JP5712803B2 - 測位方法、測位システム及びプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、測位方法、測位システム及びプログラムに関する。本発明は、プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体にも関する。
近年、無線を用いた測位技術が各種分野に応用されており、このような無線測位技術の重要性が増している。携帯電話に代表される携帯端末の新しいサービスとして、携帯端末の位置をリアルタイムに計測して地図上に表示する位置情報サービスが提案されている。位置情報サービスによれば、携帯端末のユーザにナビゲーション、周辺のお勧め施設の提示等のサービスを提供できる。携帯端末の位置情報、即ち、携帯端末を持って移動するユーザの位置情報は、そのユーザの日々の行動を推定する上で重要なコンテキスト情報であるため、携帯端末の測位を精度良く行う技術の重要性は今後更に増すと予想される。
無線測位技術の一例であるGPS(Global Positioning System)は、屋外では比較的有効であり、数m〜数十mの精度で位置情報を得ることができる。一方、GPSは、屋内では測位精度が外乱に大きく影響されてしまう。このため、GPSは屋内では測位の精度が低下すると共に、屋内では一般的に物と物の間隔が屋外の場合と比較すると短いため、より高い精度で位置情報が得られなければGPSを各種サービスに用いる効果は薄れてしまう。このため、屋内での測位の精度を向上する各種技術が提案されている。
従来、無線信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を利用した測位方法があるが、理想的な環境における計測と比較すると、複雑な実環境では無線の干渉等の外乱による影響でRSSIが変化してしまうので、高精度の測位を実現することは難しい。又、Wi−Fi(Wireless Fidelity)のRSSIを利用して測位を行う技術が提案されているが、外乱の影響が大きく、高精度の測位を実現することは難しい。
次に、RSSIを利用した測位における外乱の影響について説明する。従来のRSSIを利用した測位方法は、事前に取得したRSSIと同じRSSIが測位時にも得られるという理想的な条件を前提としている。このため、電波干渉の影響やユーザの携帯端末の持ち方に変化があり、得られるRSSIが変化してしまうと、精度良く測位を行うことはできない。
図1は、電波干渉がRSSIに及ぼす影響の一例を説明する図である。図1中、(a)はRSSIと距離の関係を示し、(b)はRSSIと時間の関係を示す。図1(a)において、縦軸は携帯端末がアンカーから受信する無線信号(RSSI)の強度を任意単位で示し、横軸はアンカーから携帯端末までの距離を任意単位で示す。図1(b)において、縦軸は携帯端末がアンカーから受信する無線信号(RSSI)の強度を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。以下の説明において、携帯端末とはアンカーからの無線信号を受信する携帯電話等の移動無線局であり、アンカーとは無線信号を発信する基地局である。アンカーは、例えばオフィス内の机や壁といった環境に固定されてその位置は既知である。
アンカーから携帯端末までの距離が同じ状態で携帯端末が静止していても、図1に実線で示すようにRSSIは電波干渉により時間的に変動する。このような電波干渉が起こる要因には、電波の反射、他の電子機器からの電磁波等がある。このため、図1(b)に一点鎖線Cで示すように距離とRSSIの関係を事前のキャリブレーションで一意に決定することはできず、ある距離に対応するRSSIは変動幅を持つ。同様に、測位時に計測されたRSSIから距離を一意に決定することはできず外乱の大きさに応じた距離の範囲を持つ。
図2は、ユーザの携帯端末の持ち方がRSSIに及ぼす影響の一例を説明する図である。図2中、縦軸は携帯端末がアンカーから受信する無線信号(RSSI)の強度を任意単位で示し、横軸はアンカーから携帯端末までの距離を任意単位で示す。図2において、Iは事前にキャリブレーションした関係を示し、IIは測位時に得られる関係を示す。携帯端末の持ち方に変化があると、同じ距離で得られるRSSIは変化する。特にキャリブレーション時に、端末を覆わずに強いRSSIが得られるような持ち方で計測すると、測位時にキャリブレーションした関係を用いてRSSIから求められる距離は実距離よりも長くなる傾向にある。
Wi−FiのRSSIの分布マップを利用する第1の測位方法の場合、測位したい場所で事前にRSSIを取得して、その場所の各位置におけるRSSIの分布マップを作成しておき、測位時に得られたRSSIと分布マップのマッチングを行うことにより現在の位置を求める。このため、ユーザの携帯端末の持ち方によっては、同じ位置でも事前に取得したRSSIとは異なるRSSIが得られてしまい、マッチングにより正しい位置が検出できないことがある。
一方、RSSIと距離の対応関係から三点測位を行う第2の測位方法の場合、事前にキャリブレーションした距離とRSSIの関係を用いて、位置が既知の複数のアンカーから得られたRSSIを距離に変換することで三点測位を適用する。この場合、RSSIを変換して得られる距離は、外乱の影響により正確ではないため、検出した位置には誤差が含まれる。即ち、外乱の影響のない理想的な環境では、各アンカーから携帯端末までの正確な距離が分かるため、各アンカー位置を中心として得られた距離を半径とする円を描くとそれらの円は携帯端末の位置で交わるはずである。しかし、外乱があるとRSSIに対応する距離は幅を持つため、携帯端末の位置は各アンカー位置を中心とした円環領域の積領域までしか絞り込めない。
図3は、第2の測位方法を説明する平面図である。図3において、アンカー1A,1B,1Cから携帯端末3までの外乱がある場合のRSSIに対応する距離の範囲2A,2B,2Cは、各アンカー1A,1B,1Cの位置を中心とした円環領域となる。このため、携帯端末3の検出位置は、円環領域の積領域4までしか絞り込むことができない。
特開2002−159041号公報 特開2004−215258号公報
RSSIを利用する従来の測位方法では、高精度の測位を実現することは難しいという問題があった。
そこで、本発明は、RSSIを利用して高精度の測位を実現することのできる測位方法、測位システム及びプログラムを提供することを目的とする。
本発明の一観点によれば、携帯端末の位置を測位する測位方法であって、前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する処理と、キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係を参照して前記現在の無線信号強度に基づき前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する処理と、前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み処理と、2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、電波干渉による無線信号強度の変動幅に応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み処理をコンピュータに実行させる測位方法が提供される。
本発明の一観点によれば、携帯端末の位置を測位する測位システムであって、前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する取得部と、キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係を参照して前記現在の無線信号強度に基づき前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する変換部と、前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み部と、2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、電波干渉による無線信号強度の変動幅に応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み部を備えた測位システムが提供される。
本発明の一観点によれば、コンピュータに、携帯端末の位置を測位する測位処理を実行させるプログラムであって、前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する手順と、キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係を参照して前記現在の無線信号強度に基づき前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する手順と、前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み手順と、2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、電波干渉による無線信号強度の変動幅に応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み手順を前記コンピュータに実行させるプログラムが提供される。
開示の測位方法、測位システム及びプログラムによれば、RSSIを利用して高精度の測位を実現することが可能となる。
電波干渉がRSSIに及ぼす影響の一例を説明する図である。 ユーザの携帯端末の持ち方がRSSIに及ぼす影響の一例を説明する図である。 第2の測位方法を説明する平面図である。 キャリブレーションの方法と、RSSIの最大値を用いる理由を説明する図である。 キャリブレーション処理を説明するフローチャートである。 RSSIの時間的な変化の最大値を見積ることにより、アンカーから携帯端末までの距離の範囲が求められることを説明する図である。 携帯端末の距離の範囲の一例を1つのアンカーに対して示す平面図である。 2つのアンカーからの距離の差がある範囲に定まった時の携帯端末の位置の範囲を説明する図である。 携帯端末の位置が絞り込まれる様子を説明する図である。 携帯端末の位置が絞り込まれる様子を説明する図である。 携帯端末の位置が絞り込まれる様子を説明する図である。 測位システムが適用可能な通信システムの一例を示すブロック図である。 測位システムの測位処理の一例を説明するフローチャートである。 図13の第2の絞り込み処理の一例を説明するフローチャートである。 測位システムの機能の一例を説明する機能ブロック図である。 RSSIと距離の正しい関係が既知である場合のRSSIと距離の関係を示す図である。 携帯端末の距離の範囲の一例を1つのアンカーに対して示す平面図である。 ユーザによる携帯端末の持ち方の変化によりRSSIと距離の関係が未知である場合のRSSIと距離の関係を示す図である。 持ち方が変化した後の携帯端末の距離の範囲の一例を1つのアンカーに対して示す平面図である。 距離の差の大小関係を説明する図である。 ケースC2の場合の絞り込みの一例を示す図である。 ケースC2の場合の絞り込みの他の例を示す図である。 ケースC1の場合の絞り込みの一例を示す図である。 ボロノイ分割を用いた絞り込みの一例を説明する図である。
開示の測位方法、測位システム及びプログラムでは、携帯端末の位置を測位する際、携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得し、キャリブレーションにより予め求められている複数のアンカーから携帯端末までの距離と無線信号強度の関係から携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定し、決定された各アンカーからの距離の範囲により携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む。又、2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから携帯端末までの距離の差の範囲から、外乱パラメータに応じた携帯端末の位置の範囲を求め、求めた携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む。
以下に、開示の測位方法、測位システム及びプログラムの各実施例を図面と共に説明する。
(第1実施例)
先ず、本発明の第1実施例における、キャリブレーションしたアンカーから携帯端末までの距離とRSSIの関係が測位時も有効な場合の検出位置の絞り込み処理を説明する。本実施例では、測位時のユーザの携帯端末の持ち方が限定できるものとする。
事前準備として、距離とRSSIの最大値の関係をキャリブレーションする。図4は、キャリブレーションの方法と、RSSIの最大値を用いる理由を説明する図である。図4(a)において、縦軸は携帯端末がアンカーから受信する無線信号(RSSI)の強度を任意単位で示し、横軸はアンカーから携帯端末までの距離を任意単位で示す。図4(b)において、縦軸は携帯端末がアンカーから受信する無線信号(RSSI)の強度を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。
アンカーから携帯端末までの距離を変化させながら、各距離において図4(b)のように時間的に変化するRSSIの最大値RSSImaxを保存する。図4において、最大値RSSImaxは一点鎖線で示す。保存した最大値RSSImaxの値から、図4(a)に実線で示すように距離とRSSIの関係を定める。この関係を利用すると、破線で示すように、あるRSSIRxに対応する距離を一点鎖線上で求めると、対応する距離Dxより遠くの距離では、外乱を考慮してもこのRSSIRxより強いRSSIが得られることはないため、必ず求めた距離よりも近い距離に携帯端末が存在することが分かる。
図5は、上記のキャリブレーション処理を説明するフローチャートである。図5において、ステップS1は、RSSIを計測し、携帯端末のアンカーからの距離とRSSIの関係を調べるべき携帯端末の全位置をアンカーから一定の距離間隔毎の位置に決定する。ステップS2は、携帯端末が全ての計測位置でRSSIの計測を行ったか否かを判定する。ステップS2の判定結果がNOであると、ステップS3は携帯端末の位置を次の計測位置に移動する。ステップS4は、同じ位置に携帯端末を静止させ状態でRSSIを一定時間計測し続ける。ステップS5は、計測された複数のRSSIの値の最大値を計算する。ステップS6は、計算されたRSSIの最大値を、その計測位置における携帯端末とアンカーの距離に対応するRSSI値として記録し、処理はステップS2へ戻る。ステップS2の判定結果がYESになると、ステップS7は、記録された全てのRSSI値から、携帯端末のアンカーからの距離とRSSIの関係を作成し、処理は終了する。
次に、事前準備として、電波干渉の影響によるRSSIの最大変化幅を見積る。図6は、RSSIの時間的な変化の最大値を見積ることにより、アンカーから携帯端末までの距離の範囲が求められることを説明する図である。図6中、縦軸は携帯端末がアンカーから受信するRSSIの強度を任意単位で示し、横軸はアンカーから携帯端末までの距離を任意単位で示す。
図6において、あるアンカーから得られたRSSIをS、電波干渉によるRSSIの変動幅をh、距離とRSSIの最大値の関係を用いてRSSIから対応する距離を求める関数をD’(S)とする。このとき、同じ位置で観測される可能性のあるRSSIは、S−hからS+hの範囲であるが、携帯端末の存在する距離の範囲については、次のことからD’(S+h)からD’(S)として表すものとする。
距離とRSSIの取り得る全ての関係は、実線で示す距離と最大RSSIの関係線を上側の端として電波干渉を考慮してRSSIの変動幅hのハッチングで示す帯領域Rである。この帯領域Rの中でRSSIがSの時に取り得る範囲は、図6中太線の矢印で示す距離の範囲dである。この太線の矢印で示す距離の範囲dは、実線上で考えると、RSSIがS+hとSに対応する距離の間の範囲、即ち、D’(S+h)からD’(S)の範囲である。図6において、D1は距離の下限、即ち、S+hなるRSSIに対応する距離であり、D2が距離の上限、即ち、SなるRSSIに対応する距離である。
次に、測位手順では、各アンカーからの受信で観測されたRSSIから、各アンカーと携帯端末の間の距離の範囲を求める。アンカーi(i={α,β,...})から携帯端末までの距離をd、アンカーから得られるRSSIをSで表すと、上記の関係より距離の範囲はD’(S+h)≦d≦D’(S)で表すことができる。この距離dの範囲は、例えば図7のように円環状の領域で表すことができる。図7は、携帯端末3の距離dの範囲の一例を1つのアンカー1に対して示す平面図である。各アンカーを中心とする円環状の領域の積領域を求めることにより、携帯端末3の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込む。
次に、2つのアンカーと携帯端末の間の夫々の距離の範囲から距離の差の範囲を決定する。2つのアンカーα,βについて、上記の如く携帯端末までの距離の範囲dα,dβは次の関係式(1)で表すことができる。Sα,Sβは、携帯端末がアンカーα,βから受信したRSSIを示す。
D’(Sα+h)≦dα≦D’(Sα
D’(Sβ+h)≦dβ≦D’(Sβ) 式(1)
上記の2つの関係式(1)から、距離の差の範囲dα−dβは次の関係式(2)で表すことができる。
D’(Sα+h)−D’(Sβ)≦dα−dβ≦D’(Sα)−D’(Sβ+h)
式(2)
次に、距離の差の範囲から携帯端末の位置の範囲を求める。これにより、上記の関係式(2)から距離の差の範囲が求められ、以下に説明するように携帯端末の位置の範囲を求めることができる。このような処理を全てのアンカーの組み合わせについて行うことで、それらの積領域として携帯端末の位置の範囲を求める。
図8は、2つのアンカーからの距離の差がある範囲に定まった時の携帯端末の位置の範囲を説明する図である。図8では、アンカーα,βの位置をPα,Pβで示し、アンカーα,βから携帯端末までの距離をdα,dβで示す。距離の差の範囲の上限又は下限が次のように定まったときの携帯端末の位置の範囲は、図8のように表せる。上限が定まった場合(左下がりのハッチングで示す左側の領域)では、dα−dβ<const(定数)であり、下限が定まった場合(右下がりのハッチングで示す右側の領域ではdα−dβ>constである。図8中、(a)は−‖Pα−Pβ‖<const<0の場合、(b)はconst=0の場合、(c)は0<const<‖Pα−Pβ‖の場合を夫々示す。
図8中、(a)及び(c)からもわかるように、ある2点からの距離の差の下限及び上限が定まった点の集合は、基本的には与えられた2点を焦点とする双曲線を境界とする領域となる。ただし、特別な場合として2点からの距離の差の上限及び下限がゼロ(0)の場合の境界線は、図8中(b)からもわかるように、与えられた2点の2等分線となる。又、距離の差はどの位置においても与えられた2点間の距離より長くなることはないため、この距離の差より大きな上限が与えられても境界は生じない。
このようにして求めた携帯端末の位置の範囲と、上記の如く各アンカーで観測されたRSSIから求めた各アンカーと携帯端末の間の距離の範囲との積領域に携帯端末の推定位置を絞り込み、積領域の重心位置を周知の方法で計算することで携帯端末の推定位置を求める。
図9乃至図11は、本実施例により携帯端末の位置が絞り込まれる様子を説明する図である。図9乃至図11は、屋内の一例としてオフィス内で、複数の机11及び複数の椅子12が配置され、複数のアンカー13が特定の机11の上に設置されている場合の平面図である。アンカー13は○印で示し、携帯端末によりRSSIが検出されたアンカー13はハッチング付きの○印で示す。図10及び図11において、●印は携帯端末の実位置を示し、☆印は携帯端末の推定位置を示す。
図9に示すオフィス内の携帯端末が図10に●印で示す実位置にあると、携帯端末は図10にハッチング付きの○印で示すアンカー13からのRSSIを検出する。図10において、破線で囲まれた各円形領域は、携帯端末がアンカー13からのRSSIを検出可能な範囲を示す。尚、この例では、説明の便宜上、図6の場合のように電波干渉によるRSSIの変動幅は考慮しないものとする。携帯端末の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込むことで、携帯端末の推定位置の範囲は図10中梨地で示す領域15に絞り込まれる。
次に、2つのアンカーと携帯端末の間の夫々の距離の範囲から距離の差の範囲を上記の如く決定すると、2つのアンカーα,βから携帯端末までの距離の範囲dα,dβは上記の2つの関係式で表すことができる。これにより、上記の2つの関係式(1)から、距離の差の範囲dα−dβは上記の関係式(2)で表すことができる。次に、距離の差の範囲dα−dβから携帯端末の位置の範囲を求める。このような処理を全てのアンカーの組み合わせについて行うことで、それらの積領域として携帯端末の位置の範囲を求める。このようにして求めた携帯端末の位置の範囲と、上記の如く各アンカーで観測されたRSSIから求めた各アンカーと携帯端末の間の距離の範囲との積領域に携帯端末の推定位置を絞り込み、積領域の重心位置を計算することで携帯端末の推定位置を求める。図11において、各アンカーと携帯端末の間の距離の範囲との積領域16の重心位置が☆印で示す携帯端末の推定位置である。図11からもわかるように、☆印で示す携帯端末の推定位置は、●印で示す携帯端末の実位置と略一致しており、高精度の測位が可能である。
図12は、上記の如き測位方法が適用可能な通信システムの一例を示すブロック図である。図12に示す通信システム21は、複数のアンカー21−1〜21−N(Nは2以上の自然数)と、携帯端末23を有する。各アンカー21−1〜21−Nは同じ構成を有しても良いので、図12ではアンカー21−1の構成のみを示す。
アンカー21−1は、CPU221等のプロセッサ、キーボード等の入力部222、表示部223、記憶部224、及びアンテナ等を含む通信部225がバス226で接続された構成を有する。CPU221は、アンカー21−1全体の制御を司る。入力部222は、CPU221にデータやコマンドを入力する。表示部223は、オペレータに対してガイダンス画面や動作状態等を表示する。記憶部224は、CPU221が実行するプログラム、及びCPU221が実行する演算の中間データ等を含む各種データを格納する。通信部225は、携帯端末23との通信を可能とする周知の構成を有する。入力部222及び表示部223は、タッチパネルのように一体的に設けられていても良い。又、CPU221とアンカー22−1内の各部との接続は、バス226による接続に限定されるものではない。又、アンカー22−1に必要に応じて接続される構成とすれば、入力部222及び表示部223の少なくとも一方は省略しても良い。
携帯端末23は、CPU231等のプロセッサ、キーボード等の入力部232、表示部233、記憶部234、及びアンテナ等を含む通信部235がバス236で接続された構成を有する。CPU231は、携帯端末23全体の制御を司る。入力部232は、CPU231にデータやコマンドを入力する。表示部233は、オペレータに対してガイダンス画面や動作状態等を表示する。記憶部234は、CPU231が実行するプログラム、及びCPU231が実行する演算の中間データ等を含む各種データを格納する。通信部235は、アンカー22−1〜22−Nとの通信を可能とする周知の構成を有する。入力部232及び表示部233は、タッチパネルのように一体的に設けられていても良い。又、CPU231と携帯端末23内の各部との接続は、バス236による接続に限定されるものではない。
少なくとも測位システムが行う測位処理の手順を実行するプログラムを格納する記憶部224,234等の記憶部には、半導体記憶装置、磁気、光、光磁気記録媒体等を含む各種周知のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を使用可能である。
図13は、測位システムの測位処理の一例を説明するフローチャートである。図13に示すステップS11〜S18のうち、ステップS11は携帯端末23のCPU231により実行される。ステップS12〜S18は、携帯端末23のCPU231により実行されても、携帯端末23と通信中のアンカー22−i(i=1〜N)のCPU221により実行されても良い。
図13において、ステップS11は、携帯端末23で各アンカー22−1〜22−Nから受ける現在のRSSIを取得する。ステップS12は、図5と共に説明した如きキャリブレーション処理により予め求められているアンカーから携帯端末までの距離とRSSIの関係から、携帯端末23の各アンカー22−1〜22−Nからの距離の範囲を決定する。ステップS13は、決定された携帯端末23の各アンカー22−1〜22−Nからの距離の範囲により、携帯端末の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込む、第1の絞り込み処理を実行する。
ステップS14は、電波干渉によるRSSIの変動幅hを取得する。ステップS15は、2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから携帯端末23までの距離の差の範囲から、変動幅hに応じた携帯端末の位置の範囲を求め、求めた携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と上記第1の絞り込み処理で求められた携帯端末の位置の範囲との積領域に絞り込む、第2の絞り込み処理を実行する。ステップS16は、ステップS15で更に絞り込まれた携帯端末23の位置の範囲の重心位置を計算する。
ステップS17は、ステップS16で計算された重心位置を出力する。重心位置は、携帯端末23の推定位置である。例えば、ステップS17が携帯端末23のCPU231で実行される場合、ステップS15で更に絞り込まれた携帯端末23の位置の範囲と、ステップS16で計算された重心位置を、記憶部232に格納されたオフィス内の地図に重ねて表示部233に表示しても良い。又、ステップS17は、ステップS15で更に絞り込まれた携帯端末23の位置の範囲と、ステップS16で計算された重心位置を、現在時刻と共に記憶部232に格納しても良い。同様にして、ステップS17がアンカー22−1のCPU221で実行される場合、ステップS15で更に絞り込まれた携帯端末23の位置の範囲と、ステップS16で計算された重心位置を、現在時刻と共に記憶部222に格納しても良い。
ステップS18は、測位処理の終了を示す終了フラグがセット(又は、オンに)されているか否かを判定する。ステップS18の判定結果がNOであると処理はステップS11へ戻り、判定結果がYESであると処理は終了する。
図14は、図13のステップS15が実行する第2の絞り込み処理の一例を説明するフローチャートである。図14において、図13に示すステップS15の後、ステップS151は、全てのアンカー22−1〜22−Nから2つのアンカーを選んでペアとし、全ての組み合わせのペアを作成する。ステップS152は、全ての組み合わせのペアについて携帯端末23の位置の範囲を計算したか否かを判定する。ステップS152の判定結果がNOであると、ステップS153は、次に携帯端末23の位置の範囲を計算する組み合わせのペアを決定する。ステップS154は、決定したペアを形成する2つのアンカー夫々の携帯端末23に対する距離の範囲から、2つの距離の差の範囲を決定する。ステップS155は、2つの距離の差の範囲から携帯端末23の位置の範囲を求め、処理はステップS152へ戻る。ステップS152の判定結果がYESになると、ステップS156は、距離の差の範囲から、変動幅hに応じた携帯端末の位置の範囲を求め、求めた携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と上記ステップS13の第1の絞り込み処理で既に絞り込まれている携帯端末の位置の範囲との積領域に絞り込み、処理は図13に示すステップS16へ進む。
図15は、測位システムの機能の一例を説明する機能ブロック図である。ここでは説明の便宜上、測位システムの機能が携帯端末23側で実現されるものとする。図15中、図12と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
この例では測位システムの機能が携帯端末23側で実現されるので、図15に示す無線情報取得部31、アンカー位置変換部32、距離変換部33、端末位置範囲演算部34、及び端末位置演算部35の各機能は、図12に示すCPU231が対応するプログラムの手順を実行することでCPU231により実現される。
無線情報取得部31は、ユーザインタフェース(UI:User Interface)を形成する入力部232から携帯端末23の位置の計算を要求する位置計算コマンドと、通信部235から受信したアンカー22−iのMAC(Media Access Control)アドレスmi及びRSSIsiとを含む無線情報を取得する。アンカー位置変換部32は、無線情報取得部31から入力されるMACアドレスmi及びRSSIsiに基づき、記憶部234に格納されたアンカーMACアドレス・位置対応表42を参照して、MACアドレスmiを対応する携帯端末23の位置座標piに変換する。
距離変換部33は、アンカー位置変換部32から入力されるRSSIsiに基づき、記憶部234に格納された距離・RSSI対応表42を参照して、RSSIsiを対応する携帯端末23のアンカー22−iからの距離diに変換することで、上記第1の絞り込み処理を行う第1の絞り込み部を形成する。距離・RSSI対応表42は、上記の如きキャリブレーションにより予め求められて記憶部234に格納されている。端末位置範囲演算部34は、距離変換部33から入力される位置座標pi及び距離diと、記憶部234に格納された外乱パラメータ43(この例では、電波干渉によるRSSIの変動幅h)とに基づいて、携帯端末23の位置の範囲を計算することで上記第2の絞り込み処理を行い、計算した位置の範囲を示す領域Rを出力する第2の絞り込み部を形成する。外乱パラメータ43は、予め記憶部234に格納されている。端末位置演算部35は、端末位置範囲演算部34から入力される領域Rの重心位置を計算し、この重心位置を携帯端末23の推定位置座標qとして出力する。端末位置演算部35は、領域R及び位置座標qを記憶部234に位置データ44として格納する。又、端末位置演算部35は、必要に応じて領域R及び位置座標qを表示部233に表示したり、必要に応じて領域R及び位置座標qを通信部235に入力して携帯端末23の通信可能な外部機器(図示せず)へ位置データ44を送信しても良い。
RSSIの強弱関係から携帯端末の位置の範囲の情報が得られることは、RSSIの強い方のアンカーの近くに携帯端末が位置する可能性が高く、RSSIが同じくらいであれば2つのアンカーの中間に携帯端末が位置する可能性が高い。これは2つのアンカーからのRSSIの相対関係に基づく位置の範囲の推定であり、ある1つのアンカーから得られたRSSIの絶対的な大きさから携帯端末の距離の範囲を求めることとは独立である。このように、三点測位で得られる携帯端末の位置の範囲に対して、RSSIの比較という独立な関係を利用して、携帯端末の位置の範囲を更に絞り込むため、携帯端末の位置の推定精度が向上する。又、外乱の影響を加味した上で携帯端末の位置を絞り込むことが可能である。
(第2実施例)
本発明の第2実施例では、測位時のユーザの携帯端末の持ち方が限定できないものとする。このため、キャリブレーションした距離とRSSIの関係が測位時には使えない、即ち、上記第1実施例における関数D’(S)が未知であるものとする。
事前準備として、関数D’(S)の代わりに、携帯端末がユーザの手等で覆われておらずできるだけ強いRSSIが得られる理想的な条件で、事前に距離とRSSIの最大値の関係Dを図4と共に説明した如きキャリブレーションにより得る。このキャリブレーション自体は、上記第1実施例の場合と同様であるため、その説明は省略する。
次に、上記の理想条件で外乱の影響によるRSSIの最大変化幅を見積る。ユーザによる携帯端末の持ち方に変化があると、持ち方が変化した後の距離とRSSIの関係D’は分からない。しかし、理想的な場合と比較して、同じ位置で得られるRSSIは持ち方が変化した後の方が弱くなる。従って、図18と共に説明するように、持ち方が変化した後も、キャリブレーションした理想条件の関係Dを用いて距離の上限を求めることができるものの、距離の下限については関係Dを用いて表すことができない。
図16は、RSSIと距離の正しい関係が既知である場合のRSSIと距離の関係を示す図である。図16中、縦軸は携帯端末がアンカーから受信するRSSIの強度を任意単位で示し、横軸はアンカーから携帯端末までの距離を任意単位で示す。あるアンカーから得られたRSSIをS、電波干渉によるRSSIの変動幅をhで表す。図16において、D1は距離の下限、即ち、S+hなるRSSIに対応する距離であり、D2が距離の上限、即ち、SなるRSSIに対応する距離である。又、図17は、携帯端末3の距離の範囲の一例を1つのアンカー1に対して示す平面図である。各アンカーを中心とする円環状の領域の積領域を求めることにより、携帯端末3の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込む第1の絞り込み処理を行うことができる。
一方、図18は、ユーザによる携帯端末の持ち方の変化によりRSSIと距離の関係が未知である場合のRSSIと距離の関係を示す図である。図18中、縦軸は携帯端末がアンカーから受信するRSSIの強度を任意単位で示し、横軸はアンカーから携帯端末までの距離を任意単位で示す。図18において、実線は図16の如きキャリブレーションした関係を示し、破線は持ち方が変化した後の関係を示す。図18中、図16と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図18からもわかるように、持ち方が変化した後の実際の距離の範囲はDaであるが、キャリブレーションした実線で示す関係からはこの実際の距離範囲Daの下限を求めることはできない。又、図19は、持ち方が変化した後の携帯端末3の距離の範囲の一例を1つのアンカー1に対して示す平面図である。この場合、図19に×印で示すように、実際の距離範囲Daの下限を求めることができないものの、上限D2は求めることができるため、各アンカーを中心とする円形の領域の積領域を求めて、携帯端末3の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込めば良い。
次に、測位手順では、距離の範囲を関係Dから求めて携帯端末の位置の範囲を絞り込む。上記の如く、距離の下限が既知の関係Dを用いて表せないので、図7と共に説明したような円環状の領域に絞り込むことはできない。しかし、距離の上限は関係Dを用いて表すことができるため、各アンカーを中心とする円領域の積領域に携帯端末の位置の範囲を絞り込むことができる。
そこで、携帯端末で観測された各アンカーからのRSSIを用いて、各アンカーと携帯端末の間の距離の範囲を、現在の持ち方における未知の関係D’を用いて表現する。この場合、上記第1実施例の場合と同様にして、距離の範囲はD’(S+h)≦d≦D’(S)で表すことができる。又、ある2つのアンカーの組について、携帯端末までの夫々の距離の範囲から距離の差の範囲を表現する。これにより、上記第1実施例の場合と同じように携帯端末までの距離の範囲を、未知の関係D’を用いて上記の関係式(2)で表すことができる。
次に、関係Dを用いて求めた距離の差と、未知の関係D’を用いて求めた距離の差の関係から、距離の差の範囲を求める。図20は、距離の差の大小関係を説明する図である。図20中、縦軸は携帯端末がアンカーから受信するRSSIの強度を任意単位で示し、横軸はアンカーから携帯端末までの距離を任意単位で示す。図20中、図18と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図20に示すように、理想条件の関係Dを用いて計算される距離の差の範囲D(S)−D(S)は、ユーザによる携帯端末の持ち方が変化した後の、どの場合における関係から計算される距離の差の範囲D’(S)−D’(S)以上になるという性質から、次の2式を得ることができる。
≦Sのとき:
0≦D’(S)−D’(S)≦D(S)−D(S) 式(3)
≧Sのとき:
D(S)−D(S)≦D’(S)−D’(S)≦0 式(4)
これにより、上記の式(2)、式(3)、式(4)から既知の理想条件の関係Dを用いて距離の差の範囲を次のように求めることができる。
2つのアンカーから受信されたRSSISα,RSSISβの大小関係により3つの場合に分けて、
α≧Sβ+hのとき:
D(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦0 式(5)
β−h≦Sα≦Sβ+hのとき:
D(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h) 式(6)
α≦Sβ−hのとき:
0≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h) 式(7)
に基づいて距離の差の範囲を求める。
詳細な計算手順は、以下の通りである。先ず、次の3式より2つのアンカーα,βからの距離差の範囲を求め、SαとSβの大小関係により、3つのケースC1〜C3に分ける。
D’(Sα+h)−D’(Sβ)≦dα−dβ≦D’(Sα)−D’(Sβ+h)式(A)
≦Sのとき0≦D’(S)−D’(S)≦D(S)−D(S) 式(B)
≧SのときD(S)−D(S)≦D’(S)−D’(S)≦0 式(C)
ケースC1:Sα≧Sβ+hのとき
α≧Sβ+h及び式(A)、式(C)より、
α−dβ≦D’(Sα)−D’(Sβ+h)≦0
α+h≧Sβ及び式(A)、式(C)より、
D(Sα+h)−D(Sβ)≦D’(Sα+h)−D’(Sβ)≦dα−dβ
よって、上記の式(5)であるD(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦0が得られる。
ケースC2:Sβ−h≦Sα≦Sβ+hのとき
α+h≧Sβ及び式(A)、式(C)より、
D(Sα+h)−D(Sβ)≦D’(Sα+h)−D’(Sβ)≦dα−dβ
α≦Sβ+h及び式(A)、式(B)より、
α−dβ≦D’(Sα)−D’(Sβ+h)≦D(Sα)−D(Sβ+h)
よって、 上記の式(6)であるD(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h)が得られる。
ケースC3:Sα≦Sβ−hのとき
α+h≦Sβ及び式(A)、式(B)より、
0≦D’(Sα+h)−D’(Sβ)≦dα−dβ
α≦Sβ+h及び式(A)、式(B)より、
α−dβ≦D’(Sα)−D’(Sβ+h)≦D(Sα)−D(Sβ+h)
よって、上記の式(7)である0≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h)が得られる。
次に、このようにして上記の式(5)〜式(7)を用いて求めた距離の差の範囲から携帯端末の存在範囲を決定する。全てのアンカーの組み合わせについて、上記の如く求めた距離の範囲から上記第1実施例の場合と同様に携帯端末の位置の範囲を求め、それらの位置の範囲の積領域を求めることで携帯端末の位置の範囲を求める。
更に、このようにして求めた携帯端末の位置の範囲と、上記の如く既知の関係Dから第1の絞り込み処理で求めた携帯端末の位置の範囲の積領域に携帯端末の位置の範囲を絞り込む第2の絞り込み処理を行い、絞り込んだ携帯端末の位置の範囲に重心位置を計算することで携帯端末の位置を求める。
携帯端末の位置の範囲を第2の絞り込み処理により絞り込む例を、図21〜図23と共に説明する。図21〜図23中、Pα,Pβは、夫々アンカーα,βの位置を示す。
図21は、Sβ−h≦Sα≦Sβ+hであるケースC2(式(6))の場合の絞り込みの一例を示す図である。この場合、
−‖Pα−Pβ‖<D(Sα+h)−D(Sβ
且つ
D(Sα)−D(Sβ+h)<‖Pα−Pβ
である。図21中、(a)は携帯端末の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込んだ場合の絞り込まれた範囲をハッチングで示し、(b)は携帯端末の位置の範囲を本実施例の如き第1及び第2の絞り込み処理を行う方法で絞り込んだ場合の絞り込まれた範囲をハッチングで示す。図21(a)と(b)の比較からもわかるように、本実施例によれば、携帯端末の位置の範囲は従来と比べて縮小される。
図22は、Sβ−h≦Sα≦Sβ+hであるケースC2(式(6))の場合の絞り込みの他の例を示す図である。この場合、
D(Sα+h)−D(Sβ)≦−‖Pα−Pβ
且つ
D(Sα)−D(Sβ+h)≦‖Pα−Pβ
である。図22中、(a)は携帯端末の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込んだ場合の絞り込まれた範囲をハッチングで示し、(b)は携帯端末の位置の範囲を本実施例の如き第1及び第2の絞り込み処理を行う方法で絞り込んだ場合の絞り込まれた範囲をハッチングで示す。図22(a)と(b)の比較からもわかるように、本実施例によれば、携帯端末の位置の範囲は従来と比べて縮小される。
図23は、Sα≧Sβ+hであるケースC1(式(5))の場合の絞り込みの一例を示す図である。この場合、
D(Sα+h)−D(Sβ)≦−‖Pα−Pβ
である。図23中、(a)は携帯端末の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込んだ場合の絞り込まれた範囲をハッチングで示し、(b)は携帯端末の位置の範囲を本実施例の如き第1及び第2の絞り込み処理を行う方法で絞り込んだ場合の絞り込まれた範囲をハッチングで示す。図23(a)と(b)の比較からもわかるように、本実施例によれば、携帯端末の位置の範囲は従来と比べて縮小される。
このように、三点測位で得られる携帯端末の位置の範囲に対して、RSSIの比較という独立な関係を利用して、携帯端末の位置の範囲を更に絞り込むため、携帯端末の位置の推定精度が向上する。又、外乱の影響を加味した上で携帯端末の位置を絞り込むことが可能である。
(第3実施例)
本発明の第3実施例では、アンカーの位置を母点としてボロノイ分割(Voronoi
Division)で携帯端末の位置の範囲を絞り込む。図24は、ボロノイ分割を用いた絞り込みの一例を説明する図である。この例では、説明の便宜上、3つのアンカーα,β,γについて、Sα<<Sγ、且つ、Sβ<<Sγなる関係が成り立つものとする。
事前準備として、各アンカーα,β,γの位置を母点とするボロノイ分割Divを計算する。
測位手順では、携帯端末の位置の範囲を従来の三点測位を行う第2の測位方法と同様の方法で絞り込む第1の絞り込み処理を行い、範囲を図24に示すRa+Rbの範囲に絞り込む。
又、全アンカーα,β,γのRSSIを比較して、最大RSSIと2番目に大きいRSSIの差が一定以上の時、ボロノイ分割Divで最大RSSIのアンカー(この例では、アンカーγ)に属する領域に携帯端末の位置の範囲を決定する。
そして、決定された携帯端末の位置の範囲(即ち、アンカーγに属する領域)と上記第1の絞り込み処理で求められた携帯端末の位置の範囲との積領域Rbに携帯端末の位置の範囲を絞り込む第2の絞り込み処理を行い、積領域Rbの重心位置を計算することで携帯端末の位置を求める。
このように、三点測位で得られる携帯端末の位置の範囲に対して、RSSIの比較という独立な関係を利用して、携帯端末の位置の範囲を更に絞り込むため、携帯端末の位置の推定精度が向上する。又、外乱の影響を加味した上で携帯端末の位置を絞り込むことが可能である。
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
携帯端末の位置を測位する測位方法であって、
前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する処理と、
キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係から、前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する処理と、
前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み処理と、
2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、外乱パラメータに応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み処理
をコンピュータに実行させることを特徴とする、測位方法。
(付記2)
予め記憶部に格納された外乱パラメータを取得する処理
を更に前記コンピュータに実行させ、
前記外乱パラメータは、電波干渉による無線信号強度の変動幅を含むことを特徴とする、付記1記載の測位方法。
(付記3)
前記第2の絞り込み処理で更に絞り込まれた前記第2の範囲の重心位置を求め、前記携帯端末の推定位置として出力する処理
を更に前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記1又は2記載の測位方法。
(付記4)
前記出力する処理は、前記第2の範囲及び前記重心位置を、予め記憶部に格納された地図に重ねて前記携帯端末の推定位置として前記携帯端末の表示部に表示することを特徴とする、付記3記載の測位方法。
(付記5)
前記第2の絞り込み処理は、2つのアンカーα,βから受信された無線信号強度Sα,Sβの大小関係により3つの場合に分けて、アンカーα,βから前記携帯端末までの距離をdα,dβ、電波干渉による無線信号強度の変動幅をh、前記キャリブレーションにより予め求められているアンカーα,βから前記携帯端末までの距離と前記無線信号強度の最大値の関係をD’(Sα),D’(Sβ)で示すと、
α≧Sβ+hのとき:
D(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦0
β−h≦Sα≦Sβ+hのとき:
D(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h)
α≦Sβ−hのとき:
0≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h)
に基づいて前記距離の差の範囲を計算することを特徴とする、付記1乃至4のいずれか1項記載の測位方法。
(付記6)
前記第2の絞り込み処理は、各アンカーの位置を母点としてボロノイ分割(Voronoi
Division)で前記携帯端末の位置の範囲を絞り込むことを特徴とする、付記1乃至4のいずれか1項記載の測位方法。
(付記7)
携帯端末の位置を測位する測位システムであって、
前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する取得部と、
キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係から、前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する変換部と、
前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み部と、
2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、外乱パラメータに応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み部
を備えたことを特徴とする、測位システム。
(付記8)
前記第2の絞り込み部は、予め記憶部に格納された外乱パラメータを取得し、
前記外乱パラメータは、電波干渉による無線信号強度の変動幅を含むことを特徴とする、付記7記載の測位システム。
(付記9)
前記第2の絞り込み処理で更に絞り込まれた前記第2の範囲の重心位置を求め、前記携帯端末の推定位置として出力する演算部
を更に備えたことを特徴とする、付記7又は8記載の測位システム。
(付記10)
前記演算部は、前記第2の範囲及び前記重心位置を、予め記憶部に格納された地図に重ねて前記携帯端末の推定位置として前記携帯端末の表示部に表示することを特徴とする、付記9記載の測位システム。
(付記11)
前記取得部は、前記携帯端末に含まれることを特徴とする、付記7乃至10のいずれか1項記載の測位システム。
(付記12)
前記変換部、前記第1の絞り込み部、及び前記第2の絞り込み部は、前記携帯端末に含まれることを特徴とする、付記11記載の測位システム。
(付記13)
コンピュータに、携帯端末の位置を測位する測位処理を実行させるプログラムであって、
前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する手順と、
キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係から、前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する手順と、
前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み手順と、
2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、外乱パラメータに応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み手順
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。
(付記14)
予め記憶部に格納された外乱パラメータを取得する手順
を更に前記コンピュータに実行させ、
前記外乱パラメータは、電波干渉による無線信号強度の変動幅を含むことを特徴とする、付記13記載のプログラム。
(付記15)
前記第2の絞り込み手順で更に絞り込まれた前記第2の範囲の重心位置を求め、前記携帯端末の推定位置として出力する手順
を更に前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記13又は14記載のプログラム。
(付記16)
前記出力する手順は、前記第2の範囲及び前記重心位置を、予め記憶部に格納された地図に重ねて前記携帯端末の推定位置として前記携帯端末の表示部に表示することを特徴とする、付記15記載のプログラム。
(付記17)
前記第2の絞り込み手順は、2つのアンカーα,βから受信された無線信号強度Sα,Sβの大小関係により3つの場合に分けて、アンカーα,βから前記携帯端末までの距離をdα,dβ、電波干渉による無線信号強度の変動幅をh、前記キャリブレーションにより予め求められているアンカーα,βから前記携帯端末までの距離と前記無線信号強度の最大値の関係をD’(Sα),D’(Sβ)で示すと、
α≧Sβ+hのとき:
D(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦0
β−h≦Sα≦Sβ+hのとき:
D(Sα+h)−D(Sβ)≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h)
α≦Sβ−hのとき:
0≦dα−dβ≦D(Sα)−D(Sβ+h)
に基づいて前記距離の差の範囲を計算することを特徴とする、付記13乃至16のいずれか1項記載のプログラム。
(付記18)
前記第2の絞り込み手順は、各アンカーの位置を母点としてボロノイ分割(Voronoi
Division)で前記携帯端末の位置の範囲を絞り込むことを特徴とする、付記13乃至16のいずれか1項記載のプログラム。
(付記19)
前記コンピュータは、前記携帯端末に含まれることを特徴とする、付記13乃至18のいずれか1項記載のプログラム。
(付記20)
付記13乃至19のいずれか1項記載のプログラムを格納したことを特徴とする、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
以上、開示の測位方法、測位システム及びプログラムを実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
21 通信システム
22−1〜22−N アンカー
23 携帯端末
221,231 CPU
224,234 記憶部
225,235 通信部
232 入力部
233 表示部

Claims (5)

  1. コンピュータに、携帯端末の位置を測位する測位処理を実行させるプログラムであって、
    前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する手順と、
    キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係を参照して前記現在の無線信号強度に基づき前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する手順と、
    前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み手順と、
    2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、電波干渉による無線信号強度の変動幅に応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み手順
    を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。
  2. 前記電波干渉による無線信号強度の変動幅を予め格納する記憶部から、前記電波干渉による無線信号強度の変動幅を取得する手順
    を更に前記コンピュータに実行させることを特徴とする、請求項1記載のプログラム。
  3. 前記第2の絞り込み手順で更に絞り込まれた前記第2の範囲の重心位置を求め、前記携帯端末の推定位置として出力する手順
    を更に前記コンピュータに実行させることを特徴とする、請求項1又は2記載のプログラム。
  4. 携帯端末の位置を測位する測位システムであって、
    前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する取得部と、
    キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係を参照して前記現在の無線信号強度に基づき前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する変換部と、
    前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み部と、
    2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、電波干渉による無線信号強度の変動幅に応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み部
    を備えたことを特徴とする、測位システム。
  5. 携帯端末の位置を測位する測位方法であって、
    前記携帯端末で複数のアンカーから受ける現在の無線信号強度を取得する処理と、
    キャリブレーションにより予め求められている前記複数のアンカーから前記携帯端末までの距離と無線信号強度の関係を参照して前記現在の無線信号強度に基づき前記携帯端末の各アンカーからの距離の範囲を決定する処理と、
    前記決定された各アンカーからの距離の範囲により、前記携帯端末の位置の範囲を三点測位を行う方法で第1の範囲に絞り込む第1の絞り込み処理と、
    2つのアンカーの全ての組み合わせについて、各組み合わせを形成する2つのアンカーから前記携帯端末までの距離の差の範囲から、電波干渉による無線信号強度の変動幅に応じた前記携帯端末の位置の範囲を求め、求めた前記携帯端末の位置の範囲を、当該位置の範囲と前記第1の範囲との積領域で形成された第2の範囲まで絞り込む第2の絞り込み処理
    をコンピュータに実行させることを特徴とする、測位方法。
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