JP5676402B2 - 放射線画像撮影装置 - Google Patents

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Description

本発明は、放射線画像撮影装置に関し、特に放射線検出パネルと信号処理基板とをフレキシブル基板によって接続する放射線画像撮影装置に関する。
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換することができるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置においては、従来のX線フィルムやイメージングプレートを用いた放射線画像撮影装置に比べて、即時に画像を確認することができる特徴がある。また、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)を行うことができる特徴がある。
この種の放射線検出器には種々のタイプが提案されている。例えば、間接変換方式を採用する放射線検出器は、シンチレータを用いて放射線を光に変換し、変換された光をフォトダイオード等のセンサ部によって電荷に変換し、この電荷を蓄積する。蓄積された電荷はX線撮影によって得られた撮影画像情報である。シンチレータにはCsI:Tl、GOS(GdS:Tb)等が使用されている。放射線画像撮影装置においては、放射線検出器に蓄積された電荷がアナログ信号として読み出され、このアナログ信号はアンプによって増幅された後にアナログデジタル(A/D)変換部によってデジタルデータに変換される。
下記特許文献1には、故障の発生を防止可能なカセッテ型放射線画像検出器が開示されている。このカセッテ型放射線画像検出器はセンサパネル、基台及びフレキシブルケーブルを備える画像検出部をハウジング内に内蔵している。センサパネルは光電変換手段及び入射された放射線を光に変換するシンチレータを有する。基台は、センサパネルに対向して配置され、光電変換手段に関連する回路を設けている。フレキシブルケーブルは、光電変換手段と回路とを電気的に接続し、集積回路素子等を実装したCOF(Chip On Film)等である。ハウジングのフレキシブルケーブルに対向する側面部はフレキシブルケーブルの折り返し形状に合わせて曲面状に形成されている。集積回路素子等の動作に伴い発せられる熱を放出するため、フレキシブルケーブルはハウジングの側面部の曲面状の内壁部に面接触をなしている。ハウジングのハウジング本体は熱伝導率が高いカーボン繊維を用いて形成されている。
このように構成されるカセッテ型放射線画像検出器においては、ハウジングの側面部がフレキシブルケーブルの折り返しの曲率と略同一の曲率を有する曲面状に形成されている。このため、フレキシブルケーブルは、振動しても、側面部の曲面状によって振動を阻まれ、側面部からのずれを生じない。従って、ハウジングの側面部とフレキシブルケーブルとの擦れを防止することができるので、擦れに起因するフレキシブルケーブルの配線の切断等の故障を防止することができる。
特開2009−257914号公報
ところで、特許文献1に開示されたカセッテ型放射線画像検出器はハウジングのハウジング本体に導電性を有し、ハウジング本体は電磁シールドとして機能する。つまり、カセッテ型放射線画像検出器においては外部からの電磁ノイズを防止することができる。しかしながら、ハウジング本体の内壁部とセンサパネルや基台に設けられた回路とは数mm程度の非常に狭い離間寸法しか確保することができない。X線撮影中やその直前に、被検体(患者)の位置調整や姿勢調整に伴い、被検体とカセッテ型放射線画像検出器とが接触や衝突を生じると、カセッテ型放射線画像検出器に加減速度や振動が加わる。この加減速度や振動の度合いによってはハウジング本体とセンサパネルの一部或いは回路の一部とに接触が生じる。ハウジング本体に電磁ノイズ等が乗った場合には、電磁ノイズは、センサパネルや回路のアナログ信号に変化を及ぼし、X線撮影画像情報の誤検出を誘発する。
また、特許文献1に開示されたカセッテ型放射線画像検出器においては、集積回路素子等の動作に伴い発せられる熱を放出しつつ擦れを防止するために、ハウジング本体の側面部の内壁部にフレキシブルケーブルが面接触をなしている。前述と同様に、ハウジング本体に電磁ノイズ等が乗った場合、電磁ノイズは、フレキシブルケーブルの配線において伝送されるアナログ信号に変化を及ぼし、X線撮影画像情報の誤検出を誘発する。
このような電磁ノイズによるX線撮影画像情報の誤検出を回避するために、カセッテ型放射線画像撮影装置のハウジング本体は絶縁体により製作し、ハウジング本体の側面部の内壁部とフレキシブルケーブルとの間は離間させることが有効である。しかしながら、絶縁体を用いてハウジング本体を製作すれば電磁ノイズ対策に対して有効であるものの、前述のような加減速度や振動が加わったときに、ハウジング本体の内壁部にフレキシブルケーブルが接触し又は擦れ、フレキシブルケーブル内の配線に帯電が生じ、カウンター(補償)電荷が生じる。
判定アルゴリズムを強化すればX線撮影画像情報の誤検出はある程度対策可能であるが、判定アルゴリズムを実行すれば誤検出の判定時間が必要になる。判定時間が長くなれば、X線照射プロファイルの立ち上がり部分において迅速なX線撮影画像情報の検出が難しくなり、X線を照射しているにもかかわらずセンサパネルが電荷蓄積モードに移行することができない。このため、判定時間中に無駄に捨ててしまうX線撮影画像情報が増大する。
本発明は、上記事実を考慮し、電磁ノイズの影響を抑制しつつ、フレキシブル基板の移動による接触や擦れに伴う帯電を抑制することができる放射線画像撮影装置を提供することにある。
第1実施態様の放射線画像撮影装置は、放射線を電気信号に変換する光電変換素子を有する放射線検出パネルと、放射線検出パネルに対向して配設され、放射線検出パネルによって変換された電気信号の信号処理を行う信号処理基板と、放射線検出パネルに一端を電気的に接続し、信号処理基板に他端を電気的に接続するフレキシブル基板と、放射線検出パネル及び信号処理基板を収納するとともに、フレキシブル基板を内壁から離間して収納し、カーボン繊維を絶縁性樹脂によってコーティングしたカーボン繊維強化プラスチックによって形成された筐体と、筐体のフレキシブル基板が移動し接触する領域において、筐体の一部の絶縁性樹脂を取り除いて露出されたカーボン繊維によって形成され、固定電位に接続される導電体と、を備えている。
第1実施態様の放射線画像撮影装置においては、外力に伴い移動したフレキシブル基板と筐体の内壁との接触又は擦れによって生じる電荷を導電体を通じて固定電位に吸収することができる。更に、フレキシブル基板は外力が生じないときに導電体から離間されているので、導電体や固定電位に偶発的にノイズが発生しても、ノイズがフレキシブル基板に乗ることを抑制することができる。そして、筐体はカーボン繊維強化プラスチックによって形成され、筐体の側部、具体的には筐体の少なくとも内壁のフレキシブル基板が接触する領域の絶縁性樹脂を取り除いてカーボン繊維を露出することによって導電体を形成することができる。
第2実施態様の放射線画像撮影装置では第1実施態様の放射線画像撮影装置において、フレキシブル基板の一端は放射線検出パネルの周辺部に接続され、フレキシブル基板の他端は信号処理基板の周辺部に接続され、フレキシブル基板の中央部は筐体の内壁に向かって湾曲し、導電体は、フレキシブル基板の中央部に対向する筐体の側部に配設されている。
第2実施態様の放射線画像撮影装置においては、導電体はフレキシブル基板を湾曲させた分のスペースを空けて放射線検出パネル及び信号処理基板から離間させることができるので、導電体と放射線検出パネル又は信号処理基板との接触を回避することができる。従って、導電体や固定電位に偶発的にノイズが発生しても、ノイズが放射線検出パネル又は信号処理基板に乗ることを抑制することができる。
第3実施態様の放射線画像撮影装置では、第1実施態様又は第2実施態様の放射線画像撮影装置において、導電体は、放射線検出パネルに接続されたフレキシブル基板の一端から信号処理基板に接続されたフレキシブル基板の他端までの領域と対向する筐体の側部の領域内に配設されている。
第3実施態様の放射線画像撮影装置においては、筐体の側部の放射線検出パネルのフレキシブル基板との接続位置と信号処理基板のフレキシブル基板との接続位置との間の限られた狭い領域に導電体が配設されているので、導電体においてノイズを拾い難くすることができる。
第4実施態様の放射線画像撮影装置では第1実施態様〜第3実施態様のいずれか1つの放射線画像撮影装置において、固定電位は、接地、筐体の接地、信号処理基板の接地、固定電源のいずれかである。
第4実施態様の放射線画像撮影装置においては、固定電位が接地、筐体の接地、信号処理基板の接地、固定電源(例えば、接地電源、回路動作電源等)のいずれかであり、筐体との接触によって生じた電荷がフレキシブル基板に帯電することなく、固定電位に吸収することができる。
第5実施態様の放射線画像撮影装置では第1実施態様〜第4実施態様のいずれか1つの放射線画像撮影装置において、導電体に電気的に接続され、この導電体から筐体の側部内に埋め込まれ、絶縁性樹脂を突き抜けカーボン繊維に電気的に接続された筐体接地部材を備えている。
第5実施態様の放射線画像撮影装置においては、筐体接地部材を備え、この筐体接地部材は導電体と筐体の側部の絶縁性樹脂によりコーティングされたカーボン繊維とを電気的に接続する。この筐体接地部材を筐体の側部に埋め込むことにより、導電体を筐体の接地(固定電位)に簡易に又は即座に接続することができる。
第6実施態様の放射線画像撮影装置は、第1実施態様〜第5実施態様のいずれか1つの放射線画像撮影装置において、放射線検出パネルと信号処理基板との間においてフレキシブル基板に対向して配設され、筐体の機械的強度を増強する補強部材と、補強部材のフレキシブル基板が移動し接触する領域に配設され、固定電位に接続される補強部材用導電体と、を備えている。
第6実施態様の放射線画像撮影装置においては、補強部材のフレキシブル基板が接触する領域に補強部材用導電体を備え、フレキシブル基板と補強部材との接触又は擦れによって生じる電荷を補強部材用導電体を通じて固定電位に吸収することができるので、フレキシブル基板の帯電を抑制することができる。
本発明は上記構成としたので、電磁ノイズの影響を抑制しつつ、フレキシブル基板の移動による接触や擦れに伴う帯電を抑制することができる放射線画像撮影装置を提供することができる。
本発明の実施例1に係る放射線画像撮影装置の全体構成を説明する概念図である。 実施例1に係る放射線画像撮影装置の放射線画像検出器(電子カセッテ)の筐体の一部を便宜的に取り除いた斜視図である。 実施例1に係る放射線画像撮影装置の全体のブロック回路図である。 図3に示す放射線検出パネルの検出素子及び信号処理部の要部の回路図である。 図3に示す放射線検出パネルの要部(光電変換素子及び蛍光体)の装置構造を示す模式的断面図である。 図3に示す放射線検出パネルの他の要部(TFT及び容量素子)の装置構造を示す模式的断面図である。 図2に示す放射線画像検出器の具体的な構造を示す断面図である。 実施例1に係る、放射線照射前後にフレキシブル基板の配線に流れる電荷量と、フレキシブル基板に帯電した電荷量との関係を示すグラフである。 (A)−(C)は実施例1に係る放射線画像検出器の筐体の構造を示す斜視図である。 実施例1の変形例に係る放射線画像検出器の具体的な構造を示す断面図である。 本発明の実施例2に係る放射線画像撮影装置の放射線画像検出器の具体的な構造を示す断面図である。 本発明の実施例3に係る放射線画像撮影装置の放射線画像検出器の具体的な構造を示す断面図である。 本発明の実施例4に係る放射線画像撮影装置の放射線画像検出器の具体的な構造を示す断面図である。
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施例を説明する。なお、図面において同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
(実施例1)
本発明の実施例1は放射線画像撮影装置を構築する可搬型の放射線画像検出器(電子カセッテ)に本発明を適用した例を説明するものである。
[放射線画像撮影装置の全体構成]
図1に示すように、実施例1に係る放射線画像撮影装置10は、放射線照射装置12と、放射線画像検出器(電子カセッテ)14と、コンソール16とを備えて構築されている。放射線照射装置12は、放射線Rを発生し、被検体(例えば、放射線画像を撮影する患者)18に放射線Rを照射する。放射線画像検出器14は被検体18を透過した放射線Rによって得られる放射線画像情報を生成する。放射線画像検出器14は持ち運び自在な可搬型である。コンソール16は、放射線照射装置12及び放射線画像検出器14の動作制御を司り、放射線画像検出器14において生成された放射線画像情報を記憶し、放射線画像情報を表示する等の機能を有する。
なお、実施例1において、放射線画像検出器14は、放射線画像情報を記憶する機能を備えていても、又備えていなくてもよい。
[放射線画像検出器の外観構成]
図2に示すように、放射線画像検出器14は放射線Rの照射方向に所定の厚みを持つ平板形状を有する筐体140を備えている。筐体140は、放射線照射装置12に対面する側の表面に照射面140Aを有し、この照射面140Aを少なくとも放射線Rを透過する材料によって製作している。
筐体140の内部には放射線検出パネル142及び信号処理基板144が収納されている。放射線検出パネル142は、照射面140A側つまり放射線照射装置12に対面する側に配設され、信号処理基板144は照射面140Aに対向する非照射面140B側に配設される。放射線検出パネル142は、放射線照射装置12から照射され被検体18を透過した放射線Rから放射線画像情報を生成する機能を有する。信号処理基板144は、放射線検出パネル142の動作制御を司り、放射線検出パネル142において生成された放射線画像情報のコンソール16への送信を行う機能を有する。
[放射線画像検出器のシステム構成]
1.放射線検出パネルのシステム構成
図3に示すように、放射線画像検出器14の放射線検出パネル142はTFTマトリックス基板116を備えている。TFTマトリックス基板116は、行方向に延在し列方向に一定間隔において複数本配列されたゲート線110と、列方向に延在し行方向に一定間隔において複数本配列されたデータ線112とを備えている。ゲート線110とデータ線112との交差部には検出素子100が配置されている。検出素子100は、放射線Rから変換された光(放射線画像情報)を検出し、この光を電気信号に変換した後に一時的に蓄積する(記憶する)。
検出素子100は、TFT(薄膜トランジスタ)102と、容量素子104と、光電変換素子106とを備えている。TFT102は、一方の主電極(ドレイン電極。図6中、符号102D)をデータ線112に接続し、他端(ソース電極。図6中、符号102E)を容量素子104の一方の電極及び光電変換素子106の一方の電極(図5中、符号106A)に接続する。TFT102のゲート電極(図6中、符号102A)はゲート線112に接続される。TFT102は、ゲート電極に供給される駆動信号に従って導通動作(ON)と非導通動作(OFF)との切換えを行うスイッチング素子である。容量素子104の他方の電極は固定電位、例えば接地電位に接続されている。容量素子104は光電変換素子106によって電気信号に変換された放射線画像情報(電荷)を一時的に蓄積する。光電変換素子106の他方の電極(図5中、符号106E)は固定電位に接続されている。
2.信号処理基板のシステム構成
放射線画像検出器14の信号処理基板144は、ゲート線ドライバ部200と、信号処理部202と、温度センサ204と、画像メモリ206と、検出器制御部208と、通信部210と、電源部212と、を備えている。
ゲート線ドライバ部200は、TFTマトリックス基板116を延在するゲート線110に接続され、ゲート線110にTFT102の駆動信号を供給する。ゲート線ドライバ部200は、図3中、作図上、TFTマトリックス基板116の一辺(ここでは左辺)に沿ってそれよりも外側に配設されている。実際には、放射線検出パネル142に対向して信号処理基板144が配設されているので、ゲート線ドライバ部200は、TFTマトリックス基板116の一辺に沿ってその非照射面140B側にTFTマトリックス基板116と重複して配設されている。
信号処理部202は、TFTマトリックス基板116を延在するデータ線112に接続され、検出素子100から読み出される放射線画像情報をデータ線112を通して取得する。ゲート線ドライバ部200と同様に、信号処理部202は、図3中、作図上、TFTマトリックス基板116の一辺に隣接する他の一辺(ここでは下辺)に沿ってそれよりも外側に配設されている。実際には、放射線検出パネル142に対向して信号処理基板144が配設されているので、信号処理部202は、TFTマトリックス基板116の他の一辺に沿ってその非照射面140B側にTFTマトリックス基板116と重複して配設されている。ゲート線ドライバ部200、信号処理部202以外においても、信号処理基板144に搭載された素子、回路及びシステムは、TFTマトリックス基板116に重複して配設されている。
放射線画像が撮影され、放射線検出パネル142に放射線画像情報が蓄積されると、まずゲート線ドライバ部200を用いて1本のゲート線110が選択され、このゲート線110に駆動信号が供給される。駆動信号の供給によってこのゲート線110に接続されたすべての検出素子100のTFT102が導通状態になる。一方、信号処理部202を用いて1本のデータ線112が選択されると、このデータ線112と既に選択されたゲート線110とに接続された検出素子100の容量素子104に一時的に蓄積された放射線画像情報が選択されたデータ線112を通して信号処理部202に読み出される。
信号処理部202は、行方向において順次データ線112を選択し、選択されたゲート線110に接続された検出素子100に蓄積された放射線画像情報を順次読み出す。1本の選択されたゲート線110に接続されたすべての検出素子100に蓄積された放射線画像情報が読み出されると、ゲート線ドライバ部200は列方向の次段の1本のゲート線110を選択する。同様の処理手順において、信号処理部202は、データ線112を順次選択し、選択されたゲート線110に接続された検出素子100に蓄積された放射線画像情報の読み出しを行う。放射線検出パネル142に蓄積されたすべての放射線画像情報が読み出されると、撮影された二次元の放射線画像が電気信号(電子情報)として取得可能となる。
図4に示すように、信号処理部202はサンプルホールド回路220、マルチプレクサ230、アナログデジタル(A/D)変換器232を備えている。サンプルホールド回路220は、データ配線112毎に配設され、オペアンプ220A、コンデンサ220B及びスイッチ220Cを備えている。検出素子100からデータ配線112を通して伝送された放射線画像情報(電荷信号)はサンプルホールド回路220に保持される。サンプルホールド回路220はオペアンプ220A及びコンデンサ220Bによって電荷信号をアナログ信号(電圧信号:放射線画像情報)に変換する。サンプルホールド回路220のスイッチ220Cは、コンデンサ220Bの電極間に電気的に並列に接続されており、コンデンサ220Bに蓄積された電荷信号の放電を行うリセット回路として使用される。
サンプルホールド回路220において変換されたアナログ信号(出力信号)はマルチプレクサ230にシリアルに入力される。このマルチプレクサ230はアナログデジタル変換器232にアナログ信号をシリアルに出力する。アナログデジタル変換器232において、シリアルに入力されたアナログ信号は順次デジタル信号(放射線画像情報)に変換される。
図3に示すように、信号処理部202は画像メモリ206に接続されている。信号処理部202のアナログデジタル変換器232においてデジタル信号に変換された放射線画像情報は画像メモリ206にシリアルに記憶される。画像メモリ206は所定枚数分の放射線画像情報を記憶可能な記憶容量を備え、放射線画像の撮影が行われる毎に撮影によって得られた放射線画像情報が画像メモリ206に順次記憶される。
検出器制御部208は、ゲート線ドライバ部200、信号処理部202、温度センサ204、画像メモリ206、通信部210、電源部212に接続され、これらの制御を司る。検出器制御部208はマイクロコンピュータを備え、このマイクロコンピュータはCPU(中央演算処理ユニット)208A、メモリ208B及び記憶部208Cを備えて構築されている。メモリ208Bは、放射線画像検出器14の制御を実行する処理プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、各種処理プログラムや処理中のデータ等を一時的に格納するRAM(Random Access Memory)を備えている。記憶部208Cは、画像メモリ206に格納された放射線画像情報等のデータを記憶する不揮発性のフラッシュメモリ等によって構築されている。
温度センサ204は放射線画像検出器14の温度、実施例1においては蛍光体148の下面(非照射面140B側の面)の中央部分の温度を測定する。温度センサ204において測定された温度の情報は検出器制御部208に送られる。
通信部210は、検出器制御部208からの制御に基づき、外部機器との間において各種情報の送受信を行う。実施例1に係る通信部210は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応した無線通信部であり、無線通信によって各種情報の伝送を行う。具体的には、通信部210は、検出器制御部208とコンソール16との間において放射線画像の撮影に関する制御を行う各種情報の送受信、検出器制御部208からコンソール16への放射線画像情報の送信等を行う。
電源部212はゲート線ドライバ部200、信号処理部202、画像メモリ206、検出器制御部208、通信部210の各種回路に電力を供給する。実施例1において、電源部212は放射線画像検出器14の可搬性を高めるためにバッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵する。各種回路にはこのバッテリから電力が供給される。バッテリィは、放射線画像検出器14の非使用時等に、図示しない充電器を通して電源に接続され、充電を行う。
実施例1に係る放射線画像検出器14は、放射線画像の撮影の開始に同期させてコンソール16から制御信号を受信し動作を開始するのではなく、放射線発生装置12から照射される放射線Rを感知して自動的に動作制御を開始する非同期型(同期フリー型)を採用している。放射線Rの感知には、検出素子100の配列中に埋め込まれこの検出素子100と同一構造を有する感知センサの出力、又は検出素子100の配列外に配置された感知センサの出力に基づき行われる。また、放射線Rの感知は、放射線Rから変換された光を検出するフォトセンサを使用し、このフォトセンサの出力に基づき行ってもよい。なお、本発明は、非同期型を採用する放射線画像検出器14に限定されるものではなく、放射線画像の撮影の開始に同期させてコンソール16から制御信号を受信し動作を開始する同期型を採用する放射線画像検出器14に適用してもよい。
[コンソールのシステム構成]
図3に示すように、コンソール16は、サーバコンピュータとして構築され、ディスプレイ161及び操作パネル162を備えている。ディスプレイ161は放射線画像撮影装置10の操作メニュー、撮影された放射線画像等を表示するモニターである。操作パネル162は、複数の操作キー、スイッチ等を備え、各種情報や操作指示の入力を行う。コンソール16は、CPU163と、ROM164と、RAM165と、ハードディスクドライブ(HDD)166と、ディスプレイドライバ168と、操作入力検出部169と、通信部167とを備えている。
CPU163はコンソール16の全体の動作の制御を司る。ROM164はコンソール16の動作を制御する制御プログラムを含む各種プログラム等を格納する。RAM165は各種データを一時的に記憶する。ハードディスクドライブ166は各種データを記憶し保持する。ディスプレイドライバ168はディスプレイ161の各種情報の表示の制御を行う。操作入力検出部169は操作パネル162に対する操作状態の検出を行う。通信部167は、放射線発生装置12との間において曝射条件等の各種情報の送受信を行うとともに、放射線画像検出器14との間において放射線画像情報等の各種情報の送受信を行う。通信部167は、放射線画像検出器14の通信部210と同様に、無線通信によってデータの送受信を行う。
コンソール16において、CPU163、ROM164、RAM165、HDD166、ディスプレイドライバ168、操作入力検出部169及び通信部167はシステムバス(共通バス配線)170を通して相互に接続されている。従って、CPU163はシステムバス170を通してROM164、RAM165、HDD166のそれぞれにアクセスを行える。また、CPU163は、システムバス170及びディスプレイドライバ168を通してディスプレイ161において各種情報の表示の制御を行える。また、CPU163は、操作入力検出部169及びシステムバス170を通して操作パネル162に対するユーザの操作状態を把握可能である。更に、CPU163は、システムバス170及び通信部167を通して、放射線発生装置12、放射線画像検出器14のそれぞれとの間において、各種情報の送受信の制御を行える。
[放射線発生装置のシステム構成]
図3に示すように、放射線発生装置12は、放射線源121と、線源制御部122と、通信部123とを備えている。通信部123はコンソール16との間において曝射条件等の各種情報の送受信を行う。線源制御部122は通信部123を通して受信された曝射条件に基づいて放射線源121の制御を行う。
線源制御部122は前述の放射線画像検出器14の検出器制御部208と同様にマイクロコンピュータを備えている。このマイクロコンピュータのメモリには通信部123を通して受信された曝射条件等の情報が格納される。曝射条件には例えば管電圧、管電流、曝射期間を含む情報が少なくとも含まれている。この曝射条件に基づいて、線源制御部122は放射線源121から放射線Rを照射する。
[放射線検出パネルの装置構造]
1.放射線検出パネルの全体構造
実施例1に係る放射線画像検出器14の放射線検出パネル142は、図5に示すように、TFTマトリックス基板116と、同図5中、TFTマトリックス基板116上に配設された蛍光体(シンチレータ)148とを備えている。ここでは、便宜的に3個の検出部が図示されている。TFTマトリックス基板116には検出素子100が配設されている。1つの検出素子100は最小の解像度の単位になる1画像である。検出素子100は、絶縁性基板116Aに配設され、この絶縁性基板116A上に配設されたTFT102上及び容量素子104上に光電変換素子106を積層した構造を備えている。
2.蛍光体(シンチレータ)の構造
図5に示すように、TFTマトリックス基板116の最上層には透明絶縁膜116Cが配設され、この透明絶縁膜116C上に蛍光体148が配設されている。蛍光体148はTFTマトリックス基板116の略全域に配設されている。蛍光体148は、光電変換素子106上に透明絶縁膜116Cを介して配設されているので、蛍光体148側(図5中、上側)から入射される放射線Rを吸収し光に変換可能であるとともに、絶縁性基板116A側(図5中、下側)から入射される放射線Rも吸収し光に変換可能である。
蛍光体148が発する光の波長域は可視光域(波長360nm〜830nm)に設定される。放射線画像検出器14において、モノクロ画像の撮影を可能とするためには、蛍光体148が発する光に緑色の波長域を含むことが好ましい。
放射線RとしてX線を使用しX線画像を撮影する場合、蛍光体148にはヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましい。更に、蛍光体148にはX線照射時の発光スペクトルが420nm〜700nmの波長域にあるチタンが添加されたヨウ化セシウムCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。なお、本発明において、放射線Rは、X線に限定されるものではなく、少なくとも医療に利用されるγ線、電子線、中性子線、陽子線、重粒子線等の放射線を含む意味において使用されている。
ここで、実施例1において、蛍光体148は、基本的にはTFTマトリックス基板116つまり放射線検出パネル142に対して別部材(別部品)として製作されている。蛍光体148は、放射線画像検出器14の製作過程(組立工程)において、放射線検出パネル142に装着される。
3.光電変換素子の構造
図5に示すように、検出素子100の光電変換素子106は、TFTマトリックス基板116の絶縁性基板116A上に配設され、一方の電極(下部電極)106Aと、光電変換膜106Cと、他方の電極(上部電極)106Eとを順次積層して構成されている。光電変換素子106は、更に電極106Aと光電変換膜106Cとの間に電子ブロッキング膜106Bを有し、光電変換膜106Cと電極106Eとの間に正孔ブロッキング膜106Dを有する。
電極106Aは、絶縁性基板116A上に絶縁膜116Bを介在して配設され、検出素子100毎(検出部毎又は画素部毎)に分割されている。電極106Aには、透明又は不透明な導電性材料を使用することができ、例えばアルミニウム膜、アルミニウム合金膜、銀膜等を使用することができる。電極106Aの膜厚は例えば30nm−300nmの範囲に設定されている。
光電変換膜106Cは有機光電変換材料を含む。この光電変換膜106Cは、蛍光体148に入射した放射線Rによってこの蛍光体148から発せられる光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜106Cは、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、蛍光体148による発光以外の電磁波を殆ど吸収しないので、ノイズの発生を抑えられる。
蛍光体148において発光された光を最も効率よく吸収するために、蛍光体148の発光ピーク波長に近い吸収ピーク波長を有する有機光電変換材料を使用することが好ましい。蛍光体148の発光ピーク波長に対して、有機光電変換材料の吸収ピーク波長を一致させることが理想的であるが、発光ピーク波長と吸収ピーク波長との差が小さければ、蛍光体148から発せられた光は有機光電変換材料において十分に吸収可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と蛍光体148の放射線Rに対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることが吸収効率の点においてより一層好ましい。
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料として、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えば、有機光電変換材料はキナクリドンを使用する。キナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmである。一方、蛍光体148はCsI(Tl)を使用する。この組み合わせを採用すれば、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と蛍光体148の放射線Rに対する発光ピーク波長との差を5nm以内に調整することが可能である。この場合、光電変換膜106Cは、蛍光体148において発光された光を最も効率よく吸収し、電荷量を最大限に発生可能である。
次に、実施例1に係る放射線画像検出器14において、好適な光電変換膜106Cの具体例は以下の通りである。放射線画像検出器14において、電磁波吸収部位並びに光電変換部位は、一対の電極106A及び106Eと、この一対の電極106A及び106E間に挟まれた光電変換膜106Cを含む有機層とにより構成されている。この有機層は、より詳細には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、層間接触改良部位等の積み重ね、若しくは混合により形成されている。この有機層には有機p型半導体(化合物)又は有機n型半導体(化合物)を含有させることが好ましい。
有機p型半導体は、主に、正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与し易い性質を持つ有機化合物である。更に詳細には、2つの有機材料を接触させたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物が有機p型半導体である。ドナー性有機化合物として電子供与性のある有機化合物であれば、様々な有機化合物が有機p型半導体として使用可能である。
有機n型半導体は、主に、電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を持つ有機化合物である。更に詳細には、2つの有機化合物を接触させたときに電子親和力の大きい方の有機化合物が有機n型半導体である。アクセプター性有機化合物として電子受容性のある有機化合物であれば、様々な有機化合物が有機n型半導体として使用可能である。
なお、有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料並びに光電変換膜106Cの構成に関しては、特開2009−32854号公報において詳細に開示されているので、ここでの説明は省略する。
蛍光体148からの光の吸収効率を高めるためには、光電変換膜106Cの膜厚は厚い方が好ましい。ところが、ある程度以上に光電変換膜106Cの膜厚が厚くなると、一対の電極106A及び106E間に印加されるバイアス電圧により発生する電界強度が低下し、電荷の収集ができなくなる。そこで、光電変換膜106Cの膜厚は30nm−300nmの範囲内に設定され、より好ましくは50nm−250nmの範囲内、更に好ましくは80nm−200nmの範囲内に設定する。
なお、図5に示す光電変換膜106Cは、すべての検出素子100上に共通の相互に連結された膜であるが、検出素子100毎に、又は複数の検出素子100毎に分割されていてもよい。
電極106Eは、蛍光体148によって発生した光を光電変換膜106Cに入射させるために、少なくとも蛍光体148の発光波長に対して透明な導電性材料によって構成されている。電極106Eには、例えば、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conducting Oxide)を使用することができる。また、電極106Eは金(Au)等の金属薄膜も使用可能である。しかしながら、金属薄膜は、90%以上の透過率を得るためには膜厚を薄く設定しなくてはならず、抵抗値の増大を誘発する。従って、透明導電性酸化物が好適である。透明導電性酸化物には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を実用的に使用することができる。プロセスの簡易性、低抵抗性、透明性の観点から、透明導電性酸化物にはITOが最適である。
なお、図5に示す電極106Eは、すべての検出素子100上に共通の相互に連結された膜であるが、検出素子100毎に、又は複数の検出素子100毎に分割されていてもよい。
光電変換素子106は、一対の電極106A及び106E間に所定のバイアス電圧を印加することによって、光電変換膜106Cに発生した電荷(正孔及び電子)のうち一方を電極106Aに移動させ、他方を電極106Eに移動させる。実施例1に係る光電変換素子106においては、蛍光体148側の上部電極である電極106Eにバイアス電圧が印加されている。バイアス電圧は、ここでは光電変換膜106Cにおいて発生した電子を電極106Eに移動させ、正孔を電極106Aに移動させる極性を決めた固定電位である。なお、この極性は、限定されるものではなく、反転させてもよい。
光電変換素子106の基本的な構造は、一対の電極106A及び106Eと、その間に挟まれた光電変換膜106Cとを備える構造である。実施例1に係る光電変換素子106は、暗電流の増加を抑制するために、電子ブロッキング膜106B及び正孔ブロッキング膜106Dを備えている。なお、光電変換素子106は電子ブロッキング膜106B及び正孔ブロッキング膜106Dの少なくともいずれか一方を備えていてもよい。
電子ブロッキング膜106Bは、一対の電極106A及び106E間にバイアス電圧を印加したときの、電極106Aから光電変換膜106Cへの電子の注入を抑制し、暗電流の増加を抑制する。電子ブロッキング膜106Bには電子供与性有機材料を使用することができる。電子ブロッキング膜106Bに実際に使用される材料は、隣接する電極106Aの材料、隣接する光電変換膜106Cの材料等に応じて選択される。例えば、電子ブロッキング膜106Bは、電極106Aの材料の仕事関数(W)より1.3eV以上大きな電子親和力(E)を有し、かつ光電変換膜106Cの材料のイオン化ポテンシャル(I)と同等のIかそれより小さいIを有する材料を使用する。この電子供与性有機材料として適用可能な材料に関しては、特開2009−32854号公報に開示されているので、ここでの説明は省略する。
電子ブロッキング膜106Bの膜厚は、暗電流の抑制効果を確実に発揮させるとともに、光電変換膜106Cにおいて光電変換効率の低下を抑制するために、例えば10nm−200nmの範囲内に設定する。また、電子ブロッキング膜106Bの膜厚は、好ましくは30nm−150nmの範囲内に設定され、更に好ましくは50nm−100nmの範囲内に設定される。
正孔ブロッキング膜106Dは、一対の電極106A及び106E間にバイアス電圧を印加したときの、電極106Eから光電変換膜106Cへの正孔の注入を抑制し、暗電流の増加を抑制する。正孔ブロッキング膜106Dには電子受容性有機材料を使用することができる。正孔ブロッキング膜106Dに実際に使用される材料は、隣接する電極106Eの材料及び隣接する光電変換膜106Cの材料等に応じて選択される。例えば、正孔ブロッキング膜106Dは、電極106Eの材料のWより1.3eV以上Iが大きく、かつ光電変換膜106Cの材料のEと同等のE若しくはそれより大きいEを有する材料を使用する。この電子受容性有機材料として適用可能な材料に関しては、特開2009−32854号公報に開示されているので、ここでの説明は省略する。
正孔ブロッキング膜106Dの膜厚は、暗電流の抑制効果を確実に発揮させるとともに、光電変換膜106Cの光電変換効率の低下を抑制するために、例えば10nm−200nmの範囲内に設定する。また、正孔ブロッキング膜106Dの膜厚は、好ましくは30nm−150nmの範囲内に設定され、更に好ましくは50nm−100nmの範囲内に設定される。
なお、光電変換素子106において、光電変換膜106Cに発生した正孔を電極106Eに移動させ、電子を電極106Aに移動させるバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜106Bと正孔ブロッキング膜106Dとの位置は逆に設定される。
4.TFTの構造
図6に示すように、検出素子100のTFT102及び容量素子104は、光電変換素子106の電極106Aに対応したその下方の領域であって、絶縁性基板116A上に配設されている。TFT102及び容量素子104は、絶縁性基板116Aの表面に対して鉛直方向から見た平面視において、光電変換素子106の電極106Aに重複する領域に配設されている。つまり、TFT102及び容量素子104と光電変換素子116とは絶縁性基板116A上に立体的に積層しているので、検出素子100の絶縁性基板116Aの表面と同一平面方向において検出素子100の占有面積を縮小することができる。
TFT102は、ゲート電極102Aと、ゲート絶縁膜102Bと、活性層(チャネル層)102Cと、一方の主電極(ドレイン電極)102D及び他方の主電極(ソース電極)102Eとを備えている。ゲート電極102Aは絶縁性基板116Aの表面上に配設されている。ゲート電極102Aは、実施例1において、ゲート線110と同一導電層において同一導電性材料によって形成されている。ゲート絶縁膜102Bは、絶縁性基板116Aの表面上の略全域にゲート電極102Aを介して配設されている。活性層102Cは、ゲート絶縁膜102Bの表面上において、ゲート電極102Aに重複して配設されている。主電極102D及び102Eは、活性層102C上に配設され、ゲート電極102A上において互いに離間されている。主電極102D及び102Eは、実施例1において、同一導電層において同一導電性材料によって形成されている。
実施例1に係る放射線画像検出器14において、TFT102の活性層102Cは非晶質酸化物により形成されている。非晶質酸化物にはIn、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)を使用することができる。また、非晶質酸化物には、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系若しくはGa−Zn−O系)を使用することが好ましく、更により好ましくはIn、Ga及びZnを含む酸化物が使用される。具体的には、In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物であって、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。活性層102Cが非晶質酸化物により形成されたTFT102は、X線等の放射線Rを吸収せず、又は吸収したとしても極めて微量に留まるので、ノイズの発生を効果的に抑えられる。
ここで、TFT102の活性層102Cを構成する非晶質酸化物、光電変換素子106の光電変換膜106Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温プロセスにおいて成膜が可能である。従って、絶縁性基板116Aには、半導体基板、石英基板、ガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド(全芳香族ポリアミド)、バイオナノファイバ等を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板が絶縁性基板116Aとして使用可能である。このようなプラスチック製の可撓性基板を採用すれば、放射線画像検出器14の軽量化を図ることができ、例えば持ち運び、取り扱い等の可搬性が高まる。
また、絶縁性基板116Aには、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を抑制するためのガスバリア層、平坦性或いは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を配設することができる。
一方、絶縁性基板116Aとして使用可能なアラミドは、200度以上の温度の高温プロセスを採用することができるので、透明電極材料を高温度において硬化させ、透明電極材料の低抵抗化を図れる。また、200度以上の高温度の半田リフロー工程を含む、ゲート線ドライブ部200を構築するドライバICの自動実装プロセスにも対応することができる。また、ITOやガラス基板の熱膨張係数に対して、アラミドの熱膨張係数は近いので、製造プロセス終了後の絶縁性基板116Aの反りが少なく、絶縁性基板116Aに割れが生じ難い。また、アラミドは、ガラス基板等の機械的強度に対して高い機械的強度を持つので絶縁性基板116Aの薄型化を図れる。なお、絶縁性基板116Aは、単層基板構造に限定されるものではなく、超薄型ガラス基板にアラミドを積層した複合基板構造を採用してもよい。
また、絶縁性基板116Aとして使用可能なバイオナノファイバはバクテリア(酢酸菌:Acetobacter Xylinum)により産出されるセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合物である。セルロースミクロフィブリル束は、例えば可視光波長に対して1/10程度の50nmの微細な幅サイズを有し、かつ高強度、高弾性及び低熱膨張を有する。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸させ硬化させることによって、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmにおいて約90%の光透過率を示すバイオナノファイバを得ることができる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3ppm〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)及び高弾性(30GPa)を有し、かつフレキシブル性を備えている。従って、ガラス基板等に比べて、絶縁性基板116Aの薄型化を図ることができる。
5.容量素子の構造
図6に示すように、検出素子100の容量素子104は、一方の電極104Aと、誘電体104Bと、他方の電極104Cとを備えている。電極104Aは、実施例1において、絶縁性基板116Aの表面上に配設され、TFT102のゲート電極102Aと同一導電層において同一導電性材料により構成されている。誘電体104BはTFT102のゲート絶縁膜102Bと同一絶縁層において同一絶縁性材料により構成されている。電極104Cは、誘電体104B上に配設され、TFT102の主電極102D及び102Eと同一導電層において同一導電性材料により構成されている。電極104Cは主電極102Eに一体に形成されている。
この容量素子104の電極104C、TFT102の主電極102D及び102Eを含む絶縁性基板116A上の全域には層間絶縁膜116Bが配設されている。容量素子104の電極104Cは、層間絶縁膜116Bに配設された接続孔116Hを通して光電変換素子106の電極106Aが接続されている。
[放射線検出器の装置構造]
1.放射線画像検出器の全体の概略構造
図7に示すように、放射線画像検出器14は、放射線検出パネル142と、信号処理基板144と、放射線検出パネル142に一端を電気的に接続し、信号処理基板144に他端を電気的に接続するフレキシブル基板182及び184と、放射線検出パネル142及び信号処理基板144を収納するとともに、フレキシブル基板182及び184を内壁から離間して収納する筐体140と、筐体140のフレキシブル基板182及び184が移動し接触する領域に配設され、固定電位188に接続される導電体186とを備えている。
実施例1に係る放射線画像検出器14は放射線Rから変換された光を放射線Rの照射面140A側から読み取るISS(Irradiation Side Sampling)方式を採用する。従って、筐体140の内部において、放射線検出パネル142は、図5及び図6に示す絶縁性基板116Aを照射面140A側に向け、蛍光体148を非照射面140B側に向けて、照射面140Aの裏側になる天板内面に装着される。装着には例えば両面粘着テープが使用されている。なお、放射線画像検出器14は、ISS方式に限定されるものではなく、放射線Rから変換された光を放射線Rの照射面140Aとは反対の非照射面140B側から読み取るPSS(Penetration Side Sampling)方式を採用してもよい。
実施例1に係る放射線画像検出器14は筐体140の内部に補強部材180を備えている。補強部材180は主に筐体140の機械的強度を高める機能を有する。補強部材180は、筐体140の厚さ方向の中央部分に配設され、筐体140の照射面140A及び非照射面140Bに対して略平行に配設され、照射面140A及び非照射面140Bに対して一回り小さい面積を有する板状部材である。
補強部材180は、実施例1において、シャーシ180Aと、補強板180Bと、蒸着基板180Cとを備え、これらを非照射面140Bから照射面140Aに向かって順次積層した3層構造により構成されている。シャーシ180Aは、例えばアルミニウムシャーシであり、0.3mm−0.5mmの厚さに設定されている。補強板180Bは、例えばカーボン補強板であり、1.1mm−1.3mmの厚さに設定されている。蒸着基板180Cは、例えばアルミニウム蒸着基板であり、0.2mm−0.4mmの厚さに設定されている。
放射線検出パネル142は補強部材180の照射面140A側に蛍光体148を介して配設されている。ここで、放射線検出パネル142の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば0.6mm−0.8mmに設定されている。また、蛍光体148の厚さは例えば0.5mm−0.7mmに設定されている。
一方、信号処理基板144は補強部材180の非照射面140B側に配設されている。信号処理基板144は、図7において、模式的に1つの構成要素(部品)として記載されているが、実際には前述の図3に示すゲート線ドライバ部200、信号処理部202、温度センサ204、画像メモリ206、検出器制御部208、通信部210、電源部212のそれぞれを構築する回路を実装した配線基板である。回路は集積回路(IC)、抵抗素子、容量素子、コンデンサ等を含む。また、配線基板には例えばプリント配線基板が使用されている。なお、回路は複数枚の配線基板に分散して実装されていてもよい。
2.筐体の構造
図7に示すように、筐体140は、天板となる照射面140Aと、それに離間され対向する底板となる非照射面140Bと、照射面140A及び非照射面140Bの周縁に沿って配設された側部(側板)とを有する中空直方体である。実施例1に係る放射線画像検出器14においては、外部からの電磁ノイズの影響を最小限に留めるために、筐体140の少なくとも外側表面及び内側表面が絶縁体である。ここで、少なくとも表面が絶縁体とは、筐体140の全体が絶縁体である場合、筐体140の母体を導電体としてその表面を絶縁体とした(表面に絶縁処理を施した)場合のいずれも含む意味において使用されている。例えば、前者の例としては、絶縁性樹脂によって製作された筐体140が該当する。後者の例としては、例えばアルミニウム製母体の表面に酸化性被膜を形成し製作した筐体140、同母体の表面に絶縁性塗料のコーティングを行って製作した筐体140等が該当する。
実施例1において、筐体140には、放射線画像検出器14の取り扱い性能を向上するために、軽量化並びに高剛性化を実現することができる材料が選択される。このような要求に対し、筐体140にはカーボン繊維を絶縁性樹脂によってコーティングしたカーボン繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)が使用されている。絶縁性樹脂には例えばエポキシ樹脂が使用されている。
3.フレキシブル基板の構造
図7中、左側に示すように、フレキシブル基板184は、放射線検出パネル142のゲート線110と信号処理基板144に実装されたゲート線ドライバ部200との間を電気的に接続する配線ケーブルである。詳細な図示は省略するが、フレキシブル基板184の一端は放射線検出パネル142の周辺部まで引き出されたゲート線110の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には、例えば異方性導電コネクタ、異方導電性シート、異方導電性フィルム、異方導電性ゴム等の接続媒体を介在し、熱を加えて圧着する熱圧着接続法が使用される。フレキシブル基板184の他端は信号処理基板144の周辺部まで引き出されたゲート線ドライバ部200の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には前述と同様に熱圧着接続法が使用される。図7中、フレキシブル基板184は1本しか図示していないが、実際には放射線検出パネル142の一辺に沿って複数本のフレキシブル基板184が配列されている。
フレキシブル基板184の中央部は、放射線検出パネル142の側面及び信号処理基板144の側面から筐体140の側部の内壁に向かって突出し、フレキシブル性を利用して円弧を描くように湾曲し折り返して引き回される。放射線画像検出器14に外力が生じない状態のとき(静止状態のとき)、フレキシブル基板184は、放射線検出パネル142、補強部材180及び信号処理基板144の側面と筐体140の側部の内壁との間の僅かな隙間において、それらに適度に離間し接触しない。離間寸法は例えば数mmに設定されている。
フレキシブル基板184は、少なくともフレキシブル性(可撓性)を有する絶縁性フィルムと、そのフレキシブル性に追従して変形する配線とを備えている。フレキシブル基板184は、単に配線ケーブルとして使用される場合に限らず、半導体素子を実装した場合も含まれる。フレキシブル基板184には例えばテープキャリアパッケージ(TCP:Tape Carrier Package)が使用されている。また、フレキシブル基板184にはチップオンフィルム(COF:Chip On Film)或いはテープオートメイテッドボンディング(TAB:Tape Automated Bonding)を使用することができる。
図7中、右側に示すように、フレキシブル基板182は、放射線検出パネル142のデータ線112と信号処理基板144に実装された信号処理部202との間を電気的に接続する配線ケーブルである。詳細な図示は省略するが、フレキシブル基板182の一端は放射線検出パネル142の周辺部まで引き出されたデータ線112の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には熱圧着接続法が使用される。フレキシブル基板182の他端は信号処理基板144の周辺部まで引き出された信号処理部202の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には熱圧着接続法が使用される。図7中、フレキシブル基板182は1本しか図示していないが、実際には放射線検出パネル142の、フレキシブル基板184が配列された一辺に隣り合う他の一辺に沿って複数本のフレキシブル基板182が配列されている。
フレキシブル基板182の中央部は、フレキシブル基板184の中央部と同様に、筐体140の内部においてフレキシブル性を利用して引き回される。放射線画像検出器14に外力が生じない状態のとき、フレキシブル基板182は、放射線検出パネル142、補強部材180及び信号処理基板144の側面と筐体140の側部の内壁との間の僅かな隙間において、それらに適度に離間し接触しない。離間寸法は例えば数mmに設定されている。フレキシブル基板182はフレキシブル基板184と同一のものである。
なお、フレキシブル基板182にTCP、COP、TABのいずれかを採用する場合、フレキシブル基板182上に実装される半導体素子(ICチップ)はチャージアンプであることが好ましい。チャージアンプは、データ線112から伝送される放射線画像情報の電荷を放射線画像情報の電圧として増幅する機能を有する。
4.導電体の構造
図7に示すように、導電層186は、放射線検出パネル142のフレキシブル基板182、184の一端との接続位置と信号処理基板144のフレキシブル基板182、184の他端との接続位置との間の領域Lにおいて、放射線検出パネル142の側面及び信号処理基板144の側面に対向する筐体140の側部に配設されている。領域Lは、取り扱いや被検体18との接触に伴い放射線画像検出器14に外力(加減速度又は振動)が加わった場合、最大限に移動(変形)するフレキシブル基板182、184が筐体140の内壁に接触する範囲である。換言すれば、導電体186は筐体140の全体の表面積のうち最小限の一部の領域(領域L)に配設されている。
導電体186は基本的には導電性材料を用いて導電性処理を行い形成する。実施例1において、導電体186には、製作が簡易なアルミニウム箔、導電塗料、めっき等のいずれかを使用することができる。アルミニウム箔又は高剛性カーボンが使用される場合、この導電体186は筐体140の内壁の領域L内において貼り付けられる。導電塗料は導電性物質を混ぜた塗料であり、この導電体186は筐体140の内壁の領域L内において塗布される。めっきには例えば無電解ニッケルめっきを使用することができ、この導電体186はレジストマスクを用いて筐体140の内壁の領域L内に成膜される。
導電体186は、固定電位に接続し易いので、複数本毎若しくはすべての本数のフレキシブル基板182及び184に対して共用可能な1つの導電体として構成されている。つまり、導電体148は、筐体140のフレキシブル基板182、184が配列された側部の内壁にそれらの配列方向に延伸する形状において形成される。また、導電体186は1本のフレキシブル基板182、184毎にそれに対応した個数において配設してもよい。
なお、実施例1に係る放射線画像検出器14は、フレキシブル基板182、184のそれぞれと筐体140とが接触する領域の双方に導電体186を配設している。帯電に起因する放射線Rの誤検出は検出素子100からデータ線112、フレキシブル基板182の配線、信号処理部202のラインにおいて発生する。従って、導電体186はフレキシブル基板182が接触する或いは擦れる領域に少なくとも配設されていればよい。
導電体186は実施例1において筐体接地部材188Sを通して固定電位188に接続されている。筐体140はここではカーボン繊維強化プラスチックにより構成されているので、筐体接地部材188Sは、導電体186に接し(電気的に接続し)この導電体186から筐体140の側部内に埋め込まれ、絶縁性樹脂を突き抜けカーボン繊維に接し電気的に接続される。すなわち、導電体186は実施例1において筐体140に接地される(筐体アースを行う)。この筐体アースは固定電位188である。筐体接地部材188Sには例えばビス、ボルト等のねじを実用的に使用することができる。ねじの使用によって簡易に筐体アースを行うことができる。
また、導電体186に接続される固定電位188は、接地(グランド)、信号処理基板144の回路上の接地(例えば、0V電源電位)、信号処理基板144の回路上の固定電源電位(0Vよりも高い電源電位)であってもよい。
[放射線画像撮影装置の動作]
前述の図1に示す放射線画像撮影装置10において、放射線画像の撮影前の取り扱い、或いは撮影中やその直前に被検体18の位置調整や姿勢調整に伴う接触、衝突によって放射線画像検出器14に外力による加減速度や振動が加わる。この加減速度や振動の度合いによって、放射線画像検出器14においては、放射線検出パネル142、信号処理基板144及び筐体140の剛性体の位置変化に対してフレキシブル基板182及び184の位置変化を追従させることができないので、フレキシブル性によってフレキシブル基板182及び184の中央部に移動が生じる。この移動に伴い、フレキシブル基板182及び184は筐体140の側部の内壁に接触し、或いは振動に伴い擦れを生じる。フレキシブル基板182及び184に半導体素子が実装されている場合には、フレキシブル基板182及び184の移動量は増加する。
この接触或いは擦れによって、フレキシブル基板182及び184の配線にはカウンター帯電が生じる。図7に示すように、フレキシブル基板182及び184が接触する領域Lには導電体186が配設され、導電体186は固定電位188に接続されているので、フレキシブル基板182及び184に帯電した電荷は導電体186を通して固定電位188に吸収される。
図8は、放射線Rの照射前後にフレキシブル基板の配線に生じる発生電荷量と、フレキシブル基板に帯電によって生じる発生電荷量との関係を示す。図8中、横軸は時間(msec)、縦軸は発生電荷量である。グラフAは、放射線照射前後において、放射線検出パネル142のデータ線112と信号処理部202とを接続するフレキシブル基板182の配線に生じる電荷量の変化を示す。当然のことながら、放射線照射前に比べて、放射線照射後の電荷量は増加する。グラフBは、放射線照射中やその直前に生じた外力に伴い、フレキシブル基板182と筐体140との接触或いは振動によってフレキシブル基板182の配線に帯電した電荷量の変化を示す。仮に、図8中、破線を引いた値に放射線Rの検出信号の判定を行う閾値Vthを設定すると、フレキシブル基板182の配線が帯電し電荷量が閾値Vthを超えると、放射線Rの誤検出信号が生じる。
[放射線画像検出器の筐体の種類]
前述の実施例1に係る放射線画像検出器14の筐体140は、図9(A)に示すように、フレームレスのモノコック構造により構成されている。この種の筐体140は、本来フレームに持たせる機械的強度を表皮に持たせ、軽量化に適している。この筐体140は、外力による全体的な変形を生じ易く、フレキシブル基板182、184の接触が生じ易いので、実施例1に係る固定電位188に接続された導電体186はこのモノコック構造に有効である。
図9(B)に示す筐体140は、筐体本体140Aと、その片側において開閉する蓋140Bとを備えている。導電体186は蓋140Bの内側の一部に配設される。
図9(C)に示す筐体140は、筐体本体140Aと、その両側において各々開閉する蓋140A及び140Bとを備えている。導電体186は蓋140A又は140Bの少なくとも一方の内側の一部に配設される。
[実施例1の作用効果]
以上説明したように、実施例1に係る放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の、外力に伴い移動したフレキシブル基板182と筐体140の内壁との接触又は擦れによって生じる電荷を導電体186を通じて固定電位188に吸収することができる。更に、フレキシブル基板182は外力が生じないときに導電体186から離間されているので、導電体186や固定電位188に偶発的にノイズが発生しても、ノイズがフレキシブル基板182に乗ることを抑制することができる。
また、放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の導電体186はフレキシブル基板182を湾曲させた分のスペースを空けて放射線検出パネル142及び信号処理基板144から離間されているので、導電体186と放射線検出パネル142又は信号処理基板144との接触を回避することができる。従って、導電体186や固定電位188に偶発的にノイズが発生しても、ノイズが放射線検出パネル142又は信号処理基板144に乗ることを抑制することができる。
また、放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の筐体140の側部の、放射線検出パネル142のフレキシブル基板182との接続位置と信号処理基板144のフレキシブル基板182との接続位置との間の限られた狭い領域Lに導電体186が配設されているので、導電体186においてノイズを拾い難くすることができる。
また、放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の筐体140は少なくとも表面に絶縁体を有し、筐体140の側部、具体的には筐体140の内壁のフレキシブル基板182が接触する領域にアルミニウム箔、導電塗料、導電層付高剛性カーボン、めっきのいずれかによって導電体186を製作することができる。
また、放射線画像撮影装置10においては、固定電位188が接地、放射線画像検出器14の筐体140の接地、信号処理基板144の接地、固定電源(例えば、接地電源、回路動作電源等)のいずれかであり、筐体140との接触によって生じた電荷がフレキシブル基板182に帯電することなく、固定電位188に吸収することができる。
また、放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14に筐体接地部材188Sを備え、この筐体接地部材188Sを筐体140の側部に埋め込むことにより、導電体186を筐体140の接地(固定電位)に簡易に又は即座に接続することができる。
[変形例]
実施例1の変形例に係る放射線画像撮影装置10は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において導電体186の構造を変えた例を説明するものである。
図10に示すように、変形例に係る放射線画像撮影装置10において、放射線画像検出器14の筐体140は、前述の実施例1と同様に、カーボン繊維強化プラスチック(導電層付き高剛性カーボン)により製作されている。導電体186は、少なくともフレキシブル基板182(及び184)が移動し接触する領域において、筐体140の内壁の一部の絶縁性樹脂を取り除いて露出されたカーボン繊維により構成されている。絶縁性樹脂の取り除きには例えばブラスト処理を実用的に使用することができる。
このように構成される放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の導電体186を筐体140の一部を取り除くことにより簡易に製作することができる。更に、導電体186をそのまま筐体アースに接続することができるので、実施例1において説明した筐体接地部材188Sが不要となり、部品点数を削減することができる。
(実施例2)
本発明の実施例2は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において導電体186に新たな機能を追加した例を説明するものである。
[放射線画像検出器の装置構造]
図11に示すように、実施例2に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14は、筐体140のフレキシブル基板182及び184が移動し接触する領域に固定電位188に接続される導電体186を備えている。導電体186は、前述の実施例1に係る放射線画像検出器14の導電体186と同様に導電性を有し、更に緩衝材である。ここで、緩衝材とは、動きの異なる複数の物体が干渉し合うことによって物体が破損することを防ぐために、干渉する物体間に介在させる材料という意味で使用されている。
導電体186は緩衝材を使用しているので、この導電体186によってフレキシブル基板182、184の筐体140への接触、擦れ等の衝撃を緩和することができる。従って、フレキシブル基板182、184の一端と放射線検出パネル142との接続部分、フレキシブル基板182、184の他端と信号処理基板144との接続部分に生じる応力(集中)を緩和することができる。接続部分とは、前述の熱圧着接続法により、熱を加えた圧着によって電気的に接続した箇所である。
導電体186には、例えば導電性ポリマーを混ぜた発泡材、ゴム、エアーバック等の導電性緩衝材を使用することができる。この導電体186は接着剤を用いて筐体140の側部の内壁に装着される。また、前述の実施例1において説明した筐体接地部材188Sを用いて、導電体186と筐体140のカーボン繊維とを接続することによって、導電体186を固定電位188(筐体アース)に電気的に接続することができる。なお、固定電位188は実施例1において説明したように他の接地であってもよい。
また、導電体186にはばねを使用することができる。ばねが金属材料であれば導電性を有しているので、そのまま導電体186として使用することができる。ばねが樹脂材料等の非金属材料であり導電性を有していない場合には、例えば導電性ポリマー等を混入し導電性を備えることによって、導電体186として使用することができる。
更に、導電体186は導電性を有する粘弾性材であることが好ましい。粘弾性材とは、マックスウェルモデル、ケビンフーォクトモデル等によって表される、粘性及び弾性の両方の性質を併せ持つ材料という意味で使用される。導電体186に粘弾性材を使用することによって、フレキシブル基板182、184の筐体140への接触、擦れ等の衝撃を緩和し、しかもこの衝撃に対する反力(リバウンド)を減少することができる。特に、フレキシブル基板182、184が振動したときに、その振動を即座に減衰させることができる。従って、フレキシブル基板182、184の一端と放射線検出パネル142との接続部分、フレキシブル基板182、184の他端と信号処理基板144との接続部分に生じる応力(集中)を緩和し減少することができる。
導電体186には、例えば導電性ポリマーが混入され、シリコーンを主原料とする柔軟性を有するゲル状素材(ゲル状シート材)を使用することができる。
[実施例2の作用効果]
以上説明したように、実施例2に係る放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の導電体186が導電性を有する緩衝材により構成されているので、フレキシブル基板182、184と放射線検出パネル142、信号処理基板144のそれぞれとの接続部分に生じる応力を緩和することができる。従って、この応力に起因する、フレキシブル基板182、184と放射線検出パネル142との断線不良、フレキシブル基板182、184と信号処理基板144との断線不良を防止することができるので、放射線画像検出器14の電気的信頼性を向上することができる。
また、放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の導電体186が導電性を有する粘弾性材により構成されているので、フレキシブル基板182、184と放射線検出パネル142、信号処理基板144のそれぞれとの接続部分に生じる応力を緩和し減少することができる。従って、この応力に起因する、フレキシブル基板182、184と放射線検出パネル142との断線不良、フレキシブル基板182、184と信号処理基板144との断線不良を防止することができるので、放射線画像検出器14の電気的信頼性を向上することができる。
また、放射線画像撮影装置10において、放射線画像検出器14の導電体186の緩衝材に発泡剤等、粘弾性材にゲル状素材等の汎用品を使用することができるので、導電体186を簡易に製作することができる。
なお、前述の実施例1に係る放射線画像検出器14は、帯電を防止する観点からデータ線112と信号処理部202との間を接続するフレキシブル基板182に対向する筐体140に少なくとも導電体168を備えている。実施例2に係る放射線画像検出器14は、帯電を防止するとともに、断線不良を防止する観点から熱圧着接続法を用いた接続部分を有するフレキシブル基板182及び184に対向する筐体140に導電体186を備えている。
(実施例3)
本発明の実施例3は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において導電体186の構造を変えた例を説明するものである。
[放射線画像検出器の装置構造]
図12に示すように、実施例3に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14は、筐体140のフレキシブル基板182及び184が移動し接触する領域に固定電位188に接続される導電体186と、この導電体186と筐体140との間に配設された緩衝材186Aとを備えている。導電体186は前述の実施例1に係る導電体186と同様に例えばアルミニウム箔等によって形成されている。緩衝材186Aは前述の実施例2に係る導電体186の母材となる例えば発泡材等によって形成されている。
また、実施例3に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14は、筐体140のフレキシブル基板182及び184が移動し接触する領域に固定電位188に接続される導電体186と、この導電体186と筐体140との間に配設された粘弾性材186Bとを備えている。
導電体186は前述の実施例1に係る導電体186と同様に例えばアルミニウム箔等によって形成されている。粘弾性材186Bは前述の実施例2に係る導電体186の母材となる例えばゲル状素材等によって形成されている。
[実施例3の作用効果]
以上説明したように、実施例3に係る放射線画像撮影装置10においては、放射線画像検出器14の筐体140と導電体186との間に緩衝材186A又は粘弾性材186Bを介在させているので、前述の実施例2に係る放射線画像検出器14によって得られる効果と同様の作用効果を奏することができる。
(実施例4)
本発明の実施例4は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において、帯電防止のために新たに導電体を備えた例を説明するものである。
[放射線画像検出器の装置構造]
図13に示すように、実施例4に係る放射線画像撮影装置10は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において、筐体140の機械的強度を増強する補強部材180のフレキシブル基板182、184が移動し接触する領域に補強部材用導電体186Cを備えている。
実施例1において、補強部材180はシャーシ180A、補強板180B、蒸着基板180Cを順次積層して構成され、シャーシ180A及び蒸着基板180Cは導電性を有している。フレキシブル基板182、184が移動し接触する領域は補強部材180の照射面140A側の上面と側面との角部、非照射面140B側の下面と側面との角部である。従って、補強部材用導電体186Cは、シャーシ180A及び蒸着基板180Cを兼用し、これらによって構成される。補強部材用導電体186Cは導電体186と同様に固定電位188に電気的に接続される。
また、補強部材180はステンレス鋼(SUS)等の金属材料や樹脂材料を用いて製作することもできる。金属材料の場合はそれ自体に導電性を有しているので、補強部材用導電体186Cの製作には別部材を容易する必要がない。樹脂材料の場合は導電性を有していないので、前述の実施例1に係る導電体186と同様に別部材によって補強部材用導電体186が製作される。
また、補強部材用導電体186Cは、実施例2に係る導電体186と同様に緩衝材又は粘弾性材によって製作してもよい。更に、補強部材用導電体186Cは、実施例3に係る導電体186と同様に、補強部材180との間に緩衝材186A或いは粘弾性材186Bを介在して製作してもよい。
[実施例4の作用効果]
以上説明したように、実施例4に係る放射線画像撮影装置10においては、実施例1に係る放射線画像撮影装置10によって得られる作用効果に加えて、放射線画像検出器14に補強部材180を備え、この補強部材180に固定電位188が接続された補強部材用導電体180Cを備えたので、フレキシブル基板182、184と補強部材180との接触又は擦れによって生じる電荷を補強部材用導電体180Cを通じて固定電位188に吸収することができる。従って、フレキシブル基板182、184の帯電を抑制することができる。
なお、実施例4に係る放射線画像撮影装置10において、放射線画像検出器14の導電体186に接続される固定電位188に対して、補強部材用導電体186Cに接続される固定電位188を別電位に設定することができる。例えば、前者の固定電位188は筐体アースとし、後者の固定電位188は電源電位とすることができる。
(その他の実施例)
以上、本発明を実施例1乃至実施例4を用いて説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
10 放射線画像撮影装置
12 放射線照射装置
14 放射線画像検出器(電子カセッテ)
140 筐体
142 放射線検出パネル
144 信号処理基板
148 蛍光体(シンチレータ)
16 コンソール
100 検出素子
102 TFT
104 容量素子
106 光電変換素子
110 ゲート線
112 データ線
180 補強部材
182、184 フレキシブル基板
186 導電体
186A 緩衝材
186B 粘弾性材
186C 補強部材用導電体
188 固定電位
188S 筐体接地部材
200 ゲート線ドライバ部
202 信号処理部
204 温度センサ
206 画像メモリ
208 検出器制御部
210 通信部
212 電源部

Claims (6)

  1. 放射線を電気信号に変換する光電変換素子を有する放射線検出パネルと、
    前記放射線検出パネルに対向して配設され、前記放射線検出パネルによって変換された電気信号の信号処理を行う信号処理基板と、
    前記放射線検出パネルに一端を電気的に接続し、前記信号処理基板に他端を電気的に接続するフレキシブル基板と、
    前記放射線検出パネル及び前記信号処理基板を収納するとともに、前記フレキシブル基板を内壁から離間して収納し、カーボン繊維を絶縁性樹脂によってコーティングしたカーボン繊維強化プラスチックによって形成された筐体と、
    前記筐体の前記フレキシブル基板が移動し接触する領域において、前記筐体の一部の前記絶縁性樹脂を取り除いて露出された前記カーボン繊維によって形成され、固定電位に接続される導電体と、
    を備えたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
  2. 前記フレキシブル基板の一端は前記放射線検出パネルの周辺部に接続され、
    前記フレキシブル基板の他端は前記信号処理基板の周辺部に接続され、
    前記フレキシブル基板の中央部は前記筐体の内壁に向かって湾曲し、
    前記導電体は、前記フレキシブル基板の中央部に対向する前記筐体の側部に配設されている
    求項1に記載の放射線画像撮影装置。
  3. 前記導電体は、前記放射線検出パネルに接続された前記フレキシブル基板の一端から前記信号処理基板に接続された前記フレキシブル基板の他端までの領域と対向する前記筐体の側部の領域内に配設されている請求項1又は請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
  4. 前記固定電位は、接地、前記筐体の接地、前記信号処理基板の接地、固定電源のいずれかである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
  5. 前記導電体に電気的に接続され、前記導電体から前記筐体の側部内に埋め込まれ、前記絶縁性樹脂を突き抜け前記カーボン繊維に電気的に接続された筐体接地部材を備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
  6. 前記放射線検出パネルと前記信号処理基板との間において前記フレキシブル基板に対向して配設され、前記筐体の機械的強度を増強する補強部材と、
    前記補強部材の前記フレキシブル基板が移動し接触する領域に配設され、固定電位に接続される補強部材用導電体と、
    を備えた請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
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