JP5682461B2 - ハイブリッド吸着剤及びガス中の二酸化炭素の回収方法 - Google Patents
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Description
アミンを用いる化学吸収法は、1930年代に開発され尿素合成プラントで実用化されている。しかし、特許文献1に示されるように、吸収液としてモノエタノールアミン等のアルカノールアミンの水溶液を用いた場合、この水溶液が装置を腐食しやすいため、高価な耐食鋼の装置を用いる必要がある。また、特許文献1に記載された物理吸着法は、吸収液から二酸化炭素を脱離させるために高いエネルギーを必要とする。
なお、マイクロ波を加熱に用いた例として、特許文献4には、アプリケータ内でマイクロ波をあててマグネタイトを発熱させ、この発熱状態にあるマグネタイトにフロンガスを接触させることによってフロンを分解することが開示されている。
本明細書で用いる用語「二酸化炭素回収エネルギー原単位」は、単位質量(例えば、1kg)の二酸化炭素を回収するために必要とされるエネルギー量を表す。すなわち、二酸化炭素回収エネルギー原単位は、照射マイクロ波の電力量を使用電力量に換算し、この使用電力量を脱離した二酸化炭素の質量で除して計算される。
(1)本発明の一態様に係るハイブリッド吸着剤は、二酸化炭素を吸着する結晶性ゼオライトからなる吸着剤とマイクロ波を吸収する活性炭とを含有し、前記活性炭の混合量が、15mass%以上30mass%以下である。
本発明で使用する吸着剤は、二酸化炭素吸着能を有する物質であれば適用が可能である。
本発明の実施形態では、例えば、図1に示すような回収装置を用いて、吸着工程と、洗浄工程と、脱離工程と、冷却工程とを繰り返し、二酸化炭素を回収する。
吸着工程では、切替弁V1及びV2が開状態かつ切替弁V3〜V5が閉状態にある。この吸着工程では、除湿した二酸化炭素を含有したガスが流路1を通って吸着塔2内のハイブリッド吸着剤を充填した充填層(図示せず)に導入される。吸着塔2内では、他のガスに比べて二酸化炭素が優先的に吸着され、吸着されなかったガスは、流路9を通って排出される。この吸着工程では、流路6は、閉じられている。
冷却工程の後、切替弁V5を閉じ切替弁V1を開いて、流路8を流路1に切り替える。再度、二酸化炭素を含有したガスを流路1を通して吸着塔2内に導入し、二酸化炭素の吸着(吸着工程)を行う。このようにして、吸着工程と、洗浄工程と、脱離工程と、冷却工程とを繰り返す。
温度計測には、マイクロ波照射による電磁界の影響を受けない光ファイバー温度計を用いることができる。
外壁の外側からの間接外部加熱や加熱した流通ガスによる内部加熱のような従来技術では、雰囲気ガスから吸着剤への対流熱伝達により吸着剤が加熱されるため、加熱時に吸着剤から放熱することはできない。マイクロ波加熱の場合、ハイブリッド吸着剤自身が発熱するため、吸着材表面から雰囲気ガスへと外部への放熱を行うことができる。本発明では、ハイブリッド吸着剤中の活性炭が、より多くのマイクロ波を吸収するので、吸着剤を単独で用いた場合よりも、さらに効率が向上する。
高炉ガス及び熱風炉排ガスのモデルガスとして、20vol.%の二酸化炭素と80vol.%の窒素との混合ガスを使用した。また、この混合ガスから二酸化炭素を回収するために、吸着剤として、市販のゼオライトであるモレキュラーシーブ13X(MS−13X)を用いた。後述の活性炭と吸着剤との混合による効果を明確にするために、この吸着剤を粘土のようなバインダーを使用することなく加圧成型した後、粉砕し、整粒して、吸着剤試料を作製した。この吸着剤試料を石英製パイプに40g充填し、この石英製パイプ中に混合ガスを2L/minの流速で流し、混合ガス中の二酸化炭素を約40℃で吸着剤に飽和吸着させた。二酸化炭素が吸着剤に吸着されている間は、石英管からの排出ガス中の二酸化炭素の濃度が20vol.%未満に低下する。二酸化炭素が吸着剤に飽和吸着すると、再び排出ガス中の二酸化炭素の濃度が20vol.%に戻る。そのため、排出ガス中の二酸化炭素濃度を測定して、上述した二酸化炭素濃度の変化から飽和吸着を確認した。二酸化炭素の吸着量は、二酸化炭素濃度が20vol.%に安定するまで、測定された二酸化炭素濃度の減少量を積算することにより求められる。この二酸化炭素の吸着量(CO2吸着量)は、二酸化炭素の吸着率(mass%)として評価した。すなわち、吸着した二酸化炭素の質量を充填した吸着剤の質量で割ることにより二酸化炭素の吸着率が計算される。その後、石英製パイプ中に混合ガスをそのまま流通させながら、2,450MHz、200Wのマイクロ波を吸着剤に2分間照射して、吸着された二酸化炭素を吸着剤から脱離させた。排出ガス中の二酸化炭素濃度を測定しながら、二酸化炭素濃度が20vol.%に安定するまで二酸化炭素濃度の測定値と20vol.%との差分(二酸化炭素濃度の増加量)を積算して、脱離した二酸化炭素の量を求めた。この脱離した二酸化炭素の量(CO2の脱離率)は、脱離率(%)として評価した。この脱離率は、脱離した二酸化炭素の質量を、吸着した二酸化炭素の質量で割ることにより計算される。さらに、エネルギー原単位Eは、下記(1)式により算出される。
E=P×t/60/kP/Nx・・・・・(1)
ここで、マイクロ波の照射電力Pは200W、マイクロ波の照射時間tは、2minである。また、照射マイクロ波電力を使用電力に換算するための係数kPは、0.7である。Nxは、脱離した二酸化炭素の質量(g)である。また、吸着剤の温度は熱電対で測定した。
次に、吸着剤としてMS−13Xに活性炭を5mass%混合したハイブリッド吸着剤を用いる条件以外は、比較例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例1の二酸化炭素の脱離率は、28.2%であり、比較例1の脱離率よりも向上することができた。また、実施例1のエネルギー原単位は、6.5kWh/kg−CO2であり、比較例1及び2のエネルギー原単位よりも下げることができた。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を10mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例2のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から71℃まで上昇した。そのため、実施例2の二酸化炭素の脱離率は、35.1%であり、実施例1の脱離率よりも更に向上することができた。また、実施例2のエネルギー原単位は、5.8kWh/kg−CO2であり、実施例1のエネルギー原単位よりも更に下げることができた。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を15mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例3のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から74℃まで上昇した。そのため、実施例3の二酸化炭素の脱離率は、46.7%であり、実施例2の脱離率よりも更に向上することができた。また、実施例3のエネルギー原単位は、4.4kWh/kg−CO2であり、実施例2のエネルギー原単位よりも更に下げることができた。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を20mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例4のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から77℃まで上昇した。そのため、実施例4の二酸化炭素の脱離率は、55.3%であり、実施例3の脱離率よりも更に向上することができた。また、実施例4のエネルギー原単位は、4.0kWh/kg−CO2であり、実施例3のエネルギー原単位よりも更に下げることができた。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を30mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例5のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から80℃まで上昇した。そのため、実施例5の二酸化炭素の脱離率は、53.6%であり、実施例1〜3の脱離率よりも更に向上することができたが、実施例4よりは低下した。また、実施例5のエネルギー原単位は、4.4kWh/kg−CO2であり、こちらは実施例3のエネルギー原単位と同じであった。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を40mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例6のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から82℃まで上昇した。そのため、実施例6の二酸化炭素の脱離率は、48.6%であり、実施例1〜3の脱離率よりも向上することができたが、実施例4または5よりは低下した。また、実施例6のエネルギー原単位は、4.9kWh/kg−CO2であり、比較例1よりも下げることができたが、実施例3〜5よりも高くなった。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を50mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例7のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から86℃まで上昇した。そのため、実施例7の二酸化炭素の脱離率は、38.6%であり、比較例1や実施例1〜2の脱離率よりも向上することができたが、実施例3〜6より低下した。また、実施例7のエネルギー原単位は、7.5kWh/kg−CO2であり、比較例1よりも下げることができたが、実施例1〜6よりも高くなった。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を60mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例8のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から90℃まで上昇した。そのため、実施例8の二酸化炭素の脱離率は、37.9%であり、比較例1や実施例1〜2の脱離率よりも向上することができたが、実施例3〜7より低下した。また、実施例8のエネルギー原単位は、8.5kWh/kg−CO2であり、比較例1よりも下げることができたが、実施例1〜7よりも高くなった。
比較例2では、吸着剤としてメソポーラスシリカのみを用いる条件以外は、比較例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表2に示すように、二酸化炭素の脱離率は、19.2%、エネルギー原単位は、13.5kWh/kg−CO2であった。
吸着剤としてメソポーラスシリカに活性炭を20mass%混合したハイブリッド吸着剤を用いる条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表2に示すように、実施例9の二酸化炭素の脱離率は、45.6%であり、比較例2の脱離率よりも向上することができた。また、実施例9のエネルギー原単位は、5.9kWh/kg−CO2であり、比較例2のエネルギー原単位よりも下げることができた。
比較例3では、活性炭のみに二酸化炭素を吸着させ、マイクロ波によって活性炭を加熱し、活性炭から二酸化炭素を脱離させている。その結果、表2に示すように、二酸化炭素の脱離率は、42.6%、エネルギー原単位は、14.6kWh/kg−CO2であった。二酸化炭素の脱離率がMS−13Xの約2倍であるのに、エネルギー原単位が小さい理由は、活性炭での二酸化炭素の吸着量がMS−13Xの約1/3であるからである。CO2脱離率はよいものの、エネルギー原単位は実施例1〜9に比べて大幅に劣っている。
マイクロ波照射の時間を長くして、吸着剤の最高到達温度を実施例1と等しい64℃となるようにした条件以外は、比較例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。比較例4の条件では、吸着剤としてMS−13Xのみを使用した。その結果、表2に示すように、比較例4の最高到達温度は、比較例1の最高到達温度よりも高くなり、二酸化炭素の脱離率は、比較例1の脱離率よりも向上したが、実施例1〜9に比べると劣っている。しかしながら、脱離率の増加に対する投入エネルギーの増加割合が大きいため、比較例4のエネルギー原単位は、比較例1及び実施例1〜9のエネルギー原単位よりも大きくなった。したがって、活性炭を15%〜30%混合したハイブリッド吸着剤が、マイクロ波加熱による二酸化炭素の脱離に最も効果的であることがわかる。
2 吸着塔
3 流路
4 導波管
5 マイクロ波発振器
6 流路
7 製品タンク
8 流路
9 流路
Claims (4)
- 二酸化炭素を吸着する結晶性ゼオライトからなる吸着剤とマイクロ波を吸収する活性炭とを含有し、前記活性炭の混合量が、15mass%以上30mass%以下であることを特徴とするハイブリッド吸着剤。
- 前記吸着剤は、化学式Na86[(AlO2)86(SiO2)106]・276H2Oで示される結晶性ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド吸着剤。
- 請求項1又は2に記載のハイブリッド吸着剤を結合材により成形したことを特徴とするハイブリッド吸着剤。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド吸着剤に、ガス中の二酸化炭素を吸着させ、前記二酸化炭素を吸着したハイブリッド吸着剤にマイクロ波を照射して、前記ハイブリッド吸着剤に吸着されている前記二酸化炭素を前記ハイブリッド吸着剤から脱離させ、前記ハイブリッド吸着剤から脱離した前記二酸化炭素を回収することを特徴とするガス中の二酸化炭素の回収方法。
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