JP5688922B2 - ポリエステル系熱成形品およびその製造法 - Google Patents

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Description

本発明は延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂のシート又はフイルムを用いた熱成型品及びその製造方法に関る。本発明の製造方法は、賦形体を高速で加熱及びまたは冷却し、更には熱成形の過程において予熱温度以上の高温の熱処理を行うことにより耐熱等の向上した透明性等の高い熱成形品を高速で効率よく製造するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)を代表とする熱可塑性ポリエステルは、成形品は強度が大きく、耐薬品性、耐光性、耐摩耗性等の耐久性にも優れており、シートや各種形態の容器等に成形し飲料、液体食品等の容器や食品トレーなどとして広く用いられている。しかしながら、用途によっては、なお耐熱性、耐衝撃性、ガスバリヤ性などが充分でなく、古くから種々の検討がなされてきた。この結果、熱成形の過程において高温の熱処理を行うことにより耐熱性等の増加し且つ透明性等の高い熱成形品を製造する種々の方法が開発されてきた。しかしながら、このような方法で高速で効率のよい製造方法はなく、特に延伸材料を使用した透明性のあるものは未だ商業的成功には至っていない。
例えば(1)特公昭44−5108には、特定の結晶化度等を有するポリエチレンテレフタレートの板またはシートを輻射熱で予熱して真空成型に賦し、そのまま再び輻射熱にて加熱するなどして成形型内で熱処理する方法が開示されているが、この方法では熱処理に非常に長い時間がかかっており実用的ではない。また、(2)特公昭56−7855にはポリエステルシートを一度1軸延伸配向させ次いでこれを加熱収縮させたシートを用いて熱成形する方法が開示されている。ここでは必要により成形時に熱風を用いる方法により熱固定する方法を例示しているが熱処理に非常に長い時間がかかり実用的ではなく、また冷却離型してて良品を得る概念も含まれていない。また、(3)特公平5−45412では、特定条件で2軸延伸し更に熱収縮させたシートを用いて熱成形と熱処理を行う方法が開示されている。ここでは、加熱型への移し替え、熱風、熱水、赤外線になどよる加熱法を例示しているが、その具体的な方法について触れておらず、また冷却して離型するプロセスは含まれていない。(4)特公昭60−031651には特定の複屈折率を有するポリエステル延伸シートを熱成形し熱処理する方法が開示され、具体的には加熱された金型で成形し、冷却して成型品を得ることが示されているが、冷却方法は示されておらず、例えば金型ジャケットに熱媒を通じて加熱冷却しながらこのプロセスを行うとすれば時間がかかり実用的ではない。更にはまた、(5)特公昭59−051407では、特定の複屈折率を有する2軸配向ポリエステルシートを熱盤に接触させ特定の温度に加熱し特定の圧力で圧空成形する方法が開示されているが、成形時の熱処理は実質的になされていない。また、特許3053245号は一軸延伸ポリエステルを用いた熱成形について開示しているが、熱成形方法についての開示はなく、また示された耐熱向上も微々たるもので実質的な効果はない。
一方、特開2000−355091、特開2000−297162等のように 通常CPETと呼ばれる結晶化促進の為の核剤を含むポリエチレンテレフタレート樹脂を押出機よりシートに成形し、これを用いて熱成形と熱処理を行い結晶化を進める技術が知られており、球晶が発達し耐熱性については大幅に向上するものの白色不透明となり、耐衝撃性、特に低温における耐衝撃性が大きく低下する。しかし、これらのCPET成形では、熱処理すなわち結晶化に時間をかければ、熱処理温度以上の耐熱が得られ、材料が高温のまま離型しても変形が少なく冷却はあまり問題にならない.そして熱成形サイクル短縮とより安定な生産のために冷却型から加熱型へ、あるいは加熱型から冷却型へ移して処理することも容易である.
また、特許2668848号は、延伸された合成樹脂シートを成型する熱成形装置を開示し、その効果としては延伸により熱収縮性の材料となったポリスチレン等の材料を、加熱されたプラグと加熱された空気を用いて、深絞り等の成形ができることを述べている。この発明は熱収縮しやすくなった材料を定位置でクランプ固定して熱風で予熱しながら、延伸により成形しにくくなった材料をプラグで強制的に押し延ばしながら成形するもので、熱処理については何の記載もないが、こうした装置で予熱温度以上の熱処理はできない。また特許2668847号も前記同様の材料を同様にクランプ固定するようにし、加熱凹型に対して低温の凸型プラグを押し込み圧空成形する装置を開示している。この場合も延伸配向の熱固定を進める程の高温の熱処理については何の開示もしていないが、仮に高温の熱処理ができたとしても、シワの発生などが問題となり、またオフセットまたはアンダーカット形状のある成型品には適用しにくい。
特公昭44−5108号公報 特公昭56−7855号公報 特公平5−45412号公報 特公昭60−031651号公報 特公昭59−051407号公報 特許3053245号公報 特開2000−355091号公報 特開2000−297162号公報 特許2668848号公報 特許2668847号公報
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。その主な目的は、延伸されたポリエステル系樹脂シートの熱成形の賦形から離型までの過程において、賦形のためのシート予熱温度以上の高温の熱処理を行って離型する熱成形を高速で効率良く連続的に行う方法を提供することである。
(1) ポリエステル系樹脂の延伸シートを用いて熱成形する方法において、熱浸透率(kJ/m1/2K)が2.0以上で、かつ25以下である材料により形成させ、かつ温度調整機構を備えた成形型を用い、成形型の温度を成形材料のTg℃ 以上でかつ(Tg+250℃)以下の所定の一定温度に調整し、次の1)2)、すなわち
1);賦形体裏面への高温気体若しくは高温気体流の接触及び又は赤外線照射による加熱手段,
2);賦形体裏面への冷却用気体流及び又は冷却用液体の接触による冷却手段、
の少なくとも一つを用いることにより、成形型の表面温度の軌跡において所定の一定温度の頂点と一定温度の底点を有する繰り返しサイクルを形成せしめ、このサイクルの中で賦形と離型を繰り返し行うことを特徴とする連続的な熱成形品の製造方法を提供するものである。また、本発明は下記(2)〜(12)の発明を提供するものである。
(2)シートの予熱賦形から離型までの過程において、賦形体がシートの予熱温度以上でかつ(成形材料樹脂のTg+60)℃以上で且つTm以下の所定温度である成形型表面に接触する過程を含み、次いでその表面温度がそれより5℃以上低い温度に降下してから離型する(1)の熱成形方法。
(3)成形型の表面若しくは表面下で成形サイクルに伴う温度軌跡、及びまたは賦形体の裏面温度を測定し、連続成形の中で該表面温度サイクルの頂点及び底点が所定の一定の値を繰り返すように調整又は制御する(1)〜(2)の熱成形品の製造方法。
(4) 高温気体を用いた圧空により賦形と賦形体裏面への高温気体若しくは高温気体流の接触をほぼ同時に行うか、または真空賦形と同時に該裏面への高温気体若しくは高温気体流を接触させるか、または公知の方法による賦形に続いて高温気体若しくは高温気体流を接触させる(1)〜(3)の熱成形品の製造方法。
(5)圧空賦形及び又は真空賦形とほぼ同時に赤外線を賦形体裏面に照射するか、または公知の方法による賦形に続いて赤外線を賦形体裏面に照射する(1)〜(4)の熱成形品の製造方法。
(6)圧空室内から気体が流出する機構を設けて圧空成形にすることにより、賦形と同時または賦形に続いて、該高温若しくは冷却用気体流及び又は冷却用液体をの接触を行うことを特徴とする(1)〜(5)の熱成形品の製造方法。
(7)賦形とほぼ同時にあるいは賦形後に賦形体裏面への高温気体若しくは高温気体流の接触およびまたは赤外線照射を行って該表面温度を昇温させて、次いで賦形体裏面に冷却用気体流及び又は冷却用液体を接触させて該表面温度を降下させて離型する(1)〜(6)の熱成形品の製造方法。<パターンA>
(8)賦形とほぼ同時にあるいは賦形後に賦形体裏面への高温気体または高温気体流の接触およびまたは赤外線照射を行って該表面温度を昇温させのち、この表面温度の自然低下を待って離型し、次いで該表面直接に冷却用気体流及び又は冷却用液体を接触させて温度降下させる(1)〜(6)の熱成形品の製造方法。<パターンB変形>
(9)該表面直接に高温気体流の接触または赤外線照射を行って該表面温度を昇温させ、次いで賦形と同時にあるいは賦形後に、賦形体裏面へ冷却用気体流及び又は冷却用液体を接触させて該表面温度を降下させて離型する(1)〜(6)の熱成形品の製造方法。<パターンC変形>
(10)ポリエステル系の同樹脂の非延伸シートを用いた通常の熱成型品にくらべ、耐熱性が少なくとも10℃向上した熱成型品を得る(1)〜(9)の何れかの熱成形品の製造方法。
(11)前記(1)〜(9)の何れかの方法を用いることにより得られた、(ポリエステル系の同樹脂の非延伸シートを用いた通常の熱成形品に比べ)耐熱性が少なくとも10℃向上した熱成型品。
本発明の成形型の断面図である。 本発明の成形型の断面図である。 連続繰り返し成形中の成形表面温度の変化を示す模式図である(パターンA)。 連続繰り返し成形中の成形表面温度の変化を示す模式図である(パターンB)。 連続繰り返し成形中の成形表面温度の変化を示す模式図である(パターンC)。
以下本発明の内容をさらに詳細に説明する.
ポリエステル樹脂
本発明の延伸されたシートに用いられポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリ乳酸系等の結晶性熱可塑ポリエステル系樹脂であり、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートのホモポリマーは勿論のこと、エチレンテレフタレート単位を65モル%以上、より好ましくは90%以上含む実質的に線状のコポリエステルを含有する。このコポリエステルを構成する成分として例えば、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸の如き芳香族、脂環族、脂肪族の二官能性カルボン酸、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸のようなグリコール等が挙げられる。ここに挙げた化合物の1種または2種以上を含んでいてもよい。
ポリエステルは、実質的に線状である範囲で少量の3官能以上の他官能化合物を共重合成分として含んでいるものであってもよい。
またポリエステルの極限粘度(試料1.0gをフェノール/テトラクロロエタン50/50(重量比)の混合溶媒100ml中に溶解した溶媒について30℃で測定した値)は0.5以上〜1.3dl/g、好ましくは0.6〜1.1dl/gの範囲にあることが好ましい。 またガラス転移点(Tg)(シートより5mg採取して、それを窒素中にて285℃で5分間溶融後急冷し、急冷物をDSCにて昇温速度20℃/分の条件下で測定した値)は、40〜110℃の範囲のものが好ましく、50〜100℃の範囲のもは更に好ましく、60〜100℃の範囲のものが特に好ましい。Tgがこれより小さい場合も大きい場合も、延伸シートの面配向度(ΔP)を適正な範囲に制御することが困難になり好ましくない。
更に融点(Tm)(上記Tgと同条件で測定した値)は150〜300℃の範囲が好ましく、200〜280℃の範囲が更に好ましく、230〜270℃の範囲が特に好ましい。
またポリエステルに添加剤、たとえば核剤(これは微粒子が好ましい)、滑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤等を添加してもよい.さらに、ポリメチルペンタンや、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の強化材も場合によっては添加してもよい。
延伸シート
前記のポリエステル樹脂からなるシートは実質的に延伸配向したものが用いられる。延伸方法は特に限定されるものではなく公知の延伸方法がいずれも用い得る。ポリエステルシート(未延伸)を製造するには、例えば、原料樹脂を押出機に供給し、樹脂温度260〜320℃程度で溶融押出し、押出機に接続したフラツトダイを通じて押出されたシート状溶融物をキャスティングロールで引取り冷却固化して製造する。また、押出機にサーキュラーダイを接続してインフレーション成型したものを使用してもよく、またカレンダー機によりシーテイング成形したものを使用してもよい。
このようにして得られたシートは通常は有効な延伸処理はなされておらず、これをインラインあるいはアウトラインで延伸処理する。延伸装置は特に限定されず、物理的に延伸可能な方法であれば適宜の装置を採用することができ、1軸延伸、2軸延伸のいずれも採用することができる。
これらの内で、1軸延伸方式は温度調整したシートを1方向にのみ延伸する方法であり、通常は、複数のローラーを組合わせた装置あるいは拡幅用のテンターと呼ばれる装置が用いられる。また、2軸延伸は予熱したシートを縦横2方向に延伸するものであり、通常は上記の1軸延伸に続いて、更に拡幅用のテンターにて幅方向の延伸が行われる。2軸延伸方式では、縦横交互に延伸する逐次法と、縦横ほぼ同時に延伸する同時法があるが何れの方法を用いてもよい。又上記した1軸延伸方式あるいは2軸延伸方式以外の方法として、例えば円筒状フイルムのバルーンを高い空気圧により膨張させることによって延伸してもよく、また温度調整したシートをローラーにより圧延してもよい。このようして得られる市販の延伸シートには通常熱固定処理が施されているが、本発明ではこうした熱固定処理が施されたものも、施されていないものも使用できるが、施されていないものが特に好ましい。 また、こうした延伸方法の中では1軸延伸によるシートは、延伸装置も製造方法も比較的に簡易で低コストででき、熱成形性も良く残して調整することができ、連続成形機へのクランプも容易で、また本発明の熱処理構成により配向の異方性の問題も解消することができ非常に好ましい.
このような延伸は、通常、ポリエステル樹脂シートをその樹脂のガラス転移点以上、かつ結晶融点以下にして行われるが、延伸による配向効果をより発揮させるためには、ガラス転移点以上で、かつ結晶融点より60℃以上低い温度に調整して行われる。また、延伸プロセスの最後に延伸状態を保持しつつ通常は延伸時よりも高い温度で短時間加熱する所謂熱固定(ヒートセット)処理を行い配向効果(配向結晶化度)の向上をはかることが行われる。本発明の成形法では、このような熱固定を行っていないシートも、熱固定を行ったシートも用いることができるが、熱固定を行っていないシートはより好ましく、より大きな絞り率の成形が、また細部の成型状態がより良い成形が可能である。
上記のようにして製造され本発明に使用される延伸シートは、その延伸配向効果を示す指標として面配向度(ΔP)が0.015〜0.15であることが好ましく、0.02〜0.10であることは更に好ましく、0.02〜0.08であることが特に好ましい。また、かかるシートは流れ方向と幅方向のうち少なくとも一方向の延伸が1.2倍〜6倍に、より好ましくは1.8〜4倍に延伸して得られる。こうした中で、1軸延伸で延伸倍率が1.5〜3倍のもの、あるいはΔPが0.02〜0.08のものが特に好ましく使用できる。
また延伸したシートに熱をかけて収縮処理したシートも好ましく利用することができ、この場合は収縮処理した状態で上記の面配向度を有していることが好ましい。
面配向度(ΔP)がこれより小さい場合は、熱成型品の耐熱性をはじめ機械的特性等の改善が十分ではなく、また、これらを超えるものは熱成形性に劣り深絞りのものや、精密に成形ができない。あるいは圧空賦形に非常に高い圧力を必要とし、商業生産にとうてい適さない程の堅固で高価な圧空成型機が必要になってしまう。
上記の面配向度(ΔP)は延伸による分子配向を示す指標であり、次式により求められたものである。
シートの面配向度(ΔP)=(n−n)/2+(n−n)・・(2)式
シートの複屈折率(Δn)=n−n ・・・・・・・・・(3)式
ここで n;シート面方向の最大屈折率
;nに直角する屈折率
;シート厚さ方向屈折率
ただし、n、n、n はアッベ屈折計を用い、ナトリウムD線を光源として25℃の温度による測定値とする.
本発明にて用いられる延伸されたポリエステルシートの平均厚みは、通常0.003〜1.5mmであり、0.06〜1mmであるのが好ましく、0.1〜0.6mmであることが更に好ましい。樹脂シートの厚みが前記の範囲より薄いと強度が不足するなど成形品として実用的でなく、一方、前記の範囲を超えると延伸シートの製作が難しくなる。
ポリエステル樹脂は上記延伸工程により、長鎖の分子配向と結晶化が進み、延伸に際して熱固定処理がなされると更に結晶化が進み配向が安定する。そして、その結晶化度は熱成形性や成形品の特性に影響する。本発明に用いられる延伸シートのポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートホモ樹脂である場合、結晶化度は3〜35%であることが好ましく、5〜25%であるのが更に好ましい。結晶化度がこの範囲より低いと最終成形品の耐熱性向上効果が小さい。一方、この範囲を越えると熱成形が困難になり、また耐衝撃性が低下する傾向がある。なお、こうした配向結晶をしたものは着色剤等を配合したものでない限り高度に透明であるが、前記の熱固定処理に際して過剰に加熱したものなどは球晶が成長し透明度が低下したり、白化したりし熱成形性や耐衝撃性を低下させるので、これは避けることが好ましい。なお、結晶化度は密度勾配管を用いる常法によって求めることができる。
なお上記のシートは事前に製作しておいたものを熱成形すればよいが、本発明においては延伸と熱成形を一貫ラインでおこなうこともでき、その場合延伸時の熱をできるだけ逃がさないようにして熱成形に利用することもできる。なおその場合は成形前の延伸品をそのまま冷却したとして前記のシートの諸特性を考慮すればよい。
賦形方法と熱成形装置
熱成形あるいは圧空成形という用語はフロセス全体を表すもので、賦形はその中の一つ工程として説明する。本発明において賦形の基本的な方法としては、1)真空成形法、2)圧空成形法、3)真空圧空成形法、4)プラグアシストを伴う前記成形法のいずれか、(5)嵌合ダイを用いたプレス成形法など通常の熱成形に使われる方法は何れも利用することができる。そしてこれらの方法の中では、真空圧空による賦形または圧空による賦形の方法が特に好ましく用いられる。
なおこの賦形に先だっては、成形シートの予熱が行われるが、本発明使用される前記の材料シート過剰な高温にしたり、長い時間予熱すると成形性が低下するなど好ましくない。材料の予熱温度は材料温度としてTg〜(Tg+50℃)程度とすることが好ましく、また75〜120℃程度とすることが好ましい。また迅速に予熱し予熱後は迅速に賦形することが好ましい。
本発明の製造法にて用いられる熱成形装置としては、圧空成型機、真空圧空成型機などの圧空を使用して成形を行う通常の熱成型機に高温高圧の気体を供給しあるいは冷却用気体をブロウする機構を付加することにより用いることができる。また、真空成型機、嵌合ダイのプレス成型機なども高温気体あるいは冷却用気体をブロウする機構などを付加して用いることができる。プラグアシストなど、公知の補助的方法も適宜組合せて使用してよい。
このような熱成形機には通常はシート予熱機構が備えられており、その予熱機構には遠赤外線ヒーター加熱などのオーブンによる間接加熱法か、あるいは加熱されたローラーや金属板等に接触させる直接加熱法が採用されているが何れも利用でき、シートの予熱と温度調整が可能な方法はどのような方法も利用できる。
なお、本発明の特別な対応として後述するようにこのような予熱機構を有しない熱成型機も利用できる。
またこれらの熱成型機には、シートを一枚ずつ成形する枚葉成型機と、長尺のシートを連続的に順次成型する連続成形機がありいずれも利用できるが、本発明の方法は後者の連続成形機を用いて連続成形を行うことを本領とする方法である。
<成形型の構造>
本発明の型構成は、雄型、雌型、マッチドダイなど熱成形に通常使われているどのような成形型にも適用できる。具体的な例として図1のような構造を示すことができる。図1において1は成形体本体、3は真空孔、4は導気孔、5は熱媒通路を示す。
<熱浸透率について>
本発明では特定の特性値すなわち熱浸透率を有する材料により形成される。 熱浸透率(kJ/m1/2K)が2〜25の材料により形成され、この熱浸透率は次式(1)にて得られる値である。
熱浸透率(b)= (λρC)1/2 ・・・・・(1)
λ; 熱伝導率(Js−1−1−1
ρ; 密度(kgm−3
C; 非熱容量(Jkg−1−1
かかる熱浸透率は二つ物体の界面を通過して移動する熱量にかかわる特性値であり、この値が小さいと界面は少ない熱量しか流さない。特定の熱浸透率(b値)を有する材料を用いる理由については後述する。
下記の表1に、いくつかの材料のb値との参考値を示す。なおb値は測定温度により若干違った値を示すが、本願においては、厳密には20℃の値をもって基準とする。また、使用温度範囲で相変化をする材料を含むなどにより、これらの値が直線的変化を示さない場合は、20℃と150℃の時の値の平均値をもってこれに代えるものとする。
Figure 0005688922
本発明の成形型の材料は、固体であって無害かつ強度や耐熱性等が熱成形に耐えられるものであり、b値(熱浸透率)が2以上、望ましくは5以上であり、そして25以下、望ましくは20以下、さらに望ましくは15以下であれば何れの材料を用いてもよい。参考として身近な各種の材料の材料についてのb値を表1に示すが、この表の中の材料あるものも、表以外のものも任意の材料を任意に選んで使用することができる。
こうした材料の中で、エポキシ、ウレタン、フェノール、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂の金属あるいはセラミックス等との複合材料、あるいは、ポリアミドイミド、POM、PEEK、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂の金属あるいはセラミックス等との複合材料、あるいはアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属、あるいは各種の合金、あるいはアルミナ、ムライト、コージライト、イットリア、チタニア、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、ジルコニア、サーメット等のセラミックス、あるいは各種の複合セラミックス、あるいは黒鉛等の無機材料を任意に選んでしようできる。こうした材料の中では、アルミニウム系、亜鉛系、鉄系等の金属材料、炭化珪素系等のセラミックス材料は加工もしやすく好ましく利用できる。なお、b値と本発明の方法による成形方法及び成形性との関係は後述する。
成形型の温度調節機構
本発明においては、成形型に温度調節機構を設け、成形型の深層部の温度(後述)を所定温度に調整できることが必要である。温度調節機構は成形型の内包して設けてもよくまた外部に付設してもよいが、内包して設けることが好ましく、また成形表面にできるだけ近接して内包することが好ましい。そして成形表面に近接して内包する場合は特に、この機構が成形面(成形型の成形用表面)に平行した広がりを有し該表面を均一な温度に温調できるようにすることが好ましい。
そして、この温度調節機構は、すくなとも加熱手段を有していることが必要であり、これに併せて冷却手段を備えていることは好ましい。具体的な加熱の手段としては、電気ヒーターを外部付加あるいは内包する方法が容易であり好ましく、この場合は自然冷却とあわせて温度制御を行うことになる。一方、内部に設けたジャケットに温調した加熱熱媒を通ずる方法は、加熱冷却を意識することなく温調することができ好ましい方法である。
加熱、冷却の手段は特に限定するものではなく、種々の方法が採用できる。自然冷却を促進するためのフィンなど放熱手段を設けたり、内部に設けたジャケットに冷却水等の熱媒を通ずる方法、誘導加熱、誘電加熱、赤外線加熱、ペルチェ素子など公知の加熱冷却手段がいずれも採用できる。なお、特別な方法として型材を多孔体にしておき、外部から加熱あるいは冷却用気体を通ずることにより冷却あるいは加熱を促進する方法も好ましき用いることができる。このときの気体を吹き込んで通じてもよくまた吸引よって通じてもよい。
なお、この表面温度を均一にするには、別途の手段を取り入れることをしてもよく、例えばヒートパイプ等の高熱伝導材料の挿入やヒートパイプ構造を設けるなど種々の温度均一化手段を採用してよい。特別な構成として例えば、厚み方向に対して面方向の熱伝導率が極端に大きいグラファイトシート材料を挿入してもよい。
成形型の温度測定
成形型の特定箇所の温度測定が必要であり、本発明の成形法方法には後述のような成形パターンがあるが、これらを適正に実行するためには、先ず成形サイクルに追従の温度測定は、成形型の表面温度(賦形体との界面を形成するタイミングもある)の測定をすることが望ましく、本願においてはこの表面温度により発明の趣旨を展開する。しかし、表面温度を測定しなくても、成形サイクルに伴って代わる温度を測定して本発明を実施することは可能であり、その場合は成形型表面温度との差異をあらかじめ把握しておいて実施することが望ましい。表面温度の測定に代わっては、例えば赤外線測定法を用いて賦形体存在期は裏面温度を測定し、離形後は表面温度を直接測定するようにしてもよい。また、成形品上のプローブ痕跡などを不都合とする場合は、表面温度測定に代えて該表面に近い内部の特定点を測定し表面温度の代用指標とする方法が好ましく採用できる。この表面下の浅層の温度をU点の温度とし、このU点は表面下の概ね10mmまでの位置で表面に近いほど好ましい。また該表面又はU点に設置される温度測定プローブは十分に細くて熱容量が小さく温度応答性が高いものが必要であり、型材料b値が小さいほど温度応答性の高いものを用いる必要がある。具体的には少なくともプローブ径1mm程度以下のものを用いる必要があり、0.2mm程度以下のものを用いるとよい。なお、U点の温度軌跡は該表面温度の軌跡に比べ振幅も小さく、また中心位置も違うことは把握しておく必要がある。
一方、本発明では、表面層から離れた位置で成形サイクルに追従せず一定温度を示す任意の位置(P点)の温度を測定することも重要である。このP点は成形温度サイクルを追従せず、定常状態で一定温度を示す位置であれば加熱冷却源から該表面に至るまでの間で自由に選べるが、通常は該表面下比較的表面に近いところがより好ましい。このP点の温度を深層温度とし、P点の成形サイクル中の定常状態温度をSまたは成形型温度と称することとする。前記の
温度調整機構で、この深層(P点)温度を制御することになる。しかし、このP点温度は
測定することは望ましいが、これを行わず済ませることは可能であり、例えば成形型内のジャケットに任意の一定温度に制御されたた熱媒を通すのみでもよく、あるいは任意の一定温度に制御された温度制御部材を型内に内蔵させるだけでもよい。
表面層表面(賦形体との界面)の昇温と降温手段
本発明の成形方法においては、成形サイクルに伴って成形型表面(賦形体との界面)温度の所定温度への昇温と降温を繰り返すことが必要である。該表面温度の昇温と降温は、成形型表面から離れた深層からの定常的な熱伝導に対して、(1)賦形体裏面に対する間歇的な加熱手段、(2)賦形体裏面に対する間歇的な冷却手段の何れかの少なくとも1つの手段を組み合わせてなされる。(1)の間歇的な加熱手段は、該表面または賦形体裏面へ高温気体を接触させるか、または同面へ赤外線照射を行う方法である。(2)の間歇的な冷却手段は、該表面または賦形体裏面への冷却用気体流及び又は冷却用液体を接触させる方法である。
上記の高温気体接触による方法と赤外線照射による方法は、何れか単独で用いてもよく、両者を併用してもよく、両者を併用することは特に好ましい。この高温気体の接触は静止気体であってもよく、また気流であってもよいが、これを単独の加熱手段として用いる場合は気流であることが好ましく、また気流は高速であるほど熱伝達率が大きくなり好ましい。しかし噴射装置の形態や成形型の形状等により加熱ムラが生じやすく、装置上の工夫や状況に応じた条件が選ばれる。
上記の冷却用気体は気体流で接触がなされるが、これも高速の気流であるほど熱伝達率が大きく好ましい。しかしこの場合も上記同様に冷却ムラが生じやすく、これが次のサイクルでは昇温ムラになりやすいので、装置上の工夫や条件の選択が行われる。
加熱手段の適用は賦形と同時に行ってもよく、又賦形後に行ってもよい。また冷却手段の適用も 賦形と同時に行ってもよく、又賦形後に行ってもよい。賦形の時点と加熱あるいは冷却手段の組み合わせについては後述のような成形サイクルの温度パターンがある。
なお、上記の加熱気体あるいは冷却用気体は空気、あるいは窒素など任意のものが利用できる。用いる赤外線は遠赤外線、近赤外線いずれも好適に利用できる。
加熱手段として加熱気体を単独で用いる場合は、少なくとも150℃以上、望ましくは200℃以上、更に望ましくは材料のTm以上、更に更に望ましくは300℃以上であることが望ましい。その上限は限定するものではなく、例えば1000℃超える温度でも可能な場合もあるが、しかし鋭い角や先端部のある成形品では過剰に加熱され不都合を避けるために1000℃以下が良い場合もある。加熱効果を良くするために加湿することも好ましく、また過熱蒸気も効果的に利用でき乾燥過熱蒸気、飽和過熱蒸気のいずれも利用できる。
冷却手段として用いられる冷却用気体流の温度は低いほど良いと云えるが、通常の手段で得られる圧縮空気や送風空気そのまま好適に利用することができる。また、場合によってはかなり高温気体も許容され極端には加熱手段として用いた高圧気体を次のステップ周辺空気を吸引ブロウして冷却をおこなうこともできる。
また冷却手段として用いられる冷却用液体は水やアルコール、炭化水素、フッ化炭化水素など気化潜熱の大きいものが利用できるが、水が最も好ましい。具体的には1)水噴霧または水の微滴散布を行う、2)水噴霧と気体ブロウを順次行う、3)気体ブロウと平行して水噴霧を行う方法などがある。この2)の方法は特に好適に利用できる。なお、予め加湿した冷却用気体の利用も熱容量が大きく能率的に冷却することができ好ましい。
なお、本発明において、高速の気体流を用いて加熱あるいは冷却を行う場合、気流は賦形体に接触し加熱冷却し、該表面(界面)は間接的に加熱冷却されることになる。
秒単位でこの操作をおこなう一方、成形材料の熱浸透率は一般的に小さいので該表面と賦形体裏面との間には大きな温度傾斜が生まれている。本願においては、熱処理温度あるいは離型温度は熱処理温度等は該表面温度で表すこととするが、真の材料温度とは乖離し、該表面層材料、成形条件、材料厚みによりその適正温度が大きく変わることに留意する必要がある。
熱成形サイクルの温度パターン
本発明においては、シートの予熱温度以上の熱処理を行うために、表面温度が成形材料樹脂の(Tg+50℃)以上で且つTm以下の所定温度である成形型表面に賦形体が接している時間が例え短くとも必要である。表面温度がこの温度に満たない場合は熱処理の効果がなく、一方より高度に効果を発現させるには、(Tg+60℃)以上であることが望ましく(Tg+70℃)以上であることが更に望ましい。また表面温度がTmを超える場合は賦形体が強く白化したり溶融したりし不都合であり、一方このような欠陥を確実に排除しあるいはより軽度にとどめるためには(Tm−30℃)以下であることが望ましい。なお、シート予熱温度に対比する熱処理温度は真の賦形材料温度で論議すべきものかと思われるが、その測定は容易ではなく本願においては賦形体に接する成形型表面の最高温度を熱処理温度とする。また、本発明においては、表面温度をこの熱処理温度よりも5℃以上降下させて離型させるが、この温度に満たない場合は変形が大きい。そして、この変形を無くしあるいは少なくするためには、これを10℃以上降下させて行うことが好ましく、20℃以上降下させて行うことが更に好ましい。
本発明のこのような熱処理を伴う熱成形を行う典型的パターンとして図3、4、5に3パターンを示し、これらについて順次説明する。なお、パターンA、B、Cの各図は連続繰り返し成形中の表面温度(賦形体があるときは界面温度)の変化を模式的に示したものである。パターンの軌跡では、太線部分は賦形体が成形型表面と接触した状態を、細線部分は賦形体が除去されている状態を示し、また太点線は賦形材料を密着させたまま放置されている状態を示す。S線は深層P点の定常温度を示している。なお、本発明に利用できる方法はここに示すパターンに限定するものではなく、これらの変形や、一部混合パターンも含めて、本発明の構成で間歇的加熱手段、間歇的冷却手段をどのように組み合わせてもよい。
図3のパターンAは成形型の深層温度を、設定した成形型の表面温度の所定の頂点(最高温度)と所定の底点(最低温度)の間で制御し、賦形と同時あるいは賦形後に、高温気体の賦形体裏面への接触および又は同裏面への赤外線照射により所定の頂点(最高温度)に到達させる工程と、冷却用気体を成形体裏面に接触させ離型する工程からなるパターンである。
図3において、aゾーンで賦形及び高温気体との接触が行われ、bゾーンでは冷却ブロウがおこなわれ、cゾーンでは賦形体の離型排出と新成形材料の配置が同時に行われる。なお、aゾーンの賦形と高温気体接触は、両者を順次行ってもよいが高温気体により圧空賦形を行うかあるいは真空賦形を行いながら高温気体ブロウを行えばそれらを同時に始めることができ、又そのとき排気を行いながら圧空を行えばプロセスの効率は良い。
このaからcまでの1サイクルの更なる詳細は図中で1〜5のように区分して示しているが、1では、深層の高温により表面温度の自然回復がなされ、2では深層温度と高温気体の両者により、3では高温気体のみにより表面温度が上昇する。また、4深層温度と冷却ブロウの両者により、5では冷却ブローによってのみ表面温度が冷却されて離型可能な状態になる。
第4図のパターンBは、成形型の該深層温度を該表面温度の所定の最低温度ないしこれを下回る温度に設定し、賦形と同時あるいは賦形後に、該深層温度以上の高温気体の賦形体裏面への接触および又は同裏面への赤外線照射により加熱する工程と、次いで所定の離型温度に達するまで待って離型する工程からなるパターンである。このパターンでは、所定の最低温度への回帰が背後層からの冷却によって自動的になされる。
aゾーンではパターンAと同様に賦形と高温気体接触がなされるが、bゾーンでは放置するのみで背後層からの冷却を受け離型可能に達する。cゾーンではAと同様に離型移動と新成形材料の配置が行われる。 なお、賦形は通常は短時間で終わる工程であり、賦形後に加熱を開始してもよく、また賦形同時に加熱が開始されるようにしてもよい。
なお、cゾーンで賦形体の離型排出と新成形材料の導入が行われるが、特別な態様として、このゾーンでこの操作に平行して該表面に直接に冷却ブロウが行ってもよい。この操作により、最低温度を低くしまたその到達を早めることができる。なおまた、離型後にも更に表面温度を下げる理由は、成形材料によっては最初から高温表面の成形型で賦形すると、火傷状の傷や、あるいは透明度の低下があるからである。一方該表面を直接冷却すればより効率的に低温化できるからである。しかし連続成形においては通常は成形型の位置を長尺の成形材料が覆っていることになるので、例えば下に降りた成形型に気体噴射ノズルを向けるか、あるいは成形型を隣接の冷却気体噴射デバイスの位置まで一時的に移動させればよい。なおこのとき、このとき2組の成形型セットを準備して交互に賦形位置に戻すようにすれば最高速のプロセスにすることも可能である。
第5図のパターンCは、該成形型の該深層温度を該表面温度の所定の最高温度ないしはこれを上回る温度に設定しておき、賦形を行って該表面温度の所定の最高温度への到達を待って冷却用気体流を賦形体裏面に接触させる工程、または該最高温度への到達後に賦形と同時あるいは賦形後に冷却用気体流を賦形体裏面に接触させる工程により該表面温度を所定の離型温度に到達せしめて離型するパターンである。 このパターンでは高温温度への回帰が該深層から加熱によって自動的になされる。
aゾーンでは、賦形を行って表面温度の所定の最高温度への上昇を待ち、bゾーンで冷却ブロウが行われ、そしてcゾーンで離型排出と新成形材料の配置が行われる。
なお、aゾーンは極限まで短縮して行き、表面温度の最高温度への到達を待って賦形を行ってもよく、この場合は実質的にaゾーンはなくなる。そして、このとき通常の圧空賦形に続いて冷却ブロウする方法も望ましいが、一部の空気を排出しながら圧空賦形続ければ、賦形、熱処理、冷却一工程で進行しただちに離型でき非常に簡便で望ましい方法となる。
なお、aゾーンにおける賦形は任意の所定時点で始めることができ、究極的には表面温度が最高温度到達時点で始めてもよい。このときは例えば気体排出を伴う圧空賦形を行えば一つの作業で賦形、熱処理、冷却が自動的に進行し非常に効率的で好ましい方法となる。
なおまた、賦形体の不在期に該表面に対して直接に該加熱手段を施せば、最高温度への到達を速めあるいはより高い温度に到達せしめることができる。しかしながら、賦形体不在期といえども連続成形においては通常は成形型を長尺の成形材料が常時覆っていることになるので、加熱用のデバイスを挿入するか、あるいは成形型を隣接の加熱用デバイスの位置まで一時的に移動させればよい。なお、このとき2組の成形型セットを準備して交互に賦形位置に戻すようにすれば最高速のプロセスにすることも可能であり特別な方法となる。
成形型材料のb値と温度パターンの関係
成形型に用いる材料のb値(熱浸透率)が小さい場合は、前記の加熱冷却手段で該表面および賦形体を容易に昇降温させることができるが、本体付加の温調機構で該深層温度 そしてまた該表面温度を制御することが困難であり、b値が2を下回る場合は本体付加の温調機構で深層温度を敏捷かつ任意に調整することは殆どできない。この温調機構を有効に活用するためにはb値は2以上、望ましくは5以上である。一方b値が大きい場合は本体付加の温調機構で該深層温度および該表面温度を任意に迅速にそして均一に制御でき、そして該表面温度を迅速に賦形体温度に反映させることができるが、その反面熱拡散も大きく前記の加熱冷却手段で該表面および賦形体を昇降温させることが次第に困難になり、b値が25を超える場合は実用的な条件、あるいは実用的に効率で十分な昇温降温ができなくなる。このような観点からb値は25以下で、望ましくは20以下、更に望ましくは15以下であることが必要である。
なお、前記の成形サイクルの温度パターンとの関係では、パターンAは、b値の2から25の全範囲において好適に実行することができる。一方パターンB及びCは、表面温度の最高温度あるいは最低温度への回復が、専ら該深層からの伝熱に依存することになるのでb値の高い成形型に適し、b値は5以上であることが望ましい。
温度パターンの制御
上記の各手段を組み合わせることにより、成形に必要とする該表面温度の温度サイクル(後述の温度パターン)を遂行することができる。そして、各手段の適用条件の組み合わせを最適にして最適最高速の成形サイクルを実現できる。
熱成形サイクルの該表面(賦形体との界面)の温度変化を制御する第一手段は成形型に付加した温度調節機構により深層(P点)温度を特定の温度に制御することである。P点温度は先ず付加した前述の温度調節機構によってこれを行うが、該表面温度が所定の最高温度及び最低温度を経由するように深層温度を選択する。しかしこの定常温度Sは該温度調節機構のみによって決らず、前記の加熱冷却の強弱条件等と併せて決まってくる。また、P点温度は、その位置、型材料あるいは成形パターン等により表面温度よりかなり大きな差が生まれることを考慮して設定する必要がある。そして、型材料b値が大きい程加熱冷却が困難になり、特に加熱に負担がかかるので、P点のS温度を高く設定することが必要になり、また強力な加熱手段(高温化、高風速化などにより)の適用は温度バラツキを大きくするので、これを軽減するためにも、S温度のある程度の高温化は有効となる。そのためにP点のS温度は成形材料のTg以上でかつ(Tg+250℃)以下の範囲で選ぶことが必要である。そして(Tg+30℃)以上であることが好ましく、(Tg+50℃)以上であることが更に好ましく、また(Tg+200℃)であることが好ましく、(Tg+150℃)であることが更に好ましい。これがTg以下である場合は、通常利用できる該手段あるいは条件では、該最高温度を適正な熱処理が可能な温度に、障害もなく効率的に到達させることはできない。またb値が比較的に低い材料のときは、あるいはP点が成形型表面より遠い程、S温度をより高温にする必要があるがこれが(Tg+250℃)を超える場合は、該最高温度が適正熱処理温度を超え、成形品に白化や溶融等の障害を発生する。
加熱手段の要素群の制御で、加熱気体についてはその温度、適用時間、流速、圧力、風量等、又赤外線照射についてはその強さ、適用時間、照射距離等の例を挙げることができる。なお、前者については湿度等も挙げることができ、特別な方法としては加湿、過熱蒸気利用等も挙げることができる。表面温度のサイクルを観察し最高温度が低ければ加熱条件を強めた設定にすれば良い。
冷却手段の要素群の制御で、具体的には冷却用気体の温度、適用時間、流速、風量、圧力等を挙げることができる。またこれに加えて加湿、水滴塗布併用なども挙げることができる。表面温度のサイクルを観察し最低温度が高ければ冷却条件を強めた設定にすれば良い。
以上三つのグループの手段(要素)の条件の組み合わせを選ぶことにより、最適あるいは最速の成形サイクルを実行することができる。また、P点温度(深層温度)に注目して最適あるいは最速とる成形サイクルの設定条件を容易に発見することができる。端的に説明するならば、温調機構でP点温度を高くすれば、加熱気体による温度、接触時間等の加熱条件は控えめにし、あるいはまた冷却条件は強く設定してP点温度を定常化する。またP点温度設定を低くするときは、逆に加熱条件を強めあるいは冷却条件を控えめにして定常化する。なお、加熱冷却の強さのバランスが適当でない場合も、成形サイクルの繰り返しと共に深層温度自動的に調整されて定常温度Sになる。
成形サイクル中の頂点温度のみが適切でなく、例えば少し高すぎる場合に加熱条件を少し弱めると後続のサイクルで底点も下がり、底点が下がる後続サイクルで頂点も下がってくる。両温度はいずれ平衡になるがこうした特性に留意して加熱冷却の両者を調整することになる。底点温度のみが低い場合も同様である。 深層温度の上下移動は頂点温度も底点温度も概ね並行して移動させるが、加熱冷却何れかの能力不足する方向シフトさせればよい。そして成形サイクル中の頂点温度と底点温度が共に所定の一定になるようにして、 深層温度とのバランスの中で、加熱条件と冷却条件のできうるかぎり両者を最強度に設定し、頂点底点の振幅を許容の限り小さくすることによって高速の繰り返し連続成形を実現することができる。
そして、このようにして発見された定常温度Sになるように予め成形型を調整して生産を開始すれば最短で定常状態となり、場合によっては最初から定常状態で操業ができる。このようにして発見された各要素の条件を手動設定し、固定的なパターンとして操業運転してもよく、各要素の状態変動を手動で他に要素条件設定へ手動で反映させてもよい。
そして、何れかの要素変動あるいは環境温度等の変化を自動的にフィードバックさせ、上記の要素群を自動的に調整してもよい。 こうした中で特に、連続成形中に該最高温度及び又は最低温度を監視し、これが適正になるように手動で上記要素群の何れかの条件を修正する生産方法は好ましく、またこれを自動でフィードバックして行う生産方式は特に好ましい。
なお、上記の頂点温度あるいは底点温度を一定化について言及すると、先ず隣接するサイクルに対しては実質的にほぼ等しくすることは容易であり同じ条件を繰り返せばよく、それよりも長い時間、例えば数分以上で変動して期待の頂点温度あるいは底点温度を外れないようにすることである。所定の頂点温度の許容幅あるいは底点温度許容幅は、製品設計次第でかなり大きく考えることができる。しかし本発明では頂点底点間の振幅を小さくいることにより高速化するもので各点の許容幅は当然小さくすることになり、その結果時間経過による逸脱あるいは大きなうねり変動のような場合でも許容幅は小さくなり、30℃以下とすることが望ましく、20℃以下とするこが更に望ましく、10℃以下とすることがまた更に望ましい。なお、熱処理あるいは離形に必要とする所定の表面温度は、製品設計と成形型材料、加熱冷却の条件等により(賦形体内の温度傾斜が変わり)、上記許容幅を超えて大きく変わるのでここで一概に述べることは適当ではない。
<各種の変形態様>
(1)本発明の変形態様の一つとして、成形型に用いる材料は単一のものではなく、b値の違った材料と複合した構造にしても良く、例えば1)表面層の下部にb値のより大きな部材の層を設け型温度の定常化を促進する方法も好ましく、また2)同様な材料を付加加熱冷却機構から該表面まで遠い部分の下層に設けて該表面温度のバラツキを小さくしたり解消を促進することも好ましく、また逆に3)表面層の下部にb値のより小さな部材の層を設け、表面に近い層からの熱伝導を遮断し定常化を促進する方法も好ましく利用できる。あるいはまた4)熱伝導率のよい材料で表面を覆う極薄の層をつくり、表面温度の均一化を行う方法は好ましく利用でき、これは例えば金属メッキなどにより実現できる(多層構造)。
(2)本発明の変形態様の一つとして、成形型に用いる材料の全部あるいは一部を多孔体または通気孔を無数に穿った材料とし、この多孔体に気体を通ずることにより成形型温ないしは該表面温度の調整を支援促進する方法となり好ましく利用できる。なお、通気の方法は、真空引きでも、吹き込みでも行うことができ、前者には例えば、賦形体の離型除去後も再度吸引を行うようにすれば表面温度の冷却を促進し好ましい。吹き込みの気体は加熱されたものでも、冷却用でも任意に利用できる。通気のタイミングは、常時行ってもよく、また賦形体の存在期あるいは不在期にのみ行うこと成形型の構造次第で行うことができ何れの方法も好ましく利用できる(多孔体と通気)。
(3)本発明の変形態様の一つとして、加熱気体として過熱水蒸気を利用することができる。過熱水蒸気は熱容量が大きく能率的に加熱でき好ましく、乾燥過熱蒸気と飽和過熱蒸気何れも利用できる。なお、飽和ないし飽和に近いものは、本発明の方法において加熱と冷却の両方に利用することができ、具体的には圧力の高い状態で圧空賦形を行えば加熱圧空となり、途中減圧すれば水滴が発生して加熱がなされ、更に圧力を開放すれば気化潜熱冷却がなされる。このとき対象面の冷却を100℃を限度として乾燥状態で成形品を得ることも可能であり、好ましく利用できる(過熱蒸気)。
(4)赤外線の照射源の形状は、特に限定するものではなく、平面体にして賦形体の上空に配置してもよい。本発明の変形態様の一つとして、赤外線加熱デバイスを成形型の成形面に略相似した形にし、成形型がキヤビティ型の場合はそれを内部に挿入するように、また成形型がコア型の場合はこれに覆うように接近させて照射することにより能率的にまた均一に加熱する方法となり好ましく利用できる(赤外線)。
(5)本発明の変形態様の一つとして、気体噴射または排気ノズルの先端形状を成形型の成形面に概略相似した形の板状またはブロック状をとし、成形型がキャビティ型ならばそれを挿入するように、また成形型がコア型ならばそれを覆うように接近させて狭い間隙をつくり、気体ブロウまたは吸引を行えば成形面で高速の気体流が発生させることができ能率的なまた均一な加熱または冷却の方法として好ましく利用できる。
なお加熱あるいは冷却を均一に行うためには、この板またブロック状デバイスに設ける気体噴射口はまたは吸引口は一つでもよいが複数であることが好ましくまた無数に多いことが好ましい。また噴射口または吸引口を多くするために多孔体を用いることが好ましい。このデバイスは一つで噴射にも吸引排気にも働かせることができるが、一つのデバイスの中で、噴射通路と吸引通路を持つようにしたものも好適に用いることができる。なお、このようなガイドブロックは、賦形後に賦形体裏面に近づけてもよいが、賦形の補助に用いるプラグアシストと兼ねてもよい(ガイドブロック)。
(6)冷却用気体の適用関しては、できるだけ低温の気体を用い、できるだけ高速の気体流を賦形体裏面に接するようにすることが好ましい。このような気体の吹きつけは略閉鎖された空間で行ってもよいが、開放空間で周囲の空気を引き込みながら吹き付ける方法も効率的で好ましい。本発明の変形態様の一つとして、 ベンチュリー管の原理を利用したデバイスを利用し、外気などを吸い込みながらブロウすれば、冷却用の圧縮空気の消費も少なくなり効率的で好ましい。またこのとき加湿などが容易に行える(ベンチュリー管)。
(7)嵌合ダイあるいは雌雄型を用いて賦形し、賦形体を本発明の構造を有する雌雄いずれか片方の型(以下、下型という)に残して他(以下、上型という)を開けば、本文記載のとおり賦形体裏面に対して自由に加熱冷却を行うことができる。本発明の変形態様の一つとしてし、下型は本発明通りの構成とし、上型は気体ブロウのできる構造にし、両型を合わせるようにプレス賦形の後、上型を少し持ち上げて加熱気体あるいは冷却気体をブロウすることにより記述の自由な成形パターンを実行することができる(雌雄型)。
(8)圧空成形を行う場合は完全密閉空間としても良いが、圧空ボックスから気体を適度に漏洩するようにすれば、気体流が生まれ熱伝達率を大きくすることができ賦形体および該表面温度をよりより効率的に昇降させることができ好ましい。具体的には圧空ボックスにリークのためのスリットを設けたり、レギュレータ、フローバルブ、チェックバルブ、ニードルバルブ、開閉バルブ等を設けることにより実施でき任意に好ましく利用できる。 例えば、低温あるいは高温の圧空に引き続き、バルブを操作して低圧あるいは無圧で高温気体あるいは低温気体を吹き付ける方法も実施できる。このときも高速の気流である方が効率的であるが、加熱気体の場合は周囲の空気を巻き込むことが無いようにある程度閉鎖された空間でおこなうことが好ましい(圧空の漏洩)。
(10)通常の熱成形では、多くの場合材料シートを専用オーブンを通過させて予熱することが行われるが、本発明ではこれを行わず、材料シートを成形型のある位置に置いて、熱処理のための高温気体接触は赤外線照射を行いながら殆ど同時に賦形と熱処理を行うことができ、賦形性がよく特に好ましい方法となる。この方法も、仔細に観察すれば、シートの予熱がある程度先行して行われ、次いで賦形が同時進行し、次いでシート予熱温度以上の熱処理が行われるもので発明の範囲を超えるものではない。これを例えば280℃の高圧空成形でおこなうこともできるが、ゆっくり且つ適正な速度で加圧する必要があり、急激に高温圧空を行えば材料は予熱不足のために破断してしまう。また加圧をゆっくりしすぎたものは、伸びが失われまた成形不良となりまた白化などが発現してしまい、あるいは溶融してしまう。なお、本発明に用いる材料は時間をかけて加熱したり、熱処理可能な温度に予熱すると伸びが失われ成形不良となりまた白化などが発現してしまうので、成形材料は賦形中もある程度昇温してよいが厳密には賦形後に熱処理がなされなければならない。(予熱即賦形)
その他付記事項
上記のプロセスで得られた、本発明の成形品は、同材料シートの熱成形に比べ耐熱性が向上したものとなっており、少なくとも10℃以上向上させることは容易であり、ホモのPET材料の場合であれば耐熱80℃以上にすることは容易であり、90℃以上、あるいは100℃以上、あるいは120℃以上、あるいは140℃以上とすることもでき、併せて透明性の高いものにすることができる。なお、ここでは耐熱性は、成形品を特定温度に加熱されたサラダオイル中に2分間浸漬して取り出し、肉眼判断で一見してわかる収縮変形の有無で耐熱性の判断とする。
なお、本願に記載した表面温度については部位によるバラツキが想定されるが、成形型表面のうち成形品の有効部分が接する少なくとも1点の温度が記載の規定の範囲を満足させておればよい。また、複数の成形型を集積して成形を行う場合は必ずしも全ての成形型について管理あるいは制御する必要はなく少なくとも1つの成形型でこれを行えばよい。
(実施例1)
成形材料
共重合成分としてジエチレングリコール2モル%を含有し、エチレンテレフタレート単位が構成繰り返し単位の98モル%を占めるポリエチレンテレフタレート樹脂を、ベント付き押出機にて樹脂温度290℃で溶融押出し、キャスティングロールで引き取り冷却固化しシート成形した。得られた実質的に未延伸のシートを縦方向に2.5倍に1軸延伸し、厚さ0.23mmの延伸シートを得た。なお、このシートは延伸に際するヒートセット処理はおこなっていない。
このシートにおける樹脂の極限粘度は0.69dl/g、ガラス転移転(Tg)は75℃、融点(Tm)は253℃、複屈折率(Δn)は0.049、面配向度(ΔP)は0.037であった。
成形型
円周に嵌合溝つきの大略半円球のカップ(内形100mmφ、深さ35mm)のキャビテイ型(外寸110×110×高さ53mm)で、成形時の真空孔(排気孔)を備えたもので、図1に示す形状のものを製作して使用した(表2)。成形型の材料としては炭素鋼S45Cを用い切削加工にて製作した。これを、電熱カートリッジヒーターを埋設した温調プレート上に設置し、収納ボックスに収容して成形装置に装着した。なおS45Cのb値は表1の炭素鋼(0.5C以下)の14.0に相当する。
成形装置
枚葉の真空圧空成形機(浅野研究所製)に高温の加熱空気を製造する装置を特別に付加してこの加熱装置を経由して成型機の圧空用空気を圧空ボックスに導き、圧空ボックス天井に設けた加熱多孔板を通じて内部に吹き出すようにした。またこれとは別に外部から元圧0.7MPaの圧縮空気を同ボックス内部に導き分散ノズルを通じて排出し、賦形体を裏面からブロウ冷却する機構を付加した。なお、圧空ボックスには0.15MPaの排気弁を設置してあり一定圧で排気がなされる。この冷却ブロウの機構は加熱気体導入のものとは全く別のものであり、圧空ボックスの閉鎖時も開放時も任意な時ブロウ冷却できるようにした。
なお、上記の加熱多孔板はスチール製で電熱カートリッジヒーター内蔵のもので、多孔の開口面を下に向け加熱空気が賦形体裏面に向けて吹き出すようにした。
上記多孔板は導入気体の再加熱と同時に赤外線照射の働きもするもので同板の赤外線放射率は約0.75で成形型上面までの距離は約100mmであった。
<第1段階試験>
成形試験
上記成形材料をオーブンで8秒保留しシートを85℃に予熱し、深層P点温度(すなわち成形型温度)134℃、該表面温度134/128℃(底面/側面;以下同様に表現する)に予め調整した成形型の上に移動させ、加熱気体を用いて5秒間真空圧空賦形を行い、5秒間冷却ブロウを行って離型した。圧空は、約30℃で元圧0.4MPaの圧縮空気を400℃の空気加熱装置を通じて圧空ボックスに導き、400℃の天井板を通じて噴出させ、排気を伴う圧空賦形を行った。また間冷却ブロウは、圧空ボックスをゆっくりと上昇させながら圧空ボックス内に設けた拡散ノズルから圧縮空気を賦形体裏面にブロウしながら行った。該表面の底面側面の平均温度は、真空圧空賦形時に162/168℃の最高点に達し、離型時には128/130℃に低下していた。圧空時のボックス内は中央部で313℃となり、圧力は約0.2MPaであった。なお、上記の高温多孔板から相当量赤外線照射がなされている。
成形結果
成形品は透明で良好な形状をしており、加熱オイルに浸漬するテストの結果からは、少なくとも110℃で変形が無く耐熱性の高いものであった。ちなみに延伸を行っていない同樹脂のシートはこのような成形方法では成形品は得られないが、通常の熱成形法により得た成形品の耐熱性は約65℃であった。
本方法では、材料シートの賦形と加熱と冷却が殆ど同時になされ、10秒間という非常な短時間で効果的な熱処理を伴う成形が可能であることを確認した。
<第2段階試験>
連続成形性の確認
更に連続成形を近似的に模して、上記成形品を成形型に真空固定したまま圧空ボックスを少し開いて無圧になるようにし、上記の加熱空気を用いた5秒間の加熱ブロウと5秒間の冷却ブロウの繰り返しテストを行ったところ、表面最高点温度(頂上温度)が急激に上昇したので、加熱条件等を弱めるなど調整を行った。その結果、空気加熱装置及び天井板の温度設定を350℃とし、[3秒加熱ブロウ、5秒冷却ブロウ、2秒待ち]の繰り返しサイクルで、約9分でほぼ定常状態の温度軌跡を描くことができた。なおこの条件では、気体加熱装置及び該天井板の温度を350℃とし、加熱ブロウ温度を280℃にして行った。このときの加熱ブロウは280℃で、深層P点温度は133℃から142℃に上昇して定常となり、この状態で表面最高温度(T点)は163/174℃、最低温度(B点)は136/133℃となり比較的に部位による差はすくなくなお、上記のくりかこのような条件修正は手動で行ってもよく、自動的に修正してもよ。安定していた。なお、この温度は有効な熱処理に十分な温度であり、また良好な離型に十分低い温度である。 なお、上記の1サイクルは、実際の連続成形における材料交換を上記待ち時間の2秒の中で行うことができるので10秒となる。
なお、このサイクルテストの中で、加熱ブロウあるいは冷却ブロウの温度、時間、流速、風量、冷却ブロウ中の加湿噴霧、加熱冷却ブロウのインターバル時間のいずれ要素を手動で変更しても容易に温度軌跡の頂上温度、最下点温度がサイクル経過にて容易に変わることを確認した。 実際の生産において、このような要素の調整による温度サイクルの修正は手動で行ってもよく、自動的な修正も可能なことがわかった。
<第3段階試験>
成形型の深層P点温度を142℃とし、該表面温度を142/137℃に調整しなおして第2段階と同様の試験を行った。設備上の問題もあって試験開始時は温度チャートには混乱があったが、1〜2分で安定し第2段階試験とほぼ同じ温度サイクルを示す状態となった。
以上の確認テストは疑似的なモデルのテストであるが、適切な設備を準備すれば、高速の連続生産が可能であることを示すものである。 また繰り返しテストでは比較的短時間に定常化したようになっているが、非常な長時間では、温度サイクルは微妙にずれてくる可能性があるが、この修正手動で行ってもよく、また自動的に修正してもよい。(パターンA)
(実施例2)
成形材料
実施例1に用いたものと同じものを用いた。
成形型
実施例1に使用したものを用い、同様に温調するようにした。
成形装置
実施例1に使用したものを使用した。
<第1段階試験>
毎葉の成形
上記成形材料をオーブンで8秒予熱して85℃とし、深層P点温度(すなわち成形型温度)132℃該表面温度131℃/128℃(底面/側面;以下同様に表現する)に調整した成形型の上に移動させ、400℃の加熱装置をへて400℃の天井板を通じた加熱空気で4秒間真空圧空賦形を行い、次いで圧空を開放して6秒間待ち成形型の真空吸引を開放して離型した。なお圧空中は、ボックス内で312℃に達し、空気を外部へ噴出させながら、約0.2MPaの圧力になっていた。 なお、表面温度の最高温度は163/174℃に達し、離型時に138/138℃に低下していた。 なお、上記の高温多孔板から相当量赤外線照射がなされている。
成形結果
成形品は透明で良好な形状をしており、耐熱テストの結果では、少なくとも110℃の耐熱性があった。
<第2段階試験>
連続成形性の確認
実施例1と同様に、上記結果をもとに連続成形を近似的に模した繰り返し加熱冷却テストを行った。第1段階と同じ温度に成形型を調整し、成形品を成形型に吸引固定して、[4秒加熱圧空、6秒開放冷却待ち]のサイクルでテストしたが、たちまち最高温度が220℃を超えて上昇してしまった。条件修正を行った。
そこで、成形型をの深層P点温度107℃とし該表面温度107℃/102℃にして、気体加熱装置および天井板の温度設定を350℃に引き下げるなどの条件修正を行った。
同じ[4秒加熱圧空、6秒冷却待ち]で再度繰り返し試験を行ったところ約9分でほぼ定常状態となった。このときの加熱ブロウは295℃で、深層P点温度は117から135℃に上昇して定常化した。またこの状態で表面最高温度は162/175℃、最低温度は141/146℃で熱処理および離型ともに十分な温度となっている。このサイクル設定では、材料の排出交換の時間がないので、実際の連続成形においてはその時間α秒を加え、1サイクル10+α秒で成形できそうなことがわかった。 なお、このテスト結果からは、深層P点温度を135℃に調整して繰り返しテストを開始すれば、はるかに早期に定常状態に至るものと推察される。 (パターンB)
(実施例3)
成形材料
実施例1に用いたものと同じものを用いた。
成形型
実施例1に使用したものを用い、同様に温調するようにした。
成形装置
実施例1に用いた成型機と装置構成とした。
<第1段階試験>
毎葉の成形
上記成形材料をオーブンで8秒保留しシートを85℃に予熱し、深層P点温度(すなわち成形型温度)200℃、該表面温度196/190℃(底面/側面;以下同様に表現する)に予め調整した成形型の上に移動させ、約30℃の通常の圧縮空気を用いて5秒間真空圧空賦形を行いただちに離型した。このとき圧空ボックスに取り付けた0.15MPaリリーフ弁から空気排出をしながら約0.2MPaこのとき圧空賦形が行われ、またこのとき圧空ボックスの中は42℃となっていた。離型直前の表面温度は182℃/166℃に降下していた。なお、離型後の表面温度はおよそ10秒程度で殆ど回復し、その後もゆっくりと回復が続いた。
成形結果
成形品は透明で良好な形状をしており、実施例1と同様の耐熱テストの結果からは、少なくとも110℃の耐熱性があった。上記の方法では、材料シートの熱処理を伴う成形を5秒という短時間で終えているが、次のテストを同じ条件で行うためには、10秒以上のかなり長時間の表面温度回復時間が必要であることがわかった。
<第2段階試験>
連続成形性の確認
上記結果を参考に、実施例1と同様に連続成形を近似的に模した繰り返し加熱冷却テストを行った。
成形型の深層P点温度204℃とし該表面温度を204/199℃に調整し、成形品を成形型に吸引固定して、[5秒常温ブロウ、5秒表面温度回復待ち]で繰り返し試験(サイクルテスト)を行ったところ約12分でほぼ定常状態となった。このとき、深層P点温度は204から176℃に低下して定常化した。またこの状態で表面最高温度は182/169℃、最低温度は163/143℃で、有効な熱処理、また良好な離型が可能な温度である。 なお、このテスト結果からは、深層P点温度を176℃に調整して繰り返しテストを開始すれば、はるかに早く定常状態に至るものと推察される。 (パターンCの究極型)
(実施例4)
成形材料
実施例1に用いたものと同じものを用いた。
成形型
実施例1と同じ寸法形状のものを、材質をアルミニウム(A5052)に変更して、同様に製作した。 なお、この材質のb値は17.4である。また実施例1と同様に温調するようにした。
成形装置
実施例1に用いた成型機と装置構成とした。
<第1段階試験>
成形試験
上記成形材料シートをオーブン中に8秒保留して85℃に予熱し、深層P点温度(すなわち成形型温度)170℃、該表面温度164/163℃(底面/側面;以下同様に表現する)に予め調整した成形型の上に移動させ、加熱気体を用いて4秒間真空圧空賦形を行い、9秒間冷却ブロウを行って離型した。なお、加熱空気は、元圧0.4MPaの圧縮空気を350℃の加熱装置と350℃の天井分散板を通ずることにより供給した。そして圧空賦形は、0.15MPaリリーフ弁から加熱空気を逃がしながら約0.2MPaの圧力で行われ、ボックス内温度は285℃に達していた。また冷却ブロウは、圧空ボックスをゆっくりと上昇させながら圧空ボックス内に設けた拡散ノズルから圧縮空気を賦形体裏面にブロウしながら行った。該表面温度は、真空圧空賦形時に171℃/157に達し、離型時には165℃/165に低下していた。 なお、上記の高温多孔板から相当量赤外線照射がなされている。
成形結果
成形品は透明で良好な形状をしており、加熱オイルに浸漬するテスト行った結果からは、110℃で変形が無く少なくとも110℃以上の耐熱性を有するものであった。ちなみに延伸を行っていない同樹脂のシートはこのような成形方法では成形品は得られないが、通常の熱成形法により得た成形品の耐熱性は約65℃であった。
本方法では、材料シートの賦形と加熱と冷却合わせ13秒間という驚異的な短時間に効果的な熱処理を伴う成形が可能であることを確認した。
<第2段階試験>
連続成形性の確認
更に連続成形を近似的に模して、上記成形品を成形型に真空固定したまま圧空ボックスを少し開いて無圧になるようにし、上記同様に温度調整した、成形型と加熱空気を用い、4秒間の加熱ブロウと9秒間の冷却ブロウと2秒間の待ち時間の繰り返しテストを行ったところほぼ1分以内に定常化した。のときの加熱ブロウは260℃で、深層P点温度は169℃から166℃に低下して定常となり、この状態で表面最高温度は190/179℃、最低温度は150/160℃であった。なお、この温度は有効な熱処理に十分な温度であり、また良好な離型に十分低い温度である。 なお、上記の1サイクルは、実際の連続成形における材料交換を上記待ち時間の2秒の中で行うことができるので15秒となる
<第3段階試験>
第1段階の試験方法の中で、冷却ブロウのとき、水の噴霧をしながらブロウしたところ最低温度がおよそ20℃大きく低下した。 また同様にエタノールを噴霧しながらブロウしたところ約15℃大きく低下した。揮発物質の噴霧添加が、気体ブロウの冷却効果を強めまた冷却時間短縮にも有効であることを確認した。(パターンA)
(実施例5)
成形材料
実施例1に用いたものと同じものを用いた。
成形型
実施例4に用いたものを使用した。
成形装置
実施例1に用いた成型機と装置構成とした。
毎葉の成形
上記成形材料をオーブンで8秒予熱して85℃とし、深層P点温度(すなわち成形型温度)188℃で該表面温度を186℃/186℃(底面/側面;以下同様に表現する)に調整した成形型の上に移動させ、常温の空気で6秒間真空圧空賦形を行い、次いで圧空ボックスを開放して6秒間、水を噴霧しながら冷却ブロウを行って離型した。
なお圧空中はボックス内は32℃に達し、外部への空気噴出を止めて、約0.4MPaで圧空賦形を行った。 なお、圧空を始めると表面温度は瞬間的に下がりって183/181℃に回復し(これが最高温度となる)、離型時に146/157℃に低下していた。
成形結果
成形品は透明で良好な形状をしており、耐熱テストの結果では、少なくとも120℃の耐熱性があった。水の噴霧は冷却ブロウを有効に助けるものであった。(パターンC)
(実施例6)
成形材料
実施例1に用いたものと同じものを用いた。
成形型
実施例1と同形状、同寸法のものをb値の比較的低い材料である不錆鋼SUS304材の切削加工により製作し使用した。 なお、この材料のb値は8.0である。 型内には巡るようにマニホールドを設け、温調された熱媒を通ずるようにした。
成形装置
実施例1に用いた成型機と装置構成とした。
毎葉の成形
上記成形材料シートをオーブン中に8秒予熱して85℃にし、深層P点温度190℃で該表面温度を187℃/190℃に調整されている成形型の上に移動させ、5秒間真空圧空賦形を行い、次いで圧空ボックスを開放しながら5秒間常温空気をブロウして離型した。圧空は元圧0.7MPaの通常温度の圧縮空気を圧空ボックスに導き、排気弁から空気を噴出させながら行われた。圧空賦形中のボックス内は48℃で、圧力は約0.2MPとなり、表面温度は賦形時に178/171℃(最高温度に相当)となり、また離型時には164/168℃に降下していた。
成形結果
成形品は透明で良好な形状をしており、加熱オイルに浸漬するテスト行った結果からは、少なくとも110℃では変形が無く耐熱性の高いものであった。本方法では、材料シートの賦形、加熱、冷却を合わせて10秒という驚異的な短時で効果的な熱処理を伴う成形ができている。
連続成形性の確認
上記は毎葉の成形であり、連続成形では表面温度の回復高速で行う必要があり条件の再設定が必要と思われる。再設定の方法は他の実施例と同様に行うことができる(パターンC)。
Figure 0005688922
(比較例1)
先行技術である特公平5−45412号公報の提案する方法を検証するために下記内容のテストを行った。
成形型をアルミニウム(A5052)の単体構造とし、実施例1と同形状同寸法のカップ成形用キャビティ型を製作し、実施例1に使用し温調プレート上に乗せて固定しキャビティ型を温度制御できるようにした。成形材料は実施例1に用いたものと同じものを用いた。成形装置は、実施例1に使用にしたものを使用したが、圧空ボックスには必要により加熱気体を導入できるようにした他は、排気弁などは設けず、またホックス閉鎖時に空気漏れ防止のシールを設けたもので、公知の方法どおり圧空成形するようにしたものである。
次の各方法について調べてみた。
1)材料シートを8秒間オーブン中で85℃に予熱し、表面温度を所定の比較的に高い温度に調整したキャビテイ上に移動させ、およそ30℃の圧縮空気を用い0.4Mpaの圧力で1分間圧空賦形を行いそのまま離型した。表面温度を190℃、220℃に調整した場合はいずれも離型に際して収縮変形してしまった。また240℃に調整した場合は白化すると共に破れてしまった。この結果から、少なくも用いた材料では良品が得られないことがわかった。
2)次いで、キャビテイ表面温度を所定の比較的低い温度に調整しておいて、上記同様の条件で圧空賦形を行い、次いで圧空ボックスを開放しながら220℃の熱風を1分間吹き付けた後に離型する試みを行った。30℃及び60℃調整したものは、いずれも良好な成形品となっていたが、耐熱性の向上は全くなかった。そこで、熱風温度を熱処理限度としている240℃、及び250℃、さらには限度をはるかに超える300℃の熱風を用い同様のテストを行ったが、やはり耐熱性の向上がなく熱処理がなされないことがわかった。
3)上記公報には記載も示唆もない条件であるが、表面温度をある程度高温にして2)と同じ条件で賦形し、同様に220℃の熱風を1分間吹き付けた後に離型する試みを行った。
表面温度を80℃、100℃、120℃と高くした場合には離型に際して激しく収縮変形してしまった。 また、表面温度を熱処理有効である140、160、180℃とした場合は、離型に際してある程度の成形形状は保持したものであったが、変形やシワなどの発生があり良品にはならなかった
以上3件の検証テストの結果からは、本公報の提案する熱処理の方法は、少なくとも本テストに使用した延伸ポリエステル材料に適用できる方法ではない。熱処理された良好な良品を得るには本発明の如く賦形体を加熱冷却して離型するプロセスが有効であることがわかった。
(比較例2)
先行技術である特公昭59−051407号公報の方法及び敷衍して考えられる方法を検証するために下記内容のテストを行った。
熱成形の成形型として最も汎用されるアルミニウム材(A5052)の単体構造とし、実施例1と同形状同寸法のカップ成形用キャビティ型を製作し、実施例1に使用し温調プレート上に乗せて固定しキャビティ型を温度制御できるようにした。
成形材料は実施例1に用いたものと同じものを用いた。
成形装置は、実施例1に使用にしたものを使用したが、シートの直接加熱方式の定法通りに、成形機プレスの天板下に熱盤を固定し、熱盤からの空気により圧空賦形すると方式とした。従って上部の圧空ボックスはなく、また公知の定法に従い、キャビティ型を収納した下部ボックスの周縁にはシール材を取り付け、熱盤で封鎖して圧空を行う時に空気漏れがないようにして成形試験を行った。
材料シートを所定の各温度に調整してある熱盤と下部ボックスの間に挟み、この熱盤に真空圧接して予熱し、次いでこの熱盤を通じて加圧空気を送り表面温度を65℃に調整にしてあるキャビテイにて圧空賦形を行い離型した。
この時の熱盤温度は100℃、150℃、180℃,220℃とし、真空圧接時間はいずれも10秒間とした。なお、キャビティ表面温度の65℃は、材料PETのTg以下の温度であり、離型時の収縮を回避できるように材料を十分冷却できる温度である。圧空賦形は、通常の圧縮空気を用い0.4MPaの圧力で2秒間行い、ほぼ参考公報に示されている条件どおり成形を行った。
テストの結果、
a)熱盤温度100℃のものは、良好な形状の成形品となったが、75℃の温水浸漬で激しく収縮し耐熱性の向上は全くなかった。圧空に際して表面温度(底面と側面の平均で示す・・・以下同様)は瞬間的に71℃に達したが圧空開放時(離型時)は約66℃になっていた。この表面昇温は熱処理には不十分である。
b)熱盤温度150℃と更に高くしたものは、大きなネックインが入ってしまった。また追加試験の延伸倍率2.0倍材料による成形品も同様に激しく白化してしまった。 圧空賦形に際して表面温度は瞬間的に93℃に達したが圧空開放時(離型時)には約69℃になっていた。この表面昇温は熱処理に不十分である。
c)熱盤温度180℃と更に高くしたものも、上記同様に大きなネックインが入ってしまった。そこで追加試験として、熱盤温度はこのままにして熱盤への接触予熱時間を、3秒、1秒、0.5秒と順次短くしてみたが結果は同様であった。
更に追加試験として、同樹脂で延伸倍率のみ低くした材料(延伸2.0倍)※にて同様に10秒間圧接予熱し2秒間圧空をしたところ、成形品は激しく白化し、また厚みムラのあるものとなってしまった。 圧空に際して表面温度は瞬間的に93℃に達したが圧空開放時(離型時)は約69℃になっていた。この表面昇温は熱処理には不十分である。なお表面温度の変化は、昇温は主として予熱シートのも熱によるもので、この熱はただちに成形型に拡散し、圧空空気の運ぶ熱量は大きくなかったことを意味する。
<※註、実施例1の材料シートに用いたものと同じ樹脂で、同様に溶融押出してシート成形し、同様に1軸延伸したもので、延伸倍率は2.0倍、厚み0.23mmのもので延伸に際するヒートセット処理の行っていないものである。なおこのシートの複屈折率(Δn)は0.013、面配向度(ΔP)は0.011であった。>
d)熱盤温度220℃のものは、成形品にネックイン状の大きな亀裂が入ってしまい製品となるようなものではなかった。 因みに、表面温度は90℃に達したが直ちに低下し圧空開放時(離型時)は約70℃となっていた。この表面温度の昇温は熱処理には不十分である。
この結果からは、引用公報記載の方法は少なくともテストに用いた成形材料の熱処理成形には適切な方法ではないことは明かである。また、熱盤により材料シートを予熱し、そのままの位置で熱盤を通ずる空気により圧空成形を行う方法は公知の方法であり、この方法では空気は熱盤を通るとき期せずして加熱されて加熱空気による圧空が行われることになる。しかしながら、(1)表面温度の一時的昇温は予熱された材料によるもので、加熱気体による表面温度昇温の効果は殆どなく、また(2)圧空温度を高くすべく熱盤温度を高くすると適切な成形がなされなくなる。従って、こうした公知の方法では、本願の期待する熱処理を伴う成形は実現できず、またこれを敷衍して考えてもその実現は容易ではない。
(比較例3)
比較例2の公熱盤予熱圧空成形法を敷衍して下記の種々の方法を試みた。成形型の材料として硬質発泡ウレタンフォーム材(サンモジュール33 三洋化成製 熱浸透率b値0.7)を用い、比較例2のものと同形同寸法の成形型を製作し同様に温調プレート上に設置し、比較例2に用いた成形装置をそのまま用いた。なおこの材料は機械加工が容易なことからテスト用あるいは小数成形の熱成形型に用いられているが、この熱浸透率b値が0.7と小さく熱が蓄積しやく高速の連続成形には向かないとされている。
1)比較例2に準じた成形試験
a)熱盤温度100℃の試験結果は、比較例2と同様に、良好な形状の成形品となったが、同様に75℃の温水浸漬で激しく収縮し耐熱性の向上は全くなかった。なお、10秒間の圧空中に表面温度(底面と側面の平均で表示、以下同様)は78℃の最高温度に達し71℃に低下したとき圧空開放され、その40秒後に離型されたときは底面と側面の両部位とも70℃以下になっていた。
b)熱盤温度150℃の試験結果は、比較例2と同様にネックイン状のキレツが発生したので、同様に成形材料を2.0倍延伸のものに変更して成形した。このものも同様に成形品の形状は保っているものの白化し製品としては不適であった。この後者の10秒間の圧空中に表面温度は92℃に達し80℃に低下したとき圧空は開放され、その40秒後の離型時には底面と側面の両部位とも70℃以下になっていた。
c)熱盤温度180℃の試験結果は、比較例2と同様にネックインキレツが発生したので、上記同様に成形材料を2.0倍延伸のものに変更して成形した。この後者の10秒間の圧空中に表面温度は106℃に達102℃に低下したとき圧空は開放され、その40秒後の離型時には全ての部位が75℃以下になっていた。成形品は収縮変形し、また激しく白化したものであった。
d)熱盤温度220℃試験結果は、比較例2と同様にネックインキレツが発生したので、上記同様に成形材料を2.0倍延伸のものに変更して成形した。しかしこのもは激しく白化しまた多数の孔があき成形状態にならなかった。
この結果からは、本公報記載の方法は少なくともテストに用いた成形材料には適切な方法ではない。 なお、本成形型の表面温度調整は、比較例1と同様に温調プレートで行おうとしたが、温度バラツキが大きく、また安定になりにくく、GF断熱マットで覆って加熱するなどして、高温部位がおよそ65℃程度の時を見計らって成形をおこなった。
2)この成形型の温度特性について調べてみた。この成形型で表面温度を高温にして圧空賦形を行うこと狙いに、下記を試みた。
A)100及び125℃の温度に調整したプレートに常温の成形型を乗せて加熱したとき、それぞれ表面温度の昇温定常化には約60、90分と極めて長い時間を要した。
B)このときの表面温度の下部、中位、上部の平均はそれぞれ50、62℃で、部位による大小の温度差がいずれも20〜25℃と大きい値であった。そして加熱プレートとの温度差は非常に大きくなり、部位によっては71℃にも達していた。
C)上記は静止した空気での値であるが、環境の影響を調べてみたところ、空調機による気流、熱盤による放射熱等により変わり、また温度バラツキのが更に大きくなった。
D)表面温度を平均100℃以上の設定にする試みを行った。しかしプレート温度を型材の耐久耐熱温度(80℃)を遙かに超える180℃以上の設定にしてもそれは達成することはできず型を損傷してしまった。
本発明者は、この2)のテスト結果から、次のような結論を導く。
このようなb値の小さな材料を用いた成形型では表面温度調整に関して;
a)自由な温度設定がしにくく、特に高温設定ができない。
b)昇温安定化に非常に長い時間を要する。
c)部位による温度バラツキが非常に大きい。
d)環境条件の影響を受けやすい。
また、以上1)2)のテスト結果からは次の結論を導く。
a)公知の圧空成形条件では熱処理を伴う成形が実現できない。
b)圧空時の熱処理温度到達を容易にするために、表面温度を高温に設定
しようとしても任意の高温設定ができない。
c)仮に設定可能範囲で熱処理可能な材料を選ぶことができたとしても、
能率的連続成形には不都合である。
d)大きな温度バラツキは均一で欠陥のない製品づくりには障害となる。
(本発明の効用)
適度な延伸配向を行ったポリエステル系樹脂シートを熱成形過程において、予熱温度を超える温度にて熱固定を行うことにより耐熱性、透明性、剛性等の高い熱成形品が得られるが、本発明のプロセスにおいては、
(1)特定の材料を成形型に用い、特定の方法で賦形体裏面を短時間加熱冷却することにより、易しい条件で且つ高速の熱固定を伴う熱成形をすることができる。
(2)特定の方法による加熱冷却を繰り返すことにより、該表面を均一にかつ望まれる高温に調整でき、高度の熱処理が均一になされた熱成型品が得られる。
(3) 表面温度サイクルをモニターして加熱冷却を調整することにより、容易に素早く安定した高速の連続成形を実現できる。
(4) 表面温度サイクルをモニターして加熱冷却を調整することにより、 即時あるいは短時間に安定生産が開始でき、品質不良品率を最少にすることができる。
(5) 一つの成形型で必要に合わせ、AからCパターン(混合パターン、変形バーン含む)まで任意の成形パターンを選ぶことができ、例えば高温で擦過や火傷しやすい 材料に対しはAあるいBパターンのように低温で賦形して昇温する方法が好ましく利用でき、またBあるいはCパターンでは高速化を最優先にした連続成形プロセスを構成することができる。
1 成形型本体 2 成形用表面 3 真空孔
4 導気孔 5 熱媒通路

Claims (9)

  1. ポリエステル系樹脂の延伸シートを用いて熱成形する方法において、
    熱浸透率(kJ/m1/2K)が2.0以上で、かつ25以下である材料により形成させ、かつ温度調整機構を備えた成形型を用い、成形型の温度を成形材料のTg℃ 以上でかつ(Tg+250℃)以下の所定の一定温度に調整し、次の(1)(2)、すなわち
    (1);賦形体裏面への高温気体若しくは高温気体流の接触及び/又は赤外線照射による加熱手段,
    (2);賦形体裏面への冷却用気体流及び/又は冷却用液体の接触による冷却手段、
    の少なくとも一つを用いることにより、成形型の表面温度の軌跡において所定の一定温度の頂点と一定温度の底点を有する繰り返しサイクルを形成せしめ、このサイクルの中で賦形と離型を繰り返し行うことを特徴とする連続的な熱成形品の製造方法。
  2. シートの予熱賦形から離型までの過程において、賦形体がシートの予熱温度以上でかつ(成形材料樹脂のTg+60)℃以上で且つTm以下の所定温度である成形型表面に接触する過程を含み、次いでその表面温度がそれより5℃以上低い温度に降下してから離型する請求項1の熱成形品の製造方法。
  3. 成形型の表面若しくは表面下で成形サイクルに伴う温度軌跡、及び/または賦形体の裏面温度を測定し、連続成形の中で該表面温度サイクルの頂点及び底点が所定の一定の値を繰り返すように調整又は制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱成形品の製造方法。
  4. 高温気体を用いた圧空により賦形と賦形体裏面への高温気体若しくは高温気体流の接触をほぼ同時に行うか、または真空賦形と同時に該裏面への高温気体若しくは高温気体流を接触させるか、または公知の方法による賦形に続いて高温気体若しくは高温気体流を接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱成形品の製造方法。
  5. 圧空賦形及び又は真空賦形とほぼ同時に赤外線を賦形体裏面に照射するか、または公知の方法による賦形に続いて赤外線を賦形体裏面に照射することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の熱成形品の製造方法。
  6. 圧空室内から気体が流出する機構を設けて圧空成形にすることにより、賦形と同時または賦形に続いて、該高温若しくは冷却用気体流及び又は冷却用液体の接触を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱成形品の製造方法。
  7. 賦形とほぼ同時にあるいは賦形後に賦形体裏面への高温気体若しくは高温気体流の接触およびまたは赤外線照射を行って該表面温度を昇温させて、次いで賦形体裏面に冷却用気体流及び又は冷却用液体を接触させて該表面温度を降下させて離型することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱成形品の製造方法。
  8. 賦形とほぼ同時にあるいは賦形後に賦形体裏面への高温気体または高温気体流の接触およびまたは赤外線照射を行って該表面温度を昇温させのち、この表面温度の自然低下を待って離型し、次いで該表面直接に冷却用気体流及び又は冷却用液体を接触させて温度降下させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱成形品の製造方法。
  9. 該表面直接に高温気体流の接触または赤外線照射を行って該表面温度を昇温させ、次いで賦形と同時にあるいは賦形後に、賦形体裏面へ冷却用気体流及び/又は冷却用液体を接触させて該表面温度を降下させて離型することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱成形品の製造方法。
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