(発明が解決しようとする課題)
特許文献1によれば、各積層体の周方向端面に凹凸が形成され、この凹凸を隣接する積層体に嵌めることにより、積層体が周方向に結合される。この凹凸は、各分割コア片にコイルを巻回する前に形成される。したがって、各分割コア片にコイルを巻回すると、凹凸の寸法や形状が微小に変動する。そのため、凹凸の嵌め合いによって全周に亘り積層体を結合させることが困難であり、また結合させるために非常に大きな力が必要である。また、結合させた分割型ステータコアにおいては、内径真円度が要求真円度を満たさない可能性がある。
特許文献2によれば、テーパ状のリング部材に仮固定した分割型ステータコアを通すため、成形される分割型ステータコアの外周面が傷つき、あるいは変形するといったおそれがある。
特許文献3によれば、分割型ステータコアの内周部からその内壁を径外方に加圧するための加圧装置を分割型ステータコアの内周に配設しなければならない。したがって、内周径の大きな分割型ステータコアに対しては有効に真円度を調整することができるが、内周径の小さな分割型ステータコアに対してはこの調整装置を分割型ステータコアの内周に配設することが困難である。
特許文献4によれば、外径および内径真円度の精度がともに良好な分割型ステータコアが組み立てられる。しかし、縮径治具のテーパ面を加圧ユニットで加圧する際に加圧ユニットの噛み込みを防止しなければならないために、加圧方向に対する縮径治具のテーパ角度を比較的大きく設定しなければならない。テーパ角度を大きく設定した場合、縮径治具を径内方に移動させるための加圧力も大きくしなければならない。それ故大がかりな装置構成になり、組立て装置のコストおよび組立て装置の設置スペースの増大を招く。
以上のように、従来において、分割型ステータコアを縮径させるに当たり、種々の問題を有していた。本発明は、これらの問題点が改善された分割型ステータコアの縮径装置を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、円筒形状の分割型ステータコアの一方の端面が接するように分割型ステータコアが載置される載置部および前記載置部を中心として放射状に延びた複数のガイド部が形成されているプレートと、複数の前記ガイド部のそれぞれに沿って前記載置部に近づく径内方および前記載置部から遠ざかる径外方に移動し得るように前記プレート上に配設されるとともに前記載置部に載置される分割型ステータコアの外周に対面する壁面を構成する内壁部および前記内壁部と反対側の壁面を構成し且つ前記載置部に載置される分割型ステータコアの軸方向に対して傾斜した外壁面を有する複数の爪部材と、を備える縮径ユニットと、前記載置部の中心にその基端が固定されるとともに前記載置部に載置された分割型ステータコアの軸方向に沿って前記プレートから立設した円柱部材と、少なくとも一方端が開口した円筒形状に形成され、開口面が前記プレートに対面する状態で前記円柱部材の先端部に同軸的に且つ前記円柱部材の軸方向に移動可能に装着されるとともに、前記開口面が前記プレートに近づくように前記円柱部材の軸方向に移動したときに全ての前記爪部材の前記外壁部に接触し得るように構成され、全ての前記爪部材の前記外壁部との接触を維持した状態でさらに前記開口面が前記プレートに近づくように前記円柱部材の軸方向に移動することにより全ての前記爪部材が一斉に前記径内方に移動するように、全ての前記爪部材を同時に加圧する加圧ユニットと、を備え、前記加圧ユニットで全ての前記爪部材を加圧して全ての前記爪部材が一斉に前記径内方に移動することにより前記載置部に載置された分割型ステータコアの径が縮径されたときに、前記加圧ユニットが全ての前記爪部材に噛み込むように構成される、分割型ステータコアの縮径装置を提供する。
本発明の縮径装置によれば、加圧ユニットが全ての爪部材の外壁部に接触した状態でさらにその開口面がプレートに近づくように円柱部材の軸方向に移動することにより、全ての爪部材が加圧ユニットに加圧されて一斉に径内方に移動する。これにより載置部に載置された分割型ステータコアの外周が各爪部材の内壁部に当接するとともにこの内壁部から周方向に均等な圧縮力を受ける。この圧縮力により分割型ステータコアが周方向に均等に縮径される。このようにして分割型ステータコアが縮径されることによって、分割型ステータコアの外径が傷つくことなく所望の径に調整されるとともに、分割型ステータコアを構成する各分割コア片の積層体同士が強固に結合される。
また、分割型ステータコアが載置される載置部の中心に円柱部材が延設されているので、分割型ステータコアは円柱部材を囲むように載置部に載置される。したがって、この分割型ステータコアが縮径されているときに、その内壁が円柱部材の外形に当接して位置決めされる。このため分割型ステータコアの内径真円度を向上させることができる。
また、爪部材の外壁部は載置部に載置される分割型ステータコアの軸方向(すなわち円柱部材の軸方向)に対して傾斜している。この傾斜した外壁部に加圧ユニットが接触した状態で加圧ユニットが円柱部材の軸方向に移動することにより、爪部材が加圧ユニットによって押し出されるように径内方に移動する。爪部材の径内方への移動により載置部に載置されている分割型ステータコアは圧縮力を受けて縮径される。このとき圧縮力に対する反力が発生する。この反力は、爪部材の外壁部の垂直抗力に比例する摩擦力と、加圧ユニットを爪部材の外壁部から離脱させる離脱力とに分解される。したがって、摩擦力が離脱力を上回った場合に、加圧ユニットが爪部材の外壁部に噛み込む。換言すれば、本発明は、分割型ステータコアが縮径されたときに加圧ユニットが爪部材に噛み込むように、加圧ユニットの形状や爪部材の外壁部の形状(例えば外壁部の傾斜角度等)が設定される。
従来では上記した噛み込みを防止するために、例えば特許文献4に示されるように縮径治具を移動させるために設けられる縮径治具のテーパ角が比較的大きめに設定されている。このため縮径治具を移動させて分割型ステータコアを縮径させるために要する力が大きかった。これに対して本発明では噛み込みを積極的に発生させるように構成されている。例えば、噛み込みを積極的に発生させるために、爪部材の外壁部の傾斜角度が小さく設定される。傾斜角度が小さい場合、縮径時に加圧ユニットを爪部材の外壁部に接触させたまま小さな力で円柱部材の軸方向に加圧ユニットを移動させることができ、それに伴い爪部材が小さな力で径内方に移動される。そして、縮径完了時には加圧ユニットが爪部材に噛み込む。すなわち本発明によれば、加圧ユニットが爪部材に噛み込むように構成することにより、小さい加圧力で分割型ステータコアを縮径させることができる。よって、縮径装置をコンパクトに構成できる。
また、加圧ユニットが、載置部の中心から立設された円柱部材に同軸的に装着されており、この円柱部材に沿って加圧ユニットが軸方向移動するように構成されている。円柱部材は分割型ステータコアの内径(内径真円度)を定めるために必要な部材であり、加圧ユニットは爪部材を加圧して分割型ステータコアを縮径させることで分割型ステータコアの外径を定めるために必要な部材である。つまり、分割型ステータコアの内径を定める部材と外径を定める部材が一体化されているため、より正確に、分割型ステータコアの内外径を調整することができる。
前記載置部に載置される分割型ステータコアの軸方向に対する前記爪部材の外壁部の傾斜角度(テーパ角度)は、10°以下であるのがよい。この角度よりも大きい場合、加圧ユニットを爪部材に噛み込ませることが困難になると共に、分割型ステータコアを縮径させるために要する加圧力が大きくなって縮径装置のコンパクト化を阻害する。また、上記傾斜角度は3°以上であるとよい。この角度範囲よりも小さい場合、載置部に載置された分割型ステータコアを所望の外径に縮径させるために要する加圧ユニットの移動ストロークが大きくなって縮径装置のコンパクト化を阻害する。
本発明において、「前記加圧ユニットが全ての前記爪部材に噛み込む」とは、載置部に載置された分割型ステータコアの縮径が完了した際に、外力を加えない限り、加圧ユニットを全ての爪部材から離脱させることができない状態を表す。すなわち、載置部に載置された分割型ステータコアの縮径が完了した際に、加圧ユニットが全ての爪部材から離脱しないようにその状態を保持する力(保持力)が、加圧ユニットが全ての爪部材から離脱する方向に作用する離脱力を上回る状態が、本発明では「噛み込む」と表現される。例えば、載置部に載置された分割型ステータコアの縮径が完了した際に、加圧ユニットによる加圧力の反力により得られる摩擦力成分が、上記反力により得られる離脱力を上回ることにより、加圧ユニットが全ての爪部材に噛み込む。
前記加圧ユニットは、前記円柱部材の先端部が挿入される貫通孔が形成された円板状の基部と、前記基部に連結されるとともにその先端面が前記加圧ユニットの開口面を構成し、前記基部の一方の端面側から前記貫通孔に前記円柱部材の先端部が挿入されたときに前記円柱部材を囲うように前記円柱部材の軸方向に沿って前記基部から延設され、前記加圧ユニットが前記プレートに近づくように前記円柱部材の軸方向に移動したときに前記爪部材の前記外壁部に接触する円筒状のリング部と、前記基部の他方の端面側に連結され前記貫通孔を塞ぐ蓋部とを備えているのがよい。また、前記貫通孔の軸方向長さは前記貫通孔に挿入される前記円柱部材の挿入長さ(円柱部材の軸方向長さのうち貫通孔に挿入される長さ)よりも長く設定されているのがよい。そして、前記蓋部の前記貫通孔を塞いでいる部分に、前記貫通孔に挿入される前記円柱部材の軸方向に平行なネジ孔が貫通形成されているのがよい。
これによれば、貫通孔が形成された円板状の基部の一方端面から円柱部材の先端部が前記貫通孔に挿入されることにより加圧ユニットが円柱部材に装着される。また、加圧ユニットが円柱部材に装着された状態でリング部の先端面(加圧ユニットの開口面)がプレートに近づくように円柱部材の軸方向に沿って加圧ユニットを移動させることにより、リング部が各爪部材の外壁部に接触する。この状態でさらに加圧ユニットを軸方向移動させることにより、載置部に載置された分割型ステータコアが縮径されるとともに、リング部が爪部材に噛み込む。
また、基部の他方端面には貫通孔を塞ぐ蓋部が設けられている。この蓋部の前記貫通孔を塞いでいる部分に、前記貫通孔に挿入される円柱部材の軸方向に平行にネジ孔が形成されている。さらに、貫通孔の軸方向長さがこの貫通孔に挿入される円柱部材の挿入長さよりも長く設定されているので、分割型ステータコアの縮径完了時(加圧ユニットの軸方向移動完了時)には、貫通孔に挿入されている円柱部材の先端面と貫通孔を塞ぐ蓋部との間に空間が形成される。したがって、蓋部のネジ孔にネジ部材が差し込まれ、このネジ部材がネジ送りされることによりネジ部材は上記空間を移動し、その先端が円柱部材の先端面に当接する。
ここで、本発明の縮径装置により分割型ステータコアを縮径した場合、加圧ユニットが爪部材に噛み込むので、噛み込んだ加圧ユニットを爪部材から容易に引き抜くことができない。この場合に、蓋部に形成されたネジ孔に螺合されたネジ部材をネジ送りしてネジ部材の先端部を円柱部材の先端面に当接させ、その状態でさらにネジ部材をネジ送りすることにより、円柱部材と蓋部材(加圧ユニット)とを離間させる方向に作用する力を発生させることができる。なお円柱部材はプレート(縮径ユニット)に固定されているので、この力は加圧ユニットを縮径ユニット(爪部材)から離間させる方向に作用する力ともいえる。
また、ネジ送りによりネジ部材が軸方向に進むときに発生する直進駆動力は、ネジ部材の減速比に応じてネジ部材を回転させるために必要な回転駆動力に対し増幅される。つまり、小さな回転駆動力により大きな直進駆動力を得ることができる。したがって、ネジ部材を小さな回転駆動力(回転トルク)で回転させた場合でも、加圧ユニットを爪部材から離間させる方向への大きな力が発生される。このようにして、小さな力で加圧ユニットを爪部材から引き抜くことができる。
前記リング部には、その内壁から外壁にかけて貫通した貫通窓部がその軸方向に沿って長尺状に形成されているのがよい。この貫通窓部は、前記リング部の周方向に複数個形成されているのがよい。
この場合、前記爪部材の個数は、前記載置部に載置される分割型ステータコアを構成する分割コア片の積層体の個数と等しいとよい。そして、分割型ステータコアの縮径時にそれぞれの爪部材の内壁部が分割型ステータコアを構成するそれぞれの分割コア片の積層体の外壁を加圧するように構成されているとよい。さらにこの場合、分割型ステータコアの縮径完了時に隣接する爪部材の間に微小の隙間が形成され、且つ、この隙間に前記貫通窓部が対面するように、前記加圧ユニットの回転位置が調整されているとよい。
分割型ステータコアを縮径させた場合であっても、分割型ステータコアを構成する分割コア片の積層体同士の結合部分はその他の部分に比べて強度的に劣る。したがって、縮径後に上記結合部分が接合される。この場合において、本発明によれば、加圧リングに貫通窓部が形成されているので、縮径完了時にこの貫通窓部と分割コア片の積層体同士の結合部分が対面するように構成することにより、縮径完了後、この貫通窓部から溶接治具等を挿入して、結合部を接合することができる。なお、この場合においては、加圧ユニットが爪部材に噛み込んだ状態の縮径装置の内部に配設された分割型ステータコアを接合することになるが、逆にこの状態では分割型ステータコアが縮径装置により固定されているので、接合する際に分割型ステータコアが移動することにより生じる不具合(溶接不良等)の発生を防止することができる。
前記加圧ユニットは、前記円柱部材に装着されたときに前記載置部に載置された分割型ステータコアの軸方向に対して傾斜した内壁面を有し、前記開口面が前記プレートに近づくように前記加圧ユニットが前記円柱部材の軸方向に移動したときに、前記加圧ユニットの前記内壁面が全ての前記爪部材の外壁部に面接触するように構成されているとよい。すなわち、載置部に載置された分割型ステータコアの軸方向に対する爪部材の外壁部および加圧ユニットの内壁面の傾斜角度(テーパ角度)は同一であるのがよい。特に3〜7°の範囲で同一であるのがよい。これによれば、加圧ユニットの内壁面が爪部材の外壁部に面接触した状態で爪部材が加圧ユニットに加圧されるので、その加圧力に対する反力が作用する面積が大きい。このため反力によって得ることができる摩擦力を大きくすることができ、その結果、縮径時に容易に加圧ユニットを爪部材の外壁部に噛み込ませることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る分割型ステータコアの縮径装置の斜視図、図2は縮径装置の内部構成を透視した正面図である。本実施形態の縮径装置1は、コイルが巻回された複数の分割コア片の積層体が周方向に仮固定された分割型ステータコアP(図2参照)を縮径させて、分割型ステータコアPの外径、内径および内径真円度を所望の値に設定するとともに各積層体を強固に結合させるための装置である。図1および図2に示すように、本実施形態の縮径装置1は、縮径ユニット10と、円柱部材20(図2)と、加圧ユニット30とを備える。
図2に示すように、縮径ユニット10は、複数個(本実施形態では18個)の爪部材11と、第1ガイドプレート12と、第2ガイドプレート13と、パレット14と、リングプレート15とを備える。
爪部材11は、平面(上面)視にて扇状をなすベース部111と、扇状のベース部111の一方の端面(上端面)111aから立設した接触爪部112とを有する。
ベース部111は上述したように平面視にて扇状に形成されており、本実施形態において中心角は18°である。また、内径側が円弧状に切り欠かれていて、その内径側付近から接触爪部112が立設している。
接触爪部112は、中空円錐状の部材を径方向に一部切り出したような形状を呈しており、水平方向に切断した断面において円弧状をなす外周壁部112aおよび内周壁部112bを有する。上方からの平面視における外周壁部112aおよび内周壁部112bの円弧形状の中心点は一致する。
内周壁部112bはベース部111の内周側よりもさらに内周側からベース部111の上端面111aに対して直交する上下方向に平行に形成されている。一方、外周壁部112aは上下方向に対して傾斜している。具体的には、接触爪部112の外周壁部112aから内周壁部112bまでの水平方向距離(奥行き)は、接触爪部112がベース部111に連結している接触爪部112の下方側から上方側に向かうにつれて短くなっている。すなわち、接触爪部112の基端側(下方側)から先端側(上方側)にかけて先細りとなるように、外周壁部112aが上下方向に対して傾斜している。
また、接触爪部112には、内周壁部112bに開口する凹部112eが設けられている。この凹部112e内に位置決め部(ボールプランジャ)BPが配設される(図2参照)。ボールプランジャBPは、その先端が内周壁部112bから突出可能であるように凹部112e内に配設される。なお、凹部112eは、複数の爪部材11のうちの一部に形成されていればよい。
第1ガイドプレート12は平面(上面)視にて略円形状をなし、外周縁から中心に向かう方向に複数本(本実施形態では18本)のスリット121が等間隔(本実施形態では20°間隔)に形成されている。このスリット121の形成によって、扇状をなすガイド片122が周方向に沿って整列するとともに、それぞれのガイド片122の先端部分が連結され、その中心部分には図2に示すように貫通孔124aが内部に形成されたボス124が立設する。ボス124上に仮固定された円筒形状の分割型ステータコアの一端面が載置される。したがって、各スリット121は、分割型ステータコアが載置されるボス124(載置部)から放射状に延びるように形成される。また、各ガイド片122の外周縁付近に上下端面を貫通する第1貫通孔125がそれぞれ形成されている。また、各ガイド片122のうち周方向に3個おきに、(すなわち60°間隔で)、上下端面を貫通する第2貫通孔126(図2)が形成されている。この第2貫通孔126は、第1貫通孔125よりもやや径内方位置に設けられる。
第2ガイドプレート13も第1ガイドプレート12と同様に平面(上面)視にて略円形状をなしている。第2ガイドプレート13の径は第1ガイドプレート12の径と同一である。また、外周縁から中心に向かう方向に複数本(本実施形態では18本)のスリット131が等間隔(本実施形態では20°間隔)に形成されている。このスリット131の形成によって、扇状をなすガイド片132が周方向に沿って整列するとともに、それぞれのガイド片132の先端部分が連結され、その中心部分には図2に示すように上下端面を貫通する貫通孔134が形成されている。したがって、各スリット131は、貫通孔134から放射状に延びるように形成されている。スリット131の長さは、第1ガイドプレート12に形成されているスリット121の長さに等しい。また、各ガイド片132の外周縁付近に上下端面を貫通する貫通孔135がそれぞれ形成されている。各貫通孔135から第2ガイドプレート13の中心までの距離は、第1ガイドプレート12に形成された第1貫通孔125から第1ガイドプレート12の中心までの距離に等しい。
このような構成の第2ガイドプレート13が第1ガイドプレート12の下面に配置される。この場合において、第1ガイドプレート12に形成されている各スリット121の周方向位置が、第2ガイドプレート13に形成されている各スリット131の周方向位置に一致し、且つ、第1ガイドプレート12の各ガイド片122に形成された各第1貫通孔125が第2ガイドプレート13の各ガイド片132に形成された各貫通孔135と同軸配置するように、第1ガイドプレート12に対して同軸的に第2ガイドプレートが積層配置される。なお、スリット121およびスリット131が、本発明のガイド部に相当する。
複数の爪部材11は、積層配置された第1ガイドプレート12と第2ガイドプレート13とにより係止される。また、爪部材11は、そのベース部111および接触爪部112が第1ガイドプレート12上から露出した状態で、第1ガイドプレート12上に配設される。また、爪部材11は、その下方部が両スリット121,131に挟まれることによって、両ガイドプレート12,13の周方向への移動が規制される。さらに、爪部材11は、両スリット121,131に沿ってボス124に近づく方向(径内方)およびボス124から遠ざかる方向(径外方)に移動し得るように、第1ガイドプレート12上に配置される。
パレット14は第2ガイドプレート13の下方に配置される。このパレット14の中央部に断面円形状の中央凹部141が形成される(図2)。また、パレット14の外周縁付近に周方向に沿って等間隔(本実施形態では20°間隔)に上下端面を貫通する貫通孔142が形成されている。各貫通孔142とパレット14の中心との間の距離は、第1ガイドプレート12に形成された第1貫通孔125と第1ガイドプレート12の中心との間の距離に等しい。このようなパレット14が第2ガイドプレート13の下部に同軸的に積層配置される。このとき各貫通孔142が第1ガイドプレート12に形成された第1貫通孔125および第2ガイドプレート13に形成された貫通孔135と同軸配置するように、パレット14が第2ガイドプレート13の下部に積層配置される。そして、各貫通孔125,135,142にネジ部材を通してナット等で締結することにより、第1ガイドプレート12および第2ガイドプレート13がパレット14に固定される。
リングプレート15はリング状に形成されており、その周方向に等間隔(本実施形態では60°間隔)に上下に貫通する貫通孔151が形成されている(図2)。各貫通孔151とリングプレート15の中心との間の距離は、第1ガイドプレート12に形成されている第2貫通孔126と第1ガイドプレート12の中心との間の距離に等しい。このリングプレート15は第1ガイドプレート12の上部に同軸的に配置される。このとき第1ガイドプレート12に形成されている第2貫通孔126とリングプレート15に形成されている貫通孔151が同軸配置するように、リングプレート15の位置が調整されて配置される。そして、貫通孔151および第2貫通孔126とにネジ部材を通してナット等で締結することにより、リングプレート15が第1ガイドプレート12に固定される。このリングプレート15によって、第1ガイドプレート12および第2ガイドプレート13の径外方への爪部材11の移動を規制して爪部材11が第1ガイドプレート12および第2ガイドプレート13から抜け落ちることが防止される。
上記のようにして、爪部材11、第1ガイドプレート12、第2ガイドプレート13、パレット14およびリングプレート15が組付けられて縮径ユニット10が構成される。この縮径ユニット10内にて、分割型ステータコアPをとりかこむように18個の爪部材11が周方向に配列する。これらの爪部材11が径内方に一斉に移動することにより、爪部材11に取り囲まれた分割型ステータコアPが縮径される。
また、爪部材11、第1ガイドプレート12、第2ガイドプレート13、パレット14およびリングプレート15が組付けられたときに、図2に示すように、第1ガイドプレート12のボス124に形成された貫通孔124a、第2ガイドプレート13に形成された貫通孔134およびパレット14に形成された中央凹部141が同軸配置する。このように同軸配置された貫通孔および凹部に円柱部材20が挿通される。
円柱部材20は、その下端部20a側から縮径ユニット10の第1ガイドプレート12に形成されているボス124の貫通孔124aに挿通され、次いで第2ガイドプレート13に形成されている貫通孔134に挿通される。そして、第2ガイドプレート13の下部に配設されているパレット14の中央凹部141に円柱部材20の下端部20aが載置される。この状態で、円柱部材20の下面とパレット14とをボルトおよびナット等の締結手段により締結する。これによって、円柱部材20が縮径ユニット10の中央部から立設するように、縮径ユニット10にその下端(基端)20aが固定される。
なお、上述したように、第1ガイドプレート12のボス124上に分割型ステータコアが載置される。分割型ステータコアは、その内周側に円柱部材20が挿通された状態でボス124上に載置される。したがって、円柱部材20は、ボス124に載置される分割型ステータコアの軸方向に沿って立設される。つまり、円柱部材20の軸方向は、ボス124に載置される分割型ステータコアの軸方向に一致する。これらの軸方向は本実施形態では縮径装置1の正面図(図2)における上下方向である。
また、第1ガイドプレート12のボス124から放射状に形成されたスリット121に沿って縮径ユニット10の径内外方に移動する爪部材11に形成されている内周壁部112bは、図2に示すようにボス124上に載置される分割型ステータコアPの外壁に対面する壁面、つまり縮径ユニット10の径内方を向いた面を構成する。外周壁部112aは内周壁部112bとは反対の壁面、つまり縮径ユニット10の径外方を向いた面を構成する。上述のように外周壁部112aは上下方向に対して傾斜している。すなわち外周壁部112aは、ボス124に載置される分割型ステータコアの軸方向に対して傾斜している。
加圧ユニット30は、図2に示すように、一方端が開口した略円筒形状に形成されている。加圧ユニット30は、加圧リング31と蓋部32とを備える。
加圧リング31は、段付き円板状に形成された基部311と、基部311に一体的に連結されるとともに、基部311から基部311の軸方向に沿って下方に延在した円筒状のリング部312とを有する。基部311にはその両端面を貫通する中央貫通孔311aが中央に形成されている。また、リング部312には、図1に示すように、その周方向に等間隔に複数個(本実施形態では18個)の貫通窓部312aが形成されている。この貫通窓部312aは、リング部312の内周壁312cから外周壁312bにかけて貫通する。貫通窓部312aは、図1からわかるように、リング部312の上部から下部にかけてリング部312の軸方向に沿って長孔状に形成されている。
リング部312の外周壁部312bは図2において上下方向に平行に形成されている。一方、リング部312の内周壁部312cは上下方向に対して傾斜している。具体的には、水平方向におけるリング部312の外周壁部312bと内周壁部312cとの間の距離(厚さ)が、リング部312の基端側(基部311に近い側)から先端側に向かうにつれて小さくなるように、リング部312の内周壁部312cが傾斜している。このリング部312aの内壁部312cの傾斜角度の大きさは、接触爪部112の外周壁部112aの傾斜角度の大きさと等しい。
また、リング部312の先端面(下端面)312dは加圧ユニット30の開口面を構成する。この先端面312dにおける内周径は、全ての爪部材11が縮径ユニット10内でリングプレート15により移動が規制される位置にあるときにおける、接触爪部112の上端の外周壁部112aを通る円の直径よりも大きく、且つ、接触爪部112の下端の外周壁部112aを通る円の直径よりも小さくなるように設計されている。したがって、このリング部312がその先端面312d側から縮径ユニット10内の爪部材11に被せられるように上方から縮径ユニット10に対して円柱部材20の軸方向(すなわち分割型ステータコアの載置空間の軸方向)に沿って下降してきた場合、爪部材11の接触爪部112の外周壁部112aとリング部312の内周壁部312cが面接触する。
また、基部311の上面には上述したように中央貫通孔311aが開口している。中央貫通孔311aには円柱部材20が挿入される。
蓋部32の中央にネジ孔(通し孔)321が形成されている。さらに、上下側面にネジ穴323が形成されている。この蓋部32は加圧リング31の基部311の上面に配置されて、基部311に形成されている中央貫通孔311aを塞ぐように基部311に固定される。蓋部32のネジ孔321は、蓋部32が基部311に固定された状態において基部311の中央貫通孔311aを塞いでいる部分に形成される。
このような構成の縮径装置1を用いて分割型ステータコアが縮径される。この場合、縮径前の分割型ステータコアは、正規の外径よりも若干大きい外径を有するように、各分割コア片の積層体同士を周方向に緩やかに結合した仮固定状態(甘噛み状態)とされている。以下、この縮径装置1を用いた分割型ステータコアの縮径方法について、各工程ごとに説明する。
(セット工程)
本実施形態において縮径すべき分割型ステータコアは、18個の分割コア片の積層体を周方向に結合することにより構成される。この分割型ステータコアは略円筒形状であり、内部にロータを収容するための円柱状の空間が形成される。このような分割型ステータコアが、加圧ユニット30を取り外した縮径装置1の第1ガイドプレート12の中央に立設した円柱部材20の上部から差し込まれ、第1ガイドプレート12のボス124上に載置される。なお、図2に示すように、縮径ユニット10に組み込まれた爪部材11のベース部111と円柱部材20との間にスプリングプランジャ41がボス124を径方向に貫通して着座しており、このスプリングプランジャ41によって爪部材11は第1ガイドプレート12および第2ガイドプレート13の径外方に弾発付勢される。よって、全ての爪部材11は、リングプレート15によって規制される位置まで後退している。爪部材11の位置がこの規制位置であるときは、各爪部材11の接触爪部112の内周壁部112bで囲まれる円柱状の空間の径がボス124に載置される分割型ステータコアの外径よりも大きい。したがって、分割型ステータコアは、各爪部材11に干渉することなく、円柱部材20の先端部20b側から差し込まれてボス124上に載置される。なお、ここでは付勢手段としてスプリングプランジャ41を使用しているが、油圧、モータ等により付勢してもよい。
またこのとき、分割型ステータコアを構成する各分割コア片の積層体の外壁のそれぞれに、各爪部材11の接触爪部112の内周壁部112bが対面するように、分割型ステータコアがボス124上に載置される。
ボス124に分割型ステータコアを載置した後に加圧ユニット30が円柱部材20に装着される。この場合、図2に示すように、円柱部材20の先端部20bを加圧リング31の基部311の下端面側(一方の端面側)から中央貫通孔311aに挿入させることによって、リング部312の先端面312d(加圧ユニット30の開口面)が第1ガイドプレート12に対面した状態で、円柱部材20の先端部20bに同軸的に且つ円柱部材20の軸方向に移動可能に加圧ユニット30が装着される。また、この装着状態(中央貫通孔311aに円柱部材20の先端部が挿入された状態)では、リング部312が円柱部材20の周りを囲うように、リング部312が基部311から延設される。
また、加圧ユニット30が装着された縮径装置1においては、図2からわかるように、接触爪部112の外周壁部112aおよびリング部312の内周壁部312cが上下方向に対して傾斜している。この上下方向は、ボス124に載置される分割型ステータコアの軸方向に等しい。よって、接触爪部112の外周壁部112aおよびリング部312の内周壁部312cは、ボス124に載置される分割型ステータコアPの軸方向に対して傾斜している。また、接触爪部112の外周壁部112aおよびリング部312の内周壁部312cは、これらが係合可能であり且つ係合時に係合力によって爪部材が径内方に移動し得るような傾斜方向に傾斜している。分割型ステータコアPの軸方向に対する内周壁部312cの傾斜角度(テーパ角度)の大きさは、爪部材11の接触爪部112の外周壁部112aの傾斜角度(テーパ角度)の大きさとほぼ等しい。本実施形態ではこれらのテーパ角度は約5°に設定されている。
(縮径工程)
分割型ステータコアをのボス124上に載置し、加圧ユニット30を円柱部材20に装着した後に、リング部312の先端面312d(加圧ユニット30の開口面)が第1ガイドプレート12に近づくように、加圧ユニット30を円柱部材20の軸方向に沿って移動させる。この移動は、例えば加圧ユニット30の蓋部32の上面を電気プレスなどの加圧装置により加圧することによりなされる。
加圧ユニット30が円柱部材20の軸方向に沿って所定の高さ位置まで下降したときに、加圧リング31のリング部312の内周壁部312cと全ての爪部材11の接触爪部112の外周壁部112aが面接触する。この接触を維持したままさらに加圧ユニット30が下降することにより、全ての爪部材11が同時に加圧ユニット30により加圧される。このような加圧によって、各爪部材11がリング部312により押し出されるようにして縮径ユニット10の径内方に一斉に移動する。つまり加圧ユニット30の加圧力により全ての爪部材11が一斉に移動して縮径ユニット10の径内方に集められるように移動する。このような爪部材11の移動によって、接触爪部112の内周壁部112bがボス124上に載置された分割型ステータコアの外周面に近づき、やがて接触する。この場合において、18個の爪部材11の接触爪部112が、分割型ステータコアを構成する18個の分割コア片の積層体の外周面にそれぞれ接触する。
また、ボス124上に載置された分割型ステータコアを構成するそれぞれの分割コア片の積層体の外周には、軸方向に沿って図示しない溝が形成されており、分割型ステータコアの外周に接触爪部112の内周壁部112bが接触したときにこの溝に接触爪部112の内周壁部112bから突出したボールプランジャBPの先端が当接する。この当接により、ボス124上に載置された分割型ステータコアの位置ずれおよび回転が防止される。
そして、さらに加圧ユニット30が下降するとともに爪部材11が径内方に移動すると、分割型ステータコアはその外周から全ての接触爪部112により周方向に均等に圧縮される。この圧縮力によって分割型ステータコアが縮径する。
加圧ユニット30による加圧力が予め設定した圧力に達した場合、あるいは爪部材11が予め設定した距離だけ移動した場合、あるいは分割型ステータコアの外径が予め設定した径に達した場合、加圧ユニット30の下降が停止される。これにより分割型ステータコアの縮径が完了する。こうした縮径工程によって、分割型ステータコアを構成する各分割コア片の積層体同士を強固に結合することができる。また、外周側から均等に圧縮されて外径が縮径されるので、外径を所望の径に調整することができる。さらに、分割型ステータコアの内周側に円柱部材20が配設されているために、縮径により分割型ステータコアの内周側が円柱部材20の外周に押しつけられて、分割型ステータコアの内周側の形状が円柱部材20の外周に当接して位置決めされる。よって分割型ステータコアの内径真円度の精度を向上させることができる。
また、加圧ユニット30の下降が停止されたとき(分割型ステータコアの縮径が完了したとき)には、リング部312の内周壁部312cと接触爪部112の内周壁部112bとの接触面におけるテーパ嵌合によって加圧リング31が爪部材11に強く噛み込んでいる。つまり、外力を加えない限り、加圧ユニット30を全ての爪部材11から離脱させることができないような状態とされている。すなわち、加圧ユニット30が爪部材11を加圧することによって受ける反力の上記接触面における垂直抗力に比例する摩擦力成分(加圧ユニット30が全ての爪部材11から離脱しないようにその状態を保持する力)が、加圧ユニット30と爪部材11とを離脱させる方向に作用する離脱力成分よりも極めて大きくなっており、そのため加圧ユニット30を縮径ユニット10(爪部材11)から容易に引き抜くことができないようになっている。特に、本実施形態では、リング部312の内周壁部312cと接触爪部112の外周壁部112aが面接触し、且つ両者のテーパ角度が小さい(5°)ので、接触面での摩擦力が非常に大きい。換言すれば、本実施形態の縮径装置1は、分割型ステータコアの縮径時に加圧ユニット30が爪部材11に積極的に噛み込むように構成されている。
従来ではこのような噛み込みを防止するために、例えば特許文献4に示されるように、縮径治具を移動させるために設けられる縮径治具のテーパ角が比較的大きめに設定されている。このため縮径治具を移動させて分割型ステータコアを縮径させるために要する力が大きかった。これに対して本実施形態では上述したように噛み込みを積極的に発生させるように、リング部312の内周壁部312cおよび接触爪部112の外周壁部112aのテーパ角度を小さく(例えば5°)設定している。そのため両者を噛み込ませるために要する力が小さい。すなわち本実施形態によれば、小さい加圧力で分割型ステータコアを縮径させることができるのである。
(溶接工程)
ところで、分割型ステータコアは、分割コア片の積層体を周方向に結合したものであるので、上記縮径工程により各積層体を強固に結合した場合でも、その結合部位は他の部位に比べて強度的に劣る。また、積層体を構成する分割コア片もその積層方向に強固に結合した方が良い。したがって、本実施形態では、縮径後に上記結合部位が分割コア片の積層方向に沿って溶接される。
溶接するにあたり、加圧ユニット30が縮径ユニット10に噛み込んでいるため、縮径装置1の内部から分割型ステータコアを取り出すことが容易にできない。本実施形態では、内部に分割型ステータコアが保持された縮径装置1を溶接ステーションに移送し、その状態で分割型ステータコアに溶接を施す。
図3は、縮径完了時における、縮径装置1内に保持された分割型ステータコアPと、隣接する爪部材11a,11bとの配置関係を示す平面図である。図3に示すように、爪部材11aは図のAで示される分割コア片の積層体を、爪部材11bは図のBで示される分割コア片の積層体を、それぞれ径内方に加圧している。また、隣接する爪部材11aと11bとの間に微小の隙間Δが形成されている。この隙間Δからは、隣接する分割コアの積層体同士の結合部位Tが露出する。また、この隙間Δが縮径完了時に加圧リング31のリング部312に形成された貫通窓部312aに対面するように、縮径時における加圧リング31の回転方向が調整されている。したがって、貫通窓部312aを介して隙間Δに溶接治具を通すことで、隣接する分割コア片の積層体同士の結合部位を貫通窓部312aの長手方向に沿って例えばレーザ溶接等により溶接することができる。貫通窓部312aの長手方向は、分割型ステータコアPの軸方向に一致する。この軸方向は分割コア片の積層体の積層方向でもある。よって、本実施形態によれば、貫通窓部312aを介して隣接する分割コア片の積層体同士の結合部位を積層方向に沿って溶接することができる。
また、縮径装置1内の分割型ステータコアPは、強い圧力によりその位置が固定されている。したがって、溶接時に分割型ステータコアPが動くことが防止される。これにより、溶接時に分割型ステータコアPが動くことによる溶接不良等が効果的に防止される。なお、本実施形態では、隣接する分割コア片の積層体の接合方法として溶接を用いているが、接着剤の塗布による接合を用いても良い。
(加圧リング引き抜き工程)
結合部位Tを溶接した後に、縮径装置1から分割型ステータコアPを取り出す。このとき加圧ユニット30が縮径ユニット10に噛み込んでいるために、容易に加圧ユニット30を縮径ユニット10から取り外すことができない。この点に関し、本実施形態の縮径装置1は、加圧ユニット30にネジ部材51を取り付けるとともにこのネジ部材51を回転させることにより、加圧ユニット30が縮径ユニット10から容易に取り外されるように構成されている。
縮径完了時には、図2に示すように加圧ユニット30の蓋部32の上下方向位置が、円柱部材20の上端面の上下方向位置よりも高い。つまり、加圧リング31の基部311に形成されている中央貫通孔311aの軸方向長さが、縮径工程にて中央貫通孔311aに挿入される円柱部材20の挿入長さ(中央貫通孔311aに挿入される部分の軸方向長さ)よりも長く設定されている。このため縮径完了時には蓋部32と円柱部材20との間に空間Sが形成される。
また、上記したように、加圧ユニット30の蓋部32にはネジ孔321が形成されている。ネジ孔321は基部311の中央貫通孔311aを塞いでいる位置に形成されている。加圧リング引き抜き工程では、図2に示すようにこのネジ孔321に螺合可能なネジ部材51を螺合させる。
また、蓋部32の側面に形成されているネジ穴323に、先端部にネジ穴323に螺合可能なネジ部が形成されている取っ手(固定グリップレバー)52が螺着される(図1、図2参照)。
そして、蓋部32およびこれに結合している加圧リング31が回転不能且つ上下方向に移動可能なように固定グリップレバー52を図示しない保持機構により保持する。その状態で、ネジ孔321に螺合しているネジ部材51がネジ送りされて図2において下方移動するようにネジ部材51を回転させる。ここで、上記したように縮径完了時には蓋部32の上下方向位置が円柱部材20の上端面の上下方向位置よりも高く、蓋部32と円柱部材20との間に空間Sが形成されている。したがって、ネジ部材51がネジ送りされることによりネジ部材51が上記空間S内を下方移動し、やがてその先端が円柱部材20の上端面(先端面)に接触する。
ネジ部材51の先端が円柱部材20の上端面に接触している状態からさらにネジ部材51が下方移動するようにネジ部材51を回転させる。この場合において、直方体状に形成されたネジ部材51のヘッド部511を工具あるいはチャックでつかみ、その工具あるいはチャックを回転させることにより、少ない力でネジ部材51を回転させることができる。
ネジ部材51の先端が円柱部材20の上端面に接触している状態からネジ部材51をさらに回転させることにより、円柱部材20の上端面がネジ部材51から押圧力を受ける。この押圧力はネジ部材51の回転駆動力が直線駆動力に変換されたものであり、回転運動が直線運動に変換される際における減速比に応じて、加えられる回転駆動力に対し増大される。そのため比較的小さい回転駆動力で大きな押圧力を円柱部材20に与えることができる。またこの押圧力は、ネジ部材51が螺合されている蓋部32が円柱部材20から離間する方向に作用する。よって、この押圧力により蓋部32およびこの蓋部32が固定された加圧リング31からなる加圧ユニット30が円柱部材20に対して図において上方に移動する(もしくは円柱部材20が加圧ユニット30に対して図において下方に移動する)。円柱部材20は縮径ユニット10に固定されているので、加圧ユニット30の円柱部材20に対する上方移動により、加圧ユニット30は縮径ユニット10に対しても図示上方に移動する。この上方移動によって、加圧ユニット30と縮径ユニット10(爪部材11)との噛み込みが解消され、加圧ユニット30を縮径ユニット10から取り外すことができる。
加圧ユニット30が縮径ユニット10から取り外された場合、各爪部材11はスプリングプランジャの付勢力によってリングプレート15で規制される位置まで後退する。この状態で、分割型ステータコアPを円柱部材20から引き上げることによって、分割型ステータコアPを縮径装置1から取り出すことができる。
以上のように、本実施形態の縮径装置1によれば、縮径時に加圧ユニット30を下降させてリング部312の内周壁部312cを全ての爪部材11の接触爪部112の外周壁部112aに接触させ、この接触を維持したままさらに加圧ユニット30を下降させて全ての爪部材11を加圧する。これにより全ての爪部材11が一斉に径内方に移動されて、ボス124に載置された分割型ステータコアPの径が縮径される。また、縮径時に加圧ユニット30と縮径ユニット10との接触部位(リング部312の内周壁部312cおよび接触爪部112の外周壁部112aとの接触部位)での摩擦力に基づく保持力(加圧ユニット30を全ての爪部材11から離脱させないように保持する力)が離脱力に比して大きくなるように、リング部312の内周壁部312cのテーパ角度および接触爪部112の外周壁部112aのテーパ角度が小さく設計されている。このため比較的小さな力で加圧ユニット30を縮径ユニット10(爪部材11)に噛み込ませるとともに分割型ステータコアを縮径させることができる。また、加圧ユニット30による爪部材11の加圧により全ての爪部材11が一斉に径内方に移動して分割型ステータコアを圧縮するので、分割型ステータコアの外周が周方向に均等に圧縮される。よって、分割型ステータコアを所望の外径に調整することができる。さらに、縮径時に分割型ステータコアの内周が円柱部材20に習うので、内径真円度の精度を向上させることができる。
また、縮径時に爪部材11から突出するボールプランジャBPが分割型ステータコアの外周に形成される溝に係合することにより分割型ステータコアが位置決めされる。このため縮径時に分割型ステータコアが位置ずれおよび回転位置ずれを起こすことが防止される。
また、縮径完了後に内部に分割型ステータコアが保持された縮径装置1をそのまま溶接ステーションに移送し、リング部312の貫通窓部312aから溶接治具を通すことにより、隣接する分割コア片の積層体同士の結合部位を積層方向に沿って溶接することができる。
また、加圧リング引き抜き工程では、蓋部32に形成されたネジ孔321からネジ部材51を回転させてネジ送りすることによって大きな直線駆動力(押圧力)を発生させ、この直線駆動力を円柱部材20の先端面に作用させることにより加圧ユニット30が縮径ユニット10(爪部材11)から引き離される。このように、ネジ部材51を回転させるときに必要な小さな回転力によって、噛み込んだ加圧ユニット30を容易に縮径ユニット10から引き離すことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においては、リング部312の内周壁部312cがボス124に載置された分割型ステータコアPの軸方向に対して傾斜するように形成されており、縮径工程にてこの内周壁部312cが接触爪部112の外周壁部112aに面接触するように構成されている。しかし、例えば図4に示すように、リング部312の先端部分312eを曲面形状に形成し、この先端部分312eが接触爪部112の外周壁部112aに線接触するように構成してもよい。すなわち、縮径時に加圧ユニット30が縮径ユニット10(爪部材11)に噛み込むように構成されていればよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。