JP5672150B2 - 増幅装置、送信機、及び増幅装置制御方法 - Google Patents

増幅装置、送信機、及び増幅装置制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、増幅装置、送信機、及び増幅装置制御方法に関する。
従来、無線通信における通信データ量の増大に伴い、基地局の送信出力の増大が求められている。基地局の高周波高出力用増幅装置としては、GaN(窒化ガリウム)デバイスが用いられることがある。GaNデバイスは、他の半導体デバイス(Si−LDMOS、GaAs−FET)と比較して、バンドキャップが広く、移動度も高いため、優れた高周波高出力特性を有する。
図10は、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置の構成を示す図である。図10に示すように、電力増幅装置200は、入力端子201と、DC(Direct Current)ブロック202と、GaNデバイス203と、可変抵抗204と、ゲート抵抗205とを有する。電力増幅装置200は、電源端子206と、コイル207と、コンデンサ208と、DCブロック209と、出力端子210とを有する。入力端子201に入力されたRF(Radio Frequency)信号は、DCブロック202を介して、GaNデバイス203のゲートに入力される。GaNデバイス203のゲートでは、可変抵抗204により電圧VGが分圧され、ゲート抵抗205を介して、ゲート電圧Vgsとして供給されている。
一方、電源端子206には、電源が供給されている。電源は、高周波遮断用のコイル207を介して、GaNデバイス203のドレインに印加されている。電源端子206は、直流電圧素子用のコンデンサ208を介して、グランドに接地されている。これにより、電源端子206に高周波の妨害成分が印加された場合に、その成分が除去される。また、GaNデバイス203により増幅されたRF信号は、DCブロック209を経由して、出力端子210に出力される。
図11Aは、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置における、入力電力とドレイン電流との関係を示す図である。図11Aでは、x軸に入力電力が、y軸にドレイン電流が規定されている。図11Aに示すように、GaNデバイスのドレイン電流Idsは、入力電力の増加に伴って増加し、アイドリング電流から乖離していく関係となっている。ここで、ドレイン電流とは、電源端子206にDC(Direct Current)電圧(例えば50V)を印加した状態で、GaNデバイス203のドレイン−ソース間を流れる電流であり、以下の説明では、“Ids”と記す。また、アイドリング電流とは、アイドル状態(RF信号入力がない状態)におけるドレイン電流であり、以下の説明では、通常時のドレイン電流Idsと区別するため、特に“Idq”と記す。
図11Bは、入力電力が0の場合における、ゲート電圧とドレイン電流との関係を示す図である。図11Bでは、x軸にゲート電圧が、y軸にドレイン電流が規定されている。図11Bに示すように、入力電力が0の場合、GaNデバイスのドレイン電流Idsは、ゲート電圧Vgsの増加に応じて変化する。電力増幅装置200では、出力信号の線形性、効率等の特性が最適となるように、ゲート電圧Vgsが、可変抵抗204の調整により、予め規定値に設定されている。
特開2001−320243号公報 特開2001−148615号公報 特開2010−74282号公報 特開2001−36351号公報
電力増幅装置200においては、GaNデバイス203のアイドリング電流Idqは、可変抵抗204の調整により、予め規定値に設定されている。しかしながら、GaNデバイスには、Idqドリフトと呼ばれる、ドレイン電流Idsの過度応答の現象があるため、電力増幅装置200が高い電力のRF信号を入力した場合、アイドリング電流Idqが、上記規定値から大きく変動することがある。なお、規定値は、例えば400〜800mAである。
図12Aは、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置における、RF入力信号強度の時間的変化を示す図である。図12Aでは、x軸に時間tが、y軸にRF入力信号の強度が規定されている。図12Aに示すように、電力増幅装置200には、時間t4において、瞬間的に高電力のRF信号が入力されている。図12Bは、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置における、アイドリング電流の時間的変化を示す図である。図12Bでは、x軸に時間tが、y軸にアイドリング電流が規定されている。図12Bに示すように、アイドリング電流Idqは、RF信号の入力前は規定値に設定されているが、高電力のRF信号の入力に伴い、瞬間的に増加する。その後、アイドリング電流Idqは、Idqドリフト状態に入り、例えばIdq規定値の10%程度まで大きく低下し、更なる時間(例えば、数秒〜1時間程度)が経過するに連れて徐々に、上記規定値に戻るという挙動を示す。
上述のようなアイドリング電流の変動に伴い、GaNデバイスの利得(ゲイン)も変動する。かかる利得変動は、携帯電話の基地局のように、電力増幅装置と歪補償回路とを組み合わせて構成される装置の運用において、歪補償の性能劣化や演算複雑化といった問題点を生じさせる。
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、電流が規定値を維持する増幅装置、送信機、及び増幅装置制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願の開示する増幅装置は、第1の増幅デバイスと第2の増幅デバイスと切替え回路と検出回路と制御回路とを有する。第1の増幅デバイスは、入力信号を増幅して出力するデバイスである。第2の増幅デバイスは、前記第1の増幅デバイスと同等の、電流に関するドリフト特性を有するデバイスである。切替え回路は、前記第2の増幅デバイスへの前記入力信号の入力の有無を切り替える回路である。検出回路は、前記第2の増幅デバイスへの前記入力信号の入力が無い時、前記第2の増幅デバイスのアイドリング電流を検出する回路である。制御回路は、前記検出回路により検出された前記アイドリング電流の値に基づき、前記アイドリング電流の値が所定の値となるように、前記第1の増幅デバイスに印加するゲート電圧を制御する回路である
本願の開示する増幅装置の一つの態様によれば、電流(例えばアイドリング電流)が規定値を維持することができる。
図1は、本実施例に係る基地局の全体構成を示す図である。 図2は、本実施例に係る電力増幅装置の構成を示す図である。 図3は、本実施例に係る電力増幅装置の主要な動作を説明するための図である。 図4Aは、RF入力信号強度と時間との関係を示す図である。 図4Bは、同期信号のクロックと時間との関係を示す図である。 図5Aは、RFスイッチの状態と時間との関係を示す図である。 図5Bは、モニタ用入力信号の信号強度と時間との関係を示す図である。 図6Aは、モニタ用GaNデバイスのドレイン電流と時間との関係を示す図である。 図6Bは、RF増幅用GaNデバイスのドレイン電流と時間との関係を示す図である。 図7Aは、通常状態におけるVgs2−Idq特性を示す図である。 図7Bは、Idqドリフト状態におけるVgs2−Idq特性を示す図である。 図7Cは、Idqドリフト状態において調整されたVgs2を示す図である。 図8Aは、同期信号が所定周期で出力される場合における、RF入力信号強度と時間との関係を示す図である。 図8Bは、同期信号が所定周期で出力される場合における、同期信号のクロックと時間との関係を示す図である。 図8Cは、同期信号が所定周期で出力される場合における、RF増幅用GaNデバイスのゲート電圧と時間との関係を示す図である。 図9Aは、RF入力信号強度が所定値以上の時に同期信号が出力される場合における、RF入力信号強度と時間との関係を示す図である。 図9Bは、RF入力信号強度が所定値以上の時に同期信号が出力される場合における、同期信号のクロックと時間との関係を示す図である。 図9Cは、RF入力信号強度が所定値以上の時に同期信号が出力される場合における、RF増幅用GaNデバイスのゲート電圧と時間との関係を示す図である。 図10は、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置の構成を示す図である。 図11Aは、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置における、入力電力とドレイン電流との関係を示す図である。 図11Bは、入力電力が0の場合における、ゲート電圧とドレイン電流との関係を示す図である。 図12Aは、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置における、RF入力信号強度の時間的変化を示す図である。 図12Bは、従来のGaNデバイスを用いた電力増幅装置における、アイドリング電流の時間的変化を示す図である。
以下に、本願の開示する増幅装置、送信機、及び増幅装置制御方法の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施例により、本願の開示する増幅装置、送信機、及び増幅装置制御方法が限定されるものではない。
図1は、本実施例に係る基地局の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施例に係る基地局3は、無線通信を行う送信機1と信号制御を行うベースバンド信号生成部2とを有する。送信機1は、電力増幅装置100、乗算器11、局部発振器12、及びアンテナ13を有する。送信機1は、例えば基地局に実装される。まず、図1を用いて本実施例に係る送信機1の全体的な構成を説明する。その後、本実施例に係る電力増幅装置100におけるゲート電圧制御について詳細に説明する。
ベースバンド信号生成部2は、IP(Internet Protocol)パケット等の入力データに基づいてベースバンド信号を生成する。ベースバンド信号生成部2は、生成されたベースバンド信号を送信機1へ出力する。ベースバンド信号生成部2は、例えば、デジタル回路やDSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)等により構成される。
乗算器11は、ベースバンド信号の入力をベースバンド信号生成部2から受ける。更に、乗算器11は、局部発振信号の入力を局部発振器12から受ける。乗算器11は、ベースバンド信号に局部発振信号のキャリア周波数を乗算して周波数を変換し、RF信号を生成する。乗算器11は、生成されたRF信号を電力増幅装置100へ出力する。
電力増幅装置100は、後述するRF増幅用GaNデバイス118を少なくとも有する。なお、図1には、RF増幅用GaNデバイス118は一つしか記載されていないが、実際には、RF増幅用GaNデバイスは、複数あってもよい。電力増幅装置100は、RF信号の入力を乗算器11から受ける。電力増幅装置100は、RF増幅用GaNデバイス118によりRF信号を増幅する。このとき、電力増幅装置100は、ゲート電圧制御によるアイドリング電流の調整処理も行っているが、その詳細については後述する。電力増幅装置100は、増幅されたRF信号をアンテナ13から送信する。
図2は、本実施例に係る電力増幅装置100の構成を示す図である。図2に示すように、本実施例に係る電力増幅装置100は、入力端子101と、信号分離器102と、減衰器103と、RFスイッチ104と、DCブロック105と、モニタ用GaNデバイス106とを有する。また、電力増幅装置100は、タイミング制御回路107と、可変抵抗108と、ゲート抵抗109と、高周波遮断用コイル110と、電源端子111と、Idq検出回路112と、高周波遮断用コイル113と、直流電圧素子用コンデンサ114とを有する。更に、電力増幅装置100は、DCブロック115と、50Ω抵抗116と、DCブロック117と、RF増幅用GaNデバイス118と、ゲートバイアス制御回路(GBC:Gate Bias Controller)119と、ゲート抵抗120とを有する。また、電力増幅装置100は、高周波遮断用コイル121と、電源端子122と、高周波遮断用コイル123と、直流電圧素子用コンデンサ124と、DCブロック125と、出力端子126とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に信号の入出力が可能なように信号線を介して接続されている。
電力増幅装置100において、入力端子101に入力されたRF信号は、信号分離器102により、モニタ用入力信号とRF増幅用入力信号とに分離される。モニタ用入力信号は、減衰器103と、RFスイッチ104と、DCブロック105とを介して、モニタ用GaNデバイス106のゲートに入力される。
減衰器103は、モニタ用GaNデバイス106とRF増幅用GaNデバイス118とのデバイスサイズ比に応じて、モニタ用GaNデバイス106へのRF入力信号強度を適切な値に調整する。例えば、上記デバイスサイズ比が1:Nである場合、モニタ用GaNデバイス106へのRF入力信号強度が、RF増幅用GaNデバイス118へのRF入力信号強度の1/Nとなるように、モニタ用信号の強度を調整する。
以下、N=100の場合を例に採り、入力端子101に入力されるRF入力信号の信号強度が1.1であり、信号分離器102として10dBカプラを使用するケースを想定し、より具体的に説明する。信号強度1.1のRF入力信号は、10dBカプラを経由することで、信号強度1.0(0dB)の増幅用信号と、信号強度0.1(−10dB)の減衰器103通過前のモニタ用信号とに分離される。信号強度1.0(0dB)の増幅用信号は、DCブロック117を介して、RF増幅用GaNデバイス118に供給される。一方、信号強度0.1(−10dB)のモニタ用信号は、モニタ用GaNデバイス106に供給される前に、減衰器103を経由する。減衰器103では、減衰器103からの出力信号の強度が上記増幅用信号の強度の1/100となるように、信号強度が調整される。この場合、減衰器103では、10dBの減衰が行われ、減衰器103から出力されるモニタ用信号の信号強度は、0.01(−20dB)となる。これにより、双方のGaNデバイス118、106のデバイスサイズに合った強度の信号が、各デバイスに入力されることになる。
2つのGaNデバイス106、118のサイズは、高い検出精度を維持する観点から、同等(1:1)であることが望ましいが、電力増幅装置100は、RFスイッチ104の前段に減衰器103を有することで、デバイスサイズが異なる場合にも容易に対応することができる。すなわち、上述したような減衰量の調整により、電力増幅装置100は、最適化された正確なアイドリング電流Idqを検出しモニタリングすることができる。したがって、電力増幅装置100は、上記2つのGaNデバイスのデバイスサイズが異なる場合でも、Idqの規定値を、高精度に維持することが可能となる。
RFスイッチ104は、タイミング制御回路107から入力される制御信号に基づき、モニタ用GaNデバイス106へのRF信号の入力のオン/オフの切替えを行う。電圧VGS1は、可変抵抗108で分圧された後、ゲート抵抗109と高周波遮断用コイル110とを介して、ゲート電圧Vgs1となり、モニタ用GaNデバイス106のゲートに供給される。一方、電源端子111には電源が供給され、その電源は、Idq検出回路112と、高周波遮断用コイル113とを介して、モニタ用GaNデバイス106のドレインに印加される。
Idq検出回路112は、モニタ用GaNデバイス106のアイドリング電流Idqを検出する。Idq検出回路112は、タイミング制御回路107から入力される制御信号に基づき、モニタ用GaNデバイス106の特定時間内におけるIdqを検出し、検出結果をゲートバイアス制御回路119に出力する。Idq検出回路112は、直流電圧素子用コンデンサ114を介して、グランドに接地されている。これにより、Idq検出回路112に高周波の妨害成分が印加された場合に、その成分が除去される。なお、モニタ用GaNデバイス106により増幅されたモニタ用入力信号は、DCブロック115と50Ω抵抗116とを介して、グランドに短絡されている。
RF増幅用入力信号は、信号分離器102から出力された後、DCブロック117を介して、RF増幅用GaNデバイス118のゲートに入力される。電圧VGS2は、ゲートバイアス制御回路119により電圧調整された後、ゲート抵抗120と高周波遮断用コイル121とを介して、ゲート電圧Vgs2となり、RF増幅用GaNデバイス118のゲートに供給される。
Idqドリフト特性、すなわち、瞬間的な高電力信号の入力に伴うアイドリング電流Idqの変動量は、GaNデバイスのロット間のバラつき(モノバラ)、周辺温度、RF信号の強度等によって異なるが、デバイス間でIdqドリフト特性を揃えることは可能である。モニタ用GaNデバイス106とRF増幅用GaNデバイス118とは、デバイスサイズに応じた入力信号に対し、同等のIdqドリフト特性を有する。これにより、Idq検出回路112は、デバイスサイズに応じて、増幅用入力信号における実際のドリフト特性と同等のドリフト特性を、モニタ用入力信号においても監視することができる。したがって、Idq検出回路112は、精度良くアイドリング電流Idqを検出することができる。その結果、電力増幅装置100は、アイドリング電流Idqを規定値に維持することが可能となる。
ゲートバイアス制御回路119は、タイミング制御回路107とIdq検出回路112とから入力される信号に基づき、ゲート電圧Vgs2を制御する。電源端子122には電源が供給され、その電源は、高周波遮断用コイル123を介して、RF増幅用GaNデバイス118のドレインに印加される。電源端子122は、直流電圧素子用コンデンサ124を介して、グランドに接地されている。これにより、電源端子122に高周波の妨害成分が印加された場合に、その成分が除去される。なお、RF増幅用GaNデバイス118により増幅されたRF信号は、DCブロック125を介して、出力端子126に出力される。
以上、電力増幅装置100の機能的構成について説明したが、上述した各構成要素は、例えば、以下に示す素子や回路により実現することができる。DCブロック105、115、117、125は、コンデンサ(キャパシタ)により実現される。減衰器103は、複数の抵抗を組み合わせて実現される。RFスイッチ104は、FET(Field Effect Transistor)、コンデンサ、抵抗を組み合わせて実現される。Idq検出回路112は、電流値を電圧値に変換する微小抵抗により実現される。ゲートバイアス制御回路119は、三角波発生回路、コンパレータ(反転比較器)、整流回路、反転回路を組み合わせて実現される。特に、ゲートバイアス制御回路119は、Idq検出回路112により検出されたアイドリング電流Idqに所定の抵抗値を乗算した電圧であるIdq検出電圧を閾値として、三角波からパルスを生成する。その後、ゲートバイアス制御回路119は、このパルス信号を増幅して整流することで、ゲート電圧Vgsを生成する。したがって、三角波の周波数が高い程、ゲート電圧制御の応答性は向上する。
次に、動作を説明する。図3は、本実施例に係る電力増幅装置100の主要な動作を説明するための図である。
図3に示すように、S1では、タイミング制御回路107は、RFスイッチ104と、Idq検出回路112と、ゲートバイアス制御(GBC)回路119とに対して、同期信号を出力する。例えば、入力端子101に入力されたRF入力信号強度と時間との関係が図4Aに示すような状態にあるとき、タイミング制御回路107は、図4Bに示す波形の同期信号を出力する。
RFスイッチ104は、タイミング制御回路107から同期信号を入力すると、T1秒間RFをオフ状態とし、T1秒間が経過した後、RFオン状態に戻す(S2)。図5Aは、RFスイッチ104の状態と時間との関係を示す図である。図5Aに示すように、RFスイッチ104は、同期信号が入力されたタイミング(図4Bのt0参照)で、オン状態からオフ状態に遷移する。RFスイッチ104は、その後、t0から時間T1の経過に伴い、再びオン状態に遷移する。時間T1は、アイドリング電流Idqを検出及び監視するのに十分な時間であり、例えば数msである。
また、Idq検出回路112は、タイミング制御回路107から同期信号を入力すると、入力時から上記T1秒間が経過するまでのIdqをモニタし、そのIdqの値をゲートバイアス制御回路119に出力する(S3)。更に、ゲートバイアス制御回路119は、タイミング制御回路107から同期信号を入力すると、入力時から上記T1秒間が経過した後、Idq検出回路112から入力されたIdq値に応じて、ゲート電圧Vgs2を調整する(S4)。
ここで、図5Aでは、RF信号をオフにしてアイドリング電流Idqを検出及び監視するタイミングは、高電力信号の入力時としたが、このタイミングは、一定周期毎にする等、任意である。また、ゲートバイアス制御(GBC)回路119がRF増幅用GaNデバイス118のゲート電圧を制御するタイミングについては、RF入力信号のオン、オフ状態を問わず、任意である。
図5Bは、モニタ用入力信号の信号強度と時間との関係を示す図である。図5Bに示すように、モニタ用GaNデバイス106に入力されるRF信号の強度は、RFスイッチ104がオフ状態に移行したことを契機として、時間t0で0となる。そして、モニタ用入力信号の信号強度は、オン状態への復帰を契機として、再び、入力端子101に入力されたRF入力信号強度(図4A参照)と同様の波形を示す。
図6Aは、モニタ用GaNデバイス106のドレイン電流と時間との関係を示す図である。図6Aに示すように、モニタ用GaNデバイス106のドレイン電流Idsは、RFスイッチ104がオン状態の間、破線に示すアイドリング電流Idqの規定値R1を超える値を示している。しかしながら、時間t0において、RFスイッチ104がオフに切り替わると、オフ状態にある間(時間T1)、ドレイン電流Idsは、上記規定値R1よりも有意に低い値を示す。そして、時間t0+T1において、再びオン状態に戻ると、モニタ用GaNデバイス106のドレイン電流Idsは、元のRF入力信号と同様の波形を示す。図6Aの領域D1は、RFオフ状態において、Idq検出回路112により、モニタ用GaNデバイス106のアイドリング電流Idqとして検出、及び監視されるドレイン電流である。ゲートバイアス制御回路119によりRF増幅用GaNデバイス118のゲート電圧が制御される前(規定値の補正前)においては、領域D1におけるアイドリング電流Idqは、規定値R1よりも低い値となる。
次に、図6Bは、RF増幅用GaNデバイス118のドレイン電流と時間との関係を示す図である。図6Bにおいて、波形L1は、アイドリング電流Idqが規定値に維持された場合におけるRF動作中(オン状態)のドレイン電流値Idsを示す。また、波形L2は、アイドリング電流Idqの低下に伴い、RF動作中のドレイン電流Idsや利得(ゲイン)が変動した場合におけるドレイン電流値Idsを示す。波形L3は、補正後におけるドレイン電流値Idsを示す。図6Bに示すように、RF増幅用GaNデバイス118のドレイン電流Idsの値は、時間t0において、アイドリング電流Idqの低下に伴って一旦低下するが、アイドリング電流Idq規定値の補正により、再び、元のドレイン電流値に回復する(時間t0+T1)。つまり、電力増幅装置100は、RF増幅用GaNデバイス118のゲート電圧Vgs2を制御することで、アイドリング電流Idqの規定値を補正し、これにより、RF増幅用GaNデバイス118のドレイン電流Idsの変動を抑制する。
ここで、上記S4において、ゲートバイアス制御回路119によりゲート電圧Vgs2が調整される様子を、図7A〜図7Cを参照しながら説明する。ゲートバイアス制御回路119は、事前に取得された、GaNデバイスのVgs2−Idq特性に基づき、ゲート電圧Vgs2を調整する。図7Aは、通常状態におけるVgs2−Idq特性を示す図である。図7Aでは、x軸にゲート電圧Vgs2が規定され、y軸にアイドリング電流Idqが規定されている。図7Aに示すように、通常状態では、所定のゲート電圧Vgs2Aにおいて、アイドリング電流Idqが規定値Idq0となる。図7Bは、Idqドリフト状態におけるVgs2−Idq特性を示す図である。図7Bに示すように、Idqドリフト状態では、GaNデバイスの閾値(ドレイン電流Idsが所定値以下となる時のゲート電圧値Vgs2)の変動に伴い、アイドリング電流Idqが、Idq0からIdq1に低下してしまう。そこで、この低下したIdqを規定値に戻す調整処理が必要となる。図7Cは、Idqドリフト状態において調整されたVgs2を示す図である。ゲートバイアス制御回路119は、アイドリング電流Idqの変動量に応じて、Idqが上記規定値Idq0となるまで、ゲート電圧Vgs2を調整する。その結果、図7Cに示すように、ゲート電圧Vgs2は、Idq1に対応するVgs2Aから、規定値であるIdq0に対応するVgs2Bに増加される。
以上説明したように、本実施例に係る電力増幅装置100は、RF増幅用GaNデバイス118と、モニタ用GaNデバイス106と、Idq検出回路112と、ゲートバイアス制御(GBC)回路119とを有する。RF増幅用GaNデバイス118は、入力信号を増幅して出力する。モニタ用GaNデバイス106は、RF増幅用GaNデバイス118の入出力信号をモニタするための増幅デバイスである。Idq検出回路112は、RF増幅用GaNデバイス118に入力される入力信号から分岐してモニタ用GaNデバイス106に入力される入力信号に対応し、モニタ用GaNデバイス106が出力する出力信号を、検出する。ゲートバイアス制御回路119は、Idq検出回路112により検出された出力信号に応じて、RF増幅用GaNデバイス118に印加するゲート電圧を制御する。
より具体的には、電力増幅装置100は、RF増幅用GaNデバイス118と、モニタ用GaNデバイス106と、RFスイッチ104と、Idq検出回路112と、ゲートバイアス制御回路119とを有する。RF増幅用GaNデバイス118は、RF入力信号を増幅して出力する。モニタ用GaNデバイス106は、RF増幅用GaNデバイス118と同等の、RF増幅用GaNデバイス118におけるアイドリング電流Idqに関するドリフト特性を有する。RFスイッチ104は、RF入力信号の少なくとも一部を入力し、モニタ用GaNデバイス106に出力することで、モニタ用GaNデバイス106へのRF入力信号の入力の有無を切り替える。Idq検出回路112は、モニタ用GaNデバイス106にRF入力信号の入力が無い時、アイドリング電流Idqの値を検出して監視する。ゲートバイアス制御回路119は、Idq検出回路112により検出されたアイドリング電流Idqの値に基づき、アイドリング電流Idqの値が規定値となるように、RF増幅用GaNデバイス118に印加するゲート電圧Vgs2を制御する。
このように、電力増幅装置100は、RF増幅用GaNデバイス118に加えて、モニタ用GaNデバイス106を設け、当該デバイスにおけるアイドリング電流Idqを検出して監視する。電力増幅装置100は、アイドリング電流Idqの検出結果を基に、RF増幅用GaNデバイス118に印加するゲート電圧Vgs2を制御することで、RF増幅用GaNデバイス118におけるアイドリング電流Idqの規定値を調整する。これにより、アイドリング電流Idqは、規定値に維持される。つまり、電力増幅装置100は、モニタ用デバイスのアイドリング電流Idqを監視し、その値に基づき、RF増幅用デバイスのゲート電圧を制御することで、Idqドリフトによる電流変動を補正して、電流を規定値に維持する。したがって、電力増幅装置100は、RF増幅用GaNデバイス118のドレイン電流Idsの変動を抑制することができる。その結果、電力増幅装置100は、高電力信号が入力された際に発生するIdqドリフト現象の影響を低減することが可能となる。
続いて、図8A〜図8Cを参照しながら、同期信号の入力に伴い、RF増幅用GaNデバイス118のゲート電圧Vgsが制御される過程について説明する。以下の説明では、図8Aに示すような信号強度のRF信号が入力端子101に入力された場合を想定する。図8Bは、同期信号が所定周期C1で出力される場合における、同期信号のクロックと時間との関係を示す図である。図8Bに示すように、タイミング制御回路107は、同期信号として、所定周期C1のクロック信号を出力する。これにより、ゲートバイアス制御回路119は、検出されたアイドリング電流Idqを規定値に戻すように、上記所定周期(クロック周期)C1毎に、RF増幅用GaNデバイス118に印加するゲート電圧Vgsを制御することができる。その結果、クロック信号に応じて制御されたゲート電圧Vgsの値は、図8Cに示すような波形となる。
すなわち、電力増幅装置100は、RFスイッチ104とIdq検出回路112とゲートバイアス制御回路119とに対し、同期信号(所定周期のクロック信号)を出力するタイミング制御回路107を更に有する。RFスイッチ104は、同期信号の入力時から所定時間(例えばT1)の間、モニタ用GaNデバイス106への入力信号の入力が無い状態(RFオフ状態)とする。Idq検出回路112は、上記同期信号の入力時から所定時間の間(例えばT1)、アイドリング電流Idqの値を検出して監視する。ゲートバイアス制御回路119は、上記同期信号の入力後、Idq検出回路112によるアイドリング電流Idqの値の検出結果に基づき、アイドリング電流Idqの値が所定の値(例えば、規定値の400mA)となるように、RF増幅用GaNデバイス118のゲート電圧を制御する。
上述の場合、同期信号は、RFスイッチ104と、Idq検出回路112と、ゲートバイアス制御回路119との間における、クロック信号入力時の動作タイミングを合わせるタイミング制御信号として機能する。アイドリング電流Idqは、RF信号の入力がオフの時間に検出されるが、電力増幅装置100は、所定のクロック周期C1で出力される同期信号をタイミング制御信号とするため、RF信号の入力がオフとなる契機は、定期的に到来する。これにより、アイドリング電流Idqが検出、監視される機会が増加する。したがって、ゲートバイアス制御回路119は、大きなタイムラグを伴うことなく、アイドリング電流Idqの値を補正することができる。その結果、アイドリング電流Idqは、規定値に高精度に維持される。
次に、図9A〜図9Cを参照しながら、同期信号の入力に伴い、RF増幅用GaNデバイス118のゲート電圧Vgsが制御される更に別の過程について説明する。以下の説明では、図9Aに示すような信号強度のRF信号が入力端子101に入力された場合を想定する。図9Aでは、RF入力信号強度に閾値Thが設定され、時間t1、t2、t3の3時点において、RF入力信号強度がその閾値Thを超えている。図9Bは、RF入力信号強度が所定値以上の時に同期信号が出力される場合における、同期信号のクロックと時間との関係を示す図である。図9Bに示すように、タイミング制御回路107は、所定周期C2のクロック信号に加えて、時間t1、t2、t3での同期信号を出力する。これにより、ゲートバイアス制御回路119は、上記所定周期C2の間隔に併せて、時間t1、t2、t3においても、検出されたアイドリング電流Idqを規定値に戻すように、RF増幅用GaNデバイス118のゲート電圧Vgsを制御することができる。その結果、同期信号に応じて制御されたゲート電圧Vgsの値は、図9Cに示すような波形となる。図9Cでは、図8Cの波形と比較して、時間t1、t2、t3においても、ゲート電圧Vgsの制御が開始されている。このため、より早い段階でのアイドリング電流Idqの補正が実現される。
すなわち、電力増幅装置100は、タイミング制御回路107は、入力信号の信号強度が所定値Th以上となる時点を検出し、当該時点における入力信号に同期する同期信号を、RFスイッチ104とIdq検出回路112とゲートバイアス制御回路119とに対し出力する。上述の場合、同期信号は、RFスイッチ104と、Idq検出回路112と、ゲートバイアス制御回路119との間における、クロック信号入力時、及び高電力信号入力時(時間t1、t2、t3)の動作タイミングを合わせるタイミング制御信号として機能する。アイドリング電流Idqは、RF信号の入力がオフの時間に検出されるが、電力増幅装置100は、所定のクロック周期C2で出力される同期信号のみならず、高電力信号の入力が検知された時に出力される同期信号もタイミング制御信号とする。したがって、RF信号の入力がオフとなる契機は、アイドリング電流Idqの値を規定値に補正する必要性の高い入力信号強度増大時にも到来する。これにより、アイドリング電流Idqが検出、監視される機会が更に増加する。したがって、ゲートバイアス制御回路119は、電力増幅装置100に高電力信号が入力すると、即時に、アイドリング電流Idqの値を補正することができる。その結果、Idqドリフトに対する時間応答特性は更に向上し、電力増幅装置100は、アイドリング電流Idqを規定値に高精度に維持することが可能となる。
なお、本実施例では、タイミング制御回路107が同期信号を出力するタイミングについて、クロック信号として所定周期で出力すると共に、RF入力信号強度が一定レベル以上に達した時点(例えば、図9A〜図9Cに示したt1、t2、t3)で出力する場合を例示した。しかしながら、タイミング制御回路107は、同期信号を、上述した双方のタイミングではなく、何れか一方のタイミングで出力してもよい。
1 送信機
2 ベースバンド信号生成部
3 基地局
11 乗算器
12 局部発振器
13 アンテナ
100 電力増幅装置
101 入力端子
102 信号分離器
103 減衰器
104 RFスイッチ
105 DCブロック
106 モニタ用GaNデバイス
107 タイミング制御回路
108 可変抵抗
109 ゲート抵抗
110 高周波遮断用コイル
111 電源端子
112 Idq検出回路
113 高周波遮断用コイル
114 直流電圧素子用コンデンサ
115 DCブロック
116 50Ω抵抗
117 DCブロック
118 RF増幅用GaNデバイス
119 ゲートバイアス制御(GBC)回路
120 ゲート抵抗
121 高周波遮断用コイル
122 電源端子
123 高周波遮断用コイル
124 直流電圧素子用コンデンサ
125 DCブロック
126 出力端子

Claims (4)

  1. 入力信号を増幅して出力する第1の増幅デバイスと、
    前記第1の増幅デバイスと同等の、電流に関するドリフト特性を有する第2の増幅デバイスと、
    前記第2の増幅デバイスへの前記入力信号の入力の有無を切り替える切替え回路と、
    前記第2の増幅デバイスへの前記入力信号の入力が無い時、前記第2の増幅デバイスのアイドリング電流を検出する検出回路と、
    前記検出回路により検出された前記アイドリング電流の値に基づき、前記アイドリング電流の値が所定の値となるように、前記第1の増幅デバイスに印加するゲート電圧を制御する制御回路と
    を有することを特徴とする増幅装置。
  2. 前記切替え回路と前記検出回路と前記制御回路とに対し、同期信号を出力する同期制御回路を更に有し、
    前記切替え回路は、前記同期信号の入力時から所定時間の間、前記第2の増幅デバイスへの前記入力信号の入力が無い状態とし、
    前記検出回路は、前記同期信号の入力時から前記所定時間の間、前記電流の値を検出し、
    前記制御回路は、前記同期信号の入力後、前記第1の増幅デバイスに印加するゲート電圧を制御することを特徴とする請求項に記載の増幅装置。
  3. 入力信号を増幅して出力する第1の増幅デバイスと、
    前記第1の増幅デバイスと同等の、電流に関するドリフト特性を有する第2の増幅デバイスと、
    前記第2の増幅デバイスへの前記入力信号の入力の有無を切り替える切替え回路と、
    前記第2の増幅デバイスへの前記入力信号の入力が無い時、前記第2の増幅デバイスのアイドリング電流を検出する検出回路と、
    前記検出回路により検出された前記アイドリング電流の値に基づき、前記アイドリング電流の値が所定の値となるように、前記第1の増幅デバイスに印加するゲート電圧を制御する制御回路と
    を有する増幅装置と、
    前記増幅装置により増幅された出力信号を送信する送信部と
    を有することを特徴とする送信機。
  4. 第1の増幅デバイスが入力信号を増幅して出力する増幅装置制御方法であって、
    前記第1の増幅デバイスに入力される入力信号から分岐して、前記第1の増幅デバイスと同等の電流に関するドリフト特性を有する第2の増幅デバイスに入力される入力信号が、切替え回路により遮断されている時、前記第2の増幅デバイスのアイドリング電流を検出し、検出された前記アイドリング電流が所定の値となるように、前記第1の増幅デバイスに印加するゲート電圧を制御することを特徴とする増幅装置制御方法。
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