JP5714058B2 - 印象推定装置、方法、プログラム及び記録媒体 - Google Patents

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Description

この発明は、印象を推定する技術に関する。
相手に対する印象を推定する技術として、例えば非特許文献1に記載されている技術が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
この非特許文献1に記載された技術は、例えば図1に示す質問紙に記載された(1)から(6)の質問のうち最後の(5)及び(6)の質問に対する回答によって相手に対する印象を推定するものである。最初の4個の質問である(1)から(4)はダミーの問題である。
なお、図1に示す質問紙に記載された質問は、非特許文献1の質問紙に記載された質問を日本語に訳したものである。
Donn Erwin Byrne, "The attraction paradigm", Academic Press, 1971
非特許文献1に記載された技術では、相手のことをどう思うかが一見してわかるように直接的に聞かれており、本人が正直に答えないような場合には相手に対する印象を推定することができない。
この発明の目的は、本人が正直に答えないような場合であっても、印象を推定する印象推定装置、方法、プログラム及び記録媒体を提供することである。
上記の課題を解決するために、この発明の一態様による印象推定装置は、並んで足を進める2人の足を進める際の足の運びを観測または測定して得た波形データの位相差を複数の時間区間について得る位相差取得部と、位相差に基づいて2人の足の進みの共通度を計算する共通度計算部と、を備えている。
2人の足の進みの共通度が高いほど、印象が良いと考えることができる。したがって、この共通度を用いることにより、本人が正直に答えないような場合であっても、印象を推定することができる。
背景技術を説明するための図。 印象推定装置の例を示す機能ブロック図。 印象推定方法の例を示す流れ図。 比較的位相がそろっているデータの例を示す図。図4Aは2人の加速度のピッチの例を示し、図4Bは位相差の時系列の例を示し、図4Cは位相差のヒストグラムの例を示す。 全く位相がそろっていないデータの例を示す図。図5Aは2人の加速度のピッチの例を示し、図5Bは位相差の時系列の例を示し、図5Cは位相差のヒストグラムの例を示す。 非常に位相がそろっているデータの例を示す図。図6Aは2人の加速度のピッチの例を示し、図6Bは位相差の時系列の例を示し、図6Cは位相差のヒストグラムの例を示す。
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
印象推定装置は、図1に示すように、位相差取得部1及び印象推定部2を例えば備えている。印象推定装置が推定する印象とは、印象の推定の対象となる2人の一方の者の他方の者に対する印象と、印象の推定の対象となる2人の互いに対する印象との少なく一方の印象である。
本発明は、会話をしながら並んで歩く2人の歩調がそろっているほど、互いに対する印象が良くなるという知見を発明者が見出したことに基づくものである。実験では、2人に所定時間の間、会話しながら並んで足を進めてもらい、その後、互いに対する印象を答えてもらった。また、会話しながら並んで足を進める2人のそれぞれの足の動きを加速度計により取得しておき、取得したデータから複数の時間区間毎の位相差を取得し、得られた位相差の系列の分布の偏りと互いに対する印象の評定結果との相関関係を調べた。実験によれば、互いに対する印象が良いペアは位相差の系列の時間的変化が小さく(あるいは分布の偏りが大きく)、互いに対する印象が悪いペアは位相差の系列の時間的変化が大きい(あるいは分布の偏りが小さい)という結果が得られた。歩調が揃っていると位相差の系列の時間的変化が小さく、位相差の系列の分布の偏りが大きくなる。また、歩調が揃っていないと位相差の系列の時間変化が大きく、位相差の系列の分布の偏りが小さく(一様に)なる。つまり、歩調が揃っているペアの方が、歩調が揃っていないペアよりも互いに対する印象の評定結果が良いという関係が得られた。また、一方の被験者にわざと他方の相手にそろえて歩いてくれるよう依頼した場合であっても、互いに対する印象が良くない場合は歩調が有意にそろうことはなかった。このことは、会話しながらある程度の時間(例えば9分程度)歩くと、無意識的に相手に対する印象が歩調のそろっている度合い(つまり、足の進みの共通度)に現れることを意味する。このため、本人が正直に答えずにごまかそうとするような場合であっても、このように2人の足の進みの共通度から2人の間の無意識下における印象を推定することができるのである。
そこで、印象推定装置は、会話しながら並んで足を進める2人の足の進みの共通度が高い場合に互いに対する好感度が高いと推定し、足の進みの共通度が低い場合に互いに対する好感度が低いと推定する。
ここでの足の進みの共通度とは、単なる足の着地のタイミングのみならず、足の運びを時系列でみたときの、時間的なずれ、もしくは、空間的なずれの度合いである。
例えば、足を進める動作は周期的な運動と捉えることができるので、足を進める動作を観測または測定して得られる波形データの周期のずれ(位相差)により、足の運びの時系列の時間的なずれ、もしくは、空間的なずれを知ることができる。そこで、印象推定装置は、印象の推定の対象となる2人の位相差に基づいて、互いに対する印象を推定する。
以下、印象推定装置の各部について具体例を説明する。
〔位相差取得部1への入力〕
位相差取得部1へ入力されるデータは、印象の推定の対象となる2人の者の足の運びを観測または測定して得られる波形データや、波形データから得た複数の時間区間についての位相差の系列である。波形データは、左の足を進めるときと、右の足を進めるときとで異なる特徴を示すような波形データであれば何でもよく、例えば、歩行者の体の所定の部位に取り付けた加速度計から取得される加速度データや、歩行時の足の地面からの位置の時系列などである。以下では、波形データの例を説明する。
例えば、加速度計を用いる場合には以下のような構成とすればよい。
印象の推定の対象となる2人の者には、加速度計が取り付けられている。足を進める際に生じる加速度を計測することができる位置であれば、2人のどのような位置に加速度計を取り付けてもよい。例えば、脚部、腰、腕等に加速度計が取り付けられる。脚部の膝よりも下の部分、例えば外側のくるぶしよりも少し上の部分、すなわち2から3cm上の部分であって骨が皮膚の表面近くまで出ていることにより硬くなっている部分に、加速度計を取り付けると、足を進める際に生じる加速度を効果的に計測することができる。
これらの加速度計は、必要に応じて同期処理を事前に行っておく。すなわち、これらの加速度計に対して同一時刻に加速度を加えた場合には、これらの加速度計においてその同一時刻において加速度が計測されたことが分かるようにしておく。例えば、測定に用いる2つの加速度計を一緒に振って同じ加速度を与えると、各加速度計で同じ波形が計測される。この波形が計測された時刻を基準とすることで、各加速度計の時刻を同期させることができる。
加速度計で測定する加速度は、足を進める際に生じる加速度であれば、どの方向の加速度であってもよい。例えば、加速度計で測定する加速度は、体軸方向の加速度、足の延伸方向の加速度又は垂直方向の加速度である。加速度計で取得する加速度は、着地のときにピーク値を取るような波形として得られる。また、片足に付けることで、加速度計を付けた足を進めるときと、加速度計を付けてない足を進めるときとで異なる特徴(加速度)を示す。
印象の推定の対象となる2人は、例えば初対面の2人である。2人には、会話をしながら歩いてもらう。これらの加速度計は、所定の周波数例えば100Hzで、例えばこのようにして並んで足を進める2人の足を進める際に生じる加速度を計測する。計測された加速度は、位相差取得部1に送信される。なお、予め計測しておいた所定時間分の2人の加速度の情報をまとめて位相差取得部1に入力しても良いし、計測された加速度を逐次、位相差取得部1に送信してもよい。
また、例えば、光学マーカーを印象の推定の対象となる2人の各々の体の一部に取り付けて、それを赤外カメラなどで撮影し、マーカーを取り付けた部位の空間中の座標の時系列データを得て、これを位相差取得部1の入力としても良い。
また例えば、両者の足に超音波センサおよび受信機をとりつけ、歩いているときのお互いの足の相対距離の時間的変化を得て、これを位相差取得部1の入力としても良い。
時刻ごとの所定の部位の位置座標や両者の相対距離の時系列を、2人の足の進みを撮影した映像を解析することで求めても良い。
〔位相差取得部1〕
位相差取得部1は、会話をしながら並んで足を進める2人の足の運びを観測または測定して得られる波形データの位相差を複数の時間区間について得る(ステップS1)。取得した各時間区間の位相差は、印象推定部2に送信される。時間区間の長さは、例えば1から3歩程度進むのにかかる時間の長さ、例えば3秒間とすると、時間的追随性とS/N比の関係で良い結果が得られる。なお、複数の時間区間についての位相差の系列が得られれば良いので、各時間区間の長さは一定であっても異なっていても良い。
波形データを入力とする場合は、位相差取得部1は、後述の方法により入力された波形データから時間区間ごとの位相差を計算する。ただし、外部の装置等により波形データの時間区間ごとの位相差が計算または計測されている場合は、位相差取得部1は外部で得られた位相差の複数の時間区間についての系列を取得する取得部であってもよい。
以下、加速度データが入力され、加速度データから位相差を計算する場合の例を説明する。並んで足を進める2人をA,Bとし、計測されたAが足を進める際に生じた加速度を「Aの加速度」、計測されたBが足を進める際に生じた加速度を「Bの加速度」と略記することにする。また、時刻tにおけるAの加速度をa(t)、時刻tにおけるBの加速度をb(t)とする。
まず、位相差取得部1は、同一時間区間のAの加速度及びBの加速度を切り出す。そして、一方の加速度の波形と、他方の加速度の波形を時間方向に各τだけずらした波形との相関値を計算し、相関値が最も大きいτを求める。Aの加速度の波形をずらしてもよいし、Bの加速度の波形をずらしてもよい。
Bの加速度の波形をずらす場合には、位相差取得部1は、例えば以下の式により定義されるτを求める。ここで、切り出されたAの加速度及びBの加速度の時間区間はt=1から始まりt=Tで終わるものとする。
そして、位相差取得部1は、A又はBの加速度の周期を計算する。
最後に、位相差取得部1は、求まったτを例えば以下の式により位相に変換する。
ここで、A又はBの加速度の周期は、例えば、A又はBが2歩進む(左足、右足と交互に1歩ずつ足を進める)のに要する時間である。位相差取得部1は、このように変換された位相を位相差として出力する。各時間区間について、上述の方法で位相差を求めることで、位相差の系列を得る。
加速度データ以外の波形データでも同様に、時間区間ごとの波形を比較することで位相差を求めることができる。
〔印象推定部2〕
印象推定部2は、複数の時間区間についての位相差の系列の時間変化の度合い、もしくは、分布の偏りに基づいて、互いに対する印象を推定した結果を出力する。
2人の歩調がそろっている場合、時間区間ごとの位相差は一定値の近傍の値を取るため、位相差の系列の時間変化は小さくなる。結果として、位相差の系列の分布を見たとき、特定の値に分布が偏る(集中する)傾向が強くなる。一方、2人の歩調がそろっていない場合、時間区間ごとの位相差はバラバラの値を取るため、位相差の系列の時間変化は大きくなる。結果として、位相差の系列の分布は分散する傾向が強くなる。
よって、印象推定部2では、少なくとも2組以上のペアについて、位相差取得部1においてペアごとの位相差の系列を取得したとすると、当該2組以上のペアのうちのある2組のペアについて、位相差の系列の分布の偏りが大きい方のペアの互いに対する印象が、位相差の系列の分布の偏りが小さい方のペアの互いに対する印象よりも良くなるように、各ペアについての互いに対する印象が推定される。あるいは、当該2組以上のペアのうちのある2組のペアについて、位相差の系列の時間変化が小さい方のペアの互いに対する印象が、位相差の系列の時間変化が大きい方のペアの互いに対する印象よりも良くなるように、各ペアについての互いに対する印象が推定される。
例えば、印象推定部2は、共通度計算部21を有する。共通度計算部21は、位相差に基づいて2人の足の進みの共通度を計算する(ステップS2)。求めた共通度を印象を推定した結果として出力する。
あるいは、さらに、図2に破線で示した印象決定部22をさらに備え、共通度に対応する印象を決定し(ステップS3)、これを、印象を推定した結果として出力してもよい。例えば、入力された共通度と所定の閾値とを比較して、その比較結果により印象を決定する。閾値が1つである場合には、共通度がその閾値よりも大きいときに「好印象」と決定しその旨の情報を出力し、共通度がその閾値よりも小さいときに「悪印象」と決定しその旨の情報を出力する。もちろん、閾値は複数あってもよい。例えば、閾値の数が4である場合には、共通度とこれらの4つの閾値との大小関係に応じて、「とても好印象」「少し好印象」「どちらでもない」「少し悪印象」「とても悪印象」の何れかを決定しその旨の情報を出力してもよい。
以下、共通度の例をいくつか挙げる。
(1)共通度の第1の例
共通度の第1の例は、位相差の系列の分布の偏り度合い(集中度)を表す指標である。歩調がそろっているほど、位相差の時間区間ごとの変化は少ないので、結果として位相差の系列の分布がどこかに偏る傾向がある。その分布の偏りの度合いを共通度とする。
位相差取得部1が取得した各時間区間の位相差を用いたヒストグラムを考える。このヒストグラムでは、図4C,図5C,図6Cに例示するように、横軸が位相であり縦軸は度数である。
共通度の第1の例は、この位相差についてのヒストグラムの突出度である。ヒストグラムの突出度とは、言い換えればヒストグラムのピークの鋭さである。ヒストグラムの突出度が高いことは、分布が偏っていることを意味する。
例えば、位相差についてのヒストグラムにおける、そのヒストグラムに含まれるピークの頂点に対応する位相差を含む所定の範囲に含まれる位相差の度数の合計の、全ての位相差の度数の合計に占める割合を突出度とする。
ここで、左右の足の出し方も含めて2人の足の進みがそろっているときは位相差が0度の近傍となる。左右の足の出し方が逆だが足の進みがそろっているときは位相差が180度となる。それ以外の場合は、着地の時間がずれていることを意味する。着地の時間がずれていたとしても、位相差の系列の時間変化が少ない(分布がどこかに偏っている)ことは、両者の歩調が一定のずれを持って同期していることを意味し、これも歩調がそろっている場合に相当する。
なお、位相差が0度の近傍、及び/又は、位相差が180度の近傍である場合には、2人の足の進みの共通度がより高いと言える。このため、位相差についてのヒストグラムにおける、位相差0度を含む所定の範囲と位相差180度を含む所定の範囲との少なくとも一方の範囲に含まれる位相差の度数の合計の、全ての位相差の度数の合計に占める割合を突出度としてもよい。
ここで、所定の範囲とは、c1,c2,c3,c4を所定の正の整数として、-c1度からc2度までの範囲、180-c3度から180+c4度の範囲である。c1,c2,c3,c4は、互いに異なった値であってもよいし、同じ値であってもよい。例えば、c1,c2,c3,c4=10とする。
ここで、所定の範囲とは、c5,c6を所定の正の整数とし、ピークの頂点に対応する位相差をpとして、p-c5度からp+c6度までの範囲である。c5,c6は、互いに異なった値であってもよいし、同じ値であってもよい。例えば、c5,c6=10とする。
また、位相差についてのヒストグラムに含まれるピーク近傍を正規分布で近似し、その近似した正規分布の分散が小さいほど大きな値を取る指標を突出度としてもよい。すなわち、その近似した正規分布の分散を所定の広義単調減少関数に入力したときの出力値を突出度としてもよい。
また、nを1より大きい所定の実数とし、位相差についてのヒストグラムのピークの頂点の度数をmaxとして、そのピークにおいて度数がmaxの1/nになる位相の範囲の長さをrとする。つまり、ピークよりも小さく、かつ、度数がmaxの1/nになる位相のうちピークに最も近い位相から、ピークよりも大きく、かつ、度数がmaxの1/nになる位相のうちピークに最も近い位相までの範囲の長さをrとする。例えばn=2とする。このとき、分布が偏っているほどrは小さい値となるので、rが小さいほど大きな値を取る指標を突出度としてもよい。すなわち、rを所定の広義単調減少関数に入力したときの出力値を突出度としてもよい。
また、位相差についてのヒストグラムの、度数の平均値からの逸脱度を突出度としてもよい。すなわち、例えば、位相差についてのヒストグラムの度数の分散を突出度としてもよい。
また、位相差の系列をヒストグラムに変換せずとも、時間と位相差をそれぞれ軸とする空間上に位相差の系列の各々の値をマッピングしたときの分布の偏り(集中度)を用いても、ヒストグラムの突出度に相当する指標を得ることができる。
要するに、共通度の第1の例は、位相差の系列の分布の偏り度合い(集中度)を表す指標である。
(2)共通度の第2の例
共通度の第2の例は、位相差の系列の時間変化の度合いを表す指標である。例えば、位相差の変化の割合の絶対値を所定の広義単調減少関数に入力したときの出力値である。
位相差取得部1が取得した位相差の時系列を考える。図4B,図5B,図6Bに、位相差の時系列の例を示す。
位相差の時系列を近似した直線又は曲線の傾きの絶対値が小さいほど、言い換えれば位相差の変化の割合の絶対値が小さいほど、2人の足の進みの共通度が高いと言える。このため、位相差の変化の割合の絶対値を所定の広義単調減少関数に入力したときの出力値が大きいほど2人の足の進みの共通度が高いと言える。なお、図4B,図5B,図6Bは、縦軸を位相差−90度〜270度の範囲としているため、270度(グラフの一番上のライン)に到達したらグラフの一番下のラインに飛ぶような、断片的に連続する線が表示されているように見えるが、これを−90度から270度で連続的に変化する区間ごとに上につなぎ合わせると直線又は曲線で近似できる。ここでの位相差の時系列を近似した直線又は曲線とは、このような直線又は曲線をいう。
ここでの所定の広義単調減少関数は、例えば入力値をそのまま出力値とする関数であってもよい。
(3)共通度の第3の例
共通度の第3の例は、共通度の第1の例と第2の例を組み合わせたものを共通度とするものである。すなわち、位相差の時系列の分布の偏りが大きく、かつ、位相差の時系列変化が小さいほど共通度が高く、位相差の時系列の分布の偏りが小さく、かつ、位相差の時系列変化が大きいほど共通度が小さくなるような指標を共通度として用いても良い。
[データの例]
図4は比較的位相がそろっているデータの例であり、図5は全く位相がそろっていないデータの例であり、図6は非常に位相がそろっているデータの例である。図4、図6のペアの互いに対する印象の評定結果の方が、図5のペアの互いに対する印象の評定結果よりも良かった。各図において、Aは2人の加速度のピッチの例を示し、Bは位相差の時系列の例を示し、Cは位相差のヒストグラムの例を示す。
比較的位相がそろっているデータの例である図4を見ると、図4Bの位相差の時系列には0度の付近と180度付近で変化の割合の絶対値が小さくなっている時間帯があり、また、図4Cのヒストグラムは0度付近と180度付近の両方で突出している(分布が偏っている)ことがわかる。
全く位相がそろっていないデータの例である図5を見ると、図5Bの位相差の時系列には変化の割合の絶対値が小さくなっている時間帯がほとんどなく、また、図5Cのヒストグラムはほぼ平坦である(分布が分散している)ことがわかる。
非常に位相がそろっているデータの例である図6を見ると、図6Bの位相差の時系列はほぼ全時間帯において180度の付近に集まっており180度付近で変化の割合の絶対値が小さくなっており、図6Cのヒストグラムは180度付近において鋭く突出していることがわかる。
[変形例等]
歩調がそろっている場合、位相差に変換する前の波形のずれτの時間的な変化は比較的小さい。一方、歩調がそろっていなければ、位相差に変換する前の波形のずれτの時間的な変化は大きくなる。そこで、位相差取得部1において、位相差の代わりに、位相差に変換する前の波形のずれτをそのまま用いる構成としても良い。そして、印象推定部2では、上記共通度の第2の例に基づいて印象を推定する構成、例えば、時間区間ごとの波形のずれτの系列の時間変化が緩やかな場合に互いに対する印象が良いと推定する構成としても良い。
また、上記の実施形態では、入力されたペアについて、位相差取得部1で取得した位相差の系列に基づいて、当該ペアの互いに対する印象を推定する構成を例として説明したが、複数のペアについてそれぞれ位相差の系列を計算し、当該複数のペアの中の2組のペアについて、どちらのペアの方が互いに対する印象が良いかを推定する構成としても良い。すなわち、位相差取得部1は、2組のペアの各々について時間区間ごとの位相差の系列を計算する。そして、印象推定部2において、位相差の系列の分布の偏りが小さい方のペアの互いに対する印象が、位相差の系列の分布の偏りが大きい方のペアの互いに対する印象よりも良いと推定する。あるいは、印象推定部2において、位相差の系列の時間的な変化が小さい方のペアの互いに対する印象が、位相差の系列の時間的な変化が大きい方のペアの互いに対する印象よりも良いと推定する。
同様に2組以上のペアの各々について、位相差取得部1において時間区間ごとの位相差の系列を取得し、印象推定部2において、2組以上のペア中のある2組のペアについて、位相差の系列の分布の偏りが小さい方のペアの互いに対する印象が、位相差の系列の分布の偏りが大きい方のペアよりも互いに対する印象が良いと推定してもよい。また、印象推定部2において、2組以上のペア中のある2組のペアについて、位相差の系列の時間的な変化が小さい方のペアの互いに対する印象が、位相差の系列の時間的な変化が大きい方のペアの互いに対する印象よりも良いと推定しても良い。
また、2組以上のペアの全てについて、位相差の系列の分布の偏りが大きいほど、および/または、位相差の時系列的な変化が小さいほど互いに対する印象が良くなるように、各ペアの互いに対する印象を決定しても良いし、互いに対する印象の良い順に順位をつけて出力しても良い。
印象推定装置は、コンピュータによって実現することができる。この場合、この装置の各部の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、この装置における各部がコンピュータ上で実現される。
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、これらの装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
1 位相差取得部
2 印象推定部
21 共通度計算部

Claims (17)

  1. 少なくとも2組以上のペアについて、ペアごとに会話しながら並んで足を進める当該ペアを構成する各々の足の運びを観測または測定して得た波形データの位相差を、複数の時間区間について得る位相差取得部と、
    前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての位相差の系列の分布の偏りが大きい方のペアについての互いに対する印象が、前記複数の時間区間についての位相差の系列の分布の偏りが小さい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、各ペアについての互いに対する印象を推定する印象推定部と、
    を含む印象推定装置。
  2. 少なくとも2組以上のペアについて、ペアごとに会話しながら並んで足を進める当該ペアを構成する各々の足の運びを観測または測定して得た波形データの位相差を、複数の時間区間について得る位相差取得部と、
    前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての位相差の系列の時間変化の度合いが小さい方のペアについての互いに対する印象が、前記複数の時間区間についての位相差の系列の時間変化が大きい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、各ペアについての互いに対する印象を推定する印象推定部と、
    を含む印象推定装置。
  3. 会話しながら並んで足を進める2人の足の運びを観測または測定して得た波形データの位相差を複数の時間区間について得る位相差取得部と、
    前記複数の時間区間ごとの位相差の系列の分布の偏りが大きい場合、もしくは、前記位相差の系列の時間変化の度合いが小さい場合に互いに対する印象が良いと推定し、および/または、前記分布の偏りが小さい場合、もしくは、前記位相差の系列の時間変化の度合いが大きい場合に互いに対する印象が悪いと推定する印象推定部と、
    を含む印象推定装置。
  4. 少なくとも2組以上のペアについて、ペアごとに、会話しながら並んで足を進める2人の足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれを複数の時間区間について得る位相差取得部と、
    前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれの系列の分布の偏りが大きい方のペアについての互いに対する印象が、前記複数の時間区間についての足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれの系列の分布の偏りが小さい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、互いに対する印象を推定する印象推定部と、
    を含む印象推定装置。
  5. 少なくとも2組以上のペアについて、ペアごとに、会話しながら並んで足を進める2人の足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれを複数の時間区間について得る位相差取得部と、
    前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれの系列の時系列変化が小さい方のペアについての互いに対する印象が、前記複数の時間区間についての足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれの系列の時系列変化が大きい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、互いに対する印象を推定する印象推定部と、
    を含む印象推定装置。
  6. 並んで足を進める2人の足を進める際に生じる加速度の位相差を複数の時間区間について得る位相差取得部と、
    上記複数の時間区間についての位相差の系列の時間変化の度合い、および/または、上記複数の時間区間についての位相差の系列の分布の偏りの度合いに基づいて上記2人の足の進みの共通度を計算する共通度計算部と、
    を含む印象推定装置。
  7. 請求項の印象推定装置であって、
    上記共通度は、上記位相差の変化の割合の絶対値を広義単調減少関数に入力したときの出力値である、
    印象推定装置。
  8. 請求項またはの印象推定装置であって、
    上記共通度に対応する印象を決定する印象決定部を更に含む、
    印象推定装置。
  9. 請求項8の印象推定装置であって、
    上記印象決定部は、上記共通度と所定の閾値とを比較して、その比較結果により印象を推定する、
    印象推定装置。
  10. 位相差取得部が、少なくとも2組以上のペアについて、ペアごとに、会話しながら並んで足を進める2人の足の運びを観測または測定して得た波形データの位相差を複数の時間区間について得る位相差取得ステップと、
    印象推定部が、前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての位相差の系列の分布の偏りが大きい方のペアについての互いに対する印象が、前記複数の時間区間についての位相差の系列の分布の偏りが小さい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、各ペアについての互いに対する印象を推定する印象推定ステップと、
    を含む印象推定方法。
  11. 位相差取得部が、少なくとも2組以上のペアについて、ペアごとに、会話しながら並んで足を進める2人の足の運びを観測または測定して得た波形データの位相差を複数の時間区間について得る位相差取得ステップと、
    印象推定部が、前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての位相差の系列の時系列変化が小さい方のペアについての互いに対する印象が、前記複数の時間区間についての位相差の系列の時系列変化が大きい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、各ペアについての互いに対する印象を推定する印象推定ステップと、
    を含む印象推定方法。
  12. 位相差取得部が、会話しながら並んで足を進める2人の足の運びを観測または測定して得た波形データの位相差を複数の時間区間について得る位相差取得ステップと、
    印象推定部が、前記複数の時間区間ごとの位相差の系列の分布の偏りが大きい場合、もしくは、前記位相差の系列の時間変化の度合いが小さい場合に互いに対する印象が良いと推定し、および/または、前記分布の偏りが小さい場合、もしくは、前記位相差の系列の時間変化の度合いが大きい場合に互いに対する印象が悪いと推定する印象推定ステップと、
    を含む印象推定方法。
  13. 位相差取得部が、会話しながら並んで足を進める2人の足の運びの時間的なずれ、もし
    くは、空間的なずれを複数の時間区間について得る位相差取得ステップと、
    印象推定部が、前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれの系列の分布の偏りが大きい方のペアについての互いに対する印象が、複数の時間区間についての足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれの系列の分布の偏りが小さい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、互いに対する印象を推定する印象推定ステップと、
    を含む印象推定方法。
  14. 位相差取得部が、会話しながら並んで足を進める2人の足の運びの時間的なずれ、もしくは、空間的なずれを複数の時間区間について得る位相差取得ステップと、
    印象推定部が、前記少なくとも2組以上のペア中のある2組のペアのうち、前記複数の時間区間についての位相差の系列の時系列変化が小さい方のペアについての互いに対する印象が、前記複数の時間区間についての位相差の系列の時系列変化が大きい方のペアについての互いに対する印象よりも良くなるように、互いに対する印象を推定する印象推定ステップと、
    を含む印象推定方法。
  15. 位相差取得部が、並んで足を進める2人の足を進める際に生じる加速度の位相差を複数の時間区間について得る位相差取得ステップと、
    共通度計算部が、上記複数の時間区間についての位相差の系列の時間変化の度合い、および/または、上記複数の時間区間についての位相差の系列の分布の偏りの度合いに基づいて上記2人の足の進みの共通度を計算する共通度計算ステップと、
    を含む印象推定方法。
  16. 請求項1から9の何れかに記載された印象推定装置の各部としてコンピュータを機能させるための印象推定プログラム。
  17. 請求項1から9の何れかに記載された印象推定装置の各部としてコンピュータを機能させるための印象推定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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