JP5685957B2 - 薄膜サーミスタセンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
薄膜サーミスタの電極部を形成する工程において、絶縁基板の表面粗さが粗いほど、アンカー効果によって電極膜の密着力が強くなり、工程における電極剥がれの不良が低減する。特に、電極部の接合強度が強化されると、リードフレームを接合させる場合でも、リードフレームとの溶接等の熱応力による剥がれが減少する。しかしながら、基板表面が粗い程、面内の段差が大きくなり、電気特性に関連するサーミスタ薄膜部分の断線や、櫛歯電極部分のクラックが発生してしまい、電気特性(抵抗値やB定数)が設計値から外れてばらつき、かつプロセスの歩留まりに影響する不都合があった。
この薄膜サーミスタセンサでは、電極領域の表面粗さRaが、200〜800nmとされていると共に、サーミスタ領域の表面粗さRaが、10〜100nmとされているので、薄い電極パッド部で十分な密着性を得ることができると共に、適度な表面粗さによりサーミスタ電極部の剥離が防止でき、設計値に一致する良好な電気特性を得ることができる。
さらに、本発明の薄膜サーミスタセンサの製造方法は、前記鏡面化工程で、サンドブラストにより前記サーミスタ領域を鏡面化すると共に凹部状とし、前記凹部状のサーミスタ領域に前記絶縁層を埋設して前記電極領域と面一にすることを特徴とする。
すなわち、本発明に係る薄膜サーミスタセンサおよびこの製造方法によれば、絶縁層または絶縁基板の一対の電極パッド部が形成される電極領域が、サーミスタ薄膜が形成されるサーミスタ領域よりも表面粗さの大きい粗面とされるので、大きいアンカー効果によって電極パッド部の高い密着性を得ることができると共に、サーミスタ薄膜の断線やサーミスタ電極部のクラックや剥離の発生が抑制される。
したがって、粗い表面の電極領域により電極パッド部の接合強度が強化され、リードフレームに実装する場合でも剥がれを防ぐことができると共に、電極領域よりも平坦なサーミスタ領域により設計値に一致した電気特性を安定して得ることができる。
上記サーミスタ薄膜3は、例えばMn−Co系複合金属酸化物(例えば、Mn3O4−Co3O4系複合金属酸化物)又は、Mn−Co系複合金属酸化物に、Ni、Fe、Cuのうち少なくとも一種類の元素を含む複合金属酸化物(例えば、Mn3O4−Co3O4−Fe2O3系複合金属酸化物)からなる複合金属酸化物膜である。
このサーミスタ薄膜3は、半導体の性状を呈し、温度が上昇すると抵抗が低くなる負特性、いわゆるNTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient Thermistor)の性質を有している。
また、電極領域2Aの表面粗さRa(算術平均粗さ)は、200〜800nmとされていると共に、サーミスタ領域2Bの表面粗さRaは、10〜100nmとされている。
この薄膜サーミスタセンサ1は、サーミスタ薄膜3上に積層されたSiO2膜の絶縁性保護膜6と、該絶縁性保護膜6上に積層された保護ガラス印刷膜7と、接合されたリードフレーム5の端部を含めて絶縁基板2上の全体を封止する絶縁被覆層8を備えている。
上記絶縁被覆層8は、サーミスタ薄膜3及び電極4を内部に封止する保護膜であり、例えば、表面に滴下したセラミックスモールド材又はガラスペーストを焼成してモールドしたものである。
まず、図2の(a)に示すように、例えば表面粗さRaが50nmである上面が鏡面化されたアルミナ基板の絶縁基板2を用意する。なお、この絶縁基板2の厚さは、例えば0.2μmである。次に、図2の(b)に示すように、絶縁基板2の上面のサーミスタ領域2B上に樹脂シート9を貼り付けてマスキングし、一対の電極領域2Aだけを露出状態とする。この状態で、図2の(c)に示すように、SiC粉等を用いたサンドブラストにより電極領域2Aだけを粗面化し、例えば表面粗さRaを200nmとする。
さらに、図2の(e)に示すように、スパッタリング法でTi、Taで密着層をパターン形成すると共に該密着層上にPtでPt電極層をパターン形成して一対のPt/Ti接合層4cを形成する。例えば、密着層の厚さは、30nmとし、Pt電極層の厚さは、300nmとする。なお、一対のサーミスタ電極部4bは、互いに対向する櫛歯状にパターン形成する。
より詳述すれば、絶縁基板2の全面に所定のスパッタ条件で上述した複合金属酸化物膜をスパッタリング法で成膜する。続いて、フォトリソグラフィ技術により、複合金属酸化物膜の上面であってサーミスタ領域2Bの絶縁層2a上にフォトレジスト膜をパターニングする。
さらに、図3の(c)に示すように、絶縁性保護膜6上に保護ガラス印刷膜7を印刷により積層する。例えば、保護ガラス印刷膜7の厚さは、10〜20μmとする。
すなわち、Niめっき時のサーミスタ電極部4b上への析出を防ぐために、めっき用レジスト(図示略)を施し、Pt/Ti接合層4cの電極パッド部4a上に、スルファミン酸Niめっき浴によりNiめっきを成膜し、Niめっき層4dを形成する。これにより、一対の電極4が形成される。
この後、接合されたリードフレーム5の端部を含めて絶縁基板2上の全体をガラスモールドの絶縁被覆層8で封止する。
すなわち、めっき用レジストを除去し、ガラスペーストを、リードフレーム5の端部を含む表面全体を覆うようにディスペンサーで表面に滴下、焼成し、絶縁被覆層8としてモールドすることで、薄膜サーミスタセンサ1が作製される。
さらに、薄膜サーミスタセンサ1の製造方法では、電極形成工程前に、電極領域2Aを、サーミスタ領域2Bよりも表面粗さの大きい粗面とする粗面化工程を有しているので、サーミスタ領域2Bの表面を必要以上に粗くせずに、選択的に粗面化された電極領域2A上に電極パッド部4aを形成して高い密着性を得ることができる。
そして、以降の工程を第1実施形態と同様にすることで、第2実施形態の薄膜サーミスタセンサ21が作製される。
また、凹部状のサーミスタ領域2Bに絶縁層2aが埋設されて電極領域2Aと面一とされるので、サーミスタ薄膜3の下地となる絶縁層2aによる段差が無くなり、電極パッド部4aとサーミスタ電極部4bとの段差による断線を防止することができる。
Claims (3)
- 絶縁基板または表面に基板用絶縁層が形成された基板と、
前記基板用絶縁層または前記絶縁基板にパターン形成されたサーミスタ薄膜と、
前記基板用絶縁層または前記絶縁基板の上面から前記サーミスタ薄膜の上面または下面に亘ってパターン形成された一対の電極と、
一対の前記電極に接続された一対のリードフレームと、を備え、
前記一対の電極が、前記リードフレームが接続される一対の電極パッド部と、前記サーミスタ薄膜の上面または下面に積層される一対のサーミスタ電極部とを有し、
前記基板用絶縁層または前記絶縁基板の前記一対の電極パッド部が形成される電極領域が、前記サーミスタ薄膜が形成されるサーミスタ領域よりも表面粗さの大きい粗面とされ、
前記サーミスタ領域が凹部とされ、
前記サーミスタ領域にサーミスタ領域埋設用絶縁層が埋設されて前記電極領域と面一とされていることを特徴とする薄膜サーミスタセンサ。 - 請求項1に記載の薄膜サーミスタセンサにおいて、
前記電極領域の表面粗さRaが、200〜800nmとされていると共に、前記サーミスタ領域の表面粗さRaが、10〜100nmとされていることを特徴とする薄膜サーミスタセンサ。 - 請求項1又は2に記載の薄膜サーミスタセンサを作製する方法であって、
前記絶縁基板または表面に前記基板用絶縁層が形成された前記基板の上面に一対の電極をパターン形成する電極形成工程と、
前記基板用絶縁層または前記絶縁基板にサーミスタ薄膜をパターン形成するサーミスタ成膜工程と、
一対の前記電極部に一対のリードフレームを接続するリード接続工程とを有し、
前記電極形成工程前に、予め前記基板用絶縁層または前記絶縁基板の上面全体を前記電極領域に要求される所望の表面粗さとしておき、前記サーミスタ領域を、前記電極領域よりも表面粗さの小さい鏡面とする鏡面化工程を有し、
前記鏡面化工程で、サンドブラストにより前記サーミスタ領域を鏡面化すると共に凹部状とし、
前記凹部状のサーミスタ領域に前記サーミスタ領域埋設用絶縁層を埋設して前記電極領域と面一にすることを特徴とする薄膜サーミスタセンサの製造方法。
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