JP5717021B2 - 血管新生誘導分子 - Google Patents

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Description

本発明は、新規血管新生誘導分子に関する。より詳しくは、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(leucine rich alpha 2 glycoprotein: LRG)からなる新規血管新生誘導分子に関する。また、本発明は当該血管新生誘導分子を有効成分とする血管新生誘導剤に関し、さらには当該血管新生誘導分子を標的とする血管新生阻害剤に関する。
血管新生を促進する作用を持った増殖因子である血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)は、癌細胞などにより産生されることが知られている。VEGFは内皮細胞の細胞膜上に発現している血管内皮細胞増殖因子受容体に結合し、この受容体の刺激により活性化された内皮細胞は、タンパク質分解酵素の一種であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を放出する。MMPは血管の基底膜及び細胞外マトリックスを分解し、血管透過性を亢進させる。さらに内皮細胞の細胞外マトリックスへの遊走及び増殖により新しく直鎖状の血管が作られ、その周囲は平滑筋細胞や血管壁細胞により支持されて安定した血管となる。
血管新生に関与する因子としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)、VEGF、アンギオポエチン血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、MMP、VE-カドヘリン(CD144)、CD31、プラスミノーゲンアクチベータ(ウロキナーゼ)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)、胎盤成長因子(PIGF)などが公知である。これらの因子の多くは、血管内皮細胞の増殖や、線維芽細胞の増殖に関与している。VEGFは二量体の糖タンパク質であり、マクロファージや腫瘍細胞により産生される増殖因子であり、VEGFによるシグナル伝達は血管新生において重要な役割を担っている。VEGFは内皮細胞の遊走・増殖及び管腔形成などに影響を与えており、特に強力な血管新生誘導分子ということができる。MMPは炎症細胞や腫瘍細胞から産生されるタンパク質分解酵素である。MMPは細胞外マトリックスの分解及びVEGFを放出させる役割をもち、血管壁の構造を破壊することにより血管新生の促進に働いている。
ベーチェット病、関節リウマチ、クローン病、キャッスルマン氏病などの自己免疫疾患の炎症マーカーとして、C-reactive protein (CRP) が臨床上よく用いられる。CRPは、炎症に伴って上昇するインターロイキン-6(IL-6)などの炎症性サイトカインによって肝臓で合成される急性期タンパク質のひとつである。急性期タンパク質には、CRPの他にα1-アシドグリコプロテイン、ハプトグロビン、シアル酸などがあり、血清中のこれらの物質の濃度増加は、炎症性疾患の診断や経過の推移の判定に用いられる。これらの炎症マーカーは、体内に炎症があればその程度に応じて異常値を示すが、炎症性疾患のみならず、炎症マーカーによっては、組織破壊・細胞壊死を伴う悪性腫瘍や、急性心筋梗塞、貧血、溶血、妊娠、外傷など様々な病態で異常値を示すことがあり、各マーカーにより各疾患に対する特異度や感度が異なる場合がある。そこで、自己免疫疾患において疾患活動性を判断しうる新規なマーカー、さらには治療薬の有効性を判断しうる新規なバイオマーカーが求められており、検討したところ、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(以下、単に「LRG」という)が、関節リウマチやクロ−ン病、ベーチェット病などの自己免疫疾患の活動性と相関することを本発明者らが初めて見出し、報告した(非特許文献1)。
LRGは血清タンパク質のひとつで、約50kDaの糖タンパク質であり、好中球から分泌されることが報告されている(非特許文献2)。上述の如く、LGRが自己免疫疾患のバイオマーカーとなりうることは非特許文献1に開示されているものの、LRGの機能についてはまだ不明な点が多い。
Ann Rheum Dis Published Online First: 22 October 2009. doi:10.1136/ard.2009.118919 J Leukoc Biol. 2002 72(3):478-85.
本発明は、LRGの機能を解明し、LRGの機能に基づく新規薬剤を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、LRGの機能について鋭意研究を重ねた結果、LRGは血管新生誘導能を有することを初めて確認した。これにより、LRGからなる血管新生誘導分子、当該血管新生誘導分子を有効成分とする新規血管誘導剤、及び当該血管新生誘導分子を標的とする新規血管誘導阻害剤に係る本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.LRGからなる血管新生誘導分子。
2.前項1に記載の血管新生誘導分子を有効成分として含む血管新生誘導剤。
3.前項1に記載の血管新生誘導分子を標的とする血管新生阻害分子。
4.抗LRG抗体、LRG発現阻害物質又はLRG拮抗物質のいずれかである前項3に記載の血管新生阻害分子。
5.候補物質とLRGを相互作用させ、LRGによる血管新生誘導能を測定し、当該血管新生誘導能を低減しうる物質を選別することを特徴とする、血管新生阻害分子のスクリーニング方法。
6.血管新生誘導能が、ヒト血管内皮細胞と線維芽細胞を共培養した培養系における管腔形成能を指標とする前項5に記載のスクリーニング方法。
7.前項3若しくは4に記載の血管新生阻害分子、又は前項5若しくは6に記載のスクリーニング方法により選別された血管新生阻害分子を有効成分として含む血管新生阻害剤。
8.前項7に記載の血管新生阻害剤からなる抗炎症剤。
本発明のLRGからなる血管新生誘導分子は、血管新生誘導分子として公知のVEGFと同等の血管新生作用を有する。LRGは増殖性滑膜細胞、浸潤しているリンパ球、新生血管内皮細胞において高発現が見られたが、正常滑膜組織では血管内皮細胞のみに発現は確認されたものの、滑膜細胞や浸潤していないリンパ球ではほとんど発現がみられなかった。一方、LRGはクローン病患者の腸粘膜組織の腸上皮細胞や浸潤リンパ球から発現がみられた。以上の結果、LRGは自己免疫疾患など炎症性疾患において、炎症局所にて発現し、血管新生を促進することでリンパ球の浸潤を誘導し、炎症を引き起こす機構が示唆された。
本発明の血管新生誘導分子は、血管新生を促すことにより症状を改善しうる分野、例えば創傷治癒促進、動脈硬化等による血管閉塞に伴う虚血症状の改善等において、血管新生誘導剤の有効成分として利用することができる。また、本発明の血管新生誘導分子を標的とする血管新生阻害剤、即ちLRGの機能を阻害する血管新生阻害剤は、関節リウマチやクロ−ン病、ベーチェット病などの自己免疫疾患のみならず、あらゆる炎症症状に伴う血管新生を抑制し、症状を改善することができる。
LRGの血管新生誘導能を確認した図である。(実施例1) 関節リウマチ(RA)患者の滑膜組織でのLRGの発現を確認した図である。(参考例1) クローン病患者の腸粘膜組織でのLRGの発現を確認した図である。(参考例2)
本発明の血管新生誘導分子は、LRGからなる。ここでLRGとは、背景技術の欄でも説明したとおり、ロイシンリッチα2グリコプロテインで、約50kDaの糖タンパク質であり、健常人血清では約3.0μg/mL濃度含まれていることが知られている。またLRGは好中球から分泌されることが報告されている(非特許文献2)。また、LRGは顆粒球で発現することも報告されているが、LRGの発現はIL-6の刺激により誘導されるものではない。かかるLRGは、ベーチェット病、キャッスルマン氏病又は関節リウマチ等の自己免疫疾患のバイオマーカーとなりうることが、本発明者らにより報告されている(非特許文献1)。自己免疫疾患のマーカーとして汎用されていたCRPは、炎症に伴って上昇するIL-6などの炎症性サイトカインによって肝臓で合成される急性期タンパク質のひとつであるのに対し、LRGはIL-6の影響を受けにくいことが非特許文献1確認されている。一方、血中LRGは、炎症バイオマーカーであるのみならず、上記の疾患における疾患活動性とも相関する有用な分子であり、LRGはCRPとは異なるメカニズムにより発現するバイオマーカーである。
本発明の血管新生誘導分子であるLRGは、以下の方法により取得することができる。ベーチェット病、キャッスルマン氏病又は関節リウマチなどの自己免疫疾患患者からインフォームドコンセントにより得られた血清を、ハイスループットなタンパク質の発現・定量解析が可能なiTRAQTM試薬(ABI社)及び質量分析計の組み合わせによりプロテオーム解析し、これらの疾患特異的に発現量が異なるタンパク質であるLRGを検出することができる。LRGの検出を容易にするために、予め発現量の高い血清タンパク質、例えばアルブミン、免疫グロブリンG(IgG)、トランスフェリン、免疫グロブリンA(IgA)、ハプトグロビン、α1アンチトリプシン、フィブリノゲン、α2マクログロブリン、免疫グロブリンM(IgM)、α1-酸性糖タンパク質、補体 C3、アポリポタンパク質 AI、アポリポタンパク質 AII、トランスサイレチンなどを除去するための前処理を行っても良い。
しかしながら、上記の方法ではごく微量のLRGを検出できるのみである。LRGを大量に調製するために、遺伝子組換の手法を用いることができる。本発明のLRGタンパク質の配列は公知であり、当該タンパク質をコードするDNA配列も公知である(GenBank Accession No. NM_052972.2)。本発明の血管新生誘導分子として調製されるLRGは、血管新生誘導作用を有するのであれば、タンパク質を構成するアミノ酸配列が、上記で特定されるアミノ酸配列であってもよいし、当該アミノ酸配列とは1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、導入されていても良い。さらには、血管新生誘導作用を有するのであれば、LRGタンパク質全体であってもよいし、部分タンパク質であってもよい。以下、本明細書において「LRGタンパク質」とは、上述のように、GenBank Accession No. NP_443204.1で特定されるアミノ酸配列、又は前記特定されるアミノ酸配列とは1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、導入されているアミノ酸配列から構成されるタンパク質の意味で用いられる。
本発明のLRGタンパク質を遺伝子組換の手法により得る方法は、自体公知の方法、又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。例えば、Maniatisら、Molecular Cloning-A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor, 1982-1989に記載されるような慣用的な組換え技術により行うことができる。
特に、その方法は以下を含む工程によることができる。
i)本発明のLRGタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNAポリマーを宿主内で発現することができる複製可能又は組込み可能発現ベクターを調製し;
ii)該ベクターで宿主細胞を形質転換し;
iii) 該形質転換された宿主細胞を、前記DNAポリマーの発現が前記タンパク質を生産することができる条件下で培養し;そして
iv)該タンパク質を回収する。
本発明のLRGタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNAポリマーを、自体公知の方法、又は今後開発されるあらゆる方法で宿主細胞に導入し、形質転換することができる。例えば、好適なプラスミド又はウイルスで、例えばGenetic Engineering: Eds. S.M.Kingsman及びA.J.Kingsman: Blackwell Scientific Publications; Oxford, England, 1988に記載されるような慣用的な技術を用いて、形質転換、トランスフェクション又は感染により行うことができる。ベクターは、宿主細胞により決定することができる。宿主細胞は、LRGタンパク質を発現可能であればよく、特に限定されないが、本発明のLRGタンパク質は糖タンパク質であることから、その機能を十分に発揮させるためには、真核生物であることが好ましい。例えば酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等を用いることができ、好ましくはCOS-7細胞(アフリカミドリザル腎臓由来)やCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来)を用いることができる。適切なベクターには、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド及び組換えウイルスがある。
複製可能発現ベクターも、自体公知の方法、又は今後開発されるあらゆる方法により作製することができる。形質転換された宿主細胞をそのDNAポリマーの発現を許容する条件下で培養することも、自体公知の方法、又は今後開発されるあらゆる方法によることができる。遺伝子組換により発現して得た本発明のLRGタンパク質は、慣用的な方法により単離し、回収することができる。慣用的なタンパク質単離技術としては、例えば選択的沈殿、吸着クロマトグラフィー、及びモノクローナル抗体アフィニティーカラムを含むアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。
本発明のLRGタンパク質は、血管新生誘導分子であるため、本発明は当該血管新生誘導分子を有効成分とする血管新生誘導剤にも及ぶ。LRGタンパク質を含む本発明の血管新生誘導剤を生体に投与する場合は、経口的にあるいは直腸内、皮下、髄腔内、筋肉内、静脈内、動脈内、経皮等、非経口的に投与することができる。
LRGタンパク質を含む本発明の血管新生誘導剤を生体に投与する場合、適当な剤型に製剤化して用いるのが好ましく、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、シロップ剤、ローション剤、軟膏剤、パップ剤等の製剤で用いることができる。これらの剤型に製剤化するには薬学上許容しうる適当な担体、賦形剤、添加剤等を用いて行うことができる。
静脈内投与する際に好ましい剤型は液剤であり、液剤を調製するには、例えば精製水、生理食塩水、エタノール・プロピレングリコール・グリセリン・ポリエチレングリコール等のアルコール類、トリアセチン等の溶媒を用いて行うことができる。このような製剤にはさらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤のような補助剤を加えても良い。また懸濁剤として投与することも可能である。
また錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤等の固形製剤を調製するには、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、デンプン、ショ糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース等の担体、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン等の添加剤を加えて常法により行うことができる。またセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、スチレン−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等の腸溶性物質の有機溶媒あるいは水中溶液を吹き付けて、腸溶性被膜を施して、腸溶性製剤として製剤化することもできる。薬学上許容しうる担体には、その他通常、必要により用いられる補助剤、芳香剤、安定剤あるいは防腐剤を含む。
さらに本発明は、本発明の血管新生誘導分子を標的とする血管新生阻害分子にも及ぶ。本発明の血管新生阻害分子の例としては、LRGタンパク質の血管新生機能を阻害しうる物質であればよく、特に限定されないが、例えば抗LRG抗体、LRGタンパク質発現阻害剤、LRGタンパク質拮抗剤などが挙げられる。
抗LRG抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、特に限定されないが、LRGタンパク質の血管新生機能を有する部分から選択される領域をエピトープとする抗体が多く含まれているのが好適であり、そのような部分をエピトープとする抗体からなるモノクローナル抗体などが、特に好適である。抗体は、例えば上述の方法により作製されたLRGタンパク質を抗原とし、又はエピトープとなりうる配列を含むペプチドを抗原とし、自体公知の方法、又は今後開発されるあらゆる方法により作製することができる。また、抗LRG抗体を有効成分として含む血管新生阻害剤を医薬品として使用する場合には、ヒト型抗体とすることが必要である。
LRGタンパク質発現阻害剤やLRGタンパク質拮抗剤などは、LRGによる血管新生誘導機能を阻害しうるのであれば、タンパク質、siRNA、ペプチド等の高分子化合物であっても良いし、低分子化合物であっても良い。LRGタンパク質発現阻害剤は、LRGタンパク質の発現を阻止しうる物質であればよい。LRGタンパク質拮抗剤は、例えばLRGタンパク質の血管新生誘導機能を阻害しうる物質であれば良い。
本発明は、上述のような血管新生阻害分子をスクリーニングする方法にも及ぶ。具体的には、候補物質とLRGを相互作用させ、LRGによる血管新生誘導能を測定し、当該血管新生誘導能を低減しうる物質を選別することを特徴とする、血管新生阻害分子のスクリーニング方法による。候補物質とLRGは、血管新生誘導能測定の前に相互作用させても良いし、測定系において同時に相互作用させても良い。例えば、抗LRG抗体の場合は、LRGを含むサンプルに抗LRG抗体を加えて予め抗原抗体反応させ、反応させた試料について血管新生誘導能を測定し、スクリーニングすることができる。上記において、血管新生誘導能は、例えばヒト血管内皮細胞と線維芽細胞を共培養した培養系における管腔形成能を指標として測定することができる。また、血管新生誘導能を測定しうるのであれば、今後開発されるあらゆる測定方法を適用することができる。
本発明は、血管新生阻害分子、又は上記のスクリーニング方法により選別された血管新生阻害分子を有効成分として含む血管新生阻害剤にも及ぶ。
本発明の血管新生阻害分子を含む本発明の血管新生阻害剤を生体に投与する場合、適当な剤型に製剤化して用いるのが好ましく、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、シロップ剤、ローション剤、軟膏剤、パップ剤等の製剤で用いることができる。これらの剤型に製剤化するには薬学上許容しうる適当な担体、賦形剤、添加剤等を用いて行うことができる。
静脈内投与する際に好ましい剤型は液剤であり、液剤を調製するには、例えば精製水、生理食塩水、エタノール・プロピレングリコール・グリセリン・ポリエチレングリコール等のアルコール類、トリアセチン等の溶媒を用いて行うことができる。このような製剤にはさらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤のような補助剤を加えても良い。また懸濁剤として投与することも可能である。
また錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤等の固形製剤を調製するには、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、デンプン、ショ糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース等の担体、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン等の添加剤を加えて常法により行うことができる。またセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、スチレン−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等の腸溶性物質の有機溶媒あるいは水中溶液を吹き付けて、腸溶性被膜を施して、腸溶性製剤として製剤化することもできる。薬学上許容しうる担体には、その他通常、必要により用いられる補助剤、芳香剤、安定剤あるいは防腐剤を含む。
創傷治癒、再生医療、生理的現象において血管新生が必要とされるのは、例えば創傷治癒の過程が挙げられる。また、再生医療において、再生された組織内に血管が新生されることで、再生された組織が生体に適合し、機能することができる。本発明の血管新生誘導剤は、このような場合に有効に適用することができる。また、生体では血液が循環することで組織に栄養がゆきわたり、機能するが、何らかの原因で血管が閉塞した場合に、閉塞した血管の先に血液がゆきわたらなくなり、組織が壊死するなどが生じる。例えば、閉塞性動脈硬化症による四肢末端壊死等が挙げられる。またそのような症状を呈する基礎疾患として糖尿病などが挙げられる。このような症状を防止するためにも、血管新生誘導剤は、有効に適用することができる。
本発明の血管新生阻害分子を有効成分として含む血管新生阻害剤は、特にLRGに起因する血管新生による症状を改善する薬剤として有効に使用することができる。LRGは、ベーチェット病、関節リウマチ、クローン病、キャッスルマン氏病などの自己免疫疾患の炎症マーカーとして検出されることから、特にこれらの疾患において生じる炎症を改善することができると考えられる。また、癌においても不要な血管が新生し、癌細胞を増殖させ、好ましくない結果をもたらす場合がある。このような血管新生も、LRGが起因となる可能性も考えられる。本発明の血管新生阻害剤は、このようなLRGに起因する可能性のある血管新生に対して適用することができる。また、本発明の血管新生阻害剤は、LRGに起因する炎症状態を改善しうることから、抗炎症剤として利用することもできる。本発明は、このような抗炎症剤にも及ぶ。
以下に、実施例及び参考例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
(実施例1)LRGによる血管新生誘導能の確認
1)LRGの調製
血管新生に対するLRGの影響を調べるため、COS-7細胞にヒトLRG遺伝子を導入し、培養上清から遺伝子組み換えヒトLRGを大量精製した。まず、ヒト肝臓癌細胞株であるHepG2よりQIAGENRN(R) easy mini kitTM(キアゲン社)を用いてtotal RNAを抽出・精製し、Quantitect reverse transcriptase kitTM(キアゲン社) を用いてcDNAに逆転写した。ヒトLRGのcDNAはHepG2のcDNAライブラリーよりPCR法にて増幅した。PCR法のプライマーは、以下の配列番号1及び2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。PCR法のDNAポリメラーゼとして、KOD plusTM (TOYOBO社)を使用した。PCRは94℃2分、(94℃15秒、53℃30秒、68℃90秒)×35サイクル行った。
Forward primer(5'-GGCGCCATGTCCTCTTGGAGCAG-3')(配列番号1)
Reverse primer(5'-CTGGGACTTGGCCACTG-3')(配列番号2)
LRGのcDNAはQIAGENRN(R) A addition kitTM(キアゲン社)にてA(アデニン)を一塩基付加し、pcDNATM3.1/V5-HisTOPO(R)ベクター(invitrogen社) に挿入した(pcDNA3.1LRG-V5-His)。ライゲーション産物は大腸菌DH5aTM(TOYOBO社)に形質転換し、アンピシリン入りLB寒天培地プレート(LB plate+Ampicilin plate)に大腸菌を塗布し、アンピシリン耐性のクローンをアンピシリンを含む2xYT培地(2xYT+Amp培地)で培養し、Miniprep kitTM (QIAGEN社)を用いてプラスミドを精製した。順方向に挿入されたLRGの発現ベクターはDNA配列を解析することで確認した。ほ乳類細胞でLRGの組み換えタンパク質を大量調製するために、リポフェクトアミンTM 2000 試薬 (lipofectamine2000, invitrogen社) を用いてCOS-7細胞にpcDNA3.1LRG-V5-Hisをトランスフェクションした。トランスフェクションの4時間後に培地を除去し、DMEM培地(無血清)で細胞を3回洗浄し、CD293培地で3日間培養した。培養上清を回収し、遠心上清をTALONTM 樹脂カラム(クロンテック社)に通した。溶出はイミダゾールを用い、以下の通りの方法で溶出した。
5mMイミダゾール/PBS/pH8.0・・・1ml×15フラクション
10mMイミダゾール/PBS/pH8.0・・・1ml×15フラクション
200mMイミダゾール/PBS/pH8.0・・・1ml×10フラクション
各イミダゾール濃度のフラクションで吸光度(OD280)が0.1以上のフラクションをそれぞれ集め、透析チューブに入れてPBSで透析した。透析後、DCTM Protein assay (BioRad社)により濃度を測定した。
2)血管新生誘導能確認
血管新生キット(クラボウ製)を用い、取扱説明書に従って上記得た精製LRGについての血管新性能を確認した。陽性コントロールとして、血管新生促進剤(VEGF-A, 10ng/ml 250μl)(製品番号KZ-1350)を用いた。血管新生キットには、血管新生確認用細胞(正常ヒトさい帯静脈血管内皮細胞HUVECと正常皮膚繊維芽細胞NHDFを共培養し、管腔形成初期段階である細胞)、血管新生専用培地及び必要なプレート等が含まれる。また、管腔形成の確認のために、別途管腔染色キット(CD31染色用)(製品番号KZ-1225)を用いた。本染色キットにより、HUVEC細胞のCD31(PECAM-1)が染色され、管腔観察が容易となる。
3)血管新生誘導能結果
上記の結果、LRG 3μg/mlで、VEGF-A 10ng/mlと同等以上の血管新生誘導能が認められた(図1参照)。
(参考例1)関節リウマチ(RA)患者の滑膜組織におけるLRG発現の確認
ヒト炎症性組織アレイ(provitro社)の組織マイクロアレイを用いて関節リウマチ滑膜組織におけるLRGの発現を免疫組織化学染色にて評価した。その結果、健常者の滑膜組織に比べて、関節リウマチ患者の滑膜組織において、有意にLRGの発現が認められた(図2参照)。
(参考例2)クローン病患者の腸粘膜組織におけるLRG発現の確認
ヒト炎症性組織アレイ(provitro社)の組織マイクロアレイを用いてクローン病腸粘膜組織におけるLRGの発現を免疫組織化学染色にて評価した。その結果、健常者の腸粘膜組織に比べて、クローン病患者の腸粘膜組織において、有意にLRGの発現が認められた(図3参照)。
以上詳述したように、本発明のLRGからなる血管新生誘導分子は、血管新生誘導分子として公知のVEGFと同等の血管新生作用を有する。LRGは増殖性滑膜細胞、浸潤しているリンパ球、新生血管内皮細胞において高発現が見られたが、正常滑膜組織では血管内皮細胞のみに発現は確認されたものの、滑膜細胞や浸潤していないリンパ球ではほとんど発現がみられなかった。一方、LRGはクローン病患者の腸粘膜組織の腸上皮細胞や浸潤リンパ球から発現がみられた。以上の結果、LRGは自己免疫疾患など炎症性疾患において、炎症局所にて発現し、血管新生を促進することでリンパ球の浸潤を誘導し、炎症を引き起こす機構が示唆された。
本発明の血管新生誘導分子は、血管新生を促すことにより症状を改善しうる分野、例えば創傷治癒促進、動脈硬化等による血管閉塞に伴う虚血症状の改善等において、血管新生誘導剤の有効成分として利用することができる。また、本発明の血管新生誘導分子を標的とする血管新生阻害剤、即ちLRGの機能を阻害する血管新生阻害剤は、関節リウマチやクロ−ン病、ベーチェット病などの自己免疫疾患のみならず、あらゆる炎症症状に伴う血管新生を抑制し、症状を改善することができる。

Claims (3)

  1. ロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRGタンパク質)を有効成分として含むことを特徴とする血管新生誘導剤
  2. 候補物質LRGタンパク質を相互作用させ、LRGタンパク質による血管新生誘導能を測定し、当該血管新生誘導能を低減しうる物質を選別することを特徴とする、血管新生阻害のスクリーニング方法
  3. 血管新生誘導能が、ヒト血管内皮細胞と線維芽細胞を共培養した培養系における管腔形成能を指標とする請求項に記載のスクリーニング方法。
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