JP5699088B2 - 放射性金ナノ粒子ならびにその製造方法および使用方法 - Google Patents

放射性金ナノ粒子ならびにその製造方法および使用方法 Download PDF

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Description

<関連出願の参照>
本出願は、2008年12月17日に出願された米国仮出願番号第61/138,511号の優先権を主張し、その出願は参照により本明細書中に完全に組み込まれる。
発明の分野
本発明は、一般には、金ナノ粒子に関し、より具体的には、放射性金ナノ粒子を含む組成物に関する。
発明の背景
放射性金シード(種)(表面コーティングや修飾を有しない金属性金処方物であるもの)は、1950年代からずっと癌治療に用いられてきた。それらは、近接照射療法用の恒久的外科インプラントとして使用されていた。金シードの性能を改善しその適用を拡張するために、いくつかのストラテジーを用いて、侵襲性インプラントのサイズをナノメータースケールの粒子に縮小し、非金分子もしくは非金ナノ材料を固定、固着、または取り込んできた。
動物およびヒトに対する効力ならびに潜在的副作用を研究するために、生物学的特性(例、吸収、分布、代謝、および排泄を含む)に関して、GNPsのサイズ、形状、および表面化学を注意して規定しなければならない。生体内(in vivo)でGNPsを観察およびトレーシングする構築基盤の確立に取り組む必要性が、当該技術分野において存在する。
本発明は、原子炉中で非放射性前駆体を中性子照射に暴露する必要のある放射性金ナノ粒子(R-GNPs)の製造方法に関する。GNPsまたはGNP複合体中にある、自然界に豊富に存在する金(Au-197)をR-GNPs(Au-198)に転換することができる。それは、その後、ガンマ放射線源(412keV)およびベータ粒子(電子)放射体(最大エネルギー:0.96MeV)として働く。ガンマ光子およびベータ粒子は、in vivoでR-GNPsのトレーシングを可能にし、同様に腫瘍細胞を殺傷する治療効果を提供する。放射線診断や放射線療法と組み合わせる、放射性GNP複合体の製造方法は、多機能放射性ナノ医薬品の開発におけるニッチをもたらし得る。
本方法では、規定されたサイズ、形状、および(表面修飾を有するかまたは有しない)表面特性を有する非イオン性R-GNPs(Au-198)を製造する。GNPsを、他のナノ構造の材料でカプセル化し、原子炉中で中性子フラックスに照射して、非イオン性R-GNPsを含む多機能ナノサイズ担体を生産することができる。中性子活性化後に滅菌される得られるR-GNPsを、医学的応用(例、動物とヒトにおける、トレーシング目的、診断目的、治療目的)用に直接使用することができる。
一観点においては、本発明は、非イオン性放射性金ナノ粒子(R-GNPs)を含む組成物を、非放射性金イオンから調製する方法に関する。本方法は、a)金(Au-197)イオンを含む溶液を提供する工程と、b)前記溶液を中性子照射に暴露して、非イオン性R-GNPsを含む組成物を生成する工程とを含む。
本発明の一実施形態においては、前記暴露工程に先行して、本方法は、前記金(Au-197)イオンと還元剤とを反応させることにより還元反応を実行して、前記溶液中で金(Au-197)ナノ粒子(GNPs)を形成させる工程をさらに含む。前記還元剤は、前記溶液中でアミン保護GNPsもしくはクエン酸塩保護GNPsを形成するための、アミンまたはクエン酸塩であってもよい。
また、前記暴露工程に先行して、本方法は、前記溶液中の前記金(Au-197)イオンをX線もしくはガンマ線に暴露することにより還元反応を実行して、前記溶液中で金(Au-197)ナノ粒子(GNPs)を形成させる工程をさらに含む。
本発明の別の実施形態では、前記暴露工程に先行して、非金材料と前記溶液とを付加混合する工程をさらに含み、そこでは、前記非金材料は、前記暴露工程において生成された非イオン性R-GNPsの表面に結合され、これにより、前記非金材料で表面を修飾される非イオン性R-GNPsを含む組成物が生成される。
さらに、本発明の別の実施形態では、上記工程(a)中のAu-197イオン溶液は、前記暴露工程で生成される非イオン性R-GNPsをカプセル化および/または固定化するための、複数の孔および/またはチャネルを有するメソ多孔質シリカナノ粒子(MSNs)をさらに含み、これにより、前記MSNs中にカプセル化および/または前記MSNsに固定化される非イオン性R-GNPsを含む組成物が生成される。
別の観点では、本発明は、非イオン性R-GNPsを含む組成物を、非放射性GNPsから調製する方法に関する。本方法は、a)金ナノ粒子(GNPs、Au-197)を含む組成物を含有する溶液を提供する工程と、b)GNPsを含む前記溶液を中性子照射に暴露して、非イオン性R-GNPsを含む組成物を生成する工程とを含む。工程(a)中の前記GNPの表面は、非金材料で修飾されるかまたは修飾されない。
本発明の一実施形態では、直前の工程(a)に先行して、本方法は、i)金(Au-197)イオンを含む溶液を提供する工程と、ii)前記金(Au-197)イオンと還元剤と反応させることにより還元反応を実行して、GNPs(Au-197)を含む溶液を形成させる工程とをさらに含む。前記還元剤は、溶液中でアミン保護GNPsもしくはクエン酸塩保護GNPsを形成するための、アミンまたはクエン酸塩であってもよい。
また、前記溶液中の前記金(Au-197)イオンをX線またはガンマ線に暴露することにより、還元反応を実行して、前記溶液中でGNPs(Au-197)を形成させてもよい。
本発明の別の実施形態では、前記暴露工程に先行して、本方法は、非金材料と、前記還元工程から形成されたアミン保護もしくはクエン酸塩保護GNPsを含む前記溶液とを付加混合する工程をされに含み、そこでは、前記非金材料は、前記暴露工程において生成された非イオン性R-GNPsの表面に結合され、これにより、前記非金材料で表面を修飾される非イオン性R-GNPsを含む組成物が生成される。
本発明の別の実施形態では、直前の工程(a)中の前記Au-197GNP溶液は、前記GNPをカプセル化および/または固定化する複数の孔および/またはチャネルを含むMSNsをさらに含み、これにより、前記MSNs中にカプセル化および/またはMSNsに固定化される非イオン性R-GNPsを含む組成物が、前記暴露工程中で生成される。
本発明の別の実施形態では、上述の方法は、前記非イオン性R-GNPsの表面に少なくとも1つの非金材料を結合する工程をさらに含む場合があり、これにより、前記非金材料で表面を修飾される非イオン性R-GNPsを含む組成物が生成される。
さらに、本発明の別の実施形態では、前記非金材料を、クエン酸塩、アルキルアミン、シリカ、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシ末端のポリエチレングリコール(PEG)誘導体、カルボキシ末端のPEG誘導体、アミン末端のPEG誘導体、合成ポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、および脂肪酸からなる群より選択してもよい。
本発明のさらに別の実施形態では、上記方法中の前記暴露工程は、中性子照射の期間および/またはフラックスを調整して、前記組成物中のR-GNPsの放射能レベルおよび/またはサイズを制御する工程をさらに含む場合がある。
さらに、別の観点においては、本発明は、a)複数の孔および/またはチャネルを含むメソ多孔質シリカナノ粒子(MSNs)と、b)非イオン性R-GNPsとを含む組成物であって、前記R-GNPsが前記MSNs中にカプセル化および/またはMSNsに固定化されるものに関する。前記MSN中にカプセル化および/または前記MSNに固定化される前記R-GNPの表面は、少なくとも一つの非金材料で修飾されてもよい。
これらのおよび他の観点は、以下の図面と組み合わせて採用される好ましい実施形態の以下の記述から明らかであると考える。しかしながら、そこにおけるバリエーションと変更は、本開示の新規概念の精神と範囲から逸脱することなしに影響される可能性がある。
添付する図面は、本発明の一又は複数の実施形態を解説し、本明細書と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。本明細書中で可能なかぎり、同一の参照番号は、本図面を通して使用され、実施形態の有する同一または類似要素を指す。
図1Aは、本発明の一実施形態に従って、金197イオンから、非イオン性放射性金ナノ粒子(R-GNPs)を生成することを説明する図である。図1Bは、本発明の別の実施形態に従って、金197イオンから、非金材料に結合される表面を有する非イオン性R-GNPsを生成することを説明する図である。図1Cは、本発明のさらに別の実施形態に従って、金197イオンから、非金材料に結合される表面を有する非イオン性R-GNPsを生成することを説明する図である。 HAuCl4溶液を種々の中性子フラックスに露出して様々なサイズのR-GNPsを生成する一段階反応により生成された剥き出しの(または裸の)R-GNPsを示す図である。a、b、c、d中のサンプルは、熱中性子フラックス:1.4 x 1012 n・cm-2・sec-1; 高速中性子フラックス:3.4 x 1011 n・cm-2・sec-1を受けた。e、f、g、h中のサンプルは、熱中性子フラックス:3.4 x 1012 n・cm-2・sec-1;高速中性子フラックス: 1.2 x 1012 n・cm-2・sec-1を受けた。 原子炉中で非放射性HAuCl4の中性子照射により調製された剥き出しの放射性GNPsのTEM画像である。 PEGと非放射性HAuCl4との混合物を、示される種々の期間、原子炉中で中性子照射に暴露することにより調製された放射性PEG6K-GNPsのUV-可視スペクトルを示す図である。 図5Aは、平均サイズが12.9±1.2nm(480粒子)のクエン酸塩保護R-GNPsのTEM画像である。図5Bは、平均サイズが17.7±2.9nm(381粒子)のクエン酸塩保護R-GNPsのTEM画像である。 非放射性GNPsを、示される種々の期間、原子炉中で中性子照射に暴露することにより調製されたクエン酸塩保護R-GNPsのUV-可視スペクトルを示す図である。 放射性シリカコート金ナノ粒子(R-SGNPs)を示すTEM画像である。 メソ多孔質シリカナノ粒子(MSN)固定化R-GNPsを示すTEM画像である。 Au-198の形成を示す、放射性mPEG5K-GNP-TNFのガンマ光子エネルギースペクトルを示す図である。 がん細胞を殺傷するR-GNP効力を評価するためのLDH放出アッセイ結果を示す図である。 ヒト大細胞肺癌H460保持動物モデルにおいて、R-GNPsが腫瘍増殖を抑制することを示す腫瘍サイズ増殖曲線のグラフである。データを、平均 ± 平均の有する標準誤差(SEM)として表現した。 図12Aは、R-GNPs、つまりmPEG2K-GNPの尾静脈投与2分後に撮影された、マウスの単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)画像である。図12Bは、R-GNP、つまりmPEG2K-GNPの尾静脈投与15分後に撮影された、図12Aのマウスの単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)画像である。
発明の詳細な説明
定義
本明細書中にて使用される用語は、当該技術分野において、本発明の内容の範囲内で、および各々の用語が使用される具体的文脈において、その通常の意味を一般的に有する。本発明を記載するのに使用されるある種の用語は、以下または本明細書中のどこかで議論されて、本発明の記載に関して、実施者に追加的なガイダンスを提供する。便宜のため、ある種の用語を、例えば、斜体および/または括弧を用いて強調する場合がある。強調の使用は用語の範囲や意味に影響はなく、その用語の範囲と意味は、強調されるか否かを問わず、同一であるか、同一の文脈のものである。同一の事柄が一よりも多いやり方で言及可能であることが理解されよう。したがって、本明細書中で議論される任意の一又は複数の用語に関して、代替的言語および同義語を使用する場合があり、用語が本明細書中にて詳しく述べられたりまたは議論されているかに関わらず、任意の特別な意義を置くものではない。ある種の用語の同義語を提供する。一又は複数の同義語の記載は、他の同義語の使用を排除するものではない。本明細書中で議論される任意の用語例を含む本明細書中のどこかにある実施例の使用は、説明のためだけであり、本発明または任意の例示的用語の範囲と意味を限定するものでは全くない。同様に、本発明は、本明細書中に与えられる種々の実施形態には限定されない。
特に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する当業者により共通して理解される同一の意味を有する。係争の際には、これらの定義を含む本文書が掌握する。
本明細書中で使用される場合、「大体」、「約」、もしくは「ほぼ」は、所定値または所定範囲の20パーセント以内、好ましくは10パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を一般的に意味するものとする。本明細書中で与えられる数量は近似である。つまり、明示して述べられなくとも、用語「大体」、「約」、または「ほぼ」が推量されてもよいことを意味する。
用語「中性子照射のフラックス調整」は、「中性子照射の密度と速度を調整すること」を一般的に意味するものとする。
本明細書中で使用する場合、アミンは、一又は複数の窒素原子を含み且つ実際に一又は複数の窒素原子をベースにしていることが多い有機化合物である。アミン中では、アンモニア由来の一又は複数の水素原子を、(アルキル(アルカン鎖)基およびアリール(芳香環)基のような)有機置換基により置換する。
本明細書中で使用される場合、「ケイ酸塩前駆体」は、ケイ酸ナトリウムおよび式:
の化合物(式中、R'1、R'2、R'3、およびR'4は、同一または異なっていて、それぞれ他と独立して、アルキル基またはアリール基を表す)からなる群より選択される化合物を一般的に意味するものとする。一実施形態では、R'1、R'2、R'3、およびR'4は、C1-6アルキルまたはC1-6アリールである。例えば、前記ケイ酸塩前駆体は、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、およびケイ酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一つのものである可能性がある。
本発明の範囲を限定する意図なしに、本発明の実施形態に係る例示的設備、装置、方法および関連する結果が以下に与えられる。読者の利便性のために、タイトルまたはサブタイトルを、実施例中で使用する場合があるが、それは本発明の範囲をなんら限定するべきものではない。さらに、ある種の理論が本明細書中で提案および開示される。しかし、それらは、任意の特定作用理論またはスキームに関することなく、本発明に従って、本発明が実践される限りにおいては、正しいものであるか誤っているものであるかに関わらず、本発明の範囲を何ら限定すべきものでない。
【0031】
実施例1
剥き出しの放射性金ナノ粒子の生成
図1Aは、剥き出しの放射性金ナノ粒子(198Auナノ粒子)106の製造方法が放射性前駆体または鋳型全く有さないことを説明する。非放射性テトラクロロ金酸水和物102(H197AuCl4・xH2O)(Aldrich、米国)が、金前駆体として使用された。金イオン102(0.1〜1000mM)含有溶液(30mL)を、均質化および平衡化のために室温で15分間撹拌し、その後、制御可能な中性子源104(例、熱中性子に関しては3.4 x 1012 n・cm-2・sec-1および高速中性子に関しては1.2 x 1012 n・cm-2・sec-1(用語「n」は、中性子数を表す))を提供することが可能な原子炉(清華オープンプール原子炉、国立清華大学、新竹、台湾)中で照射した。非放射性金イオン102は、金ナノ粒子(GNPs)に還元され、同時に活性化されて、単一の5分間工程で放射性のものになった。本方法は、規定されたサイズ分布と制御可能な放射能を有する、剥き出しの放射性金ナノ粒子(R-GNPs)106を生成する。その後、非金材料108を前記剥き出しのR-GNPs106と付加混合して、その物理的、化学的、および/もしくは生物学的特性を変更、修飾、または増強し、その結果、表面修飾R-GNPs110を生じる場合がある。
【手続補正1】
【補正対象書類名】 特許請求の範囲
【補正対象項目名】 全文
【補正方法】 変更
【補正の内容】
【請求項1】
非イオン性放射性金ナノ粒子(R-GNPs)を含む組成物を調製するための方法であって、
a)鋳型を有さない金(Au-197)イオンを含む溶液を提供する工程と、
b)鋳型を有さない金イオンを含む前記溶液を中性子照射に暴露して、同時に金イオンを還元し放射性をもたせ、これによって、前記非イオン性R-GNPsを含む前記組成物を生成する工程とを含方法。
【請求項2】
前記暴露工程に先行して、(i)前記溶液中の前記金(Au-197)イオンをX線もしくはガンマ線照射に暴露することにより還元反応を実行して、前記溶液中で金(Au-197)ナノ粒子(GNPs)を形成させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記暴露工程に先行して、(i)前記金(Au-197)イオンと還元剤とを反応させることにより還元反応を実行して、前記溶液中でGNPs(Au-197)を形成させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤が、前記溶液中でアミン保護GNPsもしくはクエン酸塩保護GNPsを形成するための、アミンまたはクエン酸塩である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記暴露工程に先行して、非金材料と前記溶液とを付加混合する工程をさらに含み、そこでは、前記非金材料は、前記非イオン性R-GNPsの表面に結合し、これによって、前記非金材料で表面を修飾される非イオン性R-GNPsを含む組成物が生成される、請求項1または4記載の方法。
【請求項6】
非イオン性R-GNPsを含む組成物を金ナノ粒子から調製する方法であって、
a)鋳型を有さない金(Au-197)ナノ粒子(GNPs)を含む水性組成物を提供する工程と、
b)鋳型を有さないGNPsを含む前記水性組成物を中性子照射に暴露して、金ナノ粒子に放射性をもたせ、これによって、前記非イオン性R-GNPsを含む前記組成物を生成する工程とを含方法。
【請求項7】
工程(a)における前記GNPsの表面が少なくとも一つの非金材料で修飾される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(a)に先行して、
(i)金(Au-197)イオンを含む溶液を提供する工程と、
(ii)前記溶液中の前記金(Au-197)イオンを、X線またはガンマ線照射に暴露することにより還元反応を実行して、前記GNPs(Au-197)を含む前記水性組成物を形成させる工程とをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
工程(a)に先行して、
i)金(Au-197)イオンを含む溶液を提供する工程と、
ii)前記金(Au-197)イオンと還元剤と反応させることにより還元反応を実行して、GNPs(Au-197)を含む前記水性組成物を形成させる工程とをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤が、前記溶液中でアミン保護GNPsもしくはクエン酸塩保護GNPsを形成するための、アミンまたはクエン酸塩である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記暴露工程に先行して、
(iii)非金材料と、前記還元工程から形成された前記アミン保護もしくはクエン酸塩保護GNPsを含む溶液とを付加混合する工程をさらに含み、
そこでは、前記非金材料は、前記非イオン性R-GNPsの表面に結合し、これによって、前記非金材料で表面を修飾される非イオン性R-GNPsを含む組成物が生成される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
(a)複数の孔および/またはチャネルを含むメソ多孔質シリカナノ粒子(MSNs)と、
(b)鋳型を有さない非イオン性R-GNPsとを含む組成物であって、
前記R-GNPsが前記MSNsの孔および/またはチャネル中にカプセル化および/または前記MSNsの表面に固定化される、組成物。
【請求項13】
前記R-GNPsの表面が少なくとも一つの非金材料で修飾される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
(c)前記非イオン性R-GNPsの表面に少なくとも1つの非金材料を結合し、これによって前記非金材料で表面を修飾される非イオン性R-GNPsを含む組成物を生成する工程をさらに含む、請求項1、2、6、または9に記載の方法。
【請求項15】
前記非金材料が、クエン酸塩、アルキルアミン、シリカ、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシ末端のポリエチレングリコール(PEG)誘導体、カルボキシ末端のPEG誘導体、アミン末端のPEG誘導体、合成ポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、および脂肪酸からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項5、7、または11に記載の方法。
剥き出しのR-GNPsの形成は、以下の因子(非放射性HAuCl4の濃度、中性子フラックス、および原子炉内での暴露時間)に影響された。図2は、2種類のレベルの中性子フラックスを使用して、1.0mMのHAuCl4から生成されたR-GNPsを示す。前記剥き出しのR-GNPsを、一工程プロセスにより調製し、そこでは、HAuCl4溶液(1.0mM)を種々の中性子フラックスに暴露して、様々なサイズのR-GNPsを生成した。中性子フラックスが高ければ高いほど、生成される粒子サイズは小さくなった。多分散指数(PDI)は、前記R-GNPsが幅の狭いサイズ分布を有していたことを示した。GNPsの表面プラズモンバンドを表す520nmでの吸光度の増加は、明確にGNPsの形成を実証した。原子炉中での暴露時間と相関するように、R-GNPsの比放射能を操作することができた。図2は、中性子フラックスの増加により、R-GNPsのサイズが減少したことを示す。原子炉中での暴露時間(例、1〜30分の範囲のもの)を調整することにより、R-GNPsに対する種々のレベルの放射能を導くことができた(図2)。図3は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された、R-GNPsの形状と物理的サイズを示す。
実施例2
Au-197イオンからのPEG結合R-GNPsの調製
図1Bに説明されるように、有機材料112により修飾された表面を有する放射性GNPs(R-GNPs)114の製造方法は、鋳型を全く使用しない。ポリエチレングリコール(PEG)結合R-GNPs114を合成するために、非放射性HAuCl4(10mL、10mM)102とPEG6000(PEG6K;10mM)112とを組み合わせて、混合物を形成させた。そして、その混合物に、原子炉中で、1.0x1011〜1.5x1013 n・cm-2・sec-1の範囲の熱中性子と1.0x1011〜1.7x1013 n・cm-2・sec-1(「n」は、中性子数である)の範囲の高速中性子とを照射104した。照射期間を調整することにより、所望の種々の比放射能を有する、PEG修飾R-GNPs114を生じることができた。10〜120分の暴露時間により、比放射能が13.3〜187μCi/mg金(表1)のPEG6K結合R-GNPs114の生成を導いた。R-GNPsの表面に結合する可能性のある他のPEGsには、PEG1K、PEG2K、PEG3K、PEG4K、PEG5K、PEG6K、PEG8K、PEG10K、PEG20K、およびPEG30Kを含むが、これらに限定はされない。
図4は、非照射溶液と中性子照射を10〜120分間行った後のPEG-6K結合R-GNPsのUV-可視スペクトルを示す。PEG6K結合R-GNPsのスペクトルは、ピークの幅と高さの両者において完全に重なり合った。前記スペクトルは、GNPsの表面プラズモンバンドを表し、R-GNPsの物理化学特性を確認する。その結果は、前記PEG6K結合GNPsの濃度と物理化学特性とが原子炉中での中性子照射への暴露後に保存されていたことを示した。
PEG誘導体(例、メトキシ末端のPEGチオール、カルボキシ末端のPEGチオール、およびアミン末端のPEGチオール)を使用して、上記方法を用いてR-GNPsへ結合することも可能である。R-GNPsの表面を修飾するための他の非金分子には、合成ポリマー、炭水化物、タンパク質、核酸、脂肪酸、および他の有機酸を含むが、これらには限定されない。
実施例3
クエン酸塩保護R-GNPsの調製
図1Cに説明されるように、非放射性HAuCl4(500mL、1.6mM)102を、丸底フラスコ中で激しく撹拌しながら沸騰させた[Linら、(2002年)、「15-クラウン-5官能基化金ナノ粒子による、水中カリウムイオンの認識」、Anal. Chem. 74, 330-335]。クエン酸ナトリウム(Na3C3H5O(COO)3、38.8mM、50mL)116を、HAuCl4溶液102へ一気に注ぎ、金イオンをクエン酸塩保護GNPs118へと還元した。それは、淡黄色から赤紫色への色変化と直接相関した。クエン酸塩保護GNPs118のサイズは、クエン酸ナトリウム116に対する非放射性HAuCl4 102のモル比を調整することにより制御可能であった。この溶液を、さらに10分間沸騰させ、その後連続的に撹拌して冷却した。前記溶液が室温に到達した後に、水溶性のクエン酸塩保護GNPs118を、原子炉中にて中性子照射104(3.4x1012 n・cm-2・sec-1の熱中性子フラックスおよび1.5x1013 n・cm-2・sec-1の高速中性子フラックス)に暴露した。照射時間を調整することにより、様々な比放射能(ミリリットル当たりの放射能)をクエン酸塩保護R-GNPs120に与えることができた。1〜30分の照射期間内に、前記クエン酸塩保護R-GNPs120の比放射能は、0.6〜10.4μCi/mLと様々であった。図5Aおよび5Bは、それぞれ12.9±1.2および17.7±2.9nmのサイズを有するクエン酸塩保護R-GNPsを示す。図6のUV-可視スペクトルは、種々の期間で中性子照射への暴露後のGNPs(17.7±2.9nm)の表面プラズモンバンドの比較により、クエン酸塩保護R-GNPsの特性を特徴づけることを可能にする。そのスペクトルは、非放射性クエン酸塩保護GNPのものと完全に重なり合った。そのことは、クエン酸塩保護R-GNPsの粒子サイズと濃度とが、中性子照射後においても同一のままであったことを示していた。
実施例4
R-GNPsからのPEG結合R-GNPsの調製
剥き出しまたはクエン酸塩保護のいずれかの放射性GNPs(R-GNPs)は、PEG誘導体(例、メトキシ末端のPEGチオール(例、mPEG5K-SH、MW〜5000ダルトン)、カルボキシ末端のPEGチオール(例、cPEG5K-SH)、およびアミン末端のPEGチオール(例、aPEG5K-SH))と結合することを介して表面修飾R-GNPsを製造するための前駆体として働くことができる。
例えば、mPEG5K-SH(0.5mL、10mM)を、0.3〜24時間、クエン酸塩保護R-GNPs含有溶液に添加した。mPEG5K-GNPsのスラリーを、15700gで、15分間、10℃で遠心分離後回収した。本方法は、ラージスケールで、規定された直径を有し、任意の形状(例、溶液、スラリー、および粉末を含む)の種々の種類の表面修飾R-GNPSsを生産することができた。PEG誘導体(例、約1K〜約30Kダルトンの範囲の分子量を有するmPEGチオール、cPEGチオール、およびaPEGチオールを含むが、これらに限定はされないもの)は全て、PEG誘導体結合R-GNPsを生成するためのR-GNPsの表面に共有結合することができる。
また、mPEG5Kチオール結合放射性R-GNPsは、あらかじめ製造された非放射性mPEG5K-GNPsから、後者を原子炉中で3.4x1012 n・cm-2・sec-1の熱中性子フラックスと1.5x1013 n・cm-2・sec-1の高速中性子フラックスの照射へ暴露することにより調製可能である。表2には、2hrsの照射時間後の、様々なPEG誘導体と結合する20nmのGNPsの有する比放射能をリストする。
実施例5
タンパク質結合R-GNPsの調製
剥き出しまたはクエン酸塩保護R-GNPは、タンパク質結合R-GNPを製造するための出発材料として使用可能である。腫瘍壊死因子アルファ(TNFα;10μL、1.0mg/mL)を、R-GNP溶液(1mL、pH11、1N NaOHを用いて滴定されたもの)に加えて、穏やかにボルテックスしながら、4℃、30分間反応させた。4℃でさらに30分間熟成させた後、その混合物を、6000rpm、4℃、15分間遠心分離した。上清をさらに10000rpmでの遠心分離に供した。第1および第2の遠心分離でのペレットを一緒にプールして、TNFα結合R-GNPsを回収した。濃縮されたTNFα結合R-GNPsを、保存用およびさらなる応用用のスラリーへと製造した。
実施例6
複数の非金材料と結合するR-GNPsの調製
剥き出しのまたはクエン酸塩保護R-GNPsは、少なくとも2種類の非金材料(例、mPEG5KおよびTNFα)へ結合する表面を有するR-GNPsを製造するための出発材料として使用可能である。例えば、mPEG5Kチオール(10μL、5.2mM)とTNFα(1μL、1.0μg/μL)とを、R-GNP溶液(1mL、pH11、1N NaOHで滴定したもの)に添加し、穏やかにボルテックスして、4℃、15分間反応させた。4℃でさらに15分間熟成させた後、その混合物を、6000rpm、4℃、15分間遠心分離した。上清をさらに10000rpmでの遠心分離に供した。第1および第2の遠心分離でのペレットを組み合わせて、保存用およびさらなる応用用のスラリー(すなわち、濃縮mPEG5K-R-GNPs-TNFα)へと製造した。表3は、mPEK5K-R-GNP-TNFα製造プロセスの有する一つ一つの工程におけるR-GNPsの粒子サイズとゼータポテンシャルを示す。そのゼータポテンシャルは、極端なマイナスからほぼ中性へとシフトした。それは顕著な指数であり、結合反応の完全性を評価するために利用可能である。
実施例7
放射性シリカコートGNPs(R-SGNPs)の調製
シリカコート金ナノ粒子(SGNPs)を、目的分子上で、特異的官能基と共有結合的に結合することができ、複合体ナノ粒子の生成を可能にする。また、SGNPsは、生理的環境中で、凝集に対する安定性を向上することができる。放射性シリカコートGNPs(R-SGNPs)は、蛍光タグを必要とせずに、in vivoにおけるトレーシングのために有用である。
アミン保護金ナノ粒子含有水溶液を、50℃で軽く加熱して、非放射性クロロ金酸(H197AuCl4、90ml、1.0mM)とオレイルアミン(1.0ml、1.0mM)とを混合することにより調製し、安定的なアミン保護GNPsを得た。アルキルアミン(例、オレイルアミン)還元GNPsを、30分間、10000rpmでの遠心分離に供した。ペレット画分を、2回脱イオン化した水(dd H2O)で洗浄して、遊離アルキルアミン分子を除去した。前記ペレットを、極性溶媒(例、dd H2O)または非極性溶媒中で、再拡散してもよい。
SGNPsを、水-イン-シクロヘキサン(water-in-cyclohexane)逆マイクロエマルションの形成を介して合成した。簡潔には、Igepal CO-520(0.35mL,、界面活性剤として)を、アルキルアミン保護GNP溶液(6mL)に添加した。アンモニア溶液(0.2mL)とテトラエチルオルソケイ酸塩(TEOS、20μL、ケイ酸塩前駆体として)を、撹拌しながら連続的に加えて、逆マイクロエマルションである透明な赤色溶液を形成させた。粒子サイズ全体(コア-シェル構造)が約35nmのSGNPsを、室温で15hの反応を介して得た。シリカコーティングの厚さの制御のために、TEOSの濃度を増加させることおよび/または反応時間を延長することが必要だった。所望の粒子サイズが得られた場合、エタノールを加えて、逆マイクロエマルションを破壊した。エタノール抽出後に、SGNPsを遠心分離により回収し、水またはエタノール中に再拡散させた。
大体35nmのサイズを有する放射性シリカコートGNPs(R-SGNPs)(図7)を得るために、上記SGNPsを原子炉中で2時間の照射に暴露した。 制御可能な中性子フラックス(1.0x1011〜1.5x1013 n・cm-2・sec-1の範囲にある熱中性子と1.0x1011〜1.7x1013 n・cm-2・sec-1の範囲にある高速中性子とを含むもの)の下で、比放射能は、60〜114μCi/mLの範囲内にあった。
実施例8
メソ多孔質シリカナノ粒子(MSN)固定化R-GNPsの調製
2つの異なる方法を採用して、MSN固定化R-GNPs(MSN-R-GNPs)を合成した。第1の方法では、コア-シェル構造のシリカコートGNPs(SGNPs、ケイ酸塩前駆体として使用するもの)を、MSNsの形成プロセス中に取り込み、そして、得られたMSN-GNPsを、その後、MSN-R-GNPsへと製造する。簡潔には、SiO2、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、NaOH、H2O、およびエタノールが1 : 0.11 : 0.24 : 395 : 36のモル比であるアルカリ性混合物(50mL、pH>10)に、SGNPs(0.32g、実施例7由来のもの)を室温で加えた。15分平衡化した後に、その溶液を、100℃で、静止状態下で、24時間、オートクレーブ中に配置した。そのアルカリ性のためにシリカが溶解し、前記GNPsを溶かして、シリカを脱コートした。MSN固定化GNPsを、遠心分離により回収し、dd H2Oで洗浄し、そして、オーブン中で、50℃、12時間乾燥させた。残余CTABを、540℃に加熱した気流を用いて6時間の間除去した。前記MSN-GNPsを、原子炉中で(熱中性子(1.0x1011〜1.5x1013 n・cm-2・sec-1)および高速中性子(1.0x1011〜1.7x1013 n・cm-2・sec-1)を使用する)中性子に暴露して、放射能を導入した。照射時間を調整することにより、MSN-R-GNPsを様々なレベルの比放射能(mg当たりの放射能)へと導いた。前記比放射能は、1〜360分原子炉中で照射後、約1〜400μCi/mgの範囲にあった。
第2方法では、あらかじめ製造したMSNsを、非放射性金イオン中に加えて、その後、原子炉中で中性子照射に暴露して、R-GNPs(すなわち、MSN-R-GNPs)をカプセル化および/または固定化するナノ複合体材料を得ることができる。この状況では、あらかじめ製造したMSNは、MSN固定化R-GNPsを形成するための無機固定化物として働く。前記MSNを合成するために、SiO2、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、NaOH、H2O、およびエタノールが1 : 0.11 : 0.24 : 395 : 36のモル比の混合物をゲル形状のものとして調製し、15分かけて平衡化に到達させ、その後、100℃、静止状態下で、24時間オートクレーブした。最終固形材料(すなわち、MSNs)を上述のように回収した。
非放射性金イオン(0.1〜100mM)(例、HAuCl4・xH2O、酢酸金(III)、酢酸金(I)、水酸化金(III)、一水酸化金(I))を使用して、上記あらかじめ製造したMSN固定化物(1〜1000mg)と混合し、MSN-固定化R-GNPsを合成することができる。熱中性子については3.4 x 1012 n・cm-2・sec-1および高速中性子については1.2 x 1012 n・cm-2・sec-1での中性子照射により、非放射性金(197Au)イオンは、GNPsに還元されると同時に、そのGNPsを活性化して、単一の30分工程にてR-GNPsになった。
図8は、MSNに固定化されたR-GNPsのTEM画像を示す。球状のMSNは、R-GNPsへの固定化物として働き、MSNs固定化R-GNPs(MSN-GNPs)を形成した。その画像は、R-GNPsがMSNsの孔および/またはチャネル中にカプセル化されたことを示す。また、R-GNPsはMSNsの表面と会合するように見えて、そのことは、表面近くの多孔質構造中にGNPsを形成したかもしれず、外側に向かって成長したことを示唆した。いくつかのGNPsは、前記MSNsの孔/チャネル中の深部に結晶化するように見えた。
実施例9
R-GNP形成の妥当性評価
放射性金(Au-198)が本当に上記方法により生成されたかどうかを確認するために、mPEG-R-GNP-TNFαを、高純度ゲルマニウム(HPGe)検出器(GC1020、CANBERRA、米国)を使用して特徴解析した。図9に示されるように、そのエネルギースペクトルは、特徴的なピークを、412、676、および1088keVにおいて、それぞれ99.4%、0.5%、および0.1%の存在量で示した。このことは、Au-198の理論上のガンマ光子放射と一致していた。この結果により、生成された材料(すなわち、放射性Au-198)の放射化学的特性を確認した。
実施例10
がん細胞におけるR-GNPsの細胞傷害性効果
H460ヒト大細胞癌細胞(生物資源保存及研究センター、新竹、台湾)を、(ウシ胎仔血清(10%、v/v)、L-グルタミン(2mM)、HEPES(10mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、グルコース(4.5g/L)、および炭酸水素ナトリウム(1.5g/L)を含む)RPMI-1640中で、37℃および5%CO2にて増殖させた。ハンクス平衡塩類溶液中のトリプシン(0.05%)/EDTA(0.53mM)を用いて、前記細胞を剥がした。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイ[Uboldiら(2009)、「金ナノ粒子は、肺胞II型細胞株A549およびNCIH441に細胞傷害性を誘導する」、Particle and fibre toxicology 6, 18]を実施して、非放射性GNPsと比較してR-GNPsの有する細胞傷害性を評価した。H460細胞を24穴プレートに播種(2x104細胞/ウエル)し、一晩増殖させて、そして、mPEG5K-R-GNPs(放射性)、mPEG5K-GNPs(非放射性)、または培地のみ(コントロール)を用いて、24h、37℃で処理した。上清(50uL/ウエル)を、LDHアッセイ(Clontech、米国)用に回収した。結果は、コントロールに比べるLDH放出の平均増加(すなわち、実験的LDH放出 - コントロールLDH放出) / コントロールLDH放出 x 100% ± 平均標準誤差(SEM)として表される。図10は、4.8nMの金ナノ粒子濃度において、R-GNPsとGNPsとの間で、がん細胞からのLDH放出に有意差があったことを示す。R-GNPsは、1.2μCiの放射能を含んでいて、同等の濃度のGNPsよりも多くのLDH放出を引き起こした。LDH放出量は細胞膜損傷の指標であることから、その結果は、1.2μCiの放射能(Au-198)を有する放射性mPEG5K-GNPsががん細胞に有意な損傷を導くことができたことを実証した。
実施例11
R-GNPsはin vivoにおける腫瘍増殖を抑制する
腫瘍抑制へのR-GNPsの効果を評価するために、H460(5x104)ヒト大細胞肺癌細胞を、雄NU/NUマウス(6週齢、BioLASCO(台湾)から購入)の右大腿背部に皮下移植することにより、腫瘍保持マウスを作製した。腫瘍体積を副尺カリパスを用いて測定し、式:長さ2 x 幅/2を使用して値を計算した。前記腫瘍保持マウスを、グループ当たり4匹の動物を有する4つのグループに分けた。それぞれの動物に、H460腫瘍細胞の接種2日後に尾静脈を介して単一用量の試験薬剤を以下のように投与した:(1)コントロールグループ、dd H2Oで治療した;(2)TNFαグループ、遊離形態のTNFα(7.5μg/マウス)で治療した;(3)非放射性GNP(大体20nm)グループ、PEG5K-GNP-TNFα(推定7.5μgTNFα/マウス)で治療した;および(4)R-GNPグループ、PEG5K-R-GNP-TNFα(推定7.5μgTNFαプラス80μCi/マウス)で治療した。図11は、各々の動物グループの腫瘍増殖曲線を示す。コントロールグループ、TNFαグループ、非放射性GNPグループ、およびR-GNPグループにおいて、腫瘍が1000mm3より大きく成長するのに必要な時間は、それぞれ接種後13、17、17、および20日であった。それは、R-GNPsを用いた単一用量治療の有する腫瘍抑制効力を評価するために適切な指標であった。
実施例12
生きた動物におけるR-GNPsトレーシング
R-GNPsにより放射されるガンマ線は、粒子のトレーシングおよび診断目的に価値あるものである。単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)を使用して、生きた動物中でR-GNPsを追跡(トレーシング)した。マウス(BALB/c、6週齢、雄)を、腹腔内注射を介してZoletil(登録商標)(12.5mg/kg)およびXylazine(5mg/kg)を用いて麻酔した。放射性mPEG2K-GNPs(50%PBS中で200μCi;粒子は大体20nm)を、尾静脈を介してマウスに注射した。ピンホールコリメータ(5mm I.D.)を備えた単一カメラヘッドSPECTイメージングシステム(E.CAM plus HD3検出器、SIEMENS)により、R-GNPsの画像を取得した。全身イメージング用ピンホールコリメータの2.0cm下に、下肢を伸張させて背側にして、マウスを配置した。R-GNPsのin vivo画像を提示するために、総数で150kカウントを集積するまで、ガンマ線イベントを蓄積した。
図12Aおよび12Bは、20nmの放射性mPEG2K-GNPsの尾静脈投与の約2分および15分後に撮影された、BALB/cマウスのSPECT画像であり、これらの粒子の生物分布を示している。矢印1202により示された画像スポットは、マウスの鼻部を表している。なぜなら、マウス鼻部に近接して位置するマーカーにより生成されたからである。矢印1204により示される画像スポットは、鼻部1202における前記マーカーからの距離により決定されて、マウスの肝臓を表す。この結果は、放射性mPEG2K-GNPsが静脈内注射後約2分(図12A)および15分(図12B)において、マウス肝臓1204に顕著に送達されたことを示した。肝臓1204における金分布は、引き続いて、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いた金属解析により確認された。粒子のサイズと表面化学とは、R-GNPsの吸収、分布、代謝、および排泄(「ADME」と略記される)の運命に影響を与えることができる。SPECTイメージングに利用されることに加えて、Au-198からのベータ粒子(0.96MeV)放射があるので、R-GNPsを治療目的に使用する可能性もある。
R-GNPsを使用することにより、特徴的な412keVのガンマ線(Au-198由来)は、in vivoにおけるGNPsのトレーシングのために利便性を提供することができる。放射性金の近接照射療法に関する従前の研究と同様に、Au-198含有GNPsは、ベータ粒子(電子)を放射することが可能で、腫瘍の微小環境における治療実行可能性を導く。
まとめると、本発明は、非イオン性R-GNPs(Au-198)の製造方法に関する。非放射性GNPs(Au-197)を、正確に規定した制御可能なパラメータを用いて調製することができる。調整可能なサイズと修飾表面とを有する規定された形状のGNPsを用いて、他種類の非金分子および/もしくは非金ナノ材料を固定、固着、または取り込んで、コア-シェル構造を創成することができる。有機-無機ハイブリッドナノ粒子用材料(例、リポソーム、ポリ乳酸共グリコール酸(PLGA)、キトサン、およびゼラチン)により、GNPsをカプセル化することができる。複合体ナノ粒子の製造後、サンプルを引き続いて、原子炉中で中性子照射を用いて処理する。中性子活性化を介して、Au-197は、中性子を捕獲して、Au-198へと転換可能である。原子炉の適正な制御と、ナノ粒子製造のためのレシピを用いて、本発明者らは、中性子活性化前のGNPsに類似した、ナノ複合体含有放射性金の物理的および化学的特性を保持するのに成功した。Au-198から放射された412keVのガンマ線は、放射能検出およびSPECTイメージングシステムを介して、ナノ複合体の分布と排泄とをトレーシングすることを可能にする。非イオン性R-GNPsは、中性子活性化後に滅菌状態になった。前記R-GNPsは、(トレーシング、診断能力および治療能力を含む)バイオ医学的応用用の複数の機能を所持していて、ナノ医薬品に知見を与える。
本発明の例示的実施形態の前記記載は、説明および記載目的のためだけに提示されたものであり、開示された正確な形態に本発明を排除し又は限定することを意図していない。多数の変更とバリエーションが、上記教義に鑑みて可能である。
当業者が、考慮される特定の用途に適する種々の変更を有する本発明と種々の実施形態とを利用することを可能にする目的で、本発明の原理およびその実用的応用を説明するために、本実施形態と実施例とを選択ならびに記載した。代替的な実施形態が、本発明の精神と範囲とから逸脱すること無しに本発明の属する当業者には、明らかになる。したがって、本発明の範囲は、本明細書中に記載された前述の記載内容および例示的実施形態よりはむしろ、添付される特許請求の範囲により規定される。
いくつかの参考文献(特許、特許出願、および種々の刊行物を含む場合がある)が、本発明の記載中で引用および議論される。そのような参考文献の引用および/または議論は、本発明の記載を明確にするためだけに提供され、任意のそのような参考文献が本明細書中に記載される本発明の「先行技術」であることを認めるものではない。本明細書中に引用および議論されたすべての参考文献は、完全にならびに各々の参考文献が参照により個々に組み込まれたかと同程度に、参照により本明細書中に組み込まれる。

Claims (4)

  1. 非イオン性放射性金ナノ粒子(R-GNPs)を含む組成物を調製するための方法であって、
    a)鋳型を有さない金(Au-197)イオンを含む溶液を提供する工程と、
    b)鋳型を有さない金イオンを含む前記溶液を中性子照射に暴露して、同時に金イオンを還元し放射性をもたせ、これによって、前記非イオン性R-GNPsを含む前記組成物を生成する工程とを含む方法。
  2. 前記暴露工程に先行して、非金材料と前記溶液とを付加混合する工程をさらに含み、そこでは、前記非金材料は、前記非イオン性R-GNPsの表面に結合し、これによって、前記非金材料で表面を修飾される前記非イオン性R-GNPsを含む組成物が生成される、請求項1に記載の方法。
  3. (c)前記非イオン性R-GNPsの表面に少なくとも1つの非金材料を結合し、これによって前記非金材料で表面を修飾される前記非イオン性R-GNPsを含む組成物を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記非金材料が、クエン酸塩、アルキルアミン、シリカ、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシ末端のポリエチレングリコール(PEG)誘導体、カルボキシ末端のPEG誘導体、アミン末端のPEG誘導体、合成ポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、および脂肪酸からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項2に記載の方法。
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