JP5685768B2 - スクリーニング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法に関する。
血管は、軟骨、強膜、結膜等の一部の組織を除いてほぼ全ての臓器や組織に分布し、栄養補給および老廃物除去に必須の役割を果たしている。血管は、単層の血管内皮細胞からなる「内膜」、多層の血管平滑筋細胞からなる「中膜」、線維芽細胞とそれが合成・分泌する間充組織からなる「外膜」で構成される。正常の血管では、これらの構造が安定に保持されている。
血管が病的状態になると、上記構造は破綻する。動脈硬化症では、脂質を貪食したマクロファージ(泡沫細胞)の血管内膜への蓄積により血管内皮細胞が傷害を受け脱落し、これに接して存在する血管平滑筋細胞の過剰増殖が惹起される。血管平滑筋細胞の過剰増殖は、血管内腔を狭窄させ、血管が栄養する臓器の虚血を誘発する。その結果、冠動脈狭窄では心筋梗塞、頸動脈狭窄では脳梗塞といった重篤な虚血性疾患の発症に至る。
近年、虚血性疾患が世界的増加傾向にあり、主要な死亡原因となっている。日本でも、第一位のがん(31.0%)に続き、第二位が脳血管障害(13.6%)、第三位が虚血性心疾患(7.3%)である。世界的に見ると、死亡原因の第一位が虚血性心疾患、第二位が脳血管疾患である。中華人民共和国やインド共和国のように経済発展が目覚ましい国では、今後、虚血性疾患による死亡率の増大が予想される。これらの国々の人口の大きさに鑑みれば、虚血性疾患の世界的罹患数は爆発的に増加すると推測される。
虚血性疾患(脳血管障害、虚血性心疾患を含む)をコントロールする手段の探索は、世界中の人々の健康の維持増進にとって重要な課題である。虚血性疾患の予防や治療に結びつく発見は、臨床医療の進歩に大いに貢献し、医療産業の発展のためにもなる。即ち、「虚血」の実態である「血管平滑筋細胞の過剰増殖」を制御する方法の開発は、世界の福祉に貢献するとともに、医療産業分野に多大な経済効果をもたらす。
血管内皮細胞は、血管内腔を裏打し、血液成分(血球および血漿)と血管との境界を形成し、血液成分に潜在する血管傷害作用から血管を守っている。血管内皮細胞の脱落は、血漿中の凝固線溶関連因子群の段階的活性化を誘発する。凝固線溶関連因子群の中には血管内皮細胞に毒性を持つものも含まれており、血管内皮細胞の脱落は加速される。凝固関連因子群の中には、血管平滑筋細胞の増殖を促進する因子も存在する。例えば、Tissue factor pathway inhibitor 2(TFPI2)には血管平滑筋細胞の増殖促進効果が報告されている(特許文献1)。血球の中でも遊走能を持つ白血球(顆粒球、単球、リンパ球)は、血管内皮細胞の脱落後に中膜へと遊走し、平滑筋細胞の傷害、過剰増殖の誘発等の好ましくない作用をもたらす。血管内皮細胞の機能障害および脱落は、血管平滑筋細胞の過剰増殖を促して虚血性疾患を誘発することが想定されているが、その機序は不明である。
虚血性疾患の治療法としては、アスピリン等の血栓予防剤の内服やウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、tissue plasminogen activator (t-PA)等の血栓溶解剤の静脈投与による「内科的治療」と、動脈血管の内腔狭窄を直接除去する「血行再建術」がある。頸動脈での中等度(50%)以上の狭窄では、内科的治療よりも血行再建術で脳梗塞等の再発率が低いことが欧米の大規模臨床研究で実証されている。
血行再建術には、「内膜剥離術」と「経皮的動脈形成術」がある。内膜剥離術は、外科的に血管を露出して狭窄部の潰瘍や倹焼撃と一緒に取り去って腔面を平滑化する手術である。これには全身麻酔が必要となる、手術創が目立つ、特に頸動脈手術で咽頭や喉頭を支配する神経に障害を残す可能性がある等の欠点がある。
経皮的動脈形成術は、下肢の大腿動脈または上肢の橈骨動脈や上腕動脈からカテーテルを挿入し、冠動脈や頸動脈の狭窄部まで進めて血管拡張術を施行するものである。経皮的動脈形成術は、必ずしも全身麻酔の必要がなく、術後回復も早いことから、現在の血行再建術の主流である。
初期の経皮的動脈形成術は、「バルーン血管形成術」(バルーンカテーテルで狭窄部を一過性に強制拡張させる術式)であった。近年は、術後の再狭窄防止の目的で「ステント留置術」が主体である。ステント留置術は、網筒状の形状記憶性基材(ステント)を狭窄部に挿入することで、血管内腔を持続的に強制拡張させるものである。中等度以上の狭窄を示す虚血性疾患に対しては、現在はステント留置術による血行再建術が治療の主体となっている。実際、ステント留置術の施行により、術後再狭窄の頻度は従来よりも低下した。
しかし、経皮的動脈形成術には、依然として10〜30%の症例で再狭窄の問題が生じている。また、金属製ステントは永久植込型であるため、異物反応による慢性炎症が避けられないという欠点もある。
このように、虚血性疾患の治療法として現在主流となっているステント留置術では、ステント留置後の再狭窄と慢性炎症を防止する方法を開発することが急務である。しかし、以下に述べるように、有効かつ安全性の高い方法は確立されていない。
ステント血管形成術後の再狭窄予防策として「薬剤放出ステント」が臨床使用されている。薬剤としては、シロリムス(ラパマイシン)等の免疫抑制剤や、パクリタキセル等の抗癌剤が用いられる。これらの薬剤放出ステントにより再狭窄発症率が10%以下に低下することが報告されている。
しかし、放出された薬剤によりステント表面の内皮化が遅延するために血栓形成が多いことが問題である。例えば、大阪警察病院心臓センター部長の上田恭敬博士によれば、約30例を経過観察したところ、50%の症例で新生内膜に覆われていない部分が見つかり、血栓症発症のリスクが高くなる可能性が示された(2007年11月29日、第15回日本血管生物医学会の講演より)。
免疫抑制剤や抗癌剤は、血管平滑筋細胞だけではなく非特異的に細胞増殖を抑制するために、血管平滑筋細胞増殖抑制による再狭窄防止という恩恵だけでなく、血管内皮細胞増殖抑制による内膜剥離状態遷延化および血栓症の増悪という好ましくない影響もあることに対して注意すべきである。薬剤放出ステント留置術は、すでに多くの医療機関において実施されているが、その長期的効果および予後については今後慎重に判断されるべきである。
ステント留置術の問題点を血管形成術に新規療法を付加することで克服する試みとして、カテーテルを用いて電離放射線を狭窄部に照射することで血管平滑筋細胞の過剰増殖を抑制する「血管内放射線治療」がある。日本では、平成11年から京都大学大学院の平岡真寛博士により動物実験が行われ、好ましい成果が上げられている。海外では米国を中心に多くの臨床治験が開始されている。
しかし、電離放射線の照射後、正常組織において間質の線維化と微小な動脈閉塞により虚血性変化が起きることが周知となっている。即ち、放射線照射の晩期反応としての線維化を伴う虚血性変化は、放射線治療の現場ではよく経験する。この意味からは、血管内放射線治療後の血管壁への影響が、狭窄方向(虚血性変化)に作用するのか、再狭窄の予防方向に作用するのかはパラドックスと言える(非特許文献4)。
血管内放射線治療は、現時点で好成績を上げている療法の一つではあるが、まだ観察期間が短く、放射線被爆の特徴である晩期影響までの充分な結果を得るには多くの時間を要する。
血管形成術に付加される別の療法として、血管平滑筋細胞の増殖抑制効果をもつことが知られているtissue factor pathway inhibitor 1 (TFPI1)を利用する試みもある。例えば、リコンビナントTFPI1のウサギ(非特許文献2)やミニブタ(非特許文献3)への投与は、動脈傷害実験における再狭窄を抑制する効果があると報告された。また、アデノウイルスベクターを用いたTFPI1遺伝子発現ユニットの狭窄部への遺伝子導入療法(特許文献3)や、アデノウイルスベクターによるTFPI1遺伝子治療とTFPI1リコンビナント蛋白投与とを組み合わせた療法(非特許文献3)の有効性がウサギを用いた実験で報告された。
しかし、TFPI1は、本来、凝固阻害因子として単離されたように、大量投与では出血傾向が惹起され、少量投与では効果がなく、最適濃度の取得の難しさが指摘されている(非特許文献2および3)。また、リコンビナントTFPI1蛋白は生体内で速やかに分解されるため、長期効果を期待できない。
持続効果を目的とした遺伝子治療に関しても、現行のアデノウイルスベクターによる遺伝子導入は一過性発現系であるため、長期間の発現は望めない。しかも、アデノウイルス抗原の発現に伴う免疫反応惹起により、導入細胞が早期に脱落する欠点もある。実際、TFPI1を用いる療法の動物実験が1995年に報告された後、今もって臨床応用に至らないことからも虚血性疾患の治療として有望でないと判断される。
上記のとおり、ステント留置術が抱える問題点の克服に向けて様々な試みが報告されてきたが、評価が確定したものはまだない。虚血性臓器障害の治療の主体となっているステント留置術で懸案となってきた術後再狭窄を解決する手段は、世界中で罹患率が多く、死亡原因の第一位ともなっている虚血性疾患群の治療に画期的な成果をもたらす。その解決に向けては、再狭窄発症率の低下が長期安定して得られること、血栓症を誘発しないこと、炎症反応を惹起しないこと、血管内皮細胞の増殖を阻害しないこと等の安全面の配慮が充分ななされることが重要となる。
そのような観点からは、狭窄のない正常血管がいかにしてその形状を保っているかを解明し、この正常血管がもつシステムをそのまま治療に適用することが指向される。即ち、血行再建術の施行を要する病的血管を正常血管に変えていくことこそが、最も安全かつ確実な治療法となる。
狭窄を来たした病的血管では、平滑筋細胞の過剰増殖の前提として、血管内皮細胞の欠損がある。即ち、血管内皮細胞の脱落・欠損が、平滑筋細胞の過剰増殖を直接的または間接的に誘発することで血管内腔を狭窄させる。
これまで、血管内皮細胞の「間接作用」(=血管内皮細胞の脱落により形成された血栓が血管平滑筋細胞の増殖を促進したという考え)にのみ着目して治療法が開発されてきた。しかし、それらが充分な効力を発揮していない以上、これからは「直接作用」につき解析を進めることが重要である。
平滑筋細胞の増殖に対する血管内皮細胞の直接的な抑制効果については、生体内での寄与が想定されてきたにも関わらず、現在まで全く報告がない。その理由は、生体内における血管内皮細胞がもっている平滑筋細胞増殖抑制効果を評価するのに適切なin vitroの実験系が一切確立されていないためである。このことは以下に記すことからも明らかである。
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)等のヒト初代血管内皮細胞をin vitroで継代培養してゆくと、その細胞が生体内で持っていた様々な機能が喪失していくことは周知である。継代培養を重ねても消失しにくい機能もあれば、早々に消失してしまう機能もある。血管内皮細胞がもつ平滑筋細胞増殖抑制作用は、in vitroでの継代培養のごく初期(例えば細胞調製が終了した時点等)に消失してしまったと推定される。一方、血管内皮細胞由来の可溶性因子がもつ平滑筋細胞増殖促進作用は、培養過程において長期に維持される。このために、増殖促進因子であるTFPI2の単離も可能であったことが推察される(特許文献2)。
特開2000-128802 米国特許6214333 WO2008/056779 ジャン(Jang)ら、Circulation誌、第92巻、第3041−3050頁、(1995) オルトロナ(Oltrona)ら、Circulation誌、第96巻、第646−652頁、(1996) 厚地ら、Circulation誌、第103巻、第570−575頁、(2001) 関根広、日本放射線技術学会雑誌、第57巻、第1182−1186頁、(2000)
本発明は、虚血性疾患において、血管狭窄性病変の主体である「血管平滑筋細胞の過剰な増殖状態」を制御することで、これまで不可能であった病的血管の正常化を可能とする細胞療法ツールを提供することを目的とする。
本発明は、また、血管狭窄性病変に対する血行再建術における術後再狭窄防止のための細胞療法ツールの提供を可能とする。
本発明は、血管狭窄性病変に対して、ステントフリー、免疫抑制剤ならびに抗癌剤不要、血管内放射線照射不要、かつ既存の遺伝子治療法ならびに蛋白療法に依存せずに、副作用のない再狭窄防止療法を達成する細胞療法ツールを提供する。
本発明は、また、血管内皮細胞が持つ血管平滑筋細胞増殖抑制効果の分子機序解析のためのツールを提供することを目的とする。
本発明は、また、血管内皮細胞表面に存在して血管平滑筋細胞増殖抑制効果を発揮する物質を単離する方法を提示することで、血管狭窄病変に対する新規な遺伝子・蛋白治療のための開発ツールを提供することを目的とする。
本発明者らは、虚血の原因となる狭窄性血管病変において観察される「血管内皮細胞の変性および脱落」と「血管平滑筋細胞の過剰増殖」という2つの現象の間に因果関係があるとの達見のもとに、鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
胚性幹(ES)細胞から特定の方法で作成された血管内皮細胞(ESDEC)は、血管平滑筋細胞との非接触培養でHUVECと同程度の血管平滑筋細胞増殖促進効果が見られる。一方、接触培養では、この効果が完全に打ち消され、かつ平滑筋細胞の増殖が単独培養の時よりも有意に抑制される。これらのことから、ESDECは、細胞同志の直接的相互作用を介して、血管平滑筋細胞の増殖を強力に抑制することが実証される。一方、HUVECでは、非接触培養時に観察された血管平滑筋細胞の増殖促進効果が接触培養で抑制されることはなく、むしろ増殖効果が促進される。
上記のことから、ex vivo(生体外)の環境で培養されたヒト初代血管内皮細胞では既に喪失されている血管平滑筋細胞増殖制御作用が、ES細胞等の多能性幹細胞からin vitroで産生されたフレッシュな血管内皮細胞では保持され、しかも、血管内皮細胞が血管平滑筋細胞に直に接する系においてのみ血管平滑筋細胞増殖制御作用が機能していることが示唆される。これをさらに医療に応用するべく検討した結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、
(A) 霊長類動物多能性幹細胞を、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、血管内皮成長因子(VEGF)、骨形成タンパク質(BMP)、オンコスタチンM、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(acidic FGF、basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
(B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、骨形成タンパク質、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、ゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
(C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
(D) ステップ(C)で分離された接着細胞をゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
により分化誘導された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞を、ヒト初代培養血管内皮細胞と比較して有意な発現量の変化を認めた細胞膜蛋白コード遺伝子を抽出することからなる、管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法を提供する。
前記責任分子のスクリーニング方法は、好ましくは、
(E) 霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞に対する細胞固定剤の影響を調べることで、血管平滑筋細胞増殖抑制因子の性格付けを行うステップ、
(F) 血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ細胞群である霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞と、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない細胞群であるヒト初代培養血管内皮細胞について遺伝子発現に関する網羅的解析を行うことで血管平滑筋細胞増殖抑制因子の候補を絞るステップ、
および
(G) ステップ(F)で得られた候補分子の中からステップ(E)で得られたキャラクタリゼーションの結果に合うものを選別するステップ、
を含む。
ステップ(E)の細胞固定剤は、アルデヒト系細胞固定剤、アルコール系細胞固定剤および界面活性化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
ステップ(F)は、例えば
第一群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞、ならびに
第二群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない臍帯静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞、冠状動脈血管細胞または微小血管内皮細胞
から、それぞれ、RNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析をマイクロアレイで行い、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子を抽出する
ことからなる。
虚血性疾患に対する血行再建術後の再狭窄防止のためには、血管狭窄部で欠損する血管内皮細胞を正しい形で補給することが最も安全である。それを可能とする唯一の治療ツールが、霊長類胚性幹細胞、induced pluripotent stem (iPS)細胞等の霊長類多能性幹細胞から作成された血管内皮細胞を基材に被覆して得られる本発明の血管狭窄部挿入用基材である。
本発明の血管狭窄部挿入用基材を、例えばステントのような形態で血管狭窄部に挿入することで、狭窄部の物理的な拡張が得られるのみならず、狭窄の主体となっている血管平滑筋細胞の過剰増殖が制御される。長期的な再狭窄防止も可能となり、従来のステント留置術が抱えてきた問題は、ここに克服される。即ち、現行の血行再建術後の再狭窄を防止するために従来施行されてきた療法と置き換わることで、それらが抱えていた血栓症惹起、線維化誘発等の問題点が全て解消される。
本発明の血管狭窄部挿入用基材は、従来の様々な療法が抱える問題を解決するだけでなく、病的血管を正常血管に戻す治療も可能である。したがって、本発明は、血管狭窄性病変の根本的治療を提供するという革命的な成果を上げることが期待される。
本発明は、血管内皮細胞による血管平滑筋細胞の増殖抑制に関する分子機序を解明する手がかりとなる。即ち、ES細胞由来血管内皮細胞との接触培養においてヒト大動脈平滑筋細胞の増殖が有意に抑制されること、HUVECとの接触培養においてはその効果は全く認められないことから、血管内皮細胞の平滑筋細胞増殖抑制効果は、HUVECでは消失しているが、ESDECにおいて保存されていることが明らかとなった。TFPI1に関する多くの研究〔例えば、セビンスキー(Sevinsky)ら、Journal of Cell Biology誌、第133巻、第293−304頁、(1996)、ルプ(Lupu)ら、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology誌、第17巻、第2964−2974頁、(1997)、ルプ(Lupu)ら、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology誌、第15巻、第2055−2062頁、(1995)、および羽室ら、FEBS letter誌、第421巻、第197−202頁、(1998)〕がHUVECを用いてなされてきたことからも解るように、HUVECでのTFPI1の発現量は非常に高くかつ安定である。そのHUVECにおいてすら、平滑筋細胞増殖促進因子であるTFPI2に拮抗するに充分なだけのTFPI1の効果が観察できなかった。したがって、ESDECのもつ細胞間相互作用を介した血管平滑筋細胞増殖抑制効果はTFPI1以外の因子によるものであることがほぼ確実である。
上記のように、本発明により、血管に関する基礎医学および生物学的な理解が大いに深まることが期待される。さらに、血管内皮細胞による血管平滑筋細胞の増殖抑制の責任分子が同定されれば、虚血性疾患に対する新規な分子療法や遺伝子治療の開発も可能となる。
図1は、cmESDECの細胞シート培養を行った際の位相差顕微鏡写真(図面代用写真)である。 図2は、(A)にAoSMCとcmESDEC、HUVECまたはHAECとの共培養を接触培養法で行うモデル図、そして(B)にAoSMCの単層培養を行うモデル図を示す。 図3は、(A)にAoSMCとcmESDEC、HUVECまたはHAECとの共培養を非接触培養法で行うモデル図、そして(B)にAoSMC同志の非接触培養を行うモデル図を示す。 図4は、カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞(cmESDEC)とヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)、およびヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)とヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の共培養実験の結果を、ヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の単層培養および非接触二層培養の結果とともに示す。ヒト大動脈平滑筋細胞の増殖率は、同細胞を蛍光色素でラベルし4日間の培養後に、細胞分裂に伴う細胞当りの蛍光強度の低下量をModFit softwareTM(Verity Software Houses社、米国)を用いて解析し、増殖指数(proliferation index; 平均増殖回数)を算出することで評価した。ヒト大動脈平滑筋細胞の増殖は、カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞と接触培養することで有意に抑制される。一方、HUVECとの接触培養においては、ヒト大動脈平滑筋細胞の増殖はむしろ促進されることが解る。Pはstudent t検定におけるP値を示す。結果は、独立の3回の実験の平均値を示す。 図5は、実施例1に示した、大動脈血管内皮細胞(HAEC)とヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)を共培養実験の結果を、HUVECとヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の共培養実験の結果とともに示す。ヒト初代培養血管内皮細胞であるHAECにおいては、HUVECと同様に、ヒト大動脈平滑筋細胞に対する増殖抑制効果は観察されず、ヒト大動脈平滑筋細胞の増殖はむしろ促進されることが解る。Pはstudent t検定におけるP値を示す。結果は、独立の3回の実験の平均値を示す。 図6は、ヒトES細胞由来血管内皮細胞(hESDEC)の共培養実験の結果を示す。ヒト大動脈平滑筋細胞の増殖は、ヒトES細胞由来血管内皮細胞と接触培養することで有意に抑制された。 図7は、ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)、またはヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC)の共培養実験の結果を示す。HMVECおよびHCAECの平滑筋細胞増殖抑制効果は観察されなかった。 図8は、成熟血管内皮細胞(hEPCDEC)とヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)を共培養実験の結果を示す。両ロットとも、接触共培養で増殖抑制効果が観察され、非接触共培養では増殖促進効果が観測された。 図9は、実施例3のロット2のhEPCDECに関して、継代数と血管平滑筋増殖抑制効果との関連を調べた結果を示す。9および12継代目のhEPCDECで明瞭であった血管平滑筋増殖抑制効果が15継代目で減弱した。 図10は、実施例3のhEPCDECに関して、細胞固定剤と血管平滑筋増殖抑制効果との関連を調べた結果を示す。細胞固定剤がグルタールアルデヒトの場合は、血管平滑筋増殖抑制効果が検出されたが、アセトン/メタノールおよびデオキシコール酸溶液の場合はAoSMC増殖促進効果が検出された。
以下に、本発明の血管狭窄部挿入用基材の一実施形態を添付の図面を用いて説明する。本発明は、in vitroならびにin vivoの実験において世界中で頻繁に使用されてきたHUVECやその他のヒト初代培養血管内皮細胞においては喪失してしまっている血管平滑筋細胞増殖制御活性を霊長類胚性幹細胞から作成された血管内皮細胞に見出した結果、達成されたものである。そこで、まず、本発明の血管狭窄部挿入用基材に用いる血管内皮細胞を作成する方法を、本発明者らによるWO2008/056779および「霊長類胚性幹細胞からの継代可能な血管内皮細胞の高効率かつ無フィーダーでの生産(Highly efficient and feeder-free production of subculturable vascular endothelial cells from primate embryonic stem cells)」J.Cell.Physiol.、第217巻、第261-280頁(2008)に記載された方法に従って概説する。WO2008/056779およびJ.Cell.Physiol.、第217巻、第261-280頁(2008)の全体が、参照のために本明細書中に編入される。WO2008/056779に記載の方法は、虚血性疾患への細胞療法に必要十分な量の血管平滑筋増殖抑制性血管内皮細胞を供給可能である。他の方法で作成された血管内皮細胞は、そもそも血管平滑筋細胞の増殖を抑制する効果があるかどうかが不明である上に、継代培養に耐えないことから、虚血性疾患への細胞療法に使用すべき細胞の供給は不可能である。WO2008/056779およびJ.Cell.Physiol.、第217巻、第261-280頁(2008)の記載に基づいて作成された血管内皮細胞こそが、唯一、血管狭窄性疾患の根治的療法を目指した細胞療法のためのツールとなり得る。
出発原料の霊長類動物多能性幹細胞は、霊長類動物に由来し、多能性分化能を保持する細胞群である。これには、ヒトES細胞のようなES細胞、iPS細胞、精巣幹細胞、成体幹細胞等が含まれる。
多能性幹細胞の中で、無限自己増幅能と多能性分化能とを併せ持つES細胞は、そこから作成された血管内皮細胞が未熟な幹細胞から産生されたばかりのフレッシュな血管内皮細胞であるという点で、最も有力な候補となる。
ES細胞と同様に多能性を持つiPS細胞もまた、患者自身の体細胞から作成されることから免疫拒絶の問題がなく、臨床応用において非常に有用という点で、最も有力な候補となり得る。
次に、霊長類動物多能性幹細胞の例として霊長類動物胚性幹細胞を用いて血管内皮細胞を作成する方法をWO2008/056779に基づいて説明する。なお、WO2008/056779には、主に霊長類胚性幹細胞からほぼ純粋な血管内皮細胞を産生する技術が記載されているが、培養条件を適宜変更することで、他の幹細胞から血管内皮細胞を作成することは当業者には容易である。
出発原料である霊長類動物胚性幹細胞の入手方法は、公知である。例えば、カニクイザル胚性幹細胞〔末盛博文(Suemori, H.)ら、「IVFまたはICSIにより産生されたカニクイザル胚盤胞由来胚性幹細胞の樹立(Establishment of embryonic stem cell lines from cynomolgus monkey blastocysts produced by IVF or ICSI.)」、Dev.Dynamics、第222巻、第273−279頁(2001)〕、アカゲザル胚性幹細胞〔トムソン(Thomson, J.A.)ら、「霊長類動物胚性幹細胞株の単離(Isolation of a primate embryonic stem cell line.)」、Proc.Natl.Acad.Sci,USA,第92巻,第7844−7848頁(1995)〕、マーモセット胚性幹細胞〔トムソン(Thomson, J.A.)ら、「コモンマーモセット胚盤胞由来の多能性細胞株(Pluripotent cell lines derived from comMon marmoset blastocysts.)」、Biolol.Reprod.、第55巻、第254−259頁(1996)〕、ヒト胚性幹細胞〔トムソン(Thomson, J.A.)ら、「ヒト胚盤胞由来の胚性幹細胞株(Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts.)」、Science、第282巻、第1145−1147頁(1998);ロイビノフ(Reubinoff, B.E.)ら、ヒト胚盤胞由来の胚性幹細胞:インビトロ体細胞分化(Embryonic stem cell lines from human blastosysts: somatic differentiation in vitro.)、Nat.Biotech.、第399−404頁(2000)〕等を挙げることができる。
霊長類動物胚性幹細胞は、WO2008/056779に記載された工程:
(1) 霊長類動物胚性幹細胞を、細胞外マトリックスでコートされた容器中、無フィーダーおよび無サイトカイン下、蛋白成分を含有する培地で培養するステップ、
(2) ステップ(1)で形成された胚性幹細胞のコロニーを細胞剥離剤の存在下、剥離するステップ、および
(3) ステップ(2)で得られた胚性幹細胞のコロニーを細胞外マトリックスでコートされた容器中、無フィーダーおよび無サイトカイン下、蛋白成分を含有する培地に播種するステップで、未分化で継代維持するための培養および継代方法を用いたものであることが好ましい。
霊長類胚性幹細胞から血管内皮細胞を産生する方法は、
(A) 霊長類動物胚性幹細胞を、サイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
(B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮細胞に分化させるための少なくとも一種のサイトカインの存在下、接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
(C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
(D) 分離された接着細胞を接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
を含む。
ステップ(A)では、低吸着性培養容器等を用いて、細胞を、浮遊状態を保った状態で浮遊培養する。胚葉体類似細胞凝集塊は、胚性幹細胞から胚葉体が形成される途中の細胞凝集体を意味する。
胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を形成する方法としては、慣例のハンギング・ドロップ法、慣例の非接着性培養皿を用いた培養、慣例の半固形培地を用いた培養等が挙げられるが、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊が形成される限り、これらに限定されない。
ステップ(A)で用いてサイトカインは、胚性幹細胞を血液細胞および/または血管内皮細胞に分化させるための因子であればよく、特に限定されない。例えば、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)(例えば、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-15、インターロイキン−11等)、血管内皮成長因子(VEGF)、骨形成タンパク質(BMP;例えば、BMP-4等)、オンコスタチンM、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(acidic FGF、basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー(例えば、Angiopoietin-1およびAngiopoietin-2)、アクチビン等が挙げられる。
浮遊培養の期間は、細胞や培養条件、目的の生成物により異なるが、通常、2日〜2週間程度である。期間が短いほど、胚葉体に対する細胞凝集塊の比率が増す。目的の血管内皮前駆細胞へ分化誘導するには、細胞凝集塊を充分形成するまで培養することが好ましい。
ステップ(B)では、最適化された分化培地で前記胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊をくずさずにそのまま、細胞の培養容器への接着性が担保された状態で接着培養する。こうすると、極めて高い効率(ほぼ100%の効率)で血管内皮細胞への分化制御が達成される。
前記培養容器は、細胞の培養に通常用いられる容器であればよい。培養容器のコート成分としては、霊長類動物胚性幹細胞から血管内皮細胞への分化を誘導するに適したものであればよい。具体的には、ゼラチン等が挙げられる。
前記分化培地は、霊長類動物胚性幹細胞を未分化状態で培養するための培地に、血管内皮細胞に分化させるための少なくとも一種のサイトカインを添加した培地を意味する。該培地は、所望により、細胞の維持および分化に悪影響を及ぼさない限り、適切な他の添加物を含有していてよい。
前記分化培地の基本培養成分としては、霊長類動物胚性幹細胞から血管内皮細胞への分化を誘導するのに適した培地であればよく、具体的には、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)等が挙げられる。
基本培養成分に添加する蛋白成分としては、霊長類動物胚性幹細胞から血管内皮細胞への分化を誘導するに適したものであればよく、具体的には、牛胎児血清、ヒト血清(免疫拒絶反応を誘発する危険性の少ないAB型血清を使用することが好ましい)、KNOCKOUT SR(登録商標、インビトロジェン社製)等が挙げられる。
ステップ(B)で用いるサイトカインの例は、血管内皮成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)(例えば、インターロイキン-3、インターロイキン-6)、骨形成タンパク質(BMP;例えば、BMP-4等)、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー(例えば、Angiopoietin-1およびAngiopoietin-2)、アクチビン等である。
分化誘導における培養条件は、用いられる霊長類動物胚性幹細胞の種類により適宜設定することができるが、37℃、5体積%CO2の条件等が挙げられる。
接着培養は、特定前駆細胞が形成されるまで行う。特定前駆細胞とは、浮遊細胞(培養液中に浮遊する性質を有する球状または球状に近い形状の細胞)と接着細胞(培養容器に接着する細胞)を含む、胚葉体または胚葉体類似の細胞凝集塊から分化した前駆細胞を意味する。これは、浮遊細胞としての球状細胞集団と接着細胞を含む嚢状構造物(内部に球状細胞集団を含有する)を形成する場合があるが、嚢状構造物は必ずしも形成されない。
血管内皮細胞へ分化しつつある血管内皮前駆細胞を、特定前駆細胞中の接着細胞から誘導することができる。そこで、血管内皮前駆細胞の集団の選択を、位相差顕微鏡下、細胞の組織的形態の観察に基づいて行う。その際、胚葉体を崩さずに新しい培養皿で接着培養を続けながら、位相差顕微鏡下で観察し、組織的形態を判定し選別する。
ステップ(C)では、浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞から、浮遊細胞と接着細胞を分離する。そのために、培養液中の浮遊細胞および嚢状構造物中の球状細胞を遠心等で分離する。嚢状構造物からの球状細胞の分離は、適当な方法で該嚢状構造物に開口部を設けて球状細胞を浮遊させることで行う。通常、嚢状構造物の開口部は培養により再度閉鎖され、その内部には球状細胞が充満してくる。嚢状構造物が形成されない場合には、浮遊細胞と接着細胞を適宜分離する。
分離された接着細胞(血管内皮前駆細胞を含む)から、適宜、より成熟傾向のある血管内皮細胞を分離してもよい。それには、血管内皮前駆細胞から血管内皮細胞を細胞膜表面でのVE-cadherin陽性PECAM1陽性の二重陽性集団として分離する。具体的には、VE-cadherin、PECAM1等のマーカーに対する特異的抗体を用いたフローサイトメトリーによるセルソーティング、該抗体を保持した磁気ビーズを用いるセルソーティング等により血管内皮細胞を分離する。
ステップ(D)では、分離された接着細胞(血管内皮前駆細胞を含む)またはそこから適宜分離された血管内皮細胞を、分化培地上の接着培養で継代する方法により拡大生産する。
本発明の血管狭窄部挿入用基材に被覆する血管内皮細胞は、また、霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞(EPC)を細胞外マトリックス等をコートした培養皿で継代することで作製された成熟血管内皮細胞(EPCDEC)であってもよい。
EPCは、細胞外マトリックス等をコートした培養皿の上で、専用培地(販売元が推奨する製品等)と汎用の細胞剥離液(0.05% trypsin/EDTA等)を用いて数回程度継代する間に、一般的な組織幹/前駆細胞マーカーとして知られているCD34およびCD133の発現、さらに単球マーカーとして知られるCD14の発現を喪失していく。一方、血管内皮細胞マーカーとして知られるVE-cadherin、PECAM1、Tie-2は強陽性となる。このように、EPCを継代することで、「CD34陰性CD133陰性CD14陰性VE-cadherin強陽性PECAM1強陽性Tie-2強陽性」となったものをEPCDECと命名する。
こうして得られる霊長類胚性幹細胞由来の血管内皮細胞(ESDEC)やEPC由来成熟血管内皮細胞(EPCDEC)は、その出発材料となったES細胞や血管内皮前駆細胞(EPC)の種類により寿命が異なる。例えば、カニクイザルES細胞や京都大学の中辻憲夫博士らにより樹立されたヒトES細胞であるkhES-3株から作成されたESDECは、8回程度の継代培養の後に増殖を停止する。一方、中辻憲夫らにより樹立されたヒトES細胞株の1つであるkhES-1株から産生されたESDECは、20回程度の継代培養が可能である。いずれの場合も、他技術により産生された血管内皮細胞が継代培養に全く耐えないことと〔曽根ら、Circulation誌、第107巻、第2085−2088頁、(2003)、曽根ら、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology誌、第27巻、第2127−2134頁、(2007)、ワン(Wang)ら、Nature Biotechnology誌、第25巻、第317−318頁、(2007)〕とは異なり、最低でも100倍以上の増幅培養が可能である。
上記血管内皮細胞または成熟血管内皮細胞を作成する際の継代数は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を高く維持する観点から、好ましくは、5〜15回であり、より好ましくは7〜12回である。
こうして得られた血管内皮細胞は、実質上、異種動物細胞の混入や異種動物由来ウイルスの感染がないという優れた性質を有する。また、血管内皮細胞は、高純度で均質である。
血管内皮細胞は、バンバンカー(日本ジェネティックス社製)等の細胞凍結保存専用液内、窒素ガス凍結条件下で維持される。
後述の実施例1に示すとおり、上記工程で得られる血管内皮細胞を血管平滑筋増殖抑制に利用するためには、血管内皮細胞の全身投与では効果がなく、血管平滑筋細胞の増殖している血管狭窄部に直に接触させることが必須であることが判明した。したがって、本発明では、霊長類多能性幹細胞由来の血管内皮細胞を基材に担持させることが必須となる。従来知られている平滑筋増殖抑制剤(特開平9-151137)、血管内膜肥厚抑制剤(特開2002-161049)等が経口的または非経口的に全身投与が可能な薬剤であるのに対し、本発明の血管狭窄部挿入用基材は、血管狭窄部である局所に直接使用されないと効果が得られない点で明確に相違する。
基材の形態は、血管内皮細胞を支持し、支持された血管内皮細胞を血管狭窄部に直接あてがわれるものであれば、板状、筒状、微小磁性粒子等、特に限定されない。一般に「ステント」と呼ばれる筒状形状記憶性基材が好ましい。医療器具として公知のカテーテル、医療用チューブも、基材として使用可能である。
基材の材質は、ステンレス、タンタル、コバルト合金、ニッケル・チタン合金等の金属、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、生体吸収性ポリマー等の樹脂である。上記金属にポリ四フッ化エチレン膜、シリコーン膜、ポリウレタン膜等を被覆したものでもよい。
本発明の基材に担持される血管内皮細胞によって血管狭窄部で血行が再建されたあかつきには、ステントはもはや要らなくなる。金属製のステントは、治癒後に回収してもよい。一定期間後に溶解してなくなる生体吸収性ポリマー(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン等)でできた筒状形状記憶性基材(ステント)は、治癒後に回収する手間がいらないので特に好ましい。
血管内皮細胞を筒状形状記憶性基材に被覆するにあたっては、あらかじめ細胞シート工学法を応用して、血管内皮細胞をシート状に培養して血管内皮細胞シートを作製することが有効である。具体的には、血管内皮細胞をコンフルエント状態(二次元で完全に敷き詰められた状態)で培養し、UpCell(登録商標、CellSeed株式会社製)のような温度感受性培養皿等を用いることで細胞シートを形成させた後、細胞接着性を良好に保った状態でシート状に細胞を剥離回収する。
血管内皮細胞またはそのシートを、金属または樹脂でできた筒状形状記憶性基材に被覆する。血管内皮細胞の筒状形状記憶性基材への被覆は、血管内皮細胞自体を、適宜細胞親和性を持つように表面加工した基材に塗布する、または血管内皮細胞シートを同様の基材に押し付ける方法等が採用される。基材が細胞親和性を有するように表面加工する方法は、特に制限されない。霊長類多能性幹細胞由来の血管内皮細胞を付着させた筒状形状記憶性基材を培養することも可能である。
霊長類多能性幹細胞由来の血管内皮細胞を被覆した筒状形状記憶性基材等の血管狭窄部挿入用基材を血管狭窄部に挿入することで、病変部に正常機能をもつ平滑筋細胞増殖調節性血管内皮細胞を補充することができる。さらに強調すべきは、多能性幹細胞から作成された血管内皮細胞は自己増幅能があるため、一旦、病変部に補充された血管内皮細胞は、その後も長期間に渡って局所で機能を発揮し続けることである。即ち、平滑筋細胞増殖調節性血管内皮細胞が内膜面に存在することで、長期に渡り平滑筋細胞の不適切な増殖を阻止することから(病的血管の正常化)、血行再建術から一定期間経過後にステントを除去する、または生体吸収性ステントを使用した血行再建術を行う等、ステントフリー状態での再狭窄防止治療を施行ことが可能となる。即ち、これまで懸案となっていたステント(=異物)に対する免疫反応の惹起は完全に防止される。
本発明の血管狭窄部挿入用基材の応用として、以下のような実施態様も考えられる。本発明は、また、上記で作成された血管平滑筋細胞増殖抑制性分子過剰発現血管内皮細胞を基材に接着させて培養することからなる、血管平滑筋細胞増殖抑制性分子過剰発現基材の製造方法を提供する。
本発明は、また、単離された遺伝子を細胞内で過剰発現させることからなる血管平滑筋細胞増殖抑制性分子過剰発現血管内皮細胞の作成方法を提供する。即ち、上記で検証された遺伝子の相補的DNA(cDNA)を常法でレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ベクター等のウイルスベクターやリポソームに組込んだ発現ベクターを、患者本人から採取した血管内皮細胞、ヒト初代培養血管内皮細胞等に安定に導入することで、血管平滑筋細胞増殖抑制性分子が過剰に発現した形質転換体としての血管内皮細胞が作成される。
本発明は、また、上記基材を血管狭窄部に挿入して使用することからなる、血行再建方法を提供する。即ち、上記で作成された血管平滑筋細胞増殖抑制性分子過剰発現基材を用いた虚血性疾患に対する細胞療法も可能となる。
実施例に示すように霊長類ESDECとヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の接触培養においてはAoSMCの増殖が有意に抑制される。しかし、HUVEC等のヒト初代培養血管内皮細胞とAoSMCの接触培養においてはAoSMCの増殖は抑制されない。即ち、ESDECの血管平滑筋増殖抑制作用は膜蛋白(または膜蛋白複合体)の細胞間相互作用を介して発揮されると推測される。このことから、霊長類ESDECに特異的に発現している細胞膜蛋白の中にAoSMCの増殖抑制に関与する因子(即ち、増殖抑制効果を伝達する責任分子)が含まれていると推定される。その意味からはESDECとHUVECについて遺伝子発現に関する網羅的解析を行い、ESDECで特異的に発現している遺伝子を抽出し、その中から細胞膜蛋白をコードする遺伝子を選定するという作業は、AoSMC増殖抑制因子を同定する上で非常に有益である。
そこで、本発明は、
(A) 霊長類動物多能性幹細胞を、サイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
(B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮細胞に分化させるための少なくとも一種のサイトカインの存在下、接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
(C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
(D) ステップ(C)で分離された接着細胞を接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
により分化誘導された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞を、ヒト初代培養血管内皮細胞と比較して有意な発現量の変化を認めた細胞膜蛋白コード遺伝子を抽出することからなる、
血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法を提供する。
血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法は、好ましくは、
(E) 霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞に対する、アルデヒト系細胞固定剤、アルコール系細胞固定剤、界面活性化剤等の各種細胞固定剤の影響を調べることで、血管平滑筋細胞増殖抑制因子の性格付け(キャラクタリゼーション)を行うステップ、
(F) 血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ細胞群(即ち、霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞)と、持たない細胞群(即ち、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない臍帯静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞、冠状動脈血管細胞または微小血管内皮細胞などのヒト初代培養血管内皮細胞)とについて、遺伝子発現に関する網羅的解析を行うことで血管平滑筋細胞増殖抑制因子の候補を絞るステップ、
(G) ステップ(F)で得られた候補分子の中からステップ(E)で得られたキャラクタリゼーションの結果に合うものを選別するステップ、を含む。ステップ(G)は、ステップ(E)の結果によってステップ(F)にかける候補を予め絞り込む操作を含む。
ステップ(E)では、ESEDCまたはhEPCDECを、各種細胞固定剤に汎用の方法で固定する。その上に適宜の染色剤で染色したAoSMCを播種して培養し、数日後、平均細胞分裂回数を算出する。細胞固定剤が血管平滑筋細胞増殖抑制効果に与えた影響から、責任分子の性格付けと絞り込みを行う。
ステップ(F)では、マイクロアレイ等を用いた遺伝子発現の網羅的解析により、脂質成分等の重要な蛋白性分子の候補を絞り込む。具体的には、
第一群として、「血管平滑筋増殖抑制効果を持つヒト血管内皮細胞」であるhESDECまたはhEPCDEC、あるいは継代数の少ない(例えば5〜15回)hESDECまたはhEPCDEC、ならびに
第二群として、「血管平滑筋増殖抑制効果のないヒト血管内皮細胞」であるHUVEC、HAEC、HCAECまたはHMVEC、もしくは継代数の多い(例えば16回以上)hESDECまたはhEPCDEC、
から、それぞれ、RNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析を、市販のマクロアレイ、例えばHuman Genome U133 Plus 2.0 Array (Affymetrix製)およびHuman Gene 1.0 ST Array(Affymetrix製)を用いて行う。そして、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子を抽出する。
例えばヒトES細胞由来血管内皮細胞(hESDEC)に特異的に発現する細胞膜蛋白をコードする遺伝子を選定するために、まず、hESDECとHUVECから汎用の方法でRNAを抽出し遺伝子発現を解析する。そして、signal log ratio(hESDEC 対 HUVEC)がいずれにおいても2以上であったもの、またはhESDECで発現するがHUVECでは欠損しているものをhESDECで特異的に発現する遺伝子として抽出する。
カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞(cmESDEC)からの遺伝子探索では、カニクイザルのマイクロアレイ解析のためのツールが完備されていない現状において、膜蛋白を効果的にクローニングするsignal sequence trapping method(SST法)は、cmESDECを材料として血管平滑筋増殖抑制性因子を同定するのに有効である。
ステップ(G)で抽出された遺伝子候補の中から、血管平滑筋増殖抑制効果伝達分子をさらに絞り込むために、例えば、
i) 第二群の血管内皮細胞に当該遺伝子の発現ベクターを導入した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が発揮されるか、
ii) 第一群の血管内皮細胞に当該遺伝子のshRNAの発現ベクターを導入した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が減弱/消失するか、
iii) 第一群の血管内皮細胞に当該分子に対するブロッキング抗体を反応した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が減弱/消失するか、
iv) 第一群の血管内皮細胞に当該分子に対する阻害剤を投与した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が減弱/消失するか、
等の試験を行うことは当業者には容易である。
上記マイクロアレイ法やSST法で抽出された候補遺伝子が血管平滑筋増殖抑制作用に関与しているか等を検証する方法として、i)のHUVEC等への強制発現方法が特に有効である。候補遺伝子の塩基配列は公開されていると予想されるため、汎用の遺伝子クローニング技術により蛋白コード領域全長のcDNAを得ることが可能である。これを汎用の発現ベクターに挿入し、Nucleofector(Amaxa社製、ドイツ)を用いてHUVECへ導入することで(注:HUVECへの遺伝子導入効率は>90%と非常に高い)、当該遺伝子産物をHUVECに強制発現させる。各々の候補遺伝子をHUVECに強制発現させた後、実施例1に記載した方法でAoSMCの増殖率を算出する。AoSMCに対する増殖抑制効果が確認された場合には、導入遺伝子が血管平滑筋細胞増殖抑制因子であると結論される。
血管平滑筋細胞増殖抑制効果の別の検証法として、ii)の遺伝子ノックダウン法も有効である。候補遺伝子の塩基配列をもとに汎用のソフトウェアでshort hairpin RNA (shRNA)によるノックダウンベクターを作成する。それらをhESDECまたはcmESDECに導入し、実施例1に記載した方法でAoSMCの増殖率を算出する。AoSMCに対する増殖抑制効果が消失または減弱した場合は、標的遺伝子が平滑筋細胞増殖抑制因子であることが結論される。
ステップ(F)は、蛋白成分を含む分子が主な探索の対象となるが、責任分子が脂質や糖質等の非蛋白成分を含む可能性もある。非蛋白性分子の絞り込みには、iii)の方法が有効である。以下にさらに詳細に説明する。
ステップ(F)に記載の「第一群の血管内皮細胞に発現しており、第二群の血管内皮細胞では発現していない分子」に対するモノクローナル抗体を作製し、その中から「血管内皮細胞の血管平滑筋細胞増殖抑制効果」を阻止または減弱させることができる抗体を選別し、その抗体が認識する抗原として血管平滑筋増殖抑制効果伝達分子を同定する。
後述の実施例5から、責任分子がグルタールアルデヒド固定後にも機能を保持することが確認されていることから、モノクローナル抗体作製のための免疫源としては「グルタールアルデヒド固定化した第一群血管内皮細胞」を用いるとよい。
モノクローナル抗体の作製は、汎用の方法を用い得る。ここでは、免疫後に得られる大量のハイブリドーマ細胞クローンの中から目的のクローンをスクリーニングする方法、ならびに得られた候補の中から目的抗体を分泌するクローンを選定する方法を説明する。
まず、96穴培養皿にて第一群血管内皮細胞ならびに第二群血管内皮細胞を培養し、コンフルエントになった時点で、グルタールアルデヒド溶液により固定しておく。ここに、各ハイブリドーマ細胞の培養上清(100 microlitter程度のスモール・スケールで調製)を添加してEnzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)を行い、「第一群血管内皮細胞とのみ反応し、第二群血管内皮細胞とは反応しないクローン」をスクリーニングする。
次に、実施例1で記載する接触共培養法に則って、「第一群血管内皮細胞とAoSMCとの接触共培養」を行い、そこに上記の候補クローンの培養上清(1〜2ml程度のミディアムスケールで調製)を添加する。そして、「第一群血管内皮細胞の血管平滑筋細胞増殖抑制効果」を阻止または減弱させたクローンが産生する抗体を目的抗体として決定する。
以上により、抗体選定がなされたら、第一群血管内皮細胞の溶解液を用いて免疫沈降実験を行い、抗体とともに沈降された蛋白分子を汎用の方法論で同定する。具体的には、沈降蛋白を電気泳動により分離精製し、必要に応じてトリプシン等の酵素処理を行ったうえで、質量分析装置による解析により当該蛋白のアミノ酸配列を決定する。
上記の「血管内皮細胞による血管平滑筋増殖抑制効果」を伝達する責任分子の同定とは別に、血管平滑筋増殖抑制効果を促進する物質を探索することは、虚血性疾患に対する治療開発を目的とした創薬研究として極めて意義が大きい。霊長類等物多能性環細胞から作製した血管内皮細胞と血管平滑筋細胞との接触共培養システムを利用すれば、虚血性疾患の治療目的での使用を目指した新規な血管平滑筋細胞増殖抑制剤の探索も可能である。
そこで、本発明は、霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞と血管平滑筋細胞とを、血管平滑筋細胞増殖抑制薬剤の候補となる物質の存在下で接触共培養することを含む、血管平滑筋細胞増殖抑制薬剤のスクリーニング方法を提供する。
血管平滑筋細胞増殖抑制薬剤のスクリーニング方法を、以下に具体的に述べる。実施例1に記載の接触共培養法に則って、「第一群血管内皮細胞とAoSMCとの接触共培養」の実験系に、種々の物質(市販の低分子薬剤ライブラリー等)を添加する。実施例1に記載の方法に則ってAoSMCの増殖インデックスを算出し、物質を添加しない場合と比較して有意にAoSMCの増殖インデックスが低下した物質をスクリーニングする。
スクリーニングされた物質の中から、生体に毒性がないものを選出する。具体的には、血管内皮細胞を含む様々な細胞に候補物質を添加して培養し、細胞傷害の有無を汎用の方法(市販のミトコンドリア呼吸能の測定キット、アポトーシス測定キット等)により評価する。
多くの細胞に対して毒性がないことが確認された物質については、「血管内皮細胞による血管平滑筋増殖抑制効果」を増強する作用のある安全性の高い物質として、虚血性疾患への新規治療薬の候補となる。
本発明者らは、霊長類多能性幹細胞由来の血管内皮細胞は、血管平滑筋細胞と接触した状態で血管平滑筋細胞の異常増殖を抑えることを発見した。この発見に基づく本発明の血管狭窄部挿入用基材は、虚血性疾患における血管狭窄病変に対して欠損する血管内皮細胞を補充すると同時に、血管平滑筋細胞増殖制御体を移植するものであり、従来の血行再建術が抱える問題点を克服した画期的かつ根本的治療を可能とする細胞療法ツールとなる。
本発明の血管狭窄部挿入用基材は、血管平滑筋細胞異常増殖に起因する疾患の血管狭窄性病変に対して有効であり、例えば、経皮的動脈形成術後の血管再狭窄、閉塞性動脈硬化症、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、閉塞末梢動脈疾患、その他の細胞増殖性血管炎の血管狭窄性病変に対して有効である。
虚血性疾患は世界的にも主要な死亡原因として位置づけられ、今後の患者数は世界的に爆発的に増大するものと推測される。虚血性疾患の本体である血管狭窄病変に対する治療法がまだ確立されていない中で、虚血性疾患の根本的治療を可能とする本発明は、医療産業的観点から世界的マーケットを持つ巨大ビジネスとなることは必至である。
本発明の細胞療法ツールを構成する多能性幹細胞血管内皮細胞は、従来の同等品と比べて継代増幅培養と凍結保存が可能であるという際立った特徴がある。また、出発材料となる多能性幹細胞が無限増殖能を持つことを鑑みれば、本発明で使用する多能性幹細胞血管内皮細胞を工業的スケールで安定的に生産することが極めて容易である。また、多能性幹細胞血管内皮細胞シートは、多能性幹細胞血管内皮細胞から汎用の培養装置/機器で、2日程度で作製可能であるから、多能性幹細胞血管内皮細胞被覆ステントの需要に応じていつでも供給可能である。この被覆ステントは、汎用の細胞培養設備で作製できるため、世界のあらゆる国と地域において実施が可能である。
cmESDEC、hESDEC、hEPCDEC等による血管平滑筋増殖抑制効果は、細胞療法を開発する上で十分に有用な情報を提供する。さらに血管平滑筋増殖抑制効果を伝達する責任分子が明らかになると、虚血性疾患に対する新規分子療法の開発が可能となり、虚血性疾患に対する治療技術は大きく前進する。具体的な新規分子療法としては、責任分子をコートしたステント療法の開発、責任分子の作用を増強する化合物の探索に基づく創薬事業の展開、責任分子の作用を増強するモノクローナル抗体の作製による抗体療法の開発等が挙げられる。
以上、多能性幹細胞血管内皮細胞被覆ステント等の形態をとる本発明の血管狭窄部挿入用基材の製造・販売は、将来的に世界各国に支店をもつ巨大プラント産業に展開できる。
〔実施例1〕カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞(cmESDEC)による血管平滑筋細胞増殖の抑制
(1)カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞(cmESDEC)の作成
1)分化培地の調製
カニクイザル胚性幹細胞(田辺三菱製薬株式会社より入手)から、以下に示す組成の分化培地(サイトカイン添加)を用いて分化誘導を行った。
・イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、シグマケミカル製)、
・15重量% 牛胎児血清(PAA Laboratories GmbH、オーストリア)
・1mM β−メルカプトエタノール(シグマケミカル製)、
・2mM L−グルタミン(インビトロジェン製)、
・終濃度20ng/ml 血管内皮成長因子(VEGF)、
・終濃度20ng/ml 骨形成タンパク質-4(BMP-4)、
・終濃度20ng/ml 幹細胞因子(SCF)、
・終濃度10ng/ml Flt3-リガンド、
・終濃度20ng/ml インターロイキン-3(IL3)、
・終濃度10ng/ml インターロイキン-6(IL6)
2)分化誘導の手技
ステップ(A)
分化培地(サイトカイン添加)を用いたハンギング・ドロップ法により、胚葉体類似の細胞凝集塊細胞を作成した。具体的には、カニクイザル胚性幹細胞を剥離液で回収した後、0.25%トリプシン液(インビトロジェン製)と37℃、5分間反応させることで1個の細胞レベルに分散させた。
3000個のカニクイザル胚性幹細胞を、30μlの分化培地(サイトカイン添加)に懸濁させて、マイクロピペットを用いて、直径10cmの培養皿の蓋の裏面にスポットしていった(1枚の培養皿において20〜30個程度のスポッティングが可能である)。乾燥を防ぐために、培地にさらに滅菌水を満たして、CO2インキュベーターにおいて、37℃、5体積%CO2で3日間浮遊培養した。
ステップ(B)
3日後には肉眼的に細胞凝集塊の形成が確認できたので、培養皿の蓋面を洗うようにしてこれを回収し、0.1%ゼラチンでコートした培養皿(直径10cmまたは6cm)の上で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて、CO2インキュベーターにおいて、37℃、5体積%CO2で接着培養を開始した。以後、3〜4日ごとに培地を交換した。カニクイザル胚性幹細胞の凝集塊は、平面上に広がりながら生長を続けた。
ステップ(C)
約2週間後に、嚢状構造物の形成、接着細胞の増殖、および浮遊細胞(球状細胞)の産生が確認された。培養上清を回収して遠心することで浮遊細胞(球状細胞)を沈降回収した。接着細胞は、トリプシン/EDTA液(インビトロジェン製)を用いて37℃、5分間反応させることで剥離回収した。
ステップ(D)
回収した接着細胞に関して、0.1%ゼラチンでコートした新しい培養皿で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて接着培養を行った。以後、3〜4日ごとに細胞をトリプシン/EDTA液を用いて剥離しながら、1/2〜1/3程度の希釈で継代を行った。
2継代目におけるフローサイトメトリー検査でVE-cadherinおよびPECAM1が細胞膜で発現している細胞、即ち、定型的なcmESDEC細胞が10%以上存在することが確認された。
(2)cmESDEC細胞シートの作成
温度感受性培養皿であるUpCell(登録商標、CellSeed株式会社製)にcmESDECを播種した。以後は、通常の継代増幅培養の際と同様に、37℃で、5%炭酸ガス培養装置内で培養した。3〜4日後に細胞がコンフルエント状態になったことを確認した後、培養皿を取出し室温にて45分程度放置した。この低温処理により細胞が部分的に剥離し始めた。
CellSeed株式会社の推奨する手順に則って、cmESDEC細胞シートを回収した。具体的には、最少量(50μl程度)を残して培養液を吸引したのち、滅菌した疎水性膜(市販のPVDF膜、CellShifter(CellSeed社)等)を細胞表面での気泡の混入に留意して密着させた。室温処理により細胞はUpCell底面から剥離しており、一方、毛細管現象により細胞は疎水性膜に密着するため、先端の鋭利なピンセットで疎水性膜を丁寧に剥離するとcmESDECは疎水性膜に密着した状態でシート状に回収された。なお、cmESDEC細胞シートの付着試験のために、細胞付着面を下にして疎水性膜をゼラチン・コート皿の底面に被せ、その上から同じ径の滅菌したアクリル製の重しを載せて一昼夜培養した。
(3)cmESDEC細胞シートの付着試験
一昼夜の培養後に重しを静かに外すと、疎水性膜は培地中に浮遊して剥離した。一方、cmESDEC細胞シートはゼラチン・コート皿にしっかりと接着していた。細胞生存性は良好に保たれていたため、cmESDECはその後も順調に増殖した。図1は、cmESDEC細胞シートを回収したのちに、ゼラチン・コート皿に移して培養を続行した際の位相差顕微鏡写真である(スケールは100μmを表す)。
細胞シートは、酵素処理を行なわずに細胞を剥離回収するため、細胞接着因子や細胞が分泌した細胞外マトリックスは完全に保持される。このため、細胞シートは、細胞培養皿に限らず生体組織を含めて細胞親和性をもったものであれば、何にでも貼付けて増殖させることが可能であった。
なお、図1に示すように、UpCell(登録商標)とCellShifterを用いて作製したcmESDECシートをゼラチン・コート皿に貼付けて炭酸ガス培養装置で培養する際に、一部の領域の細胞を剥離させても、残存領域(右上方部)から活溌に細胞増殖が起きるため、欠損部(左下方部)は3日程度でcmESDECにより完全に被覆された。cmESDECシートをステント等に貼付ける際に一部の領域の細胞集団を剥離脱落させてしまっても、ステントを培養することで、または移植した後にcmESDECが生体内で増殖することで剥離部に細胞が補充されるため、ステントまたは移植局所はcmESDECで全面的に被覆されることが確認された。
(4)cmESDECのAoSMC増殖抑制効果発現のためのin vitro試験
cmESDECを担持した基材が、ヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の増殖している血管狭窄部に直接挿入されてはじめて、AoSMC増殖抑制効果が発揮され、その結果、血管狭窄部の血行が再建されることを確かめるために、以下のシミュレーション実験を行った。それは、cmESDECとAoSMCとの共培養を、接触培養法(図2の(A)にモデル図)と非接触培養法(図3の(A)にモデル図)の二種類で行うものである。
図2の(A)に示すような接触培養法でcmESDECとAoSMCとの共培養を行うことは、本発明のようにcmESDECが基材に担持されて、AoSMCの増殖している血管狭窄部に直接挿入される態様を仮想するものである。即ち、接触培養法では、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞が共存する際、細胞同志の直接結合を介して発揮される効果と、液性因子を介して発揮される効果の総和となる。なお、ステントを使用していないが、in vivo系細胞同志の直接結合を再現できているので問題ない。
図3の(A)に示すような非接触培養法でcmESDECとAoSMCとの共培養を行うことは、cmESDECが全身投与された場合のように、AoSMCの増殖している血管狭窄部とは血管内の血液を介して間接に接触する態様を仮想するものである。非触培養法では、液性因子を介して発揮される効果のみが判定される。
1)接触培養法による共培養
あらかじめcmESDECに電離放射線(40Gy)を照射して細胞増殖を停止させた。この状態で一昼夜培養し、完全に細胞分裂を停止させた後、細胞をトリプシン処理により剥離回収した。
前記細胞をcarboxyfluorescein succinimidyl ester (CFSE)で蛍光標識した後、6穴培養皿にほぼコンフルエントになるように播種した(1×105cells/穴)。翌日、コンフルエント状態のcmESDECレイヤーの上に、あらかじめPKH-26で蛍光標識を施したAoSMCを播種した(3×104cells/穴)。EGM-2培地(Lonza社、スイス)を用いて4日間培養した。
培養後、全細胞を回収し、フローサイトメータで各細胞のCFSEとPKH-26の蛍光強度を測定した。蛍光解析では、まず、「CSFE陰性細胞集団」としてAoSMCを検出し、それらの細胞のPKH-26の蛍光強度に関して、細胞分裂に伴う減衰状況(細胞分裂に伴う細胞当りの蛍光強度の低下量)をModFit software (Verity Software House社、米国)を用いて解析し、増殖指数(proliferation index; 平均増殖回数)を算出した。図4に、cmESDECとAoSMCとの接触共培養におけるAoSMCの増殖指数の結果を示す。
2)非接触培養法による共培養
1)と同様に調製されたCSFE標識済みのcmESDEC、およびPKH-26標識済みのAoSMCを、それぞれ6穴のBoyden Chamber(ポアサイズは1μm)の上穴および下穴に播種した。
4日間の培養後にAoSMC(下穴)を回収し、1)と同様の解析を行うことで、AoSMCの増殖に対するcmESDECを定量的に評価した。図4に、ESDECとAoSMCとの非接触共培養におけるAoSMCの増殖指数の結果を示す。
また、コントロール(対照実験)として、ヒト初代血管内皮細胞の一種であるヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)および正常ヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)に対して、cmESDECと同様に接触培養および非接触培養の実験を行った。なお、HUVECおよびHAECは、2×105cells/穴で播種すると、コンフルエントになった。HUVECとAoSMCとの非接触共培養におけるAoSMCの増殖率の結果を図4示す。また、HAECとAoSMCとの非接触共培養におけるAoSMCの増殖率の結果を図5に示す。
図4で、cmESDECをAoSMCとともに非接触培養した場合にはAoSMCの増殖が有意に促進されている。一方、cmESDECをAoSMCとともに接触培養した場合にはAoSMCの増殖が有意に抑制される。これらのことから、cmESDECは、液性因子を介してAoSMCの増殖を促進する効果を持つものの、細胞同志の直接結合を介して非常に強力な増殖抑制効果が発揮されることがわかる。したがって、cmESDECをAoSMCに直接接触するような共存系を構築すれば、AoSMCの増殖が抑制されることが予測される。
対照実験のHUVECに関しては、液性因子を介してAoSMCの増殖を促進するだけでなく、細胞同志が接触している場合でもAoSMCの増殖が促進される。しかも、後者の増殖促進効果は、前者を上回る。即ち、HUVECとAoSMCが共存する際のAoSMCの細胞増殖は、常に強く促進される。
別の対照実験であるHAEC(図5)は、HUVECと同様に、AoSMCとの共培養時に接触培養法、非接触培養法のいずれも、AoSMCの増殖が促進されている。即ち、HAECとAoSMCが共存する際には、AoSMCの細胞増殖は常に促進される。
以上、cmESDECとAoSMCとの接触共培養のみがAoSMCの増殖を有意に抑制したことから、ESDECを付着させたステントを血管狭窄部に挿入することで血管狭窄部での血管平滑筋の増殖を抑制することができ、ひいては血管の再建が可能であることが証明された。
〔実施例2〕ヒトES細胞由来血管内皮細胞(hESDEC)による血管平滑筋細胞増殖の抑制
(1)ヒトES細胞由来血管内皮細胞(hESDEC)の作成
1)分化培地の調製
京都大学再生医科学研究所にて樹立されたヒト胚性幹細胞(khES-3株)から、以下に示す組成の分化培地(サイトカイン添加)を用いて分化誘導を行った。
・イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、シグマケミカル製)、
・15重量% 牛胎児血清(PAA Laboratories GmbH、オーストリア)
・1mM β−メルカプトエタノール(シグマケミカル製)、
・2mM L−グルタミン(インビトロジェン製)、
・終濃度20ng/ml 血管内皮成長因子(VEGF)、
・終濃度20ng/ml 骨形成タンパク質-4(BMP-4)、
・終濃度20ng/ml 幹細胞因子(SCF)、
・終濃度10ng/ml Flt3-リガンド、
・終濃度20ng/ml インターロイキン-3(IL3)、
・終濃度10ng/ml インターロイキン-6(IL6)
2)分化誘導の手技
ステップ(A)
分化培地(サイトカイン添加)を用いた浮遊培養法により、胚葉体類似の細胞凝集塊細胞を作成した。具体的には、直径10cmの円形培養皿で維持中のヒト胚性幹細胞を専用剥離液(リプロセル製)で処理することで剥離回収し、さらにピペッティング操作により細胞集塊をできるだけ細かく分散させた。この際、完全に1個の細胞レベルにまで分散させると細胞生存性が著しく損なわれるため、数個-数十個程度の細胞からなる微小集塊に分散させることを目指してピペッティングを行った。
回収されたヒト胚性幹細胞の微小集塊を、分化培地(サイトカイン不含)で洗浄した後、分化培地(サイトカイン添加)に懸濁させた。これを直径6cmの低吸着培養皿(ヌンク製)に移して、CO2インキュベーターにおいて、37℃、5体積%COで3日間浮遊培養した。
ステップ(B)
3日後には培養液中に多数の細胞凝集塊の形成が肉眼的に確認されたので、これらを回収して、0.1%ゼラチンでコートした培養皿(直径10cmまたは6cm)の上で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて、COインキュベーターにおいて、37℃、5体積%COで接着培養を開始した。以後、3〜4日ごとに培地を交換した。ヒト胚性幹細胞の凝集塊は、平面上に広がりながら生長を続けた。
ステップ(C)
約2週間後に、嚢状構造物の形成、接着細胞の増殖、および浮遊細胞(球状細胞)の産生が確認された。培養上清を回収して遠心することで浮遊細胞(球状細胞)を沈降回収した。接着細胞は、トリプシン/EDTA液(インビトロジェン製)を用いて37℃、5分間反応させることで剥離回収した。
ステップ(D)
回収した接着細胞に関して、0.1%ゼラチンでコートした新しい培養皿で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて接着培養を行った。以後、3〜4日ごとに細胞をトリプシン/EDTA液を用いて剥離しながら1/2〜1/3程度の希釈で継代を行ったところ、老化による細胞停止まで約10回の継代培養が可能であった。なお、実施例1のカニクイザルES細胞の場合と同様に、細胞表面マーカー発現および機能アッセイにより、全ての細胞が血管内皮細胞に分化していることが確認された。
(2)hESDECのAoSMC増殖抑制効果発現のためのin vitro試験
実施例1の1)接触培養法による共培養および2)非接触法による共培養に記載した方法に従って、hESDECがAoSMCの増殖に与える影響を調べた。結果を図6に示す。
図6に示すように、hESDECにおいても、実施例1のcmESDECと同様の結果が得られた。即ち、非接触培養では可溶性因子を介したAoSMC増殖促進効果が認められたものの、接触培養ではそれを凌駕する強力な増殖抑制効果が直接的な細胞間相互作用により伝達されたために、総体としてhESDECはAoSMCの増殖を抑制することが確認された。
また、追加のコントロール(対照実験)として、実施例1で使用したHUVECやHAEC以外のヒト初代培養血管内皮細胞であるヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC)およびヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)を用いて実験を行った。結果は、図7に示すように、HUVECやHAECと同様の結果が得られた。即ち、HCAECとHMVECは、いずれもAoSMCの増殖を促進し、その作用には可溶性因子を介することが確認された。以上より、hESDECは、AoSMC増殖抑制効果を発揮するが、ヒト初代培養血管内皮細胞はその作用が欠如していることが明らかとなった。
〔実施例3〕ヒト末梢血由来血管内皮前駆細胞(EPC)由来成熟血管内皮細胞(hEPCDEC)による血管平滑筋細胞増殖の抑制
(1)ヒト末梢血由来血管内皮前駆細胞(EPC)を用いた成熟血管内皮細胞(hEPCDEC)の作成
大日本製薬(株)からヒト末梢血単核球に由来するEPCの2つの異なるロットを入手した。EPCは専用培地(大日本製薬製)を用いて、30倍希釈したMatrigel(商標)Matrix (BD Biosciences製)をコートした培養皿の上で、7回継代培養することで成熟化を促した。数回程度の継代後には、組織幹駆細胞(未熟細胞)のマーカーとして知られるCD133およびCD34の発現が消失するとともに、血管内皮細胞のマーカーであるVE-cadherinやPECAM1がほぼ全ての細胞で発現していることが確認された。
(2)hEPCDECによるAoSMC増殖抑制効果のin vitro試験
実施例1の1)接触培養法による共培養、および2)非接触法による共培養に記載した方法に従って、(1)で作製された「ヒトEPC由来成熟血管内皮細胞(hEPCDEC)」がAoSMCの増殖に与える影響を調べた。結果を図8に示す。
図8に示すように、hEPCDECについても、実施例1のcmESDECや実施例2のhESDECと同様の結果が得られた。即ち、非接触培養で、可溶性因子を介したAoSMCの増殖促進効果が認められた。一方、接触培養では、それを凌駕する強力な増殖抑制効果が直接的な細胞間相互作用により伝達されたことにより、総体としてAoSMCの増殖を抑制することが明らかとなった。
〔実施例4〕hEPCDECの継代回数の血管平滑筋細胞増殖抑制効果への影響
実施例3のロット2のhEPCDECに関して、「継代数」と「AoSMC増殖抑制効果」との関連を調べた。具体的には、9継代目、12継代目、および15継代目のhEPCDECに関してAoSMC増殖抑制効果を調べた(図8は7継代目のhEPCDECでのデータである)。結果を図9に示す。
図9において、9および12継代目のhEPCDECで明瞭であったAoSMC増殖抑制効果が、15継代目で減弱した。即ち、hEPCDECのAoSMC増殖抑制作用は、継代培養操作を繰り返すことで消失することが明らかとなった。
〔実施例5〕AoSMC増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング
(1)各種の細胞固定剤の影響
実施例1〜4に記載したように、cmESDEC、hESDEC、hEPCDEC等は、AoSMCに対する増殖抑制作用を直接的細胞間相互作用により発揮する。当該作用を伝達する責任分子に対するアルデヒト系、アルコール系、界面活性剤等の細胞固定剤の影響を調べることは、責任分子の分子機構を明らかにする有用な情報を与える。
(I):アルデヒト系細胞固定液の影響
一般的な蛋白架橋剤であるアルデヒト系細胞固定液の影響を調べるため、実施例3のhEPCDECを汎用の方法によりグルタールアルデヒト(2.5%)溶液で固定し、その上にPKH-26で染色したAoSMCを播種して培養した。4日後に、実施例1と同様にして、平均細胞分裂回数を算出した。結果を図10(左)に示す。グルタールアルデヒト固定を行っても、AoSMC増殖抑制効果が保持されることが判明した。なお、グルタールアルデヒト固定液の非特異的細胞毒性により増殖抑制効果が発揮されたのではないことは、Matrigel(商標)Matrixでコートした培養皿をグルタールアルデヒト処理した際には、AoSMC増殖抑制効果が発揮されなかったことから否定された。「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する責任分子は、蛋白架橋剤であるアルデヒド含有液による処理後にもその機能を保持したことから、微細構造変化があっても機能が保持される安定な蛋白性分子、または脂質や多糖体等の非蛋白性分子であると結論された。
(II)アルコール系細胞固定液の影響
(I)で記載した実験と同様にして、汎用の方法でアセトン/メタノール(1:3)混合液でhEPCDECを固定し、その上にPKH-26で染色したAoSMCを播種した。4日間の培養後、平均細胞分裂回数を算出した。結果を、図10(中)に示す。AoSMC増殖抑制効果は完全に消失し、かつ顕著なAoSMC増殖促進効果が検出された。また、汎用の酢酸/エタノール固定でも同様の結果が得られた。この結果から、「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する分子は、脱脂作用の強いアルコール含有固定液によりその機能を喪失したことから、脂質、糖脂質、または機能発現に脂質成分が重要である蛋白性分子(glycosylphosphatidylinositol (GPI)-アンカー蛋白等)であると結論された。
(III)界面活性化剤の影響
(I)で記載した実験と同様にして、汎用の方法によりデオキシコール酸溶液(0.1%−0.5%)でhEPCDECを固定し、その上にPKH-26で染色したAoSMCを播種した。4日間の培養後、平均細胞分裂回数を算出した。なおデオキシコール酸による固定では細胞は完全に剥離し、細胞外マトリックスのみが残存する。結果を、図10(右)に示す。AoSMC増殖抑制効果は完全に消失し、かつ顕著なAoSMC増殖促進効果が検出された。この結果から、「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する責任分子は、細胞実質成分(細胞膜を含む)に由来するものであり、細胞外のマトリックス成分に由来するものではないと結論された。
(2)血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ細胞群と持たない細胞群について遺伝子発現に関する網羅的解析
(1)により、「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する分子は、細胞実質に由来する脂質、糖脂質、または機能発現に脂質成分が重要な蛋白性分子であると結論された。ここではまず、当該分子が「機能発現に脂質成分が重要な蛋白性分子」である可能性に関して、マイクロアレイを用いた遺伝子発現に関する網羅的解析により、その候補を絞った。具体的には、
・ 第一群として「AoSMC増殖抑制効果を持つヒト血管内皮細胞」であるhESDEC、および継代数の少ないhEPCDEC、
・ 第二群として「AoSMC増殖抑制効果のないヒト血管内皮細胞」であるHUVEC, HAEC, HUVEC、および継代数の多いhEPCDEC
からRNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析をHuman Genome U133 Plus 2.0 Array(Affymetrix製)およびHuman Gene 1.0 ST Array(Affymetrix製)を用いて行った。そして、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子11個を抽出することができた。結果を表1に示す。
1 6穴培養皿
2 培養液(EGM-2培地)
3 6穴6Boyden Chamber
4 上穴
5 下穴
AoSMC ヒト大動脈平滑筋細胞
cmESDEC カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞
hESDEC ヒトES細胞由来血管内皮細胞
hEPCDEC ヒト血管内皮前駆細胞由来成熟血管内皮細胞
HUVEC ヒト臍帯静脈血管内皮細胞
HAEC ヒト大動脈血管内皮細胞
HCAEC ヒト冠状動脈内皮細胞
HMVEC ヒト皮膚微小管内皮細胞

Claims (4)

  1. (A) 霊長類動物多能性幹細胞を、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、血管内皮成長因子(VEGF)、骨形成タンパク質(BMP)、オンコスタチンM、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(acidic FGF、basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
    (B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、骨形成タンパク質、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、ゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
    (C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
    (D) ステップ(C)で分離された接着細胞をゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
    により分化誘導された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞を、ヒト初代培養血管内皮細胞と比較して有意な発現量の変化を認めた細胞膜蛋白コード遺伝子を抽出する
    ことからなる、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。
  2. (E) 霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞に対する細胞固定剤の影響を調べることで、血管平滑筋細胞増殖抑制因子の性格付けを行うステップ、
    (F) 血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ細胞群である霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞と、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない細胞群であるヒト初代培養血管内皮細胞について遺伝子発現に関する網羅的解析を行うことで血管平滑筋細胞増殖抑制因子の候補を絞るステップ、
    および
    (G) ステップ(F)で得られた候補分子の中からステップ(E)で得られたキャラクタリゼーションの結果に合うものを選別するステップ、
    を含む、請求項に記載の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。
  3. ステップ(E)の細胞固定剤は、アルデヒト系細胞固定剤、アルコール系細胞固定剤および界面活性化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項に記載の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。
  4. ステップ(F)は、
    第一群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞、ならびに
    第二群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない臍帯静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞、冠状動脈血管細胞または微小血管内皮細胞などのヒト初代培養血管内皮細胞から、それぞれ、RNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析をマイクロアレイで行い、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子を抽出する
    ことを特徴とする、請求項またはに記載の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。
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