JP5709293B2 - 内燃機関の過給機余剰動力回収装置 - Google Patents

内燃機関の過給機余剰動力回収装置 Download PDF

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Description

本発明は、過給機を備えた内燃機関の過給機余剰動力回収装置に関する。
従来、ディーゼルエンジンやガスエンジンなどの内燃機関では、過給機(ターボチャージャ)により、エンジンの排気ガスによってそのタービンを回転駆動し、タービンにより回転される圧縮機によって給気密度を高めて、エンジンの出力向上を図っている。
しかしながら、このように過給機を取り付けて、排気エネルギの有効利用を図ったとしても、エンジンの高負荷時などには排気エネルギが余剰となり、この余剰排気エネルギを無駄なく利用することが、燃費向上のみならず環境保護の面からも強く要請されている。
このエンジンの余剰排気エネルギを有効利用するものとして、例えば、過給機の圧縮機側にクラッチを介して発電機を連結し、この発電機を過給機によって回転駆動させて発電を行なうものがある(例えば、特許文献1及び2参照)。この場合には、エンジンの余剰排気エネルギを直接電気エネルギに変換し、それを船内設備等に利用している。
しかしながら、このように過給機に発電機を連結して電気エネルギとして利用するだけでは、船内消費電力が少ない場合などには、エンジンの排気エネルギを充分に利用しているとは言えず、エンジンの余剰排気エネルギをすべて有効利用することが、燃費向上のみならず環境保護の面からも急務になっている。
このエンジンの余剰排気エネルギをほぼすべて有効利用することができるものとして、内燃機関の過給機に変速機を介して油圧ポンプを連結し、過給機によって油圧ポンプを回転駆動させて、油圧より余剰排気エネルギを回収するシステムが開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
特に、特許文献3には、内燃機関のクランク軸に油圧ポンプを連結し、この油圧ポンプと過給機に連結された油圧ポンプとを油路より接続し、内燃機関の低負荷時に、クランク軸に連結した油圧ポンプが発生した油圧により過給機側の油圧ポンプを油圧モータとして作動させて回転駆動し、過給機の過給能力を高める発明が記載されている。
実開昭61−200423号公報(図1,図2) 特開2004−346803号公報(図1) 特開2006−242051号公報(図1) 特開2008−111384号公報(図1)
ここで、上述の特許文献3に記載された、内燃機関のクランク軸にさらに油圧ポンプを連結し、この油圧ポンプと過給機に連結された油圧ポンプとを油路より接続し、内燃機関の低負荷時に、クランク軸に連結した油圧ポンプが発生した油圧により過給機側の油圧ポンプを油圧モータとして作動させて回転駆動し、過給機の過給能力を高める発明においては、2つの油圧ポンプによってこの2つの油圧ポンプ間の油圧流量を制御し、それにより過給機側の油圧ポンプの回転数制御を行なうために、クランク軸側又は過給機側の油圧ポンプの少なくとも一方を可変容量型ポンプとする必要がある。
しかしながら、この可変容量型油圧ポンプは、油圧を発生させるためのポンプ本体以外に、油圧の吐出量を変化させるための可変機構部が一体に組み込まれている。したがって、可変容量型油圧ポンプは、固定容量型ポンプと比べてその大きさが極めて大きくなり、また重量も極めて重くなる。例えば、その重量が固定容量型ポンプの2.5倍になる場合もある。
特に、上述の特許文献3に記載された発明においては、一方の油圧ポンプは内燃機関のクランク軸に機械的に連結され、他方の油圧ポンプは内燃機関の過給機に変速機を介して機械的に連結されているから、どちらの油圧ポンプを可変容量型油圧ポンプにするにしても、多数の補機類などが錯綜する内燃機関の周りにおいてその配置が極めて困難になり、かつ上記のように総重量が極めて重くなるという問題がある。また、油圧ポンプを可変容量型とする場合、その可変機構部も吐出量に見合った大きさとなり、油圧ポンプは極めて高価なものとなる。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、内燃機関周りにおいて油圧ポンプの配置が極めて容易になり、しかも大幅な重量軽減を図ることができ、さらに装置の製造コスト低減を図ることができる、内燃機関の過給機余剰動力回収装置を提供することを課題とする。
上述の課題を解決するために、本発明の内燃機関の過給機余剰動力回収装置は、内燃機関の排気ガスにより回転駆動されて内燃機関の給気を過給する過給機と、過給機の回転軸に連結されて過給機と共に回転する固定容量型の第1の油圧ポンプと、内燃機関のクランク軸に連結されてクランク軸と共に回転する固定容量型の第2の油圧ポンプと、第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとを繋ぐ油圧回路と、油圧回路に配設されて第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとの間の相互の油圧の流量調整を行なうと共に内燃機関のクランク軸に連結されてクランク軸と共に回転する可変容量型の第3の油圧ポンプとを備えたことにある。
このように、過給機の回転軸に連結された第1の油圧ポンプと、内燃機関のクランク軸に連結された第2の油圧ポンプとを固定容量型とすることにより、第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプを小型化することができ、内燃機関周りにおいて油圧ポンプの配置が極めて容易になり、しかも大幅な重量軽減が図れる。第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプを固定容量型としたことにより、第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプが安価なものとなり、装置の製造コスト低減を図ることができる。
また、第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとの間の相互の油圧の流量調整は、第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプとは別の、可変容量型からなる第3の油圧ポンプにより行なわれる。この第3の油圧ポンプの役割は、第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとの間の相互の油圧の流量調整であるから、小型の可変容量型油圧ポンプでよい。したがって、コスト的にも極めて有利になる。さらに、第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとは油圧回路、つまり油圧配管のみにより接続されているから、第3の油圧ポンプについては配置の自由度が極めて高く、内燃機関周りにおいて補機類などの取りまわしが容易になる。
これに加えて、可変容量型の第3の油圧ポンプは、内燃機関のクランク軸に連結されてクランク軸と共に回転するから、第3の油圧ポンプを回転駆動させるための動力源を別途設ける必要がなく、第3の油圧ポンプにより油路の油圧の流量を増加させる必要があるときは、内燃機関の動力により第3の油圧ポンプを回転駆動させて油圧の流量を増加させることができる。また、油圧の流量を減少させる必要があるときは、第3の油圧ポンプにより内燃機関のクランク軸を回転駆動させることにより油圧の流量を減少させることができ、このときは過給機の余剰動力を内燃機関の動力としてほぼすべて回収することができる。
上記内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、第3の油圧ポンプの容量可変部に接続されて第3の油圧ポンプの容量を変化させるコントローラをさらに備え、コントローラは、内燃機関の各負荷に応じて第3の油圧ポンプの容量を変化させることが望ましい。
このように、第3の油圧ポンプの容量可変部に接続されるコントローラが、内燃機関の負荷に応じて第3の油圧ポンプの容量を変化させることにより、常に変化する内燃機関の負荷に応じて、第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとの間の相互の油圧の流量調整を最適に行なうことができる。
上記内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、コントローラは、内燃機関の低負荷時には第2の油圧ポンプと第3の油圧ポンプが共働して第1の油圧ポンプを回転駆動させるように第3の油圧ポンプの容量を変化させることが望ましい。
このように、内燃機関の低負荷時には第2の油圧ポンプと第3の油圧ポンプが共働して第1の油圧ポンプを回転駆動させるように第3の油圧ポンプの容量を変化させることにより、排気ガスエネルギが不足する低負荷時においては、この第1の油圧ポンプと連結された過給機の回転力が加勢され、内燃機関に対して最適な過給を行なうことができるようになる。このとき、第1の油圧ポンプは油圧モータとして作動し、第2の油圧ポンプと第3の油圧ポンプは油圧ポンプとして作動する。
上記内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、コントローラは、内燃機関の中負荷時から常用負荷運転近傍までは第1の油圧ポンプと第3の油圧ポンプが共働して第2の油圧ポンプを回転駆動させるように第3の油圧ポンプの容量を変化させることが望ましい。
このように、コントローラが、内燃機関の中負荷時から常用負荷運転近傍までは第1の油圧ポンプと第3の油圧ポンプが共働して、第2の油圧ポンプを回転駆動させるように第3の油圧ポンプの容量を変化させることにより、排気ガスエネルギに余剰が生じ始める中負荷時以上の負荷において、第2の油圧ポンプの回転力を上昇させて、内燃機関のクランク軸に対して加勢を行なうことができ、燃費を向上させることができる。このとき、第1の油圧ポンプと第3の油圧ポンプは油圧ポンプとして作動し、第2の油圧ポンプは油圧モータとして作動する。
上記内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、コントローラは、内燃機関の常用負荷運転近傍から定格負荷運転までは第1の油圧ポンプが第2の油圧ポンプと第3の油圧ポンプを回転駆動させるように第3の油圧ポンプの容量を変化させることが望ましい。
このように、コントローラが、内燃機関の常用負荷運転近傍から定格負荷運転までは、第1の油圧ポンプが第2の油圧ポンプと第3の油圧ポンプを回転駆動させるように第3の油圧ポンプの容量を変化させることにより、過給機に対する排気ガスエネルギがさらに余剰となる常用負荷運転近傍から定格負荷運転までについて、第3の油圧ポンプにより内燃機関のクランク軸を回転駆動させることができ、内燃機関をさらに加勢することができる。すなわち、過給機の余剰動力をほぼすべて内燃機関の動力として回収することができ、燃費を著しく向上させることができる。このとき、第1の油圧ポンプは油圧ポンプとして作動し、第2の油圧ポンプと第3の油圧ポンプは油圧モータとして作動する。
上記内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、コントローラは、内燃機関の燃料噴射を制御することが望ましい。すなわち、上述の第3の油圧ポンプに対するコントローラの制御機能を内燃機関の燃料噴射を制御するコントローラに組み込むことにより、内燃機関の燃料噴射量に基づいて第3の油圧ポンプの容量を最適に制御することができるようになる。また、2つのコントローラを一体にすることにより、システムの簡素化が図れる。
上記内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、油圧回路へタンクから潤滑油を供給する第4の油圧ポンプをさらに備え、第4の油圧ポンプは、第3の油圧ポンプの回転軸に連結されてクランク軸又は第3の油圧ポンプにより回転駆動されることが望ましい。
このように、油圧回路へタンクから潤滑油を供給する第4の油圧ポンプを、第3の油圧ポンプに連結してクランク軸又は第3の油圧ポンプにより回転駆動させることにより、第4の油圧ポンプの動力源を新たに設ける必要がなくなり、かつ、過給機の余剰動力をさらに高いレベルで回収することができるようになる。
本発明の内燃機関の過給機余剰動力回収装置は、内燃機関の排気ガスにより回転駆動されて内燃機関の給気を過給する過給機と、過給機の回転軸に連結されて過給機と共に回転する固定容量型の第1の油圧ポンプと、内燃機関のクランク軸に連結されてクランク軸と共に回転する固定容量型の第2の油圧ポンプと、第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとを繋ぐ油圧回路と、油圧回路に配設されて第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとの間の相互の油圧の流量調整を行なうと共に内燃機関のクランク軸に連結されてクランク軸と共に回転する可変容量型の第3の油圧ポンプとを備える。
したがって、内燃機関周りにおいて油圧ポンプの配置が極めて容易になり、しかも大幅な重量軽減を図ることができ、さらに装置の製造コスト低減を図ることができるという優れた効果を奏する。
本発明の内燃機関の過給機余剰動力回収装置の一例を示すブロック図である。 図1のエンジンの通常運転時の油圧回路の流れを示す回路図である。 図1のエンジンの機関回転数と過給機回転数の関係を示すグラフである。 図1のエンジンの各負荷に対する第1の油圧ポンプの作動モードを示す図である。 図1のエンジンの逆転時の油圧回路の流れを示す回路図である。 図1のエンジンの機関負荷と掃気圧力との関係を示すグラフである。
本発明に係る内燃機関の過給機余剰動力回収装置を実施するための形態を、図1ないし図6を参照して詳細に説明する。
図1の符号1は、一例としての、船舶に搭載される推進用の2サイクルディーゼルエンジン(内燃機関)を示し、このエンジン1は、その排気ガスにより回転駆動されて給気をエンジン1へ過給する過給機5を備えている。
過給機5は圧縮機6とタービン7とからなり、圧縮機6とタービン7は回転軸8で連結されている。エンジン1の排気ガスによりタービン7が回転駆動され、タービン7によって圧縮機6が回転する。これによりエンジンの給気密度が高められ、エンジン出力が向上する。
なお、過給機5は、必ずしもその段数が単段のものに限定されるものではない。また、エンジン1は船舶用エンジンに限定されず、また、形式も2サイクルディーゼルエンジンに限定されるものではなく、4サイクルディーゼルエンジンや、天然ガス、都市ガス等を燃料とするガスエンジン、他のすべての形式の内燃機関が含まれる。
図1に示すように、過給機5の回転軸8に変速機9が連結され、変速機9に固定容量型の油圧ポンプ(第1の油圧ポンプ)10が連結されている。エンジン1のクランク軸2の一端2aに変速機3が連結され、変速機3に固定容量型の油圧ポンプ(第2の油圧ポンプ)11が連結されている。勿論、変速機3を設けずに油圧ポンプ11をエンジン1のクランク軸2に直結することもできる。
上述の2つの油圧ポンプ10,11は、油圧回路20の中に組み込まれる。油圧ポンプ10の出力側と油圧ポンプ11は油路21により、油圧ポンプ10の入力側と油圧ポンプ11は油路22によりそれぞれ接続されている。
2つの油路21,22の間に、小型の可変容量型の油圧ポンプ(第3の油圧ポンプ)12が油路23,24により接続されている。油路23は油圧ポンプ12と油路21とを接続し、油路24は油圧ポンプ12と油路22とを接続する。このように、油圧ポンプ12は、油圧ポンプ10と油圧ポンプ11とにそれぞれ並列に接続されている。
これらの油圧ポンプ10,11,12は、ポンプ軸より回転駆動されればそれぞれ油圧ポンプとして作動し、油圧により回転駆動されればそれぞれ油圧モータとして作動するもので、名称の簡略化のため本発明では単に油圧ポンプとしている。
エンジン1のクランク軸2の他端2bに変速機13が連結され、変速機13に可変容量型の油圧ポンプ(第3の油圧ポンプ)12が連結されている。勿論、変速機13を設けずに油圧ポンプ12をエンジン1のクランク軸2に直結することもできる。
上述の油圧ポンプ12の容量可変部の可変機構としては、例えば、斜板式や斜軸式など様々なものがある。エンジン1の燃料噴射量を制御するコントローラ15が配設され、コントローラ15は、油圧ポンプ12の可変機構部と電気的に接続されてこれを制御し、油圧ポンプ12の容量を変化させる。
図2に示すように、2つの油路21,22の間に、かつ、油圧ポンプ11と12とそれぞれ並列に、油圧操作式切替弁25、上述のコントローラ15に制御される比例電磁式安全弁26、安全弁27、上述のコントローラ15に制御される電磁式開閉弁28、対向するように相互に直列に接続された2つの逆止弁29,30が、油圧ポンプ12の側からこの順に接続されている。
上述の油圧ポンプ12には冷却ポンプ35が連結され、この油圧ポンプ12又は油圧ポンプ12が連結されているエンジン1のクランク軸2により回転駆動される。冷却ポンプ35は、フィルタ36を介して2つの逆止弁29,30の間に接続される。なお、冷却ポンプ35を油圧ポンプ12に連結しないで別置きとし、図示しない小型の電動モータを取り付けてこれにより回転駆動させることもできる。
また、2つの逆止弁29,30とタンク34との間には、油路37を介して冷却ポンプ用安全弁32及び熱交換器33が配設される。油圧操作式切替弁25の出口は、安全弁31、油路37、熱交換器33を介してタンク34に接続されている。
次に、本発明の内燃機関の過給機余剰動力回収装置の作動について説明する。図2に示すように、エンジン1の通常運転時において、図1に示すコントローラ15は、上述の電磁式開閉弁28を閉弁させている。したがって、油圧回路20においては、2つの油圧ポンプ11,12と、2つの油路21,22とによる一方向の油圧の循環路が形成されている。
ところで、エンジン1の始動を含む低負荷時から機関負荷が40〜50%の中負荷時までは、エンジン1の排気ガス量が不足して、過給機5だけではエンジン1の負荷に対して充分な過給を行なうことができない。このため、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置においては、低負荷時から中負荷時まで、エンジン1のクランク軸2に連結された油圧ポンプ11が発生させた油圧により、過給機5に連結された油圧ポンプ10を回転駆動して、過給機5に対して回転力の加勢を行わせる。これにより、過給機5は排気ガスだけによる回転力からさらに増速され、エンジン1に対してより多くの過給を行なうことができる。
一方、図3は、エンジン1と過給機5の回転数の関係を示し、実線は、油圧ポンプ12が装備されていない場合の油圧ポンプ10と油圧ポンプ11の仮想作動線を示している。油圧ポンプ10と油圧ポンプ11はともに固定容量型であるため、作動線はぼほ直線である。また、破線は、油圧ポンプ12を装備した場合の、エンジン1のそれぞれの機関回転速度数における実働の過給機5の回転数を示している。
図3のA点は、実働状態で油圧ポンプ12の調整流量がゼロの状態を表しており、A点では、実働状態で2つの固定容量型の油圧ポンプ10,11の流量が等しい。図3に示すように、始動を含む低負荷からA点までは、油圧ポンプ12はエンジン1のクランク軸2により回転駆動され、A点から定格負荷運転までは、油圧ポンプ12はエンジン1のクランク軸2を油圧駆動する。このエンジン1においては、A点は機関負荷が75〜85%の常用負荷運転近傍に設定される。なお、A点を必ずしもこの常用負荷運転近傍に設定する必要がないことは勿論である。
ここで、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置においては、図1に示したエンジン1の燃料噴射量を制御するコントローラ15が、可変容量型の油圧ポンプ12の容量を変化させて、エンジン1のクランク軸2により油圧ポンプ12を回転駆動できるようにし、始動を含む低負荷時には、過給機5に対して2つの油圧ポンプ11,12によって必要な回転力の加勢を行わせる。すなわち、図4に示すように、油圧ポンプ10は、低負荷時には油圧モータとして作動する。
図2の油圧回路20において、冷却ポンプ35は、油圧ポンプ12を介してエンジン1のクランク軸2により回転駆動されて、タンク34内の作動油を吸い上げて、冷却された作動油をフィルタ36、2つの逆止弁29,30を介して油路21,22へ供給する。2つの逆止弁29,30から供給された作動油の油圧が過大のときは、潤滑油は冷却ポンプ用安全弁32、熱交換器33を介して再びタンク34に戻される。比例電磁式安全弁26と安全弁27は、油路21,22の一方の圧力が高まったときに開弁し、回路全体の過負荷を防止する。また、油圧操作式切替弁25と安全弁31は、作動油を油路37、熱交換器33を介して冷却した後にタンク34へ戻す。
また、エンジン1の中負荷領域を過ぎると、エンジン1の排気ガスについて過給機5に必要とされる排気ガス量に対して余剰が生じ始める。このとき、図1に示したコントローラ15は、可変容量型の油圧ポンプ12の容量を変化させて、過給機5の回転力で油圧ポンプ10が吐出した油圧により、クランク軸2に連結された油圧ポンプ11を回転駆動させる。
すなわち、図4に示すように、油圧ポンプ10は、40〜50%負荷以上になると油圧ポンプとして作動し、その作動モードが切り替わる。この一方、図3に示すように、油圧ポンプ12は、常用負荷運転近傍まではエンジン1のクランク軸2により回転駆動されつづけ、その吐出油圧によりクランク軸2に連結された油圧ポンプ11の回転をさらに加勢する。なお、油圧ポンプ10のモータモードからポンプモードへの切替時期は、必ずしも本エンジン1のような40〜50%負荷に限定されるものではない。
図3に示すように、エンジン1の常用負荷運転近傍(図3のA点)から高負荷の定格負荷運転までは、エンジン1の排気ガスが過給機5に必要とされる排気ガス量に対してさらに余剰となる。このとき、図1に示したコントローラ15は、可変容量型の油圧ポンプ12の容量を変化させて、過給機5の回転力で油圧ポンプ10が吐出した油圧により、2つの油圧ポンプ11,12を回転駆動させる。
すなわち、油圧ポンプ11はクランク軸2を介してエンジン1を補助駆動する一方、油圧ポンプ12は油圧モータとして作動して、クランク軸2を介してエンジン1をさらに補助駆動する。これにより、過給機5の余剰動力をエンジン1の動力としてほぼすべて回収することができる。
次に、船舶のクラッシュアスターン時、つまりエンジン1が逆回転した時の、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置の作動について説明する。
図5に示すように、エンジン1の逆回転時において、図1に示すコントローラ15は、電磁式開閉弁28を開弁させる。したがって、油圧回路20においては、油圧ポンプ10と電磁式開閉弁28との間を循環する油圧回路と、油圧ポンプ11と電磁式開閉弁28との間を循環する油圧回路が形成される。この場合、油圧ポンプ10と電磁式開閉弁28との間を循環する油圧回路において、油圧ポンプ11は無負荷運転状態となる一方、油圧ポンプ10は油圧ポンプ11の作動から切り離される。
ここで、エンジン1の排気ガスが過給機5に必要とされる排気ガスエネルギに対して余剰となるときは、上述の通常運転時と同様に、コントローラ15は、可変容量型の油圧ポンプ12の容量を変化させて、過給機5の回転力で油圧ポンプ10が吐出した油圧により2つの油圧ポンプ11,12を回転駆動させる。油圧ポンプ11はクランク軸2を介してエンジン1を補助駆動する一方、油圧ポンプ12もクランク軸2を介してエンジン1を補助駆動し、過給機5の余剰動力をエンジン1の動力としてほぼすべて回収する。
図6において、実線は、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置を装備した場合のエンジン1の機関負荷と掃気圧力との関係を示し、破線は、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置を装備していない場合のエンジン1の機関負荷と掃気圧力との関係を仮想曲線で示す。
図6から明らかなように、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置を装備したエンジン1においては、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置を装備していないエンジン1に比べて、すべての機関負荷領域において掃気圧力が低減されている。
この一方、このような過給機余剰動力回収装置を装備していないエンジンでは、過給機で消費しきれなかった余剰排気ガスを、そのままバイパス弁等を通して大気に排出し廃棄している。しかしながら、本内燃機関の過給機余剰動力回収装置を装備したエンジン1の場合には、その低減された掃気圧力の分だけ油圧ポンプ10が油圧を発生させたものであり、余剰排気ガスエネルギが有効に利用されたことを示す。
本内燃機関の過給機余剰動力回収装置によれば、過給機5の回転軸8に連結された油圧ポンプ10と、エンジン1のクランク軸2に連結された油圧ポンプ11とを固定容量型とすることにより、油圧ポンプ10及び油圧ポンプ11を小型化することができ、エンジン1の周りにおいて他の補機類等の配置が極めて容易になり、しかも大幅な重量軽減が図れる。また、安価な固定容量型ポンプの導入により、装置の製造コスト低減を図ることができる。
また、油圧ポンプ10と油圧ポンプ11との間の相互の油圧の流量調整は、油圧ポンプ10,11とは別の可変容量型からなる油圧ポンプ12により行なわれる。この油圧ポンプ12は、2つの固定容量型の油圧ポンプ10,11の間の相互の油圧の流量調整だけを行なうから、小型の可変容量型油圧ポンプで済み、従来の大型の可変容量型油圧ポンプに比べて、コスト的にも極めて有利である。
さらに、2つの固定容量型油圧ポンプ10,11は油圧配管のみにより接続されているから、可変容量型ポンプ12については配置の自由度が極めて高く、エンジン1の周りの補機類などの取りまわしが容易になる。
また、可変容量型油圧ポンプ12は、エンジン1のクランク軸2に連結されてクランク軸2と共に回転するから、油圧ポンプ12を回転駆動させるための動力源を別途設ける必要がない。また、油圧ポンプ12により油路の油圧の流量を増加させる必要があるときは、エンジン1の動力により油圧ポンプ12を回転駆動させて油圧の流量を増加させることができる。さらに、油圧の流量を減少させる必要があるときは、油圧ポンプ12によりエンジン1のクランク軸2を回転駆動させることによりそれが可能になると共に、過給機5の余剰動力をエンジン1の動力としてほぼすべて回収することができる。
さらに、油圧ポンプ12の容量可変部に接続されて油圧ポンプ12の容量を変化させるコントローラ15を備え、このコントローラ15は、エンジン1の負荷に応じて油圧ポンプ12の容量を変化させるから、常に変化するエンジン1の負荷に応じて、2つの固定容量型油圧ポンプ10,11の間の相互の油圧の流量調整を最適に行なうことができる。
また、コントローラ15は、エンジン1の始動を含む低負荷時から中負荷時までは、いずれもエンジン1のクランク軸2により回転駆動される2つの油圧ポンプ11,12が共働して、過給機5側の油圧ポンプ10を回転駆動させるように油圧ポンプ12の容量を変化させる。
このため、排気ガスエネルギが不足する始動を含む低負荷時から中負荷時までについて、2つの油圧ポンプ11,12により過給機5側の油圧ポンプ10の回転力が加勢されるから、エンジン1に対して最適な過給を行なうことができる。
また、コントローラ15は、エンジン1の中負荷時から常用負荷運転近傍までは2つの油圧ポンプ10,12が共働してクランク軸2に連結された油圧ポンプ11を回転駆動させるように、油圧ポンプ12の容量を変化させるから、排気ガスエネルギに余剰が生じ始める中負荷領域以上の負荷において、油圧ポンプ11の回転力を上昇させて、エンジン1のクランク軸2に対して加勢を行なうことができ、燃費を向上させることができる。
さらに、コントローラ15は、エンジン1の常用負荷運転近傍から定格負荷運転までは、過給機5側の油圧ポンプ10がエンジン1のクランク軸2に連結された油圧ポンプ11と可変容量型油圧ポンプ12を回転駆動するように、この可変容量型ポンプ12の容量を変化させる。
したがって、排気ガスエネルギがさらに余剰となる常用負荷運転近傍から定格負荷運転までについて、油圧ポンプ12によりエンジン1のクランク軸2をさらに加勢して、過給機5の余剰動力をほぼすべてエンジン1の動力として回収することができる。
また、コントローラ15は、エンジン1の燃料噴射を制御するものであるから、エンジン1の燃料噴射量に基づいて可変容量型の油圧ポンプ12の容量を最適に制御することができる。さらに、一つのコントローラ15でエンジン1の燃料噴射と油圧ポンプ12の制御を行うことにより、システムの簡素化が図れる。
また、油圧回路20へタンク34から潤滑油を供給する冷却用油圧ポンプ35が、可変容量型の油圧ポンプ12の回転軸に連結されて、油圧ポンプ12又はエンジン1のクランク軸2により回転駆動されるから、油圧ポンプ35の動力源を新たに配ける必要がなくなり、かつ、過給機5の余剰動力をさらに高いレベルで回収することができる。
なお、上述の内燃機関の過給機余剰動力回収装置は一例にすぎず、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の内燃機関の過給機余剰動力回収装置は、過給機を有する内燃機関であれば必ずしも上述の船舶に搭載される推進用の2サイクルディーゼルエンジンに限定して利用されるものではなく、あらゆる種類の内燃機関に、そしてあらゆる形式の内燃機関にも広く利用することができる。
1 エンジン
2 クランク軸
2a クランク軸の一端
2b クランク軸の他端
3 変速機
5 過給機
6 圧縮機
7 タービン
8 回転軸
9 変速機
10 油圧ポンプ(第1の油圧ポンプ)
11 油圧ポンプ(第2の油圧ポンプ)
12 油圧ポンプ(第3の油圧ポンプ)
13 変速機
15 コントローラ
20 油圧回路
21,22,23,24 油路
25 切替弁
26,27 安全弁
28 開閉弁
29,30 逆止弁
31 安全弁
32 安全弁
33 熱交換器
34 タンク
35 冷却用油圧ポンプ(第4のポンプ)
36 フィルタ
37 油路

Claims (4)

  1. 船舶に搭載される推進用の内燃機関(1)と、前記内燃機関の排気ガスにより回転駆動されて前記内燃機関の給気を過給する過給機(5)と、前記過給機の回転軸に連結されて前記過給機と共に回転する固定容量型の第1の油圧ポンプ(10)と、前記内燃機関のクランク軸(2)に連結されて前記クランク軸と共に回転する固定容量型の第2の油圧ポンプ(11)と、前記第1の油圧ポンプと前記第2の油圧ポンプとを繋ぐ油圧回路(20)とを備え、前記第1の油圧ポンプの出力側と前記第2の油圧ポンプの入力側は第1の油路(21)により接続されると共に前記第1の油圧ポンプの入力側と前記第2の油圧ポンプの出力側は第2の油路(22)により接続され、前記第1の油路と前記第2の油路との間に可変容量型の第3の油圧ポンプ(12)が油路(23,24)により接続され、前記第3の油圧ポンプは、前記第1の油圧ポンプと前記第2の油圧ポンプとの間の相互の油圧の流量調整を行なうと共に前記内燃機関の前記クランク軸に連結されて前記クランク軸と共に回転する内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、前記第3の油圧ポンプの容量可変部に接続されて前記第3の油圧ポンプの容量を変化させるコントローラ(15)をさらに備え、前記コントローラは、前記内燃機関の低負荷時には前記第2の油圧ポンプと前記第3の油圧ポンプが共働して前記第1の油圧ポンプを回転駆動させるように前記第3の油圧ポンプの容量を変化させ、かつ、前記内燃機関の中負荷時から常用負荷運転近傍までは前記第1の油圧ポンプと前記第3の油圧ポンプが共働して前記第2の油圧ポンプを回転駆動させるように前記第3の油圧ポンプの容量を変化させることを特徴とする内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
  2. 前記コントローラ(15)は、前記内燃機関(1)の常用負荷運転近傍から定格負荷運転までは前記第1の油圧ポンプ(10)が前記第2の油圧ポンプ(11)と前記第3の油圧ポンプ(12)を回転駆動させるように前記第3の油圧ポンプの容量を変化させることを特徴とする請求項に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
  3. 前記コントローラ(15)は、前記内燃機関の燃料噴射を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
  4. 前記油圧回路(20)へタンク(34)から潤滑油を供給する第4の油圧ポンプ(35)をさらに備え、前記第4の油圧ポンプは、前記第3の油圧ポンプ(12)の回転軸に連結されて前記クランク軸(2)又は前記第3の油圧ポンプにより回転駆動されることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
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