JP6950886B2 - 三胚葉の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多能性幹細胞を培養することを含む三胚葉(中胚葉、内胚葉、外胚葉)のいずれかの製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、膜を用いて多能性幹細胞を培養することを含む三胚葉のいずれかの製造方法に関する。
再生医療は、ドナー不足を課題とする臓器移植の代替法やこれまで治療法のなかった難病の新たな治療法開発など大きな期待が寄せられている。胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は多能性及び無限増殖性を有しているため、再生医療に必要とされる細胞を調製するための細胞ソースとして期待されている。これらの多能性幹細胞を用いた再生医療の実用化に際しては、多能性幹細胞を効率よく目的細胞に分化誘導させる技術の確立が必要である。
一般的には、各種の分化誘導因子(サイトカイン、成長因子、液性因子又は増殖因子と言う場合もある)を添加した液体培地中において多能性幹細胞を培養することによって、多能性幹細胞の分化誘導が行われている。例えば、特許文献1には、多能性幹細胞を内胚葉系細胞へ分化させるためにアクチビンAを含む分化培地において多能性幹細胞を培養するステップと、前記内胚葉系細胞にpdx−1 mRNAをトランスフェクトして、さらに分化した細胞を生じさせるステップと、ニコチンアミド、エキセンディン4、及びGLP−1からなる群から選択される成熟因子を含む培地において前記さらに分化した細胞を培養し、それにより、多能性幹細胞から膵島細胞を作製するステップとを含む、多能性幹細胞から膵島細胞を作製する方法が記載されている。
細胞の培養中に、分化誘導シグナルを細胞に継続的に送るためには培地交換のたびに分化誘導因子を添加することが必要である。しかし、これらの分化誘導因子は一般に高価であり、コストがかかるという問題がある。
一方、膜を用いた細胞培養装置及び細胞培養方法が知られている。特許文献2には、装置ハウジングと、半透膜から構成される基礎培地区画と、細胞培養区画と、基礎培地区画アクセスポートと、細胞培養区画アクセスポートとを備え、前記基礎培地区画は、前記細胞培養区画の全長よりも短くされている仕切装置が記載されている。
特許文献3には、幹細胞の分化が可能な環境下で幹細胞を培養すること、及び上記細胞により産生される微粒子を回収することを含む幹細胞微粒子の製造方法が記載されており、幹細胞の分化が可能な環境が、多区画のバイオリアクタ中の培養であり、例えば、バイオリアクタが細胞を含有する区画をガス及び/又は培養培地を含有する1つ以上の区画から分離する1つ以上の膜又は障壁で分離されている少なくとも2つの区画を含有する方法が記載されている。
非特許文献1には、多能性幹細胞の未分化維持培養に関する透析培養の利用が報告されている。非特許文献2には、透析膜を用いた培養装置においてiPS細胞を高密度で懸濁培養することが報告されている。また、非特許文献3には、ES細胞を利用した神経細胞への分化誘導において透析システムを利用することが報告されている。
特開2015−165783号公報 特表2007−510433号公報 特表2015−529450号公報
Nath SC, et al., Culture medium refinement by dialysis for the expansion of human induced pluripotent stem cells in suspension culture. Bioprocess Biosyst Eng. 2016 Sep 16. 化学工学会 第48回秋季大会、講演番号LQ286、Small-scale high-cell-density iPS cell suspension culture device using dialysis membranes for optimization of operations conditions Come J, et al., Improvement of culture conditions of human embryoid bodies using a controlled perfused and dialyzed bioreactor system. Tissue Eng Part C Methods. 2008 Dec;14(4):289-98.
まず、分化誘導効率の向上を図ることは、分化誘導された細胞の機能性向上という観点だけでなく、細胞の高品質化という観点からも重要である。
また、多能性幹細胞の分化誘導において、高価な分化誘導因子を使用することによりコストが高くなるという問題がある。多能性幹細胞から三胚葉のいずれか(例えば、内胚葉系細胞)へ分化誘導する培養は、その後に膵臓や肝臓の細胞へと分化させる上で分化効率に大きく影響するステップであるとともに、アクチビン等の高価な分化誘導因子を使用するステップでもあり、分化誘導因子の使用量を低減することによりコストを低減することが求められている。従来の分化誘導方法では、多能性幹細胞から目的細胞への分化誘導の効率が十分に高いとは言えない場合もあり、更なる改善が求められている。
本発明は、多能性幹細胞を培養することを含む三胚葉のいずかの製造方法であって、分化誘導因子の使用量を低減し、且つ、効率的な分化誘導を可能とする方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、膜を用いて多能性幹細胞を培養することにより、分化誘導時の律速となりうる栄養素(グルコース等)の安定供給と老廃物(乳酸)の除去をしながら分化を行なうことができ、これにより、三胚葉への分化誘導効率を向上させることが可能となり、分化誘導された細胞の品質の向上と培養コストの低減に寄与できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本明細書によれば、以下の発明が提供される。
(1) 培地と分化誘導因子とを含む第一領域と、培地成分の少なくとも一部を含む第二領域とを有し、前記第一領域と前記第二領域とが膜で隔離されている培養装置を用いて前記第一領域において多能性幹細胞を培養することを含む、三胚葉のいずれかの製造方法。
(2) 前記三胚葉のいずれかが、内胚葉系細胞である(1)に記載の方法。
(3) 前記培地成分の少なくとも一部が、グルコースである、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 膜の分画分子量が500〜17,000である、(1)から(3)の何れか一に記載の方法。
(5) 前記第一領域と前記第二領域とが膜を隣接して配置され、前記膜を介して前記第一領域と前記第二領域との間で物質交換がなされる、(1)から(4)の何れか一に記載の方法。
(6) 第一領域の培地におけるグルコース濃度が培養中において1.0g/L以上に維持される、(1)から(5)の何れか一に記載の方法。
(7) 第一領域の培地における乳酸濃度が培養中において7mM以下に維持される、(1)から(6)の何れか一に記載の方法。
(8) 前記分化誘導因子が、少なくともTGFβスーパーファミリーシグナル活性化剤を含む、(1)から(7)の何れか一に記載の方法。
(9) 前記TGFβスーパーファミリーシグナル活性化剤が、アクチビンA、FGF2及びBMP4からなる群から選択される少なくとも1種類である、(8)に記載の方法。
(10) 第一領域におけるアクチビンAの添加初期濃度が、1ng/mL〜1,000ng/mLである、(9)に記載の方法。
(11) 第一領域におけるFGF2の添加初期濃度が、1ng/mL〜1,000ng/mLである、(9)又は(10)に記載の方法。
(12) 第一領域におけるBMP4の添加初期濃度が、1ng/mL〜1,000ng/mLである、(9)から(11)の何れか一に記載の方法。
(13) 前記分化誘導因子が、さらにWNTシグナル活性化剤を含む、(1)から(12)の何れか一に記載の方法。
(14) 多能性幹細胞が、iPS細胞である、(1)から(13)の何れか一に記載の方法。
(15) 前記第一領域と前記第二領域が培地を含み、第一領域の培地量と第二領域の培地量の体積比が、1:100から1:1である、(1)から(14)の何れか一に記載の方法。
(16) 前記第一領域における細胞の密度が、10の5乗〜10の7乗cells/mLである、(1)から(15)の何れか一に記載の方法。
本発明の製造方法によれば、分化誘導因子の使用量を低減し、且つ、多能性幹細胞から三胚葉のいずれかへの効率的な分化誘導ができ、分化誘導された細胞の品質の向上と培養コストの低減に寄与することができる。
図1は、本発明で用いる培養装置の一例を示す。 図2は、透析膜を底面に貼付けた培養容器を示す。 図3は、未分化マーカー遺伝子の発現解析(残存量)の結果を示す。 図4は、内胚葉分化マーカー遺伝子の発現解析(発現量)の結果を示す。 図5は、培養上清中のグルコース濃度の推移を示す。 図6は、培養上清中の乳酸濃度の推移を示す。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、下記の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が下記の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も本発明の範囲に含まれる。
[1]多能性幹細胞
本発明の方法においては、多能性幹細胞を培養することによって三胚葉のいずれか(内胚葉系細胞、中胚葉系細胞、又は外胚葉系細胞)の細胞集団を製造する。
多能性幹細胞とは、生体を構成する全ての種類の細胞に分化することができる多分化能(多能性)を有する細胞であって、適切な条件下のインビトロ(in vitro)での培養において多能性を維持したまま無限に増殖を続けることができる細胞をいう。具体的には胚性幹細胞(ES細胞)、胎児の始原生殖細胞由来の多能性幹細胞(EG細胞:Proc Natl Acad Sci U S A.1998,95:13726−31)、精巣由来の多能性幹細胞(GS細胞:Nature.2008,456:344−9)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells;iPS細胞)、ヒトの体性幹細胞(組織幹細胞)などが挙げられる。多能性幹細胞は、好ましくは、iPS細胞又はES細胞であり、より好ましくはiPS細胞である。
ES細胞としては、任意の温血動物、好ましくは哺乳動物に由来する細胞を使用できる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、又はヒトが挙げられる。好ましくはヒトに由来する細胞を使用できる。
ES細胞の具体例としては、着床以前の初期胚を培養することによって樹立した哺乳動物等のES細胞、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立したES細胞、及びこれらのES細胞の染色体上の遺伝子を遺伝子工学の手法を用いて改変したES細胞が挙げられる。各ES細胞は当分野で通常実施されている方法や、公知文献に従って調製することができる。 マウスのES細胞は、1981年にエバンスら(Evans et al.,1981,Nature 292:154−6)や、マーチンら(Martin GR.et al.,1981,Proc Natl Acad Sci 78:7634−8)によって樹立されている。 ヒトのES細胞は、1998年にトムソンら(Thomson et al.,Science,1998,282:1145−7)によって樹立されており、WiCell研究施設(WiCell Research Institute、ウェブサイト:http://www.wicell.org/、マジソン、ウイスコンシン州、米国)、米国国立衛生研究所(National Institute of Health)、京都大学などから入手可能であり、例えばCellartis社(ウェブサイト:http://www.cellartis.com/、スウェーデン)から購入可能である。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、体細胞を初期化することによって得られる多能性を有する細胞である。iPS細胞の作製は、京都大学の山中伸弥教授らのグループ、マサチューセッツ工科大学のルドルフ・ヤニッシュ(Rudolf Jaenisch)らのグループ、ウイスコンシン大学のジェームス・トムソン(James Thomson)らのグループ、ハーバード大学のコンラッド・ホッケドリンガー(Konrad Hochedlinger)らのグループなどを含む複数のグループが成功している。例えば、国際公開WO2007/069666号公報には、Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子及びMycファミリー遺伝子の遺伝子産物を含む体細胞の核初期化因子、並びにOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、Soxファミリー遺伝子及びMycファミリー遺伝子の遺伝子産物を含む体細胞の核初期化因子が記載されており、さらに体細胞に上記核初期化因子を接触させる工程を含む、体細胞の核初期化により誘導多能性幹細胞を製造する方法が記載されている。
iPS細胞の製造に用いる体細胞の種類は特に限定されず、任意の体細胞を用いることができる。即ち、体細胞とは、生体を構成する細胞の内生殖細胞以外の全ての細胞を包含し、分化した体細胞でもよいし、未分化の幹細胞でもよい。体細胞の由来は、哺乳動物、鳥類、魚類、爬虫類、両生類の何れでもよく特に限定されないが、好ましくは哺乳動物(例えば、マウスなどのげっ歯類、又はヒトなどの霊長類)であり、特に好ましくはマウス又はヒトである。また、ヒトの体細胞を用いる場合、胎児、新生児又は成人の何れの体細胞を用いてもよい。体細胞の具体例としては、例えば、線維芽細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)、上皮細胞(例えば、胃上皮細胞、肝上皮細胞、肺胞上皮細胞)、内皮細胞(例えば血管、リンパ管)、神経細胞(例えば、ニューロン、グリア細胞)、膵臓細胞、白血球細胞(B細胞、T細胞等)、骨髄細胞、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞)、肝実質細胞、非肝実質細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、歯周組織を構成する細胞(例えば、歯根膜細胞、セメント芽細胞、歯肉線維芽細胞、骨芽細胞)、腎臓・眼・耳を構成する細胞などが挙げられる。
iPS細胞は、所定の培養条件下(例えば、ES細胞を培養する条件下)において長期にわたって自己複製能を有し、また所定の分化誘導条件下において外胚葉、中胚葉又は内胚葉への多分化能を有する幹細胞である。また、iPS細胞はマウスなどの試験動物に移植した場合にテラトーマを形成する能力を有する幹細胞でもよい。
体細胞からiPS細胞を製造するためには、まず、少なくとも1種類以上の初期化遺伝子を体細胞に導入する。初期化遺伝子とは、体細胞を初期化してiPS細胞とする作用を有する初期化因子をコードする遺伝子である。初期化遺伝子の組み合わせの具体例としては、以下の組み合わせをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
(i)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子、Myc遺伝子
(ii)Oct遺伝子、Sox遺伝子、NANOG遺伝子、LIN28遺伝子
(iii)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子、Myc遺伝子、hTERT遺伝子、SV40 largeT遺伝子
(iv)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子
上記以外にも、導入遺伝子をさらに減らした方法(Nature.2008 Jul 31;454(7204):646−50)、低分子化合物を利用した方法(Cell Stem Cell.2009 Jan 9;4(1):16−9、Cell Stem Cell.2009 Nov 6;5(5):491−503)、遺伝子の代わりに転写因子タンパク質を利用した方法(Cell Stem Cell.2009 May 8;4(5):381−4)などが報告されており、いずれの方法で製造されたiPS細胞でもよい。
[2]三胚葉
本発明の方法によれば、多能性幹細胞から三胚葉のいずれかを製造できる。
三胚葉としては、内胚葉系細胞、中胚葉系細胞、又は外胚葉系細胞のいずれでもよい。
内胚葉系細胞は、消化管、肺、甲状腺、膵臓、肝臓などの器官の組織、消化管に開口する分泌腺の細胞、腹膜、胸膜、喉頭、耳管、気管、気管支、尿路(膀胱、尿道の大部分、尿管の一部)などへと分化する。多能性幹細胞から内胚葉系細胞への分化は、内胚葉系細胞に特異的な遺伝子の発現量を測定することにより確認することができる。内胚葉系細胞に特異的な遺伝子としては、例えば、SOX17、FOXA2、CXCR4、AFP、GATA4、EOMES等を挙げることができる。
中胚葉系細胞は、体腔及びそれを裏打ちする中皮、筋肉、骨格、皮膚真皮、結合組織、心臓、血管(血管内皮も含む)、血液(血液細胞も含む)、リンパ管、脾臓、腎臓、尿管、性腺(精巣、子宮、性腺上皮)などへと分化する。中胚葉系細胞に特異的な遺伝子としては、例えば、MESP1、MESP2、FOXF1、BRACHYURY、HAND1、EVX1、IRX3、CDX2、TBX6、MIXL1、ISL1、SNAI2、FOXC1及びPDGFRα等を挙げることができる。
外胚葉系細胞は、皮膚の表皮や男性の尿道末端部の上皮、毛髪、爪、皮膚腺(乳腺、汗腺を含む)、感覚器(口腔、咽頭、鼻、直腸の末端部の上皮を含む、唾液腺)水晶体などを形成する。外胚葉の一部は発生過程で溝状に陥入して神経管を形成し、脳や脊髄などの中枢神経系のニューロンやメラノサイトなどの元にもなる。また末梢神経系も形成する。外胚葉系細胞に特異的な遺伝子としては、例えば、FGF5、OTX2、SOX1、PAX6等を挙げることができる。
本発明の方法で製造される三胚葉のいずれか(即ち、三胚葉のいずれかの細胞集団)は、内胚葉系細胞集団、中胚葉系細胞集団又は外胚葉系細胞集団のいずれでもよいが、特に好ましくは内胚葉系細胞集団である。
本発明の方法によれば、多能性幹細胞から分化誘導された内胚葉系細胞集団を用いて、例えば、膵臓、肝臓、胃、腸などの消化器系の治療用細胞を得ることができる。
腸系では、クリプト細胞などの腸前駆細胞を得た場合には、これをカテーテルなどで移植することにより、潰瘍性大腸炎、クローン病、短腸症などの治療へ利用できる。
膵臓系では、例えばインスリン産生細胞(β細胞)を得た場合には、これをカテーテルなどであるいは免疫隔離デバイス等に封入して移植することにより、糖尿病の治療へ利用できる。
肝臓系では、例えばアルブミン産生細胞を得た場合には、これをカテーテルなどであるいは免疫遮断デバイスに封入して移植することにより、大量出血を伴う外傷治療などへ利用できる。
また、膵臓、肝臓、胃、腸などの消化器系における治療用組織を、高分子支持担体などを利用して培養することにより得ることもできる。例えば、肝臓組織を誘導して得た場合は、肝癌、肝硬変、急性肝不全や、ヘモクロマトーシスなどの肝代謝障害の治療へ利用できる。肺細胞組織を得た場合、これを患部へ移植することにより嚢胞性線維症や喘息などの肺呼吸器疾患治療へ利用できる。腎臓系では、メサンギウム細胞や尿細管上皮細胞、糸球体細胞など含む組織を得た場合、これを直接移植することにより、腎不全や腎炎の治療や透析治療などへ利用できる。肝臓系の、物質代謝が可能な細胞を得ることにより、アルブミン産生細胞、血液凝固因子産生細胞、α1アンチトリプシンなどの代謝酵素産生細胞を作製し、産生した代謝酵素を直接注射するか点滴投与することにより、これらのタンパク質の欠乏症の治療に用いることができる。例えばβ細胞などの、物質代謝が可能な膵臓系の細胞を得ることにより、インスリン産生細胞を作製し、産生したインスリンを直接注射することにより、I型糖尿病の治療に用いることもできる。
さらに、本発明の方法で得られる三胚葉ならびにそこから得られる体細胞は、被検物質の薬効/毒性評価や作用メカニズムの解明、あるいは生物現象メカニズムの解析に用いることも可能である。
[3]培養装置
本発明においては、培地と分化誘導因子とを含む第一領域と、培地成分の少なくとも一部を含む第二領域とを有し、前記第一領域と前記第二領域とが膜で隔離されている培養装置を用いて前記第一領域において多能性幹細胞を培養する。
第一領域は、培地と分化誘導因子とを含む領域であり、多能性幹細胞が培養される領域である。第二領域は、培地成分の少なくとも一部を含む領域である。第一領域と前記第二領域とは膜で隔離されており、膜を介して、第一領域と第二領域との間では物質交換が行われる。
好ましくは、第一領域と第二領域とは膜を隣接して配置され、膜を介して第一領域と第二領域との間で物質交換がなされる。上記の態様の一例として、本発明で用いることができる培養装置の構成の一例の模式図を図1に示す。図1において、第一領域1には培地2が含まれており、培地2には、分化誘導因子が添加されている。第二領域3には、培地成分の少なくとも一部4が含まれている。そして、第一領域1と第二領域3とは、膜5で隔離されている。
本発明においては、第二領域に含まれている培地成分の少なくとも一部が、グルコースであることが好ましい。図1では、培地成分の少なくとも一部4としてグルコースが第二領域に含まれている場合を示す。第一領域1において、多能性幹細胞を培養すると、多能性幹細胞の代謝により、第一領域の培地に含まれる乳酸濃度は増大するが、乳酸濃度の増大に伴って、第一領域1の培地に含まれる乳酸は膜5を介して第二領域3に移動し、第一領域の培地に含まれる乳酸濃度の増大は抑制される。また、多能性幹細胞を培養すると、多能性幹細胞の代謝により、第一領域の培地に含まれるグルコース濃度は減少するが、グルコース濃度の減少に伴って、第二領域3の培地に含まれるグルコースは膜5を介して第一領域1に移動し、第一領域の培地に含まれるグルコース濃度の減少は抑制される。
上記したメカニズムにより、第一領域1において多能性幹細胞の分化誘導を効率的に行うことが可能になる。
なお、図1に示した培養装置の構成は、培養装置の一例を示したものであり、上記以外の構成の培養装置を使用することも可能である。例えば、国際公開WO2013/161885号公報に記載されている細胞培養システムに準じた構成を採用することも可能である。国際公開WO2013/161885号公報に記載されている細胞培養システムは、細胞を培養するための細胞培養槽と、成分調整液貯留槽と、細胞培養液及び/又は成分調整液の入口と出口とを有し、半透膜を備える培養液成分調整手段と、前記細胞培養槽及び/又は前記成分調整液貯留槽から前記培養液成分調整手段の入口に接続された入口接続送液回路と、前記細胞培養槽及び/又は前記成分調整液貯留槽から前記培養液成分調整手段の出口に接続された出口接続送液回路と、前記入口接続送液回路から前記培養液成分調整手段を経て前記出口接続送液回路に前記細胞培養液及び/又は前記成分調整液を灌流する手段と、前記細胞培養槽の液量を調整する手段とを備える細胞培養システムである。本発明においては、上記のように、細胞培養槽(本発明で言う第一領域)と成分調整液貯留槽(本発明で言う第二領域)とを送液回路で連結し、送液回路中に設けた送液手段により細胞培養槽中の培養液を循環させ、その循環の途中において培養液成分調整手段(本発明で言う膜)を介して、培養液と成分調整液貯留槽中の液体との間で物質交換を行うというシステムを採用することも可能である。
本発明においては、グルコース及び乳酸は膜を介して第一領域と第二領域との間を移動できることが好ましい。また、本発明においては、第一領域に含まれる分化誘導因子は、膜を通過して第二領域に移動しないことが好ましい。
本発明で用いる膜としては、例えば、透析膜を使用することができる。透析膜とは、分子量に応じて分画できる半透膜であり、好ましくは、膜中に実質的に同一形状の連通孔を多数有し、膜の両側の濃度差によって分子を分離できるものである。
透析膜等の膜の分画分子量は目的に応じて適宜変更可能であるが、下限は500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、1000以上、1200以上、1400以上、1600以上、1600以上、2000以上、2200以上、2400以上、2600以上、2800以上、3000以上、又は3200以上が好ましい。膜の分画分子量の上限は、50,000以下、45,000以下、40,000以下、35,000以下、30,000以下、25,000以下、20,000以下、19,000以下、18,000以下、17,000以下、16,000以下、15,000以下、14,000以下、13,000以下、12,000以下、11,000以下、10,000以下、9,000以下、8,000以下、7,000以下、6,000以下、又は5,000以下が好ましい。膜の分画分子量は、例えば、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000又は50,000であるが、特に限定しない。
膜の材料は特に限定されず、例えば、再生セルロース、アセチルセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール、テフロン(登録商標)、ポリエステル系ポリマーアロイ、ポリスルホン、ポリアミドなどを挙げることができる。
[4]多能性幹細胞の維持培養
上記した膜を有する培養装置を用いて多能性幹細胞の分化誘導を行う前の多能性幹細胞は、未分化維持培地を用いて未分化性を維持したものとすることが好ましい。非分化誘導化培地を用いて多能性幹細胞の未分化性を維持する培養のことを、多能性幹細胞の維持培養ともいう。
未分化維持培地は、多能性幹細胞の未分化性を維持できる地であれば特に限定されないが、例えば、マウス胚性幹細胞及びマウス人工多能性幹細胞の未分化性を維持する性質を有していることが知られているleukemia inhibitory factorを含む培地や、ヒトiPSの未分化性を維持する性質を有していることが知られているbasic FGF(Fibroblast growth factor)を含む培地等が挙げられる。例えば、Essential 8培地(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)(Thermo Fisher Scientific社)、STEMPRO(登録商標)hESC SFM(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)、mTeSR1(Veritas社)、TeSR2(Veritas社)、StemFit(登録商標)等を使用することができるが、特に限定されない。また、未分化維持培地には、ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンフォテリシンBなどの抗生物質、及びCulture sure Y−27632(和光純薬工業)等のROCK阻害剤を添加してもよい。
多能性幹細胞の維持培養は、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、又はマトリゲル等の細胞接着タンパク質をコートした細胞培養用ディッシュ上において上記した未分化維持培地を用いて行うことができる。
多能性幹細胞の維持培養は継代しながら所望の期間行うことができ、例えば、維持培養後の継代数1〜100、好ましくは継代数10〜50、より好ましくは継代数25〜40の多能性幹細胞を用いることが好ましい。
[6]透析培養による三胚葉のいずれかへの分化誘導
本発明において、膜を用いた培養によって多能性幹細胞を三胚葉のいずれかに分化誘導する際には、分化誘導培地を使用して多能性幹細胞の培養を行う。分化誘導培地としては、多能性幹細胞を分化誘導させる培地であれば特に限定されるものではないが、例えば、血清含有培地や、血清代替成分を含有した無血清培地等が挙げられる。
用いる細胞の種類に応じて、霊長類ES/iPS細胞用培地(リプロセル培地)、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハム培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、MCDB131培地及びこれらの培地から任意に選択した2種以上の培地を混合した培地などが使用できる。ただし、動物細胞の培養に用いることのできる培地であれば特に限定されない。
分化誘導培地は、血清成分又は血清代替成分を含んでいてもよい。血清代替成分としては、例えば、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、微量元素(例えば亜鉛、セレン)並びにこれらの均等物が挙げられる。
分化誘導培地には、各種の添加物、抗生物質などを加えてもよい。例えば、0.1mM〜5mMのピルビン酸ナトリウム、0.1〜2%(体積/体積)の非必須アミノ酸、0.1〜2%(体積/体積)のペニシリン、0.1〜2%(体積/体積)のストレプトマイシン、0.1〜2%(体積/体積)のアンフォテリシンBなどを添加してもよい。
分化誘導培地にはさらに分化誘導因子を添加する。分化誘導因子については後記する。
本発明においては、培養装置の第一領域において、分化誘導因子を含む分化誘導培地中において多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞から三胚葉を製造する。その際、膜を介して、培養装置の第一領域と第二領域との間で物質交換を行う。
本発明においては、第一領域と第二領域が培地を含む。第一領域の培地量と第二領域の培地量との体積比は、特に限定しないが、例えば1:10,000から1:1とすることができる。
第一領域における細胞の密度は、特に限定されないが、1×10の5乗〜1×10の7乗cells/mLであることが好ましい。第一領域における細胞の密度は、2×10の5乗cells/mL以上、3×10の5乗cells/mL以上、4×10の5乗cells/mL以上、又は5×10の5乗cells/mL以上が好ましく、9×10の6乗cells/mL以下、8×10の6乗cells/mL以下、7×10の6乗cells/mL以下、6×10の6乗cells/mL以下、5×10の6乗cells/mL以下、4×10の6乗cells/mL以下、3×10の6乗cells/mL以下、又は2×10の6乗cells/mL以下が好ましい。
培養温度は、使用する多能性幹細胞の培養に適した培養温度であれば、特に限定されないが、一般的には30℃〜40℃であり、好ましくは約37℃である。
CO2インキュベーターなどを利用して、約1〜10%、好ましくは5%のCO2濃度雰囲気下で培養を行うことが好ましい。
多能性幹細胞の膜を使用した培養の培養期間は、好ましくは1日以上、より好ましくは2日以上、さらに好ましくは3日以上であり、特に好ましくは4日以上であり、上限は特に限定されないが、一般的には20日以下である。
好ましい態様においては、第一領域の培地におけるグルコース濃度は培養中において1.0g/L以上に維持され、より好ましくは1.1g/L以上に維持され、さらに好ましくは1.2g/L以上に維持され、さらに一層好ましくは1.3g/L以上に維持され、特に好ましくは1.4g/L以上に維持される。
グルコース濃度の測定は、当業者に公知の方法により行うことができる。例えば、バイオアナライザー(王子計測機器株式会社BF-5iD)等の市販の分析装置を用いて測定することができる。
好ましい態様においては、第一領域の培地における乳酸濃度は培養中において15mM以下に維持され、より好ましくは10mM以下に維持され、より好ましくは9mM以下に維持され、より好ましくは8mM以下に維持され、より好ましくは7mM以下に維持され、より好ましくは6mM以下に維持される。
乳酸濃度の測定は、当業者に公知の方法により行うことができる。例えば、バイオアナライザー(王子計測機器株式会社BF-5iD)等の市販の分析装置を用いて測定することができる。
[7]分化誘導因子
第一領域の培地に添加する分化誘導因子は、分化誘導の目的に応じて、当業者であれば適宜することができる。即ち、多能性幹細胞から内胚葉系細胞を製造することを意図する場合には内胚葉への分化を誘導する分化誘導因子を添加すればよく、多能性幹細胞から中胚葉系細胞を製造することを意図する場合には、中胚葉への分化を誘導する分化誘導因子を添加すればよく、多能性幹細胞から外胚葉系細胞を製造することを意図する場合には、外胚葉への分化を誘導する分化誘導因子を添加すればよい。
多能性幹細胞を内胚葉系細胞に分化誘導させることを意図する場合には、分化誘導因子として、TGFβ(Transforming growth factor-β)スーパーファミリーシグナル活性化剤を使用することが好ましい。
TGFβスーパーファミリーシグナル活性化剤としては、アクチビンA、GDF8(Growth differentiation factor 8)及びBMP4(Bone morphogenetic protein 4)からなる群から選択される少なくとも1種類を使用することが好ましい。
アクチビンAを使用する場合、第一領域におけるアクチビンAの添加初期濃度は、好ましくは1ng/mL以上、2ng/mL以上、3ng/mL以上、5ng/mL以上、10ng/mL以上、20ng/mL以上、30ng/mL以上、40ng/mL以上、又は50ng/mL以上であり、好ましくは1,000ng/mL以下、900ng/mL以下、800ng/mL以下、700ng/mL以下、600ng/mL以下、500ng/mL以下、400ng/mL以下、300ng/mL以下、200ng/mL以下、150ng/mL以下又は100ng/mL以下である。
FGF2を使用する場合、第一領域におけるFGF2の添加初期濃度は、好ましくは1ng/mL以上、2ng/mL以上、3ng/mL以上、5ng/mL以上、10ng/mL以上、20ng/mL以上、30ng/mL以上、又は40ng/mL以上であり、好ましくは1,000ng/mL以下、900ng/mL以下、800ng/mL以下、700ng/mL以下、600ng/mL以下、500ng/mL以下、400ng/mL以下、300ng/mL以下、200ng/mL以下、150ng/mL、100ng/mL以下、90ng/mL以下、80ng/mL以下、又は70ng/mL以下である。
BMP4を使用する場合、第一領域におけるBMP4の添加初期濃度は、好ましくは1ng/mL以上、2ng/mL以上、3ng/mL以上、5ng/mL以上、6ng/mL以上、7ng/mL以上、8ng/mL以上、9ng/mL以上、10ng/mL以上、11ng/mL以上、12ng/mL以上、13ng/mL以上、14ng/mL以上、又は15ng/mL以上であり、好ましくは1,000ng/mL以下、900ng/mL以下、800ng/mL以下、700ng/mL以下、600ng/mL以下、500ng/mL以下、400ng/mL以下、300ng/mL以下、200ng/mL以下、150ng/mL、100ng/mL以下、90ng/mL以下、80ng/mL以下、70ng/mL以下、60ng/mL以下、50ng/mL以下、40ng/mL以下、又は30ng/mL以下である。
多能性幹細胞を内胚葉系細胞に分化誘導させることを意図する場合には、分化誘導因子として、TGFβスーパーファミリーシグナル活性化剤に加えてさらにWNTシグナル活性化剤を使用することが好ましい。
WNTシグナルとは、β−カテニンの核移行を促し、転写因子としての機能を発揮する一連の作用をいう。WNTシグナルは細胞間相互作用に起因し、例えば、ある細胞から分泌されたWNT3Aというタンパクがさらに別の細胞に作用し、細胞内のβ−カテニンが核移行し、転写因子として作用する一連の流れが含まれる。一連の流れは上皮間葉相互作用を例とする器官構築の最初の現象を引き起こす。WNTシグナルはβ−カテニン経路、PCP経路、Ca2+経路の三つの経路を活性化することにより、細胞の増殖や分化、器官形成や初期発生時の細胞運動など各種細胞機能を制御することで知られる。
WNTシグナル活性化剤としては、特に限定されないが、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)の阻害活性を示すものであればいかなるものでもよく、例えばビス−インドロ(インジルビン)化合物(BIO)((2’Z,3’E)−6−ブロモインジルビン−3’−オキシム)、そのアセトキシム類似体BIO−アセトキシム(2’Z,3’E)−6−ブロモインジルビン−3’−アセトキシム)、チアジアゾリジン(TDZD)類似体(4−ベンジル−2−メチル−1,2,4−チアジアゾリジン−3,5−ジオン)、オキソチアジアゾリジン―3−チオン類似体(2,4−ジベンジル−5−オキソチアジアゾリジン−3−チオン)、チエニルα−クロロメチルケトン化合物(2−クロロ−1−(4,4−ジブロモ−チオフェン−2−イル)−エタノン)、フェニルαブロモメチルケトン化合物(α−4−ジブロモアセトフェノン)、チアゾール含有尿素化合物(N−(4−メトキシベンジル)−N’−(5−ニトロ−1,3−チアゾール−2−イル)ユレア)やGSK−3βペプチド阻害剤、例えばH−KEAPPAPPQSpP−NH2、などを使用することができ、特に好ましくは、CHIR99021(CAS:252917−06−9)を使用することができる。
CHIR99021を使用する場合、第一領域におよび第二領域おけるCHIR99021の添加初期濃度は、好ましくは0.01μM以上、0.02μM以上、0.03μM以上、0.04μM以上、0.05μM以上、0.1μM以上、0.2μM以上、0.3μM以上、0.4μM以上、0.5μM以上、0.6μM以上、0.7μM以上、0.8μM以上、0.9μM以上、1μM以上、2μM以上、又は3μM以上であり、好ましくは100μM以下、90μM以下、80μM以下、70μM以下、60μM以下、50μM以下、45μM以下、40μM以下、35μM以下、30μM以下、25μM以下、20μM以下、15μM以下、又は10μM以下である。より好ましくは3μMから4μMである。
多能性幹細胞を内胚葉系細胞に分化誘導させることを意図する場合には、例えば、D‘Amour et al. Production of pancreatic hormone−expressing endocrine cells from human embryonic stem cells. Nat Biotechnol. 2006 Nov;24(11):1392−401に記載されている方法を使用することができ、ヒトES細胞をWNT3aとアクチビンAを含む培地中で培養することで内胚葉系細胞に分化誘導できることが示されている。
多能性幹細胞を中胚葉系細胞に分化誘導させることを意図する場合には、例えば、特表2013−530680号公報に記載されている方法を使用することができる。特表2013−530680号公報には、(i)アクチビンAおよびWntを含む培地中でヒト多能性幹細胞を培養する工程、および(ii)BMPおよびWntもしくはWntの機能等価物を含む培地中で、工程(i)で得られた細胞を培養する工程を含む、ヒト多能性幹細胞から中間中胚葉系細胞の製造方法が記載されている。また、Albert Q Lam et al, J Am Soc Nephrol 25:1211−12225,2015には、ヒト多能性幹細胞を、GSK3β阻害剤であるCHIR99021で処理した後に、FGF2及びレチノイン酸で処理することにより効率的に中胚葉系細胞に分化誘導できることが記載されている。本発明においても、上記文献に記載されている分化誘導因子を用いて、多能性幹細胞を中胚葉系細胞に分化誘導させることができる。
多能性幹細胞を外胚葉系細胞に分化誘導させることを意図する場合には、例えば、BMP阻害剤(Noggin等)及びTGFβ/アクチビン阻害剤を含む培地中で多能性幹細胞を培養する方法(Chambers SM.et al.,Nat Biotechnol. 27,275−280(2009))、BMP阻害剤(Noggin等)及びNodal/アクチビン阻害剤を含む培地中で多能性幹細胞を培養する方法(Beata Surnacz et al.,Stem Cells,2012;30:1875−1884)を採用することができる。
以下の実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例1:透析培養を用いた内胚葉分化誘導
(1)透析膜を底面にもつ透析培養容器の作製
気液界面培養に汎用的に使用されるカルチャーインサート膜(コーニングインターナショナル株式会社 353091)の底面に、分画分子量が3.5 kDの透析膜(素材:再生セルロース、メーカー:スペクトラムラボラトリーズ)をアロンアルファA(第一三共株式会社)で接着し、風乾させた。使用前にカップを滅菌バッグに入れ、EOG滅菌器(SEMMEL−380B)で滅菌した。
(2)ヒト多能性幹細胞の維持培養
ヒト多能性幹細胞はTkDN4−M株(東京大学で樹立)を使用した。Vitronectin(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)をコートした細胞培養用ディッシュ上にヒト多能性幹細胞を播種し、培地はEssential 8TM(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に抗生剤として最終濃度1%(体積/体積)のペニシリンストレプトマイシンアンフォテリシンB懸濁溶液(和光純薬工業株式会社)を添加して維持培養した。継代時の細胞剥離剤としては、Accutase(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いた。また、細胞播種時のみ、Culture sure Y−27632(和光純薬工業株式会社)を10μMとなるように添加した。培地交換は毎日実施した。実験には、継代数27−30のものを用いた。
(3)透析培養によるヒト多能性幹細胞の内胚葉分化誘導
ヒトiPS細胞を1mLあたり5×105個となるように分化誘導培地1(組成は後述する)で2.5mLの細胞懸濁液を調製し、透析培養容器に入れ、ディープウェル(コーニングインターナショナル株式会社355467)に組み込み一晩培養した。ディープウェル側には、分化誘導培地1のうち分化誘導因子を除いた培地を15mL入れた。分化誘導培地1には、RPMI1640、ペニシリンストレプトマイシンアンフォテリシンB懸濁液、FGF−2(リプロセル)、BMP4(ミルテニーバイオテク)、CHIR99021(和光純薬工業株式会社)、Activin A(R&Dシステムズ)を含有する。ディープウェル側の培地組成はRPMI1640、CHIR99021、ペニシリンストレプトマイシンアンフォテリシンB懸濁液を含有する。
分化誘導2日目から4日目までは、ディープウェル側に分化誘導培地2(組成は後述する)のうちActivinを除いた培地を15mL入れた。細胞が存在する透析培養容器には分化誘導培地2で培地交換を行った。分化誘導培地2には、RPMI1640、ペニシリンストレプトマイシンアンフォテリシンB懸濁液、Activin A(R&Dシステムズ)を含有し、ディープウェル側の培地にはRPMI1640、ペニシリンストレプトマイシンアンフォテリシンB懸濁液を含有する。
(4)透析培養によるヒト多能性幹細胞の内胚葉分化誘導における未分化マーカーおよび内胚葉分化マーカー遺伝子の発現解析
透析培養によるヒト多能性幹細胞の内胚葉分化誘導5日目に細胞を一部回収し、自然沈降させたあと、上清除去した。TRIZOL試薬(Gibco)を使用して、凝集塊からRNAを抽出した。逆転写(RT)反応には、逆転写酵素(Toyobo)を用いて500 ngのRNAから逆転写を行なった(ASTEC PC320)。1μlの5倍希釈cDNA(逆転写産物の1/100に 相当)についてオリゴdTプライマー(ユーロフィンジェノミクス株式会社)およびKOD sybr qPCR master mix(東洋紡ライフサイエンス事業部)を用いて、リアルタイムPCR解析(Step One Plus)を行なった。リアルタイムPCRに用いたプライマーの塩基配列を表1に示す。
Figure 0006950886
なお、OCT4(octamer−binding transcription factor 4)遺伝子はNational Center for Biotechnology Infomationの遺伝子データベースに登録されているID:5460を参照し、SOX2(SRY(sex determining region Y)−box 2)遺伝子はNational Center for Biotechnology Infomationの遺伝子データベースに登録されているID:6657を参照し、SOX17(SRY(sex determining region Y)−box 17)遺伝子はNational Center for Biotechnology Infomationの遺伝子データベースに登録されているID:64321を参照し、FOXA2(forkhead box protein A2)遺伝子はNational Center for Biotechnology Infomationの遺伝子データベースに登録されているID:3170を参照し、βACTIN(beta cytoskeletal actin)遺伝子はNational Center for Biotechnology Infomationの遺伝子データベースに登録されているID:60を参照し、上記表1に記載のプライマーをそれぞれ設計した。
PCR条件:
98℃(変性)で60秒、98℃(変性)で15秒、及び68℃(アニーリングと伸長)で30秒を5サイクル、98℃(変性)で15秒、60℃(アニーリング)で10秒、及び68℃(伸長)で30秒を40サイクル、その後95℃、60℃、98℃で順に融解曲線。
未分化マーカー遺伝子の発現解析(残存量)の結果を図3に示し、内胚葉分化マーカー遺伝子の発現解析(発現量)の結果を図4に示す。なお、図3及び図4における発現量は、βACTINの発現量に対する各遺伝子の相対発現量を示す。
リアルタイムPCRの結果より、透析を行なうことで、未分化マーカーの遺伝子発現が低減し、内胚葉分化マーカーの遺伝子発現が向上した。すなわち、透析により、低分子量の栄養素の補充と老廃物の除去が効果的におこなわれたことによる分化誘導向上の可能性が示唆された。
(5)透析培養によるヒト多能性幹細胞の内胚葉分化誘導における培養上清のグルコース濃度および乳酸濃度推移
培地交換の際に、培養上清を回収し、バイオアナライザー(王子計測機器株式会社BF−5iD)により培地中のグルコース濃度及び乳酸濃度を測定した。
培養上清中のグルコース濃度の推移を図5に示し、培養上清中の乳酸濃度の推移を図6に示す。透析培養を行なうことで、通常の分化誘導に比べてグルコース残存量が増加、乳酸濃度が低減した。これより、透析培養によって、分化誘導中のグルコースの補充と乳酸の除去が効率良く行なわれていることが示された。
1 第一領域
2 培地
3 第二領域
4 培地成分の少なくとも一部
5 膜

Claims (15)

  1. 培地と分化誘導因子とを含む第一領域と、培地成分の少なくとも一部を含む第二領域とを有し、前記第一領域と前記第二領域とが膜で隔離されている培養装置を用いて前記第一領域において多能性幹細胞を培養することを含み、前記膜の分画分子量が500〜17,000である、三胚葉のいずれかの製造方法。
  2. 前記三胚葉のいずれかが、内胚葉系細胞である請求項1に記載の方法。
  3. 前記培地成分の少なくとも一部が、グルコースである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記第一領域と前記第二領域とが膜を隣接して配置され、前記膜を介して前記第一領域と前記第二領域との間で物質交換がなされる、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
  5. 第一領域の培地におけるグルコース濃度が培養中において1.0g/L以上に維持される、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
  6. 第一領域の培地における乳酸濃度が培養中において7mM以下に維持される、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
  7. 前記分化誘導因子が、少なくともTGFβスーパーファミリーシグナル活性化剤を含む、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
  8. 前記TGFβスーパーファミリーシグナル活性化剤が、アクチビンA、FGF2及びBMP4からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項に記載の方法。
  9. 第一領域におけるアクチビンAの添加初期濃度が、1ng/mL〜1,000ng/mLである、請求項に記載の方法。
  10. 第一領域におけるFGF2の添加初期濃度が、1ng/mL〜1,000ng/mLである、請求項又はに記載の方法。
  11. 第一領域におけるBMP4の添加初期濃度が、1ng/mL〜1,000ng/mLである、請求項から10の何れか一項に記載の方法。
  12. 前記分化誘導因子が、さらにWNTシグナル活性化剤を含む、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
  13. 多能性幹細胞が、iPS細胞である、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
  14. 前記第一領域と前記第二領域が培地を含み、第一領域の培地量と第二領域の培地量の体積比が、1:100から1:1である、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
  15. 前記第一領域における細胞の密度が、10の5乗〜10の7乗cells/mLである、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
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