JP5714025B2 - 海上における船舶の追跡システム - Google Patents

Description

本発明は、海上、特に公海上における船舶の追跡システムに関する。

かかる追跡は、安全上の理由から船員が関心をもつばかりではなく、船舶の位置を知りたいと考える船主や、所定の経済領域における安全性を確保することになっている海洋官庁さえも、関心をもつものである。

公海上における船舶を追跡する異なる技術が知られている。すなわち、
ａ）規定の通過ポイントからの目視による観測、
ｂ）沿岸ステーションからのレーダー観測および船舶からの無線による問合せ、
ｃ）ＡＩＳ（「自動識別システム」）型の自動識別システムに関する識別信号の、沿岸ステーションからの聞き取り、および
ｄ）低軌道上の衛星からの、そのようなＡＩＳ型識別信号の聞き取り。

自動識別システムＡＩＳは、超短波ＶＨＦを用いた無線通信による船舶間の自動メッセージ交換システムであって、それによって、船舶および海上交通の監視システムが、特に、所定の航行領域に位置する船舶の身元、状態、位置および航路を知ることができるようになる。かかるシステムＡＩＳは、特に、目視またはレーダーによる認識ができない時（夜、霧、レーダーの反応が弱い場合）に、船舶を識別することができるようにする。

しかしながら、かかる船舶追跡のための異なる技術は、いくつかの不利益をもたらす。特に、上述の技術ａ）、ｂ）、ｃ）は、観測ステーションから目視できる水平線上、すなわち沿岸から数十キロメートルに限定される。また、解決手段ｃ）に関しては、使用されているシステムＡＩＳは、確かなものではなく、間違った位置および／または身元を表示するように、送信されたデータを変えることが容易である。

解決手段ｄ）に関しては、原則的には、地球上の海を完全にカバーしている。

しかしながら、システムＡＩＳの構成が、直径数十キロメートルのセルにおいてのみ信号送信の正しいタイミングを発生させるものであるため、衛星は、数個のセルから同時に信号を受け取るが、海上交通が頻繁な領域（ホーン・オブ・アフリカ、喜望峰、数本のルートが交錯する大西洋の真ん中、など）では、数個のセルからＡＩＳ信号を同時に発信しても、それらの信号を受信することはほとんど不可能である。また、かかる技術ｄ）においては、低軌道上の衛星によって集められた情報の再送信に、しばしばかなりの（１時間を越える）遅れがある。というのは、集められた情報を送り返すためには、直前の送信がベースステーションを通過するまで待つ必要があるためである。さらに、かかる技術ｄ）は、生成されたＡＩＳ情報の完全性も頼りにしている。

本発明の目的は、これらの欠点を改善することにある。本発明は、海上、特に公海上の船舶追跡システムに関し、特に、海上交通が頻繁な海域における船舶の追跡を確実に行う経済的な解決策を提供できるようにするものである。

この目的のため、本発明によれば、海上における前記船舶追跡システムは、
所定の数の収集船舶に設けられた端末と、衛星を経由するデータ送信システムと、監視センターとを含み、
前記収集船舶の各々が、
対応する収集船舶の周りの収集領域に位置する周囲の船舶によって発信された識別信号を検知する手段と、
対応する収集船舶の現在位置を測定する手段と、
検知される識別信号およびかかる検知時の収集船舶の現在位置を含む識別情報を記録する手段とを含んでいる端末を有し、
前記データ送信システムが、収集船舶に設けられた前記端末と少なくとも１つの監視センターとの間でデータを送信できるようにし、
前記監視センターが、少なくとも、
前記端末に記録された識別情報を提供するように、前記データ送信システムによって端末に送信される要請を発生する手段と、
要請に対して、前記データ送信システムを経由して、端末によって提供された識別情報を受取る手段と、
受取られる識別情報を分析する手段とを含んでいるということに特徴がある。

このように、本発明によれば、識別信号は、識別情報としてデータ送信システムの衛星を経由して監視センターに送信される前に、限定された数の収集船舶によって最初に収集される。

また、識別情報の送信は要請に対してのみなされる。結果として、要請の発生および発信を管理する監視センターは、データの受取りをコントロールし、たとえ通信量がどうであれ、過大な情報の流れに巻き込まれないようにする。また、船舶（関連する収集領域に位置する）に関する情報を単に監視センターに送るだけの収集船舶を使用することによって、かかる情報の流れは減らされる。

また、本発明によれば、識別情報には、周りの船舶から受取る識別信号に加えて、検知時の収集船舶の位置をも含まれる。この位置によって、識別情報に誤りの無いことを証明することができる。この証明は、船舶識別信号により与えられた位置が、かかる識別信号を検知した収集船舶の有効な位置と矛盾しないことを確認することによって可能となる。

さらに、本発明による追跡システムは衛星データ送信システムを用いているため、地球上のどこにおいても、特に、沿岸から遠く離れた公海上においても操作可能である。

好ましくは、前記監視センターは、所定の領域、たとえば、特に関心を有する領域に位置する端末の届け先に連続して要請を送る手段を含んでいる。これによって、監視センターは、調整された方法で識別情報を受取ることができる。

特定の実施形態において、各端末は、保安ケースと、該保安ケースを開けると同時に前記データ送信システム経由して、監視センターの届け先に警報信号を送るように形成された警報手段とを含んでいる。

また、有利には、各端末は、さらに
電力手段、
識別信号のための少なくとも１つの受信アンテナ、
位置データのための少なくとも１つの受信アンテナ、および、
少なくとも１つのデータ送信アンテナを含んでいる。

また、端末は、
好ましくは該端末特有のコーディングに従って、記録された識別情報をコード化する手段、および／または、
船舶の状態を遠隔追跡するためのデータ受信手段を含むこともできる。

さらに、有利には、前記監視センターが、識別情報を保管し、使用者がそれにアクセスできるようにする手段をさらに含んでいる。

さらに、特定の実施形態において、前記追跡システムが、端末からのデータ送信を、遠隔で作動および非作動にする手段をさらに含んでいる。

添付の単一の図面によって、本発明がどのように実施され得るかよく理解される。

本発明による海上における船舶追跡システムの構成を示す図である。

本発明による前記システム１は、
複数の端末２、ここで、図には簡略にするために１つの端末のみが示されており、各端末はいわゆる収集船舶に取り付けられ、収集船舶の数は限定されて、
衛星４を含むデータ送信システム３、ここで、図には簡略にするために１つの衛星のみが示されている、および、
地上の固定位置に設けられる少なくとも１つの監視センター５を含んでいる。

また、収集船舶に取り付けられた各端末２は、図に示すとおり、
少なくとも１つのアンテナ７と共働し、ＡＩＳ型識別信号を受取ることができる受信機６と、ここで、以下に詳細に述べるが、信号は、端末２が設けられた収集船舶の周りの特定の収集領域、たとえば、収集船舶を中心とする円の中に位置する周囲の船舶によって発信され、その円の半径（たとえば、数十キロメートル）は、手段６、７によって識別信号を検知する最大距離よりも小さい、
通常の衛星位置測位システム（図示せず）、特にＧＰＳ（「汎地球測位システム」）からの情報を受取る適当なアンテナ９と共働する通常の受信機８と、ここで、かかる情報によって、収集船舶の現在の位置を通常の方法とは異なる方法で測定することができる、および、リンク１１および１２を経由してそれぞれ受信機６および８と接続され、識別情報を記録するように形成された手段１０とを含んでいる。

本発明によれば、識別情報は、前記収集船舶の身元に加えて、受信機６が検知した識別信号、および受信機８によって与えられる、この検知時の収集船舶の位置を含んでいる。

前記手段１０は、リンク１４により示されるように、この識別情報をデータ保管メモリー１３に記録する。

本発明によるシステム１は、このように、超短波ＶＨＦを用いた無線通信による船舶同士の自動メッセージ交換システムであって、自動識別システム、好ましくは、ＡＩＳ（“自動識別システム”）型と共働する。特定の実施形態においては、ＡＩＳ型のシステムを装備したいかなる船舶も定期的に（一般的に２〜１０秒の間）、特に以下の情報を送信する、
− 船舶の識別番号、
− 航行状態：停泊、錨泊中、漁業の操業中など、
− 対地針路
− 対地速度
− 回頭角速度
− 経度や緯度による位置
− 真針路
− 時刻

また、一般的に、以下の情報も、たとえば６分ごとにシステムＡＩＳによって定期的に送信される。
− 船名
− 船種
− 船舶のサイズ
− 船舶のＡＩＳアンテナの位置
− 衛星位置計測装置のタイプ
− 目的地
− 目的地への到着予定時間
− 船員数

各端末２は、さらにアンテナ１６と共働するデータ送信手段１５を含み、これによって、図のリンクＬ１で示されるように、情報をデータ送信システム３の方向に送信し、また、データ送信システム３からの情報を受信することができる。かかる手段１５は、システム３の衛星４と、連続的にかまたは断続的に交信する。

前記端末２は、また、船舶およびその貨物に特有のセンサーおよび信号受信手段であって、船舶および貨物の現状を遠隔で追跡できるようにするセンサーおよび信号受信手段を装備することができる。

前記端末２は、また、電力手段１７を含んでいる。かかる電力手段１７は、いかなるタイプのものでもよい。それらは、特に、船舶の船内電力および／または船上に配置されたソーラーパネルおよび／またはその他のいかなる電源によっても再充電される緩衝蓄電池を含むことができる。

さらに、前記データ送信システム３は、複数の通常の通信衛星４を含み、これらの衛星は、低空軌道上および／または高高度に位置し、端末２への指示の送信、およびかかる端末２で収集された情報の受信を可能にする。

さらに、リンクＬ２で示されるように（衛星４のアンテナ１９と共働するアンテナ１８を経由して）、監視センター５は、前記システム３の衛星４と交信しており、端末２の遠隔管理および端末２を装備する収集船舶および当該収集領域に位置する船舶の追跡を行う。前記監視センター５は、また、以下に詳細に述べるように、顧客にとって有用なデータの管理および提供を行う。

前記監視センター５は、データ送信管理手段２０を含み、当該手段は、アンテナ１８と共働し、前記システム３を経由して、本発明のシステム１の異なる端末２の届け先に指示を送信（および端末２からの情報を受信）することができる。

このように、本発明のシステム１によれば、識別信号が、データ送信システム３の衛星４を経由して監視センター５に識別情報として送信される前に、最初に所定の限定された数の収集船舶によって収集される。

さらに、前記監視センター５は、また、
リンク２２を経由して前記手段２０と接続される手段２１であって、記録された識別情報を提供するよう端末２に求めるために、データ送信システム３が端末２に送信する要請を生成するために形成される手段２１と、
リンク２４を経由して前記手段２０と接続される手段２３であって、要請に従って、端末２によって提供され、手段２０によって受信される識別情報を分析するように形成される手段２３とを含んでいる。

前記監視センター５は、また、
たとえば、リンク２６を経由して前記手段２３と接続される手段２５であって、受信され、処理された識別情報を保管するように形成された手段２５と、
たとえば、リンク２８を経由して前記手段２５と接続される手段２７であって、使用者、特に顧客、たとえばこのような情報を購入する船主が、かかる情報にアクセスできるように形成された手段２７とを含んでいる。そのような場合、手段２６は、また、提供される情報に対して発生し得る請求の管理にも用いることができる。

さらに、各端末２は、保安ケース２９と、該保安ケースを開けると同時に前記データ送信システム３を経由して、監視センター５の届け先に警報信号を送るように形成された警報手段（図示せず）とを含んでいる。

また、特定の実施形態において、前記システム１は、また、端末２からのデータ送信を、遠隔で作動および非作動にする手段（図示せず）を含んでいる。

本発明のシステム１は、以下のように動作する。
端末２は、たとえば、全水平線上で良好な、無線の電気的な視程性の提供のために、収集船舶の艦橋またはマストに配置されて、衛星による通信を聴取する。各端末の手段１０は、受信するＡＩＳ型の識別情報を、定期的に処理し、受信機８から受信される現在位置と共にメモリー１３に保管する。特定の実施形態において、当該手段１０は、前記端末２に特有の符号化キーを用いて、このようなデータのコード化を行って、その後の送信および処理時に安全性と完全性を提供する。また、送信されるデータ量を減らすため、手段１０は、データ変更のみを保管し、それらを圧縮するように制御する。監視センター５は、システム３を経由して、関心を有する領域に位置する異なる端末２に対して連続して問合せを行い、各端末２は、その身元、位置および最後の要請によって検知され、記憶された識別信号の内容を提供する。好ましくは、システムＡＩＳの枠組み内にある収集船舶によって発信された識別信号は、また、収集領域に位置する船舶が発信する他の識別信号として、このような収集船舶（または他の船舶）により捕捉され、処理される。監視センター５は、関心を有する領域において緊密な追跡を行うように、端末２の送信周期を制御することができる。監視センターは、受信するデータを保管し、分析する。この情報は、意図的なまたは偶然の不一致を検知するように、常に維持される。特に、監視センター５は、収集船舶におけるＡＩＳデータのエラー、または、他の船舶、沿岸もしくは異常な気象現象の接近による危険な状況などの異常を検知することができる。さらに、監視センター５は、その有用なデータを顧客の自由処理に任せ、かかるサービスに対する請求を行う。

本発明のシステム１は、特に、以下のような利点を提供する。
特に、衛星４との通信リンクを用いるため、公海上で動作し、
識別信号に加えて、収集船舶の位置も提供するので、識別信号で示された位置をチェックすることができ、
監視センター５は、すべての領域において、しかも海上交通の頻繁な領域においてさえ、本発明のシステム１を使用できるように、特に調整された方法で要請を送信することによって必要とするデータの受信を管理し、
端末２の送信を遠隔で作動および非作動にすることが可能であるため、収集された識別情報を端末２のメモリーにより保持しながら、データ送信システム３を経由して通過する通信のコストを下げることができる。特に、収集船舶に対する衛星通信は、該収集船舶が他の収集船舶によってカバーされている領域に居る時には停止することができ、加えて
本発明のシステム１は、専用手段による位置決めを期待でき、既存の通信衛星を用いることによって、迅速かつ革新的な方法で実施することができる。

Claims (8)

1. 海上における船舶の追跡システムであって、該システム（１）は、
   衛星（４）を経由するデータ送信システム（３）と、監視センター（５）と、前記データ送信システム（３）を介して前記監視センター（５）と通信する手段を有する収集船舶とを含み、
   前記収集船舶が、
   該収集船舶の周りのＡＩＳ通信領域に位置する周囲の船舶によって発信されるＡＩＳ型の識別信号を検知する手段（６、７）と、
   対応する前記収集船舶の現在位置を測定する手段（８、９）と、
   検知される前記識別信号および該検知時の前記収集船舶の前記現在位置を含んでいる識別情報を記録する手段（１０、１３）とを含む端末（２）を含んでおり、
   前記端末（２）が、周囲の船舶によって発信される前記識別信号を受信し、前記識別情報を前記監視センター（５）に送信するように構成されており、
   前記データ送信システム（３）が、前記収集船舶に設けられた前記端末（２）と少なくとも１つの監視センター（５）との間でデータを送信できるようにし、
   前記監視センター（５）が、少なくとも、
   前記データ送信システム（３）によって前記端末（２）に送信される、前記端末に記録された識別情報を提供することを求める要請を発生させる手段（２１）と、
   要請に対して、前記データ送信システム（３）を経由して、前記端末（２）によって提供された識別情報を受取る手段（１８、２０）と、
   受取られる識別情報を分析する手段（２３）
   とを含んでいる。
2. 各端末（２）が、保安ケース（２９）と、該保安ケースを開けると同時に前記データ送信システム（３）を経由して、前記監視センター（５）に警報信号を送るように形成された警報手段とを含んでいることを特徴とする、請求項１記載のシステム。
3. 各端末（２）が、
   電力手段と、
   前記識別信号のための少なくとも１つの受信アンテナ（７）と、
   位置データのための少なくとも１つの受信アンテナ（９）と、
   前記データ送信システム（３）の衛星（４）と共働する少なくとも１つの送信アンテナ（１８）とをさらに含んでいることを特徴とする、請求項１および請求項２のいずれかに記載のシステム。
4. 各端末（２）が、該端末（２）に特有のコーディングに従って、記録された前記識別情報をコード化する手段（１０）をさらに含んでいることを特徴とする、請求項１〜３のいずれかに記載のシステム。
5. 各端末（２）が、船舶に特有の信号を受信する手段をさらに含んでいることを特徴とする、請求項１〜４のいずれかに記載のシステム。
6. 前記監視センター（５）が、測定領域に位置する端末（２）に連続して要請を送る手段（２０、２１、１８）を含んでいることを特徴とする、請求項１〜５のいずれかに記載のシステム。
7. 前記監視センター（５）が、前記識別情報を保管し、使用者が該情報にアクセスできるようにする手段（２５、２７）をさらに含んでいることを特徴とする、請求項１〜６のいずれかに記載のシステム。
8. 前記端末（２）からのデータ送信を、遠隔で作動および非作動にする手段をさらに含んでいることを特徴とする、請求項１〜７のいずれかに記載のシステム。

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