JP5694281B2 - 乳化燃料の製造方法及びその製造装置 - Google Patents

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本発明は、蒸気ボイラ及びバーナーなどの燃料として使用されている重油及び軽油の消費量を削減できる燃料油と水及び界面活性剤を混合した乳化燃料の製造方法及びその製造装置に関する。
燃料油と水および界面活性剤と混合してなる乳化燃料は、燃料油消費量および温室効果ガスの排出量を削減できる効果が有るとされている。そのため、従来から乳化燃料や、それを製造する方法が様々開発されてきている。例えば、特許文献1には、液体の攪拌流を発生させる攪拌工程及び液体をセラミック成形体の多孔を通過させることによりエマルジョンとする乳化工程を備え、攪拌工程及び乳化工程を循環している石油系液体燃料に対し、水を供給した後、非イオン界面活性剤、液状アルコール、油剤及びアルカリ水を主体とした添加剤Aを供給し、その後、陰イオン界面活性剤及びアルカリ水を主体とした添加剤Bを供給し、これらの混合液を前記攪拌工程及び乳化工程の間で複数回循環させることを特徴とするエマルジョン燃料の製造方法が開示されており、これにより、安定したエマルジョン燃料を製造することができるとしている。
また、特許文献2には、水と油と乳化剤を混合させた混合液を、圧力をかけながら、フィルタが配置された混合部を通過させてエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造方法において、前記混合部の出口を絞り、該出口直前にフィルタを配置させたことを特徴とするエマルジョン燃料製造方法が開示されている。この技術によると、混合部の出口で生じるキャビテーションを有効に利用して混合液の細分化が図れるので、混合液に対してそれほどの高圧をかける必要がない。このため、装置の配管や継ぎ手を高圧耐用とする必要がなく、きわめて簡易な構成で燃料製造工程が行える。したがって、メンテ作業やフィルタの交換作業もきわめて容易となるとしている。
また、効率良く燃料の細分化が図れるので、特に混合部を複数形成する必要もなく、その点でも装置の簡易化が図れる。もちろん、攪拌装置や振動装置も不要なので、それらを要する他の方法と比較して、設置コストやランコストがきわめて低廉で済む。しかも、この方法によって得られる燃料は、細分化にあたって油と水とがより強固に結合することになり、分離する時間がより遅く、燃料の長期保存が可能となる質の高い燃料が連続的に得られる。すなわち、質の高い燃料が簡易な構成で効率良く得られるという顕著な効果が認められるとしている。
特開2008−13633公報 特開2008−156438公報
しかしながら、上記特許文献に開示されている技術では、乳化燃料の混合と微粒化が不十分であるため、乳化燃料単独では着火不良を起こすことがあった。この現象を解決するため、着火時は燃料油のみを供給し、着火後は乳化燃料に切り替える操作を行う必要があり、改善の余地があるとされている。また、乳化燃料で着火したとしても、短期間に油水分離が進行して安定した燃焼が得られないという指摘がされている。
本発明は、上述の問題を解決するためのもので、蒸気ボイラおよびバーナーなどの燃料として安定に燃焼する乳化燃料の製造方法および装置を提供することを目的としている。
上述の課題に対応するため、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、燃料油、水および添加剤を用いて製造する乳化燃料の製造方法において、界面活性剤と希釈剤を用いて添加剤を製造する添加剤製造工程と、前記添加剤製造工程で製造した添加剤と、燃料油及び水を混合撹拌することで乳化燃料を製造する第一段乳化燃料製造工程と、前記第一段乳化燃料製造工程で製造した乳化燃料を微粒子化する第二段乳化燃料製造工程と、を含み、前記添加剤製造工程は、界面活性剤と希釈剤を混合撹拌し、添加剤を製造する第一段添加剤製造工程と、前記第一段添加剤製造工程で製造した添加剤を微粒子化する第二段添加剤製造工程と、を含むことを特徴とする乳化燃料の製造方法である。
そして、請求項記載の発明は、燃料油、水および添加剤を用いて製造する乳化燃料の製造装置において、界面活性剤と希釈剤を用いて添加剤を製造する添加剤製造装置と、燃料油供給部と、水供給部と、前記添加剤製造装置により製造された添加剤を供給する添加剤供給部と、前記燃料油供給部から供給される燃料油と、前記水供給部から供給される水及び前記添加剤供給部から供給される添加剤を連続的に混合することで第一段乳化燃料を製造する多段羽撹拌機構と、前記多段羽撹拌機構により製造された第一段乳化燃料を貯留する第一段乳化燃料貯槽と、前記第一段乳化燃料貯槽に貯槽された第一段乳化燃料をさらに微粒子化して第二段乳化燃料を製造する微粒子化機構と、前記微粒子化機構により製造された第二段乳化燃料を貯留する第二段乳化燃料貯槽と、を備え、前記添加剤製造装置は、界面活性剤供給部と、希釈剤供給部と、前記界面活性剤供給部から供給される界面活性剤と、前記希釈剤供給部から供給される希釈剤を混合して第一段添加剤を製造する撹拌混合機構と、前記撹拌混合機構により製造された第一段添加剤を微粒子化して第二段添加剤を製造する微粒子化機構と、前記微粒子化機構により製造された第二段添加剤を貯留する第二段添加剤貯槽と、を備えることを特徴とする乳化燃料の製造装置である。
また、請求項記載の発明は、請求項記載の乳化燃料製造装置であって、前記微粒子化機構は、第一段乳化燃料をスプレー噴射する、或いは高速で噴射させて衝突させる機構であることを特徴としている。
本発明によると、乳化燃料の燃焼による燃料油の消費量は、燃料油単独と比較して大きく(20〜25%程度)低減できるため、燃料油使用に係るコストおよび温室効果ガスの排出量を削減できる。また、乳化燃料を微粒子化するため、油水分離が抑制されて安定した燃焼が得られる。またさらに、多段羽混合撹拌機構と微粒子化機構との組合せで製造した燃料油に水を30〜35%程度添加した場合、それによる乳化燃料は、燃料粒子の粒子径が10μm以下に微粒子化されるため、「空気との接触面積が増加」、「理論値に近い空気量で燃焼」の効果により、空気加熱に奪われる熱損失を小さくすることができる。
本発明に係る乳化燃料の製造方法の実施形態を示したブロックフロー図である。 本発明に係る乳化燃料の製造方法における添加剤の製造方法を示したブロックフロー図である。 本発明に係る乳化燃料の製造装置の実施形態を示した系統図である。 本発明に係る乳化燃料の製造方法における添加剤製造装置を示した系統図である。 本発明に係る乳化燃料の製造装置におけるスプレー噴射機構を示した系統図である。 本発明に係る乳化燃料の製造装置における高速衝突機構を示した概略図である。 本発明に係る乳化燃料の製造装置においてスプレー噴射機構により製造した乳化燃料を真空式給湯暖房温水機で燃焼した際の燃料消費量を測定した結果を示した棒グラフである。 本発明に係る乳化燃料の製造装置において高速衝突機構により製造した乳化燃料の粒子径を測定した結果を示したグラフである。 本発明に係る乳化燃料の製造装置において高速衝突機構により製造した乳化燃料をバーナーで燃焼した際の燃焼炎温度を測定した結果を示したグラフである。 本発明に係る乳化燃料の製造装置において高速衝突機構により製造した乳化燃料をバーナーで燃焼した際の燃料消費量を測定した結果を示した棒グラフである。 本発明に係る乳化燃料の製造装置において高速衝突機構により製造した乳化燃料を蒸気ボイラで燃焼した際の排気ガス温度を測定した結果を示したグラフである。 本発明に係る乳化燃料の製造装置において高速衝突機構により製造した乳化燃料を蒸気ボイラで燃焼した際の燃料消費量を測定した結果を示した棒グラフである。
本発明に係る乳化燃料の製造方法の実施形態について図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る乳化燃料の製造方法の実施形態を示したブロックフロー図を表している。
図1にあるように、本発明に係る乳化燃料の製造方法における第1の実施形態は、まず、界面活性剤供給部からの界面活性剤の供給、そして、希釈剤供給部からの希釈剤の供給を受け、添加剤製造工程において添加剤が製造される。次に、燃料油供給部からの燃料油、水供給部からの水、さらに、添加剤供給部からの添加剤製造工程において製造された添加剤の供給を受け、第一段乳化燃料製造工程において、第一段乳化燃料が製造される。続いて、第一段乳化燃料の供給を受け、第二段乳化燃料製造工程において、第二段乳化燃料が製造され、最終的に乳化燃料が得られるというものである。
次に、本発明に係る乳化燃料の製造方法における第2の実施形態について図1及び図2を参照しながら説明する。本実施形態は、図1中の添加剤製造工程が、図2に表す工程となっているもので、まず、界面活性剤供給部から界面活性剤が、希釈剤供給部から希釈剤がそれぞれ供給され、第一段添加剤製造工程においてこれらが混合攪拌されることで、第一段添加剤が製造される。そして、この第一段添加剤が第二段添加剤製造工程において、微粒子化されることで第二段添加剤が製造される。
次に、図1に表すように、燃料油供給部からの燃料油、水供給部からの水、さらに、添加剤供給部からの添加剤製造工程において製造された添加剤(第二段添加剤)の供給を受け、第一段乳化燃料製造工程において、第一段乳化燃料が製造される。続いて、第一段乳化燃料の供給を受け、第二段乳化燃料製造工程において、第二段乳化燃料が製造され、最終的に乳化燃料が得られることになる。
続いて、本発明に係る乳化燃料の製造装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図3は、本発明に係る乳化燃料の製造装置の実施形態を示した系統図で、10は乳化燃料の製造装置、12は燃料油貯槽、14は燃料油、16は水貯槽、18は水、20は添加剤製造装置、22は添加剤貯槽、24は添加剤、26は多段羽混合攪拌機構、28は第一段乳化燃料貯槽、30は乳化燃料微粒子化機構、32は第二段乳化燃料貯槽、34は燃料油移送ポンプ、36は水移送ポンプ、38は添加剤移送ポンプ、40は羽根、42は回転軸、44はケーシング、46は仕切り板、48は第一段乳化燃料、50は乳化燃料供給ポンプ、52は第二段乳化燃料を示している。
まず、本実施形態における乳化燃料の製造装置10は、燃料油14を貯留する燃料油貯槽12と、水18を貯留する水貯槽16と、添加剤製造装置20により製造される添加剤24を貯留する添加剤貯槽22を備えている。そしてさらに、燃料油貯槽12内の燃料油14を多段羽混合攪拌機構26に移送する燃料油移送ポンプ34と、水18を多段羽混合攪拌機構26に移送する水移送ポンプ36と、添加剤24を多段羽混合攪拌機構26に移送する添加剤移送ポンプ38を備えている。
続いて、多段羽混合攪拌機構26は、ケーシング44内に羽40が多段に取り付けられた回転軸42が収納されてなるもので、またケーシング44の内壁に、仕切り板46が羽根40と交互に取り付けられた構成となっている。なお、多段羽混合撹拌機構26内では、回転軸42が例えば、960rpmで回転するため、移送されてくる燃料油14と水18および添加剤24が連続的に混合撹拌され、その結果、第一段乳化燃料48が製造されることになる。そして、乳化燃料の製造装置10は、第一段乳化燃料貯槽28を備えており、多段羽混合撹拌機構26により製造された第一段乳化燃料48を貯留することができる構成となっている。
次に、乳化燃料の製造装置10には、第一段乳化燃料48を微粒子化させる乳化燃料微粒子化機構30と、この乳化燃料微粒子化機構30に第一段乳化燃料48を供給する乳化燃料供給ポンプ50と、第二段乳化燃料貯槽32とがそれぞれ備えられている。そして、乳化微粒子化機構30では、微粒子化された第二段乳化燃料52が製造され、この第二段乳化燃料52は、第二段乳化燃料貯槽32に貯留される。
ここで、乳化燃料微粒子化機構30の実施例を図5、図6に示す。まず、図5は乳化燃料微粒子化機構30の第1の構成を表したものであり、54は攪拌混合槽、56はスプレーノズル、58はスプレー治具を示している。乳化燃料微粒子化機構30は、攪拌混合槽54を備えており、攪拌混合槽54内にはスプレー治具58が取り付けられている。また、本実施例では、スプレー冶具58には口径約0.7mmのスプレーノズル56が40個装着されている。
乳化燃料供給ポンプ50により第一段乳化燃料48をスプレーノズル56に供給すると、第一段乳化燃料48は2〜4m/secの線流速で噴出し、微粒子化された第二段乳化燃料52が製造されて第二段乳化燃料貯槽32に貯留されるという仕組みである。
次に、図6は、乳化燃料微粒子化機構30の第2の構成を表したもので、60は衝突治具、62は噴射板、64は衝突球、66は乳化燃料入口部、68は乳化燃料出口部を示している。乳化燃料微粒子化機構30は、衝突治具60を備えており、衝突治具60内の流路には耐摩耗性に優れたアルミナ製の噴射板(直径15mm、厚さ9mm)62が設置されている。また、噴射板62の中心部には直径0.7mmの貫通孔が設けられている。
そして、同流路の延長線上にアルミナ製の衝突球(直径12mm)64が設置されている。乳化燃料供給ポンプ50から供給された第一段乳化燃料48は、乳化燃料入口部66と噴射板62の貫通孔を通過して衝突球64に衝突する。噴射板62の貫通孔を通過する際の第一段乳化燃料48の線流速は約90m/secであり、第一段乳化燃料48は高速で衝突球64に衝突してより微粒子化される。
微粒子化された乳化燃料は、衝突球64と通路の隙間を通って乳化燃料出口部68を通過し、第二段乳化燃料52として第二段乳化燃料貯槽32に貯留される。なお、乳化燃料を衝突させる形状は、球以外にラグビーボール状の楕円、あるいは板であっても良い。
続いて、本発明に係る乳化燃料の製造装置の他の実施形態について図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態における乳化燃料の製造装置に備えられている添加剤製造装置の構成を表したものである。なお、符号については、20が添加剤製造装置、70が界面活性剤供給部、72が希釈剤供給部、74がミキサー、76が攪拌混合槽、78が第一段添加剤、80が添加剤微粒化子機構、82が添加剤供給ポンプ、84が第二段添加剤、86が第二段添加剤貯槽を示している。
本実施形態における添加剤製造装置20は、攪拌混合槽76と、攪拌混合槽76内の内容物を攪拌するミキサー74と、攪拌混合槽76内に界面活性剤を供給する界面活性剤供給部70及び希釈剤を供給する希釈剤供給部72とが備えられている。そしてさらに、攪拌混合槽76において製造される第一段添加剤78を微粒化させる添加剤微粒化機構80と、攪拌混合槽76から添加剤微粒化子機構80に第一段添加剤78を供給する添加剤供給ポンプ82と、添加剤微粒化機構80において微粒子化された第二段添加剤84を貯留する第二段添加剤貯槽86が備えられている。
ここで、本実施形態における添加剤製造装置20を用いた添加剤の製造方法について図4を参照しながら説明する。原液の界面活性剤は粘度が大きいため、そのままの濃度ではポンプによる移送が困難である。そこで、原液の界面活性剤を希釈剤により希釈して撹拌混合槽76内で第一段添加剤78を製造する。なお、界面活性剤は燃料油粒子内に水粒子を分散させるためLHB4〜6の範囲が好ましい。
また、希釈剤は乳化燃料を安定して燃焼させるため、燃料油と同じ種類の油を選定する。本実施例では燃料油がA重油であるため、希釈剤はA重油を選定した。界面活性剤供給部70より界面活性剤を体積比率で20%、希釈剤供給部72よりA重油を体積比率で80%の割合で撹拌混合槽76に投入する。攪拌混合槽76では、界面活性剤および希釈剤がミキサー74により撹拌混合されて第一段添加剤78が製造される。
次に、添加剤供給ポンプ82により第一添加剤78を添加剤微粒子化機構80に供給する。添加剤微粒子化機構80の詳細は前述の実施例(図5、図6)に記載したものの何れかを利用する。添加剤微粒子化機構80内では第一添加剤78がスプレー噴射または高速衝突されて微粒子化する。微粒子化してなる第二段添加剤84は第二添加剤貯槽86に貯留される。
(燃焼試験1)
続いて、図3の乳化燃料の製造装置に図5のスプレー噴射機構を組み込んだ装置により乳化燃料を製造して真空式給湯暖房温水機による燃焼試験を実施した。実施手順は、燃料油貯槽からA重油168L/h、水貯槽から水72L/h、添加剤貯槽から添加剤1.2L/h(界面活性剤としては0.24L/h)を、各々、多段羽混合撹拌機構に供給した。全供給量は240L/hであるため、各々の体積比率はA重油が70%、水が30%、界面活性剤が0.1%の割合である。多段羽混合撹拌機構内ではA重油と水および界面活性剤が連続的に混合撹拌されて第一段乳化燃料が製造される。第一段乳化燃料は、多段羽混合撹拌機構の出口から排出されて第一段乳化燃料貯槽に貯留される。
次に、第一段乳化燃料を240L/hの流量でスプレー噴射機構に供給する。スプレー噴射機構のスプレー槽内では第一段乳化燃料がスプレー噴射(線流速4m/sec)されて微粒子化する。微粒子化された第二段乳化燃料は第二段乳化燃料貯槽に貯留される。引き続き、真空式給湯暖房温水機2台に第二段乳化燃料を供給し、乳化燃料の燃焼試験を実施した。なお、この真空式給油暖房温水機は、通常の運転ではA重油を燃料としている。
ここで、上記燃焼試験の結果を図7に示す。乳化燃料の運転試験を44時間実施した結果、A重油が2490L、水が1070L、添加剤中の界面活性剤が0.7L、合計3560Lであった。一方、A重油のみを同一の時間燃焼した際のA重油消費量は3090Lであった。本試験結果より、乳化燃料運転におけるA重油消費量は、A重油単独運転と比較して19%削減できることがわかった。
以上のように、真空式給湯暖房温水機の代替燃料に本発明の多段羽撹拌機構とスプレー噴射機構の組合せを備える乳化燃料の製造装置により製造した乳化燃料を適用することにより、A重油、軽油などの消費量を削減できるとともに、温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量も削減することができる。なお、バーナーおよび蒸気ボイラでもスプレー噴射機構で製造した乳化燃料の燃焼試験を実施し、真空式給湯暖房温水機と同様にA重油消費量の削減率は20%前後が得られた。
(燃焼試験2)
上記燃焼試験1におけるスプレー噴射機構では、燃料油の消費量の削減率は20%程度が限界であった。燃料油の消費量をさらに削減するため、図3の乳化燃料の製造装置に図6の高速衝突機構を組み込んだ装置で乳化燃料を製造し、バーナーおよび蒸気ボイラによる燃焼試験を実施した。
バーナーによる燃焼試験を実施するに当たっての多段羽供給機構による第一段乳化燃料の製造条件は以下の通りである(表1)。
Figure 0005694281
上記表1中(1)、(2)の各々の合計供給量は120L/hである。多段羽混合撹拌機構内ではA重油と水および界面活性剤が連続的に混合撹拌されて第一段乳化燃料が製造される。第一段乳化燃料は、多段羽根混合撹拌機構の出口から排出されて第一段乳化燃料貯槽に貯留される。
次に第一段乳化燃料を540L/hの流量で高速衝突機に供給する。高速衝突機構内では第一段乳化燃料が線流速90m/secにて衝突球に衝突し、より微粒子化された第二段乳化燃料が製造され、第二段乳化燃料貯槽に貯留される。第二段乳化燃料を光学顕微鏡で観察して粒子の粒径を測定した結果を図8に示す。乳化燃料の粒子は粒子径が10μm以下であり、高速衝突により微粒子化したことがわかる。
引き続き、コンクリートおよび砂利などの乾燥などに使用されているバーナーに第二段乳化燃料を供給して燃焼試験を実施した。燃焼炎の温度測定結果を図9に示す。図9はバーナー燃焼炎温度の経時変化であり、○印は乳化燃料の水の添加割合35%、□印は乳化燃料の水の添加割合40%、△印はA重油単独である。バーナー燃焼炎の温度は、乳化燃料の水添加割合35%とA重油単独ではほとんど同じ値を示し、825℃〜850℃の範囲で推移した。一方、乳化燃料の水添加割合40%では、急激に温度が低下し、750℃〜775℃の範囲であった。本試験結果より乳化燃料に添加する水は35%以下が望ましいことがわかる。
次に、乳化燃料の水添加割合35%とA重油単独での燃料消費量を測定した。燃料消費量の測定結果を図10に示す。乳化燃料のA重油消費量は4.3L/h、A重油単独でのA重油消費量は5.8L/hであった。本試験結果より、乳化燃料運転におけるA重油消費量は、A重油単独運転と比較して26%削減できることがわかった。
以上のように本発明の多段羽撹拌機構と高速噴射機構の組合せで製造した乳化燃料は、微粒子化するため「空気との接触面積が増加」、「理論値に近い空気量で燃焼」の効果により、空気加熱に奪われる熱損失を小さくできることがわかった。これらの効果により乳化燃料のA重油消費量は、A重油単独と比較して26%削減できた。
(燃焼試験3)
本燃焼試験では、前述の燃焼試験2で製造した乳化燃料を蒸気ボイラで燃焼試験した結果を説明する。なお、燃焼試験は、燃焼試験2で製造した第二段乳化燃料を5日間経過後に実施した。乳化燃料燃焼中の排気ガス温度の測定結果を図11に示す。図には比較のためにA重油単独で燃焼した際の排気ガス温度も示した。蒸気ボイラの排気ガス温度は、乳化燃料およびA重油単独とも180℃前後で推移した。
次に燃料消費量の測定結果を図12に示す。乳化燃料のA重油消費量は34L/h、A重油単独でのA重油消費量は45L/hであった。本試験結果より、乳化燃料運転におけるA重油消費量はA重油単独運転と比較して24%削減率できた。以上のように本発明の多段羽撹拌機構と高速噴射機構の組合せで製造した乳化燃料は、微粒子化するため「空気との接触面積が増加」、「理論値に近い空気量で燃焼」の効果により、空気加熱に奪われる熱損失を小さくできることがわかった。
また、微粒子化したことにより製造後5日間経過した乳化燃料でも安定して燃焼し、この時のA重油消費量はA重油単独と比較して24%削減できることも分かった。なお、真空式給湯暖房温水機およびバーナーでも乳化燃料の燃焼試験を実施し、蒸気ボイラと同様にA重油消費量の削減率は25%前後が得られた。
本発明に係る乳化燃料の製造方法及びその製造装置は、空気加熱に奪われる熱損失が小さい乳化燃料を製造することができるため、燃料油使用に係るコストや温室効果ガスの排出量を削減させる目的に対し、好適に用いることができる。
10 乳化燃料の製造装置
12 燃料油貯槽
14 燃料油
16 水貯槽
18 水
20 添加剤製造装置
22 添加剤貯槽
24 添加剤
26 多段羽混合攪拌機構
28 第一段乳化燃料貯槽
30 乳化燃料微粒子化機構
32 第二段乳化燃料貯槽
34 燃料油移送ポンプ
36 水移送ポンプ
38 添加剤移送ポンプ
40 羽根
42 回転軸
44 ケーシング
46 仕切り板
48 第一段乳化燃料
50 乳化燃料供給ポンプ
52 第二段乳化燃料
54 攪拌混合槽
56 スプレーノズル
58 スプレー治具
60 衝突治具
62 噴射板
64 衝突球
66 乳化燃料入口部
68 乳化燃料出口部
70 界面活性剤供給部
72 希釈剤供給部
74 ミキサー
76 攪拌混合槽
78 第一段添加剤
80 添加剤微粒子化機構
82 添加剤供給ポンプ
84 第二段添加剤
86 第二段添加剤貯槽

Claims (3)

  1. 燃料油、水および添加剤を用いて製造する乳化燃料の製造方法において、
    界面活性剤と希釈剤を用いて添加剤を製造する添加剤製造工程と、
    前記添加剤製造工程で製造した添加剤と、燃料油及び水を混合撹拌することで乳化燃料を製造する第一段乳化燃料製造工程と、
    前記第一段乳化燃料製造工程で製造した乳化燃料を微粒子化する第二段乳化燃料製造工程と、
    を含み、
    前記添加剤製造工程は、
    界面活性剤と希釈剤を混合撹拌し、添加剤を製造する第一段添加剤製造工程と、
    前記第一段添加剤製造工程で製造した添加剤を微粒子化する第二段添加剤製造工程と、
    を含むことを特徴とする乳化燃料の製造方法。
  2. 燃料油、水および添加剤を用いて製造する乳化燃料の製造装置において、
    界面活性剤と希釈剤を用いて添加剤を製造する添加剤製造装置と、
    燃料油供給部と、水供給部と、前記添加剤製造装置により製造された添加剤を供給する添加剤供給部と、
    前記燃料油供給部から供給される燃料油と、前記水供給部から供給される水及び前記添加剤供給部から供給される添加剤を連続的に混合することで第一段乳化燃料を製造する多段羽撹拌機構と、
    前記多段羽撹拌機構により製造された第一段乳化燃料を貯留する第一段乳化燃料貯槽と、
    前記第一段乳化燃料貯槽に貯槽された第一段乳化燃料をさらに微粒子化して第二段乳化燃料を製造する微粒子化機構と、
    前記微粒子化機構により製造された第二段乳化燃料を貯留する第二段乳化燃料貯槽と、
    を備え
    前記添加剤製造装置は、
    界面活性剤供給部と、希釈剤供給部と、
    前記界面活性剤供給部から供給される界面活性剤と、前記希釈剤供給部から供給される希釈剤を混合して第一段添加剤を製造する撹拌混合機構と、
    前記撹拌混合機構により製造された第一段添加剤を微粒子化して第二段添加剤を製造する微粒子化機構と、
    前記微粒子化機構により製造された第二段添加剤を貯留する第二段添加剤貯槽と、
    を備えることを特徴とする乳化燃料の製造装置。
  3. 前記微粒子化機構は、前記第一段乳化燃料をスプレー噴射する、或いは高速で噴射させて衝突させる機構であることを特徴とする請求項記載の乳化燃料の製造装置。
JP2012258355A 2012-11-27 2012-11-27 乳化燃料の製造方法及びその製造装置 Active JP5694281B2 (ja)

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