JP5683836B2 - 光学測定キュベットの汚染物質の検出方法 - Google Patents

光学測定キュベットの汚染物質の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は分光光度計、望ましくはヘモグロビン誘導体を定量するための酸素濃度計の光学測定キュベットの汚染物質を検出する方法に関する。当該測定キュベットにおいては、試料スペクトルI(λ)を得るための少なくとも1回の試料の測定に追加して、基準スペクトルI0(λ)を得るための基準液体を使用した少なくとも1回の基準測定が実施される。
分光光度計または分光計は、通常、スペクトルを表示する装置であり、光学スペクトルの記録能力と分析能力を提供する。スペクトル特性に基づいて液体の成分を決定できるため、分光計は、とりわけ化学分析及び医療分析で広く使用されている。この目的のために使われる分光計は、ポリクロメーターの原理に従って動作することが多い。すなわち、この方法では、入射光は測定キュベットに用意された試料液体を通過し、その後、ポリクロメーターの使用によりそのスペクトル成分にまず分割され、かくしてそれらの成分は検出器配列上で同時に撮像可能となる。このように、スペクトル全体を、同時に記録することができる(光学マルチチャネル分析器(OMA)又はマルチチャネル分光計(MCS))。最新のマルチチャネル分光計は、スペクトル全体を非常に高速に分析電子機器に伝送することができる。分光計を用いる代表的な分野は、例えば血液中のヘモグロビン誘導体の分析的定量、いわゆるCO酸素測定である。当該分光分析モジュールの一例には、ビリルビン(胆汁)、総ヘモグロビン(tHb)、ヘモグロビン誘導体、オキシヘモグロビン(O2Hb)、デオキシヘモグロビン(HHb)、カルボキシヘモグロビン(COHb)、メトヘモグロビン(MetHb)を測定するcobas(登録商標) b 221(ロシュ・ダイアグノスティックス社、ドイツ)のCOOXモジュールがある。ヘモグロビン誘導体とビリルビンは、ランバート・ベール法(式(1)を参照)に基づいて、分光測光法で定量される。このCO酸素測定モジュールの光学系は、基本的にハロゲンランプ、ギャップ、測定キュベットを有するキュベットホルダー、ポリクロメーター、検出ユニットから構成される。ハロゲンランプの光は、光ファイバーの助けを借りて、キュベットホルダーへ誘導される。測定キュベットでは、光は、試料によって一部が吸収され、一部が透過する。吸収は、試料の組成に特有である。透過光は、更なる光ファイバーによりポリクロメーターに誘導される。そこで、透過光はスペクトル成分に分割され、感光性受像器(CCDセンサー)の表面上で撮像される。ヘモグロビン誘導体の吸収と最終的にはその濃度とが当該受像器から生じる電気信号から計算される。稼働中における高い信頼性を達成するため、ポリクロメーターは、内臓されたスペクトル光源を使って較正される。
前述したように、ヘモグロビン誘導体の濃度計算は、多数の波長について測定された個別成分の総吸収量に基づいている。
λ=log(I/ Iλ)=Σε*ci*d (1)
ここで、
λ 波長
i 第i番目の個別成分
A 吸収
I0 基準強度:水または空気で充填されたキュベットの透過光の強度
I 試料の強度:測定液体(例えば血液)で充填されたキュベットの透過光の強度
ε 吸光係数
c 濃度
d 層の厚さ(キュベットの内径)
測定液体と、基準液体または基準媒体(例えば非吸収液体)の両方が、同じキュベットで交互に測定される。すなわち、当該2つの測定点の間にキュベットを清浄し、続いて基準液体でキュベットを充填する必要がある。現在の測定方法の不都合は、まさにこの点にある。すなわち、試料および/または測定液体がキュベットから完全に洗い流されたかどうかが分からない、又は、時間とともに(それぞれが1つの試料測定と少なくとも1つの基準測定を有する多数回の測定サイクルの後)光学的に干渉する層が測定キュベット内に生じるかどうかが分からない点にある。基準測定光は、このような汚染物質により余計に吸収される。すなわち、I0は、もはや純粋な基準スペクトル(おそらく、光学系(例えば、フィルター)のスペクトル効果と、基準液で充填された汚染されていないキュベットの特性吸収によるスペクトル効果とが重畳された励起光源のスペクトル)と一致せず、さらに汚染物質の吸収が重畳されたものとなる。これらの誤差が見分けられないままであるならば、試料の吸収Aは誤って計算される。そのため、濃度値は必然的に誤ったものとなる。
全血内の複数のヘモグロビン誘導体の濃度を分光光度測定するための方法は、欧州特許第0,210,417(B1)号明細書の文脈で知られている。そこでは、血液試料に起因する混濁が考慮されている。血液試料は、それらに適用される数nの個別の波長を有している。その数nは、決定されるヘモグロビン誘導体の数に1を加えた数と少なくとも等しい。濃度は、所定の係数セットを用いることにより、個々の波長における吸収値に基づいて決定される。係数セットは、各波長における個々のヘモグロビン誘導体の吸収特性と、各波長における少なくとも1つの混濁成分の吸収特性とを表す。ヘモグロビン誘導体の濃度は、n×n行列を使用する方程式系に基づいて計算される。全血に起因する混濁は、数学的には、計算されるヘモグロビン誘導体の濃度のうちの1つのように扱われる。しかし、測定キュベット内にある光学的に干渉する層、例えば以前の血液試料の堆積物に、この方法を適用しても報われることはない。なぜなら、結果的に得られる濃度値は、現行の試料測定法による測定値から弁別できないためである。
さらに、様々な液体の汚染物質の状態をモニターする方法と装置には、他の技術分野でも知られているものがある。例えば独国特許出願公開第103,05,093(A1)号明細書に記載されている。この明細書では、液体中の汚染物質の状態を測定するおよび/またはモニターする方法が記載される。その方法では、白色光LEDと、赤外線または紫外線を放射する少なくとも1つの注入型発光ダイオードとが使用される。この方法は、白色LEDの発光スペクトルの修正、ピーク波長の変更、光ルミネセンスのピークに対する注入型発光のピークの比率、選択吸収、蛍光の励起、ピーク波長の強度、及び積分放射量を使用するだけでなく、それらのデータと修正スペクトルとの比較も使用する。これらのデータは、光ファイバーコンパクト分光計の助けによって記録される。この方法では、さらなる光源が必要であるという不利がある。また、この方法は、改修無しには通常のスペクトル分光計には適用できない。
本発明の目的は、分光光度計の光学測定キュベットの汚染物質を検出する方法を提示することである。本方法では、基準測定に不備がある場合には迅速に、かつ、選択時には自動的に更なる測定を開始できるために、更なる装置又は測定技術への支出が無くても、基準測定の品質(正しさ)に対する報告が可能となる。
この目的は、本発明に従い、次のように実現される。基準スペクトルI0(λ)が測定キュベットに関係付けられている既知の目標スペクトルI0soll(λ)と比較され、比較パラメータが取得される。その結果、比較パラメータの所定の閾値の機能(function)として、測定キュベットに汚染物質が存在するか否かが自動的に決定される。
目標スペクトルI0soll(λ)は、基準液体またはガス、例えば外気(ambient air)で充填された既知の非汚染測定キュベットを測定することによって確定することができる。この確定は、例えば新しい測定キュベットが分光光度計に初めて挿入される時に実施することができる。このために、空気を充填した測定キュベットのスペクトルを最初に確定し、後続する複数のステップにおいて、基準液体を充填した測定キュベットのスペクトルを確定することができる。
目標スペクトルI0soll(λ)は、望ましくは、未使用の測定キュベットについての最初の測定から得られる。当該測定キュベットは、新しく分光光度計に挿入されたものであり、基準液体で充填されている。
目標スペクトルは、測定キュベットの製造中に工場で取得され、コンピュータチップ等の電子的形態で測定キュベットに取り付けられ、分光光度計により自動的に入力されても良い。
目標スペクトルI0soll(λ)は、複数の光学測定キュベットにおける複数の個々の測定値から確定することができる。
本発明によれば、分光光度計の機能性液体、望ましくは汚染物質の検出に使用するスペクトル範囲では基本的に吸収性を有しない洗浄液を、基準液体として使用する。
測定キュベットの汚染物質が存在する場合、望ましくは汚染物質の定量的評価の後、以下の測定のうちの少なくとも1つが、本発明に従い、望ましくは自動的に開始される。
・測定キュベットの洗浄ステップの繰り返し。
・オプションにより、標準的なサイクルからは外れる洗浄サイクルと専用の洗浄溶液とを使用する追加的な洗浄機能。
・分光光度計に対するエラーメッセージの出力。
・汚染物質のために誤って確定した吸収値に基づいた出力測定値の補正。
・サービス技術者の要請。
・分光光度計による更なる測定の阻止。
・測定キュベットまたはキュベットユニットの交換その他の推奨案の出力。
本発明による方法は、とりわけ再利用可能なキュベットまたは流水式(flow-through)キュベットの使用の際に適切である。それらのキュベットでは、複数回の測定(例えば試料溶液の測定だけでなく、較正溶液の測定またはQC溶液の測定)が時間順次に実施される。
450nmと700nm間の波長範囲λにおける、測定キュベットの複数の基準スペクトルI0(λ)を示しており、強度Iは、縦座標にプロットされ、汚染の程度1/xは、倍数x(10〜10,000)で希釈された血液試料を用いてシミュレートされている。 450nmと700nm間の波長範囲λにおける、図1のスペクトルに対して確定される特定の汚染の程度(0、1/10から1/10,000)に対する残余/誤りのある吸収Aを示している。 1/5000の汚染で、相互相関による信号改善の例を示す。 相互相関の評価の例を示す。 シミュレーション測定の結果を示す。 シミュレーション測定の結果を示す。 ヘモグロビン誘導体HHb、O2Hb、COHb及びMetHb、あるいは、品質管理液体の着色剤D1からD3の特性ピーク(吸収ピーク)を示す。 吸収曲線の1次導関数を用いる測定吸収曲線からのパターン曲線(テンプレート)の切り出しを示す。 3次元グラフにおける相互相関の結果を示す。
本発明による方法が、図面に基づいてより詳細に説明される。
a) 基準スペクトル曲線に基づく汚染物質の評価
本発明に従う第1の変形によると、測定された基準スペクトルI0(λ)のスペクトル曲線形状を目標スペクトルI0soll(λ)のスペクトル曲線形状と比較することができる。比較パラメータは、望ましくはスペクトル曲線形状を正規化することによって取得することができる。比較パラメータは、例えばスペクトル曲線の微分計算(differential calculation)又は商計算によって取得しても良い。
図1と図2からは、これらの方法の残余または誤りのある吸収は、汚染がわずかな場合にはあまり敏感でなく、測定限界が1/1000又は1/5000の程度の汚染で既に現れることが判る。図1の外側包絡線は、清浄な測定キュベットの目標スペクトルI0soll(λ)を示す。
この文脈においては、各々の波長に対する吸収値の確定には、試料強度Iと基準変量I0が測定時点で判明していなければならず、これが問題になる場合があることも注意すべきである。I0の確定とIの確定との間の時間間隔に生じるシステム関連の変化、例えば励起光源の強度のドリフトはI0値の変化を結果的にもたらし、その結果、誤りのある吸収値をもたらす。
対応策として、各試料の測定後、正確に定義された間隔で2つの基準測定I01とI02を実施し、I0を決定しても良い。試料測定時点における光強度の実際値は、これら基準測定値に基づく線形外挿によって各波長に対して近似することができる。
外挿によりドリフトが補正された値I0(時刻t0)と生の値I01、I02、…(時刻t1、t2、…)を使用してスペクトル曲線を評価しても良い。
b) tHb-閾値化を使用する汚染物質の評価
本発明による更なる変形によると、基準スペクトルI0(λ)は、試料スペクトルI(λ)と同様、分光光度計の所定の分析アルゴリズム、例えば酸素濃度計のtHbの定量などによる試料分析を受けることができる。ここで、目標スペクトルI0soll(λ)は基準スペクトルとして使用され、試料分析から得られる測定値、例えば個々のヘモグロビン誘導体に対する値又はtHb測定値は比較パラメータとして使用される。
その結果、個々の濃度の合計(=tHb値)が得られる。tHb値が0から逸れるほど、測定基準スペクトルにおける汚染物質の割合は大きくなる。
汚染された基準スペクトルI0(λ)は、基本的に、強く希釈された試料の測定に相当する。ランバート・ベール法に従い、I0messと基準変量I0sollを用いて、汚染による吸収を計算する場合、回帰的に計算することもできる。
A = log (I0soll/I0mess) (2)
このように得られるtHb値は閾値以下でなければならず、その結果、キュベットが測定のためにリリースされる。さもなければ、上述の測定が自動的に開始される。
c)パターン認識を使用する汚染物質の評価
本発明の特に有利な変形では次のように規定される。事前に定義されたパターンスペクトルIPが選ばれ、そのスペクトルは1つまたは複数の汚染物質の少なくとも1つの典型的な吸収ピークを有する。汚染物質に起因する誤りのある吸収のスペクトル曲線が、目標スペクトルI0soll (λ)との関係において基準スペクトルI0(λ)から決定され、誤りのある吸収のスペクトル曲線は、畳み込みを使用し、望ましくは相互相関を使用して、選択されたパターンスペクトルIpと比較される。畳み込みから得られる曲線形状は重み付け評価を受け、その評価より比較パラメータが得られる。
パターン認識の方法は、5つのサブステップに分けることができる。フローチャート形式の略図が下の表にある。標準シーケンス(実線)とオプションのシーケンス(点線)の両方が示されている。
Figure 0005683836
第1ステップにおいて、現光学系に妥当な曲線形状(テンプレート)を見いだす。その曲線形状は、可能な汚染物質の最も重要な特徴(吸収帯)を含む。これは工場で事前に定義してもよく、または先行する測定から、直接または反復的に(平均化によって)取得してもよい。すべての吸収物質が、テンプレートの適切な定義によって認識されてよい。
パターン認識のために、標準の採取された基準スペクトルI0(λ)と、光学系に妥当な目標スペクトルI0soll (λ)とが使用される。I0soll (λ)は、この場合もやはり、工場で事前に定義するか、または先の測定結果から反復的に決定してよい。ステップ2において、吸収はこれらの2つの入力変量から決定される。この曲線は、基準測定中の汚染を通じて生じる不正確な吸収に対応する。
吸収曲線を評価できるように、第3ステップでは、その曲線は、相互相関を使用して、ステップ1で選択されたパターン曲線と比較される。
信号分析においては、相互相関関数が、2つの信号間の様々な時間シフトτでの2つの信号の相関関係を記述するのに使用される。以下の式が成り立つ。
Figure 0005683836
本出願では、相互相関は、以下の形式が使用される。ここで、選択された波長範囲λminからλmaxまでについて総和演算が行われる。
TA(λ)=ΣT(Δλ)*APD(λ+Δλ) (4)
ここで、
Δλ λminからλmaxまで合計する
R 相互相関の結果
T テンプレート
PD 汚染による誤りのある吸収
λ 現在の波長
相互相関の最大部分は、テンプレート(汚染物質の典型的なまたは疑わしい吸収帯)と、汚染に起因する誤りのある吸収とが最も一致する部分に対応する。本方法は、試料吸収からテンプレートを直接得る「オンライン測定」のために、さらに感度がよくなる。なぜなら、基準スペクトルI0(λ)のスペクトル曲線は、最後の試料測定の後に、慎重に検討されるからである。
ステップ4においては、相互相関(図4を参照)からの曲線形状の評価が、適切な前処理(直線傾向の除去、信号に含まれる雑音成分のフィルタリング)の後に実行される。
図3は、1/5000程度の汚染に対する相互相関の適用の後の信号改善の結果Rを示す。誤りのある吸収Aの元の曲線は「○」によって示され、相関処理後に現れる曲線Rは「x」によって示されている。波長と関連するスペクトルのデータ点は、これらグラフのX軸上にDP値としてプロットされる。従って、図3と図4に示されている場合、512個のデータ点は、約459nmから約666nmの波長範囲に分散している。
本発明によると、測定技術上重要な曲線形状の部分領域(図4中のボールド体で示す「重要な領域」を参照)を切り出して重み付け評価し、比較パラメータはそれらから取得することができる。この変形方法は非常に感度が良く、従って、汚染をより高い信頼度で確定することができ、その信頼度は、1/14,000の試料希釈に対応する。
本発明では、例えば以下に示す比較パラメータを選択することができ、それらに基づいて汚染のタイプと程度を決定することができる。
−畳み込みによって得られる曲線形状の範囲内の最小及び最大の位置(図4を参照)、
−畳み込みによって得られる曲線形状の下側のエリア(エリア1と2)、及び/又は、
−畳み込みによって得られる曲線形状から選択された複数点間の勾配。
ステップ5では、これらの判定基準に基づく基準測定値の品質についての判定が行われ、対応する測定が開始される。
本発明による上記の判定基準によれば、測定キュベット内に汚染物質が存在しないか又は(例えば追加的な洗浄処理により)是正すべき汚染物質が測定キュベット内に存在するかにより、医学的な試料の成分の光度定量が実施される。
(本発明の具体的な実施形態の実施例)
パターン認識アルゴリズムを、459nmと666nm間の可視領域で使用した。ハロゲンランプが、測定光源として使われた。
機能チェックのために、強く希釈された試料が、出願人の分光光度計(cobas b 221)で測定された。次に、出力試料スペクトルが、本発明による方法の入力変量I0として使用された。
シミュレートされたデータが、より高希釈のために使用された。こうして、パターン認識の関数は、10-3から10-5までの希釈範囲で見つけてよい。図5は、xが101から105までの希釈範囲V(1/x)に関して汚染されていると認識されたすべての試料のパーセンテージ成分を示している。1/14000の希釈の程度までは全試料の100%が汚染されていると正しく認識され、1/22000の希釈では90%が認識された。
図6による対試料(counter sample)は、シミュレーションされた10,000のデータセットにおいて、1つも「偽陽性」結果を示さなかった。
(実施例:パターン曲線の探査)
重要な吸収パターンを重み付け増幅するために及び/又は、相互相関関数(CCF)によって信号対雑音比を引き上げるために、対象の信号において見出すべきパターンの形についての十分な先験的知識は有益である。
汚染の場合、吸収のより高い範囲が吸収の低い範囲より大きな影響を持つことは明らかである。しかし、まさにこれらの範囲の曲線(典型的なピーク形状)は、正規化された信号において非常に目立つという利点も有している。従って、まさにこれらの範囲をパターン認識の際に見出すべきである。
誘導体(または様々なD1〜D3の着色剤)の特徴のあるピークが、血液試料(図7の上部の図)による、または、較正溶液または品質管理溶液(図7の下部の図)による汚染に対して基準スペクトルから抽出されてよい。
MetHbを除き、(血液、較正溶液とQC溶液の)全てのピークは、スペクトル(520nm<λ<580nm)の中央にあり、残りのスペクトルよりも明らかに目立っている。相互相関のためにこのように規定されたピークを使用できるように、それらピークを切り出す(マスクする)必要がある。ここで、2つの可能性が考慮される。
方法1:「導関数の閾値化による検出」
パターン曲線(テンプレート)は、基準スペクトルから、及び/又は先の測定値から直接決定される。この場合、テンプレートは見出されるべきパターンと完全に一致するので、この特別なパターンに対する感度が増すという利点がある。汚染が先の測定に起因すると仮定するならば、この方法が最適なのは確実である。
テンプレートを切り出すために、図8による手順を使用してよい。上部のグラフには、発見されたテンプレートT(ボールド体で示されている)を有する吸収曲線Aが示され、下部のグラフには、曲線形状の1次導関数Adλが示されている(点PC:吸収曲線の最大点、点PB/PD:PC周辺の最大/最小点、点PA/PE:テンプレートの左端/右端の値)。
−スペクトルの最大点から始める(導関数のゼロ交差、点PC)。
−開始方向に、導関数の最大を探す(点PB)。
−終了方向に、導関数の最小を探す(点PD)。
−この点から、最大値の特定の比以下になる値が見つかるまで右/左に進む(点PA、PE )。
発見された曲線(開始/終了値、対象の関数上での左または右への移動)は、閾値の適合化により特定の応用のために最適化しても良い。
図9において、固有の誘導体分布及び中程度のtHb汚染を有する血液測定を使用する基準測定I0(λ)は、目標スペクトルThb I0soll(λ)に対して正規化されると共に、前記のように定めた方法によって発見されたテンプレートTとの間で相互相関される(CCFの結果R:第1の入力信号=汚染(適度のtHb、c 固有分布、n=6000)、第2の入力信号=切り出されたテンプレート、閾値の変化による曲線形状の変化)。
相互相関によって、信号対雑音比を大幅に引き上げることができると共に、吸収を生じさせている吸収曲線を再び発見することができる。閾値の適合化によるテンプレートの曲線形状の変化は、CCFの結果に、わずかな影響を及ぼすだけである。CCFの最大値の僅かな傾斜(ピーク2に対するピーク1の比)と、絶対値の増加とが現れる。しかし、それは、テンプレートにおけるデータ点数の増加によって説明できる(総和は、各点でより大きくなる)。
方法2:放物線によるテンプレートの近似
汚染による吸収の全ての有意なピークは、放物線による多項式係数の適切な適合によって近似してよいと考えられる。
放物関数を記述する2次関数(2次の多項式)は、次のように書ける:
y = a2x2 + a1x + a0 (5)
最適な放物線形状を見つけるために、係数a1とa0は、無視してよい。放物線は下に開いていなければならないので、a2 は負と仮定する必要がある。開口の角度(−幅)を最適化するために、計算に使用されるデータ点(DP)の数を変える。負の値は、関数の最小値の加算によって抑えてよい。より良い比較可能性のために、このようにして確定した値は、曲線の最大値に対して正規化される。
ゴールは、信号の振れとCCFの感度との間の中間を見つけることである。以下が判る。使用されるデータ点の数(幅)が多ければ多いほど、得られる振れはより大きくなるが、相互相関関数の感度はより低くなる。システムが敏感であればあるほど、既知のパターンは、より増幅される(そして、逆も同様)。
方法1と2を比較するならば、以下の結論に達する。基準スペクトルから、及び/又は、時間内の先の測定からパターン曲線Tを直接切り出すことによって、放物線によるパターンの近似よりも幾分大きな振れが見合う感度で得られる(増幅されるべきピークは、明らかに目立つ)。それは1つの特定のケース(すなわち、テンプレートTによって記述される)に適合するだけである。両方の方法が独立したスペクトルに適用される場合、CCFの最大値はほぼ一致する。
テンプレートを切り出すために使用される吸収がノイズを伴うので、テンプレート自体も対応する雑音成分を有している。そのことは、対象の信号との相互相関に対して、CCFの結果に関して無視できない影響を与える。しかし、2次関数(放物線)の雑音はゼロであり、それによって、Rxyの雑音成分も最小化されている。

Claims (13)

  1. 分光光度計の光学測定キュベットの汚染物質を検出する方法であって、
    前記測定キュベットにおいて、試料スペクトルI(λ)を取得するための少なくとも1つの試料測定に加え、基準スペクトルI0(λ)を取得するために基準液体を使用して少なくとも1つの基準測定が実施され、
    前記基準スペクトルI0(λ)が、前記測定キュベットに関係付けられている既知の目標スペクトルI0soll(λ)と比較されて比較パラメータが取得され、
    その結果、測定キュベットの汚染が存在するかどうかが前記比較パラメータの所定の閾値の機能として自動的に決定される方法であり
    1つまたは複数の汚染物質の少なくとも1つの典型的吸収ピークを有する所定のパターンスペクトルIpが選択され、
    前記汚染物質に起因する誤りのある吸収の前記スペクトル曲線が、前記目標スペクトルI0soll (λ) との関係において前記基準スペクトルI0 (λ)から決定され、
    前記誤りのある吸収の前記スペクトル曲線は、畳み込みを使用して、前記選択されたパターンスペクトルIpと比較され、
    前記畳み込みから得られる曲線形状は重み付け評価され、それらにより前記比較パラメータが取得される
    ことを特徴とする方法。
  2. 測定技術上重要な前記曲線形状の部分領域だけが重み付けられて評価され、それらにより前記比較パラメータが取得される
    ことを特徴とする請求項に記載の方法。
  3. 前記畳み込みによって得られる前記曲線形状の範囲内の最小及び最大の位置が前記比較パラメータとして選択され、それらにより汚染のタイプと程度が決定される
    ことを特徴とする請求項またはに記載の方法。
  4. 前記畳み込みによって得られる前記曲線形状の下側のエリアが前記比較パラメータとして選択され、それらにより汚染のタイプと程度が決定される
    ことを特徴とする請求項またはに記載の方法。
  5. 前記畳み込みによって得られる前記曲線形状の選ばれた点の間の勾配が前記比較パラメータとして選択され、それらにより汚染のタイプと程度が決定される
    ことを特徴とする請求項またはに記載の方法。
  6. 前記目標スペクトルI0soll(λ)は、汚染されていないことが判明しており、かつ、前記基準液体で充填された測定キュベットを測定することにより取得される
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 前記目標スペクトルI0soll(λ)は、前記分光光度計に新しく挿入され、かつ、前記基準液体で充填された未使用の測定キュベットの最初の測定から取得される
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
  8. 前記目標スペクトルI0soll(λ)は、複数の個々の測定値を平均化される
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
  9. 前記分光光度計の機能性液体が前記基準液体として使用され、当該液体は基本的に汚染物質を検出するために使用されるスペクトル範囲において非吸収性である
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
  10. 汚染が存在する場合、少なくとも以下の測定の1つが開始される
    ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の方法:
    ・前記測定キュベットの洗浄ステップの繰り返し;
    ・オプションにより、標準的なサイクルから外れる洗浄サイクルと専用の洗浄溶液とを使用する追加的な洗浄機能;
    ・前記分光光度計に対するエラーメッセージの出力;
    ・前記汚染のために誤って確定した吸収に基づいた出力測定値の補正;
    ・サービス技術者の要請;
    ・前記分光光度計による更なる測定の阻止;
    ・前記測定キュベットまたはキュベットユニットの交換その他の推奨案の出力。
  11. 医学的試料の成分の光度を定量する方法であって、
    請求項1から10のいずれか1つに記載の光学測定キュベットの汚染を検出する方法を含み、
    医学的試料の成分の光度定量−汚染物質が無いか是正されるべき汚染物質が有るか−が測定キュベットにおいて実施される
    こと特徴とする方法。
  12. 前記分光光度計は、ヘモグロビン誘導体を定量するための酸素濃度計である
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  13. 前記誤りのある吸収の前記スペクトル曲線は、相互相関を使用して、前記選択されたパターンスペクトルIpと比較される
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
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