JP5700769B2 - 医用画像診断装置及び輪郭抽出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、検査の為に生体組織の輪郭を抽出する医用画像診断装置等に関するものである。
生体組織の長さ、面積、容積など形状に関する情報は、病変の程度を診断する重要な情報の一つである。これらの情報は、医用画像診断装置によって計測される。検者の負担を軽減し、検査時間を短くするために、簡便なユーザインタフェイスを備え、かつ、高精度な計測が可能な医用画像診断装置が求められている。
生体組織の形状を計測するためには、計測対象の輪郭を抽出する必要がある。従来は、例えば、検者が入力機器を操作して、画面に表示されるカーソルを組織の輪郭に合わせてなぞる(組織の輪郭の上をカーソルが移動するように指示する)ことによって、計測対象の輪郭を抽出する。
別の手法としては、医用画像診断装置が、自動的に組織の輪郭を抽出する手法が考えられる。この手法では、輪郭の自動抽出処理の精度が低い場合、さらに手動によって(検者による入力機器の操作によって)、輪郭を修正することがある。
特許文献1では、手動による輪郭修正方法として、修正したい位置に修正線を設定し、元の輪郭線とつなぎ換える技術が提案されている。
また、特許文献2では、画像上に設定された一群の連続する多節線分または点列P1、P2、・・・、Pnで規定される関心領域の形状を修正する場合、多節線分または点列を等間隔に配列し、その内の一つを選択してこれをドラッグすることによって、選択した多節線分または点列に隣接する他の多節線分または点列の一つまたは複数を、所定の張力に応じて追随して移動させる技術が提案されている。特許文献2の技術では、段落0024に記載の通り、閉曲線の張力という概念を導入し、移動方向が内側に向うものであれば張力を強くして、隣接点の移動量を抑制し、逆に移動方向が外側に向かうものであれば張力を弱くして隣接点の移動量を抑制するという処理を実行する。
特開平7−37107号公報 特開2000−308619号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、修正位置以外の輪郭線や、複数の輪郭線が存在する場合に、輪郭全体の形状のバランスを考慮するような機構が備えられていない。また、修正線の設定が完了するまでは、元の輪郭線とつなぎ換えられないため、修正線設定中にどのような輪郭線に修正されるか確認できない。
また、特許文献2の技術では、閉領域の張力という概念が、生体組織の輪郭と全く関係がないものである為、修正線が生体組織の輪郭と偶然に一致するまで、検者は何度も、多節線分または点列を移動させる必要がある。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、検者が生体組織の輪郭を修正する際、少ない操作回数によって輪郭全体を正確に抽出でき、かつ簡便なユーザインタフェイスを備える医用画像診断装置等を提供することである。
前述した目的を達成するために第1の発明は、生体組織の輪郭を抽出する医用画像診断装置であって、前記生体組織の輪郭モデルを計測項目とともに記憶する輪郭データベースと、前記生体組織の輪郭を表現する為の複数の離散的な点列である輪郭点を、操作者からの移動指示に応じて移動し、かつ前記輪郭を抽出する処理において位置を動かさない点である第1の点と、前記第1の点以外の複数の第2の点とに区別して設定する設定手段と、前記第1の点を移動させた際に、該移動させた第1の点の位置と計測項目に応じた前記輪郭モデルを読み出し、該読み出した輪郭モデルを用い、前記複数の第2の点をすべて移動対象として輪郭全体のバランスを考慮して移動させ、前記生体組織の輪郭を抽出する抽出手段と、を具備し、前記設定手段は、入力部を介して所定のボタンが押下されると、全ての前記輪郭点を前記第1の点に設定することを特徴とする医用画像診断装置である。
第2の発明は、生体組織の輪郭モデルを計測項目とともに記憶する輪郭データベースを具備する医用画像診断装置が、前記生体組織の輪郭を抽出する輪郭抽出方法であって、前記生体組織の輪郭を表現する為の複数の離散的な点列である輪郭点を、操作者からの移動指示に応じて移動し、かつ前記輪郭を抽出する処理において位置を動かさない点である第1の点と、前記第1の点以外の複数の第2の点とに区別して設定する設定ステップと、前記第1の点を移動させた際に、該移動させた第1の点の位置と計測項目に応じた前記輪郭モデルを読み出し、該読み出した輪郭モデルを用い、前記複数の第2の点をすべて移動対象として輪郭全体のバランスを考慮して移動させ、前記生体組織の輪郭を抽出する抽出ステップと、を実行し、前記設定ステップにおいて、入力部を介して所定のボタンが押下されると、全ての前記輪郭点を前記第1の点に設定することを特徴とする輪郭抽出方法である。
本発明により、検者が生体組織の輪郭を修正する際、少ない操作回数によって輪郭全体を正確に抽出でき、かつ簡便なユーザインタフェイスを備える医用画像診断装置等を提供することができる。ひいては、検者の負担を軽減し、検査時間を短くすることができる。
超音波診断装置1の構成図 左室駆出率を計測するときの表示画面の一例 輪郭抽出処理の詳細を示すフローチャート 不動点及び可動点を設定する処理を説明する為の図 内膜及び外膜の輪郭を抽出する処理を説明する為の図 不動点の移動による輪郭修正の一例 不動点の追加及び移動による輪郭修正の一例 全ての輪郭点を不動点としたときに、一部の不動点の移動による輪郭修正の一例 右室や短軸像を対象とする輪郭抽出処理を説明する為の図
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
最初に、図1、図2を参照しながら、全ての実施形態において共通する医用画像診断装置の構成について説明する。
本発明の実施の形態では、医用画像診断装置として、図1に示す超音波診断装置1を例に挙げて説明する。但し、本発明はこの例に限定されるわけではなく、X線CT(computed tomography)装置やMRI(magnetic resonance imaging)装置など、生体組織の輪郭を抽出して形状を計測する医用画像診断装置に広く適用可能である。
図1に示すように、超音波診断装置1は、超音波信号生成部3、超音波画像生成部4、記憶部5、出力・表示部6、入力部7、輪郭点設定部8、輪郭抽出部9、輪郭データベース10、計測部11、制御部12を備えている。
超音波信号生成部3は、図示しない探触子、超音波信号送受信部を通して、被検体2の生体組織の超音波信号を生成する。探触子は、振動子から対象組織に向かって超音波を発信し受信する装置であり、リニア型、コンベックス型、セクタ型などである。超音波信号送受信部は、探触子との間で、超音波信号を送受信する。超音波信号生成部3は、制御部12から送受信のパワーやタイミングの情報を受け取り、所望の超音波信号が得られるように、超音波信号送受信部を制御する。そして、超音波信号生成部3は、超音波信号送受信部から受け取る信号を、整相回路や増幅回路に通し、装置の撮像設定に従って信号処理を行い、超音波信号を生成する。
超音波画像生成部4は、超音波信号から装置の撮像設定、例えば、超音波ビームの走査範囲、ゲイン設定などに基づいて、超音波画像を生成する。超音波画像は、撮像設定によって決定されるフレームレートに従って常時更新されるものである。すなわち、超音波画像生成部4によって生成される超音波画像は、出力・表示部6によって映像として超音波診断装置1の画面に表示される。
記憶部5は、超音波信号、超音波画像、心電図などの被検体2から取得される信号、画像データを記憶する。また、記憶部5には、超音波診断装置1を構成する各部を動作させるためのプログラムが格納されている。記憶部5は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、光ディスクなどの記憶媒体である。さらには、記憶部5は、ネットワークを通した外部記憶媒体でもよい。
出力・表示部6は、超音波診断装置1のディスプレイに超音波画像を表示したり、輪郭抽出部9によって抽出される輪郭を超音波画像に重畳して表示したり、計測部11によって計測される生体組織の形状の計測値を表示したりする。また、出力・表示部6は、超音波画像や計測値を記憶部5に記憶させたり、計測レポートとして出力したりする。
入力部7は、超音波診断装置1の各種操作を行うユーザインタフェイスである。特に、本発明では、入力部7は、超音波診断装置1のディスプレイにおいて、検者が計測したい項目や、生体組織の位置を指定するために用いられる。入力部7は、例えば、キーボード、トラックボール、スイッチ、ダイヤル等の入力機器である。さらには、入力部7は、音声入力と組みあわせてもよい。
輪郭点設定部8は、入力部7を用いて指定される生体組織の位置の座標を取得し、輪郭点の一つとして設定する。ここで、輪郭点とは、生体組織の輪郭を表現する為の複数の離散的な点列である。尚、輪郭点は、1つの画素に限らず、複数の画素の集合をも含む概念である。すなわち、輪郭点は、1画素によって示される領域だけでなく、複数画素が連結される領域をも含む概念である。従って、輪郭点がディスプレイに表示されるときには、人間の目には、線や矩形として観察される場合もある。また、輪郭点がディスプレイに表示されるときには、後述するように、何らかの記号(例えば、「+」記号や「●」記号)として表示するようにしても良い。
輪郭点設定部8は、輪郭点を、後述する輪郭抽出部9の処理において位置を動かさない不動点、及び、輪郭抽出部9の処理において輪郭全体のバランスを考慮して位置を移動させる可動点、のいずれかとして設定する。
不動点は、検者からの指示によって移動させることが可能な点である。輪郭点設定部8は、不動点の移動の指示を受け付けて、不動点の移動が指示されると、移動後の座標を取得し、新たな位置として設定する。
輪郭抽出部9は、少なくとも不動点を通る輪郭を抽出する。輪郭は、不動点を通り、かつ、生体組織の形状にフィットするように抽出される必要がある。輪郭抽出部9による処理は、例えば、エッジ検出、動的輪郭モデル、領域分割などを利用する手法が適用できる。これらの手法は、輪郭が不動点を通るように制御され、スプライン曲線のような曲線モデルを用いて滑らかな形状に変形しても良い。輪郭抽出部9による処理の結果は、出力・表示部6によって、超音波画像に重畳して、超音波診断装置1のディスプレイに表示される。
輪郭データベース10は、生体組織の長さ、面積、容積などを示す計測項目や、輪郭点に対応する輪郭の本数、位置、形状に関する生体組織の輪郭モデルが記憶されている。これらの情報は、入力部7および輪郭点設定部8によって、輪郭点が設定されたり、不動点と可動点の切り替えを行ったり、不動点を検者の指示に従って移動させたりする場合に、最適な輪郭を抽出するように随時参照される。例えば、輪郭モデルとしては、数学関数や、過去に取得された輪郭データを統計解析したデータが記憶されている。
計測部11は、計測項目に関する計測値を算出する。計測項目は、輪郭の長さ、輪郭内の面積や容積などである。例えば、心臓に関する超音波画像の場合、容積については、Area−length法やModified Simpson法などの既存の計測方法を適用できる。左室駆出率(EF)は、拡張末期容積と収縮末期容積の差を拡張末期容積によって除した値として算出される。計測値は、出力・表示部6によって、超音波画像とともに、超音波診断装置1のディスプレイに表示される。
図2には、超音波診断装置1が表示する表示画面201の一例が示されている。表示画面201は、左室拡張末期画像202及び左室収縮末期画像203(生体組織の実際の輪郭は、点線にて図示)が表示されている。また、表示画面201には、計測項目に関する計測結果を示す計測値207が表示されている。また、表示画面201には、不動点設定ボタン208が表示されている。
左室拡張末期画像202及び左室収縮末期画像203には、不動点204(「+」記号にて図示)、可動点205(「●」記号にて図示)、及び、輪郭206(「+」記号や「●」記号を結ぶ太線にて図示)が重畳されている。
図2に示す例では、不動点204が1つだけである。この場合、輪郭抽出部9は、例えば、1つの不動点204の位置を固定し、輪郭データベース10に記憶されている輪郭モデルを参照しながら、輪郭全体のバランスを考慮して、複数の可動点205の位置を移動し、輪郭206を抽出する。
制御部12は、システム全体を制御するとともに、計測項目や輪郭点を設定、変更した場合に、輪郭点設定部8、輪郭抽出部9、計測部11、出力・表示部6までの一連の処理の同期を制御する。制御部12は、例えば、CPU等の制御装置を用いたものである。
<第1の実施の形態>
以下、対象とする生体組織を心臓とし、心臓の容積などの形状を計測する場合を例に、図3から図6を参照しながら、第1の実施の形態に係る超音波診断装置1の処理を説明する。
第1の実施の形態では、超音波診断装置1は、生体組織の修正前の輪郭である修正前輪郭に対して、輪郭を表現する為の複数の離散的な点列である輪郭点を、不動点及び可動点を区別して設定する。そして、超音波診断装置1は、不動点の全部または一部の移動を受け付けて、移動後の不動点に基づいて修正前輪郭を修正し、修正後の輪郭である修正後輪郭を生成する。
検者は、最初に輪郭点の位置を設定したあと、検者自身が不動点の移動を指示することができる。移動後の不動点の座標値は、輪郭点設定部8によって取得され、輪郭抽出部9に渡される。すなわち、輪郭の位置を後から調整することができるようになっている。図3に示すフローチャートでは、最初に、3つの輪郭点を不動点として新規に設定したときの動作について説明し、次に、3つの不動点を移動させたときの動作について説明する。
図3に示すように、超音波診断装置1の出力・表示部6は、対象とする生体組織の画像を表示画面201に表示する(S101)。ここでは、左室容積計測、左室心筋重量計測、左室駆出率計測の例について説明する。表示画面201には、図2に示すように、左室心尖4腔像の拡張末期画像202と収縮末期画像203が並べて表示される。
次に、検者は、入力部7を介して、計測対象組織の輪郭点を設定する(S102)。図4の左図には、4腔像の特徴となる位置に3つの輪郭点a、b、cが設定されている。具体的には、輪郭点a、bが弁輪部2点であり、輪郭点cが心尖部1点である。尚、本発明を分かり易く説明する為、図4の左図では、心尖部1点を示す輪郭点cは、正確な位置よりも、やや下方に設定している。これらの輪郭点3点は、輪郭点設定部8によって不動点(「+」記号)に設定される。輪郭点a、b、cは、検者によって、抽出したい輪郭が必ず通る位置として設定されている。従って、以後、検者が、入力部7を介して、輪郭点の移動を指示しない限り、後述するS103の輪郭抽出処理において固定される。
尚、当然ながら、輪郭点の数、位置は限定されない。輪郭点の数は、図2に示すように、少なくとも1個あれば良い。例えば、図2に示すように、心尖部1点が指定されれば、後述するように、S103にて、心尖部1点に対応する輪郭モデルが設定される。また、輪郭点の位置も、どこに設定しても良い。
次に、超音波診断装置1の輪郭抽出部9は、輪郭点と画像輝度情報を用いて、詳細な輪郭を抽出する(S103)。最初に、輪郭抽出部9は、S102にて設定された輪郭点を利用して、可動点を設定する。図4の右図に示されるように、不動点a、b、cを通る第1曲線の輪郭点と、第1曲線よりも外側の位置を通る第2曲線の輪郭点が設定される。
第1曲線とは、S102にて設定される輪郭点を通る曲線である。第2曲線とは、第1曲線と対応付けて設定される曲線である。
尚、この例では、輪郭抽出部9は、不動点a、b、cを除いて、全て可動点(「●」記号)として設定する。
ここで、第1曲線及び第2曲線の形状及び位置の決定処理について説明する。輪郭データベース10には、第1曲線及び第2曲線を決定するための手順が記憶されている。この例のように、心尖4腔像の心腔容積や心筋重量の計測を目的として、内膜の輪郭点が3つ設定された場合、計測項目(心腔容積や心筋重量を計測するという情報)と、S102にて設定される輪郭点(弁輪部2点、心尖部1点)によって決定される第1曲線、及び、第1曲線と対応付けて設定される第2曲線の情報が輪郭モデルとして輪郭データベース10に記憶されている。
従って、輪郭抽出部9は、計測項目とS102にて設定される輪郭点とに基づいて、輪郭モデルを輪郭データベース10から読み出し、不動点a、b、cを通るように、読み出した輪郭モデルを拡大又は縮小して、第1曲線及び第2曲線の位置及び形状を決定する。
例えば、輪郭データベース10に記憶されている輪郭モデルが、3点を通る2次多項式曲線とすると、不動点a、b、cの座標から多項式の係数を算出して、一意に曲線の位置及び形状を求めることができる。この例では、輪郭抽出部9は、拡大又は縮小した後の第1曲線(2次多項式曲線)を左室内膜の擬似輪郭として設定し、さらに、第1曲線から一定の幅だけ外側に配置した第2曲線を左室外膜の擬似輪郭として設定する。
第1曲線及び第2曲線の形状及び位置を決定するための他の方法としては、輪郭抽出部9は、過去に抽出した左室内膜及び左室外膜の輪郭や、さらに過去の情報を統計解析して正規化した輪郭を示す輪郭モデルを輪郭データベース10から読み出して設定することもできる。
輪郭抽出部9は、輪郭モデルを輪郭データベース10から読み出した後、S102にて設定される3点の輪郭点から重心gの位置を算出し、距離ag、bg、cgを算出する。距離ag、bg、cgは、輪郭の大まかな大きさを表すことから、輪郭抽出部9は、距離ag、bg、cgに基づいて、輪郭データベース10から読み出した輪郭モデルの大きさを調整する。
そして、輪郭抽出部9は、調整後の輪郭モデルの端点と心尖部の位置をそれぞれ不動点a、b、cに置き換えることによって、不動点a、b、cを通る第1曲線を設定することができる。輪郭抽出部9は、第1曲線の上にいくつかの可動点を設定する。可動点の個数は、採用する画像処理手法によるが、輪郭の凹凸形状が表現できる程度の個数が望ましい。
輪郭抽出部9は、さらに詳細な輪郭抽出処理を行うので、図4の右図の擬似輪郭は、この時点において表示画面201に表示しなくてもよい。
ここで、輪郭抽出部9による詳細な輪郭抽出処理を説明する。輪郭抽出部9は、図4の右図の擬似輪郭を、左室内膜と左室外膜の正確な位置に近づける為、詳細な輪郭抽出処理を行う。
例えば、輪郭抽出部9は、エッジ検出を用いて、内外膜の位置を検出し、その位置に可動点を移動させる。具体的には、輪郭抽出部9は、図4の右図に示す擬似輪郭の輪郭点ごとに、輪郭点を跨ぎ、かつ、擬似輪郭と直交する方向の所定範囲に対してエッジ検出処理を行う。輪郭点は、擬似輪郭に数十個程度設定される。また、所定範囲は、処理の高速化及び輪郭の平滑化を図る為、数十個程度の画素を含むものとする。エッジ検出処理は、公知の方法を適用することができる。例えば、輪郭抽出部9は、図4の右図に示す擬似輪郭と直交する方向に所定範囲に含まれる画素群から1つずつ注目画素を特定していき、注目画素における変化量を算出する。注目画素における変化量は、例えば、注目画素の画素値と隣接画素(隣接する左右2点又は隣接する左右上下4点等)の画素値との差分値の総和などである。そして、輪郭抽出部9は、所定範囲の画素の中から変化量が最も大きい画素を「エッジ」(この例では、左室内膜又は左室外膜)の位置として検出する。そして、輪郭抽出部9は、「エッジ」と検出された位置に可動点を移動させる。
詳細な輪郭抽出処理の他の方法としては、動的輪郭モデルを用いる方法が考えられる。動的輪郭モデルを用いて輪郭抽出を行う場合、輪郭抽出部9は、不動点a、b、cを固定させ、可動点のみを移動させて、輪郭モデルに従ってその形状を変化させることができる。
図5は、可動点の移動を示す図である。不動点(「+」記号)の位置は固定し、可動点(「●」記号)の位置だけを移動させる。ここで、前述のとおり、不動点cは、S102において、心尖部の正確な位置よりも、やや下に設定されている。従って、図5の右図に示すように、不動点c付近の可動点は、固定されている不動点cの位置とバランスをとるため、内外膜の正確な位置には移動しきれていない。不動点c及び不動点c付近の可動点の位置を修正する手順については後述する。
次に、超音波診断装置1の計測部11は、S103にて抽出された輪郭の座標値から計測値を算出する(S104)。ここでは、左室の容積、心筋重量、EFが算出される。容積は、Area−length法やModified Simpson法を適用でき、心筋重量であれば、Area−length法やTruncated ellipsoid法を適用できる。計測部11は、外膜によって囲まれる内部領域の容積から内膜によって囲まれる内部領域の容積を差し引いて心筋の容積とし、これに比重を掛けることによって心筋重量を算出するようにしてもよい。また、計測部11は、左室拡張末期画像202と左室収縮末期画像203の両方にて容積が算出されるならば、EF値を算出するようにする。
次に、超音波診断装置1の出力・表示部6は、超音波画像である左室拡張末期画像202及び左室収縮末期画像203、S103にて抽出される輪郭206、並びに、計測値207を表示画面201に表示する(S105)。出力・表示部6は、図5の右図に示すように、不動点204、可動点205、及び、輪郭206を画像に重畳して表示し、計測値207を表示する。図5の右図では、S104にて算出される計測値207aが図示されている。
次に、検者は、輪郭が正確に抽出されたか、表示画面201を見ながら判断する(S106)。現時点では、図5の右図に示す通り、不動点cが実際の心尖部よりやや下にあるため、不動点c及び不動点cの周辺の可動点が、左室内膜及び左室外膜にフィットしていない。従って、検者は、輪郭が正確に抽出されていないと判断し、入力部7を介して不動点cを上方に移動させる為、S102から処理を繰り返す。
検者は、入力部7を介して、不動点cを心尖部の正確な位置に移動させるように指示する(2回目のS102)。検者は、例えば、図6の左図のように、入力部7を介して、不動点cを上方(移動方向210a)にドラッグすることによって、不動点cの移動を指示することができる。
次に、超音波診断装置1の輪郭抽出部9は、2回目のS102における指示に追従して、不動点cの座標が変化すると直ちに、輪郭抽出処理を行う(2回目のS103)。不動点cが移動すると、移動後の不動点cの座標は、輪郭点設定部8によって取得され、輪郭抽出部9に渡される。そして、輪郭抽出部9は、移動させていない不動点a、bと、移動させた不動点cの3点を通る輪郭を抽出する。輪郭抽出処理は、1回目のS103における処理と同様である。
次に、超音波診断装置1の計測部11は、2回目のS103にて抽出される輪郭の座標値を用いて計測演算を行う(2回目のS104)。
次に、超音波診断装置1の出力・表示部6は、超音波画像、2回目のS103にて抽出される輪郭206、及び、2回目のS104にて算出される計測値207を、直ちに表示画面201に表示する(2回目のS105)。図6の左図では、1回目のS105にて算出される計測値207aが図示されている。図6の右図では、2回目のS105にて算出される計測値207bが図示されている。
次に、検者は、表示画面201に表示される輪郭206と計測値207を確認して、正確に計測対象の輪郭が抽出されているかどうかを判断する(S106)。所望の輪郭206が得られていれば終了し(S106のYes)、さらに輪郭206を修正したい場合は、S102から繰り返す(S106のNo)。輪郭点設定部8は、不動点の位置が変化するたびに、不動点の座標を取得し、輪郭抽出部9は、S103の輪郭抽出処理を実行する。
図6の右図は、所望の輪郭が抽出されるまで、不動点cを心尖部まで移動させた例である。図6の右図では、不動点a、b、cおよび可動点のすべて、並びに輪郭206が、左室内膜及び左室外膜にフィットしている。また、計測値207bも、所望の輪郭206に基づいて算出されている。計測値207bは、図6の左図に示す計測値207aと比較して、輪郭の変形に伴い、容積、重量ともに増大している。
以上の説明では、不動点cを移動させる例としたが、不動点aまたは不動点bを移動させるようにしても、超音波診断装置1は同様に動作する。
第1の実施の形態によれば、S102において、左室内膜(第1の生体組織)の輪郭に輪郭点を設定している。輪郭抽出部9は、計測項目及びS102において設定される輪郭点に基づいて、左室内膜(第1の生体組織)の輪郭の位置から推定される左室外膜(第1の生体組織の輪郭と対応付けられる第2の生体組織)の輪郭についても、全体としてバランスが取れるようにして、両者を一緒に抽出している。更に、検者が、左室内膜(第1の生体組織)の輪郭に係る不動点の移動を指示すると、左室内膜(第1の生体組織)及び左室外膜(第2の生体組織)の輪郭を合わせて修正する。そして、輪郭を修正する処理は、不動点を移動して座標値が変化すると直ちに実行され、修正後輪郭と計測値の変化が画面上に表示されるので、検者にとっては、あたかもリアルタイムに輪郭が変形しているように見える効果がある。
従って、検者は、少ない手順と時間によって、複数の輪郭を同時に抽出することができる。これは、第1の実施の形態に係る超音波診断装置1(医用画像診断装置)が、操作性が高いユーザインタフェイスを備えていると言える。そして、ひいては、検者の手間を低減して、検査効率を向上させる効果が得られる。
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、検者が設定する不動点を3点とし、それ以外は可動点として説明したが、不動点の数が多いほど、不動点を通る輪郭は所望する輪郭の形状に近づく。そこで、第2の実施の形態では、超音波診断装置1は、一部の可動点を不動点に変更する指示を受け付けて、不動点の数を増やし、検者が所望する輪郭位置に不動点を移動させることによって輪郭を抽出する。
図7に示す例では、最初に、不動点a、b、cを設定して、1回目の輪郭抽出処理を実行している。図7の左図では、左室内膜及び左室外膜に対応する2つの輪郭206の一部が、両方とも内部に凹んでいる。そこで、この例では、検者は、入力部7を介して、可動点の一つを不動点dに変更するように指示し、更に、不動点dの位置を移動させるように指示することによって、凹みの部分を正確な位置に修正する。
以下、第1の実施の形態と相違する部分を中心に説明する。
最初に、第1の実施の形態と同様、不動点a、b、cを設定し、S102からS105が実行され、表示画面201に、輪郭206と計測値207cが表示される(図7の左図参照)。
次に、検者は、表示されている輪郭206と計測値207cを確認して、さらに輪郭を修正すべきかを判断する(S106)。図7の左図の例では、前述の通り、2つの輪郭206の右上部分が内側に凹んでいるので、検者は、この部分をやや外側に修正すべきと判断する。
次に、検者は、入力部7を介して、可動点の1つを不動点dに変更するように指示する。輪郭点設定部8は、この指示に従って不動点dを設定する(S102)。不動点dは、元来可動点であるが、検者が入力部7を用いて選択することによって、輪郭点設定部8は、選択された可動点を不動点に切り替える。従って、S103では、輪郭抽出部9は、不動点a、b、c、dの4点を通る輪郭を抽出するように動作することになる。
次に、超音波診断装置1の輪郭抽出部9は、輪郭点と画像輝度情報を用いて、詳細な輪郭を抽出する(S103)。このときの輪郭抽出法は、第1の実施の形態と同様である。尚、不動点が4点あるので、輪郭データベース10からの輪郭モデルの読み出しでは、多項式曲線ならば、3次多項式の係数を求めることになる。また、過去の正規化された輪郭を使用するならば、不動点4点と計測項目とを対応づけた輪郭モデルを読み出して設定する。
次に、第1の実施の形態と同様に、超音波診断装置1は、計測演算(S104)、計測結果・輪郭線表示(S105)を行う。検者は、さらに輪郭を修正すべきかを判断する(S106)。
図7の右図では、不動点dが正確な位置に移動し、不動点dを輪郭点とする一方の輪郭206が左室内膜にフィットしている。また、他方の輪郭206も、左室外膜にフィットしている。また、計測値207cも、正確な輪郭206に基づいて算出されている。計測値207dは、計測値207cと比較して、輪郭の変形に伴い、容積、重量ともに増大している。
このように、不動点dが正確な位置に移動すると、不動点dを輪郭点とする一方の輪郭206だけでなく、他方の輪郭206も正確な位置に移動する。
不動点と可動点の切り替え処理については、例えば、検者が、不動点dを更に選択すると、不動点から可動点に切り替えるようにしてもよい。すなわち、不動点と可動点の切り替えは、入力部7を介して輪郭点を選択するという入力イベントのみによって実行するようにしても良い。これは、輪郭点の選択という入力イベントのみによって、不動点の数と可動点の数が決定されることを意味する。
また、不動点の数と可動点の数が変化しても、S103における輪郭抽出処理は、前述の通り、その個数に対応した処理がなされるように構成されている。
第2の実施の形態によれば、より詳細に輪郭を修正したい場合、修正したい箇所に係る可動点を不動点に切り替えることができるので、検者が意図した位置に容易に輪郭を修正することができる。また、第1の実施の形態と同様、ある不動点を修正すると、可動点すべてが全体のバランスをとるように移動するので、一般的な心臓と異なる極端に変形した形状を抽出することがない。
また、第1の実施の形態と同様、輪郭を修正する処理は、不動点を移動して座標値が変化すると直ちに実行され、修正後輪郭と計測値の変化が画面上に表示されるので、検者にとっては、あたかもリアルタイムに輪郭が変形しているように見える効果がある。従って、検者は、少ない手順と時間によって、複数の輪郭を同時に抽出することができる。これは、第1の実施の形態に係る超音波診断装置1(医用画像診断装置)が、操作性が高いユーザインタフェイスを備えていると言える。そして、ひいては、検者の手間を低減して、検査効率を向上させる効果が得られる。
<第3の実施の形態>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、輪郭点を不動点と可動点のいずれかに設定して、検者からの指示に従って輪郭を修正している。第3の実施の形態では、全ての輪郭点を不動点とする指示を受け付けて、更に、特定の箇所のみを修正する。
図8では、最初に、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に輪郭を抽出している。図8の左図に示すように、左室外膜に係る輪郭206の一部が左室外膜にフィットしていないので、検者は、この箇所だけを更に修正すべきと判断する。
以下、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と相違する部分を中心に説明する。
検者は、入力部7を介して、全ての輪郭点を不動点とする指示を行い、輪郭点設定部8は、これに従って全ての輪郭点を不動点に設定する(S102)。
全ての輪郭点を不動点に設定する指示は、全ての輪郭点を入力部7のトラックボール等によって指定して逐一不動点に設定してもよいが、手間がかかるので、全ての輪郭点を不動点に変更する不動点設定ボタン208(図2参照)を設けてもよい。
図8の左図では、全ての輪郭点が不動点(「+」記号)に設定されている。検者は、入力部7を介して、不動点eを、左室外膜の内側の方向(移動方向210c)にドラッグして、左室外膜にフィットするように移動させる。
次に、超音波診断装置1の輪郭抽出部9は、輪郭点と画像輝度情報を用いて、詳細な輪郭を抽出する(S103)。このときの輪郭抽出法は、第1の実施の形態と同様であるが、全ての輪郭点が不動点となっているので、輪郭データベース10からの輪郭モデルの読み出しでは、多項式曲線ならば、全ての輪郭点を通る多次多項式の係数を求めることになる。また、過去の正規化された輪郭を使用するならば、全ての不動点と計測項目とを対応づけた輪郭モデルを読み出して設定する。
そして、第1の実施の形態と同様、超音波診断装置1は、計測演算(S104)、計測結果・輪郭線表示(S105)を行い、検者は、さらに輪郭を修正すべきかを判断する(S106)。
図8の右図では、不動点eが正確な位置に移動し、不動点eを輪郭点とする一方の輪郭206が左室外膜にフィットしている。また、他方の輪郭206も、左室内膜にフィットしている。また、計測値207fも、正確な輪郭206に基づいて算出されている。計測値207fは、計測値207eと比較して、輪郭の変形に伴い、容積、重量ともに減少している。
このように、輪郭点を全て不動点とすることによって、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と異なり、一方の輪郭206を修正しても、既に正確な位置にフィットしている他方の輪郭206の位置を固定することができる。
第3の実施の形態によれば、一方の輪郭だけを修正したい場合、全ての点を不動点とし、一部の不動点の移動を指示することができるので、移動が指示される不動点に係る輪郭のみを修正し、それ以外の輪郭については移動しないようにすることもできる。従って、計測対象の輪郭が一本だけフィットしていない場合、これに合わせた輪郭修正が可能になる。
尚、第1の実施の形態から第3の実施の形態では、心尖4腔像の左室内外膜の輪郭抽出を例にして説明したが、例えば、図9の左図のように、左室内膜と右室内膜の組み合わせや、図9の右図のように、短軸像の左室内外膜の組み合わせに対しても、それぞれの組織の輪郭に関する情報を輪郭データベース10に記憶させておくことによって、これまで述べた実施の形態と同様に、超音波診断装置1を動作させることができる。図9の左図では、左室内膜と右室内膜に関する計測値207gが図示されている。また、図9の右図では、短軸像の左室内外膜に関する計測値207hが図示されている。
また、超音波診断装置における心臓の計測を例に説明したが、他の診断装置および生体組織に対しても同様に適用可能である。
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る医用画像診断装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………超音波診断装置
2………被検体
3………超音波信号生成部
4………超音波画像生成部
5………記憶部
6………出力・表示部
7………入力部
8………輪郭点設定部
9………輪郭抽出部
10………輪郭データベース
11………計測部
12………制御部
201………表示画面
202………左室拡張末期画像
203………左室収縮末期画像
204………不動点
205………可動点
206………輪郭
207………計測値
208………不動点設定ボタン

Claims (4)

  1. 生体組織の輪郭を抽出する医用画像診断装置であって、
    前記生体組織の輪郭モデルを計測項目とともに記憶する輪郭データベースと、
    前記生体組織の輪郭を表現する為の複数の離散的な点列である輪郭点を、操作者からの移動指示に応じて移動し、かつ前記輪郭を抽出する処理において位置を動かさない点である第1の点と、前記第1の点以外の複数の第2の点とに区別して設定する設定手段と、
    前記第1の点を移動させた際に、該移動させた第1の点の位置と計測項目に応じた前記輪郭モデルを読み出し、該読み出した輪郭モデルを用い、前記複数の第2の点をすべて移動対象として輪郭全体のバランスを考慮して移動させ、前記生体組織の輪郭を抽出する抽出手段と、
    を具備し、
    前記設定手段は、入力部を介して所定のボタンが押下されると、全ての前記輪郭点を前記第1の点に設定する
    ことを特徴とする医用画像診断装置。
  2. 前記設定手段は、入力部を介して前記輪郭点が選択されると、選択された前記輪郭点を前記第1の点から前記第2の点に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
  3. 前記抽出手段は、入力部を介して設定される前記輪郭点に係る第1の生体組織の輪郭、及び、前記第1の生体組織の輪郭と対応付けられる第2の生体組織の輪郭の両方を抽出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像診断装置。
  4. 生体組織の輪郭モデルを計測項目とともに記憶する輪郭データベースを具備する医用画像診断装置が、前記生体組織の輪郭を抽出する輪郭抽出方法であって、
    前記生体組織の輪郭を表現する為の複数の離散的な点列である輪郭点を、操作者からの移動指示に応じて移動し、かつ前記輪郭を抽出する処理において位置を動かさない点である第1の点と、前記第1の点以外の複数の第2の点とに区別して設定する設定ステップと、
    前記第1の点を移動させた際に、該移動させた第1の点の位置と計測項目に応じた前記輪郭モデルを読み出し、該読み出した輪郭モデルを用い、前記複数の第2の点をすべて移動対象として輪郭全体のバランスを考慮して移動させ、前記生体組織の輪郭を抽出する抽出ステップと、
    を実行し、
    前記設定ステップにおいて、入力部を介して所定のボタンが押下されると、全ての前記輪郭点を前記第1の点に設定する
    ことを特徴とする輪郭抽出方法。
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