JP5696339B2 - ミルドファイバー、その製造方法およびfrtp - Google Patents

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Description

本発明はミルドファイバー、その製造方法およびFRTPに係り、特に、廃FRPより回収したガラス繊維を用いたミルドファイバーとその製造方法、およびFRTPに関する。
ガラス繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic、以下「FRP」という。)は、住宅機材、建設資材、浄化槽、工業材料、舟艇・船舶等に用いられており、出荷量は、平成16年においてそれぞれ91,000トン、61,700トン、47,900トン、39,400トン、10,800トン等の総計342,400トンとなっている。一方、廃FRPの排出量は、FRP協会の試算によると、平成17年度で約450,000トン(住宅機材204,000トン、建設資材39,000トン、舟艇・船舶33,000トン等)と見込まれている。
FRPは、高強度で耐環境性に優れ、かつ大型の機材に適し、また成形に高価な金型等が不要であるために生産性が高い等の特徴を有する材料であるが、その大部分はリサイクルされずに、単純焼却や埋立て処分されているのが現状である。しかし、単純焼却処理の場合、ダイオキシン類の発生や高カロリーによる焼却炉への負担があり、また埋め立て処分の場合は、FRPが嵩高な体積を有するとともに耐久性があるために地中で腐敗せず、環境への負荷が大きい等の問題がある。また他の方法として、マテリアルリサイクルが検討されているものの、コスト上の問題で普及していない。
このような状況の中で、廃FRPを低コストでリサイクルすることを目的として、常圧下でFRPを溶解処理し、不飽和ポリエステル樹脂分解物およびガラス繊維を分離・回収する常圧溶解法が開発された(非特許文献1)。この方法の設備面の特徴は、常圧下で処理できるため耐圧容器が不要であること、予備加工も不要なため破砕・粉砕の装置も不要であること等であり、そのため設備費用の削減による低コスト化が可能と考えられる。また物性面では、粉砕を必要としないために、ガラス繊維を不織布化や粉砕加工可能な繊維長で得ることが可能であること、200℃以下の処理温度であるためガラス繊維が劣化しないこと等である。
また本願発明者らは、常圧溶解法で処理した廃FRPに関する研究において、廃FRPから回収したガラス繊維を原料としてリサイクルガラス不織布を作製し、それを用いてFRP化したところ、従来品と比較して曲げ強度が70%程度のFRPを得ることに成功している(非特許文献2)。また、同リサイクルガラス繊維不織布を用いたFRPによる防雪柵試作の研究も報告されている(非特許文献3)。
柴田勝司:常圧溶解法による熱硬化性樹脂複合材料のリサイクル技術,日本接着学会誌,vol.44,no.4,p25(2006) 廣瀬 孝,市川友博,齋藤一志,小笠原大二,對馬弘海,柴田勝司:FRP廃船から回収したガラス繊維とホタテ貝殻を原料としたFRPの開発,廃棄物学会研究発表会講演論文集,Vol.17,pp.541-543(2006) 岩崎洋一,齋藤一志,小笠原大二,市川友博,對馬弘海,柴田勝司:リサイクルFRPの防雪柵への応用,第3回 FRP複合構造・橋梁に関するシンポジウム 論文報告集,pp.155-160(2009)
さて、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂をガラス繊維で強化した材料は主にFRPと総称されるのに対して、熱可塑性樹脂をガラス繊維で強化した材料はガラス繊維強化熱可塑性プラスチック(Fiber Reinforced Thermo Plastic、以下「FRTP」という。)と称されている。 廃FRP由来ガラス繊維の利用法としては、FRPやFRTP用の材料が考えられる。このうちFRPへの利用については、上述非特許文献2、3の研究例がある。
しかし一方FRTP用ガラス繊維については、ミルドファイバーやチョップドストランド等として、自動車・電機・光学機械・IT関連向けに旺盛な需要があり、国内において170,000トンの市場規模となっているにも関わらず、常圧溶解法で得られたガラス繊維をそれらの用途へ展開することについては、これまで研究、開発されていない。
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、有効なリサイクル方法が求められている廃FRPより分離・回収したガラス繊維を原料として特に用いて、FRTP用の材料であるミルドファイバーとその製造方法を提供すること、およびかかるミルドファイバーを用いたFRTPを提供することである。
本願発明者は、廃FRPより分離・回収したガラス繊維を用いたミルドファイバーの調製方法の検討およびその物性評価、さらにミルドファイバーを熱可塑性樹脂である廃ペットボトルに複合した材料の評価を経て、上述課題を充分解決できることを確信し、本発明の完成に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
〔1〕 ガラス繊維強化プラスチック(FRP)を常圧下で溶解処理してガラス繊維を得るガラス繊維化工程と、該ガラス繊維を粉砕処理して所定繊維長のミルドファイバーを得るミルドファイバー化工程とからなり、該FRP由来の樹脂が残存し含まれているミルドファイバーが得られる、ミルドファイバー製造方法。
〔2〕 前記ミルドファイバー化工程により繊維長100μm以上300μm以下範囲のミルドファイバーが60%以上の構成比率で得られることを特徴とする、〔1〕に記載のミルドファイバー製造方法。
〔3〕 前記ミルドファイバー化工程では前記ガラス繊維がグラインダーにより磨り潰されつつ粉砕されることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のミルドファイバー製造方法。
〔4〕 前記ガラス繊維強化プラスチック(FRP)が廃FRPであることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載のミルドファイバー製造方法。
〔5〕 〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載のミルドファイバー製造方法により得られたミルドファイバーで強化され、引張強度が高められていることを特徴とする、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)。
〔6〕 オートグラフを用いJIS K 7113に準じた引張試験による引張強度が強化前の熱可塑性樹脂の1.5倍以上であることを特徴とする、〔5〕に記載のガラス繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)。
本発明のミルドファイバーとその製造方法等は上述のように構成されるため、これによれば、特に廃FRPより分離・回収したガラス繊維を原料として用いて、FRTP用の材料であるミルドファイバーを得ることができ、さらにこれを、FRTPの製造原料として問題なく使用することができる。本発明のミルドファイバー製造方法によれば、100〜300μmの構成比率を60%超とすることができ、従来市場で提供されている製品よりも高い構成比率のミルドファイバーをを得ることができる。
また、本発明のミルドファイバーを廃ペットボトル(以下「廃PET」という。)と複合させて得たFRTP成形品は良好な結晶化がなされたものとなり、従来の市販品を用いたFRTPよりも結晶化を促進させることができる。さらに、引張強度および白色度も従来の市販品を用いたFRTPよりも高いものを得ることができる。
本発明ミルドファイバー製造用のガラス繊維の素材化方法の構成を示すフロー図である。 本発明ミルドファイバー製造方法の構成を示すフロー図である。 本発明実施例において素材化されたガラス繊維の写真である。 実施例において得られたミルドファイバーの繊維長分布を示すグラフである。 実施例において得られたミルドファイバーのTG曲線を示すグラフである。 実施例において得られたミルドファイバーの外観を示す顕微鏡写真である。 実施例において得られたFRTP成形品のDSC曲線を示すグラフである。 実施例において得られたFRTP成形品の白色度を示すグラフである。 実施例において得られたFRTP成形品の引張強度を示すグラフである。
本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明のミルドファイバーは、上述した非特許文献1開示の方法に基づいてFRPを常圧下で溶解処理することにより得られたガラス繊維を原料とし、これを粉砕処理することによって製造されるものである。特に、繊維長100μm以上300μm以下範囲のものの構成比率が60%以上を占めるように製造されたミルドファイバーは、本発明の好適な実施形態である。もっともそれ以外のものも本発明の範囲内である。
本発明ミルドファイバー製造において、原料ガラス繊維の分離・回収源とするFRPとしては、特に、廃FRPを用いるものとすることができる。廃FRPを用いることはコスト軽減になるとともに、環境負荷の少ない、もしくはない有効なリサイクルを実現することになり、産業上の利点が大きいからである。
図1Pは、本発明ミルドファイバー製造用のガラス繊維の素材化方法の構成を示すフロー図である。また、
図1は、本発明ミルドファイバー製造方法の構成を示すフロー図である。これらに図示するように、まず、FRPまたは廃FRP1をガラス繊維化工程S10に供して、ガラス繊維素材10を得る。ガラス繊維化工程S10はさらにいくつかの工程からなる。すなわち、切断処理工程S1、常圧下での溶解処理工程S2、分離・回収処理工程S3、洗浄処理工程S4、そして乾燥処理工程S5である。また、ガラス繊維化工程S10の後にはミルドファイバー化工程S20が設けられている。
かかる構成により、切断処理工程S1においてFRPまたは廃FRP1は切断され、ついで溶解処理工程S2において常圧下で溶解処理され、ついで分離・回収処理工程S3において粗素材が分離・回収され、そして洗浄処理工程S4での洗浄、乾燥処理工程S5での乾燥処理を経て、素材化されたガラス繊維素材10が得られる(図1P)。
そして、ガラス繊維化工程S10を経て得られたガラス繊維素材10は、ミルドファイバー化工程S20にて粉砕処理され、所定繊維長のミルドファイバー20が得られる(図1)。特に、ミルドファイバー化工程S20における粉砕処理は、これによって繊維長100μm以上300μm以下範囲のミルドファイバーが60%以上の構成比率で得られるような処理条件とすることができる。なお、ミルドファイバー化工程S20における粉砕処理には、グラインダーを用いることができる。
図1等のフローにより得られるミルドファイバーを用い、これによって熱可塑性樹脂を強化したFRTPも、本発明の範囲内である。強化対象の熱可塑性樹脂の種類は、特に限定されない。すなわちたとえば、塩化ビニル樹脂・耐熱塩化ビニル樹脂・ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ABS樹脂・AS樹脂・ポリメチルメタアクリレート等の汎用プラスチック、ポリアミド・ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリアセタール・ポリカーボネート・変性ポリフェニレンオキサイド・ポリブチレンテレフタレート(PBT)・超高分子量ポリエチレン等の熱可塑性エンプラ(エンジニアリング・プラスチック)、ポリサルフォン・ポリエーテルサルホン・ポリフェニレンサルファイド・ポリアリレート・ポリエーテルイミド・ポリエーテルエーテルケトン・ポリイミド・ポリテトラフロロエチレン(フッ素樹脂)等のスーパーエンプラである。
実施例で後述するように、本発明によるミルドファイバーを用いることにより、従来市場で提供されているミルドファイバー製品を用いるよりも、引張強度や白色度に優れたFRTPを得ることができる。
以下、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
1.実験方法
1.1 ガラス繊維の素材化方法およびその評価
ガラス繊維の原料である廃FRPは浴槽を製造する際に発生したSMC(Sheet Molding Compound、ガラス繊維基材に樹脂を含浸させ、シート状の中間成形材料を作り、これを金型で加圧、加熱成形したもの。)シートの端材を用いた。なお、ガラス繊維回収から素材化までのフローは、前掲図1Pに示したとおりである。
まず、廃FRPの端材を約400mm角に切断し、溶媒としてベンジルアルコール(以下「BZA」、DMS社製)、触媒としてリン酸三カリウム(ラサ晃栄社製)を充填した溶解槽に廃FRPを投入後、温度60℃、常圧で6時間溶解処理してガラス繊維を回収した。ガラス繊維の素材化は、エチレングリコール(以下「EG」、山一化学社製)で洗浄後、乾燥機(島川製作所社製SKE−303S)を用いて200℃、2時間乾燥して行った。繊維長は、素材化したガラス繊維をデジタルノギス(ミツトヨ社製CD−20CX)で測定し、20本の測定値を平均して値を求めた。
1.2 ミルドファイバーの調整と繊維長
ミルドファイバーは、素材化したガラス繊維をグラインダーですり潰しながら粉砕する方式のマスコロイダー(増幸産業社製MK)を用いて、目標の繊維長を100〜300μmに設定し、表1に示す条件1〜3にて粉砕した。その後、水切りのために吸引濾過し、105℃、24時間乾燥したものを1mmのふるいで分級し、通過したものをミルドファイバー(以下「試作品」ともいう。)とした。
ミルドファイバーの評価は、繊維長測定、熱重量測定および外観の観察により行った。繊維長測定は、水と混合したミルドファイバーをスポイトにて吸取り、スライドガラスに滴下後、105℃、2時間乾燥し、レーザ顕微鏡(キーエンス社製 VK−9500)を用いて約300本のガラス繊維をサンプルとした。熱重量(Thermogravimetry、以下「TG」という。)測定は、TG装置(リガク社製TG8120)を用いて行った。測定は、白金パンにサンプルを5mg入れ、昇温速度20℃/min、最高到達温度500℃の条件で行った。外観の観察は、レーザ顕微鏡を用いて行った。
また、比較例つまり比較用サンプルには、ミルドファイバー(朝日ファイバーグラス社製20JH1−20、以下「市販品」という。)を用いて、前記と同様の方法にて繊維長・熱重量測定および外観の観察により行った。
1.3 複合材料の成形および評価
廃PETと、表1の条件3で粉砕した試作品または市販品を混練・ペレット化し、射出成形した。廃PETと試作品または市販品の混合割合は、重量比で7:3すなわちフィラー混合率30%とした。混練前に廃PETを120℃、12時間、条件3による試作品または市販品を100℃、12時間乾燥させた。乾燥した廃PETと試作品3または市販品は、2軸混練押出機(ベルストルフ社製 ZE40A×40D)を用いて、樹脂温度260℃で混練・ペレット化した。
また、比較評価用として廃PETのみを同条件でペレット化した。成形前にペレットを120℃、8時間乾燥し、射出成形機(クロックナー社製 F40)を用いて、成形温度260℃、また結晶化を極力抑えるために金型温度30℃でJIS K 7113 1号試験片を成形した。各混合率サンプルの白色度(W)は色差計(MINOLTA社製 CR−200)を用いてL、a、b値を得、式<1>により求めた。

[白色度(W)(%)]=100−[(100−L)+a+b1/2・・・・・<1>
また、示差走査熱量(Differential scanning calorimetry、以下「DSC」)測定は、DSC測定装置(リガク社製Thermo plus DSC8230)を用いて行った。サンプルは、実施例および比較例それぞれの成形品を液体窒素に5分浸漬し、ハンマーにて破砕後、再度液体窒素に5分浸漬、ミルにて粉砕し、目開き400μmのポリ瓶ふるいで分級したものを用いた。測定は、アルミパンにサンプルを10mg入れ、昇温速度5℃/min、最高到達温度300℃の条件で行った。また、強度性能試験として、オートグラフ(島津製作所社製 AGS−10kNG)を用い、JIS K 7113に準じて引張試験を行った。
2.結果および考察
2.1 素材化したガラス繊維およびミルドファイバーの繊維長
図2は、本発明実施例において素材化されたガラス繊維の外観を示す写真である。常圧溶解法によってSMCシートを構成している不飽和ポリエステル樹脂を溶解し、分離・回収したガラス繊維を洗浄して得た素材は綿状で得られ、平均繊維長は25.0mmであった。SMCに用いられているチョップドストランドのガラス繊維はストランドを25mm程度の長さに切断したものが一般的であり、常圧溶解法によってSMCシートからガラス繊維をほぼ破壊せずに回収し、素材化できたものと考えられた。
図3は、実施例において得られたミルドファイバーの繊維長分布を示すグラフである。上表1に示した条件1〜3による実施例、および比較例である市販品の繊維長分布を示した。グラインダー回転速度の異なる条件1(1500RPM)と条件2(1800RPM)とを比較した。その結果、目標設定範囲100〜300μmより上の範囲、すなわち300μm以上の範囲では、重量比率はほぼ同等であった。
一方、目標設定範囲100〜300μm内では条件2での重量比率は条件1よりも低く、逆に目標設定範囲より下の範囲、すなわち100μm未満の範囲では、条件2での重量比率は条件1よりも高かった。これらのことから、粉砕速度を速くすることで、目標設定範囲未満の短繊維分布が多くなることが示された。
また、グラインダー回転速度は一定にして、粉砕処理を1回のみとした条件1と、グラインダーの幅を変えて計2回の粉砕処理を行った条件3とを比較した。その結果、目標設定範囲100〜300μmより上の範囲、すなわち300μm以上の範囲では、条件3の構成比率が条件1よりも低く、目標設定範囲100〜300μm内、およびそれより下の範囲すなわち100μm未満の範囲では、条件3での重量比率は条件1よりも高かった。これらのことから、グラインダーの幅を小さくすることにより、繊維長の分布は短い方へシフトすることが示された。
さらに市販品との比較において、条件1〜3は目標とする100〜300μmの割合が60%超と市販品よりも多く、その中でも条件3が最も多い結果を得た。これらのことから、実施例条件1〜3、特に条件3は市販品よりも設定範囲内のミルドファイバーを多く製造できる条件であることが示された。
2.2 ミルドファイバーの熱重量特性
図4は、実施例(条件3)において得られたミルドファイバーのTG曲線を示すグラフである。また、
図5は、実施例(条件3)において得られたミルドファイバーの外観を示す顕微鏡写真である。市販品の熱重量曲線も併せて示した。図示するように、実施例(条件3)は200℃付近まで、市販品は500℃付近まで、ほとんど重量減少を示さなかった。
廃FRPの主たる構成材料は、樹脂、ガラス繊維および炭酸カルシウムである。ガラス繊維としては一般的に、FRP用としてソーダ石灰ガラスが用いられ、ソーダ石灰ガラスは溶融温度1400〜1500℃である。また、炭酸カルシウムの分解温度は898℃である。したがって、実施例における500℃までの熱重量曲線の変化は、構成材料として挙げた上記各無機物ではなく、SMCシート由来の不飽和ポリエステル樹脂によるものと考えられた。
2.3 複合材料の物性評価
図6は、実施例および比較例において得られた各FRTP成形品のDSC曲線を示すグラフである。図示するように、それぞれの成形品は110〜120℃に結晶化のピーク、260〜270℃に結晶融解のピークが確認され、既往の研究(参考文献1)とほぼ同等の傾向を示した。
<参考文献1:日下石進,紺野慎行,石川 優:ポリエチレンテレフタレートの結晶化が及ぼす機械的物性の変化,Vol.18 No.12,pp.890-894(2006)>
表2に、図6から得た結晶化温度、および結晶化するために必要なエネルギーを意味する結晶化面積を示した。結晶化温度は、低い順に、実施例(条件3+廃PET)>比較例(市販品+廃PET)>廃PETのみ、であった。また結晶化面積は、小さい順に、実施例(条件3+廃PET)>比較例(市販品+廃PET)>廃PETのみ、であった。
これらのことから、廃PETとミルドファイバーを複合させることによって成形品の結晶化エネルギーが小さくなる、つまり結晶化が促進されることが示された。また、実施例(条件3)を用いる方が比較例(市販品)を用いるよりも結晶化を促進させやすいこと、すなわちFRTPを成形しやすいことが示された。これは、上述2.2に述べたとおり、実施例(条件3)には樹脂および炭酸カルシウムが含まれており、これらが結晶化を促進させる結晶核剤としての役割を果たしたことが考えられる。
図7は、実施例において得られたFRTP成形品の白色度を示すグラフである。図示するように、実施例(条件3)の成形品の白色度は60%弱程度、一方、比較例(市販品)では40%弱であり、実施例の方が高い白色度を示した。一般的に、廃PETの結晶化が促進されると外観は白くなると考えられており、実施例の方が比較例よりも高い白色度となった理由は、ミルドファイバー複合による廃PETの結晶化が促進されたことであると考えられた。
図8は、実施例において得られたFRTP成形品の引張強度を示すグラフである。図示するように、実施例(条件3+廃PET)および比較例(市販品+廃PET)とも引張強度は70MPa程度であり、一方廃PETのみの場合は40MPa台であった。つまり廃PETの引張強度は、ミルドファイバーと複合させることによって1.5倍程度大きくなることが示された。
また実施例(条件3+廃PET)の方が市販品よりも高い引張強度を示した。一般的に、廃PETの結晶化が促進されると強度は高くなると考えられており、実施例の方が比較例よりも高い引張強度となった理由は、白色度と同様、ミルドファイバー複合による廃PETの結晶化が促進されたことであると考えられた。
3.まとめ
本実施例では、有効なリサイクル方法が求められている廃FRPより回収したガラス繊維をFRTP用のガラス繊維であるミルドファイバーとして用いることを目的として、廃FRPより分離・回収して素材化したガラス繊維を用いたミルドファイバーの調製条件および物性評価、ミルドファイバーを廃PETに複合した成形品の評価に関して検討し、以下の結果を得た。
1)SMCシートを常圧溶解法にて処理して回収したガラス繊維は、繊維長25.0mmの綿状である。
2)マスコロイダーを用いることで、繊維長100〜300μmの構成比率が市販品よりも高い(60%超)のミルドファイバーを得ることができる。
3)ミルドファイバーと複合させることで成形品の結晶化が促進され、しかも、市販品よりも結晶化が促進される。
4)白色度は、実施例の方が市販品よりも高くなる。
5)廃PETにミルドファイバーを複合させると、引張強度は1.5倍となる。また、引張強度は、実施例ミルドファイバーの方が市販品よりも高くなる。
本発明のミルドファイバーとその製造方法等によれば、特に廃FRPより分離・回収したガラス繊維を原料として、FRTP用の材料であるミルドファイバーを得、さらにこれを用いて従来のミルドファイバーよりも強度等に優れたFRTP成形品を製造することができる。本発明により、廃FRPから得られたガラス繊維の新たな有効利用法、用途を開発することができ、廃FRPのリサイクルにも大いに資することとなる。したがって本発明は、環境分野その他関連する産業分野において、利用性の高い発明である。
1…FRPまたは廃FRP
10…ガラス繊維素材
20…ミルドファイバー
S1…切断処理工程
S2…溶解処理工程
S3…分離・回収処理工程
S4…洗浄処理工程
S5…乾燥処理工程
S10…ガラス繊維化工程
S20…ミルドファイバー化工程

Claims (4)

  1. ガラス繊維強化プラスチック(FRP)を常圧下で溶解処理してガラス繊維を得るガラス繊維化工程と、該ガラス繊維を粉砕処理して所定繊維長のミルドファイバーを得るミルドファイバー化工程とからなり、該FRP由来の樹脂が残存し含まれているミルドファイバーが得られる、ミルドファイバー製造方法。
  2. 前記ミルドファイバー化工程により繊維長100μm以上300μm以下範囲のミルドファイバーが60%以上の構成比率で得られることを特徴とする、請求項に記載のミルドファイバー製造方法。
  3. 前記ミルドファイバー化工程では前記ガラス繊維がグラインダーにより磨り潰されつつ粉砕されることを特徴とする、請求項またはに記載のミルドファイバー製造方法。
  4. 前記ガラス繊維強化プラスチック(FRP)が廃FRPであることを特徴とする、請求項ないしのいずれかに記載のミルドファイバー製造方法。
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