JP5705813B2 - ダイヤモンド砥粒の製造方法、ワイヤ工具の製造方法およびワイヤ工具 - Google Patents

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本発明は、シリコンやサファイアなどの硬脆材料を切断することが可能なワイヤ工具の製造方法等に関するものである。
従来、ガラス、セラミック、石英、サファイア、シリコンなどの硬脆材料を切断するためには、ワイヤ工具が用いられてきた。例えば、鋼線ワイヤを用いて、砥粒を含むスラリを供給しながら、加工対象をスライスする方法があった。
しかし、このような方法では、砥粒や被加工物の切断屑を多量に含んだ研削廃液が発生する。したがって、この処理が必要になるとともに、環境負荷も大きいという問題がある。
これに対し、ピアノ線等の外周部に砥粒をレジンボンドなどで保持したワイヤ工具を用いる方法がある(特許文献1)。
また、金属芯線の外周部に金属が被覆された砥粒をめっき層で保持したワイヤ工具を用いる方法がある(特許文献2)。
特許第3078020号公報 特許第4724779号公報
しかし、特許文献1の方法は、多量の廃液の処理が不要であるものの、砥粒の保持力が必ずしも高くなく、切断加工中に砥粒が脱落し、切削効率が悪くなる恐れがある。
また、特許文献2の方法は、金属被覆砥粒をめっき層で保持するため、砥粒の保持力は高い。しかし、芯線11砥粒を保持するために電解めっきを施すため、砥粒先端部におけるめっき厚が厚くなる。特に、芯線に砥粒を付着させた後に電解めっき処理を施すと、砥粒の端部に電界が集中し、砥粒の先端のめっき厚が厚くなる。すなわち、砥粒先端部における金属被覆の厚みも加えると、実際に切削加工に用いられる部位のめっき厚が厚くなる。
このため、ワイヤ工具の使用開始時に、砥粒先端部のめっきが摩耗して砥粒が露出するまでに時間を要し、実際に砥粒が切断能力を発揮するまでの時間を要する。また、めっきが摩耗する間は、ワイヤ工具本来の切れ味を発揮することができず、切削開始時に被切削物との間に滑りが生じるため、被切削物の厚さばらつきや、そりが発生する恐れがある。
また、特許文献2には、事前に砥粒先端のめっきを剥離する旨についても記載されているが、ワイヤ工具の使用前に砥粒先端のめっきの一部を剥離(除去)する工程について記載している。これは、ワイヤ工具の最外径を揃える、もしくは砥粒の先端を露出させるために有効であるが、砥粒先端部のめっき厚が厚いと、剥離(除去)に時間を要するため生産上、好ましくない。また、めっきの剥離工程において、砥粒が脱落する恐れもある。
一方、砥粒を芯線に固着させる際に、砥粒同士が凝集してしまうと、本来の切れ味が発揮されず、切削性や切削精度が落ちると言う問題がある。ところで、砥粒を芯線に固着させる方法として、めっき浴に砥粒を混合し、金属と共に粒子を析出させる複合めっきが用いられるが、複合めっきでは、芯線に付着した砥粒の上にさらに砥粒が重なるように付着する場合がある。これは、砥粒が芯線の金属線に付着すると、砥粒表面と金属線とが導通するため、砥粒表面にも電流が流れ、砥粒上に別の砥粒が引き寄せられて付着するためである。
このように砥粒の凝集や重なりが生じると、ワイヤ工具の線径が大きくなるとともに、砥粒の分布も不均一となる。このため、切断ロスが大きくなり、安定した切れ味を発揮できず切断面の仕上がりも悪くなる。すなわち、凝集した砥粒が付着しているワイヤ工具を切断加工に用いると、被切削物に深いスクラッチ傷が発生する恐れがある。このような場合には、切断加工後にポリシング加工などの時間を要し、場合によっては製品を使用できなくなる恐れがある。
これに対し、金属被覆を有さない無垢の砥粒をめっき浴に添加し、複合めっきで砥粒を芯材の金属線に固着させる方法では、砥粒表面へのめっき層の成長は抑制できる。しかし、砥粒の保持力を確保するためにはめっき層を厚くする必要があるため、めっき層形成に時間を要する。さらに砥粒表面とめっき層との密着性が悪く、砥粒の脱落等の恐れがある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、生産性に優れ、使用開始時に短時間で砥粒を切断に寄与させることが可能であり、さらに切断面の仕上がりにも優れ、砥粒と芯材の密着が強固なワイヤ工具等を提供することを目的とする。
前述した目的を達するために第1の発明は、ワイヤ工具に用いられるダイヤモンド砥粒の製造方法であって、ダイヤモンド砥粒の表面に、カチオン系の界面活性剤により、正電荷を付与し、前記ダイヤモンド砥粒をパラジウム化合物が溶解した水溶液に浸漬することで、前記ダイヤモンド砥粒の表面に、パラジウム化合物を点在させ、前記ダイヤモンド砥粒の表面にパラジウム金属核を形成し、得られた前記ダイヤモンド砥粒を160℃〜500℃で1〜12時間焼成後、カチオン系の界面活性剤によって、前記ダイヤモンド砥粒の表面に再度正電荷を付与することを特徴とするダイヤモンド砥粒の製造方法である。なお、ダイヤモンド砥粒の焼成温度は160℃〜360℃の範囲とする方がより好ましい。また、上記手法は一例であり、砥粒の表面に、無電解めっきの前処理として行われる金属核生成方法であれば、その手法は特に限定されない。すなわち、金属核としてはパラジウムが最も望ましいが、この他に、白金、ロジウム、金、銀なども使用可能である。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系化合物のなどが挙げられ、この中からいずれか1種以上からなることが望ましい。
第1の発明によれば、砥粒の表面に金属核、例えばパラジウム金属核、を点在させることができる。したがって、砥粒が完全に金属の膜で被覆されることがない。このため、ワイヤ工具の製造時において砥粒を芯線に電着する際、芯線に付着した砥粒のエッジ部分等に電界が集中することがなく、砥粒の凝集を防ぐことができるとともに、砥粒上に別の砥粒が重なるように付着することを防ぐことができる。したがって、均一に砥粒が分散したワイヤ工具を提供できる。さらに金属核が存在することで、砥粒を芯材に強固に固定できる。
また、芯線に対して砥粒を保持するための電解めっきの際、砥粒表面には電流が流れにくいため、砥粒先端の電解めっきの成長を抑制することができる。したがって、砥粒先端のめっき厚を薄くすることができる。
また、砥粒自体に正電荷が付与されているため、砥粒を取り扱う際に、粉状の砥粒が凝集することを防止することができる。つまり、砥粒を溶液中に分散させた際に、砥粒同士が溶液中で凝集することを防止することができる。したがって、芯線に砥粒を電着させる際に、砥粒を均一に電着させることができる。
第2の発明は、金属核を砥粒表面に分散させ、さらに砥粒表面に正電化を付与したダイヤモンド砥粒を用いたワイヤ工具の製造方法であって、前記ダイヤモンド砥粒を芯線に電着させる電着工程と、前記ダイヤモンド砥粒を芯線に固着させる固着工程からなり、前記電着工程は、前記ダイヤモンド砥粒を含有したニッケルめっき浴で電着し、前記固着工程は、前記電着処理により、ダイヤを電着した芯線に対しニッケルめっき浴でめっき処理を行うことを特徴とするワイヤ工具の製造方法である。ニッケルめっき浴としては特に限定されなく、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸を含むスルファミンニッケル酸浴や、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸を含むワット浴などでよい。
前記砥粒は、ダイヤモンド砥粒の表面に、カチオン系の界面活性剤により、正電荷を付与し、前記ダイヤモンド砥粒の表面に金属核を形成し、得られた前記ダイヤモンド砥粒を焼成後、カチオン系の界面活性剤によって、前記ダイヤモンド砥粒の表面に再度正電荷を付与することで製造することが望ましい。
前記芯線は、前記芯線の周方向の断面において表面に凹凸形状を有し、さらに前記凹凸形状が残存するように表面にストライクめっきを施して形成されていてもよい。前記めっき層の一部をドレッシングにより剥離することにより、前記ダイヤモンド砥粒の一部が露出させてもよい。
第2の発明によれば、芯線の外周に形成されるめっき層によって、砥粒を確実に保持することができる。この際、芯線外周に形成されるめっき層の厚みを厚くしても、前述の通り、砥粒端部へのめっき層の成長が抑制される。したがって、砥粒を確実に保持可能であるとともに、砥粒表面へのめっき厚さを薄く(またはめっき層が形成されないように)することができる。さらに電着工程と固着工程とに分け、電着工程は砥粒を芯材に付着するため、固着工程はめっき層を形成するために設けられることで、砥粒によってめっき層の厚さが均等になり、ほとんど全ての砥粒が必要十分なめっき層で固定される。そのため、保持力不足により砥粒が脱落することもなく、必要以上のめっき層を形成することもなくなる。
また、芯線の表面を凹凸形状とすることで、砥粒およびめっき層の保持力を高めることができる。また、この凹凸が残るようにストライクめっきを施すことで、砥粒保持の際、さらに芯線との密着性の高いめっき層を成長させることができる。もちろん、凹凸形状のない芯線を使用することも可能である。
なお、芯線としては、高張力、高強度を有し導電性を有するものを利用でき、例えば金属線のピアノ線、ステンレス鋼線、タングステン線、モリブデン線、もしくは非金属線のガラスファイバ、アラミド繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維に導電性被覆層を設けたものなどを用いることができる。ピアノ線においては、防錆のため表面にあらかじめ銅や真鍮の被覆材が形成され、なだらかに形成される。必要であれば、当該被覆材を剥離することで、軸方向に垂直な方向の芯線断面において表面に凹凸形状を露出させることができる。さらに被覆材の剥離は、芯線の表面にできた酸化皮膜を除去することにもつながる。尚、ここで、非金属線を芯線として使用する場合は、芯線に導電性を付与するため、ガラスファイバや高分子の繊維に無電解めっきにより、金属めっきを行なって芯線の表面導電層を形成したり、あるいは導電性高分子を使用するか、または導電性材料を高分子に含有させたりして導電性を付与することができる。
このような凹凸形状の形成は、酸・アルカリ溶液で表面を荒らす化学的手法であってもよく、ダイスを通すなどの機械的手法であってもよく、逆電離などの電気化学的手法などで製造することができる。
第3の発明は、高強度で導電性を有する芯線と、前記芯線の外周に設けられるダイヤモンド砥粒と、前記芯線の外周に形成され、前記ダイヤモンド砥粒を保持するニッケルめっき層と、を具備し、前記ニッケルめっき層は、前記ダイヤモンド砥粒表面全体を被覆するものであり、前記ダイヤモンド砥粒の表面には、パラジウム金属核が点在して、パラジウム金属核の被覆率が砥粒の表面積に対して55%以上80%以下になるように被覆されていて、前記芯線の径方向のニッケルめっき厚さに対し、前記ダイヤモンド砥粒の先端部における前記ニッケルめっき層の厚みが、前記ダイヤモンド砥粒以外の部位における前記芯線表面の径方向の前記ニッケルめっき層の厚みよりも薄いことを特徴とするワイヤ工具である。なお、前記ダイヤモンド砥粒の先端部のめっき層厚み、ならびに前記芯線の表面におけるめっき層厚みとは、いずれも平均のめっき層厚みを意味する。
前記芯線は、ピアノ線の表面の被覆材が剥離された状態で表面にストライクめっきが施されて形成され、前記芯線の周方向の断面において表面に凹凸形状を有してもよい。このようにすることで、芯線の表面の汚れを洗浄することなく、芯線を使用することができる。また、芯線の表面をダイスにより僅かに除去することにより、芯線の表面層を露出させ、これをワイヤ工具の芯線として用いることができる。
第3の発明によれば、砥粒は十分な保持力で固定されている上、砥粒先端におけるめっき厚が薄いため、使用開始時に、切削開始後短時間で砥粒が露出し、ワイヤ工具の切削能力を発揮することができる。なお、本ワイヤ工具は前記のように使用することが可能であるが、ダイヤモンド砥粒の先端部のめっき層を剥離(除去)して使用しても良い。その場合、強固に固定されたダイヤモンド砥粒の先端部が露出し、ワイヤ工具の外径が揃ったワイヤ工具を使用できる。
本発明によれば、生産性に優れ、使用開始時に短時間で砥粒を切断に寄与させることが可能であり、さらに砥粒と芯材の密着が強固で、切断面の仕上がりにも優れるワイヤ工具等を提供することができる。
切断装置1を示す図。 ワイヤ工具7の断面図。 砥粒13の製造工程を示す図。 砥粒13を示す図。 ワイヤ工具製造装置30を示す概略図。 芯線11を製造する工程を示す図。 ワイヤ工具製造装置30を示す概略図。 (a)はワイヤ工具7の表面近傍の拡大図、(b)、(c)は従来のワイヤ工具の表面近傍の拡大図。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、切断装置1を示す概略図である。切断装置1は、切断対象物であるインゴット3をスライス加工するものである。切断装置1には、インゴット3を保持する保持部5と、ワイヤ工具7を移動させるための多溝を有するローラ9と、保持部5およびローラ9を駆動するための図示を省略したモータ等から構成される。
切断装置1では、ローラ9の外周に、所定の張力が付与された状態でワイヤ工具7が多数回巻回される。ワイヤ工具7は一方の側から送られ(図中矢印A方向)、他方の側から巻き取られる(図中矢印B方向)。駆動モータによってローラ9を可逆回転することにより、ワイヤ工具7をローラ9間で往復動させることができる。
例えば半導体用シリコン等のインゴット3を保持部5で保持させた状態で、ワイヤ工具7の移動方向に対して垂直に移動させる(図中矢印C方向)。保持部5に所定の荷重を付与し、インゴット3をワイヤ工具7に接触させることで、ワイヤ工具7によりインゴット3が切断される。すなわち、インゴット3を一度に多数枚の加工物にスライス切断することができる。なお、本発明の切断方法は、図示した例に限られず、本発明によるワイヤ工具を用いて行う切断加工にはすべて適用可能である。
次に、ワイヤ工具7について説明する。図2はワイヤ工具7の軸方向に垂直な方向の断面を示す図である。ワイヤ工具7は、主に芯線11、砥粒13、めっき層15等から構成される。
芯線11は、高強度で導電性を有する金属線、もしくは高強度で導電性被覆層を有した非金属線であり、金属線としては、例えばピアノ線、ステンレス鋼線、タングステン線、モリブデン線、導電被覆層を有する非金属線の素材としては、ガラスファイバ、アラミド繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等である。芯線11の線径は、被切削物により適宜選べばよい。
芯線11の外周面には、芯線11の軸方向に垂直な断面において、表面に凹凸形状が形成される。すなわち、芯線11表面の凹部または凸部は、芯線11の外周面の軸方向に沿って形成される。芯線11の製造方法については詳細を後述する。
芯線11の外周には、砥粒13およびめっき層15が設けられる。めっき層15は砥粒13の保持層として機能する。砥粒13としては、ダイヤモンド砥粒を用いることができる。また、めっき層15は、砥粒13を保持できればいずれの金属でも良く、例えば、ニッケル、銅、クロムなどを用いることが可能であり、防錆性、作業性、コスト面の観点からニッケルがより好ましい。
次に、砥粒13の製造工程について説明する。図3は、砥粒13の製造工程を示す図である。
次に、砥粒表面13aに対し、コンディショニング処理を施す(図3(b))。コンディショニング処理とは、カチオン系の界面活性剤(コンディショナー)を用いて砥粒表面13aの表面に正電荷17を与えるものである。このコンディショニング処理は、後述するパラジウム化合物を砥粒表面13aに引き寄せるためのものである。
界面活性剤としては、ダイヤモンド表面に正の電荷を与えるものであれば限定されず、例えばカチオン系の界面活性剤を用いることができる。例として、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩化合物系が挙げられるが、アミン塩系化合物がより好ましい。アミン塩系化合物は−N−を有するため、後述するパラジウム化合物を強く引く付けることができる。
次に、金属間化合物19の担持処理を行う(図3(c))。なお、本実施例においては、砥粒表面13aへの金属核の形成方法としてキャタリスト・アクセレータ法を用いる例を説明する。しかし、同様の構成を得ることができれば、他の方法を用いてもよい。
例えば、被めっき物をセンシタイザー溶液(塩化スズ(II)の塩酸溶液)に浸漬した後、アクチベータ溶液(塩化パラジウムの塩酸溶液)に浸漬する二液法(センシタイザー・アクチベータ法)などの他の公知の方法を採用することもできる。
まず、砥粒13を塩酸水溶液に塩化パラジウム及び塩化スズが溶解した溶液に浸漬する。これにより、スズ−パラジウム化合物が砥粒表面13aに引きつけられる。この際、砥粒表面13aには、スズ−パラジウムコロイドである金属間化合物19が点状に形成される。
次に、アクセレータ処理を行う(図3(d))。アクセレータ処理では、塩酸や硫酸などの酸性溶液からなるアクセレータ溶液に砥粒13を浸漬して、過剰のスズを溶解させる。これにより、砥粒表面13aには、パラジウムである金属核21が点状に担持される。
次に、金属核21が点状に形成された砥粒13に対し、焼成処理を施す。焼成処理は、恒温槽中で160℃〜500℃で1〜12時間(例えば180℃×6時間)行われる。焼成を行うことで、金属核21の表面の一部に酸素を付与することができる。
砥粒13の焼成を行い、金属核21の表面の一部を酸化させることで、後工程において、金属核21をより安定にすることができる。また、後述する再コンディショニングの工程において、金属核21中の酸素によって、正電荷をより吸着させやすく、また、正電荷を付与した効果をより安定して維持させることができる。
次に、焼結処理後の砥粒13に対し、再コンディショニング処理を行う(図3(e))。当該再コンディショニング処理は、前述のコンディショニング処理と同様の処理を行えばよい。再コンディショニング処理は、砥粒同士の凝集を抑制するための処理となる。
例えば、後述する砥粒13の電着工程おける電着槽内の溶液中において、砥粒13同士が凝集することを防止することができる。すなわち、砥粒13表面の電荷を調整することにより、後工程において砥粒13同士が電気的に反発し、砥粒13の凝集を防ぐことができる。また、後述する砥粒13の電着工程において、芯線11付近に浮遊している砥粒を芯線11に電気的に引き寄せることができ、生産性をあげることができる。
以上により、表面に点状の金属核21を有し、また、表面に正電荷17が付与された砥粒13を得ることができる。砥粒13の径は、芯線11の線径と同様に、被切削物の種類によって適宜選べばよい。
図4(a)は、砥粒13を示す概念図であり、図4(b)は、図4(a)のG部拡大図である。図4(b)に示すように、ダイヤモンド表面上の金属核21は互いに孤立した点状である。また、仮にダイヤモンド表面上に金属核21が部分的に連続した部分があったとしても、金属核の部分は互いに孤立した点状部分を多く含んでおり、全体的には必ずしも連続したものではない。このため、砥粒13の表面を金属核が膜状となって覆うことがなく、砥粒13表面の全体が導電材料によって導通しない、もしくは、導通しても電流が流れにくくなる。金属核21の被覆率は砥粒13の表面積に対して50%を超えて80%以下である。この理由は、金属核の被覆率が50%以下では、砥粒上のめっき層の形成状態にばらつきが生じ、めっき層が安定して形成されないためであり、また、金属核の被覆率が80%を越えると、砥粒のめっき厚さが厚くなり、ワイヤ工具で製品を切削する時にすべりを生じ、切削する製品の寸法精度や歩留まりが低下する。より好ましくは、金属核の被覆率は砥粒の表面積に対して55%以上80%以下である。金属核の被覆率をこのようにすることにより、めっき層が安定して形成され、切削対象とする製品の寸法精度や歩留まりの低下を招くことがない。
次に、ワイヤ工具の製造工程を説明する。図5及び図7は、ワイヤ工具製造装置30を示す概略図である。なお、以下の説明では、芯線素材20としてピアノ線を用いる例について説明する。
まず、芯線素材20を脱脂槽32に送り(図中矢印D方向)、水洗槽34で水洗する。脱脂槽32は、例えば水酸化ナトリウム水溶液が蓄えられた槽であり、芯線素材20の外表面に付着している油分等の汚れが除去される。水洗槽34では、表面に付着している脱脂槽32の薬液等が洗浄される。
図6(a)は、芯線素材20を示す図である。通常、ピアノ線は、金属線23の外表面に銅または真鍮の被覆材25が形成されて構成される。金属線23は、その軸方向に垂直な断面の表面において、製造工程等において形成される細かな凹凸形状を有する。すなわち、被覆材25は、この凹凸形状を埋めて、表面をなだらかにするために形成されるものである。
次に、芯線素材20は、剥離槽36に送られる。被覆材25の剥離は、酸・アルカリ溶液等を用いた化学的手法で行われる。なお、ダイスを通すなどの機械的手法や、逆電離などの電気化学的手法により行ってもよい。図6(b)は表面の被覆材25が剥離され、金属線23の表面が露出した状態を示す図である。
なお、被覆材25は完全に剥離しなくてもよく、その一部が残存してもよい。また、被覆材25の表面に、化学的手法、機械的手法、電気化学的な手法によって凹凸形状を形成してもよい。いずれの方法によっても、金属線23の表面に凹凸形状が形成されれば良い。もちろん、表面に凹凸形状を有さない、なだらかなピアノ線を用いることもできる。この場合は、図5において剥離槽36、水洗槽38を省略できる。
次に、芯線素材20は、水洗槽38で水洗された後、ストライクめっき槽40に送られる。ストライクめっき槽40は、金属線23に対して、その表面にストライクめっき27を施す工程である。芯線素材20は、陰極43と接続され、ストライクめっき槽40には、陽極45aが浸漬される。陽極45aは例えばニッケル電極である。陰極43および陽極45aは、図示を省略した電源に接続される。ストライクめっき27は、めっき層15との密着性に優れるものであることが望ましく、めっき層15がニッケルめっきであれば、ストライクめっき27も同じニッケルめっきとすればよい。
なお、ストライクめっき27は、図6(c)に示すように、金属線23の凹凸が完全に埋まらずに残存する程度に形成してもよい。例えば、金属線23として、線径0.12mmのピアノ線に対して、ストライクめっき27を1〜5μm程度形成すればよい。すなわち、ストライクめっき27を形成して形成される芯線11の表面には、金属線23由来の凹凸形状が形成される。
ストライクめっき槽40で表面にストライクめっき27が形成された芯線11は、次に電着槽35に送られる(図5および図7の矢印E方向)。
電着槽35は、芯線11に砥粒を電着するための槽である。電着槽35は、例えば、砥粒13を含有したスルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸からなり、pHが3.0〜4.5程度に調整されたスルファミン酸ニッケル浴である。芯線11は、陰極43と接続され、電着槽35には、陽極45bが浸漬される。陽極45bは例えばニッケル電極である。陰極43および陽極45bは、図示を省略した電源に接続される。
前述の通り、砥粒13の表面には正電荷が付与される。したがって、電着槽35浴内で電気的斥力を用いて砥粒13同士の凝集を防止するとともに、陰極43側の芯線11と砥粒13の電気的引力で芯線11への砥粒13の付着させることができる。すなわち、電着槽35内の溶液に砥粒13を投入した際、溶液中で砥粒13同士が引き寄せあって凝集することがない。また、砥粒13同士は、溶液中に均一に分散させることができる。また、砥粒13を短時間で芯線11に電着させることができる。
このように、電着槽35は、砥粒13を芯線11に電着させるためのみに用いられる。このため、めっき浴の濃度、pH、温度や芯線11に流す電流、等は電着する砥粒13の量により調整される。このため、均一に砥粒13を付着させることができる。
次に、砥粒13が電着された芯線11は、めっき槽37に送られる。めっき槽37は、電着槽35と略同様の溶液を使用することができる。すなわち、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸からなり、pHが3.0〜4.5程度に調整されたスルファミンニッケル酸浴を用いることができる。めっき槽37には、陽極45cが浸漬される。陽極45cは例えばニッケル電極である。陽極45cは、図示を省略した電源に接続される。なお、電着槽35、めっき槽37はワット浴を用いることもできる。
めっき槽37は、砥粒13を芯線11に保持するためのめっき層15を形成する槽である。このため、めっき槽37の電流密度や液温は適当なめっき層15の厚さを形成できるように決定される。なお、ストライクめっき槽40、電着槽35およびめっき槽37は、温度勾配防止、濃度勾配(陰極拡散層形成)防止、及び砥粒を均一に浮遊させるために、常時攪拌されていることが好ましい。
芯線11の外表面にめっき層15が形成された後、水洗槽39で水洗されて余分な薬剤等が洗浄される。最後に、十分に乾燥した後、巻き取り装置41によって芯線11が巻き取られて(図中矢印F方向)、ワイヤ工具7が製造される。
図8(a)は、前述の方法で製造されたワイヤ工具7の砥粒13近傍の拡大図である。本発明にかかるワイヤ工具7では、芯線11の表面に薄いストライクめっき27が形成され、さらにその上にめっき層15が形成される。芯線11の表面には凹凸形状が形成されるため、付着面積の増大やアンカ効果によって、ストライクめっき27およびめっき層15の密着性に優れる。
芯線11の外表面には砥粒13がめっき層15で保持される。砥粒13の表面には、金属核が点状に形成され、表面全体が導通しない、もしくは、電流が流れにくい。したがって、砥粒13の先端(図中上方であって、ワイヤ工具の径方向の外端部)には、電解めっきが形成されにくい。したがって、砥粒13の端部におけるめっき層15の厚み(図中T1)が、砥粒13以外の部位における芯線11表面のめっき層15の厚みよりも薄い。
なお、本発明において、砥粒13の端部におけるめっき層15の厚みが薄いとは、砥粒13の端部にめっき層15が形成されずに、砥粒13が露出する場合(すなわち、めっき層15の厚みが0の場合)も含むものである。したがって、本発明には、砥粒13の端部が露出しているものも含むものである。
したがって、砥粒13を保持するために必要な厚みのめっき層15を芯線11の外表面に形成しても、砥粒13の端部においては、めっき層15を薄くすることができる。砥粒13の表面のめっき層15の厚みを薄くすることができるため、ワイヤ工具7の使用開始直後に、めっき層15がすぐに摩耗して(またはめっき層が存在しないため)砥粒13が露出した状態とすることができる。したがって、十分に砥粒が保持された状態で、砥粒13による切削能力を使用開始直後に発揮させることができる。砥粒13表面のめっき層15を剥離(除去)する場合でも、めっき層15が薄く形成されているので、素早く剥離工程を終えることが可能となり、生産性が向上し、剥離(除去)工程によるダイヤの脱落も起こらない。さらに、砥粒13は凝集せずに芯線11に固着されるため、外径の揃ったワイヤ工具7を使用できる。なお、めっき層15の剥離(除去)の方法は一般的に行われる手法でよく、例えば、砥粒を電着したワイヤをドレッシングストーンに通して研磨する方法がある。ドレッシングストーンとしては、炭化ケイ素(WA:ホワイトアランダム)、アルミナ(GC:グリーンカーボランダム)、石英などが挙げられる。
これに対し、図8(b)に示すように、砥粒の表面に金属被覆117が形成された砥粒113を用いると、砥粒113が芯線111に付着した段階で、砥粒113表面にも電流が流れる。このため、芯線111の表面にめっき層115を形成する際に、芯線111の表面と同様に砥粒113の外表面にも同様にめっき層115が成長する。特に、砥粒113の端部(エッジ部)には、電界が集中するため、砥粒113の先端のめっき厚がさらに厚くなる。
したがって、砥粒113の表面のめっき厚(図中T2)は、金属被覆117の厚みと、めっき層115の厚みの和となるため、芯線111の表面に形成されるめっき層115の厚みと同等またはそれ以上となる恐れがある。このため、砥粒113を保持可能な程度の厚みのめっき層115を形成すると、砥粒113端部のめっき厚が過剰に厚くなる。したがって、ワイヤ工具の使用開始時に、めっき層115および金属被覆117が摩耗して砥粒113が露出するまでに時間を要する。このため、砥粒113の切削能力を発揮させるまでに時間を要する。また、砥粒113の表面のめっき層115をワイヤ工具の使用前に剥離(除去)する場合においては、砥粒113上のめっき層115が厚いため、剥離工程に時間を要し、生産上好ましくない。また、剥離工程に時間を要することで、ダイヤの固着力が低下し、脱落する恐れがある。
また、従来の芯線111としてピアノ線を用いた場合には、前述したように、表面に凹凸がなくなるように被覆層が形成されている。したがって、めっき層15の密着性にも劣る。
また、従来の金属被覆117が施された砥粒113を用いると、砥粒113自体が重なり合う恐れがある。図8(c)は、砥粒113が重なって設けられた状態を示す図である。砥粒113の外表面は導体で被覆される。このため、電着時に下層側の砥粒113が芯線111に付着すると、砥粒113外表面もさらに砥粒113の付着部となってしまう。したがって、芯線111の表面に付着された砥粒113の上にさらに別の砥粒113が付着される場合がある。
この状態でめっき層115が形成されると、めっき層115は、重なり合った砥粒113全体を覆うように成長する。したがって、砥粒113が十分に保持されず、使用時に脱落し、加工面を傷つける可能性がある。また、ワイヤ工具の全体の外径が大きくなるため、切断代が大きくなる。さらに切削時に大きなスクラッチ傷を形成する恐れがある。
これに対し、本発明では、芯線11に引き寄せられた砥粒13が芯線11に付着しても、砥粒13の端部の正電荷が直ちに消失することがない。したがって、砥粒13同士が引き寄せあうことを防止することができる。
なお、完全に金属核を有さない砥粒を用いると、めっき層15を形成した際に、砥粒表面とめっき層との間の密着性が悪く、砥粒の保持力が低下する。砥粒をめっき層で十分な保持力を維持するためには、めっき層を厚くしなければならず、めっき層形成に時間を要する。本発明では、砥粒13の表面に、点状に金属核21を形成することで、めっき層15との密着性を高めることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、砥粒13の表面に金属核21を点在させるため、砥粒13が完全に金属の膜で被覆されることがない。また、金属核21に対して焼成後にコンディショニング処理を行うため、金属核21に対してより効率良く正電荷17を付与することができる。このため、ワイヤ工具7の製造時において砥粒13を芯線11に電着する際、砥粒13の凝集を防ぐことができるとともに、砥粒13上に別の砥粒13が重なるように付着することを防ぐことができる。したがって、均一に砥粒13が分散したワイヤ工具7を得ることができる。
また、芯線11に対してめっき層15を形成する際、砥粒13表面には電流が流れにくい。このため、砥粒13先端の電解めっき層15の成長を抑制することができる。したがって、砥粒13先端のめっき厚を薄くすることができる。したがって、使用開始直後に、砥粒13による切断能力を発揮させることができる。
また、芯線11の表面に凹凸形状が形成させた上、砥粒には金属核が存在するため、砥粒13およびめっき層15の保持力を高めることができる。また、この凹凸が残るようにストライクめっき27を施すことで、めっき層15を確実に密着させることができる。
本発明にかかるワイヤ工具と、従来の金属層が被覆された砥粒を用いたワイヤ工具とを用いて、切削性等について比較した。
本発明にかかるワイヤ工具は、以下のように製造した。芯材線径0.12mmの銅めっきが施されたピアノ線を強酸に浸漬し銅めっきを剥離し、表面に凹凸を形成した。また、表面に凹凸形状が形成された金属線にストライクニッケルめっきを3μm施した。
砥粒としては、平均砥粒径13.4μmのダイヤモンド砥粒(トーメイダイヤ社製IRM10-20)を用いた。砥粒は、表面に正電荷を与えるためにコンディショニング処理を施した。コンディショニング処理は、アミン塩系化合物である第4級アンモニウム塩系化合物をカチオン系界面活性剤として用いて処理を行った。
次に、砥粒をパラジウム化合物溶解した溶液に50℃で5分間浸漬して金属間化合物担持処理を行った。以上により、金属核であるパラジウム核を表面に点在させた。
次に、金属核が点状に形成された砥粒に対し、180℃×6時間の焼成処理を施した。さらに、焼結処理後の砥粒に対し、再度コンディショニング処理を再度行った。
得られた砥粒を電着槽に投入し、図5〜図7に示した工程でワイヤ工具を製造した。電着槽およびめっき層には、スルファミン酸ニッケル300g/l、塩化ニッケル5g/l、ホウ酸40g/l、によりpH4.0に調整した電解浴を用いた。以上により、ワイヤ工具を製造した。
比較例として、以下のワイヤ工具を製造した。芯線としては、断面が円形の銅めっきが施されている線径0.12mmピアノ線を用いた。また、ニッケルが質量比で30%被覆された平均砥粒径13.4μmのダイヤモンド砥粒(トーメイダイヤ社製IRM−NP30% 10-20)を用いた。電着およびめっき工程は、本発明の方法と同様とした。
本発明のワイヤ工具(実施例)と、従来のワイヤ工具(比較例)を用いて、被切削物の切削を行った。被切断物としては156mm角の直方体形状の単結晶シリコンを用いた。切削条件としては、線速度600m/minで往復運動させながら、被切削物を4Nで押し付け、ワイヤ工具にはテンション25Nをかけた状態で単結晶シリコンを切断した。なお、切り粉の排出と加工部分の冷却のために加工部分に水道水を30L/minでかけながら加工を行った。
上記実施例と比較例それぞれに対して、切削開始3分間での切削量と、切削代(カーフロス)、厚みバラつきTV9、表面粗さRaの比較を行った。さらに切削前のワイヤ工具の表面観察から砥粒の凝集度等について評価を行った。
切削量は、製造直後のワイヤ工具を用いて被切削物の切削を開始し、3分後における切削深さを評価した。カーフロスは、被切削物に形成された切削代を評価した。TV9とは、日本水晶デバイス工業会で規定される技術基準(QIAJ−B−007)における、「3.7.4 TV5」に準ずるものである。すなわち、切削終了後の表裏間の平行度を表すもので、スライスの中心点と周囲8点(合計9点)で測定された厚さの最大値と最小値の差を指すものである。
また、切削前のワイヤ工具の表面観察から砥粒の凝集箇所(長手方向に1mmにおいて砥粒が2個以上凝集している箇所)を数え、同時間・同条件で加工した後のワイヤ工具の観察から脱落箇所(切削した部分の長手方向1mmにおける砥粒が抜け落ちた箇所)の数を数えそれぞれ砥粒の均一性と密着性の評価を行った。結果を表1、表2に示す。
Figure 0005705813
Figure 0005705813
実施例と比較例のそれぞれのワイヤ工具外径を調査したところ、同一の素材を用いているが比較例のワイヤ工具の方が、その外径が大きい結果となった。これは、砥粒に形成された金属被覆の厚みや、砥粒端部に形成されるめっき層の厚みの影響と考えられる。
ここで、実施例と比較例は、製造条件・切削条件等はほぼ同じであるが、それぞれのワイヤ工具によって、3分間の切削を行ったところ、実施例では3.48mmまで切断されたのに対し、比較例では2.66mmの切削に留まった。
これは、切削開始直後は、砥粒の端部に金属めっきが形成されているため、ワイヤ工具の切削機能が発揮されず、めっきが剥離した後に切断が進行するためと考えられる。すなわち、めっきが厚く形成された比較例は、加工開始から実際に切削が始まるまでの時間を要したため、切削量が少なくなったものと考えられる。
また、それぞれのワイヤ工具によって、被切削材を切削してカーフロスを計測したところ、実施例は、比較例よりもカーフロスが少ない結果となった。これは、前述したワイヤ工具径の影響や、砥粒が均一に分散している効果であると考えられる。
また、TV9、面粗さRaにおいても実施例の方が比較例に対して切削精度に優れていることからも、実施例では、砥粒の分散性に優れ、砥粒へのめっき厚が薄いため、砥粒端部のめっきと切削面との滑りなどによる切削面への傷等の影響が小さいものと考えられる。
実際に、実施例と比較例のワイヤ工具の砥粒の状態を確認したところ、実施例では、使用前の状態(製造された状態)で砥粒の凝集は見られなかった。これは、前述したように、砥粒へ金属核を点在させてから焼成およびコンディショニングを行ったため、砥粒を浴中で分散させることができ、砥粒同士が接触するように芯線に電着されることが抑制されたためと考えられる。
これに対し、比較例では、砥粒同士の凝集部が確認された。これは、前述したように、例えば砥粒が芯線に接触した際、砥粒表面が新たな砥粒の吸着点となるため、砥粒同士が凝集しやすいためである。
また、使用後の実施例と比較例のワイヤ工具の砥粒の状態を確認したところ、実施例は、比較例に対し、脱落した砥粒が少ない結果となった。これはピアノ線の表面に凹凸形状を形成しており、さらに、ストライクニッケルめっきを施し、その上、金属核とニッケルめっきの密着性により砥粒の保持力が上昇し、より確実に砥粒を保持しているためと考えられる。
以上の結果から、金属核を表面に点在させて、焼成およびコンディショニング処理を施した砥粒と、表面に凹凸形状を有する芯線とを用いて製造した本発明のワイヤ工具によれば、砥粒が凝集することなく均一に固着されており、切れ味を発揮するまでの時間が早く、砥粒の金属線への密着力が強固で寿命が長く、生産性の高いワイヤ工具を得ることができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、金属核の形成方法は、前述した方法に限られず、化学的または物理的手法によって形成してもよい。
1………切断装置
3………インゴット
5………保持部
7………ワイヤ工具
9………ローラ
11………芯線
13………砥粒
13a………砥粒表面
15………めっき層
17………正電荷
19………金属間化合物
20………芯線素材
21………金属核
23………金属線
25………被覆材
27………ストライクめっき
30………ワイヤ工具製造装置
32………脱脂槽
34………水洗槽
35………電着槽
36………剥離槽
37………めっき槽
38、39………水洗槽
40………ストライクめっき槽
41………巻き取り装置
43………陰極
45a、45b、45c………陽極
111………芯線
113………砥粒
115………めっき層
117………金属被覆

Claims (8)

  1. ワイヤ工具に用いられる、ダイヤモンド砥粒の製造方法であって、
    カチオン系の界面活性剤により、前記ダイヤモンド砥粒の表面に正電荷を付与し、
    前記ダイヤモンド砥粒を、パラジウム化合物が溶解した水溶液に浸漬することで、前記ダイヤモンド砥粒の表面に、パラジウム化合物を点在させ、
    前記ダイヤモンド砥粒の表面にパラジウム金属核を形成し、
    得られた前記ダイヤモンド砥粒を160℃〜500℃で1〜12時間焼成後、カチオン系の界面活性剤によって、前記ダイヤモンド砥粒の表面に再度正電荷を付与することを特徴とするダイヤモンド砥粒の製造方法。
  2. 前記界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系化合物のいずれか1種以上からなることを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド砥粒の製造方法。
  3. 金属核を砥粒表面に分散させ、さらに砥粒表面に正電化を付与したダイヤモンド砥粒を用いたワイヤ工具の製造方法であって、
    前記ダイヤモンド砥粒を芯線に電着させる電着工程と、
    前記ダイヤモンド砥粒を芯線に固着させる固着工程からなり、
    前記電着工程は、前記ダイヤモンド砥粒を含有したニッケルめっき浴で処理し、
    前記固着工程は、ニッケルめっき浴でめっき処理を行うことを特徴とするワイヤ工具の製造方法。
  4. 前記砥粒は、カチオン系の界面活性剤により、前記ダイヤモンド砥粒の表面に正電荷を付与し、
    前記ダイヤモンド砥粒の表面に金属核を形成し、
    得られた前記ダイヤモンド砥粒を焼成後、界面活性剤によって、前記ダイヤモンド砥粒の表面に再度正電荷を付与することで製造することを特徴とする請求項3記載のワイヤ工具の製造方法。
  5. 前記芯線は、前記芯線の周方向の断面において表面に凹凸形状を有し、さらに前記凹凸形状が残存するように表面にストライクめっきを施して形成されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のワイヤ工具の製造方法。
  6. 前記めっき層の一部をドレッシングにより剥離することにより、前記ダイヤモンド砥粒の一部が露出させることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載のワイヤ工具の製造方法。
  7. 高強度で導電性を有する芯線と、
    前記芯線の外周に設けられるダイヤモンド砥粒と、
    前記芯線の外周に形成され、前記ダイヤモンド砥粒を保持するニッケルめっき層と、
    を具備し、
    前記ニッケルめっき層は、前記ダイヤモンド砥粒表面全体を被覆するものであり、
    前記ダイヤモンド砥粒の表面には、パラジウム金属核が点在して、パラジウム金属核の被覆率が砥粒の表面積に対して55%以上80%以下になるように被覆されていて
    前記芯線の径方向のニッケルめっき厚さに対し、前記ダイヤモンド砥粒の先端部における前記ニッケルめっき層の厚みが、前記ダイヤモンド砥粒以外の部位における前記芯線の表面の径方向の前記ニッケルめっき層の厚みよりも薄いことを特徴とするワイヤ工具。
  8. 前記芯線は、ピアノ線の表面の被覆材の少なくとも一部が剥離された状態で表面にストライクめっきが施されて形成され、前記芯線の周方向の断面において表面に凹凸形状を有することを特徴とする請求項記載のワイヤ工具。
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