568-2581 (2008))。従って、CK値は単離されたCTCに対して絶対的な定量的参照として働かないことがあるが、療法経過に沿って同じ患者から或る期間にわたり採取された試料に対する腫瘍負荷インジケーターとしてCK値を用いることができる。マルチPMTゲイン設定でスライドを走査し、そして各設定での標準曲線の勾配を決定した。標準曲線から計算された値に比例してCU計算結果を重み付けし、低い勾配には小さい重みを与えた。
27例の癌患者及び60例の健常ボランティアからそれぞれ1つの、全体で87例の全血試料を分析した。健常対象被験者由来の60例の試料から得られたデータに基づいてアッセイの参照値を決定した。分析した27例の癌試料の中で、17例の血液試料を、原発性HER2−IHC陰性状態を有する転移性乳癌患者から得た。HER2発現又は活性化を有する試料を図48cに示す。初期HER2−IHC陰性試料の59%(10/17)までがそれらのCTCにおいてHER2活性化の証拠を示した。原発性HER2陰性状態を有する転移性乳癌患者から得られた17例の血液試料のうち7例(41%)にHER2発現を有するCTCが見出された。ここで、本発明者らは、原発性HER2陰性乳癌患者由来のCTCの18%(3/17)において明確なHER2過剰発現を有していなくともHER2活性化を検出することができた。原発性HER2陽性腫瘍を有する再発BCA患者から採取した60%のCTC試料(6/10)は、なおHER2発現を示した。なおトラスツズマブ療法を継続中の原発性IHC−HER2+(IHC/FISHによる)患者におけるpHER2レベルは有意であったが、CTCがHER2陽性状態を得たという証拠を示した原発性IHC−HER2陰性患者より幾分か低かった。極めて高いHER2発現(19.4CU)を有する患者A02−028はpHER2レベル6.3CUを示した。この患者のpHER2/HER2シグナル比は0.32(6.3/19.4)であり、これは刺激されていないBT474タイプの細胞の典型的pHER2/HER2比(25%)よりわずかに高い。SKBr3細胞はHER2のより高い基礎レベルリン酸化度を有している(図48c)。
考察
RTK及び下流細胞シグナルタンパク質は、腫瘍学において治療的介入の主要な標的である。標的化療法に対する潜在的な応答性を決定するために原発性腫瘍を調べることは治療の標準になっている。しかしながら、標的発現、活性化及び下流細胞のシグナル伝達タンパク質の完全な特徴付けはめったに行われない。初期診断から転移性疾患の再発までの時間枠の間の腫瘍細胞集団におけるRTK発現のパターン変化は事実上全く評価されていない。Meng et al.による最近の研究は、試料を同期的に得た場合にのみ原発性腫瘍中のHER2遺伝子状態と対応するCTC中のHER2遺伝子状態との間での良好な一致を示した。しかしながら、初期HER2陰性原発性腫瘍を有する24例の再発患者由来のCTCは、24例の患者のうち9例(37%)がそれらの患者のCTCにおいてHER2増幅を獲得した(Meng, S. et al., PNAS 101, 9393-98 (2004))。この研究は、疾患管理を変更するのに充分な有意性の原発性病変と転移性病変との間の不一致を実証した。原発性部位と転移性部位との間のHER2過剰発現の有意な不一致が乳癌においてIHCを用いて報告されており(Zidan, J. et al., Br. J. Cancer 93, 552-556 (2005))、そしてCTC中の獲得HER2遺伝子増幅が別のグループによって確認された(Hayes, D.F. et al., Int. J. Oncol. 21, 1111-1117 (2002))。この疾患プロファイル変化は、細胞シグナル伝達のパターンを経時的に進展させる多くの癌の異種の腫瘍細胞集団への療法上の及び他の圧力によるものであることがある。本発明者らが見出したHER2転換は、異種の原発性腫瘍細胞集団内でのHER2陽性細胞のクローン選択又は過剰発現に対する遺伝的能力の獲得によるものであることができる。HER転換の背後のメカニズムを問わず、CTC中のHER2の存在は臨床的注意を要する。
COPIAは、標的タンパク質がマイクロアレイ表面上に捕捉されると2つの検出子の酵素コンジュゲート抗体の共局在性を要件として特有な免疫複合体が形成されることを利用する。高い代謝回転数(GOについて10/分間及びHRPについて10/分間)を有する近接した2つの検出子酵素間のチャネリング事象は、高感度でのRTK発現及び活性化のプロファイリングを可能にする(Klapper, M.H. and Hackett, D.P., J. Biol. Chem. 238, 3736-3742 (1963);Gibson, Q.H. et al., J. Biol. Chem. 239, 3927-3934 (1964))。3つの異なる抗体の同時結合の要件を前提として分析特異性が大きく高められる。この多重化COPIAは、FNAなどの限られた数の腫瘍細胞を有する血液又は他の供給源から単離された希少CTCを用いて療法進行の或る期間にわたる監視を促進することができる。この新規の方法を適用して、単一試料からトランス活性化潜在能力を有する他のRTK及びそれに続く下流の細胞シグナル伝達タンパク質の発現及び活性化を定量化することができる。標的タンパク質活性化状態を定量化する能力は、シグナル伝達タンパク質の単なる発現を超えた追加的な評価を可能にし、潜在的にはさらに様々な標的化療法の有用性を予測することを可能にする。さらにまた、特異的なシグナル生成に対して複数の結合抗体の要件があることにより、追加の標的に特異的なアッセイ成分を最小限の中断(disruption)で多重化フォーマットに加えることができる。本発明者らは、少なくともIGF1−R、c−MET、c−KIT、HER3、及びp95HER2について一桁数の細胞レベルでのタンパク質発現及び活性化の検出を実証した。
転移性乳癌を有する患者において第一選択療法の開始前に幾らかでもCTCの検出があれば、検出CTCを有しない患者と比べて、無進行生存率及び全体的生存率が悪くなると予測される(Slamon, D.J. et al., Science, 235, 177-82 (1987); Cristofonilli, M. et al., N. Engl. J. Med. 351, 781-91 (2004))。転移性患者におけるCTCの意味はまだ知られていないが、治療過程の間にCTCのプロファイル変化を監視する感度の良い方法を持つことは患者のその後の経過への洞察を与えることができる。このことは、単純な計数を超えてCTCに基づく療法監視の価値を大きく高めるであろう。関連したリガンドを用いて単離CTCを処理することができるので、本発明の技術は潜在的な転移部位への経路におけるCTCに対する「活性化潜在能力(activation potential)」を提供することができる。原発性乳癌と同期的遠隔転移との間のHER2遺伝子状態の関係は、幾つかのグループによっては一致していると、また他のグループによっては全く異なると報告されているので(Zidan, J. et al., Br. J. Cancer 93, 552-556 (2005); Tanner, M. et al., Cancer Res. 61, 5345-5348 (2001); Tapia, C. et al., Breast Cancer Res. 9, R31-39 (2007); Grupka, N.L. et al.Arch. Pathol. Lab Med. 128, 974-979 (2004))、原発性病変及び転移性病変とCTC中のRTK状態との間の発現関係を決定することは重要である。
用いられたCTC単離方法にかかわらず、濃縮されたCTC試料は一般に少なくとも10又はそれより多い混入した血液細胞を含む。非CTCに関連した遺伝子シグニチャーはより量が多い(magnitudes higher)ので遺伝子発現分析を行うことは実際的ではないであろう。本発明者らのアッセイは、特異的な対応するエピトープに対する結合パートナー同士が近接している場合にシグナルを生成するので、多量の非標的バックグランド細胞集団中に存在する希少細胞を調査する現実的な臨床手段を提供する。RTK及びそれに続く下流シグナル伝達経路タンパク質の発現及び活性化パターンが初期精密検査から疾患再発まで変化することを考慮すれば、医師はこのような変化をプロファイリングすることができる非侵襲的な「リアルタイム生検」及び或る期間にわたる評価から利益を受けることができる。これらの変化プロファイルに合わせて治療介入をより合理的に行うことができる。さらに、このようなアッセイを用いて新規の標的化療法の開発を促進することができる。
方法
多重化マイクロアレイプリンティング
ニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド(FAST(商標)、Whatman社、ニュージャージー州フローラムパーク)の表面上に捕捉抗体をプリントした。接触型マイクロアレイプリンター(QArray、Genetix社)を用いて、界面活性剤で1×PBS中に希釈した捕捉抗体をプリントした。スポット径は約175μmであり、プリントしたスライドを4℃の乾燥チャンバー内で保持した。各スポットは追跡用染料及び連続希釈により三連にプリントされた特異的捕捉抗体(Ab)又は対照のいずれかを含んでいる。捕捉Ab約500pLを、各スポットごとに連続希釈により1mg/mL、0.5mg/mL、及び0.25mg/mLの濃度で(図48a)(図47aのスライドについては0.125mg/mLを追加して)三連にプリントした。精製マウスIgGを陰性対照としてプリントした。分析的キャリブレーション反応を8パッド上で及び内部品質管理反応を2パッド上で実施した。各スライドで、4つまでの未知患者試料の処理を行うことができる。
抗体コンジュゲート及び精製
標的特異的抗体及び対応する検出子酵素を二官能性架橋剤であるスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)で活性化し、デキストランに結合させて抗体−デキストラン−酵素ポリマーコンジュゲートを作成した。サイズ排除カラムを用いてHPLCによってコンジュゲートを精製した。精製されたコンジュゲート中の抗体活性を競合的ELISAによって検出しそして各検出子酵素に特異的な機能的アッセイによって酵素活性を検出した。
細胞系試料
SKBr3、MDA−MB−468、T47D及びBT474細胞系をATCCから入手した。100mm組織培養プレート中の下記の増殖培地で37℃において5%CO中で細胞を増殖させた:SKBr3 マッコイ5A培地10%FBS含有、MDA−MB−468:DMEM、10%FBS、BT474:DMEM、10B FBS、T47D:RPMI 1640、10%FBS、0.2U/mLウシインスリン。70〜80%集密度の細胞を穏やかな剥離法(detachment process)(トリプシン処理+引き続きの不活性化)によって集菌し引き続いて計数を行いそして1×PBSで洗浄した。血清不含増殖培地中の100μM EGF若しくは20μMヘレグリンβ又はそれら両方を用いて細胞刺激を5分間実施した。刺激した細胞を1×PBSで洗浄し次いで溶解させ(溶解バッファ:50mMトリス、pH7.4、150mM NaCl、1%トリトンX−100及び200mM Na3VO4)そして氷上に30分間保持した。
臨床的血液試料
IRB認定プロトコルに従って、癌患者並びに対照健常個体から臨床的血液試料を採取した。全ての試料の使用についてインフォームドコンセントを得た。各臨床検体を24時間以内にPrometheus社に発送し、同日に試料を処理し、そして得られた溶解物を−80℃で保存した。全ての全血試料は成人被験者から採取した(>18歳〜<88歳)。試料はカリフォルニア州の複数のCROサイトから得た。RECIST(固形腫瘍における応答評価基準)基準に沿ったケア医療プラクティスの現行標準に従い全ての癌患者を診断した。
血液試料採取時の患者の療法状態を問わず、局所性リンパ節又は遠隔転移(ステージIIIb又はIV)を伴う組織学的に確認された乳癌を有する患者から全血試料(N=27)を得た。ステージIIIb乳癌を有する患者は局所リンパ節ステージングN1、N2、又はN3を有していた。標準的方法(例えば、全身的骨スキャン、CTスキャン、PETスキャンなど)を用いて転移性病変を確認した。登録された患者から静脈穿刺により2つのEDTA含有チューブ(パープルトップチューブ)中に全血試料を採取した。採取された血液試料を採取日に周囲温度で発送した。各患者の同定をコード化して患者の匿名性を維持した。
癌又は他の重篤な慢性疾患の前歴を除外するための詳細な医療履歴及び血圧及び脈拍数測定を含む簡単な身体検査によって評価した18歳〜75歳の間の正常個体から健常ボランティア由来の対照血液試料(N=60)を採取した。
組織試料採取
凍結乳癌組織を購入した(ProteoGenex社、カリフォルニア州及びILS Bio社、メリーランド州)。患者は全てステージII又はIIIの乳管癌を有する白人であった。一部の試料についてはHER2 IHC状態が提供された。室温に平衡化された凍結組織に真空シリンジに取り付けられた23ゲージ針を5〜10回通すことによる、又は凍結組織のスライシングによるFNA法を介して腫瘍組織を採取した。100μL溶解バッファ中にFNA組織試料を溶解させた。氷上で30分間インキュベートした後、溶解させた試料を遠心処理し、そして得られた溶解物の上澄を−80℃で保存した。ヌードマウスに皮下注射することによりヒト乳癌細胞系(MDA−MB−435、MDA−MB−231及びBT474)を用いて異種移植片モデルを構築した。腫瘍の大きさが400mmに達したときに、真空シリンジに取り付けられた23ゲージ針を各腫瘍に5回通すことにより組織試料を採取した。採取した試料を100μL溶解バッファ中に溶解させた。氷上で30分間インキュベートした後、溶解させた試料を遠心処理しそして得られた溶解物の上澄を−80℃で保存した。
CTC試料
CTC評価のために末梢血を採取した。10mL真空EDTAチューブに血液試料7.5mLを引いて採取した。試料を室温で維持し、一晩で郵送し、そして採取の24時間以内に処理した。全てのCTC評価は患者の臨床状態の知見なしに実施した。上皮細胞接着分子に対する抗体にコンジュゲートされた強磁性流体を用い前記したプロトコルに従って免疫磁気的CTC単離のためにCellSearch System(Veridex LLC社、ニュージャージー州、ラリタン)を用いた(Fehm, T. et al., Clin. Cancer Res. 8, 2073-84 (2002))。血液から濃縮したCTCを前記のように刺激した。
COPIA
スライドを、室温(RT)で又はO/N、4℃で1時間にわたりWhatman Blocking Buffer 80μLでブロックする前に、最初にTBST(50mMトリス/150mM NaCl/0.1%ツイーン20、pH7.2〜7.4)で2回リンスした。ブロッキング過程の後、スライドをTBSTで2回洗浄した。80μLの希釈バッファ(2%BSA/0.1%トリトンX−100/TBS、pH7.2〜7.4中の連続希釈された細胞溶解物対照をスライド上での標準用に指定されたニトロセルロースパッドに添加し、室温で1時間インキュベートした。臨床試料も同様にして80μL反応体積中でインキュベートした。このインキュベーションの後、スライドを毎回3分間で、4回洗浄した。80μLの反応バッファ中に検出子抗体(2%BSA/0.1%トリトンX−100/TBS中のリン酸化RTK特異的抗体−デキストラン−HRP、HER1特異的抗体−デキストラン−GO,及びHER2特異的抗体−デキストラン−GO)を添加し室温で2時間インキュベートした。TBSTを用いた洗浄により結合していない二次検出子抗体を除去した。活性化状態非依存性抗体はチャネリング酵素GOとコンジュゲートされており、そして活性化状態依存性抗体はシグナル増幅成分HRPで標識化されていた。GOがグルコースなどの基質と共に供給されると、GOは過酸化水素(H)を生成する。HRPがGOに対して適切な近接内にあるとき、HはHRPにチャネリングされそこで安定な複合体を形成する。HRP−H複合体は、近傍の求核性残基に共有結合する反応性チラミド基を生成するチラミドなどの蛍光発生基質を用いて増幅シグナルを生成する。本発明者らのアッセイにおいて、ビオチン−チラミド(エタノール中400μg/mL(Perkin Elmer Life Science社)の50mMグルコース/PBS中5μg/mLの80μLを各パッド上に添加し、暗中で15分間インキュベートした。次いで、スライドのTBSTを用いた3分間の洗浄を4回行った。ストレプトアビジン(SA)標識化フルオロフォアなどのシグナル検出性試薬の添加により活性化チラミドを検出した。2%BSA/0.1%トリトン/TBS中0.5μg/mL(1:4000希釈)のSA−Alexa647(PBS中、Invitrogen社)80μL、40分間。インキュベーションの完了後、スライドをTBSTで4回洗浄した。次いで、スライドを完全に乾燥させ、マイクロアレイスキャナーによる走査まで暗中に保持した。
ウェスタンブロッティング
各細胞系についての細胞溶解物を1回使い切りのバイアル中にアリコートした。それらのBCAアッセイ結果によってタンパク質濃度を決定した。β−メルカプトエタノール含有試料バッファを用いて試料を調製し、5分間の煮沸及び室温までの冷却後に、タンパク質分子量ラダーの横に並んだNuPage4〜12%ゲル上に試料をロードした。電気泳動の完了後に、ゲル中で分離したタンパク質をニトロセルロース膜(Invitrogen社、カリフォルニア州)に移した。膜を洗浄し、5%ミクロブロットでブロックし、そしてNBT/BCIPを用いた検出工程の前に一次抗体次いで二次抗体とインキュベートした。
データ解析
各スライドを3つの光電子増倍管(PMT)ゲイン設定で走査することにより感度を改善し飽和の影響を低減した。Perkin Elmer ScanArray Expressソフトウエアをスポット検知及びシグナル定量化に用いた。各スポットに対する識別子をGenePix Array List (.gal)ファイルからインポートした。スライド上の各臨床試料について同定されない試験特定番号(de-identified study specific number)を得られたデータセットに組み込んだ。
三連にプリントされた反復試験スポットに対してバックグランド補正シグナル強度を平均化した。それぞれの試薬ブランクの相対蛍光値を各試料から減算した。幾つかの品質基準を用いて、スポット・フットプリントにおける制限、スポット反復試験の変動係数、全体的パッドバックグランド及び試薬ブランクの強度を含む一層の分析からデータをフィルターにかけた。
各アッセイに対して、細胞系MD−468(HER1陽性)及びSKBr3(HER2陽性)から調製した連続希釈細胞溶解物の7つの濃度からS字状(sigmoidal)標準曲線を作成した。シグナル強度対log濃度誘導単位CU(算出単位)の関数として各曲線をプロットした。非線形回帰によってデータを5パラメータ方程式(5PL)にフィットさせ(Ritz, C. and Streibig, J. C., J. Statistical Software, 12, 1-22 (2005))、同時に捕捉抗体の3つの希釈全てをフィットさせた。オープンソース統計ソフトウエアパッケージであるRを用いてフィッティングを行った(Development Core Team, R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. ISBN 3-900051-07-0, URL http://www.R-project.org.R (2008))。数学的モデルの過剰パラメータ化を避けそれによって正確度を改善するために、4つのパラメータを制限する(constrained)と同時に、各希釈の個々の変曲点を求めた。このプロセスを各PMTゲイン設定45、50及び60に対して反復した。これにより、捕捉抗体の3つの希釈及び3つのPMT走査から、アッセイごとに生成された9つの標準曲線を得た。アッセイに組み込まれた冗長性(built-in redundancy)は、標準曲線のフィットが0.95未満のRを有する場合に希釈/走査の組み合わせ1つ又は2つ以上が除去されることを可能にすることによってそれに続く予測を改善した。データ整理及びデータ解析の方法の概要を図49に記載し、作成された標準曲線を図50aに示す。
CU計算(標準曲線に基づく)−それぞれの標準曲線(3つの捕捉抗体希釈及び3つのPMTゲイン設定走査)からの個々の予測を結合して単一の最終予測とした。各予測に対して、標準曲線上の点の勾配を計算した。この勾配はx軸上のlog単位を用いて取られたものであり、すなわち、勾配の分母の単位はlog算出単位(CU)である。次に、予測の加重平均を計算するが、ここで加重値を前記勾配から決定した。具体的には、加重値を合計し、そして各点に全体の勾配によってその勾配を割ったものと等しい加重値を与えた。1つの分析物についてのこの計算を図50bに一例として示す。既知の対照について予測に対する各アッセイの妥当性確認をした。
本明細書に引用した全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照することにより組み込まれることを明確に及び個別に示されていたかのように、本明細書に参照することにより組み込まれる。理解を明確にする目的で例示及び実施例により本発明を或る程度詳細に記載してきたが、本発明の教示に照らせば、特許請求の範囲に記載の精神又は範囲から逸脱することなしに所定の変更又は修飾をなすことができることは当業者に容易に明白であろう。

Claims (52)

  1. HER2活性を調節する化合物に対する細胞の感受性を決定する方法であって:
    (a)前記細胞を前記化合物と接触させる工程;
    (b)前記細胞を溶解させて細胞抽出物を生成する工程;
    (c)前記細胞から生成された細胞抽出物中のHER2及びp95HER2の活性化レベルを決定する工程;及び
    )工程()で決定されたHER2及びp95HER2の活性化レベルを、前記化合物を用いて処理された化合物感受性細胞中のHER2及びp95HER2の第1参照活性化レベル及び前記化合物を用いて処理された化合物耐性細胞中のHER2及びp95HER2の第2参照活性化レベルと比較する工程;を含み、
    HER2及びp95HER2の前記第1参照活性化レベルと比較して同様の又はより低い前記細胞抽出物中のHER2及びp95HER2活性化のレベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して感受性であることを示し、
    HER2及びp95HER2の前記第2参照活性化レベルと比較して同様の又はより高い前記細胞抽出物中のHER2及びp95HER2活性化のレベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して耐性であることを示す、方法。
  2. 前記化合物がHER2活性を阻害する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記化合物がモノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記モノクローナル抗体がトラスツズマブ(Herceptin(商標))、ペルツズマブ(2C4)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記チロシンキナーゼ阻害剤がゲフィチニブ、エルロチニブ、ピリチニブ、カネルチニブ、ラパチニブ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  6. 前記化合物感受性細胞がBT−474細胞である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記化合物耐性細胞中のHER2活性化のレベルが前記化合物感受性細胞中のHER2活性化のレベルより少なくとも2〜3倍高い、請求項1に記載の方法。
  8. 前記化合物耐性細胞中のp95HER2活性化レベルが前記化合物感受性細胞中のp95HER2活性化のレベルより少なくとも5倍高い、請求項1に記載の方法。
  9. HER2及びp95HER2の活性化レベルがHER2及びp95HER2のリン酸化レベルを含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記細胞抽出物中の追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上の活性化レベルを決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記追加のシグナル伝達分子1種又は2種以上がEGFR(HER1)、HER3、HER4、PI3K、AKT、MEK、PTEN、SGK3、4E−BP1、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PDK1、P70S6K、GSK−3β、Shc、IGF−1R、c−MET、c−KIT、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、受容体二量体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記化合物耐性細胞中のHER3の第2参照活性化レベルと比較して同様の又はより高い前記細胞抽出物中のHER3活性化のレベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して耐性であることを示す、請求項11に記載の方法。
  13. 前記化合物耐性細胞中のHER3活性化のレベルが前記化合物感受性細胞中のHER3活性化のレベルより少なくとも2〜3倍高い、請求項12に記載の方法。
  14. 前記化合物耐性細胞中のPI3Kの第2参照活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のPI3K活性化レベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して感受性でないことを示す、請求項11に記載の方法。
  15. 前記受容体二量体がp95HER2/HER3へテロ二量体、HER2/HER2ホモ二量体、HER2/HER3へテロ二量体、HER1/HER2ヘテロ二量体、HER2/HER3ヘテロ二量体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  16. 前記化合物耐性細胞中のp95HER2/HER3ヘテロ二量体の第2参照活性化レベルと比較してより高い前記細胞抽出物中のp95HER2/HER3ヘテロ二量体活性化レベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して感受性でないことを示す、請求項15に記載の方法。
  17. 前記細胞が腫瘍細胞である、請求項1に記載の方法。
  18. 前記腫瘍細胞が循環腫瘍細胞、又は腫瘍から得られた微細針吸引液(FNA)細胞である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記腫瘍細胞が乳癌細胞である、請求項17に記載の方法。
  20. 前記細胞が試料から単離される、請求項1に記載の方法。
  21. 前記試料が乳癌を有する被験者から得られる、請求項20に記載の方法。
  22. 前記試料が全血、血清、血漿、又は腫瘍組織試料である、請求項20に記載の方法。
  23. 工程()で得られた比較の結果を読み取り可能なフォーマットでユーザーに提供する工程()をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  24. 工程()のHER2及びp95HER2の活性化レベルを決定する工程がリン酸化HER2及びリン酸化p95HER2に特異的な抗体を用いて前記細胞抽出物中のHER2及びp95HER2のリン酸化レベルを検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  25. 工程()のHER2の活性化レベルの決定が、以下の段階:
    (i)細胞抽出物をHER2に特異的な捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして複数の捕捉された受容体を形成する段階であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている段階;
    (ii)前記複数の捕捉された受容体をHER2に特異的な活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして複数の検出可能な捕捉された受容体を形成する段階であって、
    前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分が前記シグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する段階;
    (iii)前記複数の検出可能な捕捉された受容体を前記シグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして増幅シグナルを生成する段階;及び
    (iv)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する段階;
    を含む、請求項1に記載の方法。
  26. 工程()のp95HER2の活性化レベルの決定が、以下の段階:
    (i)前記細胞抽出物を、全長HER2の細胞外ドメイン(ECD)結合領域に特異的な複数のビーズとインキュベートする段階;
    (ii)前記細胞抽出物から前記複数のビーズを除去し、それによって全長HER2を除去して、全長HER2を含まない細胞抽出物を形成する段階;
    (iii)前記全長HER2を含まない細胞抽出物を全長HER2の細胞内ドメイン(ICD)結合領域に特異的な捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして複数の捕捉された受容体を形成する段階であって、前記捕捉抗体が固体支持体に拘束されている段階;
    (iv)前記複数の捕捉された受容体を、全長HER2のICD結合領域に特異的な活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体を含む検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された受容体を形成する段階であって、
    前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化されており、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されており、そして前記促進成分が前記シグナル増幅対の第1のメンバーへチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する段階;
    (v)前記複数の検出可能な捕捉された受容体を、前記シグナル増幅対の第2のメンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する段階;及び
    (vi)前記シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成された前記増幅シグナルを検出する段階;
    を含む、請求項1に記載の方法。
  27. ECD結合領域に特異的な複数のビーズがストレプトアビジン−ビオチン対を含んでおり、ストレプトアビジンがビーズに結合しており、ビオチンが抗体に結合している、請求項26に記載の方法。
  28. 前記抗体が全長HER2のECD結合領域に特異的である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記支持体がガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25又は26に記載の方法。
  30. 前記捕捉抗体がアドレス可能なアレイにおける固体支持体上に拘束されている、請求項25又は26に記載の方法。
  31. 前記活性化状態非依存性抗体が前記促進成分を用いて直接的に標識化されている、請求項25又は26に記載の方法。
  32. 前記活性化状態依存性抗体が前記シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて直接的に標識化されている、請求項25又は26に記載の方法。
  33. 前記活性化状態依存性抗体が、該活性化状態依存性抗体にコンジュゲートされた結合対の第1のメンバーと前記シグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされた結合対の第2のメンバーとの間の結合を介して、前記シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化されている、請求項25又は26に記載の方法。
  34. 前記結合対の第1のメンバーがビオチンである、請求項33に記載の方法。
  35. 前記結合対の第2のメンバーがストレプトアビジンである、請求項33に記載の方法。
  36. 前記促進成分がグルコースオキシダーゼである、請求項25又は26に記載の方法。
  37. 前記グルコースオキシダーゼ及び前記活性化状態非依存性抗体がスルフヒドリル活性化デキストラン分子にコンジュゲートされている、請求項36に記載の方法。
  38. 前記スルフヒドリル活性化デキストラン分子が分子量約500kDaを有する、請求項37に記載の方法。
  39. 前記酸化剤が過酸化水素(H)である、請求項36に記載の方法。
  40. 前記シグナル増幅対の第1のメンバーがペルオキシダーゼである、請求項39に記載の方法。
  41. 前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、請求項40に記載の方法。
  42. 前記シグナル増幅対の第2のメンバーがチラミド試薬である、請求項40に記載の方法。
  43. 前記チラミド試薬がビオチン−チラミドである、請求項42に記載の方法。
  44. 前記増幅シグナルが、活性化チラミドを生成する、前記ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって生成される、請求項43に記載の方法。
  45. 前記活性化チラミドが直接的に検出される、請求項44に記載の方法。
  46. 前記活性化チラミドがシグナル検出性試薬の添加により検出される、請求項44に記載の方法。
  47. 前記シグナル検出性試薬がストレプトアビジン標識化フルオロフォアである、請求項46に記載の方法。
  48. 前記シグナル検出性試薬がストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと発色試薬との組み合わせである、請求項46に記載の方法。
  49. 前記発色試薬が3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)である、請求項48に記載の方法。
  50. 前記化合物耐性細胞がBT/R細胞である、請求項1に記載の方法。
  51. 前記細胞抽出物中のHER2及び/又はp95HER2の発現レベルを決定する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  52. 前記化合物感受性細胞中のHER3の第1参照活性化レベルと比較して同様の又はより低い前記細胞抽出物中のHER3活性化のレベルの存在が、前記細胞が前記化合物に対して感受性であることを示す、請求項11に記載の方法。
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