JP5713548B2 - スパイラル鋼管の周長測定方法 - Google Patents
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Description
スパイラル鋼管10の製造では、製造中にスパイラル鋼管10の径(周長)が変動することが知られており、スパイラル鋼管の周長を一定に保つように制御する必要がある。
従来、スパイラル鋼管10の周長測定は、オペレータがメジャーで測定を行う方法が一般的である。できるだけ高い歩留まりで安定した品質(周長)を得るため、スパイラル鋼管製造には、溶接後、早いタイミングで周長測定を行う必要がある。この周長測定の位置は、押さえロールから少し圧延した位置での測定が望ましく、この部位で、オペレータがメジャーを用い周長測定を行う方法がある。この方法では、測定に際し、スパイラル鋼管10の製造を止める必要がある場合には製造速度が阻害される。また、人による測定では測定頻度が限られ、連続的に周長の全長測定を行うことができない。そのためオペレータによる測定が行われていない期間に周長の大きな変動(周長ハズレ)が発生することが問題となる。
例えば、スパイラル鋼管の外周に設置した複数の非接触変位計を用い、当該変位計から表面までの距離の変位を測定し、この変位量をパイプ(鋼管)外周値に換算する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来例では、非接触型変位計としては、パイプの回りに、ほぼ等角度で、パイプ表面から等距離に設置し、パイプ径変更の際も、常にパイプ中心を狙うように配置されたレーザ式センサを用いた装置が例示されている。
スパイラル鋼管の直径は、先述した様に400mm〜2650mmに及ぶ。ここで、内面溶接位置の高さと成形ロールの高さは、一般にライン入り側の鋼板パスラインの高さ(コイル状から平にされて成形ロール側に搬入される鋼板の高さ)とほぼ一致するように設定され、製造する鋼管径が変化した際にもこの高さは変わらない。
全ての前記押さえロールは、前記スパイラル鋼管の外周面を当該スパイラル鋼管の径方向内側に押した状態となるように、製造すべき前記スパイラル鋼管の外周面に当接する位置より内側に配置され、
前記スパイラル鋼管の隣り合う前記押さえロール同士の間の部分となる複数のロール区間のうち、隣り合う前記押さえロール同士の間隔が全ロール区間における前記間隔の平均値以上となる少なくとも1つのロール区間を選択し、当該ロール区間内で前記スパイラル鋼管の周方向に沿った押さえロールからの距離が所定長さ以上の位置で前記スパイラル鋼管表面の変位を測定し、測定された前記変位に基づいてスパイラル鋼管の周長を算出するに際し、
前記押さえロールによって変化した前記スパイラル鋼管の半径方向における変化量を押さえ量Xとし、
前記スパイラル鋼管の周長変化をX×2πとし、この周長変化に基づいて前記スパイラル鋼管の周長を算出することを特徴とする。
請求項2に記載のスパイラル鋼管の周長測定方法は、請求項1に記載の発明において、
前記押さえ量Xの増減に応じたロール区間内でのスパイラル鋼管の表面の半径方向に変位をYとした場合に、押さえ量Xとの関係を、Y=aX (但し、aは感度係数)で近似し、周長変化を(Y/a)×2πとすることを特徴とする。
これにより、溶接直後(例えば、後述の内面溶接直後)のスパイラル鋼管の周長を高精度で測定可能となるので、スパイラル鋼管の周長に大きな変動が生じるような場合に、当該変動が生じはじめた際に、それを検知して、周長が大きく変動する前に周長の変動を抑える制御を開始することができる。
まず、スパイラル鋼管の周長測定方法の理論的背景について説明し、次いで、具体的なスパイラル鋼管の周長測定装置および当該周長測定装置を用いた周長測定方法を説明する。
1.周長測定方法
(1)製造装置
この実施の形態の周長測定方法は、一般的なスパイラル鋼管の製造装置(製造設備)に適用可能なもので、例えば、上述の図17および図18に示されるスパイラル鋼管の製造装置で製造される場合に適用可能である。そこで、本発明を詳細に説明するために、一般的なスパイラル鋼管の製造装置、特に押さえロール9周りについて簡単に説明する。
この例の周長測定方法は、隣接する押さえロール9で形成されるロール区間における鋼管表面の変位に基づいて鋼管の周長を測定する方法である。以下では、鋼管表面の変位から鋼管の周長を算出する過程について、説明する。
押さえロール9に接する円の半径=スパイラル鋼管10の半径−押さえ量X
であるから
スパイラル鋼管10の半径=押さえロール9に接する円の半径+押さえ量X
である。
管半径変化量=押さえ量X
周長変化=管半径変化量×2π=押さえ量X×2π…(1)
Y=aX (以下、aを感度係数とよぶ)…(2)
で、近似する。
式(1)(2)より、
Y=a×周長変化/2π
として求められる。
なお、実際のスパイラル鋼管10の製造においては、通常、基準管半径は、例えば、スパイラル鋼管10の製造開始直後等のタイミングで例えばメジャーを用いて実測された値とし、押さえロール9に接する円の半径は基準管半径より少し小さくなるように設定される。
続いて、本発明の意義・効果について理解を容易にするために、押さえロール9周りでのスパイラル鋼管10の変位に関する模擬実験および計算機シミュレーションの結果を説明する。
まず、押さえロール9で支持されるスパイラル鋼管10の表面の変位の状況を、模擬実験により調査した。図15は、スパイラル鋼管製造装置の押さえロール9付近を模擬するテスト架台20の模式図である。テスト架台20にスパイラル鋼管10を輪切りにした一部を設置し、当該スパイラル鋼管10の外周を囲むように外面補強パイプ21を配置し、当該外面補強パイプ21に当該外面補強パイプ21から内側のスパイラル鋼管10側に向けて螺合するボルト22を用い、押さえロール9の配置に対応する位置からスパイラル鋼管10をボルト22で押圧した。
このテストでは、スパイラル鋼管10として外径1386.6mm×厚さ8mmの鋼管を用い、スパイラル鋼管10の真下の0度となる位置は、テスト架台20に接した状態でボルト22による押し込みを行わず、時計回りで66度、120度、180度、235度、294度の位置でボルト22による押し込みを行った。
図4のグラフは、約10〜20度ピッチでスパイラル鋼管10表面の変位を測定した結果である。表1に示すように、各ボルト22直下近傍が極小値となり、隣接する各ボルト22の間でスパイラル鋼管10の表面が外側に膨れ上がっていた。膨れ上がっているピーク(極大値)角度としては、80度、150度、200度、265度の近傍であり等ピッチとなっていなかった。さらに、その膨れ上がりの程度は、角度によって異なる。即ち、このサンプルでは、80度や200度近傍の膨れ上がりは小さく、150度や265度近傍の膨れ上がりは大きかった。
次に、FEM解析(有限要素法を用いた弾性解析)によるシミュレーションで押さえ量とスパイラル鋼管10表面の変位との関係を求めた。スパイラル鋼管10の外径と厚さは、上述のテスト架台20で実測値を求めた場合と同様とした。押さえロール9の位置もテスト架台20の実験と同様としたが、0度の位置にも押さえロール9を配置してスパイラル鋼管10を押圧するものとした。また、押し込み量を1mmとした。
さらにFEM解析のシミュレーション結果から、感度係数aを求めてみた。
スパイラル鋼管10の径、厚さおよび押さえロール9の角度は前述と同様とし、押さえロール9による押しつけ量(押さえ量)を0.5mm、1.0mm、1.5mmとした。
図6では、180度の押さえロールから100mm離れた位置の感度係数は0.6647となり、200mm離れた位置の感度係数は、1.5314となる。
また、235度の押さえロールから100mm離れた位置では感度係数aが0.8661となり、200mm離れた位置では感度係数aが1.9928となる。
なお、感度係数が高いほど、高感度で測定されたことになり、ロール区間の中央に近い方、ここでは押さえロール9から遠い位置で測定した方が感度が高いことになる。
図8はスパイラル鋼管の外径が600mmで、厚さが18mmの場合、図9は外径が800mmで、厚さが15mmの場合、図10は外径が1000mmで、厚さが19mmの場合、図11は外径が1500mmで、厚さが12mmの場合、図12は外径が2000mmで、厚さが20mmの場合である。
また、ロール区間の中央に近い位置で測定した方が感度が高いことは、先の例と同様であり、鋼管径が600mmの場合では、押さえロールから150mmの位置と200mmの位置とでは感度係数があまり変わらないか、150mmの方が感度が高い場合もある。
さらに、感度係数aをスパイラル鋼管10の肉厚に関係なく外径で整理した結果を図13および14のグラフに示す。図13は、180度の押さえロールからマイナス角度方向に200mmの位置、図14は235度の押さえロールからプラス角度方向に200mmの位置における結果である。感度係数aは、スパイラル鋼管の外径が1000mm程度以上となっていれば、前述したように肉厚による影響が小さく、また鋼管径と直線に近い関係性を示す。そこで、従来製造したことのない鋼管径および肉厚のスパイラル鋼管10を製造する場合でも、この直線を示す式から感度係数aを求めることが可能である。
続いて、上述の周長測定方法を実現するためのこの例の周長測定装置を説明する。図16等に示すように、本発明の周長測定装置は、ロール区間の複数の押さえロール9のうち少なくとも一つの押さえロール9の保持部11に、当該保持部11から前記スパイラル鋼管10の略周方向に沿って延びる腕部(変位計保持架台)12が設けられ、当該腕部12には、当該腕部12が設けられた保持部11で保持される押さえロール9とこれと隣り合う押さえロール9で形成されるロール区間内でかつ押さえロール9から前記スパイラル鋼管10の周方向に沿って所定距離以上となる位置のスパイラル鋼管10表面の変位を測定する変位計13が設けられている。
なお、変位計保持架台12の曲率半径は、例えば、スパイラル鋼管10の製造装置で製造可能な最も長い径のスパイラル鋼管10の半径と同程度としてもよいし、それよりも短いものとしてもよい。
そして、当該変位計保持架台12の長さ方向に沿ってこの例では2台の変位計13が互いに間隔をあけて並んで配置されている。すなわち、押さえロール9に近い側の変位計13と、当該変位計13より押さえロール9から遠い変位計13とが設けられている。
また、レーザの照射角度は、スパイラル鋼管10の中心を向くことが好ましいが、変位計13が変位計保持架台12に固定となっているので、製造すべきスパイラル鋼管10の径の変更により、スパイラル鋼管10の中心に対してずれた位置となる。
また、1つの変位計保持架台12に3つ以上の変位計13を押さえロール9に近い側から遠い側に向かって並べて配置するものとしてもよい、この場合も、押さえロール9から遠くなるにしたがって、より径の大きなスパイラル鋼管10用の変位計13となる。
また、押さえロール9どうしの間隔が広い部分、すなわち、押さえロール9どうしの間隔の平均より間隔が広い押さえロール9どうしの間で、かつ、押さえロール9から所定距離以上離れた位置でスパイラル鋼管10表面の変位を測定した場合に、スパイラル鋼管10の外径の変化量よりスパイラル鋼管10表面の変位量が大きくなり、高感度での測定が可能となる。
これにより、スパイラル鋼管10の水平方向および/または垂直方向に沿った径が測定可能となる。なお、水平方向の変位計は、製造装置で製造される最大の外径のスパイラル鋼管10より外側に配置される。また、スパイラル鋼管10の軸方向に沿った位置としては、上述の押さえロール9の配置される範囲内となる。また、変位計は、上下に移動自在とされ、製造されるスパイラル鋼管10の中心と同じ高さ位置に配置される。
9 押さえロール
10 スパイラル鋼管
11 保持部
12 変位計保持架台(腕部)
13 変位計
Claims (3)
- 管状に成形された鋼板の側縁部の溶接を外周側から周方向に並んで配置された複数の押さえロールで保持しながら行ってスパイラル鋼管を製造する際に当該スパイラル鋼管の周長を溶接直後となる位置で測定するスパイラル鋼管の周長測定方法であって、
全ての前記押さえロールは、前記スパイラル鋼管の外周面を当該スパイラル鋼管の径方向内側に押した状態となるように、製造すべき前記スパイラル鋼管の外周面に当接する位置より内側に配置され、
前記スパイラル鋼管の隣り合う前記押さえロール同士の間の部分となる複数のロール区間のうち、隣り合う前記押さえロール同士の間隔が全ロール区間における前記間隔の平均値以上となる少なくとも1つのロール区間を選択し、当該ロール区間内で前記スパイラル鋼管の周方向に沿った押さえロールからの距離が所定長さ以上の位置で前記スパイラル鋼管表面の変位を測定し、
測定された前記変位に基づいてスパイラル鋼管の周長を算出するに際し、
前記押さえロールによって変化した前記スパイラル鋼管の半径方向における変化量を押さえ量Xとし、
前記スパイラル鋼管の周長変化をX×2πとし、この周長変化に基づいて前記スパイラル鋼管の周長を算出することを特徴とするスパイラル鋼管の周長測定方法。 - 前記押さえ量Xの増減に応じたロール区間内でのスパイラル鋼管の表面の半径方向に変位をYとした場合に、押さえ量Xとの関係を、Y=aX (但し、aは感度係数)で近似し、周長変化を(Y/a)×2πとすることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル鋼管の周長測定方法。
- スパイラル鋼管の鉛直方向の変位もしくは水平方向の変位を測定し、当該測定された変位に基づく補正を行って周長を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のスパイラル鋼管の周長測定方法。
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