JP5682461B2 - ハイブリッド吸着剤及びガス中の二酸化炭素の回収方法 - Google Patents

ハイブリッド吸着剤及びガス中の二酸化炭素の回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハイブリッド吸着剤と、このハイブリッド吸着材を用いて高炉ガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離して回収する方法とに関する。
近年、地球温暖化を防止するために有効な対策の早期実施が望まれている。大気中の二酸化炭素は、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの主成分である。そのため、火力発電所等から排出される燃焼排ガスや製鉄所の高炉ガス中の二酸化炭素を分離して回収し、この二酸化炭素を固定化又は有効利用できれば、地球温暖化を大きく抑制できると考えられる。
二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離して回収する方法として、アミン系吸収液を用いる化学吸収法及び吸着剤を用いる物理吸着法が実用化されている。
アミンを用いる化学吸収法は、1930年代に開発され尿素合成プラントで実用化されている。しかし、特許文献1に示されるように、吸収液としてモノエタノールアミン等のアルカノールアミンの水溶液を用いた場合、この水溶液が装置を腐食しやすいため、高価な耐食鋼の装置を用いる必要がある。また、特許文献1に記載された物理吸着法は、吸収液から二酸化炭素を脱離させるために高いエネルギーを必要とする。
活性炭またはゼオライトを吸着剤として用いる吸着法については、真空ポンプを用いた減圧によって吸着剤から二酸化炭素を脱離させる圧力スウィング(PSA)法が小規模な装置に対して普及している。このPSA法は、非特許文献1に示すように、乾式法であるため化学吸収法では必要とされる腐食対策が不要であるというメリットを有する。しかしながら、PSA法は、真空ポンプを用いて二酸化炭素を脱離させる際に高いエネルギーを必要とするという欠点を有する。また、非特許文献2に示されるように、大規模な装置を用いた場合には、装置内の充填層の層厚が厚くなり、二酸化炭素の脱離の際に圧力損失ΔPが大きくなる。そのため、層上部に必要な到達真空度(数kPaレベル)を確保できず、二酸化炭素の回収量が低下する。また、この層上部に必要な到達真空度を確保するためには、高性能の真空ポンプが必要である。この場合には、二酸化炭素を脱離させるために必要とされるエネルギーがさらに増加する、という問題が生じる。
特許文献2には、産業廃水処理、生活廃水処理、上水処理等の水処理、溶剤回収または空気浄化に使用されて老廃化した活性炭を再生する際に、マイクロ波加熱の下で老廃炭を水蒸気等の活性炭賦活用ガスと接触させる方法が開示されている。しかし、二酸化炭素の脱離に関する内容は開示されておらず、マイクロ波照射方法に関する詳細な内容も開示されていない。
特許文献3に示すように、本発明者らは、これまでに、ガス中の二酸化炭素の分離回収技術として、物理吸着法に使用する吸着剤から二酸化炭素を脱離させる際にマイクロ波を照射することによって、従来法よりもエネルギー消費量を低減可能にする方法を見出している。この特許文献3には、吸着剤としてゼオライト、活性炭が有効であることが開示されている。
なお、マイクロ波を加熱に用いた例として、特許文献4には、アプリケータ内でマイクロ波をあててマグネタイトを発熱させ、この発熱状態にあるマグネタイトにフロンガスを接触させることによってフロンを分解することが開示されている。
特開2006−240966号公報 特開昭51−43394号公報 特開2008−273821号公報 特開平6−293501号公報
川井利長,鈴木謙一郎,化学装置,Vol.31(8),p.54(1989) 若村修,芝村謙太郎,上野山清,新日鉄技報,No.345,p.55(1992)
上述したように、二酸化炭素の吸着剤を用いた物理吸着による分離回収法において、吸着した二酸化炭素を吸着剤から脱離させる方法としては、系(充填層)内を減圧して吸着剤から二酸化炭素を脱離する圧力スウィング(PSA)法が一般に用いられている。しかしながら、このPSA法は、上述した問題点を有するため、大規模操業には適していない。また、吸着剤から二酸化炭素を脱離させる方法として、系(充填層)内の温度を上げる熱スウィング(TSA)法も考えられる。このTSA法では、加熱した二酸化炭素を用いて吸着剤を加熱し、吸着した二酸化炭素を吸着剤から脱離させ、低温の窒素や空気等の気体を用いて吸着剤を冷却した後、二酸化炭素含有ガスを流通させて二酸化炭素を吸着させる。TSA法における昇温と降温とは、基本的に気体と固体(吸着剤)との間の伝熱に依存する。したがって、TSA法では、PSA法に比べて二酸化炭素の脱離に時間が掛かるという問題がある。
そこで、本発明者らは、以上の従来技術の問題点に鑑み、TSA法において昇温と降温とを短時間で実施することができれば、PSA法よりもより効率的に吸着剤から二酸化炭素を脱離させることができると考えた。そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、二酸化炭素の脱離時にマイクロ波を照射することにより効率的に二酸化炭素を脱離できることを見いだした(特許文献3参照)。しかし、二酸化炭素の回収コストをより低減するためには、二酸化炭素の脱離に必要なエネルギーを更に低減し、二酸化炭素の回収量を更に増加させる必要がある。
従って、本発明は、物理吸着法によって吸着剤から二酸化炭素を脱離させる際に、従来法よりもエネルギー消費を低減することができるガス中の二酸化炭素の回収方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、二酸化炭素回収エネルギー原単位を更に低減可能な吸着剤として、よりマイクロ波を吸収しやすい物質が吸着剤に混合されたハイブリッド吸着剤を用いることで上記課題を解決できると考えた。そこで、本発明者らは、この物質を鋭意検討した結果、活性炭が効果的であることを見出した。すなわち、本発明者らは、活性炭をゼオライト等の吸着剤中に混合したハイブリッド吸着剤を用いることで、より低エネルギーで二酸化炭素を脱離でき、二酸化炭素の回収量を増加できることを見出した。
本明細書で用いる用語「二酸化炭素回収エネルギー原単位」は、単位質量(例えば、1kg)の二酸化炭素を回収するために必要とされるエネルギー量を表す。すなわち、二酸化炭素回収エネルギー原単位は、照射マイクロ波の電力量を使用電力量に換算し、この使用電力量を脱離した二酸化炭素の質量で除して計算される。
その発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係るハイブリッド吸着剤は、二酸化炭素を吸着する結晶性ゼオライトからなる吸着剤とマイクロ波を吸収する活性炭とを含有し、前記活性炭の混合量が、15mass%以上30mass%以下である
)上記()に記載のハイブリッド吸着剤では、前記吸着剤は、化学式Na86[(AlO2)86(SiO2)106]・276H2Oで示される結晶性ゼオライトであってもよい。
)上記(1)又は(2)に記載のハイブリッド吸着剤は、結合材により成形して使用されてもよい。
)本発明の一態様に係るガス中の二酸化炭素の回収方法では、上記(1)〜()のいずれか一項に記載のハイブリッド吸着剤に、ガス中の二酸化炭素を吸着させ;前記二酸化炭素を吸着したハイブリッド吸着剤にマイクロ波を照射して、前記ハイブリッド吸着剤に吸着されている前記二酸化炭素を前記ハイブリッド吸着剤から脱離させ;前記ハイブリッド吸着剤から脱離した前記二酸化炭素を回収する。
本発明の二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素の回収方法を用いることにより、二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素の分離・回収を、従来よりも安価で効率的に行うことができる。
図1は、本発明の二酸化炭素の回収方法を実施するための回収装置の一例を示す説明図である。 図2は、本発明の2塔を用いた場合のサイクルタイムの説明図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明で使用する吸着剤は、二酸化炭素吸着能を有する物質であれば適用が可能である。
例えば、活性炭、活性コークス、及び、ゼオライト、メソポーラスシリカ、活性アルミナ、モンモリロナイトのような粘土化合物が吸着剤として使用できる。特に、二酸化炭素吸着能に優れた結晶性ゼオライト(A型、X型、Y型、モルデナイト(MOR)型等)及びメソポーラスシリカが好ましい。中でも、化学式Na86[(AlO2)86(SiO2)106]・276H2Oで示される結晶性ゼオライト(モレキュラーシーブ13X(MS−13X))がより好ましい。この結晶性ゼオライトは、二酸化炭素の吸着量が多いため、吸着剤として効果的である。
本発明においては、上記吸着剤と活性炭とを混合したハイブリッド吸着剤を使用する。上記吸着剤はそれ自身がマイクロ波を吸収することができ、吸着剤として用いる結晶性ゼオライト(モレキュラーシーブ13X(MS−13X))は、さらにマイクロ波を吸収し易い物質ではあるが、吸着剤に混合する活性炭は、より一層マイクロ波を吸収し易いため、マイクロ波照射によって効率的に加熱される。その一方で、活性炭は自身が二酸化炭素の吸着剤でもあるが、上記の吸着剤に比べると吸着能は劣る。マイクロ波照射による加熱は、活性炭による導電損失効果によるものである。
本明細書で用いる用語「ハイブリッド吸着剤」は、上述したゼオライト等の吸着剤と上述した活性炭とを混合して得られる吸着剤である。
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量(配合量)は、0.1mass%〜50mass%であることが好ましい。活性炭の混合量が、0.1mass%以上であれば、マイクロ波照射により活性炭が発熱し活性炭から吸着剤への伝熱を十分に行うことができる。また、活性炭の混合量が、50mass%以下であれば、吸着剤の混合量が50mass%以上となり、吸着剤による二酸化炭素の吸着量を十分に確保できる。より好ましくは、活性炭の混合量は、2mass%〜30mass%である。最も好ましくは、活性炭の混合量は、15mass%〜30mass%である。この場合には、発熱/伝熱量と二酸化炭素の吸着量とのバランスが最適化され、より効率的に二酸化炭素を回収することができる。また、二酸化炭素の吸着量を十分に確保するために、ハイブリッド吸着剤中の吸着剤の混合量は、50mass%〜99.9mass%であることが好ましい。ハイブリッド吸着剤は、粉末でも使用できる。しかしながら、一般的な吸着剤と同様に、圧力損失を抑えるためにガスの流速に応じて、粘土等の結合材を用い、ハイブリッド吸着剤を直径2mm〜5mm程度の球状またはペレット状に造粒(成形)することが好ましい。なお、この結合材の量は、ハイブリッド吸着剤の量の外数として評価される。
以下、添付図面に基づいて、本発明のハイブリッド吸着剤を用いた二酸化炭素の回収方法について好適な実施形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態では、例えば、図1に示すような回収装置を用いて、吸着工程と、洗浄工程と、脱離工程と、冷却工程とを繰り返し、二酸化炭素を回収する。
吸着工程では、切替弁V及びVが開状態かつ切替弁V〜Vが閉状態にある。この吸着工程では、除湿した二酸化炭素を含有したガスが流路1を通って吸着塔2内のハイブリッド吸着剤を充填した充填層(図示せず)に導入される。吸着塔2内では、他のガスに比べて二酸化炭素が優先的に吸着され、吸着されなかったガスは、流路9を通って排出される。この吸着工程では、流路6は、閉じられている。
洗浄工程では、吸着塔2内のハイブリッド吸着剤が十分な量の二酸化炭素を吸着した時点で、切替弁Vを閉じ切替弁Vを開いて、流路1を流路3に切り替える。さらに、製品タンク7から、既に回収した二酸化炭素の一部をキャリアガスとして吸着塔2内に流し、吸着塔2内に滞留する窒素等の不純物成分を流路9から排出する。
脱離工程では、切替弁Vを閉じ切替弁Vを開いて、流路9を流路6に切り替える。流路3及び流路6が開いた状態で、吸着塔2に連結された導波管4を通してマイクロ波発振器5からマイクロ波を吸着塔2内のハイブリッド吸着剤に照射する。マイクロ波が照射されたハイブリッド吸着剤は、活性炭によりマイクロ波が吸収され導電損失効果により発熱しハイブリッド吸着剤の内部から熱を発生して吸着材に伝熱するため、急速かつ均一に加熱される。その結果、吸着剤に吸着した二酸化炭素は、吸着剤から効率的に脱離する。脱離後の二酸化炭素は、流路6を通って(この際、流路9は、閉じられている)、製品タンク7に回収される。
冷却工程では、再び切替弁Vを開き切替弁Vを閉じて、流路6を流路9に切り替える。更に、切替弁Vを閉じ切替弁Vを開いて、流路3を流路8に切り替える。さらに、流路8から乾燥した窒素や空気などの冷却ガスを導入して、二酸化炭素の脱離後のハイブリッド吸着剤を冷却する。
冷却工程の後、切替弁Vを閉じ切替弁Vを開いて、流路8を流路1に切り替える。再度、二酸化炭素を含有したガスを流路1を通して吸着塔2内に導入し、二酸化炭素の吸着(吸着工程)を行う。このようにして、吸着工程と、洗浄工程と、脱離工程と、冷却工程とを繰り返す。
以上では、二酸化炭素の分離回収を行う工程を平易に説明するために、吸着塔2が1つである例を説明した。しかしながら、通常は、2〜4塔の吸着塔を並列に設け、吸着及び脱離のタイミングを調整することにより、連続的に二酸化炭素の分離回収が行なわれる。
図2に2塔の吸着塔を用いた場合のタイムスケジュール例を示す。このスケジュール例では、A塔で冷却工程、吸着工程、または、洗浄工程(不純物成分の排出)が行われている間に、B塔では脱離工程(マイクロ波照射)が行われる。また、A塔で脱離工程(マイクロ波照射)が行われている間に、B塔では冷却工程、吸着工程、洗浄工程(不純物成分の排出)が行われる。このようにして、連続的に二酸化炭素の分離回収(脱離工程)を行うことができる。一般に吸着時間が脱離時間よりも短いため、また、洗浄時間も冷却時間も取る必要があるため、2塔の吸着塔の場合、燃焼排ガス等の連続的に排出されるガスから二酸化炭素を回収する際に、二酸化炭素を吸着できない時間帯が生じる。この場合には、吸着塔の前(ガス流れの上流)にガスホルダーを設けて、ガスの導入時間を調整する。
また、3塔以上の吸着塔を並列に設けて、各工程(例えば、吸着工程や脱離工程)の配管を切り替えることにより、より円滑に連続的な二酸化炭素の分離回収を行うことができる。
本発明の方法は、二酸化炭素を含有していれば、どのようなガスにも適用できる。特に、石炭火力発電所の燃焼排ガス(二酸化炭素濃度:約15vol.%)や高炉ガス(BFG)(二酸化炭素濃度:約20vol.%)、熱風炉排ガス(二酸化炭素濃度:約25vol.%)のような比較的高濃度の二酸化炭素を含むガスに対して好適に適用することができる。
物理吸着法では、ガス中の二酸化炭素濃度が高いほど吸着剤に吸着される二酸化炭素の量が増加するため、二酸化炭素回収エネルギー原単位を低く抑えることができる。そのため、ガス中の二酸化炭素濃度は、10vol.%以上であることが望ましい。例えば、二酸化炭素濃度の高いBFG(約20vol.%)または高炉の熱風炉排ガス(約25vol.%)が最適である。二酸化炭素濃度が10vol.%未満の場合、吸着剤の単位質量当りの二酸化炭素の吸着量が急激に低下し、多量の吸着剤が必要となる。そのため、10vol.%未満の二酸化炭素濃度のガスから二酸化炭素を回収することは、経済的に好ましくない。
また、水蒸気は、極性が強く吸着剤への二酸化炭素の吸着を阻害するので、二酸化炭素含有ガスに高濃度(例えば、数vol.%〜十数vol.%)の水蒸気が含まれている場合には、事前に除湿することが好ましい。吸着剤と水蒸気との親和性が吸着剤の種類により異なるため、吸着剤の種類に応じて除湿の程度を変える必要がある。例えば、ゼオライト系吸着剤(ゼオライト)は、水蒸気との親和性が強いため、−40℃〜−60℃程度の露点まで除湿される必要がある。加えて、より多くの二酸化炭素をハイブリッド吸着剤に吸着させ、且つハイブリッド吸着剤へのマイクロ波吸収効率を上昇させるためには、ガスを吸着塔に導入する前にハイブリッド吸着剤を事前乾燥することが好ましい。例えば、除湿したガスを吸着剤に流しながら、マイクロ波を照射して加熱することによって、水分を除去することができる。吸着塔の出口(ガス流れの下流)に湿度計を設け、出口ガスの湿度が下がり安定したことを、この湿度計によって確認して、十分に事前乾燥することができたと判断できる。
マイクロ波の周波数としては、300MHz〜300GHzの広範囲の周波数を使用することができる。ただし、実際にマイクロ波を使用する際には、通信関係の法規制によって周波数帯が限定される。即ち、日本においては2,450MHz又は915MHzの周波数が使用される。更に、アメリカでは、5,800MHzの周波数も利用可能である。
導波管4は、上記の説明(図1)では、1本であった。しかしながら、充填層の形状及び寸法に応じて複数の導波管4を吸着塔に配置することが好ましい。また、充填層の幅が広い(円筒の場合には、充填層の径が大きい)場合には充填層の周方向に導波管4を複数配置し、充填層が長い場合には充填層の長さ方向に導波管4を複数配置することが好ましい。
充填層は、何れの形状を有してもよい。充填層の形状が角筒状及び円筒状の場合、吸着塔の内周は、31.4cm以下(充填層の形状が円筒形の場合、吸着塔の内径が10cm以下)であることが好ましい。さらに、吸着塔の内周は、15.7cm以下(充填層の形状が円筒形の場合、吸着塔の内径が5cm以下)であることがより好ましい。吸着塔の内周が31.4cm超の場合には、マイクロ波が充填層の中心まで到達しにくく、充填層内の加熱が不均一になり易い点で問題である。
また、吸着塔の内周が小さい場合には、単位充填量当りの充填層の抜熱面積が小さいため、マイクロ波照射時に十分に抜熱(放熱)されず、冷却に時間がかかる。そのため、吸着塔の内周の下限は、ハイブリッド吸着剤の寸法から決定される。例えば、直径0.2cmの球状に成形されたハイブリッド吸着剤を使用する場合、円筒形の充填層は、吸着剤の直径の約5倍の直径(1cm)を有する必要があるため、吸着塔の最低内周は、3.14cmとなる。吸着塔の内周が小さくなるほど、充填層の単位長さ当りの充填量が少なくなるため、充填層の長さを長くする必要がある。しかしながら、充填層が長くなると圧力損失が上昇するため、短い充填層を複数本配置することが好ましい。なお、吸着塔の内周の下限は、マイクロ波照射の効率及び抜熱効率からは決定されない。
吸着が発熱反応であるため、吸着搭での吸着温度が低いほど二酸化炭素の吸着速度及び吸着量が増加する。しかしながら、経済性を考慮すると、吸着温度は、常温であることが好ましい。吸着時間は、ハイブリッド吸着剤の性能や吸着塔の基数等から総合的に決定される。吸着とは異なり、脱離温度は、高いほど脱離速度及び脱離量が増加する。しかしながら、500℃以上、特に600℃以上の高温では、ゼオライト系吸着剤を含むハイブリッド吸着剤は、ゼオライトの構造崩壊を起こし易く、また冷却も長時間を要する。そのため、できるだけ低い温度で効率的な脱離を行うことが望ましい。
温度計測には、マイクロ波照射による電磁界の影響を受けない光ファイバー温度計を用いることができる。
マイクロ波を連続照射すると急速に充填層の温度が上昇するため、昇温速度の制御が困難である。このため、マイクロ波を間欠的に照射して、昇温速度を制御しながら、ハイブリッド吸着剤を直接加熱する。この方法では、雰囲気温度が上昇することなく、比較的低温で脱離を行うことができる。間欠的なマイクロ波照射では、マイクロ波照射とマイクロ波休止を交互に行う。具体的には、例えば30秒のマイクロ波照射と30秒のマイクロ波照射休止とをそれぞれ5回交互に繰り返す。脱離時間、マイクロ波照射時間、及び照射間隔は、吸着剤の性能やマイクロ波出力、導波管の配置などから総合的に決定される。
また、ハイブリッド吸着剤を保持する吸着搭の外壁をSiO、MgO、Si、AlN、BNのうち、いずれかの物質で構成する。上記物質は、単独ではマイクロ波を吸収せず(マイクロ波照射によって温度が上昇しない)、かつ比較的熱伝導性が良い(温められても冷めやすい)。そのため、上記物質を吸収塔に使用することにより、マイクロ波を効率的にハイブリッド吸着剤に吸収させることができる。例えば、SiOは、石英ガラスを用いることができる。また、例えば、MgO、Si、AlN、及びBNは、それぞれの物質を成型後に焼成によって製造された耐火物を用いることができる。
さらに、例えば、吸着搭の外壁に突起を設けることにより、放熱が促進され、充填層の温度上昇を抑制しながら二酸化炭素を脱離させることができる。外表面積を多くするために、この突起は、フィン状、円柱状、または、錘状であることが好ましい。
本発明では、吸着剤と活性炭とを混合したハイブリッド吸着剤に、ガス中の二酸化炭素を吸着させている。さらに、このハイブリッド吸着剤にマイクロ波を照射して、吸着後の二酸化炭素をハイブリッド吸着剤から脱離させ、脱離した二酸化炭素を回収している。
外壁の外側からの間接外部加熱や加熱した流通ガスによる内部加熱のような従来技術では、雰囲気ガスから吸着剤への対流熱伝達により吸着剤が加熱されるため、加熱時に吸着剤から放熱することはできない。マイクロ波加熱の場合、ハイブリッド吸着剤自身が発熱するため、吸着材表面から雰囲気ガスへと外部への放熱を行うことができる。本発明では、ハイブリッド吸着剤中の活性炭が、より多くのマイクロ波を吸収するので、吸着剤を単独で用いた場合よりも、さらに効率が向上する。
〔比較例1〕
高炉ガス及び熱風炉排ガスのモデルガスとして、20vol.%の二酸化炭素と80vol.%の窒素との混合ガスを使用した。また、この混合ガスから二酸化炭素を回収するために、吸着剤として、市販のゼオライトであるモレキュラーシーブ13X(MS−13X)を用いた。後述の活性炭と吸着剤との混合による効果を明確にするために、この吸着剤を粘土のようなバインダーを使用することなく加圧成型した後、粉砕し、整粒して、吸着剤試料を作製した。この吸着剤試料を石英製パイプに40g充填し、この石英製パイプ中に混合ガスを2L/minの流速で流し、混合ガス中の二酸化炭素を約40℃で吸着剤に飽和吸着させた。二酸化炭素が吸着剤に吸着されている間は、石英管からの排出ガス中の二酸化炭素の濃度が20vol.%未満に低下する。二酸化炭素が吸着剤に飽和吸着すると、再び排出ガス中の二酸化炭素の濃度が20vol.%に戻る。そのため、排出ガス中の二酸化炭素濃度を測定して、上述した二酸化炭素濃度の変化から飽和吸着を確認した。二酸化炭素の吸着量は、二酸化炭素濃度が20vol.%に安定するまで、測定された二酸化炭素濃度の減少量を積算することにより求められる。この二酸化炭素の吸着量(CO吸着量)は、二酸化炭素の吸着率(mass%)として評価した。すなわち、吸着した二酸化炭素の質量を充填した吸着剤の質量で割ることにより二酸化炭素の吸着率が計算される。その後、石英製パイプ中に混合ガスをそのまま流通させながら、2,450MHz、200Wのマイクロ波を吸着剤に2分間照射して、吸着された二酸化炭素を吸着剤から脱離させた。排出ガス中の二酸化炭素濃度を測定しながら、二酸化炭素濃度が20vol.%に安定するまで二酸化炭素濃度の測定値と20vol.%との差分(二酸化炭素濃度の増加量)を積算して、脱離した二酸化炭素の量を求めた。この脱離した二酸化炭素の量(COの脱離率)は、脱離率(%)として評価した。この脱離率は、脱離した二酸化炭素の質量を、吸着した二酸化炭素の質量で割ることにより計算される。さらに、エネルギー原単位Eは、下記(1)式により算出される。
E=P×t/60/k/Nx・・・・・(1)
ここで、マイクロ波の照射電力Pは200W、マイクロ波の照射時間tは、2minである。また、照射マイクロ波電力を使用電力に換算するための係数kは、0.7である。Nxは、脱離した二酸化炭素の質量(g)である。また、吸着剤の温度は熱電対で測定した。
比較例1では、MS−13Xのみに二酸化炭素を吸着させ、マイクロ波によってMS−13Xを加熱し、MS−13Xから二酸化炭素を脱離させている。その結果、表1に示すように、二酸化炭素の脱離率は、21.5%、エネルギー原単位は、8.7kWh/kg−COであった。
〔実施例1〕(参考例)
次に、吸着剤としてMS−13Xに活性炭を5mass%混合したハイブリッド吸着剤を用いる条件以外は、比較例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例1の二酸化炭素の脱離率は、28.2%であり、比較例1の脱離率よりも向上することができた。また、実施例1のエネルギー原単位は、6.5kWh/kg−COであり、比較例1及び2のエネルギー原単位よりも下げることができた。
〔実施例2〕(参考例)
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を10mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例2のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から71℃まで上昇した。そのため、実施例2の二酸化炭素の脱離率は、35.1%であり、実施例1の脱離率よりも更に向上することができた。また、実施例2のエネルギー原単位は、5.8kWh/kg−COであり、実施例1のエネルギー原単位よりも更に下げることができた。
〔実施例3〕
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を15mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例3のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から74℃まで上昇した。そのため、実施例3の二酸化炭素の脱離率は、46.7%であり、実施例2の脱離率よりも更に向上することができた。また、実施例3のエネルギー原単位は、4.4kWh/kg−COであり、実施例2のエネルギー原単位よりも更に下げることができた。
〔実施例4〕
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を20mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例4のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から77℃まで上昇した。そのため、実施例4の二酸化炭素の脱離率は、55.3%であり、実施例3の脱離率よりも更に向上することができた。また、実施例4のエネルギー原単位は、4.0kWh/kg−COであり、実施例3のエネルギー原単位よりも更に下げることができた。
〔実施例5〕
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を30mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例5のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から80℃まで上昇した。そのため、実施例5の二酸化炭素の脱離率は、53.6%であり、実施例1〜3の脱離率よりも更に向上することができたが、実施例4よりは低下した。また、実施例5のエネルギー原単位は、4.4kWh/kg−COであり、こちらは実施例3のエネルギー原単位と同じであった。
〔実施例6〕(参考例)
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を40mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例6のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から82℃まで上昇した。そのため、実施例6の二酸化炭素の脱離率は、48.6%であり、実施例1〜3の脱離率よりも向上することができたが、実施例4または5よりは低下した。また、実施例6のエネルギー原単位は、4.9kWh/kg−COであり、比較例1よりも下げることができたが、実施例3〜5よりも高くなった。
〔実施例7〕(参考例)
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を50mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例7のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から86℃まで上昇した。そのため、実施例7の二酸化炭素の脱離率は、38.6%であり、比較例1や実施例1〜2の脱離率よりも向上することができたが、実施例3〜6より低下した。また、実施例7のエネルギー原単位は、7.5kWh/kg−COであり、比較例1よりも下げることができたが、実施例1〜6よりも高くなった。
〔実施例8〕(参考例)
ハイブリッド吸着剤中の活性炭の混合量を60mass%にする条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表1に示すように、実施例8のハイブリッド吸着剤の最高到達温度は、実施例1における64℃から90℃まで上昇した。そのため、実施例8の二酸化炭素の脱離率は、37.9%であり、比較例1や実施例1〜2の脱離率よりも向上することができたが、実施例3〜7より低下した。また、実施例8のエネルギー原単位は、8.5kWh/kg−COであり、比較例1よりも下げることができたが、実施例1〜7よりも高くなった。
〔比較例2〕
比較例2では、吸着剤としてメソポーラスシリカのみを用いる条件以外は、比較例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表2に示すように、二酸化炭素の脱離率は、19.2%、エネルギー原単位は、13.5kWh/kg−COであった。
〔実施例9〕(参考例)
吸着剤としてメソポーラスシリカに活性炭を20mass%混合したハイブリッド吸着剤を用いる条件以外は、実施例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。その結果、表2に示すように、実施例9の二酸化炭素の脱離率は、45.6%であり、比較例2の脱離率よりも向上することができた。また、実施例9のエネルギー原単位は、5.9kWh/kg−COであり、比較例2のエネルギー原単位よりも下げることができた。
〔比較例3〕
比較例3では、活性炭のみに二酸化炭素を吸着させ、マイクロ波によって活性炭を加熱し、活性炭から二酸化炭素を脱離させている。その結果、表2に示すように、二酸化炭素の脱離率は、42.6%、エネルギー原単位は、14.6kWh/kg−COであった。二酸化炭素の脱離率がMS−13Xの約2倍であるのに、エネルギー原単位が小さい理由は、活性炭での二酸化炭素の吸着量がMS−13Xの約1/3であるからである。CO脱離率はよいものの、エネルギー原単位は実施例1〜9に比べて大幅に劣っている。
〔比較例4〕
マイクロ波照射の時間を長くして、吸着剤の最高到達温度を実施例1と等しい64℃となるようにした条件以外は、比較例1と同じ条件で、二酸化炭素の吸着及び脱離を行った。比較例4の条件では、吸着剤としてMS−13Xのみを使用した。その結果、表2に示すように、比較例4の最高到達温度は、比較例1の最高到達温度よりも高くなり、二酸化炭素の脱離率は、比較例1の脱離率よりも向上したが、実施例1〜9に比べると劣っている。しかしながら、脱離率の増加に対する投入エネルギーの増加割合が大きいため、比較例4のエネルギー原単位は、比較例1及び実施例1〜9のエネルギー原単位よりも大きくなった。したがって、活性炭を15%〜30%混合したハイブリッド吸着剤が、マイクロ波加熱による二酸化炭素の脱離に最も効果的であることがわかる。
Figure 0005682461
Figure 0005682461
1 流路
2 吸着塔
3 流路
4 導波管
5 マイクロ波発振器
6 流路
7 製品タンク
8 流路
9 流路

Claims (4)

  1. 二酸化炭素を吸着する結晶性ゼオライトからなる吸着剤とマイクロ波を吸収する活性炭とを含有し、前記活性炭の混合量が、15mass%以上30mass%以下であることを特徴とするハイブリッド吸着剤。
  2. 前記吸着剤は、化学式Na86[(AlO2)86(SiO2)106]・276H2Oで示される結晶性ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド吸着剤。
  3. 請求項1又は2に記載のハイブリッド吸着剤を結合材により成形したことを特徴とするハイブリッド吸着剤。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のハイブリッド吸着剤に、ガス中の二酸化炭素を吸着させ、前記二酸化炭素を吸着したハイブリッド吸着剤にマイクロ波を照射して、前記ハイブリッド吸着剤に吸着されている前記二酸化炭素を前記ハイブリッド吸着剤から脱離させ、前記ハイブリッド吸着剤から脱離した前記二酸化炭素を回収することを特徴とするガス中の二酸化炭素の回収方法。
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