ところで、点眼容器の容器本体はブロー成形法を用いて合成樹脂成形されるが、その成形においては外周側に膨出させる容器部に比して口部はあまり小径に絞れないという事情がある。すなわち、筒状のパリソンを成形型に入れて口部を外周側から内周側に絞る一方、容器部は内周側から外周側に膨らませるようにしてブロー成形するため、口部を小径に絞ろうとしても限度がある。つまり、点眼のために薬液滴下に適したノズル孔に比して、かなり大径の内径を有する口部となる。
このため、口部内に装着される点眼ノズルとしては、通常は、例えば図16に示すように、口部21の内周面に密着するように挿入される外筒壁301と、ノズル孔302を形成した内筒壁303との二重筒構造が採用され、このため、両筒間にドーナッツ環状の空間304が存在することになる、という事情がある。
しかしながら、図16に例示するような二重筒構造にしてドーナッツ環状の空間304が容器本体2の内部空間20に向けて開口している点眼ノズルを採用すると、キャップ22を外し点眼のために全体を天地逆転させた場合、容器本体2内の薬液の一部が前記ドーナッツ環状の空間304内に入り込んでしまい、最終的には、前記の空間304内に入り込んだ薬液がノズル孔302から点眼し得ないまま残液として残ってしまうことになる。
この対策として、例えば図17に示すように、ドーナッツ環状の空間305が外部に開口するように内筒壁306と外筒壁307とを容器本体2の内部側で連結して閉止した構造を採用することも考えられる。ところが、このような構造にすると、天地逆転状態での点眼使用の後に正立状態に戻した際にノズル孔308出口に付着していた薬液の粒が前記ドーナッツ環状の空間305内に落下して溜まり、これが乾燥することにより薬液成分が結晶化した状態で付着した状態になるおそれがある。このような付着が生じると、これが次の点眼使用の際に剥離して使用者に向けて落下してしまうという好ましくない事態が生じることも考えられる。
一方、例えば図18に示すように、容器本体2の口部21内に一重の筒壁309のみが配置されているような構造の点眼ノズルを採用した場合には、熱膨張に起因して液溢れが生じてしまうおそれがある。すなわち、容器本体2を掴んだ使用者の指の熱が伝熱するなどして、容器本体2の内部空間20の容積膨張が生じた場合、その容積膨張の影響が顕著であると、キャップ22を外すとノズル孔310を上向きにした正立姿勢であってもノズル孔310から液溢れが生じてしまうことになる。特に、点眼のために天地逆転させてスクイズにより滴下した後に外気吸引により内部に気泡が発生したり、あるいは、冷蔵庫内での保管後に使用したりする場合には、容積膨張の影響が顕著となって液溢れが生じ易くなる。とりわけ、近年の点眼用の薬液は、通常時には冷蔵庫で保管し、使用のときにだけ冷蔵庫から取りだして点眼使用するという仕様のものが多く、低温の冷蔵庫内から常温の外部に取り出されることにより、その温度差に基づく容積膨張も追加されることになる。
かかる容積膨張に関して、図18に例示する一重筒構造の点眼ノズルであると、口部21内に挿入された筒壁309内と容器本体2の内部空間20とが一体となり、全体が容積膨張するため、その容積膨張の影響がノズル孔310の先端から即座に外部に液溢れし易いのに対し、図16又は図17に例示する二重筒構造の点眼ノズルの場合にはノズル孔302,308の入口部から出口部までの孔空間により内圧が緩和されることから液溢れし難い構造となっている。従って、図18の一重筒構造の場合には、冷蔵庫から取りだして暫く置いておくと、キャップ22を外したとたんに液溢れが生じてしまうおそれもある。
以上より、残液発生の抑制、液溢れ発生の抑制、あるいは、付着薬液の溜まり発生の抑制は、互いにトレードオフの関係に似た関係にあり、従来の点眼ノズル構造では全てを同時に解決することはできない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、残液発生の抑制、液溢れ発生の抑制、付着薬液の溜まり発生の抑制の全てを同時に解決し得る点眼ノズル構造を提供することにある。
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、液体が装填される容器本体の口部の内周面に対し内嵌される外筒壁と、内部にノズル孔が延びる内筒壁とが、間に、上下方向に延びるドーナッツ環状の空間を介して連結されている点眼ノズル構造を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記ドーナッツ環状の空間の上下両側の開口の一側が前記内筒壁と外筒壁とを互いに連結する壁部により閉止される一方、前記上下両側の開口の他側が閉止部材により閉止されるようにして、前記ドーナッツ環状の空間の上下両側の開口を共に閉止して塞いだ構成とした。そして、前記内筒壁として、この内筒壁の内周面により形成される前記ノズル孔が前記外筒壁の下端部まで延びるように形成し、かつ、前記内筒壁の下端として、前記ノズル孔が前記内筒壁の下端位置において前記容器本体の内部空間に臨んで微小径の入口部で開口するように形成し、この入口部により前記ノズル孔と容器本体の内部空間とが互いに連通されているようにした(請求項1)。
請求項1に係る発明の場合、点眼操作の際に点眼容器を倒立状態にしたとしても、ドーナッツ環状の空間の容器本体側(正立状態での下側)開口が閉止されているため、容器本体内の液体が前記ドーナッツ環状の空間内に入り込むことはなく、残液が発生することを回避し得るようになる。しかも、内筒壁の内部にノズル孔が外筒壁の下端部まで延び、かつ、そのノズル孔の下端が微小径の入口部で容器本体の内部空間に開口されているため、ノズル孔の内部に一定以上の容積を確保することができ、冷蔵庫保管の後に使用時には外部に取り出されて常温外気に触れたとしても温度差に起因する容積膨張の影響をノズル孔内の空間により緩和させ得るようになる。これにより、容積膨張に起因する液溢れの不都合を抑制又は回避し得るようになる。併せて、入口部が微小径の開口径とされているため、気泡の細径化という機能上の要求をも満たし得る。さらに、点眼操作の後に再び正立状態に戻した際に、ノズル孔の先端付近に液体の粒が付着していたとしても、ドーナッツ環状の空間の上側の開口も閉止されているため、前記の付着していた液体がドーナッツ環状の空間内に落下して溜まる等の不都合の発生を回避し得ることになる。以上より、残液発生の抑制、液溢れ発生の抑制、付着薬液の溜まり発生の抑制の全てを同時に解決し得ることになる。なお、内筒壁と外筒壁とを壁部により互いに連結した状態のものを例えば合成樹脂成形する一方、別に閉止部材を例えば合成樹脂成形した上で、互いに組み付けるようにすればよい。
又、前記目的を達成するために、請求項2に係る発明では、液体が装填される容器本体の口部の内周面に対し内嵌される外筒壁と、内部にノズル孔が延びる内筒壁とが、間に、上下方向に延びるドーナッツ環状の空間を介して連結されている点眼ノズル構造を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記ドーナッツ環状の空間の上下両側の開口の一側が前記内筒壁と外筒壁とを互いに連結する壁部により閉止される一方、前記上下両側の開口の他側が閉止部材により閉止されるようにして、前記ドーナッツ環状の空間の上下両側の開口を共に閉止して塞いだ構成として。そして、前記閉止部材として、前記ドーナッツ環状の空間の下側開口を閉止するものであり、かつ、前記ノズル孔と容器本体の内部空間とを互いに連通させる入口孔を備えた構成とした(請求項2)。
請求項2に係る発明の場合、点眼操作の際に点眼容器を倒立状態にしたとしても、ドーナッツ環状の空間の容器本体側(正立状態での下側)開口が閉止部材により閉止されているため、容器本体内の液体が前記ドーナッツ環状の空間内に入り込むことはなく、残液が発生することを回避し得るようになる。しかも、内筒壁の内部にノズル孔が延びて閉止部材の入口孔までの間のノズル孔の内部に一定以上の容積を確保することができ、冷蔵庫保管の後に使用時には外部に取り出されて常温外気に触れたとしても温度差に起因する容積膨張の影響をノズル孔内の空間により緩和させ得るようになる。これにより、容積膨張に起因する液溢れの不都合を抑制又は回避し得るようになる。又、点眼操作の後に再び正立状態に戻した際に、ノズル孔の先端付近に液体の粒が付着していたとしても、ドーナッツ環状の空間の上側の開口も閉止されているため、前記の付着していた液体がドーナッツ環状の空間内に落下して溜まる等の不都合の発生を回避し得ることになる。以上より、残液発生の抑制、液溢れ発生の抑制、付着薬液の溜まり発生の抑制の全てを同時に解決し得ることになる。さらに、入口孔として微小径のものを合成樹脂成形により形成するようにしたとしても、内筒壁や外筒壁を備えた側の部材に対し微小径のものを合成樹脂成形により形成する場合に比べ、特に微小径の孔を形成するためのコアピン型の耐久性の増大や位置設定の確実化等を図ることが可能となって製造の確実化や製造コストの低減化を得ることが可能となる。なお、内筒壁と外筒壁とを壁部により互いに連結した状態のものを例えば合成樹脂成形する一方、別に閉止部材を例えば合成樹脂成形した上で、互いに組み付けるようにすればよい。
さらに、前記の請求項1又は請求項2の閉止部材として、前記ドーナッツ環状の空間の全てを実質的に埋める筒状壁を備えたものとすることができる(請求項3)。このようにすることでドーナッツ環状の空間そのものの存在をなくすことが可能となる。このような閉止部材を別途形成し、内嵌・係止等により組み付けるようにしてもよいが、組み付け作業を省略して次のように合成樹脂成形により一体化した状態に形成することも可能である。すなわち、前記閉止部材と、この閉止部材を除く部分を有するノズル本体との2つの部分のいずれか一方の部分を合成樹脂成形した後、この合成樹脂成形した部分をインサート材として他方の部分を合成樹脂成形することにより一体化させるようにすることができる(請求項4)。これにより、本来的に発生してしまうドーナッツ環状の空間を埋めた状態での点眼ノズルが合成樹脂成形により形成し得ることになる。その上に、前記の如く段階的に合成樹脂成形するのではなくて1回の合成樹脂成形により全体を形成する場合と比べ、正確な寸法・形状のものを安定的に形成し得ることとなる。
以上の点眼ノズル構造について、より具体化した構成としては、前記内筒壁の上下方向中間位置から外周側に突出する鍔部、及び、その内筒壁の下半部を囲むように前記鍔部から下方に延びる外筒壁とを備えたノズル本体と、このノズル本体の外筒壁と内筒壁との間のドーナッツ環状の空間の下側開口に対し内嵌されてこのドーナッツ環状の空間の下側開口を閉止する閉止部材とを備えたものとすることができる(請求項5)。
以上、説明したように、請求項1に係る発明の点眼ノズル構造によれば、点眼操作の際に点眼容器を倒立状態にしたとしても、容器本体内の液体がドーナッツ環状の空間内に入り込むことはなく、残液が発生することを回避することができる。しかも、冷蔵庫保管の後に使用時には外部に取り出されて常温外気に触れたとしても温度差に起因する容積膨張の影響を内筒壁の内部のノズル孔内の空間により緩和させることができ、これにより、容積膨張に起因する液溢れの不都合を抑制又は回避することができる。さらに、点眼操作の後に再び正立状態に戻した際に、ノズル孔の先端付近に液体の粒が付着していたとしても、その液体の粒がドーナッツ環状の空間内に落下して溜まる等の不都合の発生を回避することができる。以上より、残液発生の抑制、液溢れ発生の抑制、付着薬液の溜まり発生の抑制の全てを同時に解決し得ることになる。
又、請求項2に係る発明の点眼ノズル構造によれば、点眼操作の際に点眼容器を倒立状態にしたとしても、容器本体内の液体がドーナッツ環状の空間内に入り込むことはなく、残液が発生することを回避することができる。しかも、冷蔵庫保管の後に使用時には外部に取り出されて常温外気に触れたとしても温度差に起因する容積膨張の影響を内筒壁の内部のノズル孔内の空間により緩和させることができ、これにより、容積膨張に起因する液溢れの不都合を抑制又は回避することができる。又、点眼操作の後に再び正立状態に戻した際に、ノズル孔の先端付近に液体の粒が付着していたとしても、その液体の粒がドーナッツ環状の空間内に落下して溜まる等の不都合の発生を回避することができる。以上より、残液発生の抑制、液溢れ発生の抑制、付着薬液の溜まり発生の抑制の全てを同時に解決し得ることになる。さらに、閉止部材によりドーナッツ環状の空間の下側開口を閉止し、かつ、ノズル孔と容器本体の内部空間とを互いに連通させる入口孔を閉止部材に備えるようにしているため、入口孔として微小径のものを合成樹脂成形により形成するようにしたとしても、内筒壁や外筒壁を備えた側の部材に対し微小径のものを合成樹脂成形により形成する場合に比べ、特に微小径の孔を形成するためのコアピン型の耐久性の増大や位置設定の確実化等を図ることができ、製造の確実化や製造コストの低減化を得ることができる。
請求項3によれば、閉止部材として、ドーナッツ環状の空間の全てを実質的に埋める筒状壁を備えたものとすることで、ドーナッツ環状の空間そのものの存在をなくすことができる。
請求項4によれば、閉止部材と、この閉止部材を除く部分を有するノズル本体との2つの部分のいずれか一方の部分を合成樹脂成形した後、この合成樹脂成形した部分をインサート材として他方の部分を合成樹脂成形することにより一体化させることで、本来的に発生してしまうドーナッツ環状の空間を埋めた状態での点眼ノズルが合成樹脂成形により形成することができるようになる。その上に、段階的に合成樹脂成形するのではなくて1回の合成樹脂成形により全体を形成する場合と比べ、正確な寸法・形状のものを安定的に形成することができる。
さらに、請求項5によれば、点眼ノズル構造として、より具体化した構成を特定することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る点眼ノズル構造を適用した点眼容器を示す。なお、点眼容器とは、天地逆転状態にして内部の薬液(液体)を点眼ノズルから眼球に滴下(点眼)させるために用いられるものである。
点眼容器は、点眼用の薬液(図示省略;以下の各実施形態の図面において同じ)が所定量(例えば5mL:ミリリットル)装填された容器本体2と、この容器本体2の口部21に対し圧入気味に挿入されることにより組み付けられた点眼ノズル3と、前記口部21の外周にねじ込まれて前記点眼ノズル3を保護する保護キャップ22とからなる。
前記容器本体2は、所定の合成樹脂成形によりその胴部がスクイズ操作可能なように柔軟性を有するボトル状に形成されたものであり、口部21の外周面に螺ねじ部が形成されている。容器本体2としては、円筒形の他に扁平な長方形,長円形又は楕円形等の断面形状に形成されたものである。保護キャップ22も合成樹脂成形により形成され、口部21の外周面の螺ねじ部に対するねじ込みにより着脱可能な螺ねじ部を内周面に有し、上部内面には点眼ノズル3の後述の出口部312の先端開口に嵌り込んで密閉し得る球状凸部221が形成されている。そして、この保護キャップ22は、口部21に対しねじ込まれた閉栓状態(図1に示す状態)では前記出口部312を凸部221で閉止しかつ鍔部33の上面及び前記螺ねじ部等のいずれか一以上と密着して容器本体2内を密封し得るようになっている。
前記点眼ノズル3は、ノズル本体3aと、このノズル本体3aに下側から組み付けられた閉止部材3bとからなる。ノズル本体3aは、詳細を図2又は図3に示すように、ノズル孔31が内部に形成された内筒壁32と、この内筒壁32の上下方向中間位置から外周側に突出する鍔部33と、前記内筒壁32の下半部を囲み前記鍔部33から下方に突出する略円筒状の外筒壁(いわゆる「足部」又は「中足部」と言われる)34とを一体に備えている。このようなノズル本体3aや閉止部材3bからなる点眼ノズル3は例えば低密度ポリエチレン等を用いた合成樹脂成形により形成される。前記内筒壁32は、鍔部33を境にして上半部32aが口部21(図1参照)の上方外部に配置され、下半部32bが前記外筒壁34の内側位置で外筒壁34の下端近傍位置まで突出して口部21内に配置されるようになっている。そして、内筒壁32内のノズル孔31が上下に延びて貫通している。又、鍔部33は、口部21の上面に対応する形状に形成され、組み付け状態では口部21の上面に当接するようになっている。さらに、前記外筒壁34は、その外周面が口部21の内周面に対し圧入又は圧入気味に気密に挿入されて口部21を締め切った状態で組み付けられるようになっている。以上のノズル孔31、内筒壁32、鍔部33及び外筒壁34は、本実施形態においては中心軸Xに対し同軸配置で形成されている。
前記ノズル孔31は、内筒壁32の下端位置において容器本体2の内部空間20(図1参照)に臨んで微小径の入口部311が開口し、内筒壁32の上端位置において外部に臨んで小径の出口部312が開口している。前記入口部311が開口する内筒壁32の下端、つまり下半部32bの下端は外筒壁34の下端と同じ位置又は僅かに上側位置まで延ばされている。入口部311を容器本体2の内部空間20に対しより近接して臨む位置、つまり入口部311下端を外筒壁34下端と同じレベル位置まで延ばす又はなるべくそのレベル位置まで近接させるように配置させることが気泡を付着させないようにするという機能上の要求を満足させる上で好ましいものの、外筒壁34下端から突出物の存在をなくして組み付け製造時の取扱性を向上させたり不用意な損傷を防止したりする目的で前記入口部311を外筒壁34下端より僅かに奥まった位置(例えば1.0mm〜1.5mmだけ奥まった位置)に配置することが許容される。
前記出口部312の開口径は点眼すべき薬液の量に応じて所定の容積の液滴が形成されるように設定される。例えば液滴の容積が40μL(マイクロリットル)であると、開口径Dとして2.0mm程度が設定される。そして、ノズル孔31は前記出口部312から入口部311直近の内径急変部位313までが前記出口部312の開口径とほぼ同じに維持されるか、あるいは、出口部312の開口径から前記内径急変部位313まで内径がごく僅かずつ徐々に減少するように形成されている。内径を徐々に減少させているのは合成樹脂成形時の型抜きを容易にするためであり、出口部312の開口径と同一に設定するのが容積膨張を緩和させるための容積確保の点で好ましい。
前記内径急変部位313は前記の出口部312の開口径Dから入口部311の微小径の開口径まで急激に細径化させるために設けられたものであり、その内面は滑らかに湾曲するように形成されている。そして、入口部311は例えば0.1mm〜0.5mmの微小径の開口径とされ、これにより、合成樹脂成形の製造容易性を考慮しつつ気泡の細径化という機能上の要求を満たすようにしている。又、入口部311の外面側は、下向きに尖る円錐状に形成され、気泡の付着を防止して接触しても直ぐに離脱させるようにしている。
前記閉止部材3bは、ノズル本体3aの内筒壁32と外筒壁34との間に形成されるドーナッツ環状の空間35に対し下側開口から嵌め込まれたものである。すなわち、ドーナッツ環状の空間35は、上側が鍔部33により閉止される一方、下側が容器本体2の内部空間20に臨んで開口されたものであり、この下側の開口から閉止部材3bが図面の上向きに嵌め込まれることになる。このような閉止部材3bは、中心軸X方向に所定長さを有する筒状本体36により構成されている。筒状本体36の下端側には、前記のドーナッツ環状の空間35の下端開口、つまり内筒壁32の下端部外面と外筒壁34の下端部内面との間の開口を全て塞いで閉止し得る形状とサイズの膨出部361が形成されている。又、上側の内周面には内方に突出する凸部362が形成され、内筒壁32の外周面に形成された凸部362を下から上に乗り越えて係止することによりノズル本体3aと閉止部材3bとの一体的固定状態を維持し得るようになっている。前記の鍔部33が内筒壁32と外筒壁34とを互いに連結する壁部を構成する。
以上の点眼容器を用いて点眼するには、図4に示すように倒立状態にして図示省略の眼球上に配置した後、容器本体2をスクイズ操作することで、内部空間20内の薬液が入口部311及びノズル孔31を通して出口部312に向けて押し出され、出口部312に形成された液滴を眼球に滴下投与する、すなわち、点眼する。この点眼操作の際に点眼容器を倒立状態にしたとしても、ドーナッツ環状の空間35の内部空間20の側が閉止部材3bにより閉止されているため、内部空間20内の薬液が内に入り込むことはなく、従来の下側に開口したドーナッツ環状の空間を有する二重筒構造の点眼ノズル構造の場合(例えば図16参照)の如く残液が発生することを可及的に抑制又は回避することができるようになる。しかも、内筒壁32により形成されるノズル孔31が外筒壁34の下端部まで延びているため、かかるノズル孔31内に一定以上の容積を確保することができ、冷蔵庫保管の後に使用時には外部に取り出されて常温外気に触れたとしても温度差に起因する容積膨張の影響を前記のノズル孔31内の空間により緩和させることができるようになる。これにより、従来の一重筒構造の点眼ノズル構造の場合(例えば図18参照)に比して、容積膨張に起因する液溢れの不都合を可及的に抑制又は回避することができるようになる。
<第2実施形態>
図5は第2実施形態の点眼ノズル構造を適用した点眼ノズル4を適用した点眼容器を示す。この点眼容器は、第1実施形態と同様の容器本体2と、この容器本体2の口部21に対し圧入気味に挿入されることにより組み付けられた点眼ノズル4と、前記口部21の外周にねじ込まれて前記点眼ノズル4を保護する保護キャップ22とからなる。以下、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略し、異なる点について主として説明する。
点眼ノズル4は、ノズル本体3aと、このノズル本体3aが有するドーナッツ環状の空間35に対し、この空間35の全てに充填されて空間35内に埋め込まれた埋め込み部材3cとからなるものであり、両者3a,3cが互いに別部品として組み付けられて構成されるのではなくて、両者3a,3cが後述の如くインサート成形法による合成樹脂成形により完全に一体に形成されたものである。
すなわち、本実施形態の点眼ノズル4の製造方法を説明すると、まず、ノズル本体3aの外面形状に相当する内面形状に設定された第1のキャビティを有する第1の成形型を用いてノズル本体3aを合成樹脂成形し、次に、点眼ノズル4の外面形状に相当する内面形状に設定された第2のキャビティを有する第2の成形型を用い、そのキャビティ内に前記のノズル本体3aをインサート材として配設し、この状態で残りの埋め込み部材3cを合成樹脂成形する。これにより、ノズル本体3aと埋め込み部材3cとが完全に一体となった点眼ノズル4を成形する。具体的には、まず、第1の成形型5として図6に例示する一組の分割型51,52,53,54及びコアピン型55を用い、これら一組の分割型等51〜55を型閉めすることで形成される第1のキャビティ56内に溶融した成形材料を注入口57,57,…から注入し、ノズル本体3aを合成樹脂成形する。次に、第2の成形型6として図7に例示する一組の分割型61,62,63,64及びコアピン型65を用い、第2のキャビティ66内に前記の成形後のノズル本体3aをインサート材として配設した上で分割型等61〜65を型閉めし、この状態で溶融した成形材料を注入口67から注入することで埋め込み部材3cを合成樹脂成形する。
以上により、ノズル本体3aと埋め込み部材3cとを完全に一体にした状態の点眼ノズル4を合成樹脂成形により確実に形成することができる。すなわち、インサート成形法を採用することなく、例えば前記の第2のキャビティ66に対し成形材料を注入することで、点眼ノズル4と同形状のものを一度に合成樹脂成形すると、かなり厚肉の筒状のものを合成樹脂成形することになって、安定した冷却が困難となって寸法形状が安定せず、外周や内孔であるノズル孔について正確な寸法・形状のものを形成することが困難となるところ、本実施形態の製造方法を採用することで、ノズル本体3aの部分と、そのドーナッツ環状の空間35を完全に埋める筒状壁36a(図5参照)を有する埋め込み部材3cの部分とを完全に一体化することができると同時に、最終形状としての点眼ノズル4を正確な寸法・形状のものに成形することができるようになる。
そして、本実施形態では、第1実施形態と同様に、残液が発生することを可及的に抑制又は回避することができるようになる一方、容積膨張に起因する液溢れの不都合を可及的に抑制又は回避することができるようになる。
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係る点眼ノズル構造を適用した点眼容器を示す。この点眼容器は、第1実施形態と同様の容器本体2と、この容器本体2の口部21に対し圧入気味に挿入されることにより組み付けられた点眼ノズル7と、前記口部21の外周にねじ込まれて前記点眼ノズル7を保護する保護キャップ22とからなる。以下、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略し、異なる点について主として説明する。
前記点眼ノズル7は、ノズル本体7aと、このノズル本体7aに下側から組み付けられた閉止部材7bとからなる。ノズル本体7aは、詳細を図9又は図10に示すように、ノズル孔71が内部に形成された内筒壁72と、この内筒壁72の上下方向中間位置から外周側に突出する鍔部73と、前記内筒壁72の下半部を囲み前記鍔部73から下方に突出する略円筒状の外筒壁74とを一体に備えている。このようなノズル本体7aや閉止部材7bからなる点眼ノズル7は例えば低密度ポリエチレン等を用いた合成樹脂成形により形成される。前記内筒壁72は、鍔部73を境にして上半部72aが口部21(図8参照)の上方外部に配置され、下半部72bが前記外筒壁74の内側位置で外筒壁74の下端近傍位置まで突出して口部21内に配置されるようになっている。そして、内筒壁72内のノズル孔71が上下に延びて貫通している。又、鍔部73は、口部21の上面に対応する形状に形成され、組み付け状態では口部21の上面に当接するようになっている。さらに、前記外筒壁74は、その外周面が口部21の内周面に対し圧入又は圧入気味に気密に挿入されて口部21を締め切った状態で組み付けられるようになっている。以上のノズル孔71、内筒壁72、鍔部73及び外筒壁74は、本実施形態においては中心軸Xに対し同軸配置で形成されている。なお、前記の鍔部73が内筒壁72と外筒壁74とを互いに連結する壁部を構成する。
前記ノズル孔71は、内筒壁72の下端位置において容器本体2の内部空間20(図1参照)側に開口部711が形成され、内筒壁72の上端位置において外部に臨んで微小径の出口部712が開口している。前記開口部711が開口する内筒壁72の下端、つまり下半部72bの下端は外筒壁74の下端よりも僅かに上側位置まで延ばされている。
前記出口部712の開口径は点眼すべき薬液の必要最小量に応じて所定の容積の液滴が形成されるように設定される。前記の必要最小量として例えば液滴の容積が25μL(マイクロリットル)であると、開口径として1.0mm程度が設定される。そして、ノズル孔71は出口部712のみ微小径にされるものの、内部は下端の開口部711に至るまで内容積の確保のために第1実施形態のノズル孔31と同程度の内径に維持されるか、あるいは、開口部711に向けて内径がごく僅かずつ徐々に増大するように形成されている。内径を徐々に増大させているのは合成樹脂成形時の型抜きを容易にするためである。
閉止部材7bは、ノズル本体7aの内筒壁72と外筒壁74との間に形成されるドーナッツ環状の空間75に対し嵌め込まれる筒状壁76と、この筒状壁76の下端側を閉止する端面壁77とを備えたものであり、内筒壁72の下端の開口部711及びドーナッツ環状の空間75の下端開口を含む外筒壁74の下端開口の全てを閉止するようになっている。そして、端面壁77にはノズル孔71の開口部711に連通する入口孔771が貫通形成され、筒状壁76の外周面には外周側に突出する凸部761が形成されている。そして、筒状壁76がドーナッツ環状の空間75の下側の開口から図面の上向きに嵌め込まれ、前記の凸部761が外筒壁74の内周面に形成された内向きの凸部741を乗り越えて係止することで、端面壁77が内筒壁72の下端の開口部711を密閉した状態で、ノズル本体7aと閉止部材7bとの一体的固定状態を維持し得るようになっている。本実施形態の閉止部材7bに形成された入口孔771が、ノズル本体7aのノズル孔71の容器本体2の内部空間20との連通孔を構成することになる。
前記の固定状態において、入口孔771が第1実施形態の入口部311と同じ位置に配設されるようになっており、これにより、入口孔771の下端を容器本体2の内部空間20に対しより近接して臨む位置、つまり外筒壁74下端と同じレベル位置に近接させるように配置させて、気泡を付着させないようにするという機能上の要求を満足させる一方、外筒壁74下端から突出物の存在をなくして組み付け製造時の取扱性を向上させたり不用意な損傷を防止したりし得るようになっている。
又、前記入口孔771のノズル孔71内に臨む面はノズル孔71内から微小径の入口孔771まで急激に細径化させるために逆円錐形に形成され、又、入口孔771の容器本体2の内部空間20の側に臨む外面側は下向きに尖る円錐状に形成され、気泡の付着を防止して接触しても直ぐに離脱させるようにしている。そして、入口孔771は第1実施形態の入口部311と同様に例えば0.1mm〜0.5mmの微小径の開口径とされ、これにより、合成樹脂成形の製造容易性を考慮しつつ気泡の細径化という機能上の要求を満たすようにしている。
そして、本実施形態では、第1実施形態と同様に、残液が発生することを可及的に抑制又は回避することができるようになる一方、容積膨張に起因する液溢れの不都合を可及的に抑制又は回避することができるようになる。加えて、スクイズ操作により滴下させる滴下量をより少ないもの、つまり必要最小量(例えば25μL)程度に抑制することができる上に、合成樹脂成形による製造の確実化や製造コストの低減化を得ることができるようになる。すなわち、容器本体2の内部空間20の側の微小径の入口孔771を閉止部材7bの側に形成する一方、ノズル本体7aのノズル孔71の開口部711を大きく開放して出口部712を微小径に形成するようにしているため、出口部712の開口径を必要最小量の滴下量に相当するものに容易に設定することができ、スクイズ操作による滴下量を、眼球に滴下した後の溢れ量を除き眼球に対し純粋に供給するための必要最小量だけにすることができる。その上に、第1実施形態等の如くノズル本体3aの側に微小径の入口部311を形成する場合の長いコアピン型(例えば図6の符号55参照)と比べ、閉止部材7bの側に微小径の入口孔771を形成する場合におけるコアピン型の細径ピンの耐久性を格段に増大させることができ、これにより、製造の確実化や製造コストの低減化も図ることができるようになる。
<第4実施形態>
図11は第4実施形態の点眼ノズル構造を適用した点眼ノズル8を示す。この点眼ノズル8は、第3実施形態のノズル本体7aに対し、第3実施形態の閉止部材7bとは異なる埋め込み部材7cを下側から組み合わせたものである。その他の構成は第3実施形態のものと同じであるため、第3実施形態と同じ構成要素には第3実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略し、異なる点について主として説明する。
埋め込み部材7cは、ノズル本体7aが有するドーナッツ環状の空間75の内面形状に相当する外面形状を備え、前記空間75に対し嵌め込まれることにより、その空間75の全てを埋め込んで空間75の存在をなくすようにしたものである。すなわち、埋め込み部材7cは、前記ドーナッツ環状の空間75の内面形状に相当する外面形状を備えた筒状壁76aと、端面壁77とを備えたものであり、筒状壁76aがドーナッツ環状の空間75の下側の開口から図面の上向きに嵌め込まれ、凸部761が外筒壁74の凸部741を乗り越えて係止することで、筒状壁76aがドーナッツ環状の空間75内に充填された状態となる一方、端面壁77が内筒壁72の下端の開口部711を密閉した状態で、ノズル本体7aと埋め込み部材7cとの一体的固定状態が維持されるようになっている。
<第5実施形態>
図12(a)は、本発明の第5実施形態に係る点眼ノズル構造を適用した点眼容器を示す。この点眼容器は、第1実施形態と同様の容器本体2と、この容器本体2の口部21に対し圧入気味に挿入されることにより組み付けられた点眼ノズル9と、前記口部21の外周にねじ込まれて前記点眼ノズル9を保護する保護キャップ22とからなる。以下、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略し、異なる点について主として説明する。
前記点眼ノズル9は、ノズル本体9aと、このノズル本体9aに上側から組み付けられた閉止部材9bとからなり、両者は例えば低密度ポリエチレン等を用いた合成樹脂成形により形成される。ノズル本体9aは、ノズル孔91が内部に形成された内筒壁92と、この内筒壁92の下端から外周側に延びる下端連結壁93と、下端連結壁93の外周側位置から上方に延びて内筒壁92の下半部92bをその外周側から囲む外筒壁94と、外筒壁94の上端から外周側に突出する鍔部95とを一体に備えている。前記内筒壁92は、鍔部95位置を境にして上半部92aが口部21の上方外部に配置され、下半部92bが前記外筒壁94の内側位置で口部21内に配置されるようになっている。そして、内筒壁92内のノズル孔91が上下に延びて貫通している。又、鍔部95は、口部21の上面に対応する形状に形成され、組み付け状態では口部21の上面に当接するようになっている。さらに、前記外筒壁94は、その外周面が口部21の内周面に対し圧入又は圧入気味に気密に挿入されて口部21を締め切った状態で組み付けられるようになっている。以上のノズル孔91、内筒壁92、下端連結壁93、外筒壁94及び鍔部95は、本実施形態においては中心軸Xに対し同軸配置で形成されている。
前記ノズル孔91は、内筒壁92の下端位置において容器本体2の内部空間20側に微小径の入口部911で開口し、内筒壁92の上端位置において外部に臨んで出口部912が開口している。ノズル孔91、出口部912の開口径の設定、前記入口部911の開口径の設定、形成位置、内面側の内径急変部位、外面側の形状等は、第1実施形態のノズル孔31、出口部312、入口部311のそれと同じである。
閉止部材9bは、ノズル本体9aの内筒壁92と外筒壁94との間に上側(外部空間側)に開口することになるドーナッツ環状の空間96に対し、上側から嵌め込むことでドーナッツ環状の空間96の上側開口を閉止し得るように形状設定された閉止リングにより構成されている。
そして、本実施形態では、点眼操作の際に点眼容器を倒立状態にしたとしても、ドーナッツ環状の空間96の内部空間20の側が下端連結壁93により閉止されているため、内部空間20内の薬液が内に入り込むことはなく、従来の下側に開口したドーナッツ環状の空間を有する二重筒構造の点眼ノズル構造の場合(例えば図16参照)の如く残液が発生することを可及的に抑制又は回避することができるようになる。しかも、内筒壁92により形成されるノズル孔91が外筒壁94の下端部まで延びているため、かかるノズル孔91内に一定以上の容積を確保することができ、冷蔵庫保管の後に使用時には外部に取り出されて常温外気に触れたとしても温度差に起因する容積膨張の影響を前記のノズル孔91内の空間により緩和させることができるようになる。これにより、従来の一重筒構造の点眼ノズル構造の場合(例えば図18参照)に比して、容積膨張に起因する液溢れの不都合を可及的に抑制又は回避することができるようになる。さらに、点眼操作の後に再び正立状態に戻した際に、出口部912付近に薬液の粒が付着していたとしても、ドーナッツ環状の空間96の上側開口(外部側に向いた開口)が閉止部材9bにより閉止されているため、前記の付着していた薬液がドーナッツ環状の空間96内に落下して溜まる等の不都合の発生を回避することができるようになる。
なお、前記の閉止部材9bに代えて、図12(b)に示すような埋め込み部材9cをノズル本体9aと組み合わせるようにしてもよい。この埋め込み部材9cは、ドーナッツ環状の空間96の内面形状とほぼ合致する外面形状を有する筒状壁を有するように構成され、ドーナッツ環状の空間96に対し上側開口から下に内嵌することでその空間96の全てを埋め尽くした状態になるようになっている。
<第6実施形態>
図13(a)は、本発明の第6実施形態に係る点眼ノズル構造を適用した点眼容器を示す。この点眼容器は、第1実施形態と同様の容器本体2と、この容器本体2の口部21に対し圧入気味に挿入されることにより組み付けられた点眼ノズル10と、前記口部21の外周にねじ込まれて前記点眼ノズル10を保護する保護キャップ22とからなる。以下、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略し、異なる点について主として説明する。
前記点眼ノズル10は、図13(b)や(c)にも示すように、第5実施形態のノズル本体9aと同様構成のノズル本体10aの鍔部95の上端外周位置から連続して複数の分割片10b,10b,…を一体に形成したものである。各分割片10bは、点眼ノズル10の成形時には前記の鍔部95から上方に向けて突出するように形成され、点眼容器に対し組み付ける際には内周側にほぼ90度分折り曲げることでドーナッツ環状の空間96の上側開口を閉止し得るようになっている。図13(b)や(c)には、その右半分に成形時の上向きに突出した状態を示し、左半分に組み付ける際の折り曲げた状態を示している。前記の各分割片10bにより閉止部材が構成される。
本実施形態の場合、第5実施形態の場合と同様に、下端連結壁93の存在により残液が発生することを可及的に抑制又は回避することができ、又、ノズル孔91の存在により温度差に起因する容積膨張の影響を緩和させて容積膨張に起因する液溢れの不都合を可及的に抑制又は回避することができ、さらに、点眼操作の後に再び正立状態に戻した際に、出口部912付近に薬液の粒が付着していたとしても、ドーナッツ環状の空間96の上側開口が各分割片10bにより閉止されているため、前記の付着していた薬液がドーナッツ環状の空間96内に落下して溜まる等の不都合の発生を回避することができるようになる。
<第7実施形態>
図14(a)は、本発明の第7実施形態に係る点眼ノズル構造を適用した点眼容器を示す。この点眼容器は、第1実施形態と同様の容器本体2と、この容器本体2の口部21に対し圧入気味に挿入されることにより組み付けられた点眼ノズル11と、前記口部21の外周にねじ込まれて前記点眼ノズル4を保護する保護キャップ22とからなる。以下、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略し、異なる点について主として説明する。
前記点眼ノズル11は、第6実施形態の分割片10bの形状を変更した分割片11bを採用して、より強固に閉止した状態を維持し得るようにしたものである。すなわち、点眼ノズル11は、図14(b)や(c)にも示すように、第5実施形態のノズル本体9aと同様構成のノズル本体11aの鍔部95の上端外周位置から連続して複数の分割片11b,11b,…を一体に形成したものである。各分割片11bは、点眼ノズル11の成形時には前記の鍔部95から外周側に向けて突出するように形成され、点眼容器に対し組み付ける際には内周側にほぼ180度分折り曲げることでドーナッツ環状の空間96の上側開口を閉止し得るようになっている。図14(b)や(c)には、その右半分に成形時の上向きに突出した状態を示し、左半分に組み付ける際の折り曲げた状態を示している。前記の各分割片11bにより閉止部材が構成される。
本実施形態の場合、第5実施形態の場合と同様に、下端連結壁93の存在により残液が発生することを可及的に抑制又は回避することができ、又、ノズル孔91の存在により温度差に起因する容積膨張の影響を緩和させて容積膨張に起因する液溢れの不都合を可及的に抑制又は回避することができ、さらに、点眼操作の後に再び正立状態に戻した際に、出口部912付近に薬液の粒が付着していたとしても、ドーナッツ環状の空間96の上側開口が各分割片11bにより閉止されているため、前記の付着していた薬液がドーナッツ環状の空間96内に落下して溜まる等の不都合の発生を回避することができるようになる。しかも、ドーナッツ環状の空間96の各分割片11bによる閉止状態を、第6実施形態の場合よりも強固に維持させることができるようになる。
<参考形態>
図15は、参考形態に係る点眼ノズル構造を適用した点眼容器を示す。この点眼容器は、第1実施形態と同様の容器本体2と、この容器本体2の口部21に対し圧入気味に挿入されることにより組み付けられた点眼ノズル12と、前記口部21の外周にねじ込まれて前記点眼ノズル12を保護する保護キャップ22とからなる。以下、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略し、異なる点について主として説明する。
前記点眼ノズル12は、ノズル本体12aと、このノズル本体12aに下側から組み付けられた閉止部材12bとからなり、両者は例えば低密度ポリエチレン等を用いた合成樹脂成形により形成される。ノズル本体12aは、先端の出口部120が微小径に絞られたノズル孔121が内部に形成された上向き筒壁122と、この上向き筒壁122の下端から外周側に延びて容器本体2の口部21の上端面に当接する鍔部123と、この鍔部123から下方に突出してその外周面が口部21の内周面に対し圧入又は圧入気味に気密に挿入可能に形成された下向き筒壁124とを一体に備えている。要するに筒壁の上下方向中間位置に外周側に突出した鍔部を備え、鍔部から下側部分の筒壁が口部の内周面に内嵌され、その下側部分の筒壁の内周面に対し下側から閉止部材が内嵌されている、と言えるものである。
閉止部材12bは、下向き筒壁124の下端開口から内周面に対し上向きに内嵌されることにより係止される筒状壁部125と、筒状壁部125の下端開口を閉止する端面壁部126とを備えたものである。筒状壁部125は、下向き筒壁124の下端位置から鍔部123と対応する位置まで延びる長さと、その内周面が上向き筒壁122のノズル孔121とほぼ同じ内径を有するように設定されており、その内孔が前記のノズル孔121と連続して連通するノズル孔127を構成するようになっている。そして、端面壁126にはノズル孔127に連通する入口孔128が貫通形成されている。そして、筒状壁125が下向き筒壁124の下側の開口から図面の上向きに嵌め込まれて係止することで、端面壁126が下向き筒壁124の下端の開口を密閉した状態で、ノズル本体12aと閉止部材12bとの一体的固定状態を維持し得るようになっている。
そして、この参考形態では、点眼操作の際に点眼容器を倒立状態にしたとしても、内部空間20の側が下端連結壁126により閉止されているため、内部空間20内の薬液が入口孔128以外の点眼ノズル12側に入り込むことはなく、従来の下側に開口したドーナッツ環状の空間を有する二重筒構造の点眼ノズル構造の場合(例えば図16参照)の如く残液が発生することを可及的に抑制又は回避することができるようになる。しかも、点眼ノズル12内に形成されるノズル孔121,127により内部に一定以上の容積を確保することができ、冷蔵庫保管の後に使用時には外部に取り出されて常温外気に触れたとしても温度差に起因する容積膨張の影響を前記のノズル孔121,127内の空間により緩和させることができるようになる。これにより、従来の一重筒構造の点眼ノズル構造の場合(例えば図18参照)に比して、容積膨張に起因する液溢れの不都合を可及的に抑制又は回避することができるようになる。