JP5695362B2 - ガス栓 - Google Patents

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本発明は、ガス機器に繋がるガス管路を開閉するガス栓に関する。特には、気密特性及び摺動特性を改良したガス栓に関する。
一般に、各種ガス機器(ガスメータその他)に繋がるガス管路中には、ガスを流通及び遮断するガス栓が組み込まれている。従来一般に使用されているガス栓は、内部にガス流路を有する本体と、ガス流路内に回動可能に配置されて、ガス流路を開閉する栓体と、を備えている。本体のガス流路内には栓体摺動面が形成されており、栓体にはガス流路の栓体摺動面と摺動する外側摺動面が形成されている。栓体は外側摺動面が本体の栓体摺動面で摺動しつつ本体内で回動し、ガス流路を開閉する。
このようなガス栓においては、本体と栓体の摺動面間の気密性の確保や両面間の凝着の防止、栓体の本体に対する摺動性を得るために、両面間に半固体状のグリース等の潤滑剤が介されているのが一般的である。一方、グリースの化学的劣化や補給の必要性を問題として、グリース不要を目的とした、栓体の摺動面にフッ素樹脂皮膜等のコーティングを施したガス栓も提案されている。しかし、コーティングのみでは確実な気密性能が得られないため、より安全性を求めてグリースと併用される場合が多い。また、フッ素樹脂皮膜にシリコーンオイルを含浸させた栓体も提案されている(特許文献1参照)。この提案の栓体は、グリースが不要であるとともに、十分な気密性能が得られるとされている。
特公昭59−752号
本発明は、気密特性の向上とともに、摺動操作力の低減や回転操作の滑らかさ、耐久性の向上などの利点を有するガス栓を提供することを目的とする。
本発明のベースとなるガス栓は、 内部にガス流路及び栓体摺動面を有する本体と、 前記栓体摺動面で摺動する外側摺動面及びガス流孔を有し、前記ガス流路を開閉する栓体と、 該栓体を動かす機構と、を具備するガス栓であって、 前記栓体の外側摺動面に、固体潤滑剤からなる厚さ1〜4μmの被膜が、面上に分散した印刷パターンとして形成されている。
本発明によれば、固体潤滑剤被膜を分散して形成したので、栓体の外周面に、被膜が形成されている部分である凸部と、被膜が形成されていない部分である凹部とが混在することになる。この凹部はグリース溜まりとして作用し、気密特性や摺動特性を向上させることができる。
なお、栓体摺動面の形状は、円筒面(ガスコンセントなど)や円錐面(ハンドル回動切替式ガス栓など)を含み、特に限定されない。また、本体及び栓体の材質も、鋳鉄・黄銅などを含み、特に限定されない。
固体潤滑剤としては、ポリアミドイミド樹脂やポリエーテルサルボン樹脂にフッ素樹脂等を分散させたものが好ましい。
固体潤滑剤被膜形成の前処理としては、リン酸マンガンやリン酸亜鉛などの化成処理膜を、厚さ0.5〜1.5μm程度、摺動面全体に生成させることが好ましい。これにより、固体潤滑剤被膜の密着性向上、良好なグリース保持性、防錆性能などが得られる。
固体潤滑剤被膜の形成方法は、限定されるものではないが、膜厚の均一性やパターン形状の自由度の点からスクリーン印刷が好ましい。さらに、その後焼成する。焼成条件は、一例として温度が320℃、焼成時間が20分である。
本発明においては、 前記印刷パターンが、前記固体潤滑剤がベタ状に塗布されたベタパターンと、塗布された部分と塗布されていない部分とが分散して混在する分散パターンとからなり、 前記ベタパターンが、前記摺動面の端部及び前記ガス流孔の周囲に形成され、 前記分散パターンが、前記摺動面の端部及び前記ガス流孔の周囲以外の前記摺動面に形成されていることが好ましい。
摺動面の端部及びガス流孔の周囲にベタパターンを形成することにより、摺動面の端からグリースが漏れることを防止する効果がある。
なお、摺動面の全体の面積に対する被膜形成部の面積の割合は75〜85%であることが好ましい。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、栓体の外周面に固体潤滑剤被膜を分散して形成したので、外周面には、被膜が形成されている部分である凸部と、被膜が形成されていない部分である凹部とが混在することになる。この凹部はグリース溜まりとして作用し、気密特性や摺動特性を高めたガス栓を提供できる。
本発明のガス栓の栓体を説明する図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)のB部拡大図である。 本発明のガス栓の全体の構造を示す分解斜視図である。 本発明のガス栓の本体を示す縦断面図である。 本発明のガス栓の栓体の製造工程を説明するフローチャートである。 本発明のガス栓の栓体の被膜パターンの他の例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図2を参照してガス栓の全体の構造を説明する。
本発明のガス栓1は、主に、本体10及び栓体20と、栓体押し回し機構40と、を備える。この例では、栓体押し回し機構40は、ハンドル41、ドライブシャフト50、C形止め輪43、ストッパ60及びコイルばね45からなる。以下の各図の説明において、ハンドル41の方を上、本体10の方を下といい、その直交する方向を左右、あるいは前後という。
本体10は、図3にも示すように、例えば鋳鉄や黄銅で作製された略L字状の部材であり、内部には、図の上下方向に貫通する貫通孔11と、この貫通孔11から図の左方向に分岐した貫通孔12とが形成されている。上下貫通孔11の下側の開口11aがガス入側口、分岐した貫通孔12の開口12aがガス出側口となり、ガス入側口11aからガス出側口12aに向かうL字状のガス流路が形成される。ガス入側口11aはガス元配管と接続され、ガス出側口12aは種々のガス機器と接続される。
本体内の上下貫通孔11と分岐貫通孔12とが交差する中空部13には、後述する栓体20が収容される。中空部13の内周面13aは、下方に向かって先細のテーパ状の栓体摺動面となっている。栓体20は、上下貫通孔11の上開口11bから中空部13に挿入される。
上下貫通孔11の上開口11bの上縁の対角上には、切り欠き段部15が形成されている。この切り欠き段部15は、後述するドライブシャフト50の回転を規制するためのものである。
栓体20は、本体10のガス流路を開閉するものであり、図1にも示すように、例えば真鍮で作製された、下方に向かって先細の円錐台状の部材である。栓体20は、前述のように本体10の中空部13に収容される。栓体20には、中心軸と直交する方向に延びる貫通孔21(横方向貫通孔)と、この貫通孔21から下端面に向かって中心軸上を延びる貫通孔22(下方向貫通孔)とが形成されている。栓体20が本体10の中空部13に収納された状態においては、下方向貫通孔22の開口は、本体10のガス入側口11aに開口する。そして、横方向貫通孔21のいずれか一方の開口が、本体10のガス出側口12aに開口するように栓体20を本体10に対して回動すると、ガス入側口11aとガス出側口12aとが、栓体20の両貫通孔21、22を介して連通し、ガス流路が連通する。また、栓体20の外周面がガス出側口12aを塞ぐように、栓体20を本体10に対して回動すると、ガス流路が遮断される。
栓体20の外周面25(外側摺動面)は、本体10の中空部13の内周面13a(栓体摺動面)の先細形状と一致する、下方に向かって先細の形状となっている。栓体20が本体10の中空部13に収容された状態において、栓体20を本体10に対して回動すると、栓体10の外周面25は、中空部13の内周面13aに対して摺動する。
栓体20の外周面25には、図1に示すように、固体潤滑剤からなる被膜30が形成されている。被膜30は、被膜が一面に形成されたベタパターンと、被膜が分散して形成された分散パターンとからなる。このように被膜を分散して形成することにより、外周面25には、被膜が形成された部分である凸部と、被膜が形成されていない部分である凹部とが形成されることになる。凸部は、ベタパターンと、分散パターンの被膜が形成された部分であり、凹部は、分散パターンの被膜が形成されていない部分である。一例として、外周面25の全表面積に対する凸部の面積は、75%〜85%であることが好ましい。この例では、ベタパターンは、外周面25の上端縁に沿った部分31と下端縁に沿った部分33、及び、横方向貫通孔21の周囲の部分32に形成されている。この例では、分散パターンは、図1(B)に示すように六角形の網目状のハニカム状の形状であり、六角形の外殻の線状の部分が凸部であり、その内部の六角形の部分が凹部である。
固体潤滑剤は、一例として、WhitFord社製のザイラン(商品名)を使用できる。同潤滑剤の成分は、N−メチルピロリドン、四フッ化エチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、石油系混合溶剤、キシレン、エチルベンゼン、コバルト、亜鉛、ニッケル及び酸化チタンの混合物である。被膜30の膜厚は1〜4μmである。被膜30の形成方法については後述する。
図2に示すように、栓体20の上面には、外縁から一段低い低部27が形成されている。この低部27内には、径方向に延びる係合突部28が形成されている。
栓体押し回し機構40は、図2に示すように、ハンドル41、ドライブシャフト50、C形止め輪43、ストッパ60及びコイルばね45からなる。
ドライブシャフト50は真鍮製の部材であり、栓体20の上部に、コイルばね45を介して配置されている。ドライブシャフト50の上面には、径方向に延びる突部51が形成されている。この突部51には、ハンドル41が皿小ネジ42で固定されている。一方、ドライブシャフト50の下面には、径方向に延びる切り欠き53が形成されている。この切り欠き53は、ドライブシャフト50の栓体20の係合突部28に係合している。このような構成により、ドライブシャフト50は、コイルばね45で上方向に付勢されつつ、ハンドル41と栓体20とを相対回動不能かつ上下間隔可変に連結している。そして、ハンドル41を押し回すことにより、栓体20を本体10の凹部13内で回動させることができる。
ストッパ60は真鍮製のリング状の部材であり、ドライブシャフト50の回転を規制するためのものである。ストッパ60の外周には、対角上を外方向に突き出た突部61が形成されている。ストッパ60は、これらの突部61が本体10の切り欠き15にはめ込まれて本体10に対して回り止めされ、さらにC形止め輪43によって本体10に保持されている。ストッパ60の内周には、対角上を外方向に凹んだ係止孔63が形成されている。ドライブシャフト50が上方に付勢されたときに、ドライブシャフト50の上面の突部51がこれらの係止孔63に係合し、ドライブシャフト50が、ストッパ60即ち本体10に対して回動不能となる。
ガス栓1を開くには、ハンドル40を下方に押し、ドライブシャフト50をコイルばね45の付勢力に抗して下方に移動させる。これにより、ドライブシャフト50の突部51がストッパ60の係止孔63から外れて、ハンドル40が回動可能となる。そして、ハンドル40を押し下げたまま回動させると、栓体20が本体10の凹部13内で回動し、栓体20の左右貫通孔21の一方の開口が、本体10のガス出側口12aに開口してガスが流通する。
ガス栓1を閉じるには、ハンドル40を逆方向に回動させる。ハンドル40を所定の角度だけ回動させると、栓体20が本体10の凹部13内で回動し、栓体20の左右貫通孔21の開口が、本体10の凹部13の内周面13aに対してガスが遮断される。そして、ドライブシャフト50の突部51がストッパ60の係止孔63に達すると、ドライブシャフト50がコイルばね45により上方に付勢されて、突部51が係止孔63に係合する。これにより、ドライブシャフト50、栓体20及びハンドル41は回動不能となる。このため、不用意にハンドル41に回動力がかかってもガス栓が開かないので安全である。
なお、押し回し機構40としては、他の機構を採用することもできる。
このような栓体20においては、本体10と栓体20の摺動面13a、25間には半固体状のグリース等の潤滑剤が介されている。栓体20の外周面25には、前述のように被膜30が形成されているので、被膜の凹部(分散パターンにおいて被膜が形成されていない部分)がグリース溜まりとして作用する。これによって、気密性の向上、摺動操作力の低減、摺動操作の耐久性向上、回転操作開始時の滑らかさの向上などの効果が期待できる。
また、分散パターンにおいては、凹部と凸部とが一様に配置されているので、グリースの偏り等が起こらず、全表面にグリースを均等に行き渡らせることができる。さらに、摺動面25の端となる部分(摺動面25の上下端部の部分31、33、貫通孔21の周囲の部分32)には、ベタパターン(凸部)が形成されているので、端からのグリースの漏れを防ぐことができる。
また、本体10及び栓体20の各摺動面13a、25は、気密性の確保のために、表面の精度を精密に加工している。表面の加工精度を精密にすると気密性に優れるようになるが、一方で摺動トルクが過大となる傾向にある。しかし、本発明の被膜を形成することにより、表面の精度を精密にしても摺動トルクは過大とならないので、より気密性を得ることができる。
次に、図4を参照して被膜の形成方法の一例を説明する。
まず、S1で栓体20の洗浄・脱脂を行う。次に、S2で、栓体20の摺動面25に化成処理を行う。例えば、リン酸マンガン又はリン酸亜鉛を用いて0.5〜1.5μm厚の被膜を生成する。これにより、潤滑剤の密着性の向上や防錆性を付加する。そして、S3で、固体潤滑剤を栓体20の摺動面25にスクリーン印刷して被膜30を形成する。印刷に使用されるスクリーンとしては、線径30μmの樹脂繊維(ポリアミド樹脂繊維)を平織り(織目間隔37μm)したスクリーンを使用できる。このスクリーンに、被膜のパターン(図1の白色部、分散パターンの凹部となる部分)を感光乳剤で目潰しする。目潰しされた部分は、潤滑剤が通過せず被膜が形成されない部分(凹部)となり、目潰しされていない部分は、潤滑剤が通過して被膜が形成される部分(凸部)となる。最後に、S4で、320℃の温度で20分焼成する。
被膜形成方法としては、他にスプレー式や浸漬等の方法を適用できるが、以下の点でスクリーン印刷が好ましい。
(1)凹凸部の配置を自由に設定できる。
(2)凸部の膜厚を均一にできる。
(3)印刷される材料(固体潤滑剤)の量を最低限とできる(例えば、スプレー式の約10%程度)ので、材料費を低減できる。
図5を参照して、被膜30の他の例を説明する。
図5(A)に示す例は、図1の例と同様に、被膜30はベタパターンと分散パターンとからなる。この例でも、ベタパターンは、外周面25の上端縁に沿った部分(図5には図示されず)と下端縁に沿った部分33、及び、横方向貫通孔21の周囲の部分32に形成されている。分散パターンは、外周面25のその他の部分34の全面に形成されている。この例では、分散パターンは、図に示すように楕円が分散して配置された水玉形状であり、楕円形状の部分が凸部であり、その他の部分が凹部である。
図5(B)に示す例も、図1の例と同様に、被膜30はベタパターンと分散パターンとからなる。ベタパターンは、外周面25の上端縁に沿った部分(図5には図示されず)と下端縁に沿った部分33、及び、横方向貫通孔21の周囲の部分32に形成されている。分散パターンは、外周面25のその他の部分34の全面に形成されている。分散パターンは、図に示すように円が分散して配置された水玉形状である。この例では、円形状の部分が凹部であり、その他の部分が凸部である。
これらの例においても、被膜30の全表面積に対する凸部の面積は75%〜85%である。
次に、図1のガス栓を使用して初期操作トルクと耐久性とを調べた結果を説明する。
図1のガス栓を20Aサイズとして適用した場合について、初期操作トルクと耐久性とを計測した。
初期操作トルクは、図1のガス栓では約0.5Nmであり、現行品では約1.2Nmであった。これより、初期操作トルクは従来に比べて約40%向上したことが分かる。
耐久性は、図1のガス栓では20万回を満足し、現行品では4000回であった。これより、耐久性は50倍以上向上したことが分かる。ただし、JIS規格の耐久性は1000回とされているので、両者ともJIS規格は満足している。
図1のガス栓をガスコンセントとして適用した場合について、初期操作トルクと耐久性とを計測した。
初期操作トルクは、図1のガス栓は、現行品と同等の0.11〜0.12Nmであり、従来と同等の性能を有することが分かった。
耐久性は、図1のガス栓では600万回を満足し、現行品では6万回であった。これより、耐久性は100倍以上向上したことが分かる。ただし、JIS規格の耐久性は1万回されているので、両者ともJIS規格は満足している。
なお、図5に示した分散パターンの他の例においても同等の結果が得られた。
1 ガス栓
10 本体 11、12 貫通孔
13 中空部 13a 内周面(栓体摺動面)
15 切り欠き
20 栓体 21、22 貫通孔
25 外周面(外側摺動面) 27 低部
28 係合突部
30 被膜 31 上端縁に沿った部分
32 貫通孔の周囲部分 33 下端縁に沿った部分
34 その他の部分
40 栓体押し回し機構 41 ハンドル
42 皿小ネジ 43 C形止め輪
45 コイルばね 50 ドライブシャフト
51 突部 53 切り欠き
60 ストッパ 61 突部
63 係止孔

Claims (3)

  1. 内部にガス流路及び栓体摺動面を有する本体と、
    前記栓体摺動面で摺動する外側摺動面及びガス流孔を有し、前記ガス流路を開閉する栓体と、
    該栓体を動かす機構と、
    を具備するガス栓であって、
    前記栓体の外側摺動面に、固体潤滑剤からなる厚さ1〜4μmの被膜が、面上に分散した印刷パターンとして形成されており、
    前記栓体の外側摺動面に、前記被膜が形成されている部分である凸部と、前記被膜が形成されていない部分である凹部とが混在し、前記被膜が形成されていない部分である凹部がグリース溜まりとして作用して、前記本体の前記栓体摺動面と、前記栓体の前記外側摺動面とが気密性を有する摺動面を構成することを特徴とするガス栓。
  2. 前記印刷パターンが、前記固体潤滑剤がベタ状に塗布されたベタパターンと、塗布された部分と塗布されていない部分とが分散して混在する分散パターンとからなり、
    前記ベタパターンが、前記摺動面の端部及び前記ガス流孔の周囲に形成され、
    前記分散パターンが、前記摺動面の端部及び前記ガス流孔の周囲以外の前記摺動面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガス栓。
  3. 前記分散パターンが、六角形の網目状のハニカム状であり、六角形の外殻の線状の部分が凸部であり、その内部の六角形の部分が凹部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス栓。

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