JP5698914B2 - 塔婆立て付き墓標及び、その台石部の製造方法 - Google Patents
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Description
このような墓地においては、墓地内における周囲との調和、景観の保護、隣接利用者との紛争の防止などを目的として、設置可能な墓標の基準を定めており、区画内であっても、随意に石碑や物品を設置することは許されない場合が多い。
こうした信仰上の背景から、建立者によっては地蔵菩薩像などの尊像を建立することに大きな意義を感じる者もあり、墓標に対する思い入れの多様性につながっている。
すなわち、墓地に設置される墓標であって、少なくとも略平板状の台石部と、その台石部の上面に直立する石碑部とを備えた構成において、台石部の石碑部よりも背面側に、塔婆の下端を挿入して塔婆を立てることのできる塔婆立て溝を設けたことを特徴とする。
上記の塔婆立て溝を、台石部の幅方向に略均等に複数配置してもよい。
あるいは、上記塔婆立て付き墓標において、石碑部に仏像その他の物品を収容する物品収容部を備えることもできる。
(1)台石部の後端に前側が長辺側となる台形柱状の凹部を形成する凹部形成工程、
(2)該凹部に嵌合する台形柱状部材に、塔婆の下端を挿入して塔婆を立てることのできる塔婆立て溝の内側の3側面を形成する塔婆立て溝形成工程、
(3)該台形柱状部材を、該凹部に嵌設する台形柱状部材嵌設工程
これらの各工程を少なくとも含み、該凹部と該台形柱状部材との境界部に該塔婆立て溝を形成することを特徴とする。
まず、台石部の石碑部よりも背面側に、塔婆の下端を挿入して塔婆を立てることのできる塔婆立て溝を設けることによって、塔婆立てを台石部と一体化することができ、塔婆立てを別に配置することが認められない墓地であっても、塔婆供養を行うことができる。特に台石部は墓標において必要不可欠な構成部材であることから、これが認められない墓地はまず考えられず、塔婆立てに制限のある多くの墓地において有効である。
同時に、台石部と一体化することで部品点数を削減し、墓標全体のコストを抑制することにも寄与する。
また、前側が長辺側となる台形柱状の凹部とすることで、台形柱状部材は台形の斜辺部分で台石部に係止され、接着剤等によらずに強固な塔婆立て溝を形成することができる。本構成は極めて長期間屋外に設置される墓標において特に有効である。
図1は、本発明に係る墓標(1)の全体斜視図である。本発明の最小限の構成は、略平板状の台石部(10)と、その上面に直立する石碑部(11)とから成り、加えて本実施例では台石部(10)の前面に納骨室を覆う蓋石部(12)を備えている。
本発明の要部は台石部(10)の石碑部(11)を載置している位置よりも背面側に、塔婆(13)の下端を挿入して塔婆を立てることのできる塔婆立て溝(100)を設けたことにある。以下、塔婆立て溝(100)の構造、及びこれを備えた台石部(10)の製造方法につき詳述する。
図2は、台石部(10)を示した斜視図である。台石部(10)は石碑部(11)の基台となる略平板の板状体であって、石碑部(11)を安定的に設置すると共に、美観の向上にも寄与する。一般的に石碑部(11)と同様に石材(御影石、大谷石等)で形成されるが、材質はコンクリート・ブロック、セラミック、鉄、木材、樹脂等何でもよい。
本実施例では、石碑部(11)を載置される平面部(101)を75mmの厚みとし、その背面側に75mm隆起した隆起部(102)を形成している。すなわち隆起部(102)における厚みは150mmである。
隆起部の形状は、これに限らず、直角に隆起する構成、曲線的に隆起する構成、幅方向に一部分だけが隆起する構成でもよい。
一般的な塔婆は、地面に突き刺して立てるために下端を鋭角に形成しているが、本発明ではこの形状を利用し、塔婆立て溝(100)内で塔婆(13)が左右に振れないように、塔婆立て溝(100)の形状をテーパ状にした。すなわち、テーパ状の溝に、鋭角の先端を嵌入すると溝に沿って自然に塔婆が誘導され、整然と直立させることが可能になる。
図3は、台石部(10)(実施例2)の斜視図である。本実施例では、塔婆立て溝を、台石部(10)、特に隆起部(102)の幅方向に略均等に4個配置した。各塔婆立て溝(100a)(100b)(100c)(100d)は、それぞれ1本の塔婆(13)を立てることができ、従来の塔婆立て同様に、複数の塔婆を同時に立てられる。
本実施例の台石部(10)の幅は590mmであり、4個配列すると各溝間は概ね5cm程度の等間隔となる。塔婆が長いため、上端でも接触がないことを考慮すれば、塔ばてて溝の間隔は少なくとも40mm以上が好ましい。
もちろん、塔婆立て溝の数は任意であり、台石部(10)の幅や、建立者の希望に応じて2個以上の任意の個数とすることができる。
あるいは、塔婆立て溝の奥行きを20mm以上として2本以上の塔婆を重ねて立てられるようにしてもよい。
本発明の塔婆立て溝(100)は台石部(10)の一面からドリル等で溝を彫って形成することもできるが、石材にこのような細い溝を切り込むことは加工上困難であり、製造時の歩留まりの悪化、製造コストの上昇につながる。特に、上記実施例で述べたように、塔婆立て溝(100)をテーパ状に構成することは、非常に困難である。
図4(b)は同部分の平面図であり、台石部(10)の背面側(図中の上側)から切り込むことができ、また長辺と短辺の長さの差が大きくないため、カッターをやや傾ける程度で切り込み加工することが容易である。
図4(c)は同部分の背面図であり、凹部(20)が台石部(10)の上面から下面まで垂直に形成されていることを示している。
この台形柱状部材(30)の外形は、凹部(20)にちょうど嵌合する形状となっている。
すなわち、図5(a)のように、上面は上記した寸法の開口部(31)を有し、約65mmの深さまでそのまま下方に溝を形成する。それより下は、テーパ状部分(32)に幅を狭めていき、下端(33)における幅は24mmである。
以上により、塔婆立て溝(100)の内側面のうち3側面を台形柱状部材(20)で構成することができる。
すなわち、図6(a)に示すように、台形柱状部材(30)を、凹部(20)の上方(又は下方)からスライドして嵌設し(台形柱状部材嵌設工程)、図6(b)のように、凹部(20)と台形柱状部材(30)との境界部に塔婆立て溝(100)を形成する。
図7(a)は、本発明に係る台石部(10)(実施例3)の斜視図である。
まず、実施例3に示す台石部(10)は上記実施例と異なり、隆起部を備えない平板体の構成である。塔婆立て溝(100)で塔婆を安定的に立てることができるように、平板体の厚みは120mmとしている。本発明の台石部(10)はこのような形状でも良い。
そして、この台石部(10)において、石碑部(11)が載置される位置よりも前面側に、尊像又は物品を載置するための切り欠き部(40)を設ける。
本実施例における切り欠き部(40)は、幅120mm、奥行き60mm、深さが105mm程度であって、ここには小型の地蔵菩薩や写真、遺品、玩具など故人にゆかりの品物を置くスペースとする。
本発明は、上記塔婆立てと合わせてこれらの問題を解消するものであって、同じ台石部(10)に簡便な加工を施すことにより、物品の収容部を設けることを提案する。切り欠き部(40)は台石部(10)の上面より下がっているため、尊像や高さのある物品でも載置した際に突出する感が少なく、全体意匠の向上に寄与する。また、切り欠き部(40)によって物品がずれにくく、安定した載置にも寄与する。
図7(b)は、同様に切り欠き部(41)を設けた別実施例であり、台石部(10)の前端、中央付近に切り欠き部(41)を備えた構成を示している。切り欠き部の寸法は深さが60mmと浅くなっている他は実施例3と同様である。
この実施例では、平面部(101)の厚みが75mmであるため深さを浅くしているが、機能的には同様であり、尊像その他の物品を載置するスペースとして利用することができる。
図8は、本発明において石碑部(11)に物品収容部(50)を設ける実施例である。従来技術でも述べたように、尊像等を墓地に設置したいとの建立者の要望は強いが、墓地の基準により、別個に設けることは難しい場合も多い。
本実施例では、石碑部(11)に物品収容部(50)を開設してこの内側に尊像(51)などを載置することができる。本構成では、石碑部(11)よりも尊像の高さを突出させないことができるので、高さ制限がある場合にも対応が可能である。
収納する物品としては、このほかに写真、遺品、玩具など任意に用いることができる。
図9は、本発明に係る左右石に物品収容部を設ける実施例である。
本発明の塔婆立て付き墓標(1)において、台石部(10)よりも前面に納骨室を覆う蓋石部(12)を備えている。この蓋石部(12)上に、中央石と呼ぶ香呂(60)、左石と呼ぶ物品収容部(61)、右石と呼ぶ花立て(62)を配置する。本発明の特徴は、これら3つの石を一体的に構成する点であり、墓標に求められる様々な機能、装備をこの一体部材に備えることができる。香呂や花立ては墓参に必須の設備であるため、設置が認められることがほとんどであるが、本発明は従来花立てを配置した左右石の一方を物品収容部(61)に変形することを提案するものである。
なお、本実施例では、左石を物品収容部(61)にしているが、左右のどちらでも構わない。
花立て(62)には供花を供えるので、外観上はさらに高い印象となる。これに対応して物品収容部(61)を高めに設計し、左右で均衡のとれた設置を可能にしている。
図11は、実施例6と同様、蓋石部(12)を備えた塔婆立て付き墓標(1)に用いられる一体構成された左右石及び中央石の実施例である。
本実施例では、左石(71)、右石(72)を従来と同様に花立てとして用いることで、供花を両側に均衡良く供えることができる一方、中央石(70)の内側に香呂(74)と物品収容部(73)とを配設している。
物品収容部(73)の内側の高さは268mmであり、小型の尊像や、高さのある物品でも収容することができる。また、物品収容部(73)の内側に直接彫刻を行って尊像等を形成することもできる。
10 台石
11 石碑
12 蓋石部
13 塔婆
100 塔婆立て溝
Claims (8)
- 墓地に設置される墓標であって、少なくとも略平板状の台石部と、該台石部の上面に直立する石碑部とを備えた構成において、
該台石部の該石碑部よりも背面側に、塔婆の下端を挿入して塔婆を立てることのできる塔婆立て溝を設け、
該塔婆立て溝が、
塔婆の鋭角となる下端形状に対応して、下方に向けてテーパ状に溝の幅を小さくして該台石部の下端まで貫通する
ことを特徴とする塔婆立て付き墓標。 - 台石部の後端に前側が長辺側となる台形柱状の凹部を設けると共に、該凹部に嵌合する台形柱状部材を備え、
前記塔婆立て溝の内側面を該台石部と該台形柱状部材とにより形成する
請求項1に記載の塔婆立て付き墓標。 - 前記塔婆立て溝を、前記台石部の幅方向に略均等に複数配置した
請求項1又は2に記載の塔婆立て付き墓標。 - 前記塔婆立て付き墓標において、
前記台石部の前記石碑部よりも前面側に、尊像又は物品を載置するための切り欠き部を設けた
請求項1ないし3のいずれかに記載の塔婆立て付き墓標。 - 前記塔婆立て付き墓標において、
前記石碑部に尊像その他の物品を収容する物品収容部を備えた
請求項1ないし4のいずれかに記載の塔婆立て付き墓標。 - 前記塔婆立て付き墓標において、
前記台石部よりも前面に納骨室を覆う蓋石部を備えると共に、
該蓋石部上に、香呂を備えた中央石と、花立て及び尊像その他の物品を収容する物品収容部をそれぞれ一方ずつに備えた左右石とを配置し、
該中央石の高さが、該左右石のいずれの高さよりも低く形成される
請求項1ないし5のいずれかに記載の塔婆立て付き墓標。 - 前記塔婆立て付き墓標において、
前記台石部よりも前面に納骨室を覆う蓋石部を備えると共に、
該蓋石部上に、香呂及び尊像その他の物品を収容する物品収容部を備えた中央石と、花立てをそれぞれ備えた左右石とを配置し、
該左右石の高さが、該中央石の高さよりも低く形成される
請求項1ないし6のいずれかに記載の塔婆立て付き墓標。 - 墓地に設置される墓標に用いられる略平板状の台石部の製造方法において、
台石部の後端に前側が長辺側となる台形柱状の凹部を形成する凹部形成工程、
該凹部に嵌合する台形柱状部材に、塔婆の下端を挿入して塔婆を立てることのできる塔婆立て溝の内側の3側面を形成する塔婆立て溝形成工程、
該台形柱状部材を、該凹部に嵌設する台形柱状部材嵌設工程
を少なくとも含み、該凹部と該台形柱状部材との境界部に該塔婆立て溝を形成する
ことを特徴とする塔婆立て付き墓標の台石部の製造方法。
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