JP5693507B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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Description
[自動変速機の概略]
図1は、本発明の2方電磁弁及びそれを備えた油圧装置を適用したFF車用の自動変速機の制御系を示す図である。自動変速機は、図外のエンジンからのトルクを増幅するトルクコンバータ1と、発進クラッチ(前進クラッチ及び後進ブレーキ)を有する前後進切替機構2と、入出力間で無段変速する無段変速機3(以下、CVT3)と、を有している。また、各装置への油圧や潤滑油を供給する機構として、エンジンにより駆動されるオイルポンプ7と、油圧コントロールバルブユニット8と、を有している。
CVT3は、CVT入力軸14の端部に設けられたプライマリプーリ30(プライマリ可動プーリ30aおよびプライマリ固定プーリ30b)と、従動軸16上に設けられたセカンダリプーリ31(セカンダリ可動プーリ31aおよびセカンダリ固定プーリ31b)と、各プーリ30,31の溝間に巻き付けられプライマリプーリ30の回転力をセカンダリプーリ31に伝達するベルト15と、を有している。
プライマリ可動プーリ30aの軸方向位置(プライマリプーリ30の溝幅)は、プライマリプーリシリンダ室30c及びプライマリクランプ室30dに作用する油圧によって規定される。セカンダリ可動プーリ31aの軸方向位置(セカンダリプーリ31の溝幅)は、セカンダリプーリシリンダ室31c及びセカンダリクランプ室31dに作用する油圧によって規定される。
図2は、前進クラッチ2dのCVT入力軸14方向断面図である。前進クラッチ2dは、トルクコンバータ出力軸13と連結して一体回転するクラッチドラム50、サンギア2cと連結して一体回転するクラッチハブ51、クラッチドラム50にスプライン嵌合された複数の入力側摩擦板50a、クラッチハブ51にスプライン嵌合された複数の出力側摩擦板51a、クラッチピストン52、皿バネ53、クラッチリターンスプリング54、及びスプリングリテーナ55を有している。
遠心キャンセル室63内には、クラッチリターンスプリング54が、x軸方向に変位可能に設置されている。クラッチリターンスプリング54のx軸正方向端は、スプリングリテーナ55に固定されており、クラッチリターンスプリング54のx軸負方向端は、クラッチピストン52に固定されている。クラッチピストン52は、x軸方向に移動可能に設けられている。スプリングリテーナ55は、スナップリング56によりx軸正方向に移動不可能に固定されている。
一方、クラッチピストン52がx軸正方向にストロークすると、クラッチリターンスプリング54が圧縮されて、クラッチリターンスプリング54のストローク量xと弾性係数との積の大きさの弾性力が、クラッチピストン52に対してx軸負方向に作用する。
クラッチピストン52は、Pcによる付勢力とクラッチリターンスプリング54のバネ荷重Fとが釣り合う位置までストロークする。前進クラッチピストン室62に作動油が供給されておらず、Pcがゼロである状態では、クラッチピストン52はクラッチリターンスプリング54によりx軸負方向に付勢され、クラッチドラム50に押し付けられおり、クラッチピストン52のストローク量xはゼロである。このときのクラッチリターンスプリング54のバネ荷重Fを、初期セット荷重F0とする。
すなわち、前進クラッチ2dは非締結状態である。クラッチピストン52が、x1だけx軸正方向に移動した位置で、Pcによる付勢力とクラッチリターンスプリング54のバネ荷重Fとが釣り合って停止するとき、Pcの大きさをPc1とする。また、このときのクラッチリターンスプリング54のバネ荷重FをF1とする。xがx1である状態で、PcがPc1より大きくなると、皿バネ53が圧縮され始め、複数の摩擦板50a,51a同士の間で摩擦力が発生し、前進クラッチ2dが締結容量Tcを持つようになる。すなわち、前進クラッチ2dの締結状態が開始する。
図4は、油圧コントロールバルブユニット8内の油圧回路の一部を示す。オイルポンプ7の吐出ポートには、油路101を介して、ライン圧PLを調圧するプレッシャレギュレータバルブ(P.REG.V)110が接続されている。オイルポンプ7とP.REG.V110との間で調圧された第1油圧(PL)は、油路101に接続された油路102,103に供給される。油路102は、プライマリクランプ室30d及びセカンダリクランプ室31dを連通する油路70に接続されている。P.REG.V110で調圧されたPLは、油路70を介してプライマリクランプ室30d及びセカンダリクランプ室31dに常に供給される。
油路103には、油路104、及び油路106〜108が接続されている。油路104には、オリフィス105を介して油路111が接続されている。油路106には、セカンダリプーリシリンダ室31cの油圧を供給するセカンダリバルブ(SEC.V)140が接続されている。油路107には、プライマリプーリシリンダ室30cの油圧を供給する変速制御弁170が接続されている。
油路108には、パイロットバルブ(PILOT.V)130が接続されている。PILOT.V130は、信号圧の元圧であるパイロット圧を供給する。パイロット圧は、油路131を介して、セカンダリ圧ソレノイドバルブ(SEC.SOL.V)160、ロックアップソレノイドバルブ(L/U.SOL.V)180、及びセレクトスイッチングソレノイドバルブ(SELECT.SW.SOL.V)181へ供給される。
SELECT.SW.SOL.V 181の出力圧は油路185を介してセレクトスイッチングバルブ(SELECT.SW.V)182に供給され、信号圧として、SELECT.SW.V 182の作動を制御する。L/U.SOL.V 180の出力圧は油路184を介してSELECT.SW.V 182に供給される。
SELECT.SW.SOL.V 181がONのとき、SELECT.SW.SOL.V 181の信号圧(出力圧)がSELECT.SW.V 182に入力される。すると、SELECT.SW.V 182は、CL.REG.V120に接続された油路112とマニュアルバルブ22に接続された油路40とを遮断する一方、SELECT.CONT.V183に接続された油路115と油路40とを連通させる。同時に、L/U.SOL.V 180に接続された油路184とSELECT.CONT.V183に接続された油路186とを連通させる。
よって、このとき、油路112からの作動油(第2油圧)は、全てSELECT.CONT.V183に供給される一方、SELECT.CONT.V183においてL/U.SOL.V 180からの信号圧に従って調圧される。第2油圧より低い油圧(棚圧)に調圧されたクラッチ締結油圧Pcは、油路115、SELECT.SW.V 182、及び油路40を介してマニュアルバルブ22に供給される。
よって、このとき、油路112からの作動油(第2油圧)は、全て油路40を介してマニュアルバルブ22に供給される。一方、L/U.SOL.V 180からの信号圧は、図外のロックアップコントロールバルブに供給され、このロックアップコントロールバルブの信号圧として作用する。
油路40には、油圧センサ40aが設けられている。
本発明の油圧制御装置は、SELECT.SW.V 182、SELECT.CONT.V183、マニュアルバルブ22、2方電磁弁80からなる機械的油圧制御手段と、CVTコントロールユニット9、L/U.SOL.V 180、及びSELECT.SW.SOL.V 181からなる電子的油圧制御手段と、を有している。
CVTコントロールユニット9は、燃費を向上させるため、所定条件を満たしたときにエンジンを停止させるアイドルストップ制御を行う。CVTコントロールユニット9は、極低車速であることとエンジンがアイドル回転していることを検知し、さらにブレーキスイッチや油温センサ5c等、各種センサの信号を併用して、アイドルストップ制御の開始及び終了を判断する。例えば、車速がゼロ、アイドルストップスイッチがON、ブレーキスイッチがON、油温Tが所定範囲内、舵角がゼロ、等の条件を満たせば、エンジンを停止する。このとき、後述する2方電磁弁80の電流をオン状態とする。また、ブレーキスイッチがOFFとなれば、スタータを駆動させてエンジンを再始動させる。エンジンが再始動されると、2方電磁弁80の電流をオフ状態とする。
また、CVTコントロールユニット9は、L/U.SOL.V 180及びSELECT.SW.SOL.V 181に指令を出力し、SELECT.SW.V 182及びSELECT.CONT.V183を用いて、エンジン再始動時に前進クラッチ2dに供給する締結油圧Pcを徐々に上昇させる棚圧制御を行う。
図5,6は、本発明の油圧制御装置の機械的油圧制御手段の一部、すなわちマニュアルバルブ22から前進クラッチ2dに供給する締結油圧Pcを制御する油圧制御回路20を示す。図5は2方電磁弁80がオフ状態を、図6は2方電磁弁80がオン状態を表す。オイルポンプ7の吐出圧は上記電子的油圧制御手段により調圧され、調圧された油圧は、油路40を介してマニュアルバルブ22に供給される。マニュアルバルブ22は2方電磁弁80に接続されている。2方電磁弁80は前進クラッチ2dに接続されている。2方電磁弁80と前進クラッチ2dとは、油路45により接続されている。
SELECT.SW.V182からの油路40は、マニュアルバルブ22の吸入ポート221に接続されている。マニュアルバルブ22はDレンジポート222、Rレンジポート223、及びドレンポート224,225を有している。Dレンジポート222は、油路42を介して2方電磁弁80と接続している。Rレンジポート223は、油路43を介して後進ブレーキ2eと接続している。
マニュアルバルブ22は、図外のリンクを介してシフトレバーと接続されており、シフトレバーの操作に応じて、前進クラッチ2dに作動油を供給するか、後進ブレーキ2eに作動油を供給するかを切り替える。
シフトレバーがRレンジ位置に操作されると、Rレンジポート223と吸入ポート231とを連通させ、Rレンジポート223とドレンポート231とを遮断する。同時に、Dレンジポート222とドレンポート224とを連通させ、Dレンジポート222と吸入ポート221とを遮断する。
シフトレバーがNレンジ位置に操作されると、マニュアルバルブ22のスプールがDレンジとRレンジとの中間位置に移動し、Dレンジポート222とドレンポート224とを連通させ、Dレンジポート222と吸入ポート221とを遮断する。同時に、Rレンジポート223とドレンポート225とを連通させ、Rレンジポート223と吸入ポート221とを遮断する。
マニュアルバルブ22のDレンジポートは、2方電磁弁80の吸入ポート89aと接続している。2方電磁弁80は、プレート部材86を介して一方側に吸入ポート89aが形成され、他方側に吐出ポート89bが形成されている。以下、吸入ポート89a側を油圧源側とし、吐出ポート89b側を圧力供給先側と定義する。吐出ポート89bは油路45と接続し、油路45は前進クラッチ2dの前進クラッチ入力ポート61(図5参照)と接続している。
プレート部材86の油圧源側には、球体である弁体85が設けられている。弁体85は、スプリング88(第2弾性体)によりプレート部材86側に付勢され、弁座86aに着座することで流通孔87を閉塞可能に構成されている。弁体85は、ピン部材84によって流通孔87の圧力供給先側から押圧可能に構成されており、スプリング88の付勢力に抗してピン部材84が弁体85を押し下げることで開弁可能する。
すなわち、プレート部材86の流通孔87の開口状態により、油圧源側と圧力供給先側との連通状態が決定される。
次に、2方電磁弁80の作用について説明する。尚、リターンスプリング82の付勢力をf1、スプリング88の付勢力をf2(<f1)、電磁吸引力をFと定義する。図5に示すように、2方電磁弁80が電流オフ状態のときは、リターンスプリング82の付勢力f1がスプリング88の付勢力f2よりも強いため、弁体85はピン部材84により押し下げられて弁座86aから離間する。これにより、吸入ポート89aと吐出ポート89bは連通状態とされ、マニュアルバルブ22を通過したライン圧は前進クラッチ2dに供給可能な状態である。よって、通常走行状態にあっては、2方電磁弁80の電流をオフとしておくことで、前進クラッチ2dへの油圧が供給する。
また、電気的なフェール状態、もしくは他の要因によってフェールセーフモードに入って2方電磁弁80に電流が供給されない状態となっても、2方電磁弁80の電流がオフ状態で吸入ポート89aと吐出ポート89bとが連通状態を維持するため、通常の走行に何ら影響を与えない。よって、電流オフで連通状態を維持することは、フェール対策としても有利である。
実施例1の自動変速機の油圧制御装置は、以下に列挙する効果を有する。
(1)電流のオン・オフに基づいて駆動するプランジャ83と、プランジャ83の駆動によって移動し、弁座86aと接離して油路を開閉する弁体85と、弁座86aから弁体85を離間する方向へプランジャ83を付勢するリターンスプリング82(第1弾性体)と、弁座86aに弁体85が接する方向へ弁体85を付勢するスプリング88(第2弾性体)と、を備え、電流がオンで弁座86aに弁体85が着座し、電流がオフで弁体85が弁座から離間するようにリターンスプリング82及びスプリング88の付勢力f1,f2を設定した。
よって、油圧の供給先である前進クラッチ2dの油圧を保持するにあたり、複数の油路や切換弁等を設ける必要が無く、油圧回路の複雑化を回避できる。
すなわち、電流がオン状態では、スプリング88が弁体85を吸入ポート89a側から吐出ポート89b側に向けて付勢するため、前進クラッチ2dの油圧がスプリング88の付勢力f2を超えている間は、2方電磁弁80の油路が連通状態とされ、前進クラッチ2dの油が2方電磁弁80を介して流出する。次に、前進クラッチ2dの油圧がスプリング88の付勢力f2に対応する圧より低くなると、2方電磁弁80が遮断され、それ以上、前進クラッチ2d内の油圧が低下することを防ぐことができる。つまり、上述の構成により、リターンスプリング82の付勢力f1<電磁吸引力Fとすれば、電流オンとすることでスプリング88の付勢力f2に応じた油圧を前進クラッチ2d内に保持することができる。言い換えると、付勢力f2を適宜設定することで、前進クラッチ2d内に保持する油圧の大きさを調整することができる。
すなわち、アイドルストップ制御時に有る程度の油圧を確保したい前進クラッチ2dに対し、アイドルストップ時に油圧源としての機能を喪失してしまうオイルポンプ7との関係において、2方電磁弁80を適用することで、エンジン再始動による車両発進時等において、スムーズな発進を達成できる。
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、実施例1においては、本発明の油圧制御装置を、ベルト式無段変速機を有する自動変速機に適用したが、遊星歯車列を有する有段式自動変速機に本発明を適用してもよい。また、実施例1においては、発進用締結要素として前進用のクラッチにのみ本発明を適用する構成を示したが、後進用のクラッチ(ブレーキ)に本発明を適用してもよい。
3 無段変速機(CVT)
7 オイルポンプ
8 油圧コントロールバルブユニット
22 マニュアルバルブ
80 2方電磁弁
81 コイル
82 リターンスプリング(第1弾性体)
83 プランジャ
84 ピン部材
85 弁体
86 プレート部材
86a 弁座
87 流通孔87
88 スプリング(第2弾性体)
89a 吸入ポート
89b 吐出ポート
Claims (4)
- 所定の条件が成立したときにエンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ制御を行う車両に設けられた自動変速機の油圧制御装置であって、
前記油圧制御装置は、
前記エンジンを駆動源とするオイルポンプと、
油圧源である前記オイルポンプから油圧が供給される2方電磁弁と、
前記車両が発進するときに、前記2方電磁弁を介して供給される油圧によって締結される発進クラッチと、
を備え、
前記2方電磁弁は、
電流のオン・オフに基づいて駆動するプランジャと、
前記プランジャの駆動によって移動し、弁座と接離して油路を開閉する弁体と、
前記弁座から前記弁体を離間する方向へ前記プランジャを付勢する第1弾性体と、
前記弁座に前記弁体が接する方向へ前記弁体を付勢する第2弾性体と、
を備え、
前記弁座は、前記オイルポンプと前記発進クラッチとの間に設けられ、
前記第1弾性体は、前記弁座より前記発進クラッチ側に配置されると共に、前記プランジャの基端部を前記発進クラッチ側から前記オイルポンプ側へ付勢する部材であり、
前記弁体は、前記弁座より前記オイルポンプ側に配置され、
前記第2弾性体は、前記弁体を前記オイルポンプ側から前記発進クラッチ側に向けて付勢する部材であり、
前記第1及び第2弾性体の付勢力は、前記電流がオンで前記弁座に前記弁体が着座し、前記電流がオフで前記弁体が前記弁座から離間するように設定され、
前記2方電磁弁は、
前記車両が走行状態にあるときは、電流をオフし、
前記車両が停止した後、所定の条件が成立してアイドルストップ制御が行われるときは、電流をオンとする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置において、
前記オイルポンプと前記2方電磁弁の間に、前記発進クラッチに供給する締結油圧を制御するコントロールバルブを備えたことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項1または2に記載の自動変速機の油圧制御装置において、
前記プランジャは、電流がオフのとき、前記第1弾性体の付勢力により、その先端部で前記弁体を前記発進クラッチ側から前記オイルポンプ側に向かって押圧し、
電流がオンのとき、先端部を前記弁体よりも前記圧力供給先側に位置させ、前記弁体が前記弁座に着座することを許容する部材であることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項1ないし3いずれか一つに記載の自動変速機の油圧制御装置において、
前記弁体は、球体であることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
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