JP5716886B2 - マグネシウム合金コイル材及びその製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金コイル材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マグネシウム合金部材の素材に適したマグネシウム合金コイル材及びその製造方法、マグネシウム合金圧延コイル材に関するものである。特に、コイル材の全長に亘って均質な金属組織を有するマグネシウム合金コイル材に関するものである。
携帯電話やノート型パソコンといった携帯用電気・電子機器類の筐体等の各種の部材の構成材料として、軽量で、比強度、比剛性に優れるマグネシウム合金が検討されている。マグネシウム合金は、塑性加工性に乏しいことから、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材が主流である。
マグネシウム合金鋳造材は、通常、元素を添加させて機械的強度を向上させている。その添加させた元素を、マグネシウムに一旦固溶させ、過飽和固溶体を得るための熱処理として溶体化処理がある。溶体化処理は、マグネシウム合金鋳造材のデンドライト組織の加工性が悪く圧延が困難であるため、偏析や晶出物を一旦固溶させ、加工容易な粒状組織とする。例えば、特許文献1には、マグネシウム合金からなる圧延板にプレス加工を施すことが開示されているが、圧延前に溶体化処理を施すことで機械的特性を向上できることが示されている。
特開2007‐98470号公報(段落0109)
溶体化処理の一つとしてバッチ式が利用される。一般に、バッチ式溶体化処理とは、まず、鋳造によって得られた長尺な板をコイル状に巻き取り、巻き取ったコイル素材をそのまま熱処理炉内に投入して加熱する。次に、加熱したコイル素材を熱処理炉内から取り出し、取り出したコイル素材を冷媒槽内に貯留された冷媒中に浸漬させて冷却することで溶体化処理を行うという手順を踏む方法である。
上記溶体化処理を行う際、複数個のコイル素材を一つずつ加熱すると効率が悪いため、本発明者らは、一つの熱処理炉内で複数個のコイル素材を同時に加熱することを検討した。具体的には、複数段のラック等にコイル素材をその軸方向が上下方向になり、かつ各コイル素材の円環状の端面間に隙間を有するように積層し、ヒーターによって加熱する方法を考えた。しかし、熱処理炉内には温度分布が存在するため、各コイル素材に与えられる熱量が異なってしまう。例えば、ヒーターによって温められた熱気は熱処理炉内の上方に移行し易いため、上方側のコイル素材は下方側のコイル素材に比べて良く加熱されることになる。同じ熱処理炉内において、加熱され難いコイル素材を速やかに昇温するためには加熱温度を上げる他ないが、加熱温度がある一定温度以上になると燃焼といった不具合を生じる恐れがあり、加熱され易いコイル素材が上記不具合を引き起こす可能性があるため、加熱温度を上げることで両者の昇温速度の差を縮めることは困難である。よって、同じ熱処理炉内で加熱しているにも拘わらず、コイル素材同士に偏析の溶け込みや結晶粒径に差が生じることがあり、全てのコイル素材において均質な金属組織を安定して得ることが困難である。
また、本発明者らは、加熱したコイル素材を熱処理炉内から取り出し、取り出したコイル素材を冷媒槽内に貯留された冷媒中に浸漬させて冷却する際も同様に、一つの冷媒槽内で複数個のコイル素材を同時に冷却することを検討した。しかし、高温に加熱したコイル素材を冷媒中に浸漬すると、コイル素材の表面で冷媒が突沸し、コイル素材の表面に水蒸気の膜が生じてしまい冷却が妨げられる。また、コイル素材をその軸方向が上下方向になるように積層した場合、下方側のコイル素材の表面に発生した水蒸気がその表面から剥離して上昇すると、上方側のコイル素材の表面に滞り、上方側のコイル素材ではより冷却が妨げられる。よって、同じ冷媒槽内で冷却しているにも拘わらず、コイル素材同士に冷却速度の差が生じ、全てのコイル素材において均質な金属組織を安定して得ることが困難である。また、各コイル素材においても冷却が不均一となり、その全長に亘って均質な金属組織を安定して得ることが困難である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、複数個のコイル素材を同時に熱処理しても、全てのコイル材において、かつ各コイル材の全長に亘って実質的に均質な金属組織を安定して得ることができるマグネシウム合金コイル材の製造方法によって製造されたマグネシウム合金コイル材を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記本発明マグネシウム合金コイル材の製造方法を提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、マグネシウム合金部材を大量生産するにあたり、素材に好適に利用できるマグネシウム合金圧延コイル材を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究した結果、溶体化処理において、一つの熱処理炉内で複数個のコイル素材を同時に加熱する際、熱処理炉内の雰囲気、温度を実質的に一定にすることによって、熱処理炉内の全てのコイル材において、かつ各コイル材の全長に亘って実質的に均質な金属組織を安定して得ることができることを見出した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明について説明する。
[本発明マグネシウム合金コイル材]
本発明のマグネシウム合金コイル材は、マグネシウム合金からなる長尺材が巻き取られてなるマグネシウム合金コイル材に係る。そして、上記長尺材の全長に亘って、マグネシウム合金の連続する100個以上の結晶粒の平均粒径が20〜80μmであることを特徴とする。
本発明において長尺材の全長に亘るとは、以下を言う。長尺材の全長が50m未満の場合、両端からそれぞれ全長の1割を切断したトリミング材に対し、当該トリミング材の全長の1割に相当する長さごとに切断し、各切断片から試験片をそれぞれ作製して、種々のパラメータを測定し、全ての試験片が上記規定を満たす。一方、上記長尺材の全長が50m以上の場合、両端からそれぞれ5mを切断したトリミング材に対し、当該トリミング材を10mごとに切断し、各切断片から試験片をそれぞれ作製して、種々のパラメータを測定し、全ての試験片が上記規定を満たす。
マグネシウム合金の結晶粒の平均粒径は以下のように求める。上記切断片の断面を顕微鏡(100倍)で画像撮影し、この画像から任意の10個の視野(ここでは各500μm×500μmの領域)をとる。観察視野ごとに、任意の測定線を引き、この測定線を横切る連続する100個以上の結晶粒を数え、これらの結晶粒と交わる測定線の長さを測り、(測定線の長さ/結晶粒の合計数)を求める。そして、10個の観察視野の平均をその切断片でのマグネシウム合金の結晶粒の平均粒径とし、同様の測定を全ての切断片について行う。
全切断片での平均粒径が全て20〜80μmを満たすことで、コイル材の全長に亘って実質的に均質な金属組織を安定して得ることができたと言える。そして、平均粒径が上記範囲であると、後の圧延等の塑性加工性を高めることができる。
本発明のマグネシウム合金コイル材は、上記全長に亘って、上記平均粒径の最大値と最小値との差が20μmであることが好ましい。
コイル材の全長に亘って、上記平均粒径の最大値と最小値との差が20μmであると、このコイル材に圧延等の塑性加工を施した際、十分な機械的強度を発揮し、割れ等を防止することができ、優れたマグネシウム合金部材の生産が期待できる。
また、本発明のマグネシウム合金コイル材は、上記全長に亘って、長手方向の引張強度が250〜300MPaであることが好ましい。
マグネシウム合金コイル材の平均引張強度は以下のように求める。両端を切断したトリミング材を、全長の1割に相当する長さ(全長が50m未満の場合)もしくは10m(全長が50m以上の場合)ごとに切断し、切断した各シート材において、その幅方向の中心から両縁側に向かってそれぞれ、当該シート材の幅の1割に相当する長さの領域(合計が幅の2割に相当する長さの領域)から試験片を作製して、引張試験を行う。試験片は、JIS 13B号の板状試験片(JIS Z 2201(1998))を作製して、JIS Z 2241(1998)の金属材料引張試験方法に基づいて上記引張試験を行う。
全試験片の引張強度が250〜300MPaを満たすことで、コイル材の全長に亘って実質的に均質な金属組織を安定して得ることができたと言える。そして、引張強度が上記範囲であると、コイル材の全長に亘って、靭性と強度とをバランスよく備えることができ、後の圧延等の塑性加工性において十分な強度を発揮する。
更に、本発明のマグネシウム合金コイル材は、上記全長に亘って、晶析出物相の存在率が、観察視野面積において10%以下であることが好ましい。
本発明において晶析出物相とは、析出元素を含有する金属間化合物のことを言う。晶析出物相の具体的な組成として、Mg17Al12、Al(MnFe)等が挙げられる。晶析出物相は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)の反射電子像を利用したり、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や電子線マイクロアナライザ(EPMA)等の組成マッピングを行える装置を利用することで検出することができる。より具体的には、上記反射電子像においてコントラスト差が生じている領域、組成マッピングにおいて面分析やカラー分析により析出元素が特定の濃度で存在する領域を晶析出物相として判別することができる。このSEMの反射電子像において観察視野をとり、この観察視野中の晶析出物相を全て抽出して晶析出物相の面積を算出し、晶析出物相の存在率として(全ての晶析出物相の合計面積/観察視野面積)を求める。両端を切断したトリミング材において、全長の1割に相当する長さ(全長が50m未満の場合)もしくは10m(全長が50m以上の場合)ごとに上記晶析出物相の存在率を求める。
全観察視野面積での存在率が10%以下であることで、コイル材の全長に亘って、マグネシウム合金の結晶粒内に析出元素がほぼ完全に固溶され、実質的に均質な金属組織を得ることができたと言える。そして、晶析出物相の存在率が10%以下であると、後の圧延等の塑性加工時に生じる割れの原因となる析出元素を減らすことができ、機械的強度を高めることができる。この晶析出物相は、鋳造コイル材を溶体化処理する際、その冷却過程において、冷却速度が遅い場合に顕著に現れ、晶析出物相の存在率が高くなる。
上記本発明のマグネシウム合金コイル材を構成するマグネシウム合金は、添加元素として、Al,Zn,Mn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Sn,Li,Zr,Ce,Be及び希土類元素(Y,Ceを除く)から選択される少なくとも1種の元素を合計7.3質量%以上含有し、残部がMg及び不純物からなる合金が挙げられる。
本発明のマグネシウム合金コイル材は、添加元素として、実質的に固溶・析出元素のみを含む形態(固溶・析出元素と残部がMg及び不純物からなる形態)の他、固溶・析出元素以外の元素も含む形態とすることができる。
特に、Alを含有するMg-Al系合金は、耐食性に優れる上に、強度、耐塑性変形性といった機械的特性にも優れ、Alの含有量が多いほど、これらの効果が高い傾向にある。従って、Alの含有量は、4.5質量%以上、更に7質量%以上が好ましい。但し、Alの含有量が12質量%を超えると塑性加工性の低下を招くことから、上限は12質量%、更に11質量%が好ましい。また、上記列挙した元素のうち、Al以外の元素を含む場合、その含有量は、合計で0.01質量%以上10質量%以下、特に0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。不純物は、例えば、Fe,Ni,Cu等が挙げられる。希土類元素の含有量は0.1質量%以上が好ましく、特に、Yの含有量は0.5質量%以上が好ましい。
より具体的な組成として、Mg-Al系合金は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2質量%〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15質量%〜0.5質量%)、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金、AX系合金(Mg-Al-Ca系合金、Ca:0.2質量%〜6.0質量%)、AJ系合金(Mg-Al-Sr系合金、Sr:0.2質量%〜7.0質量%)等が挙げられる。特に、Alを7.3質量%超12質量%以下含有する形態、より具体的にはAlを8.3質量%〜9.5質量%、Znを0.5質量%〜1.5質量%含有するMg-Al系合金、代表的にはAZ91合金は、強度に優れる上に耐食性にも優れて好ましい。
上記本発明のマグネシウム合金コイル材は、例えば、圧延材の素材に好適に利用することができる。具体的には、上記マグネシウム合金コイル材を巻き戻して板材に圧延を施すことで、本発明のマグネシウム合金圧延コイル材が得られる。
本発明のマグネシウム合金コイル材は、全長に亘って実質的に均質な金属組織を有しているので、機械的強度に優れるマグネシウム合金圧延コイル材を得ることができる。更に、このマグネシウム合金圧延コイル材に矯正加工、研磨等の表面加工を施した加工材を得ることができる。よって、プレス加工部材といった2次加工材(マグネシウム合金部材)の製造にあたり、プレス装置といった塑性加工装置に連続的に素材を供給することができ、マグネシウム合金部材の生産性に優れる。
[本発明マグネシウム合金コイル材の製造方法]
上述した本発明のマグネシウム合金コイル材は、以下に示す本発明マグネシウム合金コイル材の製造方法により製造することができる。
本発明のマグネシウム合金コイル材の製造方法は、マグネシウム合金からなる長尺材が巻き取られてなる少なくとも一つのコイル素材を熱処理炉内で加熱する加熱工程と、加熱工程を経たコイル素材を冷媒槽内に貯留された冷媒中に浸漬させて冷却する冷却工程とを備える。そして、加熱工程は、上記熱処理炉内の雰囲気を対流する対流手段を有する均熱手段によって、上記雰囲気を攪拌し、上記熱処理炉内の全てのコイル素材を実質的に均一に加熱することを特徴とする。また、冷却工程は、上記冷媒槽内の冷媒を攪拌する攪拌手段によって、上記冷媒を攪拌し、上記冷媒槽内の全てのコイル素材を30℃/min以上の冷却速度で実質的に均一に冷却することを特徴とする。
加熱工程において、均熱手段は熱処理炉内の雰囲気を攪拌するので、雰囲気が一定の場所に滞留することを防止できる。例えば、ヒーター等の加熱手段によって温められた熱気は熱処理炉内の上方に移行し易いが、熱処理炉内の雰囲気は対流手段により攪拌されるため、上方に移行した熱気を熱処理炉内で循環させることができる。また、雰囲気を攪拌することによって、コイル素材のうち熱気の到達し難い箇所、例えばコイル素材の内側に熱気を送ることができる。つまり、熱処理炉内における各場所の雰囲気を実質的に一定にすることができ、コイル素材への熱の伝達が均一にできる。よって、一つの熱処理炉内で一つのコイル素材を加熱する場合は勿論、複数個のコイル素材を同時に加熱する場合でも、熱処理炉内のどの場所にコイル素材があったとしても、全てのコイル素材を実質的に均一に加熱することができる。この「実質的に均一に加熱」とは、各コイル素材に対する加熱温度において、各加熱温度の温度差を10℃以内、より好ましくは5℃以内で加熱することをいう。勿論、上記温度差の全くないことが最良である。
冷却工程において、攪拌手段で冷媒を攪拌することによって、コイル素材の表面に生成する水蒸気の膜を除去することができる。また、一つの冷媒槽内で複数個のコイル素材を同時に冷却する際、あるコイル素材の表面に発生した水蒸気がその表面から剥離して別のコイル素材の表面に滞ることも防ぐことができる。更に、各コイル素材を効率的に、かつ30℃/min以上、好ましくは50℃/min以上、より好ましくは60℃/min以上の冷却速度で実質的に均一に冷却しやすい。この「実質的に均一に冷却」とは、各コイル素材に対する冷却速度において、各冷却速度の速度差を10℃/min以内、より好ましくは5℃/min以内で冷却することをいう。勿論、上記速度差の全くないことが最良である。
一つの熱処理炉内で複数個のコイル素材を同時に加熱する際、全てのコイル素材を実質的に均一に加熱し、一つの冷媒槽内で複数個のコイル素材を同時に冷却する際、全てのコイル素材を実質的に均一に冷却することで、全てのコイル素材において、上述したマグネシウム合金コイル材を安定して製造することができる。つまり、上記加熱工程と冷却工程によって、全てのコイル材において、かつ各コイル材の全長に亘って、実質的に均質な金属組織を安定して得ることができる。
更に、上記均熱手段は、上記熱処理炉内の雰囲気の流れる方向を制御する気流制御手段を有する形態が挙げられる。
気流制御手段によって、熱処理炉内の雰囲気の流れる方向が制御できるので、上記雰囲気の循環を詳細に制御できる。例えば、加熱手段によって温められた熱気を熱処理炉内の上方に流れ込むことを防止したり、熱気を熱処理炉内の下方に流れ込むことを助長したりできる。また、コイル素材の内側、コイル素材における対流手段とは反対側、或いはコイル素材同士の間など、熱気の到達し難い箇所にも熱気を送ることができ、全てのコイル材において、かつ各コイル材の全長に亘って、実質的に均質な金属組織を安定して得ることができる。
本発明のマグネシウム合金コイル材は、全長に亘って実質的に均質な金属組織である。よって、後の圧延等の塑性加工性を高めることができ、全長に亘って機械的強度に優れるマグネシウム合金圧延コイル材を得ることができる。
本発明のマグネシウム合金コイル材の製造方法において、加熱工程は、熱処理炉内の雰囲気を実質的に均一にできるので、熱処理炉内のどの場所にコイル素材があったとしても、全てのコイル素材を実質的に均一に加熱することができる。また、冷却工程は、冷媒槽内の冷媒を実質的に均一に冷却できるので、冷媒槽内のどの場所にコイル素材があったとしても、全てのコイル素材を実質的に均一に冷却することができる。よって、加熱工程と冷却工程を経た全てのコイル素材において、本発明のマグネシウム合金コイル材を安定して製造することができる。
実施形態1に係るマグネシウム合金コイル材の製造設備である熱処理炉を示す模式縦断面図である。 実施形態2に係るマグネシウム合金コイル材の製造設備である熱処理炉を示す模式縦断面図である。 実施形態3に係るマグネシウム合金コイル材の製造設備である熱処理炉を示す模式縦断面図である。 マグネシウム合金コイル材の断面の顕微鏡写真であり、晶析出物相を示す。
以下、本発明についての実施形態を図面に基づいて説明する。図面において同一符号は同一部材を示す。
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係るマグネシウム合金コイル材の製造方法について、図1に基づいて説明する。この製造方法は、マグネシウム合金からなる長尺材が巻き取られてなる少なくとも一つのコイル素材2を熱処理炉1内で加熱する加熱工程と、加熱工程を経たコイル素材2を冷媒槽内に貯留された冷媒中に浸漬させて冷却する冷却工程とを備える。図1は上記加熱工程における熱処理炉1を図示したものであり、冷却工程における冷媒槽については図示していない。以下、各工程を詳細に説明する。
[加熱工程]
加熱工程は、熱処理炉1内にコイル素材2を設置し、加熱手段となるヒーター3で熱処理炉1内の雰囲気を加熱すると共に、加熱された雰囲気を均熱手段によって攪拌し、熱処理炉1内の全てのコイル素材2を実質的に均一に加熱する。また、均熱手段は、熱処理炉1内の加熱された雰囲気を対流させる対流手段と、その雰囲気の流れる方向を制御する気流制御手段を有する。
≪マグネシウム合金コイル素材≫
マグネシウム合金コイル素材2は、双ロール鋳造などの連続鋳造により形成された一枚のマグネシウム合金からなる長尺材をコイル状に密に巻き取って成る。この長尺材の長さは30m以上、更に50m以上、特に100m以上が好ましい。そして、長尺材の厚みは特に限定されないが、コイル状に巻くことができる程度の厚さを有していればよい。上記マグネシウム合金コイル素材は、双ロール鋳造以外にも、例えば、ツインベルト鋳造やベルトアンドホイール鋳造といった連続鋳造法で形成されたものを用いることができる。
マグネシウム合金コイル素材2の内径及び外径は、例えば、長尺材の長さや厚さに応じて適宜選択することができる。但し、内径が小さ過ぎたり、長尺材の厚さが厚過ぎると、長尺材を巻き取るときに長尺材に割れなどが生じる恐れがある。そのため、内径は、300mm以上が好ましい。
マグネシウム合金コイル素材2を構成するマグネシウム合金は、添加元素として、Al,Zn,Mn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Sn,Li,Zr,Ce,Be及び希土類元素(Y,Ceを除く)から選択される少なくとも1種の元素を合計7.3質量%以上含有し、残部がMg及び不純物からなる合金が挙げられる。また、添加元素として、実質的に固溶・析出元素のみを含む形態(固溶・析出元素と残部がMg及び不純物からなる形態)の他、固溶・析出元素以外の元素も含む形態とすることもできる。具体的には、ASTM規格におけるAZ系合金ならAZ31、AZ61、AZ91等を、AM系合金ならAM60等を、その他、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金、AX系合金、AJ系合金等のマグネシウム合金を利用することができる。特に、Mg-Al系合金、代表的にはAZ91合金は、強度に優れる上に耐食性にも優れて好ましい。
本例では、上記マグネシウム合金コイル素材2を5個同時に加熱する。この5個のコイル素材2(上から順に第1コイル素材21、第2コイル素材22、第3コイル素材23、第4コイル素材24、第5コイル素材25と呼ぶ)を、その軸方向が上下方向になるように5段のラック6の各段に平置きする。このラック6は、5枚の平板と1枚の天井板とを四隅に配置した支柱にて支持した構成である。各平板と天井板はメッシュ状部材で構成されており、平板の全面において均等に開口部を有し、上下方向へ通気可能となっている。各平板同士の間隔はコイル素材2の高さよりも大きくし、各コイル素材2の円環状の端面間に隙間を設け、各コイル素材2の上記端面同士の接触を防止する。各コイル素材2の上記端面同士を接触して平置きすると、その接触面付近に加熱雰囲気を供給できない上、加熱した際、上方側のコイル素材2の自重による歪みが下方側のコイル素材2に加えられ変形する恐れがある。コイル素材2の配置に関しては、各コイル素材2の円環状の端面間に隙間を有し、その隙間に加熱雰囲気を供給できるのであれば、特に限定されない。また、一つの熱処理炉1内で同時に加熱するコイル素材2の個数は、上記コイル素材2の配置形態を保つことができるのであれば、特に限定されない。そして、このコイル素材2の個数に応じて、ラック6の段数を変更すればよい。
≪加熱手段≫
熱処理炉1内には、熱処理炉1内を加熱するために加熱手段を設ける。加熱手段として、本例では、ヒーター3を用いている。このヒーター3は、図1に示すように、5個のコイル素材2と同じ高さ位置に、各コイル素材2の高さと同じ長さの5個のヒーター3(第1ヒーター31、第2ヒーター32、第3ヒーター33、第4ヒーター34、第5ヒーター35)を熱処理炉1内における側面に配置する。
ヒーター3によって温められた熱気は熱処理炉1内の上方に移行し易いため、単にヒーター3で加熱するだけでは、上方のコイル素材(例えば第1コイル21)は下方のコイル素材(例えば第5コイル素材25)に比べて良く加熱されることになる。よって、加熱され難い下方のコイル素材(例えば第5コイル素材25)を上方のコイル素材(例えば第1コイル21)と同等の加熱温度で加熱するために、各ヒーター3の加熱温度を、第1ヒーター31<第2ヒーター32<第3ヒーター33<第4ヒーター34<第5ヒーター35とすることで、各コイル素材2に対する加熱温度を実質的に均一にしている。
≪均熱手段≫
(対流手段)
対流手段は、熱処理炉1内の雰囲気を対流する。対流手段として、本例では、ファン5を用いている。ファン5は、コイル素材2の円環状とほぼ同等の大きさであり、熱処理炉1の天井面に、ファン5の回転中心が天井面の中心となるように1個配置する。そして、ラック6に配置された各コイル素材2の中心軸が、ファン5の回転中心軸と同軸となるようにラック6を配置する。熱処理炉1内の雰囲気は、このファン5によって、各コイル素材2の側面を上方から下方に向けて流れる。熱処理炉1内の下方に流れた雰囲気は、各コイル素材2の下方へ回り込み、下方へ回り込んだ雰囲気は上昇して、各コイル素材2の内側を流れる。そして、各コイル素材2の内側を上方へ流れた雰囲気は、ファン5側へ戻る。
(気流制御手段)
気流制御手段は、熱処理炉1内の雰囲気の流れる方向を制御する。気流制御手段として、本例では、導風板4を用いている。この導風板4は板状であり、その素材としては、ステンレス等を用いることができる。導風板4の配置箇所とその形状は、図1に示すように、熱処理炉1内の天井面から側面にかけての角部と床面から側面にかけての角部とに斜めになるように環状に配置する。そして、床面からコイル素材2の中心軸にかけて斜めになるように円錐状に配置する。更に、ラック6の支柱のうち、各コイル素材2の外周上縁部に対応する箇所から下方に向けて放射状に広がるように導風板41〜45を配置する。
この5個の各コイル素材2に対応する箇所に設けられた各導風板4(第1導風板41、第2導風板42、第3導風板43、第4導風板44、第5導風板45)の長さは、第1導風板41>第2導風板42>第3導風板43>第4導風板44>第5導風板45とする。これらの箇所に導風板4を配置することによって、熱気を熱処理炉1内の下方に流れ込むことを助長したり、ヒーター3によって温められた熱気を熱処理炉1内の上方に流れ込むことを防止したりできる。また、コイル素材2の内側、コイル素材2における対流手段とは反対側、或いはコイル素材2同士の間など、熱気の到達し難い箇所にも熱気を送ることができる。特に、各コイル素材2に対して設けられた導風板41〜45は、各コイル素材2にかかる熱気の風量を調整することができる。第1ヒーター31によって温められた熱気が、例えば、コイル素材2における対流手段とは反対側にまで送風されずに、第1コイル素材21の側面から第1コイル素材21内に流入することを防止することができる。各コイル素材2に対する不均一な加熱は、各コイル素材2への加熱温度と各コイル素材2にかかる熱気の風量を調整することで防止できる。各ヒーター3の加熱温度を第1ヒーター31<第2ヒーター32<第3ヒーター33<第4ヒーター34<第5ヒーター35とし、かつ各コイル素材2に対する熱気の風量を変えるために各導風板4の長さを第1導風板41>第2導風板42>第3導風板43>第4導風板44>第5導風板45とすることによって、各コイル素材2に対する加熱温度を実質的に均一にできる。
上記ヒーター3、対流手段(ファン5)、気流制御手段(導風板4)については、それぞれ、大きさや個数、配置位置等は、熱処理炉1内の雰囲気を攪拌し、熱処理炉1内にある全てのコイル素材2を実質的に均一に加熱できるのであれば、特に限定されない。
ヒーター3は、全コイル素材2の外周を囲むような大きさのものを一つ配置してもよいし、コイル素材2の内周側に設けてもよい。
ファン5は、熱処理炉1内に複数設置してもよいし、熱処理炉1の外に配置して、送風管等で熱処理炉1内に送風してもよい。また、ファン5の正転駆動及び逆転駆動を繰り返し切り換えることによって、熱処理炉1内の雰囲気を攪拌してもよい。
導風板4は、各コイル素材2に対して平行になるように配置してもよい。
[作用効果]
加熱工程において、ヒーター3とファン5と導風板4とによって、各コイル素材2に対する加熱温度を制御することができ、各コイル素材2を実質的に均一に加熱することができる。よって、一つの熱処理炉1内で複数個のコイル素材2を同時に加熱しても、全てのコイル素材2を実質的に均一に加熱することができるので、熱処理炉1内の全てのコイル素材2において、実質的に均質な金属組織を有したマグネシウム合金コイル材を安定して製造することができる。つまり、全てのコイル材において、かつ各コイル材の全長に亘って、実質的に均質な金属組織を安定して得ることができる。
[冷却工程]
上記加熱工程を経たコイル素材を冷媒槽内に貯留された冷媒中に浸漬させて冷却する。この冷却工程は、冷媒を攪拌する攪拌手段によって、冷媒を攪拌し、冷媒槽内の全てのコイル素材を30℃/min以上の冷却速度で実質的に均一に冷却する。
≪攪拌手段≫
本例では、上記加熱工程を経た5個のコイル素材を同時に冷却する。この5個のコイル素材は、加熱工程の際と同様に、その軸方向が上下方向になるように上記5段のラックの各段に平置きする。攪拌手段は、冷媒槽内の冷媒を攪拌する。冷媒として冷却水が用いられる。攪拌手段としては、噴流による攪拌が挙げられる。他に、攪拌子を配置したり、コイル素材を平置きしているラック自体に振動を与えるような振動手段等が挙げられる。攪拌手段は、冷媒槽内の冷媒を効率よく、かつ均一に攪拌できるのであれば、特に限定されない。例えば、噴流による攪拌を行う場合も、冷媒槽内の底面に噴流口を設けてよいし、側面に設けてもよい。また、噴流口を複数設けてもよい。
[作用効果]
冷却工程において、攪拌手段によって冷媒を攪拌することによって、コイル素材の表面に生成する水蒸気の膜を除去することができる。また、一つの冷媒槽内で複数個のコイル素材を同時に冷却する際、あるコイル素材の表面に発生した水蒸気がその表面から剥離して別のコイル素材の表面に滞ることも防ぐことができる。更に、各コイル素材を効率的に、かつ30℃/min以上の冷却速度で実質的に均一に冷却しやすい。よって、冷媒槽内の全てのコイル素材において、マグネシウム合金コイル材を安定して製造することができる。つまり、全てのコイル材において、かつ各コイル材の全長に亘って、実質的に均質な金属組織を安定して得ることができる。
<実施形態2>
本発明の実施形態2に係るマグネシウム合金コイル材の製造方法について、図2に基づいて説明する。実施形態2では、マグネシウム合金コイル素材2を1個のみ加熱する点が実施形態1と異なる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1の構成と同様であるため、説明を省略する。
1個のコイル素材2を効率的に加熱するために、1個のヒーター3をコイル素材2と同じ高さ位置に、コイル素材2の高さと同じ長さで熱処理炉1内における側面に配置する。導風板4は、できるだけこの1個のコイル素材2の周りに熱気が循環するように設ける。実施形態1では床面からコイル素材2の中心軸にかけて斜めになるように円錐状に導風板4を設けたが、本例では、上記導風板4をラック6の下段に設け、ラック6の中段にコイル素材2を平置きする。よって、コイル素材2と導風板4との距離を短くでき、熱処理炉1内の下方に流れた雰囲気を、コイル素材2の下方へ回り込み易くできる。この場合、下段を構成する平板はメッシュ状部材よりも通気性を有さない部材が好ましい。また、ラック6の外周面に対しては導風板4を設けていない。
[作用効果]
ヒーター3とファン5と導風板4とによって、各コイル素材2に対する加熱温度を制御することができ、各コイル素材2を実質的に均一に加熱することができる。よって、コイル材の全長に亘って、実質的に均質な金属組織を安定して得ることができる。また、導風板4によって、熱処理炉1内の雰囲気の流れる方向を制御できるので、1個のコイル素材2を効率的に加熱することができる。
<実施形態3>
本発明の実施形態3に係るマグネシウム合金コイル材の製造方法について、図3に基づいて説明する。実施形態3では、加熱工程において、気流制御手段を設けない点が実施形態1と異なる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1の構成と同様であるため、説明を省略する。
[加熱工程]
加熱工程は、熱処理炉1内の雰囲気を対流する対流手段を有する均熱手段によって、雰囲気を攪拌し、熱処理炉1内の全てのコイル素材2を実質的に均一に加熱する。
≪マグネシウム合金コイル素材≫
本例では、マグネシウム合金コイル素材2を5個同時に加熱する。この5個のコイル素材2を、実施形態1と同様に、その軸方向が上下方向になるように5段のラック6の各段に平置きする。
≪加熱手段≫
熱処理炉1内を加熱するためのヒーター3を、熱処理炉1の外に設ける。このヒーター3は、図3に示すように、後述する対流手段と一対にして1個配置する。ヒーター3の設定加熱温度は、コイル素材2を溶体化するのに必要な温度にする。
≪均熱手段≫
(対流手段)
熱処理炉1内の雰囲気を対流するためのファン5を、熱処理炉1の外に、上記ヒーター3と一対にして1個配置する。
(送風管)
熱処理炉1内の側面に、5個のコイル素材2と略同じ高さで対向する位置に5対の送風管7(第1管71、第2管72、第3管73、第4管74、第5管75)を設ける。この対になる各管71〜75は、それぞれ熱処理炉1内の周方向に均等に複数個設けることが好ましく、その個数は各コイル素材2を実質的に均一に加熱できるのであれば、特に限定されない。また、各コイル素材2の内面に熱気を供給するために、熱処理炉1の底面に底管76を1個設ける。更に、熱処理炉1内の熱気を排出するために、天井面に天井管77を1個設ける。上記各管71〜77の先端は、熱処理炉1内に開口するノズルを有する。このノズルは、開口面積を変えることができる開閉機構を備えることで、各管71〜77から流入もしくは排出する熱気の風量を調整することができる。熱処理炉1の外でヒーター3によって温められた熱気は、ファン5によって往路管70a内を通り各管71〜76に送られる。そして、熱処理炉1内の熱気は、天井管77から排出され、復路管70bを通りファン5側へ戻る。上記各送風管7は、管内の熱気を外部に逃がすことを防止するために、断熱構造となっている。
熱処理炉1内において、ヒーター3によって温められた熱気は上方に移行し易いため、各管71〜76に備えられた開閉機構によって、流入する熱気の風量を調整することによって、各コイル素材2に対する加熱温度を実質的に均一にする。特に、第1管71、第2管72、第3管73、第4管74、第5管75からの風量を、第1管71<第2管72<第3管73<第4管74<第5管75とする。各管71〜75から流入した熱気は、対応する各コイル素材21〜25を側面から加熱し、底管76から流入した熱気は、各コイル素材2の内側を流れて加熱する。そして、それらの熱気は、天井管77から排出される。
上記ヒーター3と対流手段(ファン5)との配置箇所は特に限定されず、各コイル素材2に対して設けた送風管7に対応してそれぞれ配置してもよい。
[作用効果]
ヒーター3とファン5とを熱処理炉1の外に配置し、送風管7を通して、各コイル素材2に各々熱気をかけるので、その熱気の風量を変えることで、各コイル素材2を実質的に均一に加熱することができる。よって、一つの熱処理炉1内で一つのコイル素材を加熱する場合は勿論、複数個のコイル素材2を同時に加熱しても、全てのコイル素材2を実質的に均一に加熱することができるので、熱処理炉1内の全てのコイル素材2において、実質的に均質な金属組織を有したマグネシウム合金コイル材を安定して製造することができる。つまり、全てのコイル材において、かつ各コイル材の全長に亘って、実質的に均質な金属組織を安定して得ることができる。
<試験例>
上述した実施形態1の製造方法により、マグネシウム合金からなる長尺材が巻き取られてなるマグネシウム合金コイル材を製造し、このコイル材の全長に亘って組織を調べた。具体的試験条件を以下に示す。
[実施例]
マグネシウム合金コイル素材
組成:AZ91材(Mg-9.0質量%Al-1.0質量%Zn)
寸法:幅300mm×長さ200m×厚さ4mm
外径:1200mm
内径:600mm
溶体化処理条件
加熱工程(図1参照)
加熱温度:400±5℃
加熱時間:30時間
炉内雰囲気:N2をパージし、酸素濃度を50ppm以下
冷却工程
冷却時間:5分
冷却速度:約60℃/min、約50℃/min、約30℃/minの3通り
攪拌手段:噴流
[参考例]
冷却工程における冷却速度が、約10℃/minである点を除き、実施例と同様の形態とする。
[結果]
実施例での溶体処理によって得られたマグネシウム合金コイル材の各特性について以下に示す。
(平均粒径)
得られたマグネシウム合金コイル材を巻き戻して、両端から5m切断したトリミング材を10mごとに切断して横断面をとり、各断面を研磨した後、走査電子顕微鏡(SEM)で画像撮影(100倍)した。この画像から任意の10個の視野(各500μm×500μmの領域)をとる。観察視野ごとに、任意の測定線を引き、この測定線を横切る連続する100個以上の結晶粒を数え、これらの結晶粒と交わる測定線の長さを測り、(測定線の長さ/結晶粒の合計数)を求める。そして、10個の視野の平均をその断面でのマグネシウム合金の結晶粒の平均粒径として求めた。結果、10mごとに測定した各平均粒径は、全て40〜60μmであった。つまり、この平均粒径の最大値と最小値との差は20μmであった。
(引張強度)
得られたマグネシウム合金コイル材を巻き戻して、両端から5m切断したトリミング材を10mごとに切断し、切断した各シート材において、その幅方向の中心から両縁側に向かってそれぞれ、当該シート材の幅の1割に相当する長さの領域(合計が幅の2割に相当する長さの領域)から試験片を作製して、引張試験を行う。試験片は、JIS 13B号の板状試験片(JIS Z 2201(1998))を作製して、JIS Z 2241(1998)の金属材料引張試験方法に基づいて上記引張試験を行った。結果、全試験片の引張強度は、全て250〜300MPaであった。
(晶析出物相)
得られたマグネシウム合金コイル材を巻き戻して横断面方向に切断し、その断面を光学顕微鏡で画像撮影した。図4(I)、(II)はそれぞれ、冷却工程における冷却速度が約60℃/min(実施例)のときの画像(200倍)、約10℃/min(参考例)のときの画像(200倍)である。図4において、濃い色(黒色)の部分が晶析出物相の存在する部分である。図4(I)、(II)はそれぞれ、晶析出物相の存在率は1%以下、10%超である。
上記試験結果より、本発明のマグネシウム合金コイル材の製造方法により、コイル材の全長に亘って、実質的に均質な金属組織を有したマグネシウム合金コイル材を得ることができると確認された。特に、冷却工程において、冷却速度を約30℃/min以上とすることで、実質的により均質な金属組織を有したマグネシウム合金コイル材を得ることができる。
更に、得られたマグネシウム合金コイル材(幅300mm×長さ100m×厚さ4mm、晶析出物相の存在率5%以下)に圧延(板の加熱温度250℃、1パスあたりの圧下率1〜50%)を施してマグネシウム合金圧延コイル材(幅300mm×長さ600m×厚さ0.6mm)を作製した。その結果、割れ等を生じることなく、機械的強度に優れるマグネシウム合金圧延コイル材を得ることができた。
また、得られたマグネシウム合金コイル材に温間プレス加工(素材の加熱温度250℃)を施して断面]状のプレス部材を作製した。その結果、割れ等が生じることなくプレス加工を施すことができた。
以上の結果より、全長に亘って実質的に均質な金属組織を有している本発明のマグネシウム合金コイル材に圧延等の塑性加工を施して形成された加工材は、機械的強度に優れ、マグネシウム合金部材の生産性に優れると言える。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、マグネシウム合金の組成(含有される元素の種類、含有量)、マグネシウム合金板の厚さ、製造条件(加熱温度、加熱時間等)を適宜変更することができる。
本発明のマグネシウム合金圧延コイル材は、各種の電気・電子機器類の部材、例えば、携帯用や小型な電気・電子機器類の筐体、各種の輸送機器の部材、例えば、航空機や自動車のボディといった高強度、軽量が望まれる種々の分野の部材の素材に好適に利用することができる。本発明のマグネシウム合金コイル材は、上記本発明のマグネシウム合金圧延コイル材の素材に適しており、本発明のマグネシウム合金コイル材の製造方法は、上記本発明のマグネシウム合金コイル材の製造に好適に利用することができる。
1 熱処理炉
2 コイル素材
21 第1コイル素材 22 第2コイル素材 23 第3コイル素材
24 第4コイル素材 25 第5コイル素材
3 ヒーター
31 第1ヒーター 32 第2ヒーター 33 第3ヒーター
34 第4ヒーター 35 第5ヒーター
4 導風板
41 第1導風板 42 第2導風板 43 第3導風板
44 第4導風板 45 第5導風板
5 ファン
6 ラック
7 送風管
70a 往路管 70b 復路管
71 第1管 72 第2管 73 第3管 74 第4管 75 第5管
76 底管 77 天井管

Claims (7)

  1. マグネシウム合金からなる長尺材が巻き取られてなるマグネシウム合金コイル材であって、
    前記マグネシウム合金は、Alを4.5質量%以上12質量%以下、Znを0.2質量%以上1.5質量%以下含有するASTM規格におけるAZ系マグネシウム合金からなり、
    前記長尺材の全長に亘って、マグネシウム合金の連続する100個以上の結晶粒の平均粒径が20〜80μmであるマグネシウム合金コイル材。
  2. 前記全長に亘って、前記平均粒径の最大値と最小値との差が20μm以下である請求項1に記載のマグネシウム合金コイル材。
  3. 前記全長に亘って、長手方向の引張強度が250〜300MPaである請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム合金コイル材。
  4. 前記全長に亘って、晶析出物相の存在率が、観察視野面積において10%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材に圧延を施して得られたマグネシウム合金圧延コイル材。
  6. マグネシウム合金からなる長尺材が巻き取られてなる少なくとも一つのコイル素材を熱処理炉内で加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程を経た前記コイル素材を冷媒槽内に貯留された冷媒中に浸漬させて冷却し、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材とする冷却工程とを備え、
    前記マグネシウム合金は、Alを4.5質量%以上12質量%以下、Znを0.2質量%以上1.5質量%以下含有するASTM規格におけるAZ系マグネシウム合金からなり、
    前記加熱工程は、前記熱処理炉内の雰囲気を対流する対流手段を有する均熱手段によって、前記雰囲気を攪拌し、前記熱処理炉内の各コイル素材の加熱温度の温度差を10℃以内で加熱し、
    前記冷却工程は、前記冷媒槽内の冷媒を攪拌する攪拌手段によって、前記冷媒を攪拌し、前記冷媒槽内の全てのコイル素材を30℃/min以上の冷却速度で冷却して、各コイル素材の冷却速度の速度差を10℃/min以内で冷却するマグネシウム合金コイル材の製造方法。
  7. 前記均熱手段は、前記熱処理炉内の雰囲気の流れる方向を制御する気流制御手段を有する請求項6に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。
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