JP5709141B2 - 人体腹部の臍位における脂肪量を推定する方法及び評価装置 - Google Patents

人体腹部の臍位における脂肪量を推定する方法及び評価装置 Download PDF

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Description

本発明は、被験者の体脂肪を測定する方法及び評価装置に関し、特に、人体腹部の臍位における脂肪量を評価する方法に関する。
肥満を治療するクリニック(診療)が知られ、そこでは患者に食事や運動などの指導を行っている。食事制限や運動は患者にとってつらい部分もあることなので、患者がモチベーションを維持できるように指導することも肥満治療としては大変大事なことである。そこで、治療の効果を目に見える形で患者に提示し、減量が効果的に進んでいることを患者にも実感させることができれば、それがやる気を維持する一番の要因になると考えられる。また、当然のことながら、医学的根拠に基づいた肥満治療を的確に行うにあたっては、治療の効果を正確に把握するためのデータが必要になる。
減量効果を示すデータを取得するにあたり、最も単純な方法として体重計測が考えられる。体重計測は簡便に行えるので、毎日、定期的に行うことができ、体重が減っていれば治療の効果が出ていると考えられるかもしれない。しかしながら、体重の計測値は、計測の前に食べ物や飲料を摂取する程度のことで大きく変動してしまう。また、脂肪が減って筋肉が増えていれば、かえって体重が増すこともあり、体重の増減だけで肥満が解消されているかどうかは単純には判断できない。このような意味づけが曖昧な数値を根拠に医学的な肥満治療を行うことは適切ではなく、患者にとってみても、的確に治療の効果を反映しない計測値を見ても治療を継続する動機づけにはなりにくい。
患者の脂肪量の増減を最も正確に計測するには、例えばCTスキャン(Computed Tomography、コンピュータ断層撮影)を用いることが考えられる。しかし、CTスキャンは、放射線被曝量がやや高く、患者の体に与える影響が大きい。したがって、CTスキャンを行える頻度には自ずと制限があり、例えばCTスキャンを毎日や毎週撮るなどということはできない。
また、CTスキャンを撮るには高いコストがかかるという問題もある。
体の脂肪量を評価する計測機器として、生体インピーダンス法を用いた体脂肪計がある(例えば、特許文献1:特開2005−152061号公報、特許文献2:特開2011−25071号公報、特許文献3:特開2009−261435号公報)。生体インピーダンス法を用いた体脂肪計では、手や足の裏に電極を接触させ、電極から生体に電圧を印加する。そして、生体のインピーダンスを計測し、この計測結果から所定のアルゴリズムで脂肪量を推定する。簡便な計測作業で脂肪量を求められるので、肥満治療の指標としては有効であるように考えられる。
特開2005−152061号公報 特開2011−25071号公報 特開2009−261435号公報
J.A. Harris and F.G. Benedict: A Biometric Study of Basal Metabolism in man, The Carnegie Institution of Washington, (1919) 横山真太郎: 生体内熱移動現象, 北海道大学図書刊行会, (1993) C.D. Murray: The Physiological Principle of Minimum Work: I. The Vascular System and the Cost of Blood Volume, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, (1926), Vol.12,No.3, pp207-214
しかしながら、生体インピーダンス法による体脂肪測定というのは、やはり、正確な測定には不向きであることが知られている。例えば、生体インピーダンス法では、電流がどのような経路をたどったのか把握できないので、どの部位を計測しているのかも分からないことになる。そして、電流が流れる経路によってインピーダンスの測定値自体が変わってきてしまうので、このようなインピーダンス計測値をどれほど補正したとしても、正しく脂肪量の推定を行うことには限界がある。
本発明の目的は、簡便かつ低コストでありながら、正確に生体の脂肪量を求められる脂肪量評価方法及び評価装置を提供することにある。
本発明にかかる脂肪量推定方法は、
測定対象者の皮膚表面温度を測定する測定工程と、
皮膚表面温度に基づいて皮膚表面温度勾配を求める工程と、
予め体組織が分かっているサンプルデータに対し、測定対象者の皮膚表面温度勾配を拘束条件とする熱伝導解析を行って皮膚表面温度分布を求める演算工程と、
演算工程で求められた皮膚表面温度分布を測定対象者の皮膚表面温度分布と対比する対比工程と、
対比工程において両者が一致しない場合には、サンプルの体組織を調整する調整工程と、を備え、
演算工程で求められた皮膚表面温度分布が測定対象者の皮膚表面温度分布に合致するまで調整工程と演算工程とを繰り返す、ことを特徴とするものである。
本発明にかかる脂肪量評価装置は、
測定対象者の皮膚表面温度を測定する測定手段と、
皮膚表面温度に基づいて皮膚表面温度勾配を求める第1演算手段と、
予め体組織が分かっているサンプルデータに対し、第1演算手段で算出された皮膚表面温度勾配を拘束条件とする熱伝導解析を行って皮膚表面温度分布を求める第2演算手段と、
第2演算手段で求められた皮膚表面温度分布を測定対象者の皮膚表面温度分布と対比する対比手段と、
対比手段において両者が一致しない場合には、サンプルの体組織を調整する調整手段と、を備え、
皮膚表面温度分布が測定対象者の皮膚表面温度分布に合致するまで、調整手段がサンプルの体組織を調整する工程と、第2演算手段が皮膚表面の温度分布を算出する工程と、を繰り返すことを特徴とするものである。
本発明によれば、簡便かつ低コストでありながら、正確に生体の脂肪量を求められる脂肪量評価方法及び評価装置を提供することができる。
簡易的に作成した臍位の体組成モデルを示す図である。 簡易的に作成した臍位の体組成モデルを示す図である。 モデルに対して求められた温度分布を示す図である。 モデルに対して求められた温度分布を示す図である。 臍位モデルCT画像から作成した臍位のモデルを示す図である。 臍位モデルCT画像から作成した臍位のモデルを示す図である。 サーモグラフィ計測の結果を示す図である。 サーモグラフィ計測の結果を示す図である。 FRONTからBACKに至る左半身に沿った皮膚表面温度分布を示したグラフである。 二次元定常熱伝導方程式(4)によって求められた温度分布および熱流束ベクトルを示す図である。 二次元定常熱伝導方程式(4)によって求められた温度分布および熱流束ベクトルを示す図である。 実施の形態1にかかる処理の流れを示すフローチャートである。 有限体積法で、計算領域をセルあるいはコントロール・ボリューム(検査体積)と呼ばれる無数の小領域に分割した例を示す図である。 境界要素法において、境界要素法において境界線が線分に分割されている様子を示す図である 本発明に境界要素法を適用した場合における入力情報と出力情報とを整理した図である。 皮膚表面での温度勾配が与えられている場合における入力情報と出力情報とを整理した図である。 境界要素法の逆問題解析において入力情報と出力情報とを整理した図である。 実施の形態2にかかる処理の流れを示すフローチャートである。 変形例1にかかるデータベースを構築するための解析において入力情報と出力情報とを整理した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、体型の違いによって体表面の体温が違うということに着目し、体表面の温度差は体脂肪の量に関連があるのではないか、と考えた。そして、体脂肪量と体表面温度との間に関連があるならば、体表面の温度データから脂肪量を求められる可能性があることに想到した。体表面の温度を測ることは簡便であるので、体表面温度から脂肪量を求められるならば、これは極めて有益である。そして、発明者らの鋭意研究により、熱伝導解析に基づいて体表面温度から人体の脂肪量を評価できることが分かった。
そこで、まず、熱伝導解析に基づいて人体の脂肪量を評価するという本発明の基本原理を説明する。
(基本原理)
伝熱解析に基づいて人体腹部の臍位における脂肪量を評価する方法の基本原理を説明する。
人体のマクロな熱環境は、(A1)代謝に伴う発熱と、(A2)皮膚表面での冷却と、によって決定される。そして、人体の温度が時間的に大きく変動しないのは、代謝に伴う発熱(A1)と皮膚表面での冷却(A2)とがバランスしているからである。つまり、代謝に伴う発熱(A1)によって単位時間に一定量の熱が発生しているが、それと同量の熱が皮膚表面から除去される(A2による冷却)ので人体各部の温度が時間とともに変化することはないのである。
次に体内の熱移動に着目する。
温度の高いところから低いところに向かって熱移動が起きるので、温度の高い体深部から温度の低い皮膚表面に向かって常に熱が移動している。人体内の熱移動は熱伝導によるものと血流の対流輸送によるものとを考えることができるが、本発明で測定対象とする腹部の臍位断面においては、熱伝導が支配的である。それは、腹部には、皮膚表面に向かって熱を輸送するような大血管が存在しないからである。
温度差があると熱移動が起きる。熱移動が熱伝導による場合、温度勾配に比例した熱移動が起こる。
伝熱方向をxとすると、単位時間に単位面積を通じて移動する熱流束q[W/m]は、次の式(1)のように表される。
ここに、比例定数λは[W/(m・K)]の次元をもつ熱伝導率である。λが小さければ小さいほど熱を通しにくい物質であるということができる。人体においては筋肉や皮膚の熱伝導率が約0.4W/(m・K)であるのに対し、脂肪のそれは約0.2W/(m・K)と半分程度の値しかない。このように熱移動の妨げとなるものを熱抵抗と呼ぶ。
脂肪のような熱抵抗が熱移動の経路上にあるとき、一定の熱流束を保つためには温度勾配dT/dxが増大することになる。温度勾配の増大は端的に次のような現象となって現れる。
(B1)高温部の温度がさらに高くなる(いわゆる「熱がこもった」状態)。
(B2)低温部の温度がさらに低くなる。
しかしながら、安静時の人体では、体深部温度がおおよそ38℃に保たれているので、脂肪が多く分布している場合には、上記の(B2)が主に起こり、低温部である皮膚表面の温度がさらに低下するという現象が起こる。
また、脂肪量増加に伴って腹囲が増大するとともに、体深部と皮膚表面との距離が長くなるのが普通である。すると、これを補償するためにさらなる皮膚表面温度の低下が引き起こされる。温度差一定のままで距離だけが伸びると、温度勾配が低下してしまうからである。すなわち、脂肪量と皮膚表面温度とには相関があり、このことから脂肪量を測定することが可能となる。
以上のことをまとめると、本発明における重要な着目点は、
(C1)体深部から皮膚表面に常に一定量の熱移動が起きていること、
(C2)内臓脂肪が熱抵抗となること、
(C3)体深部温度がほぼ一定であること、
の3点である。
(脂肪量評価法の前提となる熱伝導解析)
次に、脂肪量評価法の前提となる熱伝導解析について説明を加える。
上記では、熱が一方向(x方向)に移動することを前提として、熱抵抗の影響について述べた。実際の人体における熱の流れは一次元的ではなく、熱は、x、y、zの各方向に移動することができるので、温度分布も熱流束分布も複雑になる。また、体深部で発生した熱が皮膚表面に至るまでにたどる経路も脂肪量の大小によって違ってくる。しかしながら、脂肪量の大小が皮膚表面温度分布の違いとなって現れる点については一次元の場合と同様である。
よって本発明では、次に示す定常熱伝導方程式を数値的に解くことによって人体内部の温度分布と熱流束ベクトル分布とを求める。
ここにqinは[W/m]の次元をもつ量であり、単位時間当たりに単位体積に発生する内部発熱量である。これは、人体においては代謝による発熱に相当する。座標軸の取り方は、腹部を臍位において切断した断面を(x,y)平面とし、これに垂直な方向をz方向とする(背骨に沿った方向がz軸とほぼ一致する)。
なお、臍位における脂肪量を求めるためには、(x,y)平面での温度および熱流束分布が分かれば十分である。臍位においてはz方向に体組成が大きく変化しないということより、式(2)のz方向微分は支配的でないとして無視することができる。よって,次の二次元定常熱伝導方程式を解けばよいことになり、計算コストを大幅に低下させることができる。
ただし、z方向の血流によって臍位にもたらされる熱量の効果はqinの中に含ませて取り扱う必要がある。
(qinの与え方)
上記式(4)を解くには、qinを与えなければならない。
このqinを見積もる方法を説明する。
上記のように、二次元熱伝導方程式(4)の右辺にあるqinは[W/m]の次元をもつ量であり、単位体積の物質に対して単位時間に与えられる熱量を表わす。
臍位における断面内の温度分布を計算する際には、
(D1)筋肉と腸とにおける代謝の効果と、
(D2)臍位断面を貫く方向に横断する血流によりもたらされる熱の効果と、
の二つを考慮する必要があり、これらを合算したものがqinとして与えられる。
((D1)筋肉と腸における代謝による発熱について)
代謝量の見積もりにはハリス・ベネディクトの式を用いる。ハリス・ベネディクトの式については、非特許文献1(J.A. Harris and F.G. Benedict: A Biometric Study of Basal Metabolism in man, The Carnegie Institution of Washington, (1919))に記載されている。
これは、安静状態にある健常人の基礎エネルギー消費量を見積もるために広く用いられている式であり、体重、身長および年齢の線形な関数として基礎エネルギー消費量[kcal/day]が計算される。ハリス・ベネディクトの式で与えられる基礎エネルギー消費量のうち、筋肉での代謝が38%、腸での代謝が7%を占めているとしてqinを与える。この割合については、非特許文献2(横山真太郎:生体内熱移動現象,北海道大学図書刊行会,(1993))に記載されている。
((D2)臍位断面を貫く方向に横断する血流によりもたらされる熱について)
臍位を貫く大血管は、大動脈、下大静脈、上腸間膜動脈と同静脈、下腸間膜動脈と同静脈である。大血管を通過する血流から周囲の組織に熱が移動するときの熱流束をq[W/m]として次のように表す。
ここに、ΔT[K]は血液と周囲組織との温度差であり、h[W/(m・K)]は熱伝達率である。血管を内径がDで長さがLの円筒管と仮定すると、伝熱面の面積はπDLである。伝熱面の面積πDLと熱流束qとの積をとると、単位時間当たりの伝熱量は、πDLq[W]として表される。
さらにこれを血管の占める体積πD2L/4で除せば、qin[W/m]に相当する量を得ることができる。
円管を通過する発達した流れについての熱伝達率hは、次のハウゼンの式により計算することができる。
ここで、λa[W/(m・K)]は血液の熱伝導率である。
また、Reは血流のレイノルズ数であり、Prは血流のプラントル数であり、これらの式中のu[m/s]は血液の平均流速、μ[Pa・s]は血液の粘度、c[J/(kg・K)]は血液の比熱を表わす。
レイノルズ数に含まれている平均流速uは次のように表されるので、平均流速uは血液の平均体積流量Q[m/s]から計算される。
すなわち、各血管の平均血流量が分かれば式(6)のhを計算することが可能となる。大血管については、流量が内径の3乗に比例するというMurray則が知られており、これに従ってQを決定できる。Murray則については、非特許文献3(C.D. Murray: The Physiological Principle of Minimum Work: I. The Vascular System and the Cost of Blood Volume, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, (1926), Vol.12,No.3, pp207-214)に記載されている。
(簡易モデルによる検証)
次に、上記で説明した熱伝導解析の手法が脂肪量の評価に適用できることを簡易モデルを用いて示す。
図1Aおよび図1Bは簡易的に作成した臍位の体組成モデルである。
図1AのモデルをModel Aとし、図1BのモデルをModel Bとする。
二つのモデルで、腹囲は810mmで共通とし、全体の面積も等しく設定してある。
ここで、簡単に符号を説明すると、皮膚11の内側に、脂肪12、腸13および筋肉(腹筋)14があり、さらに、中心に骨(背骨)15がある。
脂肪12の量については、Model Aで209.0cmとし、Model Bで170.2cmとし、Model Aの方が脂肪12の量が多くなるように設定してある。二つのモデルにおける脂肪量の差は、腹筋14と腸13との間に存在する内臓脂肪量121の差であり、皮下脂肪量122は共通である。
なお、Model Aでは脂肪12が多いだけ筋肉14の量を減少させることで、Model AとModel Bとの面積を一致させている。すなわち、Model Bにおける筋肉14の量は204.6cmであるが,Model Aの筋肉14の量は167.0cmであり、Model Aの筋肉量はModel Bに比べておおよそ2割少ない。
これらの組成や構造は必ずしも実際の人体のそれと合致するとは限らないが、本発明の手法の有効性についての基礎的な検討には十分である。
非構造格子を用いた有限体積法を二次元熱伝導方程式(4)に適用して、それぞれのモデルの温度分布を求めた。計算に当たって、筋肉および腸の部位で一定値qin=780W/mを与えた。有限体積法の適用に当たっては、計算領域をおおよそ40000の三角形セルに分割した。また、皮膚表面温度が全周に渡って等しい、腸の平均温度が37℃である、という二つの拘束条件を与えた。
計算結果を図2Aおよび図2Bに示す。
図2Aは、Model Aに対して求められた温度分布であり、図2Bは、Model Bに対して求められた温度分布である。各モデルの計算結果において温度の最小値は皮膚11の表面で記録されており、その値はModel Aで33.51、Model Bで33.76であった。両者の差は0.25Kであり、現状の温度計測技術の分解能により十分検知できるレベルの温度差である。
ここで、Model AとModel Bとでは、Model Aの方がModel Bに比べて筋肉量が約20%少ないとした。
筋肉および腸の部位で一定値qin =780W/mを与えるようにしたので、内部発熱量は、Model Aの方が約20%低く、逆に、Model Bの方が約20%高くなることになる。
仮に、筋肉14や脂肪12などの体組織の違いに関係なく熱伝導率が均一であるとすると、発生する温度勾配はModel Bの方が20%程度大きくなり、結果として、Model Bの皮膚表面温度がModel Aよりも低く算出されるはずである。
(拘束条件の一つとして、腸の平均温度が37℃、という条件を置いたので、発熱量の多いModel Bの方で排熱(放熱)が速く進まないと計算に合わなくなるからである)
それにも関わらず、Model Aにおいてより低い皮膚温度が算出されたのは、脂肪12の熱伝導率が低いことに起因すると結論することができる。
さらに、実際の人体では、腹囲は同じであるが脂肪量が違うということはなく、脂肪量が多い場合は腹囲の増大(すなわち伝熱距離の増大)を伴うのが普通である。したがって、脂肪が多い場合には上記の簡易なModel Aよりもさらに皮膚表面温度は低下すると考えられ、皮膚表面の温度差から脂肪量を十分に評価できることがわかる。
(人体モデルによる検証)
次に、熱伝導解析による脂肪量評価を実際の人体に適用した場合の例を示す。
二人の被験者のCT画像を撮り、それらをモデル化した。
図3Aと図3Bに示す二つの臍位モデルReal Model AとReal Model Bとは、二人の被験者のCT画像から作成したモデルである。
CT画像より、Real Model Aでは脂肪面積が398.1cmであり、Real Model Bでは脂肪面積が56.5cmであった。
また、サーモグラフィを用いて両被験者の皮膚表面温度測定も行った。
図4Aと図4Bとは、サーモグラフィ計測の結果である。なお、図4Aは図3Aに対応し、図4Bは図3Bに対応する。この温度計測により、二次元定常熱伝導方程式(4)を解く際に境界条件として必要となる皮膚表面温度を得ることができる。
ここで、図4A、図4Bの鉛直線を仮想し、この鉛直線が人体と臍位置で交わる点をFRONT、背面で交わる点をBACKとする。図5は、FRONTからBACKに至る左半身に沿った皮膚表面温度分布を両モデルについて示したグラフである。図4と図5においても、脂肪量が多いReal Model Aで皮膚表面温度が低いことがわかる。
サーモグラフィによる温度計測結果を境界条件として二次元定常熱伝導方程式(4)を解いて内部の温度分布を求め、さらに熱流束ベクトルを求めた。
その結果を図6A、図6Bに示す。
Real Model Aにおいて、腸およびその周辺の血管から発生した熱は主に前方(腹面の方向)へ向かう。
背面に向かう熱は、主に背骨を取り巻く筋肉で発生したものである。それに対し、Real Model Bにおいては、腸およびその周辺の血管から発生した熱が背面と腹面との両方に伝わっており、Real Model Aと対照的である。以上のように,脂肪量が多い被験者と脂肪量が少ない被験者とでは、臍位における皮膚表面温度分布と内部の熱移動の様子とにおいて明確な差異が生じること示された。
(本発明の第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
上記に説明した熱伝導解析による脂肪量評価を実際の患者に適用するための実施形態を説明する。
図7は、本実施の形態にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
まず、本実施形態の方法を実施するにあたって、予めデータベース200を用意しておくことが必要である。データベース200は、複数のサンプルデータを記録している。これは、できるだけ多くの人(サンプル)に対して基礎調査を行い、その結果を予め基礎データとして取得しておくものである。サンプルごとに、体組成データ、腹囲データ、皮膚表面温度分布、熱流束分布を求めて記録しておく。
体組織データは、CTスキャンのデータから得られるものである。皮膚表面温度分布はサーモグラフィから取得できる。熱流束分布については、前述のように、皮膚表面温度分布を境界条件とし、CTスキャンで得た体組織データに対して二次元定常熱伝導方程式(4)を解くことで得られる。このようなデータベースを複数のサンプルについて用意しておくことにより、今度は皮膚表面温度分布の情報から体組織を求められることになる。
なお、データベースには、患者自身のデータもサンプルとして含まれていてもよい。例えば、患者がクリニックに入院するときに最初に各項目を測定おき、それをサンプルデータとしてデータベースに蓄積しておく。入院中の定期検査にあたっては、CTスキャンを毎回撮るわけにはいかないので本発明の手法を適用することになるが、数ヶ月前の患者自身のデータがサンプルとしてデータベースに蓄積されていれば、それは有益なサンプルデータになると考えられる。
さて、脂肪量評価を受ける患者に対しては、腹囲、皮膚表面温度および体深部温度を測定する(ST100)。皮膚表面温度は、サーモグラフィーで測定すればよい。ここで、体深部温度が必要になるところ、体深部温度として直腸温度を測定してもよい。あるいは、腋の下や舌下の温度から所定の校正式を用いて体深部温度を求めるようにしてもよい。
次に、データベースのサンプルの中から、腹囲と皮膚表面温度分布とが患者に近いサンプルを抽出する(ST110)。サンプルの抽出にあたっては、例えば、まず、腹囲を使ってある程度サンプルを絞る。そして、絞られたサンプルの中から、体表面の平均温度が近いものを抽出するようにしてもよい。さらに、図5に示した皮膚表面温度分布のグラフにおいて、グラフの傾向が近似しているものを選ぶようにしてもよい。例えば、図5のグラフにおいて、無次元長さ0.5から0.8あたりにかけて温度が低下する部分があり、この低下の程度が脂肪量に関係していると考えられる。そこで、この温度低下の傾向が近似しているサンプルを抽出するようにすると、患者と脂肪量が近いサンプルを選ぶことができる。
このようなサンプル抽出工程においては、所定プログラムをコンピュータに組み込んで、所定アルゴリズムをコンピュータに実行させることによりサンプルを自動抽出させるようにしてもよい。
次に、選び出したサンプルの体組成を用いて熱伝導解析を行う(ST120)。ただし、境界条件となる皮膚表面温度分布には、患者のものを用いる。
次に、患者の体深部温度と、熱伝導解析(ST120)で得られた体深部温度と、を対比する(ST130)。サンプルの体組成と患者の体組成とは完全に一致しているわけではないので、そのずれは体深部温度の違いとなって現れることになる。すなわち、サンプルの体組成と患者の体組成とが異なっていれば(ST140:NO)、熱伝導解析で算出される体深部温度は患者の実際の体深部温度からずれてくる。
患者の体組織を求めるには、この体深部温度のずれが小さくなるようにサンプルの体組織データを調整する(ST150)。
サンプルの体組織データを調整する(ST150)にあたっては、主に、脂肪量と筋肉量とを調整する。骨と腸についてはあまり個人差はなく、さらに、サンプルを選定する時点で腹囲が近似しているものを選ぶなど、患者とサンプルとで似た体型を選んでいることもあり、骨と腸とについては調整を行わなくてもよい。(もちろん、必要に応じて、骨と腸とについても調整を行ってもよい。)
脂肪量と筋肉量とを調整する場合には、部位や形はほぼ決まっているので、相似変形させることが一例として挙げられる。どの部位をどの程度調整するかは、熱伝導解析の結果として得られた熱流束分布を参照しながら判断する。
このような調整工程を行うにあたっては、コンピュータに所定プログラムを組み込み、コンピュータに所定のアルゴリズムを自動実行させることが好ましいが、オペレータや医師が熱伝導や医学の見地を利用して逐次調整処理を行ってもよい。
熱伝導解析で求められる体深部温度が患者の体深部温度に一致するまで処理を繰り返す。熱伝導解析で求められる体深部温度が患者の体深部温度に一致したとき(ST140:YES)、このときの体組織が患者の体組織に一致すると考えられる。したがって、この体組織データから脂肪の割合および量を求めると、それが患者の脂肪量率であり、脂肪量である。このようにして、熱伝導解析を用いて、患者の脂肪量が求められた。
以上、このような本実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
人体の脂肪量を求めるにあたり、従来は、毎回CTスキャンを撮るか、あるいは、インピーダンス法による体脂肪測定に頼るしかなかった。
しかし、CTスキャンには費用と被爆の問題があり、インピーダンス法には精度の点で大いに問題があった。
この点、本実施形態では、患者に対しては腹囲、体表面温度および体深部温度の測定を行えばよく、費用は低廉であり、体への負担もない。そして、体表面温度と脂肪量の関係に基づく熱伝導解析により、上記に説明したように、かなり正確に被験者の体組織、すなわち、脂肪量を求めることができる。したがって、測定を高い頻度で定期的に行うことができ、例えば肥満治療であれば、患者に対して脂肪量の変化を提示することができる。
また、医師としても正確な脂肪量データに基づいた適格な診断、アドバイスができる。
(第2実施形態)
続いて、上記第1実施形態を改良した第2実施形態を以下に説明する。
上記第1実施形態では、臍位断面で二次元定常熱伝導方程式(8)を解くに当たり有限体積法を用いた。
これを本第2実施形態では,境界要素法に変更する。
その理由は以下の通りである。
有限体積法では,図8に示すように計算領域をセルあるいはコントロール・ボリューム(検査体積)と呼ばれる無数の小領域に分割をする。これを格子生成(grid generation)と呼ぶ。原理的にはセルの形状は任意に選ぶことができるものの,計算上の便宜を考えて二次元では三角形や四角形のように簡単な形状とするのが普通である。
しかしながら,たとえ単純な三角形セルのみで構成するにしても格子生成にはかなりの時間を要することがわかっており,具体的には臍位での格子分割を1回行うために20分程度の時間が必要である(総セル数4万程度の場合)。臍位脂肪量の評価に当たっては,筋肉,脂肪などの組成を修正しつつ繰り返し熱伝導解析を行うこととなるが,組成が変わる毎に格子生成をやり直さなければならないので,その都度20分程度の時間を費やすことになる。3,4回の組成修正でも1時間以上を要すると予想され,甚だ不都合である。
さらに計算技法上からも有限体積法には不利な点がある。
所与の温度分布を実現するべく試行錯誤的に内部組成を変更して熱伝導解析を繰り返し,最終手的に最も確からしい内部組成を求めるのが本手法の特徴であるが,有限体積法では内部境界点の座標値と温度の間に成立する関係を陽に求めることができない。そのため,上述の試行錯誤には大きな困難を伴う。
これに対して,境界要素法では内部境界と外部境界を線分に分割するだけでよく,計算領域内部に三角形を敷き詰める必要が無い。図9は、境界要素法において、境界要素法において境界線が線分に分割されている様子を示す図である。
ここで、異なる部位同士が接する曲線のことを内部境界と呼ぶ.熱伝導方程式は数値解析により解かれるので,内部境界は離散的に配された複数の点で表現される。また、臍位断面における皮膚表面を外部境界と呼び内部境界と明確に区別する。皮膚表面は空気と接しているのみであり,他の部位とは接していない。また、内部境界と外部境界を合わせて単に境界と呼ぶ。
そのため、境界要素法を採用することにより、前述の格子生成に要する時間的コストは不要となる。また,計算技法の観点からも,内部境界を構成する点の座標値と温度の間に成立する関係が直接的に得られる(詳しくは後述する)ので,内部組成を求める上で非常に有利である。
(境界要素法の概要)
境界要素法を説明する。
領域の境界は本来曲線であるが,線分をつなぎ合わせた折れ線として表現することが多い。
境界を分割している線分一つ一つを境界要素,または単に要素と呼ぶ。i番目の境界要素は点(xi, yi)と点(xi+1, yi+1)を端点とする線分として与えられる。
各要素には温度Tと法線方向温度勾配∂Tが定義されている。
熱伝導率λと内部発熱量qinが一定であるとき,熱伝導方程式は以下のポアソン方程式に帰着される。
境界がN個の要素に分割されているとき,支配方程式(9)に境界要素法を適用して得られる代数方程式は,以下の形式で表現される。
Tや∂Tに付された下付添え字i, jは,その温度や温度勾配が定義されている境界要素の番号を表わしている。また,aij、bij、cij、dはすべて定数である。式(10)は境界要素で定義された温度値と温度勾配とについての線形代数方程式である。
方程式の個数はNであり,温度と温度勾配もN個ずつ存在するから,方程式系を閉じるためには境界で温度ないし温度勾配の一方が境界条件として与えられている必要がある。
たとえば温度勾配が境界条件として与えられたとき,式(10)において既知な量を右辺に,未知量を左辺にそれぞれ移項して集めれば,式(11)となる。
さらに式(11)を行列形式で表現すると、式(12)を得る。
行列AはN×Nの正方行列であり,ベクトルfは式(11)右辺を成分とするN×1のベクトルである。
以上の説明は領域(部位)が一つだけである場合についてであった。
臍位断面のように複数の部位が存在する場合では,外部境界において温度ないし温度勾配の一方が境界条件として与えられていれば方程式系を閉じることができる。
すなわち,皮膚表面で温度が与えられていれば方程式(10)より皮膚表面の温度勾配を計算することができる。逆に皮膚表面の温度勾配が既知であれば,皮膚表面温度を計算することが可能である。
なお、ここであらためて、臍位断面には筋肉,脂肪,腸,皮膚,骨など様々な臓器・組織が存在しているが,これらをまとめて部位と呼ぶこととする。
(境界要素法を適用した場合における入力と出力)
臍位断面における熱伝導解析を境界要素法により行うことについて,情報の入出力の観点から考えてみる。仮に皮膚表面での境界条件として温度Tが与えられていたとしても,これだけでは式(10)を立てて温度勾配∂Tを求めることはできない。
まず,式(9)の右辺にあるCの値が必要である。さらには幾何条件として境界要素を構成する点の座標値(xi、yi)が必要である。式(10)の定数項d, cijや係数aij, bijはCと(xi, yi)から算出されるからである。
こうした関係は,情報の入出力として図10のように整理することができる。
あるいは境界条件として皮膚表面での温度勾配が与えられている場合には図11のようになる。
別の見方をすれば,温度Ti、温度勾配∂Ti、物性・発熱条件C、 組成(xi, yi)という4種類の情報の間に成り立つ関係を与え,既知な3種類の情報から残り1種類の未知情報を取り出すのが境界要素法と解釈することができる。
(境界要素法による逆問題解析の利用その1)
既知な3種類の情報から残り1種類の未知情報を取り出すことができるのであるから、物性・発熱条件Cや組成(xi, yi)について解くことも可能なはずである。
このような解析を逆問題解析と呼ぶ。
(これに対して(境界要素法の概要)で説明した温度や温度勾配を解く解析は順問題解析と呼ぶ。)
たとえば,組成を未知数とするときは,情報の入出力を次の図12のようにとらえる。つまり,境界条件として温度と温度勾配との2種類を与えることができれば,組成を計算することが可能である。
これは本発明の目的そのものであり,したがって、組成を求めるプロセスをこれの逆問題解析で実行できることとなる。
具体的な手順は以下の通りであり,Newton-Rhaphson法に準じたものを例に挙げる。
まず,温度勾配境界条件のみを用いて式(12)の温度を未知数とする方程式系を作る(さしあたりここでは温度境界条件を無視する).
式(12)を解くと,式(13)となる。
式(13)は、所与の温度境界条件T*と必ずしも一致しない.
一方,式(12)をxiで偏微分すると,式(14)となる。
式(14)に示すように皮膚表面温度の微分(ヤコビアン)を得ることができる。
yiでの偏微分も同様である。
式(13)のTが境界条件T*と一致しないのは,組成(xi, yi)が正しくないからであると考えて,組成の修正量ΔxiおよびΔxjを考えると,それによる温度の修正量ΔTは,式(15)と計算される。
温度修正量ΔT= T*- Tとして式(15)を(Δxi, Δyi)について解けば,正しい組成が計算できることになる。
本節で述べた逆問題解析を可能とするためには,皮膚表面温度に加えて皮膚表面温度勾配が求められていなければならないが,これは比較的簡単である。皮膚表面では熱平衡が成り立っているので,体深部から移動してくる熱と空気に奪われる熱とが一致している。これを式で表現すると,式(16)となる。
式(16)の添え字sは皮膚表面(skin)を表わす。
また,λは皮膚の熱伝導率,hは空気と皮膚との間の熱伝達率,Tairは空気の温度をそれぞれ表わす。
式(16)左辺は熱伝導による熱流束,右辺は空気への熱伝達による熱流束を表わしている。
皮膚表面温度が既知であるから,式(16)より容易に温度勾配∂Tを求めることができる。
したがって、第2実施形態を実施する場合のフローチャートは図13のようになる。
まず、第1実施形態と同様に、本実施形態の方法を実施するにあたって、予めデータベース200を用意しておくことが必要である。
さて、脂肪量評価を受ける患者に対しては腹囲および皮膚表面温度を測定し、加えて室温も測定しておく(ST200)。皮膚表面温度は、サーモグラフィーで測定すればよい。
次に、データベース200のサンプルの中から、腹囲と皮膚表面温度分布とが患者に近いサンプルを抽出する(ST210)。サンプルの抽出にあたっては、第1実施形態と同様に、例えば、まず、腹囲を使ってある程度サンプルを絞る。そして、絞られたサンプルの中から、体表面の平均温度が近いものを抽出するようにしてもよい。さらに、図5に示した皮膚温度分布のグラフにおいて、グラフの傾向が近似しているものを選ぶようにしてもよい。
次に、患者の皮膚表面温度分布から、患者の皮膚表面温度勾配条件を算出する(ST220)。これは、前述のように式(16)を用いて求めることができる。
次に、ステップST210で抽出したサンプルデータに対して、境界要素法を用いて熱伝導解析を行い、皮膚表面温度勾配条件を拘束条件として、サンプルデータにおける皮膚表面温度分布を演算する(ST230)。
そして、ステップST200で測定した患者の皮膚表面温度分布と、ステップST230で演算したサンプルデータにおける皮膚表面温度分布と、を対比する(ST240)。
2つの皮膚表面温度分布が一致した場合(ST250:Yes)、サンプルデータの体組成と患者の体組成が一致するとして、処理を終了する。
患者の皮膚表面温度分布と、ステップST230で演算したサンプルデータにおける皮膚表面温度分布とが一致しなかった場合(ST250:No)には、組成を調整し(ST260)、ステップ230に戻って再度皮膚表面温度分布の演算を行う。ステップST230からステップST260までの処理は、測定された患者の皮膚表面温度分布と、サンプルデータにおける皮膚表面温度分布とが一致するまで繰り返される。
このようにして患者の体組織が求められることがわかるであろう。
ここで、第1実施形態では体深部温度を用い、サンプルデータから求めた体深部温度と患者の実際の体深部温度とが一致するかどうかで繰り返し演算の終点を決定していた。しかし、患者の実際の体深部温度というのは必ずしも直接に測定できるものではなく、その定義もやや曖昧であった。(仮に体深部温度を正確に測定するとなると直腸温を測定することが考えられるが、これは患者の負担が非常に大きい。)
この点、第2実施形態では、サンプルデータから求めた皮膚表面温度分布と患者の実際の皮膚表面温度分布とが一致するかどうかで繰り返し演算の終点を決定できる。患者の実際の皮膚表面温度分布は容易に直接測定できるものであり、したがって、第2実施形態によればより正確に患者の体組織を求めることができる。また、境界要素法は有限体積法に比べて演算処理が格段に速くなることは前述の通りである。
(変形例1)
(境界要素法による逆問題解析の利用その2)
人体各組織の熱伝導率λの正確な値を知ることは簡単ではなかった。これまでの説明では、従来よく用いられてきた値として、筋肉・皮膚の熱伝導率を約0.4 W/(m・K),脂肪の熱伝導率を約0.2W/(m・K)としてきたが,これらは必ずしも正確な値ではない。
また,内部発熱量qinについては,第1実施形態で説明した方法によって求めることができ、この方法には物理的な根拠は存在しているものの,年齢,性別,体格などによる違いをどこまで模擬できるか疑問が残る.
そこでデータベースを構築する際に図14に示すような逆問題解析を実施し,C=qin/λについてより現実的な値を求めておくとよい。
データベース200を構築する際に皮膚表面温度測定とCT撮影を行っているので,正確な体組織の情報を含めて入力側の3つの情報はすべてそろっていることになる。(なお,逆問題解析の計算方法については,前述の通りであるからここでの説明は割愛する。)
こうして求めたCの値は年齢,性別,身長,体重により分類しておき,データベースの一部として保存しておく。
そして、図13に示した熱伝導解析(ST230)の際に利用すればよい。
このように、境界要素法による逆問題解析を人体の体組織に適用すれば、これまで正確には分からなかった各部位の物性(熱伝導率)を求めることができるのである。
(変形例2)
(体深部温度測定法とその活用について)
第1実施形態で説明した方法では体深部温度を利用していた。
ここで、体深部温度は直腸温で代表させるのが普通であるが,被験者の苦痛等を考えれば直腸温を用いるのは好ましくないとも考えられる。直腸は解剖学的に膀胱に隣接しているので,両者に温度差はないと考えて尿温を体深部温度として代用してもよい。
なお、第2実施形態で説明した手法によれば,体深部温度を参照しなくても組成を計算することができるのであるが,皮膚表面温度測定に伴う誤差を補償するために体深部温度は有用である。具体的には,腸を囲む内部境界上の温度の平均値が体深部温度と一致するという条件を拘束条件として逆問題解析に組み込むようにすればよい。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
熱伝導解析において、内部発熱量qin、体深部温度、脂肪の熱伝導率、皮膚の熱伝導率等の値は文献値や多くの実測データから適切な値を使用すればよく、上記に挙げた数値は一つの例示にすぎないものである。
上記実施形態では、主として方法の発明として説明したが、データベースとなるメモリと、演算部となるコンピュータと、を用意し、脂肪量評価装置としてもよい。
すなわち、コンピュータに所定プログラムを組み込んで、このコンピュータを、サンプル抽出手段、熱伝導解析演手段、対比手段および調整手段の各機能手段として機能するようにしてもよい。
11…皮膚、12…脂肪、13…腸、14…筋肉、121…内臓脂肪、122…皮下脂肪、200…データベース。

Claims (5)

  1. 測定対象者の皮膚表面温度を測定する測定工程と、
    前記皮膚表面温度に基づいて皮膚表面温度勾配を求める工程と、
    予め体組織が分かっているサンプルデータに対し、前記測定対象者の前記皮膚表面温度勾配を拘束条件とする熱伝導解析を行って皮膚表面温度分布を求める演算工程と、
    前記演算工程で求められた皮膚表面温度分布を測定対象者の皮膚表面温度分布と対比する対比工程と、
    前記対比工程において両者が一致しない場合には、サンプルの体組織を調整する調整工程と、を備え、
    前記演算工程で求められた皮膚表面温度分布が測定対象者の皮膚表面温度分布に合致するまで前記調整工程と前記演算工程とを繰り返す
    ことを特徴とする人体の脂肪量推定方法。
  2. 請求項1に記載の人体の脂肪量推定方法において、
    サンプルごとに体組成データ、腹囲データおよび皮膚表面温度分布を記録したデータベースを予め用意しておき、
    前記測定工程においては、さらに、腹囲を測定し、
    腹囲および皮膚表面温度分布が測定対象者と近似したサンプルを前記データベースから抽出する
    ことを特徴とする人体の脂肪量推定方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の人体の脂肪量推定方法において、
    実際の人体の皮膚表面温度と体組織とを測定して求め、さらに前記皮膚表面温度から皮膚表面温度勾配を求め、
    これら人体の皮膚表面温度、体組織、および前記皮膚表面温度勾配に基づいて、人体の体組織ごとの物性を求め、
    前記求めた物性を年齢,性別,身長および体重のうちから選ばれる一または複数の項目により分類してデータベースとする
    ことを特徴とする人体の脂肪量推定方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の人体の脂肪量推定方法において、
    さらに、腸を囲む内部境界上の温度の平均値が体深部温度と一致するという条件を拘束条件に加える
    ことを特徴とする人体の脂肪量推定方法。
  5. 測定対象者の皮膚表面温度を測定する測定手段と、
    前記皮膚表面温度に基づいて皮膚表面温度勾配を求める第1演算手段と、
    予め体組織が分かっているサンプルデータに対し、前記第1演算手段で算出された前記皮膚表面温度勾配を拘束条件とする熱伝導解析を行って皮膚表面温度分布を求める第2演算手段と、
    前記第2演算手段で求められた皮膚表面温度分布を測定対象者の皮膚表面温度分布と対比する対比手段と、
    前記対比手段において両者が一致しない場合には、サンプルの体組織を調整する調整手段と、を備え、
    前記皮膚表面温度分布が測定対象者の皮膚表面温度分布に合致するまで、前記調整手段がサンプルの体組織を調整する工程と、前記第2演算手段が皮膚表面の温度分布を算出する工程と、を繰り返す
    ことを特徴とする人体の脂肪量評価装置。
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