JP5706867B2 - 鉄道車輌用制輪子とその製造方法、鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックとその製造方法 - Google Patents
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そして、このような踏面方式の鉄道車輌用制輪子としては、安価で湿潤時に安定したブレーキ特性を有する鋳鉄制輪子が広く用いられてきたが、摩擦摩耗特性の向上を図るため、制輪子摩擦面にセラミックス粒子を介在させることが有効であり、特許文献1〜3に開示された技術が提案されている。また、特許文献4〜5には、セラミックスの製造方法が開示されている。
特許文献2には、樹脂の発泡体からなる三次元網目構造の骨格を成形し、この骨格の周囲にセラミック原料粉末の流動懸濁液を被覆させ、これを乾燥後に樹脂の炭化除去を行い、次いでこれを焼結することによりセラミックの三次元網目構造体を形成し、該セラミックの三次元網目構造体を鋳型にセットして、鋳鉄で鋳ぐるむことにより摩擦材を得ることを特徴とする摩擦材の製造方法が開示されている。
特許文献3には、上鋳型と下鋳型とで形成されるキャビティ内の前記下鋳型側に裏板を配置し、前記裏板から前記上鋳型の制動摩擦面形成面に向かって突出するガイド棒に制動ブロックをスライド自在に刺設し、型締め後に前記キャビティ内に溶湯を供給し、この溶湯によって前記制動ブロックを比重差により前記制動摩擦面形成面まで前記ガイド棒に沿って浮上させて前記制動ブロックの一側面を前記制動摩擦面形成面に当接させ、前記制動ブロックが鋳ぐるんだ状態で制輪子本体を製造することを特徴とする鉄道車輌用鋳鉄制輪子の製造方法が開示されている。
特許文献4には、内部連通空間を有する合成樹脂発泡体を予め容器に配置し、該容器中にセラミックスラリーを注入し、その後乾燥、焼成して、内部に多孔を有するセラミック燒結体を得、該燒結体の任意の部分を切削削除することによりセラミック連通多孔体を得ることを特徴とするセラミック連通多孔体の製造方法が開示されている。
特許文献5には、合成樹脂からなる三次元網目構造体の骨格組織の骨格の周りに付着させたセラミックス材料を焼結せしめると共に、かかる骨格組織を構成する合成樹脂部分を消失させることにより得られる、前記付着セラミックス材料の焼結にて三次元網目構造が保持される一方、かかる三次元網目構造の骨格自体が中空とされて、全体として連続した空孔が該骨格内に形成されたセラミックス多孔体を用い、その三次元網目構造の間隙内に所定のマトリックス材料を入り込ませて一体的な構造とすることにより、該セラミックス多孔体の三次元網目構造の骨格内に形成された空孔を利用して、液体を透過せしめ得るようにした製品を製造するに際して、前記セラミックス多孔体として、前記セラミックス材料の付着に先立って、前記合成樹脂からなる三次元網目構造体の骨格組織の骨格の周りに消失性材料からなる所定厚さのコーティング層を形成せしめて、かかる骨格を太くし、そしてその上に前記セラミックス材料を付着させて焼成を行うことにより得られるものを用いることを特徴とする流体透過性製品の製造方法が開示されている。
第1工程:三次元網目構造を有する合成樹脂発泡体にセラミックススラリーを含浸保持させ、これを乾燥させてセラミックス原料体を製造する工程と、
第2工程:次いで前記セラミックス原料体を、前記合成樹脂発泡体の分解温度以上、前記セラミックス原料体が完全に焼結する温度未満の温度雰囲気中で熱処理して三次元多孔構造をもつ未焼結のセラミックスブロックを得る工程と、
第3工程:次いで、前記セラミックスブロックを成形型のキャビティ内に配置し、該キャビティ内に金属溶湯を注入し、冷却することによって鉄道車輌用制輪子を得る工程と、
を有し、セラミックスブロックを完全に焼結することなく成形型のキャビティ内に配置し、該キャビティ内に金属溶湯を注入し、冷却することによって鉄道車輌用制輪子を得ることを特徴としている。
なお、本発明において、前記分解温度とは、前記合成樹脂発泡体が熱分解を開始する温度のことであり、前記完全に焼結する温度とは、前記セラミックス原料体が焼結して、最大収縮率に達成できる温度である。
第1工程において、三次元網目構造を有する合成樹脂発泡体としては、セラミックススラリーを含浸させることができ、かつこれを乾燥することによって形成されるセラミックス生地を安定して保持できるものであればよく、特に限定されず、例えばポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル酸系樹脂などの高発泡倍率の発泡体などが挙げられ、これらの中でもポリウレタンフォームが好ましい。
前記セラミックス粉末としては、鉄道車輌用制輪子の製造用に用いられる各種のセラミックス粉末を使用でき、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ系セラミックス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、粘土鉱物、マグネシア、チタン酸塩、サイアロンなどの酸化物、炭化物、窒化物の1種又は2種以上の組み合わせなどが挙げられ、これらの中でもアルミナ、炭化珪素、ムライト、チタン酸アルミニウム、マグネシア、ジルコニアが好ましい。
無機バインダーの配合量は、特に限定されないが、セラミックス100質量部に対して2〜40質量部の範囲が好適であり、10〜40質量部の範囲がより好適であり、25〜30質量部の範囲がさらに好適である。
炭素材料の配合量は、セラミックス100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲が好適であり、0.05〜20質量部の範囲がより好適であり、0.1〜10質量部の範囲がさらに好適である。
前記合成樹脂発泡体の網目構造内にセラミックススラリーを含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、セラミックススラリー中に合成樹脂発泡体を浸漬して引き上げる方法、浸漬後に減圧してスラリー含浸を促進させる方法、遠心力を加えながらスラリーを合成樹脂発泡体に含浸させる方法などが挙げられる。
ここで、セラミックススラリーの合成樹脂発泡体に対する添着量は、合成樹脂発泡体100質量部に対して500〜2000質量部の範囲が好適であり、800〜1200質量部の範囲がより好適である。
この乾燥処理は、通風乾燥、熱風乾燥、オーブン加熱などの乾燥法により実施可能であるが、余りにも急速に分散媒を除去するとセラミックス生地に割れを生じることが多くなるので、比較的低温での通風乾燥によって行うことが好ましい。この乾燥温度は、10〜80℃の範囲とすることが好適であり、30〜70℃の範囲がより好適であり、40〜60℃の範囲がさらに好適である。
次に、前記第1工程において乾燥を終えて得られたセラミックス原料体に熱処理を施して三次元多孔構造をもつセラミックスブロックを得る第2工程を行う。
この第2工程における熱処理の温度は、前記合成樹脂発泡体の分解温度以上、前記セラミックス原料体が完全に焼結する温度未満の温度雰囲気中とし、セラミックスブロック中のセラミックスが収縮し始める温度よりも低いことが好ましく、従来技術における燒結時間より短い時間での熱処理とすることが好ましい。
セラミックス原料体が完全に焼結する温度は、例えばアルミナセラミックスであれば、約1250〜1650℃であることが知られている。また、収縮し始める温度とは、例えばアルミナセラミックスであれば、1100℃であることが知られている。
この第2工程における熱処理では、セラミックス原料体中の合成樹脂発泡体が、完全に焼失せずに、炭化した残渣が残っていてもよい。
前記セラミックススラリー中に、無機バインダーを添加することによって、このセラミックスブロックの強度を高めることができる。
次に、前記第2工程で得られたセラミックスブロックを、成形型(制輪子用成形型)のキャビティ内に配置し、該キャビティ内に金属溶湯を注入し、冷却することによって鉄道車輌用制輪子を得る第3工程を行う。
成形型にセラミックスブロックを配置する方法は特に限定されないが、セラミックスブロックが制輪子の厚み方向中央よりも内側(車輪接触面側)に存在するように、成形型内に配置することが望ましい。成形型内に金属溶湯を注入した際、金属溶湯に比べて比重の小さなセラミックスブロックは溶湯中で浮上するので、セラミックスブロックの中心部に穴を設けておき、成形型に予め設けておいた棒状部材に該穴を通してセラミックスブロックを成形型内に置き、成形型内に金属溶湯を注入した際にセラミックスブロックが棒状部材に沿って浮上し、所定位置に達するように配置することができる。
本例の成形型は、下型2Aと、上型2Bとを備え、これらの型間にはキャビティKが設けられている。下型2Aの面上には、複数の棒状部材4が固定された背板5が設置され、これらの棒状部材4には、穴を有するセラミックスブロック1が嵌め込まれている。この清家型を用いて前記第3工程を行うには、図2(a)に示すように、セラミックスブロック1を配置した背板5を配置した状態で下型2Aと上型2Bとを重ねて型閉めし、上型2Bのいずれかに設けた注湯口からキャビティK内に金属溶湯を注湯し、放冷後、型を開いて鉄道車輌用制輪子を取り出す。
鋳型は鋳物砂を用い、珪砂(北日本産業社製、東北珪砂5号)やオリビン砂(東邦オリビン工業社製、オリビンサンド5号)などを用いる。鋳物砂には粘結剤のベントナイト(クニミネ工業社製、クニボンドM−7)を添加し、鋳物砂水分量は3.5〜4.0%で管理する。
成形型にセラミックスブロックを配置する棒状部材4は、鋼製の背板5に固定されており、この背板5の表面には、脆化防止のため塗型剤を塗布しておくことが好ましい。塗型剤としては、鋳鉄用塗型剤であれば特に限定されないが、例えば、MgO・SiO2系やジルコン系塗型剤が挙げられる。
このようにして得られた鉄道車輌用制輪子は、金属からなる本体にセラミックスブロックが埋め込まれた状態になっており、金属溶湯との接触によってセラミックスがある程度焼結され、かつセラミックスブロックの多孔構造内に金属が侵入して一体化された状態になっている。
[実施例1]
(第1工程:(a)スラリーの調製)
成分1:アルミナ(昭和電工社製、AL−170) 100質量部
成分2:第一リン酸アルミニウム溶液(多木化学社製、50L) 40質量部
成分3:蛙目粘土(共立マテリアル社製、蛙目粘土特級粉末KH) 2質量部
成分4:タルク(丸尾カルシウム社製、PKP#80) 1.5質量部
成分5:水 2質量部
前記成分1〜成分5をすり鉢で混ぜてセラミックススラリーを調製した。
前記セラミックススラリーを、サンプルサイズ(φ65mm、厚み22mm)のポリウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製、MF−7)へ含浸させ、セラミックス原料体を作製した。セラミックススラリーの添着量は、1個のサンプル当たり35gとした。
前記セラミックス原料体は、まず50℃で乾燥し、次いで200℃の加熱炉内に入れ、150℃/hの昇温速度で450℃まで加熱し、3.5時間保持した。加熱後、セラミックスブロック1Aを取り出した。
得られたセラミックスブロック1Aは、図1に示すように、ポリウレタンフォームがほぼ焼失し、三次元多孔構造を有していた。このセラミックスブロック1Aは、無機バインダーとして配合した第一リン酸アルミニウムによって強度を保っており、普通に持ち運びが可能であった。
得られたセラミックスブロック1Aの空孔率は10ppiであった。
前記セラミックスブロック1Aの中央に穴を開け、図2に示すように、制輪子製造用の成形型の下型2Aに配置される背板5に固定された棒状部材4に、該穴を挿通した状態でセットし、上型2Bを閉じた。
次に、この成形型のキャビティK内に、1395℃の金属溶湯(合金鋳鉄)を注湯した。放冷後、成形型から鉄道車輌用制輪子サンプル3Aを取り出した。得られた鉄道車輌用制輪子サンプル3Aは、図3及び図4に示すように、三次元多孔構造を有するセラミックスブロックが合金鋳鉄からなる本体に埋め込まれた状態になっていた。
さらに、鉄道車輌用制輪子サンプル3Aを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、併せてエネルギー分散型X線分析(EDX)による元素マッピングも実施した。この結果を図5に示した。SEM観察による粒状物が、EDX分析からアルミ二ウム及び酸素が検出され、粒状物がアルミナ粒子であることは明らかである。
(第1工程:(a)スラリーの調製)
成分1:アルミナ(昭和電工社製、AL−170) 100質量部
成分2:第一リン酸アルミニウム溶液にカーボンナノチューブを4質量%分散させた水分散液(第一リン酸アルミニウム溶液(多木化学社製、50L)12質量部、カーボンナノチューブ(バイエル社製、BaytubesC150P)8質量部)20質量部
成分3:第一リン酸アルミニウム溶液(多木化学社製、50L) 20質量部
成分4:蛙目粘土(共立マテリアル社製、蛙目粘土特級粉末KH) 2質量部
成分5:タルク(丸尾カルシウム社製、PKP#80) 1.5質量部
成分6:解膠剤(中京油脂社製、セルナD−305、陰イオン、液状) 2質量部
成分7:水 5質量部
前記成分1〜成分6をすり鉢で混ぜてセラミックススラリーを調製した。
前記セラミックススラリーを、サンプルサイズ(φ65mm、厚み22mm)のポリウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製、MF−7)へ含浸させ、セラミックス原料体を作製した。セラミックススラリーの添着量は、1個のサンプル当たり35gとした。
前記セラミックス原料体は、50℃で乾燥し、150℃/hの昇温速度で450℃まで加熱し、3.5時間保持した。加熱後、セラミックスブロック1Bを取り出した。
得られたセラミックスブロック1Bは、図6に示すように、カーボンナノチューブを添加していることで、図1のセラミックスブロック1Aと比べて黒っぽくなった。このセラミックスブロック1Bは、無機バインダーとして配合した第一リン酸アルミニウムによって強度を保っており、普通に持ち運びが可能であった。
前記セラミックスブロック1Bの中央に穴を開け、図2に示すように、制輪子製造用の成形型の下型2Aに配置される背板5に固定された棒状部材4に、該穴を挿通した状態でセットし、上型2Bを閉じた。
次に、この成形型のキャビティK内に、1395℃の金属溶湯(合金鋳鉄)を注湯した。放冷後、成形型から鉄道車輌用制輪子サンプル3Bを取り出した。得られた鉄道車輌用制輪子サンプル3Bは、図7及び図8に示すように、三次元多孔構造を有するセラミックスブロックが合金鋳鉄からなる本体に埋め込まれた状態になっていた。
さらに、鉄道車輌用制輪子サンプル3Bを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、併せてエネルギー分散型X線分析(EDX)による元素マッピングも実施した。
この結果を図9に示した。SEM観察による粒状物が、EDX分析からアルミ二ウム及び酸素が検出され、粒状物がアルミナ粒子であることは明らかである。
(第1工程:(a)スラリーの調製)
成分1:アルミナ(昭和電工社製、AL−170) 100質量部
成分2:第一リン酸アルミニウム溶液にカーボンナノチューブを4質量%分散させた水分散液(第一リン酸アルミニウム溶液(多木化学社製、50L)12質量部、カーボンナノチューブ(昭和電工製、VGCF−H)8質量部) 20質量部
成分3:第一リン酸アルミニウム溶液(多木化学社製、50L) 20質量部
成分4:蛙目粘土(共立マテリアル社製、蛙目粘土特級粉末KH) 2質量部
成分5:タルク(丸尾カルシウム社製、PKP#80) 1.5質量部
成分6:解膠剤(中京油脂社製、セルナD−305、陰イオン、液状) 2質量部
成分7:水 7.5質量部
前記成分1〜成分6をすり鉢で混ぜてセラミックススラリーを調製した。
前記セラミックススラリーを、サンプルサイズ(φ65mm、厚み22mm)のポリウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製、MF−7)へ含浸させ、セラミックス原料体を作製した。セラミックススラリーの添着量は、1個のサンプル当たり35gとした。
前記セラミックス原料体は、50℃で乾燥し、150℃/hの昇温速度で450℃まで加熱し、3.5時間保持した。加熱後、セラミックスブロック1Dを取り出した。
このセラミックスブロック1Dは、図10に示すように、無機バインダーとして配合した第一リン酸アルミニウムによって強度を保っており、普通に持ち運びが可能であった。
前記セラミックスブロック1Bの中央に穴を開け、図2に示すように、制輪子製造用の成形型の下型2Aに配置される背板5に固定された棒状部材4に、該穴を挿通した状態でセットし、上型2Bを閉じた。
次に、この成形型のキャビティK内に、1395℃の金属溶湯(合金鋳鉄)を注湯した。放冷後、成形型から鉄道車輌用制輪子を取り出した。得られた鉄道車輌用制輪子サンプルは、三次元多孔構造を有するセラミックスブロックが合金鋳鉄からなる本体に埋め込まれた状態になっていた。
(第1工程:(a)スラリーの調製)
成分1:アルミナ(大明化学工業社製、TM−DAR) 100質量部
成分2:カーボンナノチューブ(ナノカーボンテクノロジーズ社製、MWNT7)が3質量%分散された水分散液 16.6質量部
成分3:蛙目粘土(共立マテリアル社製、蛙目粘土特級粉末KH) 2質量部
成分4:タルク(丸尾カルシウム社製、PKP#80) 2質量部
成分5:解膠剤(中京油脂社製、セルナD−305、陰イオン、液状) 2質量部
成分6:水 11質量部
前記成分1〜成分6をすり鉢で混ぜてセラミックススラリーを調製した。
前記セラミックススラリーを、サンプルサイズ(φ75mm、厚み25mm)のポリウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製、MF−7)へ含浸させ、セラミックス原料体を作製した。セラミックススラリーの添着量は、1個のサンプル当たり50gとした。
前記セラミックス原料体は、50℃で乾燥し、300℃/hの昇温速度で200℃まで加熱し、3時間保持した。加熱後、セラミックスブロックを取り出した。
得られたセラミックスブロック1Cは、図11に示すように、普通に持ち運びが可能であった。
前記セラミックスブロック1Cの中央に穴を開け、図2に示すように、制輪子製造用の成形型の下型2Aに配置される背板5に固定された棒状部材4に、該穴を挿通した状態でセラミックスブロック1Cをセットし、上型2Bを閉じた。
次に、この成形型のキャビティK内に、1395℃の金属溶湯(合金鋳鉄)を注湯した。放冷後、成形型から鉄道車輌用制輪子サンプル3Cを取り出した。得られた鉄道車輌用制輪子サンプル3Cは、図12及び図13に示すように、三次元多孔構造を有するセラミックスブロックが合金鋳鉄からなる本体に埋め込まれた状態になっていた。
さらに、鉄道車輌用制輪子サンプル3Cを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、併せてエネルギー分散型X線分析(EDX)による元素マッピングも実施した。
この結果を図14に示した。SEM観察による粒状物が、EDX分析からアルミ二ウム及び酸素が検出され、粒状物がアルミナ粒子であることは明らかである。
(第1工程:(a)スラリーの調製)
成分1:アルミナ(大明化学工業社製、TM−DAR) 100質量部
成分2:カーボンナノチューブ(ナノカーボンテクノロジーズ社製、MWNT7)が10質量%分散された水分散液 16.6質量部
成分3:蛙目粘土(共立マテリアル社製、蛙目粘土特級粉末KH) 2質量部
成分4:タルク(丸尾カルシウム社製、PKP#80) 2質量部
成分5:解膠剤(中京油脂社製、セルナD−305、陰イオン、液状) 2質量部
成分6:水 11質量部
前記成分1〜成分6をボールミルやポットミルを用いて混合してセラミックススラリーを調製した。
前記セラミックススラリーを、サンプルサイズ(φ75mm、厚み25mm)のポリウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製、MF−7)へ含浸させ、セラミックス原料体を作製した。セラミックススラリーの添着量は、1個のサンプル当たり50gとした。
前記セラミックス原料体は、50℃で乾燥した。
次に、第一リン酸アルミニウム溶液(多木化学社製、50L)の乾燥済みのセラミックス原料体を1時間浸漬し、セラミックス中に第一リン酸アルミニウム溶液を含浸させた。
次に、50℃で乾燥し、100℃/hの昇温速度で200℃まで加熱し、3時間保持した。加熱後、セラミックスブロックを取り出した。
得られたセラミックスブロックは、無機バインダーとして配合した第一リン酸アルミニウムによって強度を保っており、普通に持ち運びが可能であった。
前記セラミックスブロックの中央に穴を開け、図2に示すように、制輪子製造用の成形型の下型2Aに配置される背板5に固定された棒状部材4に、該穴を挿通した状態でセラミックスブロックをセットし、上型2Bを閉じた。
次に、この成形型のキャビティK内に、1395℃の金属溶湯(合金鋳鉄)を注湯した。放冷後、成形型から鉄道車輌用制輪子サンプルを取り出した。得られた鉄道車輌用制輪子サンプルは、三次元多孔構造を有するセラミックスブロックが合金鋳鉄からなる本体に埋め込まれた状態になっていた。
実施例1〜3、10、比較例1、2の製造方法により製造した制輪子のブレーキ性能試験を行った。
試験は、所定の速度で回転している車輪に左右から2個の制輪子を押しつけ、停止するまでの各種性質を所定のブレーキ初速度毎に測定した。試験条件は「JIS E 7501鉄道車両用鋳鉄制輪子の性能試験及び検査方法」の手順に一部準拠し、表1に示す試験条件により、ブレーキ停止距離(m)及び制輪子摩耗量(mm/(回・個))の測定を行った。表1に試験条件の詳細を示す。
比較例1は、図2に示すキャビティK内にセラミックスブロック1と棒状部材4を有さないとしたこと以外は、実施例1〜5の第三工程と同様の方法により製造したセラミックスブロックを有しない鉄道車輌用制輪子である。
(第1工程:(a)スラリーの調製)
成分1:アルミナ(昭和電工社製、AL−170) 100質量部
成分2:第一リン酸アルミニウム溶液(多木化学社製、50L) 40質量部
成分3:蛙目粘土(共立マテリアル社製、蛙目粘土特級粉末KH) 2質量部
成分4:タルク(丸尾カルシウム社製、PKP#80) 1.5質量部
成分5:水 2質量部
前記成分1〜成分5をすり鉢で混ぜてセラミックススラリーを調製した。
(セラミックス原料体の作製)
前記セラミックススラリーを、サンプルサイズ(φ65mm、厚み22mm)のポリウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製、MF−7)へ含浸させ、セラミックス原料体を作製した。セラミックススラリーの添着量は、1個のサンプル当たり35gとした。
(第2工程:セラミックスブロックの作製)
前記セラミックス原料体は、まず50℃で乾燥し、25〜600℃、50℃/hの昇温スピードで加熱した後、600〜1500℃、200℃/hの昇温スピードで加熱して、1500℃で一時間保持することにより酸素雰囲気下で脱脂及び焼結工程を行なった。その後、自然冷却によって、常温に戻した。これにより、アルミナ多孔質ブロックを得ることができた。
得られたセラミックスブロックの空孔率は10ppiであった。
(第3工程:鉄道車輌用制輪子の製造)
得られたセラミックスブロックの中央に穴を開け、図2に示すように、制輪子製造用の成形型の下型2Aに配置される背板5に固定された棒状部材4に、該穴を挿通した状態でセットし、上型2Bを閉じた。
次に、この成形型のキャビティK内に、1395℃の金属溶湯(合金鋳鉄)を注湯した。放冷後、成形型から鉄道車輌用制輪子を取り出した。
1500℃と高い温度で燒結した比較例2に比べて、実施例1〜3のブレーキ距離は同程度の性能を示した。
上記実施例1〜3、及び比較例2の方法により製造したセラミックスブロックの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果を図17に示す。高温で燒結した比較例2は、完全に焼結されたため、表面が緻密化している。これに対し、実施例1〜3は、焼成が十分ではないため、表面は粒状となっていた。
しかしながら、上記≪制輪子のブレーキ性能試験≫に示した通り、完全に焼結され比較例2と、実施例1〜3のブレーキ距離は同程度の性能を示していた。
アルミナ(AL−170)100g、リン酸アルミニウム40g、蛙目粘土2g、タルク1.5gを攪拌し、ウレタンフォーム2個に含浸させた。1つのウレタンフォームにアルミナを含浸させる質量は35±1gとし、計8個含浸させた。
含浸させたものをセラミック製の容器に設置し、雰囲気炉で50℃、12時間、乾燥させた。その後、熱処理を2個ずつ、450℃×3.5h(実施例6)、650℃×3.5h(実施例7)、850℃×3.5h(実施例8)、1050℃×3.5h(実施例9)で行った。昇温はいずれも50℃/hとし、コンプレッサーで1リットル/分の空気を流して熱処理を行った。熱処理終了後は炉内で冷却した。
一連の作業に当たり、アルミナをウレタンフォームへ含浸後、乾燥後、熱処理後の質量を測定し、質量変化を調べた。
2A…成形型(下型)
2B…成形型(上型)
3A、3B,3C…鉄道車輌用制輪子サンプル、
4…棒状部材
5…背板(バックメタル)
K…キャビティ
Claims (12)
- 三次元網目構造を有する合成樹脂発泡体にセラミックススラリーを含浸保持させ、これを乾燥させてセラミックス原料体を製造する工程と、
次いで前記セラミックス原料体を、前記合成樹脂発泡体の分解温度以上、前記セラミックス原料体が完全に燒結する温度未満の温度雰囲気中で熱処理して三次元多孔構造をもつセラミックスブロックを得る工程と、
次いで、前記セラミックスブロックを成形型のキャビティ内に配置し、該キャビティ内に金属溶湯を注入し、冷却することによって鉄道車輌用制輪子を得ることを特徴とする鉄道車輌用制輪子の製造方法。 - 前記セラミックス原料体に、前記合成樹脂発泡体の分解温度以上の温度で固化する無機バインダーを添加することを特徴とする請求項1に記載の鉄道車輌用制輪子の製造方法。
- 前記無機バインダーが、第一リン酸アルミニウム又はリン酸アルミニウムを含んでいることを特徴とする請求項2に記載の鉄道車輌用制輪子の製造方法。
- 前記セラミックス原料体に、炭素材料を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄道車輌用制輪子の製造方法。
- 前記セラミックスブロックに塗型剤を塗布しておくことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄道車輌用制輪子の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉄道車輌用制輪子の製造方法により得られたことを特徴とする鉄道車輌用制輪子。
- 三次元網目構造を有する合成樹脂発泡体にセラミックススラリーを含浸保持させ、これを乾燥させてセラミックス原料体を製造する工程と、次いで前記セラミックス原料体を、前記合成樹脂発泡体の分解温度以上、前記セラミックス原料体が完全に燒結する温度未満の温度雰囲気中で熱処理して三次元多孔構造をもつ鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックを得ることを特徴とする鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックの製造方法。
- 前記セラミックス原料体に、前記合成樹脂発泡体の分解温度以上の温度で固化する無機バインダーを添加することを特徴とする請求項7に記載の鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックの製造方法。
- 前記無機バインダーが、第一リン酸アルミニウム又はリン酸アルミニウムを含んでいることを特徴とする請求項8に記載の鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックの製造方法。
- 前記セラミックス原料体に、炭素材料を添加することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックの製造方法。
- 前記セラミックスブロックに塗型剤を塗布する工程を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックの製造方法。
- 請求項7〜11のいずれか1項に記載の鉄道車輌制輪子用セラミックスブロックの製造方法により得られた鉄道車輌制輪子用セラミックスブロック。
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